2月の完全失業率が2・8%と、22年ぶりに2%台となった。この結果はもちろん喜ばしいが、今後も低位に安定するかどうかについては、数カ月間の観察を要する。
筆者は、これ以上下げにくいとされる「構造失業率」を2・7%程度と推計してきたが、これは、きっちり2・7%が下限になるという精密科学のようなものではなく、2・7%程度のところに長期的に超えられない岩盤があるという意味である。したがって、今の失業率がその岩盤近くになっているのかどうかは、ちょっと観察が必要だ。
一方、日銀が長い間主張していた「構造失業率は3%半ばである」というのは、間違っていたといえる。日銀の物価リポートなどでは「構造失業率が3%半ば」という主張は本文への記載から注釈に格下げされるなど、徐々に強調されなくなってきたが、これを機にフェードアウトしてもらいたいものだ。そして、日銀が構造失業率をいまもその程度と考えているのかを明らかにすべきだろう。
もっとも、今の方向としては、失業率が構造失業率に近づきつつあるのは、ほぼ間違いないだろう。これは日銀が金融緩和を継続しているからである。
そして、賃金も各業種において徐々に上がりつつある。非正規労働者のアルバイトでは多くの業種で既に高くなっているようだが、正社員の給与に伝播するにはちょっと時間を要する。少なくとも、正社員の賃金については、実質的に春闘が終わったばかりなので、上昇のチャンスはあと1年待つしかない。
今年の春闘でも、正社員の賃上げ額は昨年をわずかに下回ったが、中小企業では、昨年を上回る水準になっている。3月29日までに1954の労働組合の交渉結果を連合がまとめたものによれば、正社員の賃上げ額は、ベースアップと定期昇給を合わせて平均で月額6147円で、昨年同時期を92円下回った。このうち、従業員300人未満の中小企業では、月額4971円と昨年を17円上回った。
日銀は、今の金利管理政策を最善だと思っているようだ。たしかに金融は緩和基調であり、失業率も低下傾向になっているのはいいことだ。
ただし、失業率と表裏一体の関係にあるインフレ率は上がっていない。2月のインフレ率を前年同月比でみると、消費者物価総合が0・3%、生鮮食品を除く総合が0・2%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が0・1%にとどまっている。もちろん、失業率が下がってインフレ率が上がっていないのは悪いことではないが、もう少しインフレ率が高ければ、経済はより力強くなるだろう。
今の金融緩和をもう少し強化できないだろうか。そうすれば、少しインフレ率は高まり、安定的に3%を切る失業率が達成できるだろう。
今一段の金融緩和は、賃金上昇をさらにもたらす可能性もあり、経営者には不評だろう。だが、日本経済には必要だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
今年の春闘でも、正社員の賃上げ額は昨年をわずかに下回ったが、中小企業では、昨年を上回る水準になっている。3月29日までに1954の労働組合の交渉結果を連合がまとめたものによれば、正社員の賃上げ額は、ベースアップと定期昇給を合わせて平均で月額6147円で、昨年同時期を92円下回った。このうち、従業員300人未満の中小企業では、月額4971円と昨年を17円上回った。
日銀は、今の金利管理政策を最善だと思っているようだ。たしかに金融は緩和基調であり、失業率も低下傾向になっているのはいいことだ。
ただし、失業率と表裏一体の関係にあるインフレ率は上がっていない。2月のインフレ率を前年同月比でみると、消費者物価総合が0・3%、生鮮食品を除く総合が0・2%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が0・1%にとどまっている。もちろん、失業率が下がってインフレ率が上がっていないのは悪いことではないが、もう少しインフレ率が高ければ、経済はより力強くなるだろう。
今の金融緩和をもう少し強化できないだろうか。そうすれば、少しインフレ率は高まり、安定的に3%を切る失業率が達成できるだろう。
今一段の金融緩和は、賃金上昇をさらにもたらす可能性もあり、経営者には不評だろう。だが、日本経済には必要だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】反リフレ・アベノミクス派に付け入る隙を与えるな(゚д゚)!
ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が指摘している構造失業率に関しては、このブログでもその意味や過去の推移を掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!
この記事は、2016年6月16日のものです。以下にこの記事から、構造失業率に関する部分のみを引用します。
"
構造的失業率などについて以下に簡単に解説しておきます。
総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。
- 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業
- 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業
- 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。
過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。
このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。
であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。
しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。
"
以下に、日経新聞の経済指標ダッシュボードから消費者物価指数の推移のグラフを掲載します。
上の高橋氏の記事には、2月末消費者物価の前年比は、0.3%となっていますが、日経の資料では0.2%です。統計のとりかたが違うのか、実測値と予測値の差異なのか、よくわかりませんが、このくらいだと誤差の範囲です。どのみち、かなり低い伸びであることには代わりありません。
上のグラフをみると、消費者物価指数が2014年度からそれまで、かなり順調に上昇していた物価が、下がり始めています。これは、無論8%増税の悪影響です。しかし、この悪影響も2016年から17年にかけて上昇しつつあります。
やはりさらに金融緩和を継続する必要があります。もし、日銀が昨年時点で追加金融緩和に踏み切っていれば、もっとはやくに失業率が3%台をきり、インフレ率もあがっていたことでしょう。
このように、日銀がグズグスしていて、物価目標がなかなか達成できないのと、実質賃金があまりあがらないことから、反リフレ派や、反アベノミクス派に、リフレやアベノミックスは失敗だったなどと論評されるなど、つけいる隙を与えてしまっています。
無論、反リフレ・アベノミクス派の論点は、すべて論破できる程度の幼稚なものですが、それにしてもそれに引きづられる政治家やメディア関係者も多数存在するのですから、日銀としては、これを牽制するためにも、さらなる追加金融緩和を実行していただきたいものです。
今からでも、遅くないです。日銀は、追加金融緩和を実行して、早期に物価目標ならびに、実質賃金の力強い上昇による、日本経済の復活を目指していただきたいです。
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