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2019年2月15日金曜日

米中交渉の根本的な食い違い、中国を打ち負かす秘策とは?―【私の論評】米国による中国制裁は最早トランプ政権ではなく米国の意思となった(゚д゚)!


トランプを読み解く(4)

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

 米中貿易戦争をめぐる交渉期限の3月1日まで残りわずか2週間。果たして交渉が妥結し、貿易戦争は終了となるのだろうか。本稿の仮説が成立すれば、答えは「NO」になる。



 昨年12月9日付けの寄稿「休戦あり得ぬ米中貿易戦争、トランプが目指す最終的戦勝とは」にも書いた通り、90日間の交渉期間は、休戦でも停戦でもなく、激戦の先送りに過ぎない。さらに少々大胆な仮説として、トランプ氏が目指しているのは、最終的な「戦勝」であって、当面の妥協や平和といった短期的利益を前提とする「休戦」や「終戦」ではないはずだと説いた。この論点はいまでも変わらない。

交渉は必ずしも妥結するためのものとは限らない

 「君主は、自らの権威を傷つけるおそれのある妥協は、絶対にすべきではない。たとえそれを耐えぬく自信があったとしても、この種の妥協は絶対にしてはならない。なぜならほとんど常に、譲歩に譲歩を重ねるよりも、思いきって立ち向かっていったほうが、たとえ失敗に終わったとしても、はるかに良い結果を生むことになるからである」(『マキアヴェッリ語録(新潮文庫) 訳・塩野 七生』

 仕掛けられた衝突は基本的に回避できない。それを回避しようと一方的に譲歩に譲歩を重ねれば、相手に足元を見られる。相手は往々にして欲が出て予定よりもさらに過酷な要求を突きつけてくる。こういう弱腰で交渉の場に出ると、相手に敬意をもってもらえない。交渉にあたっては、まず原則を貫く手ごわい敵として相手に敬意をもってもらうことが大前提だ。このイメージを維持できなければ、衝突や交渉にすでに負けていると言っても過言ではない。

 交渉は、必ずしも妥結するためのものとは限らない。日本人の弱点(美点でもあるのだが)は、「話せば分かる」と思いこんでいるところにある。国際政治などの場合、話しても分からないどころか、分かっていても分からないふりをするのが常。一方的な誠意や妥協ではただただ相手につけ込まれるだけ、という場面が多々ある。

 米中貿易戦争はトランプ米大統領が仕掛けたものだ。中国が望んでいない争いであり、しかも中国は全般的に劣勢に立っている。中国が次々と譲歩しているため、交渉成立する可能性があると見ている学者や専門家も少なくない。私は当初から、この交渉は妥結する見込みがほとんどないと見ていた。この持論はいまでも変わらない。理由を言おう。

米中交渉の根本的な食い違い

 現時点の米中交渉の中身をよく見ると、中国が譲歩しているのは貿易の「量」であるのに対して、米国が求めているのは、中国の構造改革という「質」であった。中国は「おたくの農産品輸入をもっと増やす」と言っているが、米国は「うちの技術を盗むな」と要求している。量と質の食い違いがあり、そもそもこんな交渉は妥結するはずがない。
 大豆の輸入増などで騙されてはいけない。輸入の減少で困っているのは中国だ。国民食である豚肉の供給は、豚の餌の原料となる大豆に頼っている。豚肉の供給に支障が出て豚肉の価格が上がれば、中国人民の不満が一気に噴出する。ただでさえ今、豚コレラで大問題になっているくらいだから、泣き面にハチで大豆の輸入が減れば、豚肉の問題はただの食糧問題でなく、政治問題になる。故に米国からの大豆輸入を増やすのは何も譲歩ではない。中国の国益に合致しているのである。
習近平主席は2018年12月18日に開かれた中国改革開放40周年大会で、意味深長な一言を語った――。

「改めるべき事で改められる事は我々は断固改める。改めべからざる事で改めてならぬ事は我々は断固改めない」

中国改革開放40周年大会

 これはトランプ氏に語り掛けているようにも聞こえる。さて、何が「改めるべき事で改められる事」か、何が「改めべからざる事で改めてならぬ事」かは言及していない。この言葉をトランプ氏はどのように受け止めるのだろうか。「すべき事でできる事」と「すべからざる事でしてはならぬ事」をわきまえたうえで交渉に臨めと、至って真っ当なリマインドだ。

 これは要するに「量」の交渉には応じてもいいが、「質」の変更要求には応じられないという明確なメッセージとみていいだろう。「質」の変更は政権の統治基盤を揺るがすものである以上、習氏はそんな妥協をするはずがない。

 一方、トランプ氏が貿易戦争を仕掛けた根本的な意図は、中国の本質的な構造変更にある。そこで貿易の量を若干積み増しされたところで妥協するのなら、それこそ権威を傷つけられるだけで、応じるはずがない。

貿易交渉を決裂させたほうが有利だ

 フーヴァー研究所が昨年11月29日付けで発表したレポート「中国の影響力と米国の利益 積極的な警戒」はある意味、現在のトランプ政権の対中戦略を裏付けるものとみていいだろう。昨今の米中交渉は、少なくとも、大豆の輸出を少し増やしたところで、トランプ氏が「Our farmers are going to be very happy(我が国の農民は喜ぶでしょう)」と微笑んで応酬することで済む話ではない。

 貿易戦争とそれにまつわる双方の交渉はあくまで戦術レベルのものであり、特に最近報じられている一進一退の様子は、カモフラージュにすぎない。トランプ氏が仕掛けた変化球で本質を見失ってはいけない。

 中国側としても「質的部分はアンタッチャブルで、量の交渉ならいくらでも応じる」という原則を手放すことはあり得ない。いってみれば、「戦争賠償をしても、敗戦は受け入れられない」。なぜなら、敗戦を受け入れると、中国はそれ以上の賠償を支払わなければならなくなる可能性があるうえに、国内における政治的正統性まで失いかねないからだ。それなら、最後の一兵卒が息絶えるまで戦い抜き、「玉砕」したほうがマシだ。

 中国の戦術は引き延ばし戦術。2年弱引き延ばして、次の大統領選でトランプ氏が降板すれば挽回できる。そう目論んでいるだろう。

 この企みをトランプ氏はすでに見破っている。だから、何としてでも2020年夏頃までに、中国問題を片づけたいわけだ。このターゲットを達成するためにも、貿易戦争の交渉を決裂させ、関税を引き上げるのが得策だ。

トランプの対中政策、弱体化させてから取引を

 オーストリアの保守紙「Die Presse」は2017年1月20日付けで、「トランプは中国経済を傷つきやすくした(弱体化させた)」(Trump macht Chinas Wirtschaft verwundbar)という記事を掲載した。見出しはトランプ大統領の対中姿勢を本質的に捉えたものだった。

 記事は中国経済の現状について、当時発表されたばかりの2016年の経済データを挙げ、「この26年来の最悪を記録した」と述べ、さらに、ここ数年の経済低迷によって大きな恐慌が引き起こされなかった原因をも分析した。

 数十年にわたって続く中国の高速経済成長はいよいよペースを落とし始めた。中国政府は輸出から内需牽引に切り替えようと懸命だった。ところが、企業の負債率は改善が見られず、個人消費も一向に振るわない。

 タイミング悪く、その時期に米大統領に就任したトランプ氏は中国批判を繰り返し、為替操縦国と断じたうえで、保護的な通商政策を厳しく批判した。記事はこう指摘する。「トランプ氏は中国製品に対し45%の関税をかけると言っているが、これが現実になれば、中国は深刻なダメージを受けるだろう」。

 中国税関総署の黄頌平報道官は同年(2017年)1月13日、トランプ氏の保護主義的な通商政策によって中国の輸出が抑制される可能性を示し、記者団に対し、中国は反グローバル化政策の最大の被害者になると認めた。

 45%どころか、25%でも大変なことになる。いや、25%の前段階である10%だけでも、2018年後半の中国経済はすでにひどく弱ってきている。

計算ずくの貿易戦争

 2年前、2017年1月号の当社顧客向けレポートに私が寄稿した米中関係の分析記事の一節を抜粋する――。

 「トランプ政権が中国製品に高関税を課した場合、中国は対米報復に乗り出す。中国の対米輸出は年間4000‐5000億ドル規模、これに対して対米輸入は1500億ドル規模。貿易戦争になれば、中国は断然不利な立場に置かれる。中身を見ると、中国の対米輸出品は労働集約型製品が中心で、米国の対中輸出品の多くが技術集約型製品である。製品代替性の度合からしても中国に不利だ。中国は人件費の上昇で製造業の優位性を失いつつあるなか、貿易戦争になれば、むしろベトナムなどの新興国に大きな商機が舞い込む。一方で中国が受ける影響は深刻だ。労働集約型製品の受注が低迷すれば、雇用問題が浮上し、社会や政権の安定を脅かす事態になりかねない。通商・経済問題が一気に政治問題に発展する」

 僭越ながら、2年前に書いた予想はほぼ的中した。そして、トランプ氏が正確にシナリオを描けたことに感心せずにいられない。彼は決して無謀な貿易戦争を仕掛けたわけではない。さらに上記の当社レポートから次の一節を抜粋する――。

 「これ(貿易戦争)によって、米国は対中取引で優位に立てば、政治的攻勢を強めるだろう。対台関係や南シナ海問題、あるいは中国の政治的構造問題に踏み込むかもしれない。ふたを開けてみると、一連の取引によってチャイナ・パワーの抑制に成功すれば、もともとTPPに期待されていた対中けん制機能も実現できる」

 このくだりは今後の展開から徐々に見えてくるだろう。

人権カードの使い方

 トランプ大統領と中国の駆け引きは必ずしも、整合性の取れた形を見せているわけではない。議論の焦点を取り上げる際の濃淡も一定ではない。とりわけ具体的な案件として注目されるのは、「南シナ海問題」、「中国の為替操作国認定問題」と「中国製品に対する関税問題」だった。

 人権問題だけはあまり触れていない。オバマ時代でも、米国の立場上人権問題は幾度となく提起されてきたが、中国への攻撃に熱心なトランプ大統領なら、人権ほど都合のよい材料を看過するはずがない。では、なぜ触れようとしなかったのか。

 人権問題は最強カードであるだけに、中国の反発も強い。これを切り口にしてしまうと、対中交渉それ自体が行き詰まりかねないからだ。政治体制ないし政権の正統性といった根幹部分に触れる問題を交渉のカードにしてはいけない。それをやってしまうと、ビジネスの交渉で相手企業の社長に対しその地位の正統性を問題視するのと同等の愚策になる。しかし、トランプ氏は決して人権カードを捨てたわけではない。そのカードを出すタイミングを見計らい、しかもできれば他人にそのカードを出してもらおうと画策していた。

 後日談になるが、2018年夏頃からトランプ氏はようやく人身売買やウイグル人の弾圧問題を持ち出し、スポット的に人権外交を強化する姿勢を見せ始めた。時期的には、米中貿易戦争の展開に呼応したアクションであると見て間違いないだろう。

 さらについ数日前(2月9日付け報道)、トルコは中国のウイグル族に対する人権侵害がひどくなっているとして中国を批判し、ウイグル族の収容所の閉鎖を求めた。なんとも絶妙なタイミングではないか。

中国のウイグル族に対する人権侵害に関して懸念を表明したペンス米副大統領

 人権については、まず人権の定義・射程と計測尺度という問題がある。いくら普遍的な価値観とはいえ、いわゆる米国をはじめとする西側諸国における人権の計測尺度は必ずしも地球上唯一のものとは限らない。

 たとえばシンガポールの場合、公共秩序法の改正で当局の権限が拡大し、公的な集会を規制あるいは禁止できるようになった。司法当局を非難する弁護士や学者が起訴されたことが、表現の自由の権利に大きな打撃となった。報道の自由も制限された(「アムネスティ・レポート2017/2018より)。このような状況を欧米流の定義に照らせば、人権問題にされてもおかしくない。さらに、シンガポールの奇跡的な発展それ自体が開発独裁とも言える政治体制のもとで遂げられたものだという批判もある。米国はなぜシンガポールを非難せずに矛先を中国に向けるのか。

 この類の議論になると、トランプ氏も決して得意なほうではない。そもそも他国の人権問題は米国の国益に直接的な利害関係があるのか、ひいてはこれに強い関心を示す米国民はどのくらいいるのか。ここまでくれば、トランプ氏にとっての他国人権問題はある意味で国際政治や外交、通商面の交渉カードに過ぎないのである。

 サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件についても、トランプ氏は事件への関与が疑われるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の責任を不問にする姿勢に徹していた。サウジへの1100億ドル相当の武器輸出合意を維持するために、つまり金で殺人行為も許されるのかというメディアの批判には、トランプ氏は動じる気配すら見せていない。

 トランプ氏は他国への介入について、理想主義的な介入はしないが、実利に基づく現実主義的な介入は辞さない、という姿勢である。人権問題も然り。

<第5回へ続く>

【私の論評】中国制裁は最早トランプ政権ではなく米国の意思となった(゚д゚)!

私も、ブログ冒頭の記事のように、交渉が妥結し、貿易戦争は終了となることはないと思います。

中国側は米中首脳会談を提案し、トランプもこれに前向きのようです。中国側は経済が急失速しており、トランプの方は2020年の大統領選挙を控え貿易面で何らかの得点を挙げたいと考えているものと思われます。

中国から何らかの具体的譲歩を引き出し、それをトランプの駆け引きの勝利と宣伝し、米中の冷戦の一時的休止がもたらされる可能性は否定できないでしょう。

ただ、仮に首脳会談が開かれ短期的に妥協が成立したとしても、長期的には米中の経済競争が終わることはないでしょう。中国との対決は貿易から始まり、今や先端技術における覇権争いをはじめ、全面対決の様相を示しています。

米中の対決が先端技術にまで及んでいるのは、米国が、中国の挑戦は米国の卓越した地位を脅かしているとの危機感を抱いているからです。例えば、中国は、通信速度が現行の4G携帯電話の100倍となる、次世代の社会基盤となると見込まれる5G技術で、米国に引けを取らない開発をしていると言われます。

そういうわけで、米国は先端技術における中国の台頭の「封じ込め」にかかっており、中国が先端技術の開発を国策として推進する「中国製造2025」を非難するとともに、中国の先端技術製品の調達を禁止し、同盟国に対しても同様の措置を取るよう要請しています。米中の経済対立は、構造的に非常に根深いものです。

こうした根深い対立が、3月1日などに決着がつくはずもないし、仮にトランプ大統領が幕引きをはかりたいと思うことがあったとしても、トランプ政権内のドラゴンスレイヤー(帯中国強硬論者)たちが、なかなか"Yes"とは言わないでしょうし、仮にトランプ氏が政権内をまとめることができたとしても、今度は議会や、司法当局が"Yes"とは言わないでしょう。

米国は明確な三権分立制が樹立されていて、米国の大統領といえども、議会の了承がないと何もできません。米司法当局による、孟容疑者との司法取引が成立すれば、司法当局も中国によるあらゆる不正を暴き、ファーウェイやZTEだけに限らず、あらゆる中国による米国を毀損するような工作を処断することになるでしょう。米国議会は、「アジア再保証推進法」を超党派で成立させ、中国と対立する姿勢を露わにしています。

トランプ大統領


米国の大統領には強力な権限があると思い込んでいる人が日本には多いようですが、実際はそうではありません。米国では明確な三権分立が設立されているので、平時においては、世界で最も権限の少ないリーダーといわれています。

平時には、救急車一台ですら、大統領の意図で動かすことはできないと揶揄されているくらいです。ただし、戦時(特に第二次世界体制んのような総力戦) の場合には、大統領に大きな権限が集中するようなシステムになっています。

多くの人は、戦時の米国大統領を思い浮かべて、強大な権限があると思い込んでいるのかもしれません。もしそうなら、国境の壁などのトランプの意のままにすぐに予算を得て建設されているはずです。

このようなことから、トランプ氏が仮に幕引きを図りたいと考えたにしても、議会や司法当局は中国への処断を継続します。これでは、トランプ氏が仮にある程度のところで、幕引きを図りたいと考えても、到底無理です。もう米国の中国に対する経済制裁は容易にとどまることはなく、トランプ大統領の任期などとは関係なく、一定の結論が出るまで、継続されるとみて間違いないでしょう。最早、米国の対中国制裁は、トランプ政権の意思ではなく、米国に意思になったとみるべきです。

ただし、トランプ政権によって一時的に制裁が緩むということはあったとしても、ブログ冒頭の記事にもあるように、現時点の米中交渉の中身をよく見ると、中国が譲歩しているのは貿易の「量であるのに対して、米国が求めているのは、中国の構造改革という「質」なのです。中国は「おたくの農産品輸入をもっと増やす」と言っているのですが、米国は「うちの技術を盗むな」と要求しています。量と質の食い違いがあり、そもそもこんな交渉は妥結するはずがないのです。

特に「質」といった場合、これを中国が全面的に受け入れることにしたとしても、現状の体制ではほぼ不可能です。

これを受け入れるためには、中国は抜本的な構造改革をしなければなりません。このような構造改革のためには、中国政府が掛け声をかけて、資金を投下して、米国の技術を盗むななどと号令をかけても不可能です。

それには、中国の遅れた社会構造を改めなければなりません。米国などの先進国と比較して、圧倒的に遅れている、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめないことには、何も変えられません。

もし、これらを進めてしまえば、中国共産党はあっという間に統治の正当性を失い、崩壊することになります。

習近平が語った、「改めるべき事で改められる事は我々は断固改める。改めべからざる事で改めてならぬ事は我々は断固改めない」ことばのうち、「改めべからざる事で改めてならぬ事」とはまさにこのことです。
トランプ政権、米国議会、米国司法当局に追い詰められる習近平
中国が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推し進めれば、中共は崩壊し、中国は全く新しい体制にならざるを得ないことを習近平は周知しているのです。
であれば、この経済対立はどうなるかといえば、米国はあらゆる制裁を続け、短くても10年、長ければ20年は続き、その果てに中国が構造改革をして体制を変えるか、さもなくば経済的にかなり弱体化して、他国に影響を及ぼせなくなるといういずれかの結論が出ることによって終焉することになります。
もし、中国が経済弱体化の道を選べば、経済は現在の韓国レベルにまで落ち込むでしょう、これは東京都と同じくらいの規模であり、ロシアと同程度です。
現在のロシアや韓国がいくら頑張っても、米国と直接対峙できないのは明らかです。ロシアはソ連の核や軍事技術を継承しているため、侮ることはできず、大国とみられがちですが、実体はいくら強がって見せても、他国に大きな影響力を及ぼせる状況ではなくなっています。

いまのままではいずれ、中国は図体が大きいだけの、アジアの凡庸な一独裁国家と成り果てることになります。

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2018年9月26日水曜日

米国に桁外れサイバー攻撃、やはり中国の犯行だった―【私の論評】サイバー反撃も辞さないトランプ政権の本気度(゚д゚)!

米国に桁外れサイバー攻撃、やはり中国の犯行だった

防御から攻撃に転じる米国の国家サイバー戦略

中国は米国政府職員の個人情報を大量に不正入手していた(写真はイメージ)

 米国政府に対する史上最大規模ともいえるサイバー攻撃は、やはり中国政府機関による工作だった――。トランプ大統領の補佐官ジョン・ボルトン氏が9月20日、公式に断言した。

 この攻撃はオバマ前政権時代の2015年に発生し、米国連邦政府関係者2200万人の個人情報が盗まれていた。当時から中国の犯行が示唆されながらも、米側ではこれまで明言を避けてきた。この新たな動きは、米国の対中姿勢の硬化の反映だともいえる。

米政府職員約2200万人の個人情報が流出

 トランプ政権は9月20日、「国家サイバー戦略」を発表した。米国の官民に外国から加えられるサイバー攻撃への対処を新たに定めた政策である。これまでの防御中心の戦略から一転して攻撃を打ち出した点が最大の特徴となっている。同戦略は、米国にサイバー攻撃を仕掛けてくる勢力として中国、ロシア、イラン、北朝鮮の国名を明確に挙げていた。

 国家安全保障担当の大統領補佐官ボルトン氏は同日、この「国家サイバー戦略」の内容を発表し、ホワイトハウスで記者会見を開いた。

ジョン・ボルトン米大統領補佐官

 ボルトン氏によると、米国政府は激増するサイバー攻撃に対して、これまで防御策しかとってこなかった。しかし、その対策はもはや時代遅れであり、今後、米国政府をサイバー攻撃してきた相手には必ず報復のサイバー攻撃をかけるという。

 ボルトン氏はその説明のなかで次のように述べた。

 「いまや多数の米国民のプライバシーが外国勢力のサイバー攻撃によって、危険にさらされている。実例として、数年前の中国による米国連邦政府の人事管理局(OPM)へのハッキングを指摘したい。連邦政府の現元職員ら数百万、数千万人もの個人情報が盗まれ、北京に保管されているのだ。そのなかには(元政府職員としての)私自身の情報も含まれている」

 ボルトン氏が言及したのは、2015年はじめから4月にかけてOPMのコンピュータシステムがサイバー攻撃を受けて、そこに保存された連邦政府職員らの個人経歴、家庭環境、社会保証番号、指紋、財政、賞罰などの個人情報が流出した事件である。被害を受けたのは合計2210万人とされ、米国政府へのサイバー攻撃の被害としては史上最大規模とされた。米国政府職員らの個人情報が流出したことで懸念されたのは、外国組織が職員たちの弱みを握り、スパイ活動の武器にすることや、米国政府職員になりすますことなどだった。

 このサイバー攻撃の犯人は当時から中国政府機関らしいとする未確認情報が流れていた。オバマ政権のジェームズ・クラッパー国家情報会議議長は、犯人が中国関連機関らしいことを示唆したが、その後、確認を求められた際に中国説を否定してしまった。この対応は、オバマ前政権が中国との友好的な関係の構築に重点を置いていたことによる。政権として中国の反発を招く言動は公開の場ではとらないという政策指針があったのだ。

 だが、トランプ政権では対中姿勢が根本から変わり、中国を名指することを躊躇しなくなったというわけだ。

 なおオバマ政権下では、中国がサイバー攻撃によるスパイ活動によって米側主要戦闘機のF35やF22、宇宙配備の新型レーザー兵器などの機密情報を違法に入手したという情報も広く流れていた。

これからは攻撃を受けたら即座に報復

 ボルトン補佐官は記者会見で「国家サイバー戦略」の基盤として、(1)国の国土と生き方と国民の安全の防御、(2)米国の経済繁栄の促進、(3)力による平和の維持、(4)米国の影響力の国際的拡大、という概念を強調した。

 ボルトン補佐官はそのうえで、トランプ政権のサイバー戦略がオバマ前政権の禁じた攻撃的な対応を含めたことについて、「米国にサイバー攻撃をかけた相手には即座に報復の反撃を加え、実害を与える。そのことによって、米国を標的とするサイバー攻撃は二度と試みないと思わせる抑止の原則が重要なのだ」と語った。

【私の論評】サイバー反撃も辞さないトランプ政権の本気度(゚д゚)!

今週出たトランプ政権の新しいサイバー戦略は、これまで検討されていた方針の寄せ集めにすぎません。

その40ページの文書で政府は、サイバーセキュリティーの向上、変化の促進、そしてコンピューターのハッキングに関する法改正の計画を述べています。選挙のセキュリティについては、ほぼ1/4ページで、“宇宙のサイバーセキュリティー”の次に短いです。

変わったのは語調です。アメリカを攻撃する人物や国に対する軍事攻勢の言及はないが、その行為に対する結果が課せられる(imposition of consequences)という、反撃を意味する遠回しな言い方が何度も使われています。

国家安全顧問John Boltonは、記者たちにこう述べています: “大統領の指示はこれまでの抑制を逆転して、実質的に、関連部門からの攻撃的なサイバー作戦を可能にするものだ”。

“われわれの手は、オバマ政権のときのように縛られていない”、とBoltonは前政権を暗に批判しました。

古い政策や原則の焼き直し以上に大きな変化は、オバマ時代の大統領指令PPD-20の破棄です。それは、政府のサイバー武装に制約を課していました。それらの機密規則は1か月前に削除された、とWall Street Journalが報じています。そのときの説明では、現政権の方針として、“攻撃の最優先”(offensive step forward)という言葉が使われました。

言い換えるとそれは、サイバー攻撃の実行者とみなされたターゲットに反撃する、より大きな権限を政府に与えます。近年、アメリカに対するサイバー攻撃が疑われているのは、中国、ロシア、北朝鮮、そしてイランです。

現実世界であれ、サイバー空間であれ、軍事的アクションの脅威を強調し、力の使用を掲げるレトリックはどれも、緊張を高めるとして批判されてきました。しかし今回は、誰もそれを嫌いません。トランプ政権の熱烈な批判者であるMark Warner上院議員ですら、新しいサイバー戦略には“重要かつ、すでに確立しているサイバーセキュリティの優先事項が含まれている”、と言っています。

北朝鮮によるWannaCryの使用や、ロシアの偽情報キャンペーンなど最近の脅威に対してオバマ政権は、対応が遅くて腰が引けている、と批判されてきました。しかし前政権の職員たちの一部は、外国のサイバー攻撃に対する積極的な対応を阻害してきたものは政策ではなく、各省庁に有効な対応を講じる能力がないことだ、と反論しています。

前政権でサイバー政策の長官だったKate Charletは、“彼らの大げさなレトリックも、それが作戦のエスカレーションを意味しているのでないかぎり、許される”、と言います。

Kate Charlet

彼女は曰く: “私が痛いほど感じるのは、各省庁レベルにたまっているフラストレーションだ。彼らは自分たちが、サイバー空間において自分たちの組織とアメリカを守るためのアクションが取れないことに、苛立っている。そのときから私が心配していたのは、振り子が逆の極端な方向へ振れることだ。そうなると粗雑な作戦のリスクが増え、鋭敏で繊細な感受性どころか、フラストレーションがさらに増すだけだろう”。

トランプの新しいサイバー戦略は、語調が変わったとはいえ、レトリックを積み重ねているだけであり、政府が一夜にして突然、好戦的になったわけではありません。より強力な反撃ができるようになったとはいえ、本来の目的である抑止力として十分機能すれば、実際に反撃をする機会もないでしょう。

しかし、この見方は楽観的にすぎるかもしれません。このような楽観的な見方をしていたからこそ、オバマ政権では中国にやりたい放題をされたのだと思います。

そもそもサイバー攻撃は、それが行われた事実を具体的かつ決定的に証明するのが難しいです。真実はどうであれ、中国は自らの関与を否定することができるのです。また、米国が公の場で中国の責任を問い詰めるためには、自国政府の機密やサイバー上の能力を露呈しなければならなくなります。その犠牲を払ってまでアメリカが中国を責めたてるとは考えられないです。

であれば、最も有効な方法は、米国から中国に対する報復のサイバー攻撃です。近いうちに、トランプ大統領から具体的に中国に対するサイバー攻撃が公表されるかもしれません。具体的に中国が何をし、それに対して米国がどのような報復をしたかを公表するかもしれません。

米政府は3月下旬に発表された中国の不正貿易慣行に関する最新報告書で、サイバー・スパイ活動を指揮したとして、人民解放軍総参謀部技術偵察部(総参謀部第3部、3PLA)部長だった劉暁北・少将に言及しました。米政府が中国軍の高官を名指したのは初めてのことでした。

米国でいうとNSAのような組織である3PLAの建物

同報告書は米通商法301条に基づいて行われた調査の結果をまとめたものです。調査では、知的財産権の侵害のほか、米企業が中国進出の条件として技術移転を迫られる状況などが対象となりました。

米政府は、劉氏が3PLAのトップとして、米企業を対象にサイバー・スパイを指示したとしました。同調査報告によると、中国国営石油・天然ガス大手の中国海洋石油集団(CNOOC)が3PLAに対して、シェールガス技術を有する米の石油天然ガス企業の情報を収集するよう要請していました。中国軍のサイバー攻撃によって、米企業の交渉計画書が盗まれ、商談ではCNOOCが有利となりました。

ほかにもCNOOCの要請を受けた3PLAは、企業の資産管理、経営陣の人事異動、シェールガス技術などの重要情報を取得するため、米石油天然ガス企業5社に対してハッキングを行ったといいます。

報告書は、中国当局は軍のスパイ活動を利用して、国営企業の国際競争力の向上に有利な商業情報を集めていると指摘しました。

中国当局は2015年末に、電子戦やサイバー戦などを管轄する中国軍「戦略支援部隊」を創設しました。翌年1月に、3PLAなどの軍部署に対して統合・再編を行い、「戦略支援部隊」下部組織の「網絡系統部(Cyber Corps)」を新たに設立しました。このサイバー部隊には、心理戦や情報戦などを展開する「311基地」も含まれています。

ワシントンタイムズによると、「網絡系統部」は北京市海淀区にあり、そこに約10万人のサイバーハッカー、語学専門家とアナリストがいます。また上海、青島、三亜(海南省)、成都と広州に支部があります

同報道では、米政府は今後、劉暁北少将に対して制裁措置を講じる可能性が高いとの見方を示しました。

米司法当局は4年前、上海に本部を置く中国軍61398部隊に所属する4人のハッカーをスパイ容疑で起訴しました。61398部隊は、3PLAの下部組織である「総参謀部技術偵察部第2局」です

ワシントンタイムズは、劉暁北氏の現職は不明だとしました。

このような中国に対して、貿易戦争や金融制裁にからめて、これらをより効果的にするため、サイバー攻撃も実施することは想像に難くないです。そのうち、中国の要人で天文学的な隠匿財産などが米国のサイバー攻撃で消されてどこにも訴えることもできず、発狂する者がでてくるかもしれません。

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“死神”ボルトン氏、北に重大警告「非核化に必要な措置を取っていない」 


非核化に消極的な正恩氏に、ボルトン氏(写真)が重大警告を発した

 北朝鮮に「死神」と恐れられているジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に“重大警告”を発した。6月の米朝首脳会談で約束した「非核化」について、北朝鮮が実行していないと批判したのだ。ボルトン氏は、正恩氏が4月の南北首脳会談で「1年以内の非核化」を言い出したことも暴露した。北朝鮮は確実に追い込まれつつある。

 「北朝鮮は非核化に向けた必要な措置を取っていない」

 ボルトン氏は7日、FOXニュースの番組に出演し、こう述べた。

 シンガポールで6月に行われた米朝首脳会談の共同声明で、正恩氏は「朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む」と、ドナルド・トランプ大統領に約束した。

 北朝鮮がその後、具体的に核廃棄を進めている気配はまったくない。それどころか、「米国が『制裁・圧迫』という旧石器時代の石斧を捨てて、信頼と尊重の姿勢にどれほど近づくかによって未来の全てが決定されるであろう」(6日付、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」)などと、逆に米国を批判している。

 制裁解除を哀願する北朝鮮に対し、ボルトン氏は番組で、「真に必要なのは言辞ではなく行動だ」と指摘し、現段階での制裁緩和は一切検討していないと強調した。

 ボルトン氏の強気姿勢の背景には、非核化の実行を言い出したのが正恩氏自身という事情がある。

 ボルトン氏は5日、4月の南北首脳会談で、正恩氏が韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、「(非核化を)1年以内に行う」と約束したことを明らかにした。

 そのうえで、ボルトン氏は「1年以内に(非核化を)終わらせるというアイデアがどこから来ているのかについて多くの議論があったが、正恩氏から来ている」と述べ、「彼らが核兵器を放棄するという戦略的決断をすれば、1年以内にできるはずだ」と語った。

 トランプ政権の「我慢の限界」は近づきつつある。

 ボルトン氏は7日の番組で、マイク・ポンペオ国務長官が正恩氏との会談のため再訪朝する用意があることも明かした。訪朝が実現すれば、正恩氏自身が約束した「1年以内の非核化」を実行するよう、ポンペオ氏が迫る可能性もありそうだ。

【私の論評】北軍事攻撃の前にイランの惨状を金正恩と習近平にみせつけるトランプ政権(゚д゚)!

トランプ政権は、イランに対する制裁による窮状を北に見せつける腹であるのは明らかです。これにより、北を威嚇するだけではなく、その背後にいる中国にもかなりの脅威を与えることがトランプ政権の目論見であると考えられます。

イランの核合意離脱に伴いトランプ大統領は、「これまでで最も痛みを伴う制裁」を行うと表明しました。

トランプ大統領はかねてからイランと敵対関係にあることから、制裁は本格化し関係国にも大きな影響を与えるものと見られます。

これに対し、昨年の今頃は一触即発の危機にあった北朝鮮との関係は現在沈静化しています。それ自体は決してマイナス面ばかりとは言えないですが、では好ましい状況かと言えばそうも言えないです。

北朝鮮が本当に約束を守る国だと思っているのは、世界でも文在寅と日本の左翼くらいのものかもしれません。実際は現在でも北の軍拡が行われていると考えるのが自然です。

トランプ大統領もその辺りは百も承知でしょう。今度北朝鮮が約束を違反すれば、その時は中国もロシアも表面上は反対するかもしれませんが、それでも米国による北攻撃には反対できないでしょう。

米朝首脳会談でトランプ大統領がみせた融和的な態度

米朝会談のトランプ大統領の融和的な態度は、そのための「笑顔の」演出であったとみるべきでしょう。そうなると今回のイランへの制裁は北朝鮮と中国への見せしめでもあるみるのが妥当です。

トランプ政権は、核合意を離脱し、対イラン制裁を再開して、威勢よくイラン経済を追い詰めることにより、どれほどの損害と犠牲が出るかを北と中国に見せつけようとしているのです。

米国のドナルド・トランプ大統領は8月6日、対イラン制裁を再開する大統領令に署名しました。その前哨戦として米政府は今年5月、各国の反対を押し切って2015年に成立した核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)から離脱しました。

米政府は声明で「アメリカ合衆国は、すべての経済制裁が実行されるよう全力を尽くし、イランと商取引のある国々とも密接に連携し、制裁を完全なものにするつもりである」と述べました。

CNNの報道によれば、今後イラン政府は、米ドルの購入ができなくなります。また、イランと金(ゴールド)や貴金属の取引のほか、黒鉛、アルミニウム、鉄鋼、石炭の直接的・間接的な供給も制裁対象です。

イラン通貨取引の大きな部分は禁じられ、イランの自動車産業も制裁対象となります。米国と欧州で製造された航空機をイランに販売することもできなくなります。

11月5日までには、米政府はイランのエネルギー部門に対する「核関連制裁」を完全実施し、イラン産原油の輸入禁止と、外国金融機関によるイラン中央銀行との取引禁止も始まる予定です。

トランプ大統領は8月6日、核合意は「一方的でひどい取引」だったと述べ、「イランの核兵器保有への道を完全に絶つという根本的な目的を達成することができないどころか、虐殺や暴力、混乱を拡大し続ける残忍な独裁政権に、現金という援助を差し伸べるものだ」と新ためて批判しました。

今回の大統領令を受けて、イランのジャバド・ザリフ外相は次のようにツイートました。「トランプ政権は、イラン国民のことを案じているふりをしている。それでいて、最初に科した制裁は、200機を超えるジェット旅客機の輸出を止めることだが、これこそイラン国民が生きるのに欠かせないインフラだ。アメリカの偽善には際限がない」

2015年Timeが選ぶ最も影響力がある100人のうちの一人に選ばれたムハマド・ジャバド・ザリフ氏

トランプの大統領令に先立ち、フランス、イギリス、ドイツの外相と、欧州連合(EU)の外交安全保障上級代表は8月6日に共同声明を発表し、アメリカ政府の決定について遺憾の意を表明しました。外相らはまた、ヨーロッパとイランの経済的な結びつきを守ることを約束しました。

実は、ルノーやプジョー、フォルクスワーゲンといったヨーロッパの自動車メーカーがイランに工場を持っていることから、イランの自動車生産台数は世界12位です。トランプ大統領は、イラン経済で最大かつ海外からの投資が最も多い部門に打撃を与えることになります。

イランの企業や政府と取引できなくなっても、米国企業はさほど困りません。イラン経済は米国に依存していないし、米国と強い結びつきを持っているわけでわもありません。影響が大きいのは、欧州の企業や政府のほうです。

トランプ大統領は、米国が彼らにとって最大の貿易相手国であることを盾に取り、イランとのつながりを断てと脅しているのです。

イランの通貨リアルは暴落しています。イランは外界に向けて完全に開放されていない最後の主要な新興市場です。8000万人の消費者を擁し、人々の教育水準は高く、貴金属など天然資源も豊富です。

米国による経済制裁は、少なくともトランプ大統領の任期が残っている間は、潜在力を発揮しようとするイランの取り組みにとって大きな打撃となることでしょう。

イランは自国に巨大な消費市場を持っており、3億人規模の消費者を擁する中東や北アフリカでは主要な工業国です。経済制裁は、原材料や主要部品へのアクセスを制限することで、イランの鋼鉄やアルミ、自動車といった産業に打撃を与えるよう計算されています。

過去数カ月の間に米国が経済制裁の再開に言及しただけで、2015年の核合意後に築き上げてきたあらゆる活気が勢いを失っています。

15年のリセッション(景気後退)後、イラン経済は16年に12.5%の成長を記録しました。今年も堅調な伸びを示すとみられています。国際通貨基金(IMF)の試算によれば、今年の経済成長率は4%です。しかし、これは、米国が核合意から離脱する前に計算されたものです。

核合意後は欧州の主要企業が数十億ドル単位の契約を次々と結んでいきました。しかし、資本調達と法人株主による投資の両方の観点から米金融街は重要であり、欧州企業は経済制裁第2弾のリスクに直面することはできません。

米国はイランの指導層と一般の人々との間に不和を引き起こし、最終的には政権交代を目指していると信じている人は多いです。米政府は政権交代について否定しています。

通過リアルの暴落は一般のイランの人々にとっては大きな打撃です。失業率は上昇し、特に若年層が厳しい状況に陥っています。輸入品のコストのせいでインフレも進んでいます。断続的な経済制裁が何年も続いていることでインフラへの投資が不十分なため水や電気が不足しています。

ハメネイ師を最高指導者とする政治体制は、穏健派とみられている政府と強硬派の軍とのバランスを取ろうとしています。人々からの圧力を受けるのは今後もロウハニ大統領ということになるでしょう。

ロウハニ大統領

米政府に対して強い不信感を抱いている強硬派が勢いづくのは間違いないです。強硬派はまた、国内のあらゆる場所に勢力を伸ばしていることから、イランが世界経済に対して完全に開かれた場合には失うものが最も多い存在でもあります。

テヘランなどの大都市では抗議デモが起きています。ところがその怒りは、トランプ大統領や米国ではなくハサン・ロウハニ大統領に向かっています。核開発より経済を優先してアメリカのオバマ前政権などと核合意にこぎつけたロウハニは今、イランの経済苦境の理由を国会で証言するよう、国会議員たちから迫られています。

イランの惨状はこれから、さらにエスカレートしていくことでしょう。ハメネイ師を最高指導者とする政治体制も崩壊するかもれしれません。そうなると、イランは混乱の巷になるはずです。

これは、北にとってはかなりの脅威となることでしょう。「核廃棄」をしなければ、北もイランと同じようなことになるということで、かなりの見せしめになるはずです。

このブログでは、米国の本命は米国を頂点する戦後秩序に挑戦しようとする、中国であると掲載してきました。また、米国と中国が直接軍事対決することは米国のドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)ですら、現実的ではないとみなしていることを掲載しました。

しかし、北朝鮮を軍事攻撃することは、非現実的とはいえないかもしれません。米国は、北がイランの経済制裁の結果をみせつけてもなお、「核廃棄」をしなければ、北に軍事攻撃をするかもしれません。

そうして、それは中国に対して、最大級の脅威となることでしょう。これを米国が実行した場合、米国は中国本土は攻撃はしないものの、元々中国の領土ではない、南シナ海の環礁埋立地を米国が攻撃するかもしれないと危惧させるには十分であるといえます。

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2018年7月11日水曜日

ますます強固になりそうなトランプ政権の対中姿勢―【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!


共和党議員からの糾弾で「親中派」キャリア外交官が引退


トランプ大統領が直接くびしたわけではないが、トランプ政権では
キャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が引退に追い込まれた

 トランプ政権から東アジア太平洋担当の国務次官補候補に指名されていたキャリア外交官のスーザン・ソーントン氏が、議会共和党から中国への姿勢が軟弱にすぎると非難され、引退へと追い込まれた。

 同氏はオバマ政権時代にも中国などを担当していた女性外交官だ。トランプ政権になってから中国政府に対して甘すぎるとして議会の共和党有力議員から激しく糾弾されていた。

 新たな候補には対中強硬派の名前が挙がっており、トランプ政権の対中姿勢がますます強固になることも予測される。

中国への融和的政策に関与していたソーントン氏

 この発表はやや意外に受け止められた。ソーントン氏が次期の国務次官補に正式に指名されていたからだ。同氏は今年(2018年)2月にはトランプ政権下の当時のレックス・ティラーソン国務長官により次の東アジア太平洋担当国務次官補に指名されていた。

 7月初め、米国務省報道官は「東アジア太平洋問題担当の国務次官補代行を務めるスーザン・ソーントン氏が7月末で外交職務から引退する意向を表明した」と発表した。

スーザン・ソーントン氏 写真はブログ管理人挿入

 ソーントン氏はキャリア外交官として1990年代から主に中国を担当する多数のポストに就いてきた。オバマ前政権下では2016年2月に東アジア太平洋担当の国務次官補の筆頭代理となり、同次官補だったダニエル・ラッセル氏の補佐を務めてきた。ラッセル氏がトランプ政権時代が始まってすぐの2017年3月に退任すると同次官補代行となり、国務省における日本や中国を含む東アジア地域担当の事実上の実務最高責任者となってきた。

 今年2月にはティラーソン長官の推薦で正式の国務次官補に指名され、連邦議会の承認を求めるプロセスに入っていた。

 だが、トランプ政権を支える共和党勢力からは、ソーントン氏はオバマ政権時代の中国への融和的な政策に関与しすぎたという批判が絶えなかった。

 連邦議会の上院外交委員会がソーントン氏の国務次官補指名を審議する一連の公聴会で、共和党有力メンバーのマルコ・ルビオ議員らがソーントン氏の対中姿勢はトランプ政権の政策には合わないという趣旨の批判を繰り返し述べた。その結果、同外交委員会での指名承認に必要な賛成票が得られない見通しが生まれていた。

トランプ政権下の中国との折衝には「不適格」

 ルビオ議員らが、公聴会での発言や国務省あての直接の書簡などで明らかにしたソーントン氏の人事への反対の理由は、以下のとおりである。

(1)ソーントン氏はオバマ政権下の国務省で対中政策に関わった際、いまのトランプ政権の中国への強い抑止や対決の政策とはあまりに異なる宥和策の推進に深く関与してきた。そのため、トランプ政権での中国との折衝には不適格である。

(2)米国に亡命して中国共産党を批判していた中国人実業家の郭文貴氏を帰国させるために、2017年5月、中国国家安全部次官の劉彦平氏らがニューヨークに到着した。FBI(連邦捜査局)が彼らを入国手続き違反で逮捕しようとした際、ソーントン氏は反対し、逮捕を阻んだ。

(3)ソーントン氏は国務省の公式ウェブサイトに掲載された台湾(中華民国)の国旗を中国政府の要請に応じる形で削除した。この措置は中国政府の圧力への屈服であり、トランプ政権の台湾政策に反する。

 以上のようなルビオ議員のソーントン氏批判は広範に公表され、共和党が多数を占める上院外交委員会でも同氏の指名に反対する動きが強くなっていた。

 こうした動きの中で、ソーントン氏はトランプ政権の意向も踏まえて、自ら指名を辞退する形をとったとみられている。

 この動きは、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬となり、オバマ政権が続けてきた対中関与政策の排除が一層進んだことを反映したといえる。ソーントン氏の引退で空席となった次期のアジア太平洋担当の国務次官補候補には、2代目ブッシュ政権で国防総省の中国部長を務め、現在は民間研究機関のAEIの中国研究部長のポストにあるダン・ブルーメンソール氏らの名前が浮上している。同氏は中国への抑止強化論者として知られる。

【私の論評】トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、他ならぬ中国に理解されていくことになる(゚д゚)!

上の記事にもあるように、トランプ政権や議会共和党の中国に対する姿勢がますます強硬になりそうです。しかし、中国政府は未だ楽観的に構えているようです。

トランプ米大統領が中国の貿易慣行に対して厳しい措置を講じることを真剣に検討していたときに、中国当局者は真に受けておらず、首都北京では危機感がほとんど感じられていないようでした。

中国はこれまで、1992年と95年の場合も含め、米通商法301条による調査を交渉で乗り切ってきた経緯があります。

だから、今回も何とかなるであろうと考えているのかもしれません。しかし、今回の場合、中国が米国側と協議したりやWTOによる解決に頼ろうとする姿勢は、中国の計算ミスとなる可能性があります。

中国政府が理解していないのは、トランプ政権が「大真面目」だということです。トランプ政権)は小さなことで手を打つことはしないでしょう。

そもそも、トランプ政権の狙いは、貿易戦争により貿易赤字を減らすとか、中国の市場を開放させるとか、人民元自由化などということだけではないでしょう。無論これらも、中途の目標ではありますが、最終目標ではないと私は考えています。

トランプ大統領の最終目標は中国にたっぷり貯め込んだ外貨を散財をさせて、その国力を弱体化させることではないかと思います。それも、かなり弱体化させ、二度と米国に立ち向かうことができなくすることでしょう。米国は中国が呼びかけているAIIB(アジアインフラ投資銀行)に最初から冷たくあしらっていました。日本も参加する意思はありません。

トランプ大統領は、外貨がなくなるというか、自らなくそうとしている、国のインフラ投資銀行にわざわざ加盟することはないでしょう。日本もトランプ大統領の対中国戦略の最終目標を知りながら、これにわざわざ加入するような愚かな真似はしません。

トランプ大統領としては、本来ならば中国と戦争をして、中国を屈服させたいのでしょうが、これに関しては米国ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)達も中国と武力衝突するのは現実的ではないと考えいます。

トランプ政権は、武力にかわるもので、中国を徹底的に弱体化する方策を考えていて、そのもっとも良い方法が、貿易戦争と厳しい金融制裁ということになったと考えられます。

なぜそのようになったかといえば、以下のような背景があると考えられます。

第一にトランプの戦略は中国国内の金利政策、外貨規制に静かに照準を合わせていると考えられます。中国の外貨準備が底をつけば、必然的に人民元は激安へ向かいます。このことは中国人民銀行中枢もよく理解しており、二年前から資本規制を強めて対応してきましたた。

外貨による送金が事実上不可能となり、海外旅行の持ち出し外貨も制限され、海外の不動産購入は認めなくなりました。例外的に海航集団などの欧米企業買収はみとめてきたが、金額ベースで比較すると減少していたという事実があります。

第二に中国の不動産バブル崩壊は必定ですが、それを早めることができます。つまりFRBが金利を上げると、投機資金は米国へ環流します。不動産価格を下支えしているのは、国有企業、国有銀行などが巧妙に公的資金を注入しているからです。中国の庶民がかかえる住宅ローンも、金利が高まれば個人破産が増え、すでに暴動が頻発しています。

第三に中国経済がかかえている難題は「株安」「債券安」「人民元安」と、三つの市場における連続的な下落です。ところが賃金高、物価高、金利高になって、その乖離は激烈になっています。

第四に中国は国内に鬼城と呼ばれるゴーストタウンを量産しましたが、くわえて週一便しか飛ばない辺地に飛行場を造成し、乗客が見込めない田舎にまで新幹線を建設し、あちこちに橋梁を架け、トンネルを掘り、都市部から離れた田圃に新駅を造り、50の地方都市では採算が合わないとされる地下鉄網をつくって、エベレストより高い借金の山をつくりました。

ちなみに中国の新幹線は、いまや25000キロ(鉄道の総延長は12万7000キロ)、とくに新幹線は2012年比較で2・5倍となって、最新鋭「復興号」は、北京上海を350キロ、四時間半で結んで世界一と自慢しました。中国は16両連結を自慢したが、従来は馬力の関係から8両連結をしていました。

第五に遅れて参入した生損保、とりわけ生命保険が迎えるインソルバンによる危機。また老人年金はすでに多くが基金を取り崩しています。悪名高い一人っ子政策により、少子高齢化の速度は日本より速いのですが、中国には介護保険制度はなく、老人ホームは富裕層しか入居できません。

そうして、全世界で展開中のBRI(一帯一路)は、もしすべて完成すると総額は8兆ドルなります。米国からみると、この中国の世界的規模の投資は、当該国経済を活性化させたかつてのマーシャルプランのような公共財の提供ではなく、まさに不良在庫処理と、労働力の輸出であり、相手国経済を収奪することです。


工事中断に至っている案件はニカラグア運河、ベネズエラ高速鉄道、インドネシア新幹線、ミャンマーの水力発電などで、最近ではマレーシア東海岸鉄道事業も中止に追い込まれています。目標通りに完成させたのはヨーロッパをつなぐ鉄道くらいです。大風呂敷のまま終わったのはラス-ロス間の新幹線プロジェクトほか、これまた山のようにあります。

親中派のチャンピオンであるパキスタンですら、現実には大判振る舞いのCPEC(中国パキスタン経済回廊)に570億ドルを投じていますが、随所で工事が寸断しています。パキスタンはIMF管理にはいるほど財政が悪化、中国は渋々10億ドルの追加融資を決めました。ほかにも中国の商業銀行は20億ドルを貸しているという情報もあります。2013年にパキスタン危機では67億ドルの負債を返済できずに、IMF管理となりました。

また中国は鼻息荒く全米の企業買収のみか、不動産を買いまくったのですが、これもかつての日本のように、堤清二、秀和の小林某、イアイアイの高橋某と、乗っ取り王といわれたバブル紳士たちは、高値を掴まされ、最後には底値で物件を手放し、馬鹿を見ました。

中国勢はハリウッド映画買収に失敗、ウォルドルフアストリアホテルを買い取った呉小暉は逮捕され、安邦生命は国有化という惨状をすでに露呈しました。

他方で、トランプ大統領は中国企業がアメリカに進出すると喜びを素直に表現しています。ウィスコン洲でFOXCOM(鵬海精密工業)の工場の起工式に、トランプはわざわざ出席し鍬入れセレモニーに参加しました。この式典には孫正義も参加しています。孫のファンドが出資しているからです。

トランプは起工式でこう語りました。「この工場は米国の美しい鉄鋼と、アルミ、そして部品を使う。素晴らしい工場になる。ウィスコンシン州で私は勝った。レーガン大統領も負けた土地(戦局)で私は勝ったのだ」と意気軒昂に吠えました。

かつて日本はスーパー301条発動に加えて「ローカル・コンテンツ法」によって、自動車メーカーは米国進出を余儀なくされました。それによって部品の下請け、孫請けもぞろぞろと米国へ進出したため、国内は空洞化を来しました。中国もいずれ、そうなるでしょう。

結局、米中貿易戦争とは、米国による中国貧窮化政策であり、次の段階では厳しい金融制裁に打って出て、中国の外貨を吐き出させ、中国の息の根を止めようとしているのです。

そうして、その背景にはやはり、トランプ氏が米国の保守を地盤としているということが大きく影響していると考えられます。

そうして、米国の保守派の間では近年、「真珠湾攻撃背後にソ連のスターリンの工作があった」とする「スターリン工作説」が唱えられるようになってきています。そうしてこれは、90年代に公表されたヴェノナ文書の裏付けもあります。

ベノナ文書 最近も研究が進み様々な事実が明らかにされつつある

本来日米は戦争をするようなことはあり得なかったにもかからず、スターリンの工作により、日米は戦うように仕向けられ、あのようなことになってしまったという考え方です。

この米国の誤りが、ソ連を台頭させ、ソ連は崩壊したものの、最近ではそれに変わって中国を台頭させ、北朝鮮による核の脅威に米国はさらされている。ソ連や中国など断じて許すわけにはいかない。

というのが、米国草の根保守のリーダーであった、故フィリス・シュラフリー女史の発言でもあります。

シュラフリー女史のこの発言に米国の保守層は多大な影響を受けています。トランプ氏も当然影響を受けています。トランプ氏にとって、中国は倒すべき敵なのです。

だから、トランプ氏は何としてでも、中国を徹底的に弱体化しようと日々行動しているのです。そうして、弱体化して中国を米国にとって無害な存在にし、あわよくば、中国の現体制を崩壊させたいと目論んでいることでしょう。

この背景を中国側は、良く理解していないようです。そうして、日本人の多くも理解していないようです。トランプ氏の対中戦略の本気度は徐々に、多くの人々そうして、他ならぬ中国に理解されていくことになるでしょう。

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2018年7月9日月曜日

中国の急所は人民元自由化 米制裁を無効化する通貨安、トランプ政権が追及するか―【私の論評】米国の対中貿易戦争は始まったばかり!今後金融制裁も含め長期間続くことに(゚д゚)!

中国の急所は人民元自由化 米制裁を無効化する通貨安、トランプ政権が追及するか


USDCNYのチャート

 米中貿易摩擦を背景に、人民元相場の下落が起きている。

 まず、基本的な数字を押さえておこう。2016年の米国の世界に対する輸出額は1兆4500億ドル(約160兆円)、世界からの輸入額は2兆2500億ドル(約250兆円)、貿易赤字8000億ドル(約90兆円)だ。中国向けは輸出のうち8%で、金額は1160億ドル(約13兆円)、輸入のうち21%で金額は4820億ドル(約53兆円)、貿易赤字は3660億ドル(約40兆円)だ。米国の貿易赤字のうち大半は中国である。ちなみに対日赤字は700億ドル(約8兆円)にすぎない。

 米国は、こうした状況に政治的な不満があり、中国の知的財産権侵害に対する制裁関税を発動する。具体的には、500億ドル(5・5兆円)のうち、まず340億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課す。中国も同額の追加関税との報復関税で対抗する。

 両国は水面下では交渉しているとみられるが、どうやら中国は人民元の操作も行っているようだ。人民元レートは変動相場制ではなく、中国政府がコントロールしている管理相場だ。4月以降、徐々に下落して今では6%程度も安くなっている。

 米国では利上げをしており、変動相場であってもドル高に振れやすい。実際、中国以外の新興国でも為替はドル高に向かっているので、人民元安を中国当局が容認しているともいえる。

 米国が関税をかけて中国が人民元を安くすると、米国の購入者はどうなるか。米国では中国からの輸入分のうち1割程度に25%の関税がかかるが、全品目は6%安くなる。つまり、1割程度は20%程度価格が高くなるが、残り9割で6%安くなる。その結果、中国からの輸入がどうなるか。輸入品の価格弾力性、つまり価格に応じた輸入量の変動にもよるが、かえって増える可能性もある。短期的には米国の対中貿易赤字はさらに拡大する可能性もあるのだ。

 米国としては、中国が人民元を操作して元安になると、政治目的である対中貿易赤字の削減を達成できなくなる。となると、人民元操作をやめさせるような手段にでるかもしれない。それは、人民元の自由化である。

 国際金融のトリレンマ(三すくみ)として知られているが、「自由な資本移動」「固定相場制」「独立した金融政策」のうち2つだけを受容することができる。中国は、「自由な資本移動」は共産党一党独裁体制を揺るがすために選択できず、「固定相場制」と「独立した金融政策」の組み合わせだ。ここで、完全な人民元の自由化を求めることは、「自由な資本移動」と同じ意味になる。

 10年ほど前、人民元改革と称して、変動相場制に移行すると思われた時期もあったが、結局資本移動の自由に立ち入ることはできなかった。

 人民元の自由化は、中国にとっては触れられたくないところだ。しかも、それを誘発する人民元安は、中国にとっても資本流出の引き金になりかねない。トランプ政権が中国の弱点をついてくるのか、それとも、中国がその前に折れて、何らかの妥協策を打ち出すのか、なかなか興味深いところだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】米国の対中貿易戦争は始まったばかり!今後金融制裁も含め長期間続くことに(゚д゚)!

米中貿易戦争悪化に伴い人民元相場が急落しました。その原因は上の記事には掲載されていませんが、キャピタルフライトであると予想できます。これに対応する形で中国当局は国有銀行に通貨防衛のための為替介入をさせました。

現状度は、貿易戦争悪化し、そのために中国の輸出の冷え込み企業業績悪化、そのため株価下落し、海外投資家が離脱、そうして人民元売りドル買いという負の連鎖が起きているわけです。

また、これに連動する形での国内勢の動きもあると考えられます。中国政府は2015年の中国株式バブル崩壊以降、外貨規制を強化し、国内からのドルの持ち出しを厳しく規制していました。

個人の両替規制を年間5万元(83万円程度)に制限し、破ったものに対して制裁を課すようにしました。企業に対しても、基本届け出制にして、500万ドル以上の取引に関しては、より厳しい審査を課すことにしました。

中国の両替所

これにより、一旦は収まったかに見えた人民元に対する不安が、再び市場を襲っているののです。中国の対外債務は1兆7,106億ドル(2017年末)、それに対して外貨準備高が3兆1106億ドル(2018年5月末)です。

外貨準備とは、自国通貨売りなどに備え、外貨が不足したときに使う保険のようなもので、これがなくなると、通貨危機が発生しやすくなります。

そうして、この外貨準備は対外債務に合わせた額が必要とされます。中国の場合、表面的な数字だけを見れば、対外債務の2倍近い外貨準備があるので、全く問題がないように見えます。

しかし、実は中国の場合、外貨準備の内容がわからず、実際に使える額が全く見えません。日本の場合、外貨準備のほぼすべてが米国債で構成され、保有者は政府と日銀であるため、全額を為替介入などに利用することができます。

それに対して、中国の場合、米国債は1,2兆ドル程度しかなく、国有銀行保有分が含まれているのです。基本的に、外貨準備というのは外貨をいくら持っているかであり、それが借金であろうとも外貨である限り、外貨準備にカウントされます。

中国では、国有銀行保有分の多くが海外からの借り入れが原資であると思われ、信用不安の際には一気に失われる可能性があります。

ちなみに、中国の対外債務1兆7106億ドルの内、1兆ドル程度が短期の債務とされており、一気に返さなくてはいけなくなる可能性もあります。

そして、中国の外貨準備の内、米国債は1兆2000億ドル程度(米国財務省)しかなく、ドルだけで見ればその差額は2000億ドル程度しかないのである。実際には他国資産をドルに換えることができるので、それ以上の規模になるが、その中身が全くわからないのです。

そして、今回の通貨防衛の介入も非常にイレギュラーな形で行われました。これは中央銀行ではなく、国有銀行がNDF市場(ドル建てデリバティブ)でドル先物を買い、ほぼ同額を現物市場に流す形で行われたのです。

これは中央銀行が自由に使える外貨準備を持っていないことの証左であるといえます。そして、これを続ける限り、外貨準備が失われ続け、通貨危機のリスクは上がってゆくことになります。

為替介入でも、自国通貨売り外貨買いの介入(通貨安)であれば、自国通貨は自由に手に入るため、何の問題もないのですが、通貨防衛のための介入は、他国の通貨を必要とするため限界があります。

そして、この状況から抜け出すには、基礎的条件の改善(対米貿易の拡大など)や通貨スワップによる他国の通貨保証が必要になるわけですが、現在の米中の状況からすれば非常に厳しいといえるでしょう。

そして、それ以外の方法としては、やはり人民元を完全に自由化し、為替介入をせず、人民元を温存するという方法がありますが、この場合、人民元は暴落し、外貨建て債務を持つ企業などの破綻と輸入品の高騰によるインフレと国内の混乱が待っているでしょう。

このように考えると、中国が経済に対するダメージをなるべく軽くし、体制維持を最優先させようとすれば、貿易戦争は避けなければならないです。つまり、中国は市場を開放し、米国産業の「よいお客さん」になるのが最善策です。

しかし、国が破たんするよりはその方が痛みは少ないと考えられます。なぜなら、米中貿易戦争に中国が屈しなければ、次のステージは金融戦争であり、これは米国が圧倒的に有利な戦いだからです。

現在でも、世界の金融市場におけるアメリカの支配体制は続いています。今も世界の債権の約60%はドル建てであり、当たり前ですが、ドルで借りたものはドルで返さなければならないです。つまり、各国の金融機関にとって、ドルが手に入らなくなるということは破綻を意味するわけです。

マカオのバンコ・デルタ・アジアという銀行は、北朝鮮の資金洗浄に関与していることが発覚し、アメリカとの送金契約が消滅、破綻危機に陥り国有化されました。また、フランス最大の銀行であるBNPパリバは、アメリカの制裁対象国との取引を理由に、1兆円近い制裁金支払いと為替関連取引の1年間の禁止を命じられ、大打撃を受けました。

マカオのバンコ・デルタ・アジア

ドル支配体制においてドルが手に入らなければ、石油や天然ガスなど資源取引の決済もできなくなります。国によっては、国家破綻の危機に直面することにもなりかねないです。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれていますが、米国から穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。

2016年、人民元はSDRの5番目の構成通貨として採用されましたが、ドルは米国の通過であるため、人民元がSDR入りしていても、米国かドル決済を禁じれば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

ドルで資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めるだけでしょう。

現在、世界の銀行ランキング(資産額ベース)で中国の銀行が1位、2位、4位、5位を占めており、チャイナマネーは一見強大に見えます。しかし、思い出してほしい。かつて、バブル期には日本のメガバンクが世界を席巻し、そのほとんどが世界トップ10に入っていました。今は、ゆうちょ銀行が20位内と三菱東京UFJ銀行が4位に食い込むのみです。

世界のトップ銀行ランキング

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られてきましたが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなるでしょうか。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうした構造をよくわかっているため、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしているわけです。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっています。

そうして、その動きを必死に否定しているのが日米であり、同時にASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。

そういった世界の流れを鑑みると、米中の軍事衝突で、軍事力はもとより、金融力からいっても中国に軍配があがることはありません。

ただし、米国ではドラゴンスレイヤー(対中強硬派)でさえも、中国と武力衝突するのはあまり現実的ではないとみているようですから、彼らは貿易戦争、そうして金融戦争により、中国の夢を砕くことになるでしょう。

彼らの最終目標は、現在の中国の体制を崩壊させ、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめさせることです。それは、中国の現在の共産党一党独裁、最近では習近平の独裁体制が崩壊することを意味います。いずれ中国はそのような道を辿らざるを得なくなるでしょう。

米国のドラゴンスレイヤーたちは、共和党の中にも民主党の中にも存在します。習近平が独裁政治を目指して体制を整えた現状では、パンダハガー(対中国融和派)の分はかなり悪いです。

米中貿易戦争は未だ始まったばかりですが、息の長い長期のものになることは確かです。習近平は、米国がオバマ大統領だったときに主席になっています。オバマ大統領のときには、オバマの戦略的忍耐で米国は中国が挑発しても、黙って見過ごしてきました。

しかし、トランプ以降の米国はそんなことはないでしょう。中国が自ら、体制を変え、米国が納得するまで長期わたって制裁が続くことになります。いずれ中国は南シナ海、尖閣どころではなくなるでしょう。

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2018年2月7日水曜日

【米国:意見】トランプ政権1年目を考える:退役軍人であり、アフリカ系アメリカ人であり、母親として―【私の論評】トランプ大統領を色眼鏡ではなく等身大で見るべき(゚д゚)!

【米国:意見】トランプ政権1年目を考える:退役軍人であり、アフリカ系アメリカ人であり、母親として

Fox News by Kathy Barnette 2018/01/20】

キャシー・バーネット 写真はブロク管理人挿入 以下同じ
2018年1月20日でトランプ大統領就任一年を迎えました。アメリカの政治において他に類を見なかったこの365日間を振り返ってみました。

2017年1月20日にトランプ大統領が就任の宣誓をしてから多くの事が変わりました。しかし一つだけ絶えず続いている事があります。それは左派、多くの民主党支持者、マスコミ関係者、そして一部の共和党支持者だと称する人々から大統領に向けられる、大統領に対する怒りと誹謗中傷です。未だかつて、これほどに人格攻撃と非難を受けた大統領は殆どいません。

トランプ大統領は、「無能」「人種差別主義者」「精神疾患持ち」「ボケている」「汚職政治家」だと批難を受けました。ロシアと共謀をして選挙に勝利した疑いで捜査が行われていますが、この捜査も長引き終わりが見えないのです。

彼に対する反対はあまりにも病的で、ライター兼コメディアンのジェン・スタッツキー(「Late Night with Jimmy Fallon」「Parks and Recreation」「Broad City」の番組のライター)は「トランプを支持している人は、子供を取り上げられるべき」などとツイートをした位です。


トランプ政権が発足してから1年が経ちました。私は、この国を率いるためにアメリカ国民によって選ばれた彼を支持する事についてよく考えてみました。 黒人女性として、母親として、退役軍人として彼を支持し続ける事は果たして正しい事なのだろうか。批判している人たちが言っているほど彼は果たして酷くて極悪な人なのだろうか。彼のアイディアはいい加減で危険なのか。私が愛するこの国を傷つけているのか。

彼を支持する事によって私について何かいわれるだろうか。これ程嫌われている人を支持する事によって自分の誠実さと信条を曲げる事になるのでしょうか。トランプ支持でありながら良い人間でいる事が可能なのでしょうか。

トランプ大統領のツイートだけではなく政策を吟味したところ、私は大統領を支持しながらも自分の人生を誠実に生きる事が出来ると確信しました。

その理由を教えましょう。

まず黒人女性として、黒人コミュニティにおけるトランプ大統領の貢献はおおむねポジティブなものだと思っています。
2016年にドナルド・トランプ氏に投票した人々同様に、私は彼の選挙集会に何回も出席をしました。これほどに温かく迎えられた事は、今までありませんでした。その晩の間、私の子供たちは親代わりの人、叔父、叔母、従兄弟が出来たかのようで、アメリカ人として誇りと激昂に包まれていました。

これらの個人的な逸話以上に、トランプ大統領が黒人コミュニティに及ぼした影響を示す確実なものがあります。昨年12月の黒人失業率は6.8%に落ちました。これは過去45年間のうち、最も低い数値で、1%も減少しました。つまり、黒人の雇用がおよそ48万件増えたということです。これはただの数値の話以上に、これにより人生が変わった人々の話なのです。

更に、黒人と白人の失業率の差(黒人の失業率と白人の失業率を引いた数字)が3.1%に縮まり、記録上最小となりました。黒人の失業率が白人の失業率と同じになって欲しいかといえば、もちろんそうです。オバマ大統領もそのように望んでいたと思います。ですが、トランプ大統領の元で私たちは正しい方向に進んでいて、人種間の失業率の格差がなくなる事を願っています。

それに加えてトランプ大統領が署名した減税についての政策は、企業によるアメリカへの投資、雇用促進、賃金の上昇を目的としています。それによって、株価は上昇し、100以上もの企業がトランプ政権による減税と大幅な規制緩和によってボーナスや手当を支給する事が出来ました。

これら全ては皆のためになる強い経済へと結びついています。昔から伝わる名言には、「雇用主なくして雇用される側はなし」と「満ちてくる潮は全ての船を浮かび上がらせる」というのがあります。

次に、退役軍人としてトランプ大統領の退役軍人における貢献がポジティブなものだと思っています。

この国では退役軍人が2000万人以上います。非常に残念なこと、一日平均22人の退役軍人が自ら命を絶っています。退役軍人として、この酷い数字は心が痛むものです。健康保険や税の改革では駆け引きが行われてきたものの、VA(退役軍人省)の意見は妨害されませんでした。

退役軍人長官のデービット・シュルキンは、重要な事柄を前進させ、政党間の意見の違いを乗り超える事に成功しました。退役軍人は今までよりも迅速に手当を受け取っています。障害給付金を受け取るのに125日以上待っている退役軍人は611,000人から86,000人に減りました。

復員軍人援護法はほぼ永久的になり、これにより退役軍人はタイミングによる制限を受ける事なく、政府からの支援を受けながら教育を受ける事が出来るようになりました。

更に、トランプ大統領の元で成立された新しい法律によれば、退役軍人省の従業員で成績不振と不始末によって退役軍人の待遇を損ねた場合に解雇する事が可能になりました。退役軍人省はまだ問題がありますが、著しい進歩を遂げているのが目に見えます。これらの政策は良いものであり、決断力に満ちたリーダーシップを反映しています。

最後に、母親としてトランプ大統領の貢献が私の子供たちにとって有意義なものになったと思っています。

安全保障は、夜寝る前に全てのドアの鍵をかけるのと同じくらい重要な事だと思っています。誰が私の家に入るのかを知る権利があるように、誰が私の国に入国するのか知る権利があるのは極めて筋が通っていることだと思っています。

トランプ大統領の70項目にわたる移民制度計画を読みました。母親として、他者を死亡させた罪に問われた人が釈放されるという、時代錯誤の制度を撤廃する事の何が反米的なのか理解に苦しみます。

酒酔い運転の前科がある不法滞在者が起こした交通事故によって、唯一の子供を亡くした母親と話した事があります。私は、同じ母親として、子供を一人でも犠牲にする事は出来ません。だからこそ私は、トランプ大統領が複数の酒酔い運転の前科がある不法滞在者の強制送還が出来るよう、強制送還の条件の拡大を支持する事が恥ずかしいとは思っていません。

反社会的集団のメンバーが、移民としての恩恵を受ける事を阻止する事の何が間違っているのでしょうか。なぜ私たちはそれを税金で賄わなければいけないのでしょうか。私は、南方の国境に壁を作るという案も含めて、トランプ大統領が掲げた70項目の全てが合理的で必要な事だと思っています。アメリカを再び安全な国にするための沢山のステップのうちの最初のステップだと思います。

思い出して頂きたいですが、家の外にいる人々が嫌いだからドアに鍵をかけるのではありません。私たちは、家の中の人々を愛するからこそ家の鍵をかけるのです。それすらしないというのは、私たちに託された義務、すなわち家族と国を守る義務を放棄する事になるのです。

これらの事を踏まえて、私はトランプ大統領を支持しつつ、良き人間であり続ける事が出来るという結論に至ったのです。彼は完璧な人間でしょうか?彼の言動やツイートの全てに満足しているのでしょうか?もちろんそうではありません。他の全ての人間同様に、彼にも欠点はあります。

ですが、選挙というのは完璧な人間を選ぶためにあるのではありません。立候補している人々の中で最も適切な人を選ぶためにあるのです。トランプ大統領在任の一年目を振り返って、2016年の大統領候補者のうち、より良い候補者だったという私の確信は揺るぎません。

【私の論評】トランプ大統領を色眼鏡ではなく等身大で見るべき(゚д゚)!

上の記事、数字などのエビデンスも加えて、まともな記事です。この記事は、米国内でもかなり話題になりました。日本のマスコミも、米国のマスコミの受け売りで、「無能」「人種差別主義者」「精神疾患持ち」「ボケている」「汚職政治家」というような報道ばかりを繰り返しているようです。

しかし、これは、日本国内にみられるように「アベ政治を許さない」というスローガンをかかげるリベラル・左翼の主張とあまり変わりありません。

そうして、米国の場合、大手新聞はすべてリベラル・左派、大手テレビ局はフォックスTVを除いてあとはすべてリベラル・左派という状況であるため、日本よりも偏向しているかもしれません。

日本でも、産経新聞などを読まないで、朝日、読売、毎日新聞だけ読み、その他の情報源はテレビだけということになれば、相当偏向するのは容易に想像がつくというものです。

だからこそ、上のFOXニュースの記事は、日本でももっと読まれるべきだと思いましたので、本日掲載させていただきました。

上のニュースでは、経済や黒人の雇用が良くなっていることが掲載されていましたが、退役軍人の待遇がかなり改善されたのいうのは一つの注目点です。移民政策に関しても、オバマ時代には似たようなことをしていても何も言われなかったのが、トランプ大統領になると米マスコミはヒステリックに批判を繰り返すようになりました。

実は、軍人にはトランプ大統領の支持者が多いのです。軍人の中には、ヒラリー夫妻を蛇蝎のごとく嫌う人々も多いです。このようなこともあり、トランプ大統領は、退役軍人の待遇改善を強力に推進したのでしょう。

汚れ放題のヒラリー・クリントンは無視し、トランプの服の
シミを拡大して見ているメディアを風刺する米国の風刺画
1月20日、トランプ政権が誕生してから1年が経過しました。日本ではトランプ氏の過激な言動や「ロシアゲート疑惑」が報じられることが大半で、経済面等はあまり報道されません。大規模なインフラ投資や減税など、選挙中に訴えていた公約がどれほど進行しているのかがよくわからなくなっています。実際のところ、トランプ大統領になってから米国の経済はどのように変化したのでしょうか。

まず「大規模なインフラ投資を行う」という公約については、現時点では計画すらも立てられていません。議会の多数派にインフラ投資の法案を通すように「工作」している兆候も見られません。ちなみに「メキシコとの国境に壁を作る」という誰もが耳を疑った公約は徐々に進んでいて、'17年10月にいくつかの壁の「試作品」が公開されました。

次に「大型減税を行う」としていた点については、一定の成功を収めています。議会は'18年から、35%だった法人税率を21%に引き下げる大型減税法案を可決しました。個人所得税の最高税率も39・6%から37%に下げ、控除額も2倍に増やします。

それが達成されれば、全体の減税規模は10年間で1・5兆ドル、年間円換算で17兆円となります。この減税規模は、過去最大とされた'01~'03年の「ブッシュ減税」を上回るものとなります。

国内の経済状況は比較的良好です。実質経済成長率は3・2%('17年7~9月期)、失業率は4・1%('17年12月)、インフレ率は2・1%となっていますが、1年前にはそれぞれ2・8%、4・7%、1・3%だったので、文句をつけられないほど調子がよいです。

CPI(物価指数)、Civilian Unemployment Rate(失業率)、
10-Yr.Treasury Rate(10年国債金利)、IP(鉱工業指数)、
Payroll Employment(雇用者増加数)
部分的にはオバマ政権の成果とも考えられますが、その好調さを維持してきたトランプ政権の経済運営能力は十分にあるといえます。

今後大型減税が実施されれば、堅調な経済はさらに長く維持される可能性が高いです。仮に連邦準備銀行(FRB)が利上げをしても耐えられるだけの力をつけているでしょう。

株価については、昨年1月20日のニューヨーク・ダウ平均株価は19827・25ドルでしたが、今年1月19日には26071・72ドルと1年間で3割以上も上昇しました。

ただし、ご存知のように、最近株価はかなり落ちましたが、これは健全な調整とみるべきでしょう。これについては、ここで掲載すると長くなるので、以下にこれについて詳しく説明しているサイトの記事のリンクを掲載します。
米国の株価下落は、健全な調整
いずれこの株価の下落もおさまり、一定のところで落ち着くものと思われます。

とはいえ「口は災いの門」のようで、トランプ大統領の支持率は1月18日時点で37%と決して高いとはいえません。それでもトランプ大統領の支持層は強固なため、一定の支持率は維持できています。これはほかの大統領にはなかった特徴です。

トランプ政権は、対外的な評判もあまり良くないです。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やパリ協定からの離脱は明らかにアメリカのエゴを見せつけるもので、世界からの顰蹙を買いました。そのトランプ大統領が、最近ではTPPに復帰する可能性を示唆しています。

アメリカ経済の好調のメリットをもっとも受けるのは日本です。世界から好まれていないトランプ政権ですが、期待したい一面も備えています。

今後国内景気の安定をこのまま継続できれば、トランプ政権はまずまずと言って良く、これから比較的安定した政権となることが十分考えられます。

いずれにしても、米国のリベラル・左派の撒き散らすトランプ批判をそのまま垂れ流す日本のメディアの論調をそのまま信じ込んでしまっては、物事の本質を見誤ってしまうことになります。

無論トランプ大統領も人間ですから、強みも弱みもあります。トランプ大統領を色眼鏡ではなく等身大で見るべきです。そうして、長所に着目すべきです。これは、マネジメントの世界でも同じことがいえますが、人を見るときには、強みに着目すべきなのです。これは、経営者をみるときも、大統領をみるときも同じことです。



ドラッカーは経営者の資質について以下のように語っています。
いかなる教養を有し、マネジメントについていかなる教育を受けていようとも、経営者にとって決定的に重要なものは、教育やスキルではない。真摯さである。(『現代の経営』)
経営者にとってできなければならないことは、そのほとんどが学ぶことができます。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、初めから身につけていなければならない資質があります。才能ではありません。真摯さです。
経営者は人という特殊な資源とともに仕事をします。人は共に働く者に特別の資質を要求します。
経営が本気であることを示す決定打は、人事において断固人格的な真摯さを評価することです。リーダーシップが発揮されるのは人格においてであり、人の範となるのも人格においてだからです。
ドラッカーは、真摯さは習得できないと言います。仕事に就いたときに持っていなければ、あとで身につけることはできないといいます。
ごまかしはききません。一緒に働けば、特に部下には、その人間が真摯であるかどうかは数週間でわかります。
部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法などほとんどのことを許します。しかし、真摯さの欠如は許しません。そのような人間を選ぶ者を許しません。
人の強みではなく弱みに焦点を合わせる者をマネジメントの地位につけてはならない。人のできることは何も見ず、できないことはすべて知っているという者は、組織の文化を損なう。(『現代の経営』)
トランプ大統領の弱みにばかり、焦点を合わせ米マスコミは、米国文化を損なうことに気づいていないようです。というより、米マスコミは過去数十年にわたり、米国の伝統的文化を破壊してきました。そうして、それが善であるかのように思い込んでいます。

トランプ氏は米国の伝統文化の象徴的存在です。だからこそ、米マスコミはこれを破壊したいのです。だからこそ、徹底した個人攻撃を行うのです。

日本のマスコミのトランプ報道など、大統領選挙のときの失敗報道から反省することもなく、一歩も前に進んでいないとみるべきです。

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