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2018年10月21日日曜日

【日本の解き方】財務省の「パワー」の源泉は税務権力 政権・政治家は怯え…メディアや財界も事を荒立てず―【私の論評】安倍政権は、国税庁と財務省を分離し、互いに別の省庁の下部組織に組み込め(゚д゚)!

【日本の解き方】財務省の「パワー」の源泉は税務権力 政権・政治家は怯え…メディアや財界も事を荒立てず

写真はブログ管理人挿入 以下同じ

消費増税をめぐって、財務省は政権やメディアなどにどうやって力を及ぼしているのか。政権は財務省の意向をはね返すことはできないのか。

テレビなどで筆者が財務省のパワーについて話をすると、「政治家が情けないからだ」と言われることが多い。形式的には正論であるが、その実態をあまり知らないのだろう。

財務省OBの筆者は、財務省のパワーの源は税務権力だと考えている。税務権力は軍事力、警察権力と並んで、国家権力の典型である。こうした国家権力はいうまでもなく強力で、政治学や社会学では軍事力や警察権力はしばしば「暴力装置」と呼ばれる。学問の世界では税務権力は暴力装置から外されることが多いが、筆者は含まれていると考える。

一般的に、政治家、官僚、一般人の間では「じゃんけんの関係」が成り立つといわれる。一般人は選挙があるので政治家に強く、政治家は官僚の上に立つので官僚に強く、官僚は許認可の実務を行うので一般人に強いという「三すくみ」の関係になっているという説明だ。

しかし、財務省はじゃんけんの例外だ。というのは、外局の国税庁を事実上、支配下に置いているからだ。同庁の国税権力を背景とすれば、政治家を脅すことも可能になる。

国税庁

筆者の例であるが、若いときに地方の税務署長をしていた。そのとき、選挙を控えた政治家に税金の督促状が筆者名で出された。この督促状は自動発信だったことを筆者は全く知らなかった。

ところが、その政治家からいきなり筆者のところに電話があり、すぐ金を持っていくというのだ。筆者は事実を知らなかったし、リークするつもりもなかったが、政治家はかなり狼狽(ろうばい)していた。これでわかるように、税務権力は政治家を脅せるのだ。

軍隊や警察はどうかといえば、独立した組織があり、その権力行使は抑制的である。しかし、国税庁の場合、完全に独立しておらず、財務省の下部機関になっている。これは本来の姿ではないが事実だ。

独立した組織なら、国税庁長官には国税庁キャリアがなるべきだが、戦後は一貫して財務省キャリアが就任しているのは、国税庁が財務省の下部機関(植民地)となっていることを示しているといえるだろう。

この税務権力は、マスコミ対策にもかなり有効だ。マスコミには定期的に税務調査が入り、交際費などについて徹底的に調査される。調査された側では、財務省に「忖度(そんたく)」する人も出てくるというのが実態である。検証のしようがないことではあるが、マスコミなどで財務省に不利な発言をすると税務調査が厳しくなるという有識者もいる。

もちろん財界も税務調査に加え、法人税減税や租税特別措置などもあるので、財務省と事を荒立てない方が得策と考える人が多い。

こうしたパワーを持つ財務省を政権・政治家も侮れない。財務省は税務権限の他に、人的ネットワークも凄く、政治家は一目を置かざるを得ないという現状もあるのだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍政権は、国税庁と財務省を分離し、互いに別の省庁の下部組織に組み込め(゚д゚)!

冒頭の記事で、高橋洋一氏は、「政治学や社会学では軍事力や警察権力はしばしば「暴力装置」と呼ばれる。学問の世界では税務権力は暴力装置から外されることが多いが、筆者は含まれていると考える」としています。

税務権力、すなわち現在の日本の国税庁が暴力装置とは、どういことでしょうか。まずは、国税庁には徴税権があること、納税を適正に行わない個人や組織に対して国税庁は強制調査をする権限があり、それで適正に納税が行われていない場合、後から追徴課税をすことができます。

よくテレビでも、ドラマなどて国税庁による査察のシーンが放映されたりします。以下にその典型的なものを掲載しておきます。



国税庁の査察は拒否することはできません。査察官はピストルなどの武器は携行しないものの、こうした強制調査ができる権限か与えらています。これは確かに「暴力装置」の一種と言っても良いでしょう。

そうして、大きな問題なのが、こうした強制調査権を持つ国税庁が財務省の下部組織であることです。

これは、どういうことかといえば、わかりやすく言うと、強制捜査のできる組織が、財務省の下部組織にあるということであり、強制捜査は財務省の意向でもできるということを意味しています。これは、脱税するしないは別にして、すべての個人や組織にとっては、財務省にはなかなか逆らえないと認識させるのに十分です。

さらに、国税庁は徴税する権限があります。それと、財務省は国の財政を計画したり実行する権限があります。これが直接結びついているということは組織上全く良いことではありません。

そもそも、徴税する部署と、国の財政の計画を立案したり、実行に絡む部分が一つの組織になっているということは組織論的に言っても決して良いことではありません。

これは、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!
財務省(当時大蔵省)57年入省組の記念写真 佐川氏、福田氏の他片山さつき氏も・・・・・

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみ引用します。
統治と実行の分離は、民間の大企業ならすでに実行されていることです。ただし、大企業に属する人でも、統治に関わる人はトップマネジメントであり、少数に限られますし、中小企業や小規模企業だと、程度の差はありますし時期にもよりますが、企業の仕事のほとんどが実行であり、統治の割合はかなり低く、それこそドキュメント化されることもなく、経営者の頭の中で行われていることが多いです。 
だから、企業は無論のこと政府の統治機能についてもあまり一般の人に理解されていません。学校でもあまり教えられていないようです。大企業でもこれを理解しないトップマネジメントが存在し、度々不祥事を起こしています。 
理想的な政府を目指すなら、まずは財務省の解体により、現在の財務省の統治企画部門と実行部門を完璧に分離し、現在の財務省の統治機能は、財務省から完璧に切り離し政府が担うようにすべきなのです。そうして、なぜ最初に財務省なのかといえば、改革ということでは、財務省が本丸だからです。最初に財務省を改革してしまえば、後は右に習えです。 
そうして、私は現在の財務省が堕落した真の要因は、誤った組織設計や制度設計にあるのであり、ある意味官僚は犠牲者でもあると思います。まさに、高橋洋一氏が言うように、財務省の絶大な権限が、新卒の時には希望に萌えた善良だった彼らをねじ曲げているのです。
このようにこの記事では、財務省が統治と実行を同じ組織が実行していることを指摘しました。統治と実行部分は現在の企業組織、それも大企業であれば、会社法などで様々な規則があり、統治と実行部分が分離されていなければ、上場はできません。

実行部分でも、企画をする部門と、実行する部門では明確に分離されていなければ、やはり上場はできません。日本の財務省は民間組織よりも遅れた組織なのです。

たとえば、上場企業では財務部門と経理部門は明確に分かれて別組織になっていなければなりません。

経理部門は、会社の売上や支払の記帳や請求書を発行する部署となります。小さな未上場企業などでは、財務部と一緒で財形部ということもあります。ただし、経理と財務ではやることが違います。厳密には、経理はお金廻りの書類を扱います。主に伝票や請求書の処理と各種帳票への記載、さらには主計と呼ばれる財務諸表等などをまとめる等の仕事が主な仕事となります。

財務部門はお金を扱いますが、財産の管理と考えた方が良いでしょう。経理が処理した伝票をもとに支払をしたりお金を受け取る等の管理をしています。また、工場の設備や不動産などの管理も行っている場合もあります。わかりやすく言えば出納係りといっても良いでしょう。現金も財産ですから、その出し入れは財務部の管轄です。銀行からの借り入れを行う場合などは、財務部が窓口となります。

経理部門と財務部門が分かれているのには、理由があります。大きな点は不正を防ぐためということもあります。一緒の部署であれば、伝票を起票して支払をしてしまうということが部署内で完結してしまいます。そういったことは、他からの調査が入らないとわかりません。そのため、経理部門と財務部門は分かれています。

以下に、経理と財務の内容を表にまとめておきます。


財務省と、国税庁が同一組織であるということは、企業でいえば、経理部門と財務部門とが同一組織であるのと同じくらい以上なことです。これは、不正を助長しているようなものです。

強制捜査権まで持つ、徴税の実行組織である、国税庁は、発足当時から大蔵省の下部組織でした。国税庁は1949年(昭和24年)6月1日 - 旧大蔵省の外局として設置されました。この時点で、日本政府は組織論的な間違いをおかしていたことになります。

2001年(平成13年)1月6日  中央省庁再編により、国税庁は財務省の外局とななりました。長官官房国税審議官は長官官房審議官に改称となりました。

しかし、結局は国税庁は財務省の外局となりました。組織改編があってもこれでは何も変わりありません。本来は、この時点で、国税庁と財務省は全くの別組織にすへきだったでしょう。

そうして、このことが、政権・政治家は財務省に怯え、メディアや財界も財務省批判で事をで荒立てず、財務省がフェイクと言っても良い財政再建のため増税の必要性など訴えても、誰もそれに真っ向から反対しないという異常事態を生み出しているのです。

まずは、組織上、国税局を財務省から引き離し、それだけだと結局何も変わらないので、国税局を他省庁の下部組織に組み込み、財務相も国税庁が組み込まれた省庁と別組織の下部組織として組み込むべきでしょう。中途半端に他省庁に組み込んだりすると、財務相は他省庁を植民し、結局元通りになります。

安倍政権には、憲法改正だけではなく、このような政府組織の改革・改善も行っていただきたいものです。現在の財務省には、政府の下部組織という本来の地位を遥かに超えた権限が集中しています。これをなんとかしないと、政治主導など永遠にままならないていです。安倍総理は、将来の政府が財務省の軛から開放されるように、任期中にぜひとも、財務省と国税庁の完全分断も行って頂きたいです。

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2018年6月2日土曜日

【日本の解き方】イタリア・ショックの本質はユーロと政治混乱への不安 離脱でも残留でも茨の道か―【私の論評】国家を完全統合して財政・金融政策まで一本化するか、再び分離して各国の自由を認める以外に方策はない(゚д゚)!

【日本の解き方】イタリア・ショックの本質はユーロと政治混乱への不安 離脱でも残留でも茨の道か 

 イタリアの組閣が難航し、ユーロが急落する場面があった。

 発端は3月に行われた総選挙だった。少数政党が乱立するイタリアでは、下院(代議院)の定数630のうち「中道右派連合」が265、「五つ星運動」が227、「中道左派連合」が122、その他が16となり、過半数を取った政党はなかった。

セルジオ・マッタレッラ大統領

 中道右派連合の中では、最多議席を獲得した「同盟」の発言力が強く、「五つ星運動」との間で組閣名簿を作成していた。その名簿の中には、ユーロ懐疑派の経済学者、パオロ・サボナ氏が経済相候補に挙げられており、それをセルジオ・マッタレッラ大統領が拒否した。

 イタリアの大統領は国家元首だ。50歳以上と年齢制限があり、20州の代表58人と上下両院合同会議で選出される。通常は象徴的な存在と考えられているが、重要な権限が付与されているので、今回のように政治的に大きな意味を持つこともある。

 ただし、今回のマッタレッラ大統領による拒否はちょっとやり過ぎだ。総選挙によって選ばれた五つ星運動と同盟が合意している組閣名簿を大統領が拒否するというのは、民主主義の否定にもつながってしまう。

 同盟は右派、五つ星運動は左派の流れなので、その経済政策は相容れないところが多いとされる。ともにユーロ離脱という一点でつながれていても、実際に連立政権運営をさせてみれば、いずれ矛盾が出てくるので、それを待っていてもよかったのではないか。

 マッタレッラ大統領は、国際通貨基金(IMF)元高官のカルロ・コッタレリ氏を首相に暫定内閣を発足させようとしたがうまくいかず、5月31日になって五つ星運動と同盟が次期首相候補として推薦していた法学者のジュセッペ・コンテ氏を再び首相に指名、同氏は組閣名簿を提出し承認された。6月1日に宣誓就任式が行われ新政権発足となる。

ジュセッペ・コンテ氏

 ひとまず政治空白は回避されそうだが、ユーロ離脱問題は引き続きくすぶっているのが実情だ。

 イタリア2年国債は、5月15日まで▲0・1%程度のマイナス金利であったが、最近では2%台半ばまで上昇している。イタリア国債とドイツ国債の金利スプレッド(差)も1・5%から2・8%へと拡大している。つられてスペイン国債などとドイツ国債との金利スプレッドも拡大傾向だ。これらの金利スプレッドは、ユーロの経済力というよりユーロが存続できるかどうかを占う指標となっており、その観点からすると、イタリアの政治混乱がユーロ危機の再来とみられているわけだ。

 日本のマスコミでは、イタリアはすぐに悪い財政事情と関連付けられ、左派と右派のポピュリズムによる減税や社会保障費支出による財政悪化ばかり強調される。しかし、イタリアでの出来事の本質は、ユーロ離脱という大きな政治課題を控えて、政治混乱による将来不安だ。

 イタリアがユーロ離脱をしなくても、イタリア国債の欧州中央銀行によるテコ入れには時間がかかる。もしユーロ離脱となると当面、大混乱になる。どちらも茨の道になりそうという悲観が当分の間支配的だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】国家を完全統合して財政・金融政策まで一本化するか、再び分離して各国の自由を認める以外に方策はない(゚д゚)!

PIGS

PIGGS危機(※財政状況がとりわけ厳しいポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字)以降の経済危機から立ち直れない南欧諸国、デフォルトしたギリシャだけの問題ではありません。イタリアもユーロシステムの持つ本質的な欠陥から、自立した金融政策が取れず、財政出動にも制限がかけられているために、失業率が高止まりし、国民の不満が爆発しています。

『5つの星運動』のロゴ

この様な状況で力をつけてきたのが、ポピュリズム政党である『五つ星運動』と右派政党である『同盟』です。両者ともに、イタリアの景気の悪化をEUやユーロシステムにあるとし、温度差はあるものの、反EUやユーロ離脱を謳い国民の人気を集めました。しかし、選挙の結果、どの政党も過半数をとれず、政権樹立が出来ない状態が継続していました。

『同盟』のロゴ

イタリアの内閣は、議会から選ばれた大統領(任期7年)が、首相を指名し、組閣を要請、首相は閣僚名簿を作り、大統領が任命、10日以内に議会の承認を得て発足する形になっています。本来、これは形式的なものですが、今回、大統領は五つ星運動と同盟が用意したユーロ懐疑派の経済大臣の承認を拒否し、親EU派のコッタレッリ氏を首相に指名しました。

これに対して、五つ星運動と同盟は強く反発し、たとえ、コッタレッリ氏が組閣しても、議会で承認しないとしたわけです。このため、再選挙の可能性が一気に高まったのです。しかし、誰もこれ以上の混乱を望んではいません。話し合いなどの結果、五つ星運動と同盟が新たな経済相候補を選任することで、一応の危機は回避されました。

今回は危機を回避できましたが、この問題はEUとユーロシステムの大きな欠陥が表面化したものであり、再び同様の問題が発生する可能性が高いのです。EU、特にユーロシステムは、本来国家の主権である金融政策と通貨発行権をECBに委譲しています。

この為、国の経済状態に合わせた経済政策が取れないのです。通常の財政金融政策では、景気が悪化したら金利を下げ、財政出動を行う。景気が過剰になればこの逆を行い調整するわけですが、景気の良いドイツなどに引きずられる形で有効な財政政策が取れない状況が継続しているのです。

本質的にこの問題を解決するためには、国家を完全統合して財政・金融政策まで一本化するか、再び分離して各国の自由を認めるかしかありません。国家を完全統合する場合、各国の主権が失われることになり、各国の議会も形骸化することになります。また、統合後の国家の財源の分配をめぐっても大きな対立が生まれることになります。

ドイツなどの富裕国の税収を貧困国に分配するとなれば、ドイツ国民が反発するでしょうし、分配されないとすれば統合の意味がありません。だから、これまで完全統合の話は出るものの前に進むはずもありませんでした。

EU圏内の国々が民主主義国である以上、これをすべての国の国民が認める可能性はゼロに近いです。このような状況からのEUの打破を謳う人たちが力をつけてきたのです。

さて、以上のような状況が続く限り、EUは没落していく運命にあると考えられます。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
第2四半期ユーロ圏GDP、初のマイナス成長-黄昏EUの始まりか?
この記事は、2008年8月15日のものです。当時、第2四半期のユーロ圏のGDPが初のマイナス成長になったことを受けて、書いたものです。

 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、各国の経済レベルなどが異なりすぎるという部分のみ以下に引用します。

人為的にたとえ一つの経済圏を作ったとしても、それを構成している各国の経済レベルがあまりにも違います。少し考えれば判ることですが、ポルトガルとスゥエーデンの経済はかなり異なります。ポルトガルの経済は未だ労働集約的ですが、イギリス、ドイツ、イタリアなどの先進国では資本集約的な経済になっています。 
今回のスペインや、イタリアの景気減速は、土地バブルの崩壊によるところが大きいですが、ドイツでは土地バブルの上昇はなく、輸出の不振が大きく響いてるなど、同じ不振といっても原因がまちまちです。 
そのため、EU圏内で、不振対策をしようということになると、ごく標準的なものにならざるを得ず、一旦不況に陥れば、回復するまで結構時間がかかるものと思います。
EUのように、ヨーロッパ全体が団結して、大きな影響力を持とうという試みは、大昔からありました。その起源はローマ帝国にまで遡ります。ローマ帝国が栄えていたころは、現在のイギリス、スペイン、フランス、ドイツなど現代のEU圏にある経済大国がすべてローマ帝国の版図に編入されていました。 
だから、ヨーロッパの人たちには、大昔からローマ帝国への憧憬の念や、憧れの念がありました。そのため、ローマ帝国滅亡より、機会があれば一致団結しようとしました。これは、古くは神聖ローマ帝国にまで遡ります。

その後いろいろ、試みられましたが、結局は成立しませんでした。では、かつてのローマ帝国のように一国による他国への侵略による統一も考えられましたが、ナポレオンのヨーロッパ征服、ヒトラーのナチスドイツによるヨーロッパ征服なども、ことごとく失敗しました。
 
しかし、これらの試みはすべて失敗して水泡に帰しました。おそらく、これからも無理だと思います。だから、私は、EUも結局は成功しないと思います。長い間には必ず失敗し没落していくものと思います。
ヨーロッパの人々には、ローマ帝国のように団結すれば、経済的にも軍事的にも強くなれるという、ローマ帝国に対する強い憧憬があります。

しかし、憧憬は憧憬に過ぎないのであって、ある地域が一つにまとまるためには、価値観の共有はもとより、多少の凸凹があるのはかまわないですが、経済的にも同水準でなけければならないです。

神聖ローマ帝国の版図


たとえば、日本国内であれば、東京は賃金が高く、北海道や沖縄は低いですが、かといって10倍近くも違うなどということはありません。しかし、EU圏内の違いは10倍近くもあります。

最低賃金は毎年増額していくものですが、2015年にドイツ、アイルランドでは減額されています。ルーマニアでは14%増、ラトビア11%増、リトアニアも11%増、イギリス11%増、ブルガリア10%増となっています。これにイギリスが加わっているのも、為替の影響です。

最低月収に関しては、ルクセンブルクがトップで1923ユーロ、ブルガリアは194ユーロでした。EU28カ国のうち22か国は最低賃金が政府で決められています。大まかにいうと、北欧、EU先進国、スイスは非常に賃金も高く安定しています。

EU圏の最低賃金


アイスランドは2008年の金融破たんしていますが2015年には北欧とやや同レベルの賃金まで回復しています。しかし、東欧諸国は先進国の50%の以下の水準です。最下位のブルガリアは1.13ユーロ。

このようにEU諸国内で現在も大きな格差があることは否めないです。ちなみに、2015年度の日本の最低賃金は全国平均で798円(時給)、約6.93ユーロです。(2016年11月7日現在:1ユーロ=115円)。


特に各国で経済水準が違いすぎれば、今日のようなことになるのは、最初から目に見えていました。

やはり、経済的には、国家を完全統合して財政・金融政策まで一本化するか、再び分離して各国の自由を認め、そのかわりEU圏内だけは、一国の国内とまではいかなくても、EU以外の国々との貿易よりもかなり自由度の高い貿易をする、ということで、EU圏全体としての経済的繁栄の道を模索する以外に方法はないと思います。

また、安全保障の面では、EU全体で統一した動きをとることによって、身近なロシアの脅威に対抗するということもこれから重要になってくることでしょう。

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