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2020年4月16日木曜日

米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ―【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!

米軍コロナ禍、その隙に台湾を恫喝する中国の卑劣さ
日本にも迫る中国海洋戦力による危機

台湾海峡を通過中の米海軍イージス駆逐艦「バリー」(写真:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

前回の本コラム(「米空母『コロナ感染』でチャンス到来の中国海軍」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60070)で取り上げたように、南シナ海で対中牽制作戦を実施していた米海軍空母「セオドア・ルーズベルト」は艦内で新型コロナウイルス感染が発生したため急遽グアム島の米海軍基地に撤収した。

 作戦中断ならびに乗組員上陸措置を巡ってセオドア・ルーズベルト艦長のブレット・クロージャー大佐とトーマス・モドリー海軍長官代理をはじめとする海軍指導部が衝突し、クロージャー大佐は艦長を解任されてしまった。しかし、モドリー海軍長官代理に対する批判が湧き起こり、モドリー氏は辞職に追い込まれた。

 現時点(4月13日)で、およそ5000名のセオドア・ルーズベルト乗組員のうち感染が確認されたのはクロージャー大佐を含めて600名(全乗組員に対するPCR検査は現在も継続中)に上る。70機の航空機を積載した空母セオドア・ルーズベルトは完全に戦列を離脱してしまった。

 新型コロナウイルス感染のために緊急出動が不可能となってしまっている米海軍空母はセオドア・ルーズベルトだけではない。横須賀を母港としている「ロナルド・レーガン」、シアトル郊外のブラマートンで出動調整中であった「カール・ビンソン」と「ニミッツ」の3隻の乗組員にも感染者が発生している。

 このように大平洋艦隊の空母が4隻も新型コロナウイルス感染に見舞われたため、当面の間は東アジア海域に米海軍空母打撃群が緊急出動することは不可能な状況となっている。そのため米海軍などでは、「中国軍が米海軍空母戦力の不在につけ込んで、台湾を武力恫喝したり軍事攻撃するようような事態が起こらなければ良いのだが」と真剣に危惧している。

台湾東岸沖に中国の空母艦隊が接近

 米海軍がそうした危機感を抱くことはけっして杞憂ではない。実際に中国軍は台湾周辺で活動を活発化させている。

 4月10日午前、中国本土からH-6爆撃機、KJ-500早期警戒管制機、それに4機のJ-11戦闘機という計6機の中国空軍機編隊が、バシー海峡上空を台湾南端沖から台湾東岸沖へ抜けて、西太平洋上空での遠距離機動訓練を実施した。台湾空軍機が緊急発進し、監視活動を行ったところ、往路と同じくバシー海峡上空を経て中国大陸へ戻っていった。

中国福建省と台湾の間が台湾海峡。台湾とフィリピン(正確にはマヴディス島)の間がバシー海峡

 中国空軍機が中国へ取って返したのと入れ替わりに、アメリカ空軍EP-3E電子偵察機が台湾南端の南シナ海沖上空で情報収集活動を実施した。また、その日の夕方、アメリカ海軍第7艦隊に所属し、横須賀を母港としている米海軍イージス駆逐艦「バリー」が、中国軍による台湾周辺上空や海域における威嚇的行動を牽制するために、台湾海峡に北側から進入し南下を開始した。すると中国海軍はミサイルフリゲート「南通」を派遣して、バリーの追尾を開始した。

 バリー(および南通)が台湾海峡を南下中の4月10日夜7時頃、長崎南西沖東シナ海を南下する中国海軍の空母艦隊を海上自衛隊駆逐艦「あきづき」とP-1哨戒機が確認した。空母艦隊は空母「遼寧」、052D型ミサイル駆逐艦2隻、054A型ミサイルフリゲート2隻、そして901型高速戦闘支援艦「呼倫湖」の6隻で編成されていた。

中国海軍「遼寧」(写真:統合幕僚監部)

 4月11日、東シナ海を南下してきたその空母艦隊は沖縄本島と宮古島の間のいわゆる宮古海峡を西太平洋に抜けた。南下してきた中国艦隊は南西方向へ転進し、バシー海峡方面へと向かった。

 台湾東岸沖に中国空母艦隊が接近してきたため、台湾海軍では厳戒態勢が発令され、軍艦が出撃準備を開始した。それとともに台湾軍当局は台湾市民に向けて、「わが軍は台湾周辺の空域と海域に対する警戒態勢を固めている。台湾市民は安心してください」とのメッセージを発した。

 台湾東岸沖をゆっくりと南下した中国空母艦隊はバシー海峡を抜けて南シナ海へと抜ける模様である(4月13日時点で公式確認は取れていない)。

東アジア「唯一」の空母で台湾を恫喝

 東シナ海を南下し南西諸島島嶼線を抜けて台湾東岸を回り込んでバシー海峡を南シナ海へと向かった中国海軍空母「遼寧」は、現時点において東アジア海域で作戦行動を実施中の「唯一」の航空母艦である。

 上記のように東アジア海域に展開している米海軍空母セオドア・ルーズベルトとロナルド・レーガンはともに新型コロナウイルス感染のために緊急出動ができず、このほかの米大平洋艦隊空母も台湾・日本周辺海域に急行できる状態ではない。

 佐世保を母港としている米海軍強襲揚陸艦「アメリカ」は、軽空母としての運用は可能であるが、現在までのところ運用可能な艦載機F-35Bは最大で13機といわれている。したがって、練習空母の域を出ていないとみなせる「遼寧」に対してすら“空母”といえる状態ではない。

 もちろん中国海軍が空母艦隊を台湾東海岸沖に展開させて台湾を軍事攻撃するような愚劣な作戦を実施することはほとんどあり得ないが、現時点において東アジアで「唯一」の航空母艦を台湾周辺海域で航行させるということは、明らかに台湾に対する恫喝ということになる。

 実戦における航空母艦の威力に関しては、アメリカ海軍内においても疑義が生じてきている。だが、航空母艦という強力で巨大な軍艦を派遣することの政治的意義は、依然として強いのである。

 実際、中国軍当局者たちは、「中国軍航空機や艦艇による台湾周辺での各種機動訓練は、台湾分離独立分子に対する斬首作戦ならびに台湾独立分子を援助しようとする外国勢力の介入を阻止するための抑止効果を期待してのものである」と繰り返し述べている。

 そして「このような各種訓練を繰り返すことにより、台湾独立分子は自らの企てが無謀であることと、もはや外国勢力による効果的な支援は期待できないことを悟るであろう。そして、そのように独立分子が目を覚ますまで、この種の訓練は繰り返されるし、さらに強化されることになる」と警告している。

危機感を共有しなければならない日本

 確かに中国側が宣伝しているように、少なくとも現時点においては、アメリカ海軍による強力な台湾支援は極めて厳しい状況にある。また、かつてはアメリカ軍や台湾軍が僅かながらも期待していた日本による何らかの支援も、新型コロナウイルスに対する日本政府の危機感のなさや無為無策から判断すると、そもそも期待することが誤っていたと考えざるをえない状況に陥っている。

 とはいっても、台湾に対する軍事的危機は日本にとっても全く同様の危機である。日本にはCOVID-19だけでなく中国海洋戦力による危機も差し迫っていることを、日本政府・国会は直視しなければならない。

【私の論評】東アジアで失敗続きの中国は、今後軍事的挑発をエスカレートし、台湾武力奪取の可能性大(゚д゚)!

米軍もコロナ感染で深刻なダメージを受けています。しかし、中国の人民解放軍もダメージを受けているはずです。

中国ウイルスは相手を選びません。中国人民解放軍内にも感染が広がっている気配があります。護衛艦や国産空母を備え、世界に海洋覇権を打ち立てようという解放軍も、ウイルス相手では勝手が違うのかもしれないです。

湖北省孝感市の解放軍空軍降兵軍保障部の軍官に新型肺炎感染が確認されたのは1月25日、すぐさま同じ部隊の200人が隔離されたと1月27日に香港蘋果日報が報じています。孝感市は武漢から70キロ離れた小都市です。

湖北省は解放軍唯一の空軍降兵軍(空降兵15軍)が配置され、武漢全体で5000人以上の兵士を有する。感染の恐れのある兵士たちは軍用機倉庫に隔離されたといいますが、そこは暖房設備もなく外と気温がそう変わらず、劣悪な環境であると、香港に拠点のある中国人権民主化運動情報センターが指摘していました。

その後、軍内の感染状況についてはほとんど情報がありませんでしたが、解放軍報が2月17日に、東部戦区の多くの軍官兵士が隔離監察を受けており、その中には新型ミサイル護衛艦「常州」艦長・余松秋も含まれていると報じていました。

小さな記事ではありますが、解放軍内で新型コロナウイルス感染が起きていることを公式に認めた記事です。過去、エイズやSARSの感染が軍内で発生したときも、解放軍内の感染状況は国家安全にかかわる問題として公表してこなかったことを考えると、この新型コロナウイルス感染はかなり大規模なものではないか、という憶測も流れています。

「常州」は、解放軍艦艇として初めて紅海での船舶救援オペレーションを成功させ、映画「オペレーション:レッド・シー」のモデルともなった解放軍・東海艦隊のエース艦です。感染が発生してからは厳格な管理、体温測定と消毒、隔離措置などを行い、今年の訓練、任務においての影響はない、としています。また余松秋艦長は招待所で1月30日から隔離監察を受けており、隔離先で訓練の難題を研究していたとされています。

また、中国人権民主化運動情報センターによれば、国産空母「山東」からも1人の軍人の感染が確認され100人が隔離中といいます。山東は大連港でメンテナンス中であり、3月に海南島の三亜軍港に戻る予定でしたが、帰港は遅れるといいます。

ちなみにCCTV4(国際チャンネル)で放送された最近の山東の様子は乗員全員がマスクをつけ、密閉式の完璧管理で防疫対策を実施しており、「死角なし、感染者ゼロである」と報じています。

このほか、武漢にある海軍工程大学が1月初め封鎖されたという情報が一部で流れています。

中国人民解放軍とて、中国ウイルスには相当を手を焼いているようです。では、中国人民解放軍もコロナ禍で手を焼いている最中に、東アジアで「唯一」の航空母艦を台湾周辺海域で航行させてまで、台湾に対する恫喝するのでしょうか。

その理由は以前もこのブログに述べた、台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことにあると思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
新型コロナが証明した「独立国家」台湾―【私の論評】台湾が独力で中国ウイルス封じ込めに成功したことは、その後の世界に大きな影響を与える(゚д゚)!
flickerより Robin Huang 台湾国旗柄のビキニの女性 写真はブログ管理人挿入
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になりました。
もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。
中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。

これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。

そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。

そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。

考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。

中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、中国や米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。

香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。

中国官僚のごまかしをよく知っている香港人が、2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の教訓をしっかりと心に刻み、徹底的な対策をしたことも効果的でした。

中国は、中国ウイルスで、台湾、香港、日本がかなり痛めつけられていれば、得意の微笑外交で、台湾、香港、日本に対して存在感を高めることができたかもしれません。

しかし、台湾は世界的にみても、最高水準で中国ウイルスの封じ込めに独力で成功し、独立国としての意地をみせました。

今の中国が、台湾統一のためにできることといえば、軍事的な脅威をみせつけて、存在感を強調することです。

だからこそ、本当は中国人民解放軍の中にも感染者がいるにもかかわらず、遼寧で台湾を恫喝しているのです。

おそらく、遼寧にも欠員ででいるかもしれません。欠員が出て、未熟な交代要員を乗鑑させて急場をしのいでいるかもしれません。

それにしても、今後中国ウイルスが終息するにつれて、中国による台湾への恫喝はさらに度合いを強めていくかもしれません。

香港も中国ウイルスで中国に頼ることなく、収束をみせています。

そうなると、中国に残されている道は、もう軍事的な示威行動による恫喝でしか、存在感を発揮できなくなります。

米軍が中国ウイルスから早期に立ち直れば、今後も中国は軍事的な恐喝どまりで終わらせるかもしれませんが、そうでなければ、台湾を武力で統一してしまおうと考えるかもしれません。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

ウイルスの封じ込めと、台湾統一に成功すれば、これは、習近平が成し遂げた大偉業ということになります。今まで、際立った業績のが一切なかった習近平にとって大きな手柄となり、習近平体制が定着することになります。

この脅威は日本にとっても他人事ではありません。台湾の次は、尖閣、尖閣の次は、沖縄、その次は日本ということになるかもしれません。

こうした脅威があることを前提に、日本は現行の憲法、法律内でこれに対処できることは実行し、さらに将来に備えて、憲法改正も急ぐべきです。特に、緊急事態条項は、中国ウイルスなどへの脅威への対処や、今後予想される中国による軍事的脅威に備えるためにも、必要不可欠であると考えます。

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2018年1月3日水曜日

米国が見直す台湾の重み、東アジアの次なる火種に―【私の論評】日本は対中国で台湾と運命共同体(゚д゚)!

米国が見直す台湾の重み、東アジアの次なる火種に

米台の軍艦が相互寄港へ、ヒステリックに反応する中国

台湾・台北の街並み
 北朝鮮の核・ミサイル問題に世界の耳目が集中する中で、トランプ米大統領は12月12日、「2018会計年度 国防授権法」に署名し、同法が成立した。同法が今回注目されたのは、高雄など台湾の港湾への米国海軍艦船の寄港、ならびに台湾海軍艦船の米国港湾への寄港が盛り込まれていたからである。

 ただし、米国の国防授権法とは、議会による国防費の監督・監視を目的とするもので、具体的な米軍の行動まで指図するものではない。よって、米国海軍艦船の台湾寄港の是非は行政府の判断に委ねられる。オバマ前政権下で成立した2017会計年度の国防授権法でも、米台間の軍事交流・協力の強化を支持するなどの内容が盛り込まれていたが、オバマ政権はこれを無視してきた。このことから分かるように、国防授権法における議会の意見は、言うなれば政策提言の域を出ないのである。

 特に米国海軍の艦船を台湾に寄港させるかどうかは中国にとっては極めてセンシティブな問題であるから、トランプ政権が実行に移すのが容易ではないことは想像がつく。

 現に、国防授権法成立に先立つ12月8日、在米中国大使館がワシントンで開催した在米中国人や留学生を集めたイベントでは、李克新公使が、米国艦船の台湾寄港は中国が定めた「反国家分裂法」の適用事項に該当し、「寄港すれば法律が適用され、中国人民解放軍は武力による台湾統一を実現する」と断言した。

李克新駐米公使 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 どの条項に該当するかまでの言及はなかったが、該当するとすれば第3条か第8条であろう。第3条は、「台湾問題は中国の内戦によって残された問題である。台湾問題を解決し、祖国の統一を実現することは、中国の内部問題であり、いかなる外国勢力の干渉も受けない」という内政干渉排除の条文である。第8条は、「『台独』分裂勢力がいかなる名目、いかなる方式であれ、台湾を中国から切り離す事実をつくり、台湾の中国からの分離をもたらしかねない重大な事変が発生し、または平和統一の可能性が完全に失われたとき、国は非平和的方式その他必要な措置を講じて、国家の主権と領土保全を守ることができる」と「重大事変」について記している。いずれにせよ、判断基準は中国の解釈次第だからどうにでもなる。

シュライバー新国防次官補、中国を挑発

 しかし、中国がかくもヒステリックな反応を示したのには、恐らく理由があったのだろう。すでにオバマ政権時代のことに言及したように、これまでの国防授権法に関する台湾関係の事項については、米政権側が中国を刺激したくないから政策提言を受け入れないままで来た印象がある。ところが、中国側が警戒する動きが、トランプ政権に出てきた。

 それは、ランドール・シュライバーの国防次官補への指名である。シュライバーはブッシュ・ジュニア政権時代に国務次官補代理として当時のアーミテージ国務副長官を支えた、いわば共和党主流派につながるアジア問題専門家であり、アーミテージ同様、軍人出身である。

ランドール・シュライバー氏
 国防次官補の任用は政治任用であるため、議会の承認が求められる。11月16日に行われた米上院の任命承認公聴会で、シュライバーは米台海軍艦船の相互寄港の是非を問われ、次のように述べた。

 「私は米台海軍艦船の相互寄港を支持する論文を寄稿したことがある。これは米国の『一つの中国』政策と完全に合致するものである。すでに米台の軍用機は、定期的ではないが相互に離発着している。台湾における米国の代表機関に現役将校を送ってもいる。米国の『一つの中国』政策を我々が定義する中で、米台の海軍艦船の相互訪問を開始することも包摂されるべきだろう。(中略)それは我々の政治的な目的である台湾への支援と、中国を抑止することへの助けにもなる。もし国防総省の中で異論があるなら、そうした反論について知りたいと思う」

 なんとも自信に満ちた証言である。「文句があるなら言ってみろ」というシュライバーの証言で、中国は台湾への武力行使というヒステリックな対応を取らざるを得なくなったとも言えるだろう。

台湾を戦略的に重視するシュライバー

 2018会計年度 国防授権法が成立してから1週間もたたない12月18日、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を公表し、ここで中国、ロシアを米国の影響力、価値や資産への競争相手とするとともに、米国が維持する国際秩序の変更を迫る「修正主義勢力」と位置づけた。米国はこの内容を台湾に事前通告し、米国が台湾の自衛のための武器を供与する義務を負っていることを明記した。台湾は、これを好意的に受け止めている。

2017年12月18日、米ワシントンで演説するトランプ大統領
 ただし、米国は中国について警戒を露わにしているものの、敵対姿勢を鮮明にしているわけではない。トランプ政権にとって、対中関係の最重要課題は対米貿易黒字の問題であり、次いで北朝鮮への中国の影響力行使の問題である。トランプ政権にとって、中国との健全な関係構築こそが重視すべき問題であって、台湾問題は必ずしもメジャーな課題ではない。こうした状況は、中国にとって相対的には都合のいい状況なのかもしれない。

 もちろん、北朝鮮問題で米国が武力行使に及べば、中国は北朝鮮崩壊後の政治処理に発言権を確保するため、人民解放軍を、国境を越えて北朝鮮に進軍させる動機はあるし、そのためには政治的に北朝鮮との同盟条約を援用することも可能だろう。あるいは北朝鮮問題が幸いに外交的解決に向かえば、中国主導の6者協議の復活もありえない話ではなくなる。いずれにしても中国の出方がカギとなる。

 問題があるとすれば、そうした北朝鮮危機の間に、中国が南シナ海の人工島の軍事拠点化を着実に進めていることだ。しかし、12月20日、米上院はシュライバーの国防次官補就任を承認した。シュライバーの描く東アジアの戦略地図は想像を働かせるしかないが、台湾を戦略的に重視するシュライバーであれば、南シナ海での「航行の自由」を保証する米海軍艦船の行動頻度を上げるために台湾を活用する、つまり米海軍艦船の台湾寄港という判断はありうる選択だろう。

台湾の地位見直しを進めるトランプ政権

 トランプ米政権の外交・安全保障政策の特徴は、軍人出身者が政策決定に深く関与していることだ。

 ホワイトハウスのジョン・ケリー大統領首席補佐官、マクマスター国家安全保障担当補佐官に加え、マティス国防長官がいる。アジア太平洋地域では、経験豊富なシュライバー国防次官補がそれに加わることになる。影が薄いのは国務省で、ティラーソン国務長官が辞任するのはいまや時間の問題とされ、アジア太平洋問題担当の国務次官補ポストも、長く空白が続いたが、ようやく前任のラッセル次官補辞任後の3月から代行を務めていたスーザン・ソーントンが昇格指名された。あとは議会上院の承認待ちだが、従来の国務次官補の顔ぶれと比較すれば、軽量級のそしりは免れない。

 軍人は、軍事力のなんたるかを知悉しているから、実は軍事力の行使については慎重だとされる。しかし、行使は慎重だが、その重要性を深く理解している。トランプ政権の「国家安全保障戦略」では、「力による平和」という米国の基本姿勢が明瞭に描かれている。軍事力の裏付けがあってこその外交という考えは、古くはセオドア・ルーズベルト大統領、最近ではロナルド・レーガン大統領に通じるものだろう。

 トランプ大統領は11月のアジア歴訪にあたり、空母3隻を東アジアに集結してみせた。米国が軍事力を活用することで外交を有利に運ぶ意思が示されたことになる。アジア太平洋の秩序維持を目指す米国が、軍事的プレゼンスを強化していくとすれば、東シナ海と南シナ海の結節点に位置する台湾の戦略的地位に着目するのは当然の流れであろう。

 トランプ政権の台湾の地位見直しが進むとなると、当然ながら、今後注目されるのは中国の出方だ。

 李克新公使が発言したような、中国の台湾に対する武力統一を含めた全面的な軍事攻撃は現状に鑑みてありえない。米国が介入することは必至だからだ。

 では、中国が傍観するかといえば、返答に詰まる。立場上、習近平に傍観は選択し得ないだろうから、部分的な衝突を含め相当な緊張が予想されると言わざるをえない。ただし、究極的な力と力の勝負では、まだ米国の優位は疑いない。よって、米国が中国の面子を立てるやり方で中国が矛を収めることになろうが、1996年の台湾海峡危機で米空母2隻に圧倒された屈辱をまだ忘れていない中国にとって、さらに屈辱感を増大させる結果になろう。

 北朝鮮問題に目を奪われている中で、東アジアでは次なる摩擦の火種が準備されているといっても過言ではない。

【私の論評】北の脅威の次なるアジアの戦争の火種は台湾である(゚д゚)!

米国が、ブログ冒頭の記事のように、台湾重視をしはじめたことにはそれなりにいくつかの背景があります。そのまず第一は、習は昨年10月の共産党大会で、「3つの歴史的任務の達成」を宣言したことです。この1つに「祖国統一の完成」があり、武力侵攻も含めた「台湾統一」と受け止められています。

さらにもう一つ大きな背景があります。それは、中国が無人島の尖閣諸島は後回しにして、台湾を先とろうとしている可能性があるということです。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の“微笑み外交”要警戒 「分断工作だ」尖閣衝突回避策で日中大筋合意にチラつく思惑 河添恵子氏リポート―【私の論評】台湾の今そこにある危機を認識せよ(゚д゚)!
 ブログ冒頭の記事にある、川添氏の「無人島の尖閣諸島は後回しにして、台湾を先とろうとしている」という懸念については根拠があります。

以下にこの記事が一部引用します。

"
今年10月、米国で出版された一冊の書籍によって、中国の習近平指導部が準備を進めている「計画」が暴かれました。
大規模なミサイル攻撃の後、台湾海峡が封鎖され、40万人の中国人民解放軍兵士が台湾に上陸する。台北、高雄などの都市を制圧し、台湾の政府、軍首脳を殺害。救援する米軍が駆けつける前に台湾を降伏させる…
米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」で、アジア・太平洋地域の戦略問題を専門とする研究員、イアン・イーストンが中国人民解放軍の内部教材などを基に著した『The Chinese Invasion Threat(中国侵略の脅威)』の中で描いた「台湾侵攻計画」の一節です。

イアン・イーストン氏
イーストン氏は「世界の火薬庫の中で最も戦争が起きる可能性が高いのが台湾だ」と強調しました。その上で「中国が2020年までに台湾侵攻の準備を終える」と指摘し、早ければ、3年後に中台戦争が勃発する可能性があると示唆しました。

『The Chinese Invasion Threat(中国侵略の脅威)』の表紙
この、衝撃的な内容は台湾で大きな波紋を広げました。中国国内でも話題となりました。
具体的な時間は分からないが、台湾当局が独立傾向を強めるなら、統一の日は早く来るだろう。
国務院台湾弁公室副主任などを歴任し、長年、中国の対台湾政策制定の中心となってきた台湾研究会副会長、王在希は中国メディアに対し、イーストンの本の内容を半ば肯定しました。

王在希氏
その上で「平和手段か、それとも戦争か、台湾当局の動きを見てから決める」と踏み込みました。近年、中国の当局関係者が台湾への武力行使に直接言及するのは極めて異例です。
"
東アジアの地図を眺めてみればわかるように。台湾と尖閣諸島こそ日本の存続にかかわる「絶対国防圏」であると同時に、中国が軍備拡張を通じ、覇権を確立しようと狙うエリアでもあります。もし尖閣が奪われたなら、東支那海の制海権も奪われそうです。

一方台湾が取られれば、東支那海はおろか南支那海までも扼されそうです。その時点で尖閣など、自ずと中国の手中に転がり落ちかねなです。

そのように考えるなら、台湾の重要性は尖閣のそれよりも大きいように思えてくきます。

しかし実際には、尖閣を取られれば台湾が危殆に瀕し、台湾が取られれば尖閣は風前の灯。いずれにしても日本にとっては危機的状況となります。


中国の戦略の前で、台湾と尖閣のどちらが重要かとの議論は、もはや何の意味も持たないことでしょう。日本にとってはそのいずれもが、死活的に重要なのです。

かつて日本は、自国領ではない満蒙を自国領と同様に重視し、ロシア・ソ連の南下からこれを防衛することに国力を傾けました。しかし今日の日本の弱点は、一国平和主義にも起因すると思われます、そうした戦略的思考の欠如にこそあるようです。

ただし、中国の立場からみると、確かに尖閣よりは台湾のほうが奪取しやすいのかもしれません。なぜなら、以前もこのブログに掲載したように、日本の海軍力はアジア一です。これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の“海軍力”はアジア最強 海外メディアが評価する海自の実力とは―【私の論評】日本は独力で尖閣の中国を撃退できる(゚д゚)!
画像出典 海上自衛隊HP
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を以下に引用します。
 対中国の視点では、純粋な戦力としては、海上自衛隊が中国海軍を上回っているという見方が主流のようだ。ナショナル・インタレスト誌は、海上自衛隊の艦艇と人員の数、装備の性能、組織力のどれをとっても「アジア最強」だと指摘する。主要装備の性能や役割を詳しく説明したうえで、東日本大震災発生時の災害救助活動の実績を紹介し、海上自衛隊の展開力の高さも折り紙つきだとしている。ビジネス・スタンダード紙は、「そうりゅう」型8隻と「おやしお」型11隻を擁し、2021年までに23隻に拡大する予定の潜水艦戦力も、中国に脅威を与えるとしている。
そうりゅう
 また、南シナ海を経てシンガポール入りし、その後さらに南シナ海で「デューイ」との共同訓練を行った「いずも」の動きを、ニール氏は尖閣諸島など日本周辺海域での「中国の執拗な動き」への対抗策だと断言する。そして、「『いずも』は安倍政権下で進む日本の軍拡の象徴だ。それは、第二次大戦中の日本の強力な空母艦隊によってもたらされた痛みを強烈に思い出させるものだ」と、中国側の見方を代弁する。 
 ビジネス・スタンダード紙は豊富な防衛予算も海上自衛隊の強みだと見る。「防衛費の上限が全体の1%という制約がありながらも、日本の2017年の防衛予算は436億ドルで、インドの535億ドルよりも少し少ないだけだ。そして、インドや中国と違い、日本は陸軍よりも海軍と空軍に多くの予算を回している」と、予算面でも決して自国や中国に負けていないと指摘する。
このように強力な海軍力が日本にはあり、さら最近では海上護衛艦「いずも」を空母に改修したり、トマホークを自主開発したり、さらにはイージス・アショアーを導入する動きもあります。これらは、中国にとってはかなりの脅威です。

中国がロシアから買い入れて改造し、鳴り物入りで登場させた空母「遼寧」は、南シナ海で試運転を一回しただけで、エンジン主軸が壊れて使い物にならなくなりました。その後何とか改修したようですが、未だに中国の工業力では、空母を動かす二十数万馬力のエンジンを製造できないのです。中国は「いずも」のような護衛艦をつくる能力もないのです。

そうして、ご存知のように日本や沖縄には、日本の強力な海軍力があるだけではなく、強力な米軍も駐留しています。

このような中国が、尖閣を後回しにして台湾を最初の標的にすることは十分考えられます。何しろ、尖閣は無人島ですが、台湾にはそれこそ、第二次世界大戦後に大陸中国から移住した人々も大勢います。

その中には、大陸中国に対して親和的な人も大勢います。これらの人を利用して、台湾を内から崩し、中共が侵攻しやすい土壌をつくれば、中国としてはかなり侵攻しやすいです。

いずれにしても、尖閣も台湾も日本にとっては、死活的に重要な地域です。今年は、北朝鮮問題がいずれ何らかの方向で収束しそうです。北朝鮮がギブアップするか、米国が軍事力を行使するなどして、必ず何らかの形で収束するとみて間違いないと思います。

しかし、そこでアジアの脅威が去ったわけではありません。その次は、中国による台湾への侵攻が大きな問題となるはずです。そういう意味では日本は対中国で台湾と運命共同体といえるでしょう。

将来は、日本の空母も台湾にしよっちゅう寄港するようにして、中国に脅威を与えていくべきです。

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2016年2月19日金曜日

【緊迫・南シナ海】米中、軍事衝突秒読み 米空母が東アジアで2隻展開も―【私の論評】南シナ海の武力衝突の趨勢は米潜水艦により決まり、中国軍はなすすべがない(゚д゚)!


米海軍のCVN-73ジョージ・ワシントンとCVN-74ジョン・C・ステニス空母戦闘群
中国が、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島に地対空ミサイルを配備したことを受け、東アジアで緊張が高まっている。日米両政府は17日、相次いで懸念を表明した。今後、東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携して、中国の軍事的覇権を阻止する構えだ。こうしたなか、米軍が東アジアで、空母2隻を常時展開する可能性が出てきた。(夕刊フジ)

中谷元(げん)防衛相「現状変更を試みる動きは看過できない」

ハリス米太平洋軍司令官「中国の習近平国家主席が約束を守れないことの証左だ」

中谷、ハリス両氏は17日、防衛省で会談し、中国によるミサイル配備を批判した。習氏は昨年9月の訪米時、「南シナ海を軍事拠点にする意図はない」と発言したが、真っ赤なウソだったことが明らかになった。

昨年11月24日、米ハワイのキャンプ・スミスで、ハリス米太平洋軍司令官(左)と会談する中谷防衛相
 米FOXニュースは16日、中国軍がパラセル諸島にあるウッディー(同・永興)島に今月、地対空ミサイル8基を配備したと報じた。米国防当局者と台湾の国防部(国防省に相当)も17日、配備を確認した。

米政府筋は射程125マイル(約201キロメートル)の移動式防空ミサイル「紅旗(HQ)9」としている。部隊の規模は、2個大隊という。

中国軍がパラセル諸島にあるウッディー(同・永興)島に配備した「紅旗(HQ)9」
 ケリー米国務長官は17日、「深刻な懸念」を表明し、「(中国側と)今後数日間で非常に真剣な協議をする」と語った。軍事拠点化の中止を直接要求する方針だ。

ケリー米国務長官
 これに対し、中国国防省は「西沙諸島は中国固有の領土であり、中国は防衛施設を建設する正当で合法的な権利がある」と反論しており、中国がミサイル撤去に応じる可能性は低い。

オバマ米大統領の残り任期が1年を切ったことで、中国は「米国は大胆な軍事作戦を展開できない」と足元を見ているのか。これを放置すれば、中国が南シナ海だけでなく、東シナ海や西太平洋でも軍事的覇権を握り、「航海の自由」を守ってきた米軍が自由に行動できなくなる恐れもある。

危機的現状を受けて、米海軍関係者の間では、世界最強の米空母機動部隊を常時2つ、東アジアで展開させることを議論しているという。

国際政治学者の藤井厳喜氏は「遅きに失した感はあるが、もう1部隊を東アジアに展開させるのは当然の動きだ。オバマ大統領が『米国は世界の警察官ではない』と宣言してから、中国は増長している。日本も、米国やフィリピン、ベトナムと協力して、南シナ海などで共同哨戒活動を行うべきだ」と語っている。

【私の論評】軍事衝突の趨勢は米潜水艦群により決まり、中国軍はなすすべがない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にある米軍の動きに呼応し、自衛隊もすでに行動を起こしています。

海上自衛隊はP3C哨戒機2機を今月18日までの3日間、ベトナム中部ダナンに派遣し、ベトナム海軍と合同で図上の洋上捜索訓練などを実施しました。日本とベトナムの防衛協力をアピールし、南シナ海における中国の実効支配強化をけん制するとともに、自衛隊の存在感を高める狙いがあります。

 海上自衛隊のP3C哨戒機
ベトナムは南シナ海のパラセル(中国名・西沙)、スプラトリー(同・南沙)両諸島の領有権を中国と争っています。

日越両国は昨年11月の中谷元(げん)防衛相のベトナム訪問の際、南シナ海情勢をにらんだ防衛協力強化に向け、人道支援、災害救援目的の共同訓練の実施や、海自艦船のベトナム・カムラン湾への寄港で合意しました。海自P3Cのベトナム訪問は昨年5月以来です。

このブログで何度か掲載したことがありますが、日本の海上自衛隊の対潜哨戒能力は実質的に世界のトップです。そうして、海上自衛隊の対潜哨戒機を南シナ海に派遣する用意はすでにできています。これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。

海自哨戒機、南シナ海飛行拡大へ…中国をけん制―【私の論評】これは中国にとってはかなりの脅威、南シナ海の中国の艦船と潜水艦の動きが丸裸に(゚д゚)!

 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、世界一の対潜哨戒能力を持つ日本の海上自衛隊には米国もかなり期待しています。

この海上自衛隊の対潜哨戒機を南シナ海に派遣することの意義などを以下に述べます。

その最大の意義は、中国の潜水艦を完璧に無力化することにあります。日本の海上自衛隊の対潜哨戒能力を南シナ海で発揮すれば、日本の自衛隊は中国の艦船のすべての動きはもとより、中国の潜水艦の動きも完璧に把握することができます。

そうして、その情報は当然のことながら、米軍にも連絡がいきます。一方、中国の対潜哨戒能力はかなり劣るため、中国の潜水艦に比較すれば、はるかにステルス性の高い米国の潜水艦は、中国側から察知することはできず、この海域を自由に航行できます。

そうなると、何がおこるかといえば、中国がいかにこの地域を軍事拠点化しようとも、米国はほとんど犠牲をともなくことなく、それらをことごく潜水艦により破壊することができます。

中国側からすると、どこに潜んでいるか全く察知できない米国の潜水艦から、いつ攻撃を受けるか事前に全く察知できないわけです。

空母2隻の戦闘群が、表の顔とすれば、潜水艦は裏の顔です。空母は航行すればその姿ははっきりと中国側に捉えられ、空母群が最初に攻撃を加えるということになれば、中国側もそれをすぐに察知して、それに「紅旗(HQ)9」を用いて反撃を加えることができます。さらに、航空機を用いて、反撃することもできるでしょう。

しかし、潜水艦にはそのような対処は一切できません。突如とて米潜水艦からミサイルが発射され、それを防ぐ手立てはありません。また、米潜水艦は、当然のことながら、南シナ海の中国の軍事基地に対する弾薬、燃料、水、食料などの補給を絶つこともできます。

そのような米軍の攻撃に対して、中国側は全く打つ手がなく、大パニックに陥ることでしょう。

USSバージニアの魚雷発射管室内の制御装置
実際に武力衝突が始まるとすれば、米国側は最初は潜水艦による攻撃で口火を切るでしょぅ。先ほども述べたように、米側は、中国の艦船、潜水艦の動向をすべてつかむことができますから、まずは潜水艦によって、これらを無力化できます。これらは、初戦ですべて海の藻屑と消えます。

その後に、米潜水艦は、中国のミサイルや、その他の軍事的脅威を標的に攻撃をしかけ、これらも無力化することでしょぅ。

その後に、空母戦闘群が攻撃を加え、中国の軍事基地を無力化し、その後で海兵隊が上陸し、島嶼の基地を破壊し、戦闘員を殺害するか、捕獲して、比較的短時間に米軍の勝利に終わります。

米軍バージニア級原子力潜水艦
万に一つも、中国側に勝つ見込みはありません。中国軍は、最初から最後まで、苦しい戦いを余儀なくされるでしょう。

このように、南シナ海では日本の海上自衛隊の対潜哨戒に中国軍の監視と、米側の潜水艦による戦いにより、またたくまに趨勢が決まり中国側は、なすすべがなくなることでしょう。

そうして、当然のことながら、すでに米国の潜水艦は、南シナ海に派遣されており、いつでも攻撃ができる体制を整えていることでしょう。空母やイージス艦などは、これらを米国が南シナ海に派遣すれば、それは中国側にも、南シナ海の近隣諸国にもすぐに知られてしまうので、米側もこの海域に派遣することなどすぐに発表します。

しかし、潜水艦は違います。潜水艦はあくまで隠密行動で、米側も何も発表しません。しかし、まず間違いなく、派遣していることでしょう。

もしかすると、米原潜は、中国の潜水艦に突如として、ソナーを照射して、中国の乗組員らを震撼させているかもしれません。

そうして、上記で述べたようなことは、習近平をはじめとする中国の要人たちが、もっとも良く理解していると思います。にもかかわらず、綱渡りをしなければならない、中国の厳しい現実があります。

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2016年1月28日木曜日

【スクープ最前線】米、東アジアで異例の軍備増強 北朝鮮急襲「Xデーは2月末」の衝撃情報―【私の論評】混迷する世界!「政治的メッセージ」を聴くのも、発信するのも飽きた米国?

【スクープ最前線】米、東アジアで異例の軍備増強 北朝鮮急襲「Xデーは2月末」の衝撃情報

韓国・釜山港に入港する米原子力空母ジョン・C・ステニス=2009年3月

米軍が、東アジアでの軍事プレゼンスを急激に高めている。原子力空母「ジョン・C・ステニス」を西太平洋に派遣したうえ、最新鋭ステルス戦闘機F22を含む計26機を、横田基地(東京都)に飛来させたのだ。核実験を強行した北朝鮮が主ターゲットといい、「Xデーは2月末」という衝撃情報がある。加えて、経済失速の目先をそらす、中国の暴発をけん制する狙いもあるという。ジャーナリストの加賀孝英氏が迫った。

「金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は狂ったのか。米国は激怒している。このままでは軍事衝突は避けられない」

旧知の米軍関係者は怒りにまかせて、こう吐き捨てた。その原因となった「正恩情報」というのが以下の話だ。

《正恩氏が『日米韓を火の海にしてやる!』と半狂乱になっている。暗殺に脅えて、平壌(ピョンヤン)でスパイ狩りを始めた》

《5月初めの朝鮮労働党大会を前に、もっと自身の威信を高めて、さらに世界を恫喝するために、軍部に『(核弾頭搭載型)長距離弾道ミサイルなどの発射準備』を命じた》

北朝鮮が4度目の核実験(北朝鮮は『水爆実験』と強弁)を強行したのは今月6日だ。世界の批判を無視して、今度はミサイル発射準備とは「ふざけるな!」というしかない。

案の定、朝鮮半島が緊迫してきた。世界最強の米軍が怒涛(どとう)のように動き出したのだ。驚かないでいただきたい。「Xデーは2月末」という極秘情報もある。

金正恩
すさまじい米軍の動きを説明しておく。

米西部ワシントン州の母港を15日、原子力空母「ジョン・C・ステニス」(排水量10万5500トン)が出港し、西太平洋に向かった。同空母は、戦闘機や攻撃ヘリコプターなど約90機を搭載し、士官・兵員約3200人、航空要員約2500人が乗船している。当然、ミサイル巡洋艦や駆逐艦、原子力潜水艦などを引き連れて、空母機動部隊を編成している。

ご存じのように、横須賀基地(神奈川県)には、原子力空母「ロナルド・レーガン」(同10万8000トン)を中心とする、機動部隊が配備されている。東アジアに2つの空母機動部隊が展開するなど、異例中の異例といえる。

横須賀に入港中のロナルド・レーガン
さらに、横田基地には、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22「ラプター」と、F16戦闘機「ファイティング・ファルコン」の計26機が集合した。米グアムの米軍基地には、「死の鳥」と恐れられるB52戦略爆撃機「ストレイトウフォートレス」(成層圏の要塞)と、B2ステルス戦略爆撃機「スピリット」がスタンバイした-。

飛行中のB2ステルス戦略爆撃機「スピリット」

以下、複数の米軍関係者から得た仰天情報だ。

「北朝鮮殲滅(せんめつ)作戦は数パターンある。基本は、ステルス戦闘機などで約700カ所の軍事拠点をピンポイント爆撃し、原子力潜水艦で海域を封鎖する。同時に特殊部隊が突入。北朝鮮内部に構築したスパイとともに正恩氏を一気に確保し、排除する」

「作戦の第1段階は、原子力空母や原子力潜水艦などの朝鮮半島沖への展開だ。2月末から、米韓合同軍事演習『キー・リゾルブ』と、野外機動訓練『フォールイーグル』が予定されている。空母などは、その名目で展開する。第1段階は2月下旬までに完了する」

「Xデー」とはこのことだ。情報はこう続く。

「最終的なゴーサインはオバマ米大統領次第だ。こちらは北朝鮮の地下軍事基地の詳細や、正恩氏の居場所、中国やロシアへの脱出トンネルも把握している。正恩氏はもはや、核放棄に応じるしかない。それは『2005年の事件』で分かっているはずだ」

米軍は05年、北朝鮮で極秘軍事作戦を決行した。F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」を、平壌上空に派遣し、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記の豪邸にめがけ、上空から急降下を繰り返し、正日氏に死を覚悟させて震えあがらせた。見えない戦闘機に北朝鮮は手も足も出なかった。

F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」

今回の米軍展開は、その時以上といえる。

外務省関係者がいう。

「米軍の動きは、対北朝鮮だけではない。実は、中国に対するけん制でもある。要は『経済失速で国内に不満が鬱積するなか、人民の目先をそらすために、南シナ海や東シナ海で暴走するな』『北朝鮮の暴走を一緒に止めろ』というメッセージだ。ケリー米国務長官が27日に訪中する。1つのヤマ場だ」

繰り返す。北朝鮮の核の暴走は、アジアと世界の平和を根底から壊す暴挙だ。断じて許すわけにはいかない。拉致被害者の奪還もある。日本は世界と連携して無法国家、北朝鮮と対峙するしかない。

■加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】混迷する世界!「政治的メッセージ」を聴くのも、発信するのも飽きた米国?

このブロクで昨日は、中国の「政治的メッセージ」関して、掲載しました。中国のGDPなどの統計資料は、真実を示すものではなく、「政治的メッセージ」に過ぎないことを掲載しまた。

詳細は、昨日のブログをご覧いただくものとして、結論部分のみ以下に掲載させていただきます。

私達も、中国のメッセージは多分に「政治的メッセージ」が含まれていることを理解すべきです。そうして、中国の「政治的メッセージ」とはあたかも中国人民の感情を表すように装いながら、中国政府の正当性を主張するものです。それを理解せずに、中国と接すれば、真の中国が理解できなくなります。

しかし、このようなことは長続きするはずがありません。いずれ、中国の現体制は崩壊するものとみなすべきです。なぜなら、「政治的メッセージ」を頻発しなければ、成り立たない政府とはかなり脆弱だからです。

これは、北朝鮮も同じことです。北朝鮮のメッセージはほんど「政治的メッセージ」であるとみなすべきです。

もっとも、北朝鮮の場合は、経済が極度に落ち込んでいるし建国以来一度も経済が良くなったこともないので、そもそも経済統計など発表しません。それを発表しても、「政治的メッセージ」として機能しないし、経済力が脆弱であることは、世界中が認識していることなので、全く意味がありません。

だから、軍事力をアピールするということで、世界各国に「政治的メッセージ」を発信しているということです。

昨日は、中国の軍事パレードを掲載して、これも「政治的メッセージ」の一環であることを掲載しました。これは、北朝鮮も同じことです。以下に、北朝鮮の軍事パレードの動画を掲載します。



とはいいながら、北朝鮮の場合、中国に比較してすら、軍事力はかなり劣っています。だから、軍事力をアピールしようにも、まともなやり方では、「政治的メッセージ」としても、機能しません。

だからこそ、苦肉の策で、核兵器開発をして、何とか原子爆弾は作成することができたということです。原子力爆弾そのものは、原材料さえあれば、さほど難しくはありません。

北朝鮮の艦艇 沿岸警備隊に毛が生えた程度

ただし、水爆となるとそれなりに高度な技術が必要となります。北朝鮮は、どうやら水爆の開発には、成功していないようです。

しかし、北朝鮮にとって「水爆」は「政治的メッセージ」であるため、これが本当に開発できたか否かなど問題ではありません。「水爆」を開発したとか、ロケットも開発したと発表し、水爆を核弾頭にした弾道ミサイルを保有したか、するようにみせかけて、それで世界における存在感を増すというのが、北朝鮮の狙いです。

確かに、これは、ある程度成功しているようです。北朝鮮は、経済的にも軍事的にも、技術的にもみるべきところは何もないのですが、それでも「政治的メッセージ」を送り続けることにより、確かに世界に向けて北朝鮮の存在感をアピールできました。

北朝鮮空軍の女性パイロットを訪問した金正恩

そのことが、米国を激怒させ、米国もブログ冒頭のような措置をとらなければならなくなったということです。

政治的メッセージというと、オバマ「政治的メッセージ」出しています。その最たるものは、「アメリカは世界の警察官をやめる」と名言したことです。

そうして、実際オバマは、アジアにおいても、中東においても、ロシアに対しても煮え切らない及び腰の態度をとり続けました。

その結果、アジアでも、中東においても、ウクライナにおいても、存在感を失ってしまいました。

そうして、アジアでは、中国の南シナ海や東シナ海での、傍若無人ぶりを招いてしまいした。そうして、中東でもISを台頭させてしまったり、ロシアにはウクライナ問題でクリミア自治共和国のロシア編入などで譲歩せざるをえない立場に追い込まれました。

日本の尖閣周辺で、中国が頻繁に領海、領空侵犯をするようになったのも、オバマの「世界の警察官をやめる」という「政治的メーセージ」によるものです。オバマがもっと中国に対してはっきりした態度で臨んでいたら、今日のような状況はなかったかもしれません。

オバマが及び腰を続ける限り、世界はさらに混迷を深めるばかりです。

オバマ大統領
このような外交上の度重なる米国の失敗で、オバマの人気は米国内でも地に堕ちました。米国議会もオバマに対して厳しい態度をとるようになりました。さすがのオバマも、まずはアジアで行動を起こさざるをえなくなったのです。

米国のカーター米国防長官は今月22日、スイス東部ダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の会合で、人工島造成など南シナ海を軍事拠点化しようとする中国の行動について「自らを孤立させている」と批判し、重ねて自制を求めました。

カーター氏は、米軍はこれまでどおりに南シナ海で航行の自由を行使し、アジア太平洋地域での軍事的優位を維持する姿勢を強調しました。さらに、中国の行動に対処するため今後数年間で国防予算を重点的に配分していく考えを示ししました。

また、アジアの国々が米国に接近しているのは中国が自ら招いている事態だとし、米国は日本や韓国、フィリピンなど同盟国との協力に加え、インドやベトナムとの関係強化に取り組んでいると語りました。日本がインドと並びアジア地域での「台頭する軍事大国」であるとも指摘しました。

そうして、この発言を裏付けるための「政治的メッセージ」として、ブログ冒頭のような行動を開始したのです。

もう米国としては、中国や、北朝鮮などから「政治的メッセージ」を受けとり、それに対して米国側から「政治的メッセージ」を発信したとしても、何の効果もないことを悟ったに違いありません。

次の段階では、「政治的メッセージ」を送るのではなく、軍事的手段に訴える可能性が高いです。

そうして、米国は、まずは北朝鮮に対して、ブログ冒頭の記事のように何らかの行動にでる可能性が高いです。

北朝鮮・平壌の金日成広場で行われた朝鮮労働党創建70周年を
祝う軍事パレードに登場した女性兵士(2015年10月10日)

今や世界唯一の超大国、軍事大国のアメリカが、実際に行動を起こせば、そのインパクトははかりしれません。私としては、北朝鮮に対するアメリカの軍事行動は、05年の極秘軍事作戦程度のものか、それ以上になるのか、今のところまだはっきりはしませんが、今度こそは、米国は何らかの行動を起こすと思います。

そうしなければ、中国、北朝鮮、ロシアなどが増長して、それこそ米国を頂点とする、戦後体制という国際秩序を破壊する可能性があります。国際秩序が崩れれば、新たな秩序を構築するまで、世界は混迷します。私は、米国が以前のように軍事行動をしたとしても、今年からしばらく世界は、軍事的に混迷する時期に入ると思います。

日本としては、米国がどの程度のインパクトを発揮していくのか、注意深く見守って、米国との、集団的自衛権の強化の路線を貫くのか、あるいは、個別自衛権を強化して、自前で自衛できる体制を整えるのか、日本の今後の安全保障に関して、真剣に考えていく必要があります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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