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2015年4月6日月曜日

黒田日銀、異次元の緩和から2年、「2倍、2%」 を批判する前に、もっと勉強しないといけない左派新聞、左派文化人たち―【私の論評】雇用と金融政策の関係を理解しない左派、左翼は百害あって一利なし!そんな輩はすぐにも活動を停止せよ(゚д゚)!

黒田日銀、異次元の緩和から2年、「2倍、2%」 を批判する前に、もっと勉強しないといけない左派新聞、左派文化人たち



2年前の4月4日、黒田日銀総裁は、2年で2倍、2%を目指す異次元緩和を行った。

左派系3新聞の社説がそっくり

この2年間の評価について、4月4日には左派系3新聞が社説を出している。

朝日新聞「黒田緩和2年 拡大続行よりやめ方を」(http://www.asahi.com/articles/DA3S11687276.html

毎日新聞「異次元緩和2年 柔軟な政策へ転換を」(http://mainichi.jp/opinion/news/20150404k0000m070099000c.html

東京新聞「異次元緩和2年 目標未達の説明果たせ」(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015040402000156.html

いずれも似ている。円安を罪悪視し、インフレ目標が達成できないことや日銀が国債を買うリスクを問題視している。そして、左派系であるにもかかわらず、雇用の改善はまったく無視している。さらに、消費増税の影響も無視だ。

かつて、東京新聞は金融政策や消費税ではいい社説もあったが、今や朝日新聞や毎日新聞の補完で、安倍総理の行うこと、アベノミクス憎しなのだろうか。

異次元緩和の正確な表現は、つぎのとおりである(http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdf

日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。このため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。

2年で2倍なのはマネタリーベースの拡大であり、2%は「2年程度の期間を念頭に置いて」という程度の話だ。

異次元緩和反対派の予想は完全にはずれ

そもそもインフレ目標は「ガチガチ」のルールではない。かといって「ユルユル」の裁量的なものでもない。バーナンキの言を借りれば、ルールと裁量の双方の性格をもつ「制約された裁量」であり、彼は市場とのコミュニケーションツールともいっている。

インフレ目標ではプラスマイナス1%が許容範囲といわれている。先進国のこれまでの実績では、その許容範囲に7割程度収まっておるが、それが達成できない場合には、説明責任を果たさなければいけない。

マスコミの人は、2年で2%のインフレ目標というのを、「2015年4月で消費者物価総合指数対前年同月比2%」と思い込んでいるが、「2015年4月~2016年3月という1年間で消費者物価総合指数対前年同月比1~3%」という程度である。

ともあれ、過去4年間で、異次元緩和の前後2年の経済パフォーマンスをみてみよう。

インフレ率を消費者物価指数総合の対前年同月比でみると、異次元緩和の前にはマイナス基調だった。その後、異次元緩和で上がりだし、消費増税前までは順調に上昇していた。量的緩和がスタートした2013年4月に▲0.7であったが、2014年5月には1.6%まで上昇した。ところが、消費増税に影響で消費が減退し、2015年2月には0.1%まで低下している(消費増税による見かけ上の影響が2.1%として計算)。(図1)



図1 CPI総合(対前年同月比)の推移
日経平均では、異次元緩和の前までは1万円にもならない横ばい傾向だったが、異次元緩和以降、かなりのペースで上昇している。(図2)



図2 日経平均(月末値)の推移
ドル円は、株価と似た動きだ。異次元緩和の前までは1ドル80円程度の円高であったが、異次元緩和以降、円安が進んでいる。(図3)



図3 ドル円(月中平均)の推移
長期金利は、異次元緩和の前まで低下し、もうそれ以上の低下はないと思われていたが、さらに低下を続けている。異次元緩和になったことは、これ以上の低下はないので、逆に金利上昇し、財政破綻もあるという批判が、異次元緩和への反対論者から出されたが、金利は低下し、そうした人たちの予想はまったく外れている。(図4)





図4 10年国債金利(月末)の推移

左派系には雇用が重要なはずなのに…

雇用はどうだろうか。左派系にとって、雇用が重要なはずだ。しかし、異次元緩和を批判したいために、株価は上がるが、人々の暮らしはよくならないという。しかし、その批判は完全にそらしである。

金融政策による雇用の安定化に着目して、いち早く正統性を主張したのは、ヨーロッパの左派である。ヨーロッパの社会民主主義政党の集まりの「欧州社会党」や共産党などの集まりである「欧州左翼党」の主張を調べてもらえればいい。

「欧州社会党」(ヨーロッパの社会民主主義政党の集まり)は、雇用確保のために欧州中央銀行の政策変更を要求していし、金融政策と財政政策が協調して雇用を確保するために、欧州中央銀行を民主的に管理することを求めている。そして、欧州中央銀行の役割として、物価の安定のみならず、雇用の確保も必要とすべきという。

雇用政策を勉強しなければいけない人たち

なお、米国では、FRB(連邦準備制度)の責務として、物価の安定とともに雇用の確保も入っている。米国の大統領選では雇用や失業は、常に大きな争点である。

筆者はマスコミに雇用問題でどこに取材するかと聞く。ほとんどの人は厚労省に取材するという。もし米国だったらどうだろうか、労働省ではなくFRBだ。政府は統計数字を作るだけで、雇用を拡大することができるのはFRBである。

欧米では、金融政策は雇用政策とほぼ同義であるとされている。というのは、短期的には失業率とインフレ率の間に逆相関関係(フィリップス曲線と呼ばれ、右肩下がりとなる)があり、犠牲率の概念が広く共有されている。

その上で、就業者数について、異次元緩和の前後2年をみると、明暗がはっきり分かれる。異次元緩和はしかりと雇用を作り出したのだ。(図5)


図5 就業者数(万人)の推移

雇用を新たに作り出したので、その人たちの暮らしはよくなった。賃金が上がらないとか、雇用が非正規とかいうが、失業がなくなったことをまず評価しよう。経済理論が教えることは、失業がなくなるにつれて、賃金は上がりだし、非正規は正規に変わっていくということだ。つまり、金融政策を否定するのではなく、それを評価し、それを継続すればいいわけだ。

株価と半年後の就業者数には相関関係がある

左派系知識人は、すぐに株価は上がるから資産家はいいが庶民は大変だというレトリックを用いる。これはやめたほうがいい。というのは、株価は半年先の就業者数ときわめて相関しているのだ。つまり、株価が上がると半年先の雇用が増えるのだ。(図6)


図6 日経平均(左軸、円)と6月先就業者数(右軸、万人)

断っておくが、これは株価と半年先の就業者数に因果関係があるというわけではない。景気がよくなると、株価はそれを先取りし、就業者数は半年遅れて上がり出すというわけなのだ。

雇用が増えているので、雇用者などの所得の合算ともいえるGDPも増えている。ただし、消費増税以降、GDPは大きく落ちている。GDPの動きは、インフレ率の動きと若干似ているところがあり、ともに消費増税による需要減退の影響を受けて、消費増税後はさえない。(図7)


図7 実質GDP(兆円)の推移

ちなみに、インフレ率については、マネタリーベース(対前年同月比、3ヵ月ラグ)と消費増税(6ヵ月ラグ)でよく説明できる。(図8)


図8 インフレ率(現実と予測値)の推移

むしろ問題は金融政策ではなく、消費増税であった。このように明らかに消費増税の影響があるにもかかわらず、黒田総裁は言わないのは、ちょっと理解に苦しむ。マスコミからそうした質問が出ないのも理解に苦しむ。黒田総裁もマスコミもともに、消費増税の影響が軽微であると間違ったからである。

インフレ率について、まったく目標に達していないというのではないが、今の状況の説明責任をしっかり果たせば自ずと対応策もでてくる。

もし消費増税の影響とはっきり言えば、消費増税の影響を相殺するためには、一番いいのは、消費減税である。財政策の枠内で、消費減税に似たような効果のある対策はいくらでもだせる。おそらく、年後半になれば、減税補正予算などが政治的課題になってくるはずだ。

左派系知識人、マスコミ、政党がもう少し賢ければ、金融政策ではなく、消費増税を攻めるだろう。

安倍政権も金融政策はいいが、消費増税という失敗があった。そうであるにもかかわらず、左派系知識人は財務省のいいなりで財政再建のためには消費増税というまったく間違ったことをいってきた。消費増税は民主党時代に仕組まれたとはいえ、その地雷を踏んだ安倍政権を攻められない今の左派系はまったく情けない。

安倍首相が、政労使会議に乗り込んで、左派政党のお株を奪う賃上げを要請する姿を見て、民主党は悔しくないのだろうか。このままだと、経済政策で安倍政権にはまったく歯が立たないという状態がつづくだろう。

高橋洋一

この記事は、要約です。詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】雇用と金融政策の関係を理解しない左派、左翼は百害あって一利なし!そんな輩はすぐにも活動を停止せよ(゚д゚)!

さすが、高橋洋一氏の解説です。過不足なく、現状の経済の内容を伝えています。そのため、上の記事に関しては、私が付け足すようなことは全くありません。しいて、いえば実質賃金の問題もありますが、それはここでは解説しません。しかし、実質賃金の低下したのは、一時のことであり、その原因はやはり消費税増税であることは、あまりにも明らかです。

消費税が上がれば、どう考えてみても、実質賃金が目減りするのは当然のことであるので、高橋洋一氏はわざわざ解説しなかったのだと思います。それにしても、実質賃金の低下は増税のせいではなく、これも金融緩和のせいであるとか、アベノミクスのせいであるとするマスコミや、似非識者が多いのには本当に困りものです。

上の高橋洋一氏の解説における現状の経済の状況は、短くまとめてしまうと、以下のようになると思います。
そもそもインフレ目標は「ガチガチ」のルールではない。かといって「ユルユル」の裁量的なものでもない。これは、ルールと裁量の双方の性格をもつ「制約された裁量」であり市場とのコミュニケーションツールでもある。 
金融政策は雇用政策とほぼ同義であるとされている。短期的には失業率とインフレ率の間に逆相関関係(フィリップス曲線と呼ばれ、右肩下がりとなる)があり、犠牲率の概念が広く共有されている。 
消費増税以降、GDPは大きく落ちている。GDPの動きは、インフレ率の動きと若干似ているところがあり、ともに消費増税による需要減退の影響を受けて、消費増税後はさえない。
この三つに関しては、常識的なものであり、特に経済の勉強などしなくても、まともな報道など見ていれば、良く理解できるはずの筋合いのものです。そんなに難しいことはではありません。しかも、高橋氏は上記のように現実の数字をグラフにして解説しています。これは、何も今始まったことではなく、随分前から実施していることです。なのに、左派新聞や、左派文化人たちはこれを理解してないというから驚きです。

特に左派新聞や、左派文化人、左翼が金融政策と雇用政策が密接な関係があり、ほぼ同義とされることを知らないということは、驚きです。それも、今に至るまで理解できないというのは、全くのん驚きです。 ということは、彼らは、雇用問題に関しては全く理解できないし、していないということです。

これについては、随分前にもこのブログに掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!

この記事は、平成12年9月のものです。この時期は、無論のことまだ野田政権の時代でした。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に雇用政策と金融政策との関係について述べた部分のみ以下に抜粋します。
若年層の雇用情勢の改善に向け、野田佳彦首相の肝いりでまとめられた今回の若者雇用戦略。ただし、その内容は全国の大学にハローワークの窓口を設けるなど、既存の政策を拡充するものばかりだ。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「雇用のことって正直、よく分からないんだよね」。今春まで約8年間、東京都内のハローワークで契約職員として勤務していたある女性は、正規職員の上司が何気なく発した言葉に愕然としたことがある。
これは野田政権のときの、野田首相の若者雇用戦略について述べたものですが、野田政権は、金融緩和にはノータッチで、ハローワークなど既存の政策を拡充することばかりで、結局若者雇用も、それ以外の雇用政策もことごとく大失敗していました。全く効き目がありませんでした。

第三次野田内閣の綿々 誰一人金融政策の意味を知らない


それは、そうです、デフレであるにもかかわらず、金融緩和はせずに、ハローワークを強化してたとしても、そもそも雇用枠が少なくなっているのですから、意味はありません。この記事では、ハローワークの契約社員の方が、「雇用のことって正直、よく分からないんだよね」と正規職員の上司が発した言葉に愕然としたとありますが、私は、この上司の正規職員は正直な方だと思います。

さらに、この記事に続けて、私は金融政策と雇用政策に関して以下のような論評を行いました。
アメリカでは、雇用問題というと、まずは、FRBの舵取りにより、大きく影響を受けるということは、あたりまえの常識として受け取られていますし。雇用対策は、FRBの数ある大きな仕事のうちの一つであることははっきり認識されており、雇用が悪化すれば、FRBの金融政策の失敗であるとみなされます。改善すれば、成功とみなされます。 
この中央銀行の金融政策による雇用調整は、世界ではあたりまえの事実と受け取られていますが、日本だけが、違うようです。日本で雇用というと、最初に論じられるのは、冒頭の記事のように、なぜか厚生労働省です。
民主党政権時代の女子就活は聞くも涙、語るも涙の惨憺たるありさまだった
このブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。 
日銀が、やるつもりもないインフレ目処1%など無視して、インフレ率を本当に2〜3%上昇させたとします。そうすれば、日本でも、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これは、マクロ経済学上で昔から知られているし、経験則としても成り立っている法則です。 
無論、雇用対策のため、のべつまくなく、インフレにするというわけにはいきません。ある程度以上、インフレになれば、ハイパーインフレとなり大変なことになる場合もあります。そういうときは、中央銀行は、すぐにはインフレ率を高めるわけにはいきませんから、これは、打ち出の小槌のようにいつもできるというわけではありません。雇用枠が増えても、ハイパーインフレということにでもなれば、雇用が増えたという経済に対するブラス要因が、ハイパーインフレというマイナス要因によってかき消されるどころか、経済が悪化してしまいます。
それに、経済のその時々の状況で、インフレ率を高める方法もいろいろあります。いろいろある方策のうち、雇用に悪影響を及ぼす方策もあります。同じ二つ三つの金融政策を実施するにしても、順番があります。順番を間違えると、かえって、雇用に悪影響を与える場合もあります。こうしたことを認識しながら、雇用調整を行うことは、本当に難しいことです。だからこそ、アメリカではFRBの金融政策の専門家が専門家的立場から、これを調整して、雇用対策を行います。
このように、雇用と金融政策との間には密接な関係があり、それは他の先進国では当たり前のことであり、日本だけが特殊であるということはありません。

しかし、未だに上の高橋洋一氏の記事にも掲載されているように、「筆者はマスコミに雇用問題でどこに取材するかと聞く。ほとんどの人は厚労省に取材するという」という具合に、マスコミは未だに雇用というと、日銀は全く関係なく、厚労省の管轄であると思い込んでいるようです。

しかし、先のハローワークの正規職員の上司のように、厚生労働省は、雇用枠を増やすことなどできません。定まった雇用枠の中で、職業の斡旋や、仲介をするだけです。ですから、厚労省に雇用情勢のことを聴いても分からないのが当たり前です。

厚生労働省と雇用情勢との間に直接の関係はない

それにしても、この記事の当時はまだ平成12年であり、野田政権の時代で、金融緩和もされておらず、この当時であれば、まだ雇用と金融政策の関係について知らなかったとしてもまだ許せるような気がします。無論本当は、全く許せないのですが・・・・・・・・。

しかし、金融緩和をしてから2年たった現在、確かに増税の影響により、雇用は悪化したところもあり、実質賃金も下がった時期もありました。それでも、全体的に見れば雇用は明らかに野田政権のときと比較すれば、大幅に改善しています。動かぬ証拠もあります。上の高橋洋一氏のグラフ以外にも証拠はあります。


このグラフをみれば明らかです。この内定率は、バブル崩壊前の水準に戻っています。増税の影響などなきがごとしです。いや、あったのかもしれません。もし増税がなけば、さらに良くなっていた可能性もあります。

民主党政権下ではこのようになったことは一度もありません。たとえマクロ経済学など勉強しなくても、上の高橋洋一氏のグラフや、このグラフ、その他の様々な数値をみていれば、経済が相対的に良くなってきていることは実感できます。

にもかかわらず、この期に及んで、雇用と金融政策との間の関係を理解できないというのは全く信じられません。他のことは目をつむっても、このことだけは絶対に許せません。

これができない、左派新聞や、左派文化人や、左翼は、百害あって一利なしです。日々頓珍漢で奇妙奇天烈な、言説を振りまき、多くの人々を惑わすだけです。もう活動を休止しなさいと言いたいです。

私は、そう思います。皆さんは、どうおもわれますか?

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【関連図書】

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2015年2月13日金曜日

やはり「ISILも“普通”のイスラム教徒も根本は同じ」なのだろうか―【私の論評】中東やイスラムの問題を日本人の感覚で語るのは間違っているどころか、百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!

やはり「ISILも“普通”のイスラム教徒も根本は同じ」なのだろうか


やはり「ISILも“普通”のイスラム教徒も根本は同じ」なのだろうか。

在日イスラム教団体『日本アハマディア・ムスリム協会』が、『シャルリー・エブド』の風刺画を転載した本を出版した出版社に対し、「宗教を侮辱する行為を断固として非難する」とするコメントを発表した。
『日本アハマディア・ムスリム協会』の声明(抜粋) 
今回、第三書館が出版する本について知った時はすごく心が痛みました。私達は、全ての宗教、全ての預言者たちを尊敬するべきであり、お互いの感情に気を使うべきであると理解しています。そうしたなかで、宗教を侮辱するような行為に対して私達は、断固として非難します。 
言論の自由は社会を発展させるのに必要だということにはなんの疑う余地もありません。しかしこの「自由」は宗教を侮辱するべきではありません。侮辱することは、道徳的にもいけないことです。
今のところマスメディアでは「“普通”のイスラム教徒まで刺激するのはマズい」という“配慮”からか、件の風刺画やイスラム批判を自主規制する論調が主流となっている。

だが、参考資料として件の風刺画の転載は必要だと考える人もいるネットの自由な言論空間では、この声明を「イスラム教のルールに従わないのは侮辱だから従え」という、在日イスラム教徒の傲慢な意思表示として受け止めた日本人も多かった。何せここはトイレの神様とか貧乏の神様なんてものまでいて、それらすべてが昔から普通に絵に描かれたり、今だと“薄い本”に登場したりもする国である。ある特定の宗教の象徴だけを殊更丁重に扱えと求められても、それは受け入れがたい。幸いと言うべきか、これまで日本人はイスラム教徒との接点がほとんどなかったが、今回の声明を見て、頑なに唯一神を崇め続ける“敬虔”なイスラム教徒と日本人は非常に相性が悪いことに気付いてしまった人が多いのではないだろうか。

そもそも多神教への明確な敵意が記述された『コーラン』を素直に読めば読むほど、イスラム教の教義自体が独善的で異教徒に対する暴力性をはらんでいると思わざるをえない。『コーラン』で多神教徒の扱いについて記された最も有名な章句である9章5節には「多神教徒は見つけ次第殺せ。ただし、イスラム教に改宗し義務を果たすなら許せ」という主旨のことが書かれているが、これが原理主義と結びつくと恐ろしい結果を招くことになるのは明白だ。ISILの支配地域では今まさにヤジディ教徒の虐殺が起こっているし、異教徒を拉致して強制改宗を迫る事件もイスラム国家の各地でしばしば発生している。ISILの構成員には、移民・難民としてヨーロッパ各国に流入し、現地に溶け込まず独自のイスラムコミュニティを形成して“敬虔”かつ“普通”に暮らしていたイスラム教徒の二世・三世が多く合流しているという。イスラム教を擁護する人は「イスラム教は“本来”寛容な宗教だ」と決まり文句のように言うが、“実際”に世界各地で起こっていることを見ると、テロ組織であるISILに限らず、今のところは穏健派とみなされているイスラム教徒も容易に危険な過激派に転びうる恐れがあるのではないかという疑念を拭い去れない。

そこで日本人が「イスラムの教義は多神教徒を侮辱しているから修正しろ」と要求したところで、まず間違いなく彼ら“敬虔”なイスラム教徒は聞く耳を持たないだろう。イスラム教圏の国でイスラム法に基づく生活をしてもらっている分には一向に構わない。しかし、日本にその価値観を持ち込まれても迷惑だ。イスラム教徒全体が押し付けがましく傲慢だと思われても仕方がない。

日本人は宗教に関して無頓着すぎるとよく言われる。かといって虚無主義的な無宗教者でもなく、緩い信仰心を保ちつつ、まずまず社会規範を守って暮らしてきた民族だ。イスラム教に支配された中東・アフリカ諸国よりもおおよそ豊かで治安も良い、民主的な先進国として認められている。

民主国家では、政治や宗教のように人々を強制的・盲目的に従わせる権力の集まる機構こそ常に自由な批判に晒されなければならない。日本国内では自由な宗教批判が可能な一方で、モスクの建設を認めていないわけでもないし、信徒の勧誘を禁じているわけでもないし、コーランの出版をすることもできる。信教の自由は保障されている。それで十分ではないか。己のすべてを委ねて帰依できるほど素晴らしい宗教ならば、無知な不信心者になんと言われようと鷹揚に構えていればよいのだ。

『シャルリー・エブド』の風刺画は確かに下品で低俗かもしれない。だが風刺と侮辱の間の線引きは誰のどんな価値観をもってするのか。あの風刺画を見て、「その通りだ、面白い」と感じる人もいるのだ。「俺が侮辱だと感じるから禁止」という理屈は通らない。高尚で公益に資する言論だけが認められる社会は不自由だ。ロクでもない言論こそ守られなければならないのが言論の自由というものだろう。「鬼神を敬してこれを遠ざく」「触らぬ神に祟りなし」と言うが、また同時に日本は「鰯の頭も信心から」ということわざもあるように、「お前の拝んでいる神様はおかしいよ」と言ってやることもできる、言論の自由がある国なのだ。「シャレにならない反応が起こりそうだからやめておこう」などと“配慮”をする者は、意識・無意識はともかく、テロリストの“抑圧”に手を貸す愚か者である。だいたい、1000年以上も昔に生きていた「ターバンを巻いたおっさん」の絵を描いたからといって、具体的に誰がどんな被害を被るというのか。

あるいはそんな日本人のテキトーな宗教観が気に入らないというイスラム教徒がいるのなら、その人は、多神教を信仰することによって“堕落”した日本社会を批判し、みすぼらしい貧乏神やトイレの神様をバカにした風刺画でも公開してみてはいかがだろう。自由主義者が信奉する「言論の自由」に対する風刺でもいいかもしれない。恐らくほとんどの日本人は笑って“寛容”に受け流すであろうが。くれぐれも暴力に訴えることだけはカンベンしてもらいたい。

画像引用:『日本アハマディア・ムスリム協会』公式サイトより
http://www.ahmadiyya-islam.org/jp/


【私の論評】中東やイスラムの問題を日本人の感覚で語るのは間違っているどころか、百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!

上の記事、日本には表現の自由があるので、これは意見として述べるのは良いとは思いますが、とても賛同できるものではありません。

その理由としてまず、第一に、、韓国の元大統領の李明博の「(天皇陛下が)韓国を訪問したいのなら、 独立運動で亡くなった方々に対し心からの謝罪をする必要があると(日本側に)伝えた」と
発言したという出来事がありましたが、この発言はかなり日本国内でも、不評だったし、実際無礼極まりなく話にも何にもならなかったと思います。この件に関しては、

これは、2012年の出来事ですが、これに関して高崎経済大学教授・八木秀次氏が当事取材を受けて、産経新聞に以下のような記事を掲載していました。

高崎経済大学教授・八木秀次氏
日本人の怒り理解できぬ韓国人

 ≪天皇を最高政治権力者と誤解≫

 東日本大震災の被災地や、被災現地を訪問された天皇皇后両陛下について取材した経験から、李大統領の発言は竹島や慰安婦の問題とは次元の異なる、触れてはならない日本人の 神聖な部分に触れたような思いがする、解説してほしい、という趣旨であった。

 韓国では王室がなくなって久しいこともあって、天皇を政治権力の最上位の存在と 理解している。韓国で天皇を「日王」と呼ぶのはそのためで、李大統領もそのような 認識で発言したはずだ-。記者は、そう問いかけてきた。

 私は、天皇はそうではなく、国家・国民のために「祈る存在」である、と強調した。天皇は実際の政治とは遠いところから、国民生活の安寧や国家の発展、世界平和を祈る宗教的な存在であり、そして、そのような立場からその時々の権力者に対し、その地位を認める存在であると説明した。

 大震災を取材して、記者には思うところがあったようだ。韓国人は古くから外国の 侵略と戦ってきたのに対し、日本人は古来、島国ゆえに外国からの侵略はほとんどなく、 自然災害と戦ってきたのだなと実感したという。そして、絶えず自然災害にさらされている日本では、国民生活の安寧を祈る天皇のような存在が必要なのだと納得するようになった。

日本人にとってはそのような存在である天皇を、大統領発言は侮辱したのではないか。 
だとすれば、これは大変なことをしてしまったのではないかと心配になっている、と。
以上の韓国人記者のはなはだしい認識不足には、愕然とします。まずは、天皇陛下を最高権力者であると勘違いしていることも酷いですが、そんなことはないとは思いますが、もし李明博が、天皇陛下を日本の為政者のトップとみなして、あのような発言をしたのだとすれば、とんでもないぶっ飛び発言であり、韓国は下から上まで、馬鹿の集まりということになると思います。

上の記事で、八木氏は「天皇は実際の政治とは遠いところから、国民生活の安寧や国家の発展、世界平和を祈る宗教的な存在であり、そして、そのような立場からその時々の権力者に対し、その地位を認める存在であると説明した」とありますが、八木氏は、天皇陛下のことを宗教的存在としており、特定の宗教の最高権威者というような言い方はしていませんでした。

実際、天皇陛下はそのような存在ではありません。しかし、日々いろいろとご祈念されていることは間違いありません。元日にも、お祈りの時間が決まっていて、朝はやくからお祈りされていたということも事実です。

実際元旦の未明には、毎年四方拝と歳旦祭という儀式が、行われるため、天皇陛下は仮眠はおとりになる程度で、ほとんど徹夜をなさいます。天皇陛下は黄爐染御袍という、天皇のみが着装を許される古式に則った装束をお召しになり、厳寒のなか防寒具もおつけにならず、ひたすら国民の幸せをお祈りになります。この四方拝をお済ませになると、続けて宮中三殿にお進みになり、歳旦祭をなさいます。

儀式に臨まれる天皇陛下

陛下の元旦は、こうした儀式で始まりますが、その他日々様々な儀式があります。まさに、国家・国民のために「祈る存在」であらせられるのです。しかし、だからといって、天皇陛下が他の宗教のたとえば、バチカンの法王のような存在かといえば、それもまた異なります。だから、韓国人など外国くの人々には天皇陛下の本当の存在の意味などなかなか理解できないと思います。

天皇陛下に対して李明博の行った、発言は天皇陛下のいちづけなどほとんど理解していないから、平気でできたのだと思います。

それと同じように、多くの日本人は、イスラム圏での、預言者の位置づけなどほとんどわかっていないと思います。それは、フランス人も同じことです。そのような感覚で、むやみに他国の預言者などの批判など軽々しく行えば、まるで李明博のように愚かなことになってしまいかねません。

第二に、日本人とイスラム教文化圏と、キリスト教文化圏とでは、全く文化が異なります。日本は特異中の特異です。それに関しては、ジャーナリストの渡邉哲也氏が以下のようなツイートをしています。
私達日本人は、他の国々とは全く異なる環境に生まれ育ったときから慣れ親しんで、体に染み付いてしまっているので、これを特異だとか、変わっているなどとは全く思いません。その感覚で、中東やイスラムの問題を語るのは間違いです。

さらに、渡辺氏は以下のようなツイートもしています。 
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教における、預言者エイブラハムは、「聖典の民」が篤く尊敬し、祝福する預言者で、ヤハウェが選んだ預言者です。


今回の人質事件に関しては、左翼系の人々が上の写真のように、在日韓国人等が「I am not ABE」というプラカードを持ってデモをしていました。これを見たユダヤ教、キリスト教、イスラム教徒はどう思ったでしょうか?ひよっとすると彼らは期せずして、全世界を敵に回した可能性があります。無知を自覚せずに、主張するとは恐ろしいことです。

ちなみに、日本が宗教に関して特異であるということについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
「中韓」とは異質な日本人の「精神世界」…仏作家は「21世紀は霊性の時代。日本は神話が生きる唯一の国」と予言した―【私の論評】日本は特異な国だが、その特異さが本当に世界の人々に認められ理解されたとき世界は変る。いや、変わらざるをえない(゚д゚)!
式年遷宮「遷御の儀」で現正殿から新正殿に向かう渡御行列。
伊勢神宮は日本人と心のふるさと、未来への道しるべだ
=平成25年10月2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事をご覧いただければ、いかに日本が宗教において、世界で特異な位置を占めているかご理解いただけるものと思います。

日本では、宗教以前に霊性を重んじるという、精神文化が継承されてきて、根付いており、日本人の多くが他国とは全く異なる宗教観を持っています。

このような私達は、韓国人が天皇陛下の存在が理解できないように、他国の宗教や預言者を理解することは容易ではありません。イスラム教に限らず、キリスト教など他の宗教はなかなか理解できません。理解できないという事自体は、特に問題はないですが、宗教関係のことを語るときには、なかなか理解できないことを前提として語るべきです。

その意味では、上の記事は、その配慮に欠けていると思います。日本国内で、日本語で書かれているだけなので、さほど問題にはなりませんが、これが多国語で世界的に配信されるようなメデイアであれば、とても掲載できるような代物ではありません。

この記事では、日本の特異性が、世界の宗教的対立を避けるための大きなヒントになるのではないかということも記載しましが、ここでは特に掲載しません。興味のある方は、是非この記事をご覧になって下さい。

最後に、これは当たり前のど真ん中ですが、ISILと“普通”のイスラム教徒とはどう考えてみても、同じではありません。ISILはテロ集団です。普通のイスラム教徒は、無論例外もいますが、テロリストではありません。これを同列に語ることはできません。

以上3つの点から、上の記事は、一個人の表現の自由としては認めますが、とても承服できる内容ではありません。このような記事が、世界に出回るようなことがあれば、百害あって一利なしという結果になると思います。

上の言説もそうですが、日本では良く理解しないで自分の感覚で、宗教問題を語る人も多いです。このようなことは厳に慎むべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年2月4日水曜日

実はモチベーションと生産性が低い日本人――理由はこれだ―【私の論評】過去の日本が、デフレ・スパイラルのどん底に沈んでいたことを無視して、日本企業の生産性や社員のモチベーションを語っても百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!


この記事の著者ロッシェル・カップ

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』という私が最近出した本のタイトルを見て、日本のビジネスパーソンの多くが「本当にそうなの?」と思うことだろう。実際、この本を書いている最中にも同様のことを聞かれた。「日本人はバリバリ働いて、とても頑張っているのに」という意見が多かった。しかし私は、「勤労意欲が高い」「仕事の生産性が高い」という日本人が自分たちについて思うイメージに、本書の中で多くの疑問を呈している。

社員が自分の仕事についてどう思っているかを測定する手段として、最近アメリカで注目を集めているのが、社員のエンゲージメントというコンセプトである。また、社員のアウトプットを測定する直接的尺度となるのが、経済学者の言う生産性である。これらを通して、日本人の働き方と昨今の経済不振の間にどのような関係があるのかを探ってみよう。

社員のエンゲージメントとは、社員の企業に対する関与の度合いと、仕事に対する感情的なつながりを表現するものである。 これは「活力、献身、没頭などに特徴付けられる、仕事に関連するポジティブで充実した精神状態」と表現することができ、エンゲージメントの高い社員は「仕事にエネルギッシュで効果的なつながり」を持っている。つまり、仕事に対して社員が感じている包括的な情熱というレベルにまで焦点をあてているのが、エンゲージメントである。

社員のエンゲージメントが最近アメリカで注目を浴びている一番の理由は、高いエンゲージメントによって数多くの恩恵がもたらされるためだ。エンゲージメントの高い社員は企業に留まる傾向が高く、さらに企業とその製品・サービスの支持者として、より熱心な営業と優れた顧客サービスを提供する。ここで最も重要なのは、そのような社員は、仕事に対するやる気が非常に高いことである。このような社員が、顧客との関係を深め、企業が提供する製品やサービスを刷新し向上する原動力となる。

逆に、エンゲージメントの低い社員は、やる気がなく、仕事にも関心がなく、必要最低限のことしかしない。このような社員は欠勤が多く、安全に関する事故を起こしたり、品質問題を発生させたり、顧客を遠ざけたりする原因となる。また、ネガティブな態度で自分の周囲のモラルを低下させる原因にもなる。多くのアメリカ企業は、エンゲージメントの高い社員を増やし、低い社員を減らすことが、ダイナミックで成功した企業となる秘訣であることを認識し始めた。

社員にやる気を起こさせるためにエンゲージメントが重要であるとしたとき、日本企業の社員のエンゲージメントのレベルは一体どの程度であろうか? 例えば、エンゲージメントの国際比較研究の先駆者、タワーズワトソンの「2014年グローバル労働力調査」によると、日本でエンゲージメントレベルが高い社員は21%(持続可能なエンゲージメントの3要素すべてが高得点)、ある程度高い社員は11%(従来のエンゲージメントは高いがイネーブルメントとエネルギーが低い)、低い社員は23%(イネーブルメントとエネルギーは高いが従来のエンゲージメントが低い)、非常に低い社員は45%(持続可能なエンゲージメントの3要素すべてが低得点)であった。これに比較して、世界平均は同順に40%、19%、19%、24%、アメリカは39%、27%、14%、20%であった。 タワーズワトソンのコンサルティングディレクター、クリス・ピンツによると、少なくとも過去8年間、日本はこの調査の対象国中最低スコアを記録し続けているという。その他エンゲージメントの調査を行っている会社も、似たような結果を示している。

次に生産性を比較してみよう。生産性は一定のインプットでどれだけのアウトプットを作り出すことが可能かの測定である。 OECDが提供する2013年の数値によると、実労1時間あたりの国民総生産GDP(米ドル、時価、現在の購買力平価)は、日本が41.1、OECD平均が47.4、G7平均が56.8、アメリカが66.6となっている。つまり、2013年の日本の生産性はアメリカの61.7%、G7の72.3%、OECD全体の86.7%しかないことを意味する。この数値は、 日本企業の社員は他国企業の社員と比較して、時間を生産的または効果的に使うことをしていないことを示唆している 。

他国と比較して日本企業のエンゲージメントと生産性が低い原因は何だろうか? 幾つもの要素が複雑に絡んでいるため 、どこから始めてよいかわからないくらいだが、大きく分けて、雇用の構造、人事管理の慣行、 人材育成の方法、企業文化の4つのエリアに問題があると私は考える。(これらの問題点については、本書で詳しく解説している)

雇用の構造
  • 「仕事とは何か」に対する柔軟性に欠けるアプローチ
  • 柔軟性に欠ける労働力の区分
  • 「非標準的」労働者の女性、外国人、高齢者などの活用に消極的
  • 社員が自分の仕事内容を選べないシステム
人事管理の慣行
  • 報酬と業績評価の関連性の低さ
  • リスクに立ち向かうことへのサポートの欠如
  • 仕事内容の明確な定義の欠如
  • 社員を解雇する効率的プロセスの欠如
  • 社員のやる気育成への取り組みの欠如
人材育成の方法
  • ソフトスキルに価値が置かれない
  • マネジメントスキルの不足
  • 人事異動の計画性の欠如
企業文化
  • 過度の緊急性の風潮を作り出すヒエラルキー構造
  • お役所仕事的な柔軟性に欠けるプロセス
  • 長時間労働によるワークライフバランスの難しさ
  • 権限付与と自主性の欠如
これらの問題は、今日の日本企業のあり方に内在しているため、取り組むためには著しい構造的変化が必要とされるだろう。しかし今のままでは、日本はこれから他の先進国にどんどん取り残されていってしまう。日本のビジネスは今、将来を左右する重要な分岐点に立たされているといっても過言ではないだろう。

注)上記記事で、太文字はブログ管理者が施しました

【私の論評】過去の日本が、デフレ・スパイラルのどん底に沈んでいたことを無視して、日本企業の生産性や社員のモチベーションを語っても百害あって一利なしと心得よ(゚д゚)!

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?
上の記事の元となっている書籍


上の記事、一見新しい『日本ダメ論』なのかもしれないと思い、全文掲載しました。私は、この書籍を読んでいないので、論評して良いかどうか迷いましたが、上の記事の内容だけでも、十分に論評できると判断したので、以下に論評させていただきます。

最初に結論を言いますが、過去の日本がデフレスパイラルのどん底に沈んていたことを無視して、日本企業の社員のモチベーションの低さを論評しても無意味ということです。

日本がデフレに突入した直後の1998年より、それまで自殺者が2万人台だったものが、一挙に3万人台にはねあがりました。これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、 この記事では、デフレと年間自殺者数との間には、相関関係があるということを前提として、経済学者の田中秀臣氏のツイートなどを掲載しました。

過去の日本においては、15年以上もデフレが続いたという異常事態に見舞われていました。それが、社会に悪影響を及ぼしてきたことも事実です。経済対策は場合によっては人を殺す場合もあると田中秀臣氏もそう思っているようですが、私もそのよう思います。自殺まではいかなくても、モチベーションが下がる人々が多くなることも十分あり得ると思います。

そもそも、デフレでは企業が物がサービスを売りだそうとしても、なかなか売れません。そのような中で企業は、新しく製品やサービスを創造するよりは、既存の製品やサービスを品質を落とさずにいかに低価格で提供するかに知恵を絞るしかありませんでした。さらに、デフレに起因する、超円高で輸出産業にとっても、まるで手枷・足枷をされながら、グローバル市場での戦いを余儀なくされました。

こういう環境下では、企業も当然のことながら、採用を控えます。ただし、ある一定年齢層を全く雇用しないとか、極端に少なくしか採用しないということにでもなれば、将来特定の期間に管理職不足に悩まされることにもなりかねません。だから、消極的ではあるものの採用は続けてきました。

しかし、デフレ下においては、創造性・能力・才能があっても、それを十分に活用することもできませんでした。だから、企業としては、結果として「コミュニケーショ能力のある人」などして、あたりさわりのない採用を行ってきたというのが実情です。

無論、コミュニケーション能力が必要ないなどというつもりはありません。しかし、「コミュニケーション能力」など当たり前であり、これが欠如する人はそもそも、社会生活を営むことができません。企業側としては、この先もデフレが継続するものと想定して、あたりさわりのない採用をして、将来の特定年代の管理職の候補として、調整型の「コミュニケーション能力」をもっとも重視してきたのだと思います。

上の記事の筆者は、このようなデフレの影響は、無視して、日本人の働き方と昨今の経済不振の間にどのような関係があるかを探ろうしています。そもそも、経済不信は日本人の働き方に問題があると考えているようです。また、生産性の低さもそれが原因であると考えているようです。

しかし、これは、原因と結果をはき違えています。私は、長期デフレによる経済不信が日本人の働き方に問題をもたらしたのです。さらに、生産性の低さもそもそも、デフレ下においては、低価格にせざるをえず、低価格にすれば、必然的に生産性が低くなるのも当然の帰結です。

さらに、この筆者は、他国と比較して日本企業のエンゲージメントと生産性が低い原因は大きく分けて、雇用の構造、人事管理の慣行、 人材育成の方法、企業文化の4つのエリアに問題と考えているとしています。

本当に日本人だけがモチベーションが低いといえるか・・・

しかし、デフレであたりさわりのない採用をしている企業が、これらの改革に熱心に取り組むでしょうか。そんなことよりも、ありとあらゆる方面で、コストを下げて、企業の存続をはかることが精一杯だったと思います。

かといって、私は企業などを責めるつもりはありません。企業がデフレ下で、企業を存続させるために、防衛的な行動をすることは、やむを得ないことです。それは、個々人の努力や、企業努力も超えたものであり、その責任は日本銀行の金融政策の失敗によるものです。それを助長した日銀官僚や、政治家、マスコミによるものです。

このような最中に、過去のデフレを無視して、日本人のモチベーションが低いとか、その理由は、今日の日本企業のあり方に内在しているなどとするのは間違いです。

無論、個々人や、日本企業に問題がないなどとはいいません。しかし、欧米でも、欧米企業でも、問題がない企業はありません。

しかし、現状ではどうなるかわかりませんが、日本が長期のデフレ・スパイラルのどん底に沈んでいるときは、欧米は景気が悪いことはあっても、少なくともデフレではありませんてでした。

長期デフレであった日本の過去を無視して、日本人の生産性やモチベーションが低いなどと論ずるのは、百害あって一利なしであると思います。

この記事は日本人の現状のエンゲージメントや、生産性の低さを一方的に日本人のモチベーションの低さに結びつけているという点で、既存の「日本ダメ論」の域を全く超えておらず、全く無意味な論評だと思います。

デフレから完璧に脱出したとき真の日本がみえてくる・・・・・・・

最近の日本は、もはやデフレではありませんが、過去15年以上にもわたって、続いたデフレの悪影響はまだまだ続いています。デフレではないとはいっても、物価目標2%にはまだまだほど遠い上記ょうです。しかし、物価目標が達成され、デフレが完璧に過去のものとなり、緩やかなインフレが続く時代となれば、そのときこそ、日本人の真の姿や、日本企業の真の姿が見られるようになると思います。それだけ、過去のデフレは酷かったということです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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