多くのマスコミは増税内閣というだろう。たしかに、消費増税の根拠となった3党合意の当事者である谷垣禎一氏が党幹事長になり、麻生財務相が留任である以上、12月に決める消費税増税について、政治的には増税の回避論議を封印した。谷垣幹事長は、年末の消費税引き上げの判断について、記者会見で「レールが敷いてある」と発言している。

この見方は半分当たっているが、今回の党人事・内閣改造は、長期政権に向けた準備であり、その意味から、増税で景気を悪くすることはありえず、景気維持・回復の準備も怠っていないとみるべきだろう。

もちろん、消費増税は、経済政策としては間違いだが、政治的には簡単にはひっくり返せない(下手をすると安倍下ろしになる)というのが、現実だ。

実は、石破氏が無役になって、来年の総裁選に臨戦態勢になれば、消費増税スキップで年内解散・総選挙もあり得ると思っていた。しかし、最後の最後に石破氏がまったく腰砕けになり、地方創生担当相という内閣府大臣、つまり役人の人事権すらない大臣(人事権のある各省大臣より格下とみられている)におさまったので、わざわざ政治的なギャンブルをする必要がなくなった。

第二次安倍内閣

もし政治的なギャンブルをすれば、どうなるか。

 政権交代で長い間冷飯を食っていた自民党議員は、政権奪取のうまみを味わいたいので、消費増税を今かと待ち焦がれている。今年度予算は大盤振る舞いだったので、それなりに息がつけたが、政権交代の3年半の分はまだ取り戻していない。そこで、消費増税が予定通りできないと、困ってしまう。

財務省を含め中央省庁の予算担当者も思わぬ余波を受ける。一応消費増税を前提として予算要求しているので、消費増税がスキップとなれば、年末の忙しい時期に、予算のやり直しになりかねない。消費税増税を見込むとは、機械的な手続きではなく、要求は気前よくやっていいというのが、役人の間で暗黙の了解なので、それをご破算にされたら、役人の間で大騒ぎになるだろう。

 各地方の自治体も割を食うことになるだろう。今回の地方創生大臣がでてき、地方へのバラマキがあると期待していたにもかかわらず、それもストップするだろう。なにより、新たな地方創生大臣になった石破氏の仕事がなくなるので、いったん矛を収めた石破氏が再び暴れ出すかもしれず、自民党のまとまりがなくなってしまう。

経済界も法人税減税がお預けにある。というのは、消費増税と法人税減税はセットで語られるので、法人税減税もスキップされることなる。

新聞業界も消費増税がスキップされると大変だ。というのは、新聞業界は軽減税率に賛成し、その実現を財務省に求めてきている。それは消費増税が前提である。今のところ、財務省もしたたかで、軽減税率に難色を示している。そこで、消費増税がなくなれば、軽減税率は自動的になくなる。それでは、ただですら購読部数が減少して経営難になっている新聞業界はさらに経営が難しくなる。

石破茂氏
石破氏を政治的に鎮圧した以上、安倍首相がこれらの政治リスクを引き受けるはずないと考えるのが合理的だろう。

政治はポリティカル・キャピタルをどこに投入するかということであるので、社会保障改革のほか消費増税で後ろ向きな話は、谷垣幹事長の党で引き受けてもらうことにする。その一方、消費増税で景気が落ち込むので、それへの対策は、安倍政権がフリーハンドを持つようになり、かなりの規模の経済対策ということになる。おそらく、ある時点で、金融緩和と景気対策になるだろう。

 この改造内閣は、消費増税のほか、TPP、安全保障という当面の課題を処理するためにはうまくできた内閣だ。ただし、総選挙という顔ぶれではない。小渕優子経産相のような次期総選挙の顔になるような閣僚も含まれている。この意味で、ショートリリーフ的な内閣だが、長期政権へのテストも含む布陣だ。各閣僚はその実績を競争させられる。その際、新閣僚が今度新設される大臣補佐官に民間人を含め誰を選ぶかがカギになるだろう。

【私の論評】内閣改造の狙いは、10パーセント増税骨抜きと、安倍長期政権を確かなものにすることである!これを理解するものが次世代自民党を担っていく(゚д゚)!