2016年9月5日月曜日

実質賃金6カ月連続プラス 7月、2.0%増 ―【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!



 厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6カ月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数(CPI)の下落傾向が実質賃金を押し上げている。

 名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円と、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。

 実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。7月のCPI(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。実質賃金は6年ぶりに2カ月連続で2%台となった。ただ所定内給与の伸びは依然小幅で、物価下落の影響も大きいことから、所得環境の改善が続くかどうかは見通せない状況だ。

【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!

ここしばらく、「実質賃金が~」と叫ぶ人があまりいないと思ったら、7月は、年間は前年同月比で2%増であり、しかも過去6ヶ月韓連続のプラスということで、これでは「実質賃金が〜」と叫びようもないわけで、だから最近あまり聞かれなくなったのだと合点がいきました。

これも完璧に、金融緩和の成果であるということです。そういわれてみれば、民進党も「実質賃金が〜」と表だって声を上げることもなくなりました。

民主党政権時代と比較してほとんどの経済指標がよくなっているが、唯一と言っていい例外が実質賃金でした。そもそもデフレ脱却過程では実質賃金が下がるのは当然だし、消費増税があったからなおさらのことなのですが、民進党にはそれが全く理解できないようです。
半年前までは、実質賃金の低下が民進党の心のよりどころだったのだが・・・・・?

いずれにしても、現在でも実質賃金が上昇したとはいいながら、まだ弱含みで、今後また下がるようなことがあれば、民進党は「実質賃金が〜」と金切り声を上げることでしょう。しかし、過去において実質賃金が下がっていたのにはそれなりの理由があります。

まず実質賃金と、名目賃金の違いについて掲載しておきます。

「名目賃金」は、私たちが手にする賃金のナマの金額を現した数値でとても私たちの実感に近い賃金に関する数値です。

次に、「実質賃金指数」は先ほどの「名目賃金」から物価の上がり下がりを計算して影響した分を取り除いた数値になります。

物価が上がるとその影響分が「名目賃金」から差し引かれますので、実質賃金は下がる傾向に、また物価が下がっているときは賃金指数に低下分の影響が上乗せされますので上がる傾向になります。もう、これだけで、過去においては「実質賃金」が下がっていた理由はおわかりになると思います。

他にも実質賃金が下がる合理的な理由はあるのですが、結果として半年前くらいまでは実質賃金の数値が民主党政権時代より全般に低くかったことはは間違いありません。この数値だけが民主党政権時と比較して低下していました。そのためでしょうか、彼らはいつまでもこれにすがるしかなかったのですが、それすらもここ半年は、良くなっているので、民進党もこれにすがり続けるわけにはいかなくなりました。

そのせいでしょうか、民進党の代表戦では「実質賃金」などの雇用を政策論争にあげる候補は一人もいませんでした。そうして、全員増税賛成ということで、まるで財務省のスポークスマンのような有様です。

下のグラフは昨年11月の国会で民主党が使ったパネルです。いまだにツイッターのタイムラインにこれが表れてくることがあります。


変化を強調したグラフになっているからでしょうか、これを見た有権者の中には「民主党政権は実質賃金の面では頑張っていた」などと勘違いをする人が結構いました。だから、岡田代表はつい最近まで「実質賃金が〜」と喚いていました。

デフレ脱却とはインフレになることだから、物価が上がり、その分だけ実質賃金が下がります。所費税を上げればその分だけ一気に下がります。それは当たり前のことですが、人によっては、なぜ実質賃金を下げる結果になるインフレにわざわざする必要があるのか疑問に思うことでしょう。

さらに、安倍政権になって実質賃金を下げる要因になった物価以外の大きな要因が雇用者数の増加です。景気回復に伴いパートやアルバイトが増え定年退職者の再就職が増え、賃金の平均値を引き下げたのです。

実際、安倍政権下では一般労働者、パートタイム労働者ともに名目賃金は増えているのに、それを加重平均した全体では減少していました。


一般労働者の詳細な内訳データがあれば、賃金の高い人が退職して新人やパート・アルバイトが増えたことによる影響などもわかるはずです。しかし、このような分析は政策に反映するには有効かもしれないが、誤解している有権者に説明するのは困難だったかもしれません。

やはり、安倍総理が国会などで繰り返し説明していたように、「景気回復で雇用者数は増えている」「その結果、雇用者全体の賃金の総額である『雇用者報酬』は増えている」と言う方が分かりやすいです。それをグラフにしたのが下です。




経済無策の民主党政権がアベノミクスの安倍政権に代わってから雇用者数が増え、その結果、国民の雇用者所得は名目でも実質でも増加しました。これを考えれば、パートや定年後の再就職などが増えて平均値である実質賃金が下がったことは理解しやすいです。

これは、何も国単位で考えなくても、ある程度大きな企業のことを考えればおのずと理解できます。

皆さんが、ある程度大きな企業に勤めていると想像してみてください。そうして、景気が良くなって、会社が業容拡大のために、新人やパート・アルバイトを大量に雇ったとします。そうなると、平均賃金はどうなるでしょう。業績が拡大した場合、個々の従業員の賃金も上げるということも考えられますが、そこまでいかず、賃金の低いパート・アルバイトの数が増えた場合どうなるでしょう。そうして、さらに物価が上昇しているとしたら、当然のことながら実質賃金の平均は下がることになります。

逆に景気が悪くなって、会社の業容が縮小している場合はどうなるでしょうか。まずは、パート・アルバイトの新規採用は避けます。新人もあまり雇用しないようにします。業績があまりにも悪化すれば、社員の賃金を全体的に下げることになるので、一概にはいえませんが、業績がそこまで悪化せず、賃金水準はそのままで、賃金の低い新人や、パート・アルバイトが減れば、当然のことながら、平均賃金は上がります。さらに、景気低迷で物価が下がれは、実質賃金の平均は上昇します。

こんなことを考えれば、半年前くらいまでは、実質賃金が低下していたことの説明は十分につきます。

さて、ここ半年は、確かに実質賃金は上昇気味なのですが、それにしてもあまり上昇せず、弱含みです。どうして、そうなるかといえば、やはりまだ金融緩和の余地があるということです。

実際、日銀の黒田東彦総裁は本日、9月の金融政策決定会合で実施する「総括的な検証」について都内で講演した。検証は「あくまで2%の『物価安定の目標』の早期実現のため」と強調し、「市場の一部で言われているような緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べています。政策の中核とする予想物価上昇率を押し上げるため「2%目標をできるだけ早期に実現するというコミットメントを堅持していくことが重要」と述べました。
本日都内で講演した日銀黒田総裁
金融政策の限界論に対しては「マイナス金利の深掘りも、『量』の拡大もまだ十分可能」など否定的な考えを改めて示し、「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としました。また「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)からはずすべきではない」と述べました。

私自身は、黒田総裁の金融緩和は「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としているのですが、特に「量」的緩和は、必ず実施すべきものと思います。

それは、以前もこのブログで述べたように、我が国の構造的失業率は2.7%程度であるにもかかわらず、最新の統計では未だ完全失業率が3.0%であり、これは、まだ「量」的緩和が不十分であり、少なくとも、完全失業率が2.7%になるまでは、必要だと考えられるからです。

これを是正して、さらに実質賃金をさらに上昇させるためにも、「量的緩和」は必須です。黒田総裁と、日銀政策決定委員会の英断を望みます。

そうして、民進党のように単純に「実質賃金が〜」と喚き、雇用に関するまともな認識のない人たちの声に振り向く必要は全くありません。なぜなら、彼らは雇用というおおよそ、国民にとって最も重要なことに関してあまりにも無頓着だからす。

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2016年9月4日日曜日

民進代表選候補者3人 野党連携は理念や政策の一致前提に―【私の論評】財務省の使い捨て政党民進党とその代表に明日はない(゚д゚)!

民進代表選候補者3人 野党連携は理念や政策の一致前提に

民進党代表選候補者三人 左より玉木氏、前原氏、蓮舫氏
NHKの日曜討論で、民進党の代表選挙に立候補した蓮舫代表代行、前原元外務大臣、玉木国会対策副委員長は、次の衆議院選挙に向けた共産党などとの野党連携について、いずれも理念や政策の一致が前提となるという認識を示しました。

この中で、次の衆議院選挙に向けた共産党などとの野党連携について、蓮舫代表代行は「野党対与党のシンプルな構図が、いちばんよいと誰もが思っている。反省すべき点を挙げるとすれば、民進党の姿が見えず、自分たちの軸がないと思われたところだ。まずは民進党を再建し、人に投資をする姿勢を明確にすべきだ」と述べました。

前原元外務大臣は「野党協力ありきという岡田路線は、いったんリセットすべきだ。大事なことは政策で、天皇制、自衛隊、日米安保、あるいは消費税で考え方を同じくできるかどうかが、連立が組める大きなポイントだ」と述べました。

玉木国会対策副委員長は「理念の異なる政党と一線を画するのは大原則だが、一人でも多くの仲間を当選させるために、あらゆる努力をするのも代表の姿だ。理念が一致すれば、あらゆる政党と協力していく」と述べました。

また、消費税率の10%への引き上げについて、蓮舫氏は「必ず必要だ。問題は、国民に返ってきているという印象がないことで、社会保障の充実と借金の返済の割合も含めて考えるべきだ」と述べました。

前原氏は「1000兆円以上の借金があるわけだから、先延ばしすればいいという政治とは決別する。増収分の使いみちについては、白地から議論して、新たな構想を打ち出すべきだ」と述べました。

玉木氏は「逃げずにしっかりと社会保障に充てるべきだ。2%の増収分の使いみちは見直し、全額、主に高齢者向けの年金医療介護の充実に充てるべきだ」と述べました。

一方、蓮舫氏は代表になった場合の衆議院選挙への立候補について、「もちろん考えている。適切な時期に、きちんと判断する」と述べました。

【私の論評】財務省の使い捨て政党民進党とその代表に明日はない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事をみてもわかるように、この候補者増税には賛成ということで、完璧に経済オンチであり、発言している内容が、財務省のパンフレット以下の内容で、お粗末という以外にありません。彼らには、8%増税の悪影響や、国債金利の低さなど目に見えないのでしょうか。おそらく、全く眼中にないのでしょう。

この三人の誰が民進党代表になったとしても、民進党の経済政策や雇用政策など今までと何も変わらず、相変わらず、頓珍漢、奇妙奇天烈、摩訶不思議なことばかり言って、安倍政権にすっかりお株を奪われていることにも気付かじまいでしょう。本当に情けない限りです。

蓮舫氏と、前原氏が完璧な経済オンチであることは、以前もこのブログに掲載しました。その記事のリンクをご覧になって下さい。
蓮舫氏が語る経済政策 実行されたなら景気低迷で雇用改善はブチ壊し―【私の論評】財政再建はすでに終わっていることを知らない民進党に先はない(゚д゚)!
蓮舫代表代行
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、すでに財政再建は今年中には確実に終わるか、すでに終わっている段階であり、財政再建が完了したか、完了間近の現在増税を是とする、蓮舫氏や前原氏は完璧に経済オンチであり、もう民進党には先がないであろうことを解説しました。

ブログ冒頭の記事を見ても、玉木氏は元々財務官僚であり、例外なく経済オンチです。民主党代表選三候補はすべて経済オンチであり、経済について語っていることは、財務省のパンフレット以下であり、これでは、誰が代表になったにしても、新代表の経済対策を実行に移すと、景気低迷で雇用改善はブチ壊しなってしまいます。

民進党の議員のほとんどは、経済オンチです。幹部も、財務省の増税キャンペーンのパンフレットか、もしくはそれ以下ことしか発言できません。これは、財務官僚の洗脳の成果なのでしょうか、 本当に不思議です。

財務省としては、財務省のパンフレットに従った、経済政策を是とする政党や総理大臣ができれば、扱いやすくて良いのでしょう。そうして、事あるごとに「ご説明資料」等で徹底的に洗脳しているのでしょう。

民主党政権代表戦の候補者の三人が三人とも、経済政策について、財務省のパンフレット並、もしくはそれ以下のことしか語らないのですから、本当に民進党は財務省にとって都合の良い政党です。

民進党としても、財務省が安倍総理と対峙していることは認識しているのでしょうから、その面では互いに歩み寄り、協力できるところがあると考えているのかもしれません。

だから、もともと経済オンチの彼らは、財務省のいうなりの経済対策しか語れないのかもしれません。

民主党政権時代の事業仕分けなども、ほとんどが財務官僚のシナリオに基づき実施されたものです。

そうして、彼らの始末の悪いところは、雇用施策音痴でもあることです。このブログでは2012年12月の衆院選の際、安倍晋三総裁率いる自民党と、民主党の野田佳彦政権の決定的な差異は、金融政策を含むマクロ経済政策であるとし、雇用確保で差が出ると指摘しましたが、その後の失業率などのデータをみると、その通りになりまし。民進党は、世界の左派政党からもっと勉強すべきです。

世界的な潮流からすれば、左派政権こそ、雇用状況を良くするために、金融政策を含むマクロ経済政策をしっかりやるが普通です。安倍総理は、「働き方改革」によって、さらに雇用の改善をはかり、さらに民進党のお株を奪うような政策を実施しようとさえしています。

民進党代表選には、これ以外にも問題があります。それは、いわずと知れた、蓮舫氏の国籍問題です。

民進党の蓮舫代表代行は3日午前の読売テレビ番組で、司会者から台湾と日本との「二重国籍」を疑う指摘があることを問われ、「台湾籍を抜いている」と述べ否定しました。

蓮舫氏は「私は生まれたときから日本人だ」と説明。「高校3年で、18歳で日本人を選んだ」と述べました。また、「今、そういううわさが流布されるのは正直悲しい」とも語りました。

蓮舫氏は、テレビ番組で辛坊氏から国籍問題について質問を受けた
蓮舫氏が、台湾国籍を離脱していないなら、租税回避問題と類似しているし、表裏一体の部分もあります。 国際的な法制度の違いと国際間の法の穴の悪用 であり、処罰する法律がないことにも問題がありそうです。

蓮舫氏は、18歳で台湾籍脱離としていますが、それだけでは信用できません。中華民国国籍法では、20歳で国籍を選べようになっています。それまでは、たとえ他国の国籍を取得していたとしても、台湾籍を喪失することはできないようになっています。

だから、20歳になってはじめて、台湾国籍を抜くための書類「廃止台湾戶籍と喪失國籍」を作成して、帰化したい国の名称も記入してそれを提出し政府に認められれば、台湾籍を抜くことができます。そうして、その証明書として台湾政府からを得ることができます。

廃止台湾戶籍と喪失國籍」について説明した台湾政府の文書

いずれにせよ、蓮舫氏がいうように、18歳では台湾の戸籍を抜くことはできないのです。廃蓮舫氏が疑惑を晴らしたいのなら、これら証明書を少なくとも民進党執行部には提出するべきです。喪失したというのなら、台湾政府に再発行してもらうべきです。民進党もこのような手続きを欠くようなことをしていたとすれば、問題外です。

このまま曖昧にすべきではありません。蓮舫氏には立証籍にがあります。

民進党はこのような状況ですから、財務省としても当然、利用できるうちは利用するのでしょう。しかし、民進党が財務省の省益に反するような行動をしたり、その他大きな問題行動をして、財務省が害が及ぶようなことにでもなれば、すぐに見限ることになるでしょう。

そういう意味では、民進党は、財務省の使い捨て政党ということです。考えてみると、民主党が壊滅しないのは、財務省の強力な後ろ盾があるからかもしれません。でなければ、民進党は一昔前の社会党のようになっていたのかもしれません。財務省に見限られたら、民進党は破滅です。

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2016年9月3日土曜日

利上げ巡り気迷い 米雇用統計、割れた市場反応―【私の論評】金融政策と雇用が相関関係にあるという観念がないのは、世界で日本と韓国だけ(゚д゚)!

利上げ巡り気迷い 米雇用統計、割れた市場反応

日経新聞

米連邦準備理事会(FRB)による9月利上げの是非を巡り、最大の注目材料とされていた8月の米雇用統計。事前予想を下回った結果に、市場の反応は割れた。「9月」の観測はやや後退する一方で「年内」への意識が強まったことが背景にありそうだが、市場の見方は固まっていない。20~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで、市場関係者の悩ましい日々が続きそうだ。

9月利上げの観測はやや後退する一方、「年内」への意識が強まったが、
市場の見方は固まっていない(ニューヨーク証券取引所)
2日午前8時半。雇用者数の増加が15万1000人と市場予想(18万人程度)を割り込んだ8月の米雇用統計の結果を見て、各市場の反応は割れた。緩和長期化と踏んだ株式相場は上昇した半面、債券市場と外国為替市場では利上げを意識する形で米長期金利が上昇(債券価格が下落)し、円安・ドル高が進んだ。

直後の反応はわかりやすいものだった。ダウ工業株30種平均の寄り付き前、同先物に上昇圧力がかかり、一時、発表前に比べ約60ドル高い水準となった。長期金利は急速に低下。外為市場では円買い・ドル売りが先行し、一時一ドル=102円台後半をつけた。どれも「9月利上げは遠のいた」との判断からだった。

問題はその後。ダウ平均は高く始まり、上昇幅は一時120ドルを超えるなど株高が持続。これに対し、長期金利には上昇圧力がかかり、米10年物国債利回りは1.5%台前半から1.6%台まで急速に上昇。これをみて円相場は一気に下げに転じ、一時104円台前半と約1カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。

利上げ観測を巡る株式市場と債券・外為市場の「ねじれ」。強引に理屈をつけるとすれば、雇用統計が市場予想を下回ったことで「9月利上げの決め手にはならなかった」一方、雇用の改善自体は続いていることがはっきりしたため「年内の利上げは一段と無視できない線になった」という市場の微妙な受け止めを映したといえる。つまり前者が強く出たのが株式市場、後者が債券・外為市場と解釈すれば、一応の整合性はとれる。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが米金利先物市場での織り込み度合いから計算した「利上げの確率」をみると、9月利上げの確率は21%程度とわずかに前日から低下。逆に、年内の利上げは約54%とわずかに上昇した。

FRBのイエレン議長やフィッシャー副議長が8月下旬にワイオミング州で開いたジャクソンホール会議で利上げに前向きな発言をして以降、とくに株式市場では目先の「9月の有無」が焦点となり、上値が重くなっていた。9月利上げの可能性が低くなったとの受け止めは株高要因となる。

債券市場はやや複雑だ。同じ米国債でも、2年債利回りは発表後の上昇の勢いは鈍く、発表前後でほぼ同じ水準にとどまった。9月の利上げ観測の後退を強く反映した形だ。より長い期間の取引となる10年債利回りは、発表前よりも高い水準まで上昇。年内利上げを覚悟する見方が強く反映したとみることもできる。

10年債については、債券需給面の動きが強く出たとの声も多い。社債の大量発行を控え、米国市場の連休前(5日=月曜日=はレーバーデーで祝日)に持ち高を整理しようという動きがあったという。日米金利差拡大の観測を背景にした円安・ドル高の流れは、米長期債の一時的な需給要因にひきずられたという側面も無視はできない。

いずれにせよ、すっきりしない市場反応は、利上げを巡る気迷いの証左でもある。米ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏は9月利上げの確率を40%から55%に引き上げた。FRBの利上げに向けた積極姿勢を踏まえてのことだ。来週以降のFRB高官らの発言内容によっては、9月の利上げを巡り市場が大きく揺れる可能性もある。

【私の論評】金融政策と雇用が相関関係にあるという観念がないのは、世界で日本と韓国だけ(゚д゚)!

ブログ冒頭のような日経新聞等の記事を読むと、私はいつも驚嘆します。なぜなら、日経新聞でも、雇用と金融とは密接な関係があることをうかがわせる内容が掲載されているからです。

これは、米国のニュースをそのまま引用しているのかもしれませんが、上の記事には「雇用者数の増加が15万1000人と市場予想(18万人程度)を割り込んだ8月の米雇用統計の結果を見て、各市場の反応は割れた。緩和長期化と踏んだ株式相場は上昇した半面、債券市場と外国為替市場では利上げを意識する形で米長期金利が上昇(債券価格が下落)し、円安・ドル高が進んだ」とあります。

5月、デンバーで開催された就職フェア
米国では、日銀が現在行っているような金融緩和策は一巡して景気は回復し、雇用状況も良くなっています。しかし、いつまでも緩和気味にしておくと、今度はインフレなどが問題になるので、時期を見計らって、利上げをしようとしているのです。

そうして、利上げの指標として、労働統計を指標としているのです。労働統計で、雇用がある程度以上の水準(今回は雇用増が18万人程度)であれば、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会:日本の日銀にあたる)は、利上げをしても良いと判断して利上げをする予定なのです。

しかし、今回は雇用増が予想を下回ったのですが、雇用は増え続けているので判断の難しいところです。利上げはないかもしれないと予想する市場関係者もあれば、やはり利上げは近いと予想する市場関係者もいるわけです。

上記のように、米国では金融政策は雇用に密接に関わりがあることが、一般社会常識になっています。そうして、これは米国に限らず、世界中のほとんどの国々で常識とされています。

しかし、日本では、まだこれが一般社会常識にはなっていないようです。そもそも、日銀が発表する資料などでは、物価目標などは掲げられていますが、雇用の目標はありません。

雇用と金融政策の相関関係はフィリップス曲線を見れば一目瞭然
そうして、日銀に限らず、日本では大手新聞のほとんどは、雇用と金融政策とを関連付けて報道するところはまずありません。日本では、日銀や新聞だけでなく、大方の政治家や始末に悪いことに、経済学者の多くや、民間経済アナリスも、雇用と金融政策を関連付けて語る人がいません。

しかし、米国では金融政策と雇用が密接に関わりがあるのに、日本だけは関係がないということは絶対にあり得ません。これは理論上もそうですし、日本の実体経済をみてもそれを理解できます。

特に、昨年のはじめころまでは、日銀の金融緩和策によって、日本の雇用状況は著しく改善され続け、まさに典型的であり、それこそ経済学の教科書に掲載しても良いような状況でした。

実際、昨年は、三大都市圏の平均時給が2006年の調査開始以来最高になったと、リクルートジョブズから発表がありました。

これは、2015年6月の「アルバイト・パート」募集の求人情報を抽出し、募集時平均時給を集計したものです。それによれば、6月の平均時給は967円で、前年同月比10円増(+1・0%)となっていました。職種別では「専門職系」で37円増(+3・4%)となったのをはじめ、すべての職種で前年同月比プラスとなっていました。

首都圏の平均時給は1003円で、同10円増(+1・0%)。東海の平均時給は908円で同10円増(+1・1%)。関西の平均時給は934円で同12円増(+1・3%)でした。三大都市圏とも似たような状況で、アルバイト・パート時給の上昇が見られていいました。

このブロクでは、金融政策が雇用政策であることを強調してきました。金融政策はすべての業種に薄く効果があるため、業者ごとでは認識できない場合もあります。しかし、雇用をすべての業種で足し合わせて見れば、その効果は歴然です。

金融緩和すると、第一段階として、少しタイムラグ(時間のずれ)があって、まず就業者数が増加する。初期段階では、それまで職のなかった人が非正規やアルバイト・パートという形で雇用増加に貢献することになります。

新たに就業者に加わった非正規やアルバイト・パートの賃金は、既に雇用されている人より低いため、それまでの就業者を合わせた全体の平均賃金を押し下げることになります。

この点だけをとらえ、就業者数が増えたことを無視して「賃金が下がっている」とあげつらい、金融緩和を否定する人もいるのですが、経済の波及メカニズムをまったく理解していないだけで、反論にもなっていません。

第二段階として、就業者数が増えてくると、失業率が下がり出し、もうこれ以上就業者数が増えないような完全雇用の状態に近くなります。

そこで賃金が伸び始めます。特に、アルバイト・パートの時給や残業代などが上がります。そうなると、下がっていた賃金も反転し上がり出します。雇用形態も徐々に非正規やアルバイト・パートの割合が減り、正規雇用が多くなってきます。

昨年、アルバイト・パートの時給が上昇してきたということは、いよいよ金融政策の効果が第二段階に入ってきたことを意味しました。

民主党政権と安倍晋三政権の雇用政策の差が歴然と出ました。民主党は白川(方明総裁)日銀の路線だったのですが、安倍政権は黒田(東彦総裁)日銀でやってきました。そうして、これほど雇用政策と金融政策の密接な関係をはっきり示したケースはめったにありません。教科書に載せてもいい具体例でした。

しかし、今年は平成14年度からの8%増税の悪影響と、本来日銀はさらなる追加金融緩和をすれば良いにもかかわらず、結局追加金融緩和を行わなかったため、未だ実質賃金が上昇はするようにはなっていますが、弱含みです。これでは、また下がる可能性もあります。これをもって、アベノミクスは限界に達したとする人々もいますが、これは大きな間違いです。

これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!


この記事は、今年6月16日のものです。この記事のタイトルはあまり良くないです。このタイトルは、「日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定」とあります。これは、今までの金融緩和策を維持するというだけで、追加金融緩和は見送ったということです。

そのため、市場が失望して、失望売りにつながり、急速な円高株安になりました。

そうして、この記事では、黒田総裁がなぜ追加金融緩和を実行しなかったかについて、失業率の見方の誤りによるものであると掲載しました。

その部分を以下に掲載します。
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。
過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。


過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。
であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。
日銀黒田総裁

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。 
2014年10月の日銀の追加緩和は、安倍晋三政権による消費税率10%への再増税を後押しするためだったといわれており、このときの黒田相殺は、中央銀行総裁というよりは、元財務省出身者の立場が良く現れていたと思います。

しかしながら、マイナス金利の導入は、中央銀行総裁としての面目躍如というところで、見事に中央銀行総裁の立場を示したものといえました。 
しかし、安倍政権は再び再増税を延期し、今回もまた増税を見送ったというか、以前のこのブロクにも述べたように、これはほんど凍結に近いものです。財務省の落胆はかなり、大きかったでしょう。この心情を理解した黒田総裁は、今回も金融緩和する気になれなかったのでしょう。まさに、今回は、中銀行総裁というよりは、旧財務省出身者の立場が貫かれているようです。

しかし、本来は金融緩和を行うべきでした。そうして今回行うべきは、「マイナス金利」の拡大ではなく、量的緩和による国債買い入れ額の拡大とすべきでした。
結局、日銀黒田総裁は、3%が日本の構造的失業率であると見て、追加金融緩和を行わなかったのですが、本当はやはり2.7%であり、追加金緩和を行えば、失業率が2.7%にまで下がり、そうして実質賃金が強含みで上がることなったと思います。

現状は、上記の金融緩和の二段階の二段階目のあたりで足踏み状態をしているということです。この二段階目が終了すると、完全失業に近い状況になり、今度は実質賃金が上昇することになります。このまま、追加金融緩和をしなければ、実質賃金があまり上昇しないですし、物価目標も達成できないことになります。

しかし、多くの新聞、政治家、識者など金融緩和と雇用と結びつけて考える習慣が全くないので、このような分析ができませんし、最初からするつもりもありません。

そうして、アベノミクスは限界などととして、意味不明な理由をあげてそれを根拠としています。

先に述べたように、米国では金融政策と雇用は不可分に結びついているという一般常識が社会に根付いており、FRB (準備制度委員会)には雇用に対する責任があるとされ、金融政策の一手法である利上げをするにしても、社会からの批判を避けるため、雇用統計を参照しながら、雇用状況が悪化しないように、慎重に利上げをしよとしているのです。

利上げの時期を見誤り、利上げのタイミング遅くなれば、インフレを招いてしまうことになります。利上げのタイミングが早ければ、雇用状況が悪くなってしまいます。このようなことを避けるために、FRBはより慎重のそのタイミングを見計らっているのです。

しかし、日本では上で述べたように、雇用と金融政策が不可分に結びついているという認識はあまりないので、日銀も実質賃金があまり上がらなくても批判されることは全くありません。

本来ならば、日銀がもっとはやく追加金融緩和を実施していれば、実質賃金もさらに目立って上がりはじめ、さらには物価目標も達成できたかもしれません。

そうして、もし8%増税など最初から実施せず、緩和を続けていれば、今度はいずれはインフレを招いてしまうことになるので、金融緩和をやめ、FRBと同じように利上げを検討する時期が来たかもしれません。

日本では金融政策と雇用との相関関係など知ら
なくても一般常識の試験にパスすることができる
とにかく、この日本では、マスコミ、多くの経済学者、官僚、政治家などが、雇用と金融政策の関係を全く理解していないので、結局のところ、過去においてはいつも金融緩和が見送られ、結局のところ、金融引き締めばかりして、20年もの間デフレが続いてしまったのです。

だからこそ、この記事の冒頭に書いたように、私は日経新聞が、アメリカの雇用統計と利上げを関連付けた記事を掲載しているのを見ると、驚嘆してしまうのです。

それにしても、金融政策と雇用が無関係などという馬鹿げた観念は、いい加減もう捨て去るべき時に来ていると思います。

とにかく、何をさておいても、日本でも雇用が一番という観念を植え付け、一般社会常識とすべきです。本来、雇用ほど重要なものはないはでず。雇用が良ければ、他は多少悪くても目をつぶるべきですし、雇用が悪ければ、他良くても不十分で、早急に雇用を改善すべきであるとの観念を定着させるべきです。

世界を見回してみると、雇用と金融政策の関係が、ほとんど認識されていない国は、韓国くらいなものです。韓国では、若者雇用が劇的に悪化して、若者間でその状況を現した言葉「ヘル朝鮮」が流行っても、マスコミは無論のこと、経済学者も政府も金融政策などは全くのスルーで構造改革論ばかりしています。これは、まるで少し前の日本のようです。

実際、韓国の大手新聞である中央日報は、デフレ礼賛記事を掲載しています。常識はずれにも程があります。その記事のリンクと最近の韓国の消費者物価指数の推移を以下に掲載します。


デフレの韓国では今年に入ってからもじりじりと物価が下がっている
日本の新聞も雇用と金融政策の関係を理解していないようですが、さすがにデフレ礼賛の記事は掲載していなかったと思います。ただし、デフレ克服のため、構造改革をすべき等のような馬鹿げた論評はしていました。

マスコミがデフレを礼賛するようでは、日本のマスコミより始末に悪く、韓国は雇用状況が最悪で、景気も低迷しているのに、金融緩和をするなど覚束ないことでしょう。この様子では、韓国はこのまま景気と雇用が悪化し続け、いずれ再び通貨危機に見舞われることになるでしょう。

日本の、通貨スワップなどの実質的な韓国経済援助策によっても、韓国経済が立ち直ることはないでしょう。

それにしても、韓国と同じように、日本でも大多数が、金融政策と雇用の相関関係をほとんど理解していないにもかかわらず、安倍総理はそうではなかったし黒田総裁も最初はそうではなかったようなのでので、雇用がかなりの水準まで回復しました。しかし、今のまま日銀が追加金融緩和をしなければ、来年あたりからまた悪くなることでしょう。

今後も安倍政権には、これを理解しない愚かな勢力に負けず、日本の雇用をさらに上向かせ、安定させていただきたいものです。韓国のようになるのだけは、願い下げです。

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2016年9月2日金曜日

「尖閣諸島を手放せ」という人が知らない現代中国の「侵略の歴史」―【私の論評】尖閣を中国に渡せば、勢いづき日本侵攻の足がかりを提供するだけ(゚д゚)!

「尖閣諸島を手放せ」という人が知らない現代中国の「侵略の歴史」

■「尖閣は要らない」と言った元参議院議員

尖閣諸島周辺や南シナ海での乱暴狼藉を見て、日本国内において中国への危機感を強める人が増えているが、一方で、不思議なほど中国への警戒心がない人もいる。8月29日に放送された『橋下×羽鳥の番組』(テレビ朝日系)では、元参議院議員の田嶋陽子氏が「尖閣諸島は一度手放して中国に渡すべき」という大胆な持論を述べた。

この発言に対して放送直後からネットでは議論が沸き起こったが、こうした意見は田島氏の専売特許ではない。

「友好の妨げになるくらいならば、あげてしまえばいい」という類のアイデアは、主に左派とされる人の口から出てくることが多い。

こうした人たちは「それで揉め事がなくなって、友好関係が保てるのならばいいじゃないか」と考えているのだろうが、果たして中国に対してそのような善意は通用するのだろうか。そのように心を許しても大丈夫なのだろうか。

それを考えるうえで重要なのは、過去の歴史を学ぶことだろう。

参考資料:[出典]防衛省のレポート「南シナ海における中国の活動」(2015年5月29日)

公文書研究の第一人者である有馬哲夫早稲田大学教授は、新刊『歴史問題の正解』の中で、「現代中国の歴史は侵略の歴史である」と題した章を設け、戦後間もない頃の中国の「侵略」の姿をわかりやすくまとめている。以下、同書から引用してみよう。

***

■中国のアジア大侵攻

歴史問題の正解(新潮新書)

意外なことに、中国のアジア各地での拡張主義的動きは、朝鮮戦争と時期が重なる。

筆者は朝鮮半島に約30万の軍隊を送った中国は、この戦争にかかりっきりだったと思い込んでいたが、実際はまったく違っていた。

中国は朝鮮戦争とほぼ同時進行で、ヴェトナム北部に大軍を送り、ミャンマー(当時はビルマ、以下同)北部・タイ・ラオス・中国南部の国境地帯で領土拡張の浸透作戦を行い、台湾に侵攻するための艦船の供与をソ連に求めていた。

しかも、前年の1949年にはすでにチベット東部を侵略していて、朝鮮戦争のさなかにも中央チベットまで侵攻し、チベット征服を完成させているのだ。

まさしく貪欲そのものだ。

こういった中国の侵略的動きの全体を眺めてみると、朝鮮戦争への中国の参戦がこれまでとは違ったものに見えてくる。つまり、この参戦は、自衛というよりは、中国が周辺諸国に対して起こしていた一連の拡張主義的動きの一部だったと見ることができるということだ。

事実この戦争のあと、中国はソ連に代わって北朝鮮の宗主国となる。

その後、中国はさらにヴェトナム、ラオス、ミャンマー、タイ、インドへとターゲットを変えつつ、侵略的動きを継続させていく。近年の西沙諸島や南沙諸島の島々の強奪、そして尖閣諸島への攻勢は、この延長線上にあるのだ。

まず、中国の拡張主義的動きがどのような背景から起こったのかを知る必要がある。以下の本国(アメリカ)の国務省―アメリカ極東軍司令部(東京)間の1950年1月24日の電報はこれを明らかにしてくれる。

「(前略)中国の勢力圏のなかにおいては、ソ連はチベットを含む戦争において(中国に)特別な権利を認めることになっている。熱烈な親ソ派は、共産主義拡大のためには国境線など忘れるべきだとする。共産主義のために中国が提供すべきとされる兵力は500万に引き上げられた。30万人の中国人労働者がすでに満州からシベリアに送られており、さらに70万人が6ヶ月のうちに華北から送られることになっている。中国のあらゆる施設と炭鉱にソ連の技術者が受け入れられることになっている。ソ連式の集団的・機械的農業を夢見る熱烈な親ソ派は、農民がいなくなった耕作地と残された人々の飢餓を平然と眺めている。(後略)」

■自国民を「シベリア送り」に!

ここでは中国とソ連の間の密約が明らかにされている。つまり、中国は共産圏拡大のために500万人までの兵力を提供することを約束し、満州と華北から100万人の労働者をシベリアに送ることにしている。それと引き換えに、中国の鉱山や施設にソ連の技術者を送ってもらい、領土を拡張することをソ連に認めてもらっている。

満州と華北の人民といえば、軍閥同士の覇権争い、日中戦争、ソ連軍の侵攻、国共内戦によって多大の被害を被った人々だ。新生中国は、よりによって、もっとも戦禍に苦しんだ同胞をシベリア送りにし、その代わりとして、ソ連の技術者を派遣してもらい、隣国を侵略する権利をソ連から得たのだ。

しかも、特に熱烈な親ソ派は、大動員の結果として広大な耕作放棄地が生じても、あとに残された人々が飢餓に苦しんでも、平然としているという。ソ連式の集団的・機械的農業が導入できるというので、このような事態を歓迎しているようだ。朝鮮戦争に駆り出されたのもこの地域の住民だったのではないだろうか。「中華人民共和国」といいながら、中国共産党幹部は人民の生活と生命をないがしろにしている。

***

「歴史に学べ」といった主張は、左派、右派双方から唱えられているが、冷静に事実を見れば、大日本帝国の「侵略」によって平和が侵され、甚大な被害を受けたはずの中国が、その戦争からほんの数年で、アジア各地を侵略していただけではなく、100万人もの自国民をシベリア送りにしていたということになる。

「尖閣諸島なんか手放せ」という人たちは、この中国と現在の中国はまったく別の性質を持つ国家だと思っているのかもしれない。しかし、その根拠はどこにあるのだろうか。

【私の論評】尖閣を中国に渡せば、勢いづき日本侵攻の足がかりを提供するだけ(゚д゚)!

上記の歴史的事実、私はほとんどを知っていました。ただし、100万人もの自国民をシベリア送りにしていたという事実は知りませんでした。これは、自国民とはいつつ、主に満州、華北の漢民族ではない異民族である満州族を送ったもののようです。

満州民族(マンジュみんぞく)とは、満州族は、満洲(中国東北部、沿海州など)に発祥したツングース系民族。古くは女真族といいました。17世紀に現在の中国およびモンゴル国の全土を支配する清を興しました。同系のツングース民族にオロチョン、ウィルタ、ナナイ、エヴェンキ、シベがあります。

2010年の中国の国勢調査では1,038万人とされ、中国に暮らす55の少数民族では、チワン族・回族に次ぐ人口です。

満州民族とはいっても、なかなかイメージしにくいでしょうが、旗袍(いわゆるチャイナドレス)は、元々は満州族の民族衣装です。

現代中国では満州族でなくてもチャイナドレスを着る
ことがあるが、これは元々は満州族の民族衣装である。
それと、歴史ものの映画などでは、中国人男性が辮髪という独特のヘアスタイルをしています。多くの人は、これが元々の漢民族のヘアスタイルだと思い込んでいるようです。しかし、それは違います。

満州族の辮髪
満州族は、17世紀に現在の中国およびモンゴル国の全土を支配する清を興しました。その過程で、満州族は1644年に北京入城後、直ちに命令を出して、漢民族にもこの辮髪とすることを強制しました。これに抵抗したものを死刑にしたので、あっという間にこの髪形は中国全土に広まったのです。

さて、上の記事ではなぜか、あまり詳しくは掲載されていませんが、満州はもとより、チベットも、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)も、内モンゴルも元々は中国の領土ではなく、現在の中華人民共和国が建国したときには、外国で、その外国を中国が侵略して自国の領土にしたものです。チベット侵攻の歴史を以下に簡単に掲載します。

1950 年チベット政府代表団は、デリーで中共大使と会談しました。中共大使は「チベットが中国の一部」と提案したのですが、チベット側はこれを拒否しました。この交渉中の10月に中国人民解放軍、が東チベットに侵入しました。

チベット国民議会は、第14世ダライ・ラマ法王への全権を満場一致で確認しました。ダライ・ラマ法王とチベット政府は中共の侵略に抗議し、国際連合に訴え、エルサルバドル動議を提出提出しました。

そうこうしているうちに、6月には 朝鮮戦争が勃発しました。 1951 5月・中共の軍事的脅迫下で、チベット政府は17条協定に調印しました。9月・中国人民解放軍が20000余の兵力でラサに進駐しました。ラサ経済は混乱・チベットの住民は苦境に陥りました。この苦境を見かねたダライ・ラマ法王はやむなく17条協定(チベットの平和解放に関する協定と称す)を批准したのです。

東トルキスタンも内モンゴルもチベットと同じように、中国が侵略して自らの領土にしています。

上の地図は、中華人民共和国が成立したばかりの頃の中国の版図を示すものです。赤色の部分がそうです。この地図をご覧になってもおわかりになるように、満州国、内蒙古国、東トルキスタン国、チベット国も元々は独自の国旗を持つ国家であり、中国にとっては外国でした。

その外国を武力でもって侵攻して、自らの版図にしたのが今の中国なのです。

そうしてその後も中国はこれらの自国の自治区にとんでもない残虐な仕打ちをしています。以下に、内モンゴルの例をあげます。

それは、1966年から中国で吹き荒れた文化大革命で、モンゴル人に対してなされたとされる事例です。主導したのは漢族。欧米の研究者は、拘束されたモンゴル人約50万人、うち殺害された者10万人。殺害された者と釈放され自宅に戻ってから亡くなった人の合計は「30万人」とされています。

内モンゴル自治区政府幹部・ジェリム盟出身のアムルリングイは、地面に押さえつけられて、真っ赤に焼いた鉄棒を肛門に入れられ、鉄釘を頭に打ち込まれました。

あるモンゴル人は、マイナス40度まで下がるモンゴル高原の冬に、膝まで水を満たした『水牢』に入れられ、その足は水とともに凍ってしまいました。

ブタやロバとの性行為を強制する、燃えている棍棒を陰部に入れるなど、中国人たちはおよそ人とは思えない残虐な行為を行っていました。

妊娠中の女性の胎内に手を入れて、その胎児を引っ張り出すという凄惨な犯罪も行われ、中国人たちは、これを『芯を抉(えぐ)り出す』と呼んでいました。 楊氏は『狂暴国家 中国の正体』で、モンゴル人にとって文化大革命はジェノサイド=民族抹消行為だったとしています。

文革当時に中国の工場に掲げられたスローガン『毛主席 万歳 万万歳』
「毛沢東と、人民の味方たる共産党の首長が断罪した『民族分裂主義者』たちを殺害することは、躊躇ない善なる『革命行為』に発展していった」としています。内モンゴル自治区のモンゴル人が「民族分裂主義者」と断罪されたとき、中国人(漢族)は「善」として虐殺をなしたというのです。尚、モンゴル問題に限らずウイグル問題もチベットのそれも、ユーラシア大陸で中国に苦しんできた民族の側から中国を見る目を教えてくれるのです。

中国はこのようなことは、一切認めません。文化大革命全体の実態も闇に沈んでいるのてです。実際、中国人の若い留学生など、国内で文化大革命のことなどほとんど教えおらず、ほとんどの若者は、日本に留学してはじめて、その事実を知ることがほとんどです。

さらに、天安門事件も、教えられておらず、ほとんどの留学生は、日本に来て初めてその事実を知ることになったと言われています。

楊氏の提言に学べるところは大きいです。日本はモンゴルをはじめユーラシア外交にもっと目を向けるべきだという提言もそうですし、あるいは集団的自衛権をめぐる日本国内の議論について述べた次のようなくだりは、本当に参考になります。

「自衛権のない国家は去勢された男のような存在です」。

能天気に日中友好を説く日本人に対しても、以下のように警鐘を鳴らしています。

「ぜひ、『日中友好論者』たちにも中国共産党支配下の内モンゴル自治区や『反テロの前線』たる新疆ウイグル自治区、焼身自殺による抗議活動が続いているチベットにも足を運んでほしいものです」

本当に、そうしていただきたいものです。それに、そこまでしなくても、過去の中国の周辺諸国への侵攻の歴史をみれば、尖閣を中国に渡すことなど絶対にできないことがわかるはずです。そんなことをすれば、尖閣諸島が中国の日本侵攻のための前進基地になるだけで。

彼らが、尖閣諸島を奪取すれば、南シナ海の環礁と同じく、軍事基地や、空港などを建設することになります。

現在の中国も過去に行った侵略を現在進行形で続けていると考えるべきです。現在でも、中国と他国間の国境紛争は絶えないです。

そうして、最近では、南シナ海や東シナ海への侵攻です。

中国の政治体制は、建国の頃と全く変わっていません。あいかわらず、共産党一党独裁です。変わったのは、人間には寿命があるので、いつまでも中共政府の幹部に永遠に留まるわけにはいかないので、人間が変わっただけで、国家体制には何も変わりありません。

尖閣諸島を手放せなどという人々は、このような中国の暗黒の歴史を知らないのでしょう。本当に愚かなことです。尖閣を手放せば、中国はこれに勢いづき物理的にも精神的にも日本侵攻のための足がかりを提供するようなものです。

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2016年9月1日木曜日

中国、底なしデフレスパイラル 経済悪化→リストラ拡大→冷める消費意欲―【私の論評】中国の本質は、中所得国と発展途上国の連合体(゚д゚)!

中国、底なしデフレスパイラル 経済悪化→リストラ拡大→冷める消費意欲

中国のGDPの統計値はほとんど出鱈目とされている。IMFも中国の
出した統計値を元にして、このグラフを作成しているものと考えられる。

 2016年4-6月期の中国の経済成長率(実質GDPの成長率)は、対前年比で6・7%増となっている。過去10年以上もの期間、中国の経済成長、つまりはGDP=需要の拡大を牽引してきたのは、投資という需要項目であった。特に、民間企業が設備投資や住宅投資に巨額の資金を注ぎ込み、経済成長に貢献してきたわけだ。

 その中国の「投資」が、驚くべき事態に陥っている。

 1-6月期の中国の投資において、民間投資はわずかに対前年同期比2・8%の増加に過ぎなかった。代わりに、国有企業が対前年同期比23・5%と、投資全体を下支えしている。

 要するに、現在の中国は民間が投資意欲を喪失し、政府の公共投資を国有企業が受注することで、何とかGDPが維持されている状況になっているのだ。

 投資ではなく、消費を見ても、やはり「政府」の影響力が強まっている。1-6月期の中国の個人消費は対前年同期比10・3%と、GDP成長に貢献した。消費の主役が何かといえば、自動車購入でであった。

 実は、中国共産党政府は景気の急激な失速を受け、自動車販売を下支えすべく、小型車やエコカー向けの減税や補助金といった政策を打ったのだ。結果的に、自動車販売が増え、消費総額が拡大したわけだが、投資同様に「政府の政策主導」になってしまっている。

 中国国務院は22日、企業の「借り入れコスト」を引き下げるための指針を発表した。例えば、中央銀行が市中銀行の流動性を拡大することで、中小企業への融資を拡大するという。

 あるいは、銀行に対し、融資債権への妥当なプライシング(金利水準の決定)を求め、非正規の手数料徴求を禁じるという。分かりやすく書くと、銀行に対し「安い資金コスト(金利など)で企業にお金を貸し付けろ」というわけだ。

 問題は、現在の中国が完全な供給能力過剰、需要不足状態に陥っているという話だ。日本の例を見れば分かるが、需要が不足している環境下では、金融政策で金利を引き下げたところで、企業は借り入れや設備投資を増やさない。なぜなら、もうからないためだ。

 中国産業界は、すでに過剰生産能力を削り取るべく、リストラクチャリングに精を出している。鉄鋼や石炭、石油などの大手国有企業は、1社あたり数万人規模で人員削減を進める計画だ。

 企業のリストラは、中国人民の消費意欲を冷ます。結果、民間企業はますます設備投資を絞り込み、デフレスパイラルへと落ちていく。中国共産党は中国経済のデフレ化を食い止めることができるのか、正念場を迎えようとしている。

 ■三橋貴明(みつはし・たかあき) 


【私の論評】中国の本質は、中所得国と発展途上国の連合体(゚д゚)!

上の記事では、全く触れていないですが、中国のGDPはほとんど出鱈目だとされています。特に、GDPは全く正しくも根拠もなく、政治的メッセージに過ぎないものです。

それについては、過去のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い ―【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?
2015年から輸入が激減、この状況だと猛烈なデフレになっているか
そもそも、GDPが出鱈目なのかいずれかのはずである・・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を以下に抜粋します。
中国の経済統計は実体経済の正しい姿と言うより、政治的なメッセージと受け止めるべきものだ。中国政府の意図は、対外的には「中国経済は良くないが心配しないでほしい」という願望、対内的には「7%成長は政治的な強い意志だ」との表明である。

GDP発表の1週間ほど前に発表された貿易統計は、外国との関係があるので、捏造しにくい。それによれば、15年の輸入は14・1%の減少である。輸入減の原因は資源価格の低下によるものと説明されているが、中国が発表した経済成長率が正しいなら、猛烈なデフレ経済になっていないとおかしい。

要するに、貿易統計が正しい場合、経済成長率が正しくないか、デフレ経済かということになってしまう。どちらにしても、中国経済は正常ではないというわけだ。
ブログ冒頭の記事で、三橋貴明氏は、中国のGDP統計が一応正しいものとして、論を進めているようですが、私自身は、中国経済はデフレでもあり、経済成長も6.7%ではなくもっと低いのだろうと考えます。一般的に一国の経済が、デフレ気味であれば、輸入は減ります。逆にインフレ気味であれば、輸入は増えます。

これは、理屈で考えればわかります。デフレであれば、そもそもモノが売れないので、輸入も減ります。逆にインフレであれば、モノが売れるので、輸入は増えます。

中国経済成長が政府発表の数字より低いのは、李克強指標をみても明らかです。

「李克強指数(Li Keqiang Index)」です。「チャイナ・モメンタム・インジケーター」とも言われるようです。これは電力消費と鉄道貨物輸送量と銀行融資を基にした指標です。本来これらは、GDPと強い相関関係があるはずであり、これによって、中国のGDPの実体を知ることができるとされているものです。

中国政府の発表するGDPが政治メッセージで過ぎないので、信用できないことから、李克強指数のほうが、GDPの実体を現していると考えられます。李克強首相が「GDPは信頼できないけどこの3つのデータは比較的信頼できる」と言ったことから「李克強指数」と呼ばれています。

ウィキリークスによれば、李克強総理は遼寧省書記をしていた2007年、駐中国米大使に「経済評価で注目する統計は、電力消費、鉄道貨物量および銀行融資の3つだけ。GDP統計は『人為的』で『参考用』にすぎない」と語ったとされています。

この李克強指数からみれば、中国の4 -6月期のGDPの数値も中国政府の政治的メッセージに過ぎず、15年あたりの数字から類推すると、おそらく3%以下、おそらく3%を切るものであることが推定できます。

それから、ブログ冒頭の記事で、三橋氏は、「金融政策で金利を引き下げたところで、企業は借り入れや設備投資を増やさない。なぜなら、もうからないためだ」としていますが、金融政策には金利引き下げの他にも方法があります。

それは、日銀が2013年から行っている、市場における有価証券や手形を中央銀行が買い取ることにより、市場に資金を放出し、金融の緩和を図る(買いオペレーション)方式や、人民元の刷り増しです。

しかし、それは中国はできません。なぜなら、中国ではすでにキャピタル・フライト(国内から海外へ資本(外貨、主にドル)が一斉に流出する資本逃避のこと)が起きているからです。

それに関しては、昨年すでに中国で2013年末から15年3月末の間に約100兆円のキャピタル・フライトが発生していたことをこのブログに掲載しました。

中国銀行(中国の中央銀行)が、大々的に買いオペをしたり、元刷り増しなどを行った場合、強烈な元安を招き、それが金融不安をまきおこし、キャピタル・フライトにさら拍車をかける可能性が大きいため、利下げ以外の金融緩和になかなか踏み切れないのです。

キャピタル・フライトが激しくなれば、中国内に大量のドルがあるということが、元の信用の裏付けになっていたものが、それがなくなり、元は紙切れのように価値のない存在になってしまいます。それを中国政府は恐れているのです。

この状況は、韓国と似ています。それについては、以前もこのブログに掲載しました。韓国もデフレ状況なのですが、日韓通貨スワップにより、外貨をある程度確保した上で、金融緩和に踏み切ることもできます。そうなれば、金融緩和によるキャピタル・フライトも激烈な状況にはならず、ソフトランディングして、デフレを克服するのは意外と簡単にできそうです。

ただし、韓国内では、政府から財界、マスコミに至るまで、経済難を乗り切るためには、金融緩和ではなく、構造改革が必要という認識のようで、なかなか金融緩和に踏み切るりそうにもありません。こんなことを繰り返しているうちに、また通貨危機に見舞われることになるかもしれません。

しかし、中国の場合はより深刻です。中国の場合は、元々米国や日本などと通貨スワップ協定を結んだこともないですし、これからも結ぶことはないでしょう。

それに、通貨スワップを結んでいたにしても、日本や米国でも、100兆以上もの資金を融通するのは容易いことではありません。

韓国の場合は、もともと経済規模が小さく、GDPは東京都とほぼ同じですから、中国などと比較すれば、相当低い金額の通貨の融通でも、何とかなります。それこそ、日本国内の地方自治体に対して支援するくらいの感覚ですみます。

しかし、中国はそんなに簡単にいきません。それに、韓国の場合は、元々GDPに占める個人消費の割合が、5割り程度ということもあり、通貨スワップでキャピタル・フライトを軽減しつつ、金融緩和をすれば、デフレを克服するのは、本来容易です。

しかし、中国の場合は、GDPに占める個人消費の割合は、35%程度であり、金融緩和をして個人消費が増えたにしても、それだけでデフレを脱却できるかどうかは未知数です。

やはり、ブログ冒頭の記事でも「政府の公共投資を国有企業が受注することで、何とかGDPが維持されている状況」という構造的な問題があります。韓国の場合なら、日本などの先進国に比べれば、個人消費がGDPに占める割合が50%ですから、これを金融緩和と積極財政によって伸ばすことも容易です。

しかし、中国の場合、個人消費を35%から60%に持っていくなどのことは、至難の業です。おそらく、抜本的な構造改革が必要になるはずです。

その構造改革の中には、当然のことながら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化も含まれることになるでしょう。これがある程度しっかりしていなければ、中間層による積極的な社会経済活動はできません。それでは、経済成長を達成することはできません。

韓国も、中国もデフレという点では同じことですが、中国のほうがより深刻です。

このままの状況が続くと、韓国も中国も中進国の罠(中所得国の罠と同じ、国民所得10000ドルからなかなか抜け出さない状況のこと)にどっぷりとはまりそうです。韓国の場合は、経済対策に対する考え方を変えて、金融緩和に踏み切れば、何とか回避できそうですが、中国のほうはそう簡単にはいきません。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も
このままだと、いずれ中国は、図体が大きいだけの、凡庸なアジアの独裁国家で終わる可能性が高くなってきました。

しかし、これはもともとの中国の本質なのかもしれません。中国の実体は、もともとはいくつかの発展途上国の集まりで、それを中国共産党中央政府が警察力や、軍事力を使って無理やり一つにまとめて、一国としてまとめてGDPを大きく見せていただけです。一人あたりのGDPではまだ日本に遠く及びません。

中国共産党中央政府は、世界各国の機関投資家などを幻惑して、これから中国は凄まじく発展すると期待させ、今投資しないと大損をするぞとばかり煽り、外貨を集め、それを国内でインフラ投資することで、大発展したのですが、もうその化けの皮が剥がれ、中国に積極的に投資するものなどいなくなりました。

そもそも、当の中国人ですら、そのようなことは期待していません。中国の官僚や富裕層が外国に自らの金を逃避させています。習近平でさえもその例外ではありません。中国出身の海外在留者、すなわち華僑も、今では中国に投資はしません。

そんな中国には、もうキャピタル・フライトを防ぐ術はありません。いずれ中国は、凡庸なアジアの独裁国家となり、国力も衰え、いくつかの国の連合体に成り果てることでしょう。いわゆる、一つの省、もしくは複数の省が一つの国のような存在になり、それらの国々は、ある国は中所得国で、ある国は発展途上国ということになるでしょう。中国共産党政府がそれらを一つに、従来よりは緩くまとめるような連合体に成り果てるでしょう。

というより、これが元々の本質なのですが、それが白日の下に晒されることになるでしょう。従来は、中国共産党中央政府の力が強く、省を強く支配していたというだけのことです。

中国共産党中央政府が、従来のように締め付けを厳しくすれば、いずれの国も中進国以上には発展し得ないでしょう。あまり締め付けを厳しくしなければ、もしかすると、一国くらいは中進国の罠を抜け出る可能性もあるかもしれません。しかし、そうなれば、その国は連合体から抜け出ることになるでしょう。抜け出なければ、先進国にはなれません。永遠に、中所得国のままで終わります。

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2016年8月31日水曜日

【スクープ最前線】米軍、尖閣周辺に強襲揚陸艦投入で中国威嚇 習政権はG20で大恥も―【私の論評】次期大統領がクリントンなら優柔不断オバマと同じことの繰り返し(゚д゚)!

【スクープ最前線】米軍、尖閣周辺に強襲揚陸艦投入で中国威嚇 習政権はG20で大恥も

強襲揚陸艦『ボノム・リシャール』(右側) 、甲板手前に搭載して
いるのはオスプレイ10機。左は、ドック型揚陸艦『アシュランド』
   中国が焦燥感に駆られている。アジアでの軍事的覇権を強め、沖縄県・尖閣諸島の強奪もチラつかせていたが、先週の日中韓外相会談では一転、隣国との協調姿勢を演出したのだ。9月に中国・杭州で主催する、G20(20カ国・地域)首脳会議を成功させる思惑だけでなく、米軍が東シナ海などに展開させた強襲揚陸艦や攻撃型原子力潜水艦の存在も大きいようだ。ジャーナリストの加賀孝英氏が緊急リポートする。

   米国が「新たな軍事作戦」に踏み切った。これを受けて、習近平国家主席率いる中国は「米国が軍事衝突を決意した」と震え上がっている。

   中国共産党機関紙、人民日報の情報サイト「人民網」は17日、概略以下のように報じた。

  《米軍は、東シナ海の尖閣諸島(周辺海域)に、強襲揚陸艦『ボノム・リシャール』を投入した。最近、同海域に武装警備船や漁船を大挙して派遣している中国に、圧力をかけるのが狙いとみられる》

  《ボノム・リシャールは6日、母港の長崎県・米海軍佐世保基地を出航し、14日からパトロールに入った。日米両国は昨年、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を再改定し、尖閣などを防衛範囲に含めた》

   米軍がついに、わが国固有の領土・尖閣諸島を防衛するために、最強艦船を投入した。安倍晋三首相が実現させた、日米同盟強化の証だろう。

  世界最大級の強襲揚陸艦であるボノム・リシャールは、全長257メートル、全幅34メートル、排水量約4万トン。「動きまわる軍事基地」の異名で恐れられている。

  強襲輸送ヘリCH-46や、直離着陸戦闘機AV-8BハリアーII、新型輸送機オスプレイ、LCAC(エア・クッション型揚陸艇)などを搭載する。約2000人の海兵隊員を収納可能で、ヘリコプターとLCACなどを使って、兵員と戦車などを一気に揚陸させることができる。

 自衛隊関係者は「斬り込み隊長役を務める強襲揚陸艦の中で、ボノム・リシャールは最強だ。万が一の場合、尖閣にも瞬時に海兵隊を展開できる。すさまじい戦闘力で敵を制圧する。中国の空母『遼寧』などハリボテで話にならない」と語る。

 中国は今月に入って、尖閣周辺の接続水域や領海に、公船や海上民兵が乗り込んでいるという約300隻もの漁船を侵入させた。東シナ海は開戦前夜の緊張状態となり、「8月15日、尖閣上陸」情報まで流れた。

 ところが、ボノム・リシャールが14日に尖閣周辺に展開する直前(=12日ごろ)、漁船の大半が姿を消した。防衛省幹部は「強襲揚陸艦の出動を知り、逃げ出したという情報がある」という。

 米軍の軍事作戦はこれだけではない。以下、複数の米情報当局、米軍関係者から得た衝撃情報だ。

 「朝鮮日報は27日、『米軍の攻撃型原潜が、北朝鮮の潜水艦基地に近い公海まで隠密裏に潜入し、北朝鮮の潜水艦を監視・追跡作戦を展開していた』と報じた。実は米軍は、中国の潜水艦にも同様の作戦を行っていた。百戦百勝。相手にならない。中国の潜水艦は籠(かご)の中の哀れな鳥だ」

 ご承知の通り、中国は9月初旬、国家の威信をかけて、浙江省杭州で初の議長国としてG20首脳会議を開催する。失敗すれば、習氏の失脚は免れない。G20成功のため、中国は参加国に「テーマは経済問題に絞る」といい、中国が袋だたきになる南シナ海と東シナ海の問題は取り上げないように、必死で根回ししている。実態は土下座外交に近い。

 岸田文雄外相は24日、都内で中国の王毅外相と個別会談を行った。谷内正太郎国家安全保障局長は25日、北京で中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)国務委員と、李克強首相と連続会談した。いずれも中国は協調姿勢を演出したが、G20で前出の議題を回避したかったからだ。

 だが、米国は強気だ。外務省関係者がいう。

 「米国とフランスはG20で、南シナ海と東シナ海の問題を取り上げる意向だ。米仏は、南シナ海で『航行の自由』作戦を決行することでも合意している。習氏は大恥をかく。『親中政策』の見直しを進めているテリーザ・メイ首相率いる英国が、米仏に同調し始めている」

 中国は孤立している。習氏は崖っぷちに立たされている。

 言わせていただく。日本は中国と取引などしてはならない。毅然たる態度で、東シナ海や南シナ海の問題を議論すべきだ。それなくしてG20の存在意義などない。

 加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】次期大統領がクリントンなら優柔不断オバマと同じことの繰り返し(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にあるような、米軍の中国に対する牽制は、今にはじまったことではありません。実は2ヶ月以上前から、その動きは見られました。その動きについて以下に掲載します。

米海軍は、6月2日強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」(LHD6)と「エセックス」(LHD2)をすでに、それぞれ東シナ海と香港水域に派遣していしまた。うち、ワスプ級強襲揚陸艦「エセックス」は香港に停泊し休息に入いっていました。「ボノム・リシャール」とドック型揚陸艦「アシュランド」(LSD48)は東中国海を航行し、第7艦隊巡航任務を実施しました。この両艦は、両方ともワスプ級強襲揚陸艦です。

ワスプ級強襲揚陸艦(英語: Wasp-class amphibious assault ship)は、アメリカ海軍の強襲揚陸艦の艦級のことです。前任のタラワ級の拡大強化型として開発されたことから4万tを越える大型艦となり、主機関を中心に改良された最終8番艦は後継のアメリカ級のベースともなっています。

エセックス搭載の機動揚陸艇(LCM)
以下に、ワスプ級強襲揚陸艦の航空運用能力と、輸送揚陸機能を掲載します。

航空運用機能

航空機としてははAH-1W スーパーコブラ攻撃ヘリコプターUH-1N ツインヒューイ汎用ヘリコプターCH-46 シーナイトCH-53E スーパースタリオンなど大型輸送ヘリコプターを最大42機か、ヘリコプター最大30機およびAV-8B ハリアーIIV/STOL攻撃機6-8機を搭載。

なお、制海艦任務にあたる場合は、ハリアーを最大20機とMH-60R シーホーク哨戒ヘリコプター6機を組み合わせて搭載することができます。
艦載機構成例
標準的混成空中強襲制海艦
AV-8B ハリアーII6機20機
CH-46 シーナイト
MV-22 オスプレイ
12機42機
CH-53E スーパースタリオン9機
AH-1W スーパーコブラ4機
UH-1N ツインヒューイ4機
MH-60R シーホーク6機

輸送揚陸機能

本級は、1個海兵遠征部隊(MEU)を丸ごと収容することができます。艦内には1,858m²の車両甲板と2,860m²の貨物収容スペースが確保されており、標準的には下記のような構成で搭載されます。 
収容能力
海兵隊員1,894名
M1A1 エイブラムス戦車5両
AAV7LAV-25歩兵戦闘車25両
トラックなど支援車両80両
M198 155mm榴弾砲8門
船体内後部にウェルドック(長さ81m×幅15.2m)を備えており、上陸用舟艇として、LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇3隻、あるいは機動揚陸艇(LCM)12隻を収容・運用することができる。タラワ級ではドック内の形状を改良し、貨物積載用ベルトコンベアを撤去したことで、LCACの搭載数が3隻に増加したが、これは本級でも踏襲された。

なお、本級は、医療設備として病床60床(うち集中治療室14床)、手術室4室を備えている。また、医療区画に隣接した海兵隊居住区を一般病床として転用した場合、さらに200床を確保することができる。

今回、この「ボノム・リシャール」を14日から、尖閣付近の水域に派遣されていたことが、米軍によつて正式に公開されたということです。

これは、まさに中国にとっては不意打ちのようなものだったことでしょう。何しろ、6月の時点では強襲揚陸艦「エセックス」が、香港で休息しているわけですから、中国としては、自国の港で休息をとっている米国の揚陸強襲感と同型の「ボノム・リシャール」をよもや米軍が尖閣沖の水域に派遣するなど思っもみなかったことでしょう。

アメリカとしては、南シナ海では中国には「まさか」との思いで、結局のところ出し抜かれた形なので、尖閣においては大いに中国を慌てふためかせたということで、さぞ溜飲を下げたことでしょう。

それにしても、尖閣で中国漁船が、海上保安庁の船に体当たりして、その後中国公船が尖閣あたりに姿を表わようになったころの、当時の民主党政権がもっと中国に対して毅然とした態度をとって厳しい措置をとっていたり、オバマももっと厳しく、それこそあの時あたりに、尖閣は日本固有の領土と声明をだし、それだけでなく強襲揚陸艦を尖閣付近に派遣するなどのことをしておけば、尖閣問題も今日のようなことにはなっていなかったことでしょう。

しかし、今から振り返ると、鳩山よりもお粗末で、頭がお花畑で、及び腰のオバマでは、そのようなことはできなかったのでしょう。

優柔不断なオバマのせいで、米国の地位は低下した
「優柔不断」といわれるオバマ外交によって、アメリカはウクライナ危機でプーチンに対抗できず、シリアの混乱を収めることができませんでした。中国に対しても、経済効果を重視し、中国との友好関係を強調し、迎合的な姿勢を保ってきました。中国の南シナ海で建設した人工島なども黙認するような姿勢が見えました。  

政権末期になって、ようやっと重い腰をあげ、南シナ海の人工島の12カイリ内でアメリカ軍が巡視活動を始めるなど行動を起こしています。ASEAN関連の首脳会合でも、オバマ大統領は、ASEAN各国に巡視活動への支持を直接働きかけ、中国への外交圧力を強めました。

オバマ大統領も徐々ではありましたが、強硬姿勢に変わりました。しかし、中国が南シナ海に万里の長城を築いた現在では、遅きに失しました。これを元に戻すのは至難の業です。

民主党の最有力候補、そうして現在の情勢では初の女性大統領と目されているヒラリー・クリントン前国務長官は、2014年に『ハード・チョイス』(厳しい選択)という書籍を出版していました。同書で、ヒラリー氏は生い立ちと政治信条を記していますが、はっきりうかがえるのは、日本は米国にとってアジアで最も重要な戦略的友好国と考えてはいないということです。

ヒラリー・クリントンの著書
ヒラリー氏は中国が米国にとって対立的国家であることを認め、中国を牽制するため、「米国はアジアのいくつかの国々と軍事協力体制を強化しなければならない」と主張しています。また、ASEAN(東南アジア諸国連合)などアジアとの地域協定を強化して、「中国を押さえつけるために協力しあわなければならない」とも述べています。

ヒラリー氏のこうした主張は、共和党政権を中心に冷戦を戦ってきた米国の基本戦略から大きく逸脱しています。「日本が米国の安全保障政策にとって重要ではない」という考え方を明らかにした米国の大統領候補は、ヒラリー氏が初めてです。

ヒラリー氏はあれからの2年間、大統領選を展開するにあたり、あらゆる機会に、この主張を繰り広げてきました。オバマ政権は事実上、中国を友好国扱いし、中国との対立を極力、避けてきました。

2016年にヒラリー氏が大統領に当選すれば、米国の政策は大きく変わることでしょう。

ヒラリー氏の考え方は、日本の基本的な国際戦略や安全保障に大きく関わってくることでしょう。安倍晋三政権やその周辺の保守的な評論家や古手外交官らは、相も変わらず日本を最も重要な同盟国とする米国の対中国基本戦略は変わっていないと信じ込んでいるようです。このため、日米安全保障条約を主軸に、集団的自衛権に基づく防衛政策を進めています。

ところが、ヒラリー氏は著書で、「日本はもはや米国にとって昔ながらの味方ではない」と示唆しています。イェール大学のポール・ケネディ教授が『大国の興亡』を書いて以来、米国の人々は日本に対して恐れと不安を持つようになり、「信頼できる友好国ではないと思うようになった」と述べています。

ポール・ケネディ氏の著書
しかしながら、ヒラリー氏こそ、オバマ大統領とともに、この5年間の外交で、過去の政権と比べると、考えられないほどの大失敗を繰り返してきた張本人です。

ヒラリー氏は、そうした失敗について釈明を試みているのですが、結局、米国が国際的指導者としての力をなくしてしまったことを自白しているに過ぎません。そうした心情が日本に対する不信というかたちで、現れたとみるべきです。

いずれにしても、ヒラリー・クリントンは日本との関係をもはや重要な戦略的基盤とは思わなくなっています。日本は、これを考慮し、彼女が大統領になったときの安全保障を考えていく必要があります。

もし、彼女が大統領になれば、尖閣沖に強襲揚陸艦を派遣などということもしなくなる可能性が高いです。オバマよりは一見強硬に見えながら、本質的にはさほどオバマと変わらないということも十分に考えられます。

日本は、中国と対峙するために、米国をあまりあてにできなくなるかもしれません。その時に備えて、安倍総理の安全保障のダイヤモンドをより強固にしていく必要があります。特に、米国以外との国々との連携を強めていくべきです。

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