2019年6月3日月曜日

消費増税のために財務省が繰り出す「屁理屈」をすべて論破しよう―【私の論評】財務省の既存の手口、新たな手口に惑わされるな(゚д゚)!

消費増税のために財務省が繰り出す「屁理屈」をすべて論破しよう

「大地震発生で財政破綻するから」…?

高橋洋一氏

財政の「正論」に消費税は不要である

これまで、財務省は消費税を増税するために、いろいろな理屈を言ってきた。

今から30年くらい前には、(1)直間比率の是正だった。これは理屈というより、単に消費税を導入したいという願望だ。税金を直接税と間接税に分けても、その比率は国によって様々であるので、最適比率を探そうとしても無駄だからだ。

次には(2)財政破綻だ。財務省は、国の借金残高がこれまで急増していることを理由に、表だって「財政破綻する」とまでは断言しないものの、いろいろな局面で「ポチ」を使って、陰に陽に財政破綻論を国民に吹き込んでいる。

しかし、本コラムで再三述べているように、「借金」だけではなく「資産」を考慮しないと、本当の財政状況は理解できない。

そこで、市場で取引されているCDS(クレジットデフォルトスワップ。日本国債の「保険料」みたいなもの)から、現在の日本の財政破綻確率を推計すると、今後5年間で1%程度と、ほぼ無視できる低さなのだ。このあたりに興味のある方は、昨年10月15日付けの本コラム「IMFが公表した日本の財政『衝撃レポート』の中身を分析する」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978)等を参照していただきたい。

その次に財務省が消費増税の理由として出してきたのが、(3)社会保障のため、というものだ。しかし、これも本コラムで繰り返し述べてきたように、社会保障の財源には社会保険料をあてるのが筋だ。

なにしろ、消費税を社会保障目的税とする国はない。社会保険料が究極の「社会保障目的税」なのだから。もちろん、すべての人に社会保険料を払わせるのは不適当なので、それが払えない人の分は累進所得税によって賄う。

財政に関する「正論」には、消費税などどこにも出てこない。

例えば社会保障を充実させたいなら、現在放置されている社会保険料の徴収漏れについて対策を打つことがまず先決だ。

その具体策が、世界の多くの国がやっているのに、日本ではやっていない「歳入庁」の創設である。歳入庁を、こちらも海外と比べて遅ればせながら導入された、「マイナンバー制度」による所得の捕捉と組み合わせることが重要だろう。

筆者は、かつて第一次安倍政権において歳入庁を創設しようとして、財務省の猛烈な反対にあった。

その理由は、「国税庁を財務省の配下におけなくなると、財務省からの天下りに支障が出る」という実に情けないもので、愕然とさせられた。彼ら財務官僚は、口では偉そうに国家を語るが、その本音は自己保身でしかないことがわかり、興ざめしたものだ。

「大地震」という新たな理屈

(1)直間比率の是正、(2)財政破綻、(3)社会保障という「消費税増税のための理屈」それぞれの間違いを指摘してきたが、ここに最近、新たに4つ目として「大地震の可能性」も加わったようだ。

もっともこれは、いつものように財務省が前面に出ることはない。財務省は「ポチ」と言われる、自らの言いなりになるマスコミ人や学者を駆使するのだ。

まずはマスコミ人だ。筆者は、5月26日放送のBS朝日の「激論!クロスファイア」において、原真人・朝日新聞編集委員と討論した。

そこで原氏は、近い将来の大地震発生確率の高さに触れて、財政破綻の可能性を主張した。YouTubeなどを探せば、この時の状況がわかる(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=n1bPxAVTX6w&list=PLZNNFTj6GlEP_zYOlpNykSJy7gtQaYlGW )。

筆者は、「財政破綻がリスクであると言うなら、確率として表現すべきだ」と指摘したが、原氏は一切説明できなかった。もちろん筆者は、「財政破綻の確率は今後5年以内で1%程度、一方で首都直下地震の確率は今後5年以内に1割強だから、桁がひとつ違う」と数字を挙げて説明した。

やりとりを見てもらえばわかると思うのだが、原氏の論は苦しい。財政破綻のリスクと言い募りながら、具体的なことが言えないのだ。司会者の田原総一郎氏からも「しっかりして」と言われていた。

原氏のツイッターには、「先の日曜深夜に放映されたBS朝日『激論クロスファイア』で、リフレ派の中心、高橋洋一氏と初めて討論した。都合のいいデータと数字、解釈だけ持ち出して議論してくるのにはうんざり。」と書いてある。

筆者の論拠が「都合のいいデータと数字、解釈」であるなら反論も簡単なはずだが、原氏はそれができなかった。当該ツイートのコメント欄を見ても、原氏に対して辛辣なものばかりだ(https://twitter.com/makotoha/status/1133562158011129856)。


なお原氏は、番組の中で資料を使っていたが、その内容は財務省の資料そのものであった。筆者は番組収録中にすでに気がついていたが、財務省の資料そのものを、出典も明記せずに使うのは、マスコミ人としても問題だろう。



その資料の内容についても指摘しておきたい。

原氏は「戦争による財政破綻と今の状況が似ている」と言いたかったようだが、まったく違う。まず、(1)財務省資料には政府資産の額が書かれていない。戦争期には実質的に政府資産がなかったが、現在は資産がたっぷりあるという点で、事情が異なっている。

また、(2)社会の生産力も大きく異なる。戦争期の日本は生産手段を破壊され、生産力がほぼ皆無という状況に追い込まれているが、今は技術に支えられた生産力があり、これまたまったく事情が異なる。そもそも、戦時中〜戦後に酷いインフレになるのは日本に限らず、どこの国でも見られる現象だ。

なお、(1)直間比率の是正、(2)財政破綻、(3)社会保障それぞれについての筆者の詳しい見解は、政策カフェ「高橋洋一教授出演!「消費増税 賛否両論」(優子の部屋 特別版)」(https://www.youtube.com/watch?v=vBHJp4QKBXs)でまとめているのでご覧いただきたい。

東日本大震災の教訓

次に、学者にも、大震災を理由に消費増税を主張する人が出てきた。

吉川洋・立正大学長は、「首都直下、南海トラフなどの大地震も財政破綻の引き金になり得るとみて、これに備えるためにも地道な財政再建が必要であり、原則消費増税を実施すべきだ」と主張する(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-30/PS9RQK6TTDS301)。

大震災対応の一般論について考えてみよう。

仮に、大震災が500年に1度発生するとしよう。事前の対策としては建物などの減震・免震が考えられるが、これはインフラ整備のため、長期国債発行で賄われる。事後対応としてもやはり国債発行により復興対策が行われるが、大震災発生の確率から考えれば500年債、500年償還とするのが適切だ。

いずれにしても、増税は悪手だ。というのも、増税が大震災の経済ショックを増幅するダブルパンチになるからである。

こうした話は、経済学の大学院レベルの課税平準化理論の簡単な応用問題だ。しかし、実際に東日本大震災が発生した際、民主党政権下では財務省の主導により、復興対策費用は復興増税で賄われ、長期国債は発行されず課税平準化理論は無視された。

もちろん筆者は、2011年3月14日付本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/2254)や4月18日付本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463)などで復興増税を批判した。

しかし、日本の主流派経済学者は、ほとんど全員が東日本大震災後の復興増税に賛同した。その賛同者リストは、今でも見ることができる(http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm)。この愚策のために、いまや日本の大学の経済学の講義では、まともな理論を教えられなくなってしまった。

吉川氏の意見は、東日本大震災後の愚かな政策を再び実行しようと唱えているわけで、筆者にとっては信じがたい。
なお吉川氏は、2014年の消費増税前、その影響について「軽微だ」と述べ、予想を外している。実際には増税後に景気動向指数が低下し、誰の目にも景気悪化は明らかだった。
ところが、景気の「山」や「谷」を判断する、内閣府の景気動向指数研究会も「消費増税による景気悪化はなかった」としている。この景気動向指数研究会の座長は、実は吉川氏だった。さもありなんという話だ。

消費増税の理由に、(4)大地震の可能性を持ち出すのは筋悪だ。上に書いたように、そもそも震災対応は増税によるべきでない。さらに、大地震は今後30年間で7割の確率、今後5年以内では1割強の確率で発生するといわれ、そのリスクは財政破綻の確率1%程度に比べて桁違いに大きい。これは、大地震でも財政破綻など起こらないことを意味する。

もし本当に、この「財政破綻の確率は1%」が間違いだと思うなら、市場でCDS(クレジットデフォルトスワップ)を購入すれば、確実に儲けられる。大地震論法を採用している人はCDSを買っているのだろうか。そうした行動をせずに、財政破綻だけ主張することを、一般的には「煽り」という。
財務省に「直接対決」を申し込むと…

筆者は、これまで上記のような「消費増税のための理屈」がいかにバカバカしいかについて、様々な場で書いたり、話したりしてきた。

ただし、こうした手法はまどろっこしいので、「増税の理屈の『発信元』と思われる財務省に直接言えばいいのではないか」と思うに至った。幸いなことに、政策NPO「万年野党」が運営協力している政策カフェで、財務省による「訪問講座」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/houmon.php)を使った企画が出てきた(https://twitter.com/seisaku_cafe/status/1133953980457934848)。
【どうなる消費増税?】7/1 19時~,『財務省出張講座』を依頼中です。
政策カフェチャンネルでは前回,不要論の高橋洋一先生@YoichiTakahashiのお話を伺いました。次回は財務省のご担当者からお話を伺ってみたいと思っています。動画配信他,会場参加の申込も受付ける予定です。
(準備が整い次第受付開始)

財務省による「訪問講座」とは、「税の仕組みや税を取り巻く状況等の説明、意見交換を目的として、皆さんの集まりや勉強会、職場研修、ゼミ、中学・高校の授業等に(財務省)職員が訪問して話す」というものである。そこに筆者が参加すれば、財務官僚とじかに「意見交換」ができる。

しかし財務省は、「YouTube等の不特定多数が視聴される媒体等への出席はご遠慮させて頂いております」とし、拒否してきた(https://twitter.com/seisaku_cafe/status/1134468192892416000)。


なお、高橋洋一先生をお招きした会の動画は、こちらからご覧頂けます。https://youtu.be/vBHJp4QKBXs 
【調整報告1-1】財務省さんから残念ながら「Youtube等の不特定多数が視聴される媒体等への出席はご遠慮させて頂いております」とのご回答を頂きました。
(続く)
税に関する議論は広く国民に共有されるべきはずなのに、財務省自ら、不特定多数が視聴する「もっともオープンな場」を避けるとは実に情けない。

【私の論評】財務省の既存の手口、新たな手口に惑わされるな(゚д゚)!

上の記事でも、クロスファイア 「高橋洋一 ✕ 原真人」のリンクが貼ってありましたが、同じクロスファイアの番組でも、小沢一郎が出演している「選挙」関連のものにリンクされていたので、以下に正しいリンクを貼っておきます。


この動画、勝ち負けで判断したくはないですしそれ以前の話ではあるのですが、高橋教授の完封勝利です。 高橋教授は確率に基づく数字を提示しているのですが、原氏は何らの数字的な根拠を示されていないです。 反対の意思表示を示すのであるならばそれなりに数字で表して説明しないと議論以前の問題です。

上の高橋洋一の記事と、この動画をご覧いただければ、現在の日本経済の諸問題が明らかになると思います。

この記事に改めて、何かを新たに付け加えることもありませんが、しいて付け加えるとすれば、上の記事の中にある課税平準化理論という言葉の意味をさらに詳細に理解しやす形で付け加えようと思います。

これは、高橋洋一氏はあまりも当然のことなので、詳しく説明する必要もないと判断したのでしょう。私自信も、当然のことだとは思うのですが、周りの人に聞いてみると地震の復興を税金で行うべきか、国債をもちいるべきなのか、あやふやな人が結構いたので。今回はこれについて説明しようと思います。

結論からいうと、これは高橋洋一氏も語るように、国債を用いるべきなのですが、その正解をいえるためには、課税平準化理論の意味を知っていることが前提となります。

大震災が起こったときに、その復興などに増税で賄うような国はないです。日本の復興税だけが、世界の例外です。古今東西にこれだけが、唯一の例外です。ただし、古代はどうだったのか、あるいは聞いたことがない国に地域まで絶対なかったとはいえませんので、誰かご存知の方がいらっしゃいましたら是非教えていただきたいです。無論その結果も含めて教えていただきたいです。

しかし、ネットで調べた限りではそのような国は古今東西ありませんでした。繰り返しいいますが、日本だけが例外です。このようなときには、長期国債を使うのがマクロ経済学上のセオリーです。「課税の標準化(タックス・スムージング)」という理論があるように、課税のインパクトは薄く伸ばして緩和させるのが基本です。

仮に百年に一度の震災だとすれば、震災の経済に与えるショックを百年にわたって広く薄く負担し、軽減させるため、百年債を発行して100分の1ずつ償還します。それが世界中の財政の常識です。これを否定する人は世界中に誰もいません。いるとすれば、日本の財務省の官僚か、財務省の走狗に成り果てたエコノミストや識者だけでしょう。

なぜそのようなことをするかといえば、世代間の不公平を是正するためです。百年に一度の地震に関して復興税で復興してしまえば、地震が発生した世代にだけ負担が重くのしかかります。

復興では、様々なインフラを整備します。その多くは、地震が起こった時の世代だけではなくその後の世代も使い続けます。だからこそ、百年債を発行して、毎年広く世代間で平準化し、地震に遭遇した時代の世代や他世代の負担を減らすのです。国債は、次世代につけをまわすなどのことは全くの詭弁以外の何者でもありません。そうではなく、せだいか復興税など、全くこの「課税標準化理論」からすれば、矛盾にみちみちています。

結局のところ、財務省は増税できるなら、何で良いようです。経済理論などを捻じ曲げても、国民生活が悪くなろうが、とにかく増税さえできれば、自分たちの勝ちと考えているようです。

さて、このようなことを考えているうちに、最近の財務省増税に向けての動きがもう一つあったことを思い出しました。

それは、GWも明け直後からいきなり朝日新聞を利用した財務省のMMT派への攻撃が始まったことです。朝日新聞が5月7日以下のような記事を掲載しました。一部を引用します。
「MMT」に気をつけろ! 財務省が異端理論に警戒警報
 財政の破綻(はたん)など起きっこないから、政府はもっと借金してもっとお金を使え――米国で注目を集める「MMT」(Modern Monetary Theory=現代金融理論)と呼ばれる経済理論が、日本の政治家の間にも広まり始めている。政府が膨大な借金を抱えても問題はない、と説くこの理論は米国で主流派経済学者から「異端」視され、論争を巻き起こしている。これまで消費増税を2度延期し、財政再建目標の達成時期も先送りしてきた日本では、一見心地よく聞こえそうなMMTはどう受け止められていくのだろうか。 
 4月22日午後、東京・永田町の衆院議員会館の会議室に、10人あまりの国会議員が集まった。自民党の若手議員らが日本の財政問題などを考えるために立ち上げた「日本の未来を考える勉強会」の会合。テーマは「MMT」だ。 
 この会でMMTが取り上げられるのは、一昨年以降、これで3回目という。最近、MMTの提唱者のニューヨーク州立大教授、ステファニー・ケルトン氏のインタビューが報じられるなど、日本のメディアでもMMTが取り上げられ始め、勉強会の参加者の一人は「世界が、我々に追いついてきたね」と誇らしげだ。(後略)』
後略部で、「評論家」の中野剛志氏について、わざわざ「現役の経産官僚でありながら」と書いている時点で、悪意というか「攻撃の意思」むき出しです。

ちなみに、財務官僚はMMTについて、「(MMTは)要するに、いっぱいお金を使いたい人が言っているだけ。論評に値しない。(経済政策の)手詰まり感の現れだろう」(ある財務省幹部)と、予想通り「論評に値しない」と切り捨てています。

論評に値しないならば、無視すればいいのに、そうすることもできないようです。

議論になったら負けるので、MMT派(というか反・緊縮財政派)に対する個人攻撃、誹謗中傷や、ストローマン・プロパガンダ、権威・プロパガンダ等々で貶め、潰そうとしてきているわけです。

私自身は、MMTに関しては、もしある国が有する生産性能力を超えてまで、過剰に貨幣を増やせば、当然過剰なインフレになるのは明らかなので、この点一点をもっても、かなり懐疑的です。政府の借金についても、このブログにも述べているように、無論現状の日本はそのような状況ではないではないので、心配する必要もないですが、際限なく借金しても問題がないという考え方には賛同はできません。

やはり、一昨日にも掲載した、「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」という考え方には、多いに賛成です。

そうして、この考えは、何もMMTなる理論でなくても、既存のマクロ経済学で十分に説明できます。だから、なせMMTなる理論を持ち出すのかその意味がわかりません。さらに、困ったこととには、MMT派の人々は、その理論を数式用いて説明していません。

MMTにはモデルがなく滋賀って数式もないです。そのためか、主張する人によって中身が変わります。これでは議論のしようがないです。これについては、以下の動画をご覧いただくとご理解いただけるものと思います。



以上のようなことから、欧米でもまともな経済学者はMMTに関してはほとんど相手にしていないというのが実情です。

それにしても、この財務省の動きは気になります。今後も、MMT派に対する様々な攻撃(特に、スキャンダル系)が続くものと思います。

この動きは、財務省による増税キャンペーンにも関係あるのではないかと思います。結局のところ、MMTを批判することによって、既存のマクロ経済の理論まで否定して、増税のための根拠に仕立てる魂胆ではないかと思うのです。

興味深いことに、朝日新聞は菅官房長官が顧問の「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」についても取り上げています。(自民党の20人超の有志議員で構成)

政府の負債(国の借金ではない)、具体的には国債・財投債の内、すでに46%が日銀保有しています。

【2018年末時点 日本国債・財投債所有者別内訳(総計は1013兆円)】


日銀が保有する国債について、政府は返済負担や利払い負担がありません(子会社ですから)。

日本銀行の株式の55%は、日本政府が所有しています。日本銀行は歴とした日本政府の子会社です。日本銀行のホームページには、
本銀行は、特別の法律(日本銀行法)により設立され、設立に関し行政庁の認可が必要な「認可法人」と位置付けられています。日本銀行は株式会社ではなく、また株主総会もありません。
と、書かれていますが、何しろ日本銀行は「株式」を東証JASDAQに上場しているのです。現時点で、日本銀行の株価は一株36,000円程度で、単位株式数が100株なので、誰でも360万円ほどで日銀の株主になれます。ただし、日銀は日本政府の純然たる子会社であるため、株主になってもあまり意味はありません。

株式市場に株式を上場しておきながら、「株式会社ではない」など通るはずがありません(ならば、上場するな、という話)。少なくとも、会計上、日銀は疑いようもなく政府の子会社なのです。

この手の「事実」やMMTの考え方などは全く別にして、既存のマクロ経済学で十分に説明がつきます。そうして、これは早急に国民が共有しなければなりません。

ちなみに、「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」の「無利子国債」は、無期限無利子国債だと思いますが、確かに日銀保有の国債を新規の「無期限無利子国債」と交換してしまえば、政府の負債は実質はもちろん、名目でも消滅します。

もっとも、そんな面倒なことをしなくても、単に「日銀保有国債について、政府の債務不履行はあり得ない(当たり前)」という認識を国民や政治家が持てば住む話です(別に、無期限無利子国債の発行に反対しているわけではないですが)。黒田総裁が国会で発言すれば、財務省も反論できません。

自国通貨建て国債のデフォルトはあり得ない」(ただし先進国などのまともな経済)という、当たり前の真実を国民が早急に共有し、日本の財政破綻の可能性はゼロであることを前提に財政拡大に転じるべきです。

そうして、財務省のMMT批判については、その動向も今後も見守っていこうと思います。

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2019年6月2日日曜日

もう一度言う「岩屋防衛相を罷免せよ」 ―【私の論評】相当のショックがない限り韓国政治家の宿痾である権力闘争や、統治の正当性を高めるための反日利用は継続される(゚д゚)!

門田隆将

岩屋毅防衛相

もはやこの大臣を更迭しなければ、安倍政権の致命傷、いや日本全体の痛恨事となるだろう。昨日(6月1日)、シンガポールで開かれている国際会議に出席中の岩屋毅防衛相が、韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と会談した。

その中で、岩屋氏は、去年12月の韓国海軍によるレーダー照射問題について「照射はなかった。事実無根だ」と強弁する韓国側に対して「再発防止」は求めたものの、今後はこの問題を「事実上棚上げ」し、防衛交流をつづける考えを示したという。

仰天した。それは「絶対にやってはならないこと」だからだ。韓国は「日本には何をやってもいい」と思い込んでいる。その国に「そのとおりです」という誤ったメッセージを送ってしまったのである。

これまでの日韓関係の不幸は、韓国が日本に対して、本来、国と国が持つべき「節度」と「敬意」を持ってこなかったことに発している。中国やアメリカに対して持っている「節度」と「敬意」を韓国は日本には払ってこなかった。

もし、日本に対する態度と同じものを中国やアメリカにとったら、たちまち韓国は大反撃を食らうだろう。そのことを熟知している韓国は、絶対にそんな非礼な態度を米・中にとることはない。

これこそが強いものにはひれ伏し、弱いものには居丈高になる韓国の特色である「事大主義」だ。そして、この韓国の態度を改めさせないかぎり、真の日韓関係が訪れないことは明らかだ。

これを改めさせる方法は「たった一つ」しかない。韓国に対して、アメリカや中国と同じように毅然とした態度をとることである。絶対にレーダー照射事件を許さず、防衛交流もストップさせ、「日本は怒っている」「これからの日本はこれまでとは違う」ということを示すのが不可欠だ。

だが、岩屋氏はそれと真逆なことをやってのけた。韓国は日本に対して、これまでと同様、「何をやっても構わない」ということを再認識しただろう。しかも、この会談は岩屋氏自身の強い要請によるものだった。産経の報道によれば経緯はこうだ。
〈事務方の調整でも折り合わず「会っても建設的な議論にならない」(防衛省幹部)と判断した。それでも岩屋氏は「ぜひお目にかかりたい」と秋波を送り、約30分の非公式会談に臨んだ〉
この会談を岩屋氏は「未来志向」と語ったそうだ。もはや、お笑いというほかない。未来の真の日韓関係のために日本は「毅然とした態度」をとらなければならないのに、岩屋氏は逆のことをやってしまったのだ。

課題を棚上げすることが未来志向になるというお粗末な思考――国際間の常識やあり方を何ひとつ理解していないレベルの防衛大臣を私たち日本国民はありがたく戴いているのである。あまりの情けなさに、私には言葉もない。

岩屋氏は、政界では有名な「パチンコ族」である。パチンコチェーンストア協会の有力アドバイザーだ。ちなみに、日本のパチンコ業界は、韓国のハンギョレ新聞の報道によれば、「全体の6割」が朝鮮半島出身者であるそうだ。

つまり、これほど異常なまでに韓国にすり寄る岩屋防衛相の背景には、自らの支援者が多い韓国への氏の特別な意識、親密度が考えられるのである。

私は2月の当欄で〈岩屋毅防衛相を罷免せよ〉と題して、〈果たして制裁を受けるべきなのは「韓国」なのか、それとも「安倍政権」なのか。韓国に毅然としたメッセージも発せられず、それと逆のことしかできない政府に対して、国民が「愛想を尽かせる時期」が着実に迫っている〉と書いた。

安倍政権は、未だに韓国への制裁に踏み切れず、さらに、ことここに至っても岩屋防衛相を更迭できないでいる。情けない野党への反発のお蔭で安倍政権は辛うじて国民の支持を得ている。しかし、その国民の怒りも頂点に近づいている。

来たるべき選挙で安倍政権が手厳しいシッペ返しを受けるキーワードは「韓国である」ことをあらためて申し上げたい。一刻も早い「岩屋防衛相の更迭」を、そして真の日韓関係のために速やかな「制裁発動」を望む。

【私の論評】相当のショックがない限り韓国政治家の宿痾である権力闘争や、統治の正当性を高めるための反日利用は継続される(゚д゚)!

私自信は、制裁がどうのこうのというより、すぐにでも韓国とは国交断絶をしたほうが良いと思っています。その理由については、以前このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】日本の「対韓国制裁シナリオ」 仲裁委応じなければ提訴へ! カネでの締め付けが有効に―【私の論評】日本は、文政権時に断交していればポスト文政権と有利に交渉がすすめられる(゚д゚)!
文在寅氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみ引用します。 
最近は、分政権の支持率は、落ちており、文政権は、どう考えてみても長期政権にはならず、近い将来に文政権は崩壊する可能性もあるものと思います。韓国の大統領は1期5年なので、朴槿恵大統領のように弾劾罷免されない限り、2022年5月9日までは大統領として任期が設定されています。文大統領の任期は最大限そこまで終わるでしょう。

いずれにせよ、文政権が終了したときに、すでに日本が韓国と断交していれば、ポスト文政権は、日本との関係を回復しようとするでしょう。日本としては、それでもしばらくは様子をみて、本気て相手が回復するつもりがあれば、国交断絶を解除すれば良いのです。おそらく、いままで一番交渉がしやすくなるでしょう。

もし、文政権が崩壊したときに、日韓が国交断絶していなければ、新たな政権も、文政権の反日を引き継ぐだけになり何も変わりません。その時になって、国交断絶するよりは、文政権時代に断絶しておくことのほうが、日本にとって有利なのは言うまでもありません。
最近では、やはり国交を断絶したほうが良いとさらに強く思うようになりました。それは、まずは韓国利権を得ている政治家は日本には相当数おり、今のままだと、それこそ岩屋防衛大臣のような行動をする議員が他もでてきて、結局日韓関係はなし崩し的に韓国のペースで進められてしまう可能性が大きいからです。

次に、文在寅のようなポピュリスト(大衆迎合主義者)は特定の国や集団を敵としながら、国内の権力闘争を有利に進めます。ヒトラーにとってのユダヤ人がそれです。韓国や中国が、日本を攻撃対象にする構図も、酷似しています。

結局、ヒトラーや文、習のような連中は、まともに行動していては、国民からいつ統治の正当性を疑われて、没落するかわからないので、統治の正当性を獲得するために、いつも敵を用意して、国民の憤怒のマグマを自分ではなく敵にむけるように仕向けるのです。

韓国の首都圏京畿道(キョンギド)の議会で3月、小中高校の一部の日本製備品に「日本の戦犯企業が生産した製品」と記したステッカーを貼るよう義務付ける条例案が提出されました。文在寅大統領の与党「共に民主党」議員らが起こした騒動です。

「生徒への正しい歴史認識を確立させる」「戦犯企業への教育が必要だ」

同党議員らはこういって条例案を正当化しましたが、京畿道の教育部局が混乱の恐れを理由に反対し、康京和(カン・ギョンファ)外相も難色を示しました。ネットでも「やり過ぎだ」との非難が殺到し、審議は保留になっています。とはいえ、1945年に日本の朝鮮半島統治が終わり70年以上を経た今も、歴史問題での日本たたきは韓国で幅を利かせています。

伏線はあった。日本統治に抵抗して起きた19年の「三・一独立運動」100周年に当たる3月1日、文氏はソウルでの記念式典で元慰安婦らを含む約1万人の参加者を前に訴えました。

「チニル(親日)は反省され、独立運動には礼が尽くされるべきだという価値を正しく確立する。これが『親日残滓(ざんし)の清算』だ」

韓国で「親日派(チニルパ)」といえば、日本統治時代に日本に協力した売国奴を指す。国会では3月、文政権を批判した保守系野党「自由韓国党」の羅卿瑗(ナギョン・ウォン)院内代表を「共に民主党」議員が「親日派!」と罵倒しました。

羅卿瑗(ナギョン・ウォン)院内代表

羅氏は韓国が不法占拠する竹島(島根県)への上陸経験もある人物です。実際に親日か否かに関係なく、「親日派」という言葉は政敵攻撃に使われるのです。

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2018年に日本を訪れた外国人客約3119万人のうち、韓国は約754万人で、トップの中国の約838万人に次いでいます。日本は韓国人旅行者をひきつけ、毎年のように訪問客は過去最高を更新しています。とこが「反日」は力を失っていないです。

今世紀に入り、金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の両左派政権で反日の歴史教育を受けた世代は20~30代となりました。過去の歴史から遠い世代ながら、日本への好感度は若年層ほど低いというのが実情です。

韓国の政治家は世論の支持を得るために反日を利用してきました。17年大統領選では、文在寅(ムン・ジェイン)大統領をはじめ主要候補全員が、慰安婦問題をめぐる日韓合意の撤回を公約しました。反日には異論をはさめない雰囲気があり、日本製品へのステッカー騒動もそれに便乗した一例です。

1990年以降の反日教育により韓国には日本による併合が違法な植民地統治だったとの考え方が根本にあり、世論は基本的に日本に批判的です。以前は、反日を訴えさえすれれば国民の支持を集められたまし。

しかし現在の韓国は、反日を訴えさえすれば支持率が上がったり、得票できたりすることはなくなりました。世論の関心事が対日関係より国内の経済不振や格差に向いているからです。

竹島上陸など日本人が反日とみる韓国の政治家の行動も、実際には選挙での支持固めを狙った党内や支持者など内輪向けの「愛国パフォーマンス」にすぎないです。

ただし、韓国の若者層は、子供の時代から体系的、組織的な反日教育を受けたため、未だに若年層ほど日本に低い好感度という世論調査があります。


日本への好感度が低い、若者が多いということは、現状の政治家ですら、日韓関係を悪くする一方であることからも、将来は現在よりさらに、反日が酷くなることが予め予想できるということです。結局のところ何も変わらないどころかますます悪くなるだけです。

であれば、やはり日本としては、文政権の韓国と国交を断絶した上で、ポスト文在寅政権が、どうするのかを注意深く見定めて、国交を復活するかどうかを決定すべきです。なお、国交断絶するのは難しいようなことを語る識者もいますが、常識的に考えて、駐韓大使の召還をすれば、国際的に、日本と韓国は国交を断絶したものとみなされます。

そうなれば、両国民も両国の市場もそのようにみなします。召喚期間が長引けば、長引くほど、人の往来はなくなり、金融や通信のやり取りも少なくなりやがて止まります。駐韓大使を召喚して半年もたてば、さすがに岩屋氏のような行動をする政治家も日本から消えるでしょう。

そうでないと、日本国内では岩屋防衛相のような政治家がはびこり、これを韓国政治家に利用され、韓国の政治家に巣食っている宿痾 である内輪の権力闘争や、自らの統治の正当性を高めるため反日を利用するという姿勢は、永遠になくなることはないでしょう。

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2019年6月1日土曜日

【日本の解き方】著名エコノミストが主張する日本の「基礎的財政赤字拡大論」 財政より経済を優先すべきだ ―【私の論評】増税で自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとする現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは避けよ(゚д゚)!


オリビエ・ブランシャール氏

 元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏が、日本の財政政策について、プライマリーバランス(基礎的財政収支)赤字を拡大すべきだというツイートを日本語で行ったことが話題になっている。

 ブランシャール氏と田代毅氏の連名によるペーパーも日本語で読める。筆者は田代氏と面識はないが、経済産業省の官僚という経歴のようだ。

 そのペーパーでは、「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」との結論が書かれている。

 そこでは、中央銀行を含めた「統合政府」による分析がなされており、「総債務ではなく純債務が正しい概念です(少なくとも良い概念です)」との前提なので、財政省がしばしば行っている総債務について狭義の政府の分析から導き出す結論より筆者にとっては信頼できる。

 その内容も、筆者がかねてより主張している財政政策と金融政策の一体運用に基づいて、まだ財政政策の余地があるというもので、おおよその方向性について異論はない。

 インフレ目標に達していないという現実については、金融政策でまだ余地があるとともに、財政政策でも余地がある。というのは、インフレ目標は、新たな財政規律としての意味があるからだ。

 統合政府では、政府が発行した国債を中央銀行が購入するのは、統合政府の負債として国債とマネタリーベース(中央銀行が供給するお金)の交換でしかない。ここで、マネタリーベースは基本的には無利息無償還である。この場合、国債発行がやりすぎかどうかはインフレ率に出てくる。インフレ目標が財政規律になりうるのだ。

 日本では、こうした政府と中央銀行の連携を、「財政ファイナンス」として、禁じ手だと断定するが、あまりに不勉強だ。インフレ目標の範囲であれば、実体経済に弊害はなく、否定する理由もない。現状の日本経済を考えると、プライマリーバランス赤字を過度に恐れる必要はなく、それによる成長の成果を目指したほうが、結果として、経済やその一部である財政にとっても好影響になると思う。

 こうしてみると、財務省を中心にマスコミや一般国民に垂れ流された考え方は、「財政再建至上主義」ともいえることがわかる。財政が経済を動かすという世界観で、プライマリーバランスの均衡化が最優先になる。

 一方、ブランシャール氏らの議論は、財政は経済の一部であり、マクロ経済学の基本に基づいて経済運営すれば、財政はおのずと後からついてくるという経済主義だ。このため、日本経済にとっては一時的なプライマリーバランス赤字は問題ではなく、経済再建のほうが優先される。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税で自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとする現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは避けよ(゚д゚)!

オリヴィエ・ブランシャール氏 についてWikipediaでは「現在はIMFとのチーフエコノミストとして活躍している」とありますが、 2015年10月に退任しているようです。ブランシャール氏については、池田信夫氏が「超低金利では政府債務のコストは小さい」と主張していると紹介しており、あの池田氏も同様の主張を最近はしています。そのブランシャール氏の主張を、IMFが批判しています。
IMFはブランシャールの財政赤字提言を「危険なステップ」と批判。「低金利がいつまでも続く保証はない」。IMF warns nations to limit public debt | Financial Times http://ow.ly/6HNd30oueUM 


記事では、ポルトガルの経済学者でIMF財政局代表のVítor Gaspar氏が「財政赤字の拡大に警告(IMF warns nations to limit public debt)」しています。

要するに、低金利がいつまで続くか分からない。金融危機を起こす要因は複数あり、そのときに備えて「今は財政赤字は拡大すべきではない」ということのようです。そのときとは、リーマンショックのような世界的な金融危機のことを想定しているのだと思います。

記事中にもあるように、IMFは伝統的に正統派の財政政策を支持してきており、それを踏襲した発言のようです。世界経済の権威であるブランシャール氏や、最近話題になっている「財政赤字の提言」には反対の立場をIMFとしては取らざるを得ないのでしょう。

ところでブランシャール氏は、2016年時点では日本の財政へ警笛を鳴らしていました。



【新着記事】小黒 一正: オリヴィエ・ブランシャール教授の日本財政への警鐘 http://agora-web.jp/archives/2019301.html 

しかしながら、ブランシャール氏は今や立場をかえました。これに関しては、以下の2つの記事を読むとよくわかります。

長期停滞の時代には財政赤字が必要だ(池田氏ブログより)
マクロ経済政策再考(田中秀臣氏ブログより)

ブランシャール氏は「日本は今後もプライマリー赤字を続けることが望ましい」といいます。したがって今の日本で消費税を増税することは望ましくないということになります。

経済に関しては、大雑把に緊縮派、反緊縮派と別れていますが、 ブランシャール氏やリフレ派の主張するところの「金利/インフレ率が過度に上昇しなければ、財政赤字は問題ない」というコンセンサスはとれていると思います。

そうなった場合の問題は、本当に低金利、低インフレ率が今後も続くかどうかに絞られます。個人的には、先進国では史上最低水準の金利、インフレ率のときに暴騰するリスクを叫ぶのはいかがなのかと思います。それより、「人々がどうすればより豊かなで幸せな人生を送れるのか」に集中すべきときなのではないでしょうか。

ブランシャール氏の主張する、財政より経済を優先すべきとは、現実の世界では、財政が赤字になることをおそれるがため、緊縮財政や金融引き締めなどをしないで、まずは積極財政や金融緩和をして、経済を良くすべきだということです。

その結果経済が良くなれば、税収が増えて、財政赤字も自ずと解消されるということです。しかし、平成年間の日本はその逆ばかりやってきました。特に財政では、消費増税と復興税など緊縮財政ばかりやってきました。

一昨日は、国債の金利が極端にあがったりしない限り、財政破綻などすることはないことを日本国を4人の家族にたとえて解説しました。政府の信用がなくなれば、国債の金利が極端にあがって、財政破綻する可能性もでてきます。

では、実際の国債の長期金利はどのような推移をしているのか以下にグラフを掲載します。


このような状況では、どう考えてみても財政破綻などありえないです。ただし、「日本の国債発行残高はGDPの200%を超えており、破綻の危機にある」と危機を煽る人々も多いです。昨日の記事をご覧いたたげれば、そのようなことはないことがご理解いただけるものと思います。

しかし、現実に市場は10年先の国債を金利がほぼつかない状態でも買いたがっています。どうして破綻が危惧されているはずの国債が買われるのかを、メディアが報じないのかが大きな問題だと思います。

バブル崩壊後、日銀の金融緩和のあるなしに関わらず、金利は右肩下がりに低下してきました。その理由は簡単で、民間に資金需要がないため、銀行は国債でしか有り余る銀行預金を運用できないからです。いくら政府債務が膨らもうとも、株や外貨、外国の国債より日本の国債の方が相対的に安全性が高いと市場はみているのです。

昨年の最後の取引となった28日の東京債券市場で、長期金利の指標である10年物国債の流通利回りがマイナス0.010%に低下(債券価格は上昇)しました。これは、2017年9月8日以来、約1年3カ月ぶりの低い水準でした。

この長期国債のマイナス金利も、日本の株価が大幅に下がったことも影響しています。株価が下がれば、株式市場から逃げるお金がどこか別の投資先を求めることになります。高い利率が魅力の新興国に向かうお金もあるし、リスクを避け絶対に破綻などあり得ない米国国債や日本国債も買われます。

米中貿易戦争による景気減速が株下落の主因のように報じられていましたが、米国債の利上げも株から国債へお金を流入させる要因になっていました。それは、米国の株価と国債金利の動きをみれば明らかです。


国債金利の推移をみるだけで、「日本は財政危機にある」との認識がどれほど間違っているのかが理解できるはずです。それなのに、SNSでは「日本は終わった」と思っている人の多さに驚きます。有効な手段があるにも関わらず、その手段の有効性を多くの人が理解していないため、政策に結びつかないという馬鹿馬鹿しい状況にあるのが日本の今です。

国民の意見など関係ない一党独裁の中国は、景気の減速に伴い「財政出動」と「減税」という有効で当たり前の手段をとろうとしています。彼らは、日本のバブル崩壊後の失敗から十分学んでいるのです。

ただし、現在の中国はこのブログにも以前掲載したように、国際金融のトリレンマにはまってしまっているため、金融緩和はやりたくてもできない状況にあります。もし、金融緩和ができるなら、彼らは躊躇することなく実行するでしょう。

本当は日本も、彼らのように、デフレを完全脱却するためには、できることはなんでもやるという姿勢でなければならないのです。そうして、現在の日本にはできることはいくらでもあるのに、それをやろうとしていないという奇妙な状況にあるのです。

消費増税により自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとしている日本の現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは絶対避けなければなりません。

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2019年5月31日金曜日

【有本香の以毒制毒】「安倍・トランプ叩き」に興じる愚か者は無視! いまこそ“朝鮮半島危機”に備えよ―【私の論評】日米首脳会談で本当は相当追い詰められた中国・北・韓国(゚д゚)!

【有本香の以毒制毒】「安倍・トランプ叩き」に興じる愚か者は無視! いまこそ“朝鮮半島危機”に備えよ

安倍総理が米国でゴルフをしたときは、トランプ大統領がカートを運転したので、今回は安倍首相が
運転するのが当たり前だが、多くマスコミはトランプの運転手安倍総理ということで揶揄していた

 ドナルド・トランプ米大統領が訪日日程を終えて帰国してもまだ、「安倍晋三首相はトランプ氏を接待しすぎ」だ何だと騒ぐ一団がいる。

 やれ、「見返りはないのか」だの、「米国一辺倒の外交はいけない」だの、「安倍首相もトランプ氏も自分の選挙のことしか頭にない」だのと、ウルサイことウルサイこと。

 賢明な夕刊フジ読者の皆さまにおかれては、マスメディア、特にテレビ文化人らがたれ流すこの種の騒音の類いは丸っと無視していただきたく思う。

 その代わりに、いま私たちが本気で考えるべき重大事は何かといえば、最近ジリジリとステージが上がってきている「朝鮮半島危機」への備えだ。

 え? 安倍首相は日朝首脳会談に前向きだから、いま北朝鮮とは雪解けムードなんじゃないの? と思う人もいるかもしれない。だが、残念ながらその認識は誤っている。

 なぜか日本のマスメディアが熱心に取り上げないが、注目すべき情報を1つ挙げよう。

 今月9日、米司法省は対北朝鮮制裁に違反して同国から石炭を輸送しようとしたとして、北朝鮮の船舶を拿捕(だほ)したことを明らかにした。

 この船は北朝鮮への重機輸送にも利用されたもので、実は、昨年インドネシアによっても拿捕されたが、それを北朝鮮に返却されないよう、米国が押さえて自国領へ運んだとの報道である。

 最近の日本メディアでは、北朝鮮の困窮はよく伝えられるが、その裏でいま、米国が何をしているかはあまり伝えられない。そして、なぜか浅薄な反トランプ的見解ばかりが重宝されている。

 実際、米国は、北朝鮮の瀬取りや、制裁をかいくぐる術が巧妙化する動きを本気で阻止しようとしている。この米国の動きに国際社会も同調連携しているのだ。

 この連携の動きに反するかのような姿勢を見せているのが、本来、最も真剣な参加者であってよいはずの韓国と、日本の一部マスメディアである。このタイミングであえて、日米首脳の「蜜月」アピールを嘲笑し、日米離間を薦めるかのような報道に勤しむのは、どう見ても異常だ。

 最近、古い資料を漁っていて、たまさか25年前のある報道に目が留まった。1994年4月、ソウルで行われた南北協議の場で、北朝鮮代表が「ソウルが火の海になる可能性もある」と発言したことに対し、当時の柿澤弘治外相が「集団的自衛権の行使を違憲とする従来の憲法解釈を再検討する必要」に言及した件である。

 柿澤氏はこのとき、「従来の解釈で日米安保条約が機能するのか、有事に対応できるのか、国民的議論をしてほしい」と発言した。

 これを日本のメディアが袋だたきにして、外相の発言を撤回させた。

 もし25年前に、安全保障についての「国民的議論」ができていたら、いま日本はどうだっただろうか。考えると虚しいものがあるが、四半世紀前のこのメディアの罪はいまあらためて問われてしかるべきだろう。同時に、一部メディアの論調に流されて、自国の行くべき方向を見誤る愚を二度と繰り返さないよう、肝に銘ずるべきである。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など多数。

【私の論評】日米首脳会談で本当は相当追い詰められた中国・北・韓国(゚д゚)!

米空母ワスプ1942年9月15日、大日本帝国海軍の伊19潜水艦の雷撃を受けて沈没しました。その名前を引き継いだのが現在の強襲揚陸艦ワスプです。

強襲揚陸艦「ワスプ」

一方加賀は加賀は、大日本帝国海軍の航空母艦。1942年6月のミッドウェー海戦で沈没。この空母加賀は真珠湾攻撃に参加した空母でもあります。その名前を引き継いだのが現在のヘリコプター搭載護衛艦「かが」です。

ヘリコプター搭載護衛艦「かが」

来日したトランプ米大統領は、27日米軍の強襲揚陸艦「ワスプ」で訓示を行いました。
米国時間27日はメモリアルデー(戦没者追悼記念日)にあたります。

戦没将兵追悼記念日とは、アメリカ合衆国の連邦政府の定めた祝日で、5月の最終月曜日です。この祝日は、兵役中に亡くなったアメリカ合衆国の男女を追悼する日です。最初は南北戦争で亡くなった北軍兵士を称えるために始められました。

第一次世界大戦の後、あらゆる戦争、軍事行動で亡くなったアメリカ合衆国の兵士を含むように拡大されました。無論、大東亜戦争でなくなった米軍将兵を称える日でもあります。

これに先立つ27日午前9時過ぎ、アメリカのドナルド・トランプ大統領(72才)は、天皇陛下即位後最初の国賓として、皇居・宮殿「竹の間」で会見を行いました。

さらに、ランプ米大統領は28日、神奈川県横須賀市で、安倍晋三首相とともに、海上自衛隊のいずも型護衛艦「かが」を視察しました。

様々な背景を知った上で、トランプ大統領のこれら一連の行動は何を意味するのかは、明らかです。それは、戦後はじめて、米国の大統領が大東亜戦争(米では太平洋戦争)の清算を日本で行ったということです。

そうして、これは大東亜戦争のわだかまりを捨てた日米関係のさらなる強化を意味します。そうして、これは中国・北・韓国にとって、大きな脅威です。

中国は貿易問題で米国と激しく対立しています。トランプ政権の制裁強化に対し、中国はすぐさま報復に出ましたが、どう見ても中国に勝ち目はないです。そもそも、中国の米国からの輸入量が米国の輸入量に比べて4分の1程度しかないのに加えて、米国からみれば、多くの中国製品は他国製品で代替可能だからです。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は先月、年内に「3回目の米朝首脳会談に応じる用意がある」との声明を出しました。ところが、一方で5月に入ると、短距離の弾道ミサイルを2度、発射しました。

それだけでは、国内強行派をなだめることがでなかったのか、2月の米朝首脳会談が物別れに終わった責任を問い、金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表、および事務レベルの交渉を行った複数の外務省担当者を処刑したとの報道もされています。

金革哲(キム・ヒョクチョル)氏

しかしこれでは、米国は痛くもかゆくもないです。国内の強硬派をなだめるために、何かせざるを得ないが、「これくらいなら大統領を怒らせないだろう」という中途半端な中途半端な短距離弾道ミサイルの発射です。逆に言えば「私も困っている。どうか、私ともう一度会ってください」というラブコールにほかならならなかったようです。

それでも、国内強行派はおさまらず、金革哲氏らを処刑せざるを得なかったのでしょう。米国との交渉の顔だった金革哲氏のような人々を処刑あるいは完全に排除することは、協議したことの全面否定を示唆することにもなり、米国に非常に悪いシグナルを送ることになりかねません。それでも、処刑せざるを得ないかったのは、金正恩がかなり追い詰められているということです。

一言で言えば、中国も北朝鮮も「八方塞がり」に陥っているのです。トランプ政権は相手が制裁に音を上げて動くのを待っていればいいだけです。北朝鮮による日本人拉致問題では、安倍首相も相手の出方待ちでしょう。無条件で正恩氏との会談に応じる姿勢を示しているのは、呼び水です

日米首脳会談により双方が基本認識を確認したので、中国と北朝鮮に対して、「ボールはそちら側にある」と対応を迫るかたちなりました。

本当は、中国の干渉を嫌う北朝鮮に籠絡された上、中国に従属しようとする韓国も、中国や北よりもさらに、「八方塞がり」に陥っています。文在寅は、米国と中国のバランスをとっているつもりのようですが、結果として、米国からも中国からも見放されています。

マスコミは、以上のような状況に全く対処できないのでしょう。これが、習近平や文在寅、金正恩などが来日して、首脳会談をして大歓迎ということであれば、大絶賛したのでしょう。なにやら、見出しが踊るのが目に見えるようです。残念ながら、そのような機会は永遠に来ないでしょう。ご愁傷様といいたいです。

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