トランプが最初から正しかったとFRBが認める
<引用元:
FOXビジネス 2020.9.4>スティーブン・ムーア氏による論説
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ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長 |
ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週、ジャクソンホールでの「バーチャル」シンポジウムで、FRBが過去数年の間に一貫して2パーセントのインフレ目標に到達しなかったことを認めた。
FRBは、そのデフレ金融政策が成長を抑制し賃金を押し下げたことをそれとなく認めている。
今FRBは、もっとドルの流動性を経済にもたらすためにより高い目標を設定することを約束している。
パウエルの3,000語の演説は、次のたった1つの文章で要約できたことだろう。「トランプ大統領が正しかったのであり、我々は間違っていた」
パウエルは最近知識人として有頂天になっており、中には雑誌タイムの今年の人になるべきだと示唆する者もいる。
だが過去数年の間で、トランプこそがFRBは引き締め過ぎていると警鐘を鳴らしてきた人物であり、物価と長期金利(市場価格)の下落からも分かるように、期待インフレ率はFRBの目標の半分となっていることを示している。
トランプはエコノミストとしての訓練を受けていないかもしれないが、成長を作り出すということに関して、この不動産王は不思議な直観を持っている。
今年の初めのパンデミック以前、経済は今世紀最高のペースで前進していた。
だが、FRBがトランプの(そして我々の)助言に従っていたら、実質GDPと賃金はもっと高い成長の潮流に乗っていただろう。トランプは近代経済学に浸透する成長モデルに対する間違った考え方の制限を本能的に拒否していた―我々と同様に。
今世紀のこれまでの成長は、1つには世界中の中央銀行のこうした成長恐怖症が原因で不足している。
1.6パーセントというブッシュとオバマの時代の平均GDP(実質)成長率は、20世紀の平均(3.5パーセント)の半分以下だった。
2008年から2009年の世界的金融不況からのぬるい回復とは著しく対照的に、ケネディとレーガンの拡大時代は5パーセント以上の成長率の時代だった。
過去20年の緩やかな成長の言い訳として、労働力の伸びの減速が我々に新たな「長期停滞」を強いているのだと主張するエコノミストもいた。
パウエル任命の際、トランプはFRB新議長が成長志向の金融政策を実施すると期待していた。しょっぱなからほど遠い結果だった。
2018年2月に、パウエルがFRBの頑迷な「フィリップ曲線」思考という成長と賃金上昇がインフレを引き起こすと断定する考え方を受け入れたために、FRBはおろかにも力強い完全雇用・賃金上昇の回復を押しつぶした。
FRBは実体のないインフレと戦っている、とトランプが立腹したのは正しかった。
一方、株式市場は暴落して成長は行き詰まった。FRBが2019年初期にトランプの助言を受け入れずに逆行していたら、経済は転覆していただろう。
ここ数カ月のインフレ率のわずかな上昇でも、物価はまだ2年前の水準から21パーセント下回っている。
5年TIPSのスプレッドは、まだPCEインフレ率1.35パーセントを示しており、FRBの2パーセントの目標をはるかに下回っている。こうした状態がもう長年続いている。
FRBは(おそらく)その「手段」の全て――ゼロに近い金利と数兆ドルの資産買収――を実行しているにもかかわらず古いもっと低い目標に到達できなかったというのに、パウエルは新たな高いPCEインフレ目標にどうやって到達できると予測しているのかを話していない。
だが新しい考え方は、貫くのであれば歓迎すべき知らせだ。我々は決して悪性インフレを望んでいないが、成長と人々の労働はインフレを引き起こさない―それらはインフレに対抗するものだ。物の生産が増えるということは、価格が上昇ではなく低下することを意味する。
我々は今後数年、数十年で実質成長率が低下するのではなく上昇することを目指すべきだ。貿易、技術、そして革新は生産性を大幅に上昇させ、インフレを殺す。
グーグル、アップル、ウォルマート、そしてアマゾンがどれほどインフレを縮小させたか考えてみて欲しい。情報のカタログによるデータ検索には、かつて何百、何千ドルの費用が掛かっていた。今やそれは速くて無料だ。
携帯電話の費用は2,000ドルだった。今、10倍の計算力を持つ電話の費用は200ドルだ。米国ではウォルマートに行って、Tシャツと食べ物とおもちゃが99セントで買える。
現在、インフレではなくデフレに傾くことが成長の敵であり、トランプは4年間そう言ってきた。
こうした厳しい時代であっても、世界の投資家はまだ米国を自由市場の成長と革新の震源地だとみなしているので、ドルに対する世界的需要が尽きることはない。
世界はドルを求めており、世界の豊かさを回復するための1つの鍵は、FRBがドルを供給することだ。
スティーブン・ムーアは、ドナルド・トランプ大統領の経済回復タスクフォースのメンバーであり、Committee to Unleash Prosperityの共同創設者である。
ルイス・ウッドヒルはCommittee to Unleash Prosperityの上級研究員である。
【私の論評】トランプの経済対策はまとも、バイデンの対策は異常、日本は未だ準備段階(゚д゚)!
上の記事にもあるように、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は4日、この日発表された8月の米雇用統計について「良好な内容」との認識を示しました。同時に、こうした勢いが今後減速する公算が大きいとし、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた景気の回復を後押しするため、向こう数年におよぶ低金利の継続を約束しました。
パウエル議長は、米公共ラジオ局(NPR)とのインタビューで「雇用統計は良好だった」と評価。同時に、旅行やレジャー産業など、経済の複数の分野が引き続き「コロナのパンデミック(世界的大流行)の直接的な影響を受けており、今後は一層厳しい道のりになる」と語りました。
その上で「経済活動を下支えるため、長期にわたる低金利が必要になる。それは何年にも及ぶだろう」とし、「どれほど長期間になったとしても、FRBは支援していく」と言明しました。
さらに「われわれは経済に必要とみられる支援を性急に解除はしない」と強調しました。
また、景気回復にはFRBだけでなく、議会からの支援も必要との認識を改めて示しました。
8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比137万1000人増と、伸びは前月の173万4000人から鈍化したほか、予想の140万人を下回りました。失業率は8.4%と、前月の10.2%から改善しました。
11月の大統領選では、雇用が大きな争点になります。トランプ氏は「景気が劇的にV字回復しており、来年は素晴らしい年になる」と、経済重視の姿勢を一段と強めています。
一方で、失業給付に週600ドル(約6万4000円)を上乗せする制度は、加算額の維持を求める野党民主党と、減額を目指す与党共和党の対立で7月末に失効しました。経済への悪影響を懸念するトランプ氏は、週最大400ドルに減らした上で、給付を継続する暫定措置を命じました。
トランプ氏の狙いは、給付を減らして失業者の就労を促し、大統領選に合わせて雇用改善の実績を強調するつもりのようです。クドロー国家経済会議(NEC)委員長は4日、雇用情勢の改善を受け、民主党が主張する大規模な経済対策が「なくてもやっていける」と明言しました。
これに対し、中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、経済は回復途上であり、失業給付を含む「追加財政策が必要だ」と警告しています。政府支援の大幅削減は「消費と景気回復を圧迫する」(エコノミスト)との分析もあり、雇用改善を急ぐトランプ氏のもくろみは綱渡りともみられています。
しかし、これは本当に綱渡りなのでしょうか。私はそうとばかりは言えないと思います。トランプ大統領は、マンデル・フレミング効果を意識しているのではないかと思います。
マンデルフレミング効果を簡単にいうと次のようになります。
通貨制度には固定相場制と変動相場制の2つ制度があります。固定相場制のもとでは景気を刺激する政策では財政政策が有効であり、金融政策は無効となります。中国のような固定相場制の国において、財政政策が有効です。
変動相場制のもとでは、財政赤字が拡大すると実質長期金利が上昇し、設備投資や住宅投資が減少します(クラウディング・アウト効果)。また、実質長期金利が上昇すると国内への資本流入圧力が生じて自国通貨が増価し、輸出が減少して輸入が増加するためGDPが減少します。
よって、変動相場制のもとで景気回復や雇用を増やすには、財政政策よりも金融政策が効果的だという理論。ロバート・A・マンデルとJ・マルコス・フレミングが1963年に発表した理論で、1999年に両名ともノーベル経済学賞を受賞しています。
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マンデル・フレミングモデルから導かれる結論 |
マンデル・フレミングモデルからいっても、コロナ禍で、景気が悪化したのですから、当初は積極財政と無制限の緩和をするのは、当然のことです。特に積極財政は、コロナ禍で失業した人等をすぐに救済するという意味でも重要です。
しかし、ある程度経済が回復してきたときには、金融政策のほうが有効になります。ただし、経済が本調子になるまでは、両方とも実施したほうが良いです。
トランプ政権の経済政策では、かなりの減税を実施しています。この減税は継続した上で、週最大400ドルに減らした上で、給付を継続する暫定措置を実行しつつ、低金利金政策を継続し、量的緩和をも実施するというのですから、トランプ氏の目論見は成功する可能性が高いです。
8月の米雇用統計では、雇用の伸びは前月の173万4000人から鈍化したほか、予想の140万人を下回っています。これは、財政政策による景気回復の限界を示しているのかもしれません。
であれば、金融緩和に力を入れるというのは当然の措置です。現在FRBが、もっとドルの流動性を経済にもたらすためにより高い目標を設定することを約束するのは当然のことと思います。
バイデン前副大統領は7月9日、新型コロナウイルス危機に見舞われた米製造業の復活に向け、4年間で総額7000億ドル(約75兆円)の公共投資計画を発表しました。投資額は「第2次世界大戦以来で最大規模」と強調。財源確保のため将来の増税に言及し、減税を掲げるトランプ大統領との違いを鮮明にしました。
バイデン氏のこの政策は明らかに間違いです。来年経済がコロナ以前に戻っていることは考えられず、このタイミングで増税を公表するのは、いかがなものかと思います。
総じて、経済政策に関してはトランプ氏のほうがまともであり、バイデン氏は疑問符がつきます。トランプ氏は、バイデン氏の経済対策の間違いを公開討論会で指摘するのは間違いないです。そうして、そのときには米国雇用が改善している可能性が大です。
私は、バイデン氏が増税を主張した時点で、大統領の目は消えたと思います。
さて、日本に目を転じると、トランプ氏のように雇用を重大視する考え方をする政治家や官僚はほとんどいません。自民党の中でも理解しているのは、安倍総理、菅官房長官と、その他ごく少数に過ぎません。野党にも理解している人はごく少数の例外を除いてほんの数人しかいません。
日本の「緊縮馬鹿」と極悪組織財務省は、減税などの積極財政を大々的にすると財政破綻するとか、久しくマイナス金利の国債を発行すると国債が暴落するなどの増税のための屁理屈を叫ぶのはやめるべきです。本当に、日本ではマンデル・フレミングモデルに基づいた、経済対策をいつできるようになるのか、暗澹たる気持ちになります。
トランプに倣い、必要とあらば国債を大量発行して「日銀に大量購入(=通貨の流通拡大)」を実施できる体制を一日でもはやくつくるべきです。それは一部、第二次補正で実現されましたが、今後も必要があれば、すぐにこれが実行できるようにすべきです。
とにかく、現在の日本は、米国の現状とは違い、とにかくすぐにでも、積極財政、無制限の金融緩和を大々的に実施し、雇用を安定させ、景気を良くすべきです。その後にはじめて、日本ではまともな経済対策ができる準備が整うという、段階です。
とにかく、日本では景気対策というと、財政政策だけとか、金融緩和だけと考える人が多すぎです、マンデルフレミング効果も視野にいれで、その時々で財政政策と金融緩和の両方を考える人がほとんどいません。
ただ、以前にも述べたように、アベノミクスの金融緩和政策があったからこそ、現在の日本はコロナ禍でも踏ん張れるのです。これがなければ、今頃日本経済は風前の灯のようになっていたでしょう。
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