2022年10月2日日曜日

東部要衝リマン奪還 併合宣言直後、露に打撃―【私の論評】ロシア軍、ウクライナ軍ともに鉄道の要衝がなぜ軍事上の要衝になるのか(゚д゚)!

東部要衝リマン奪還 併合宣言直後、露に打撃


 ウクライナメディアは1日、ロシア軍が陣取ってきた東部ドネツク州の要衝リマンをウクライナ軍が奪還したと伝えた。ロシア国防省も1日、包囲を逃れるためリマンから部隊が撤退したと発表。前日にドネツク州を含む東南部4州の併合を一方的に宣言したばかりのロシアにとって、打撃となる。

 リマンはドネツク州北部の交通の拠点。リマン攻略で、東部ルガンスク州西部の人口約9万人のリシチャンスクを奪還できる可能性が高まった。

 ウクライナのティモシェンコ大統領府副長官は1日、軍兵士がリマン中心部で奪還を宣言する動画を通信アプリに投稿。動画で兵士らはロシア国旗を行政庁舎の屋上から投げ捨て、ウクライナ国旗を掲げた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は1日の動画声明で、ドネツク、ルガンスク両州で構成する東部ドンバス地域に、ウクライナ国旗を「1週間のうちに」さらに立てると述べ、攻勢を続ける考えを示した。

【私の論評】ロシア軍、ウクライナ軍ともに鉄道の要衝がなぜ軍事上の要衝になるのか(゚д゚)!

報道では、東部要衝リマンとされていますが、なせリマンが要衝なのかはほとんど語られていません。

なぜ、リマンが要衝なのかを理解するには、まずはロシア、ウクライナともに輸送のかなり大きな部分を鉄道に頼っていることを理解しなければならないです。

以下のグラフは、ロシア・ウクライナの輸送モード別貨物輸送量の推移です。比較対象として、ポーランドおよび英独仏伊の合計も掲載してあります。

クリックすると拡大します

上のグラフでは、ロシア、ウクライナの輸送モード別のトンキロ・ベース輸送量の推移を掲げ、ソ連解体と各国独立国化の後に、どう変化してきたのかを示しました。同時にポーランドや西欧の動きとも比較しました。

ロシア、ウクライナともに、1991年のソ連解体とその後の経済瓦解、社会の大混乱によって、物流量は大きく落ち込んだことがデータから明らかです。

1990年代のボトム輸送量は、ロシアの場合、ソ連時代のピークと比較して、鉄道、道路では約4割、パイプラインでは5割弱にまでに落ち込んでいます。今以上に鉄道輸送への依存度が高かったウクライナでは鉄道貨物の輸送量が対1990年対比で3割近くにまで落ち込んでいます。

これは、かなり激しい経済の崩壊状態に見舞われたことを示しています。

しかし最悪の状態はそう長くは続かなかった。その後、だんだんとロシアの物流量は回復し、2009年のリーマンショック後の世界的な経済低迷の時期の一時的な落ち込みを経て、現在は、少なくとも鉄道とパイプラインに関しては、ソ連時代のピークにまで回復して来ています。

ところが道路に関しては、なおピーク時の86%に止まっています。つまり、鉄道とパイプラインに過度に依存し、道路輸送のシェアが極端に低いという物流構造の特徴がさらに強まっているのです。

ウクライナでは、パイプラインが減り、道路による輸送は、若干増えていますが、鉄道輸送はピークのときと比較すると回復しておらず、現状でも経済的に厳しい状況に置かれていたことがわかります。ウクライナの場合も、まだ道路輸送のシェアが極端に低くと鉄道に頼る物流構造であることがわかります。

同時期に西欧(英独仏伊の計)やポーランドでは鉄道は横ばいか低下傾向をたどっているのに対して、道路輸送が大きく伸長しており、ロシア、ウクライナの動きをそれ以外の地域の動きと比較すると余りに対照的です。ちなみに、日本も西欧と同様、鉄道は低下傾向をたどっています。

ロシア経済は回復してきているとはいえ、石油や天然ガスといった資源の輸出への依存体質からの脱却が難しいことがこうした状況を生んでいると言えます。

ロシアもウクライナも物資郵送は、未だに鉄道にかなりを依存しているのです。

そのうえで、以下にリマンを含むウクライナの地図を掲載します。


この地図から、イジュームからリマン、シヴェリスクまで鉄道が伸びていて、スラビャンスクとも接続できることがわかります。リマン奪還により、ポーランドからキーウ経由でクピャンスク、リマンまで鉄道の補給線がつながり、東部でウクライナは圧倒的に有利になったと思います。 逆にロシアは補給線を3/4失いました。

ロシア鉄道のゲージ(線路幅)はいわゆる標準軌(1435mm)よりも幅の広い広軌(1520mmまたは1524mm)で、ヨーロッパではウクライナを含む旧ソビエト連邦内とフィンランドでしか使われていません。スペインも広軌ですが、ゲージのサイズがロシアとは違います。

このゲージの違いが、ロシア軍の作戦行動に大きく影響します。バルト三国、ウクライナを含む旧ソビエト連邦内なら広軌で統一されており、鉄道でスムーズな兵站線が引けます。一方ポーランドには、ロシアからウクライナのキエフを経由して南部のスワフクフまで、1本だけ広軌の鉄道が通っていますが、ほかは国境のごく一部を除き標準軌であり兵站線を連続できません。

ゲージが違えば鉄道を使った兵站線はそのまま連続することができず、積み替えかゲージの変更(いわゆる改軌)工事を行わなければなりません。台車交換や軌間を変更できるフリーゲージ方式もありますが、しかし結節点には設備が必要でスムーズな物流を妨げますし、ロシアの貨物列車はほとんど対応していません。

積替えすれば良いという話しなるかもしれませんが、莫大な物資を全部積み替えるのはとてつもない労力を必要とします。トラックを使えば良いという話しにもなるかもしれませんか、ロシア、ウクライナとももともと鉄道に頼っているということから、道路網も西側諸国などから比較すれば、発達しておらず、トラックも十分とはいえません。

原油パイプラインについては、欧州向けパイプラインはウクライナ東部を通らず、ベラルーシからウクライナ西部を抜けて、スロヴァキア及びハンガリーにぬけるものがメインとなっています。ロシア側としては、パイプラインを軍事転用することもできません。やはり物資、燃料ともに鉄道に頼るしかないのです。

この兵站線の特徴からロシア軍は、ウクライナ等の旧ソビエト連邦領域内で「積極的作戦」は行えますが、領域外で持続的な作戦行動を行う能力は限定的です。鉄道による兵站線が引けるかどうかのゲージの違いが、ポーランドとウクライナの安全保障上のリスクに違いを生んでいるといえます。しかしロシアがウクライナを抑えればまた状況は変わります。キエフ経由の広軌が利用でき、ポーランドのリスクは格段に高まります。 

国境付近に集結した兵力を数えるだけではなく、軍用列車を観察することでロシア軍がどう動くつもりなのか占うことができます。SNSに投稿される鉄道で運ばれる戦車の動画は「ミリ鉄」「撮り鉄」趣味どころではありません。中欧の人たちにとっては死活問題なのです。

ロシアも、ウクライナも兵站を鉄道に頼っているせいでしょうか、鉄道を破壊するようなことはほとんどしていません。例外的に、ロシア軍は5月4日に首都キーウや西部リビウなど8地域に向けて発射し、ウクライナが迎撃できなかった一部は着弾し、駅舎や電力施設が被害を受け、輸送インフラの破壊を狙った攻撃とみらました。

ただ、キーウなどは、すでにロシアは侵攻をあきらめていると考えられます。リビウには、当初から侵攻するつもりなどなかったでしょう。そうして、これ以降はロシアによる目立った大規模な鉄道の要衝に対する攻撃はみられません。

東部・南部の鉄道はロシア軍も使っているでしょうから、これを破壊することはしないでしょうが、民間人を巻き込むような都市部へのミサイル攻撃ではなく、今後ロシアが使う見込みのない西部等では鉄道網を徹底的に破壊する物流を阻害する効果的なミサイル攻撃をするべきだったと思うのですが、ロシアはそうしませんでした。

一方は、ウクライナは今回鉄道の要衝である、リマンを奪還しました。この奪還は、リマン市がロシア連邦に所属したとされてから、24時間以下で行われました。これは、史上最短の「併合」かもしれません。ギネスブックに登録されるかもしれません。

リマン駅は、鉄道の要所ということで、駅付近の路線図。さすがに複雑で、駅の前後にループ線が2か所あります。(下地図)


リマンは、ロシア軍がドネツク州北部への軍事作戦や物流の拠点としていました。ウクライナ軍報道官は1日、リマンの解放は、ロシアが大部分を支配する東部ルガンスク州への進軍を可能とし、「心理的にもとても重要だ」と述べました。

ウクライナ軍は9月上旬に北東部ハリコフ州の広域でロシア軍を撤収させることに成功しました。更に隣接するドネツク州でも要衝リマンを奪還し、東部で反転攻勢を続けている形になりました。

以上のような状況を考えれば、ロシア軍にとってもウクライナ軍にとっても、いかにリマンが鉄道の要衝、すなわち軍事上の要衝であるのか理解できます。

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2022年10月1日土曜日

中国海軍 新型潜水艦の訓練映像公開―【私の論評】我が国は、今年も昨年と同様に核で日本を恫喝し続ける中国への対抗手段を持つべき(゚д゚)!

中国海軍 新型潜水艦の訓練映像公開



 来月16日に開幕を控える中国共産党の重要会議を前に、中国海軍が新型潜水艦の訓練の映像を公開しました。

  中国海軍は29日、去年就役したばかりの新型潜水艦「長征18号」が南シナ海で訓練を行う様子を公開しました。

  中国メディアによりますと、「長征18号」は機動性だけでなく、レーダーなどから探知されにくくする「ステルス」性能が大きく向上し、長距離の核弾道ミサイルを搭載することができるとしています。 

 映像を公開した背景には台湾問題などで米中関係が悪化するなか、10月の共産党大会を前に、習近平政権が海軍の強化をアピールする狙いがあります。

【私の論評】我が国は、今年も昨年と同様に核で日本を恫喝し続ける中国への対抗手段を持つべき(゚д゚)!

以上のような記事だと、一体何を意味しているのか、理解できない人も多いのではないかと思います。

まずは、「長征18号」は、094型原潜(SSBN)の7番艦です。094型原潜(SSBN)は以下の表でもわかるように、現在までに7隻建造されています。


中国人民解放軍海軍が運用する原子力弾道ミサイル潜水艦。NATOコードネームは晋王朝に因んで晋級(Jin Class)です。

ワシントンの民間の有力研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」は昨年8月4日、中国南部の海南島の人民解放軍海軍の楡林基地に094型原潜(SSBN)1隻が帰投する光景を人工衛星の偵察で映した映像(下写真)を公表しました。


CSISの発表によると、この帰投の映像は7月8日の撮影で、さらに7月15日にはこの原潜が同型のもう1隻の094型とともに楡林基地の埠頭に停泊している光景が撮影されました。

同基地には4つの埠頭があり、094型がそれぞれ1つの埠頭に、さらに他の二つの埠頭には093型(SSN中国名称・商級)攻撃型原潜が1隻ずつ停泊していたといいます。

CSISでは中国海軍のこの094型原潜について米国側ではとくに警戒の必要があるとして、国防総省の情報などを基礎に以下の諸点を強調していました。
  • 094型原潜は現在は中国人民解放軍でも海洋からの核ミサイル発射が可能の唯一の艦艇であり、中国側は今後その増強を図ろうとしている。
  • 中国の核戦力はこれまで陸海空からのそれぞれ発射可能なアメリカやロシアとは異なり、地上発射だけに依存してきたが、今後は海洋発射をも目指している。
  • 中国海軍は2000年ごろから合計094型4隻、改造された094A型2隻を建造してきた。最新の094型推進式は2021年4月で、習近平主席もその式に出席した。
  • 094型はそれぞれ核ミサイル発射基JL2(巨浪Ⅱ)12を装備し、核弾頭を最大射程9000キロまで発射できる。
  • 南シナ海からだと巨浪ミサイルはアメリカ本土に届かないが、グアム島やハワイやアラスカは射程に入る。
  • 中国軍は094型に次ぐ096型潜水艦をいま開発中で、数年後に完成すれば、核ミサイルの射程は1万キロを越え、アメリカ本土を直撃できる。
  • ただし現在の094型はアメリカの原潜にくらべれば、潜水での航行時のエンジン音などがずっと大きく、容易に探知されるという弱点がある。
上の記事で、ステルス性能が向上としていますが、このステルス性が何を意味しているのか、よくわかりません。

潜行中の潜水艦はレーダーには映りません。ですので、この意味ではステルスと言っても良いと思います。

アクティブソーナーに対しては音響吸収用のゴムタイルが、パッシブソーナーに対しては船体を気泡で包み込んで船体から音を漏らさないための「プレーリーマスカー」と呼ばれる装置があります。MAD(磁気探知機)対策としては、船体をコイルでくるんで磁気の乱れを打ち消す対策などが取られています。

ただ、これらによっても、大きな騒音を消すことはできません。日本の通常型潜水艦の最新型は、無音に近いので、水中でのステルス性は高いです。一方、原潜の場合は構造上どうしても騒音がでることは避けられないですから、何かを根本的に変えないと、水中でのステルス性を得ることはできません。

上に挙げたように、対潜戦闘用のセンサを欺瞞する為の装備は、すでに数世代前の潜水艦から実用化されていますので、潜水艦はステルス性を持っていると言ってよいでしょう。ただ、上でも示したように、現在の094型はアメリカの原潜にくらべれば、潜水での巡航時のエンジン音などがずっと大きく、容易に探知されるという弱点があるとされています。

よって、上の記事でいうところのステルス性とは何を示しているのかよくわかりません。おそらく、中国なりに創意工夫して、従来よりは、ある程度騒音を低減することに成功したということかもれしません。

バイデン政権の国務省報道官は昨年7月の定例記者会見で「米国政府は中国の急速な核戦力の増強に懸念を抱いており、中国政府が不安定な軍拡競争のリスクを減らすために実利的な交渉にのぞむことを期待する」と語ったばかりでした。

また米国の民間では前述のCSISが昨年6月に「2021年の中国の戦略と軍事部隊」という研究報告書を発表して、中国軍の核戦力全般に及ぶ増強への警告を出していました。

そのうえに同年7月中旬には中国の軍事評論集団が日本への核攻撃を描く動画を公表し、米国の専門家筋でも話題を集め、非難をも浴びました。この約6分の動画は明らかに中国政府の黙認を得て作成、公表されたものとみられます。

その内容は日本がもし中国軍の台湾武力攻撃による台湾有事が起きて、参戦した場合には中国側は即時に日本の核攻撃を加えるという趣旨でした。

この動画は米側での反応が広がり始めると中国当局が一般向けのサイトからは削除したですが、戦略核ミサイル部隊が駐屯する陝西省の共産党委員会のサイトにはそのまま掲載されました。これは、事実上中国政府の日本への核攻撃の恫喝でした。

この動きに対して、米側では中国当局が長年、掲げてきた「核先制不使用」政策(核兵器は戦争でも相手が使った場合にしか使用せず、非核国にも使用しないという政策)への不信感が表明されるようにもなりました。

そんな状況での中国の潜水艦による核ミサイル発射能力を誇示するような動きに米側の警鐘が改めて鳴らされたことには、それなりの理由があったといえます。

日本では今年も、8月上旬は広島、長崎への原爆被害を記念する式典が催され、核兵器自体への反対が繰り返し表明されます。この世界からすべての核兵器をなくせ、という声があがります。こうした反核の声はまず日本への敵意を示す中国や北朝鮮の核兵器に対してこそ向けられるべきです。

さらに、今年は、日中国交正常化50年直前ののタイミングで「長征18号」が南シナ海で訓練を行う様子を動画で公開しました。このような核の恫喝に日本は、どのように対抗すべきでしょうか。

日本も、潜水艦に長距離ミサイルを搭載して、発射できるようにして、核は用いないものの、要所、要所に正確にピンポイントで攻撃できる体制を整えるべきです。

核でなくても、いざとなれば、三峡ダムなど中国の弱い部分を攻撃できるようにしておくべきです。ちなみに、三峡ダムが破壊されれば、中国の国土の40%は洪水に見舞われるとされています。台湾は、すでに長距離ミサイルを配備し、いざとなれば三峡ダムを破壊できる体制を整えたとされています。

それ以外にも、レーダー基地、監視衛星の地上施設、ミサイル発射基地、原子力発電所、データセンターなどにも攻撃ができます。

ただ、台湾は、新型のミサイルを発射できる潜水艦は、現在は持っておらず、現在開発中です。日本が長距離ミサイルを持ち潜水艦から発射できるようにすれば、これは中国にとってもかなりの脅威になります。

このブログでは、以前から日本の潜水艦22隻配備体制によって、日本の専守防衛力はかなり高まった旨を掲載しています。

なぜ、そういうことになるかといえば、中国の対潜水艦戦闘力(Anti Submarine Warfare)は、日本と比較すると劣っているからです。特に、対潜哨戒能力に劣っているからです。

そうなると、中国の艦船が、尖閣諸島に近づけば、日本はこれを簡単に撃沈することができるからです。そのため、尖閣などに上陸したとしても、日本側が潜水艦でこれを包囲すれば、中国がはこれを発見するのが難しいため、尖閣諸島に輸送船を派遣すれば、撃沈されることを覚悟しなくてはならなくなるからです。

そうなると、尖閣諸島への補給はできなくなり、上陸した兵もお手上げになってしまいます。これは、尖閣だけではなく、日本の他の領土でも同じことです。だから、日本は専守防衛はできるでしょう。

しかし、中国はこうした膠着状況を打開するため、あるいは国内世論に配慮して、日本にミサイルを発射することは十分に考えられます。それでも、日本の潜水艦は、中国の潜水艦や艦艇を撃沈し続けるでしょうから、日本の独立は保たれるとは思います。

しかし、中国がミサイルを発射すれば、日本の国土は破壊され、国民の命や財産も危険にさらされることになります。日本は、これに対抗する手段をもたなければなりません。そのためには、潜水艦に長距離ミサイルを搭載できるようにすべきです。

そうなると、これは中国に対するかなりの抑止力になります。岸田政権は、あまり中国を刺激しないようにと配慮しているようですが、刺激しているのは中国のほうです、昨年は7月中旬には中国の軍事評論集団が日本への核攻撃を描く動画を公表し、今年は南シナ海で核ミサイル搭載原子力潜水艦が訓練を行う様子を公開したわけですから、日本がこれに対抗するため何らかの手段を講じるのは当然であり、そうしたとしても、世界中のほとんどの国はこれを非難することはありません。

避難するのは、中国、ロシア、北朝鮮等の極少数の国だけでしょう。


政府は、昨年から海上自衛隊の潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載する方向で検討に入ったとされています。ミサイルは海中発射型とし、自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「敵基地攻撃能力」を具体化する装備に位置づけられる見込みだとされていました。

是非これを実現して欲しいものです。中国に対して、もし日本を攻撃すれば、自分たちも大きな傷みを伴う、報復を受けることを周知徹底すべきです。

それ以前に、日本は潜水艦22隻体制によって、専守防衛体制が整っていることも周知徹底すべきです。このブロクでは、台湾有事となるとなぜか日米のシミレーションでは潜水艦が一隻も登場せず、不利な戦いを強いられるシナリオになります。

米国には強力な攻撃型原潜があり、それを3 隻くらいも台湾近海に配置すれば、対潜水艦戦闘力に劣る中国海軍は太刀打ちできないのは明らかであるにもかかわらず、米国のシミレーションでは潜水艦は登場しません。

これは、おそらく、米海軍などが、海軍に対して耳目をひきつけ、予算獲得などを有利にしようとしている節があることを、このブログでは掲載してきました。それが、本音ではないかと思います。

日本もそうではないかとは思ったのですが、どうもそうではないような気がしてきました。中国は、昨年も今年も核で日本を恫喝し続けているのに、ひたすら日本の潜水艦隊の実力を隠し続けるのは、一重にいわゆる「中国配慮」なのではないかと思えてきました。

もう、そんなことをしている場合ではないと思います。日本は、尖閣諸島で潜水艦で尖閣諸島を潜水艦で包囲して、尖閣に近づく艦船を撃沈する訓練をしても良いと思います。それも、中国の監視船の鼻先で実施して、恐怖心を煽るようなこともありだと思います。

その後に間髪をいれず、潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載する旨を公表すべきです。そうすれば、中国はパニックに陥り、烈火のごとく怒り、日本を批判するでしょうが、それは中国が自ら日本を核で恫喝したことの帰結がこうしたことを招いたのだとしっかりと認識させるべきでしょう。

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2022年9月30日金曜日

高市氏が〝捨て身〟の告発!岸田内閣「中国スパイ」を野放しか 「セキュリティー・クリアランス」提出に圧力、政府内の親中派と暗闘を示唆―【私の論評】危機管理能力があまりに低い岸田政権は、短期で終わらせないと、自民党はおろか、日本国、日本国民が毀損されかねない(゚д゚)!

有本香の以読制毒

高市経済安全保障相は「闘う政治家」としての覚悟を決めたようだ

 高市早苗経済安全保障担当相が28日、「捨て身の告発」に打って出た。先端技術の流出を防ぐため、重要情報を取り扱う研究者らの身分の信頼性を確認する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」をめぐり、政府内の〝抵抗勢力の存在〟や〝親中派との闘争〟を示唆したのだ。「国葬(国葬儀)」で27日に見送られた安倍晋三元首相は生前、日本の国力を維持・発展させるため、欧米諸国では常識である「スパイ防止法」の制定にも意欲を持っていた。日本と中国は29日、国交正常化から50年を迎えた。岸田文雄政権の、国民と国家を守る気概が問われている。ジャーナリスト、有本香氏による緊急リポート。

 現役閣僚による爆弾発言が飛び出した。

 「大臣に就任した日に言われたのは、『中国』という言葉を出さないでくれというのと、来年の通常国会にセキュリティー・クリアランスを入れた経済安全保障推進法を提出するとは口が裂けても言わないでくれと言われました」

岸田首相

 高市氏が28日夜、「BSフジLIVE プライムニュース」に出演した際の発言である。これに岸田首相がどう対処するか〝見もの〟だ。

 経済安全保障については今年5月、経済安全保障推進法が成立したが、同法には最も重要な要素が欠落している。それがセキュリティー・クリアランス、「人の適格性の審査」だ。あえて簡単に言えば、外国のスパイを取り締まるルールである。

 同法成立の前から、筆者はこの欠落を厳しく批判していた。「仏作って魂入れず」のような経済安保法にどれほどの意味があるのか、ということである。国会提出前の今年2月には、自民党の政調会長だった高市氏と『月刊Hanada』で対談し、次のようなやり取りをした。

 高市氏「今年の大きな柱はやはり経済安全保障政策です。どのような事態になっても必要な物資を国内で調達できる環境、サイバー攻撃から国民の生命や財産を守り抜くこと、機微技術の国外流出を防ぐことなどを柱とする『経済安全保障推進法』の第1弾を今国会で必ず成立させたい」

 筆者「かねてより高市さんがおっしゃっていた外国人研究者などのスクリーニング(選別)は、その第1弾には含まれるんですか?」

 高市氏「外国人研究者のスクリーニングは第2弾でやります。これを入れると今国会では通りませんから」

正直に言うと、7カ月前、高市氏のこの答えにひどく失望したものだ。

 対談での高市氏は、「岸田政権をサポートする」「7月の参院選に勝利することが大事」という表明に終始した印象だった。それは政調会長という立場からすると当然ではあるが、あまりにも型通り、多くの読者の失望を誘うものでもあった。

 実は、筆者はこのときの失望を、安倍氏にもぶつけた。「人のスクリーニングを盛り込まないなら、意味のない法律です」と。

 筆者の怒りに対し、安倍氏は「人のスクリーニングを盛り込んだ法律は必ずやるから。こちらもプッシュしていく。ただ、容易でないことは理解してほしい」と答えていた。

 しかしいま、昨晩の高市氏の「告発」を聞き、生前の安倍氏の言葉を思い返すと、経済安保をめぐる自民党内の「闘争」、とりわけ「親中派との闘争」が実感を伴ってみえてくる。2月に筆者が抱いた強い失望は、こうした暗闘への筆者の不理解も少々手伝ったかと反省する。

 今般、高市氏が「捨て身の告発」に打って出たのには、安倍氏の国葬儀が無事終わったことも関係しているかもしれない。国葬儀には筆者も参列したが、かけがえのないリーダーを喪った悲しみ、反省を改めて深くする一方で、国難のいまこそ、「闘う政治家」だった安倍氏の遺志を、皆で継ぐべきという思いにもさせられた。

 高市氏は同じ28日、BS日テレの「深層NEWS」にも出演し、政府による国葬実施の決定過程について次のような苦言を呈している。

 「決定する少し前に国会の議院運営委員会の理事会とか、衆参両院の議長とか、そういったところに話がちゃんとあってもよかったのではないか」

 一連の高市発言を「岸田おろし」や「閣内不一致」というレベルの話題にして済ますべきではない。

 「中国のスパイ」一つ取り締まれない日本に明日はない。安倍氏の志を真に継ぐのは誰なのか―。はっきりさせるときである。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】危機管理能力があまりに低い岸田政権は、短期で終わらせないと、自民党はおろか、日本企業、日本国、日本国民が毀損されかねない(゚д゚)!

上の記事にある、高市氏が28日夜、「BSフジLIVE プライムニュース」に出演した際の発言については、昨日このブログに掲載したばかりです。高橋洋一氏のツイートに掲載された動画という形で掲載しました。昨日の記事のリンクを以下に掲載します。
短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”―【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!
昨日の記事から一部を引用します。
安倍元総理が暗殺された後の、内閣改造は、酷いものでした。露骨な安倍派の排除でした。この内閣改造は、論評にも値しない酷いものでした。

しかも、内閣改造の前には、「統一教会に関係があった人は閣僚から外す」として、旧統一教会と比較的関係が強いとみられていた、安倍派を外す旨を公表しての人事でした。

安倍派という多数派をないがしろにする岸田総理の人事をみて、他派閥も反発を強めたことでしょう。

しかも、内閣改造で頭がパンパンだったとみられる、岸田首相は、中国にミサイルを発射されても、国家安全保障会議 (NSC)を開催しませんでした。

旧統一教会に関しては、厳密な法律の適用や、新たな法律の検討などを飛び越して、憲法や法律に抵触するおそれさえある統一教会排除を宣言し、それこそ、魔女狩りに等しいような批判をした、野党やマスコミの土俵にみずから乗ってしまうようなことをやらかしてしまいました。

この2つのことによって、岸田総理には「危機管理能力」が欠如していることが明らかになりました。これは、歴代内閣の中でも最悪かもしれまません。

以上でもおわかりのように、この記事は、次の自民党内の政局を中心に述べたものです。その文脈で高橋洋一氏のツイートに掲載された高市氏の発言をの動画を掲載したものです。高橋洋一のツイートを以下に再掲します。

昨日の記事には、この動画に続けて以下のように述べました。
このようなことを、外部に漏らしてしまうということは、自民党内で相当不満が鬱積していることを示しているものと考えられます。そうでなければ、このような発言はできないと思います。

安倍元総理の「国葬儀」までは、こらえてきたのでしょうが、こらえきれなくなって高市氏は、このような発言をしたのでしょう。そうして、これは無論高市氏一人ということではないでしょう。
ただ、この発言は上の、有本香氏が語っているように、一連の高市発言を「岸田おろし」や「閣内不一致」というレベルの話題にして済ますべきではないです。

スパイに関しては、最近米国でもショッキングなことがありました。たとえば世界中の人々が利用する巨大SNS(交流サイト)で浮上した〝スパイ疑惑〟が波紋を呼んでいます。米国のSNS「ツイッター」の元セキュリティー責任者が、米議会上院の司法委員会で「ツイッターの従業員の中に中国の工作員がいた」と証言したのです。

不特定多数のユーザーの個人情報が筒抜けになり、工作活動に悪用される可能性があります。日本でも、企業や大学、研究所などにスパイが浸透して、非合法的手段による情報収集や、さまざまな工作活動を行う危険性が指摘されてきました。

これは決して対岸の火事ではありません。日本は最先端の科学技術を誇り、世界中の情報が集中していますが、「スパイ防止法」が存在しません。万が一、逮捕されてもスパイ行為自体については、犯罪ににならず、スパイ行為を実行する際に何らかの違法行為を行っていれば、はじめて犯罪が成立し、それを司法でさばくことができます。スパイ行為自体は、重罪になりません。まさに『スパイ天国』というしかないです。

もともと著名な「ハッカー」として知られたツイッターの元セキュリティー責任者、ピーター・ザトコ氏は米議会の公聴会で13日、重大なスパイ疑惑の存在を証言し、ツイッターが抱える問題点を指摘しました。


ロイター通信によると、ザトコ氏は公聴会で「FBI(連邦捜査局)がツイッターに対し、中国国家安全部(MSS)の工作員が従業員名簿に載っていると通知した」と説明。インド政府の意向を受けた人物も在籍していたと主張し、「(ツイッターは)外国情報機関を探し出し、追放する能力がない」などと批判したといいます。

ザトコ氏は今年1月、指導力の欠如と期待を下回る仕事ぶりを理由に同社を解雇されました。その後、米議会や米証券取引委員会(SEC)、司法省、連邦取引委員会(FTC)などに文書を送付し、告発に踏み切りました。

これに対し、ツイッターは「当社のプライバシーとデータセキュリティーに関する誤った主張で、矛盾点や不正確な点だらけだ。セキュリティーとプライバシーは当社の最優先事項だ」などと反論しました。

世界的企業を直撃したスパイ疑惑だが、日本でも機微に触れる情報や先端技術をターゲットに、海外の工作員が企業に近づく事件が起きています。

2020年には、大手通信会社「ソフトバンク」の元社員が、在日ロシア大使館幹部の男にそそのかされ、通信設備関連の機密情報を持ち出し、不正競争防止法違反容疑で逮捕されました。男の正体はロシア対外情報庁(SVR)のスパイで、他国の科学技術を狙うグループ「ラインX」の要員だったとみられますがが、警視庁公安部の出頭要請に応じず出国しました。

逮捕された合場邦章容疑者(45)

大手化学メーカー「積水化学工業」でも同年、スマートフォン関連技術を中国企業に漏らした元社員が書類送検される事件が発覚しました。中国企業側はSNSを通じ元社員に接触し、巧みに情報を漏洩するよう誘っていました。

日本企業を狙うスパイ事件ではこれまで、外国情報機関の要員らが日本人社員に接近し、漏洩をそそのかすケースが多かったそうですが、グローバル化で社員が多国籍となれば、スパイ本人が社員として浸透するケースも出てくることになるでしょう。

警察当局は、重要な情報が相手方にわたる「後手」を防ぎ、国益を守る観点から、不審な動向を把握した時点で、所属する企業側へ通報する方針にシフトしているそうです。

高市早苗経済安全保障担当相は先月、先端技術流出を防ぐため重要情報を取り扱う研究者らの身分の信頼性を確認する、「セキュリティークリアランス(適格性評価)」制度の検討を急ぐ意向を示しました。

高市氏は「機微情報や重要な技術に接する方々の信頼性を確保しなければ、日本で民生技術として研究してきたものが他国の先進的な兵器に使われる可能性もある」と懸念を示しました。

ただ、日本では工作員の存在や疑いを確認しても諜報活動そのものを取り締まる法律がありません。窃盗や背任、外為法、旅券法違反など、具体的な犯罪がなければ摘発は困難で、「スパイ天国」とも揶揄されています。

高市氏は今年5月、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、セキュリティー・クリアランスに言及したうえで、「これをしっかりやらないと日本が欧米のサプライチェーンから外される可能性もある」「スパイ防止法に近いものを入れ込んでいくことが大事だ」と強調していました。

日本は平和と安全、国民の生命と財産を守るため、スパイの浸透を阻止しなければならないはずです。

にもかかわらず、高市早苗経済安全保障担当大臣は、「大臣に就任した日に言われたのが『中国って言う言葉を出すな。来年の通常国会にセキュリティ・クリアランスを入れた経済安保法を提案すると口が裂けても言うな』と言われた」というのですから、これは一体どうなっているのでしょうか。

誰が高市氏対してそのような発言をしたのでしょうか。岸田総理なのでしょうか。

いずれにしても、岸田政権にはあまりに問題が多すぎです。特に、危機管理能力があまりに低レベルです。短期政権で終わらせないと、自民党はおろか、日本企業、日本国、日本国民が毀損されかねません。

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2022年9月29日木曜日

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短命に終わった「麻生政権・菅政権」と、いまの岸田政権の“ヤバすぎる共通点”

“最悪の自民党政権”と呼ばれた政権

 岸田文雄政権の支持率が急落している。岸田政権の前の菅義偉内閣は1年1か月で崩壊した。岸田政権はまもなく1年を迎える。岸田政権は大丈夫なのだろうか。永田町では「政権の存続の指標」と言われる“青木方程式”で分析した。なお、内閣支持率、政党支持率はすべてNHK世論調査による。

 “青木の法則”とも呼ばれる「青木方程式」は、自民党の青木幹雄元参院議員会長が経験に基づき提唱したもので、「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を下回ると政権は倒れる」という法則だ。

 確かに、近年の政権が倒れた時の状況を見ると、青木方程式が当てはまるケースは多い。(表1)


 第1次安倍政権以降、8人の首相が誕生しているが、このうち5人の政権は青木方程式が50%を下回り倒れている点を考えれば、青木方程式はある程度は信頼に値すると考えられる。

 ただ、福田康夫政権は青木方程式が50%を下回ってから4か月間生き延びたし、麻生太郎政権は月1度の世論調査で4回も青木方程式が50%を下回り、“最悪の自民党政権”と言われた。

 菅直人政権は4か月連続で50%を下回った後で倒れ、野田佳彦政権は1年4か月の政権期間のうち、12か月も50%を下回っていたことから、青木方程式は50%を下回ったからと言って、すぐに政権が倒れるというものではない。

 一方で、第1次安倍晋三政権以降で青木方程式が50%を下回らなかったのは、安倍政権(第1次から第4次まで)と菅政権だけだが、それでも政権は倒れる。青木方程式が50%を下回っていないから“安泰”というものでもない。

 安倍元首相の長期政権を引き継いだ菅政権は、不十分な新型コロナウイルス対策とワクチン接種対応への遅れに加え、衛星放送関連会社「東北新社」に勤務していた長男と総務省幹部らとの接待会食が明らかになったことが“引き金”となり、支持率の低下を招いた。

 菅政権を引き継いだ岸田政権は、新型コロナ対策以外の政策に対して不満や批判が多く、加えて、旧統一教会と自民党議員の関係に対する説明不足や対応不足を指摘する声、安倍元首相の「国葬実施」に対する反対意見が支持率低下の原因となっている。

 では、岸田政権の支持率と自民党支持率、青木方程式はどのように推移しているのだろうか。

 内閣支持率がもっとも高かったのは、22年5月と6月の59%。自民党支持率がもっとも高かったのは、22年2月の41.5%だった。内閣支持率と政党支持率の合計である青木方程式がもっとも高かったのは、22年6月の99.1%だ。(表2)


青木方程式が急落

 安倍元首相が銃撃によってお亡くなりになったのは7月8日。その後、7月16日から18日にかけて行われたNHKの7月世論調査では、内閣支持率は59%、自民党支持率は38.1%、青木方程式は97.4%だった。

 調査時点ではすでに、安倍元首相を襲撃した犯人と旧統一教会との関連が報道され、さらに、複数の自民党議員と旧統一教会の関連も報道され始めていたことで、自民党支持率は6月世論調査の40.1%から38.4%へ1.7ポイント低下した。

 だが、8月調査では自民党議員と関係が大きく広がり、岸田首相や自民党の対応に対する批判が強まった。加えて、安倍元首相の国葬が決まったことへの批判もあり、内閣支持率は7月の59%から一気に46%へ13ポイントも低下し、自民党支持率も38.4%から36.1%に2.3ポイント低下したことで、青木方程式は97.4%から82.1%へと15.3ポイントと大幅低下した。

 青木方程式が1か月で15ポイントを超えて低下することは“非常に稀”で、菅政権では一度もなかった。ただ、麻生政権では31.0ポイント低下したケースがある。

 そして、直近の9月世論調査では、内閣支持率は46%から40%に6ポイント低下、自民党支持率は36.1%から36.2%に0.1ポイント上昇し、青木方程式は82.1%から76.2%に5.9ポイント低下した。

麻生・菅政権はどうだったか

 安倍元首相襲撃事件が引き金となって、自民党議員と旧統一教会との関係、安倍元首相の国葬が内閣支持率、自民党支持率の低下に結び付いたことは明白だ。

 とは言え、岸田政権の9月世論調査での青木方程式は76.2%と危機ラインの50%を上回っている。それでも、政権が “安泰”ではないことは前述した。加えて、筆者には何点か気にかかる点がある。

 第1次安倍晋三内閣以降、ほとんどの政権が1年程度、長くても約1年半で政権が崩壊している。福田康夫政権は365日、麻生太郎政権は358日、鳩山由紀夫政権は266日、菅直人政権は452日、野田佳彦政権は482日、菅義偉政権は384日といった具合だ。そして、岸田政権は21年10月4日発足なので、まもなく1年を迎える。

 そこで、過去の政権の青木方程式を見ると、青木方程式が当てはまった典型例の麻生政権は、青木方程式がもっとも高かったのが発足時の08年9月の85.3%で、この時の内閣支持率は48%で自民党支持率は37.3%だった。

 その後、内閣支持率、自民党支持率とも急激に低下し、政権発足の4か月後の09年1月に青木方程式は危機ラインの50%を割り込み、48.4%に低下した。麻生政権の1年1か月の間に青木方程式の50%割れは6か月もあった。(表3)


 一方、青木方程式が50%を割り込むことなく倒れた菅政権の青木方程式は20年9月の発足時の102.8%がもっとも高い。この時、内閣支持率は62%。自民党支持率は40.8%で、共にもっとも高かった。

 その後、菅政権は支持率を下げ続け、21年9月には内閣支持率が29%と発足時から33ポイントも低下、自民党支持率も33.4%と発足時から7.4ポイント低下し、青木方程式も62.4%と発足時から40.4ポイント低下して最低となった。(表4)


3つの政権の共通

 この麻生、菅、岸田の3つの政権の青木方程式には、何の共通項もないように見える。そこで、3つの政権の発足後の青木方程式の動きを1つのグラフにまとめてみた。(表5)


 各内閣の青木方程式の水準は違うものの、1つの共通する動きは政権発足から9か月、10か月で青木方程式の数値が低下し始めることだ。この共通項は安倍政権を除く、多くの政権でも見られている。

 そして、麻生、菅の両政権では、内閣支持率が自民党支持率を下回ると、青木方程式が大きく低下を始めている。前述のように、岸田内閣の直近9月の内閣支持率は40%、自民党支持率は36.2%と両者はかなり接近している。

 さらに、麻生、菅政権とも、政権期間中に青木方程式が前月よりも“7回低下”した後に倒れている。他の政権でも同様の傾向が見られ、どうやら青木方程式の7回の低下というのは、政権にとっては一つの“鬼門”のようだ。現在、岸田政権の青木方程式は“6回低下”している。

 このように、岸田政権は(1)10月に発足1年を迎える、(2)政権発足10か月目から青木方程式が低下している、(3)内閣支持率と自民党支持率が接近している、(4)青木方程式が6回低下している―という状況にある。

 従って、10月の世論調査で内閣支持率、自民党支持率、そして青木方程式がどのように変化するのかは、岸田政権の存続を占う上で大きな意味を持ちそうだ。

鷲尾 香一(ジャーナリスト)

【私の論評】危機管理能力が欠如した岸総理に対し、自民党保守派には不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力に(゚д゚)!

上の記事、青木率の部分は非常に参考になります。その他の部分では、あまり参考にはならないです。ただ、青木率については詳しく分析し、グラフにしていたため、ブログに掲載することになしました。

まず、麻生政権のときの状況はどうだったかといえば、この頃からすでに日銀は金融引締を継続し、政府は緊縮財政を繰り返し、日本はいわゆる「失われた30年」に突入していました。


日本経済はデフレあったにも関わらず、日銀は金融引き締めを行い、政府は緊縮財政を継続していました。そのため、日本経済は低迷するばかりで、これでは自民党の誰が総理大臣になって新たな政権をつくっても、短期で終わったことでしょう。麻生政権崩壊の原因は、これが第一の原因ですし、他の原因もあるかもしれまんせんが、それは大勢に影響はなかったと思います。

これは、その後民主党政権になっても、日銀の金融政策、政府の財政政策は変わりなく、結局民主党政権も崩壊し、安倍政権に変わりました。民主党政権の崩壊も、失われた30年を終わらせるために、金融政策や財政政策を変更しなかったことが原因でしょう。

このことは、十年くらい前までは、なぜかマクロ経済的な考え方が日本では普及していなかったので、このようなことを語ってもほとんど顧みられなかったのですが、多くの心ある経済学者らが、日本でもマクロ経済的な見方を普及してきたので、最近ようやっと理解されるようになってきました。ただ、いまなお政治家の中には、昭和の頭で、経済対策=公共工事だと思いこんでいる古いタイプの政治家も多いようです。

その後、安倍政権になってから、日銀は、黒田総裁により異次元の包括的金融緩和に取り組みました。政府も、積極財政に転じました。そのため、雇用も改善し、経済も良くなりつつありました。これも、以前には理解されなかったのですが、マクロ経済学上では、当たり前すぎる雇用=日銀の金融政策という考え方も随分普及してきたようです。

ただ、さすがの安倍政権でも三党合意を崩すことはできず、2度の消費税増税を実施することになりました。そのため、デフレから完全脱却するには至りませんでしたが、安倍政権は二度にわたり消費税増税を延期したことと、日銀による金融緩和は継続されたので、雇用は劇的に改善されました。

この雇用の劇的な改善は、安倍長期政権の原動力になったことはいうまでもありません。他にも、安倍政権が長期となった原因もあるでしょうが、もし雇用の劇的な改善がなければ、安倍政権は長期政権にはなり得なかったことでしょう。ただ、この考えは、今でも理解されいないようで、特に民主党の議員らは全くこれに対して理解を示してないようです。

二度の増税によってデフレから完全脱却をしていなかった日本は、その後コロナ禍に襲われました。これに対して安倍・菅政権は、両政権において合計で100兆円の真水の経済対策を実施し、他国にはない日本独自の雇用調整助成金も活用して、大型の経済対策を実施して、他国ではコロナ禍によって、失業率が大幅に上昇したにも関わらず、日本では失業率を現在に至るまで、2%台で推移させるという大偉業を達成しました。

これは、大偉業なのであるにもかかわらず、マクロ経済に疎い、野党やマスコミはほとんど評価しませんが、実際に就職などで、雇用の劇的改善したことを身を以て体感した、若い人たちや、就職に関わった学校の先生や、企業の人事に関わった人たちは、これを高く評価しています。無論、市場関係者もこれを好感し、株価なども上がりました。

評価していないのは、野党とマスコミ関係者、リベラル派、左翼などだけだと思います。

菅政権に関しては、このブログでも指摘した通り、ワクチン接種は公約通りに実現し、日本に巣食う、鉄のトライアングル医療版である、尾身会長ですら抗えない医療村の大抵抗にあったために、病床確保には失敗したものの、医療崩壊も起こすことなく、大勢では大成功したと思います。

それに先程指摘したとおりに、失業率も上昇させることはなく、そのため失業が深刻な社会問題にもなることはありませんでした。実際、皆さん、思い返してください、 2008年あたりから見られた、派遣村のような、コロナ派遣村のようなものが設営されたといことは、聴いたことがないです。

無論、相談の受付とか、食料などの援助というものはありましたが、大規模な年越し村のようなものは設営されませんでした。

菅政権が崩壊した理由など後付でいろいろいう人がいますが、私はこれはほとんどが間違いだと思っています。一番の理由は、自民党内で、菅政権の支持率が下がっているので、菅政権では次の選挙では、戦えないという声が巻き起こり、菅総理はもともと一年の短期政権と決まっていたので、総裁選に出ずに自ら政権を終わらせたというのが主な原因だと考えられます。

そもそも、菅政権を続けようという意思があれば、続けられた余地は十分あったと思います。私としては、続けたほうが、岸田政権になるよりは、はるかにまともだったと思いました。そうして、テレビの印象操作などで漠然と菅総理では駄目だなどと考えていた人たちの多くも、今「どうして菅氏に反対したのか」と問われれば、満足に答えられない人も多いのではないかと思います。実際、少し前から、菅前総理の見直しの動きがあるそうです。何を今更という気がします。

ただ菅氏が政権を自ら終わらせることができた背景としては、安倍元総理という、実績もあり最大派閥のトップという強力な政治家が存在していたということが大きいでしょう。誰が次の総理大臣になっても、派閥の均衡が大きく崩れることはないし、政策の大きな変更もないだろうという安心感からか、結局総裁選で岸田氏が勝ち、総理大臣になりました。

ただ、安倍元総理が暗殺された、後の内閣改造は、酷いものでした。露骨な安倍派の排除でした。この内閣改造は、論評にも値しない酷いものでした。

しかも、内閣改造の前には、「統一教会に関係があった人は閣僚から外す」として、旧統一教会と比較的関係が強いとみられていた、安倍派を外す旨を公表しての人事でした。

安倍派という多数派をないがしろにする岸田総理の人事をみて、他派閥も反発を強めたことでしょう。

しかも、内閣改造で頭がパンパンだったとみられる、岸田首相は、中国にミサイルを発射されても、国家安全保障会議 (NSC)を開催しませんでした。

旧統一教会に関しては、厳密な法律の適用や、新たな法律の検討などを飛び越して、憲法や法律に抵触するおそれさえある統一教会排除を宣言し、それこそ、魔女狩りに等しいような批判をした、野党やマスコミの土俵にみずから乗ってしまうようなことをやらかしてしまいました。

この2つのことによって、岸田総理には「危機管理能力」が欠如していることが明らかになりました。これは、歴代内閣の中でも最悪かもしれまません。

そうして、無派閥の議員や、各派閥にも多く存在する保守派の議員は、財務省に近く、親中派でもある宏池会に対して、安倍元首相が亡くなった現在では、何をやらかすかわからないと疑心暗鬼になり反発していることでしょう。

実際、無派閥で保守派の高市早苗経済安保担当相は「FNNプライムライン」で不満を公表しています。
このようなことを、外部に漏らしてしまうということは、自民党内で相当不満が鬱積していることを示しているものと考えられます。そうでなければ、このような発言はできないと思います。

安倍元総理の「国葬儀」までは、こらえてきたのでしょうが、こらえきれなくなって高市氏は、このような発言をしたのでしょう。そうして、これは無論高市氏一人ということではないでしょう。

自民党の大勢は、統一教会関連のことが今後どのように推移していくのかを見守った上で、自民党を毀損しないようにしたうえで、どのように岸田政権を短期政権にするかという方向で政局が動いていくものと思います。

このような動きを理解したうえで、青木率の推移をみていけば、次の政局の動きがみえてくると思います。

ただ、安倍元総理が亡き現在、安倍元総理の政策を継承できる有力政治家は限られています。高市氏や安倍派の幹部たちも残念ながら、今はまだ非力です。

岸田総理は、「国葬儀」で安倍路線を引き継ぐことを約束しましたが、残念ながら先に述べたように、党内政治においても、党外政治や、外交・安全保証に関しても、危機管理能力が欠如していることがはっきりしました。このような人が、総理大臣を長く続けていれば、日本はいつ、どのような危機に見舞われるかわかったものではありません。

自民党には、危機管理を適切に行い、安倍路線引き継ぎつつ、若手を育ている政治家が必要です。ただ、これは一人の政治家では無理だと思います。複数の政治家が協力して、このようなことを実行していくべきです。改めて、安倍元総理の偉大さが理解できます。

そうして、数の力を知る自民党は、今回は、慎重に自民党を毀損しない形で政局をすすめていくでしょう。そのため、現在は自民党内には目立つた岸田おろしの動きはみえていません。

ただ、自民党保守派には相当不満が鬱積しており、これが次の政局への原動力になるのは、間違いないようです。

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2022年9月28日水曜日

安倍氏死去/安倍氏国葬、「台湾」読み上げ献花 「非常に深い思い感じた」対日機関会長―【私の論評】岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるな(゚д゚)!

安倍氏死去/安倍氏国葬、「台湾」読み上げ献花 「非常に深い思い感じた」対日機関会長

安倍晋三元首相の国葬に参列した(左から)蘇嘉全・台湾日本関係協会会長、謝長廷駐日代表、王金平元立法院長

安倍晋三元首相の国葬が27日、東京・日本武道館で行われ、台湾は献花の際、国名や国際機関名などを読み上げる「指名献花」の対象とされた。これについて、台湾からの代表団のメンバーとして参列した対日窓口機関、台湾日本関係協会の蘇嘉全(そかぜん)会長は、「日本各界の台湾に対する思いが非常に深いと感じた」と語った。

台湾からは蘇氏の他、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)、王金平(おうきんぺい)元立法院長(国会議長)の3氏が蔡英文(さいえいぶん)総統に指名され出席した。

謝氏は、台湾の代表団として参列したメンバーはいずれも安倍氏と親交があったとし、中国から「とやかく言われる筋合いはない」との考えを示した。

蘇氏は今回の訪日について、日本側から手厚くもてなされ、尊重を感じたとも話した。

中国は、日本が台湾を指名献花の対象に加えたことに反発している。

▽李登輝氏次女、安倍氏の生涯に「父の姿重なった」

安倍氏の国葬には、李登輝(りとうき)元総統の次女、安妮(あんじ)さんも参列した。

安妮さんは27日、都内のホテルで開かれた記者会見に出席。国葬で上映された安倍氏の歩みを振り返る映像について、安倍氏は日本人として自信を持つよう国民を鼓舞し、日本に貢献したと言及。李登輝氏も過去20~30年にわたり、台湾人を励まし、自信を取り戻させたことを思い出したと語った。

国葬を通じ、「父と安倍氏の関係がありありと目に浮かんだ」という安妮さん。国葬の前、両氏の交流について「師弟であり友人であり、父子のようでもあった」と話していた。
安倍晋三元首相の国葬が27日、東京・日本武道館で行われ、台湾は献花の際、国名や国際機関名などを読み上げる「指名献花」の対象とされた。これについて、台湾からの代表団のメンバーとして参列した対日窓口機関、台湾日本関係協会の蘇嘉全(そかぜん)会長は、「日本各界の台湾に対する思いが非常に深いと感じた」と語った。

台湾からは蘇氏の他、謝長廷(しゃちょうてい)駐日代表(大使に相当)、王金平(おうきんぺい)元立法院長(国会議長)の3氏が蔡英文(さいえいぶん)総統に指名され出席した。

謝氏は、台湾の代表団として参列したメンバーはいずれも安倍氏と親交があったとし、中国から「とやかく言われる筋合いはない」との考えを示した。

蘇氏は今回の訪日について、日本側から手厚くもてなされ、尊重を感じたとも話した。

中国は、日本が台湾を指名献花の対象に加えたことに反発している。

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安倍氏の国葬には、李登輝(りとうき)元総統の次女、安妮(あんじ)さんも参列した。

安妮さんは27日、都内のホテルで開かれた記者会見に出席。国葬で上映された安倍氏の歩みを振り返る映像について、安倍氏は日本人として自信を持つよう国民を鼓舞し、日本に貢献したと言及。李登輝氏も過去20~30年にわたり、台湾人を励まし、自信を取り戻させたことを思い出したと語った。

国葬を通じ、「父と安倍氏の関係がありありと目に浮かんだ」という安妮さん。国葬の前、両氏の交流について「師弟であり友人であり、父子のようでもあった」と話していた。

記者会見に臨む(左から)李安妮氏、王金平氏、蘇嘉全氏、謝長廷氏

【私の論評】岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるな(゚д゚)!

安倍元総理の国葬を巡って中国は日本に対し、「一つの中国」の原則に基づき、台湾からの代表団の招へいを控えるよう牽制(けんせい)していましたが、台湾外交部は「日本から正式に招待をされた」と発表していました。

代表団の派遣にあたり蔡英文総統は「安倍元総理の台湾に対する貢献に心から感謝を表す」とコメントを発表しています。

安倍元総理の国葬を受けた「弔問外交」はきょうも続いていますが、国葬への参列をめぐって、中国と台湾が複雑な“駆け引き”を繰り広げていました。

中国が政府代表として派遣したのは、国政の助言機関・全国政治協商会議の万鋼副主席でした。閣僚経験者とはいえ、エリザベス英女王の国葬に出席した国家副主席と比べるといわゆる“格下”です。

ちなみに、台湾外交部は、エリザベス女王の国葬においては、英国における台湾の事実上の大使館「台北代表処」の謝武樵代表が、18日に女王の公式弔問名簿に記帳したと発表しています。英国は台湾と外交関係はないですが、他国と同様の待遇が得られるように「特別に招待した」といいます。

実は、7月、台湾の副総統という、日本が台湾と断交して以降、最高位の政府関係者が安倍元総理の自宅を弔問に訪れ、中国は反発しました。

中国は国葬に台湾から誰が訪れるのか、出方を見極めていたといいます。

結局、台湾側が派遣を決めたのは高官ではない台湾日本関係協会会長らでした。

台湾の判断も受け、中国は国葬の4日前というタイミングで万鋼氏の派遣を決定しました。一方で、きのうの国葬では、はっきりと「台湾」とアナウンスされ、台灣の「指名献花」が行われたのです。これは、国として承認していない台湾に対して日本政府が初めて行ったものです。

磯崎官房副長官は、きょうの会見で「全ての代表団が指名献花を行った」としたうえで、「日本政府の立場に変更はない」と政府の見解を強調しました。

一方、中国外務省は「台湾独立分子に、政治利用の場や機会を与えてはならない」と日本の対応を強く批判しました。

岸田首相は、周囲に以下のように語ったとされています。

「中国からEEZにミサイルが撃ち込まれているわけで、それでこちらから“日中”というわけにもいかない。中国も(10月の)党大会が終わるまでは身動き取れないんじゃないか」

まさにこのとおりだと思います。

防衛省統合幕僚監部によると、中国とロシア両海軍のミサイル駆逐艦やフリゲート艦など計7隻が26日から27日にかけて、伊豆諸島付近など太平洋側を航行しました。ロシアが実施を公表している両国による太平洋での合同パトロールの一環とみられます。うち6隻は今月初め、北海道沖の日本海で機関銃射撃を実施し、オホーツク海に移動していました。

中国は国葬自体にも難癖を付けてきた。台湾が「指名献花」の対象に加えられたことに反発し、中国外務省の報道官は27日、「台湾独立分子に対し、政治的なもてあそびの舞台や機会を提供してはならない」と批判しました。

さらに、中国海警局の船3隻が28日午前3時15分ごろから、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に相次いで侵入した。第11管区海上保安本部が確認しました。 国葬が終わると29日に「日中国交正常化50年」を迎えます。 岸田政権には、毅然とした外交姿勢が期待されますが、岸田外交を担当するのは「政界屈指の親中派」である林芳正外相です。

米首都ワシントンで開かれた日米「経済版2+2」会合に出席した林芳正外相(2022年7月29日)

林氏は「建設的で安定的な日中関係を双方の努力で構築する」「こうしたときこそ意思疎通が重要。対話は常にオープンだ」などと繰り返し、日中の首脳クラスの会談実現に前のめりでした。 

「安倍さん、安倍総理。お疲れさまでした。そして本当にありがとうございました。どうか安らかにおやすみください」 岸田首相は追悼の辞をこう締めくくりましたが、安倍路線をを継承できるのでしょうか。 岸田首相の国葬での哀悼の辞「言葉」は良かったのですが、行動がともなうかどうかが問題です。台湾問題を中心とする対中外交は、クアッドの連携がカギです。

インドのナレンドラ・モディ首相が日帰りの強行日程でも国葬に出席したのは、安倍氏との関係だけでなく、中国の台頭を見据えて岸田首相との連携を表明する意思があったのだとみられます。生前の安倍氏の発言にもあったように「台湾有事は日本有事」です。岸田総理は、現実を直視して、抑止力強化に取り組むべきです。

会談を前にインドのモディ首相(左)と握手する岸田首相(27日午前、東京・元赤坂の迎賓館で)

岸田首相は東京・元赤坂の迎賓館での日印首脳会談で、安倍氏とモディ氏が「日印関係の新たな地平を切り開いた」と伝えました。その上で「外交的な業績をさらに発展させ、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、緊密に連携していきたい」と強調。モディ氏は「安倍氏は初めて『インド太平洋』を語り、クアッドを作った」と応じました。

同席者によると、モディ氏は安倍氏の思い出を語る際、感極まって泣きそうになる場面もあったとされています。

岸田総理は、国内外から安倍路線を引き継ぐことを期待されていることを忘れるべきではないです。間違っても、親中路線を歩むべきではありません。

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2022年9月27日火曜日

【安倍元首相国葬】菅義偉前首相「真のリーダーでした」 友人代表の追悼の辞全文―【私の論評】追悼の辞でわかった、実はコミュニケーション能力がかなり高い菅前総理(゚д゚)!

動画

安倍晋三元首相の国葬で追悼の辞を述べた菅義偉前首相=27日午後2時48分、東京都千代田区

 27日に営まれた安倍晋三元首相の国葬(国葬儀)で、自民党の菅義偉前首相は友人代表として追悼の辞を述べた。菅氏は安倍氏との出会いや第2次安倍政権時代の日々を振り返り、「あらゆる苦楽を共にした(第2次安倍政権での)7年8カ月。私は本当に幸せでした」と述べた。菅氏の追悼の辞の全文は次の通り。


 7月の8日でした。

 信じられない一報を耳にし、とにかく一命をとりとめてほしい。あなたにお目にかかりたい。同じ空間で同じ空気を共にしたい。その一心で現地に向かい、そしてあなたならではの温かなほほ笑みに、最後の一瞬、接することができました。

 あの運命の日から、80日がたってしまいました。

 あれからも朝は来て、日は暮れていきます。やかましかったセミはいつのまにか鳴りをひそめ、高い空には秋の雲がたなびくようになりました。

 季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに、時は過ぎる。無情でも過ぎていくことに、私はいまだに許せないものを覚えます。

 天はなぜ、よりにもよってこのような悲劇を現実にし、生命(いのち)を失ってはならない人から生命を召し上げてしまったのか。

口惜しくてなりません。悲しみと怒りを交互に感じながら、今日のこの日を迎えました。


 しかし、安倍総理とお呼びしますが、ご覧になれますか。ここ武道館の周りには花をささげよう、国葬儀に立ちあおうと、たくさんの人が集まってくれています。

 20代、30代の人たちが少なくないようです。明日を担う若者たちが大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています。

 総理、あなたは今日よりも明日の方がよくなる日本を創りたい。若い人たちに希望を持たせたいという強い信念を持ち、毎日、毎日、国民に語りかけておられた。そして、日本よ、日本人よ、世界の真ん中で咲き誇れ。これがあなたの口癖でした。

 次の時代を担う人々が未来を明るく思い描いて初めて経済も成長するのだと。いま、あなたを惜しむ若い人たちが、こんなにもたくさんいるということは、歩みをともにした者として、これ以上にうれしいことはありません。報われた思いであります。

 平成12年、日本政府は北朝鮮にコメを送ろうとしておりました。私は当選まだ2回の議員でしたが、「草の根の国民に届くのならよいが、その保証がない限り、軍部を肥やすようなことはすべきでない」と言って、自民党総務会で大反対の意見をぶちましたところ、これが新聞に載りました。

 すると、記事を見たあなたは「会いたい」と電話をかけてくれました。

 「菅さんの言っていることは正しい。北朝鮮が拉致した日本人を取り戻すため、一緒に行動してくれればうれしい」と、そういうお話でした。

 信念と迫力に満ちたあの時のあなたの言葉は、その後の私自身の政治活動の糧となりました。

 そのまっすぐな目、信念を貫こうとする姿勢に打たれ、私は直感いたしました。この人こそはいつか総理になる人、ならねばならない人なのだと、確信をしたのであります。

 私が生涯誇りとするのは、この確信において、一度として揺らがなかったことであります。総理、あなたは一度、持病が悪くなって、総理の座をしりぞきました。そのことを負い目に思って、二度目の自民党総裁選出馬をずいぶんと迷っておられました。

 最後には2人で銀座の焼鳥屋に行き、私は一生懸命、あなたを口説きました。それが使命だと思ったからです。3時間後にはようやく、首をタテに振ってくれた。私はこのことを「菅義偉、生涯最大の達成」として、いつまでも誇らしく思うであろうと思います。

 総理が官邸にいるときは欠かさず、一日に一度、気兼ねのない話をしました。今でも、ふと一人になると、そうした日々の様子がまざまざとと蘇ってまいります。

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に入るのを、私はできれば時間をかけたほうがいいという立場でした。総理は「タイミングを失してはならない。やるなら早いほうがいい」という意見で、どちらが正しかったかは、もはや歴史が証明済みです。

 一歩後退すると勢いを失う。前進してこそ活路が開けると思っていたのでしょう。総理、あなたの判断はいつも正しかった。

 安倍総理。日本国はあなたという歴史上かけがえのないリーダーをいただいたからこそ、特定秘密保護法、一連の平和安全法制、改正組織犯罪処罰法など難しかった法案を、すべて成立をさせることができました。どの一つを欠いても、わが国の安全は確固たるものにはならない。あなたの信念、そして決意に、私たちはとこしえの感謝をささげるものであります。

 国難を突破し、強い日本を創る。そして真の平和国家日本を希求し、日本をあらゆる分野で世界に貢献できる国にする。そんな覚悟と決断の毎日が続く中にあっても、総理、あなたは常に笑顔を絶やさなかった。いつもまわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ。

 総理大臣官邸で共に過ごし、あらゆる苦楽を共にした7年8カ月。私は本当に幸せでした。私だけではなく、すべてのスタッフたちがあの厳しい日々の中で、明るく生き生きと働いていたことを思い起こします。何度でも申し上げます。安倍総理、あなたはわが国、日本にとっての真のリーダーでした。

 衆議院第1会館1212号室の、あなたの机には読みかけの本が1冊、ありました。岡義武著『山県有朋』です。

 ここまで読んだという最後のページは、端を折ってありました。そしてそのページにはマーカーペンで、線を引いたところがありました。しるしをつけた箇所にあったのは、いみじくも山県有朋が長年の盟友、伊藤博文に先立たれ、故人をしのんで詠んだ歌でありました。

 総理、今、この歌くらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません。

 「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」

 「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の世をいかにせむ」

 深い悲しみと寂しさを覚えます。総理、本当にありがとうございました。どうか安らかに、お休みください。

令和4年9月27日 前内閣総理大臣 菅義偉

【私の論評】追悼の辞でわかった、実はコミュニケーション能力がかなり高い菅前総理(゚д゚)!

私は、今回の安倍元総理への追悼の辞の中で一番心を打ったのは菅前総理の辞ではなかったかと思います。これは、一人ひとり感じ方も違いますし、人それぞれだとは思いますが、それにしても、素晴らしい内容だったと思います。

だかこそ、本日は菅前総理の追悼の辞全文と、動画も掲載させていただきました。

これだけ、人の心を打つ菅前総理ですが、総理在任中はやれ「口下手」だとか「コミュニケーション能力」が低いなどと批判されました。

私は、これは事実ではないと思います。これについては、先日もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
岸田首相「万事休す」…物価高騰、国葬、旧統一教会問題「八方ふさがり状態」が10月にいよいよヤバくなる―【私の論評】岸田政権が長期政権になる道は絶たれた、最長でも来年5月のサミットまでか(゚д゚)!
この記事より、少し長いですが、一部を引用します。
岸田政権と菅政権を比較すると、菅政権はかなりまともだったと思います。少なとも、岸田政権よりは、はるかに危機管理能力は高かったと思います。

菅首相の所信表明演説をあらためて見返してみると、こと新型コロナワクチンに関してはすべて達成していることが分かります。菅前首相は、ワクチン接種のペースに関して「1日100万回」と発言し、テレビや雑誌で「非現実的だ」などと叩かれに叩かれたましたが、結局これも実行しました。

「明かりは見え始めている」発言もなぜか非難囂々でしたが、その後の感染者数の激減をみると菅前首相の認識は間違ってはいませんでした。菅政権に関しては、少なくとも新型コロナワクチンに関しての結果だけは認めるべきです。 

病床確保については、尾身会長も抗えない、いわゆる医療村に阻まれて、失敗はしたものの、それでも医療崩壊を起こすこともなく、コロナをかなり収拾させたというのは、間違いなく大きな成果です。

新型コロナワクチンで大きな成果を上げた菅政権でしたが、在職日数384日で成し遂げた仕事はそれだけにとどまらないです。東京オリンピック・パラリンピックの開催、デジタル庁の創設や携帯電話料金の値下げ、不妊治療の保険適用、福島第一原発の処理水の海洋放出、2050年カーボンニュートラル宣言など、主に安倍元首相時代に積み残してきた問題や課題に次々とケリをつけています。

さらに、安倍・菅政権ともに、コロナが蔓延していた時期には、両政権あわせて100兆円の補正予算を組んだことと、日本には他国にはない「雇用調整助成金」という制度もあり、これも活用したことで、コロナが蔓延して、様々な規制が行われたときでさえ、失業率は2%台を維持していました。

そのせいですか、無論コロナで職を失った人もいましたが、だからといって、それが深刻な社会問題にまで発展したということはありませんでした。両政権のコロナ感染が続いていた期間においては、日本は世界で一番失業率が抑えられていました。これについては、マスコミなどはほとんど触れることもありませんが、安倍・菅政権の大きな成果です。

岸田政権においても、失業率の大きな変動はありませんが、これは岸田政権の成果でなく、安倍・菅政権によるものです。岸田政権は、これを引き継いだので、経済的にも安定しており、かなりやりやすかったと思います。ただ、岸田政権の決めた、補正予算は数兆円レベルであり、この秋にまともな補正予算を組んで、様々な経済対策をしなければ、今後は失業率も上がることになります。

確かに、菅前首相はやり方が強引に見えるところがあり、口下手で発信能力にも欠けいるとも批判されました。ただ、いまから考えると、こうした批判は、仕事師と異名をとる菅氏に対しては、総理としての仕事そのものには批判ができなかったので、このような批判をするしかなかったとも考えられます。

国会や記者会見での木で鼻を括ったような受けも批判されましたが、これも今から考えると、全く筋違いで見当違いな馬鹿げた、低レベルの野党議員や記者の質問に対して、このような態度をとったまでで、相手の土俵に乗ってしまう、岸田現総理と比べれば、至ってまともだったと思います。こうした点に不満を覚えて不支持に回った人も少なくないようですが、今一度菅前総理の仕事ぶりの、結果だけを見てみると、近年まれにみる「国民のために働いた内閣」と言っても良いです。
私は、安倍元総理も、菅前総理も近年になく「国民のために働いた総理」だと思います。

菅前総理のことを「口下手」だとか「コミュニケーション能力」が低いなどと批判していた人たちには、見過ごしているものがあると思います。

そもそも「コミュニケーション」とは何でしょうか。このブログにも以前掲載したことがあります。私は民主党政権時代に、会社で人事を担当していたことがあります。そのとき、多くの企業が採用の条件として「コミュニケーション能力」を筆頭にあげていました。

「コミュニケーション」という言葉にそれ以前から関心を抱いていた私は、あるとき比較的大規模な採用イベント開場に赴いたとき空き時間に、いくつかの会社の採用担当の人に、「御社におけるコミュニケーションとはどういう意味なのか」という質問をしてみました。

そのときには残念ながら、満足な答えはかえってきませんでした。どうやら、多くの会社でいうところのコミュニケーションとは「ホウレンソウ」という言葉に代表されるような、「報告・連絡・相談」をこまめにすることとか、調整を上手にするというくらいの意味のようでした。

特に、当時は不況でしたから、自己主張の強い人や、創造力に満ち溢れた人に入ってこられても困るので、いわゆる調整型の人を雇用したというのが本音だったのではないかと思います。ただ、「調整型」などというと格好や体裁が悪いので、定義が曖昧な「コミュニケーション能力」という言葉をつかったのではないかと思います。

残念ながらこれは、コミュニケーションの本質とは程遠いものです。コミュニケーションの本質に関しては経営学の大家ドラッカー氏がその著書で丁寧に解説しています。

これについては、以下の記事に完結にわかりやすくまとめてあります。コミュニケーションの原理については、ドラッカーの書籍にあたるのが一番だとは思いますが、それには時間も要します。以下の記事を読めば、それについて概要を知ることができます。
コミュニケーション能力を高める ドラッカー4の教え
この記事では、ドラッカー氏が語る、コミュニケーションの本質がまとめられています。以下にそれを箇条書きで掲載します。
  1. コミュニケーションは「知覚」である
  2. コミュニケーションは「期待」である
  3. コミュニケーションは「要求」である
  4. コミュニケーションは「情報」ではない
コミュニケーションという言葉を抽象的に捉えている人も多いですが、ドラッカーのこの4つの原則をご覧いただければ、コミュニケーションの本質がおわかりいただけるものと思います。

これを知った上で、菅前総理の過去の発言などをご覧いただければ、決して菅前総理はコミュニケーション下手とは言えないと思います。

そもそも、口数が多いとか、話しがうまいとか、話術に長けているとか、滑舌な人でも、ほとんどコミュニケーションが成り立たない人もいます。逆に、話し上手でもなく、おしゃべりでもなく、人付き合いが良くない人の中にも、コミュニケーション能力の高い人もいます。

そのようなことと、コミュニケーションとは全く別次元のことです。

実際、私は「コミュ障」などと揶揄されている人たちの中にさえ、決してコミュニケーション能力が低くはないという人に遭遇したことがあります。これには、揶揄する側にもかなり問題があることが多いです。

人は、育ってきた環境やものの考え方や、立場や癖などがあり、人それぞれに異なるのが普通です。異なるのが当たり前なのです。だからこそ、コミュニケーション能力が必要なのです。自分と異なっているからというだけで「コミュ障」などとすぐに揶揄するのは、間違いです。

私は、そういうひとたちこそ、コミュニケーション能力に欠けると思います。

私は、菅総理を「口下手」「コミュニケーション下手」と批判していた人たちこそ、本当は、相当コミュニケーショ能力が乏しかったのではないかと思います。コミュニケーションの本質がわかっていないければ、そもそも他者を「コミュニケーション下手」だと評価したとしても、その評価は間違っている可能性が高いと思います。

なお、ドラッカーのコミュニケーションの原則は、上の4つの他にもう一つ重要なものがあります。

それは、「コミュニケーションとは、わたしたちの中の一人から、わたしたちの中のもう一人に伝わるもの」というものです。

コミュニケーションが通じる仲とは、普段から「わたしたち」といえるような関係を築いている仲であるということです。

私は、コミュニケーションの原則の中で、一番重要なのは、この原則だと思っています。

菅前総理が人の心を打つ追悼の辞を述べることができたのは、まさに安倍前総理と普段から「わたしたち」といえる関係を築いていたからにほかならないからだと思います。

自民党の三原じゅん子参院議員(58)は27日、自身のツイッターを更新。この日、東京・日本武道館で行われた安倍晋三元首相(享年67)の国葬で菅義偉前首相(73)が述べた追悼の辞についてコメントしました。

三原氏は「菅先生の弔辞には涙を堪えきれなかった」と感動したことを記すと、「まるで恋文。菅先生らしい温かいお気持ちが溢れていた」とつづりました。

今年の参院選で選挙運動中の三原氏

まさに安倍元首相と、菅前総理との「わたしたち」という関係が、追悼の辞に溢れていたので、これを三原氏は「恋文」と称したのでしょう。

三原氏は、ドラッカーの書籍を読まれて「コミュニケーションの本質」をご存知なのかどうかは、知りませんが、読んだ読まないなど超えて三原氏はコミュニケーションの本質について体得していらっしゃると思います。

そうして、これを聞く私たちが深い感銘を受けるのは、安倍元総理や、菅前総理と、たとえ直接会って話したことはないとしても、この方たちの考え方や日々の行動に「わたしたち」といえる関係性を感じることができるからにほかならないと思います。

その背景には、「わたしたち」は日本の国民であり、「今日よりも明日の方がよくなる日本を創りたい。若い人たちに希望を持たせたいという」という理念を共有してるからではないでしょうか。

多くの人が、自分がそのために役にたつかどうかはわからないものの、この思いは共有していると思います。そうして、多くの人が日々真っ当に働いたり、働いたことや、親や子どもたちやお年寄りや仲間や、地域社会を思いやることで、知らず知らずのうちに、それに向けて貢献しているのです。

中にはそうでない人もいます。そのようなことはどうでも良いと考え、わたしたちと理念を共有できない人たちも存在します。

そもそも、そのような理念などどうでも良く、とにかく時の権力には反対し、あわよくば、倒閣に結びつけてやろうなどという人たちとは残念ながら、「わたしたち」という関係を構築するのは難しいです。

ただ、時の政府には反対しても、考え方や、やり方が違うにしても、根底ではこのような理念を共有している人となら、コミュニケーションを交わすことは可能なはずです。そうでない人とは残念ながら無理です。

ただ、本日の国葬儀においては、そういう人たちは少数派であることがはっきりしたと思います。

千代田区に設けられた一般向けの献花台に、午後1時の段階で1万人以上 長蛇の列は数キロに


そうして、追悼の辞において、菅前総理はコミュニケーション能力が高いことが実証されたと思います。菅前総理のことを「コミュニュケーション能力」が低いと批判していた人たちは、自分たちこそコミュニケーションが低いということを自覚すべきです。そうして、その原因は何なのか、よく考えるべきです。

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2022年9月26日月曜日

【速報】「国葬」差し止め 最高裁も認めず―【私の論評】国葬儀が厳粛につつがなく営まれ、故人の魂が安らかな眠りにつけますように(゚д゚)!

【速報】「国葬」差し止め 最高裁も認めず


27日に行われる安倍元首相の国葬をめぐり、市民団体が、関連する予算の執行差し止めなどを求めた仮処分の申し立てについて、最高裁は26日までに市民団体側の特別抗告を退ける決定をしました。国葬に反対する市民団体側の主張は、最高裁でも認められませんでした。

27日に行われる安倍元首相の国葬をめぐっては、市民団体が、国葬の実施には法的根拠がなく、また憲法にも違反するなどと主張し、関連する予算の執行差し止めなどを求め、仮処分を申し立てていました。

これに対し、東京地裁は先月、「国葬が行われるとしても、国民に対して安倍元首相に弔意を表すことなどを強制することになるとは認められない」などとして、市民団体側の申し立てを認めない決定をしていました。

その後、東京高裁もこの決定を支持したことから、市民団体側が特別抗告していましたが、最高裁第一小法廷は26日までに、これを退ける決定をしました。5人の裁判官、全員一致の判断です。

これにより、国葬に関連する予算の執行差し止めなどを認めないとした判断が確定しました。国葬に反対する市民団体側の主張は、最高裁でも認められませんでした。

【私の論評】国葬儀が厳粛につつがなく営まれ、故人の魂が安らかな眠りにつけますように(゚д゚)!

1989年2月24日、この年1月7日に崩御した昭和天皇の大喪の礼が、小雨のなか東京の新宿御苑で挙行されました。

大喪には国内外から約9800人が参列しました。参列した国は164を数え、会場には、就任まもないアメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領、イギリスのエジンバラ公(エリザベス女王の夫君)ら元首クラス、また国連のデクエヤル事務総長など国際機関の代表が顔をそろえました。下の写真がそのときのものです。

古装束姿の楽師の後をゆっくりと武蔵野陵に向かう昭和天皇のひつぎを乗せた霊車

現在日本においては、国葬と国葬儀は混乱して語られています。日本においての国葬は、憲法7条と皇室典範25条による天皇の国事行為である大喪の礼だけです。当然ですが安倍元総理は対象になりません。内閣府設置法により国家に貢献した人を弔う儀式が国葬儀で別のものです。私は、このような混乱はいずれ収まるものとみています。

安倍氏の国葬儀に関して、司法以外で議論しても司法結果ほどには意味ないです。国葬儀差し止め請求が最高裁でも棄却ということで、裁判にできないという現実を国葬儀反対の方々は、真摯に受け止めるべきです。

最終的ともいえる、最高裁判所の司法判断が出たのですから安倍元首相の、国葬儀は平穏厳粛に執り行うべきです。

国葬儀に関しては、岸田政権は最初から、国葬儀は内閣府設置法4条に基づくと発表していました。これに関しては、平成12年の政府作成文書であるコンメンタール(逐条解説)にも詳しく解説されています。平成 12年といえば、末期ではありましたが、民主党政権の時代です。立憲民主党の方々など、本来このときに反対すべきであったはずです。以下にそのポイントのみ掲載します。


詳細を知りたい方は、実際にコンメンタールを読んでいただくと良いと思います。コンメンタールといえば、かなり大きな本屋だと置いていることもありますが、滅多にはおいていません。

私自身は、大学生の頃、大学生協の比較的大きな書籍で、みかけたことがあります。いくつかの法律で気になることがあれば、パラパラと斜め読みしたことはあります。私自身は法学部の学生ではなかったので、これを購入したことはありませんが、弁護士のように法律を生業にしている人は、購入する人もいると思います。

内閣設置法に関して、いろいろと語る人がいて、惑わされることもあった人もいるかもしれませんが、市民団体が、国葬儀に関連する予算の執行差し止めなどを求めた仮処分の申し立てについて、最高裁は26日までに市民団体側の特別抗告が棄却されたわけでし、当然のことながら内閣設置法についても申し立てていますから、これも棄却されたとみるべきでしょう。

橋下徹氏が「今回の儀式を国葬と言っている人は国家観がない。日本は共和制の国ではないのだから、内閣の決定で国葬をできる訳がない。天皇の国事行為にする必要あり」と語っていましたが、これは完璧な間違いです。戦前は勅令の国葬令があったのですが戦後廃止になりました。そのためもあって、吉田茂氏の国葬儀の時は揉めたわけです。それで内閣設置法を制定し、閣議決定で国葬儀ができるようにしたのです。

なお、吉田茂氏の国葬も「国葬儀」でした。これも「国葬」と勘違いしている人も多いようですから、以下に動かぬ証拠をあげておきます。


このようなことも知らないのか、TBS安住アナが「政府が最近になって国葬を国葬儀と言い始めた」。しかし、私ははっきり覚えていますが、岸田総理をはじめ、政府関係者は、最初から「国葬儀」と言っていました。

安倍元総理デジタル献花プロジェクトによりますと、安倍元首相のデジタル献花へのアクセスが集中しており、ページが適切に表示されない状態が続いるそうです。デジタル献花自体は問題なく届いているそうです。ブロジェクトは、安心してデジタル献花にご参加くださいと呼びかけています。現時点で17万人を超えているそうです。

いずれが、民意なのか見定めて行きたいです。明日は、「安倍さんありがとう」と心安らかに見送りたいです。

国葬儀が厳粛につつがなく営まれ、故人の魂が安らかな眠りにつけますように。

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2022年9月25日日曜日

安倍氏死去/台湾の廟、安倍元首相の銅像設置 除幕式に300人以上が出席―【私の論評】反対派は、国葬儀会場近く等で騒ぎまくるというような非常識な行動だけは慎しむべき(゚д゚)!

安倍氏死去/台湾の廟、安倍元首相の銅像設置 除幕式に300人以上が出席

台湾の廟、安倍元首相の銅像設置 除幕式に300人以上が出席

南部・高雄市の廟(びょう)、紅毛港保安堂で24日、安倍晋三元首相の銅像除幕式が行われ、陳菊(ちんきく)監察院長ら300人以上が出席して祈りをささげた。

同廟は太平洋戦争中にバシー海峡に沈んだ旧日本軍第38号哨戒艇を祭っていることで知られる。保安堂によると、銅像は台湾人の彫刻家2人が7月20日から約2カ月かけて制作したという。安倍氏を記念する庭園も設置され「台湾加油」(台湾頑張れ)と書かれた石碑もお披露目された。

会場では1分間の黙とうがささげられた他、参加者らは「花は咲く」、「千の風になって」などの楽曲が演奏される中で献花し「台日友好」、「台湾加油」などと声を上げた。

陳氏はあいさつで、安倍氏は台湾が最も苦しい時に、日本社会に対して「台湾有事は日本有事」と呼びかけ、台湾人を大いに感動させたと指摘した。

また「安倍氏の台湾に対する最大の貢献は台湾問題を国際的な問題にした」と強調。安倍氏は台湾の世界における戦略的地位を際立たせた上で、全世界に対して台湾問題に関心を持ち、自由や民主主義、尊厳、主権を追求する台湾人を守るべきだと訴えたと振り返った。

【私の論評】反対派は、国葬儀会場近く等で騒ぎまくるというような非常識な行動だけは慎しむべき(゚д゚)!

上の記事で、紅毛港保安堂の正式名称は、鳳山紅毛港保安堂(ほうざんこうもうこうほあんどう)です。

鳳山紅毛港保安堂

これは、中華民国台湾高雄市鳳山区紅毛港にあるです。旧日本海軍の第三十八号哨戒艇(旧称、樅型駆逐艦「蓬」)が祀られていることが特筆されます。

ちなみに廟とは、中国においては、祖先の霊を祀る場ですが、墓所は別に存在します。その為、仏教における仏壇のような位置づけですが、仏壇とは違い母屋の中には無く、霊廟専用の別棟があります。祖先を篤く敬う中国では、古代から家中で最も重要な場所とされていました。

また、孔子を祀る廟や関羽を祀る廟が各地に多数存在するように祖先の霊だけではなく民衆が敬愛する英雄や古くから信仰される神祇の廟を建立して祀っている事もあります。

三教合流(儒・道・仏の習合)の結果、寺院に神祇や聖賢が祀られていることもあり「寺廟」と総称されます。

日本では、特定な人物を祀る建物を、霊廟(れいびょう)、廟(びょう)、または霊屋(たまや)、御霊屋(みたまや・おたまや)といい、大きく、神式霊廟、仏式霊廟、儒式霊廟などに分けられています。また、各地の中華街には関帝廟が存在します。

鳳山紅毛港保安堂が、第三十八号哨戒艇を祀るようになり崇拝の対象が現在の形態となった経緯については、文献や語り手によって内容は異なりますが、整合を取るとおおよそ以下のようなものです。

第二次世界大戦が終結した翌年の1946年、出漁していた紅毛港の漁民の漁網に、一体の頭蓋骨が掛かりました。漁民は頭蓋骨を草葺の小屋だった祠の神棚に安置して「海府尊神」として祀りました。以降大漁が続いたため、霊験あらたかな神であるとして信仰されるようになり、1953年に保安堂を建立しました。

1968年、蘇某という老人が漁に出た船上で休憩していると海府尊神が現れて祠を建て替えて欲しいと語り、砂浜の「亀の穴なる場所」を指定しました。老人が実際にその場所に行くと果たして亀の卵が出てきたため、御神託であるとして拡張工事が始まりました。

1990年、タンキー(霊能者)が「私は日本第三十八号軍艦の艦長であり、太平洋戦争中に死亡した。日本の護国神社に帰りたい」「部下を郷里に帰すことができず悔やんでいる」と話せないはずの日本語で流暢に語ったそうです。

そこで信者たちが半信半疑ながらも指示に従って沖縄県護国神社を訪ねたところ、「日本海軍記念碑」に"日本第三十八号軍艦撃沈"の碑文を見出したそうです。旧日本海軍の軍人であったことを確信した信者らは鎮守を「海府大元帥」と呼ぶようになり、"日本第三十八号軍艦"とは1945年に米潜水艦アトゥルの雷撃によりバシー海峡に沈んだ第三十八号哨戒艇のことであり、海府大元帥は艇長であった高田又男大尉(熊本県出身)であると解釈されました。

第三十八号哨戒艇「蓮」

信者らは、海府大元帥とその部下たちが魂だけでも日本へ帰れるようにと、翌1991年に造船職人黃世秀氏に依頼して「日本の軍艦」の模型を作り、海府大元帥の御座船「38にっぽんぐんかん」として奉納しました。

保安堂では、農暦三、六、九、十三、十六、十九、二十三、二十六、二十九日の早朝6時と夜17時には君が代と軍艦マーチを流し、また第三十八号哨戒艇が撃沈された11月23日には慶典が開かれ、海府大元帥と「38にっぽんぐんかん」の英霊に奉祀しています。信者たちが神像を携えて日本詣でを行い、靖国神社や明治神宮を参拝することもあります。

海府大元帥像

「日本の軍艦」を祀る廟という特殊性から日本からの訪問者も頻繁にあり、その対処に当たる若手のボランティアグループが組織されるなど、保安堂は日台交流の場ともなっています。

今回設置された安倍元総理の銅像は高さは、安倍総理の身長と同じく175cmで、台座には「台湾の永遠の友人」と書かれています。 銅像のほかに、安倍元首相の直筆で「台湾頑張れ」と書かれた石碑も設置されました。 責任者によると、銅像は、有志から寄付を募り設立されたということで、「この銅像を日本と台湾の友好のシンボルとして後世に残したい」としています。

この除幕式の模様はテレビで中継されました。この銅像を建てるためにわざわざ庭をつくり、安倍元総理の揮毫された「加油台湾」の文字を刻んだ記念碑も銅像そばに設置しました。台湾人には、感謝ですが、非常識な日本の現状は恥ずかしい限りです。

台湾には、大陸中国出身の人たちや、そういう人々を先祖持つ人も少なからず存在します。そういう人たちの中には、安倍元総理が中国に反するような政策等を実行したきたことを快く思わない人もいると思います。しかし、だからといって、銅像建立に反対の動きなどみられませんでした。

27日に東京の日本武道館で実施される安倍元総理大臣の「国葬儀」においては、国葬儀に参加できるできいないは別に、喪に服したいと考える人も大勢いるはずです。

反対派はこういう人たちを罵ったり、国葬儀の進行を妨げる行為をしたり、国葬儀会場近くで大声で騒ぎ立てたりして、喪に服したいと考える内外の人達の人権を侵害することだけは、やめていただきたいです。特に、広島平和式典で毎年繰り広げられる、反対運動で騒ぎまくるように国葬儀開場近くでも拡声器などで「反対」と叫び、騒ぎまくるようなことは控えるべきです。

日本では、不可思議な議論が噴出しており、安倍総理の「国葬」反対などと騒いだり、法的に根拠がないと騒いでいる人も大勢いますが、日本においての国葬は、憲法7条と皇室典範25条による天皇の国事行為である大喪の礼だけです。当然ですが安倍総理は対象になりません。内閣府設置法により国家に貢献した人を弔う儀式が国葬儀であり別のものです。

実際、岸田総理も内閣府などの省庁も一度も正式な場では「国葬」ではなく「国葬儀」としています。マスコミやいわゆる識者と言われる人々もなぜか、これを曖昧にしています。

反対派の人々がどうしても「国葬儀」をやめさせたければ、日本は法治国家なのですから、合法的に実施するには、反対派の国会議員に陳情して、内閣設置法を改定してもらうしか、方法はありません。反対のデモ運動をしたり、いわゆる似非識者が奇妙奇天烈、摩訶不思議な憲法論や法律論を展開しても無駄です。

最後に、日本との友好のために安倍元総理の等身大の銅像を建てた台湾と、侮辱と嫌がらせのために偽慰安婦像や偽徴用工像を建てた挙げ句の果に、安倍元総理の土下座銅像を建てた韓国。 どちらと親しく付き合うべきか、明々白々です。韓国に時間や経費を割くぐらいなら、それをすべて台湾に割くべきです。


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