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2024年4月14日日曜日

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

 杉山大志 直言!エネルギー基本計画

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱 

まとめ
  • 日本のエネルギー供給の8割は化石燃料に依存しており、その安定的な調達が重要
  • しかし第6次エネルギー基本計画では、無理難題とも言える46%のCO2削減目標が設定され、化石燃料の利用制限につながっている
  • その結果、燃料調達や関連事業への参入が困難になり、供給不足や火力発電所の休廃止といった問題が懸念される
  • 一方で、気候変動の悪影響を示すデータや予測モデルの信頼性には疑問があり、CO2ゼロ目標の実効性も極めて低い
  • したがって、「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返り、安定供給を確保する政策を検討すべきであり、パリ協定からの離脱も検討の余地がある
阿蘇外輪山の元牧野に建設されたメガソーラー

 日本のエネルギー供給の8割は依然として石油、石炭、天然ガスといった化石燃料に依存している。これらの化石燃料を安定的に調達し活用することは、日本のエネルギー政策の最も重要な柱のはずだ。

 しかし、現行の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年までにCO2排出量を2013年比で46%も削減するという非現実的な数値目標が設定され、化石燃料の利用量も極端に低く設定されている。その結果、企業は長期的な燃料調達契約の締結が困難となり、油田やガス田への事業参入も阻害されている。

 こうした事態が進めば、有事の際に法外な価格でしか化石燃料が調達できなくなったり、最悪の場合は全く調達できなくなる可能性がある。また、火力発電所の休廃止も余儀なくされ、定期的に「節電のお願い」が発出されることにもなりかねない。

 一方で、メディアでは気候変動の悪影響が強調されているが、統計データではそのような事態は確認されていない。さらに、気候変動リスクを示すシミュレーションモデルさえ、過去の再現すら十分にできていないと指摘されており、その将来予測を政策決定に活用するのは適切ではない。

 したがって、「2050年にCO2排出ゼロ」という極端な目標を掲げ、日本のエネルギー政策と経済活動を大きく制限することは不適切であると考えられる。そうではなく、安定したエネルギー供給を確保し、経済発展を支えていく「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返るべきであり、グローバルサウスの支持も得つつ、パリ協定からの離脱も検討する必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

まとめ
  • 「エネルギー・ドミナンス」はトランプ政権下の米共和党で使われてきた概念で、安定かつ安価なエネルギー供給を通じた経済発展や民主主義の保護を目指すものです。
  • 第6次エネルギー基本計画は「脱炭素」を重視しつつ、再生可能エネルギー以外のエネルギー源の活用も検討されました。
  • この計画は「S+3E」の視点から、安全性、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合性を重視しています。しかし、現実には脱炭素、再エネばかりが強調されています。
  • 安倍晋三氏が存命であれば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような新たな概念を提唱し、地球規模でのエネルギー協力体制を構築していた可能性があります。
  • 「エネルギー・ドミナンス」の代わりに「エネルギー共生圏」のような概念を打ち出すことで、より多くの国々の参加を促し、現実的な世界秩序の再編成を目指すべきです。

「エネルギー・ドミナンス」という用語は、米国共和党で使用されてきた概念です。これは豊富で、安定し、安価なエネルギーを供給することを指し、経済発展や防衛力の向上、自由や民主主義などの普遍的価値の保護と発展を可能にするとされています。具体的にこの言葉を最初に使った個人についての情報は見つかりませんでしたが、この概念はドナルド・トランプ大統領の下での米国のエネルギー政策に関連してよく言及されています。

「第6次エネルギー基本計画」は安倍政権下で検討されたものではありますが、安倍総理は、2020年9月16日に辞任しており、閣議決定されたのは、2021年10月の菅政権のときでした。

第6次エネルギー基本計画で目指す総発電量に占める電源別の割合

この基本計画が検討された時期においては、「脱炭素」が世界の趨勢となっており、このエネルギー基本計画は、「脱炭素」にも重点を置き、極端な目標が掲げられている一方、再生可能エネルギー以外のエネルギー源についても詳細に述べられています。

この計画は、本来は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すものであり、安全性(Safety)、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)という「S+3E」の視点を重視しています。

具体的には、以下のようなポイントが含まれています。

安全性(Safety):あらゆるエネルギー関連設備の安全性を最優先し、特に原子力に関しては、国民の懸念の解消に全力を挙げることが強調されています。

エネルギーの安定供給(Energy Security):日本のエネルギー自給率が低いため、エネルギー供給の安定性を確保することが重要視されており、レジリエンス(強靭性)を高めることが求められています。

環境への適合(Environment):カーボンニュートラルを目指し、エネルギー分野の脱炭素化に取り組むことが強調されています。これには、再生可能エネルギーの導入拡大や、CO2排出削減技術の開発が含まれます2。

経済効率性(Economic Efficiency):低コストでのエネルギー供給とエネルギーの安定供給、環境負荷の低減を同時に実現することが、日本の経済成長にとって重要であるとされています。

安倍政権が継続されていた場合、あるいは政権が続いていなくても、安倍晋三氏が存命だった場合、経済効率性やエネルギーの安定供給の観点がもっと強調されていた可能性があります。

しかし、菅政権から、岸田政権にかけて、エネルギー政策というと、カーボンニュートラルや再エネ等が大きく注目されるようになりました。そうして、現状では阿蘇山にはメガソーラ発電省が設置され、釧路湿原国立公園内に、6.6haの太陽光発電施設が設置されるという危機的状況になっています。


このままだと、日本はエネルギー政策で失敗して衰退しかねません。だからこそ、エネルギー問題のまともな専門家たちは、危機を感じているのです。

そうして、上の記事の杉山氏の元記事ように
米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。

いま日米が「エネルギー・ドミナンス」にかじを切らなければ、中国に打倒されるだろう。
と警鐘を鳴らしているです。

これは、重要であり、中国やロシアがエネルギー・ドミナンスで優勢になれば、日本を含む西側諸国やその同盟国は安全保証上の脅威にもさらされることを意味しています。

そうして、安倍晋三氏がご存命であれば、この危機にいち早く気づいて、新たな概念を生み出しい、「安全保障のダイヤモンド」のような論文をブロジェクト・シンジケートに投稿していたかもしれません。ちなみに、この論文は、後の「インド太平洋戦略」に結びつき、中国の覇権主義に対抗する上で重要な概念となっています。

エネルギー・ドミナンスの危機に関して、安倍晋三氏がご存命であれば、やはり新たな概念を生み出したかもしれません。

たとえば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」という概念を生み出していたかもしれません。

これは、意味するところは、以下です。
  • 「共生」の文字から、各国や多様なステークホルダーが互いに協力し合い、共に発展していくエネルギーシステムの構築を表現
  • 「圏」の字は、地球規模での包括的なエネルギー協力体制を示唆しています
  • 化石燃料の利用や、原子力エネルギー等、現実的なエネルギー利用の安定供給を目指すとともに、小型原子炉や核融合炉などの将来のエネルギーの開発等も含めた、エネルギーミックスを構築する
  • 先進国と途上国、エネルギー生産国と消費国が対話を重ね、共生的なエネルギーアーキテクチャを構築することを表す
英語での意味は以下のようなものです。
  • "Energy" - エネルギーという分野を表しています。
  • "Symbiosis" - 共生、相互依存的な関係性を意味します。
  • "Sphere" - 地球規模、あるいは包括的な領域を表す言葉です。圏というと、大東亜共栄圏などを思い起こさせる言葉ですが、Sphereは違います。
つまり、「Energy Symbiosis Sphere」は、各国や様々な利害関係者が協力し合って、現実的なエネルギーシステムを地球規模で構築していくという戦略概念を表しています。

この英語表現も、安倍晋三氏の思想を反映した戦略的なイニシアチブを感じさせる言葉だと思います。

「安全保障のダイヤモンド」は、端的に言ってしまうと、「中国封じ込め政策」なのですが、安倍晋三氏は、そうではなくもっと大きな上位の概念からこの言葉を使っています。これによって、より多くの国々が、この言葉に賛同し参加できるような素地をつくりだし、後にさらに「インド太平洋戦略」という言葉を生み出し、インドや太平洋の平和と安定の重要性も強調しました。これによって、安倍晋三氏は世界の秩序を変えたといえます。

そうして、それが世界だけでなく、日本国内にも大きな影響を及ぼしています。

エネルギー・ドミナンスは日本語訳にすると「エネルギー支配」とも訳すことができ、これではエネルギーに関する覇権争いとも受け取られかねません。これでは、日米のエネルギー・ドミナンスの確立に参加を表明したくてもできない国々が出てくる可能性もあります。

Energy Symbiosis Sphere AI生成画像

しかし、安倍晋三氏が生み出したような「インド太平洋戦略」という中露との対立という概念より、上位の概念は、この地域の平和と安定を目指すものであり、この地域や、他地域の多くの国々の賛同を得ることができ、これに真っ向から反対するのは、一部の権威主義的、全体主義的な国々だけです。

日本国内でも、どなたか有力な方が「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような言葉を作り出し、安倍晋三氏が、政権発足直前に「ブロジェクト・シンジケート」で公表したように、新たな概念を公表すべきと思います。

これによって、エネルギーを基軸とした、世界秩序の再編成を目指すべきです。

それにしても、それを実現できる人は、なかなか見当たりません。改めて、わたしたちは偉大な人物を亡くしてしまったことが残念でなりません。

このようなことを実現し、それだけでなく、それを目指して行動する人こそ、安倍氏の真の後継者なのかもしれません。

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2024年4月7日日曜日

実は日本以上に深刻 中国で「少子化」が著しく進むワケ 5年で700万人以上減―【私の論評】中国の少子化対策の失敗が、日本の安全保障を根底から揺るがしかねない

 実は日本以上に深刻 中国で「少子化」が著しく進むワケ 5年で700万人以上減

まとめ

  • 中国の人口が減少傾向にあり、合計特殊出生率も低下して日本を下回る水準となっている。
  • 一人っ子政策の影響で、男女比の著しいアンバランスが生まれ、「結婚できない男性」の増加と高額な結納金が若者の結婚意欲を減退させている。
  • 子供の教育費用が家計を圧迫しており、多くの家庭で2人目の子供を持つのが困難になっている。
  • 有名大学卒業でも就職が必ずしも保証されないなど、厳しい就職環境が若者の不安感を高めている。
  • 過酷な競争に疲弊した若者の間で、「寝そべり族」と呼ばれる社会からの離脱者が増えている。

 中国は長年にわたり世界最大の人口国であったが、近年深刻な少子化問題に直面している。2023年末時点の中国人口は前年より208万人減少し、14億967万人となった。合計特殊出生率も1.09と、日本を下回る水準まで低下している。

 この背景には、様々な要因が存在する。まず、1980年に導入された「一人っ 子政策」の影響で、中国社会に根強く残る「重男軽女」の意識から、男女比の著しいアンバランスが生まれた。一人っ子政策導入前は男女比がほぼ同数だったが、徐々に男子の数が増えていき、2023年末時点で男性が女性より3097万人も多くなっている。この男女比の偏りにより、「結婚できない男性」が急増し、結納金の額が高騰する事態を招いている。高額な結婚費用が若者の結婚や出産への意欲を減退させる大きな要因となっているのだ。

 さらに、子供の教育費負担も深刻な問題となっている。良い大学に入ることが将来を左右する中、多くの家庭で給料の3分の1近くが子供の学費に費やされている。子育ての経済的圧迫感から、多くの人が2人目の子供を持つことを断念せざるを得なくなっているのが実情である。

 加えて、有名大学卒業でも就職が必ずしも保証されないという「大学卒業=失業」の実態も、若者の不安感を増大させている。新型コロナ禍による経済減速も重なり、旅行業や飲食業など、かつて学生に人気だった業界が軒並み悪化。優秀な若者の多くが、過酷な競争に疲れ果て、結婚や就職を諦める「寝そべり族」として社会から離脱する事態も発生している。

 こうした課題に直面する中、中国政府は出産促進策の検討を進めているものの、根深い社会構造の問題への抜本的な対策が急務とされている。人口減少が続けば、経済悪化にもつながりかねない深刻な事態に陥る恐れがあり、早急な対応が求められている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】中国の少子化対策の失敗が、日本の安全保障を根底から揺るがしかねない

まとめ
  • 中国は少子化対策をしているが、その効果は期待はできず、中国から日米なとへの、移民が増えている。
  • 中国政府は「国家安全」を名目に、海外在住の自国民に対する恣意的な監視と統制を強化している。
  • この中国の法制度の影響により、中国人移民の増加は日本の国家安全保障を根底から脅かすリスクがある。
  • 中国政府による日本への経済的・情報的な浸透を防ぐためにも、中国人移民の受け入れを大幅に制限する必要がある。
  • また、重要インフラへの中国企業の参入を厳しく規制することも、緊急の課題となっている。
中国の特殊出生率が、日本を下回ったことを示す中国のグラフ

中国の少子化対策は成功しそうにありません。中国政府は少子化対策を実行しています。具体的な施策としては以下のようなものがあります。

まず、2015年に「一人っ子政策」を廃止し、子どもを2人まで認める政策を打ち出しました。さらに2021年には3人までの子どもを認める政策を導入しました。この産児制限の緩和は、第2子の出生数を一時的に増加させる効果がありましたが、長期的には出生率の低下に歯止めがかからない状況が続いています。

また、多子世帯に対する補助金給付の施策も講じられています。例えば四川省攀枝花市では、3歳までの子ども1人につき月500元の保育補助金を給付しており、これにより出生数が増加したと報告されています。住宅購入に対する補助金の給付も行われており、浙江省嘉興市では子どもの数に応じて補助金を支給しています。

さらに、女性の地位向上に関する政府の計画の中には、「人工中絶の減少」という記述が盛り込まれています。これは、少子化対策の一環として、出産を奨励し、人口のバランスを取るための取り組みだと位置付けられています。

中国の少子化問題は依然として厳しい現状にありますが、政府はこのように様々な施策を試行しています。ただし、補助金給付などの施策の効果は限定的であり、少子化の構造的な課題への包括的な対応が不可欠であるにもかかわらず、中国政府の少子化対策は出産制限の撤廃と、補助金給付等にとどまっているのが現状だからです。根深い社会問題への抜本的な施策がなければ、少子化の進行を食い止めるのは極めて困難です。

さらに、このブログでも何度か述べているように、フランスや北欧諸国のように中国などから比較すれば、手厚い子育て支援をしている国々ですから、少子化を免れない状況をみると、中国の施策が成功する見込みはほとんどないと言って良いでしょう。

この状況は、中国から外国への移民が増える原因となり続けるでしょう。

例えば、米国移民局のデータによると、2021年度の永住権(グリーンカード)取得者のうち、中国人は約18.5%を占めています。これは前年度から約6%増加しており、大幅な増加となっています。

また、一時滞在ビザ(非移民ビザ)の発行数でも、中国人が年々増加しています。2021年は約40万件と、2019年(約60万件)の水準には及びませんでしたが、新型コロナの影響で一時的に減少した後、再び増加傾向にあります。

この背景には、先ほど述べた教育の機会、経済的な安定、自由度の高さなど、米国が中国人にとって魅力的な移民先と映っているためと考えられます。

特に、中国の少子高齢化問題の深刻化や、都市部での生活コストの高騰など、中国国内の状況悪化が、米国移民への志向を高める要因にもなっているようです。

メキシコから米国目指す中国人移民

同じような理由から、日本への移民も増えています。

日本の出入国在留管理庁の統計によると、2021年末時点での中国人長期在留者数は約43.3万人と、10年前の約2倍に増加しています。

また、日本政府も高度外国人材の受け入れ促進に力を入れており、こうした施策も中国人の日本移民を後押ししているとみられます。

中国人の海外移民が増加することについては、中国政府にとって一定の危機感があると考えられます。それは、中国人による国外での反政府活動です。その危機感を反映しているのが、中国特有の法制度です。

まず、「国家安全法」では、「国家の分裂を企図する行為」や「テロ行動」など、非常に曖昧な定義の下で、海外在住の中国人に対する取り締まりの根拠となっています。海外で偶然にも政府の目に触れるような発言や行動をすれば、国内に残る家族への圧力や処罰の対象にもなりかねません。

加えて、「香港国家安全法」では、香港在住者だけでなく海外在住者も、「国家分裂」「テロ」「外国勢力の扇動」などの罪に問われる可能性があります。香港出身者や関係者にとって、海外でも安全が脅かされる状況が生まれています。

さらに、中国にはデータ3法とも呼ばれる「個人情報保護法」「サイバーセキュリティ法」や「データセキュリティ法」といった、情報管理に関する包括的な法制度も整備されています。これらにより、中国国外の中国人が、オンラインでの表現活動などを通じて、政府の監視下に置かれる危険性も高まっています。

「個人情報保護法」は2021年に施行された新しい法律ですが、その主な特徴は以下の通りです。
  • 個人の同意なく個人情報を収集・利用することを原則禁止
  • 個人情報の域外提供に際しては、国家安全や公共利益への影響を評価
  • 個人情報の処理者には厳格な保護義務を課し、違反時には罰則を科す
この法律は、一見多くの国々のそれと同じようにみえますが、大きな違いは、中国国外に移住した中国人の個人情報についても適用され、中国政府の管轄下に置かれるのです。

海外在住の中国人が、政府の目に触れるような活動をした場合、この「個人情報保護法」に基づいて、個人情報の不正利用などの罪で摘発される可能性も否定できません。

このように、中国政府は「国家安全」を名目に、「個人情報保護法」も活用しながら、海外在住の自国民に対する監視と統制を強めようとしているのが実情です。

このように、中国の法制度は極めて恣意的な運用がなされており、個人の自由や権利を脅かす要因となっています。

このような状況下で、中国人移民が日米などの自由主義社会に急増すれば、受け入れ国の安全保障や社会秩序に悪影響を及ぼす可能性があります。中国の少子化はまさに他人事ではないのです。

日本への移民をすすめる中国のポスター

中国政府は、自国民の海外移住を危険視しており、彼らに対する監視と統制を緩めることはありません。そのため、中国人移民の増加は、必然的に受け入れ国と中国政府との対立を呼び起こすリスクを孕んでいると言えるでしょう。

つまり、中国特有の法制度の影響を考慮すれば、中国人移民の増加は、単なる個人の選択の問題を超えて、受け入れ国全体の安全保障上の重要な課題につながっていくのです。

中国の異常な監視と統制を考慮すれば、日本は中国人移民の受け入れを大幅に制限すべきです。既に日本に居住する中国人についても、安全保障上のリスクが高いと判断せざるを得ません。

具体的には、日本政府は中国人移民の受け入れ停止や、在留資格の厳格な審査強化などを検討する必要があります。また、日本在住の中国人に対する監視と情報収集の体制を強化し、中国政府の影響力を遮断する対策が求められます。

加えて、中国への外交的な圧力と働きかけを更に強化し、人権尊重と法の支配の実現を強く求めていくべきです。中国政府が法制度改革に応じない限り、日本は中国人移民の受け入れを極力抑制せざるを得ません。

加えて、中国政府による日本への浸透を防ぐために、エネルギーを含む重要インフラ分野での中国企業の参入を厳しく規制すべきです。先般明らかになった、内閣府エネルギー関連タスクフォースへの中国企業の入り込みは、まさに日本の情報セキュリティを脅かしかねない深刻な問題だと言えます。

移民受け入れと情報セキュリティは表裏一体の喫緊の課題なのです。日本政府は、中国の法制度改革を強く要求するとともに、移民受け入れの大幅な抑制と、重要インフラへの中国企業の参入阻止など、総合的な対策を迫られています。

これらの課題に適切に対応できなければ、日本の国家安全保障は根底から脅かされかねません。一刻も早い根本的な改善策の実行が望まれるのは、まさにこうした理由からです。

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2024年3月25日月曜日

マイナス金利解除は「完全にタイミングを間違えた」…!政府がこの体たらくで、日銀はやりたい放題になっている―【私の論評】日銀のマイナス金利解除は時期尚早 - 物価と経済データから検証

マイナス金利解除は「完全にタイミングを間違えた」…!政府がこの体たらくで、日銀はやりたい放題になっている

まとめ
  • 日銀のマイナス金利解除の理由付け(2%のインフレ目標が持続的に実現)は不十分である。インフレ率が一時的に2%を超えただけでは金融引き締めの理由にならない。
  • 金融政策は物価のみならず雇用など経済全体を勘案すべきだが、日銀はその原則に反している。欧米では5%程度までインフレ率が高くても引き締めを行わなかった。
  • 日銀の決定のタイミングと情報リークには問題があり、一部金融業界への利益誘導の可能性がある。日銀と金融機関の癒着が疑われる。
  • 政府が日銀の動きを金融正常化の口実に利用しようとしており、増税などの締め付け政策が予想される。
  • 米国FRBは経済状況を総合的に判断し政策変更を見送った。日銀はFRBの慎重な姿勢を見習うべきだった。
日銀

 日銀は3月19日、マイナス金利政策を解除する決定を行った。その理由として「2%のインフレ目標が持続的に実現できる状況に至った」と説明している。しかし、この理由付けには根本的な問題がある。

 金融政策は単にインフレ率だけでなく、雇用など経済全体の動向を勘案して判断すべきである。一時的にインフレ率が2%を超えただけで急いで金融引き締めに走るのは、「ビハインド・ザ・カーブ」という金融政策の基本的な考え方に反する。実際、欧米でもインフレ率が5%程度までは金融引き締めを行わなかった。

 日銀の今回の決定のタイミングや、一部への情報リークの疑惑には大きな問題がある。日銀は政府の影響下にあり、情報リークは金融業界への利益誘導につながりかねない。これは日銀と金融機関の癒着ぐあいの表れとも受け取れる。

 一方、米国FRBは経済の現状を総合的に判断し、政策変更は見送った。インフレ率が2%を上回っていても、その時点での引き締めは控えている。日銀はこうしたFRBの慎重な姿勢を見習う必要があるだろう。

 実のところ、今回の日銀の決定には、政府による財政健全化への動きとリンクしている側面もある。政府は日銀の動きを金融正常化の口実に利用しようとしており、今後は増税などの締め付け政策が打ち出される可能性が高い。

 つまり、日銀の今回の判断は、経済状況を十分に踏まえたものではなく、政府の思惑が背景にあるのではないかと危惧される。性急な金融引き締めは、かえって日本経済に冷や水を浴びせかねない。日銀は独立性を発揮し、慎重に対応すべきであった。

【私の論評】日銀のマイナス金利解除は時期尚早 - 物価と経済データから検証
まとめ
  • 日本のコアコアCPI(食料品・エネルギーを除く物価上昇率)は他国と比べて顕著に低い水準にある。
  • 日本のCPI(総合物価上昇率)も他国と比べるとさほど高くない。
  • 米国では2022年から積極的な利上げを行っているが、日本はまだ緩和的な金融政策を継続中。
  • 日本が米国に追随してマイナス金利解除を急ぐと、為替・物価・企業活動・金融市場に悪影響がある可能性。
  • 日銀は政府と連携し、現状に即した慎重な金融政策運営が求められる。
このブログでは、過去のコアコアCPIの推移の国際比較や米国と日本の対比等から現状では利上げ(マイナス金利解除)などすべきではないことを指摘してきました。

その時に論拠としたのは、コアコアCPIの表だけでしたが、CPIの表も同時に示さないと、日銀やマスコミの得体のしれないおかしげな説明ともあいまって、多くの人が理解しにくいのではないかと思いましたので、本日CPIも表であげようと思います。

以下はCPI(総合物価指数)の上昇率の国際比較です

2020年~2023年12月時点の総合CPI上昇率の国際比較

国名2020年2021年2022年2023年2024年予想
アメリカ1.20%7.00%8.60%7.10%4.00%
日本-0.60%0.00%2.50%2.30%1.50%
ドイツ0.50%3.10%7.90%8.70%6.00%
イギリス0.90%2.50%9.00%10.70%7.50%
フランス0.50%1.60%5.20%6.20%4.50%
イタリア0.00%1.90%8.00%12.80%8.50%
カナダ0.70%3.40%6.80%6.30%4.30%

CPIで比較しても、日本の物価上昇率は他国と比較すれば、さほどでないことがわかります。CPI情緒率だけを根拠に、マイナス金利政策の解除をマスコミ等は支持しているようですが、以下の表をご覧いただければ、その根拠は脆弱であることがわかります。

 以下に以前このブログに掲載したコアコアCPI(食料品、エネルギー除く) 上昇率の国際比較を掲載します。日本は他国と比較すると明らかに低成長です。

2020年〜直近までの先進国のコアコアCPI

国名2020年2021年2022年2023年2024年予想
アメリカ1.40%2.30%4.70%3.90%3.40%
日本0.00%0.10%0.60%0.70%0.80%
ドイツ0.70%1.90%3.30%2.60%2.30%
イギリス1.20%2.10%5.90%4.10%3.60%
フランス0.50%1.60%2.80%2.20%1.80%
イタリア0.00%1.20%3.80%3.10%2.80%
カナダ1.70%2.20%4.30%3.70%3.20%

参考資料:

以下に日米CPI(総合物価指数)比較と米国の金利政策を併記した表を掲載します。
日米の四半期毎の失業率とCPIの推移 (前年比)
四半期米国 失業率日本 失業率米国 CPI日本 CPI米国 金利政策
201913.70%2.30%2.10%0.40%-
23.60%2.20%2.00%0.30%-
33.50%2.10%1.90%0.20%7月:0.25%↓
43.50%2.10%2.00%0.30%9月:0.25%↓
202013.50%2.20%2.20%0.40%11月:0.25%↓
214.70%2.60%1.20%0.10%-
37.90%3.00%1.70%0.10%-
46.70%2.90%1.20%0.00%-
202116.30%2.80%1.40%-0.10%-
26.00%2.70%2.60%0.00%-
35.40%2.80%3.00%0.10%-
44.20%2.90%4.00%0.20%-
202213.80%2.70%7.50%2.40%3月:0.25%↑
23.60%2.60%8.50%2.50%5月:0.50%↑
33.50%2.50%9.10%2.60%7月:0.75%↑
43.70%2.50%8.00%2.70%9月:0.75%↑
202313.90%2.40%7.30%2.60%11月:0.50%↑
23.80%2.30%7.00%2.50%12月:0.50%↑
33.60%2.20%6.70%2.40%-
43.50%2.10%6.50%2.30%-
202413.40%2.00%6.30%2.20%-

米国経済は、2020年3月の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによる景気悪化から回復し、現在はインフレ懸念が強まっています。

FRBは、景気拡大を維持するために金融緩和政策を実施していました。2019年7月から2020年3月にかけて、政策金利であるフェデラルファンドレートを7段階で計1.5%引き下げ、0.00%~0.25%に設定しました。

しかし、2021年後半から、消費者物価指数(CPI)の上昇率が加速し、インフレ懸念が強まりました。2021年12月には前年比7.0%上昇し、40年ぶりの高水準となりました。

これを受け、FRBは2022年3月から利上げを開始しました。2023年12月までに7回、計4.25%の利上げを行い、政策金利は4.25%~4.50%となっています。

FRBがインフレ抑制を過度に重視し、景気後退を招く可能性を指摘しています。失業率が依然として低水準(2023年12月は3.5%)であることを根拠に、景気過熱の懸念は限定的でしょう。

以下に以前このブログに掲載した日米コアコアCPI(総合物価指数)比較と米国の金利政策を併記した表を再掲載します。 

日米の四半期毎の失業率とコアコアCPIの推移 (前年比)

四半期米国 失業率日本 失業率米国 コアコアCPI日本 コアコアCPI米国 金利政策
201913.70%2.30%2.30%0.50%-
23.60%2.20%2.10%0.40%-
33.50%2.10%2.00%0.30%7月:0.25%↓
43.50%2.10%2.10%0.40%9月:0.25%↓
202013.50%2.20%2.00%0.50%11月:0.25%↓
214.70%2.60%1.20%0.20%-
37.90%3.00%1.70%0.20%-
46.70%2.90%1.30%0.10%-
202116.30%2.80%1.50%0.00%-
26.00%2.70%2.10%0.10%-
35.40%2.80%3.10%0.20%-
44.20%2.90%4.10%0.30%-
202213.80%2.70%6.00%0.40%3月:0.25%↑
23.60%2.60%7.00%0.50%5月:0.50%↑
33.50%2.50%8.20%0.60%7月:0.75%↑
43.70%2.50%7.10%0.70%9月:0.75%↑
202313.90%2.40%6.50%0.80%11月:0.50%↑
23.80%2.30%6.20%0.70%12月:0.50%↑
33.60%2.20%5.90%0.60%-
43.50%2.10%5.70%0.50%-
202413.40%2.00%5.60%0.40%-

情報源

失業率

  • 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 雇用統計 
  • 日本: 総務省統計局 - 労働力調査 ([無効な URL を削除しました])

コアコアCPIとCPI

  • 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 消費者物価指数 
  • 日本: 総務省統計局 - 家計調査 

コアコアCPIに関する分析は、以下の記事で行っていますのです。こちらをご覧になってください。
マイナス金利解除に2人反対=審議委員の中村、野口氏―日銀―【私の論評】金融政策の効果発現に時間はかかる - 日本経済の過ちと教訓
日銀植田総裁

現在、米国経済は堅調な成長を続けており、高インフレに直面していますが、日本経済はまだ緩やかな回復段階にあり、低インフレ環境が続いています。このような状況下で、日本銀行がマイナス金利政策の解除を急ぐべきではない理由が複数あります。

第一に、米国の積極的な利上げによる金利差の拡大が円安を招き、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を高め、家計や企業の負担を一層増す恐れがあります。特に、エネルギー価格の高止まりは消費を大きく抑制し、景気回復の足かせになりかねません。

第二に、マイナス金利解除は企業の資金調達コストを押し上げ、設備投資の手控えにつながる可能性があります。日本企業の設備投資は既に低迷しており、これ以上の投資減退は将来の経済成長を阻害するリスクがあります。

第三に、長期金利の急上昇は債券市場や株式市場に混乱をもたらし、金融市場を不安定化させる恐れがあります。金融市場の混乱は、その影響が実体経済に波及するため避けるべきです。

第四に、日銀は政府と連携し、財政出動による景気刺激策とあわせて金融緩和を維持することが求められます。金融政策と財政政策の適切な組み合わせが、よりスムーズな経済運営につながります。

このように、為替、物価、企業活動、金融市場、政策運営の面から検討すると、現時点でマイナス金利解除に踏み切るのは時期尚早と言えます。日本銀行には経済の現状をより丁寧に分析し、米国との政策の違いを踏まえた上で、慎重に金融政策の調整を図るべきでした。

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