2011年5月21日土曜日

優れたアイデアマンは視点を変えられる――ロゴに隠されたメッセージ―【私の論評】イノベーションに必要なのは知覚だ!!

優れたアイデアマンは視点を変えられる――ロゴに隠されたメッセージ

さて、本日はBiz.IDというサイトを見ていたら、以下のような記事がでていたので、本日はこれに関連したことを掲載します。
最近、図解志向、プレゼン、発想術などについて講演することが多いのですが、その際に出席者に「思考の歯垢を取り除きましょう」と言っています。 
「思考の歯垢」とは、自分で作りあげた勝手な思い込み、前提、常識といったものです。子供のころは発想が豊かだった人も、世間の荒波にもまれる間に、エッジは丸くなり、アイデア発想の前に、実現性や前例などを考えてしまうようになります。 
しかし、スティーブ・ジョブズの言うように「Think Different」が大事です。ほかの人とは違っている考えこそ、価値がある。周囲が反対するアイデアこそ、大きな成功に結びつく可能性が高いのです。そうしたアイデアを持てるようにするために、私たちは、これまでにこびりついた「思考の歯垢」をキレイに取り除かねばなりません。 
FedExロゴに隠されたもの 
常識にとらわれない、自由な発想の原点は「視点を変える」こと。今回は、視点を変えることのできる人とそうでない人をチェックするための簡単なテストをしてみましょう。お題は、みなさんが見慣れた企業や商品のロゴ。まずは、こちらを見てみてください。
誰もが、国際的な宅配サービス会社のロゴであることは分かると思います。しかし、この企業を知らない子供に見せると何が見えるでしょうか? みなさんとは違う、別のものが見えるのです。それはなんでしょうか? 
答えは、矢印です。ロゴのデザイナーであるリンドン・リーダー氏によれば「スピード」「正確性」などのメッセージをロゴに埋め込んだそうです。ロゴの文字だけにとらわれず、余白に注目すればすぐに見えてきます。EとXの間の余白に着目してみましょう。 
このように、従来の意識で見ている部分だけにとらわれるのではなく、別の視点から見ると対象物は異なる顔をしていることが多いのです。同じような問題ですが、以下のロゴはどうでしょうか? 
 
女性がよくご存知のスイスチョコレート。商品ロゴの上に描かれている山は元々製造していたトブラーがあったスイスのベルンを示しています。よく見るとそのベルンの山の中に、シンボルであるかわいい熊が描かれていますね。FedExロゴの答えを知ると、トブラローネのロゴのメッセージには、すぐに気づくことができるでしょう。 
VAIOのロゴには何が隠されているか 
 
次の問題は別の側面から見ることが必要です。ソニーのVAIOのロゴです。今度は、余白に注目ではありませんよ。VAIOの文字のデザインに注目してみてください。 
ヒントはVAとIOとに分けて考えることです。いかがでしょう、このロゴに隠されたメッセージをつかむことはできましたか? 
実はVAの部分は、流れるような連続した曲線(正弦波)で「アナログ」を示しています。一方IOの部分は「1」「0」と読むこともでき「デジタル」であることを示しています。つまり「アナログ」と「デジタル」の融合、というコンセプトがロゴの中に隠れているのです。
このようにロゴ1つとっても、それを「文字列」として読むのか、「映像」として見るのかで、見えるものが変わってくるということです。 
文字の余白に着目してみる。文字の意味ではなく、形に着目してみる。 
普段、何気なく見ているものをあえて異なる視点から見る習慣をつけておけば「思考の歯垢」を落とすことができ、これまで考えもしなかった改善点やアイデアを思いつけるでしょう。 
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1105/10/news029.html
【私の論評】イノベーションに必要なのは知覚だ!!
さて、上のようなロゴの事例は、探せばほかにもいろいろあります。以下のその事例を掲載します。

amazon

ネットショッピングでおなじみのアマゾンですが、実はちょっとした哲学を反映しているそうです。
黄色の矢印は、客に満足させたい意味を込めたスマイルの口のようになっています。その矢印がaとzを指しているのは、アマゾンにはAからZまですべて取り揃えているという意味を含んでいるようです。


ユニリーバと言えば食品、飲料水、洗剤類など幅広く扱っていることから、ロゴにもそれを反映させたかったようです。各図にはそれぞれの意味があり、例えばハートには愛、鳥は自由のシンボルといった感じです。

northwestairlines

アメリカの航空会社であるノースウェスト航空。一見すると会社名の頭文字であるNとWが融合しているだけのように思いますが、実は方位磁針になっておりNorthwest(北西)の方向を指しているのです。

formula1
なじみ深いF1のロゴにも、実は隠されたものがあります。間の余白部分に、もう一つ「1」が隠されているのがわかるでしょうか。

nbc
アメリカの三大ネットワークの一つに数えられるテレビ局のロゴですが、クジャクがモチーフになっています。創立時に事業部が6つあったことにちなんで、6枚の羽根になっているそうです。

bigten
1896年に設立された10の大学からなる組合なのですが、1990年にペンシルバニア州立大学が加わりました。しかし名前を変えたくなかったので、こっそりロゴの中に11と言う数字を加えたそうです。


hartfordwhalers
北米のアイスホッケーチーム、ハートフォード・ホエーラーズのロゴ。白い部分がHを、緑の部分でWを、そしてブルーの部分でクジラの尻尾を表現しています。

eight1
実は全ての文字が8の一部をつかって出来ています。

まだまだあります。

logo29
これ、何気に凄くないですか?女性のヨガのポーズですが、実はこのロゴには、オーストラリアが隠されています。皆さんお気づきですか?

logo28
イリュージョンしていますねUとIの間にSを隠しています。

logo27
名前の頭文字の「H」を道路(ROAD)に見立てています。素敵ですね。

logo26
これもなかなか。Height(高さ)なので上下の矢印で高さをイメージしつつ、間にHの文字を隠しています。

logo01
指とボタンでcliqを表現しつつ、指とボタンが「太陽と街(city)」にも見えるように工夫されています。

logo02
バーディとバードをかけて、アイアンにも鳥にも見えるように。アイアンにクチバシを付けただけでこう見えるのは凄い。

logo03
この発想素敵ですね。Webのマウスアイコンとボタンを女性のピクトグラムに見えるように工夫されています。
logo11
ワインを探す、という名で眼鏡をロゴに使っていますが、ワインボトルも隠されています。


さて、いろいろと、ロゴを掲載してきましたが、このこと自体はそうたいして重要なことではありません。上の記事では、「思考の歯垢を取り除きましょう」などと、書かれていて、何か重要なことが語られていないようなので、本日はこれに関して掲載します。

上記の例で、知覚がいかに重要であるかをご理解いただけたのではないでしょうか。

うえの記事では、「文字の余白に着目してみる。文字の意味ではなく、形に着目してみる。 普段、何気なく見ているものをあえて異なる視点から見る習慣をつけておけば「思考の歯垢」を落とすことができ、これまで考えもしなかった改善点やアイデアを思いつけるでしょう」としていますが、実際に知覚はそれ以上に重要なものです。

上のロゴの事例では、SONYのVAIOを除いては、すべて外国のものでしたが、実は知覚ということでは、海外、特に西欧より、日本のほうがはるかに歴史もありすぐています。

ドラッカーは、著書の中でこれについて、以下のように述べています。

「分析に対置するものとしての知覚こそ、実に一○世紀以降の日本画における継続的な特性である」(『すでに起こった未来』)  
日本の歴史と社会についての第一人者、エドウィン・O・ライシャワー元駐日大使が、その著『ザ・ジャパニーズ』において、日本は第一級の思想家を生み出していないと言ったとき、ドラッカーは、日本の特質は“分析”ではなく、“知覚”にあると言ってくれた。 
ドラッカーは、中世における西洋最大の偉業、トマス・アクィナスの『神学大全』に対置するべきは、宮中の愛と病と死の描写からなる世界最高の小説、紫式部の『源氏物語』だという。 
近松門左衛門の文楽と歌舞伎は、カメラとスクリーンこそ使わなかったが、高度に映画的だともいう。登場人物は、何を言うかよりも、どう見えるかによって性格づけされる。誰も台詞は引用しないが、場面は忘れない。  
近松は、映画のための道具はなに一つ使わずに、映画の技法を先取りした。役者が不動の形を取る見得は、まさに映画のクローズアップである。  

歌舞伎に観る見得 
ドラッカーの洞察は、日本の近代社会の成立と経済活動の発展の根底には、その伝統における知覚の能力があると看破する。これによって日本は西洋の制度と製品の本質を把握し、再構成することができたという。日本の真価はこの知覚の能力にある。  
「日本について言える最も重要なことは、日本は知覚的であるということである」(『すでに起こった未来』)

さて、ドラッカーは日本は、知覚的であるとしていますが、さらに、イノベーションの知覚の重要性について以下のように説いています。
 「イノベーションとは理論的な分析であるとともに知覚的な認識である。イノベーションを行うにあたっては、外に出、見、問い、聞かなければならない」(『イノベーションと企業家精神』) 
 近代文明はデカルト以来、因果関係と定量化を駆使する一方において、その呪縛に囚われてきた。近代合理主義としてのモダンの時代は、知覚の世界の存在を否定はしなくとも、進歩とは関係のないこととした。そしてそのおかげで科学技術も進歩した。 
 だがイノベーションは分析だけで行なうことはできない。そもそもイノベーションに対する社会のニーズは分析では知りえない。 
 ドラッカーは、イノベーションの成果が、やがてそれを使うことになる人たちの期待、価値、ニーズにマッチしうるかは知覚によってのみ知りうるという。 
 そうして初めて、それを使うことになる人たちが利益を見出すには何が必要かを考えられるようになる。考えられなければ、せっかくのイノベーションも間違ったかたちで世に出る。 
 かくしてイノベーションこそポストモダンたるべき活動であり、機能である。 
「イノベーションに成功する者は、右脳と左脳の両方を使う。数字を見るとともに人を見る。いかなるイノベーションが必要かを分析をもって知った後、外に出て、知覚をもって顧客や利用者を知る。知覚をもって彼らの期待、価値、ニーズを知る」(『イノベーションと企業家精神』)
要するに、日本の近代社会の成立と経済活動の発展の根底には“知覚”の能力があるということです。イノベーションに取り組むには、分析的アプローチ、設計的アプローチ、創造的アプローチというのがあります。


分析的アプローチとは、現状を徹底的に分析する方法です。市場であれば、いろいろな分析を徹底的に行うということです。この分析は、たとえば、改善の場合はかなり有効です。分析ができれば、改善できる可能性はかなり高いです。しかし、あくまで改善であり、イノベーションにつながることは稀です。この方法は、ほんど分析という手法で実施します。


次に、設計的アプローチの場合は、たとえば、現状で、1000万円しか売上がない月商3000万円の店をつくるなどと目標を設定しての改善・改革の方法です。この場合は、分析的と、知覚を半々程度で実施します。実際には、月商3000万円の店と、現状の1000万円の店とを対比して、足りないものをつけたしていきます。


次に、創造的アプローチの場合は、理想的な形をアイディアでつくりあげていく方式です。これには、知覚が重要です。これは、新たなビジネスモデルをつくりあげるなどの時に用いられる方法です。


イノベーションは、無論、創造的アプローチによるものがほとんどです。分析的アプローチでは、イノベーションにつながることはほんどありません。分析だけでは、改善から一歩も踏み出せません。


なぜかといえば、たとえば、市場調査をしていたとして、分析だけでは、たとえば、30歳台の都市部の女性が、コンビニで洗剤を買う率が高いということがわかって、それておしまいだからです。これに対してできることは、30歳台の女性の顧客の多いコンビニで、洗剤をもっとおくとか、洗剤の種類を増やすということくらいです。


とこが、知覚によって、創造的アプローチをすれば、もっともっと多くのことができるかもしれません。知覚とは、30歳台の都市部の女性が、コンビニで洗剤を買う率が高いこと意味は何であるかを知覚するということです。


知覚にも、程度があります。たとえば、この事例では、女性の婚期が従来よりも遅くなり、勤労している女性が多くなったので、時間を節約するために、コンビニで洗剤を買っていると知覚できれば、洗剤に限らず、時間を節約するビジネスモデルを考えればよいわけです。このようなビジネスモデルはいくつも作れるはすです。そうすれば、先の分析の例よりも、はるかにいろいなことができます。


さらに、もっと深く知覚することができれば、さらに、それこそ、社会を変えるイノベーションもできるかもれしません。


上のロゴの例では、実は、もっと深い意味性が隠されているかもしれません。フェデックスの→は、何を意味しているのでしょう。VAIOのアナログと、デジタルは何を意味するのでしょう。チョコレートの、熊は、一体何を意味しているのでしょうか?


このように、深く知覚することができれば、さらに、物事が理解できるようになります。


それにしても、最近は、一見日本のイノベーションは下火に見えますが、特許の件数を見ている限りでは、日本は未だに世界一です。しかし、私は、いわゆる社会を本格的に変えるイノベーションに関しては、最近日本は不得意になりつつあるように思います。


そうして、それは、なぜかといえば、日本人が日本の伝統文化を軽視するようになったからではないかと思います。もともと、知覚を重要視していた、日本の伝統文化をほとんど顧みなくなったからではないかと思います。知覚とは、分析だけでは得られないものです。分析した結果を、解釈したり、外に出て知覚をもって人の期待、価値、ニーズを知ることが必要なのです。


人を知るには、何時間も話をして、人を心理分析すれば、知覚できるというものでありません。実際に、人がどう行動しているのか、何を考えているのかを、総合的に判断しなければできないものです。人の行動や、発言、思考様式、着衣などから、その背景である隠れたメッセージを読み取ることができなければ、知覚することはできません。


この方面の能力がもともと、日本人は優れていたはずなのに、日本文化をないがしろにしてきたことによって、本来の能力が失われかけているのではないかと思います。日本人は、もともと、そのような能力があったので、西欧人などとは異なり、あまり会話をしなくても、相手のことを知覚できたのだと思います。現在の政局などみていると、本当にそんな感じがします。


ここまで、読んでいただいて有難うございます。先に、書いたように、これは、思考の歯垢程度の問題ではないことがお分かりになったのではないかと思います。


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2011年5月20日金曜日

アマゾン Kindle版電子書籍の販売冊数、紙本の全種合計を上回る―【私の論評】ありとあらゆる手段を講じて、キンドル本の売上をあげるAmazon!!

アマゾン Kindle版電子書籍の販売冊数、紙本の全種合計を上回る


米 Amazon.com が、Kindle電子書籍の販売数がプリント版書籍を上回ったことを発表しました。アマゾンによれば、今年の4月1日以降、紙本100冊に対してKindle本は105冊の割合で売れているとのこと。紙本の売上冊数はハードカバーとペーパーバックの両方を合計した数。Kindle本の販売数には無料書籍は含みません。また紙本の売上が落ちたせいで Kindleに抜かれたわけではなく、アマゾンでは紙本の売り上げも成長しているにもかかわらず、とわざわざ付記してあります。

去年の10月には、Amazonの書籍ベストセラーTOP1000についてKindle本の月間売り上げが紙本を上回り、TOP10については Kindle本 2冊に対して紙本1冊に達したことが発表されていました。今回の発表では、Kindleエディションが存在していない本も含むすべての紙書籍の売り上げよりも Kindle 電子書籍のほうが売れていることになります。

ベゾスCEOのコメントは、「( Kindle本の紙本越えは) いずれは訪れるだろうと望みを抱いていましたが、ここまで早く実現するとは想像もしていませんでした」。

また今月発売されたばかりの " Special Offer " 付き114ドル版 Kindle が、広告なし Kindle (139ドル) や大型のKindle DXを含む Kindle製品ファミリでもっとも売れている製品になったこともあわせて発表されています。

【私の論評】ありとあらゆる手段を講じて、キンドル本の売上をあげるAmazon!!


Kindle本(Kindle本を読むハードのことではない)が売れるであろうことは、もうすでに十分前から判っていました。とうとう、今日のこの日をむかえたのは、当然のことでもあります。

とにかく、Amzonは、kindle本が売れるようにありとあらゆる、手段を講じてきました。

昨年の、8月27日には、「Kindle」新モデル登場しています。WiFi専用モデルの「Kindle Wi-Fi」が139ドル(約1.2万円)、3G+WiFi対応版の「Kindle 3G」が189ドル(約1.6万円)で、安くなったぞ!って報道されていましたが、何よりもすごいと思ったのは、日本語対応してしまったということでした。昨年のバージョンアップで、PDF表示ができるようになりました。

Kindleのすごさは、単独ですべてができてしまう気軽さです。Kindleさえあれば、Amazonから本を、その場で買えて、ものの60秒もあれば読み始めることができます。この手軽さは、何もにもかえがたいです。

本屋に行って買うという手間も、Amazonに紙の本を注文して宅急便で受け取る(で、不在通知が入ってて何度も電話のプッシュボタンを押させられる!)という手間もありません。

デバイスも軽く、Eink(電子ペーパー)で目も疲れません。読むことに特化した真の電子書籍端末です。いわゆる、ガジェット好きではなくて、読書好きに向けてつくられたマシンです。

このEinkの良さは、野外で特に、日向で見てみると良くわかります。上の動画のCMはいわゆる、ネガティブキャンペーンのように受け取る方もいるかもしれませんが、EinkのKindleが、そうではない、iPadよりはるかに読みやすいことは事実です。


しかし。昨年までは、Kindleが日本語対応していなかったために、その利点を日本人は全く享受できませんでした。昨年ようやっと、日本語対応しました。まさに『ドラえもん41巻』に登場した「未来図書券」が実現するのです!

「未来図書券」は、ほしい本がすぐに届けられる未来の本注文システムでした。とはいえ、注文はハガキに書いてポストに入れるのだから、ドラえもんがいる未来よりももっと便利な世界が到来するということです。

しかし、結局日本の出版社がすぐさまガンガンKindle用の日本語の電子書籍を出すかどうかは、今の時点でもまだはっきりしません。しかし、時間の問題でしょう。出版社側は、ほとんど手間暇がかからず、収益が増えることになります。アップル帝国のiBookなどと違って、わけのわからない理由でリジェクトされることもまずありません。



昨年、出版社等向け説明会で、アマゾンは、「キンドル日本市場参入1〜2年はやりません」と言ったとのことです。これって「我々は十分働きかけた。君達が動かないのなら、君達が自滅する1〜2年先まで待つしかないね。…でどうする?」って意味だと思います。

個人が出版できるAmazon DTPも、いずれ日本語対応するとみられます。そうなれば、個人やチームやエージェントとして、日本語の電子書籍出版が加速することもまちがいないと思います。

そうして、昨年に続き、今年は、kindle本をほとんどありとあらゆるデバイスに対応させてしまいました。これは、以前このブロクにも掲載しました。これで、Kindle本は、kindleは無論のこと、アップルのiPhone、iPad、MacPCなどすべてのデバイスで読めるのは無論のこと、Android端末、WindowsPC、ブラックベリーなど、ほぼすべてのもので読めるようにしていしまいました。

おそらく、日本の出版社など、たとえば、例のガラパゴス端末で読めて、他では読めないようですが、そんなことをやっていては、またまた、電子書籍のガラパゴスになってしまうのではないかと思います。

それに、あまりにも当たり前といいながら、それが、Amazonの強みなのですが、とにかく、書籍の種類、アイテム数が圧倒的に多いです。こんな感じで、日本語の書籍を出したとしたら、日本の業界などほとんど太刀打ち出来ませんね。何か、最初から決着がついてしまったような気がします。

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2011年5月19日木曜日

米国人の中国経済への理解に4つの誤り―米誌―【私の論評】日本人も勘違い!!震災直前に日本に多数来ていた中国の富裕層は、あなたよりも、年収が少なかったかもしれない?

米国人の中国経済への理解に4つの誤り―米誌



2011年5月12日、米誌タイムは記事「中国経済に対する米国人の見方は“単純”か?」を掲載した。17日、新華網が伝えた。

先日、中国の王岐山(ワン・チーシャン)副首相は、米有名インタビュー番組「チャーリー・ローズ・ショー」に出演。「中国経済に対する米国人の見方は“単純”すぎる」と批判した。米誌タイムは、確かに中国経済は誤解されている側面があるとして、以下4点を指摘した。

(1)中国人は米国の労働者から仕事を奪っている―間違いではない。ただし労働集約産業がより労働コストの安い国に移動するのは当然のこと。中国人が仕事を奪わなければ、インドなど別の国が奪っていただろう。

(2)中国は為替レートを操作し、米国経済に悪影響を与えている―確かに中国政府は為替レートをコントロールしている。しかし、人民元問題は諸悪の根源のように言われるが、それは過大評価だ。2005年比で人民元レートは約27%上昇しているが、中国の対米貿易黒字はさらに拡大しているのが証左と言える。

(3)中国は米国以上にうまく資本主義社会を実現している―米国と中国は異なる発展段階にあり、単純な比較は不可能だ。金融危機にあたり、中国が巨額の財政出動で景気低迷を食い止めたが、それは資本主義というよりも政府機能がうまく働いたに過ぎない。

(4)中国が米国に取って代わり世界一の経済体となることは確実―GDPで米国を抜く可能性は高いが、しかしそれは米国が世界経済における主要な地位から転落することを意味しない。中国はインフレ、貧困、巨額の負債、格差など大きな問題を抱えている。またイノベーションの発信地と世界主要市場としての米国の地位を揺るがすものではない。

【私の論評】日本人も勘違い!!震災直前に日本に多数来ていた中国の富裕層は、あなたよりも、年収が少なかったかもしれない?
日本では、アメリカ人のように単純すぎるような見方はしていないようですが、勘違いしているところは多いようです。

その一方で、日本人とアメリカ人が共通で勘違いしているとこもあるようです。まず、GDPに関しては、両国とも、中国の人口が、13億であるということをあまり認識していないようです。

日本の人口は、1億2千万、アメリカは3億人、中国は、13億人です。この人口の違いを忘れている人は、多いです。一人あたりのGDPということでは、以下の表の通りです。それに、現在日本は、デフレの真っ最中にあるということで、GDPが本来の国の実体経済よりも低くくなっています。

これに比べると、中国などは、完全なバブルであり、本来の国の実体経済よりも高くなっていることは確実です。

年度2011
日本45,659.37
アメリカ48,665.81
インド1,382.40
中国4,833.29
ブラジル12,422.94
ベトナム1,327.49
ロシア13,542.89
ついでに、グラフなどで示すと以下のようになります。

[世] 一人当たりの名目GDP(USドル)の推移(1981~2011年)の比較(日本、アメリカ、インド、中国、ブラジル、ベトナム、ロシア)

それに、両国民とも大きな勘違いがあるようですが、そもそも、日本や、アメリカなどは、国の統計に関して、特に手を加えるなどのことはしませんが、中国ではそれは、当たり前の真ん中で行われているということがあります。

さらに、ある程度国のインフラが整備し終わった日本や、アメリカのような国は、さしあたって、インフラなどに大きな整備をする必要はいですが、中国のような国では、まだまだ、インフラが整っておらず、インフラを整備するためだけでも、かなりの投資が必要であり、それだけでも、GDPが膨らむ傾向があります。そのため、中国では、最低6%の経済成長がなければ、雇用を完全に吸収できません。これは、アメリカや日本と大きな違いです。

そもそも、中国では日本やアメリカのようにしっかりとして統計数値などはとることはできません。奥地のほうの経済など確かめようもない部分があります。もともと、地方政府(省、市)は、中央政府への報告のため、GDPを高く報告する傾向があります。

実際、中国の統計には、良くほころびが見られることがあります。たとえば、過去には、ほとんどすべての省のGDPが、全体平均よりも上回るという信じがたいこともありました。さらに、ある四半期のGDPが伸びているにもかかわらず、同期の鉱工業部門における、電気使用量が減っているなどの不可思議な現象も起きています。

3年ほど前に、年収100万円を超えた人が、1000万人を超えたとされています。富裕層といっても、実数はかなり少ないことがおわかりなると思います。これは、一人あたりのGDPが日本の約1/10程度なので、本当にこの程度なのだと思います。ちなみに、日本では、中国の富裕層の人口が、1億数千万人という説がまことしやかに流れていますが、それでは、一人当たりのGDPが日本の約1/10に近いという事実とつじつまがあいません。だから、これは、全く根拠ないデマだと思います。

いわゆる、中国の本当の富裕な人はほんの一握りしかいません。それに、中国では、ここ数年、年収200万円くらいの人が、1億円のマンションを購入するのは当たり前という状況です。日本や、アメリカでは、年収200万円の人が、1億円のマンションを購入できるでしょうか?これは、いくら物価が異なるといっても、あのサブプライムローンが問題になったアメリカですらありえなかったことです。

だから、あの地震の直前まで、日本に多数来ていた、いわゆる中国の富裕層といわれる人々のほとんどは、このブログを読んでいるあなたよりも、年収は少なかったかもしれません。無論、マンションなど転売した利益で、資産は、あなたよりはるかにもっていたかもしれません。しかし、どこの国でも、本来の職業などで得た収入を年収というのであって、マンションなどの転売は、年収とはいいませんから。税制上でもそうです。これは、日本も、中国も同じことです。

年収、200万では、日本の銀行では、絶対に1億のマンションのローンは組みませんね。物価の違いを考慮して、400万でも、あり得ないでしょう。おそらく、上限は数千万だと思います。アメリカだって同じ事だと思います。アメリカのサブプライムローンは、年収400万以下の人に対してのローンが問題になっていたと思います。これは、最初から失敗ということが目にみえていました。そうして、ものの見事にほんの短期間で破綻しました。

こんなところかみても、もう、中国は完璧にバブル状況だと思います。でも、そんな様子はちっともみえないじゃないかなんて人もいるかもしれません。でも、バブルが崩壊し始めても、気づかない人が多いなんてことは、日本でも経験済みですね。

そうです。日本では、バブルの崩壊は、1980年代の後半から1990年代のはじめにかけておきました。たとえば、バブル景気の象徴として取り上げられる事の多い「ジュリアナ東京」ですが、実際はバブル崩壊が進行中の真っ最中である1991年5月に開店しています。このように、バブル崩壊は、その真っ最中の当事者の人々にはなかなか理解できなくて、後になってからわかるという性格が強いものです。ジュリアナ東京の経営者は、先見の明のない人だったのでしょうか、その後の福祉サービスの事業にも結局失敗していますね。だから、中国でも認識されていないということが十分考えられます。

ジュリアナ東京
さて、震災前まで日本に良く来ていた中国の富裕層といわれる人々、中には、極少数の日本のお金持ちと同程度が、それ以上のかたもいらっしゃるには、いらっしゃるのですが、実は、年収300万とか、それ未満のひともかなりいたかもしれません。これでは、震災などがなくても、バブルが完全に崩壊すれば、いずれ、日本に来れなくなる人が大部分だったかもしれません。

こんな状況は、アメリカ人はもとより、日本人でも勘違いしているかもしれません。

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2011年5月18日水曜日

Chrome OS搭載ノート「Chromebook」、まずはSamsungとAcerから―【私の論評】気になるAndroid3.0との棲み分け?

Chrome OS搭載ノート「Chromebook」、まずはSamsungとAcerから


http://journal.mycom.co.jp/news/2011/05/12/016/index.html


【私の論評】気になるAndroid3.0との棲み分け?
ChromeOSを搭載した、ノートパソコンがとうとう発売です。発表から何年またされたことでしょう。しかし、とうとう発売されることが決定です。しかし、このChromeOSが発表されてから、いろいろありました。特に、Androidという新たなOSが発表されたことは大きいです。

それも、最初は携帯用として、Androidが発表されました、これは、バージョンアップされつつ、Androd2.0になっています。そうして、次にAndrod3.0は、タブレット用というような位置付けで発表されています。そうして、実際にこの春から、これを搭載したタブレットが販売されつつあります。

こうなると、何がどうなるのか良く判らないという感じです。しかし、このことを理解するには、Techno Chranchが今月の11日に掲載した、Google I/O: AndroidとChrome OSの棲み分けはどうなるのかという記事が参考になりそうです。以下にその要約を掲載しておきます。
Googleは、同社内部のプラットホーム戦争の、正念場に達しつつある。AndroidとChrome OSの定義と性格分けと将来像を明確にすべき時期が、迫っているのだ。おそらく内部的には固まっているし、ある種の中期計画のようなものもあるのだろうが、しかし遅かれ早かれ世の中にそれを知らしめなければならない。そして今日(米国時間5/10)のGoogle I/Oには、重要なヒントがあったようだ。 
ヒントとは、今日の2つの発表だ: ひとつはGoogleとしては予想どおりのMusic、もう一つはOpen Accessory Toolkitというサプライズだ。GoogleはOSの二股戦略を、基本的に、次のように性格づけたと思われる: Chrome OSはあらゆるところに、そして、Androidはなんにでも。 
人びとがAndroidを使ってファンやLEDなど…多様な外部機器…をコントロールできるようにする。そのどこが重要なのか? GoogleがAndroidを、携帯電話のOSではなく、汎用の小規模OS(対象機器は最大でもタブレットぐらい)と位置づけたことが、重要なのだ。今後のAndroidは、細かな改良は進むにせよ、今のHoneycombと大きくは変わらないだろう。最大がタブレットなら、最小は?…なんにでもだ。電子レンジ、車、メディアプレーヤー、ロボット、時計、玩具、ツール、顕微鏡、レントゲン装置、セットトップボックス、カメラ、…例は限りなく挙げられる。とにかくCPUがあってインタフェイスがあるものならなんでもAndroidでコントロールできる、とGoogleは考えている。そうそう、それに、Google語で言うなら、それらの機器は互いにお話しできる。キッチンの冷蔵庫からPandoraをコントロールしたいかな? ぼくはたまたましたくないが、それ的なことをしたい人は何億もいるだろう。

ブラウザさえあれば何でもできる、と悟った人なら、Chrome OS製品を使えばよい。しかも、ほかのタブレットを買った人も、Googleのサービスを大量に利用する。Chrome OS云々ではなく、業界が欲しいのは、低価格製品に使える安定性の良い、あまり自己主張をしないOSだ。さらに、エンドユーザにとっては、Chrome OSを使うこととChromeブラウザを使うことの区別はほとんどない。何を使っても、調べごとなどほとんどのコンピューティングが、ブラウザ内で行われるからだ。自分の音楽を聴くのも、ムービーをレンタルするのも、やはりブラウザ内だ。写真も、メールも。下の図で、矢印の数を増やすのはとても簡単だ:
 
このようなエコシステムは今の消費者にとっては先進的すぎるから、Googleはデベロッパ向けのI/Oを発表の場に選んだ。それは、Los Angeles GalaやKe$haなどをゲストに招く、派手な立ち上げイベントではない。Googleはただ、将来を見据えている。「アプリケーション国」から「ブラウザ国」に移行する道筋を。 
少なくとも、Open Accessory Toolkiの発表の席で、Arduinoのボード(この記事の最初の写真)について話を聞いたかぎりでは、見えてくるのは以上のようなビジョンだ。しかもそれは、Appleの両目を突く戦略としてきわめて有効だ。モバイルとアプリに強くても(無敵で最強だが!)、そのほかの世界…クラウドなど…に関して弱いAppleは、攻めやすいともいえる。まず、Appleが参入できない領域(ハッカー的コンピューティングと組み込みコンピューティング)で勝利し、次にAppleが売るすべてのユニットを、Googleのユニットで置換していく。このハンニバルのような挟撃作戦は、Appleのサービスと製品群の脇腹を突く。しかもAndroidの成長は堅調に続くから、モバイルの中央最前線は安泰だ。 
ただし問題は、消費者への売り方。それには時間がかかるし、元々Googleはマーケティングの名手ではない。敵たちは、そこを見逃さないだろう。Chrome OSはまだ、Googleが願ったような普遍的なプラットホームではないが、Androidは1年以内にハイエンドとローエンドの両方向で地位を確立するだろう。タブレット戦争が激化し、クラウドサービスはコンピューティングの主流に近づく。iPhone 5とNexus X(など)とNFCと、そのほかの予想もできない何百もの技術〜製品〜イベントが、その同時期に出現するはずだ。 
その1年に起きる多くのクレージーなものごとによっては、この突飛な記事さえも、無に帰してしまうことすらありえるだろう。
いろいろと、上記の文章、複雑に書いていますが、これから類推するに、要するに、Google提供のOSも、アップルのiOSと、macOSのようなことになるという事だと思います。要するに、iPhone、iPad、iPod向けの、iOSに相当するのが、Android、ノートパソコン、デスクトップパソコン向けのmacOSに相当するのが、ChromeOSというわけです。

いずれ、Andoidは、一本化され、携帯電話をはじめとする、タブレットPCをも含むガジエット用のOSになるのだと思います。もっとはっきりいえば、パソコン以外のデバイス用のOSという位置づけということになるということです。

ノートパソコン、デスクトップパソコン用には、ChromeOSということですが、これが、今までの、マイクロソフトのWindowsOSや、macOSなどとも異なり、最初から、クラウドをつかうことを想定しているという違いがあるという事だと思います。

それに、これは、以前も書いたことなのですが、ChromeOSは、無料で提供されるということと、パソコン向けであるということから、パソコンそのものを低価格化を実現することができるので、いわゆる、世界の貧困層にも購入できる可能性が高いので、貧困層(BPO)ビジネスをも狙っていると思います。今のままだと、インターネットのトラフィックを飛躍的に増大することなど難しいですが、いわゆる現在貧困層といわれている人が、バソコンを持ち、インターネットをすることができるようになれば、飛躍的に増えることが予想されますし、貧困層が情報を得ることにより、貧困から抜け出すきっかけづくりができるようになると思います。

いずれにせよ、消費者にとっては、選択肢が増えたと思います。特に、iPadや、Android3.0を搭載したデバイスは、ハードディスクなどは搭載しておらず、SDDを搭載しており、とにかく、プラウザを観るには、速度がかなり速いという特徴があります。

それに対して、いままでのパソコンは、たいていは、大容量のハードディスクを搭載しており、これを使うことから、起動なや、ブラウザの閲覧などでは、どうしても速度の点で劣るという欠点がありましたが、今後は、ノートパソコンでも、SDDでしかも、ChromeOS搭載ということで、速度なども、iPadなどとさほど変わらなくなるわけです。SDD搭載のノートパソコンなど、以前からもありましたが、今後、ChromeOS搭載パソコンが発売されることにより、SDD搭載ノートパソコンが多数発売されるようになり、はるかに選択肢が増えることが予想できます。

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2011年5月17日火曜日

中国の高速鉄道には重要な軍事的意図が隠されている―米誌―【私の論評】敵に塩をくれてやっただけではなく、軍事力の増強にも手をかしている平和ボケ日本!!

中国の高速鉄道には重要な軍事的意図が隠されている―米誌

中国高速鉄道と女性乗務員
14日、米ジェイムズタウン財団が発行する雑誌チャイナ・ブリーフは、中国人民解放軍総後勤部・軍事交通運輸部の話として、中国の1000を超える鉄道駅には軍事輸送施設が備わっていると報じた。写真は江蘇省蘇州市にある崑山南駅。

2011年5月14日、米ジェイムズタウン財団が発行する雑誌チャイナ・ブリーフは、中国人民解放軍総後勤部・軍事交通運輸部の話として、中国の1000を超える鉄道駅には軍事輸送施設が備わっていると報じた。以下はその概略。

国際社会における中国の台頭に伴い、中国の軍事力も大幅に増強。中国指導者たちの理想は日増しに膨らみ、さらに積極的に自国の利益保護を追求するようになった。中国が鉄道網の整備に全力を挙げているのも、人民解放軍の移動能力を向上させるため。それらはさらに周辺地域にまで延伸しており、米国を始めとする西側諸国の同地域における利益に重大な影響を及ぼしている。

中国は現在、チベットとネパールに続く高速鉄道路線を開通させており、さらにラオス、シンガポール、カンボジア、ベトナム、タイ、ミャンマーにも伸ばす予定。また、昨年11月には新疆ウイグル自治区−キルギスタン−タジキスタン−アフガニスタン−イランを結ぶ路線を建設することで各国と合意。このほか、イラク−シリア−トルコ−欧州を結ぶ路線の開通も計画している。

これらは国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が提唱するアジア横断鉄道(TAR)の理念に基づいたもの。これは中東を中枢としたアジア間およびアジアと欧州を結ぶ鉄道路線網である。こうした鉄道網の充実に加え486.1キロという世界最高速度が、中国の遠征能力を格段に向上させるだろう。現代版の「シルクロード」が米国および西側諸国の脅威になることは間違いない。(翻訳・編集/NN)

【私の論評】わざわざ当たり前のことを発表する米誌の意図は?

ドイツ列車砲ドーラ 右から二番目がヒトラー、右が軍需大臣のアルベルト・シュペーア
鉄道が、軍事目的のためにも存在することは、世界の常識です。駅付近に、軍事施設をおくおかないは別にして、それは、昔からの常識です。ちなみに、上の写真は、第二次世界大戦中のドイツの列車砲「ドーラ」です。列車砲の近くに立っている兵隊との対比でみると、その大きさが容易に理解できると思います。

日本でも、昔から、兵隊や、戦車、車両、軍事物資など鉄道で輸送することは昔から普通に行われています。下の写真は、自衛隊の戦車を鉄道で運んでいる様子です。戦車など、重いですから、戦車が自走して、離れた目的地に行くよりも、こうし運んだ方が、燃料もあまりかからず、合理的です。それに、新幹線だって、いざというときには、兵隊を素早く移動するためにつかうことも当然のことです。

最近は、自衛隊員を鉄道で運ぶことはあまりないようですが、私が子供ときは、列車に自衛隊員が多数乗り込んで移動していることもありました。そんなときに、自衛隊員に、「どこに行くのですか」と質問しても、応えてはくれませんでした。やはり、いくら訓練とはいえ、軍事的な機密事項だったからでしょう。

ただし、鉄道輸送には、欠点もあります。それは、一度爆撃、特に複数個所や、要所を爆撃されれば、復旧に時間がかなりかかるということです。だから、戦争になれば、真っ先に爆撃されるのは、鉄道網です。



とにかく、鉄道は、設立当初から軍事目的とは、密接な関係がありました。それでは、なぜ、米国誌がわざわざ、この当たり前を掲載したのか、その意図を探ってみましょう。

それは、やはり、上の文書にも書かれてあるとおり、「米国を始めとする西側諸国の同地域における利益に重大な影響を及ぼしている」のであり、やはり、米国としては、軍事的脅威を煽っておく必要があるためです。

軍事的脅威とはいっても、すぐ戦争になるとかならないとかという意味ではないです。中国による軍事的な脅威が高まれば、アメリカなどは、中国の近隣にも軍隊を派遣しなければならず、軍事費が膨大になるおそれがあるということで、そうならないためにも、脅威があることを明示しておき、近隣諸国に警告を発信するという意味があるのだと思います。

おおかたの日本人は、平和ボケでこのような見方はできなくなっているのではないかと思います。最近、アメリカの中国に対する態度は随分かわってきています。将来の市場として、大きな魅力があるのでしょうが、最近では、中国の軍事力が以前よりは確実に伸びてきています。

しかし、少なくとも、中国の軍事力の実力からいって、10年以上もしなければ、アメリカと局地戦すら満足に戦うことはできないでしょう。空母を導入したとしても、運用までに最低5年、最長で10年はかかるものであり、全く軍事力としてはアメリカには太刀打ちできないです。いまの水準では、日本にも勝てません。

しかし、そうはいっても、中国の隣国といえば、ロシア、インド、日本などをのぞけば、軍事的弱小国ばかりです。特に、中央アジアは別として、東、東南アジアなどでは、日本くらいしか、抑止力になる国はありません。

しかし、その当の日本ですが、特に軍事力を含め、様々な分野で、弱小化しつつあります。こんな、有様では、いつ中国が、この隙に乗じて、東アジア、東南アジアに対して、覇権を強めてくるかわかりません。実際、戦争をすれば、赤子の手をひねるように簡単なことなのですが、実際そうしたり、あるいはそうならないためには、膨大な軍事費を必要とします。イラク、アフガンなどに派兵し、すでに膨大な軍事費を投入しているアメリカは、そのようなことをなるべく避けたいのです。

だからこそ、隣接諸国に対して、警告を発して、できれば、隣接諸国に軍事的な備えをしてもらいたいのです。そうして、はっきり言ってしまえば、アメリカは、日本にその役割をになって欲しいのです。しかし、平和ボケ日本人の多くは、尖閣列島の問題などがあっても、まだ、そのことに気づかないようです。

アメリカ議会では、日本が軍事的備えをする最大の障害ともなっている、日本国憲法につき、改憲に賛成するほうが、多数派になっています。そのことは、以前のこのブログにも掲載しました。当の日本人だけか、そのことに未だ鈍感なようです。

なお、中国の高速鉄道は、日本の技術を盗用していることはこのブログにも掲載しました。日本人は、こうした技術の盗用に関しては気がつくようですが、当たり前の真ん中の、鉄道の軍事利用にまでは、頭が回らないのだと思います。これでは、まるで、敵に塩をくれてやっただけではなく、軍事力の増強にも手をかしているようなものです。平和ボケ日本、ここにきわまれりという所だと思います。米誌は、こうしたことも、やんわりと、指摘するという目論見もあったのかもしれません。

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