2015年8月18日火曜日

専門家も驚いた台湾“厚遇”の背景 日米台による中国包囲網への布石か ―【私の論評】台湾を巡る世界の動きを察知できないマスコミや政治家どもは完璧に世界情勢から蚊帳の外(゚д゚)!


衆院第1議員会館で講演した台湾の李登輝元総統=7月22日

安倍晋三政権や周辺で、台湾への“厚遇”といえるエピソードが続いている。安倍首相が14日に発表した「戦後70年談話」では、「台湾」を「中国」より先に登場させたうえ、先月末には、李登輝元総統が初めて日本の国会内で講演したのだ。安倍首相と李氏が極秘会談に臨んだとの観測もある。こうした背景に、一体何があるのか。

「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み…」

安倍首相の談話の中に登場したこのフレーズが、外交専門家らの注目を集めている。

国際政治学者の藤井厳喜氏は「談話で『台湾』と『中国』が並立していることに驚いた。安倍政権が(中国の一部ではない)台湾の政治的実態を認めたということだ。中国にとっては強烈な1発になったはずだ」と語る。

伏線はあった。李氏の来日は当初、今年秋ごろに予定されていた。ところが、日本側の「異例の厚遇」(藤井氏)で、先月末に前倒しになったとされる。

李氏は7月22日、衆院第1議員会館で行われた講演で、国会議員有志らを前に、安倍政権が整備を進める安全保障法制を「日本が主体的に安全保障に意識を持つことが、アジア全体の平和につながっていく」と高く評価し、日台の連携を印象づけた。講演に先立ち、安倍首相の側近である下村博文文科相が超党派議員の発起人代表としてあいさつした。

産経新聞の報道によると、李氏は7月23日に安倍首相と都内で会談し、対中関係などについて協議したともいう。

日台関係の進展を図る有識者の団体「日本李登輝友の会」の柚原正敬事務局長は「安倍政権に、中国への牽制という狙いがあるのは間違いない。安倍首相は、第2次政権発足以降、台湾を『同じ価値観を共有する国々』に含めた言及を増やしている。台湾と緊密に連携し、海洋進出を強める中国への包囲網を構築しようとしているのだろう」と分析する。

安倍政権のこうした方向性は、米国の姿勢とも連動しているようだ。

前出の藤井氏は「米国は最近、台湾への扱いを明らかに変えてきている」と指摘し、続ける。

「5月末から6月にかけて訪米した台湾・民主進歩党の総統選候補者、蔡英文主席は、閣僚級と会談するなどの厚遇を受けた。米国は、南シナ海問題などをめぐって緊張が高まる中国を牽制するため、『台湾カード』を切り始めている。安倍首相は、米国と平仄(ひょうそく)を合わせた動きをしている」

日米台の連携強化によって、中国は東アジアで孤立を深めることになるのか。

【私の論評】台湾を巡る世界の動きを察知できないマスコミや政治家どもは完璧に世界情勢から蚊帳の外(゚д゚)!

この安倍総理の動きは当然のことだと思います。安倍総理はもともと、アジアの安全保障のダイヤモンド構想を打ち出していました。

これにつしいては、このブログでも何度か掲載したことがあります。その代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、日本ではなぜかメデイアが「アジアの民主主義セキュリティダイヤモンド」については、ほとんど報道しませんので、以下に安倍総理大臣が、2012年の暮れに外国のメデイアに寄稿した、その構想の内容そのものを以下に掲載します。

以下に日本分のものを全文掲載させていただきます。
アジアの民主主義セキュリティダイアモンド 
 2007年の夏、日本の首相としてインド国会のセントラルホールで演説した際、私は「二つの海の交わり」 ─1655年にムガル帝国の皇子ダーラー・シコーが著わした本の題名から引用したフレーズ─ について話し、居並ぶ議員の賛同と拍手喝采を得た。あれから5年を経て、私は自分の発言が正しかったことをますます強く確信するようになった。 
 太平洋における平和、安定、航海の自由は、インド洋における平和、安定、航海の自由と切り離すことは出来ない。発展の影響は両者をかつてなく結びつけた。アジアにおける最も古い海洋民主国家たる日本は、両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである。 
 にもかかわらず、ますます、南シナ海は「北京の湖」となっていくかのように見える。アナリストたちが、オホーツク海がソ連の内海となったと同じく南シナ海も中国の内海となるだろうと言うように。南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原潜が基地とするに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母がよく見かけられるようになるだろう。中国の隣国を恐れさせるに十分である。 
 これこそ中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に、日本が屈してはならない理由である。軽武装の法執行艦ばかりか、中国海軍の艦艇も日本の領海および接続水域に進入してきた。だが、このような“穏やかな”接触に騙されるものはいない。これらの船のプレゼンスを日常的に示すことで、中国は尖閣周辺の海に対する領有権を既成事実化しようとしているのだ。 
 もし日本が屈すれば、南シナ海はさらに要塞化されるであろう。日本や韓国のような貿易国家にとって必要不可欠な航行の自由は深刻な妨害を受けるであろう。両シナ海は国際海域であるにもかかわらず日米両国の海軍力がこの地域に入ることは難しくなる。 
 このような事態が生じることを懸念し、太平洋とインド洋をまたぐ航行の自由の守護者として、日印両政府が共により大きな責任を負う必要を、私はインドで述べたのであった。私は中国の海軍力と領域拡大が2007年と同様のペースで進むであろうと予測したが、それは間違いであったことも告白しなければならない。 
 東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の戦略的優先課題としなければならないことを意味する。日本は成熟した海洋民主国家であり、その親密なパートナーもこの事実を反映すべきである。私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイアモンドを形成することにある。 

 対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化する種を蒔いたのであった。 
 (世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端にアンダマン・ニコバル諸島を擁し、東アジアでも多くの人口を抱えるインドはより重点を置くに値する。日本はインドとの定期的な二国間軍事対話に従事しており、アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として使うことを選んで以後、インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。 
 私はアジアのセキュリティを強化するため、イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。海洋民主国家たる日本の世界における役割は、英仏の新たなプレゼンスとともにあることが賢明である。英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドとの五カ国防衛取極めに価値を見いだしている。私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、小規模な軍事演習にも加わらせたい。タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、いずれ重要性を大いに増してくるであろう。 
 とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。米国のアジア太平洋地域における戦略的再編期にあっても、日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、米国もまた日本を必要としているのである。2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、ただちに行なわれた米軍の類例を見ないほど巨大な平時の人道支援作戦は、60年かけて成長した日米同盟が本物であることの力強い証拠である 
 私は、個人的には、日本と最大の隣国たる中国の関係が多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。しかし、日中関係を向上させるなら、日本はまず太平洋の反対側に停泊しなければならない。というのは、要するに、日本外交は民主主義、法の支配、人権尊重に根ざしていなければならないからである。これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。2013年も、その後も、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。
安倍総理は、このような構想を表明していて、これを具体化するために、総理に就任直後から、積極的に海外にでかけ、この構想に沿った形で、各国首脳に様々な働きかけを行い、かなりの成果を収めています。

この構想は文字通り、中国の脅威に対して対抗していこうとするものです。安倍総理が着々と中国への対抗措置を推進してきた間、米国は及び腰のオバマ大統領が煮え切らない態度を取り続けていたため、中国に対して断固とした措置をとることができませんでした。

そのせいもあって、日本の尖閣は、中国の公船が領海を侵犯し、中国の航空機が、領空を侵犯するようになり、それが日常になってしまいました。南シナ海では、中国は環礁を埋め立て、飛行場を設営するなどの暴挙を行い、東シナ海の日中中間線の自国側海域で、海洋プラットホームを急速に増設し、軍事転用が懸念されています。

このような中国の暴挙は、及び腰オバマが自ら招いたようなものです。しかし、安倍総理は就任以来継続して、中国包囲網の構築に努力してきました。その成果は、着実に実りつつあります。確かに、尖閣問題は解決はしていませんが、それでも着実ににアジアの中国を取り囲む国々と折衝し、橋頭堡を築いています。

こうした、安倍総理が台湾を厚遇するのは、当たり前のことです。

1972年2月21日に当時のアメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソンが世界中が注目する中で中華人民共和国を初めて訪問し、毛沢東主席や周恩来総理と会談して、米中関係をそれまでの対立から和解へと劇的に展開して第二次世界大戦後の冷戦時代の転機ともなりました。

これより前に、前年7月15日に、それまで極秘ですすめてきた米中交渉を明らかにして、自身が中華人民共和国を訪問することを突然発表して世界を驚かせたことでニクソンショックと呼ばれています。これ以降アメリカは中国と国交を結んだわけです。

しかし、米国は台湾と国交を断絶することなく、二つの中国を認めることになりました。しかし、その後年数を経るにつれて、中国が台頭し、大陸中国は台湾を自らの版図に組み入れようとの画策をしていました。

そうして、世界もそのように傾き、中国は一つであるべきという雰囲気が形成されていきました。

しかし、台湾はそのような風潮にも負けず、今でも独立国としての気概を崩していません。今の台湾の総統馬英九は大陸中国寄りですが、台湾の多くの人々がそれに反対しています。

李登輝元総統は、大陸中国には見向きもせず、台湾が中国の領土になることに公然と反対していますし、親日派でもあります。それに、まだまだ台湾国内でも多大な影響力があります。

このような李登輝元総統を安倍総理が厚遇するのは当然といえば、当然です。

及び腰オバマのせいで、アジアでは中国の台頭を許してしまったところがありますが、現在オバマはすでに死に体です。次の大統領は誰がなったとしても、少なくともオバマよりは中国に対して、厳しい措置をとると思います。

オバマ大統領

それに、アメリカの国会議員のなかには中国は軍事・経済などで将来アメリカの覇権を脅かす存在として認識している封じ込め派と、中国の輸出攻勢によって被害を受けている中小企業などの支持を受けた議員(中国の人権問題を重視する人権派も含まれる)が中心となった圧力派が存在します。またアメリカ議会のなかには一定の親台湾派が存在しており、中華民国総統のアメリカ訪問を実現しようとする動きもあります。

さすがに、アメリカも中国に対しては、警戒を強めているでしょうし、今や誰がみても、中国はとんでもない状態にあるのは確かで、今の中国の体制がいつまでも続くと考えるのは間違いです。

上の記事では、「5月末から6月にかけて訪米した台湾・民主進歩党の総統選候補者、蔡英文主席は、閣僚級と会談するなどの厚遇を受けた。米国は、南シナ海問題などをめぐって緊張が高まる中国を牽制するため、『台湾カード』を切り始めている。安倍首相は、米国と平仄(ひょうそく)を合わせた動きをしている」などとしていますが、私はそうではないと思います。

平仄を合わせているのは、こと中国対策に関しては、米国のほうです。オバマが中国に対して、及び腰で煮え切らない態度をとっているときに、安倍総理は安全保障のダイヤモンドの構想にそって、中国への対抗策を他国と練ってきました。それに追随しているというのが、今のアメリカです。日本の安倍総理がいなかったら、とんでもないことになっていたかもしれません。

そうして、中国対抗策の一つの大きな節目が、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使も含む、安保法案の成立です。

この成立には、各国が大賛成しています。

まずは、米政府は、安全保障関連法案の成立に強く期待しています。オバマ政権は、戦略の重要な柱のひとつに日本を据えています。だからこそ、安保法案の成立には賛成しています。さらに、ローズ米国務次官補は15日、「日本を強く支援したい」と述べています。

米国の反応も含めて、特に太平洋に接する国々の反応はどんなものだったのか、以下にわかりやすい図を掲載させていただきます。


このように、太平洋に接する国で、日本の集団的自衛権の行使容認に対して、ほとんどの国が賛成です。反対するのは、中国と韓国くらいなものです。ロシアは意見を表明していましせん。

もし、集団的自衛権を含む安保法案が、本当に「戦争法案」というのなら、これだけの国々が賛成するわけもありません。これは、安倍総理が安全保障のダイヤモンド構想実現のため、各国を周り、その意義の説明と、各国の理解を得たからに他なりません。

結局のところ、外国がこれだけ、賛成しているのに、日本国内で「戦争法案」などして、反対するのは、結果として、中国を支援しているようなものです。

日本のマスコミは、安全保障のダイヤモンドについてほとんど報道しませんし、今日に至るまで、安倍総理がこの構想に沿って様々な努力を重ねてきたことについても、ほとんど報道しません。李登輝元総統の来日と、国会での演説もほとんど報道しませんでした。

挙句の果てに、「違憲」「戦争法案」などという報道を垂れ流すという有様です。野党も野党です。中国をめぐってこれだけ、世界が変わっているにもかかわらず、60年安保、70年安保、PKO法案のときとかわらず、ただただ反対するだけで、中国の差し迫った脅威に対する、対抗策を代案としてあげようともしません。

本当に愚かです。こういう馬鹿者どもは、結局のところ中国スパイそのものか、同列であり、いずれ国民からの信頼を本格的に失ってしまうことになります。

台湾を巡る世界の動きを察知できず、ひたすら中国に媚びるような報道を続けるマスコミ、中国を支援する行動を取り続ける政治家どもも、完璧に世界情勢からは、蚊帳の外です。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

【付記】8月25日

ジャーナリストの西村幸祐氏に、この記事を以下のようにリツイートしていただきました。


なお、このTweetにある西村氏の『 21世紀の脱亜論』の説明を以下に掲載させていただきます。

21世紀の「脱亜論」 中国・韓国との訣別(祥伝社新書)
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福澤諭吉が「脱亜論」を書いた当時、まさに日本は時代の分水嶺で、もがき苦しんでいた。その「脱亜論」の一三〇年後の意味はどこにあるのか。

実は、福澤の「脱亜論」はアジア蔑視ではなく、特別な東アジアとは別の道を歩もうという「別亜論」に過ぎなかった。つまり、現在ではますますその意味が重要になっていることを、本書は詳(つまび)らかにするであろう。

閉じた特別なアジアから、開けた普通のアジアと連携し、世界と繋がることが「21世紀の脱亜論」なのである。  

日本は特定アジアと文明圏が異なっていること。日本人は特定アジアの人々と人種的にも異なっていること。そして、日本は古代から特定アジアから離れていた時代に、平和で安定した時代を築いていた事実。そんな事実を解き明かすことが、日本の今後の進路の取り方にヒントを与える第一歩になるのである。

まさに、本書はそのヒントを満載しています。そうして、これを読んでいただければ、西村氏が指摘したように、安倍総理の素晴らしい外交のやり方を理解することができます。


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2015年8月17日月曜日

天津の大爆発は江沢民派の反撃か!? 習近平vs江沢民の仁義なき戦い、いよいよ最終局面へ―【私の論評】株価、尖閣、反日デモ、天津市大爆発など、何でも権力闘争のツールにする崩壊間近の中国はかなり危ない(゚д゚)!

天津の大爆発は江沢民派の反撃か!? 習近平vs江沢民の仁義なき戦い、いよいよ最終局面へ


中国の歴代主席の権力について、絶対権力を100とした場合の掌握力を比較したもの。2011年のニューヨークタイムズに掲載されたもの。さて、習近平の権力はどの程度か?


先々週、北京を訪れた。中国はこの夏から秋にかけて、いろんな意味で転機を迎える予感がした。今回は、特に、毎年8月上旬に開かれている中国共産党の重要会議「北戴河会議」を中心に、感じたところを述べたい。

江沢民派の一掃に勝負を賭ける習近平主席

中国共産党幹部は、8月上旬に1週間程、河北省北戴河で、いわゆる北戴河会議を開く習慣がある。この会議の特徴は、中国共産党の最高意志決定機関である党中央政治局常務委員会議(トップ7)に加えて、長老(常務委員OB)たちにも発言権があることだ。

今年は、この会議が、ここ3年近く続いてきた習近平執行部と江沢民一派の権力闘争の「決戦」の場になる予定だった。

まず、習近平執行部は、多くのことを長老に承諾させようとしていた。まず第一に、反腐敗運動は、これからも一切のタブーなく行うということだ。このことは、江沢民派筆頭の曽慶紅元国家副主席及びその一族、江沢民元主席の長男・江錦恒ら江沢民一族を、これから捕らえていくと宣言することに他ならなかった。

それから、北京、上海、天津の中央直轄都市のトップ人事を一新しようとしていた。北京市の郭金竜党委書記(北京市トップ)は、胡錦濤前主席の子飼いである。また、上海市の韓正党委書記と楊雄市長は、江沢民元総書記の子飼い。天津市は胡錦濤前主席に近い孫春蘭党委書記を、習近平主席が昨年末に追っ払った。だが、彼女の後任を巡って、習近平・江沢民・胡錦濤の「3皇帝」が三つ巴の権力闘争を繰り広げていて、決着がついていない。

そのため、伝えられるところでは、習近平主席は、まず一番手に負えない上海市のトップ二人を飛ばし、自分の一番の子飼いである栗戦書・党中央弁公庁主任(官房長官に相当)を上海市党委書記兼任とし、応勇・上海市党委副書記を臨時代理市長に据えようとした。

次に、人民解放軍の改革である。軍に関しては、江沢民派の「2大巨頭」と言われた徐才厚・元中央軍事委員会副主席を昨年、失脚させ(今年3月死亡)、もう一人の郭伯雄・元中央軍事委員会副主席は今年4月9日に拘束して取り調べを開始し、7月30日に軍事検察院への移送を発表した。

狙うは、軍の江沢民派の一掃と、自派で幹部を固めることだ。伝えられるところでは、習近平主席の意向は、中央軍事委員会の副主席を、いまの二人体制から4人体制にする。名前が挙がっているのは、張又侠総装備部長、劉源総後勤部政委、許其亮空軍上将、劉福連北京軍区政委である。いずれも現在は習近平主席に近い上将だ。国防部長(防衛相)には、劉亜洲国防大学政委をあてる。

また、現在ある7つの軍管区も、東北、西北、東南、西南の4大軍管区に整備し直し、人心及び利権の一掃を図りたい意向だという。

つまり、習近平主席は、今年の北戴河会議で、勝負を賭ける気でいたのである。
「習近平包囲網」を築いて反撃に出た江沢民派
ところが、江沢民派も同様に、勝負を賭けた。江沢民派が頼ったのは、周本順河北省党委書記だった。周本順は2003年から10年間にわたって、「江沢民の金庫番」として知られた周永康前常務委員に仕えた、バリバリの江沢民派幹部である。周本順は、河北省党委書記という立場を使って、7月22日に同省の北戴河に乗り込んだ。そして、すでに北戴河に滞在している長老たちに、「習近平包囲網」の根回しを行ったのである。

習近平主席は、その過激な反腐敗運動から、江沢民派だけでなく、胡錦濤派やその他の長老たちからも評判が悪い。そこで江沢民元主席は、今年の北戴河会議で長老たちと組んで、一気呵成に「習近平包囲網」を築いてしまおうとしたのである。

この「消息」は、すぐに中南海に伝えられた。習近平主席が激昂した様子が、見えるようだ。習近平主席と王岐山党中央紀律検査委員会主任は、直ちに周本順党委書記の解任と身柄拘束を決定。7月24日、中央紀律委監察部のホームページで、「周本順河北省党委書記の厳重な紀律法律違反により、調査を開始した」と発表。4日後の7月28日には、党中央組織部(人事部)が、周本順の解任を発表した。

習近平主席はこの頃、重大な決断をした。北戴河に中央紀律検査委員会の要因を派遣して、周本順がどんな根回し活動を行ったかを調べると同時に、今年の北戴河会議の中止を決めたのである。その代わり、引き続き中南海から、権力闘争を仕掛けることにした。

習近平主席は7月30日、臨時の中央政治局会議を招集。7月20日に定例の中央政治局会議が開かれているので、これは極めて異例と言えた。

習近平主席はそこで、自らが組長となって、党中央統一戦線工作指導小組を設立すると発表。そこで中央の重大な政策決定や方針研究を行うとした。

なぜ習近平主席は、次々に「小組」(小グループ)を作るのか。それは、党中央政治局常務委員会が信用できないからだろう。

現在のトップ7で習近平主席が本当に信頼しているのは、王岐山だけである。序列2位の李克強首相とはいまは対立していないが、胡錦濤派筆頭であることに変わりはない。3位の張徳江、5位の劉雲山、7位の張高麗は江沢民派であり、4位の兪正声は日和見主義者だ。つまり、7人で採決をすれば、習近平原案は否決されてしまうリスクがあるのだ。そのため、重要事項は常務委員会議ではなく、「小組」で決めてしまおうという意図である。

この時の統一戦線指導小組設立の目的は、打倒江沢民一派に他ならない。現役の政治局員たちに、「踏み絵」を踏ませたのである。
「『人が去れば茶は冷める』は自然の規律である」
8月5日、官製メディアの『財経国家週刊』は、「待つ必要はない、北戴河に会議はない」と題した意味深な記事を流した。この記事は、毛沢東時代以降の北戴河会議の歴史を振り返った後で、次のように結んだ。

〈 つい先日の7月20日と30日、党中央政治局は2回も会議を開いた。そこで第13次5ヵ年計画や中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議の方針を決め、経済対策を決め、「大虎」(大物の腐敗分子)の退治を決めた。喫緊の重要事項はすべて話し終わっているのだ。それをこれから数日、十日くらいのうちに、北戴河へ移動して再度話すことに、意味があるのか? 必要があるのか? 可能なのか?

もし信じないなら、微信(WeChat)で「北戴河会議」と検索してみるがいい。噂の「予言話」のようなものは、ほとんど削除されている。これが何を意味するかは、一目瞭然だろう。 〉


続いて8月10日、党中央機関紙『人民日報』が、決定的な社説を出した。タイトルは、「『人走茶涼』は、新たな政治の状態となるべきだ」。「人走茶涼」とは、「人が走り去れば残された茶は冷める」ということで、「その人が然るべき地位でなくなったら、周囲の者は去って行く」という意味に使われる。

〈 通常、「人走茶涼」という言葉は、否定的な意味で使われる。人情味のある交流も冷めてしまうということだ。だがよく考えれば、「人走茶涼」は自然な現象だ。熱い茶がいつまでも熱いわけはなく、自然に冷めていく。茶を啜っていた人が去れば、湯をつぎ足す必要があるだろうか?

こと政治について考えてみれば、多くの指導者幹部たちが「人走茶涼でいいのか」と言って、権力のしっぽを放さない。もとの部署の政策決定に口出ししたりして、権力の「余熱」を発揮する。お茶は自然に冷めるものなのに、それを打ち破って加熱し、「人は去ったのに茶は依然として熱い」状態を作り、権力の「アフターサービス」を得ようとする。このたび倒された「大虎」周永康は、四川省を離れた後も、直接間接に四川省を支配した。それによって四川省の経済発展や政治の状態に厳重な影響をもたらした。

「人が去れば茶は冷める」は自然の規律であり、新たな政治の状態だ。党は第18回大会以降、「幹部の清正、政府の清廉、政治の清明」の政治環境を作り出してきた。つまり「人が去れば茶は冷める」の状態を縮影させてきたのであり、全体的に効果を挙げてきた。指導者幹部はその地位にいる時に責任をもって職務にあたるが、いったん退職したら、人工的に加熱する必要はないのだ。その職務を引き継いだ者が、さらに想像力を駆使して、社会を発展させてゆけばよいのだ。

その意味で、「人が去れば茶は冷める」政治状態を確立してゆくべきである。これは一朝一夕にできることではない。だが、反腐敗運動をさらに大きくしてゆき、この障害をなくしていかねばならない。

まさに「人が去れば茶は冷める」状態が待たれているのだ。老同志を尊重し、老同志の良策は吸収しつつも、政治の決定の原則とボトムラインは堅持せねばならない。そうすることによって初めて、清明な政治状態が確立できるのだ。 〉

天津の爆発事故は単なる事故ではない

天津の大爆発事故

これほど強烈な『人民日報』の社説は、久しぶりに見た。翌日から、多くのメディアがこの社説を引用し、賛意を表明し始めた。もちろん習近平主席が、メディアを統轄する劉雲山常務委員を突き動かしてそうさせているのだろう。つまり習近平主席は、「江沢民潰し」に本気になっているということだ。

これに対して、江沢民一派はどう対抗するのか。「窮鼠猫を噛むではないが、絶対にこのままでは済まない」というのが、北京で聞いた大方の見方だった。

そんな時、8月12日の深夜に、天津の濱海新区で大爆発事故が起こった。速報では44人死亡、521人重軽傷などと報じられたが、とにかく未曾有の大事故である。

なぜこの時期に、天津で大事故が起こったのか? この事故によって打撃を被るのは誰か?

習近平主席は、来月9月3日に、抗日戦争戦勝70周年記念軍事パレードを、北京で挙行しようとしている。これは習近平主席にとって、今年最大のビッグイベントである。

この期間、北京の首都機能の一部は天津に代替される。例えば、国内外のあらゆる民間航空機は北京首都国際空港を使用禁止となり、天津空港発着となる。

また習近平主席はこの軍事パレードを契機として、北京市、天津市、河北省の一体化を進めようとしている。その一環として、習近平主席の肝煎りで天津市は、上海市に続く自由貿易区に指定された。

つまり、今回の天津市の事故で赤っ恥をかいたのは、習近平主席なのである。私には、とても単なる事故には思えない。

近藤大介

【私の論評】株価、尖閣、反日デモ、天津市大爆発など、何でも権力闘争のツールにする崩壊間近の中国はかなり危ない(゚д゚)!

上の記事、非常に重要な内容だと思いましたので、全文引用させていただきました。近藤大介氏が主張するように、今回の天津大爆発事故は、確かに中国内の権力闘争の一環であったということは、いかにもありそうな話です。

これについては、現中国が分裂などして、全く体制が変われば、明るみに出るかもしれません。もし、中国がこのまま、体制が変わらず、そのまま続いたとすれば、20年〜30年たったときに明るみ出るかもしれません。

いずれにせよ、そんなに簡単に表に出てくるものではありません。そのため、あくまでも憶測ということになるのでしょうが、それにしても中国ならではの、いかにもありそうな話です。

そもそも、中国では内部の権力闘争に他国では考えられないような、ありとあらゆる手段を用います。それに関しては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンク以下に掲載します。
上海株大暴落 仕掛けた「犯人」は腐敗取締反撃の江沢民一派―【私の論評】株価も権力闘争のツールに過ぎない中国!日本そのツールにされる可能性が(゚д゚)!

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、上海株式市場の株暴落が、権力闘争の一環として行われていた可能性について掲載しました。以下にその部分のみ引用します。
 中国政府の金融捜査当局は、先物取引での悪意のある空売りが急落を招いたとみて、公安省は上海のある貿易会社の捜査に着手した。 
 そこで意外な事実が判明する。その貿易会社に大量の資金を与えて空売りを仕掛けさせたのが、「習近平の反腐敗キャンペーンによる逮捕を恐れて米国に逃走した上海閥重鎮の娘婿だった」(北京の共産党幹部筋)のだ。 
 その重鎮の名は戴相龍。中国人民銀行(中国の中央銀行)総裁や天津市長などを務めた党の大幹部で、2013年に政界引退した70歳の長老指導者だ。
戴相龍
 戴は今年初め、習近平指導部が主導する反腐敗闘争の網にかかり、「『重大な規律違反』の容疑で身柄を拘束、取り調べを受けており、その事実が公表されるのは時間の問題」と華字ニュースサイト「博訊(ボシュン)」などは伝えている。 
 その戴の親族が“仕手戦”で株価を暴落させ、習政権を窮地に追い込んだ--つまり今回の株価暴落は権力闘争であり、取り締まりの意趣返しである可能性が高いというのだ。
さて、ここでも天津市の名前がでてきます。 戴相龍は上の記事で赤字で強調したように、天津市長も務めたことがある、上海閥重鎮です。この娘婿が、7月の上海株式市場の暴落を画策したということです。

そうして、今回の天津市の大爆発事故です。本当にきな臭いです。株の暴落も、天津市の大爆発事故も権力闘争の一環である可能性が高いてす。

さてこの記事から、株価ですら権力闘争のツールである、中国について記した部分を以下にコピペさせていただきます。
中国では株価などいくらでも、操作できるはずなので、これからも株価の急激な下落があった場合など、このような空売り等があると見るべきなのかもしれません。

というより、中国では株価ですら、権力闘争のツールであるということです。これからも、権力闘争のツールとして、習近平は株価維持策を練って、なんとかそれらしいところで、維持しようと躍起になっていると思います。そうして、実際、ある範囲内では維持されると思います。

おそらく、中国では株価が際限なくどこまでも落ちるような事態になれば、それは、中国そのものが崩壊することの前兆であると思います。
しかし、日本人でこんな市場に投資するのは、本当に馬鹿ですね。そんな輩共は、中国の本質を見抜けないただの、拝金主義者に過ぎないと思います。 
さて、いずれ習近平は株価をなんとか維持し、さらに今回のようなことを引き起こした連中も含めて、徹底的に腐敗を追求してくことと思います。
さて、この記事では、習近平自身が尖閣問題や、反日デモなどをかつて、権力闘争のツールとして使っていたことも掲載しました。その部分を以下に引用します。

"
【中国の本性】習近平氏が反日デモを指揮? 尖閣巡り「習VS胡」激化―【私の論評】犯罪者が国家元首になる国家とはいかに?!!
2012年、主席になる直前の習近平2週間
ほど姿をくらまし、その後姿を現した。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では中国国家主席に就任する前2012年10月の習近平が突如として、姿をくらまして、その後なにごともなかったかのように現れた件について掲載しています。

そうして、この期間に習近平は、権力闘争の一環として、当時はまだ苛烈だった、反日デモと、尖閣での示威行動を指揮していたらしいという驚き内容を掲載しました。

以下に、一部引用します。
詳細は、元の記事をご覧いただくものとして。上記の記事の要点は、一番最後の、「習近平氏は、反日デモと尖閣強奪作戦を指揮していたようなのだ」。というところです。これに関しては、私は、多いにありそうなことだと思います。 
以前からこのブログには、反日デモは「官製デモ」であり、中国共産党内部の内部抗争であり、国家によるものということを掲載してきました。そうして、熾烈な派閥抗争であることも掲載してきました。どんな形であれ、習近平が最初から絡んでいることは、明々白々であると考えていました。 
反日デモの期間に丁度、姿をくらましていたので、場合によっては、反習派に捕まって拉致監禁されていたのかと思っていましたが、その後何もなかったかのように姿をあらわしていました。この行方不明には、中国国内でも、日本国内でも様々な憶測が飛び交っていましたが、未だに決めてになる情報・報道はありません。であれば、上の記事の黄氏のように考えるのが妥当です。 
だから、上の記事を読んでも、「やっぱり」ということで少しも驚きませんでした。私としては、とにかく、今回の反日デモおよび尖閣上陸は、自分たちの覇権の強さをみせつけるためと、人民の目をそらせるためなどの複合的な理由から、どちらが、仕掛けたのはかはわかりませんが、間違いなく、習近平も絡んだ、熾烈な派閥抗争が背景にあることは、最初からわかっていました。

このように、中国は以前から、国内の権力闘争のため、あらゆる手段を用いるというのが当たり前です。最近尖閣問題に関しては、中国公船の領海侵犯や、航空機の領空侵犯は当たり前のようになってしまいました。今のままでは、中国国内ではほとんど影響がありません。

となると、尖閣付近で新たな動きを画策して、自分たちの力をみせつけたり、あるいは、相手を窮地に陥れるなどのことは多いにありえることです。

尖閣で、習近平の反対派が、戦火を交えてたり、さらに過激な行動をして、それを習近平のせいにして、窮地に陥れるなどのことも十分にかんがられます。その逆に、習近平が反対派に対して、何かの手段で日本を巻き込んで、陥れるというということも考えれます。


"

こういうことを踏まえてみれば、結局のところ、習近平も権力闘争の一環として、腐敗キャン撲滅ペーンを実施しているということです。

まさしく、中国では、株価、大爆発、尖閣問題、反日デモなど何か大きな問題があると、それはほとんどが権力闘争の一環であるということです。

習近平の腐敗撲滅キャンペーンは権力闘争の一環である

本日も、天津市での消火活動に関して、どうも理解できないことが報道されていました。最初にかけつけた消防隊が、車が燃えているのを発見して、水をかけたところ爆発したとされています。そうして、通常の消火活動において、特に化学物質などの消化の場合には、砂をかけるのが普通のことらしいですが、この場合は水をかけたということで、それによって化学物質が爆発したかもしれないということが言われていました。

それにしても、もし天津市の大爆発が、権力闘争の一環であったとしたら、中国という国の恐ろしさを改めて、強く認識すべきすべきであるといえると思います。

昨日も、天津の爆発の話題をこのブログに掲載しました。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、かつてのソビエト連邦がチェルノブイリ原発事故の数年後に崩壊したことをあげて、今回の天津市の爆発事故は、中国にとってのチェルノブイリになる可能性を指摘し、天津爆発は、中国崩壊の予兆であるかもしれないことを掲載しました。

中国は、日本国などとは比較できないほどに異質な組織です。まともな国であるとは、とてもじゃないですが、言えません。中国共産党の幹部は習近平も含めて、全員をマフィアの親分ととらえるのが、まともなとらえかただと思います。政治家や官僚などと捉えると本質を見失います。

ドラマ 『ザ・ソプラノ 哀愁のマフィア』より
中国の崩壊が迫っている現状では、中国国内はもとより、海外でも何がおこるかわかりません。今回の天津爆破のようなことが、世界各地で起こるなどということもありえます。考えようによっては、中国はISISよりも始末に悪いかもしれません。何でも、権力闘争の道具にしてしまう中国のマフィアの親分たちは、崩壊直前には何をやらかすかわかったものではありません。

何やら、今国会では、憲法解釈による集団的自衛権を含む安保法制の審議が、とろとろと行われていますが、隣に何でも権力闘争のツールにする中国という国があるわけですから、これを抑止するための、戦争抑止法案を「戦争法案」などと呼ぶことはやめにして、一日も早く成立させてほしいものです。

野党は、低次元の国会論戦で認知症めいた戯れ言を言うのはやめて、反対なら反対で、きちんと対案を出して、戦争抑止の具体的な方法を提示していただきたいものです。中国を相手に、寝言を並べてみても何も解決しないということを自覚すべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

【中国・天津倉庫爆発】世界4位の貿易港が機能不全…中国経済にダメージ なお爆発音も―【私の論評】今回の天津大爆発事故の原因は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・政治体制に根ざすものだ!


上海株大暴落 仕掛けた「犯人」は腐敗取締反撃の江沢民一派―【私の論評】株価も権力闘争のツールに過ぎない中国!日本そのツールにされる可能性が(゚д゚)!

【関連図書】

今回の天津大爆発事故の原因は、腐敗撲滅キャンペーンを断固として継続する習近平対して、江沢民派が、おこした可能性も指摘されています。権力闘争のためなら、何でもやってしまう、中国。この大爆発は、その結果として生じたものです。中国の遅れた社会と政治体制が何をもたらすのか、それを知ることができる書籍を以下にチョイスさせていただきました。

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2015年8月16日日曜日

【中国・天津倉庫爆発】世界4位の貿易港が機能不全…中国経済にダメージ なお爆発音も―【私の論評】今回の天津大爆発事故の原因は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・政治体制に根ざすものだ!


天津市内の惨状

中国天津市で発生した大規模爆発で、市当局は15日、有害な化学物質が流出した恐れがあるとして、付近住民や消防や警察などの救援部隊に爆発現場の半径3キロ以内から緊急に退避するよう命じた。当局の発表などによると、同日までに確認された死者は104人にのぼる。近接する天津港は世界4位の貨物取扱量を誇るが、爆発の影響で機能不全の状態に陥るなど、景気減速が続く中国経済にもマイナスの影響を与えかねない情勢となってきた。

15日の中国国営新華社通信などによると、現場周辺では基準を大きく超える有害なシアン化合物などが検出された。避難所となっている現場付近の小学校からは同日、住民らがマスクを着用して避難を始めた。付近住民の間には二次災害への不安が広がっている。

当局は14日の段階で火災はほぼ鎮火したと発表したが、15日も複数回の爆発音が聞こえ、黒煙が立ち上った。防護服にマスクを着用した軍の化学防護部隊が入り、現場に残留する有害物質を処理している。

原因究明や事故責任の所在は不明確なままで、インターネット上では、爆発を起こした企業が中国共産党の元幹部や天津市当局と密接な関係にあったとの情報が流れた。当局が危険物の管理などを十分に監督しなかった恐れがある。また、新疆ウイグル自治区の独立派が爆破に関与したなどとする未確認情報まで飛び交っている。

この記事の続きはこちらから!

【私の論評】今回の天津大爆発事故の原因は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同じく遅れた社会・政治体制に根ざすものだ!

この大事故、世界的にも類を見ないような大きなものであり、政府の発表では死者が104人としていますが、それどころではないと思います。これから、どんどん増えていくものと思います。中国政府の詳しい発表がないのです、詳しくはわかりませんが、大都市の港湾における事故としては、過去最大もしくは、近年稀に見る大爆発事故ではないかと思います。

この大事故は、後で振り返ってみると、歴史の転換点といえわれるかもしれません。チェルノブイリ原発事故は、ソ連崩壊のきっかけにもなりましたが、今回の天津の大爆発事故は、中国崩壊のきっかけになるかもしれません。

この機会に、ソ連崩壊を振り返ってみたいと思います。

1986年の4月、ゴルバチョフ政権がスタートした一年後にチェルノブイリ原発事故がおこりました。世界の原発史上初の大事故であり、ゴルバチョフ政権にとって大変な打撃であったわけです。この事故では、事故で直接的に失われた人命、経済的な損失だけではなく、ソ連の政治的権威が低下し、ソ連の技術、社会組織にたいする信頼感がいっきょにくずれていきました。

ソ連最後の書記長となったゴルバチョフ氏

かつて帝政ロシアが追い詰められ、農奴解放のような社会改革をやらざるをえなくなりましたが、その直接のきっかけはクリミア戦争に負けたことでした。敗戦の原因は軍隊制度が遅れていることでした。その遅れは、結局のところ農村制度(=農奴制)が遅れていることでもありましたた。農奴解放によって、遅れた農村制度を改革しない限り、近代的な軍隊制度もできなかったのです。

それと同じようなことが、チェルノブイリ原発事故についてもいえます。ゴルバチョフは、これを国家的な敗北だと認識しました。この原発事故は、クリミア戦争の敗北と同様に、ソ連の技術体制と技術的な遅れを温存していた遅れた社会体制、政治体制に根ざしてたものでした。

チェルノブイリの事故を最初に知ったのはスウェーデンの観測所でした、ゴルバチョフはずっと後になって知らされました。そして、一番最後に知らされたのはチェルノブイリの周辺の住民でした。そこでゴルバチョフは、大改革をやらなければならないとして、ペレストロイカを提唱したのですが、すでに手遅れだったのです。

今回の天津の大爆発事故は、チェルノブイリ原発事故と比較すれば、その規模は小さなものかもしれません。しかし、事故の背景としては、非常に似ているところがあります。

結局今回の天津の大爆発事故も、中国の遅れた社会体制、政治体制に根ざしてたものだと考えられます。

さて、ここでソ連崩壊の原因について簡単に振り返っておきます。

その原因は主に三つあったと考えられます。一つは経済的要因、二つ目は政治的要因、三つ目は民族的要因です。

一つ目の経済的要因に関しては、まずは過去の共産主義・社会主義体制の国々にありがちであった、極度に低い労働生産性があげられます。これは、あまり説明の必要はないと思われますので、ここで詳しくは説明しません。

その次に、計画経済の非効率というものがありました。これから成長する産業、これから育てるべき産業など、民間企業ですら予測がおうおうに外れるのに、設計主任(ソ連の計画経済を主導する官僚のこと)には到底無理でした。

かつての社会主義国では、優秀な官僚を設計主任にして、計画経済を実施すれば、経済は良くなるとの信念に基づき、計画経済が運用されていたのですが、ご存知のようにこの試みはことごとく失敗しました。

これについては、このブログでも、かつての携帯電話の雄であった、ノキアを例にとって述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”―【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、ノキアは実は、アップルに先駆けてiPhoneやiPadのプロトタイプのようなものを試作していたのですが、市場に投入する時期を間違え、結局のアップルに遅れをとってしまいました。

民間企業ですら、このような間違いをするのですから、ソ連の設計主任がいくら頑張っても到底無理です。というよりも、これから発展する産業など誰にも予測がつかず、民間企業がしのぎを削って、競争し、その時々の環境に最も適合した企業が次世代の産業を創造するというのが、現実です。

結局は、ソ連も計画経済で大失敗しました。ソ連末期にソ連のことで、驚いたことがひとつありました。それは、当時のソ連のアイロンです。普通の先進国なら、アイロン一つとっても、競争が激しいため、様々なタイプのデザインや機能が盛り込まれ、いくつもの種類が販売されているのが普通でしたが、当時のソ連では何と一種類のアイロンが販売されているだけであって、しかもそのデザインは30年間変わっていなかったそうです。

ノキアは、IPhone

このアイロンの事例でもわかるように、低い労働生産性と、計画経済のもと、すべては国家が優先であり、国民生活の向上は後回しにされました。

二つ目の政治的要因に関しては、様々なことがあるので、ここでは唯一最大のものをあげておきましょう。

労働生産性の低さ、計画経済の度重なる失敗によって、ソ連の経済は低迷していたのですが、それでも当時のソ連は強大な軍事力を維持し、宇宙開発を推進しました。そのため、これらに相当の投資が必要でした。しかし、これらを実行したからといって、経済的には失うもが大きいだけで、何ら寄与するところありませんでした。

にもかかわらず、なぜそんなことをしたかといえば、当時のソ連の幹部による政治的判断であったことは言うまでもありません。今から思えば、計画経済など捨て、産業の育成をはかれば良かったと思いますが、当時のソ連の高級官僚には及びもつかず、政治的判断で、巨万の富が軍事力と、宇宙開発に注がれたのです。

当時の強大なソ連赤軍

最後の民族的要因としては、ソ連邦が世界に例をみない連邦国家であり、多民族国家でったということがあります。その多民族国家――すくなくともいくつかの大きな民族集団を単位に形成していた連邦国家――が、ソ連崩壊にともない連邦国家としての存在をやめ、さらに社会主義を捨てたという事実を忘れてはなりません。

ソ連時代には、連邦の組織の要職のほとんどを占めていたのは、ロシア系です。これが、あの広大な領土を占める、ソビエト連邦のあらゆる組織の多くを占めていたのですから、他民族から反感をかってしまいました。

ロシア人の女の子たち
ゴルバチョフが、主導したソ連末期のペレストロイカ(ロシア語で改革という意味)は、もともと経済の改革からはじまったのですが、打ち出した政策がつぎつぎと裏目にでて、地方ほどツケがまわってくることになってしまいました。

これに、何十年間の蓄積された中央へのつもるうらみと重なり、国民の不満は爆発しました。しかも、ペレストロイカ失敗による、国民生活の後退というのは国民にとってがまんすることができませんでした。

当時は、特に地方では、日に日に生活がわるくなっていきました。これはには、当時の庶民は、絶望感苛まされねことになりました。さらにソ連の国民の10人1人はかつての戦争で亡くなっていました。また5人に1人は多かれ、少なかれ、大粛清の経験をし、あるいは身内・縁者にそのために犠牲になった人がいたという状況でした。この歴史を考えてみると、選択肢はソ連からの、分離独立及び脱社会主義ということになって、民衆の支持を最終的に失ってしまったてのです。


さて長々とソ連の崩壊の原因について、述べてきましたが、結局何が言いたかったかというと、ソ連の末期と現在の中国は非常に良く似た常態になっているということです。

確かに中国はもう随分前から、実質上共産主義からは脱して、国家資本主義に移行しています。ソ連とは異なり、いっときはかなりの経済成長をみましたが、最近では不動産と株のバブルが崩壊して、経済はふるわず、生産性もさほど高くはなくなりました。これについては、最近では中国の製造業の生産性とアメリカの製造業の生産性が大体横並びになったことをこのブログに掲載したばかりです。

政治的には、中国はあいかわらず、政治的判断で、軍備を強化していますし、未だに民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていません。

民族問題も、チベット、ウイグル、内モンゴル自治区で噴出しています。これ以外の、他の省でも民族問題があります。

先にも述べたように、今回天津の大爆発は、チェルノブイリよりは規模が小さいかもしれませんが、最近では毎年暴動が年平均で10万件をこえるともいわれている現状では、旧ソ連のように崩壊しないほうがおかしいとさえいえます。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年8月15日土曜日

【全国戦没者追悼式】「深い悲しみを新たに」 天皇陛下お言葉全文―【私の論評】式典の後で、映画『陸軍』を視聴し、戦争の悲惨さが胸迫り「深い悲しみ」を新たにした!


全国戦没者追悼式に出席された天皇、皇后両陛下
=15日、東京都千代田区の日本武道館
「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来既に七十年、戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません。

ここに過去を顧み、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

【私の論評】式典の後で、映画『陸軍』を視聴し、戦争の悲惨さが胸迫り「深い悲しみ」を新たにした!

全国戦没者追悼式で黙とうされる天皇、皇后両陛下=15日正午、東京・日本武道館
70回目となる終戦の日を迎えた15日、政府主催の全国戦没者追悼式が東京都千代田区の日本武道館で開かれた。追悼式には、天皇、皇后両陛下ご臨席のもと、安倍晋三首相や戦没者遺族5327人が参列。戦争の犠牲となった軍人・軍属約230万人、一般市民約80万人の計約310万人の冥福を祈り、平和への誓いを新たにしました。

安倍首相は式辞で「(平和と繁栄は)皆様の尊い犠牲の上に、その上にのみ、あり得たものだということを、私たちは片時も忘れません」と戦没者に哀悼の意を示し、「歴史を直視して、常に謙抑(けんよく)を忘れません」と誓いました。

黙祷に先立って挨拶する安倍晋三首相=15日、東京都千代田区の日本武道館

その後、正午の時報を合図に黙祷(もくとう)がささげられ、天皇陛下がこのブログ冒頭に掲載したお言葉を述べられました。天皇陛下がお言葉の中で「さきの大戦に対する深い反省」との文言を盛り込んだのは初めてのことです。

戦争の記憶を次世代に継承することを目的に、戦没者のひ孫世代に当たる18歳未満の遺族6人が、青少年代表として初めて献花。参列予定遺族は戦後生まれが1109人と、初めて参列予定遺族全体の2割を超えました。

終戦後七十年の本日、私は上記に掲載したニュースを視聴した後で、huluの映画を視聴しました。本日は、終戦の日ということもあって、それにちなんだ映画などがありました。いろいろある中で私は「陸軍」という映画を視聴しました。

『陸軍』(りくぐん)は1944年(昭和19年)公開の日本映画です。木下惠介監督の第4作。木下が戦前に撮った4本中、最後の作品です。

木下恵介

この映画は、戦時下(大東亜戦争時)に、陸軍省の依頼で製作されたものです。作品の冒頭に「陸軍省後援 情報局國民映画」という表記があります。大東亜戦争の開戦日からほぼ三周年にあたる日に公開されたものです。

この映画huluで視聴できますが、YouTubeでも無料で視聴することができます。以下にその動画を掲載します。


朝日新聞に連載された火野葦平の小説を原作に、幕末から日清・日露の両戦争を経て満州事変に至る60年あまりを、ある家族の三代にわたる姿を通して描いた作品です。

時期的に考えても、当然、国策に沿った戦意高揚・銃後の意識を鼓舞するという目的が、映画製作を依頼した側にはあったはずです。ストーリー展開もキャラクター設定も、そういう意図から外れてはいません。

しかし、細部の描写はときどきその本来の目的を逸脱しがちであり、最後のシークエンスで大きく違う方向へと展開します。その場面を見る限り、この作品を単純に国策映画と呼ぶことは困難です。

結果として、木下は情報局から「にらまれ(当人談)」終戦時まで仕事が出来なくなったと言われています。このために木下は松竹に辞表を提出しています。その前後の出来事を基に作られた映画『はじまりのみち』が原恵一監督で製作され、2013年6月1日に公開されました。

映画『陸軍』のオープニング

最後のシークエンスでの、田中絹代を追い続ける撮影は、 日本映画史上でも有名なものです。

このシークエンス、出征する息子の出征の行進に、田中絹代が扮する母親が、最初は見送りしないと決めていたにもかかわらず、行進のラッパの音が聴こえると、矢も盾もたまらず、家から飛び出し、通りまで出て、息子を送るシーンが延々と映されています。

この母親役の田中絹代の表情が刻々と変化し、出征する息子を思う母親の揺れ動く気持ちが見事に表現されていました。この描写は当時としては、圧巻ではなかったかと思います。
息子を思う母親の気持ちが伝わる圧巻のシーン1 中央が田中絹代
そうして、今からふりかえってみると、戦争というものの、理不尽さ、悲惨さを、直截にではありませんが、じわじわとにじみ出るように訴えています。終戦の日の前後には、毎年様々な戦争の記録や映画などが報道されたり、放映されたりしますが、私にとっては、こと今年はこの映画が最も胸に迫るものがありました。

下手に悲惨な状況を説明したり、頻繁にそのようなシーンを出したり、軍隊や憲兵隊の理不尽や、爆撃の理不尽、果ては定番の意地悪な国防婦人会のご婦人のイヤミな会話や、意地悪、いじめなど出すよりも、この映画のこのシーンのほうが、はるかに強く平和を訴えます。


息子を思う母親の気持ちが伝わる圧巻のシーン2 中央が田中絹代

この映画は、このシーンをもって、安っぽい反戦映画・国策映画・プロパガンダ映画の域を遥かに凌駕して、人類に対する普遍的な平和を訴える素晴らしい映画になったと思います。この映画は、時代背景や当時の日本の生活や習慣など説明した上で、海外の人々に視聴してもらえば、今でもかなりの反響があるものと思います。
残念ながらというか、当然ながら中国・韓国・北朝鮮などには、平和を主題としたものでは、この映画を超えるようなものは一つとして見当たりません。あるとすれば、安っぽい反日プロパガンダ映画ばかりです。

この映画は、元々は大東亜戦争のまっただ中の時に作成された、国策映画であったことは本当に驚くべきことです。

この映画は、陸軍省はどう思ったかはわかりませんが、時代背景などを考えると、本当に素晴らしい作品だったと思います。多くの国民の心情に訴え、共感を得たものと思います。この映画が単純な国策映画であれば、現在でもhulu で放映されたり、YouTubeに掲載されるようなこともなく、時代の流れにおしながされて、消滅したと思います。

上記にあるように、木下は情報局から「にらまれ(当人談)」終戦時まで仕事が出来なくなったとされていますが、それにしても放映はできたわけです。

このこと一つとっても、日本国内の戦中・戦前が暗黒時代であったという認識は間違いです。軍が何でもできて、それこそ、東条英機の鶴の一声で軍が何でも自由にできたなどというのは妄想に過ぎません。もし、そうであれば、そもそも上映禁止にできたはずです。

この時代は戦争による悲惨さはあったにしても、軍部が専横した暗黒時代であったなどと、まことしやかに語られることがあります。しかし、それは間違いです。実際、東条英機閣下が、戦争遂行のためには金が必要であるため、度々大蔵省の役人を揉み手で接待をしていたという逸話が残っているくらいです。また閣下が、多数のユダヤ人を救ったことは、このブログに掲載したことがあります。軍の専横があればこんな逸話は残らなかったと思います。

また、海軍が、ゼロ戦を各務原の空港に運ぶために、道路を拡幅しようとしたら、地域住民に訴えられ、裁判になり負けてしまったため、ゼロ戦を分解して、牛車に載せて運んだという記録もあります。これは、このブログにも以前掲載したことがあります。

三菱資料館に残る、ゼロ戦を飛行場まで牛車で運んだことを示す図

私たちは、もう一度正しく戦前・戦中の歴史を見直すべきと思います。その上で、天皇陛下が述べられたように、「深い悲しみをともにし、さきの大戦に対する深い反省と共に、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心からなる追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈る」べきと思います。

戦争で亡くなられた英霊の方々は、『陸軍』という映画の最後のシーケンスの部分で、田中絹代が見せた表情のように、千々に乱れておられると思います。そうして、日本の平和が続くことを心から願っておられると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【西村幸祐氏ツイート】Hideki Tojo and Jewish refugees ユダヤ人難民を救った知られざる日本の人道主義者たち―【私の論評】東條英機閣下はユダヤ人から「ユダヤ人を救った英雄」と言われていることを知らない自虐的歴史観にまみれた日本人は、もう一度歴史を真摯に見なおせ(゚д゚)!







【関連図書】

終戦の日に「悲しみを新たに」するにしても、戦中・戦前の日本の真の姿を知った上で、悲しみを新たにして、深い反省をするべきです。年配の方々は、記憶をたどれば、それを思い出すことができますが、今では高年の人であっても、その記憶がない人が増えています。この時期の歴史を補うための一次資料として、以下の三冊の書籍をチョイスさせていただきました。


ひと目でわかる「戦前日本」の真実 1936-1945
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米、反イスラエル学生デモ拡大 バイデン氏、再選へ影響懸念―【私の論評】日本への警鐘:アイデンティティ政治とビバリーヒルズ左翼の台頭に見る危機

  米、反イスラエル学生デモ拡大 バイデン氏、再選へ影響懸念 まとめ 全米の大学で、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃を非難するデモが拡大している。 デモはニューヨークのコロンビア大から始まり、ワシントンにも波及しており、バイデン大統領の支持基盤である若者の離反が懸念される...