2016年1月29日金曜日

安倍政権に危機到来!甘利大臣辞任で財務省・増税派の逆襲がはじまる―【私の論評】多くの政治家、マスコミの認識が及ばぬ成層圏で官邸VS財務省の熾烈な戦いは続く(゚д゚)!

安倍政権に危機到来!甘利大臣辞任で財務省・増税派の逆襲がはじまる


野党は喜んでいる場合か

甘利明経済財政相が1月28日、献金疑惑について記者会見し、金銭授受を認めるとともに閣僚を辞任した。安倍晋三首相は後任に石原伸晃元環境相を任命したが、安倍政権にとって甘利氏の辞任が打撃であるのは間違いない。政権はどこへ向かうのか。献金疑惑そのものについてはマスコミが報じ、これから司直の捜査もあるだろうから、立ち入らない。ここでは甘利氏の閣僚辞任と石原氏への交代劇が政権に何をもたらすか、を考えてみる。

少なくともポイントは3つある。まず、安倍政権は環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉経過と意義を国民に説明するキーパーソンを失った。甘利氏がTPP交渉の最前線に立って、米国をはじめ各国と厳しい交渉をこなしてきたのは、だれもが知っているとおりだ。TPPは12ヵ国の多国間交渉であるだけでなく、21の交渉分野に分かれている。

それぞれの分野が複雑なうえ、交渉相手と分野の組み合わせも取引の一部になっている。強力な事務方が支えてきたのは当然だが、全容と経緯を知る政治家となると甘利氏をおいて他にない。いまの通常国会には、交渉結果を踏まえた関連法改正案が何本も提出されている。与野党は甘利氏にどうしてこういう結末になったのか、全体像を踏まえたうえで個別案件についても国会で細かく事情を質す役割を担っていた

ところが民主党をはじめ、野党は献金疑惑が表面化すると、TPP質疑など忘れたかのように「閣僚のクビをとる絶好のチャンス」と腕まくりするばかりだった。甘利氏が大方の予想に反して自ら辞任を表明したのだから、野党は「戦う前に完全勝利した」と気勢が上がっているかもしれない。それを本当に野党の勝利と呼べるのだろうか。

■安倍首相が甘利氏を必要とした理由

私は、むしろ甘利氏にはしばらく続投していただいて、与野党の質問に応える役割を果たしたほうが良かったのではないか、とさえ思う。代わりはいないのだ。献金疑惑の責任を負わなければならないのは当然だが、辞めるのは質疑が一段落した後でも遅くはなかった。永田町は権力闘争が本質だから、野党にとってはTPPをめぐる政策論争より、閣僚のクビをとるほうがはるかに重要という理屈も分からなくはない。

とはいえ、TPPが国民生活に密接に関わるのはだれもが認めているとおりだ。TPPはこれまでのどの通商協定よりも日本に与える影響が大きいと言っても過言ではない。そんな重要案件の全体像と細部のすべてを知る人物が、国会で国民に説明する機会が失われていいのだろうか。野党は献金疑惑の追及もさることながら、辞任した甘利氏にTPP交渉の実態について質す機会を考えるべきだ。それは与党にとっても必要だろう。国民が甘利氏に聞きたいことでもあるはずだ。次に、甘利氏が安倍政権内で担ってきた役割である。

氏はTPP交渉担当だけでなく、経済再生相としてアベノミクスを推進する役割も果たしてきた。ここで重要なのは、アベノミクスが霞が関や日銀から生まれた政策ではなく、安倍首相個人の政策的確信から生まれたパッケージである点だ。そうであるからこそ、アベノミクスを強力に推進しようとすると、いきおい財務省をはじめとする霞が関や日銀との軋轢が避けられない。もっとも分かりやすいのは増税問題だ。

■「財務省派」が勢いを増す

財務省は常に増税に賛成し、減税に反対する。だが、デフレを脱却して景気を良くするには、当面はできる限り増税を避けて減税を進める必要がある。安倍政権が2014年11月に消費税10%への増税先送りを決断する一方、法人税減税を推進してきたのは、それが理由だ。甘利氏は財務省の圧力が強まった局面では、常に首相官邸サイドに立って両者の調整役をはたしてきた。

甘利氏の辞任によって、安倍政権はそういう調整役を失った。政策面だけではない。政治的にも、甘利氏は第2次安倍政権誕生へのジャンプ台になる2012年の自民党総裁選で安倍選対の責任者を務めた、首相の盟友である。そんな甘利氏が表舞台から消えるのは、安倍首相にとって大きな痛手だ。甘利氏の退場によって、内閣の屋台骨は安倍首相と菅義偉官房長官、麻生太郎財務相の3人という形になる。麻生氏が財務省寄りなのは周知の事実だ。加えて自民党をみれば、同じく財務省寄りの谷垣禎一幹事長が中核に座っている。

こうしてみると、政権全体の力学バランスは微妙に財務省有利に変わるのではないか。甘利氏の後任として経済再生相に就いたのは石原氏だ。石原氏は幹事長、政調会長という党の重職を務めた一方、閣僚としては行革相、国土交通相、環境相などの経験しかない。経済担当閣僚としては未知数といっていい。これが3点目だ。2012年の自民党総裁選に立候補したときは、ロイター通信のインタビュー(http://jp.reuters.com/article/zhaesma-idJPTK089206420120911)に答えて「金融財政のスペシャリスト」と売り出したが「為替政策がデフレに一番効くことはだれもが分かっている」などと発言した。

■内閣改造も視野に入れている?

「為替政策がデフレに効く」などと言った時点でトンチンカンなのがバレバレだった。そもそも「為替政策」などという代物が本当にあると思っていたのだろうか。日本銀行が単独で為替市場に介入したところで、巨大なグローバル市場に実質的な影響を及ぼせないのは、スペシャリストであれば常識だ。

そんな石原氏が経済再生相に就任して、TPP交渉について実のある答弁ができないのは当然としても、経済財政諮問会議を取り仕切ってアベノミクスを推進する役割を果たせるだろうか。ここは不安材料である。それでも安倍首相が石原氏を起用したのは、政策面より政治的なサポートを期待したためだろう。

安倍首相と石原氏はかつて根本匠元復興相、塩崎恭久厚生労働相と4人の頭文字をとって「NAISの会」を結成していた。こちらも盟友の1人だ。7月には参院選、あるいは衆参ダブル選挙がある。安倍首相には、それまで国会をしのいで選挙に勝てば、いずれ内閣改造という判断があるかもしれない。いずれにせよ、ここは政権の正念場だ。

【私の論評】多くの政治家、マスコミの認識が及ばぬ成層圏で官邸VS財務省の熾烈な戦いは続く!

野党の大部分も、マスコミのほとんども、いや自民党の多くの議員もですらも、上記の長谷川氏の記事、字面は読めるかもしれないですが、その意味するところを正しく認識できないのではないかと思います。

日本の財務省は非常に特異な存在であり、本来政府の一下部機関に過ぎないにも関わらず、政治に深く関与し、日本の政治を自分たちの省益に沿った形で、誘導しているという事実を全く認識していないのではないかと思います。

なぜ、その時々の経済に全く関係なく、ブログ冒頭の記事で長谷川氏も指摘する"財務省は常に増税に賛成し、減税に反対する"のか全く理解できていないのではないかと思います。

その理由の最大であり、財務省の性ともいえるのは、財務省の高級官僚の天下り先の確保と、その天下り先を増やすことのみならず、天下り先の蓄財の最大化です。これによって、財務省を退官した後の高級官僚の天下り先で贅を凝らしたハッピーライフを確実なものにすることこそ、彼らの至上命題なのです。

実際、財務省は複雑な特別予算体系を創設し、維持し拡大するためにとにかく、増税することを至上命題として日々活動しています。

このブログでも何度か掲載したように、本来現状では増税する必要性など全くありません。過去に何度も掲載していることですが、直近で、そのことについて掲載し記事のリンクを以下に掲載します。
いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、財務省が主張する増税すべきという主張の、論拠ともなっている、¥1,100兆ともいわれる、国(政府)の借金などは全くのまやかしであることを述べた部分を以下にコピペします。
 日本の現状をいえば、グロスの債務残高は1100兆円程度であるが、ネットでみれば500兆円で、GDP比で100%程度。さらに、日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)の債務は200兆円、GDP比では40%程度である。この程度であれば、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。 
 ちなみに米国ではネットでみてGDP比80%程度、統合政府ベースでみれば65%程度。英国ではネットで見てGDP比80%程度、統合政府ベースで見て60%程度である。
ご存知のように、現状で米英が、増税するなどという話は全く聴いたことがありません。米英では全く増税の必要性など論じられていません。米英の政府が、増税せずにやっていけるのに、このように、ネットでみれば、米英よりも政府の借金が少ない日本でなぜ増税しなければならないのでしょうか。

それは、先ほども述べたように、財務高級官僚の天下り先の確保と、そこでのハッピーライフを確実なものにするためです。

実際、財務省は、増税などによって、蓄積した資金を特別会計に積み上げるとともに、天下り先でもある、外郭団体や事業体などに天文学的な数字の資金を貸し付けています。この貸付分や、特別会計も日本政府の資産です。そうして、この資産は、世界最大です。これほどの、金融資産を有する政府は世界広しといえども、日本以外にありません。

そうして、この資産をいわゆる借金から差し引き、日銀などとの連結決算をすれば、 日本政府の正味の借金は、200兆円程度であるということです。

これだけ書けば、財務省の特異性をご理解いただけたものと思います。

そうして、財務省の作文である「税と社会保障の一体改革」を根拠として、税の問題と社会保障を強引に結びつけ、増税の正当性を主張しています。確かに社会保障は、先立つものがなければできるものではありませんが、ないならないなりのやり方だってありますし、あればあったで、あるなりのやり方もできます。

はっきりいえば、もともと、「税」と「社会保障」とは別モノです。しかし、財務省はこれを強引に結びつけ、多くの政治家や、マスコミ、国民を幻惑して、自分たちが特別会計や外郭団体などに巨万の富を蓄財していることは、おくびにも出さず、社会保障費が増大していることを理由に増税の正当性を主張しているわけです。

このようなことは、多くの国民はなかなか知ることはできないですが、本来ならば政治家やマスコミなどは、本気で調べれば理解できる筋合いのものです。

しかし、財務省は従来から、様々なご説明資料と称する資料をもとに、政治家や、マスコミ、識者に至るまで、丁寧に自分たちの主張を説明してまわることと、結局自分たちが金を回しているということを背景に、徹底的に自分たちの主張を繰り返してきたため、多くの政治家や、マスコミなどがこれに幻惑されることになりました。

そうした中での、甘利大臣の献金疑惑事件が発生しました。甘利大臣は、大臣になるときに、上記のからくりなど、安倍総理や他のブレーンから聴いて良く理解していたと思います。

それを査証するような記事もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
民主党議員よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!~『朝ナマ』に出演して改めて感じた、日本の野党のお粗末さ―【私の論評】第二社会党の道を歩む民主に期待は無駄!本当は増税政党の自民も無理!期待できるのは今は次世代の党のみ!
増税派(財務省側)に堕ちた稲田朋美政調会著

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に甘利氏が財務省の本質を理解していたと思われる部分を以下にコピペします。
甘利氏「論理矛盾」×稲田氏「雨乞い」 財政再建で対立
2015年6月13日06時48分 朝日新聞デジタル
 政府の財政再建をめぐり、甘利明経済再生相と自民党稲田朋美政調会長の対立が12日、表面化した。経済成長による税収増を期待する甘利氏が、歳出額の数値目標を掲げない方向で議論を進めているなか、稲田氏が「2018年度に歳出額の目標設定を行う」との党方針を決定。甘利氏が「論理矛盾」と反発すれば、稲田氏は成長重視路線を「雨乞い」と批判し返した。 
 稲田氏が委員長を務める党財政再建に関する特命委員会はこの日、財政健全化策の最終報告案を決定。党は昨年12月の衆院選で「国・地方の基礎的財政収支(PB)を2020年度に黒字化」と公約しており、中間段階の18年度に歳出額の目標を設定することを明記した。社会保障費の伸びを「年5千億円程度」に抑える目標も掲げた。 
 政府が示す今後の経済成長率(名目3%、実質2%)については「楽観的」と指摘して、「経済成長だけではPB黒字化のめどが立たない」とした。 
 一方、甘利氏が担当相を務める政府の経済財政諮問会議が10日に示した2015年度「骨太の方針」の骨子案では、「18年度のPBの赤字を国内総生産(GDP)比で1%に抑える」としただけで、歳出の上限額は盛り込まれていない。安倍晋三首相が「経済再生なくして財政健全化はなし」という方針を示しており、歳出抑制よりも経済成長による税収増で財政健全化を目指しているためだ。 
 このため、甘利氏は12日の記者会見で党の方針について「(首相の考え方を)共有していながら、経済成長と無関係に歳出を縛るのは論理矛盾だ」と述べ、いら立ちを隠さなかった。 
 これを聞いた稲田氏は反発。「当てにならない(経済)成長を当てにして、雨乞いをしてPB黒字を達成させるとか、そういう話ではない」と語った。稲田氏は16日に首相あてに最終報告を提出するが、党方針が「骨太の方針」に反映されるかは不透明だ。(相原亮、鯨岡仁
この記事を読めば、稲田政調会長は完全に、財務省の手に堕ちたことが理解できますし、甘利氏はそうではなく、 「経済再生なくして財政健全化はなし」という官邸側の意思を強調しています。

実は、甘利氏は、TPPの交渉に当たる前、無論経済財政相になる前には、あまり経済、特にマクロ経済には疎いほうの方でした。しかし、経済財政相になり、TPP交渉にあたるようになってから、これがすっかり変わり、マクロ経済に関しては非常にまともな発言をされるようになりました。

私自身、甘利大臣とはフェイスブックでは友達にもなっているので、甘利大臣の変貌ぶりが、フエイスブックのコメントなどから手にとるように理解できましたので、大いに勇気づけられたものです。

甘利氏は、安倍総理大臣の期待に応えて、経済に関しても勉強され、必死に努力しTPPでも粘り強い交渉を実行されたのだと思います。

誠実な人柄の方ですから、大臣を辞任せざるをえなかったことは、さぞや無念なことであったことでしょう。

それにしても、ブログ冒頭の記事のように、今やマクロ経済通にもなった、甘利氏が大臣を辞任したこと、さらに、稲田朋美政調会長のような本来であれば、安倍総理の側近中の側近である人ですら、財務省の手に堕ちているわけですから、これは長谷川氏が主張するように、官邸側としては、ここは正念場だと思います。

後任の、石原氏は、ブログ冒頭の記事にもあるように、確かにマクロ経済音痴です。金融緩和をすると、インフレ傾向となり、円安傾向にはなります。しかし、その逆は真でありません。為替介入で円安になりインフレ傾向になるなどということはありません。

石原伸晃経済再生担当相
石原氏や、稲田氏ですら酷いマクロ音痴なのですから、自民党議員の中には酷いマクロ経済音痴も存在し、財務省の手に堕ちているものも大勢います。野党の議員などは、特に民主党は金子洋一参議院議員などの例外を除いて、マクロ経済と、財務省の本質を知る人はいません。マスコミもそうです。経済学者などの識者も多くが、財務省側に堕ちています。

そんな中、官邸は確かに難しい政権運営を迫られることになると思います。

石原氏には、経済財政相として、甘利氏が成し得たように、もっとマクロ経済に通暁して、財務省の本質を理解するよう努力していただきたいものです。

安倍晋三氏が、総理大臣になってから、今まで官邸と財務省は、ガチンコ勝負を三回実行しました。

それは、8%増税、10%増税延期、軽減税率です。簡単にいうと、8%増税は、財務省の圧勝でした。10%増税では、一昨年暮れに衆院の解散により、延期に成功した官邸の勝利です。軽減税率においては、官邸側が圧勝し、財務省が惨敗しました。

マクロ経済も熟知しない、財務省の本質も理解しない、マスコミや多くの政治家にとって官邸と、財務省の戦いは、地上にいる私達が成層圏で起きていることがわからないのと同じように、理解できないと思います。

成層圏からのスカイダイビング
実際、成層圏で戦闘機同士が戦闘をしていても、地上では認識できません。撃墜された戦闘機が墜落して地上に堕ちたときはじめてわかります。

官邸と財務省の戦いも似たようなものです。政治家もそれを認識できない人が多いです、マスコミも一切報道しません。ただし、政治家の発言や、マスコミが報道した内容などから、その戦いがあったことや、その勝敗がどうなったかは、十分に知ることができます。

今のところは、官邸側と、財務省側のどちらが優勢なのかまだはっきりしません。このブログでは、単にマスコミの報道や識者の発言を鵜呑みにしてことはありません。しかし、今年の参院選(場合によっては、衆参同時選挙)に向けて、両者の熾烈な戦いがすでに始まっていることは確かです。

これからも、成層圏での熾烈な戦いについて掲載していきます。

よろしくお願いします。

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2016年1月28日木曜日

手記出版「あの日」…小保方さんは何を語っているのか―【私の論評】小保方さんの手記ではみえないSTAP細胞問題の背後にある危機(゚д゚)!


2014年4月の会見時の小保方さん 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
突然の出版

講談社の社員も知らない極秘プロジェクトだったようだ。

2016年1月27日、STAP細胞事件の当事者である小保方晴子さんが手記を出版することが明らかになった。その名は「あの日」。

STAP細胞論文の記者会見から1月28日でちょうど2年。2014年4月の会見以来、公の場に姿を現すことなく、弁護士を通じたコメントなどでしか動向がわからなかった小保方さんが、その思いの丈を手記という形で世間に問う…

いったい何が書かれているのか。1月28日午前0時、電子書籍版を速攻でダウンロードし、読んでみた。

出版の意義

内容に触れる前に、手記が出版されること自体の意義について考えてみたい。

小保方さんはSTAP細胞事件で激しい批判にさらされた。いわば「炎上」した。もちろん、ご本人の行った研究者としての逸脱行為は問題だし、ペナルティを課されねばならない。しかし、これまで触れてきたように、研究不正は世界各地で起きており、小保方さんより悪質な例はいくらでもある。あそこまで叩かれる必要はない。

過剰なバッシングで失われた名誉を回復するために、本人が口を開くことは許されることだと思う。

また、研究不正の事例として、当事者の考えを知ることは重要だ。今後の教訓にもなる。ただし、正直に語ってくれることが必要条件となる。

始まりはハーバード

では早速手記の中身をみていこう。表現はやや拙い感じがしており、本人が書いた手記っぽい印象だ。たぶんゴーストライターは使っていないだろう。

手記は小保方さんの幼少時代から始まる。次第に科学に魅力を感じ、研究者を志す様子が描かれる。

そこまではどこにでもいる研究者だ。そんな小保方氏が、どうしてSTAP細胞論文を、世界有数の科学論文誌Natureに出すに至ったのか。きっかけはハーバード大学への留学だ。

留学中に与えられたテーマである、スポアライクステムセル(胞子様幹細胞)の性質を調べるうちに、キメラマウスの作成が必要となり、理化学研究所発生・再生医学総合研究センター(CDB)の若山照彦博士のもとで研究することになった。

小保方氏は、理研CDBで若山博士と共同研究するうちに、研究規模は次第に大きくなり、若山博士やその研究室のメンバーが加わり、総がかりで行われるようになった。一流論文誌に不採択となったことや、若山博士が山梨大学に移動になったことをきっかけに、笹井芳樹博士が論文執筆にかかわるようになり、丹羽仁史博士もアドバイザーとして関与するようになる。また、小保方氏も理研のユニットリーダーに採用される。そしてSTAP細胞論文発表につながる。

このあたりは報道もされたので、ご存じの方も多いだろう。

しかし、なぜ、STAP論文は撤回されることになったのか。

若山主犯説

小保方氏は、論文に問題があったことは認めているが、単なる勘違いだったと述べる。また、たしかに問題だったが、データはあるし、実験に問題はなかったとも言っている。

一方で、小保方氏は、ハーバード大学での研究以来、体細胞が多能性幹細胞になったマーカーであるOct4という遺伝子の発現という現象に注目しており(のちにSTAP現象と呼ばれる)、それを研究したかったが、あとから研究に加わった若山氏が、STAP幹細胞(増殖能を持つ)の作成にこだわったという。そして、STAP幹細胞を証明するキメラマウスの作成や胚の操作は若山博士や研究室の人たちが行い、自分が関与できなかったという。細胞の管理も小保方氏は行えなかったという。

だから、STAP細胞なるものがES細胞の混入であった点は、自分ではなく若山氏が関与したと述べる。また、研究者の多くがSTAP細胞の存在を疑うにいたった「TCR再構成」も、若山氏の細胞の管理の問題だと述べる。

若山氏が、研究データよりストーリーを重視し、仮説にあわないデータを意図的に除外するなど、逸脱行為をしている点を述べる。

しかし、STAP細胞の論文で挙げられた疑義は多岐にわたり、この本ではそのすべてに答えていない。

STAP細胞はあるのか

小保方氏は、狭い意味でのSTAP現象、つまり体細胞に刺激を与えてOct4の発現を蛍光発光で確認することはできたと述べ、それが200回STAP細胞を作ったという記者会見での発言につながったという。だから、いまでもSTAP細胞はあると考えている。多くの人たちが考えるSTAP細胞存在の定義より狭く考えているのだ。

検証実験に失敗したのも、検証実験にキメラマウスの作成が求められ、若山氏が関与した部分に手を出せなかったからという。

しかし、蛍光発光という現象を小保方氏が見たのは事実だろうが、検証実験や2015年のNature誌の論文で、Oct4の発現含めたSTAP現象が否定されているので、説得力はないように思う。

報道被害、バッシング被害

このように、言い訳に終始した感のある本書だが、冒頭に述べたように意義はある。それは報道、バッシングによる被害の様子がどんなものかを当事者の口から聞けるということだ。

生活に支障の出るほどの過剰な取材や、一方的なバッシングの渦中にある当事者が、どんなに大変なめにあうのか…確かに小保方氏は問題行為をしたが、ここまでひどい扱いを受けることはない。メディアに出演し、小保方氏を批判した私は、決して本人を貶めるようなつもりはなかったものの、バッシングに加担したことになるわけで、その点は申し訳なく思った。

この本から得られる教訓

この本から得られるものは、初動の重要さだ。

結局、理化学研究所が早々に論文の問題点を認め、証拠保全をし、研究不正の調査をしていたら、ここまで騒ぎにはならなかっただろう。笹井博士もなくなることはなかったかもしれない。本書の出版を含め、関係者がメディア上で意見を言い合うというのは、もはや科学ではない。

小保方氏が本書で自分に都合のよい主張を述べている点も含め、この本の出版は、科学コミュニティが研究不正に向き合わなかったことの報いなのだ。

【私の論評】小保方さんの手記ではみえないSTAP細胞問題の背後にある危機(゚д゚)!

今日は、甘利大臣の辞任という大きな出来事もありましたが、この件についてまだ私自身以前このブログに掲載した以上の情報は持ちあせていないことと、まだ考えが良くまとまっていないことなどから、本日はこの大きなニュースの影に隠れて、見逃されがちである、この小保方さんの記事をとりあげさせていただくことにしました。

小保方さんに対するマスコミの扱いなど、確かに榎木氏が語るように、不当なものだったと思います。

それに、この事件で主に責任をとったのが小保方さんのみであったということも今でも納得のいかないところがあります。STAP細胞に関しては、大きなプロジェクトで動いていたにもかかわらず小保方さんだけが責任をとり、後はほとんどお咎めなしというのが、なんというかあまりに典型的なトカゲの尻尾切りのようで、興ざめしてしまいます。

まともに考えれば、小保方さんがSTAP細胞を自分自身で作成できたと勘違いしていたとしても、小保方さんだけの責任とされるのは、筋が通りません。

何もかも小保方さん一人の責任なのか?
研究所で、誰かが何かを発見したとして、まずはその発見の真偽の本人以外の人間が確かめるというのが、筋であり、たとえそれが滅多にできないものであったにしても、確かめて間違いないと判断できたものは発表すれば良いし、そうでなければ、発表しなければ良いだけの話だと思います。

また、発表したにしても、それが間違いかもしれないとわかった後の理研の対応も悪すぎです。それにマスコミも問題だったと思います。理研は事態が拡大する前に、速やかにリスク管理をすべきだったと思います。理研の対応は、臭いものに蓋をするようなものに終始していたと思います。マスコミもこの出来事の背景について、科学的な観点のみならず、他の観点においても、全く視野の狭い報道しかしていませんでした。

それに、STAP細胞に関しては、小保方さんのやり方ではないものの、米国の学者が別の方法で、存在を確かめたという事実もあり、それは以前このブログにも掲載しました。

その記事の、リンクを以下に掲載します。
小保方さんの発見は真実!ネイチャーにマウスの体細胞が初期化して多能性を持つ「STAP現象」がアメリカの研究者により発表される―【私の論評】日本のマスコミや識者もSTAP細胞騒動を二度と繰り返すな(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、少なくともSTAP現象はこの世に存在することは、アメリカの学者らの研究で、証明されたといえそうです。この研究が、推進され、STAP細胞が作り出されることもあり得ると思います。

この記事では科学誌『ネイチャー』の運営するオンライン電子ジャーナル「Scientific Reports11月27日付テキサス大学医学部ヒューストン校やピッツバーグ大学医学部の研究者たちが発表した'Characterization of an Injury Induced Population of Muscle-Derived Stem Cell-Like Cells損傷誘導性の筋肉由来幹細胞様細胞群という論文に関して掲載しました

しかし、この論文で小保方さんが発見したというSTAP細胞の存在が証明されたわけではありません。しかしその一方で、研究者らは「マウスから採取した筋肉の細胞に刺激を与えた(損傷させた)ところ、(ES細胞やiPS細胞のようにさまざまな細胞になることができる)幹細胞に"似た"細胞ができた」ということを発表、これを「iMuSCs細胞」と名づけているのです。

確かに、手法や結果は小保方さんのSTAP細胞とはまったく異なりますが、複雑な工程を経ることなく幹細胞(万能細胞)に近い性質を持つ細胞を生み出したという点に着目すれば、今回の研究の方向性が、少なくとも小保方さんのSTAP細胞と同じ目標を見据えたものであるという点だけは間違いないでしょう。

そうして、ES細胞やiPS細胞ではない幹細胞(万能細胞)に近い存在『iMuSCs細胞』が見つかったことは確かです。そうして、STAP細胞のような簡単な手法で万能細胞ができる可能性について、世界の科学界ではあって当然のものとして誰もが認めています。まさに基本中の基本であり、それを誰が最初に見つけるかあるいは、その利権を我が物にしようと激烈に争っているのです。

理研は、小保方さんが生成したSTAP細胞について、研究室の冷蔵庫にあったES細胞の混入が原因だったと結論づけています。しかし、実際にSTAP現象が起こることが、他の方法で確かめられた以上、小保方さんが提示した実験手順で、新しい万能細胞が生まれていたかもしれない可能性はまだ捨てきれません。

現在、日本ではSTAP細胞=ウソ、いかがわしいものの代名詞のような扱いを受けています。しかし、複雑な手順を経ることなく万能細胞を生み出そうとするSTAP細胞と同様のコンセプトを掲げ、世界中の科学者たちが日夜熾烈な競争を繰り広げており、小保方さんもその渦中にあったことだけは間違いないです。

今や世界の先進国で日本だけが、STAP細胞まがい物という、世論が形成されている稀有な国と言っても過言ではないと思います。


日夜熾烈な競争というと、化学や物理学等の他の分野もそうなのですが、それにしても、これらの学問の歴史は古いので現状ではある程度落ち着いたという感がありますが、生物学の分野は裾野も広く、ここ数十年で長足の発展をとげ、それこそ最先端の分野では、激烈な競争が繰り広げられています。

その激烈な競争の一端を知ることができるあのiPS細胞の生みの親である、山中教授の発言もあります。

京都大学の山中伸弥教授が応じた『週刊朝日』のインタビューでは、この構造が「仁義なき戦い」と形容され、山中氏自らこう語っています。

「簡単に言いますと、ヒトのiPS細胞は自分たちのほうが先に作っていたんや、とアメリカのベンチャー企業が主張しました。同社の特許の請求内容を見たら、京大が先に出願していた請求内容とほとんど違わない。もう完全に戦争するつもりできているわけですね」(『週刊朝日』、2014年11月7日号)

山中教授がiPS細胞を発表したほぼ同時期に、アメリカのベンチャー企業が、同じ内容の論文を発表しています。これはつまり、アメリカが京都大学のデータを盗んでいたということを意味します。この時に京都大学がとった措置は、アメリカで裁判を起こすと不利になるため、アメリカでの特許権を放棄する代わりに、アジア・ヨーロッパで認めてもらうように図らうことでした。

山中伸弥教授 iPS細胞の世界で熾烈な理研争いが・・・・
これと同じように、STAP細胞に関しては、最先端の熾烈な研究活動だけではなく、利権を巡る熾烈な戦いもすでに始まっていたということです。

おそらく、世界的な医療分野の巨大企業は、かなりの投資をして、この分野の利権を得ようと血眼になっています。

理研も当然そのことは、承知しており、その渦中に小保方さんのSTAP細胞の研究があったということです。

そうして、アメリカの巨大企業は、何が何でも、ありとあらゆる手段で、STAP細胞の利権の先陣争いに勝とうと画策しているのは間違いありません。

こうした画策に関しては、研究者は無防備です。小保方さんも、無防備だったと思います。無論研究者はそれで良いと思います。研究者は、研究することが本分であって、リスク管理などに気をまわしていれば、研究がおろそかになります。

それに、リスク管理の対象になる人々が、リスク管理をするというのでは、監査役が会社の事業をしているようなもので、そもそも管理などできません。

しかし、理研を管理する人や、国がそうであってはいけないはずです。

このことに関連する動画を以下に掲載します。



この動画の会話を以下に掲載します。
クライン孝子:理研も小保方さんも犠牲になったように感じた。調べてみたら理研の平成24年度の内訳には予算が844億円、正社員が3000人くらいいる、外部から出入りするのが3000人くらい。外人のところを見てぎょっとした。636人中、中国が141人、韓国が88人、東南アジアは131人、欧州は192人、北米が60名。3分の1が中国韓国。 
水島:外国との交流は科学はありますけれど、中国や韓国とはやる必要はないと思います。 
クライン孝子:やるんならば日本も諜報機関を作らなければ、やられ損じゃない。 
水島:この問題の本質はスタップ細胞が本当かどうかこれにかかっているだけです。これがあるとしたら大変なことです。人類史上の大変革ですから、何百兆、製薬会社から。 
クライン孝子:だから全部狙っているんでしょう。いろんなところで開発しようとしている。日本はかなりいい線いっているところを、日本の開発を止めさせようとしているのは見え見えだね。 
水島:仰る通りで、論文の撤回などとんでもない話で、まずやることは全力を挙げてスタップ細胞が本当かどうか、存在があるのかどうかをまずはやってから小保方女史のミスとかをやればいい。日本のマスコミはその手先になって、自分たちは正義のつもりでやっている。 
水島:今回のスタップ細胞もハーバードのバカンティーという人が加わったり、リニアモーターカーを安倍さんが、開発に1兆円くらいかけているものをアメリカの鉄道に売るというけれども、結局無償で技術を提供してしまう、アメリカは死に物狂いで生き残りをやっています。日本は所詮属国なんです。 
クライン孝子:属国にしてしまった日本人が悪い。理研も外国人の研究員や教授を呼んで、中国と韓国人で3分の1を占めて、本当に丸裸にされてきた。それに気がついていない。今になってこういう問題が出てくるのは当たり前だし、上の方は責任逃れだし。どうにもならない。
上の動画で、水島氏がSTAP細胞の本当かどうかだけが、この問題の本質のような話をしていますが、それは間違いだと思います。それよりも、理研にこれだけの数の外国人が存在するということのほうが余程重要問題であり、これは理研のリスク管理体制が脆弱であることを示していると思います。

理化学研究所は1917年(大正6年)に財団法人として創設されました。戦後、株式会社科学研究所、特殊法人時代を経て、2003年(平成15年)10月に文部科学省所轄の独立行政法人理化学研究所として再発足し、2015年(平成27年)4月には国立研究開発法人理化学研究所になりました。

理化学研究所は従来も準国立の機関のようなものでしたが、今では完璧に国の機関です。大学や、民間の研究機関などとは異なります。

学問の自由な発展のためには、外国人の研究者も招き入れるなどのことも必要だと思います。しかし、理研は、国の機関ということから、そうではあってはいけないと思います。

無論外国人を一人も入れるなというような極論を言うつもりはありません。しかし、中韓はよほどのことがない限り、入れるべきではありません。研究内容が盗まれるだけです。他の外国人も、かなり厳しい身辺調査なども含む厳しい選別をして入れるべきです。

このこと、一つとっても、理研はリスク管理体制がほとんどできていないのだと思います。これでは、秘密も何もあったものではありません。

この状況では、極端なことをいえば、アメリカの巨大企業の息のかかった研究者が、密かにSTAP細胞とされるものをすり替えた可能性も絶対にないと否定しきれないのではないかと思います。アメリカのスパイなど、このようなことはかなりの訓練を受けて、簡単に実行できると思います。

それだけではありません。小保方さんの実験内容なども、参考のために盗まれているかもしれません。いや、それどころか、日本にSTAP細胞で先を越されないために、STAP問題を単なる倫理問題にすり替えて、日本のSTAP細胞開発の芽を摘むという企みを画策して実行したかもしれません。資金が潤沢な巨大企業なら、そんなことも可能です。もし、そうだとしたら、海の向こうで誰かが大声で高笑いしているかもしれません。

一昨年 理研にタクシーで出勤した際の小保方さん
性善説に立脚していては、日本の知的財産を守ることはできません。日本のSTAP細胞に関する識者の論評やマスコミの報道は、この観点を全く欠いた軽薄なお花畑的なものがほとんどです。

ブログ冒頭の記事も、全くそうだと思います。結局のところ、問題の本質を見ることなく、小保方さん、マスコミ、理研の倫理的な問題にすり替えているだけです。そうして、研究者であった小保方さんに問題の本質を解明することを期待するのも間違いです。

結局、小保方さんも理研の幹部なども、そうして文部省も司法で裁かれるといことはありませんでした。もしそうなれば、理研のリスク管理体制の甘さがクローズアップされたかもしれません。さらに、外国勢力の危険性も検討されたかもしれません。

しかし結局、この問題は、単なる小保方さん個人の倫理的な問題にすり替えられてしまったようです。問題を倫理の問題にすり替えてしまえば、対策をするといっても個々人の善意にゆだねるだけになり、問題の本質はいつまでたっても見えないことになります。

やはり、理研の幹部や、理研を監督する文部科学省がまともなリスク管理体制を築くべきです。特に、この件に関して文部科学省の責任が問われないことは、重大問題です。

このSTAP細胞問題の本質は、理研のリスク管理体制の甘さに起因しているものであり、それがたまたま今回表面にでできたものだと思います。リスク管理体制がまともであれば、このような問題は最初から起こらなかったし、起こったにしても、早期に収拾できたものと思います。

それに、小保方さんも、あそこまでバッシングされることもなかったと思います。研究活動も人間のやることです。そこには、思い込み、間違いなどがつきものです。このような間違いを犯す事自体は、犯罪でも何でもありません。

エジソンも失敗は、発明の母という趣旨で自分の失敗の数々を語っています。数えきれない様々な間違いを経た上で、大発見や大発明があるのです。だから、小保方さんが誤りを犯したかもしれないとしても、それ自体は何の問題もなかったはずです。

そんなことよりも、その誤りかもしれない事柄を発表し、誤りかもしれないと指摘されたときに、理研が何をどうするのか、危機に陥ったときに何の手順もなく混乱してしまい、狼狽え、それをマスコミが正義の味方のように倫理問題として糾弾し、小保方悪、STAP細胞は紛い物という空気をつくりあげ、結局何もかも小保方さんの倫理の問題にしてしまったことが重大な問題です。

実際、ブログ冒頭の記事を書いた、榎木英介氏による、以下のような記事もあります。
やっぱり小保方さんなんてかわいいほうだった~2015年も多発した研究不正事件

世界では、小保方さんなど霞んでしまうような、とんでもない研究不正事件が数多く起こっています。

こういうことことからも、やはり理研のリスク管理体制の甘さが是正されないかぎり、この種の問題は解消されません。文部科学省など、これを放置しておけば、また似たような事件に悩まされることになるでしょう。

もし、今回の問題に世界の大企業などが関係していたとしたら、彼らはまた、日本に先を越されないため、手を変え品を変え、日本の最先端技術等の芽をつむため暗躍を続けるかもしれません。
良き意図だけでは、世の中は変えられません。成果も挙げられません。誤りや、間違いを許容しない社会は発展しません。それは、硬直した官僚主義的な社会を生み出すのみです。

倫理的に物事を考えるということは、決して悪いこととはいいません。しかし、それにしても倫理的側面だけで、物事を見て判断して、人を糾弾するということは、最近の日本の社会でよく見られることです。こんなことを繰り返していては、日本における政治、マスコミ、学問や、マネジメントなどのあり方も劣化するだけです。

そうして以上に述べたようなことは、STAP細胞問題の当事者である、小保方さんや理研の研究員などにはなかなか見えないことです。そもそも、研究員が研究をしないで、そのようなことに気を使うべきではなく、ここはやはり、理研をマネジメントする人々や、文部科学省の責任です。

今回の事件ではこのことが、全く追求されもせず、問題にされません。これでは、日本は海外勢力から無防備であるとの謗りを受けても致し方無いと思います。

私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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「小保方さんがかけたきた涙の電話  若山照彦」というタイトルの記事が掲載されています。

【スクープ最前線】米、東アジアで異例の軍備増強 北朝鮮急襲「Xデーは2月末」の衝撃情報―【私の論評】混迷する世界!「政治的メッセージ」を聴くのも、発信するのも飽きた米国?

【スクープ最前線】米、東アジアで異例の軍備増強 北朝鮮急襲「Xデーは2月末」の衝撃情報

韓国・釜山港に入港する米原子力空母ジョン・C・ステニス=2009年3月

米軍が、東アジアでの軍事プレゼンスを急激に高めている。原子力空母「ジョン・C・ステニス」を西太平洋に派遣したうえ、最新鋭ステルス戦闘機F22を含む計26機を、横田基地(東京都)に飛来させたのだ。核実験を強行した北朝鮮が主ターゲットといい、「Xデーは2月末」という衝撃情報がある。加えて、経済失速の目先をそらす、中国の暴発をけん制する狙いもあるという。ジャーナリストの加賀孝英氏が迫った。

「金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は狂ったのか。米国は激怒している。このままでは軍事衝突は避けられない」

旧知の米軍関係者は怒りにまかせて、こう吐き捨てた。その原因となった「正恩情報」というのが以下の話だ。

《正恩氏が『日米韓を火の海にしてやる!』と半狂乱になっている。暗殺に脅えて、平壌(ピョンヤン)でスパイ狩りを始めた》

《5月初めの朝鮮労働党大会を前に、もっと自身の威信を高めて、さらに世界を恫喝するために、軍部に『(核弾頭搭載型)長距離弾道ミサイルなどの発射準備』を命じた》

北朝鮮が4度目の核実験(北朝鮮は『水爆実験』と強弁)を強行したのは今月6日だ。世界の批判を無視して、今度はミサイル発射準備とは「ふざけるな!」というしかない。

案の定、朝鮮半島が緊迫してきた。世界最強の米軍が怒涛(どとう)のように動き出したのだ。驚かないでいただきたい。「Xデーは2月末」という極秘情報もある。

金正恩
すさまじい米軍の動きを説明しておく。

米西部ワシントン州の母港を15日、原子力空母「ジョン・C・ステニス」(排水量10万5500トン)が出港し、西太平洋に向かった。同空母は、戦闘機や攻撃ヘリコプターなど約90機を搭載し、士官・兵員約3200人、航空要員約2500人が乗船している。当然、ミサイル巡洋艦や駆逐艦、原子力潜水艦などを引き連れて、空母機動部隊を編成している。

ご存じのように、横須賀基地(神奈川県)には、原子力空母「ロナルド・レーガン」(同10万8000トン)を中心とする、機動部隊が配備されている。東アジアに2つの空母機動部隊が展開するなど、異例中の異例といえる。

横須賀に入港中のロナルド・レーガン
さらに、横田基地には、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22「ラプター」と、F16戦闘機「ファイティング・ファルコン」の計26機が集合した。米グアムの米軍基地には、「死の鳥」と恐れられるB52戦略爆撃機「ストレイトウフォートレス」(成層圏の要塞)と、B2ステルス戦略爆撃機「スピリット」がスタンバイした-。

飛行中のB2ステルス戦略爆撃機「スピリット」

以下、複数の米軍関係者から得た仰天情報だ。

「北朝鮮殲滅(せんめつ)作戦は数パターンある。基本は、ステルス戦闘機などで約700カ所の軍事拠点をピンポイント爆撃し、原子力潜水艦で海域を封鎖する。同時に特殊部隊が突入。北朝鮮内部に構築したスパイとともに正恩氏を一気に確保し、排除する」

「作戦の第1段階は、原子力空母や原子力潜水艦などの朝鮮半島沖への展開だ。2月末から、米韓合同軍事演習『キー・リゾルブ』と、野外機動訓練『フォールイーグル』が予定されている。空母などは、その名目で展開する。第1段階は2月下旬までに完了する」

「Xデー」とはこのことだ。情報はこう続く。

「最終的なゴーサインはオバマ米大統領次第だ。こちらは北朝鮮の地下軍事基地の詳細や、正恩氏の居場所、中国やロシアへの脱出トンネルも把握している。正恩氏はもはや、核放棄に応じるしかない。それは『2005年の事件』で分かっているはずだ」

米軍は05年、北朝鮮で極秘軍事作戦を決行した。F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」を、平壌上空に派遣し、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記の豪邸にめがけ、上空から急降下を繰り返し、正日氏に死を覚悟させて震えあがらせた。見えない戦闘機に北朝鮮は手も足も出なかった。

F117ステルス戦闘機「ナイトホーク」

今回の米軍展開は、その時以上といえる。

外務省関係者がいう。

「米軍の動きは、対北朝鮮だけではない。実は、中国に対するけん制でもある。要は『経済失速で国内に不満が鬱積するなか、人民の目先をそらすために、南シナ海や東シナ海で暴走するな』『北朝鮮の暴走を一緒に止めろ』というメッセージだ。ケリー米国務長官が27日に訪中する。1つのヤマ場だ」

繰り返す。北朝鮮の核の暴走は、アジアと世界の平和を根底から壊す暴挙だ。断じて許すわけにはいかない。拉致被害者の奪還もある。日本は世界と連携して無法国家、北朝鮮と対峙するしかない。

■加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】混迷する世界!「政治的メッセージ」を聴くのも、発信するのも飽きた米国?

このブロクで昨日は、中国の「政治的メッセージ」関して、掲載しました。中国のGDPなどの統計資料は、真実を示すものではなく、「政治的メッセージ」に過ぎないことを掲載しまた。

詳細は、昨日のブログをご覧いただくものとして、結論部分のみ以下に掲載させていただきます。

私達も、中国のメッセージは多分に「政治的メッセージ」が含まれていることを理解すべきです。そうして、中国の「政治的メッセージ」とはあたかも中国人民の感情を表すように装いながら、中国政府の正当性を主張するものです。それを理解せずに、中国と接すれば、真の中国が理解できなくなります。

しかし、このようなことは長続きするはずがありません。いずれ、中国の現体制は崩壊するものとみなすべきです。なぜなら、「政治的メッセージ」を頻発しなければ、成り立たない政府とはかなり脆弱だからです。

これは、北朝鮮も同じことです。北朝鮮のメッセージはほんど「政治的メッセージ」であるとみなすべきです。

もっとも、北朝鮮の場合は、経済が極度に落ち込んでいるし建国以来一度も経済が良くなったこともないので、そもそも経済統計など発表しません。それを発表しても、「政治的メッセージ」として機能しないし、経済力が脆弱であることは、世界中が認識していることなので、全く意味がありません。

だから、軍事力をアピールするということで、世界各国に「政治的メッセージ」を発信しているということです。

昨日は、中国の軍事パレードを掲載して、これも「政治的メッセージ」の一環であることを掲載しました。これは、北朝鮮も同じことです。以下に、北朝鮮の軍事パレードの動画を掲載します。



とはいいながら、北朝鮮の場合、中国に比較してすら、軍事力はかなり劣っています。だから、軍事力をアピールしようにも、まともなやり方では、「政治的メッセージ」としても、機能しません。

だからこそ、苦肉の策で、核兵器開発をして、何とか原子爆弾は作成することができたということです。原子力爆弾そのものは、原材料さえあれば、さほど難しくはありません。

北朝鮮の艦艇 沿岸警備隊に毛が生えた程度

ただし、水爆となるとそれなりに高度な技術が必要となります。北朝鮮は、どうやら水爆の開発には、成功していないようです。

しかし、北朝鮮にとって「水爆」は「政治的メッセージ」であるため、これが本当に開発できたか否かなど問題ではありません。「水爆」を開発したとか、ロケットも開発したと発表し、水爆を核弾頭にした弾道ミサイルを保有したか、するようにみせかけて、それで世界における存在感を増すというのが、北朝鮮の狙いです。

確かに、これは、ある程度成功しているようです。北朝鮮は、経済的にも軍事的にも、技術的にもみるべきところは何もないのですが、それでも「政治的メッセージ」を送り続けることにより、確かに世界に向けて北朝鮮の存在感をアピールできました。

北朝鮮空軍の女性パイロットを訪問した金正恩

そのことが、米国を激怒させ、米国もブログ冒頭のような措置をとらなければならなくなったということです。

政治的メッセージというと、オバマ「政治的メッセージ」出しています。その最たるものは、「アメリカは世界の警察官をやめる」と名言したことです。

そうして、実際オバマは、アジアにおいても、中東においても、ロシアに対しても煮え切らない及び腰の態度をとり続けました。

その結果、アジアでも、中東においても、ウクライナにおいても、存在感を失ってしまいました。

そうして、アジアでは、中国の南シナ海や東シナ海での、傍若無人ぶりを招いてしまいした。そうして、中東でもISを台頭させてしまったり、ロシアにはウクライナ問題でクリミア自治共和国のロシア編入などで譲歩せざるをえない立場に追い込まれました。

日本の尖閣周辺で、中国が頻繁に領海、領空侵犯をするようになったのも、オバマの「世界の警察官をやめる」という「政治的メーセージ」によるものです。オバマがもっと中国に対してはっきりした態度で臨んでいたら、今日のような状況はなかったかもしれません。

オバマが及び腰を続ける限り、世界はさらに混迷を深めるばかりです。

オバマ大統領
このような外交上の度重なる米国の失敗で、オバマの人気は米国内でも地に堕ちました。米国議会もオバマに対して厳しい態度をとるようになりました。さすがのオバマも、まずはアジアで行動を起こさざるをえなくなったのです。

米国のカーター米国防長官は今月22日、スイス東部ダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の会合で、人工島造成など南シナ海を軍事拠点化しようとする中国の行動について「自らを孤立させている」と批判し、重ねて自制を求めました。

カーター氏は、米軍はこれまでどおりに南シナ海で航行の自由を行使し、アジア太平洋地域での軍事的優位を維持する姿勢を強調しました。さらに、中国の行動に対処するため今後数年間で国防予算を重点的に配分していく考えを示ししました。

また、アジアの国々が米国に接近しているのは中国が自ら招いている事態だとし、米国は日本や韓国、フィリピンなど同盟国との協力に加え、インドやベトナムとの関係強化に取り組んでいると語りました。日本がインドと並びアジア地域での「台頭する軍事大国」であるとも指摘しました。

そうして、この発言を裏付けるための「政治的メッセージ」として、ブログ冒頭のような行動を開始したのです。

もう米国としては、中国や、北朝鮮などから「政治的メッセージ」を受けとり、それに対して米国側から「政治的メッセージ」を発信したとしても、何の効果もないことを悟ったに違いありません。

次の段階では、「政治的メッセージ」を送るのではなく、軍事的手段に訴える可能性が高いです。

そうして、米国は、まずは北朝鮮に対して、ブログ冒頭の記事のように何らかの行動にでる可能性が高いです。

北朝鮮・平壌の金日成広場で行われた朝鮮労働党創建70周年を
祝う軍事パレードに登場した女性兵士(2015年10月10日)

今や世界唯一の超大国、軍事大国のアメリカが、実際に行動を起こせば、そのインパクトははかりしれません。私としては、北朝鮮に対するアメリカの軍事行動は、05年の極秘軍事作戦程度のものか、それ以上になるのか、今のところまだはっきりはしませんが、今度こそは、米国は何らかの行動を起こすと思います。

そうしなければ、中国、北朝鮮、ロシアなどが増長して、それこそ米国を頂点とする、戦後体制という国際秩序を破壊する可能性があります。国際秩序が崩れれば、新たな秩序を構築するまで、世界は混迷します。私は、米国が以前のように軍事行動をしたとしても、今年からしばらく世界は、軍事的に混迷する時期に入ると思います。

日本としては、米国がどの程度のインパクトを発揮していくのか、注意深く見守って、米国との、集団的自衛権の強化の路線を貫くのか、あるいは、個別自衛権を強化して、自前で自衛できる体制を整えるのか、日本の今後の安全保障に関して、真剣に考えていく必要があります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い ―【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?




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2016年1月26日火曜日

やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い ―【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?

やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い 

グラフ、動画、写真は、ブログ管理人挿入 以下同じ

中国は2015年の実質国内総生産(GDP)成長率が前年比6・9%になったと発表した。中国の統計で成長率が7%を割り込むのは25年ぶり。不動産投資などが伸び悩んだのが原因だと説明している。

資本主義国であれば、目標が7%で実績が6・9%なら何の問題もない。目標達成であり、この程度の差は統計誤差の範囲だといえる。

ただし、社会主義国では経済統計の「捏造(ねつぞう)」は日常茶飯事である。中国のほか、日本、香港、韓国、シンガポール、台湾における最近20年間の経済成長率を統計分析すると、中国の統計数字は突出して動きが少ない。

中国の統計の問題を指摘するのは、中国政府と何ら関わりのない独立系の人たちだ。どこの国の金融機関であっても、政府ににらまれると、中国国内での金融活動に支障が出るので、中国の経済統計が怪しいとはめったにいわない。

ただし、最近ではあまりの統計数字と実態の乖離(かいり)が激しくなっているので、統計問題は徐々に表面化しつつある。

中国の経済統計は実体経済の正しい姿と言うより、政治的なメッセージと受け止めるべきものだ。中国政府の意図は、対外的には「中国経済は良くないが心配しないでほしい」という願望、対内的には「7%成長は政治的な強い意志だ」との表明である。


中国の経済統計は、軍事パレードと同じような、政治的メッセージと同列とみるべき

GDP発表の1週間ほど前に発表された貿易統計は、外国との関係があるので、捏造しにくい。それによれば、15年の輸入は14・1%の減少である。輸入減の原因は資源価格の低下によるものと説明されているが、中国が発表した経済成長率が正しいなら、猛烈なデフレ経済になっていないとおかしい。

要するに、貿易統計が正しい場合、経済成長率が正しくないか、デフレ経済かということになってしまう。どちらにしても、中国経済は正常ではないというわけだ。

中国当局は、これまでの投資中心の成長から消費中心へソフトランディング(軟着陸)していくと説明しているが、経済成長論から見れば、まさに1人当たりGDPが1万ドル近辺で停滞する「中進国の壁」にぶち当たっている感じだ。

この壁を破るのはかなり難しく、政治体制も含めた構造改革のようなものが必要だろう。特に社会主義国が中進国の壁を破るのは並大抵ではない。目先を考えても、資本の自由化や国有企業改革が必要であるが、これらは中国の一党独裁主義の政治体制を揺るがすものだ。

最終的には、民主化して一党独裁を打ち破る政治的な自由が必要になるが、それがどこまでできるだろうか。最近の中国政府は逆に、人権活動に対する締め付けを強化している。

習近平指導部は体制維持に必死であるので、経済的自由につながる政治的な自由を許すような環境にはない。中国の株式市場は、社会主義の中での資本主義という「木に竹を接ぐ」ようなもので、そこにひずみが生じているようだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?

ブログ冒頭の、高橋洋一氏の記事には、中国の貿易統計が正しい場合、経済成長率が正しくないか、デフレ経済かということになってしまう。どちらにしても、中国経済は正常ではないと述べています。

まさに、その通りです、ブログ冒頭に掲げたグラフは、マネックス証券が作成したものです。輸出入の統計は、中国政府が出す統計などを参照しなくても、中国以外の各国の対中国輸出・輸入統計を調べてそれを合計すれば、おおよそ正しい数字が出ます。

このグラフをみると、高橋洋一氏が指摘したように、昨年はマイナスです。貿易収支は、プラスですが、それは輸出に比較すると輸入が相対的に減少しているので、プラスになっているだけです。

このグラフは、日本のマスコミの記者の方々も良く勉強されると良いと思います。何やら、日本の新聞の経済記事を読むと、貿易収支はプラスであることが無条件でその国の経済にとって良いことの良いような記事を良く見かけます。しかし、そうではないことをこのグラフは見事に示しています。

貿易収支が真っ赤であっても、その国の経済にとって悪いどころか、良いこともあります。たとえば、ある国がそれまで景気が良くなくてデフレだったのが、緩やかなインフレに転じて良くなった場合、一時的に輸入が突出して増えて、貿易収支が赤になることがあります。

だから、貿易収支黒=経済が良い、貿易収支赤=経済が悪いなどということは、断定できません。赤字、黒字などというのはそれだけでは、何を表しているわけでもありません。その背景を知ることにより、はじめてその意味するところがわかります。

それては、さておき、上のグラフと、中国GDP統計を比較すれば、確かに中国のGDPの統計には問題があります。

上の記事でも指摘している通り、"中国の経済統計は実体経済の正しい姿と言うより、政治的なメッセージと受け止めるべきもの"なのです。

これに関しては、経済統計ばかりではありません。中国の主張する歴史もそのように解釈すべきです。抗日70周年記念軍事パレードもそのような「政治的メッセージ」の一環であると受け止めるべきです。

抗日70周年軍事パレードに参加した女性兵士は平均年齢20歳、
平均身長1メートル78センチのモデル並みのスタイルだった
中国の「政治的メッセージ」は、官僚(中国には選挙がないので政治家は存在しません、政治に関与するのはすべて官僚です)だけに及ばず、学者も発信します。

「諸君!」(2006年)2月号の大特集『もし中国にああ言われたらこう言い返せ』の中の櫻井よしこさんの論文に、「中国社会科学院」の研究所員であ学者が登場しますが、これがおよそ学者とは思えないとんでもない「政治的メッセージ」を発信しています。

戦後60年(ブログ管理人注:この記事の内容は戦後60年のものだった)の間に中国政府が日中戦争の犠牲者の数字をどんどん水増ししてきたことについて、櫻井さんと中国社会科学院の研究所員とのやりとりの箇所から引用します。

 中国人による“数字”について、私は2005年夏、興味深い体験をした。 
 「文藝春秋」の企画で杏林大学客員教授の田久保忠衛氏と共に北京を訪れ、中国を代表する学者2名と共に日中歴史問題について論じたときのことだ。 
 中国側の学者両氏は、歴史問題では日本が悪いとの主張を、表現を変えて繰り返した。 
 私は彼らに、320万人から570万人、2168万人、さらに3500万人へと被害者数が増加した根拠について問うた。 
 さらに、たった一種類しかない中国の国定教科書で、日中戦争の犠牲者は1960年までは1000万人と教えられ、85年には2100万人と改訂され、95年には3500万人と、なんの説明もなく増えていったのはなぜかとも問うた。 
 彼らは当初、右の問いには全く答えようとせず、話題を他の点に移そうとした。 
 しかし、中国流の事実の歪曲を知るにはどうしても答えてもらわなければならない。 
 三度目に問い質したとき、中国社会科学院研究所研究員の歩平氏が次のように答えたのだ。 
 「戦争の犠牲者についてですが、歴史の事実というのは孤立して存在するのではなく、それは感情というものに直接関係してくるということを申し上げたいと思います」 
 馬脚を露すとはまさにこうしたことだ。 
 日中戦争の犠牲者の数の理不尽な増加が国民感情に直結していると言うのであれば、その数は日本への恨みと憎しみの感情表現に他ならず、歴史事実とはなんの関係もない。 
 しかもその恨みと憎しみを愛国主義教育によって植えつけ、増幅させるのが中国の国策である限り、反日感情も、犠牲者数も、その主な部分は中国政府自らが創作したものだと言われても弁明できないだろう。 
 右のくだりで歩平氏はこうも述べた。 
「たとえば南京大虐殺の30万人という数字について、当然、根拠はありますが、これはたんに一人ひとりの犠牲者を足していった結果の数字ではありません。被害者の気持ちを考慮する必要もあります」 
 中国を代表する立場で、社会科学院の学者が、事実上、南京事件の犠牲者、30万人という数も、事実ではないと言っているのだ。 
 中国国民の感情の反映であれば、この数字もいつの日か、日中戦争全体の犠牲者の数が根拠もなく増加したのと同じく、増えていく可能性はゼロではないだろう。
要するに、一言で言ってしまえば、「中国の大東亜戦争時の犠牲者数は、人民の感情に比例する」ということであり、 これは政治的メッセージであるということです。

中国政府による発表は、このように多くの場合、真実や歴史とは関係なく、「政治的メッセージ」と受け取るべきなのです。

南京虐殺記念館に掲げられた政治的メッセージ「犠牲者数30万人」

そうして、この「政治的メッセージ」は、対外的だけではなく、中国国内でも広く流布されています。

たとえば、中国の首相である李克強が、かつて「中国の統計はあてにならない」と自ら述べています。中国の幹部ですら、中国のGDPの本当の値を知らないようです。

このような状況で、彼らは中国経済をコントロールしなければならないのです。これをたとえると、まるで夜中のハイウェイを車のライトもつけず、スピードメーターなしで走っているようなものです。いつどこで、事故が起こるかわかったものではありません。

歴史に関しても、南京虐殺は本来ファンタジーに過ぎないのですが、中国では30万人も虐殺されたとて歴史教科書などに掲載し、それで多くの人民が教育を受けます。それで、多くの人民が怒りを覚えて、反日デモなども政府演出による官製デモ以外の人民による自発的なデモを繰り広げました。

しかし、最近ではそれも下火になっています。なぜなら、反日デモをそのまま放置しておくと、いつの間にか反政府デモにすりかわってしまうので、最近では中国政府が反日デモを規制しているという有様だからです。

経済でも、歴史でも、真実を公表しないで、いつも「政治的メッセージ」を発信するという繰り返しを行っていれば、経済も破綻し、歴史観も破綻し、いずれとんでないことになるのは明らかです。

何よりも、政府は真実を知ろうとする人民を愚弄しているということになります。政府の力量不足で、経済があまりパッとしなくても、人は何とか生活できれば、たとえ貧乏であっても、それには耐えます。しかし、どんなに豊かであろうが、なかろうが、「政治的メッセージ」などの真摯さの欠如には耐えられません。

中国では、建国以来選挙はありません。だから中国には、私達が想定するような政治家など存在しません。存在するのは、官僚だけです。しかし、そんな中国でも、リーダーは選出されます。そうして、その中国のリーダーたちが、真摯であるかどうかは人民は、1〜2年でわかります。リーダーたちの、無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、人民も寛大たりえます。しかし、真摯さの欠如は許しません。決して許しません。人民はそのような者をに選ぶことを許しません。

中国が発信するメッセージはほぼ「政治的メッセージ」とみなすべき、そこに人民の声はない
今のところ、人民が反発しても、中国のリーダーたちは人民を弾圧して、仮初(かりそめ)の平穏を演出しています。そうして、国内外に自分たちの「政治的メッセージ」を発信して、何とか中国共産党の正当性を保持しています。

「政治的メッセージ」とは、自分たちの正当性をアビールするために発信するものです。正当性がはっきりしていれば、このようなメッセージを発信する必要などありません。

日本でも無論「政治的メッセージ」が皆無とはいいません。しかし、もともと選挙という民主的手段で選ばれる日本の政治家は、中国のリーダーたちのように、「政治的メッセージ」をあまり必要とはしません。

とはいいながら、日本でも政治家ではない財務省の官僚による「政治的メッセージ」が新聞などでよく見られます。先に示した、貿易収支の意味をあまり理解しないようなマクロ経済に疎い経済記者が、財務省の「政治メッセージ」である観測記事など、あまり吟味もしないままそのまま掲載したりしています。

そうして、政治家や政党も、「政治的メッセージ」を発信することもあります。しかし、中国と比較すれば、日本などの先進国では「政治的メッセージ」はかなり少ないほうです。これは、政治的メッセージの有無というよりも程度問題であると思います。

私達も、中国のメッセージは多分に「政治的メッセージ」が含まれていることを理解すべきです。そうして、中国の「政治的メッセージ」とはあたかも中国人民の感情を表すように装いながら、中国政府の正当性を主張するものです。それを理解せずに、中国と接すれば、真の中国が理解できなくなります。

しかし、このようなことは長続きするはずがありません。いずれ、中国の現体制は崩壊するものとみなすべきです。なぜなら、「政治的メッセージ」を頻発しなければ、成り立たない政府とはかなり脆弱だからです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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