2018年5月27日日曜日

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者―【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者

2018年5月、アメリカンフットボールの悪質な反則行為問題について、
羽田空港で取材に応じ、うつむく日大の内田正人監督

 日本大学アメフト部が起こした悪質タックル事件は、監督を辞任することを表明した内田正人氏(62)が“首謀者”とされたことで、混迷を極めた。問題のプレーは5月6日、関西学院大学との定期戦で起こった。パスを投げ終えて2~3秒後の無防備なQBに、日大選手が背後から猛タックル。倒れた選手は全治3週間のケガを負った。

 タックルをした選手は、「“(反則)やるなら(試合に)出してやる”といわれた」と周囲に話していたことが相次いで報じられ、内田氏の指示が疑われている。日大選手は関東学生連盟から処分を受け、内田氏は辞任を表明した会見で「一連の問題は全て私の責任」と語ったが、反則を指示したかについては語らず、関学大側に文書で回答するとしている。

 日大は、本誌・週刊ポストの取材に対して「監督についてはラフプレーを指示した事実はありません。ですから、現在は責任を問う状況になっていません」(広報部)と話していたが、結局は辞任に追い込まれた形だ。大学側がそこまで擁護し続けた内田氏とは、どういった人物なのか。

 スパルタで知られる日大の名将、故・篠竹幹夫監督のもとでQBとして活躍し、後にコーチとなって支えた。2003年に監督に就任すると、大学日本一を決める甲子園ボウルに5度の出場を果たす。昨年は27年ぶり21度目の日本一に導いた名将である。

 監督であると同時に、日大卒業後は大学に就職した職員でもある。保健体育事務局長という役職から、理事を経て、現在は5人しかいない常務理事となっている。日大関係者が明かす。

「内田さんは出世街道を歩んできた“日大エリート”です。日大には体育会の入部人数や予算を差配する保健体育審議会があり、その事実上のトップが内田さん。前トップが今の田中英壽理事長で、このポジションは日大の出世コースといわれています。

 内田さんは人事部長も兼ねていて人事権も持つ。学内では田中理事長の側近と見られており、“理事長に万一のことがあれば次は内田”といわれている実力者です」

 アメフト部の監督は辞任したが、大学の常務理事という立場は続くことになる。

【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

スポーツの世界では、スポーツ・インテグリティ(sports integrity)ということが最近いわれています。

これは、何かといえば、だいたい以下のことに集約されます。

1.「インテグリティ」とは、「高潔さ・品位」「完全な状態」を意味する言葉。 
2.スポーツにおけるインテグリティ(スポーツ・インテグリティ)とは、「スポーツが、様々な脅威により、欠けることなく、価値ある高潔な状態」。 
3.本来、スポーツには、人々を幸福にして、社会を善い方向に導く力があるといわれている。スポーツが本来持つ力を発揮するためには、誠実性・健全性・高潔性が守られていることが前提。
以下に、このスポーツ・インテグリティを脅かす要因についてのチャートを掲載します。



今回の事件はスポーツ・インテグリティを脅かすものであって、その結果あのような事件が起こってしまったものです。

スポーツ・インテグリティに関しては、笹川財団の行った昨年のセミナーのレジメが詳しいです。
「スポーツ・インテグリティについて考える」 

そうして、今回の事件では、スポーツ・インティグリティの毀損の理由としてガバナンスの欠如についてはあまり報道されていません。これに関しては、日大自体のガバナンスの欠如、それと学生スポーツそのものをガバナンスする機構が欠けているということをこのブログでは指摘しました。おそらく巷の報道よりは、かなりガバナンスについて突っ込んだものになっていると思います。

それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
日大悪質タックル問題 醜聞にまみれた米名門大の「前例」―【私の論評】我が国では大学スポーツという巨大資源をガバナンスの範疇から外し腐らせている(゚д゚)!
日大選手の記者会見 

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、日本では学生スポーツ全体をガバナンスする機関もなく、日大のガバナンスにも問題があること、特に内田正人氏が、日大の常務理事と監督を兼任していたことが問題であることと、日大自体のガバナンスの正当性に問題があること等を指摘しました。

この記事では、ガバナンスとはそもそも何かというその定義や、あるべき姿なども掲載しました。

また、ガバナンス(統治)の正当性については、以下のようにまとめました。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。 
そうして、この記事では述べませんでしたが、ガバナンスの正当性の根拠である「人の強みを活かす」ことであることはかなり重要なことです。そうして、この点を理解していないマネジメントも多いです。

そうして、これはマネジメントするもの、すなわちマネジャーのインテグリティに多いに関わっています。インテグリティは、スポーツ界はもとよりありとあるゆる組織のマネジャーに必要不可欠な資質なのです。

「インテグリティ」(integrity)とは誠実、真摯、高潔、整合性などの概念を意味する言葉です。組織のリーダーやマネジメントに求められる最も重要な資質、価値観を示す表現として、特に欧米の企業社会でよく使われます。

あらゆる組織のーのインテグリティ(誠実さ)を最優先し、法令順守だけでなく、より幅広い社会的責任の遂行と組織の倫理の実践を目指す広義のコンプライアンス経営を、インテグリティ・マネジメントと呼びます。

米国企業の経営方針や社員が守るべき行動規範を記した文面には、「インテグリティ」という言葉が頻繁に使われています。「人を雇うときは三つの資質を求めるべきだ。すなわち、高潔さ、知性、活力である。高潔さに欠ける人を雇うと、他の二つの資質が組織に大損害をもたらす」(スティーブ・シーボルト著『一流の人に学ぶ自分の磨き方』より)と語ったのは、世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏です。

ここで「高潔さ」と訳されている概念がインテグリティです。インテグリティを伴わない知性や活力は危険でさえあり、それならばいっそ愚かで怠惰な人間を雇うほうがましだと、バフェット氏は主張しています。


この言葉を好んで用い、インテグリティこそが組織のマネジメントを担う人材にとって“決定的に重要な資質”だと喝破したのが、経営学の大家ピーター・ドラッカーでした。ドラッカーはたとえば著書『現代の経営』で、次のように語っています。
マネジャーが学ぶことのできない資質、習得することができず、もともと持っていなければならない資質がある。(中略)それは、才能ではなく真摯(integrityの日本語訳)さである。 
部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法など、ほとんどのことは許す。しかし、真摯さ(integrity)の欠如だけは許さない。 
真摯さ(integrity)に欠けるものは、いかに知識があり才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させる。
三番目の言葉には、先述したバフェット氏の指摘との共通性も感じられます。とはいえ、「高潔さ」「真摯さ」といわれても、あまりに漠然としていて、いまひとつピンとこないのも事実です。

人を雇ったり、リーダーを選んだりする場合、要するに、インテグリティに優れた人とはどういう人のことなのか、具体像がこの言葉だけからではつかみにくいです。

実はドラッカー本人でさえ、「インテグリティの定義は難しい」と語っています。ただし、“インテグリティの欠如”を定義するのは難しくないとしています。ドラッカーは、インテグリティの欠如した人物の具体例を、『現代の経営』中で次のように列挙しています。
  • 人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
  • 冷笑家
  • 「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者
  • 人格より頭脳を重視する者
  • 有能な部下を恐れる者
  • 自らの仕事に高い基準を定めない者
上記のような者は、たとえ他の何かが優れれていたとしても、真摯さ(integrity)に欠け、組織を腐らせるとしています。

マネジメントの担い手としてインテグリティに優れた人材を充てようと思ったら、逆に、このような“インテグリティの欠如”を物語る特徴にフォーカスして人を判別すべきだと思います。

ドラッカーは「真摯さ(integrity)は習得できない。仕事についたときにもっていなければ、 あとで身につけることはできない。 真摯さはごまかしがきかない。 一緒に働けば、その者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。 部下たちは、無能、無知、頼りなさ、無作法など、 ほとんどのことは許す。しかし、真摯さの欠如だけは許さない。 そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない」としています。

さて、日大の内田正人常務理事はどうなのでしょうか。会見などでの発言を聴いている限りでは、真摯さに欠ける面があるようにも、思われます。

日大の理事会は、内田氏に限らず、理事の中に真摯さに欠ける人間がいるかどうかを精査すべきです。ドラッカーが指摘するように、理事会にともに他の理事働いたことのある理事は、すでにそれを判別できるはずです。



日大理事会は、真摯さに欠ける理事がいたら、すぐにもそのような人物は辞任させ、真摯さに欠けない人間だけで、理事会を構成するようにして、今一度スポーツだけではなく、すべての分野においての統治機能を強化するべきです。それが今回の不祥事のようなことを起こらないにするための第一歩です。

これをしなければ、日大の組織は完璧に腐敗し、いずれ崩壊することになります。なぜなら、どんな組織も社会が許容するから存続が許されているのであり、社会が許容しなければ、どんな巨大組織であっても一夜にして崩壊するからです。

現状を放置すれば、やがて日大もそのような運命をたどることになるでしょう。

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2018年5月26日土曜日

【日本の解き方】「愛媛県文書」でまた大騒ぎ 生かされない1年前の経験、面会の有無は本質ではない―【私の論評】今のままいけば安倍総理3選、次期衆参議員選挙での勝利は間違い無し(゚д゚)!

【日本の解き方】「愛媛県文書」でまた大騒ぎ 生かされない1年前の経験、面会の有無は本質ではない

愛媛県が公開した内部文書を安倍首相は否定

 愛媛県は加計学園の獣医学部新設をめぐり、安倍晋三首相が加計孝太郎理事長と3年前に面談し、獣医学部新設構想の説明を受けたとされる内部文書を公開した。安倍首相と加計理事長は否定している。

 約1年前、「首相の意向」と書かれた文部科学省の文書がリークされた。筆者は当時、その文書を「内容が盛られた文科省当事者の一方的なメモ」と断じた。役所のメモでは、そこに書かれた人のチェックがなければ書きたい放題になることは筆者自身も何回も経験していたからだ。その後、文科省の当事者である前川喜平・元事務次官ら関係者による国会審議でも、「首相の意向」などは立証されていない。

 この文科省文書の例でわかるように、いくら真面目な県庁職員だったとしても、相手の確認済みでないと、盛った話が多いので、証拠能力のある公文書にならない。公明党の山口那津男代表も「また聞きのまた聞きのようなメモだ」と言っている。

 それなのに、一部野党やマスコミは、あたかも書かれたことが正しい事実かのように報道している。1年前の経験が何も生かされていない。

 面談したとされる3年前の2月25日の新聞各紙の首相動静に記載はない。もっとも、不公表の人もいるため、会わなかったという直接の証拠にはならない。しかし、マスコミは官邸周辺の定点カメラを調べれば、出入り車両はチェックできる。加計問題が騒ぎになっていない3年前のことなので、それにも映らない官邸への秘密ルートを使うインセンティブ(動機付け)はないだろう。また、加計理事長が上京したかどうかも確認すればいいことだ。

 一般論であるが、2月25日は、予算案が自然成立するかどうかで衆院予算委員会が佳境なので、アポイントメントは避けるのが通常である。

 仮に安倍首相と加計理事長が会っていたとしたら、どのような問題があるのだろうか。本コラムで再三繰り返してきたが、特区で行ったのは学部新設の認可の「申請」であり、試験を受けさせるようなものだ。認可自体は文科省が行ったので、特区は認可とは無関係であり、試験の合否に関わっていないといえる。ここでも「安倍首相が認可に関与した」という当初の話から、首相が言った言わないという話にすり替えられている。

 1年前の文科省文書の時には、前川氏は、「文科省行政がゆがめられた」と言った。ところが、事実は文科省の認可は一切変わっていないので、この発言は間違いだったといえる。特区によって認可の「申請」はできたが、これを拒否していた文科省告示は、認可制度の下で法律違反である。もし加計学園が行政不服審査で訴えれば文科省(国)は確実に負けるので、特区で申請だけを許したわけだ。この意味で、ゆがめられていた文科行政が正されただけだ。

 今回の愛媛県文書はまるで1年前の文科省文書問題を繰り返しているようだ。万一事実でなかった場合、メモの提出者とそれを裏取りなしで報道した多くのマスコミの責任は大きい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今のままなら安倍総理3選、次期衆参選挙での安倍政権勝利は間違い無し(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事にもある、愛媛県は加計学園の獣医学部新設をめぐり、安倍晋三首相が加計孝太郎理事長と3年前に面談し、獣医学部新設構想の説明を受けたとされる内部文書内容について、本日加計学園が明確に否定しています。

加計学校法人「加計学園」は26日、愛媛県今治市への獣医学部新設に関し、安倍晋三首相と学園の加計孝太郎理事長が平成27年2月に面会したとの記載がある同県の新文書について「当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えた」とのコメントを発表しました。両氏の面会については、首相も学園側も事実を否定していました。

学園側は、誤った情報を伝えた理由について「獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探していた」と説明。その上で「担当者の不適切な発言が関係者の皆さまに迷惑を掛け、深くおわびする」と陳謝しました。

県の新文書によると、県職員が27年3月3日に学園関係者との打ち合わせの際、学園側から「2月25日に理事長が首相と15分程度面談した」との報告を受けました。加計氏は「今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指す」などと説明し、首相は「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたと記されています。

県は今月21日、新文書を国会に提出しました。ただ、首相は22日の衆院本会議で、新文書にある加計氏との面会について「ご指摘の日に理事長とお会いしたことはない」と否定していました。

以下が、そのコメントを各報道機関などに発信したフアックスです。


当時の首相と加計理事長の面談は、首相も学園側も明確に否定していました。明確に否定ではなく、記憶が曖昧などとしていれば、会った可能性もありますが、両者が明確に否定していたのですから、その可能性はほとんどないと考えるのが普通だと思います。

どうしても、それが信じられないというのなら、新聞などの報道機関は、ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏が指摘するように、官邸周辺の定点カメラを調べれて、出入り車両をチェックすれば良いですし、加計理事長が上京したかどうかを確認するなどのことをすれば良いのです。

それをしなかったのでしょうか。あるいは実施して加計理事長が安倍総理と面談した事実はなかったことを知った上で、あたかも会ったかのように報道しているのでしょうか。そのいずれであっても、大問題です。

さらに、冒頭の記事て、高橋洋一氏は、仮に安倍首相と加計理事長が会っていたとしたら、どのような問題があるのだろうかとして、特区で行ったのは学部新設の認可の「申請」であり、試験を受けさせるようなものだと指摘しています。認可自体は文科省が行ったので、特区は認可とは無関係であり、試験の合否に関わっていないといえるとしています。

これを高校受験にたとえると、高校受験そのものが文部省の規制で何十年も規制されているという異常事態が続いてたので、特区の中にある高校に関しては、受験しても良いということを決めたということです。その後の受験そのものに関して、従来通りのやり方で実施されており、何ら手心を加えたということはないのです。

しかし、受験生の親がたまたま、校長と友達だったので、裏口入学をさせたのではないかというような勘ぐりをされたというようなものです。

一緒にゴルフをする加計理事長(左)と安倍総理(右)

多くの報道機関や、野党が「疑惑が深まった」などとして、騒いでいますが、この事件の背景はこのような単純で、誰にも理解できることなのです。

要するに、安倍総理が加計理事長と友人同士の間柄なので、何らかの手心を加えたのではいないかと勘ぐりをしているというだけのことです。

勘ぐりで「疑惑が深まった」とするのは、本当に無責任です。本来なら、明確な証拠をあげるべきなのです。しかし、野党も報道機関もそれなしにもう一年以上も「疑惑は深まった」というばかりです。安倍総理はもとより、誰一人それで何らかの犯罪などの容疑者になった人間もいません。

こうした状況が続けば、テレビや新聞だけが情報権の人たちであるいわゆるワイドショー民もこの疑惑追求には飽々するでしょうし、今すぐにではないにしても、真相はじわじわとこれらの人たちにも伝わっていくことになると思います。

ワイドショー民にも飽きられた「加計報道」

そうして、その頃にはまずは自民党総裁選が行われることになります。この時点では、真相はかなりの人に伝わるでしょうし、自民党の中では当然のことながら、周知の事実となり、安倍総理の3選はよほどのことがなければ、確実になるでしょう。加計問題での疑惑追求は何の影響も与えないでしょう。

さらに、次の参議院選挙、衆議院選挙になれば、さらに多くの人々に真相が伝わり、加計問題などで首相に疑惑を抱く人など圧倒的少数になるでしょう。そうすると、その時点では安倍自民党政権がまた大勝利をすることになるでしょう。

そうして、選挙のたびに野党離合集散を繰り返し、自ら真綿で首を絞めるように、弱体化することになるでしょう。

野党は、もう国民を愚民扱いをするのはやめるべきです。今のままだと、次期の自民党総裁選選挙では安倍総理の3選確実でしょうし、次期の衆参選挙も安倍自民党政権が勝利するのも確実でしょう。

本当は、野党も「もりかけ」で無駄時間を費やしている暇はないはずです。マスコミもいたずらに、野党勢力の弱体化に精力を費やしている暇はないはずです。

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2018年5月25日金曜日

【米朝会談中止】北、中国傾斜加速か 正恩氏、目算外れ窮地―【私の論評】正恩はオバマが大統領だった頃とは全く状況が違うということを見抜けなかった(゚д゚)!

【米朝会談中止】北、中国傾斜加速か 正恩氏、目算外れ窮地

金正恩

   米朝首脳会談に向け、「いかなる核実験も必要がなくなった。核実験場も使命を終えた」との宣言を実行するかのように北東部、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長。爆破直後のトランプ米大統領の反応はまさかの首脳会談の中止通告だった。自らが描いた行程表通りに事を進めていた金正恩氏だが、目算は完全に外れた。

 金正恩氏は1月の「新年の辞」で対米非難の一方、韓国に「緊張緩和のためのわが方の誠意ある努力に応えていくべきだ」と主張。以降、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮の期待に応じ続け、南北首脳会談を行い、「歴史的」な初の米朝首脳会談を控える段階にあった。

 今回の核実験場爆破を北朝鮮は、外国メディアに現地取材させ「核実験中止の透明性の確保」(4月20日の党中央委員会総会での政策決定)を誇示した。米朝首脳会談に向け非核化の意思を行動で示すことで、北朝鮮が米国に対し「一方的な廃棄要求には応じない」と相応の措置を求めてくるのは必至とみられていた。

 現に実験場廃棄の表明段階から、ロシアが米国と韓国に「適切に呼応する措置を取るべきだ」(露外務省の声明)と呼びかけるなどの“後押し”が金正恩氏を勇気づけた可能性もある。だが、トランプ政権の米国は、はるかにその上を行った。トランプ氏以下、米政府高官はこれまで「北朝鮮には二度とだまされない」と繰り返していた。

 北朝鮮は2008年にも海外メディアを前に寧辺(ニョンビョン)の核関連施設を爆破したが、その後も核実験を継続。最終的に金正恩氏が昨年11月末に宣言した「国家核戦力完成」に至った。

 今回爆破した実験場も「過去の実験で崩壊状態にあり、価値がない」(南成旭(ナム・ソンウク)高麗大教授)との見方が多い。6回の核実験を行った用済みで不要な核実験場を廃棄しただけの可能性もある。核開発中止の保証はなく、北朝鮮は核を廃棄せず保有している。

 「朝鮮半島非核化のためにわが国が主導的に講じている極めて有意義かつ重大な措置」と強調し核実験場爆破を見せた北朝鮮。金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官の16日の談話に続き、24日にも崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官の談話で、米朝首脳会談の再考を警告した。

崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官

 譲歩の姿勢を見せる一方、要求が受け入れられないと交渉決裂を繰り返してきた北朝鮮。その裏切りの前例から疑念を捨てていない米国を、北朝鮮は甘く見ていた。金正恩氏にとって、米国の即座の反応は予想外だったに違いない。

 追い込まれた金正恩氏としては、3月以降、2度訪問し関係改善に努めている中国から手を差し伸べてもらうしかない。選択肢は限られ、北朝鮮が中国への傾斜を強めるのは必至とみられる。

 今年、平昌五輪を機に韓国に接近し、南北首脳会談で笑顔を振りまいた金正恩氏だったが、局面は一気に変わり、窮地に追い込まれた。同時に北朝鮮をめぐる“つかの間の春”は暗転し、朝鮮半島情勢は混迷と緊張が再現しそうな状況となった。

【私の論評】正恩はオバマが大統領だった頃とは全く状況が違うということを見抜けなかった(゚д゚)!

今回の米国の反応は、予想どおりのものでした。これについては、以前何度か掲載してきした。一番新しいのは以下のものです。
米韓首脳会談、文氏「仲介」は完全失敗 トランプ氏は中朝会談に「失望」怒り押し殺し…米朝会談中止も―【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!
文大統領(左)と会談したトランプ大統領(右)。金正恩氏の勝手にはさせない

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみ掲載させていただきます。
いずれにせよ、金正恩が過去1年間で恐喝、融和、手のひら返しのような様々な策を弄しているうちに、米軍は目的、目標、期間、規模、効果の観点からありとあらゆる方式で北朝鮮を攻撃する方法をシミレーションならびに演習を通じて実行できる体制を整えているのは間違いないです。軍はすぐにでも行動に移せる状態になっていることでしょう。
現在の米軍の北朝鮮対応力は1年前から比較すれば、格段に向上しています。昨年は、北朝鮮の海域に空母打撃群を3つも派遣しながら、結局攻撃しなかったのは、準備が整っていなかったからです。

そもそも、政治や安全保障に経験がないトランプ氏が大統領になったばかりでしたし、米軍のほうは、オバマ政権による軍事予算の削減で、かなり弱体化していました。さらに、オバマ前大統領のいわゆる「戦略的忍耐」が追い打ちをかけ、米軍が北朝鮮を攻撃することを思いとどまらせました。

「忍耐」と言えば、その背後に高尚な戦略、ないしは哲学が控えていると受け取る楽天主義者がいるかもしれませんが、オバマ氏の「忍耐」の場合、どうやらその文字のごとく、もっぱら黙ってきただけです。もしオバマ氏が戦略的「忍耐」ではなく、関与政策を実施していたならば、金正恩ものんびりと核開発に専心できなかったでしょう。
オバマ前大大統領

北は2006年に最初の核実験に成功しました。それから着実に核の小型化、核弾頭搭載可能の弾頭ミサイルの開発、プルトニウム爆弾だけではなくウラン原爆にも手を広げ、水爆実験も実施しました。

これらのことが全て事実とすれば、北は11年余りで、核計画を急速に進展させたことになります。その11年間のうち8年間はそっくりオバマ前政権下でした。北の核開発問題ではオバマ政権の責任が問われる理由はまさにここにあるわけです。

もちろん、オバマ大統領は国連安全保障理事会を通じて北に制裁を課してきましたが、その政策は終始中途半端でした。オバマ政権は北が核開発を急速に進めている中、米独自の軍事的圧力の行使は控えていました。

金正恩氏は父親から“金王朝”を継承した後、計4回の核実験を実施しました。そして北の過去6回の核実験のうち、4回はオバマ政権下でした。北側からオバマ政権は軽く見られていたことが推測できます。「オバマなら口で批判するが、何もしない。軍事制裁など全く視野にないだろう」と受け取られてきたわけです。

オバマ政権の8年間は北がその核開発を急速に進歩させた期間と重なります。
2006年10月 9日 1回目の核実験。プルトニウム型
09年 5月24日 2回目。プルトニウム型 (同年オバマ政権誕生)
13年 2月12日 3回目。小型化成功と主張  (同年オバマ政権二期目に入る)
16年 1月 6日 4回目。水爆成功と主張
9月 9日 5回目。核弾頭爆発実験成功と主張
17年 9月 3日 6回目。大陸間弾道ミサイル(ICBM)弾頭部に装着する水爆実験成功と発表。
18年 1月 トランプ政権誕生
(出所・時事通信)
繰返しますが、「核の小型化」、「核弾頭爆発実験」、「水爆実験」、「ICBM用の水爆実験」といった核開発計画の重要ステップはオバマ氏が忍耐している最中、北側が着実に達成していった技術的成果です。

クリントン米政権時代の国防長官を務めたウィリアム・J・ペリー氏は昨年初め、オバマ政権の対北政策「戦略的忍耐」について、「核・ミサイル開発はむしろ進み、状況は悪化した」と指摘している一人です。

いかなる軍事活動にもそれを指示した指導者の責任が問われる。北朝鮮の核問題では、オバマ氏は「忍耐」という名でその責任を回避してきた大統領だったといえます。

オバマ政権ではない政権が米国に誕生したという事実が、米国の対北朝鮮政策を根本的に変えたてのです。ただし、過去の1年間は、先に述べたように、政治や安全保障に経験がないトランプ氏が大統領になったばかりであったこと、軍事予算の削減で米軍がかなり弱体化していたこと、オバマ前大統領の「戦略的忍耐」による負の遺産により米軍が北朝鮮を攻撃することを思いとどまらせただけだったのです。

もしオバマ大統領が「戦略的忍耐」で責任を回避せず、本格的な制裁や、軍事制裁を検討していたとしたら、金正恩は今そこにある危機に対応するため、核兵器開発など後回しにし、通常兵力を強化していたに違いありません。

ところが、オバマの「忍耐」を良いことに、金正恩は通常兵器の強化は後回しにして、核兵器の開発に多くの資源を割当あてました。

そのため、現状の北朝鮮軍の通常兵器はかなり遅れています。まずは、防空体制ゼロといっても良いような状況になっています。北朝鮮のレーダーは40年前のもので、これでは現在のステルス機に対しては全くの無防備です。

戦闘機も、40年前からほとんど新しいものは導入されておらず、かつて中東上空や、ベトナム上空で米軍など先進国の空軍ととわたりあったこともある北の面影は今は全くありません。


たとえば、上は北朝鮮空軍の防空訓練の様子を撮影したとされる写真です。撮影日時、場所は不明です。写っている軍用機は、旧ソ連製のMIG21戦闘機とみられます。MIG21は1956年に初飛行し、東西冷戦時代には東側の主力戦闘機となった代物です。北朝鮮空軍ではこの古い機体が今でも使われています。

陸軍も、装備は貧弱で50~60年代のものが主力となっており、なかには第二次世界大戦で運用された兵器もあります。

個人装備もベトナム戦争で南ベトナム解放戦線(ベトコン)がアメリカ軍を相手に使ったAK-47が主力のようです。

ただし、数は多く、旧式といえども戦車だけでも3000両以上を保有しており、数だけならば自衛隊の定数300両を大幅に超えます。しかし、数が多くても、米韓軍の敵ではありません。

なぜこのようなことになったかといえば、核兵器の開発に力を奪われ、通常兵力の整備がおろそかになったからです。

実際に、通常兵力同士の戦いになったとしたら、北朝鮮には全く勝ち目はありません。頼みの綱の核兵器は、実際に使えば、米国に北核攻撃の格好の口実を与えることになり、おいそれと使えるものではありません。

それでも、国家破綻の淵に追い込まれれば、使う可能性もありますが、その兆候がみられれば、今や北朝鮮の情報に隅々まで精通した米軍により発射の前に叩かれてしまうことでしょう。叩きもらしも若干でるかもしれませんが、発射された核ミサイルも撃ち落とされる可能性は高いです。

金正恩は戦略を誤りました、昨年米軍が北を攻撃しなかったため、事態を軽くみてオバマが大統領だった1年前とは全く状況が違うということを見抜けませんでした。

一方米朝首脳会談が中止されたことで、アメリカは中国への圧力をさらに強めることになるでしょう。すでに貿易摩擦に発展している中興通訊(ZTE)への制裁に関しても、トランプ大統領は最大13億ドルの罰金を科すとともに経営陣の刷新を求める案を明らかにしています。

ウィルバー・ロス商務長官はアメリカ側が選んだ人物をZTEに送り込み、同社に法令順守部門を設置させる可能性も示唆しています。中国としては、アメリカによる査察体制の受け入れを許せば他業種にも波及する恐れがあるため、この条件はのみたくてものめないでしょう。

それに先立って行われた米中通商協議では、中国がアメリカの製品やサービスの輸入を大幅に増やすことで合意しましたが、アメリカが求めていた対米貿易黒字の2000億ドル削減については具体策な言及がなく、成果は乏しいものでした。

中国としてはZTEの制裁を緩和してもらいたいのはやまやまでしょうが、米議会が強硬に反対している以上は望み薄です。そこで、輸入拡大でお茶を濁しているという苦しい事情が見て取れます。

アメリカの国防権限法案には先端技術を保有する企業同士の買収を禁じる項目なども入っており、このままいけば、かつての対共産圏輸出統制委員会(ココム)のような仕組みがつくられる可能性もあるでしょう。

冷戦期に自由主義陣営を中心に構成されたココムは、共産圏諸国への軍事技術や戦略物資の輸出規制を目的とした組織です。すでにアメリカは知的財産権の侵害を理由に中国製品に対する制裁を進めていることからも、今後は中国を狙い撃ちにするかたちの21世紀版ココムがつくられたとしてもおかしくないです。

ココムというと、日本では東芝機械ココム違反事件が有名です。これは、1987年に日本で発生した外国為替及び外国貿易法違反事件です。共産圏へ輸出された工作機械によりソビエト連邦の潜水艦技術が進歩しアメリカ軍に潜在的な危険を与えたとして日米間の政治問題に発展しました。

習近平(左)と金正恩(右)

このような厳しい規制がさらに強化され制裁の次元に高まれば、中国経済はガタガタになります。そうなると、中国とて北朝鮮の後見をしたとしても、自国が苦しむだけになります。北朝鮮に肩入れすることはやめることになるでしょう。

いずれにしても、米中が本格的貿易戦争ということになれば、中国には全く勝ち目はありません。であれば、中国はいずれ北を完璧に見放すことになるでしょう。そのとき北朝鮮の命運は完璧に絶たれることになるでしょう。

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2018年5月24日木曜日

日大悪質タックル問題 醜聞にまみれた米名門大の「前例」―【私の論評】我が国では大学スポーツという巨大資源をガバナンスの範疇から外し腐らせている(゚д゚)!


日大選手の記者会見  写真はブログ管理人挿入

日大アメフト部の悪質タックル問題、2つの会見を経た後も釈然としない思いが残った。立教大学体育会野球部に所属していた過去があり、現在も立教大学非常勤講師として、「スポーツビジネス論~メジャーリーグ1兆円ビジネス」の教鞭を執るスポーツジャーナリストの古内義明氏が指摘する。

* * *

 5月22日に日本記者クラブで、日本大学アメリカンフットボール部の当該選手の会見を見て、胸が痛くなった。日本中が注目し、社会問題となる中、彼は身分を証し、自分の言葉で謝罪する決断をしなければならなかった。会見場には日大アメリカンフットボール部はおろか、日大の関係者の同席もない中で、20歳の若者一人が350人を超えるメディアの前に立つような状況に、なぜ追い込まれてしまったのか、大学スポーツに関わる身として、激しい憤りを感じざるを得なかった。

 コンタクトスポーツの世界において、彼が行った故意によるラフプレイは許されるものでは決してない。しかし、彼が発した「事実を明らかにすることが、償いの第一歩」という真摯な態度は関西学院大学アメリカンフットボール部のクオーターバックの選手とそのご家族、そして関係者の方々に届いていたと信じたい。

 私はアメリカの大学院に進み、スポーツ経営学の修士課程で学ぶ中で、全米大学体育会協会(NCAA)の存在意義、そして、カレッジスポーツの関係者と話す機会に幾度となく恵まれた。その経験から今回の問題で、真っ先にNCAAの歴史に汚点を残したペンシルベニア州立大学のスキャンダルを思い出した。

ペンシルベニア州立大学アメリカンフットボール部の監督だったジョー・パターノ

 ペンシルベニア州立大学アメリカンフットボール部は「ビッグ10カンファレンス」に所属する強豪であり、2度の全米チャンピオンに輝く名門校だ。陣頭指揮を執るジョー・パターノ監督は46年間もサイドラインに立ち続けたカリスマ的な名将であり、カレッジフットボールの殿堂入りも果たしている。

 2011年、その名将の右腕のアシスタントコーチだったジェリー・サンダスキーが15年間に渡り、8人の少年に性的虐待をしていたことが発覚し、全米を震撼させた。大学理事会の対応は迅速だった。事の重大性に鑑みて、元FBI長官のルイス・フリー氏を長とする外部委員会を設置し、調査を依頼。出来上がった報告書によると、「パターノ監督が事件の隠蔽工作を積極的に指揮していた」という衝撃的な事実が明らかになった。

ジェリー・サンダスキー(手前の赤い囚人服の男)

 パターノ監督はシーズン終了後の辞任を表明していたが、大学理事会はそれを許さず、伝説的な名将は解任された。と同時に、学長、副学長、体育局長という大学の要職も解任したのだ。さらに、10万6572人を収容するビーバー・スタジアムの前に立つパターノ監督の銅像も重機によって撤去された。

 統括団体となるNCAAの制裁措置は関係者の予想を上回る徹底したものだった。まずは、パターノ監督が「不祥事を知り得た時点」までさかのぼって、それ以降に記録した111勝は抹消された。これにより409勝の通算勝ち星は298勝となり、「歴代最多勝利監督」という栄誉も剥奪された。また制裁金として、当時のレートで約48億円という巨額の罰金の支払いを命じ、4年間に渡ってプレーオフ進出禁止と毎年10人分の奨学金停止も通達された。

 同校のあるペンシルベニア州のステートカレッジは4万人という小さな町であり、ペンシルベニア州立大学フットボール部はおらが町の誇りだった。スキャンダルが与えた経済的損失はもちろんのこと、何よりも名門校が受けたイメージダウンは避けられないものとなった。それでも、ペンシルベニア州立大学は高等教育機関として、ゼロからの出発を選んだ。監督はもちろんのこと、大学トップをも解任して、自らの襟を正す決断をしたのだ。

 だからこそ、今回の日本大学とアメリカンフットボール部の対応、そして世論との間にこそ大きな「乖離」があると言わざるを得ない。

立教大学第一食堂

 立教大学では「RIKKYO ATHLETE HANDBOOK」を作成し、体育会51部56団体に所属する2400人のすべての部員に配布している。この中には、立教大学の体育会活動を支える考え方をまとめた「立教大学体育会憲章」が掲載され、体育会学生であることの心構えが記載されている。学生は内容を習熟することで、スポーツ活動と学業を両立させる文武両道の精神のもとに、人間性を養うことがうたわれている。

 その憲章の中にある第7条(監督・コーチとの関係)では、「体育会各部の監督・コーチ(以下「指導者」という。)」は、体育会員に技術を指導し、スポーツを理解せしめ、その心身の健全なる育成を行う」(原文ママ)とある。指導者とは技術指導はもちろんのこと、学生に対してルールに基づいたスポーツの本質を教えることで、社会のためになる人間形成が求められている。

 23日夜になって日本大学アメリカンフットボール部の内田正人前監督と井上奨コーチがようやく会見を開いた。だが、該当選手の会見と、内田前監督や井上コーチの会見を聞き比べると、やはり何か釈然としない。また、2人の指導者が質問に対して、的確な回答をせず、どこか他人事であり、全て保身に走る内容という印象が残った。結果、該当選手か、指導者のどちらかが嘘をついていると言わざるを得ない歯切れの悪さが残る会見となった。

 今回の一連の問題で、大学は誰のためにあるのか、指導者は誰を守るのか、という本質論が浮き彫りになった。学生スポーツに関わる大人が、「選手に対して、自分の息子、娘のように考えられるか、どうか」。いま、その姿勢そのものが問われているような気がしてならない。

 【PROFILE】古内義明(ふるうち・よしあき)/立教大学法学部卒、同時に体育会野球部出身。ニューヨーク市立大学大学院修士課程スポーツ経営学修。立教大学では、「スポーツビジネス論~メジャーの1兆円ビジネス」の教鞭を執る。1995年の野茂英雄以降、これまで二千試合を取材するスポーツジャーナリスト。著書に、『メジャーの流儀~イチローのヒット1本が615万円もする理由』(大和書房)など、これまで14冊のメジャー書籍を執筆。(株)マスターズスポーツマネジメント代表取締役、テレビやラジオで高校野球からメジャーリーグ、スポーツビジネスまで多角的に比較・分析している。

【私の論評】我が国では大学スポーツという巨大資源をガバナンスの範疇から外し腐らせている(゚д゚)!

このブログでは、今回の「悪質タックル事件」に関して、統治(ガバナンス)の問題を指摘してきました。しかし、テレビや新聞の報道などでは、この統治の問題については全く指摘されていません。

米国では、20世紀初頭にアメフト競技による死亡・傷害事故が絶えませんでした。憂慮したセオドア・ルーズベルト大統領は、ガバナンス(組織の統治)を強化するために大学スポーツの連合体であるブログ冒頭の記事にもでてくる、NCAA(全米大学体育協会)の設立を主導しました。

日本の大学の場合、ガバナンスが弱いようです。関東学連でも強豪校が力を持ち、OBの影響力もあるので公平に対応するのは難しいようです。今はアメフト部員の入試や就職でも競技歴がものをいうが、規制らしい規制もなく、恣意的に行われてきたところがあります。

一部の大学スポーツは名誉のため、母校のため、監督の地位保全のためなど『悪しき勝利至上主義』になってしまっています。監督は口頭では指示していないと言っても、スポーツの世界には『無言の指示』『雰囲気の指示』も往々にしてあるようです。

関東学連にも、内田監督への抗議や批判を含む問い合わせが殺到、外部からの電話やメールに応対しきれずサーバーの限度を超えるほどの事態もあったといいます。ネット上では「協会が日大を除名するしかない」「連盟は日本大学を除名処分にするくらいの強硬な姿勢で望むべきだ」との声も挙がっています。

過去のブログではガバナンス(組織の統治)についてドラッカーの定義について以下のようにまとめました。
ガバナンスとは、当該組織が社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。組織のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。 
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
また、統治の正当性については、以下のようにまとめました。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。 
今回の事件においては、すでにこのブログでも述べてきたように、まずは日大側の統治の問題があります。そもそも、内田監督が、人事権を有する常務理事を兼任していることが、非常に問題です。

統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺するからです。内田監督を常務理事と兼任させている日大という組織は、統治能力が麻痺しているのではないでしょうか。そうだとすると、スポーツ関係だけではなく、他の分野でも様々な問題があるのかもしれません。

実際、この事件が発生してから、今日までの日大の対応ぶりをみると、統治能力が麻痺しているとしかいいようがありません。もし、内田監督が人事権を有するる常務理事を兼任していなければ、かなり大学側としても対応がしやすく、もっと早期に様々な対応ができ、あまり傷口を広げることなく、事件に対応できたと思います。

テレビや、新聞などでは、「危機管理能力」ということが繰り返しいわれていますが、そもそも、実行部門の「危機管理能力」が高かったにしても、統治機能が麻痺していれば、まともな対応などできるはずもありません。

【NCAAファイナルフォー】180の国や地域でテレビ放映されるビッグイベント

次に、日本には、全米大学体育協会(ぜんべいだいがくたいいくきょうかい、略称:NCAA, National Collegiate Athletic Association の略)という組織がないということも問題です。

この協会は主に、大学のスポーツクラブ間の連絡調整、管理など、さまざまな運営支援などを行っています。本部はインディアナ州インディアナポリスに設置されており、協会が運営する競技会の種目は、アメリカンフットボール、バスケットボール、野球、アイスホッケー、テニス、ゴルフ、陸上競技、アマチュアレスリングなど多彩です。

大学体育協会としては世界でも最大規模で、一部の競技ではリーグ戦がテレビ中継されるなど人気が高く、協会の権威や発言力は非常に高いものとなっています。そうして、この協会が、大学スポーツのガバナンスも担っているのです。

このような大学スポーツの統治を担う組織がないということも非常に問題です。以下に現状の日本の大学のスポーツの現状を掲載しておきます。

筑波大学が各スポーツ部(体育会)を一元的にマネジメントする「アスレチックデパートメント」(AD)を設置する方針を発表しました。昨年8月1日付で設置準備室が発足。室長には米大手スポーツ用品メーカー、アンダーアーマー(UA)の日本総代理店「ドーム」(東京・江東)の安田秀一会長兼最高経営責任者(CEO)が客員教授となって就任ましした。現在は各スポーツ部、チームに任されている安全対策や会計管理、コンプライアンス(法令順守)を、新たにADの管理下で強化する狙いがあります。

地味なニュースであまり注目はされていませんが、これは日本の学生スポーツが抱える根本的な問題を変革する画期的な試みだと思います。大学スポーツに関して最近、日本版NCAA(全米大学体育協会)という言葉をしばしば聞くようになりましたが、各大学でのADの設置はその実現のための前提となるはずです。

ADとは日本語では大学の体育局と呼ぶのが適当かもしれません。もっとも日本で体育局を設置している大学などほとんどありません。学生スポーツは大学が管理するものではなく、学生の自主的な活動として存在しています。各大学のスポーツ部は通常は任意団体であり、運営は学生やOBに任されている。大学側は部長を置くことはあっても、監督やコーチを選ぶ人事権を持たないし、活動資金を一部補助することがあっても会計報告などは受けません。

日本ではこのやり方がスポーツのあるべき姿のようにも感じるむきもあるようですが、実はさまざまな問題をはらんでいます。

一般的に大学のスポーツ部の運営費は現役部員からの部費がベースです。人気があってブランド力の高い一部のチームは、独自にスポーツ用品メーカーなどからユニホームや用具の提供を受け、リーグからの収益の分配やスポンサー料も入ってきますが、ほとんどのスポーツ部の活動資金は乏しいです。任意団体では赤字を繰り越すこともできないから、足りなくなれば結局、現役部員の負担を増やすことになります。

そんな状況では格闘技やアメリカンフットボール、ラグビーなど深刻な事故の起きやすい競技でも、その防止策にお金をかける余裕はありません。監督やコーチはほとんどのケースで大学と雇用関係のないOBが引き受け、十分な報酬が支払われることもありません。同時に厳格な会計管理が必要ないため、指導者らによる資金の私物化といった不祥事もしばしば起きます。ガバナンス(組織の統治)が効かず、リスク管理のシステムもないのが日本の大学スポーツの実態です。

少子化で学生数が減少する時代を迎え、大学にとって人気のあるスポーツ部は志願者をひき付ける重要なツールになってきました。一方で、スポーツ部で選手や監督の不祥事や練習中の事故など起きれば、大学のブランドは傷つき、イメージダウンとなります。

大学側がスポーツ部を教育を提供する各学部と同様の経営資源と考え、リスクを管理してその価値を最大化しようとするのは当然の流れです。

しかし、実際はその方向には進んではいません。伝統校になるほど学校による管理を学生やOBたちは嫌がります。大学側にもスポーツに新たに投資できるほどの財政的な余裕はありません。先の筑波大の挑戦は民間企業のドームの支援を受けて初めて可能になったものです。

ドームの本社オフィス 世界でもっとも「情報共有・伝達・意思決定」の速いオフィスを実現

ドームは日本のスポーツの産業化を会社の戦略として掲げています。スポーツ用品メーカーの成長にはスポーツ産業の健全な発展が不可欠というわけです。そのターゲットとなるのが大学スポーツ。筑波大のほか、関東学院大、近畿大などと包括的連携に関するパートナーシップを締結、スポーツによって大学のブランド力を向上させて収益につなげる取り組みを始めています。

これは日本版NCAAに向けての第一歩といえるのでしょう。本家のNCAAは約1200大学が関係する巨大組織で、アメフト、バスケットの試合の放映権料を中心に収入は年間1000億円を超えるとされます。これをモデルにスポーツ庁は日本版NCAAとなる統括組織を今年度には創設したいとしていすま。とはいえ、実際に各大学やチーム、リーグ、大会などがどう関わるのでしょうか。華やかなイメージは先行しても、具体的な姿は見えていません。

大学の統治下にないスポーツ部がばらばらに活動している日本の現状では、大学や競技を横断する統括組織を作ったところで機能しないでしょう。米国のNCAAではADがあるのが当たり前です。過度なビジネス化への批判もありますが、学業との両立に配慮して、練習時間の上限や一定以上の成績を収めなければ試合に出場できないことなどが各校共通のルールで定められていまする。「単位より、順位。」という宣伝ポスターが物議を醸した日本の学生スポーツでは考えられないことです。

ドームの安田CEOは「NCAAは各大学の意志の集合体」と言います。しかし、筑波大でもADによる統治をすべてのスポーツ部が了承しているわけではなく、サッカー部などとの個別の交渉はこれから始まります。ドームがほかに業務提携している他の大学では、筑波大のように一歩踏み出した動きはまだみられません。

日本版NCAAに関して、本家のようなスポーツ市場の誕生を期待する声がありますが、それははるかに先の夢物語です。まずはその価値を認めてスポーツ部を自らの責任でマネジメントしようとする大学が続々と登場し、ADの設置が日本の大学の常識となることが前提になります。大学スポーツ改革は10年や20年はかかる大変な作業になることでしょう。 

いずれにせよ、大学側がスポーツを学生の自主的な活動として、積極的にはかかわらないし、統治の範疇からも外すようなことが続けば、今回のような事件はこれからも起こり続けることでしょう。今の日本では、残念ながら、日本大学だけが例外ということではありません。

大学だけではなくNCAAのような団体が、大学スポーツ全体をまともに統治すれば、大学スポーツ自体が富を生み出す強力な資源ともなり得るのです。そうして、富を生み出すだけではなく、社会の中での大学スポーツの価値を高め、社会に貢献することもできるのです。無論それ以前に大学側が、積極的に大学スポーツを資源とみれば、大学スポーツの転機ともなり得ることでしょう。

多くの大学がそのような見方をするようになり、今や独立行政法人となった大学自体も大学スポーツを資源として活用するようになれば、いずれ日本版NCAAも可能になるかもしれません。そうして、この日本版NCAAが、成果をあげるだけではなく、人の強みを生かすことを基盤とすれば、日本社会から、正統なものとしてその存在を是認され、日本の大学スポーツを劇的に変えることになるでしょう。

そうして、日本版NCAAに関しては、最初からビッグビジネスなどを目指すのではなく、まずは日本の大学スポーツを統治する機構として発足させるというのが正しいあり方だと思います。

米国のNCAAの原型もそのような形でスタートしています。そうして、統治機構はさほど大きな組織でなくても、成果は十分あげられるのです。実際に、エリザベス朝のイギリス政府は、各省に数人の人間が割り当てられていただけでした。

それが、あの植民地を含めた広大な大帝国を統治したのです。他のことはほとんどせず、統治に集中したからこそ、それが可能になったのです。統治のみに集中するなら、日本版NCAAも意外とはやく設立することができ、大きな成果をあげることができるかもしれません。

各大学の「アスレチックデパートメント」(AD)も、当初は統治だけに専念をすれば、かなり成果をあげられると思います。そうして、その後もADは統治と実行を厳密にわけて実行していくべきです。これが曖昧になれば、また不祥事が起こることになります。これは、日本版NCAAも同じことです。大組織の不祥事は、統治と実行が曖昧になったときに発生するのが常です。

日本の大学スポーツが日本という国柄も考慮しつつ、一元的に統治されるようになったその暁には、今回のような事件は、現在の私達が、戦国時代を振り返るような過去のものとなるかもしれません。とにかく、大学スポーツという資源を活用しないままの日本で、大学スポーツが統治の対象から外れていると現状は何がなんでも是正しなければなりません。

そのような時代が本当に来ることを願ってやみません。
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2018年5月23日水曜日

米韓首脳会談、文氏「仲介」は完全失敗 トランプ氏は中朝会談に「失望」怒り押し殺し…米朝会談中止も―【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!


文大統領(左)と会談したトランプ大統領(右)。金正恩氏の勝手にはさせない

 ドナルド・トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、米国の条件に応じなければ米朝首脳会談(6月12日)を中止すると通告した。ホワイトハウスで22日(米国時間)に行われた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談で明言した。文氏は「米朝の仲介役」として米国に乗り込んだが、完全失敗に終わった。

 「われわれは一定の条件を求めている。それがなければ、(米朝首脳)会談は行われないだろう。会談は北朝鮮と世界にとって素晴らしい機会になる。行われなければ、会談は延期され、別の機会に行われるのではないか」

 米韓首脳会談の冒頭、トランプ氏は記者団にこう述べた。

 北朝鮮は16日、トランプ政権が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を理由に、米朝首脳会談中止を示唆した。得意とする「揺さぶり外交」の一貫だが、トランプ氏は改めて、北朝鮮に「完全非核化」を突きつけた。

 トランプ氏の批判は、北朝鮮に急接近している中国にも及んだ。

 今月7、8日に中国・大連で行われた習近平国家主席と正恩氏による2回目の中朝首脳会談について、トランプ氏は「少し失望している。なぜなら、正恩氏の態度に変化があったからだ」と怒りを押し殺した。

 大連会談で、正恩氏は「関係各国が責任をもって段階的かつ同時並行的な措置を講じ、最終的に朝鮮半島の非核化を実現させることを希望する」と主張した。習氏は、米朝首脳会談で非核化合意に達した場合、中国が段階的支援に乗り出すことが可能との考えを示したとも報じられている。

 トランプ政権は、経済、軍事両面で「最大限の圧力」をかけ、正恩氏を対話に応じさせた。その努力を中国が台無しにしようとしているとするなら大問題だ。

 中国という「後ろ盾」を得て再び、米国への反発に転じた北朝鮮に対し、マイク・ペンス副大統領はクギを刺した。21日に出演した米FOXニュースの報道番組で、「北朝鮮は守る気のない約束で、米国から譲歩を引き出すようなまねはしない方がいい」と述べ、軍事的選択肢を行使する可能性を「一切排除していない」と語ったのだ。

 米国、北朝鮮、中国による駆け引きが続くなか、「米朝の仲介役」を自認し、米国に乗り込んだ文氏の存在感はまるでない。北朝鮮にも会談をキャンセルされるなど、「韓国パッシング」に見舞われている。

【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!

昨年米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」伝えるテレビの画面

米軍が北朝鮮を先制攻撃した場合、最新資料では北朝鮮は1日で壊滅するといわれています。その根拠となるのは、2017年12月4~8日に実施された米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」です。

日本では戦闘機や偵察機など米韓両軍で230機が参加したと伝えられていましたが、11月29日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」発射したことを受けて260機に増強され、史上最大規模の軍事訓練となりました。

詳細はこれまで明らかにされてこなかったのですが、訓練内容を分析した文書を見ると本当に実戦さながらでした。米軍が本当に先制攻撃を仕掛けた場合、その攻撃力は想像を絶します。北朝鮮は報復攻撃さえできずに、早ければ1日で壊滅すると考えられます。

これまで米国が北朝鮮に対して先制攻撃を実行した場合、全面戦争に発展するのは避けられず、北朝鮮の報復攻撃によって日米韓は甚大な被害を受けることが予想されました。

特に非武装地帯(DMZ)の北方に配置された北朝鮮の多連装ロケット砲や長距離砲がいっせいに火を噴き、付近に展開している米陸軍第2歩兵師団が標的になるばかりか、ソウルが“火の海”に化す悲劇も現実味を帯びていました。

北朝鮮の長距離砲

過去、米国はクリントン政権時代の1994年に北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがありました。北朝鮮は93年に核拡散防止条約(NPT)を脱退した後、核実験と弾道ミサイル「ノドン1号」の発射を強行していたからです。

しかし、米国が空爆を実行すれば、朝鮮戦争の再開が危惧されました。開戦から90日で米軍の死者5万2千人、韓国軍の死者49万人、韓国の民間人の死者は100万人以上に達するという衝撃のシミュレーション結果を、当時の在韓米軍司令官がホワイトハウスに報告し、攻撃を中止したという経緯がありました。

いま、ICBMの完成を目前にして、核弾頭の実戦配置も終了したと考えられる、北朝鮮の“脅威”は当時の比ではありません。当然、米国本土も無傷では済まないはずです。

ところが、この想定は米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」によって覆されました。米韓両軍が先制攻撃で遂行する作戦とは、一体いかなるものなのか、公開されている資料などから以下にまとめます。
攻撃は段階的に行われますが、最初に出動するのは3機の電子戦機『EA‐18G』です。電波を発射して北朝鮮のレーダー網を完全に麻痺させ、さらに対レーダーミサイルで通信基地を破壊する攻撃機です。実際、訓練中にも北朝鮮のレーダー網を麻痺させてしまったようです。このため、北朝鮮は演習内容をまったく把握できなかったといわれています。 
北朝鮮の通信網を無力化し、制空権を完全に奪ったところで、ステルス戦闘機のF35AやF22が出動。迎え撃つ北朝鮮の空軍を相手にすることもなく、ミサイル基地や生物兵器、大量破壊兵器関連施設など最優先のターゲットを次々と精密爆撃します。 
F35A
むろん、ソウルを照準にしたDMZ周辺の長距離砲陣地も完全に叩きます。反撃能力を潰えさせた後、ステルス機能のないF-15、F-16戦闘機、B-1B爆撃機が残る主要軍事施設を思うがまま絨毯爆撃するという手順です。
B-1B爆撃機
開戦となれば、金正恩朝鮮労働党委員長は要塞化された地下作戦部に身を潜めることになるでしょう。ところが、通信衛星で金氏の動きは捕捉され、バンカーバスター(地中貫通爆弾)を搭載したF-35Aが“斬首作戦”を実行します。
さらに驚くのは、260機もの戦闘機の上空で早期警戒管制機『E-8ジョイント・スターズ』という航空機が展開することです。1度に600カ所の目標物をレーダーで探知し、優先順位を決めて、すべての戦闘機に攻撃の指揮、管制をします。 
E-8ジョイント・スターズ 
おまえはこの基地を撃て、おまえはあそこを撃てというふうに、設定された軍事目標を一気呵成にしらみ潰しにしていくのです。その指示作業を確認する訓練も行われました。もはや、作戦は完璧に組み立てられています。もちろん、撃ち漏らしはあるでしょうが、開戦となれば、これまで考えられていたような反撃能力が北朝鮮に残っているとは考えにくいです。
仮に、北朝鮮が同時多発的な攻撃を企てたとしても、ほとんどのミサイルが液体燃料のため注入に1~2日かかります。その動向がキャッチされると戦争準備と認められ、米国にとってみれば先制攻撃の口実になります。
やる気になれば、米軍は韓国や日本に従来考えられていたほどの壊滅的な打撃を受けさせることなく、北朝鮮を蹂躙できるわけです。

金正恩として、金王朝存続のためトランプ大統領に北朝鮮の核保有を認めさせたいのでしょうが、トランプ大統領のほうはその気は全くありません。

米国は、北の完璧な核放棄がない限り、いずれ北に攻撃を仕掛けることになるでしょう。現在は、攻撃するにしても、どの規模で、どれくらいの期間攻撃するかを決めるため機会をうかがっているとみるべきでしょう。それでも、金正恩が核放棄に応じれば、別の道を用意する心づもりもあることでしょう。

いずれにせよ、金正恩が過去1年間で恐喝、融和、手のひら返しのような様々な策を弄しているうちに、米軍は目的、目標、期間、規模、効果の観点からありとあらゆる方式で北朝鮮を攻撃する方法をシミレーションならびに演習を通じて実行できる体制を整えているのは間違いないです。軍はすぐにでも行動に移せる状態になっていることでしょう。

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2018年5月22日火曜日

日大選手「意見を言える関係ではなかった」一問一答―【私の論評】統治の正当性が疑われる、日大常務理事としての内田氏(゚д゚)!


日大アメフト悪質反則問題で会見に臨んだ日大・宮川さん

アメリカンフットボールの定期戦での悪質な反則行為で関学大の選手を負傷させた日大の宮川泰介(20)が22日、都内の日本記者クラブで会見を行っい、内田正人前監督、井上奨コーチから反則行為の指示があったことを明らかにした。以下、一問一答。

 -内田前監督の存在とは

 「日本代表に行くな」と言われた時もそうだが「なぜですか」と意見を言えるような感じではなかった。

 -どこで判断を誤ってしまったのか

 試合があった1週間を通して監督、コーチからプレッシャーがあったにせよ、プレーに及ぶ前に自分で正常な判断をするべきだった。

 -自身のスポーツマンシップを、監督の指示が上回ってしまった理由は

 監督、コーチからの指示に対して、自分で判断できなかった自分の弱さだと思う。

 -監督、コーチがそれだけ怖い存在だったということか

 はい。

 -指示は「つぶせ」という1つだけだったか

 コーチから伝えられた言葉は、「つぶせ」という言葉だったと思う。上級生の先輩を通じて「秋の関西学院大との試合の時に、QBがけがをしていたらこっちが得だろう」という言葉もあり、けがをさせる、という意味で言っているんだと認識した。

 -日大側は、指導とその受け取った方に認識の乖離があったとしているが

 自分としては、そういう(けがをさせる)意味で言われている以外に捉えられなかった。

 -ご自身にとってアメリカンフットボールとは

 高校の頃からアメリカンフットボールを始めた。コンタクトスポーツを初めてやるとあって、とても楽しいスポーツだと思い、熱中していた。ただ、大学に入って、厳しい環境というか、そういうもので徐々に気持ちが変わっていってしまった。

 -気持ちはどのように変わったか

 好きだったフットボールが、あまり好きではなくなってしまった。

 -今後について

 もちろん、アメリカンフットボールを続けていく権利はないと思う。この先、アメリカンフットボールをやるつもりもありません。何をしていくべきか分からない状態。

 -内田監督の会見の印象

 僕がどうこういうことではない。

 -日本代表に行くなと言われて「はい」としか言えなかった。日頃から、否定できない空気があったのか

 基本的に監督と直接会う機会はあまりない。意見を言えるような関係ではなかった。

 -今後、関学大側や被害者の方から、もう1度競技に戻るよう勧められるようなことがあれば、やったほうがいいのでは

 今は、考えられない。

 -試合の整列時に、井上コーチから「できませんでした、じゃ済まされないぞ」と声をかけられた。コーチからの念押しと考えていいのか

 はい。そうだと思う。

 -井上コーチは、普段からそういう発言をする人物なのか

 このような状況はめったにあることではない。分からない。

 -他にもその発言を聞いている選手はいたか

 整列をしている時なので、隣の選手に聞こえていたかもしれない。はっきり聞こえていたかは分からない。

 -原因を「自分の弱さ」とした。あの時、違反行為をしない選択はあったか

 あの時の自分は、それをする以外考えられなかった。

 -酷な状況だったのでは。そういう指導について、どのように考えるか

 指導について、僕が言える立場にない。

 -そもそもの指示は内田監督からと考えていいか

 僕はそう認識している。

 -内田氏が監督を辞任したことが、チームにとって良かったかどうか

 僕が、今日(会見に)来たのは謝罪をして、真実を述べるため。今後のチームがどうなるか、そういうことは僕の口から言うべきではない。

 -ここまでの期間、かばってくれなかった監督に対しての気持ちは

 最初に両親とともに監督と面談した時から、指示があったということを出してほしいと伝えていた。出してほしいという気持ちはあった。

 -関学大QB側が被害届を出したことに関して

 被害届を出されるのは仕方がない。向こうの選手、ご家族からしたら、当然だと思う。内田前監督は現在大学の人事担当の常務理事を務め、また学内で体育会を意味する「保健体育審議会」の局長を務めています。

【私の論評】統治の正当性が疑われる、常務理事としての内田氏(゚д゚)!

この問題に関しては、以前にもこのブログに掲載しました。そこで指摘したのは、日大では統治と実行が同じ人物により実行されており、まともに統治できる状態でないことです。その記事のリンクを以下に掲載します。
「殺人タックル」日大アメフト部・内田正人監督、学内No.2の実力者だった! 常務理事で人事掌握 “鉄の結束”背景に上意下達の気風―【私の論評】アメフト監督が大学の常務理事を兼ねるのは統治論的にはあり得ない(゚д゚)!
日大アメフト部・内田正人監督

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、統治に関わる部分のみをこの記事が以下に引用します。

"
経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 といいます。
しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知ったのです。
企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものでありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。
企業組織においては、日大のように統治(常務理事)と実行(アメフトの監督)を両立すると、様々な支障や不祥事がでることが、経験則的に知られていました。だからこそ、特に大企業においては会社法などにより、トップ・マネジメントと現場の監督などを兼務することなどできないようなっています。

たとえば、部長と取締役くらいなら、できるでしょうが、部長以下の役職と取締役の兼務なまずはできません。また、大企業なら、監査役のほかに内部監査人がいたり、他にも様々なたとえば経理と財務は同じ組織では行わないなどの、内部統制の仕組みがあり、不正や不祥事が起きない仕組みが構築されています。

このような仕組みができてないと、企業は上場できませんし、たとえその仕組みができていても、形骸化していて業務上で様々な支障がでていたり、深刻な不祥事が起きた場合には、上場企業であっても上場が取り消されたりします。残念ながら、最近でもこのような不祥事が起きています。

私自身は、何年間か会社の上場準備に携わっていたことがあるので、統治と実行の分離の重要性や、統治の正当性、内部統制の重要さについて考える機会が他の人よりは多かったと思います。

すっかり形ができあがった大企業に最初から勤めている人はこれが当たり前になっていて、あまり意識しないかもしれません。中小企業の場合は、日々実行に追われ統治などについて考えている余裕はないかもしれません。また、民間営利企業以外の非営利組織では、統治の問題などあまり顧みられないかもしれません。このようなことが、今回の日大の問題の本質を見えにくくしているかもしれません。

大学の関係者によりますと内田前監督は「人事を担当する常務理事で、人事権を握っているため、今回の問題で大学の職員は誰も意見を言えない」ということです。また「大学では理事長に次ぐ、実質大学のナンバーツーにあたり、田中英寿理事長から最も信頼されている人物」ということです。

日大田中英寿理事長

内田正人監督は田中英寿理事長に目をかけられ、常務理事で人事部長という現在の地位に上り詰めたとされています。

そのため、現在は内田正人監督は日大の実質ナンバー2で「次期理事長候補最右翼」とも言われいるほど日大では絶大な権力を持っています。

そのため、今回の不祥事も大学側が必死にかばっているようですが、これがかえって裏目に出ており批判殺到しています。

田中理事長は、1965年、日本大学経済学部に入学。1969年、日本大学経済学部経済学科を卒業し、日本大学農獣医学部体育助手兼相撲部コーチに就任。1999年学校法人日本大学理事、2000年日本大学保健体育事務局長、2001年日本大学校友会本部事務局長、2002年学校法人日本大学常務理事、2005年日本大学校友会会長などを歴任しました。2008年より学校法人日本大学理事長です。

この経歴だけではわかりませんが、おそらく田中理事長も、理事と監督を兼任していたこともあったのではないでしょうか。

だから、日大ではアメフト部監督の内田正人氏が、常任理事をしていたとしても、特段おかしなことではないのかもしれません。というより、このようなことは私立大学などでは特段珍しいことではないのかもしれません。

しかし、今回統治をしている側の人間が、実行もしているということで、それが今回の不祥事の温床になっていることは確かなようです。企業経営サイドの見方からみれば、学校組織であろうと、他の病院やその他の官庁などの非営利組織であろと、やはり統治をする人間が実行もするのはいずれ不正や不祥事が蔓延する組織になることは避けられないと見えます。

わかりやすい例は、お金を使うことを企画する人や部署が、お金を使う人や部署と同じであっては、いずれかならず使い込みなどの不祥事が発生することになります。それは、その個人や部署も悪いのですが、そのような組織になっていること自体が、不祥事を誘発することになるのです。

今回の不祥事は、単にアメフト監督の勇み足などと軽くみるべきではありません。営利企業では統治と実行が様々な支障や不祥事がでることが経験的に知られていますが、日大のような非営利組織もその例外ではなく、それがたまたま今回の事件を通じて表にでてきたとみるべきです。

ドラッカーは統治の正当性について、以下のように述べています。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)
企業政府機関、非営利組織など、あらゆる組織にとって、本来の機能とは、社会のニーズを事業上の機会に転換することです。つまり、市場と個人のニーズ、消費者と従業員のニーズを予期し、識別し、満足させることです。
さらに具体的にいうならば、それぞれの本業において最高の財・サービスを生み出し、そこに働く人たちに対し、生計の資にとどまらず、社会的な絆、位置、役割を与えることです。
しかしドラッカーは、これらのものは、それぞれの組織にとって存在の理由ではあっても、活動を遂行するうえで必要とされる権限の根拠とはなりえないとします。神の子とはいえなくとも、少なくともどなたかのお子さんである貴重な存在たる人間に対し、ああせい、こうせいと言いえるだけの権限は与えないといいます。
ここにおいて、存在の理由に加えて必要とされるものが、正統性です。ドラッカーは「正統性とは曖昧なコンセプトである。厳密に定義することはできない。しかし、それは決定的に重要である」と言います。
かつて権限は、腕力と血統を根拠として行使されました。近くは、投票と試験と所有権を根拠として行使されています。
しかしドラッカーは、マネジメントがその権限を行使するには、これらのものでは不足だといいます。
社会と個人のニーズの充足において成果を上げることさえ、権限に正統性は与えません。一応、説明はしてくれます。だが、それだけでは不足です。腹の底から納得はされません。
マネジメントの権限が認知されるには、所有権を超えた正統性、すなわち組織なるものの特質、すなわち人間の特質に基づく正統性が必要とされます。
ドラッカーは正当性の根拠について次のように語っています。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。(『マネジメント[エッセンシャル版]』)

さて、日大の田中英寿理事長や内田正人常任理事らには、人の強みを生かすことということはできているのでしょうか。

私自身は、悪質な反則行為で関学大の選手を負傷させた日大選手にそのような指示を、内田氏が出していたとすれば、これはとてもじゃないですが、日大のトップマネジメントの一人としての正当性があるとは思えません。

大学や、官庁などでも、まともな大企業のように、統治と実行の分離、統治の正当性の確保を十分に行っていくべきです。

このあたりがなおざりにされていては、いくら部分的に改革や改善を行っても、まともな組織にはなりません。大元を正さなくては、いつまでも不祥事や不都合が起こり続ける組織になってしまいます。

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2018年5月21日月曜日

韓国、北朝鮮から梯子外され用済みに…米朝会談中止→米中経済戦争勃発の可能性も―【私の論評】中・韓・北の常套手段に惑わされることなく、我が国は独自の道を歩むべき(゚д゚)!

韓国、北朝鮮から梯子外され用済みに…米朝会談中止→米中経済戦争勃発の可能性も

アメリカのドナルド・トランプ大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(右)

 北朝鮮が南北閣僚級会談の中止を表明し、6月12日に予定されている史上初の米朝首脳会談の取りやめも示唆した。

 これは、アメリカによる「核放棄の強要」や米韓合同軍事演習に対する反発が理由とされているが、瀬戸際外交を続けてきた北朝鮮の常套手段といえる。核実験場の閉鎖や拘束していたアメリカ人3人の解放など、融和に向けて動き出したと見せておいて、相手の態度が軟化しそうなタイミングで揺さぶりをかけるわけだ。

 しかし、アメリカはあくまで制裁緩和よりも核放棄を優先する「リビア方式」を主張しており、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「北朝鮮による『完全で検証可能で不可逆的な非核化』という目標を取り下げることはしない」と表明している。

 また、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は「北朝鮮が会談したければ、その用意はある。もし会談したくないのなら、それでもかまわない」と語っているが、北朝鮮はこの問いに対して「Yes」と言うしかないだろう。そもそも、会談が実現しても物別れに終わればアメリカが軍事攻撃に出る可能性すら取り沙汰されるなかで、「No」は空爆や斬首作戦の決行を意味するといっても過言ではない。

サラ・サンダース報道官

 また、北朝鮮の発表は中国の劉鶴副首相らがアメリカを訪れるタイミングで行われた。5月15日から訪米している劉副首相は、17日からワシントンでスティーブ・ムニューシン財務長官らとの通商協議に臨む。アメリカは中国の通信機器大手である中興通訊(ZTE)に対して、「北朝鮮やイランへの輸出規制に違反した」という理由でアメリカ企業との取引禁止措置を取っており、それを受けてZTEは主力事業停止に追い込まれている。

 中国はZTEへの制裁を解いてもらおうと必死で、同協議でも主題にのぼるとみられている。また、同協議は5月初旬に北京で第1回が行われたが成果は芳しくなく、中国にとっては今回が正念場といわれているのだ。

 かねてドナルド・トランプ大統領は中国に北朝鮮問題への対応を迫っており、中国が解決に動けば貿易交渉などで譲歩する姿勢を示してきたという経緯がある。そんななか、このタイミングで北朝鮮が態度を変えたことは中国にとって大きなマイナス要因であり、メンツを潰されたといってもいいだろう。北朝鮮としてはアメリカのみならず中国に対しても強く牽制した格好であり、中国に対するなんらかの不満の表れと見ることもできる。

 さらにいえば、可能性は限りなく低いが、仮に米朝首脳会談が直前で中止となれば、中国のメンツは完全に潰れることになると同時にアメリカの対中制裁もさらに容赦ないものになるだろう。

突然“韓国外し”に動いた北朝鮮の思惑

 当日になって閣僚級協議を“ドタキャン”された韓国は「遺憾の意」を表明しているが、北朝鮮にとって韓国はすでに“用済み”の存在といえる。かねて北朝鮮はアメリカとの直接対話を望んでおり、そのために韓国を利用してきた側面がある。そして、平昌オリンピックの南北合同チーム結成をはじめとする融和ムードを醸成することで、アメリカは北朝鮮との直接交渉に乗り出した。

 それにともない、中国も北朝鮮との話し合いを再開した。つまり、北朝鮮とすれば米中の2大国と韓国抜きで交渉できる体制が整ったことになり、それゆえ“韓国外し”を始めたわけだ。そもそも、朝鮮戦争の休戦協定は、アメリカ主導の国連軍と朝鮮人民軍、中国人民義勇軍によって締結されたもので、休戦に反対していた韓国は署名していない。つまり、韓国は休戦協定に関しては当事国ではなく、韓国抜きで話し合いが進められたとしても不自然ではない。

 また、将来的に考えても、金正恩体制にとって韓国の存在はプラスにはならないだろう。南北間の交流が盛んになりヒトやモノの移動が自由化されれば、北朝鮮内に民主化の動きが生まれる可能性が高いからだ。言うまでもなく、それは金正恩体制の崩壊につながる。北朝鮮の最大の目的は現体制の維持であり、そのためにマイナスとなる要素は徹底的に排除する方向だ。そう考えると、北朝鮮としてはクーデターの萌芽となり得る事態は避けたいのが本音だろう。

中国・ZTEへの制裁緩和に米議会が反対

 米中の貿易摩擦も、予断を許さない状況だ。ZTEへの制裁緩和について、トランプ大統領が検討を示唆したことで既定路線になるかと思われたが、議会は共和党、民主党ともに反対しているため実現の可能性は低い。

 すでに、国防権限法案にはアメリカ政府機関がZTEの製品を使用することを禁止する項目が盛り込まれており、共和党のマック・ソーンベリー下院軍事委員長は「(同項目について)議員らが削除を求めるとは見込んでいない」と発言している。

 毎年、アメリカは同法で軍事的な予算や計画を策定しており、そこには経済制裁なども含まれている。同法案の内容を修正するには議会の承認を得なければならず、これは大統領の一存で強行することはできない。上下両院を通過後に大統領が署名しないという手段もあるが、そうなるとすべての軍事的案件がストップしてしまいかねない。そのため、法案の審議過程で同項目を削除する必要があるわけだが、トランプ大統領が議会の強い反対を押しのけてまで実行するメリットがあるとは思えない。

 いずれにせよ、米朝首脳会談に向けて、もう一波乱も二波乱もありそうな展開だ。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】中・韓・北の常套手段に惑わされることなく、我が国は独自の道を歩むべき(゚д゚)!

ムニューシン米財務長官

冒頭の記事にある米中貿易戦争ですが、ムニューシン米財務長官は20日、米中貿易戦争をいったん「保留」にする、と述べました。

長官はテレビ番組で「貿易戦争を保留にする。関税措置をいったん保留にすることで合意した。一方、枠組みの執行は目指していく」と語りました。

米中両政府は19日、ワシントンで17─18日に開いた通商協議の共同声明を発表しました。中国が米国の製品やサービスの購入を大幅に増やすことで合意しましたが、米国が求めていた対米貿易黒字の2000億ドル削減への言及はありませんでした。

ムニューシン氏は、農業分野の中国向け輸出は今年だけでも35─40%増加し、エネルギー分野の輸出に関しては向こう3─5年で2倍になると述べ、公表はしないが業界別に特定の目標があると説明しました。

中国の在ワシントン大使館はムニューシン氏の発言に関し、コメント要請に応じていません。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は20日付の声明で、米国製品に対する中国市場の開放拡大は重要だが、中国で米企業が技術の移転を強いられている問題やサイバー空間での産業情報の窃盗を解決するほうが重要度が高いと指摘しました。

「真の構造的変革が必要とされている。それが果たされなければ多数の米国人の雇用が将来的に脅かされることになる」と強調した。

米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長はCBSテレビの報道番組で、中国が約束した米国製品・サービスの購入について、対米貿易黒字の2000億ドル削減を確定するのは時期尚早だと指摘。「詳細はやがて明らかになる。こういった取り決めはそれほど綿密ではない」とした。

同氏はABCテレビの番組で、大枠では問題への対応が約束されており、中国は関税や非関税障壁の引き下げといった「構造改革」を進める意向を示したと説明。トランプ大統領は「これについて非常に好印象を受けている」とした。

ただ、両国間の通商協定に関する合意はまだないと表明しました。

ムニューシン長官とカドロー氏によると、今後は、ロス商務長官を中国に派遣し、エネルギーや液化天然ガス(LNG)、農業、製造業など大幅な輸出増を目指す分野について検討することになります。

米国は一時は中国との貿易戦争を保留しますが、これはあくまで保留であって、中国の出方によってはどうなるかはわかりません。そうして、このブログにも以前掲載したように、真っ向から米中が貿易戦争をした場合には、中国には全く勝ち目はありません。

一方韓国はといえば、4月の輸出額は1年半ぶりに前年割れ。米国と3月に大筋合意した自由貿易協定(FTA)の再交渉では、韓国に不利な条件をのまされただけでなく、両国が競争的な自国通貨切り下げを禁じる「為替条項」まで決められ、事実上、韓国のウォン安誘導が封じられました。

韓国企業の輸出競争力の低下が懸念される中、韓国は突然、米国を除く11カ国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)への加入や金融危機時に日韓で通貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開に意欲を示し始めています。

しかし、このブログにも以前掲載したように、知的財産権に無頓着な韓国は、そもそも最初からTPPに参加できるような国ではありません。さらに、通貨スワップも日本にとってメリットなど何もありません。

そもそも、日韓合意を反故にしようという国が、TPPに加盟したいとか、通貨スワップを再開せよなどいっても、我が国がそれに応じる義理などありません。拉致被害者問題にしても、北朝鮮の直接交渉すれば良いので、韓国と付き合う意味もありません。


日本としては、北朝鮮とその後ろ盾とみられる中国に対しても、「北朝鮮による『完全で検証可能で不可逆的な非核化』ならびに「拉致被害者問題の完全解決」以外は受け付けず、北がそれに応じないというのなら、さらに徹底した制裁を継続すべきです。

瀬戸際外交を続けてきた北朝鮮が融和に向けて動き出したと見せておいて、相手の態度が軟化しそうなタイミングで揺さぶりをかけるという常套手段などにだまされることなく、制裁を続行すべきです。

そうして、皆さんもお気づきでしょうが、この常套手段は何も北朝鮮だけではありません。韓国も中国も同じような常套手段を良く使います。

融和的態度をみせながら、日本が軟化しそうなタイミングで反日や尖閣付近での示威行動などありとあらゆる手段を用い、揺さぶりをかけるのです。

日本としては中国、北朝鮮、韓国のこうした常套手段に幻惑されることなく、我が国の進むべき道を歩むべきです。

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