2020年4月3日金曜日

中国で飛び交い始めた「習近平政権ピンチ」の噂―【私の論評】習近平は本当に国賓として日本を訪問できるのか?失脚は十分にあり得る筋書きとなった(゚д゚)!


続々と表面化する習近平政権批判の動き
新型コロナウイルスが発生し感染が拡大した武漢を視察に訪れた習近平国家主席(2020年3月10日)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 習近平がG20の特別サミットテレビ会議(3月26日)で重要演説をし、「ウイルスに国境はない。感染症はわれら共同の敵。各国は手を取り合って立ち上がり、最も厳密な共同防衛ネットワークをつくらねばならない」と、世界に呼びかけた。

 翌日のトランプとの電話会談では、米国に中国側の新型コロナ肺炎対策に関する詳細な経験を紹介し、「米国の困難に陥っている状況を理解している。できる限りの支持を提供したい」と、あのトランプに習近平がいろいろとアドバイスして差し上げたようだ。米国が中国以上の新型コロナ肺炎の感染者を出し、ニューヨークの医療崩壊に直面している中で、習近平がトランプに「助けてあげようか? その代わり・・・」と上から目線で問いかけ、世界のリーダー然として見せた。

 果たして、このパンデミックを契機に米中新冷戦構造の対立が大きく変わるのか。このパンデミックを機に対立が解消され、米中が手を取り合うG2時代の到来を習近平は予感しただろうか。米国の脆弱さが露呈され、習近平の中国に次なる国際社会のルールメーカーとなるチャンスを与えるのだろうか。

 私の希望的観測からいうと、NOだろう。習近平はそのころ、国家主席でも総書記でもないかもしれないからだ。

政権を批判し失踪した「中国のトランプ」

 噂を信じるわけではないのだが、3月12日以来“失踪”していた任志強が釈放された、という情報が3月末に中国のネット上で飛び交った。それが本当ならば、次の党大会で習近平退陣の可能性はかなり強いだろう。

任志強は、中国情勢をそこそこ知っている人ならば心当たりのある名前だ。王岐山が夜中に愚痴の電話をするほどの親友関係だった元華遠集団総裁の共産党員。父親は元商業部副部長まで務めた高級官僚・任泉生で、いわゆる「紅二代」(毛沢東らと共産革命に参加した政府指導部の子弟)だ。

任志強

 中国のドナルド・トランプとあだ名される「放言癖」があり、王岐山という背景がある強気もあって、2016年には、習近平が中央メディアに対して「党の代弁者」であることを要請したことに対して痛烈に批判した。このときの騒動は「十日文革」などとも呼ばれ、それまで反腐敗キャンペーンという習近平政権の主要政策の陣頭指揮をとり習近平の片腕とみなされた王岐山と習近平の関係に亀裂を入れたといわれている。

 任志強はあわや党籍をはく奪されそうになったが、そこは紅二代で王岐山の親友であるから、なんとか回避した。が、表舞台からは退き、趣味の木彫りなどをやりながら隠遁生活をしていた。

 だが2月23日、任志強は米国の華字サイト「中国デジタル時代」に習近平の新型コロナ肺炎対応を批判する文章「化けの皮がはがれても皇帝の座にしがみつく道化」を発表し、習近平の“文革体質”を再び激しい言葉で批判。この文章は中共内部が執政危機に直面し、言論の自由を封じていることが、感染対応任務の阻害になり、深刻な感染爆発を引き起こしたと、批判するものだった。

 何よりも表現が過激で、「あそこに立っているのは、自分の新しい衣服を見せびらかそうとしている皇帝でもなく、衣服すら脱ぎ捨てても皇帝の地位にしがみつく道化である。自分が丸裸であるという現実を隠すために、恥部を隠す布切れを一枚、一枚掲げてみせるが、自ら皇帝の野心にしがみついていることは一切隠さない。私が皇帝になるわけではないが、あなたを滅亡させる決心はしている」「遠くない将来、執政党はこの種の愚昧の中で覚醒し、もう一度“打倒四人組”運動を起こし、もう一度鄧小平式の改革を起こし、この民族と国家を救うかもしれない」などと書いていた。

 “打倒四人組”運動とは、文化大革命を主導し、毛沢東死後も文革路線を堅持しようとした江青、張春橋、姚文元、王洪文の4人を、文革穏健派の華国鋒、李先念ら周恩来系の中間派官僚、王震ら復活幹部グループ、葉剣英ら軍長老グループが連合して電撃逮捕した、「政変」である。これをもって文革は完全に終結し、鄧小平による改革開放路線によって中国は再出発したのだった。つまり、任志強の文章は暗に政変を呼び掛ける「檄文」だった、というとらえ方もある。

 その後、任志強は失踪した。少なくとも3月12日以降、連絡がとれていない。任志強の知り合いは、彼が中国当局に連行されたことを証言している。任志強の親友の女性企業家、王瑛がロイターに語ったところによれば、「任志強は知名度の高い人物で、彼が失踪したことはみんな知っている。責任ある関連機関は一刻も早く、合理的で合法的な説明をしなければならない」という。

習近平を批判する動きが続々と表面化

 今の習近平に政権の座から退場願いたい、と思っているのは何も任志強だけではない。

 3月21日ごろ、ネットでは「緊急中央政治局拡大会議招集の提案書」なるものが拡散していた。これは陽光衛星テレビ集団(香港SUNテレビ)主席の陳平がSNSの微信(ウィーチャット)で転載した公開書簡だった。内容は、「新型コロナ感染により中国経済と国際関係情勢が厳しくなったことを鑑み、習近平が国家主席、党総書記の職務を継続することが適切かを討論する政治局緊急拡大会議を開くべきだ」という。

 提案書は、中国が世界で四面を敵に囲まれている状態での討論テーマとして、次の諸問題を挙げている。

・鄧小平の主張した「韜光養晦」(とうこうようかい:才能を隠して内に力を蓄える)路線について明確な回答をすべきか否か。
・政治上、党が上か法が上か、執政党は憲法を超越できるか? を明確にするか否か。
・経済は、国進民退(国有企業を推進して民営企業を縮小する)か、民進国退(民営化を進めて国有企業を解体していく)か?
・治安維持のために公民の基本権利を犠牲にするか否か。
・民間がメディアを運営することを認めるか?
・司法が独立すべきか、公民が政府を批判していいか、世論監督が必要かどうか、党の政治を役割分担した方がよいか、公務員の財産は公開すべきか否か?
・台湾との関係において、本当に統一が重要か、それとも和平が重要か?
・香港の問題において、繁栄が重要か、それとも中央の権威が重要か、香港の地方選挙完全実施を許してよいか否か?

 提案書は、李克強、汪洋、王岐山による政治局拡大会議指導チームをつくり、会議の各項目任務の責任を負うべきだとした。さらに、「この会議の重要性は、決して『四人組逮捕』に劣るものではない。習近平の政治執政路線に対し評価することの意義は、(華国鋒が失脚し鄧小平が権力を掌握した)十一期三中全会の歴史的意義よりずっと高い」という。

 ここの提案書は、任志強の習近平批判文章に呼応したものとみられる。提案書を出した人物は不明である。紅二代(太子党)が関連していると思われるが、監視が厳しい中国のSNS微信で発信されていることは驚くべきことだろう。

 提案書を転載して拡散した陳平は香港定住者だが、紅二代出身の開明派とみなされる人物。父親は習近平の父親の習仲勲の部下で、習仲勲の深圳視察に同行したこともある。習近平とは40年来の付き合いともいわれ、王岐山とともに1984年の莫干山会議(この会議により経済の改革開放プロセスが一気に推進した)を組織した。この提案書は微信で拡散しただけでなく、実際に中央に提出されたという噂もあった。陳平は「自分が書いたわけではないが、党内でこの意見に賛同するものは少なくない」と語っている。

 武漢で新型コロナ肺炎がアウトブレイクしたのち、習近平の執政路線、政策の過ちを批判する知識人も続出している。

 まず、清華大学教授の許章潤が2月に書いた「怒りの人民はもう恐れない」という文章では、「習近平の統治が中国を世界の孤島に徐々にしている」「30年以上前の改革開放の苦労によって切り開いた開放性が、習近平によってほとんど破壊された。中国の統治状態は前近代状態だ。門は閉ざされ、野蛮な人道的災難が絶えず発生し、中世のようだ」と書いた。許章潤は目下、軟禁状態らしい。

 また憲法学者で公民運動家の許志永は「退任勧告書」を出した。「権力狂人」の習近平は国家統治能力の実力がなく、「妄議罪」(ありもしないことを議論した罪)をでっち上げ、社会における諫言や改善のための意見を許さなくなった、習近平に中国のこれ以上の“安売り”を許さず早々に退任させよ、と主張している。許志永も公安に身柄を拘束されている、という。

 これほどの批判を受けて、習近平も当然、四人組逮捕や第十一期三中全会を念頭において警戒はしているだろうから、外部からはっきりそうとわかる形の「政変」や「クーデター」が起こる可能性は低いに違いない。だが、習近平の党内における責任論が高まり、求心力が急激に弱まっていることはいえるだろう。

中国の感染状況は?専門家の見方

 3月29日に習近平は「企業・工場再稼働」をアピールするために浙江省を視察、このとき地方の村で習近平がマスクをしないで、農民と歓談している様子の写真が配信された。浙江省はまだ感染状況が落ち着いてるとは言いがたい。その中で、あえてマスクをしない習近平は、指導者みずから感染のリスクに身をさらしてみせて、経済回復のために君たちも命をかけろ、と言いたいかのようだ。習近平は2月3日から3月27日まで57回も「企業・工場の再稼働」を指示し、表面上は浙江省は2月末に企業再稼働率98%を宣言している。にもかかわらず、実際の経済の再稼働はなかなか進んでいない。

 実のところ習近平の「大丈夫アピール」とは裏腹に、中央感染予防工作チームトップの李克強はいまだ感染状況について「複雑で厳しい」と言い続けており、党内で中国の感染状況に対する評価が割れている。

 李克強は3月23日の感染予防コントロール会議の席上で、感染状況の各地の報告に隠蔽がある可能性をほのめかせながら、「専門家たちは、この感染症が、かつてのSARSのように突然終息する可能性は低いとみている」と訴え、慎重な姿勢をみせている。1月に李克強が感染予防コントロール工作の指揮を執ることになってから、習近平と李克強の仕事ぶりが党内の間でもメディアの間でも比較され、全体としては李克強の言動の方が評価されているふうに私には見える。

「習近平の退陣決定」という噂は本当か

 こうした党内不協和音の中で、任志強に関する次のような噂がネット上で流れた。

 「アリババの元CEOの馬雲(ジャック・マー)ら民営企業の“5大ボス”が“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」

 「任志強の親友である王岐山が、自分の進退をかけて、任志強を釈放し、習近平に“国家主席終身制”を放棄するように迫った。秋の五中全会(第五回中央委員会総会)で、李強(上海の書記、習近平の浙江省書記時代の党委員会秘書長)と胡春華(副首相)を政治局常務委員会入りさせ、後継者指名することも迫った」

 「任志強は身柄拘束されたが、絶食して抵抗している」・・・。

 3月28、29日にはこんな噂も飛び交っている。「王岐山、王洋、朱鎔基ら長老らが手を組み、習近平に任志強の釈放と、習近平自身の退陣を迫った。習近平は“終身制”を放棄し、李強と胡春華を後継者に認定し、秋の五中全会で2人が中央委員会入りし、次の第二十回党大会でそれぞれ総書記と首相に内定している。そして任志強は釈放された」というものだ。

 その“噂”が本当なら、これは事実上の「ソフト政変」といってもいいかもしれない。四人組逮捕や十一期三中全会のように過激さはないが、ひそやかな形でアンチ習近平派が圧力をかけ、習近平に個人独裁終身路線を放棄させた、ということになる。多くの人たちは、にわかには信じられない、と言っている。ネットではマスクをつけた任志強の写真が流れているので、釈放は本当のようにも思えるが。

 真偽はともかく、国際社会で大演説をぶって、米国にも上から目線の習近平が国内では、かなり強い圧力を受けて窮地にいるとは言えそうだ。とすれば、来る国際社会の大変局で、中国がルールメーカーの座を米国から奪う局面になったとしても、それは習近平の中国ではあるまい。ひょっとすると、共産党政権の中国でもないかもしれない。

【私の論評】習近平は本当に国賓として日本を訪問できるのか?失脚は十分にあり得る筋書きとなった(゚д゚)!

「習近平政権ピンチ」の噂は、上の記事の内容以外も、中国ではいろいろな方面で囁かれているようです。

新型肺炎の拡大が止まらない先月の中国では、習近平国家主席に異変が起きていたのか。“失脚説”や“コロナ感染説”が飛び交っていました。

SNS上では「#習近平感染」と「#習近平失脚」のハッシュタグがつき、盛り上がっていました。

事の発端は、このブログでもお伝えしたように、1月29日から2月4日まで、習近平が1週間も公の場に姿を見せなかったことです。国営新華社通信は3日、最高指導部が新型肺炎について会議を開いたと報じたのですが、テレビニュースの画面にはアナウンサーの姿しかなく、最高指導部のメンバーは誰も映っていませんでした。

5日、習主席がカンボジアのフン・セン首相と会談したことで、ひとまず“失脚説”や“重病説”は沈静化しています。

習近平が姿をくらますこと自体は、珍しいことではなく、2012年9月15日にも、2週間姿をくらました後で、姿を現しています。中華民国の評論家、経済史研究者黄文雄氏は、これについて「古巣の浙江省に籠もり、反日デモと尖閣強奪作戦を指揮していたようだ」としています。

今回も、いずれかに籠もり、武漢ウイルス禍を奇貨として、何ができるかを検討して、動きだしたのかもしれません。

そのためか、武漢肺炎の拡大自体は、実は習主席にはむしろ追い風になった可能性もあります。中国人民の怒りの矛先は、中央政府ではなく、湖北省や武漢市の役人に向けられているからです。これは、習近平が意図的にそうした可能性があります。

中央政府は、中国人民に、武漢肺炎での不手際を謝罪するどころか、水戸黄門のように、地方役人を叱りつける役回りを演じています。武漢肺炎前からの中国経済の悪化も、新型肺炎を理由にできます。米国に冷戦を挑まれた結果、経済が落ち込み続けて八方塞がりになっていた習近平にとって、おもっても見なかった僥倖かもしれません。

それどころか、このブログにも掲載したように、中国共産党は、最近はもっぱら「ウイルスとの戦いにいち早く勝利した中国」が、パンデミックと戦う世界各国の模範となり、救世主となる、という大プロパガンダを展開中です。今や世界で一番安全なのは中国国内で、感染源になっているのは欧米だ、というわけです。

中国、イタリア支援の医療チーム第3陣を派遣

これに対して米国は「ヒーロー気取り」の中国に対してこのブログでも解説したように、怒りの鉄槌を下そうとしています。

米国連邦議会の上院のジョッシュ・ホーリー議員(共和党)、下院のセス・モールトン議員(民主党)、エリス・ステファニク議員(共和党)ら約10人の超党派議員グループは3月23日、コロナウイルス感染症に関して中国政府の責任を法的に追及し、感染の国際的拡散によって被害を受けた諸国への賠償支払いを求める、という趣旨の決議案を上下両院に提出しました。

同決議案に署名した1人、ジム・バンクス下院議員(共和党)は議場での発言で、中国の責任追及のためには、単なる決議ではなく、米国として強制力を持つ法律を作って、中国政府への損害賠償を法的に迫るべきだという提案を明らかにしました。

それは以下のような提案でした。
全世界に被害をもたらした中国政府の法的な責任を明確にして、中国に賠償金を支払わせる方法として、第1には、中国政府が保有する莫大な額の米国政府債券の一部を放棄させる方法、第2には、中国からの輸入品にこの賠償のための特別な関税を新たにかけて、「コロナウイルス犠牲者賠償基金」を設けさせる方法、などが考えられる。
こうした方法の実効性は現時点では不透明ですが、米議会にここまで具体的な中国政府への賠償請求の動きが広がっていることは注視すべきです。

米国をこのように激怒させ、具体的に賠償責任を追求する姿勢をとらせたのは、習近平の大きな誤算だったかもしれません。これでは、中国内で批判されるのは当然といえば当然です。

中国人民が中央政府に対して声を上げるとしたら、コロナウイルスの感染拡大が収まった後でしょう。いまはまだ身を守るのに精いっぱいです。ただし、中国政府は武漢肺炎は終息しつつあるとしてますから、これが本当なら、そろそろ各地で頻繁に暴動が起こるかもしれません。

冒頭の元記事では、「アリババの元CEOの馬雲(ジャック・マー)ら民営企業の“5大ボス”が“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」というのが本当だったとすれば、これはかなり習近平政権が深刻な事態に陥っているとみるべぎす。

私はジャック・マー氏のアリババ退任の裏側について、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アリババ創業者突然の引退宣言、中国共産党からの「身の危険」…企業家が次々逮捕・亡命―【私の論評】習近平がすぐに失脚すると見誤った馬会長の悲運(゚д゚)!
Forbsの表紙を飾った馬雲会長

この記事は、2018年9月13日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、マー氏のアリババ退任の裏側を私が分析した部分を掲載します。
おそらく変わり身の早い馬雲氏は、様々な出来事から判断して、習近平はすぐにも失脚すると踏んだのではないかと思います。実際7月には、上記にも掲載したように、習近平周辺で様々な異変がありました。 
習近平が失脚するとなると、上記のように習近平と近い関係を保ってきたことが今度は裏目に出ます。今度は、反習近平派の江沢民派などと、手を組まなければ、中国内ではうまく商売ができなくなります。 
だから、まずは"サウスチャイナ・モーニングポスト"あたりで、習近平を批判させ、さらに様子を見て、徹底的に批判しようとしたのでしょう。そうして、なんとか反習近平派に取り入る機会をつくろうと画策したのでしょう。 
しかし、習近平は意外にしぶとく、少なくともここ1年くらいは失脚することはありえないというのが実体なのでしょう。 
ここを馬雲会長は、見誤ったのでしょう。そのため、習近平側からの報復を恐れて、はやばやと引退する旨を明らかにしたのでしょう。以前はこの変わり身の速さが、馬雲を救ったのでしょうが、今回はこれが災いしたようです。
マー氏(馬雲氏)が、かなり変わり身が早いのは事実です。というより、中国では権力構造が変わるときに、乗り遅れれば企業は事業を円滑に継続することはできません。だから、優れた経営者ほど権力構造の変化には、敏感すぎるほど敏感です。

もし、権力構造の変化に乗り遅れた場合、会社を放逐されるのは当然としても、命を失う可能性も否定できず、敏感になるのは当然といえば、当然です。

この変わり身の早いマー氏が、「“任志強釈放”を求める連名の意見書を出した」ということが本当であれば、近いうちに中国で権力構造の変化があるかもしれないことが俄に現実味を帯びてきたといえると思います。

過去、中国の王朝は、疫病の流行で崩壊しています。習主席は人民の不満を最後まで抑えられるのでしょうか。私としては、中国共産党が崩潰するまでのことは、すぐにはないとは思いますが、少なくとも習近平の失脚は多いにありえると思います。

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2020年4月2日木曜日

【国家の流儀】マスク2枚?ふざけるな! 国民熱望“消費税減税”なぜやらないのか! 「国民は俺たちに従っていればいい」官尊民卑の意識まる見え―【私の論評】終戦直前の軍官僚の物資隠匿体質DNAを、強く引き継いだ財務省の動きを封じよ(゚д゚)!


安倍晋三首相(右)は,岸田氏や財務省が反対する消費税減税{を突破できないのか

 中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が、日本経済を直撃している。生産や消費に甚大な影響が出ており、日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)の大企業製造業の景況感は7年ぶりのマイナスになった。東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の5都府県では「医療崩壊」の危機が近づいており、もし事態が深刻化・長期化すれば、さらなる打撃は必至だ。政府は、リーマン・ショック時を上回る、かつてない規模の経済対策を断行する方針だが、マスク2枚は配れても、国民が熱望する「消費税減税」は盛り込まれない見通しという。どうして、政治家や官僚は減税を嫌うのか。評論家の江崎道朗氏が集中連載「国家の流儀」で迫った。


 共同通信社が3月26~28日に実施した全国緊急電話世論調査によると、望ましい緊急経済対策は「消費税率を引き下げる」が43・4%でトップだ。だが、政府与党の間では、減税は不評で、給付や和牛券のようなクーポン券が好まれている。

 例えば、自民党の岸田文雄政調会長は同月22日のNHK番組で、与野党内にある消費税減税論について、「下げるときも大きなコストと時間を要する。事前の買い控えが生じてしまう逆の効果も想定される」と否定的な考えを示した。

 公明党の石田祝稔政調会長も同番組で、「現金とクーポン券のハイブリッドが良い」との考えを示した。

 その理由は簡単だ。給付やクーポン券だと、「困った国民を政府が助けてあげた」という構図になり、政治家や官僚たちは優越感を維持できるからだ。もっとも、彼らは給付の原資が国民の税金であることをすっかり忘れているのだが。

 一方、減税となると、国民から取る税金が減って政府の権限が弱まってしまうと感じて嫌なのだ。要するに、増税派と減税拒否派たちからは、自覚しているかどうかは別にして、「俺たちが福祉、手厚い社会保障を構築して国民を守ってあげているのだから、国民は俺たちに従っていればいい」という官尊民卑の意識が垣間見える。

財務省


 この「福祉国家」の名のもと、増税を繰り返す政治家と官僚たちは必然的に国民生活と民間の経済活動にあれこれと干渉するようになる。よって「福祉国家は隷属への道なのだ」-。こう警鐘を鳴らした経済学者がいる。オーストリア人のF・A・ハイエクだ。

 彼は1944年に『隷属への道』を上梓し、福祉を名目にした増税は、官僚組織の肥大化と、国民の自由に対する抑圧を生むと訴えた。このハイエクの政治哲学に基づいて減税と民間の企業活動への規制緩和、つまり「小さな政府」を求める人たちのことをリバタリアン(libertarian)と呼ぶ。

 米国の保守派の一翼を担う彼らは「福祉や環境を名目に、いろいろと規制を設け、民間ビジネスを妨害する官僚組織のために高い税金を払うなんて真っ平ごめんだ。貧しい人の支援ならば教会に多額の寄付をした方が効果的だ」として政治家を突き上げ、減税を要求する。彼らは保守でありながら、増税を認めた「保守」政治家に対しても容赦なく「落選」運動を仕掛ける。

 そうした政治家と納税者たちとの厳しい緊張感の中で、リバタリアンに支援されたドナルド・トランプ大統領は今回、早々に大規模「減税」を含む2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策を決定したわけだ。

 日本にもリバタリアンがいれば、「いざというときに役に立たないのなら税金を減らせ。政治家と官僚は、われわれ納税者の雇用者に過ぎないことを忘れるな」と、政府と政治家を一喝しているに違いない。リバタリアンからすれば、減税は政府に対する要望ではなく、納税者としての権利なのだ。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』(PHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』(扶桑社)など多数。

【私の論評】終戦直前の軍官僚の物資隠匿体質DNAを、強く引き継いだ財務省の動きを封じよ(゚д゚)!

世界最大の資産運用会社ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)は2019年の年次報告書をこのほど公開し、「新型コロナウイルス終息後の経済は、政府と中央銀行の経済支援策が奏功して順調に回復する」との見方を示しました。

これまでの金融危機時には政府の対応の遅れが景気回復の足かせになったのですが、2兆ドル(約220兆円,GDPの10%)の経済刺激策や金融市場への流動性供給という迅速な対応で、今回の危機を乗り切ると指摘しました。

フィンク氏は年次報告書冒頭の投資家に宛てたメッセージで「金融市場で働いてきた44年間でこんな経験は初めてのこと」と新型コロナが生命や金融市場、企業に及ぼしている打撃について驚きを込めて語りました。「景気や金融市場が好転するのがいつになるのかは誰にもわからない」としつつ、「景気は着実に回復すると信じている」と強調しました。

その背景として、米連邦準備理事会(FRB)が金融市場への流動性供給で素早く対応したことや政府による2兆ドルの経済対策の迅速な投入が奏功するとみています。政府の対応が遅れて危機が深刻化した08年の金融危機の「教訓が生かされた」と指摘しました。同時に当時の危機は金融市場の構造的問題が根底にあったが、今回はそれがない点も政府の対策がこれまで以上に効果を発揮する理由と説明しています。

運用資産が7兆ドル超と世界最大のブラックロックは今回の相場急落で、運用する上場投資信託(ETF)の一部が急激な資金流出に見舞われました。フィンク氏は「世界中の市場で働く当社社員の9割は在宅勤務になっている。顧客投資家と電話やテレビ会議で密に連絡をとり、市場の混乱を乗り切りたい」と強調しました。

米国では、悲観的な考えの人が多いようですが、私自身は、このローレンス・フィンク氏の見方に賛成です。もし、新型コロナウイルスが今年の夏あたりに終息した場合、その後の経済の伸びは凄まじいものになり、年度末においては、年間を通して経済だけみるとコロナウイルス禍などなかったかのような状況になるのではないでしょうか。

ただし、コロナウイルス禍が長引いたとき、そうはならないでしょうが、コロナウイルスの感染が終息した後には猛烈な勢いで経済が伸び、比較的短期に回復するでしょう。

なぜこのようなことを自信を持っていえるかといえば、まずは、ローレンス氏が指摘しているように、2兆ドル(約220兆円、GDPの10%)の経済刺激策や金融市場への流動性供給という迅速な対応があるからです。

さらに、以前このブログでも示したように、香港がSARSに見舞われたときの事例があるからです。当該記事のリンクを以下に示します。
【田村秀男のお金は知っている】「新型ウイルス、経済への衝撃」にだまされるな! 災厄自体は一過性、騒ぎが収まると個人消費は上昇に転じる―【私の論評】今のままだと、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は落ち込み続ける(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくもとして、一部を引用します。
 参考になるのは、SARS流行時の香港と広東省の経済動向だ。グラフはSARSの流行前から消滅時にかけての香港の個人消費と広東省の省内総生産(GDP)の前年同期比の増減率推移である。香港では、ふだんは喧騒に包まれている繁華街に出かける人の数が少なくなったと聞いた。広東省は上海など長江下流域と並ぶ「世界の工場」地帯で、生産基地が集積している。 
 香港の個人消費は、SARS発症前の01年後半から前年比マイナスに落ち込んでいる。これは米国発のドットコム・バブル崩壊の余波と9・11米中枢同時テロを受けた米国のカネ、モノ、人への移動制限による影響のようだ。 
 低調な消費トレンドが、SARSの衝撃で03年半ばにかけて下落に加速がかかった。しかし、SARS騒ぎが収まると、個人消費は猛烈な勢いで上昇に転じた。
 対照的に広東省の生産はSARSの影響が皆無のように見える。むしろ、流行時の02年秋以降から生産は目覚ましい上昇基調に転じている。
 今回への教訓はシンプルだ。本来、景気は循環軌道を描くわけで、基調が問題なのだ。弱くなっているときに新型ウイルスという経済外の災厄に国民や市民、企業が巻き込まれても、災厄自体は一過性で、基本的な景気のサイクル軌道が破壊されることはない。
一言で言えば、基本的な経済政策に間違いがなければ、経済外の災厄に見舞われても、災厄自体は一過性であり、経済はすぐに回復するのです。

これについては、この記事でもあげように経済以外の災厄として、戦争もあります。経営学の大家ドラッカー氏は、経済統計をみただけでは、後の歴史家は、第二次世界大戦があったことに気づかないかもしれないと言っています。

なぜなら、米国では戦時中には、戦争遂行のために、大量に様々な兵器などが製造され、それらがGDPに計上されるため、経済統計ではさほど、落ち込みは見られません。戦争が終わると、兵器製造なとは低調となりますが、今度はある程度制約のあった消費が伸びます。だから、年度で見た場合は、戦争の痕跡がみつからないほどに、経済は悪くはならなかったのです。

ヨーロッパや日本の場合も同じです。ただし、ヨーロッパや日本の場合は、米国のように経済が大きくはなかったので、国民はかなり耐乏生活を強いられましたが、それにしても、兵器等の製造は、かつてないほどの勢いで実施されたため、それがGDPに計上され、国民の生活実感からはかけ離れていたのですが、GDPだけみていると、さほど落ちたように見えないのです。

ただし、この記事でも解説したように、日本だけは特殊事情がありました。日本でも、終戦直後には凄まじい勢いで国民の消費意欲は高まったのですが、それは暫く満たされることはありませんでした。それは軍(陸軍省、海軍省などの官僚による、外務省等も隠匿していたとされている)による大量の物資の隠匿があったからです。

とはいいながら、隠匿物資も国富の中には統計上では存在したわけですから、多くの人が想像していたよりは、終戦直後の日本は本当は窮乏していたわけではなかったのです。事実統計上では、戦前の7割の国富が温存されていたのです。

確かに、日本の都市部は爆撃などで焼け野が原になっていたのですが、地方では生産拠点が残されていたため、多くの人々が考えているように、日本全土が焼け野が原となって、日本はゼロからスタートしたわけではないのです。周辺国などから比べるとはるかに有利な条件からスタートしたのです。

ただし、大量の物資(米、小麦粉、金塊、その他ありとあらゆるもの)が隠匿されていたので、暫くの間耐乏生活を強いられたため、多くの人々がゼロからのスタートと思ってしまったのです。もし、官僚が物資を隠匿していなければ、国民は当初から生活にあまり窮することなく、ましてや裁判官が餓死するなどの痛ましいことはおこらず、戦後をスタートすることができたはずです。

そうして、この官僚の隠匿という姿勢は今も変わっていないようです、特に財務省にはその姿勢がいまでも強いです。

昔の官僚は、隠匿という厳密には非合法のやり口を使ってまで、単純に大量の物品や金塊などを隠匿しましたが、現在財務官僚は、日本国の貸借対照表でいえば、右側の負債ばかり強調して、左側の資産については何もいわず、日本国は借金まみれだという言説を流布し、挙げ句の果てに、税と社会保障の一体改革などと、ぬかしてなにかといえば、増税をしたがります。

そのおかけで、古今東西日本だけで行われた、震災の復興に復興税などというあり得ない増税をし、その後も8%、10%と増税を繰り返してきました。これは、終戦末期の官僚が大量に物資を隠匿したのと変わりありません。

   終戦直前に物資隠匿を行った官僚らの、DNAを強く引き継いだと
   みられる財務省事務次官岡本薫明氏

ただ、大蔵省、今の財務省の官僚がスマートに合法的に実行しているだけの違いです。どうも、日本の官僚にはこうした体質が染み付いているようです。これは、いずれ何とかしなければならない重大問題です。

10%増税で、個人消費が落ち、昨年10月から12月の、GDPが7%台のマイナスになっていたところに、今回のコロナウイルス禍です。それに、このブログに以前示したとおり、真水の経済対策ということでは、全く不十分です。

このままだと、日本は米国のようにコロナ禍が終息しても、経済がすぐに回復することはありません。そのようなことを避けるためにも、減税は必須ですし、経済対策ももっと大きなものにする必要があります。

このようなことを言うと、すぐに「安倍政権が悪い」「安倍総理が悪い」などという人もでてくるでしょうが、たしかにその側面は否めないものの、政権ばかりをせめていれば、終戦直後から続いている官僚の物資隠匿体質引き継いだかのような、財務省の現状の隠匿体質はいつまでも是正されないでしょう。

官邸と、財務省の戦いはこれからも続くでしょう。これは、安倍政権後もそうなるでしょう。ただし、今は官邸と財務省の戦いで官邸側が勝利するまで待っている余裕などありません。

今のままでは、徐々に経済がかなり悪くなるだけです。おそらくリーマン・ショックのときのように、震源地の米国やその悪影響を受けた英国が、リーマン・ショックからいち早く回復したにもかかわらず、日本だけが回復せず一人負けしたように、コロナショックからの回復でも日本だけが遅れてしまうことになります。

そのようなことにならないためにも、安倍総理は現状ではできる対策をなるはべく早く実行した上で、次の衆院選で減税と、大型景気対策を公約に掲げて、大勝利して、財務省の動きを封じて日本の景気回復を米国なみにはやくできるようにしてほしいものです。

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2020年4月1日水曜日

新型コロナ危機を利用し世界的地位向上を図る中国―【私の論評】世界に謝罪しないと米国の怒りをかい、石器時代に戻るかもしれない中国(゚д゚)!

新型コロナ危機を利用し世界的地位向上を図る中国
岡崎研究所

 新型コロナウィルスの武漢での感染が、制御の利かない様相を呈し、海外に拡散する勢いを見せ始めた当初、中国は負い目を感じ、あるいは海外からの批判に神経を尖らせていたのではないかと思う。米国が中国からの入国制限に動いたことに過剰反応だと反発したのもそれであろう。


 ようやく感染を封じ込める見通しが立ったかに思われるこの段階に至って、中国は反転攻勢に出て来た。「環球時報」など中国メディアは、中国は新型コロナウイルスの拡散を遅らせることに貢献して来た、中国はウイルスとの戦いに勝ちつつある、しかるに欧米諸国は警戒と対応が緩慢で感染を広げてしまった、との説を流すことに忙しいようである。例えば、3月19日、中国は前日の新たな国内感染が初めてゼロになったこと、34の感染例はすべて海外感染のケースだったことを公表した。

 3月13日、アリババのジャック・マー(馬雲)が、50万個の検査キットと100万枚のマスクを米国に寄贈すると発表した。このことに関して、米国バード大学のウォルター・ラッセル・ミード教授は、3月16日付のウォールストリート・ジャーナル紙で、この危機を利用してグローバルな地位の強化を図りたいという中国の思惑の兆候であると述べている。3月11日に、四川大学華西医院の医師や中国赤十字関係者ら7人の専門家チームが、検査キットやマスクなど医療器材を携行してイタリアに入ったと伝えられることも、その表れだと指摘する向きもある。

 この種の中国の行動を、純粋に国際協力の精神によるものだと受けとれないことには理由がある。上述の中国メディアの宣伝工作もそれである。更に言えば、コロナウイルスの震源地である中国が、事態発生の初期に、問題発生の経緯、中国が講じつつある措置、諸外国および国際機関に対する協力の要請をとりまとめて最高指導者が内外に宣明するという一事を怠ったことがある。それがために、海外に不満と不信が漂う状況ではなかったか。3月 11日、米国のロバート・オブライエン大統領補佐官が「武漢の感染拡大は隠蔽された」「そのため世界は対応までに2週間を失った、その間に我々は中国で起きたこと、および世界で今起きていることを劇的に抑え込めていたであろう」と述べたのは、不信の表れであろう。翌3月12 日、これに反応して、中国外務省の趙立堅(報道官)は、「武漢にウイルスを持ち込んだのは米軍かも知れない......米国には説明責任がある」とツイートしたが、中国の弁護に有用だったとは思われない。

 その後、トランプ大統領は「中国のウイルス」、ポンペオ国務長官は「武漢のウイルス」と言ったが、国内対策の遅れに対する批判もあって、言外に中国の責任を問うたものであろう。

 いずれにしても、ミード教授の論説の主眼は、中国の影響力拡大の危険を警告することにあった。今後、新型コロナウイルスは途上諸国に拡散することになるかもしれないが(もっとも、気温が高い気象条件の影響を受けるかも知れないが)、新型コロナウイルスだけでなく、原油価格の暴落その他の複合的な原因で途上諸国は混乱に陥る。これに乗じて、中国は援助の提供と中国のガバナンス・モデルの優位性(共産党の一党支配体制が欧米流の民主主義よりも優れている)についてのプロパガンダにより、その影響力の拡大を企てる。その結果、嵐が過ぎて見渡せば世界は一変しているかも知れないと、ミード教授は警告する。この主張は誇張が過ぎるようにも思えるが、10日間で病院を作って見せる中国のことだから、この可能性はある。

 そうであれば、西側諸国としては、途上国の混乱の早期収束に協力する他ない。この論説では、西側諸国にその用意があるかを疑っているように読めるが、そうするしかない。新型コロナウイルスについては、WHOを中心に支援の体制を組むことが正攻法であろうが、それとともに西側主要国が枢要な途上国に効果的な援助が出来るかどうかが鍵となろう。

【私の論評】世界に謝罪しないと米国の怒りをかい、石器時代に戻るかもしれない中国(゚д゚)!

中国は、新型コロナ危機を利用し世界的地位向上を図っているようですが、そのようなことが本当に成功するでしょうか。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
今も新たな感染者、武漢封鎖を解除する中国の無謀―【私の論評】微笑外交でEUを取り込もうとする中国(゚д゚)!
武漢駅で消毒作業の準備をするために集まった消防士たち
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で中国が微笑外交でEUを取り込もうとしている様を掲載しました。しかし、この記事で、イタリアを例に出してそのようなことはできないであろうことを掲載しました。この記事から結論部分を掲載します。
しかし、そのようなことが簡単に成就できるでしょうか。現状では、確かにイタリアなど武漢ウイルスにより社会経済が沈んでおり、中国の助力を請おうとする姿勢もみられますが、コロナであれほどの惨禍に見舞われたイタリアです。そうして、そうなったのは、中国の隠蔽による初動対応のまずさにあります。 
ある程度武漢ウイルスが終息すれば、多くの国民から中国への批判は相当高まることになるでしょう。 
さらに、中国で再び中国で武漢ウイルスの第二次の爆発的感染がはじまるかもしれません。 
中国がEUを中国の傘下に取り込むことに執着すれば、インド太平洋との2正面作戦になってしまいます。無論EUに対しては、軍事的な行動はとらないでしょうが、それにしても、経済支援などはし続けなければならず、現在の中国にそれができるのかは疑問です。 
いずれにせよ、コロナ後の中国の動きに関しては、日米ともに協調し、注意深く見守りつつ、EUへの中国の動きも牽制しなければならない時が来るかもしれません。 
日米ともにまずは、国内の武漢ウイルス感染を一日も早く終息に向かわせるべきです。
いずれ、武漢ウイルスの感染が静まれば、当然のことながら、イタリアでは中国に対する批判の声どころか怨嗟の声があがるでしょう。

      新型コロナウイルスにより毎日多くの死者が出ているイタリアで、
      柩が多く並べられた教会内の写真が公開された。

ただし、気をつけなければならないところもあります。EUは最近の感染拡大が著しいイタリアやスペインなどが、大規模な対策に迫られているとして、財政状況の厳しい加盟国を支援するための基金も活用することや、ユーロ圏の各国が共同で発行し資金を調達する「ユーロ共同債」の発行を求めましたが、ドイツやオランダの反対で見送られました。これでは、何のための「EU」なのかという声がイタリア国民からあがるのは当然です。

イタリアの政治は、武漢ウイルス禍の前からかなり混乱していました。

第1に、「EU懐疑主義」はいわゆるイギリスに特有の病気ではなかった、ということです。イタリア国民は3月の総選挙で、2つの「ポピュリスト(大衆迎合主義)」党である「同盟」と「五つ星運動」を勝利させました。EUに不満があるから、というのがその大きな理由の1つです。

第2に、今回のイタリア政治の混乱は、EUに異議を唱えるのが、特に単一通貨ユーロ圏に加わっている国の場合はいかに大変か、というのを示しています。イタリア政府はEUとの関係を再交渉で見直し、おそらくユーロを離脱することを望んでいるのかもしれないですが、どうしたら実現できるのか見えてきません。EUはただ1つの方向、つまり統合に向かってのみ進み続けていて、後戻りはできないのです。これこそが、EUに向けられる非難の1つです。

第3に、イタリア危機は、単一通貨が経済にもたらす悲惨な結果を物語っています。実際のところユーロは、ヨーロッパの国々を「ますます緊密な連合」にまとめ上げようとするための政治的なプロジェクトでした。その前提となり得るほどにはこれらの国々の経済は「同水準に近付いて」いなかったし、今もそうなっていません。イタリアはそのために苦しみ続けてきた国の1つです。

イギリスが単一通貨ユーロに参加しないことを決定した当時は、親EU派からは「歴史的なチャンスを逃した」と言われたものでした。ところがイギリスの選択が賢かったことは、これまでに十分証明されています。

ユーロ圏内最強の経済国ドイツにとっては、確かにユーロは利点が大きいです。経済のより弱い他の加盟国のおかげでユーロ価格は比較的低く抑えられ、ドイツの輸出を助けています。ところが経済の弱い国々からしてみれば、ユーロは強過ぎ、ドイツ経済のせいで高止まりしているようなものです。それが、こうした国々の景気を阻害しています。

南欧諸国の若年者失業率は、破滅的な状況が続いています。イタリアでは18~25歳の45%が失業中です。EUが移動の自由をあれほど主張している理由の1つもここにあります。もしも仕事のないスペインやイタリアの若者がイギリスのような、雇用創出できるほど経済が好調な他の国々に移動できないとしたら、社会的影響は恐ろしいことになるでしょう。

失業が多ければ、日本や米国のような国であれば、金融緩和をすれば、雇用が良くなるのはマクロ経済の常識です。ただし、各々の国生産性を超えたところまで、緩和をしてしまうと、ハイパーインフレになってしまいます。

ユーロ圏では、イタリアが金融緩和をしようとしても、イタリア銀行(イタリアの中央銀行、日本の日銀にあたる)自由にはできません。それを実行できるのは、欧州銀行です。あくまで、欧州全体が緩和をしたほうが良いと判断された場合、緩和をするのです。だから、イタリア等はいつも割を食うわけです。

財政政策に関しては、各々の国の財務省が実行することができますが、それにしても、このブロクでも以前述べたように、イタリアの経済も、マンデル・フレミングの法則があてはまります。

マンデル・フレミングの法則とは、変動相場制において、財政政策の効果は非常に低くなるということです。だから、効果のある財政政策を実行しようとすれば、金融政策も同時に行う必要があります。しかし、イタリア銀行は、イタリアのために独自の金融政策を実行することはできないのです。

この状況ですから、イタリア国民には以前から、EUに対する不満が鬱積していたのです。イタリアのポピュリスト政党が推し進めようとする経済計画が現実的だなどと言う気もないし、イタリア国内の多くの問題を生んだ責任がイタリア自身にはないなどとも言うつもりもないですが、それでもイタリア有権者がこの政治状況を選んだ理由の一部は、EUにあるといえます。

このあたりの事情を中国が理解し、イタリアに対する支援を強化すれば、イタリアがEUを脱却して、中国の傘下に入るということも十分考えられます。それどころか、多くの南欧諸国が右にならえで、EUを脱退するかもしれません。

さらに、中国はイタリアやEUだけではなく、世界中の国々の不満を利用して、傘下に収めるかもしれません。

そうなると、EU崩潰や、戦後の米国を頂点とする世界秩序も崩れる可能性があります。そうならいためにも、EUはもっと柔軟な体制に構築し直すとか、日米なども当面は自国の武漢ウイルス対策に追われるものの、早期に解消して、EUや世界中の国々、経済的に弱体化している国々を支援するべきです。支援としては、経済支援だけではなく、中国になど頼らなくても、独立独歩の道を歩めるように様々な支援をすべきです。

そうでないと、武漢ウイルスを奇貨として、中国は世界中の国々を自らの傘下に置き、世界秩序を自らの都合の良いように作り変えていくかもしれません。

ただ、中国では新型コロナウイルスに感染したものの症状が出ない人(無症候性キャリアー)が相当数存在するもようですが、最新の統計では、これらを感染者に含めていないため、実態は不明のままです。そのため無症候性キャリアーが現在もなお、自覚がないままウイルスを拡散させている恐れがあるとの不安が高まっています。

中国共産党としては、独裁体制であるため、これらの問題は十二分に対処できると高をくくっていると思われますが、私はそのように簡単に事がすむとは思っていません。

日本を含めた多くの国々も、中国からの入国制限を継続しています。一度、中共とWHOに裏切られているわけですから、これは、相当期間にわたって継続されるものと思います。

米国では、「消防士を装う放火犯」である中国に対して、多くの人々が怒り心頭に達しています。

米国議会では、中国政府の法的かつ財政的な責任を問う具体的な動きがすでに広まっています。

米国連邦議会の上院のジョッシュ・ホーリー議員(共和党)、下院のセス・モールトン議員(民主党)、エリス・ステファニク議員(共和党)ら約10人の超党派議員グループは3月23日、コロナウイルス感染症に関して中国政府の責任を法的に追及し、感染の国際的拡散によって被害を受けた諸国への賠償支払いを求める、という趣旨の決議案を上下両院に提出しました。

同決議案に署名した1人、ジム・バンクス下院議員(共和党)は議場での発言で、中国の責任追及のためには、単なる決議ではなく、米国として強制力を持つ法律を作って、中国政府への損害賠償を法的に迫るべきだという提案を明らかにしました。

それは以下のような提案でした。
全世界に被害をもたらした中国政府の法的な責任を明確にして、中国に賠償金を支払わせる方法として、第1には、中国政府が保有する莫大な額の米国政府債券の一部を放棄させる方法、第2には、中国からの輸入品にこの賠償のための特別な関税を新たにかけて、「コロナウイルス犠牲者賠償基金」を設けさせる方法、などが考えられる。
こうした方法の実効性は現時点では不透明ですが、米議会にここまで具体的な中国政府への賠償請求の動きが広がっていることは注視すべきです。

米国議会の共和党、民主両党が一致してここまで強硬な態度をエスカレートさせたことは、今後の米国の中国への姿勢がまた格段と厳しくなる展望を示したといえます。その展望は“脱中国”とも呼べるでしょう。米国のこうした極端で過激な対中姿勢は、同盟国の日本の対中政策にも複雑に影響してくるはずです。

中国がこのような厳しい措置を受けるようになっても、ウイルス発生源であるにもかかわらず、世界の「ヒーロー」になる試みを継続するなら、米国はさらに厳しい最終手段をとるかもしれません。それは、中国に対する全面戦争等ではなく、ドル元交換の禁止やドル使用の禁止などの厳しい措置です。


そのようなことになれば、中国は貿易ができなくなり、石器時代に戻るかもしれません。そうなる前に、中国は「ヒーロー」になることをやめて、世界に感染を広めたことを真摯に謝罪すべきです。しかし、中共は絶対に謝罪はしないでしょうから、石器時代にまっしぐらかもしれません。いや、その前に統治の正当性を失い崩潰するでしょう。

イタリア人も、日本人も、韓国人も、その他の国々の人たちも、もっと怒るべきです。今日世界がこのような状態にあるのは、あなたや私や、各国の政府が悪いのではなく、元を正せば、中国共産党だけが悪いのですから。怒りの矛先は、中共だけに向けられるべきなのです。

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2020年3月31日火曜日

豊田真由子さん「コメンテーター転身」をネット民歓迎の理由―【私の論評】コミュニケーションの本質を知らなければ、豊田氏の失敗の本質や現在の姿を理解できない(゚д゚)!


『バイキング!』にコメンテーターとして復活した豊田真由子氏

新型コロナウイルスが日本中の関心事となって1か月以上が経つ。テレビの情報番組もコロナウルス情報を連日、取り上げている。そのときに欠かせないのが適切な解説やコメントをしてくれる「有識者」の存在だ。東京歯科大学教授で呼吸器内科部長の寺島毅さんや、元国立感染症研究所ウイルス第三部研究員で白鴎大学教授の岡田晴恵さんなど、様々な立場や経歴の専門家が登場しているが、最近、やさしく分かりやすい語り口で評判が高まっているのが元衆議院議員の豊田真由子さんだ。

【別写真】柔和な笑顔には“まゆゆ”のニックネームが

 豊田さんといえば、2017年に報じられた秘書への暴言「このハゲーーー!」で日本中の人に激しい怒りで叫んでいる印象がついていた。しかし『バイキング!』(フジテレビ系)に初めてゲストコメンテーターとして登場した姿はそれと大きく異なり、おろした前髪に肩までのふんわりヘア、淑やかなメイクで穏やかに語っていた。ネットでも「イメチェン!」「キレイだし、やさしそう」「雰囲気かわっていい感じ」と歓迎され、その後、出演するたびに「豊田真由子」や新たに呼ばれるようになった愛称「まゆゆ」がTwitterのトレンドワード入りするほどの注目ぶりだ。

 2017年の騒動当時、ネット、とくにSNSでは豊田さんの話題には罵詈雑言がつきまとっていた。だが、今回の大歓迎ぶりはどうしたことか。たった3年で、これほど評価が変わるものなのか。ネットニュース編集者で豊田さんを当時から追い続けていた中川淳一郎氏によれば「まゆちゃんはもともと、そんなに嫌われていなかったんですよ」と断言する。3年前からそのかわいらしさに注目していたネット民にとって彼女は「まゆちゃん」と呼ばれる存在だったという。

 「騒動時から『まゆちゃんをいじめるな』と主張しているネット民は少なくなかった。確かに暴言でしたが、そこまで追い詰めるような内容かということです。それに、あの騒動のあと、政党の応援もないなか必死に選挙活動する姿が報じられていましたよね。そして落選したから、地獄をみて苦労したんだろうなということを皆が知っている。女性の国会議員はこうあるべきという型にはめられていたのが、今回のテレビ出演で本来の頭の良さやおだやかで優しそうな感じが分かりやすく伝わったのだと思います。そして、司会の坂上忍さんがひな壇に座る髪が薄いことをネタにしているそのまんま東さんなどを差して『ハゲ用意しておきました』と言い、ハゲをネタにしてもらえたことで許された雰囲気になった影響も大きいです」

 さらに、意外なイメージチェンジととられている豊田さんの見た目や言葉づかいの変化は、変わったのではなく、あれこそ本来の姿だ、と元同級生が語る。

 「学生時代はいつも淡いピンクや白などの可愛らしい服装でした。逆に、国会議員になったときのシャープなスーツ姿や髪型、メイクのほうに違和感がありました。穏やかな口調も、同じ教室で勉強していた頃のまま。大声で怒鳴ったり、叫んだりするところなんて見たことがなかった。公衆衛生の専門家として落ち着いて語る様子も、勉強熱心だった豊田さんのままです」

 東京大学法学部を卒業後、厚生省(現・厚生労働省)へ入省した豊田さんはハーバード大学へ留学、公衆衛生学で修士号を得ている。さらに2009年の新型インフルエンザ流行時には、厚生労働省の調整実務担当者だったので、未知の感染症に社会はどのように向き合っていくのか、という難題への取り組みを紹介できるのも納得だ。

 とはいえ、専門領域に詳しくても人に説明するのが上手とは限らない。どのテレビ局も、人に伝える技術も持ち合わせた専門家探しに苦労している。そんななか豊田さんが"発見"されたのは、友人宛のアドバイスが偶然、番組関係者の目に触れたためだった。

 「新型コロナウイルスについて不安を抱える友人に送った、見解とアドバイスのメールが『バイキング!』(フジテレビ系)の番組プロデューサーの目に留まったことがきっかけでした。医療に詳しくない、つまり一般の人に向けて分かりやすく解説されていて、不安を与えないように配慮が行き届いたアドバイスだったんです。テレビで話してもらうのにぴったりだとお願いしました」(番組関係者)

 出演を依頼した番組は生放送だということもあり、それを理由に及び腰になる人も少なくない。だが豊田さんは「役に立てることがあるのならやらせていただきたい、と快諾いただきました」(前述の番組関係者)という。

 その後、豊田さんは複数回、番組に出演しているが、そのたびにネットでは評価が高まっている。内容をみると、冒頭で記した見た目や語り口だけでなく「持ち込み資料すごい」「ものすごい分量の資料」と、机の上に分厚いファイルを置く姿も強く印象づけられているようだ。この「分厚い資料」には、出演者として豊田さんを迎えた番組関係者も驚いている。

「毎回、間違いないように、分かりやすく伝わるように、徹夜で準備してくださっているそうです。スタジオにまで持ち込む大量の資料には赤ペンでびっしり書き込みがある。過去の資料もたくさん用意してくださって、生放送だと間際にお願いすることも多いのですが、どうやったら一番簡潔に説明できるかを直前まで練っていただいています。想定外の質問にも備えるべく、電話帳くらいの資料をいつもそのときの状況に合わせて新しく揃えて、読み込んでいる。本当にありがたいことです」

 2017年10月の衆議院議員選挙落選後、豊田さんは公の場から一切、姿を消していた。それから今回の番組出演で再び登場するまで、どのような生活を送っていたのか。「少し前には家族で笑顔で出かける様子も見られたので、元気になってよかったと思っていたんです」と地元の支援者が語る。

「あの事件のあとは、人前から隠れるように暮らしていました。体調を崩して入院していましたが、退院後は福祉法人に勤めていました。家族にも悲しい思いをさせてしまった、と必死で向き合ってきたそうです」

 家族も落ち着き、テレビ出演によって好感度も上がる一方だ。となれば政治の世界へ復帰することやタレント転身への誘いもありそうだが、本人にはそんなつもりはまったくないそうだ。

「役に立てることがあるのならやらせていただきたいとだけ言っているそうです。この3年間、本当に笑ったことがなかったけれど、こうやって人前に出たことで笑っている自分に気づけた。出演のきっかけをつくってくれた人たちに感謝しているとも話しているそうです」

 ネット、とくにTwitterで大評判の豊田さんだが、2017年の騒動以来、Twitterは怖くてまったく見ていないという。まゆゆへのエールを直接、届けられないのは寂しいかもしれないが、少しはにかんだ笑顔が似合う今の彼女にとって、Twitterを見ないぐらいが応援してくれる人とのちょうどよい距離感なのかもしれない。

【私の論評】コミュニケーションの本質を知らなければ、豊田氏の失敗の本質や現在の姿を理解できない(゚д゚)!

本日豊田真由子氏について掲載したのは、上の記事をはじめ世の中には実に安っぽい論評が多いからです。いずれの報道をみても、コミュニケーションの原則にまで踏み込んだ話をしているものはありません。

私自身は、豊田真由子氏が失敗してしまったのは、コミュニケーションの原則を知らなかったからだと思っています。

これについては、あの事件が起きてから少したってから、(2017年9月18日)このブログに掲載したことがあります。
豊田真由子議員が会見「生きているのが恥ずかしい、死んだ方がましではないかと思ったこともありました」―【私の論評】私達の中の1人から私達の中のもう1人に伝わるものとは?
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事ではコミュニケーションの原則をとりあげました。これは、ドラッカリアン (ドラッカー・ファン)なら誰でもご存知と思われるドラッカー氏のあげている原則です。

ドラッカー氏

1. コミュニケーションは知覚である
2. コミュニケーションは期待である
3. コミュニケーションは要求である
4. コミュニケーションは情報ではない

この原則の詳細は、この記事をご覧いただくものとして、なぜ豊田真由子氏が、あの時に失敗し、現在では成功しつつあるのか、各項目ごとに従って分析したものを以下に掲載します。

1. コミュニケーションは知覚である
大工には大工の言葉で話せと、ソクラテスは言っています。コミュニケーションとは、相手に知覚されなければ伝わらず、全く無意味になってしまいます。「2.のコミュニケーションは期待である」の項でも述べますが、彼女自身が相当な努力家で優秀な人であり、こうした優秀な人間にありがちな欠点は、他者が自分と同様に優秀であり、自分にとっては疑問の余地がな言葉なので、相手にも通じるのが当然という錯覚を抱いてしまう点にあります。
言葉も、相手に合わせた言葉でいうのでなく、自身の理解できる範囲で語ることが多く、相手の範囲を超えていることもしばしばあります。 あるいは、同じ事を言っても、コミュニケーションが互いに成り立っている相手なら、理解ができても、そうでない人に対しては、理解ができないということもよくあることです。豊田氏は、このあたりの配慮が欠けていたものと思います。
2. コミュニケーションは期待である
彼女自身は、非常に優秀な人物で、ミスを仕出かす人々の気持ちが本当に理解できないのできなかったのではないでしょうか。彼女の経歴をみると、東大法学部卒業、厚生労働省入省、ハーバード大大学院修了、そして衆議院議員に当選しています。 
およそ非の打ち所のないほど華麗な経歴で、彼女自身が相当な努力家で優秀な人だったのです。こうした優秀な人間にありがちな欠点は、他者が自分と同様に優秀であるという錯覚を抱いてしまう点にあります。
本来であればできるはずなのに、意図的に努力を怠っているから、仕事ができないという風に思い込んでしまうのです。自身が優秀であればあるほど陥りがちな欠点といってよいでしょう。この罵声を浴びせられた秘書のミスを許すことができなかったのでしょう。 
ところが、人間は皆、豊田代議士ほど努力家でも優秀でもありません。多くの人が豊田代議士ほど優秀ではないというのが、世の中の常です。確かに豊田氏は優秀な官僚ではあったかもしれないですが、個々の人々の心をおもんばかることができなかったという意味においては、政治家には絶対に不適格な人物であったといえるでしょう。 
これをドラッカー流にいえば、「コミュニケーションは期待」であるということです。豊田氏は、叱責した秘書に対して過度の期待をしすぎたのです、「このハゲー」という罵声は、豊田氏の秘書に対する期待を表していたのです。
それを秘書が受け止められなかったので、あのような事件になってしまったのです。 
3. コミュニケーションは要求である
相手に何かを要求するときに、それは相手の期待の範囲をこえる場合もあります。その場合には、これからおこることは相手の期待の範囲を超えていることを伝えなければなりません、そのためには覚醒のためのショックを与える必要があります。
覚醒のためのショックというと、仰々しいですが、平たくいうと、企業活動の日常でよくあるのは叱ることです。
この覚醒のショックを与えるには、相手の期待を良く知っていないければ無理です。豊田氏の「このハゲー」発言、はまさに秘書に対する要求で、何とかしろという叫びだったのでしょう。
しかし、秘書からすれば、自分は普通に仕事をこなしていると思い、豊田氏にとってそこそこ役に立っていると思っていて、豊田氏の期待には、ほぼほぼ応えていると思っていたのでしょう。
ところが、豊田氏の期待の水準は、それよりもはるかに高く、完璧に秘書の想定の範囲を超えていたのでしょう。 豊田氏は秘書の期待がどの程度のものだったかなど、全く考慮していなかったのでしょう。
4. コミュニケーションは情報ではない
コミュニケーションは情報ではありません。しかし、両者は相互依存関係にあります。情報は人間的要素を必要とせず、むしろ感情や感想、気持ちなどを排除したものの方が信頼される傾向にあります。そして、情報が存在するためにはコミュニケーションが不可欠です。 
しかし、コミュニケーションには必ずしも情報は必要ありません。必要なのは知覚です。相手と自分との間に共通するものがあれば、それでコミュニケーションは成り立つのです。このことも豊田氏は理解していなかっのでしょう。
5年ぶりくらいに、親友に会っても、話は十分に通じます。それはコミュニケーションが成り立っているからです。しかし、初めて会った人とは、相手にあわせるとか、平易で誰にでもわかる言葉を使いをするなどの配慮しないと、なかなかコミュニケーションは成り立ちません。
ドラッカーの「コミュニケーション」の原則には、最後にもう一つ重要なものがあります。それは、コミュニケーションとは「私達の中の一人から、私達の中のもう一人に伝わるもの」であるということです。

コミュニケーションを交わすには、そもそも「私達」といえる関係になっていなければ、伝わらないのてす。

豊田氏と「このハゲー」といわれた秘書の間には、「私達」といえるまでの関係はなかったのでしょう。

コミュニケーションの成り立っていない間柄の人間同士では、表面的な付き合いしかできないということです。そうして、コミュニケーションが成り立っていない場合は、最悪の結果を招くことになります。

この元秘書は、年齢ははっきりしませんが、豊田氏よりは一回り上だったようです。であれば、経歴や学歴などでは、豊田氏には及ばないかもしれないですが、コミュニケーションにかけては一日の長があるはずで、未熟気味の豊田氏に対して何らかの対処ができたはずとも思います。

恐らく、何度も信じられないほどの暴言を浴びせられ、嫌気が差したことは理解できます。しかし、本来、彼がなすべきだったのは、ミスをした点に関しては、豊田代議士に対する心からの謝罪であり、その後になすべきは、豊田氏の異常な言動に対する「諫言」ではなかっでしょうか。

失敗した点は謝罪すべきですが、本来、非難されるべき点ではない身体的特徴を揶揄(やゆ)され、人格を否定されるような発言がなされた点に対しては、いさめるべき立場にあったと考えられます。いさめて聞き入れないというのならば、断固として、その点は認めがたいと面を冒してでも堂々と主張すべきだった思います。

これは、豊田氏に対する覚醒へのショックとなり、豊田氏も変容して、それこそ秘書と「私達」といえる関係となり、コミュニケーションが成り立つきっかけになったかもしれません。どちらか一方の期待や、要求が他方の想定よりもはるかに大きい場合、このようなことになりがちです。

昔は、本当の親友とは喧嘩をしないとなかなかなれないといわれたものですが、これは本当にコミュニケーションを成り立たせるためには、覚醒のショックが必要だということを指していたのだと思います。しかし、最近では、単なる知人を友だちなどと読んでいる人も大勢いて、こういうことが理解されていないのではないか思うことがしばしばあります。

現在の豊田氏が、現在ネット民に歓迎されているのは、やはり、このコミュニケーション能力を体得しつつあることが、ネット民にも伝わったからではないでしょうか。

見た目や語り口だけでなく、毎回、間違いないように、分かりやすく伝わるように、徹夜で準備するなど、とにかく相手を中心にものを考えるようになっていることが、評価されているのでしょう。とにかく、スタジオの共演者や視聴者の人々と、「私達」といえる関係を構築すべく努力している姿が評価されたのだと思います。

それにしても、この豊田氏の過ちを単に批判するだけの人もいましたが、現在の日本には、残念ながら、豊田氏同じよう間違いをし続ける人も多いのではないでしょうか。実際、河村建夫元官房長官は豊田氏に対して「ちょっとかわいそうだ。あんな男の代議士はいっぱいいる」と述べていました。

さらに、最近特に中間管理層には、部下を怒ったり、褒めることはできても、叱ることができない人も大勢いるようです。これでは、コミュニケーションが成り立っていないと思います。

私自身も、以前ドラッカーの「マネジメント【エッセンシャル版】」を題材として、40歳前後の有志と集い、読書会を開いたことがあります。その時、「コミュニケーションの原則」に関わる読書会の時に感じたのは、多くの人が字面を追っているだけで、ドラッカーのいうところの「コミュニケーション原則」を良く理解していないと感じたことでした。

多くの人感想は「当たり前」というものでした。では、その当たり前の事実の例証をあげてみよと指摘すると、満足な事例があがってこないのです。普段からあまりコミュニケーションに関心がないことの現れだと思いました。

他にも、事例があります。私は以前人事の仕事をしていたこともあるので、当時は企業説明会にも何度も足を運んだことがあります。そこで、他の企業の採用担当と親しく話をしたことがあります。

当時は、不況の真っ只中で、どこの企業も積極採用はしておらず、そうして多くの企業が「コミュニケーション能力重視」を採用のポイントだとしていました。


そこで、「コミュニケーション」を重視しているという企業の採用担当者の何人かに、担当直入に「御社でいうところのコミュニケーションとは何か」と質問してみました。

そうすると、多くの担当者が答えに窮していました。「コミュニケーション」とは当然のことであり、それまでまともに考えたこともないようでした。すぐに反応する人もいましたが、それにしても、技法などに限られていて、深みのあるものはほとんどありませんでした。

無論、私としてはドラッカーのいうところの「コミュニケーションの原則」のような答えを期待していたわけではないのですが、それにしてもわざわざ「コミュニケーション重視」というのですから、当然何かあるだろうという私の思いは見事裏切られました。

結局当時は、かなりの不況であり、多くの企業は、人の採用は控えていたのですが、それにしても採用を全くしなければ、将来管理者や幹部を選ぶときに候補者がいなくなり、大変なことになるので、当たり障りのない調整型の人を採用するというのが、本音だったようです。

特定の方向に能力かありあまるような人を採用すれば、不況のさなかで何か新しいことにチャレンジしようとするでしょうし、そのようなことはできないわけですから、かえって企業が混乱してしまうことになります。であれは、調整型人間を採用しておけば、当たり障りないということです。要するに「調整型」では格好が悪いので「コミュニケーション型」という曖昧な言葉を用いただけのようです。

「コミュニケーション能力=調整型能力」というわけです。これは、コミュニケーションの一側面を表しているだけで、コミュニケーションの本質ではありません。私は、以前にもカタカナ用語の弊害を主張してきましたが、この日本ではおそらく「コミュニケーション」ほど曖昧につかわれている言葉はないと思います。それが、様々な混乱を生んでいると思います。

私は、随分前から日本人はいつの間にか、コミュニケーション能力が衰えてきているような気がしていました。何しろ、豊田氏の例の事件が起こってしまったのですから、代議士もひどければ、秘書も著しくコミュニケーション能力が欠如していたと言わざるを得ません。日本の政治は一体どうなってしまうのかと思わざるを得ない低俗な事件でした。

もともとの日本人はわざわざ「コミュニケーション」という言葉を持ち出すまでもなく、そのようなことは、ある程度の年齢になれば、自然と体得していたと思うのですが、現在そうではないようです。

「報告・連絡・相談」いわゆる「ホウレンソウ」がコミュニケーションと信じて疑わない人もいます。いくら「ホウレンソウ」をしていても、コミュニケーションが希薄な場合もあります。あるいは、コミュニケーション=ノミュニケーションであり、「一緒に飲めばわかると」、中東のテロリストにツイートして、「私達はあなたを殺します」と答えられた学生がいたりします。この学生は、中東は原則禁酒であることを知らないのでしょう。
 

コミュニケーションの本質を知らない人たちが、「コミュ障」などの言葉を使っています。これでは、日本には「コミュ障」がはびこるわけです。現在では、「惻隠の情」という言葉ですら、死語になってしまったようで、わからない人が多いです。

田中角栄は「人たらし」といわれていましたが、田中氏は本当にコミュニケーション能力が優れていたのだと思います。そのような逸話は、いまでもサイトを検索するとたくさんでできます。

豊田真由子氏は、相当のストレスを抱えていたようですが、コミュニケーションに問題があれば、そうなります。

現在はストレス社会ともいわれていますが、ストレスを抱えている人の中にもコミュニケーションに問題がある人が大勢いるのではないでしょうか。

現在では、コミュニケーションという言葉を使い、ドラッカーの「コミュニケーション原則」をあげて、厳密に話をしないとわからない人が増えてきました。残念なことです。
 
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2020年3月30日月曜日

遅すぎ、ショボすぎ…安倍政権のコロナ対策は、まるで話にならない―【私の論評】コロナ復興税すら徴収しかなねいゴロツキ財務官僚の思い通りにさせるな(゚д゚)!

遅すぎ、ショボすぎ…安倍政権のコロナ対策は、まるで話にならない
はっきり言おう。このままでは危ない



もう1ヵ月以上遅れている

安倍首相は28日に記者会見し、「緊急経済対策の策定と、その実行のための補正予算案の編成を、このあと指示する。今まさにスピードが求められており、10日程度のうちに取りまとめて速やかに国会に提出したい」と述べ、今後10日程度でリーマンショックのときを上回る規模の緊急経済対策を策定し、新年度の補正予算案を編成する考えを示した。

筆者の結論を言おう。これまでの本コラムを読んでもらえればわかると思うが、「あまりに遅すぎで、シャビー(みすぼらしい)」だ。

まず「遅すぎ」からいこう。28日に記者会見が行われたのは、27日に2020年度予算が成立したからだ。この段階で、財務省の手順に従ってしまっており、「遅すぎる」のだ。

筆者はこれまでの本コラムでも、3月中の2020年度予算の「修正」を主張してきた。2020年度予算を成立させてから「補正」で対応すると、1ヵ月以上も遅れるのだ。

また、中身に関わる話でもあるが、安倍首相は、現金給付の規模や対象について「リーマンショックの時の経験や効果などを考えれば、ターゲットをある程度おいて、思い切った給付を行っていくべきだと考えている」と述べ、すべての国民に一律の現金給付には慎重な考えを示した。


これは、所得制限したうえで現金給付をするつもりなのだろう。今回のような大きな経済危機の時には、何よりスピードが優先される。なので先進国では、まず現金給付をする。具体的には、筆者が本コラムで書いてきたような政府振出小切手を国民に配るというやり方だ。

所得制限とは、通常は配布前に所得制限をかけて行うものだ。具体的には、所得に応じて給付金を配布するという方法になる。しかし、実際に行うにはかなりの時間を要する。そこで、政府振出小切手を一律に配布するという方法がとられる。この方式は、アメリカなら2週間程度で実施可能だ。

やっぱり財務省が障害か

「高額所得者に対しても一律に給付金を出せば批判される」と、財務省は国会議員を脅す。実際に、今回もそのようなことがあったようだ。しかし、その脅しは簡単に切り返すことができる。

というのは、アメリカでも同じであるが、税法の非課税措置を手当しなければ(つまり何もしなければ)、給付金は税法上「一時所得」に該当するため、高額所得者は限界税率が高く、それなりの調整がなされるのだ。

こうした危機に所得制限を示唆するとは、日本の国会議員はコロっと財務省に騙されてしまったようだ。

ついでに言っておくが、日本の現金給付は政府振出小切手を使っていないので、とても2週間ではできない。

リーマンショック時に給付された定額給付金は、いわゆる地方事務である。地方自治体から国民に、定額給付金の「申請書」が送られる。国民はそれに銀行口座などを記載し、本人確認書類などとともに地方自治体に「申請」する。受け取った地方自治体は、本人確認をして、銀行口座に振り込む。この間、1、2ヵ月を要する。

一方、政府振出小切手では、本人のところに小切手が届く。本人はそれに署名して、銀行に持ち込む。銀行が本人確認して現金が付与される。この方式のほうが簡便なので、2週間くらいで実施できる。

官邸が財務省にやられている

次に、対策そのものの規模も情けないほどシャビーだ。一応、「リーマンショックの際を上回る規模」というが、これは事業規模の話だ。リーマンショック時に政府が56兆円の事業規模で対策したのは事実だが、真水ベースだと15兆円程度だった。

経済対策には、大別すれば(1)公共事業、(2)減税・給付金、(3)融資・保証がある。「真水」とは、(1)のうち用地取得費(事業費の2割程度)を除いた部分、(2)は全額、(3)は含めないで、(1)(2)を合算したものを指すことが多い。

実際の政策としては、(2)でも消費に回らないと短期的にはGDP創出につながらないし、(3)がないと企業倒産に繋がり、雇用の喪失を通じてGDPへの悪影響が出る。

その意味では、全ての政策が相まって重要なのだが、「真水」の考え方は、「マクロ経済政策による有効需要増のGDPに対する比率」で表すことができる。そのため、経済ショックで需給ギャップがGDPの一定割合に生じた際、どの程度まで穴埋めできるかが簡単にわかるので、景気の先行きを占う上で有効である。

実は、筆者は、2010年1月5日から本コラムを書いている。最初の原稿「なぜ日本経済だけが一人負けなのか」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60)では、リーマンショックのGDPギャップとその埋め方を、日米英独で国際比較している。その中で、「日本は財政政策も金融政策も酷い」と論じている。

安倍政権になって、少しは民主党政権より経済運営がまともになったが、ここにきて、メッキがはげている。自民党内の一部はまともであるが、今の安倍政権は官邸が機能していない。このため、財務省にやられている。さすがの安倍首相も、パワーが失われているようだ。

「真水」でないと意味がない理由

その結果、今回の経済対策も事業費ベースでは50兆円を超えるが、真水ベースではシャビーな案になっている。GDPに影響を与える真水ベースだと、せいぜい20兆円ともいわれる。これではGDPのわずか4%である。アメリカでは2兆ドルベースの経済対策で与野党が一致しており、これがGDPの10%に達することと比べると、日本はシャビーと言わざるを得ない。

なぜ「真水」が重要なのかと言えば、先に紹介した本コラムの第1回にも書いたように、今回のような経済ショックがあると、有効需要が失われGDPが低下するが、それはGDPと失業率の関係を示すオークンの法則からわかるように、「雇用の喪失」を意味するからだ。

どこの先進国でも、雇用の確保はマクロ経済政策のイロハである。経済ショックが各国のGDPに与える悪影響も均一ではなく、またそれが失業に与える悪影響も同じではない。しかし、雇用の確保という観点からみれば、経済ショックに対する各国のマクロ政策には自ずと相場観が出てくる。そうした議論のためには、「真水」の考え方で経済対策を見たほうが適切だ。

「真水」をシャビーにするのは、財務省の意向だ。彼らがその言い訳に使うのが、財政事情である。本コラムでは、日本の財政事情は悪くないと何度も繰り返してきた。

特に、今回のような経済危機においては、先進国では同時に金融緩和も行われる。それは、財政問題を起こさないためでもある。

実は、「経済対策を国債発行で賄い、それと同時に金融緩和する」というのは、発行した国債を中央銀行が購入することを意味する。そうなると、国債の利払いは中央銀行になされるが、それは納付金として政府の収入になるので、実質的な利払い負担がなくなるのだ。

このことは、前回のコラムにも書いた。しかし、実際の政治の現場では、政治家は財務省のいいなりになってしまう。どうしてなのか。

「ポスト安倍」との絡み

それには、自民党の党内力学が働いているようだ。ポスト安倍で、財務省に近い岸田文雄氏が図抜けているということだ。

岸田氏の派閥は宏池会だ。宏池会は、大蔵官僚から首相まで登りつめた池田勇人氏を創設者とする自民党内の伝統派閥で、官僚出身議員が多く、財務省の影響を強く受けている。

麻生太郎財務大臣は、宏池会ではないが、宏池会に近いとされている。もちろん財務大臣なので、財務省の伝統的な手法をそのまま実施しようとしている。

消費減税や小切手案は、財務省が最も嫌う政策であり、岸田氏や麻生財務相も否定的なので、現段階で実施は政治的に無理なのだ。

筆者もある宏池会系の議員や記者から、「あなたの言う消費減税や政府小切手などの政策は経済的には正しいが、財務省が否定するので政治的には採用されない」と言われたこともある。

それにしても、28日の記者会見で、消費減税について質問した記者はたった1人。新聞社が軽減税率の恩恵を受けていて、消費減税に反対しているから質問できないのではないだろうかと思ったくらい、残念だ。

このままで自民党は大丈夫なのだろうか。先週末に行われた共同通信の世論調査では、「望ましい景気対策」として、現金給付32.6%、商品券給付17.8%、消費減税43.4%となっている。意外と世論はよく見ているのかもしれず、ポスト安倍は国民と財務省の板挟みで苦しむかもしれない。

その他の対策もおかしい

いずれにしても、今の安倍政権はちょっとおかしい。筆者が強くそう思うのは、経済対策だけではない。

ひとつは新型インフルエンザ対策特別措置法の運用だ。これは民主党政権時代の法律を改正したもので、3月13日公布、14日施行だった。

筆者が驚いたのは、14日施行なのに、この法律にもとづいてすぐに政府対策本部を立ち上げなかったことだ。すでに首相官邸には新型コロナウイルス感染症対策本部があったので、それをそっくり移行させればよかったはずだ。政府対策本部が発足したのは、なんと27日だった。

緊急事態宣言がまだ出されていないのも奇妙だ。

特措法改正時の3月10日、筆者はあるネット番組で「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参院議員と対談したが、一刻も早く緊急事態宣言を出すべきとの意見で一致した。

その時はまだ、今日の事態を必ずしも正しく予測していたわけでないが、各都道府県知事が強制措置をとるべき時になれば法的根拠を確保できるし、とるべきでなければやらなければいいだけだからだ。他国では軒並み緊急事態宣言やそれに準ずる状況であり、いまさら日本が緊急事態宣言を出しても特に問題にはならないので、やらない選択肢はなかった。

しかしながら、いまだに宣言はなされていない。政府は「ギリギリの状況だ」と言う。特措法は医療崩壊を防ぐためのものなので、それほど「ギリギリ」なら緊急事態宣言を政府が行い、各都道府県知事に、対策の法的根拠と実施権限を与えておくべきだ。

小池百合子東京都知事が「ロックダウン」などと言っているが、法的根拠なしで行うのは危うい。

その他の対策もおかしい

いずれにしても、今の安倍政権はちょっとおかしい。筆者が強くそう思うのは、経済対策だけではない。

ひとつは新型インフルエンザ対策特別措置法の運用だ。これは民主党政権時代の法律を改正したもので、3月13日公布、14日施行だった。

筆者が驚いたのは、14日施行なのに、この法律にもとづいてすぐに政府対策本部を立ち上げなかったことだ。すでに首相官邸には新型コロナウイルス感染症対策本部があったので、それをそっくり移行させればよかったはずだ。政府対策本部が発足したのは、なんと27日だった。

緊急事態宣言がまだ出されていないのも奇妙だ。

特措法改正時の3月10日、筆者はあるネット番組で「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参院議員と対談したが、一刻も早く緊急事態宣言を出すべきとの意見で一致した。

その時はまだ、今日の事態を必ずしも正しく予測していたわけでないが、各都道府県知事が強制措置をとるべき時になれば法的根拠を確保できるし、とるべきでなければやらなければいいだけだからだ。他国では軒並み緊急事態宣言やそれに準ずる状況であり、いまさら日本が緊急事態宣言を出しても特に問題にはならないので、やらない選択肢はなかった。

しかしながら、いまだに宣言はなされていない。政府は「ギリギリの状況だ」と言う。特措法は医療崩壊を防ぐためのものなので、それほど「ギリギリ」なら緊急事態宣言を政府が行い、各都道府県知事に、対策の法的根拠と実施権限を与えておくべきだ。

小池百合子東京都知事が「ロックダウン」などと言っているが、法的根拠なしで行うのは危うい。

もはや終息のメドは立たない

その小池都知事も、もっと前に都民へ強く注意喚起をしておくべきだった。これは、3月19日の政府専門家会合で示されたデータだ。

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「感染源が未知の患者数の推移」であるが、これを見ると、東京と大阪で急激に増加しており、危ないと読める。実際、吉村洋文大阪府知事は、3月20〜22日の3連休前に兵庫・大阪間の往来自粛を呼びかけている。

そのときの根拠として、吉村知事はTwitterで厚労省から説明を受けたことを明かしている(https://twitter.com/hiroyoshimura/status/1240892069507256320)。


厚労省から受けたこの提案を重視し、方針を決定した。単なる有識者やコメンテーターが作成したものじゃない。国がこの書類を持って大阪府と兵庫県にわざわざ説明に来て提案された。重要な事実と判断して外に出した。多くのコメンテーターはこんな数字なる訳ないと思うだろうが、僕は無視できない。



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大阪府が厚労省から説明を受けているのであれば、東京都も同じであるはずだ。しかし小池都知事は、3月20〜22日の3連休前には何もしなかった。いくら東京五輪の延期に手間を取られていたとしても、これは重大なミスである。

因果関係はわからないが、結果として、感染者数は急激に増加している。下図は、これまで筆者が示してきた患者数推移予測の図を更新したものだ。従来の政策が有効であるとの前提で立てた先週までの予測は範囲内におさまっていたものの、今では大きく外れており、終息のメドは立たなくなっている。まったく違うフェーズに入っていると言わざるを得ない。

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筆者はいろいろな場で「いつまでにこの騒ぎは収まるか」と聞かれて、「東京と大阪が大丈夫なら○○までに」などと答えてきたが、その前提が崩れたいま、当面確たることは言いにくくなった。

【私の論評】コロナ復興税すら徴収しかなねいゴロツキ財務官僚の思い通りにさせるな(゚д゚)!

財務省は過去にも、嘘をつきつづけてきました。その最大のものは、復興税です。今東西、大地震・津波のような大震災の復興において、増税で対処したなどという話は聞いたことがありません。

国債を大量に発行して、復興事業を行うというのが普通です。復興税で実行した国など、古今東西いずれにもありません。疑問を感じられる方は、実際に調べてみてください。これは、経済学の常識中の常識なのですが、国債世代間の不公平を是正することができるのですが、税金ということになると、被災した世代にだけ負担が重くなり、世代間の不公平がおきるからです。

このブログでも主張してきたように、そもそも、自国通貨建て国債の債務不履行はあり得ないのです。つまりは、日本の財政破綻の可能性はゼロなのです。

しかし、財務省は復興税キャンペーンを行い、政治家、マスコミ、エコノミストを巻き込み、このとんでない復興税法を成立させ、国民に負担を強いました。国民といえば、震災を被った国民にも負担を強いたのですから、とんでもないの一言につきます。

財務省は、8%増税、10%の増税への露払いとして、復興税増税を実行したとされています。私自身、これ以前から私は財務省や、財務省の走狗となりはてた、日本の主流派の経済学者など、全く信用していないし、復興税を実現させたことで、それを確信し、奴らは、ただの馬鹿者共と断じています。

財務省は、消費税増税の根拠として、財政難や消費税を税と社会保証の一体改革の一環であるとしました。しかし、これも全部ウソです。このブログを読んでいる方なら、そもそもこの日本が財政難ではないことを知っているはずです。

財務省は、負債ばかり協調しますが、資産も含めて全体を考えると、負債はさほど大きくはありません。さらに、大企業が連列決算をしているように、日本国政府と日銀を連結した統合政府ベースでみると、さらに負債はへるどころか、2018年あたりからは、資産が負債を上回り、日本国政府の財政再建は終了したと言っても良い状況です。

にもかかわらず、財務省は日本は借金まみれで、赤ちゃんまで含めた、一人あたりの国の借金は1000万円にものぼるという途方も無いキャンペーンを繰り返しています。

財務省のおはこ「国の借金」の大嘘

そうして、その目的は、国民生活など全く無視して、ありとあらゆる方式で、金を溜め込み、天下り先を確保し、財務省を退官した後の、リッチで優雅な生活をすることです。それ以外にありません、全く浅ましいクズです。

こんなことが、いつまでまかり通るのでしょうか。私自身は、今回のコロナからの復興等にも、財務省はコロナ税などを考えて、被災者からも復興税を徴収したように、コロナウイルスで親しい人や愛する人をなくした人や、実害を被った人々から徴税するのではないかと思ったくらいですが、さすがにそれは今のところはありません。

現状でそのようなことをすれば、コロナウイルスで実害を被った人々や、企業などから袋叩きにされることでしょう。しかし、復興税を実現した財務省ですから、コロナ禍がある程度収まり、復興に向けて、人々が動き出したときに、コロナ復興税を実現してもおかしくないです。

「高額所得者に対しても一律に給付金を出せば批判される」とか、あたかも財政が逼迫しているように装い、消費税減税と、給付金の二者択一を迫るとか、財務省は今回も暗躍しています。

さらに上の文書では高橋洋一氏は、「緊急事態宣言がまだ出されていないのも奇妙だ」としていますが、これは昨日もこのブログに掲載したように、非常事態宣言による経済の悪化に対処するための経済対策に財務省の抵抗があり、政府がなかなか非常事態宣言に踏み切れないとことがあったとすれば、本当にもうとんでないことです。財務省=殺人省と言っても良いくらいです。これについては、次第に明らかになっていくことでしょう。

消費税減税をせず、不十分な給付金にも、多くの政治家や国民が甘んじて、我慢するようなこがあれば、ますます財務省は、つけあがり、それこそコロナ復興税やさらなる消費税アップを目論むかもしれません。

そんなことになれば、日本は国民も政治家も、財務省の奴隷になるようなものです。これは、会社でいえば、財務部や経理部の人間が、取締役や代表取締役社長などを差し置いて自分たちが、会社を実質上運営するようなものです。絶対にこのようなことがあってはならないです。

財務省がこうした傲慢不遜な振る舞いをやめないなら、いずれ財務省は完全解体して、解体した部分、部分を他省庁の下に組み込むくらいの厳しい措置が必要です。そうしないと、奴らは、時間をかけて他省庁を植民し、自らの配下においてしまうことになります。そうなると、財務省という怪物は退治できなくなります。そうして、もうすでになりかけています。

安倍政権としては、まずは、財務省が反対しようがなんであろうが、緊急事態宣言を実施して、はやめに終息させた後の次の選挙で、まともな経済政策を公約として大勝利して、財務省の動きを封じてほしいものです。

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