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2024年11月3日日曜日

米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも―【私の論評】北・露軍事協力の脅威と石破政権の対応不足が招く地域安定リスク

米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも

まとめ
  • 北朝鮮の兵力派遣目的: 北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻を支援するために部隊を派遣し、最新の戦闘経験を得ることで、韓国など将来的な紛争への備えを強化しようとしている。この参戦は北朝鮮軍にとって重要な学習の機会、特に近代戦の舞台での実戦経験を積む狙いがある。
  • ロシアとの連携強化: 北朝鮮はロシアとの関係を強化することで、中国への依存を減らそうとしており、これにより朝鮮半島の不安定化やアジア太平洋地域への影響が懸念される。ロシアからの見返りとして、北朝鮮は核開発計画の進展や軍事的支援の確保を期待している。
  • 軍事的影響とリスク: 北朝鮮の部隊が実戦で得る教訓は、ロシア軍の指導方法次第で大きく変わる。北朝鮮が「弾除け」として利用された場合、実質的な学習の機会が失われる可能性がある
同レポートの10月25日までに報告されいる北朝鮮軍のロシアに向けての配置状況図 クリックすると拡大します

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、北朝鮮がロシアを支援するために部隊を派兵した背景について分析した報告書を発表した。北朝鮮は、ウクライナ戦争を通じて得られる戦闘経験を将来の紛争、特に韓国との戦闘に活かす狙いがあると指摘されている。また、ロシアとの連携を強化することで中国への依存を減らし、朝鮮半島及びアジア太平洋地域の安定を脅かす可能性もあると警告している

報告書は、北朝鮮軍が現代戦の経験を欠いていることを指摘し、ウクライナ軍との交戦を通じて指揮統制や無人機操縦のスキルを向上させることを目指していると分析している。しかし、北朝鮮軍の実際の戦場での教訓が得られるかは、ロシア軍が北朝鮮兵をどのように利用するかに依存する。

さらに、北朝鮮はロシアからの支援を受けることで核開発を進め、将来的に朝鮮半島での紛争時にロシアの軍事的関与を期待しているとも述べている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】北・露軍事協力の脅威と石破政権の対応不足が招く地域安定リスク

まとめ
  • 北朝鮮はロシアを支援するため部隊を派遣し、ウクライナ戦争での最新戦闘経験を将来の紛争に活用しようとしている。
  • 北朝鮮とロシアの連携が、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安全保障バランスに長期的な影響を及ぼす可能性がある。
  • 北朝鮮はロシアとの協力を通じて中国依存を減らし、独立性を高めようとしており、これにより、地域全体の安定に新たなリスクが生じている。
  • 北朝鮮はロシアの支援を得て、韓国に対する威圧力を高めようとしており、安全保障バランスに影響を与える可能性がある。
  • 各国が北朝鮮の動向に懸念を示す中、日本政府は現時点で具体的な対応を示しておらず、外交政策が不透明である。
金正恩と北朝鮮人民解放軍

上の記事に示されている、米シンクタンクの戦争研究所(ISW)のレポートは、以下のリンクからご覧いただけます。

North Korea Joins Russia's War Against Ukraine: Operational and Strategic Implications in Ukraine and Northeast Asia

このレポートより、概要と主なポインのみ、以下に日本語訳を掲載します。

概要

北朝鮮はロシアのウクライナ戦争を支援するために部隊をロシアに派遣した。これは、2022年2月のロシアの全面的なウクライナ侵攻以降、両国間の協力が強化されているを示すもの。 
クレムリンは、北朝鮮の人材を利用して進行中の攻勢を支援し、ロシアの国内部隊を生成する能力の要求を補うことを考えている可能性が高い。ただし、北朝鮮の部隊がウクライナの作戦地域に配備される影響は、ウクライナの戦場をはるかに超えている。 
平壌は、北朝鮮の軍人が現代戦の条件の下で戦闘経験を得ることを期待している可能性があり、その経験を将来の戦争に応用できることを望んでいる。北朝鮮とロシアの連携は、朝鮮半島や広範なアジア太平洋地域の長期的な安定を脅かす可能性を内包している。

主なポイント
  • ロシアと北朝鮮との長期的な連携は、ウクライナの戦場を超え、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安定性に長期的な影響を及ぼす可能性がある。ウクライナの戦争は、これからのすべての戦争の性質を変えるだろう。そして、平壌はこの事実を自軍にとって重要な学びの機会と考えているようだ。北朝鮮軍は1953年以降、大規模な従来型戦闘を経験しておらず、特に韓国のような洗練された相手と現代戦を戦う準備が整っていないことを理解している。
  • 北朝鮮は、自国の部隊が攻撃的な戦略を磨き、西側が備えた敵に対して武器システムを試し、指揮統制の経験を得て、最新の戦場でドローンや電子戦システムを運用する方法を学ぶ機会を持つことを望んでいると思われる。平壌は、ウクライナ戦争で得たスキルが、韓国半島を含む未来の紛争で攻撃的な優位をもたらすことを期待しているだろう。
  • 北朝鮮軍が戦場で学んだ教訓を吸収し、広め、制度化する実際の能力は、ロシア軍が北朝鮮の人材をどのように活用するかに完全に依存する。もしロシアが北朝鮮の人員を「弾除け」として使用する場合、北朝鮮の部隊が避けがたい被害を受けることで、平壌が学びたいと思っている戦場の教訓が台無しになってしまうだろう。
  • 北朝鮮は、ロシアとの連携を深めることで中華人民共和国(PRC)への依存を減らそうとしており、その結果、北京の北朝鮮政権に対する影響力を軽減しようとしている可能性がある。PRCの北朝鮮に対する影響力の低下は、朝鮮半島の安定を減少させ、アジア太平洋地域全体を危険にさらすだろう。というのも、PRCはその影響力を利用して北朝鮮の侵略を抑制しているからだ。
  • 北朝鮮の最近のパートナーシップ協定とロシアとの関係強化は、たとえロシアの支援がプログラムへの直接的な技術援助の形であっても、北朝鮮の核兵器プログラムの発展を助けるのに役立つかもしれない。平壌は、ロシアとの大規模な兵力を完全に外国の紛争に投入するための見返りとして、朝鮮半島での紛争発生時にロシアの防衛コミットメントを確保しようとしている可能性がある。ただし、2024年のロシアと北朝鮮の相互防衛協定は、ロシアが南北間の戦争に軍隊を派遣することを回避する可能性がある。
  • 北朝鮮のロシアとの防衛協定は、韓国に対する脅威や威圧の信頼性と効果を高めることになる。
本レポートでは、中国が北朝鮮の侵略を抑制していることに関する具体的なエビデンスも示めされている。北朝鮮は経済的に中国(PRC)に大きく依存しており、その貿易の90%以上が中国に依存しているため、中国は北朝鮮に対して重大な影響力を持つ。例えば、中国は北朝鮮の主要な食料援助の供給国であり、エネルギーの原油供給者でもある。また、中国は朝鮮戦争以降、北朝鮮の重要な安全保障の担保者として機能し、北朝鮮政権の存続を支えているのだ。

金正恩と習近平

ところが、中国と北朝鮮の関係には常に不信感が存在する。北朝鮮は中国の行動制限に対して反発することがあり、特に2017年の核開発問題ではその限界が露呈した。中国の公式メディアは、北朝鮮が米国に攻撃を行った場合、中国は介入しないという立場を示した。このように、中国は北朝鮮の行動を抑えるために様々な制約を課しており、時には北朝鮮が直接的な対立を望んでいるような行動に対しても手をこまねくことがある。

最近の情勢では、北朝鮮がロシアとの関係を深めており、これが中国の影響力を削ぐ可能性が指摘されている。特に、北朝鮮とロシアが共同で核技術や軍事協力を進めることで、中国の制約から解放されるリスクがある。このような背景から、中国は北朝鮮の安定を保つために影響力を強める一方で、北朝鮮がより冒険的な行動を取る恐れが高まっているという状況が浮かび上がっているのだ。

このレポートは、北朝鮮と中国の複雑なダイナミクスを理解する上で重要である。北朝鮮の独立性の向上は、朝鮮半島やアジア太平洋地域の安定に新たなリスクを引き起こし、国際社会に広範な影響を及ぼす可能性があることを覚えておくべきだ。

北朝鮮がロシアへの派兵を行う背景には、中国や米韓に対する戦略的な意図が潜んでいる。北朝鮮はロシアとの関係を深めることで、依存度を減少させ、北京の影響力を削ぐことを目指しているのだ。これにより、経済的および軍事的に安定する可能性が高まる。

次に、米韓連携の脅威を軽減するために、ロシアの支持を受けた防衛力を強化し、地域の安全保障バランスを変えようとしている。具体的には、北朝鮮はロシアからの軍事的支援を通じて、自国の軍事的威圧を強化し、韓国に対する影響力を高めることを企図している。北朝鮮のロシアへの派兵は、自己防衛と影響力の拡大を図るための重要な戦略として位置づけられるのだ。

金正恩とプーチン

各国政府は、北朝鮮がウクライナに派兵する動きに対して注目している。米国は、ホワイトハウスの声明を通じ、北朝鮮がロシアに派遣する兵士に対して強い懸念を表明した。国家安全保障担当者のジョン・カービーは、これがウクライナの軍事的抵抗力を強化する要因となると指摘しているのだ。

韓国の国家情報院は、北朝鮮が約12,000人の兵士をロシアに派遣する計画があると報告し、自国の安全保障への影響に懸念を示している。また、ウクライナの軍事情報部門は、北朝鮮兵がロシア側で訓練を受けており、今後の軍事的圧力が増す可能性について警告を発している。このように、北朝鮮の派兵に対する国際的な懸念が高まり、各国はその動向を注視せざるを得ないのだ。

だが、日本政府は現時点では何らのコメントも発していない。石破総理大臣の外交や安全保障に関するビジョンの欠如は、彼の政権が直面する重要な課題の一つであろう。北朝鮮の核開発やロシアの軍事行動が地域の安全保障に脅威をもたらす中で、明確な外交戦略が求められている。しかし、石破総理は具体的な政策や行動計画を示しておらず、国際社会との連携強化や信頼構築の観点からも評価されない状態だ。

さらに、外交政策において近隣諸国との対話を重視する一方で、国益を守るための具体的なアプローチが不透明であり、国民や専門家からの信頼を得るには至っていない。この状況は、大国との関係を形成する際に、意思決定や情報の透明性を欠き、政権の信用をさらに低下させる要因となる。

このような環境下で、石破政権が今後どのように国際社会と連携し、具体的なビジョンを描いていくのかが注目される。明確な外交政策や安全保障のビジョンがなければ、権力基盤の脆弱性とあいまって、政権全体の信頼性にも影響を与えるだろう。 

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2018年12月25日火曜日

北朝鮮に強いシグナルを送った米国―【私の論評】ダメ押し米国!着実に奏功しつつある北制裁、中国への見せしめにも(゚д゚)!

北朝鮮に強いシグナルを送った米国

岡崎研究所

 米国財務省は、12月10日、北朝鮮の高官3名に対する制裁を発表した。そのプレス・リリースの主要点を紹介する。



・米国財務省の外国資産管理室(OFAC)は、北朝鮮で行われている深刻な人権侵害・弾圧に対して、3名の個人を指定した。この財務省の措置は、2016年の北朝鮮に対する制裁及び政策強化法(NKSPEA)に従って、本日、国務省が議会に提出した「北朝鮮の深刻な人権侵害・弾圧に関する報告書」に基づくものである。

・ムニューチン財務長官は述べた。「財務省が制裁対象とする北朝鮮高官は、北朝鮮による人権侵害を指揮した人達である。この制裁措置は、米国が行っている表現の自由の擁護や人権侵害への反対等の立場を示した行動である。米国は、一貫して、北朝鮮の人権侵害や表現の自由への弾圧に対して非難してきた。米政権は、引き続き、世界における人権侵害に対して行動を取って行く。」

・今回の措置は、北朝鮮が自国民に対して行っている扱いとともに、18か月前に亡くなった米国民、オットー・ワームビアさんに対する酷い扱いも想起したい。彼は、この12月12日で、24歳になるはずだった。彼の両親及び遺族たちは、いまも彼を追悼している。トランプ大統領は、2018年の一般教書演説で、米国は決意をもって、オットー・ワームビアさんに哀悼の意を捧げると、約束した。今回の措置は、この米国の決意の表れでもある。

・今回の指定は、大統領命令13687に基づくもので、北朝鮮政府と朝鮮労働党(WPK)等の幹部を対象にし、NKSPEAと適合する。今日指定された個人は、既に制裁対象となっていた組織、国家保衛省(MSS)、公安省(MPS)、WPKの組織・指導部(OGD)及び宣伝扇動部(PAD)に属す。

・国務省によると、今回指定された鄭敬沢(チョン・ギョンテク)は、MSSが行った人権侵害・弾圧を指導したと言われている。崔竜海(チェ・リョンヘ)は、OGDの部長であり、党、政府、軍を統括する「ナンバー2」と言われる。OGDは、党の強力な部署で、イデオロギーの監視を行ったり、党の政治的政策を実施したりする機関である。例えば、WPKの幹部が党の方針と異なることを述べてしまった際は、すぐに自己批判をさせる。崔竜海は、党中央員会の執行部の副委員長でもある。朴光浩(パク・グァンホ)は、WPK宣伝扇動部長で、表現の自由の弾圧を行なったり、イデオロギーの統制をしたりする責任者である、と国務省の報告書では述べられている。

左から 鄭敬沢,崔竜海、朴光浩

・米国は、深刻な人権侵害をした者に制裁を課し、その者たちが濫用をしないよう米国の金融システムを守る。2017年1月以来、米財務省は、500人以上の個人・団体を制裁対象として指定した。北朝鮮以外にも、シリア、南スーダン、コンゴ、ベネズエラ、イラン、ロシア等を対象にした。

・今回の制裁により、OFACによって指定された者の米国内の資産は凍結され、米国人と指定された者たちとの取引は禁止される。

参考:U.S. Department of the Treasury ‘Treasury Sanctions North Korean Officials and Entities in Response to the Regime’s Serious Human Rights Abuses and Censorship’ December 10, 2018

 12月10日、米国財務省は、北朝鮮の3人の高官に対しての金融制裁を発表した。

 今回の指定により、3人の在米資産は凍結され、米国人がこれらの者と取引を行うことが禁止される。実質よりも象徴的な意味合いの濃い措置であるが、北朝鮮に一層の圧力を掛けるものであり、北朝鮮に強いシグナルを送ったものと言える。

 12月10日の崔竜海等の制裁発表に続き、翌11日には、国務省が、北朝鮮では信教の自由が侵害されているとして、北朝鮮を今年も「宗教自由特別懸念国」に指定した。これは1998年に制定された「国際信教の自由法」に基づく指定であり、北朝鮮等10か国がそれに指定され、北朝鮮の指定は17年連続だという。

 北朝鮮の非核化を巡る米朝交渉が膠着し、南北関係も文在寅大統領が望むようには進展していない。文在寅が熱望する金正恩労働党書記長の年内ソウル訪問もほぼ不可能になったと青瓦台も今や観念したようだ。

 そんな最中に、米国は12月10日、11日と連続で人権侵害などを理由に対北朝鮮措置を出したことになる。

 また、米国政府は、11月末には北朝鮮に人道支援以外の支援をしないこと、国際金融機関による北朝鮮への融資に米国から出ている理事が反対するよう訓令する大統領決定を行った。これは、6月発表の今年の「人身売買報告書」で北朝鮮等を引き続き最悪国に指定したことを受けたものである。なお、昨年11月には、北朝鮮は、「テロ支援国家」に再指定された。

 北朝鮮はゆくゆく IMF、世銀、アジア銀行など国際金融機関に加盟し、融資を受けることを望んでいると言われ、韓国の文在寅政権はそれに好意的な姿勢を示している。しかし一連の米国の措置は、国際機関からの融資を難しくするものである。早速12月11日、北朝鮮労働新聞は米国による北朝鮮人権問題措置に対して、「米朝首脳会談の精神に反する極悪な敵対行為」だと反発している。

 トランプ大統領は基本的に人権には関心がないと言われている。シンガポールの米朝首脳会談でも人権問題は話されておらず、その点が批判されもした。なお、米国が今月開催しようとした北朝鮮の人権侵害を議論する国連安保理会合は、今年は断念せざるを得なくなったと報道されている。中国の他、中国の圧力でアフリカの理事国が反対したので、安保理で9か国の支持が確保できなかったと見られている。

【私の論評】ダメ押し米国!着実に奏功しつつある北制裁、中国への見せしめにも(゚д゚)!

米国の北朝鮮制裁は、実はかなり効いています。昨年から北朝鮮制裁は厳しさを増していました。米国による北制裁の徹底ぶりは、昨年から続いていました。

昨年10月1日、北朝鮮製武器の不正取引事件の奇妙な顚末が、米紙ワシントン・ポスト電子版の報道で明らかになりました。

事件が起きたのは一昨年8月でした。米当局からの情報に基づいて、エジプトの税関当局が同国沖でカンボジア船籍の貨物船を拿捕。北朝鮮を出発地とするこの船からは、携行式ロケット弾約3万発(推定価格2300万ドル相当)が見つかりました。

その買い手は、実はエジプト軍の代理人であるエジプト企業でした。同国が米国から巨額の支援を受けていることを考えると、驚きの事実でした。

トランプ米政権は昨年8月、エジプトへの経済・軍事支援を3億ドル削減・留保すると決めました。エジプト国内での人権侵害を懸念してのことだとされましたが、複数の米当局者によれば、決断の契機はこの武器輸入事件でした。

支援削減は、アメリカが北朝鮮問題を最重要視する現状を浮き彫りにしました。トランプ政権の目的はエジプトを罰すると同時に、同盟国であっても北朝鮮と武器取引をすればどうなるか、見せしめにすることでした。

この出来事からは対北朝鮮制裁の実態も浮かび上がりました。すなわち、国連による制裁と米国による制裁の在り方です。

北朝鮮が初めて核実験を行った06年、国連安保理は最初の制裁決議を採択。北朝鮮からミサイルや関連物資を調達することが禁じられました。北朝鮮が2回目の核実験を実施した09年には、北朝鮮による武器の輸出入が全面的に禁止されました。

国連加盟国は対北朝鮮武器禁輸措置を遵守すべきであり、北朝鮮から武器を輸入したエジプトは違反を犯したことになります。ただし、強制的に制裁を執行する権限を持たない国連が、北朝鮮の不法な武器取引に歯止めをかけるのは不可能です。

国連の専門家の推定によると、北朝鮮の武器取引額は年間1億ドル近く。韓国の朝鮮日報はその3倍の数字を挙げていました。

国際的制裁を補完するため、アメリカは強制力がある独自の制裁を行ったのです。手段の1つが、自国民を対象に敵国やテロ組織との取引などを禁じる1次制裁と、経済制裁を主とする非米国人対象の2次制裁です。

米国は、北朝鮮に関して幅広い1次制裁を実施。北朝鮮とのあらゆる「物資、サービス、技術」の取引を禁じ、財務長官は米国法の下で制裁遵守を求める権限を有します。

エジプトによる北朝鮮製武器の輸入は、アメリカで昨年成立した北朝鮮制裁強化法に抵
触。国益を理由に国務長官が見合わせを要請しない限り、大統領は同法に従い当該国への支援を留保しなければならないのです。

北朝鮮制裁強化法は大統領に、武器取引を手助けした人物を特定する権限も付与しています。財務長官は広範囲の2次制裁と併せ、武器取引の当事者(この場合はエジプト政府関係者)に対して、米金融システムへのアクセスを遮断することができます。

北朝鮮の武器密輸を阻止し、取引を手助けする国を規制すべく、国連と米政府は複数の措置を講じています。エジプトについて米国は可能な手段を全て行使していないですが、その必要はないでしょう。問題の貨物船が拿捕されて以来、エジプトは協力姿勢に転じています。

一連の出来事は、アメリカの支援対象国に米政府の法施行の徹底ぶりを印象付け、北朝鮮と取引する国に再考を迫ることになりました。そう、制裁はきちんと機能していたし、今でも機能しているのです。

昨年決議された北朝鮮への国連制裁決議

さて、この制裁が継続している現在、当の北朝鮮経済はどうなっているのでしょう。

2018年の北朝鮮の経済は、その構造的脆弱性が国連安保理及び米国の制裁と重なり、一層深刻な状況を余儀なくされました。最近北朝鮮を訪問した在日朝鮮人は、「北朝鮮はいま第2の苦難の行軍」に入ったと異口同音に語っています。

アジアプレスも7月、北朝鮮内部協力者からの報告をもとに、「ついに一部農村で飢餓発生、“絶糧世帯”増加で慌てる当局」との報道を行いました。“絶糧世帯”とはお金も食べ物もまったくなくなった家庭のことです。

中国の統計によると、北朝鮮からの1~10月の輸入額は前年同期と比べて89%も激減しました。米朝首脳会談直後は「もうすぐ制裁は解除され貿易や合弁事業が活性化する」との期待を膨らましていた北朝鮮の経済関係幹部たちはいま意気消沈しています。

「金正恩経済」をけん引してきた「市場」は、輸出入の減少で活気を失っています。需要の低迷でガソリン価格は一時下落しましたが、このところの供給不足で再び上昇に転じ始めています。内部からの情報によると、平壌市内のガソリン価格は、一時ℓ当1.5ドル(約185円)まで下落していましたが、11月上旬にはℓ当1.9ドル(約234円)まで上昇しました。

食糧危機も深刻化しています。北朝鮮では7月に入って一部地域では気温が40度を超すなど記録的猛暑が続き、コメやトウモロコシといった農作物に大きな被害が出ました。特に一般大衆の主食であるトウモロコシは、発育が悪く収穫量が前年比10%も減少しました。

韓国の農村振興庁は12月18日、北朝鮮の今年の穀物生産量が455万トンと昨年よりも3.4%減少したと発表ましたが、これで2年連続の減少となりました。国連食糧農業機関(FAO)は、食糧不足量が約64万トンに達すると推算しており、ほとんどの北朝鮮の家庭が食糧不足に陥ると診断しました。

板門店から開城に行く途中の農村

自由アジア放送によると、北朝鮮は9月に人民保安省(日本の警察庁に相当)名義の布告を出し、協同農場はもちろん一般の道路に設置された検問所などでも食料の持ち出しに対する取り締まりを強化しているといいます。布告では「農場の田畑に侵入し窃盗を行った者には法律で厳正に対処するのはもちろん、悪質な場合は死刑に処する」と警告しているといいます。

自由アジア放送の咸鏡北道消息筋は12月10日、「国営農場が一年間農作業を総括(決算)したが、農場員個人への分配があまりにも少なかった」とし「今年も軍用米をはじめとする国家計画分をあまりにも多く徴収したために農民に分けて与える食料が足りなくて農場ごとに頭を悩ませている」と伝えました。国連食糧農業機関(FAO)が公表した報告書によると、コメの価格は8月から月にかけて17%ほど上昇したとのことです。

そうしたことから、9月初めに黄海南道載寧の合同農場では、現場の責任者が自殺したといいます。当局は食料生産の40%を軍に供給するよう命じましたが、この責任者は命令に不満を抱いて自殺したようです(朝鮮日報日本語版 2018/10/01)。

こうした農村での悲惨な状況が伝えられる一方で、都市では一時暴騰したアパート価格(所有権ではなく使用権)が暴落し始めています。そればかりか、金正恩委員長が自慢した黎明通りなどの新しいアパート群もいま雨漏りに悩まされ防水作業に必死だといいます。そのために中国にブルーシートの注文が殺到しています。金正恩委員長の「制裁は効いていない」とする「見せるための政策」はボロを出し始めたようです。

黎明通り

韓国銀行(中央銀行)が7月20日に発表した推定統計によると、北朝鮮の2017年実質国内総生産(GDP)は、干ばつや経済制裁の影響で前年比3.5%も減少したとされ、20年ぶりの低水準となったとしていますが、2018年度の落ち込みはそれ以上になると予想されています。

北朝鮮はいま対外宣伝サイトで「自力更生が徹底している北朝鮮への制裁は無駄だ」と強調し、「時間は米国の愚かさを悟らせるだろう」と主張していますが、実態を覆い隠し経済危機を住民の犠牲で乗り切ろうとする思惑の表れと見られます。

金正恩委員長は今年4月の朝鮮労働党中央委員会で、核兵器が完成したので経済に集中すると宣言し、昨年に比べ経済部門の視察を59.2%も増やしたしましたが、その結果は見るも無残な状態です。このまま「非核化」に乗り出さず米国とのこう着状態が続けば、2019年の北朝鮮経済は一層深刻な事態となるに違いないです。




米国務省のスティーブン・ビーガン(Stephen Biegun)北朝鮮担当特別代表は19日、韓国・仁川(じんせん)国際空港で記者団に対し、北朝鮮に対する人道支援に関する米国の政策を緩和する方針を述べました。

具体的には、北朝鮮に対する人道目的の支援を確実に北朝鮮民衆に行き届けるための取り組みを現地で実施できるようにするために、米国人の北朝鮮渡航禁止措置を見直すこととし、さらには来月初頭に複数の米民間支援団体とニューヨークで協議すると表明しました。

北朝鮮の核放棄が遅々として進まず、それどころか、むしろ今年6月12日の米朝首脳会談の成果が後退、あるいは実質無効になりつつあることなどから、この米国による北朝鮮に対する人道支援方針を見直しに関して、深読みする人もいるようです。

しかし、現在の北朝鮮の実情を知れば、これは今後本当に人道支援が必要になるほど、北朝鮮が疲弊することが予め予想できるため、それに対する備えであると考えられます。

特に、「北朝鮮民衆に行き届けるための取り組みを現地で実施できるようにするために、米国人の北朝鮮渡航禁止措置を見直す」という具体的なメッセージもあります。

米国としては、まずは「北朝鮮の高官3名に対する制裁」という明確な強いシグナルを北朝鮮に対して発信して、その後人道支援に関する声明を発表したということです。

この強いシグナルとは無論、核廃棄などをしなければ、ますます制裁は強くなるだけであるとの最後通牒に近いものだと思います。

実際米国は、北への制裁をさらに強化し、北朝鮮の経済を破壊するでしょう。それに対して、北が米国の人道支援を受け入れざるをえなくなったとき、本格的な米国の北への交渉がはじまることでしょう。

そうして、トランプ大統領としては、経済冷戦継続中の中国への見せしめとする腹でしょう。米国が軍事的手段によらずに北を屈服させてみれば、中国に対してもかなりの脅威になることでしょう。

ただし、金王朝がたとえ国民の多くが飢えたとしても、なお人道支援を受け入れない場合には、最後の手段として米国軍事力行使ということもあり得る ます。その意味で、北朝鮮の高官3名に対する今回の制裁は、米国による最後通牒でもあると受け止めるべきと思います。

【関連記事】

2017年10月19日木曜日

「もっと経済制裁が強化されたら嬉しい」北朝鮮庶民から意外な声―【私の論評】北朝鮮制裁は富裕層を狙い撃ちせよ(゚д゚)!


金正恩
北朝鮮に対する国際社会の制裁圧力は、じわじわとその効果を表している。北朝鮮国内からはガソリンや食料価格の上昇が伝えられており、庶民の生活が心配される段階に入りつつある。

現在の北朝鮮の食糧事情は、かつてに比べ大幅に改善されている。ただ、国民経済のなし崩し的な資本主義化が進行し、貧富の格差が広がっている今、貧困層は食べ物などの価格がわずかに上昇しただけでも大きな影響を受ける。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

地方では餓死者発生の噂も出ており、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の再発を懸念する声も出始めた。

(参考記事:「街は生気を失い、人々はゾンビのように徘徊した」…北朝鮮「大量餓死」の記憶

しかしその一方、北朝鮮国内の一部から、これとはまったく異なる反応が出ているもようだ。

中国は今年8月、安保理制裁決議2371号に基づき、北朝鮮産の石炭などの輸入を完全に禁止するとの通告を出した。これが北朝鮮庶民を大喜びさせている。その理由を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。

平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の情報筋によると、制裁で契約が解除され中国に輸出できなくなった石炭が炭鉱地帯に山積みになっている。無煙炭は、政府、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)、国家保衛省(秘密警察)系の外貨稼ぎ機関などが独占していたが、輸出ができなくなったため、採掘権を一般の貿易会社にも与えるようになった。

石炭の価格は今年の初めごろまで1トンあたり90ドル(約1万円)だったが、今では17ドル(約1900円)にまで暴落。それでも中国の業者からは声がかからないため、外貨稼ぎ機関はほとんど中国から撤収したという。

こんな状況に「制裁さまさま」だと大喜びしているのが、北朝鮮の一般庶民だ。例年なら越冬準備に入る今頃は石炭価格が上がるが、今年は行き場を失った石炭が国内で大量に流通しているため、価格が暴落している。

ヌクヌクと冬を越せそうだと喜ぶ庶民は「制裁がもっと強化されたらいいのに」と喜んでいるという。北朝鮮当局がいかに人民の暮らしを犠牲にして飢餓輸出を行っていたかのあらわれだろう。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の庶民も、石炭価格の暴落で温かく冬を越せそうだと喜んでいると現地の情報筋が伝えた。こちらでは1トン250元(約4250円)から150元(約2550円)に暴落した。また、それに合わせて薪の価格も下落した。

昨年12月に中国当局が北朝鮮からの海産物の輸入を一時的に停止させた時には、北朝鮮の国内市場に大量のサケ、マス、カレイなど普段なら手が届かない高級魚が安値で入荷し、庶民の胃袋を大いに満足させた。同様の現象は、中国当局が北朝鮮産海産物の輸入を完全禁止した今年8月にも起きたと情報筋は伝えた。

このような状況に対して、庶民は「朝鮮労働党より、国際社会の制裁が人民の暮らしを助けてくれている」と喜ぶという皮肉な状況に陥っている。

(参考記事:「米軍が金正恩を爆撃してくれれば」北朝鮮庶民の毒舌が止まらない

【私の論評】北朝鮮制裁は富裕層を狙い撃ちせよ(゚д゚)!

北朝鮮に対する経済制裁はそれなりに成果をあげているようです。そうして、上の記事にあるように、中国が北朝鮮産の石炭を輸入しなくなってから、北朝鮮国内で石炭が安くなり、庶民にとっては良い結果も招いているようです。

このような経済制裁はかえって北朝鮮の一般庶民には幸いしているようです。北朝鮮は中国に石炭などの地下資源を売り、その代金で石油や食料、それに核やミサイルの開発に必要な物資を調達しています。この制裁は、ボディーブローのように北朝鮮に対して徐々に効いてくることでしょう。

次に、中国が食料の輸出を止めると北朝鮮は本当に困窮するのでしょうか。ブログ冒頭の記事では、「現在の北朝鮮の食糧事情は、かつてに比べ大幅に改善されている」としています。全くその通りです。

これについては、以下の記事を参照していただくと良くわかります。
統計データから見えてくる北朝鮮の意外な食料事情
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、FAO(国連食糧農業機関)などのデーターからこの記事では、以下のような結論を出しています。
FAOデータを基に考えると、北朝鮮の食料事情は次のようになる。 
(1)1人当たりの穀物供給量は220キログラム程度であり、それほど豊かではないが飢餓に苦しむレベルでもない。穀物を腹いっぱい食べることはできるが、飼料がないから肉はほとんど食べられない。牛乳もたまにしか飲めない。 
(2)ソ連が崩壊するまでは、農産物の輸出が可能な状況にあった。食料に困るようになったのはソ連が崩壊してからである。現在の状況は1990年代よりも良いが、食料をほとんど輸出していないことから、ソ連崩壊以前の状態には戻っていない。 
(3)北朝鮮は食料をほぼ自給している。人々は貧しい食事に慣れていると思われるから、禁輸による兵糧攻めを行っても、政権に大きな打撃を与えることはできないだろう。
北朝鮮では、穀物などは何とか自給自足できているようです。だから、兵糧攻めはできないということです。

しかし、確かに一般庶民に対しては兵糧攻めができないものの、様々な食料の輸出を止めれば、金一族をはじめ、北朝鮮のいわゆる幹部や富裕層に対しては兵糧攻め等ができるかもしれません。

食料でも、贅沢なものたとえば、肉、牛乳など、あるいは他の高級食材・飲料などを禁輸すれば、北朝鮮の富裕層には打撃でしょう。酒や、清涼飲料数その他必需品と思われるようもの以外を禁輸すれば富裕層にとっては打撃です。

吉林省長春市の北朝鮮レストラン
石油をある程度禁輸すれば、一般庶民は、石炭で暖を取れるのであまり不便や不自由を感じないですが、富裕層は暖房などの設備を石油から石炭に変えなくてはならなくなります。これはとても不便なことなので、石炭を燃料とするためには、人を雇わなければならなくなります。そうなると、北朝鮮の一般人民の雇用が増えることになります。

そうして、石油が値上がりすれば、富裕層は自家用車を動かすことができなくなりますが、自家用車を持たない庶民にとってはあまり影響はありません。ただし、バスなど庶民の使う交通機関にまで影響が及ぶまでにはしないようにすべきです。

このようにして、庶民にとっては、あまり影響のないように、北朝鮮の生活水準を落としていけば、庶民にとってさほど影響がないものの、富裕層には影響がでるような禁輸をどんどん実行していくべきです。

北朝鮮の一般住民は、慢性的な食糧難に苦しんでいますが、一方、平壌の富裕層は、一般住民とは別世界の住民のように、各種娯楽施設を楽しみ豪華な生活をしています。なかには、わずか一時間に一般労働者の平均賃金の25倍もの大金を払って、スポーツを楽しむ女性も少なくないです。

北朝鮮のプールでくつろぐ女性
金正恩体制になって新しくオープンした文殊(ムンス)ウォーターランドやクムヌン体育館を、北朝鮮当局は『人民のための体育文化施設が素晴らしく出来上がった』と大々的に宣伝しましたが、内実は富裕層のためのものに過ぎないです。文殊ウォーターパークも入場料が高く、とても一般住民が気軽に行ける遊び場ではありません。

これはいわば富裕層御用達のスポーツクラブのようなものです。スポーツクラブで1時間に7ユーロを支払い、高級レストランやカフェで、その数倍の金額を支払って優雅な時間を過ごします。その財力は、今の北朝鮮の経済事情から見ると想像以上です。
富裕層の女性たちが、スカッシュ1時間で支払う7ユーロは、北朝鮮の一般労動者の平均賃金(3000ウォン)の25倍。コメ価格に換算すると15キロ(1キロ=5000ウォン)だ。
北朝鮮の屋内プール
彼女たちの多くは、朝鮮労働党高級幹部や外貨獲得の貿易会社社長など、羽振りのいい会社の妻たちです。また、大規模な貿易や商売で一発当てたトンジュ(金主)と呼ばれる新興富裕層も多いです。平壌の中区域や牡丹峰区域の高層アパートなどで豪華な生活をしてます。

夕焼け空に映える平壌市中区域万寿台地区・倉田通りの近代的な高層マンション群
このような生活をしている、富裕層が中国などの禁輸措置により、北朝鮮の一般庶民と同じような生活をしいられたら、どうなるでしょうか。とても耐えられないと思います。

北朝鮮の富裕層は、国際社会による経済制裁下においても、不自由のない生活を維持していると伝えられています。とくに、金正恩党委員長との距離が近ければ近いほど、その傾向は顕著のようです。

2013年に開設された北朝鮮のゲームセンター
とはいえ、いくら金持ちであると言っても、そうした人々が海外で目立つようなことはほとんどありませんでした。サイトで検索してみても、北朝鮮の富裕層の生活ぶりはほとんどでてきません。たまに彼らが海外に出ることはあっても、その動きが北朝鮮ウォッチャーに伝わるのは、彼らが帰国したずっと後のことであるケースがほとんどでした。

ところが最近、北朝鮮富裕層の子供たちと思われる若者のグループが、中国の地方都市で優雅な暮らしを送る姿がリアルタイムで補足されるようになりました。それも数人とか十数人ではなく、200人もの若者たちが中国へ出てきているもようなのです。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は北朝鮮と国境を接する中国・丹東市在住の朝鮮族の情報筋の話として、次のように伝えています。
今年の3月初め頃から、瀋陽にある北朝鮮領事館の近辺と丹東の高級住宅街で北朝鮮の若者をよく見かけるようになった。中国が北朝鮮への経済制裁を強化しているにも関わらず、彼らは現金を湯水のように使い、地元で自然と注目を集めるようになった。
情報筋によれば、丹東にいる若者たちが暮らすのは、最近開発された商業施設と一体型の高級マンションで、建物1階にある彼らのオフィスは70坪もあります。中国のちょっとした金持ちでもなかなか手の出ない物件だというのですが、別の見方もあります。中国の複数の不動産サイトによると、このマンションの3LDKの1ヶ月の家賃は1600元(約2万7000円)前後で、市内中心部に比べるとかなりお手頃です。

また瀋陽市在住の情報筋によれば、
北朝鮮領事館の周辺には10代後半から30代半ばに見える北朝鮮の男女が百人ほども固まって暮らしている。今年の初めまでは10人ほどだったのが、6月初めから急に人数が増えた。皆が洗練されたスーツ姿で、普通の北朝鮮の人々とはかなり違って見える」と言います。
一方、中国に派遣されている北朝鮮のある駐在員はRFAに対し、「今年の6月から瀋陽と丹東に出てきた若者たちは、中央の最高位クラスの幹部の子供たちだ。瀋陽と丹東に合わせて200人ほどがいるようだ」と説明したといいます。

これに関しては、「米国の攻撃に備えた避難か」という見方もありますが、私自身はそれだけではないと、思います。

これは、そろそろ富裕層に制裁の影響がでてきたという兆候でもあると考えられます。特に貿易などで富を手に入れた、富裕層が今後北朝鮮では今までの生活水準は維持していけないと考えて、子どもたちを避難させ、その後に自分たちも避難しようと考えているのではないかとも推測されます。

そもそも、北朝鮮ではまもなく、まともな教育を受けさせることも困難になります。特に、貿易関係などで富裕層になった人々にとっては、北朝鮮にとどまり続ける理由がなくなります。

北朝鮮への制裁は、あまり効き目がないともいわれていますが、そろそろ影響がでてきたようです。そうして、石炭の禁輸にみられるように、庶民にあまり影響の出ない制裁方法をとれば、庶民をあまり苦しめることなく、富裕層に対して相当苦しい制裁が可能だと思います。

ここは、世界中で知恵を絞って、そのような制裁をどんどん進めていけば、かなり富裕層にとって効き目のある制裁ができるはずです。

次の段階では、金融制裁も実施すべきでしょう。一般庶民にはほとんど影響はなく、富裕層にだけ大打撃のある制裁もあるはずです。

このような制裁を強化していけば、北朝鮮からは富裕層は消え失せるかもしれません。そのときには、金正恩は自らも生活水準を維持することができずに、北朝鮮を脱出しなければならなくなるかもしれません。その時が北朝鮮の体制を崩壊に導くチャンスです。

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2012年4月12日木曜日

【2012年・北朝鮮特集】北朝鮮の今を徹底公開 / 普通では見られない現状と実態−【私の論評】旅行や長期滞在くらいではわからない実体、誤った現場主義の陥穽にはまらないようにするには?

【2012年・北朝鮮特集】北朝鮮の今を徹底公開 / 普通では見られない現状と実態:

【2012年・北朝鮮特集】北朝鮮の今を徹底公開 / 普通では見られない現状と実態

2012年4月12~16日の間に、北朝鮮からミサイルが発射されると報道されている。北朝鮮はそれを衛星打ち上げののためのロケットとしているが、諸外国はミサイルと判断しているようだ。当編集部は、2012年に入ってからの北朝鮮のようすを記事化し、いままで多数の情報を報じてきた。
そこで今回、いままで報じてきた北朝鮮記事をまとめてご紹介したいと思う。普通ではなかなか行けない場所の画像や映像があるので、興味がある人はぜひ見ていただきたいと思う。それでは、北朝鮮の現状をお読みいただきたい。

・中国から電車で北朝鮮に行ってみた / 北京~平壌の一部始終を公開
寝台列車のベッドは4人1部屋のコンパートメント。同じ部屋になったのは自称・大学教授の朝鮮人男性。北京で仕事をして、これから平壌に戻るところとのこと。「また北京に戻るのんですか?」と聞いたら、もう戻ることはないらしい。
http://rocketnews24.com/2012/02/13/179212/

・北朝鮮に入るときiPhoneとiPadを封印 / 3DSとPSVitaとiPodは封印されず
話によると、飛行機で入国して飛行機で出国する際は、封印したケータイを北朝鮮側が出国まで預かるケースが多いという。しかし今回の日本人旅行者の場合、鉄道で入国したために自分で封印したケータイを所持することになったようだ。
http://rocketnews24.com/2012/02/07/179272/

・北朝鮮の「児童が新年を祝う演奏会」に行ったら金正恩氏が盛大に祝われてた
2012年2月、北朝鮮・平壌(ピョンヤン)を旅行した日本人旅行者が「北朝鮮の児童たちが新年を祝う演奏会」の会場へガイドに連れられて行ったところ、金正日氏の死を悲しむ演奏と歌、そして金正恩氏を称える演奏と歌が盛大に披露されていたという。
http://rocketnews24.com/2012/02/06/179202/

・北朝鮮の地下鉄に乗ってみた / 女子小学生が同級生と列車に乗ってきた
長い長いエスカレーターを降りてプラットフォームに到着すると、そこには豪華なシャンデリアのある広い空間が。ボタンを押すと乗り換え案内が表示されるシステムもあり、ローテクノロジーでありながらモダンなシステムが用意されている。
http://rocketnews24.com/2012/02/05/179173/

・北朝鮮のパチンコ屋に行ってみた / パチンコ玉1箱で1ドル
パチンコ玉1箱を1ドルで借りる。実際に体験した旅行者によると、「節電のため、お客さんがいないときは電源を落としていました。オバチャンにお願いすると電源を入れてくれて、パチンコ玉はオバチャンが手作業で箱に入れてくれましたよ」とのこと。
http://rocketnews24.com/2012/02/05/179101/

・北朝鮮でハマグリのガソリン焼きを食べた / 当たる人がいるけど焼酎飲めばOK
ガソリンは500mlペットボトル2本分を使用し、少しずつハマグリにぶっかけていく。「ブボボモワッ!」と火柱が出ることもあったが、爆発することなくハマグリは焼かれていき、およそ5分ほどで炎が消えたという(調理終了)。
http://rocketnews24.com/2012/02/06/179189/

・北朝鮮のハンバーガーショップに行ってみた / フライドチキンは美味しい
平壌のハンバーガーショップには、ハンバーガーのほかにフライドポテトやフライドチキン、ホットドッグ、チキンナゲット、ワッフルなどがあり、日本や欧米と変わらない料理がそろっているとのこと。
http://rocketnews24.com/2012/02/05/179088/

・超大雪なのに160キロ続く道路が「除雪されてる」と思ったら国民が人力で除雪
「百数十キロもの距離を人力で除雪していたんですね! この人たちは道路の整備スタッフですか?」と旅行ガイドスタッフに聞くと、「このあたりの地域の人たちですね」との返答があった。除雪車をいっさい使わず、道路の周辺に住んでいる国民たちが除雪していたのだ。
http://rocketnews24.com/2012/02/16/182846/

・北朝鮮の首都・平壌をひとりブラブラしてみた / 凍った川で魚釣りをする住民
ブラブラと歩いていたところ、軍人らしき男女が土木作業をしたいたという。こちらがカメラを持っていたので注目されたらしいが、「アンニョンハセヨ」と挨拶をすると軽く会釈したきたとのこと。やはりカメラを持って歩くと目立つようだ。
http://rocketnews24.com/2012/02/07/179177/

・みんな韓国から北朝鮮を見に行くので逆に「北朝鮮から韓国を見に行ってみた」
軍事境界線は、北朝鮮側から韓国を覗きに行くことも可能だ。2011年に開催されたサッカー日本対北朝鮮では、北朝鮮を訪れた日本人サポーターたちが北朝鮮側の軍事境界線にやってきて、韓国側を覗いたという。
http://rocketnews24.com/2012/02/07/179581/

・北朝鮮でアヒルの焼き肉を食べてみた / 予想以上にジューシィーで美味しい
アヒルの肉は非常に弾力があって肉汁がタップリ。決して肉が硬いというわけではなく、噛めば弾力を感じるものの、一瞬にしてはじけて肉汁が口の中に広がるのだ。また、まったく脂っこくないのも特徴で飽きがこない。
http://rocketnews24.com/2012/02/20/184463/

・北朝鮮の人に「日本で金正男さんの本が出ますよ」と言ったら絶句されて質問された
その日本人旅行者が指導員とビールや焼酎などを飲んで雑談していた際、金正日氏の長男・金正男氏のことにまで話が及んだという。そしてちょっとした記憶から、「日本で金正男さんの本が出ますよ。もしかするともう出ているかもしれないですけど」と言ったそうだ。すると……。
http://rocketnews24.com/2012/02/12/181495/

・北朝鮮の平壌空港から「北朝鮮の飛行機」に乗ってみた / 美人CAが驚きの行為に
なぜかキャビンアテンダントが日本人旅行者の隣の席に座って、10数分間にわたり世間話をしてきたというから驚きだ! 「平壌はいかがでしたか?」や「どんなところに行きましたか?」、「楽しい思い出になりましたか?」、「体調は良いですか?」など、いろいろと話をしてきたという。
http://rocketnews24.com/2012/02/08/180487/

・【世界の機内食】北朝鮮・平壌国際空港~北京国際空港(高麗航空 KOR)
料理の内容は、ハンバーガーとジュース。ほかには何もなく、非常にシンプルなものとなっている。ハンバーガーにはパティ(ハンバーグ)とタマネギのスライスが2枚ほどサンドされており、ソースはマヨネーズ系のものになっている。
http://rocketnews24.com/2012/02/06/179112/

・北朝鮮のお土産を成田空港の税関で全部放棄させられた件 / 旅行者「仕方ないなあとは思います」
日本人が北京経由で北朝鮮を旅行し成田空港に戻ってきたところ、税関で北朝鮮のお土産品をすべて没収された(放棄させられた)という。2011年に平壌で開催されたサッカー日本VS北朝鮮戦で多くの日本人サポーターが渡航したが、お土産を没収されたという話はあまり聞かないが……。
http://rocketnews24.com/2012/02/10/179207/

【私の論評】旅行や長期滞在くらいではわからない実体、誤った現場主義の陥穽にはまらないようにするには?

最近北朝鮮のミサイル発射のこともあり、北朝鮮関係のニュースもかなり多いようです。上の記事もその一貫で掲載されているものだと思います。ただし、上の記事が北朝鮮の実体をあらわしているかといえば、そうともいえないと思います。


北朝鮮を実際に訪れたからといって、それで、北朝鮮の実体を知ることができるかどうかということは別問題だと思います。たとえば、北朝鮮に対して放送を流し続けている"特定失踪者問題調査会の北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」"を運営されている方は、以下のようなことを語っていました。


「平壌の電気の通電時間は、従来一日4時間が普通だったが、最近では、2時間になっている。しおかぜに対する妨害電波も、従来は、確実に実施されていたが、最近では、なくなりつつある。やりたくても、できないというのが実情なのだろう」


これは、実体だと思います。北朝鮮に行ったとしても、日本人が宿泊するようなところは、すべて、自家発電施設を持っているので、このような実体などわからないと思います。それに、買い物をしても、食事をしたとしても、それは、外国人向けの施設であり、そこから、実体を垣間見ることはできないと思います。


北朝鮮に関する、報道で最も信頼できるのは、まずは、ラヂオプレスです。これは、このブログでも以前掲載したことがあります。この記事の詳細は、以下のURLをご覧になってください。


金正男氏の「世襲批判」をスクープ 東京新聞「特ダネ」記者の仕事ぶり―【私の論評】すぐれたジャーナリズムは地道な日々の積み重ねから生まれてくるものである!!


この記事では、東京新聞の五味氏、ラヂオプレスなどを掲載しています。上の写真は、ラヂオプレスの、現在風景です。日々、北朝鮮の放送を聴き、分析しています。金正日氏死去のニュースは世界にさきがけて、最初に公表したのは、ここです。下は、東京新聞の五味氏の写真です。この方は、北朝鮮の故金正日(ジョンイル)総書記の長男、正男(ジョンナム)氏(40)から届いた「世襲批判」メール内容を特報した方です。


この記事では、両者が、普段から地道な積み上げをしていること、さらに、いわゆる、スパイといわれている人々が現実には、どのような情報の収集の仕方をしているか掲載しています。

最近はミサイルの打ち上げに関して、迎撃に関することが、話題になっていますが、これも、重要な情報が日本では、あまり詳しく報道されていません。これについては、以下をご覧になってください。

また始まった北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる‘綱渡り外交’−【私の論評】報道で見え隠れする北朝鮮の日本への恐れ?


これは、日本のイージス艦が、大陸間弾道ミサイルの撃墜に成功したことを掲載しています。これは、無論、今回の北朝鮮のミサイルをかなり高い率でうち落とせるということです。しかし、なぜか日本では、この事実がほとんど報道されません。無論、実戦と、訓練とは違いますから、実戦で百発百中ということはないのかもしれませんが、それにしても、情報として提供されないことにははたはだ疑問を感じます。

それから、中国の北朝鮮に対する見方ですが、これも過去の記事から下にURLを掲載します。

中国が北朝鮮を「我が国の省」として扱う可能性を示唆―米紙―【私の論評】そう簡単に事は済むのか?!


これは、本気で考えていると思います。北朝鮮が中国のような改革路線を踏襲し、経済的にいまよりも、発展して、少なくとも、餓死者がでないくらいになれば、そんなこともしないでしょうが、今のまま、いつまでも改革路線を打ち出さずに、経済学が疲弊し続け、脱北者がさらに増えるような事態におちいり、破滅の危機が訪れれば、韓国などにとられるくらいなら、自国の省としてしまうでしょう。


さて、本日北朝鮮について、掲載しましたが、これによって何を言いたかったかといえば、いわゆる、現場主義の間違った側面です。上記のロケットニュースでは、過去に記者が実際に北朝鮮を訪れた際の記事を掲載していますが、これが、北朝鮮の実体を示しているかといえば、そうとはいえないことは明らかだと思います。(上の写真は、最近登場した、北朝鮮テレビの女性アナ、推定20歳台)



対して、ラヂオプレスの人たちは、ほとんど、北朝鮮に行ったことはないでしょうが、様々な事実の積み重ねにより、世界で誰よりも、北朝鮮に詳しいです。五味氏は、無論北朝鮮を訪れているとは思いますが、それにしても、様々な積み上げがあって、いろいろなスクープができるのです。何の積み上げもなく、北朝鮮を頻繁に訪れても、真実は見えてきません。(上の写真は、北朝鮮のレストランのウェートレス)

無論、ロケットニュース24の人たちは、北朝鮮の実体をつまびらかにするなどという責務を負っているわけでもなく、さらに、このニュースを見る私も含めた多数の人々は、それを期待しているわけでもないので、これは、これで良いのだとは思います。それに、強調しておきたいのは、彼らには、害がないことです。確かに、北朝鮮の実情を反映してはいないかもしれませんが、滅多に行けないところを、実際に行って記事にしているので、社会的な資料となる可能性はあります。時がたてば、北朝鮮が実情を隠蔽していたという、歴史的資料になるかもしれません。

真実が見えてこないどころが、実害のある場合もあります。それは、たとえば、先日の鳩山さんによる、イラン訪問による二重外交です。これは、実害あって利益なしの典型例になったと思います。



企業経営なども、このような陥穽にはまらないように、気をつけるべきと思います。ドラッカーは、よく、経営者は、現場に赴くべきとしていますが、これは、"経営者"というキーワードがあるように、まともな経営者は、現場に赴くべきといっているいるということです。まともではない人が、現場を頻繁に訪れても何もみえてこないこということです。普段から、情報や事実の積み上げをしている人が、いわゆる現場を訪れたときに、はじめて、事実が見えてきたり、それまでの事実の積み上げの確認ができるということです。


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2017年7月30日日曜日

北、深夜のICBM発射 米軍事攻撃の可能性高まる トランプ大統領「あらゆる必要な対策を講じる」―【私の論評】米軍の北朝鮮攻撃は二度ある(゚д゚)!

北、深夜のICBM発射 米軍事攻撃の可能性高まる トランプ大統領「あらゆる必要な対策を講じる」

ミサイル発射で挑発し続ける北朝鮮
 狂気の独裁者、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の“暴走”が新段階に達した。28日深夜、北朝鮮中部から弾道ミサイルを発射した。米軍は大陸間弾道ミサイル(ICBM)と断定し、米西海岸のロサンゼルス、さらに東海岸のワシントンを射程に収めるとの見方もある。危機感を強めるドナルド・トランプ米政権が軍事行動に踏み切る可能性はさらに高まったといえそうだ。

トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長
 日本政府の発表によると、弾道ミサイルは28日午後11時42分、北朝鮮中部慈江道(チャガンド)から日本海に向けて発射された。約45分間飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。航空機、船舶への被害は確認されていない。

 「北朝鮮に対し、厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する」。安倍晋三首相は29日未明、記者団に対してこう述べ、危機感を表した。

 米国の緊張感を強まった。聯合ニュースは、29日午前5時45分(日本時間同)ごろ、米韓両軍が韓国東部の日本海側で弾道ミサイルの発射訓練を行ったと伝えた。

 また、米韓両軍の制服組トップが電話会談し、米国防総省によると、北朝鮮への軍事的な対抗措置の選択肢を協議した。

 トランプ米大統領は28日、声明を発表し、北朝鮮の行動は「無謀で危険だ」として非難し、「米本土の安全を確保し、地域の同盟諸国を守るため、あらゆる必要な対策を講じる」と強調した。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は、発射に立ち会った正恩氏が「米本土全域がわれわれの射程圏内にあるということがはっきりと立証された」と述べたと伝えた。

 正恩氏の言葉は、北朝鮮お得意の強がりではない。米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は28日、現時点で判明している発射データから計算して「通常軌道で飛行した場合の射程は9000~10000キロに達する可能性がある」との分析を明らかにした。事実であれば、北朝鮮のICBMはロサンゼルスを含む米西海岸を射程に収める。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「今回のICBMの性能を精査すると、地球の自転を加味すればワシントンに到達する。ニューヨーク、ボストンは十分に狙えるようになった」と話し、こう続けた。

 「4、5月は日本や韓国など周辺国や在日、在韓米軍への被害を考慮し、踏みとどまった。だが、すでに7月のICBM発射時点で、トランプ政権が言っていた『レッドライン』は越えていた。北朝鮮が投げてきたボールに対し、米も応えなければならない。その中には、当然、軍事オプションは含まれている」

国土安全保障長官に指名されたジョン・ケリー氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は、プリーバス大統領首席補佐官を解任し、後任にケリー国土安全保障長官を起用した人事について「軍人のケリー氏に代えたのは、北朝鮮をにらんだ人事シフトの面があるだろう」と指摘。今後の米国の動向について「軍事攻撃の可能性は確実に高まったと思われる。世論、議会の支持を得るため、北朝鮮の暴発を引き出すような工作を情報機関が進めていくのではないか」と語った。

 日本も覚悟を固めないといけない。

【私の論評】米軍の北朝鮮攻撃は二度ある(゚д゚)!

朝鮮半島有事は絶対にさけられなです。少なくとも、そのような認識にたって物事を考えるべきだったはずです。しかし、政治家、官僚、マスコミ界に関わる人々は、それを熟知しているにも関わらず、それにあまり触れなようにしています。

それは本当に戦争が始まれば想像を絶する悲劇的な状況が避けられないことを知っているからでしょう。今更その責任を云々した所で仕方がないのですが、それは戦後の政治に関与してきた、自民党から共産党も含む全ての既成政党の責任に他ならないです。

日本列島を超えて北朝鮮のミサイルが太平洋上に着弾した時に、国会では全ての政党が全会一致で北朝鮮に対する非難決議を行いました。しかし、非難しただけでその後何もしてきませんでした。

以下に、過去の北朝鮮のミサイルや、核について振り返る、表を掲載します。

表はブログ管理人挿入以下同じ
以上は昨年までの動きです。今年の動きを示す表を以下に掲載します。


そうして、今回の28日午後11時42分のICBMの発射です。

もう、北朝鮮がミサイルを打ち上げるようになったのは、何年前の話でしょうか。日本全域を射程に収めるミサイルということであれば、93年のことです。この時から今年はすでに、24年目です。日本の為政者は民主党政権時代も含めて、北朝鮮問題に真剣に取り組まないで、これを放置して祖国を今危機の真っ只中に放り込むことを許してしまいました。この間一体為政者は何をしていたのでしょうか。

経済に関しては、失われた20年ということがいわれてきましたが、それは安倍政権が成立してから、改善され、GDPは消費税増税もあってほとんど伸びていないものの、金融緩和に転じたことで、雇用は劇的に改善されました。

ところが、東西冷戦は崩れたものの、アジアには北朝鮮問題が残ったままで、残念ながら日本はこれに対して何もしてこなかったというのが実体です。

この間日本は、北朝鮮を攻撃する手段を全く講じてきませんでした。それどころか、地下シェルターなどの防空壕の建設を全く進めてきませんでした。さらには、国内における在日朝鮮組織に対する締め付けを全くしてきませんでした。

それどころか、28日の大阪地裁(西田隆裕裁判長)は、朝鮮学校を高校授業料無償化の対象外としたのは違法だとして、国に処分取り消しを命じるというような、信じがたい状況にあります。


北朝鮮の独裁体制を礼賛するような歴史教育が行われていても、本国による「不当な支配」(教育基本法16条1項)には当たらず、学校の「自主性」は保たれているとして、大阪朝鮮学園側の主張を追認しました。全く信じられない判決です。

さらに、野党やマスコミは、今年に入ってから北朝鮮情勢が悪化し切迫ているにもかかわらず、森友・加計・日報問題で、政府の足を引っ張るばかりです。

現在わが国は北朝鮮のミサイルによって攻撃されるか、北朝鮮に屈服して奴隷となるかの崖っぷちに追いやられていると言っても過言ではありません。

このまま座して奴隷になる道を選ぶしかないのでしょうか。違った選択が一つだけあります。

このブログの冒頭の記事にもあるように、米国トランプ大統領の北朝鮮攻撃の「決断」です。もう残された道はこれだけでしょう。現在までのように、国連安保理事会が、非難決議を出そうが、安倍晋三首相が非難しようが、北朝鮮は絶対にミサイルの発射実験をやめたり、核兵器の開発をやめることはありません。

そうして、米国が北朝鮮を攻撃する可能性は、今回のICBMの発射で、高まってきました。

しかし、私氏自身は、年内に「北朝鮮危機」が崩壊することはないであろうとは、思っています。

今回の北朝鮮危機について、米国はまずは、北朝鮮を限定空爆するのではないかと思います。

限定空爆、つまり全面戦争するのではなく、核施設などを限定的に空爆することで、被害を最小限に抑えながら「核」という脅威を取り除くのではないかと思います。


航空自衛隊が、2017年6月20日(火)、九州周辺の空域でアメリカ空軍と共同訓練を実施した時の動画

そうして、限定空爆なら、北朝鮮は崩壊することはないでしょう。

湾岸戦争のとき、イラクは多国籍軍を相手にしながら崩壊はしませんでした。その後のイラク戦争で、イラクのフセイン政権は崩壊しました。

おそらく、北朝鮮も、今年崩壊するのではなく、その後の2度目の有事で崩壊するのではないかと思います。

北朝鮮がもしも反撃してきたら、ソウルが火の海になる前に、平壌が更に大規模に火の海になることになります。そのため、北朝鮮がソウルを火の海にするとは思えないのです。

そもそも、北朝鮮の人民解放軍は、ミサイルや核兵器には力を入れていますが、通常兵器はかなり遅れていますし、とても米軍の敵ではありません。戦えば、完膚なきまでに負けることは最初からわかりきったことです。

そうして、金正恩は、クーデターを恐れて、軍に対して、ろくに弾薬も供給していないとも言われています。

そもそも、北朝鮮は今、開戦できる状態にないと考えられます。そもそも、全兵士に対して食料も十分に供給できない有様です。1990年代の飢饉で栄養の行き渡らない子どもたちが、兵士なる年代となり、身長が低く、何と最近北朝鮮人民具は採用基準を緩め、身長が140cm台でも兵士になれるようにしました。

潜水艦も、航空機も、陸上の兵士の装備も日米ならとっくに破棄したような、旧式なものばかりです。中国もかなり旧式のものも使っていますが最近は近代化しつつあります。しかし、北朝鮮は従来のままです。北朝鮮はこのような状態でまともに戦闘などできるとはとても思えません。本当に戦闘をすれば、大敗北するだけです。

北朝鮮のロシア製のSu-25
このような北朝鮮人民解放軍の近代化は、急速に成し遂げられるものではありません。だからこそ、北朝鮮は近年核兵器や、ミサイルに注力するようになったのです。しかし、これがさらに人民解放軍の近代化を遅らせる要因になっていることも確かです。

韓国や日本の被害が多すぎるから、北朝鮮を攻撃してはいけないし、出来ないなどというのは、北朝鮮の思うツボです。北朝鮮はそのプロパガンダで、戦争を回避しようとしているのです。度重なるミサイルの打ち上げも、プロパガンダの一種とみるべきです。だからこそ、北朝鮮の罠にハマるべきではないのです。

日本や韓国が「戦争はないから安心だ」と言ってしまうことは、北朝鮮をも安心させることになるので、圧力の効果が薄くなってしまいます。

そうして北朝鮮があくまでICBMの開発をやめなければ、「2度目の有事」は、ICBMの完成、すなわち核兵器の小型化それも水爆の小型化に成功し、「大陸間弾道ミサイル」が完成してしまう頃であると予想します。

その頃に、再びの北朝鮮危機があるのかもしれません。今年か来年に、北朝鮮の核施設への空爆が行われ、数年後に再び米国は北朝鮮を攻撃することになります。

その時は、陸上部隊も大量に投入して、完膚なきまでに北朝鮮を攻撃することになるでしょう。その時こそ、北朝鮮が崩壊するときです。その時には、金正恩は、亡命するか、亡命しなければ、斬首ということになるでしょう。

北朝鮮の消息筋によれば、金正恩の亡命先や、亡命方法などもう決まっているとも言われています。

いずれにせよ、今すぐにではないにしても、年内もしくは来年には間違いなく、米軍による限定爆撃は実行されるでしょう。

わが国も、そのつもりで今から準備しておくべきです。特に、米国に対してどの程度の支援をすべきか、そうして、二度目の攻撃のときには、拉致被害者を具体的にどう救出するのか、今から考えておくべきです。

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2021年3月25日木曜日

バイデン政権、北朝鮮政策「最終段階」 ミサイル発射で再検討も―【私の論評】バイデン政権が取り組むべきは、中朝国境と38度線を1ミリたりとも動かさないこと(゚д゚)!

バイデン政権、北朝鮮政策「最終段階」 ミサイル発射で再検討も

北朝鮮の国旗

 政府は25日、北朝鮮が午前7時4分と23分に、東部咸鏡南道(ハムギョンナムド)宣徳(ソンドク)付近から弾道ミサイル2発を発射したと発表した。東方向の日本海に向けいずれも約450キロ飛行し、日本の領海と周辺の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下した。韓国軍合同参謀本部は高度約60キロと発表した。日本は北京の大使館ルートを通じて、北朝鮮に対し厳重に抗議した。

 米国のバイデン政権は現在、対北朝鮮政策の見直しを進めており、来週末にもとりまとめ、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が日本と韓国のカウンターパートと詰めの協議に入る予定だ。

 北朝鮮による挑発行為が続いたり、さらにエスカレートしたりすれば、現在「最終段階」(米政府高官)にあるという政策の見直しが根本から覆る可能性がある。また北朝鮮の非核化に向けた本格的な交渉再開への道が遠のく恐れもあり、北朝鮮の動向を注意深く探っている。

 バイデン政権は北朝鮮との「対話」を試みており、ここまで、北朝鮮をむやみに刺激しない姿勢が目立っている。北朝鮮が21日に巡航ミサイルを発射した際には「通常の軍事活動」と判断して、非難するメッセージを極力避けた。米政府高官は23日の電話記者会見で発射の時期や内容を詳しく語らず「短距離のシステム」とだけ説明。バイデン大統領も記者団から「挑発行為と考えるか」と問われ、「国防総省によると、いつものことだ。新しいものではない」と問題視しない姿勢を強調した。巡航ミサイルの発射が国連安全保障理事会の決議違反に該当しないことや、米国に直接的な脅威となる大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではないことも、背景にあるとみられる。

 だが、今回の弾道ミサイル発射は、明白な国連安保理の決議違反に該当し、米国の対応次第では、日本や韓国との危機感の差が浮き彫りになる可能性がある。トランプ前政権は短距離であれば問題視しない姿勢を続け、日本などとの対応の違いが露呈した経緯がある。

 バイデン政権はこれまで「日本と韓国と緊密に連携して北朝鮮問題に対応する」と繰り返し説明しているが、北朝鮮との「対話」の道を模索しながら、日韓と歩調を合わせる難しい「さじ加減」を迫られることになる。

【私の論評】バイデン政権が取り組むべきは、中朝国境と38度線を1ミリたりとも動かさないこと(゚д゚)!

北朝鮮は、米国のバイデン大統領の就任式直後の1月22日にも巡航ミサイルを発射していました。さらに、北朝鮮は今月21日に巡航ミサイル2発を発射し、およそ410キロ飛行したとされています。本日は、25日朝7時4分ごろと23分ごろ、北朝鮮の東岸のソンドク付近から1発ずつ、合わせて2発の弾道ミサイルを東方向に発射し、いずれも、およそ450キロ飛しょうしたと推定されるということです。

本日の弾道ミサイル発射では、Jアラートが鳴らなかったそうですが、その理由に関しては、佐藤正久議員が以下のようにツイートしています。


これは、北朝鮮は日本などに対してことさら、刺激をしたくないという意図もあったのかもしれません。それについては、以下で明らかにしていこうと思います。

北朝鮮国内では新型コロナウイルスが感染拡大しているとの見方もあり、内部の引き締めを図ると共にミサイル技術の向上を目指す狙いがありそうです。

米国の分析によると、北朝鮮は30日ほど軍の活動が停止されたということも言われています。北朝鮮国内でも、軍にまでコロナウイルスの影響が及んでいるのではないか、非常に深刻なのではないかという分析もあります。

そのようななか、金正恩委員長がマスクをせずに公に姿を現しています。「北朝鮮はこんなに新しい武器を持って、それを金正恩委員長が主導して来たのだ。やって来たことは間違っていないのだ」ということを見せるのと同時に、軍に対しても引き締めを図るためだったのだと思われます。

もう1つは、国際的にアピールをせざるを得なかったという面もありそうです。コロナウイルスのパンデミックと米中対立の激化激化等により、北朝鮮問題の影がどんどん薄くなってきていました。北朝鮮としてはそれは、避けなければいけないのでしょう。コロナウイルスで厳しい状況に置かれているなか、他国からもっと注目してもらいたいので、「北朝鮮はここにいるぞ」とわざわざ示したかったのでしょう。

金正恩は「コロナを共に戦って行こう」という親書を、韓国へも送っていました。一方でトランプ大統領からは、「援助をする」という親書が北朝鮮に送られていたようですが、バイデン政権は北朝鮮にとってはまだ未知数です。

医療体制が整っていない北朝鮮で、新型コロナウイルスが蔓延してとんでもなっているだろうという考えを北朝鮮は払拭したいという目論見もあったものとみられます。

ただ、いくら巡航ミサイルや弾道ミサイルを発射したにしても、北朝鮮の内情は隠し通すことはできないようです。

平壌の街角で交通整理にあたる女性


米拠点の北朝鮮専門サイト「NKニュース」は19日、平壌駐在の世界食糧計画(WFP)職員やチェコスロバキアの外交官ら計二十数人が18日、陸路、中国へ出国したと伝えました。

北朝鮮は新型コロナウイルス対策で昨年1月末から国境を封鎖し、輸入品を中心に食材や日用品の不足が深刻化。交代要員の入国も認めず外交官らの生活維持が難しくなっているとしています。各国大使館は一時閉鎖したり、規模を縮小したりしています。

NKニュースによると、今回の出国で北朝鮮には国連機関や国際非政府組織(NGO)の外国人スタッフは一人もいなくなり、人道支援活動への影響が懸念されてい。

BBCも以下のような報道をしています。
ロシア外務省は25日、北朝鮮のロシア大使館に勤務するロシア人外交官とその家族が、手押しトロッコという異例の手段でロシアに帰国したと明らかにした。北朝鮮は新型コロナウイルス対策として国境を封鎖している。このため、外交官たちは「ほかに手段がなかった」とロシアは説明している。 
家族を連れたロシアの外交官たちは1キロ以上、手押しトロッコで線路を移動し、北朝鮮を離れた

北朝鮮の厳しい感染対策によって、国内の移動が制限されているほか、生活必需品も不足しがちだという。ウイルスの越境を防ぐため、国境地帯の警備は強化されている。 
この1年間で多くの外交官は北朝鮮を離れ、欧米諸国は大使館をいったん閉鎖した。 
外国からの旅行者の大半は国境を越えて中国に移動した。昨年3月にはウラジオストクへ向かった同じ飛行機で、一度にドイツ、ロシア、フランス、スイス、ポーランド、ルーマニア、モンゴル、エジプトの各国外交官がまとめて出国していた。

多くの国々の 外交官が退避した北朝鮮は、かなり混乱を極めているのは確かなようです。これだけの外交官が退避することが想定できるのは、戦争のような緊急事態以外を除いて考えられません。

新型コロナウイルスの感染者は出ていないと主張する北朝鮮が、世界保健機関(WHO)が支援する分配計画でワクチンの申請を行い、199万回分を受け取る予定であることが、ワクチン普及に取り組む国際組織「Gaviワクチンアライアンス(Gavi, the Vaccine Alliance)」の報告で分かっています。

北朝鮮が国際支援を求めたのが公式に確認されたのはこれが初めてです。同国の医療インフラは、どんな感染症の大流行に対応するにも痛ましいほど不十分とみられています。

実際には、北朝鮮はコロナによってかなり痛めつけられているとみて間違いないと思います。巡航ミサイルや弾道ミサイルの発射は、北朝鮮の断末魔の最後の叫びなのかもしれません。

バイデン政権は、冒頭の記事北朝鮮との「対話」を試みているようですが、それよりも重要なことがあります。それは、中朝国境はもとより、38度線を動かさないということです。(下の地図は、朝鮮戦争当時の国境が動く状態を示しています)


一番危惧されるのは、中国が北朝鮮に浸透することです。現状では、朝鮮半島には北朝鮮と、その核が存在しており、その核は日米のみだけではなく、北京にも照準をあわせおり、結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いできました。さらに、北朝鮮は中国の浸透を嫌ってきたということもあります。金正恩の望みは、金王朝を継続することであり、これが朝鮮半島への中国への浸透を防いできました。

その北朝鮮がコロナにより衰弱し、これに乗じて中国に浸透されてしまえば、現状の文政権の韓国は中国と対峙する意思はなく、すぐに朝鮮半島全体が中国に浸透されてしまうことになります。

それどころか、いずれ朝鮮半島は中国の省になるか、自治区になりかねません。それは、日米にとっても脅威ですし、朝鮮戦争休戦の当事者であるロシアにとっても許しがたいことです。

バイデン政権が取り組むべき課題は、これを防ぐことです。あくまで、38度線を動かさないこと、中国が北朝鮮を併合したり、浸透して、北朝鮮を傀儡国家にすることを防ぐことです。

とにかく中朝国境、38度線を1ミリたりとも中国に動かさないようにすることです。トランプは、中国との対峙を最優先して、北朝鮮など他の事柄は、そのための制約条件とみていました。特にトランプ政権の後期はそうでした。

この点は、バイデンも見習うべきでしょう。ものごとには優先順位をつけるべきであり、そうして現在では中国との対峙が最優先ということになるでしょう。北朝鮮問題が解消したとしても、中国との問題が解決されなければ、あまり大きな意味はありません。

一方、中国問題を解消できれば、北朝鮮問題も一気に解決するでしょう。北朝鮮問題も、中国問題の一環あるいは、そのための制約条件としてとらえるべきなのです。様々な問題を個別に解消しようとしても、何も解決できません。

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2013年11月9日土曜日

【スクープ最前線】北朝鮮、仰天メッセージの裏 首相をほめ殺して資金援助画策―【私の論評】北朝鮮への資金援助は強力な外交カードになり得る!しかし、最大のカードは日本の核武装である(゚д゚)!

【スクープ最前線】北朝鮮、仰天メッセージの裏 首相をほめ殺して資金援助画策



 朝鮮側から、日本政府筋に驚くべきメッセージが伝わってきている。「金正恩第1書記は、安倍晋三首相を評価している」「核問題も安倍首相と話し合いたい」というものだ。安倍首相は、拉致問題解決のために北朝鮮への制裁姿勢を崩していないが、金第1書記の思惑は何なのか。ジャーナリストの加賀孝英が衝撃情報を追った。

 北米ワシントンで6日、北朝鮮の核開発に関する、日米韓局長級協議が開かれた。日本から外務省の伊原純一アジア太平洋州局長、米国からデービス北朝鮮特別代表、韓国から韓国外務省の趙太庸(チョ・テヨン)平和交渉本部長が参加した。外務省幹部がいう。

 「現状は絶望的だ。朝鮮戦争でともに戦い、経済支援などで北朝鮮経済の命運を握る中国でさえサジを投げている。中国が北朝鮮に非核化を迫ったとき、金第1書記は『核保有は父、金正日総書記の遺訓だ』と言って無視し、中国に恥をかかせた。中国は今年、北朝鮮に毎年続けてきた『故金日成国家主席の生誕日(4月15日)の特別配給』の食糧支援を、一方的に打ち切った」。

・・・・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・

 だが、旧知の公安関係者がこういう。

 「われわれは職務上、日本周辺のあらゆる電波を傍受している。昨年末の安倍政権誕生後、北朝鮮はあらゆる場で、安倍首相を名指しして『軍国主義極右狂信者』などと、執拗(しつよう)に罵倒していた」

 「ところが、飯島勲内閣府参与が今年5月に訪朝して、北朝鮮の姿勢は劇的に変わった。安倍首相を批判しなくなった。2020年東京五輪が決まったIOC総会でも東京に投票し、アフリカの3票まで東京支持でまとめた。明らかにメッセージを送ってきている」



 そして、こう続ける。

 「金第1書記は就任2年で、朝鮮労働党や政府、朝鮮人民軍の幹部218人のうち、44%にあたる97人を次々と入れ替えた。30人近い軍幹部を見せしめに銃殺し、軍の支配強化を図ってきた。だが、困窮極まる経済を立て直さなければ、政権崩壊は避けられない。巨額の資金援助ができる国はどこか。米国でも、経済破綻寸前の韓国でもない。日本しかない」

 実に興味深い。北朝鮮が日本に泣きついてきている。安倍首相の断固たる外交姿勢が効力を発したかたちだ。

 朝鮮半島の非核化と拉致問題の全面解決。これは日本のみならず世界が切望している。果たして、北朝鮮が同意するかどうか…。相手は平然と嘘をつく虚々実々の北朝鮮だ。安倍首相、絶対に油断してはならない。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍。一昨年11月、月刊「文藝春秋」で「尾崎豊の遺書・全文公開」を発表し、大きな話題となった。

【私の論評】北朝鮮への資金援助は強力な外交カードになり得る!しかし、最大のカードは日本の核武装である(゚д゚)!

北朝鮮の弾道ミサイル

北朝鮮の核は、日本やアメリカにとっても脅威ですが、忘れてはならないのは、中国にとっても脅威だということです。北朝鮮の核は、完璧に中国全土を射程距離内に収めています。これは、中国にとっても顕在的な脅威です。中国としては北朝鮮に対して核を撤去するように迫るのは当然のことです。

北朝鮮は、長い年月をかけて、かつては反共の砦だった韓国を凋落して、日本と離反して、中国側になびくように画策してきました。そうして、それは完璧に大成功したことがわかります。それは、最近の朴槿恵大統領の行動を見ていれば良く理解できることです。朴槿恵大統領は、本当は反日的態度をとりたくないのですが、今の韓国は北朝鮮勢力が大きくなっているので、反日的態度を取らないと政権を存続できません。そもそも、韓国では、昔は、反北朝鮮、反中国、反共ということで一致していたのですが、ごく最近では、反日、反米、親中、親北朝鮮というように変わってきています。

北朝鮮に拉致された横田めぐみさん 拉致問題は、
日本では大騒ぎなのに、韓国ではあまり話題にならない

日本にも、北朝鮮、韓国、中国のスパイが潜入して暗躍していますが、北朝鮮から韓国にはかなりのスパイが入り込んでいます。容貌も、言葉も同じ、習慣なども似通った面があるので、かなりやりやすいですし、さらに多くの韓国人の支援者も存在しています。また、韓国から北朝鮮に拉致された人々の数も1000人以上にのぼるとみられますが、韓国社会はこうした北朝鮮による拉致問題に関心が薄いのが実情です。

この感心の薄さは、すでに韓国社会に北朝鮮勢力が根深く政界、財界、産業界にもかなり深く浸透していて、拉致問題が大きくならないように画策しているからであると考えられます。そうして、北側の韓国を凋落するという目論見はかなり成功しています。

おそらく、韓国は、今後経済的にも軍事的にも凋落して、北朝鮮の敵ではなくなることでしょう。北朝鮮にとっては、韓国の脅威がなくなるということで、かなり有利なことになります。

そうして、北朝鮮の次の狙いは、過去の韓国の日本からの格別の恩恵でもある、経済援助です。朴槿恵大統領は反日的態度をとり続け、日本から離反することで政権維持を図っていますが、それは日本からの経済援助を拒否することにつながります。では、それを肩代わりして、日本からかつての韓国が受けていた経済援助を肩代わりすれば良いと考えるのは、当然のことです。



日本としては、凋落していく韓国などもうどうでもいい存在なので、お付き合いなど止めても良いです。しかし、北朝鮮とはどうするのか、真剣に考える必要があると思います。

しかし、北朝鮮は韓国の凋落には易易と成功したものの、日本のそれも安倍総理の凋落にはかなりてこずると思います。なにしろ、安倍総理は「戦後体制からの脱却」を標ぼうし、安全保障のダイヤモンドを構想し、それに向かって着々と手を打ち、中国きりきり舞いさせています。

安全保障のダイヤモンド

そんな安倍総理を金が易易と凋落できるとは、思えません。

しかし、これは、日本にとってはかなり有利なことです。安倍総理は、北朝鮮に対して経済援助という新たな強力な外交カードを得たことになります。それも、何段階にもわけて、調整しながらかなりの影響力を行使することができます。



とにかく北朝鮮が、日本側に有利なことをすれば、段階に応じて援助をすることができます。相手が、離反するようなことをすれば、援助はストップです。

しかし、易易とこのようなことは実行してはならないでしょう。当面は、援助はせず完璧に干してから、相手の出方を観るということで、そこから細々と実行すべきです。

それから、一つ忘れてはならない大きな問題があります。それは、やはり、北朝鮮が曲がりなりにも核を保有しているということです。日本ではなぜか、日本が核武装することを禁忌として、議論することすら忌むべきこととされていますが、はっきり言えば、日本が核武装しない限り、拉致問題なども解決できまぜん。そうして、北朝鮮との外交交渉も結局はうまくはいかないです。

ここはひとつ、まずは、北朝鮮を資金援助をちらつかせ、凋落しつつ、日本もいずれ核武装するとして、国内でまともな論議をして、いずれ核武装することが必須になると思います。無論、核兵器を使うなどということを提唱ているわけではありません。あくまで抑止力ということで持つことを議論すべきです。

抑止力として核を持った場合、それだけて、北朝鮮そうして、中国も日本の敵ではなくなります。なぜなら、日本はイージス艦等により核兵器を迎撃できる能力がありますが、中国・北朝鮮にはそれがありません。

2012/9月インドの核搭載可能中距離ミサイルの発射実験は成功した

日本が核武装をするとなると、多少の年月が必要ですが、日本国内で核武装論議を禁忌とせずにまともに取り組むことになれば、これだけでも、中国・韓国には脅威です。

無論、私も核武装など本当はすべきではないことは、重々承知しています。反対派の言うことも理解できます。しかし、世界の現実は、甘くはなく、残念ながらお花畑ではありません。こういう現実を踏まえた上で、日本核武装論を論じているわけです。



少なくとも、日本国内で、日本核武装論が堂々と論じられ時がくれば、「戦後体制からの脱却」への道が大きく切り開かれることになると思います。金正恩にとっても、かなりの脅威になると思います。そうして、日本は新たな強力な外交カードを手にすることができます。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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