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8月27日、メルセデス・ベンツ日本株式会社の主催で「スマートEVサミット2011」が開催されました。このイベントは、同社が2012年に日本で発売を予定している「smart fortwo electric drive」(以下:smart)の先行試乗した7人のリポーターと同社の開発営業担当者が、ジャーナリスト津田大介氏の司会のもと、試乗体験を通じて車とライフスタイル、そしてエネルギーの未来について活発な議論を交わしました。
リポーターからはかなり突っ込んだ感想が挙げられ、ヒヤリとさせられる場面もしばしば。しかしながら、最終的にかなり明るい未来についての声明が採択されました。若者の車離れが叫ばれる昨今、同社のsmartはその傾向に歯止めをかけそうな勢いです。
今回リポーターとして参加した7人は、一般応募約700名から選ばれたメンバーで、「日本で一番初めにスマート電気自動車を乗りたおしたい人」、「スマート過ぎる巨漢」、「若者の車離れを憂いている人」など、個性的な面々。それだけに、3カ月の試乗体験も同社関係者の想像を超える挑戦が続出したようです。
■ 電気自動車には厳しいインフラ問題
ある人は、ストップライトの消費電力を確認するために自宅車庫で夜間、ストップライトをつけっ放しにしたり、自宅の電源を電気業者に依頼して200Vに変圧したりと、かなり踏み込んだチャレンジをされたようです。日本初の電気自動車の試乗には、打ってつけのメンバーだったと言えるでしょう。
しかし厳しい意見も飛び出しました。たとえば「ハイブリットカーの充電が可能な、公共のコンセントで充電できない場合がある」や「コンビニ駐車場で充電可能なコンセントを活用したが、いつまでもコンビニにいる訳にはいかない」など、インフラが整っていない点が指摘されました。この点についてはsmartに限らず、日本の環境が電気自動車の開発に追いついていないことを示しています。常に時代の先端を行く同社のあり方が、また一歩先を行こうとしている可能性があります。
■ 電気自動車に1回乗ったら戻れない
その反面、リポーターからは環境面に関して、今までの自動車にない驚くべき意見が上げられました。あるリポーターの方はあるときに、お父さんとsmartに乗っていたそうです。するとお父さんは「1回乗ったら、(ガソリン車両に)戻れないなあ」と仰ったそうです。というのは、車が大変静かであること、また排気ガスが出ていないことが走行を通じて体感できたそうです。
事実として、100パーセント電気で走行する車両なので、化石燃料は一切使っていません。当然ながら排気ガスも出ないのです。このリポーターの方は、ガソリン車両をお持ちだそうですが、smartを乗ってないときには罪悪感さえ覚えるようになったそうです。そのくらい環境に優しいことを肌で感じられたのではないでしょうか。
■ 若者の車離れに歯止め
今回の3カ月の試乗体験を通して、7人のリポーターは車と環境について、深く考える機会となったようです。車好きを自負する方もいらっしゃったのですが、普段考えていた以上に考えさせられたと驚きをあらわにしていました。ちなみ最後に、「若者の車離れを憂いている人」として参加されたsuseriさんにお話を聞いたところ、「車に関心のある人でさえ、これだけ強く関心を持つことになったのですから、smartは若者の車離れに歯止めをかけるきっかけになるのではないでしょうか」と話していました。
1回乗ると戻れないと言われるsmart、これは是非とも試乗会などで乗ってみたいものです。なお、同社が2010年10月に行った調査では、「今の自分には欲しくても持てない」というのが若者の本音のようです。smartの価格帯さえ見合うものであれば、若者の間で環境に優しい電気自動車が爆発的に普及するかもしれませんね。
いずれにしても、今回試乗体験をしたほぼ全員が「購入したい」と答えたsmart、是非一度は乗ってみたいものです。
写真・記事:Rocketnews24
【私の論評】若者よ、ただのエゴイストにはなるな!!
電気自動車に関しては、上の記事だけでは、全く現実的な問題を無視しています。それは、何かといえば、電気自動車を動かす電力の問題です。上の記事では、全くこの観点が欠けています。
確かに、電気自動車を使えば、電気自動車のドライバーそのものは、電気しかつかわず、一切排気もなく、静かで、良いでしょうが、では、その電力そのものは、どのように作られているのか、という問題は、一切語られていません。
最近のガソリン車は、かなりエネルギー効率が良くなっていますが、電気自動車はどうなのでしょうか?電気自動車の電力を供給するためには、たとえ、家庭のコンセントで充電したとしても、そこまで、電気つくって、送電しなければなりません。
現在、日本の送電線など、スマート化されておらず、送電するだけで、随分エネルギーが減ることになります。
電気自動車を動かすために、電気を発電するのは、今のところ、既存の火力発電所や、原子力発電所です。さらに、この電気を送るのは既存の送電線です。こう、考えれば、電気自動車を使うこと、即エコとか、即エネルギー効率が良くなるなどのことは、まったくないどころか、下手をすれば、既存のエネルギー効率の良いガソリン車よりも、効率が悪いかも知れません。
そんなことをメーカーもいわなければ、試乗した若者も気がつかないようです。これでは、全くバランスを欠いていることは、皆さんおわかりでしょう。
このような態度では、たとえば、環境に負荷をかけることが少ないレジ袋を廃止して、環境に負荷をかける、エコバッグなどを買う連中や、ペットボトルを環境に良いと思い込む連中や、原発即時停止を叫ぶ連中とあまり変りないかもしれません。
エネルギー問題や環境問題など、分析的思考や、水平的思考だけでものを考えていては、決して問題の解を見つけることなどできません。要するに、目の前のことしか理解しないとか、考えが及ばないものには、無理だということです。目の前のことではなく、目の前のことにも、関わる、目に見えないところのことも十分考えなくてはできません。そうして、このような考え方のことを、分析的思考や、水平的思考対して、統合的思考をといいます。
分析的思考、水平的思考、統合的思考については、以前もこのブログに掲載しました。ここでは、思考方法について、解説することは、本題ではありませんので、思考方法について、詳細を知りたい方は、当該ブログをご覧になってください。
さて、電気自動車そのものについて、それが、環境への負荷を軽減するものと直裁にいえるのか、とう問題については、このブログにも過去に掲載したことがあります。詳細は、当該ブログ(電気自動車は本当に環境に優しいのか--ドイツの研究から明らかになった課題)をみていただくものとして、下にその核心部分だけを掲載しておきます。
最悪のシナリオは、電気自動車が再生可能なエネルギー源からではなく、石炭による電力で走行するというものだ。
これは、夕方にプラグイン車を充電するために追加の電力が必要となった場合に起こる可能性がある。帰宅する通勤者たちによって電力使用がすでにピークに達している時間帯に、電力の需要が大幅に高まる可能性がある。
現在、マージナル電源を供給するドイツの発電所は石炭を燃料としている。同研究では、主たる問題はこの点だとしており、石炭は、同量のエネルギーを生み出すのにガソリンさえも上回る量の二酸化炭素を排出すると付け加えている。
「皮肉なことに、電気自動車にさらに多くの電力が必要になるというわけではない。しかし問題は、電気自動車によって電力需要のピークが発生すると、大規模な充電の開始に応じて稼働を開始できる発電所が必要になるということだ」(Raddatz氏)
環境問題や、エネルギー問題など考えるには、このように統合的思考が必要不可欠です。そうして、経営者や、政治家には、この統合的思考が重要であることは、過去のもこのブログで強調してきました。
私は、こうした考えができない人は、人の上に立つべきではないと思っています。たとえば、企業経営をしていく上で、何か事業をしていれば、クレームはつきものです。では、クレームを100%完璧になくすことは可能でしょうか。どんな場合にも、100%なくせというのなら、その方法は一つだけあります。それは、事業そのものをやめてしまうことです。そうなれば、クレームは絶対に発生しません。でも、これは、本来のあり方ではないはずです。まずは、商売をしていれば、ある程度クレームが発生するのは、当たり前のことです。ただし、その中身や、対処が問題です。うまく対処すれば、お客様との間に強い信頼関係を築くことだって可能です。
最近、POSなどいろいろなところで使われるようになってきました。POSでは、いわゆる死に筋商品といって、売れない商品を見出すことが簡単にできるようになりました。では、死に筋商品を削りつつげていったらどうなるでしょうか。いずれ、店頭から商品がすべて消えて、商売ができなくなります。
売上があがらないからといって、人を単純に削ったらどうなるでしょうか。人を削れば、サービスが低下して、ますます、売上が減る、売上が減ったからといって、さらに人を削る。これを何回かやっていれば、やがて、店から従業員がいなくなります。
これらは、上の電気自動車と同じように、目の前のことしか見ないで、いろいろなことに対処しようとすることから発生します。
このようなことしかできない人、当然、経営者や、政治家などには不向きですね。人に使われているしかないと思います。また、そうでなくては、経営者なら、会社を潰してしまいます。政治家ならば、政局のみに埋没し、国を滅ぼしてしまいます。
まあ、人に使われていれば、基本は、指示通り動いていれば、良いので、あまり問題にはならないとも思います。しかし、問題は、こういう人が会社なら経営に、国レベルなら環境問題や、エネルギー政策に口を挟むことです。
あなたは、どのタイプですか。私は、もし、統合的思考ができない、あるいはそういう考えを受け入れらないというのなら、環境問題や、エネルギー政策などに軽々しく口を挟むべきではないと思います。統合的思考を欠いた人が、無責任にこれらの問題に軽々しく口を挟むという行為は単なるエゴイスティックな行為にすぎないと思います。
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