2014年7月22日火曜日

日本株を見誤る、2つの「曇ったレンズ」日経平均は今後も上昇?日本株の正しい見方とは―【私の論評】増税の悪影響を小さく見積もったり、成長戦略に過度の期待を寄せるのは間違い(゚д゚)!

日本株を見誤る、2つの「曇ったレンズ」日経平均は今後も上昇?日本株の正しい見方とは

東洋経済ONLINE(村上 尚己 :アライアンス・バーンスタイン マーケット・ストラテジスト兼エコノミスト)


東京証券取引所は本日、売買が多い一部銘柄の株価の刻み
幅を現在の1円から、10銭や50銭に変更して取引を始めた


まずは、時計の針を3か月ほど前に戻そう。筆者は、日経平均株価が1万4000円台半の水準でこう着状態だった4月28日のコラム「日本株は、もう上昇しないのか?」で、「日本株が投資対象として魅力的である」と述べた。次に停滞が続いた5月26日のコラム「日経平均1万4000円台は、魅力的な水準」でも、同様の相場観を強調した。その後、6月初旬に日経平均は1万5000円台を回復し、現時点では1万5000円台半ばと、上昇トレンドを保っている。

幸い、私の予測は正しかったわけだが、それとは別に、7月半ば現在、年初からのTOPIXのリターンはまだ2%前後のマイナスだ。一方、米欧株は年初から6~7%プラスのリターンとなっており、日本株のリターンが10%ポイント程度アンダーパフォームしている。5月半ばには、約15%日本株がアンダーパフォームしていたので、それが6月以降やや縮小している状況だ。

日本株の復調をもたらした、第一の要因は、海外において米中の景気下振れや地政学リスクなどの不確実要因が和らいだことである。それゆえ、基本的には、1万5000円台半ばから日本株の上昇が続くかどうかは、海外経済・米欧株市場の方向次第と考えるのが妥当だろう。

具体的には、米国経済が巡航速度に戻り堅調な雇用回復が続くか、足元で回復モメンタムが弱まっている欧州経済が再び復調するか、そして新興国経済停滞の元凶だった中国経済の持ち直しが続くか、である。現状、欧州経済の回復が鈍っていることを除けば、世界経済の状況はおおむね良好である。

また、日本株の復調をもたらした第2の要因としては、消費増税による日本経済の落ち込みが和らいでいると認識され始め、2014年度の企業業績悪化懸念が和らいだことが挙げられる。実際に、消費増税が実現した4月以降の消費関連データの中には、4月半ばから戻りつつある指標がある。

ただ、実際に、消費増税後の日本経済の落ち込みが軽微だったかというと、決してそうではない。個人消費の駆け込み需要と、その後の5月までの大きな反動減は、前回増税が実現した1997年とほぼ同じある。事前の想定どおりに日本経済は大きく落ち込んだと筆者は判断している。

そして、2014年度は増税の足かせで個人消費回復は期待できないが、春先からの設備投資や輸出の回復で日本経済は復調すると予想している。ただ、こうした筆者が描くストーリーの蓋然性が高まっていると判断できるほど、明確に強い経済指標は今のところない。多くが大きな落ち込みから少し戻っているという、当然の経路をたどっているに過ぎない。こうした意味で、日本経済の状況は、日本株の見通しにとってニュートラルと筆者は判断している。

以下の2つの「曇ったレンズ」を通じて、日本株市場を見てしまうと、今後投資判断を誤りかねない。「思わぬ損失」を被るリスクが高まろう。

第一の曇ったレンズとして、仮に6月以降の日本株の戻りが、この第2の要因、増税後の景気動向への見通しの変化がもたらしているとすればやや心配である。日本経済については、良い、悪い経済指標も混在しているのに、景気動向に対して楽観方向に傾いていることになるためだ。

第二の曇ったレンズとして、安倍政権の成長戦略が6月末に固まり、これが日本株高をもたらしたとの見方もあるようだ。ただ、これまでも説明してきたが、政府が掲げる「成長戦略」には期待するのはまだ時期尚早だし、そして成長戦略のプランの中には、成長阻害につながる危ういメニューも混在している。外国人投資家のアベノミクスに対する期待が戻ったという解釈なのかもしれないが、これも、先に述べたのと同様、「曇ったレンズ」を通じて株式市場を見ているのと同じだろう。

以上の記事は要約記事です。詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】増税の悪影響を小さく見積もったり、成長戦略に過度の期待を寄せるのは間違い(゚д゚)!

以上の村上氏の記事と同じようなことを私は、このブログに何度か掲載してきました。ただし、私は政局のからみで掲載してきましたが、村上氏は上の記事で、ストラテジスト兼エコノミストとしての見解を述べているということです。そうして、私はこの村上氏の見方は、正しいと思います。

村上 尚己


村上氏が語っているように、増税の悪影響を小さく見積もったり、成長戦略に過度の期待を寄せるのは間違いです。村上氏は、他の多くの民間エコノミストが経済のことをあまり咀嚼しないで、頓珍漢なことを語っていて記事を読むと何やら消化不良をおこした気分になるのとは対照的に、経済・金融に関する知識も豊富で、まともな論理展開をするので、信頼がおけます。

村上氏の上の記事で述べている、第一の曇ったレンズである、増税の影響を小さく見積もることのリスクについては、このブログにも何度か掲載してきていますので、その一番新しいもの(昨日)の記事のURLを以下に掲載します。
政府月例経済報告に異議あり!消費税増税の悪影響を認めたくない政府に騙される政治家とマスコミ―【私の論評】財務省はジレンマに陥っている。安部総理と、そのブレーンは肉を切らせて骨を断つ戦略を実行している(゚д゚)!これこそが隠し球かも?
消費者物価指数は明らかに、前2回の増税直後より、悪化している

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で、私は消費税増税後に明らかにいくつかの経済指標がかなり悪化していることを政局のからみで掲載しました。

経済指標が悪化しているにもかかわらず、このまま経済対策、特に財政政策を実施しなければ、9月か、10月になれば、景気は明らかに悪化して、それを判断材料として、来年の10%増税を判断することになれば、見送られる可能性が高まるであろうとの予測ををしました。

いずれにせよ、直近で、減税・給付などの対策を行なわなければ、上の記事で村上氏が懸念しているように、経済は落ち込み、それに呼応して株価も下がる可能性が大ということです。

第二の曇ったレンズに関しては、まずは、成長戦略なるもののうち、規制緩和以外の成長戦略は、もともと、長期にわたって実現されるものであり、ここ数年以内の経済にとっては、あまり関係ありません。

国レベルで、一つの新たな産業を起こしたり、既存の産業を変えたりすることは、たとえうまくいっても、少なくとも10年くらいはかかるものです。ここ、3年から5年以内に経済に大きく影響を及ぼすことはありません。だから、数年のスパンでは株価などの面からは無視しても良いくらいです。

実施して、すぐに効果が現れるものとしては、規制緩和がありますが、これが曲者で、上の記事で、村上氏が述べていたように、成長阻害につながる危ういメニューも混在しています。規制緩和が実施された場合、それがどのように株価に反映されるのか、見極める必要があります。

それともともと、政府主導の経済成長戦略など成功する見込みはほとんどないということを前提とすべきです。もし、これが成功するというのなら、共産主義も成功していたはずです。

これも、このブログに何回か掲載しています。その代表的もののURLを以下に掲載します。
「成長戦略」には、幻想を抱くな―【私の論評】政府主導の成長戦略は必ず失敗する。もし成功するというのなら、共産主義も成功していたはず! 経済成長はバストの成長を参照すべし、余計なことはするな(゚д゚)!
ノキアはiPhonやiPadと同様なもののプロトタイプをアップルにさきがけて開発していた
が、市場に投入する時期を間違えアップルに先を越された。成長戦略はかなり難しい。

この記事も、村上氏のツイートを論評する形で掲載しました。この記事では、政府主導の成長戦略はあてにならないこを掲載しました。所詮役人の作文にすぎない、政府主導の成長戦略は成功するはずもなく、過去においても全部失敗しました。官僚がやって成功したのは、先送り戦略だけです。要するに、何もしないという戦略のみです。

政府がすべきは、インフラを整えることであり、そのインフラの上で政府が実際に何かをしても、うまくはいきません。インフラで活動すべきは民間企業であり、インフラ上で、企業がしのぎあい、競争することにより、より良いサービスや製品が生まれます。

増税の悪影響を小さく見積もったり、成長戦略に過度の期待を寄せるのは、根本的な間違いです。

市場の動向を推し量るためには、これらを捨て去り、正しいデータと正しい経済情勢の把握による判断をすべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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