2015年10月1日木曜日

GDP600兆円実現に必要な消費再増税の見送りと日銀法改正 ―【私の論評】10%増税で、GDP600兆円どころか、安倍政権崩壊は免れない(゚д゚)!


記者会見で新しい「三本の矢」を表明する
安倍晋三首相=24日、東京・永田町の自民党本部

自民党総裁に再選された安倍晋三首相が記者会見で、経済に注力するとして、「新3本の矢」が披露された。(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障-という3項目だ。

政治家の話は、3つの柱にすることが多い。これは話をわかりやすくするためで、まず「3つあります」と切り出して、1番目の話をしているうちに2番目と3番目を考えているが、2番目まではなんとかなっても、3番目は出てこなかったという笑い話もあるくらいだ。

安倍首相はさすがにはじめから3つの柱にしておいたのだが、ロジカルな関係をいえば、1番目の「強い経済」がすべてだ。これがうまくできれば、2番目の「子育て支援」と3番目の「社会保障」もうまく進むはずだ。

もし政治家の話でなければ、目標には達成手段と達成時期が伴う。ただし、政治家の話ではそうした野暮なことはいわない。1番目の強い経済でも、2014年度に490兆円だった名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やすという方向があるが、いつまでとは言っていない。甘利明経済再生相も達成時期は今後の問題としているが、20年の東京五輪後に達成可能という見解を示している。

こうした中期の経済成長の場合、達成手段は金融政策と財政政策になる。新聞では「旧3本の矢」とかいわれているが、今も有効なはずだ。甘利氏は、2%の物価目標は変わっていないとしている。

甘利氏が言う「東京五輪後に達成可能」というのは、これから名目3%成長が続けば、21年度には名目GDPが600兆円に達するという意味である。名目3%は今の政府が掲げている中期目標である。

本コラムの読者であれば、政府が掲げる名目3%目標の内訳は、実質2%、インフレ率1%になっていて、インフレ目標2%と矛盾していることをご存じだろう。しかも、17年4月から消費増税しても成長率への影響は軽微だというのが前提になっている。この前提は既に誤りであることがわかっているのに、政府の中期財政試算でも修正されていない。このため、甘利氏がいう東京五輪後に達成可能というのも実は怪しい。

インフレ目標2%なら名目4%になるはずで、そうであれば東京五輪前年の19年度でほぼ600兆円になる。17年4月からの10%への消費再増税をやらなければ、これはかなり可能性の大きい数字である。

いまだにデフレ脱却がおぼつかないので、この際、日銀法改正をしたうえでインフレ目標を3%に引き上げるのもアリだ。そうなれば、18年度にほぼ600兆円が実現可能だ。安倍総裁の任期は18年9月までであり、常識的には自分の任期内での目標のはずだ。それを達成するためには、17年の消費再増税の見送りと日銀法改正によるインフレ目標3%が必要となる。

安倍政権が「強い経済」を掲げるのは正しい。あとはその達成のために必要な政策の肉付けである。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】10%増税で、GDP600兆円どころか、財務省はほくそ笑み安倍政権崩壊は免れない(゚д゚)!

上の高橋氏の記事、当たり前のど真ん中です。増税などの緊縮財政をしているようでは名目3%も行くことはないでしょう。実質2%なら名目は1%です。物価は貨幣数量だけでは決まらないことを証明したこの2年間でした。大胆な金融緩和をしても、一方で増税などの緊縮財政をしていては物価は上りません。

これは、8% 増税であまりにもはっきりしすぎるほど明らかになりました。増税の悪影響により、政府の景気回復シナリオに暗雲が垂れ込めています。

4~6月期の実質GDP伸び率は前期比年率1.2%減でした。輸出、設備投資が悪化し、個人消費も悪化しました。7~9月期の鉱工業生産指数は2期連続のマイナスとなるのが確実な情勢で、同期間の国内総生産(GDP)伸び率もマイナスになるることは確実な情勢です。

2期連続のマイナス成長となれば、景気は足踏み状態にあり、7~9月に成長軌道に戻るという政府のシナリオは崩れ、景気後退局面入りの可能性が増してきました。

現在物価の動きは、あいかわらず、横ばいとみて良いと思います。これは、量的金融緩和でインフレ率は上向きなのですが、8%消費増税によるGDPギャップ(需要と供給の差)がいまだに解消されていないことと、原油価格の下落が短期的にはインフレ率の押し下げに効いているためです。

原油価格の下落については、長い目で見ればインフレ率の押し上げ要因になるのでさほど心配する必要はないと思います。しかし、GDPギャップを放置しておくと、なかなかインフレ率は上向きにはなりにくいです。

今のところ、これまでの金融緩和の累積的な効果があるため、雇用環境は好転していますが、これとてもGDPギャップが縮小していかないと、外的要因いかんによっては雇用環境の悪化もあり得ます。

GDPギャップを埋めて、今後の成長を確実にするマクロ経済政策(具体的には補正予算、追加緩和)が求められます。デフレ脱却や景気回復は、そうしたマクロ経済政策を実施するかどうか次第です。

「新3本の矢」のうち、まずは、希望を生み出す強い経済を実現するためには、まともなマクロ経済政策を実行することが重要です。これが実行されれば、他の「二本の矢」は自動的に実行できます。

この逆、すなわち、(1)希望を生み出す強い経済なしに、(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障など実現することは不可能です。

新三本の矢を説明する安倍総理

そのためには、増税ではなく、積極財政、具体的には減税、給付金政策が必要です。なぜなら、現状では、公共工事の供給制約があるからです。給付金政策にからめて、再配分的な政策もとればさらに即効的な効果があります。

それとともに、追加金融緩和も当然必要になります。

これを実行せず、平成17年4月に増税することになれば、平成18年あたりには経済はかなり悪化します。

そうなれば、財務省は増税を実行できたということで、ほくそ笑み、時の政権が安倍政権であろうが、その他の政権であったとしても、必ず崩壊します。

その後は、また数年前のように、短期政権が続くことになります。そうして、また酷い円高・デフレに逆戻りして、何をしようにも、八方塞がりとなり、下手をすると、自民党は再度下野するかもしれません。これは、ここではっきり予言しておきます。


この記事では、長谷川 幸洋氏による、安倍総理は「10%増税先送り」を公約にかかげて、来年7月に衆参ダブル選挙に持ち込むであろうとの予測を取り上げました。長谷川氏の結論の部分のみ以下に掲載します。
10%引き上げを先送りするなら、安倍政権は来年7月のタイミングで衆参ダブル選に持ち込むのではないか。安倍政権の内閣支持率は終戦70年談話の発表後、持ち直しているが(たとえば産経・FNN合同世論調査で3.8%増の43.1%)、政権選択選挙でない参院選は、強すぎる与党を嫌う国民のバランス感覚が働きやすい。 
増税先送りは与党に追い風をもたらす。それならダブル選で政権選択選挙に持ち込み、勢いに乗って参院選も有利に戦う。そんな政治判断は合理的である。
私は2016年ダブル選予想を7月12日放送のテレビ番組『そこまで言って委員会NP』で初めて話した。コラムは同17日発売『週刊ポスト』の「長谷川幸洋の反主流派宣言」(http://www.news-postseven.com/archives/20150717_336635.html)が初出である。そちらもご参考に。いずれマスコミも安保関連法案の熱狂が覚めれば、報じ始めるだろう。
残念ながら、10%増税をくい止める方法は、今のところこれしかありません。もし、これが実現しなければ、上に述べた私の最悪のシナリオが成り立つことになるでしょう。そうして、またまた、日本は失われた20年にまっしぐらに突進することになります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

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