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2019年10月13日日曜日

自然災害大国ニッポン、災害で壊れたインフラ「そのまま放置」のワケ―【私の論評】令和年間は緊縮財政を捨て、公共投資に力を入れよ、現状ではそれが国富を高めることになる(゚д゚)!

自然災害大国ニッポン、災害で壊れたインフラ「そのまま放置」のワケ
もとは私たちのお金なのに…

財務省に気をつかって…

9月11日に発足した第4次安倍晋三第2次改造内閣の基本方針に、「国土強靭化」という文言が躍った。

「まず何よりも、『閣僚全員が復興大臣である』との意識を共有し、熊本地震、東日本大震災からの復興、そして福島の再生を、更に加速する。全国各地で相次ぐ自然災害に対して、被災地の復旧・復興に全力を尽くす」という。

千葉県を襲った台風15号など、自然災害による被害は枚挙に暇がない。

台風19号により一部結界した千曲川の堤防
'18年には「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が閣議決定され、国土交通省の'20年度概算要求は7兆円を超えた。だが、どうも国交省には財務省に対して及び腰なところがある。

まず、財務省は引き続き緊縮財政一本槍で、'25年度の国・地方を合わせたPB(基礎的財政収支)の黒字化目標を譲らない。「国土強靭化」の軸はインフラ整備になるが、PB黒字化の前でこうした事業は悪者扱いになる。

インフラ整備は建設国債を財源とすることが一般的だ。赤字国債とは異なり、ただ使われるものではなく、長期的視点では社会に有用な資産を残すものだ。ところが、バランスシートの上では、建設国債もただの「借金」のような扱いになる。あくまで財務省の理屈では、インフラ整備のための建設国債発行はできるだけ避けたいのだ。

とはいえ、これだけの災害が頻繁に起こっているのだから、国交省もより強気で臨むべきなのだが、どこか財務省に遠慮がちだ。その一例が、国債マイナス金利という絶好の環境をうまく生かしていないことだ。

マイナス金利下では、国は国債を発行すればするだけ儲かる理屈だ。国債調達資金を塩漬けしてもいいが、インフラ投資にまわすのが現状では最上ではないだろうか。

国交省内には、公共投資の採択基準がある。公共投資による社会便益が費用を上回っていることが条件だ。これは先進国ではどこでも採用されている基準で、社会便益をB、費用をCとすれば、B/Cが1を超えるものが採用という数式だ。

ただし、これを計算するうえで、現在の価値と将来予測される価値を調整するために、「社会的割引率」が用いられる。詳しい説明は省くが、この割引率(4%が一般的)を適用すると、よほど計画性のない公共事業でないかぎり、B/Cは1を超える。計算上はだいたいのインフラ整備が採用されるのだ。

向こう4~5年は超低金利が続くと予想されている。それにもかかわらず、国交省は割引率を見直すことなく、一方で公共投資を「自主規制」し、財務省の緊縮財政に協力する格好になっている。国土強靭化に熱心な政治家や関係団体も、国交省役人が財務省の走狗となり、社会的に必要な投資を制限していることに気づかない。

防災のためのインフラ整備は待った無しだ。南海トラフ地震や首都直下型地震が、今後30年間で起こる確率は7割以上だという。これらに備えるうえで、マイナス金利環境は絶好のタイミングだ。

人命のかかった防災対策で財務省が緊縮を突き通す道理はなく、国交省も財務省に気を遣っている場合ではない。秋の臨時国会では両省がどのような態度を取るのか、注視する必要がある。

『週刊現代』2019年10月5日号より

【私の論評】令和年間は緊縮財政を捨て、公共投資に力を入れよ、現状ではそれが国富を高めることになる(゚д゚)!

こちらは、札幌市ですので、台風が直撃することもなく、今回の台風による被害はありませんでした。このブログの読者の方々は、全国にいらっしゃいますので、被害に遭われた方々もいらっしゃると思います。

被害に遭われた方々に、まずはお見舞い申し上げます。一日も早く復興されますことをお祈り申し上げます。
さて、振り返りますと「平成」(1989~2019年)は、“災害の時代”だったといえるのではないでしょうか。

10名以上の死者・行方不明者を出した主な自然災害だけに絞っても、その発生数は15件に上ります(下表)。


単純計算では、2年に1度は何らかの自然災害が発生し、10名以上の死者・行方不明者が出ていることになります。この数字を多いと見るか、少ないと見るかは、人によって判断が分かれるところかもしれないです。

全国の交通事故による死者数を見ると、毎年減少傾向にはあるものの、それでも3,500人以上に上ります。死者数だけを比べれば、交通事故死のほうがよほど深刻だといえるからです。

ただし、自然災害では、人が死ぬという人的な被害だけにとどまらず、建築物やインフラなどが破壊されるという物的な被害も発生します。その経済被害は、莫大な額に上ります。

東日本大震災の被害総額は16兆円以上(内閣府試算)、西日本豪雨では1兆円以上(国土交通省試算)にもなります。福岡県の年間GDPが19兆円ほど(16年県民経済計算)なので、2つの災害の経済被害は、福岡県経済が消滅するのと同等だといえます。

自然災害は国民の命を奪い、国民の経済力―ひいては国力までも根こそぎ奪います。平たくいえば、自然災害によって国民は死に、生き残った者は貧しくなるのです。
「激甚災害」に指定された九州北部豪雨(福岡県朝倉市など)による被害総額は、2,000億円(福岡県試算)近くに上りました。東日本大震災や阪神・淡路大震災(内閣府試算で約10兆円)に比べるとさすがにケタが違うのですが、ローカルな被害総額としては甚大なものです。

とはいえ、「2,000億円の被害が出た」と嘆いてばかりいても仕方がないです。取り戻さなければいけないのです。それが、災害からの復旧・復興の最も重要な中身の1つです。

復旧・復興には、被害総額と同等かそれ以上の投資が必要になります。阪神・淡路大震災には16兆円以上、東日本大震災には35兆円以上の復興関連予算がこれまでに投じられました。

「予算は国家の意思を示す」という言葉があります。国の予算を見れば、その国が何をしたいのかが見えるという意味を含んでいます。ときの首相が「内閣を挙げて復興に取り組む」などと宣言するのは単にパフォーマンスであって、実際に費用を予算に盛り込むことこそが、真の意思表示に当たります。

何をもって復興完了とするか定かではないですが、被災自治体などが策定した復興計画などが完了すれば、一応「復興は終わった」とみなすことができるようです。

それでいきますと、阪神・淡路大震災の場合は10年後の2005年度に復興が完了、東日本大震災も10年後の20年度に復興が完了する予定ということになります。九州北部豪雨の復興計画は、5年後の22年度中が目標年次です。

ちなみに、10万人を超える死者を出した関東大震災(1923年)では、発災から6年で復興事業が完了。7年後の1930年3月に帝都復興の勅語が出されています。

時間や場所、規模などが異なる災害を単純比較することはできないですが、平成の復興はスピーディーとはいえないようです。なぜ復旧に時間がかかるのかだが、単純に「国力が低いから」と考えて差し支えないと思われます。国力には、政治力、財政力、行政力を始め、危機管理能力なども含まれます。

緊縮に凝り固まった財務省

出典:国土交通省

「国力の低さ」の一例は、「公共投資額」の低さに見て取れます。上表は、1989年度から2018年度までの「平成の御世」の公共投資の推移を示すもので、しばしば引用される有名なグラフです。

これを見る限り、平成初期の投資額は増加傾向にあり、98年にピークの14.9兆円に達しました。その後は減少が続き、10年度以降は、ピークの3分の1である5兆円程度で推移しています。

なお10年度は東日本大震災が発生した年ですが、それ以降、基本的に投資を増やしていません。前半に阪神・淡路大震災、後半に東日本大震災を経験しながらも、平成年間を通して、公共投資を減らし続けてきたわけです。平成は、「災害の時代」であるとともに、「公共投資削減の時代」でもあったといえます。

日本政府は、自然災害が多発し、復旧復興や災害対策が必要なのにも関わらず、元手となる投資額を減らし続けてきたわけです。なぜ政府は、このような不可解なことをするのでしょうか。たとえば、財務省の財政制度等審議会の資料のなかに、こういう文言があります。

「公共事業については、『量』で評価する時代は終わり、選択と集中の下、より少ない費用で最大限の効果が発揮されているかという『質』の面での評価が重要な時代になっている」。

「人口減少社会の本格的な到来も踏まえれば、予算の総額を増やすということではなく、引き続き総額の抑制に取り組むなかで、日本の成長力を高める事業と防災・減災・老朽化対策への重点化・効率化を進めていく必要がある」。

この文章からは、「とにかく予算は減らす。メリットのある事業しかやらない」という強いメッセージが伝わってきます。防災関連はやらないとはいえないが、「重点化・効率化」という“クギ”を刺しています。

一見もっともらしいようにも思えますが、「本当に大事な事業で、かつ効率的にならなければ予算はつけないよ」という意図が見え隠れしています。

財務省のこうした意見は、「緊縮財政」の考え方に基づいています。財政規律(プライマリーバランス)を遵守し、いわゆる国の借金を増やさない(減らす)という政策的立場です。

この立場の是非について、このブログでは全く間違いであることをこのブログで過去に訴えてきました。それにしても、緊縮財政という明確な政策意図の下、公共投資額が減らされ続けてきたことは、多くの国民が知っておく必要があるでしょう。

「令和」を災害の時代にするな

自然災害は、前兆があれば予測はできるのですが、あらかじめ「いつ」「どこで」発生するかを予想することはできないです。そのため、災害対策は基本的に事後対応になります。今にも崩れそうな崖、ちょっと雨が降ったら溢水しそうな河川などは、予防保全的に対策を講じる必要があります。

上の記事にもあるように、政府は昨年、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」として、人命とインフラを守るため、3年間で7兆円を投じることを決めました。何もしないよりはマシですが、事業効果は限定的だと言わざるを得ないです。

日本全国をカバーするには、事業規模が小さすぎるからです。かつての政府には「10年間で200兆円」を投資する「国土強靭化」の構想があったのですが、新たな政策は投資額比率にして約8.5%に過ぎないです。「インフラなどの機能維持」に成り果ててしまった感があります。

緊縮財政が続く限り、令和の御世でも、このような対症療法的な“行きあたりばったりな”災害対策は続いていくでしょう。それは「災害の時代」を繰り返すリスクを孕み続けていることを意味します。そのような状況下で起こった自然災害は「天災」ではなく、もはや「人災」といえるのではないでしょうか。

旧民主党、ならびにそこから派生した野党の議員などは、民主党が政権与党だった時代に「コンクリートから人」などというキャッチフレーズで、公共工事をどんどん減らしたという経緯があります。その象徴が八ッ場ダムだったともいえます。

八ッ場ダムは群馬と利根川流域の人々を救った

台風19号による河川の氾濫が相次ぐ中、国が来春の運用開始を目指し、10月1日に貯水試験を始めたばかりの八ッ場(やんば)ダムに称賛の声があがっています。

利根川水系の最上流にある八ッ場ダムは、2016年6月14日からコンクリート打設を開始し、2019年6月12日に打設完了式を開催。また、2019年10月1日には試験湛水(たんすい)が開始されたばかりでした。

本体工事がほぼ完成した群馬県長野原町の八ツ場ダム=6月12日午前9時48分

国土交通省関東地方整備局の速報によると、13日午前5時現在の水位は標高573.2メートルとなり、満水時の水位(標高583メートル)まで10メートルほどに迫ったそうです。台風によるダムの被害は確認されていません。

周辺では11日未明から13日朝までに累計347ミリの雨が降り、山間部から流れ込んだ水でダム湖の水位は約54メートルも上昇しました。水没予定地に残された鉄橋も11日時点では見えていましたが、完全に水の底に沈みました。

もし、八ッ場ダムがなかったら、群馬県が終わっていたという声もあがっています。ネット上には以下のような声が上がっていました。
「無駄な治水事業など無い」「民主党政権のままだったら下流は今頃大洪水か」「これで助かった命はたくさんあるんだろうな。現場の方、大変お疲れ様でした」
旧民主党政権が実施したパフォーマンス的事業仕分けのようなものは、百害あって一理なしといえると思います。

旧民主党の議員だった人たちは、巨大な投資をどう思っているのでしょうか。これは、私の推測ですが、ひよっとすると、巨大ダムなどに巨大な投資をすると、投資した資金はこの世から消えてしまうと思っているのではないでしょうか。

このブログの読者であれば、よもやそのような人はいないと思いますが、そんなことはありません。このような巨大なインフラ投資は、工事をすることにより、工事を請け負う会社にお金が入り、多くの人々に賃金がわたり、また政府に税金が戻ってきます。

さらには、こうした巨大インフラ工事をしたことにより地域がより安全となり、利根川水系付近にはさらに多くの人々が集まり、それまでなかった新たな事業機会が増えることになります。地域の人々がその機会を獲得して、様々な事業を展開すれば、これらの地域に新たな富が創造されることになります。

そうなると、政府が投資をしたよりもはるかに大きな富が創造され、政府も投資したよりも、さらに大きな富を税金として回収できることになります。

このようなインフラ投資を徹底して行って急速な経済発展をしたのが最近までの中国です。ただし、最近では国内のインフラ投資はほぼ一巡して、めぼしい投資先が亡くなっているのも事実です。そのため、中国政府は「一帯一路」というプロジェクトで、海外でも投資をして儲けようとしています。

「一帯一路」はこのブログでも過去に説明したように、中国政府の思惑通りにうまくいくことはないでしょうが、いずれにせよ、インフラ投資は条件を満たせば地域や政府を潤すのは事実です。習近平など現状の日本が国内に巨大インフラ投資案件がかなりあることを知れば、羨ましく思うことでしょう。そうして、単に羨ましがっているだけではなく、民間会社などを通じて北海道の土地を買い漁ったりしているようです。

昔の政治家など、マクロ経済政策に疎くて、経済対策というと公共工事によるインフラ投資だと思いこんでいる人も大勢いました。

しかし、このようなごうつくばりの政治屋たちが、利権を貪り、あまり必要もないような公共工事を行い過ぎたため、日本ではこれに対する批判が高まりました。

確かに無駄な工事などはする必要はないですが、社会便益をB、費用をCとすれば、B/Cが1を超えるもののみ採用するという方式を取り続けていれば、何も不都合は起きなかったのに、1を超えるものまで実施してこなかったというのが今日の姿です。

さらには、上にもあるように、国債マイナス金利という絶好の環境を活かしていないというのも問題です。国債はなせか、将来世代へのつけを回すものとして、忌み嫌われるようになりましたが、本来は自然災害などのときに、自然災害にあった世代だけではなく、インフラ投資の恩恵にあずかる将来世代にも応分に負担してもらい、世代間の公平を期して導入されたものです。

これも勘違いしている愚かな議員が大勢います。旧民主党の議員などは、馬渕氏や金子洋一氏などを覗いて、全員がそうです。自民党にも大勢いますが、若手で小泉進次郎などその典型例だと思います。

国債がマイナス金利であるという、絶好のタイミングを捉え、ゼロ金利になる程度までは、国債をどんどん発行し、それを財源として、令和年間は、公共投資を強力に推進すべきです。

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2016年4月22日金曜日

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と―【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と

九州の熊本・阿蘇地方の地下奥深くから入った亀裂は四国、本州へと伸びる兆候を示している。この美しい国土は荒々しい地球の営みの賜物(たまもの)である現実を改めて知らされた。

であれば、なおさらのこと、わが国では人々の安全と利便を確保するインフラの修復と再整備が世界でも抜きんでて重要だ。その役割は主として政府が受け持つ。

グラフは1995年1月の阪神淡路大震災と2011年3月の東日本大震災以降の公共投資と国内総生産(GDP)の前年比実質増減率を比較しながら推移を追っている。これをみると、当時の政権がどのくらい迅速に震災後の復旧に当たったか、成果はどうか、その結果、景気はどうなったかの見当がつく。

阪神淡路大震災当時は自民、社会、新党さきがけの連立による村山富市(社会党出身)政権で、震災当初の対応は大きくもたついた。しかし、震災の3カ月以降はインフラ復興・復旧のための公共投資が着々と進められるようになった。公共投資による経済への波及効果で景気のほうは下支えされていく。

対照的なのが東日本大震災時である。民主党の菅直人政権は4月に有識者による「復興構想会議」という首相の諮問機関を立ち上げたが、主要議題は復興のための財源をどうするかだ。同会議は財務官僚に牛耳られ、増税が真っ先に話し合われた。
伊藤元重(左)と伊藤隆敏(右)
 これに合わせて、財務省の受けの良い東大の伊藤元重、伊藤隆敏両教授が復興財源のための消費税増税を提唱し、日経新聞の「経済教室」欄を通じて主だった大学教授から賛同の署名を集めた。民主党政権は復興財源を所得税・法人税増税、そして消費税増税構想を12年の3党合意へと結実させていく。

肝心の公共投資はどうか。遅々として進まず、わずかに伸びたのは翌年になってからだが、それも一時的だった。「福島原発事故処理に手間取った」とか、「急激な復旧工事のために人手不足になった」などの言い訳はあるだろうが、データが示すのは公共投資の驚くべき停滞ぶりである。戦後未曾有の大災厄に対し政権の無為無策はおろか、政権が大震災後の大災害を引き起こしたと批判されても仕方あるまい。


もともと「コンクリートから人へ」という触れ込みで政権を奪取した民主党は公共投資をネガティブにとらえ、その削減を財務官僚に丸投げしていた。財務官僚は渡りに船とばかり、菅政権、続いて野田佳彦政権を洗脳し、増税と緊縮路線に乗せた。経済が停滞するのは当たり前で、実質ゼロ成長が続いていく。

今回の熊本大震災では、以上の失敗の教訓を安倍晋三政権がどう生かすかである。危機対応はさすがに素早いし、自衛隊の出動、米軍の協力とぬかりない。

財務官僚はどうか。非常識にも、復興財源のためにも予定通り消費税増税せよという世論誘導を仕掛けるのだろうか。今回はさすがに御用学者や御用メディアは沈黙しているのだが。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

熊本震災の惨状
震災からの復興を復興税で賄うなど、本当に言語道断のとんでもないやり方です。このようなことをした国など古今東西を問わず、あのときの日本以外には存在しません。これは、はっきり言い切ります。

震災からの復興には通常は、建設国債などの国債で賄われるのが普通です。建設国債とは、財政法第4条において「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定されており、この規定に基づいて、建設国債が発行できるとしています。四条国債という別名は財政法第4条を根拠にしていることからです。

建設国債が財政法で発行が可能なのは、建設される公共施設は後世にも残って国民に利用できるためです。建設国債は、後世に残らない事務経費や人件費に充てることはできません。日本では建設国債は1966年から発行されています。2000年8月3日、森喜朗内閣下で、IT関連費等も建設国債で調達できるように財政法4条を見直す方針が決められました。

なぜ、復興のための財源には、復興税などの税金ではなくて、建設国債などの国債が用いられるかといえば、それは世代間の負担の格差を平準化するためです。復興税などの税で震災などの復興を賄うとすれば、震災など受けた当の世代にばかり負担がしわ寄せされるからです。

こんなことは、経済学を学んだ人なら、すぐ間違いとわかる政策です。上で説明したように、課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策です。

復興税で復興を賄うとすれば、後の世代のために、震災などで大きな被害を受けた現在の世代だけが、復興のための税を負担するということになり、その負担はあまりに多すぎます。だからこそ、震災などの自然災害などの大規模な災害のときには、建設国債などの国債で賄うのが常識です。

こんなことは、別にマクロ経済学など学んでいなくても、常識で理解できる範囲です。にもかかわらず、結局上の記事のように、復興財源は、復興税と消費税で賄うなどというとんでもないことが、企図され、実行に移されたのです。

復興税の概要はどのようなものだったか、以下にチャートを掲載します。


デフレの真っ最中で、しかも大規模な震災と津波による被害に見舞われているときに、こんな愚かなことが実行され、その後8%増税も実行されたわけですから、いつまでたっても、デフレからなかなか脱却できないのは、当たり前のことです。

田村秀男氏によるブログ冒頭の記事の内容のような記事は、以前にもこのブログに掲載しました。その時は、まだ熊本地震が発生していないときでした。その記事のリンクを以下に掲載します。
増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!
東日本震災の被災地にかがみこむ若い女性
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、復興税制を推進したり、賛同したりした愚かな経済学者どものリスも掲載しました。この経済学者どもは、日本では主流といわれる、東京大学を頂点とした、日本の経済学主流派のグループです。

本当に情けないです。財務省主導の増税キンペーンにすっかりのせられて、復興税なる奇妙奇天烈、摩訶不思議な税を導入し、それだけにあきたらず、8%増税、10%増税まで提唱したというのですから、もう、世も末です。

財務省の頼みとあらば、まともな経済学説を曲げてでも、ありえないような経済政策を導入する片棒をかつぐというのですから、まともではないです。

この記事でも、掲載してありましたが、東日本大震災の復興が満足に進んでいません。その上、今度は熊本地震です。


多くの民間人や、芸能人や、一般の人からも、熊本復興のために様々な考えが表明されています。しかし、こういう善意によるせっかくの試みも、政府の復興への対応が、まずければ全体として停滞してしまうことになります。

財務省や、上記の頭のいかれた経済学者どは、熊本地震の復興にも、復興税の導入とか、10%増税などといいかねません。このような稚拙な言論に騙されるべきではありません。

それは、全くの間違いです。8%増税でも甚大な被害があったにもかかわらず、さらなる熊本のための復興税導入とか、10%増税どしてしまえば、その結果は破滅的なことになります。

熊本の復興は、そんなことをさせるわけにはいきません。阪神淡路大震災以上の復興政策を実行するべきです。そのためには、復興には建設国債などの国債を用いて対処すべきです。償還期間は最低でも数十年にすべきです。

これ以上国債発行などというと、将来の世代の負担に押し付けることになるという、これまた、財務省の洗脳された人々が、財政破綻するなどとのたまったり、信じこんだりするでしょうが、それは全くの間違いであることも、このブログで掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に国債が暴落する可能性はかなり低いことを示した部分のみ掲載します。
   日本の現状をいえば、グロス (総合計)の債務残高(大部分が国債)は1100兆円程度であるが、ネット(正味)でみれば500兆円で、GDP比で100%程度。さらに、日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)の債務は200兆円、GDP比では40%程度である。この程度であれば、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。 
 ちなみに米国ではネットでみてGDP比80%程度、統合政府ベースでみれば65%程度。英国ではネットで見てGDP比80%程度、統合政府ベースで見て60%程度である。 
 こうした基礎データが頭に入っていないとしたら、高度な議論をしているようにみえても上滑りになってしまう。
 財政破綻の文献をみれば、国債の投資家が国内か海外かは、破綻するかどうかと基本的には無関係である。日本国債の外国人保有比率が上昇したことで、金利の振れ幅が大きいとの指摘も破綻問題とは関係がない。国債残高をネットや統合政府でみれば、たいした数字ではないので、暴落の可能性はさほど高くないだろう。
日本の借金は、このようにさほどでもありません。日本の国債は、暴落するどころか、金利はゼロに限りなく近く、場合によってはマイナス金利になることもあります。このような状況では、国債が暴落するなどのことは考えられず、復興に国債をあてたとしても、財政破たんするとか、将来の世代に過大なつけを回すなどの考えは、当てはまりません。

以上のようなことから、今回の熊本震災による復興は復興税ではなく国債によるべきであり、東日本震災復興の過ちを繰り返すべきではありません。

今後の政治課題は、10%増税は見送りは当然のこととして、熊本震災復興そうして、未だ停滞している東日本大震災復興にも、国債を用いて十分な財源を確保して、一日も早く復興を成し遂げることです。

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いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!


“仕分けコンビ”、復興予算で開き直り連発 自公に責任転嫁―【私の論評】「復興税制」も「仕分け」も全くの間違い!!誰が正しい間違いではなく、何が正しい何が間違いという姿勢が重要!!



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2012年12月3日月曜日

中央道トンネル内崩落 事故原因は? 鋼鉄製金具腐食か −【私の論評】この事故は私の過去のブログで予言したとおり、起こるべくして起こった可能性がが大きい!!今こそ、人からコンクリートへ!!

中央道トンネル内崩落 事故原因は? 鋼鉄製金具腐食か

中央自動車道の笹子トンネル 昨日
山梨県の中央自動車道の笹子トンネルで発生した事故は、天井板の崩落という国内で初めてのケースで、複数の死者を出す惨事となった。なぜ崩落は起きたのか。専門家は東日本大震災の影響でひずみが発生した可能性を指摘。天井をつっていた鋼鉄製の金具の腐食が原因につながったとの見方を強めている。

・・・・・・・・・・・<中略>・・・・・・・・・・・・・・・

トンネル工学に詳しい大阪大の谷本親伯名誉教授は、「しみ出した地下水などによって金具が腐食し、天井の重みに耐えられなくなった恐れがある」と指摘。車の排ガスに含まれる窒素や亜硫酸ガスなどには金属の腐食を促す作用もあり、天井裏の金具にダメージを与えた可能性のほか、「固定するボルトが緩んでいた可能性も否定できない」と説明する。

平成8年2月に北海道の豊浜トンネルで崩落した岩盤が路線バスを直撃、乗客ら20人が死亡した事故では、地震で緩んだ岩盤の隙間に地下水が浸透。凍結して亀裂を押し広げたことで崩落が起きた。

防災システム研究所の山村武彦所長は、「東日本大震災や翌日に発生した長野県北部地震で生じたひずみが、事故に影響した恐れもある」と指摘。「トンネル事故で火災が発生し、煙が充満すると、救助は非常に困難になる。全国的なトンネルの調査が必要だ」と指摘した。

この記事の詳細はは、こちらから!!

【私の論評】この事故は私の過去のブログで予言したとおり、起こるべくして起こった可能性がが大きい!!今こそ、人からコンクリートへ!!

日本では、誰もがいつ自然災害に巻き込まれるかわからない!!

この事故の原因に関して、上の記事で背景があまり説明されていないません。無論鋼鉄製金具腐食が直接の原因であるようですが、しかし、テレビなどでみていると、まだ詳しい調査結果はでていないものの、どうも点検不足の面があるようで、その点検不足の要因は、予算不足のようです。

詳細は、詳しい調査結果を待つべきですが、このブログでは以前にこのような事故が起こり得る可能性が十分あることを掲載したことがあります。以下にその記事のURLを掲載しておきます。この記事は比較的新しい記事なのですが、データなどかなりふんだんに使っていますし、比較的まとまっているので、ここに掲載します。ただし、私の自身は、このような事故がおこること、10年以上前から予期していました。その当時は、今すぐにトンネル崩落事故や、橋が落ちたり、道路が陥没したりするような事故が、10年後くらいから始まり、その後どんどん増えていくことを予想していました。

なぜこのようなことを確信を持っていえたかといえば、やはり、10年前から以下のブログ記事の内容に近いことを知っていたからです。

渋谷は「大人の街」に変身中 第一弾ヒカリエは大盛況―【私の論評】コンクリートがなければ始まらない!!これは民間主導の構造改革だ!!

詳細は、上のURLをご覧いただくものとして、以下の今日の話題と関係のある部分だけコピペしておきます。
・・・・・・・・ハードとソフトは、互いに補いあうものであり、両方そろって、はじめて、意味があるのです。ハードを否定していては、いくら、ソフトを充実させても人をおろそかにします。
しかし、このような愚かなことが、ずっと行われているところがあります。それは、どこかといえば、日本そのものです。日本では、いわゆるバブル期の頃に、あまりに意味のない箱物がたくさん作られたため、公共工事=箱物=利権=悪という固定概念が形成され、いわゆる公共工事は必要もないのに、無駄におこなわれているかのイメージが定着してしまいました。そのためでしょうか、公共工事は年々削られていきました。
それが、どの程度なのか、掲載します。 
まずは、数字的に表示すると以下の表のようになります。

GDP比でみると、現状は、1980年あたりの、半分以下に落ち込んでいることがわかります。下のグラフでみると、公共投資総額でも、おそらくバブルの頃である、最盛期と比較すると、半分にまで減っています。


バブル期と比較する必要はないと思いますが、GDP比で比較しても、過去と比較すると相当減っていることがよくわかります。
以上は、日本国内の過去との比較ですが、これを諸外国と比較したのが、下のグラフです。これは、1996年のGDP対公共工事総額を100とした場合の推移を諸外国と比較したものです。2009年には、麻生内閣のときに大々的に財政出動をしたので、あがっています。グラフにはでていませんが、その後は、また緊縮財政のため減っています。昨年度および今年度は、震災の復興のため、また若干上がることになると思います。


諸外国と比較しても、日本の公共投資は減っていることが良くわかります。他国はどちらかいうと、どんどん増えています。ドイツも一時減りましたが、その後増えていっています。日本だけが、減っています。
あまりにも、公共工事をやらなさ過ぎたため、最近では、さまざまなインフラの老朽化が目立っています。それに、公共工事をやらないということは、政府が緊縮財政を行ってきたことでもあります。緊縮財政を続けてきたことと日銀の金融引き締めのおかけで、今日本は、デフレ状況にあります。このデフレに原因に関して、世界の趨勢と結びつける人もいますが、これはあまり関係ありません。主たる原因は、緊縮財政と、金融引き締めです。
現在、多少景気が上向いてきていますが、それは、震災復興のため一時的に公共工事を増やさざるをえず、そのために、一時的に回復しているということです。これで、復興を中途半端にしてやめてしまえば、またもとに戻る可能性もあるということです。

上の記事は、下の記事でも引用したものです。

日本の橋や道路が傷んできた 補修財源「30兆円」足りない―【私の論評】何が必要なインフラか、選別をするのは、結構だが、今は、人からコンクリートへが緊急の課題である!!

この記事には、無論トンネルの崩壊などにも触れています。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部のみコピペさせていただきます。
これけだけ、はっきりしているのに、上の記事を書いた人は、「コンクリートから人へ」などという、民主党の馬鹿なキャッチフレーズや、緊縮財政をするため、公共工事をどんどん減らしてきた、自民党などの屁理屈にだまされていると思います。 
そうして、政府があまりにも公共工事を減らして結果として、緊縮財政をしてしまったことと、日銀による金融引き締めの両方が、日本のデフレの最大の原因です。これに関しては、あまり、国外のことは関係ありません。 
デフレから短期間で抜け出すためには、今は、変に選択などせずに、必要と思われる公共工事はどんどん実施すべきです。 
今は、「人からコンクリート」へをキャッチフレーズにすべきです。この20年で、社会は随分変わってしまったということを認識すべきです。 
水道管第破裂。老朽化により、このようなことが全国各地でみられるようになった!!
こういうことを言うと、「財源はどうする」などという人もいますが、財源など、それこそ、建築国債をあてて、60年くらいかけて、償還するということで良いです。こういうと、子孫につけを払わせるなどとして、否定する人もいます。しかし、大規模なインフラなど、複数の世代間で負担することなど、当たり前のことです。実際、私たちも、昔やった大工事のつけを税金で払って、そのインフラを利用して日々生活しているのです。 
関東大震災のときの復興でも、帝都を復興するのに、巨額の国債を発行し、それを国内で引き受け手があまりいなかったため、外国で販売して買ってもらい、外国に借金をして、復興財源にあてています。そうして、このときには、政府は、増税ではなく減税をしたという事実もあります。こうした、ケーススタディもまともにしないのが、今の民主党政権です。 
大規模な災害があったときの増税など、古今東西例をみません。今増税(ブログ管理人注釈:当時は、復興税と消費税の両方)が絶対に必要などと思い込む人は、政府や日銀などのプロパガンダに踊らされているだけです。もう、時代が違うのです、バブルなど随分前に終わったことです。今は、バブルどころか、デフレなのです。 
今こそ、「人からコンクリート」をキャッチフレーズとして、コンクリートによる大公共工事が必要なのです。今の状況は、それこそが、本当に人を大事にすることになります。そうして、そのようなことは、過去にも何度も行われてきたことで、珍しくも何ともないことです。日本では、上にあげた、関東大震災の復興、戦後の復興、60年代の高度成長で当たり前に行われてきたことです。 
民主党は馬鹿なことを考える政党

ただし、田中角栄政権、三木政権のあたりでは、やりすぎて、政府の借金がかさむようになり、それどころか、バブル崩壊にまで突き進んだということであり、このような不手際は、日本では、例外といっても良いくらいの、事柄です。

今、公共工事をせずに、日本の国土を荒廃させてしまい、さらには、デフレから脱却できなければ、それこそ、私たちの子孫に大きな禍根を残すことになります。そんなことにだけは、したくないと思うのは、私だけでしょうか?

現在の公共工事の水準が、30年度ほど前より古い時代と同じということは、恐るべきことです。特にある程度年齢がいかれて、50歳以上の方なら、30年以上前といえば、それこそ、隔世の感があると思います。それにしても、なぜ1990年代くらいから、公共投資が減ったかといえば、バブル崩壊だけが原因とはいえません。要するに、日本では他国と比較すると、終戦後にインフラを整備したということと、バブル崩壊にともなう、公共工事批判、それに緊縮財政ということがらが重なってこのようなことになってしまったという側面もあります。

Tsunami でググったら、たまたまこんな絵が!! どうやら水着らしい。こんな津波なら可愛いもんだが?
しかし、それにしても、ここ15年間くらいは、明らか減らしすぎです。それに、上の記事では、掲載しませんでしたが、日本は、他国と比較すると、気温の寒暖の差が著しくただでさえ、インフラなどが痛みやすく、その上台風、地震津波などの自然災害が極端に多い国です。そんな国が、これらの極端に少ない他国などと比較して、公共工事が少なくて良いはずは、ありません。

台風の取材でもこの程度であれば、笑顔で中継できる?
私は、多くの人に、今や時代が変わり、大昔のように、「コンクリートから人へ」という垢じみた考えは、捨て去るべきで、今こそ「人からコンクリート」という新しい考え方にシフトすべきと思います。無論未来永劫わたって、これを続けよなどと、主張するつもりはありません。その時々でバランスとるべきです。しかし、今は間違いなくコンクリートに力をいれる時期だと思います。わたしは、そう思います。




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2012年7月1日日曜日

【日本の解き方】動き出す200兆円公共投資!増税談合で利権分け前か―【私の論評】デフレ脱却には、やはり、政府による財政出動と、日銀による金融緩和の両方が不可欠!!

【日本の解き方】動き出す200兆円公共投資!増税談合で利権分け前か:



公共投資の復権を考えている人が出始めてきた。自民党は「国土強靭化法案」を今国会に提出している。10年間で総額200兆円をインフラ整備などに集中投資するという。

公共投資をすれば名目GDP(国内総生産)が伸びるという人もいるが、名目GDP伸び率と名目公共投資伸び率のデータを見ると関係はない。理論的には公共投資の需要創出効果はあまりない。十分な金融緩和がないと円高を誘発し輸出減となるという、いわゆる「マンデル=フレミング効果」があるからだ。

そもそも総額200兆円が先に出てくるのがおかしい。本来、公共投資は個々のプロジェクトでみて、便益と費用の比率(B/C)は1を上回っていれば採択し、下回っていたら不採択である。先に総額を決めるというのは、こうした個々のプロジェクトごとの採択基準を無視することにつながる。

それは筆者の大蔵省時代の経験からもいえる。公共投資のB/Cの計算チェックを行った。個別プロジェクトでB/Cが1・00という例が多く、それらはすこし間違いを探すと1・00未満になってしまう。そのような事例が多くなったら、チェックをしなくてもよいと言われた。予算総額が決まっていて、そのままでは予算をつけられなくなるからであろう。

建設投資を見ると、確かに投資額が減っている
もっとも、その時の経験ではB/Cが3以上だと不採択(B/Cが1未満)にはならなかった。後日、海外出張して公共投資担当の人とも話したが、やはり同じようなことを言っており、ドイツやニュージーランドではB/Cの採択基準を3や4に設定しているということだった。

そこで、経済財政諮問会議で同様な提案をしたことがあるが、国交省などから強硬な反対があって、実現しなかった。当時の高速道路で採択基準を「3」にすると採択路線は6割も減少になるからだ。逆にいえば、日本の公共投資の採択基準はそれだけ甘いわけだ。

今回は社会保障に使うから大丈夫という理屈であったが、早くも利権たっぷりの公共投資に化けようとしている。デタラメな増税だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】デフレ脱却には、やはり、政府による財政出動と、日銀による金融緩和の両方が不可欠!!

上の記事を読まれて、皆さんはどう思われたでしょうか?私自身は、高橋洋一氏には従来から、注目しており、氏の意見はもっともであるといつも納得しています。

ただ、今回は、真正面から字面のみ読めば鵜呑みにできない点があります。ただし、裏読みをすれば、高橋氏は、無秩序なインフラ整備には賛同出来ない旨を表明しているのであり、さらに、日銀による金融緩和なしに、デフレからの脱却は困難であることに警鐘を鳴らしていると読み取るべきと思います。

高橋洋一氏
ましてや、自民党など、増税しておいて、無秩序なインフラ整備を多めに行えば、増税しても何も問題ないと考えているとすれば、とんでもない間違いであることを強調したいのだと思います。

確かに、こう考えているとすれば、とんでもないことだと思います。デフレの最中に、増税と、インフラ整備を同時行うのは、危険極まりない行為であると思います。理屈の上では、増税しても、インフラ整備を多めにやれば、国民の所得が増え何も問題ないかのようにも見えます。

福岡市のインフラ整備
しかし、経済というのはバランスが重要ですから、まず、最初は、増税などしないようにして、金融引締めで、暴走している日銀を日銀法改正などで、金融引締め一辺倒ではない金融政策に変更するという担保を確保したうえで、大規模な財政出動をして、税収を増やし、そうこうしているうちに、デフレから脱却したどころか、景気が加熱して、ハイパーインフレになりそうな状況になってきた場合、増税や緊縮財政、金融引締めを実施するというのが、順当な行き方です。

私自身も、従来は、政府の財政出動ばかり期待していたところがありますが、やはり、日銀が金融引き締めばかりやっている最中に、財政出動をしても、短期的には効果があるかもしれませんが、長期的にはデフレ克服までには至らないと思います。

さて、これに関しては、いろいろいと情報が錯綜しており、真実が把握しにくい状況になっています。真実に一歩でも近づくために、以下では、政府の税収に限って、情報を整理していきたいと想います。


さて、上の記事を論評する前に、税収に関してここ30年程度をふりかえっておきます。消費税をはじめて日本で導入して、3%の増税にしたときには、1989年のことで、日本国経済は、インフレ基調であったため、増税した翌年には、税収は増えました。ところが、その翌年から減りはじめ、その次の年は、3%にした年を下回りました。

その後、インフレは収束し、税収は減り続けました、次に、消費税を3%から5%に引き上げた1997年には、若干税収があがりました。ただし、このときはまだ、日本は統計上は、デフレに突入していませんでした。ただし、翌年の1988年に日本経済は、完璧にデフレ基調に移行しました。その後、税収が増えるどころか、1997年の税収を上回ったことはありません。

このデフレの原因は、主に政府による増税を含む緊縮財政と、日銀による金融引き締めによります。特に、1988年から、日銀法が、改悪され、日銀の暴走大勢が露となり、これ以降、完璧に金融引き締め政策を継続するようになりました。とにかく、インフレで冴えなければ良いという具合で、多少のデフレは辞さないという考えで金融政策を定め、実行しているようです。

金融引締め一辺倒で円高を誘導し、中国・アメリカに利する
ことばかり追求する日銀、いずれの国の中央銀行なのか?
しかし、経済学的に、ゆるやかなインフレ(2%から6%くらいまで)は悪性インフレとはいえず、さほど害はないですが、デフレの場合は、ゆるやかなデフレなど存在せず、デフレであること自体が、経済の重篤な病といえます。そもそも、ハイパーインフレは存在しますが、ハイパーデフレなるものは、存在しません。

モノの価値が、一夜で低くなり、モノを買うためにお札を山のよう支払うようなことはあっても、その逆に一夜にして、モノの価格が安くなり、昨日払った金額の1/10で、本日は、同じ商品を購入できるなどということは歴史が始まって以来一度もありません。たとえ、0.5%のデフレであっても、経済の病であることにはかわりありません。大変なことです。そうして、最大でも、年率2%程度のデフレしか、人類は経験したことがありません。



そのため、インフレは誰でもすぐに認識できますが、デフレは意外と多くの人が認識できないため、人の病気きでいえば、自覚症状のない癌のようであり、人によっては、デフレを経済の癌と呼ぶ人もいるくらいです。現在の日本のように、デフレが、14年間も続く異常な状況にいると、デフレが慢性化して、異常な状況を認識しない、ゆでガエル状況の人がでてきます。野田総理や、安住財務大臣などは、今がデフレであり異常な状態であるとは、本当は認識していないのかもしれません。

当時ライブドアの社長だった、堀江貴文氏も今や牢の中
2001年小泉政権になり、この政権は、2006年まで継続した。2003年から、2006年にかけて、税収が増えていますが、これに関しては、小泉政権による、国債の日銀引受は禁じ手でも何でも無く高橋洋一氏主導で、毎年やっていたため、この対策により小泉政権下では1ドル120〜130円台の円安をキープしていました。結果として、日銀に、金融緩和政策を実施させたことになります。この時期に、いわゆる堀江貴文によるライブドア事件、村上ファンド事件が発生したことは記憶に新しいです。


村上ファンドの村上氏、いまはこの人も牢の中
小泉政権は、2006年までしか存続しなかったため、これ傾向は、2008年でピタリと終焉しています。2007年には、税収があがっていますが、これは、小泉政権が終焉して、高橋洋一氏が第一線を退いても、結果としてマネタリーベース(市中で出回っているお金)が、多めであったため、このような結果になったものと推察します。



2008年(平成20年)9月24日から2009年(平成21年)9月16日まで続いた麻生政権による2008年における、予算策定により、2009年中は大規模な財政出動が行われ、景気の拡大がみられました。ちなみに、この30年間で、緊縮財政を行わなかったのは、麻生政権と、小渕政権のみです。おぶち政権のときは、株価が回復して、2万円台だったことをご記憶の人も多いと思います。その後、民主党政権に政権交代し、「コンクリートから人」をスローガンとして、緊縮財政に戻ったため、昨年の3月に発生した、震災による復興需要も、帳消しされ、現在でも、デフレ基調にあります。

平成の幕開けを伝えた、在りし日の小渕氏

また、日銀は、1%のインフレ目処を発表したため、市場も好感し、一時株価が上昇するなどの現象もみられたが、結局追加緩和策などとりやめとなり、あいかわらず、金融引き締め的な金融政策から、脱し切れていません。

未だ記憶にあたらしいニュージーランド地震
私自身は、上の記事で、高橋氏が、日本の公共投資のB/Cが、ドイツやニュージーランドではB/Cの採択基準を3や4に設定しているといいますが、日本とドイツや、ニュージーランドとは、根本的に異なるところがあります。それは、日本は、これらの国に比較して、自然災害が極めて多いということです。最近、ニュージーランドでは地震がありましたが、その後発生した、日本の、地震や津波の被害とは比較しようもなく規模が小さいです。また、日本では、地震は、他国に比較すれば、頻繁に発生します。


毎年繰り返される台風による被害
それに、日本には、これらの国にはない、台風による風水害その他の災害が毎年のように発生しています。さらに湿度も高く、インフラが痛みやすい条件が揃っています。だから、日本のB/Cがこれらの国より、多少甘くなるのは、当然のことと思います。それに、このブログの冒頭で示したグラフのように、建設投資など、数十年前の水準にまで下がっています。そのため、最近では、老朽化したインフラが目立っていることも事実です。そのため、経済効果が薄いにしても、やるべき公共工事は実施しなければなりません。それに、同じ公共工事でも、経済効果が高いものは、優先的に実施するべきと思います。

しかし、高橋氏は、自民党による国土強靱化は、10年間で総額200兆円をインフラ整備などに集中投資ということだけで、どのような投資をするのか、そのビジョンがはっきりしていないことを批判しているのだと思います。


そうして、忘れてはならないのは、日本のデフレ脱却は、まずは、日銀によるデフレ促進策をやめさせること、その上で、今後の日本のあるべき姿に向けた、強力な財政出動を行うべきことです。日銀の金融政策が変わらない限り、円高は是正されず、となれば、産業の空洞化は避けられません。だからこそ、この両輪が揃わない限り、あり得ないということです。


経済も、人体のように均整のとれたプロポーションであらねば?
それに、増税しつつ、インフラ整備に多大な資金投下するということは、癌患者に対して、癌の進行を止めるどころか、進行させるような外科手術を施し、それと同時に抗癌剤を投与するような、ハチャメチャなやり方です。こんなやり方をすれば、癌患者がどうなるのか、わかったものではありません。とんでもないことです。高橋氏は、だからこそ、上の記事のような言い回しになったのであり、順番など間違えていなければ、上のような言い方はしなかったと思います。経済は、人体が均整がとれてなければ、問題があるのと同じように、時間軸も含めた種々様々なバランスのもとに成り立っていることを忘れてはいけないということです。


みなさんは、どう思われますか?





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