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2020年1月20日月曜日

米中貿易「第1段階合意」を中国はマジメに履行しない―【私の論評】習近平は、未だ米国による対中国冷戦は米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いている(゚д゚)!

米中貿易「第1段階合意」を中国はマジメに履行しない

<米中両国が先週、貿易問題の「第1段階合意」文書に署名したことは世界を安堵させた。しかし習近平政権はこの合意を「ほどほど」にしか履行しないだろう>

劉鶴副首相(左)は微妙な表情でトランプ大統領と握手(1月15日、ワシントン)

米中両国政府は今月15日、貿易問題に関する「第1段階合意」の文書に署名した。この第1段階の合意には、(1)知財保護(2)技術移転の強要禁止(3)農産品の非関税障壁の削減(4)金融サービス市場の開放(5)通貨安誘導の抑止(6)輸入拡大(7)履行状況の検証――といった7項目が盛り込まれている。だが、先月16日に本サイト掲載の拙稿がすでに指摘しているように、それらは全て中国側が履行義務を一方的に負う性格の合意内容である。

例えば(1)知財保護は当然、中国側がアメリカの要求に応じて知的財産権に対する保護を約束したことであり、(2)技術移転の強要禁止はすなわち、中国側がアメリカの要求に応じて、今までの悪しき慣行である外国企業に対する技術移転の強要を止めていくことである。(4)金融サービス市場も当然、中国が外国の金融機構に対して国内市場を開放することを意味している。そして(6)輸入拡大で中国は今後2年間に2000億ドル分のアメリカ製品を追加で購入することを約束させられた。アメリカの一方的勝利である根拠

筆者が中国商務省の公式サイトで公表されている合意文書の中国語版を確認したところ、文中で「中国側が〇〇すべき」と規定された箇所は82にも上ったのに対し、「アメリカ側が〇〇すべき」というのはわずか4カ所しかない。合意事項のほとんどは中国側が履行義務を背負うものであることがよく分かろう。

一方のアメリカ側が合意の達成において「すべき」ことの内容は、去年の9月から1100億ドル分の中国製品に課している15%の制裁関税を半分の7.5%に減らす、というだけである。それ以外の2500億ドル分の中国製品に課している25%制裁関税はそのまま据え置きにされる。

結局アメリカ側は、中国に対する制裁関税の大半をそのまま維持しながら、中国側からは2000億ドル分の米国製品の購入や知的財産権への保護や金融サービス市場の開放などの約束を取り付けることに成功した。どう考えてもアメリカの一方的勝利である。

中国側が手に入れた最大の成果は、合意によってアメリカが中国製品に対して新たな制裁関税を発動する可能性は当分の間なくなるので、貿易戦争のさらなる拡大は避けられる、というところにある。とはいっても勝者はやはりアメリカである。第1段階合意はアメリカとトランプ大統領にとっての勝利であるからこそ、大統領はホワイトハウスに米政界・財界の要人たちを200人も招待して盛大な署名式を行い、得意満面の風情で自ら文書に署名した。一方の中国側にとっては、アメリカの諸要求を一方的に呑まされたこの合意内容は単なる敗北というよりも屈辱的な降伏、「城下の盟」というべきだろう。屈辱の合意だからこそ、習近平国家主席は署名式には出席せず、副首相の劉鶴を派遣して代役をさせた。それは当然、国家元首としての習の体面と権威を何とか保つための必要最低限の措置だろう。以前、劉が貿易協議の中国側代表としてアメリカを訪れる時、「国家主席特使」という肩書を付けることが多いが、今回はその肩書もない。習と今回の屈辱的合意との関係性を極力薄めたいという中国政府の思惑が見え透けている。

中国政府にとって、副首相の劉をアメリカに派遣して署名させたことにはもう1つの政治的効果があった。自国の副首相がホワイトハウスで、アメリカの国家元首たるトランプとあたかも対等であるかのように文書に署名したことで、中国政府は一般国民に「中国が優位である」との錯覚を与えることができた。実際、テレビを通してこの光景を眺めた多くの中国人ネットユーザーは一斉に「中国が凄い!」と興奮し、合意の内容とは関係なくいい気分になっていたようだ。

米中の「第1段階の合意」はこれで成立したが、今後の最大の問題は中国政府がこの合意内容をきちんと履行していくのかどうかにある。

そして私の結論は、それは今年11月のアメリカ大統領選の結果次第である。

一体どういうことか。合意内容の一つである、中国側が約束した追加2000億ドル分の米国製品の購入を例にとってみればわかりやすい。

米大統領選に潜む大きな「抜け穴」

合意に従って、中国は2020年と21年の2年間で、農産物・エネルギーなどを含めた米国製品を追加で2000億ドル分を買うこととなっている。しかし一部の経済紙や専門家が分析したように、その完全履行は中国にとって極めて難しい。経済の減速に従って中国の国内需要がむしろ減っていく中で、今までの輸入ペースを維持した上でさらに米国製品を追加で大量購入するのは、国内需要の面からしても購買能力の面からしてもかなりの無理を強いられる。

その一方、明確な数値目標が決められているこの約束の履行を、中国がごまかすのも結構難しい。履行しなければ、トランプ政権はいつでも中国に対する制裁関税の追加や引き上げを実行する。

それでは中国はどうするのか。実は中国にとって幸いなことに、「2年間で2000億ドル分の米国製品を買う」という約束には、米大統領選と絡む1つの大きな抜け穴がある。

この抜け穴とはすなわち、「2年間で2000億ドル分を買う」との約束はあるものの、最初の1年間、つまり2020年の今年にどれほど買うべきかは必ずしも明確に決められていない、ということである。

そうすると中国側はずる賢い方策を取ることができる。今年1年間、つまり米大統領選の結果とは関係なくトランプ大統領が確実に政権の座にいるこの1年間は、中国は約束した米国製品の購入を部分的に履行していく。例えばこの1年間で数百億ドル分の米国製品の追加購入を何とかして実現すれば、それでトランプ大統領のご機嫌を損なうことなく、合意を履行していることにもなる。

しかしその代わりに、年内に2000億ドル分の米国製品の半分以上を買うようなことは絶対しない。約束の「2000億ドル分米国製品購入」の大半をさまざまな理由をつけて来年の2021年に回す。そして今年11月まで大統領選の行方を見極める。「バイデン当選」は中国のチャンス

もしトランプが落選すれば、来年1月には新政権が誕生する。新政権は当然民主党政権になるが、もし運良く親中のジョー・バイデン前副大統領が新しい大統領になれば、それこそ中国にとっての起死回生のチャンスとなる。

来年1月に新政権が成立すれば、中国はトランプ政権と交わした「第1段階合意」の履行を渋ったり停止したりできる。前述のように、第1段階合意の諸項目はすべて中国が履行していくものだから、中国が状況に応じて履行を止めることも簡単にできる。その際、第1段階合意の破棄を明確に宣言する必要はまったくない。中国側が履行を止めていれば「合意」はその時点で死ぬのである。

その場合、中国に対してアメリカが取り得る唯一の制裁手段はすなわち制裁関税の引き上げあるいは追加拡大である。しかし、中国に圧力をかけるために、中国製品に対して大規模な制裁関税をかけるというやり方はそもそもトランプの発明であって、トランプだからこそ取れる強硬手段・非常手段である。新しい大統領が今のトランプと同じような強硬手段を取るかどうかはかなり疑問であろう。おそらく、新大統領が「第2のトランプ」でなければ、中国との貿易戦争の拡大にはなかなか踏み切れない。それこそ中国側の期待する展開である。

その際、今の第1段階合意の履行を一旦止めてから、アメリカの新政権との間で「自由貿易」の理念に基づく新たな貿易協議の再開を呼びかけ、米中間の貿易枠組みの再構築を目指すのが中国の新戦略となるであろう。それによって中国は、今のような悪夢の現状から脱出できる。

もちろんそれはトランプが再選を果たせないという前提であって、中国側の一方的な甘い期待ではある。しかし今の習政権には、そう期待する以外に難局打開の方法がない。トランプ政権との間で最初から履行困難な「第1段階合意」に署名した以上、この厄介な政権の早い終結に賭けるしかない。理論的には、この賭けの勝算は50%程度あるはずである。

しかし、もしトランプが再選を果たして来年からも引き続き大統領であるなら、中国は一体どうするのか。おそらく習政権とっては、それはそうなった時に考える問題で、今の緊急課題ではないのだろう。習政権にとっては、米国製品をほどほどに買うことで少なくとも今年いっぱい貿易戦争のさらなる拡大を避けることができれば、それはまず大いなる成果なのである。

第1段階の米中合意を「ほどほど」にして履行していくというのはおそらく、米国製品の購入だけでなく、他の合意内容の履行でも中国側の戦術となろう。知的財産権の保護にしても外国企業にたいする技術移転の強要にしても、中国は年内には今までの悪行をある程度控え目にしてアメリカに「改善」の実績をつくって見せるだろう。そして来年になって別の政権がアメリカで誕生するのであれば、最初から検証可能な数値目標のないこれらの合意事項の履行を放棄するのはいとも簡単である。

「第2段回の合意」はもはやない

第1段階の合意について結論を言えば、今年いっぱいは中国も米国製品の大量購入を含めた合意事項をある程度履行していくだろう。だが、来年になってどうなるのかは米大統領選の結果次第である。トランプが再選すれば、中国は苦しみながらも合意を履行していくしかないが、来年1月にアメリカの政権が変わった場合、中国が合意不履行に踏み切る可能性は大である。

後者の場合、米中間の貿易戦争となるのかどうかはアメリカの新政権・新大統領の考え方と政治スタイルによるので、今のところ予想は不可能だ。

最後に1つ付け加えれば、いわゆる「米中貿易第2段階の合意」は大統領選前はもはやないと考えた方がいい。選挙前の「第2段階の合意」が不可能だからこそ、双方は「第1段階合意」で手打ちしたわけである。今後の問題はむしろ、この「第1段階合意」がきちんと履行されていくのか、にある。

【私の論評】習近平は、未だ米対中冷戦は米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いている(゚д゚)!

弾劾訴追を受けたアメリカ史上3人目の大統領になったにもかかわらず、ドナルド・トランプの再選の可能性が急上昇しています。トランプ氏には旧来に政治的な思考などは通じません。いま米国では、大くの識者らが、トランプが2期を務め上げる連続で4人目の大統領となる確率を50%近いと見積もっています。

トランプ再選の可能性が高いとみる根拠は、2つあります。第1に米国経済が好調であることです。株式市場は上昇を続け、失業率は低下を続け、消費は増え続けています。高くあるべき指標は高く、低くあるべき指標は低いのです。

トランプ大統領は2020年の始まりを、歴史上記録にある中でどの大統領の同時期より低い平均失業率を取り仕切ったという実績で飾っています。

10日、労働統計局は12月の失業率が3.5パーセントという歴史的な低さを維持したと報告しました。トランプの大統領就任からまる1カ月後の2017年2月以降、毎月の失業率の平均は3.9パーセントでした。就任してから35カ月の間に平均4パーセントを下回った大統領はこれまでいませんでした。最も近かったのはドワイト・アイゼンハワーで、1953年2月から1955年12月までの間の平均は4.3パーセントでした。(下表参照)


ちなみに雇用は景気の指標の中でも、最も重要なものであり、たとえ他の指標が悪くても雇用に関する指標である、失業率が低ければ、及第点といえるほど重要なものです。

景気拡大期に行われた直近の12回の大統領選では、現職大統領が常に2期目を目指し、常に勝利を収めています。経済がこのまま好調を続ければ、民主党がトランプを退けることは極めて難しいです。

トランプ再選の可能性を支持する第2の根拠は、民主党がトランプに優る選択肢を提示できていないことです。

いま民主党の大統領候補指名争いの先頭集団には、4人の有力候補がいます。ジョー・バイデン前副大統領は全米の支持率調査で首位を維持しているが、77歳と高齢であることが深刻な弊害を露呈しています。選挙活動で訪れている州の名を頻繁に間違えたり、討論の最中にとりとめのない発言をしたりという具合です。

民主党の候補者が勝った場合、通商面で不確実性がなくなるかもしれないですが、人権問題で中国との関係がより厳しくなる可能性があります。

候補指名を目指す20人のほとんどは、トランプ氏が中国と関税を掛け合うことで農家や消費者、企業が痛めつけられていると批判するものの、ではどんな別のやり方をするのかについて意見が統一されていません。

結果として国際金融市場が動揺し、米消費者が中国からの輸入品価格上昇に直面したり、農家が最大の輸出市場を失う事態になっているのに、各候補者から出てくるメッセージは付け焼刃的であったり、時には支離滅裂な内容にとどまっています。

トランプ氏の側近らは、同氏の中国に対する強硬な態度は支持基盤を離反させず、むしろ活気づかせると主張しています。ただ貿易戦争での中国の報復措置により、与野党の支持が伯仲しているウィスコンシンやペンシルベニア、ミシガンなどの農家や製造業が2年にわたって痛手を受けており、トランプ氏にとって対中戦略が再選のより大きなリスクとなってきた様相です。

一方民主党も議会ではずっと中国に批判的で、米国の経済と安全保障が脅かされているとの立場を取ってきました。そこで大統領選に出馬した面々は、強引なトランプ氏と同じ手法とみなされることを避けつつ、独自の対中強硬策を打ち出すことに苦労しています。

対中通商政策はそのまま、民主党内の穏健派と急進派の相違も浮き彫りにしています。例えば穏健派でインディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏やベト・オルーク元下院議員は、トランプ氏が導入した関税の完全撤廃に動こうとしています。逆に急進派のバーニー・サンダース上院議員は関税が中国を屈服させる有効な武器だと評価し、エリザベス・ウォーレン上院議員が示した通商政策はトランプ氏と同じぐらい保護主義的と受け止められています。

対中強硬路線を崩さないトランプ大統領

それでも民主党の大統領候補指名を目指す人々の大半は、そのイデオロギーが何であれ、中国問題に慎重な態度を崩していません。

何しろピュー・リサーチセンターが8月に実施した世論調査では、米国民で中国に負の感情を持っている割合は60%と、昨年の47%から上昇したのです。トランプ氏の中国たたきに効果があるという証拠が出ています。

実際、16年の大統領選でトランプ氏が一気に台頭した原動力は、同氏が中国への敵意を示し、対決を約束したことでした。また米国内で工場の仕事がなくなり、地域経済が停滞するのを目にした多くの有権者の共感を呼んだのが、グローバル化や自由貿易に対する同氏の露骨な反感です。

トランプ氏はそうすることで、グローバル化は米国の労働者を犠牲にして多国籍企業を太らせている、というサンダース氏やウォーレン氏らの進歩派がずっと掲げてきた主張を取り込んだのです。

米国民が反中国のメッセージを待ち構えているのは間違いないです。しかし民主党側の出すメッセージは巧みで戦略的でなければならないです。さもないとトランプ氏に主導権を渡すことになるでしょう。この面で民主党の候補指名レース参加者が差別化を図るのは簡単ではなく、サンダース氏やウォーレン氏の通商問題に関するメッセージは、トランプ氏と違うとは一般有権者にみなされていません。

甘い期待を抱く習近平

以上のようなことを考えると、トランプ氏の再選が50%以上であると見るほうが良いでしょう。さらに、仮に番狂わせが起こって、民主党の候補者が大統領になったとしても、議会は超党派で、中国強硬派が多く、しかも民意も色濃く反中的であることから、次の大統領も中国に対峙し続けることでしょう。

トランプの再選がなかったにしても、米中関係が元のようになることは考えられず、習近平は引き続き厳しい対応に迫られることでしょう。

習近平は、未だ対中国冷戦はトランプ政権がどうのこうのではなく、最早米国の意思になったことを直視できず、甘い幻想を抱いているようです。

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2017年1月6日金曜日

【釜山・慰安婦像設置】菅義偉官房長官会見詳報 韓国・釜山の慰安婦像設置に対抗措置 菅氏「日韓関係に好ましくない影響」「国と国として約束、履行してほしい」―【私の論評】先進国になれなかった韓国は、中所得国の罠にはまり発展途上国となる(゚д゚)!


記者会見で駐韓大使の一時帰国などを発表する菅官房長官=6日午前、首相官邸

 菅義偉官房長官は6日の記者会見で、韓国・釜山での慰安婦像設置を受け、「極めて遺憾だ」として駐韓日本大使の一時帰国など4項目の対抗措置を発表した。会見の詳報は以下の通り。

     ◇

 一昨年の日韓合意において、慰安婦問題が最終的で不可逆的に解決される、このことを確認をしている。それにも関わらず、昨年の12月30日、韓国の市民団体によって、釜山の日本国総領事館に面した歩道に慰安婦像が設置されたことは、日韓関係に好ましくない影響を与えるとともに、領事関係に関するウィーン条約に規定する領事機関の威厳を侵害するものと考えており、規定に照らして極めて遺憾だ。

 これを受けてわが国は当面の措置として、(1)在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ(2)長嶺安政・駐韓国大使および森本康敬・在釜山総領事の一時帰国(3)日韓通貨交換(スワップ)の取り決めの協議の中断(4)日韓ハイレベル経済協議の延期。その措置を採ることを決定した。

 日本時間の本日未明、米ワシントンで杉山晋輔・外務次官から韓国の林聖男(イム・ソンナム)外務第1次官に対し、慰安婦像の設置に強く抗議するとともに、慰安婦像の早急な撤去を強く申し入れた。政府としては慰安婦像を早急に撤去するよう、引き続き韓国政府や関係自治体に強く申し入れをしていく。今後とも日韓それぞれが合意を責任を持って実施していくことが極めて重要だ。引き続き韓国側に対し、慰安婦像の問題を含め、合意の着実な実施を求めていきたい。

 --かなり強い対抗措置だが、必要だと判断した理由は

 「まず日韓合意を考えたときに極めて問題だ。さらにはウィーン条約の規定を考えたときにも極めて問題がある。政府としては互いの合意を責任を持って努力するのは大事という意味において遺憾であるという中で、今回4点について措置を採る」

 --日本政府は韓国や関係自治体に撤去を求めているが、なかなか韓国側が動かないと判断したのか

 「現状について日本政府として極めて遺憾だ。このことを4項目によって形として示した」

 --当面の措置ということだが、実際に撤去されるまで継続するのか

 「状況を総合的に判断して対応していきたい」

 --日本政府は日韓合意を履行することが重要だという方針で韓国の出方を見守っていたと思うが、これまでの韓国政府の対応に満足できないという思いか

 「わが国としては合意を着実に履行してきた。そういう立場に変わりはない。引き続いて慰安婦像の問題を含めて合意の着実な実施を韓国政府に求めていきたい」

 --韓国政府は問題解決に消極的だが、日本の強い姿勢によって韓国政府が積極姿勢に転じるか

 「いずれにしろ、わが国の立場を明確に示した。互いに合意の着実な実施をしていく。これは当然のことだ」

 --ここまで強い措置を講じることで、今後の日韓関係への影響は

 「日本と韓国はまさに隣国であり、極めて重要な国だ。そういう中で今回、このような措置を採らざるを得なかったのは極めて残念ではあるが、互いに国と国として約束したことは履行してほしい。そういう強い思いで実施した」

 --杉山氏から韓国の林氏にすでに内容は伝えているのか

 「わが方から韓国側に対し、この問題解決のために累次に渡って適切な対応を採ることは強く求めてきた。しかし、現時点において事態が改善しない。そういうことで韓国側に今申し上げた措置を採ることを通報している」

 --措置の実施は本日付か

 「すでにそうした措置を採ることを先方には通報している」

 --日本の措置に対して韓国政府からの反応は

 「承知していない」

 --改善が見られなかった場合はどうするか

 「いずれにしろ当面の措置という形で、このような措置を採らさせていただいた」

 --日韓合意では韓国政府は慰安婦像の撤去に「努力する」としており、確約はしていない。確約はしていないが、努力を怠っているということか

 「日韓間で合意した。そのことについて互いに誠実に実行することになっているので、そこはしっかり合意を実施してほしいとの思いの中で今日まで強く求めてきている。今回、新たな釜山市の件を受けて、政府としてこのような措置を採った」

【私の論評】韓国は、中所得国の罠にどっぷりはまり発展途上国となる(゚д゚)!

日韓合意に関しては、昨年から特に保守層の一部から、大きな批判がありました。どうせ韓国は、合意など守らないのだから、合意などしても無意味というものでした。しかし、この見方は根本的な間違いでした。

この一部の保守層の、典型的な最近の意見を以下に掲載します。
日韓合意については、現在名前の挙がっている大統領選候補者全員が「破棄」を主張しており、その時々の政権の都合で合意やら条約やらを反故にする、韓国人の感覚を日本側はよくよく知る必要があるのです。この件については、「我が国の父祖の名誉を貶めるもの」として国内保守層の猛反対を押し切り、ついには韓国と合意した安倍総理の責任は免れないものと思います。少なくとも彼は一体韓国の何処をもって、合意を順守する国であると判断したのか、お得意の記者会見で国民に対し説明すべきなのです。
確かに、日韓合意が締結される前までは、日韓基本条約を締結はしていたものの、日本政府は日韓両国の問題は解決済みしか言えませんでた。そうして、韓国は解決していないといい続けのでした。


しかし、昨年の日韓合意により日韓基本上やの賠償請求権協定の「再交渉できる」としている協定にあった「穴」が潰されたのです。日本は合意を履行済みですから、韓国政府に約束を守れといえるようになったし、約束を守らなければ報復措置も取れるようになったのです。


日韓基本条約の大きな問題点は、賠償請求権協定が韓国側非公開であったことであり、それを日本側も容認していたことにありました。これは、二国間の条約であり、秘密協定に近いものなので、外交カードとしては、利用しにくかったのです。そもそも、日韓基本条約が韓国で公開されたのは条約締結から40年過ぎ2005年でした。しかし一昨年の日韓合意は国際社会に開かれたカードであり、以前とは 状況が全く違います。

この違いを日本の一部の保守層や、韓国政府や多くの韓国人は理解していなかったのでしょう。しかし、朴槿恵辞任デモをするような一般韓国人は別にして、韓国政府までがこれを理解していないというのは、全く言い訳になりません。愚かとしか言いようがありません。

一昨年末の電撃的な日韓慰安婦合意について、日本政府は「最終的かつ不可逆的な解決」と胸を張ったのにはこのような背景があったのです。しかしながら、このことに気づかない韓国サイドの反応は予想どおりでした。

元慰安婦とされる女性たち
元慰安婦や韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)だけでなく、梨花女子大などの学生や一般市民まで次々と合意に反発して立ち上がっていました。

いわく、「長年苦しんできた歴史を、ちっぽけな金額で売り飛ばされてたまるか」などと、かえって怒りを増長させてしまったようにも見えました。

親北朝鮮の最大野党「共に民主党」の文在寅代表は「今回の屈辱的な合意は無効」と断じていました。

親北朝鮮の最大野党「共に民主党」の文在寅代表
反日で国を束ねる韓国にとって、慰安婦問題は解決されては困る問題であり、何があっても永遠に燃え盛る炎のようなものです。李明博前大統領は竹島を反日カードにしましたが、朴槿恵大統領は慰安婦問題を普遍的な「女性の人権問題」として世界にアピールしてきまし。保守派の彼女には、親北朝鮮の野党支持者を取り込むねらいもあったのでしょう。

朴槿恵にとって慰安婦問題は政権を維持する最大の反日カードなのに、なぜ日本との合意を急いだのでしょうか。

最大の理由は米国の圧力でした。南シナ海の人工島建設やサイバー攻撃など、「力による現状変更」の意志を隠さない中国と政情不安定の北朝鮮は東アジアの安全保障にとって大きな脅威であり、日米韓が緊密に連携する必要があるのですが、「米中二股外交」を展開した韓国は米国の制止を聞かず中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加し、一昨年9月、北京で開催された抗日戦争勝利70年記念行事には朴大統領自ら出席しました。

「慰安婦問題が解決しない限り日韓首脳会談は実現しない」と明言する朴槿恵は米国にとって実に厄介な存在でした。

朴槿恵(左)とオバマ(右)
言うことを聞かない彼女に怒り心頭のオバマ大統領は一昨年10月、ホワイトハウスの米韓首脳会談で日韓友好を求めて朴槿恵を叱責したとされています。会談後の会見でオバマ大統領は「(日韓の)困難な歴史問題が解決されることを望む」と厳しい表情で語りました。

同時に経済的な要因も大きいものでした。ウォン安を背景に輸出で躍進した韓国経済は近年のウォン高と中国経済の減速で大ブレーキがかかってしまいました。韓国貿易協会によると日韓関係の悪化で日韓輸出入総額は2011年の約1080億ドル(約13兆円)から2014年は約860億ドルに減少しました。

今や日本の若者は嫌韓ムード一色です。韓国観光公社などによると、2000年代後半300万人台だった訪韓日本人は現在200万人を割っています。代わりに増えた訪韓中国人はお目当ての品がなく、訪日時のような「爆買い」をしないので当地は潤わなかつたようです。

中国人観光客も、韓国がTHAAD配備を決めたせいで、減少しています。韓国メディアによると、8月の訪韓中国人客は18年ぶりの減少となり、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備が影響しているようだといいます。

焦った経済界から「やっぱり日本だ」との声が噴出しました。一昨年5月、ソウルで開かれた日韓経済人会議で韓国代表は「両国が1つの経済圏を形成し、ともに成長、共同繁栄の時代を構築すること」を提案しました。会議では「日本を追い抜いた」との奢りから停止していた「日韓通貨スワップ協定」の復活や「韓国のTPP加入」などが議題となっていました。

米国と経済界から突き上げられた朴槿恵は孤立を怖れて渋々、日本との関係改善に動き、一昨年11月、ソウルで就任以来初の日韓首脳会談を開催しました。昨年末、朴槿恵への名誉毀損で在宅起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長の無罪判決、韓国憲法裁判所による1965年の日韓請求権協定は違憲との審判請求の棄却も合意を後押ししました。

そうして、朴槿恵も韓国政府も、野党も、多くの韓国人らも、日韓合意も日韓基本合意と同じく、すぐに有名無実にできるものと軽く考えていたに違いありません。

日韓合意を伝えるテレビのキャプチャ画像
彼らは、日韓合意には日韓だけではなくアメリカという第三者が強く関与していることをすっかり忘れていました。そうして日韓合意は、二国間だけの合意ということではなく、世界に向けて日韓は合意したという内容を明らかにしたものです。

これを守らないということは、韓国はまともな国ではないと、自ら世界に向かって、喚き散らすようなものです。全く愚かです。

日韓合意をしたときから、このような日がいずれ来ると思っていましたが、やはりそうなりました。

今後韓国は、朴槿恵の後の大統領も候補者全員が朴槿恵と同程度からそれ以下の無能ですから、経済はますます悪化することでしょう。北朝鮮、中国問題の悪化から、地政学的な韓国の価値は大きく上がったわけなのですが、同盟関係における信頼性が下がり続けているので、無価値化しつつあります。日本としては、日本海の安全を考えると軍事的敵対は出来ませんが、かといって支援する意味もありません。

今後誰が大統領になって何をしようとも、経済は破綻し、いずれまた通貨危機を迎えることになることでしょう。そうして、経済はIMFの管理下に再び入り、安全保障的にも問題ありとしいうことで、国連の信託統治領になり、米国、英国、その他複数の国々が軍隊を派遣して、統治することになるものと思います。

そうして、中所得国の罠にズッポリとはまり、先進国になることなく、発展途上国にまた逆戻りすることでしょう。取るに足らない国になっても、「取るに足らない国になってしまったのは、日本のせいだ、日本が悪い」と反日を繰り返すことでしょう。が、それを何度繰り返えしたとしても、経済は好転も成長もせず、世界の他の国々から呆れ果てられ、疎んじられる存在になることでしょう。

発展途上国になった韓国では、慰安婦問題で暴れた過去を懐かしむことでしよう。「あー、この国はあの時何とかならなかったものか」と。しかし、自ら招いた結果であり、韓国はそれに甘んじるしかないのです。

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