検索キーワード「セカンダリーサンクション」に一致する投稿を日付順に表示しています。 関連性の高い順 すべての投稿を表示
検索キーワード「セカンダリーサンクション」に一致する投稿を日付順に表示しています。 関連性の高い順 すべての投稿を表示

2024年11月22日金曜日

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣

渡邉哲也(作家・経済評論家)

まとめ
  • 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。
  • 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他の4名は起訴されなかった。
  • 岩屋外務大臣が賄賂の受取人に含まれ、賄賂性を否定しつつも寄付金を返金した。
  • 日本では公訴時効が成立しているが、米国では時効が適用されず、収賄側も疑いの目で見られる。
  • 米国司法省による公表により、日本政府高官への賄賂提供が国際的に知られることとなった。

BITマイニング(BIT Mining Ltd)は、主に暗号通貨のマイニング運用事業を行う

 米国司法省は最近、500ドットコム(現在のビットマイニング株式会社)とその元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い、司法取引を結んだことを発表しました。この事件は、日本政府関係者への賄賂提供に関与したとして捜査されており、特に日本側では5名が資金を受け取ったことが確認されていますが、立件されたのは秋本司被告のみです。残る4名については、職務権限の有無や嫌疑不十分を理由に起訴されていない状況です。

 記事によると、日本では贈収賄の成立に職務権限が重要な要件とされており、他の4名に関してはその理由が明確にされていないものの、時効が成立しているため、法的な責任を問うことはできません。特に、収賄に関しては5年、贈賄に関しては3年の時効が適用されており、政治資金規正法に基づく外国献金の禁止についても時効が成立しています。

 しかし、このIR(統合型リゾート)に関連する疑惑は、日本国内では解決したかのように見えますが、米国ではまだ続いているという状況が浮かび上がります。500ドットコムは中国資本の米国企業であり、元CEOも米国に居住していたため、米国の司法制度のもとで問題が処理されることになりました。

 特に注目すべきは、岩屋外務大臣が賄賂の受取人の一人であったことです。500ドットコム側は、法廷で賄賂性を認める供述を行っており、一方で岩屋大臣は賄賂の受け取りを否定しつつ、別の自民党議員から寄付された100万円については「中国企業からの原資が含まれていた可能性は否定できない」として返金したと報告されています。ここで、岩屋大臣は企業献金を受け取れる政党支部での受け取りを認めている点が重要です。このことは、彼が100万円を無知で受け取ったとは考えにくいことを示唆しています。

 ただし、日本国内の公訴時効がすでに成立しているため、倫理的な問題は別として、国内の司法においてはこの件は終わった話とされています。しかし、米国の司法制度では時効が適用されず、500ドットコムと元CEOが有罪答弁をしたことにより、贈賄側が有罪を認めた以上、収賄側も疑いの目で見られることになります。このため、米国から見れば日本の外務大臣は国外逃亡中の容疑者という立場になるのです。

 さらに、この情報が米国司法省によって国際的に公式にリリースされたことで、実名は明かされていないものの「日本政府高官への賄賂提供」という形で公表されました。このため、各国の外交や司法当局が調査を行えば、具体的に誰が関与しているかはすぐに明らかになるでしょう。結果として、日本の外務大臣が米国法における収賄容疑者として名指しされることになったのです。この一連の流れは、日本における政治資金や贈収賄の問題に対する国際的な視線を一層厳しくするものとなるでしょう。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

まとめ
  • 米国が岩屋外務大臣に対して示した態度は、彼の賄賂疑惑が日本の外交政策や安全保障に重大な影響を及ぼす可能性を示唆している。
  • 岩屋外務大臣の信任が揺らぐことで、日米間の信頼関係が損なわれ、安保上のリスクが高まる。
  • 米国は国際的な腐敗防止に強い姿勢を持っており、過去の贈収賄事件が日本企業の信頼性に影響を与えた。
  • トランプ政権の成立により、米国の要求が厳しくなり、日本企業に対するセカンダリーサンクションのリスクが増大する。
  • 残念ながら、現政権の制裁リスクに取り組む能力には期待でぎす、当面日本の未来を守るためには、企業の自立した取り組みが不可欠である。

岩屋外相

米国が岩屋外務大臣に対して示した態度は、明確な警告である。この案件は、米国が国際社会に向けて「ノー」を突き付けたことを示しており、彼の賄賂疑惑が日本の外交政策や安全保障に重大な影響を与える可能性を秘めている。

まず、岩屋外務大臣が賄賂の疑惑に巻き込まれたことは、彼の国際的な信任に直接的な打撃を与える。米国は日本をアジアにおける重要な同盟国と位置付けており、特に安全保障や経済協力の面で深い関係を築いている。日米安全保障条約は、その重要な枠組みを提供しているが、信頼できる指導者の存在が不可欠である。岩屋氏のリーダーシップが疑問視されることは、米国にとって大きな痛手となる。

次に、安保上のリスクについて考えてみよう。米国は北朝鮮の核問題や中国の軍事的拡張に対処するため、日本の協力を重視している。日米共同訓練や防衛協力は地域の安定維持に欠かせない要素であり、これらが円滑に進むためには強固な信頼関係が必要だ。岩屋外務大臣が賄賂の疑惑に関与している場合、彼のリーダーシップが揺らぎ、日米間の信頼関係が損なわれる可能性がある。これは、米国のアジア政策にとって深刻なリスクをもたらすことになる。

さらに、米国は国際的な腐敗防止に強い姿勢を示している。海外行為防止法(FCPA)は、米国企業が外国の公務員に賄賂を提供することを禁じており、この法律は国際的なビジネスにおける透明性を確保するための重要な手段だ。過去の事例として、2014年に発覚した日本の大手商社による贈収賄事件がある。丸紅がインドネシアの国営企業関係者に賄賂を支払ったことが発覚し、約8,800万ドル(約90億円)の罰金を科された。この事件は、日本企業の国際的な信頼性に深刻な影響を与え、国際社会における透明性を高める試みの一環として注目された。

米国がこのような問題を公にすることで、国際社会からの監視が強化され、岩屋外務大臣に対する圧力が増すことになる。彼の行動は今後の外交交渉に影響を及ぼすだろう。米国は同盟国の政治家が腐敗に関与することを警戒しており、そのために日本のリーダーシップが国際的に信頼されなくなることを避けたいと考えているのだ。

結論として、米国の態度は岩屋外務大臣の行動が同盟国としての信頼性を損ない、安全保障や外交上の不利益をもたらすリスクがあることを示している。このような状況は国際的な信頼を維持するための重要な要素であり、米国はその立場を一貫して貫く必要がある。

米国ではトランプ政権が成立・・・・

また、トランプ政権の成立は、岩屋外務大臣に対する米国の態度に大きな影響を与えただろう。トランプ政権は従来の外交政策から逸脱し、同盟国に対して厳しい要求をすることが多かった。その一環として、多国間主義を軽視し、単独行動を重視する姿勢が際立っていた。特に、中国や北朝鮮に対する強硬な姿勢がアジア地域における影響力を強め、日本に対する貿易や安全保障への要求も強化されることが予想される。

今後、米国による日本企業に対するセカンダリーサンクション(二次制裁)の可能性も高まる。特に、米国の政策が特定の国や行動に対して強硬な姿勢を取る際、関連する企業に対して制裁を行うことが考えられる。中国やイラン、ロシアに対する制裁がその例だ。日本企業が米国の制裁対象となる国との取引を行った場合、経済的影響を受けるリスクが高まる。

したがって、米国の外交政策や制裁の動向を注視することが重要である。安倍政権と異なり、石破政権のセカンダリーサンクションに対する備えの期待は薄い。これにより、日本企業は自らの防衛策を強化しなければならない。

第二次石破政権

国際的なビジネス環境が厳しさを増す中、企業は米国の制裁に巻き込まれるリスクを軽減するため、コンプライアンス体制やリスク管理を整える必要がある。具体的には、サプライチェーンの見直しや取引先の選定における慎重な判断が求められる。また、情報収集や国際情勢の把握も不可欠である。企業は自らの利益を守るため、積極的に行動し、リスクを最小限に抑える戦略を立てることが必要だ。このような状況下では、企業の自助努力がますます重要になる。

つまり、岩屋外務大臣の賄賂疑惑は、単なる個人の問題にとどまらず、日本の外交政策や国際的な信頼性に深刻な影響を及ぼす可能性がある。今後の展開を注視しつつ、企業は自らの防衛策を講じ、リスクを回避するための準備を進めることが求められている。日本の未来を守るためには、企業の自立した取り組みが不可欠である。もう、安倍政権時代のような政府による防波堤の役割は期待できない。

【関連記事】

トランプ再登板で早くも始まった「世界の大転換」…EUが「ロシア産」天然ガス「米国産」に乗り換え、中国資本の企業にも「脱中国」の動きが!―【私の論評】トランプ政権下での日本の対応:安倍首相の成功と石破首相辞任後の課題 2024年11月14日

過去最高を更新し続ける米国の石油生産 何が要因なのか?―【私の論評】トランプ大統領再登場で米国エネルギー政策が激変!新たな世界秩序の幕開け 2024年11月12日

トランプ前大統領の圧勝とその教訓―【私の論評】トランプ再選がもたらす日本への良い影響:経済、安保、外交、社会的価値観と一貫性 2024年11月10日

石破政権で〝消費税15%〟も 自民総裁選は好ましくない結果に…国際情勢・国内の課題、期待できない〝財務省の走狗〟―【私の論評】岸田政権の国際戦略転換と石破氏のアジア版NATO構想:大義を忘れた政治の危険性 2024年10月3日

“裏切り者”石破氏の党内評価急落…「ポスト安倍」争い、岸田氏が逆転リード―【私の論評】トンデモ歴史観・経済論の信奉者石破氏は総理大臣の器にあらず 2017年8月1日

2024年11月14日木曜日

トランプ再登板で早くも始まった「世界の大転換」…EUが「ロシア産」天然ガス「米国産」に乗り換え、中国資本の企業にも「脱中国」の動きが!―【私の論評】トランプ政権下での日本の対応:安倍首相の成功と石破首相辞任後の課題

トランプ再登板で早くも始まった「世界の大転換」…EUが「ロシア産」天然ガス「米国産」に乗り換え、中国資本の企業にも「脱中国」の動きが!

まとめ
  • トランプ再選後、メキシコからアメリカを目指す移民キャラバンの人数が半減し、多くが強制送還を懸念して帰国を選択した。
  • カタールがハマス政治指導部の国外追放に同意し、サウジアラビアはトランプ政権の復活を歓迎する姿勢を示した。
  • EUがロシア産LNGからアメリカ産LNGへの切り替えを進める意向を示し、トランプ政権下でアメリカがエネルギー生産国としての地位を強化する動きが見られる。
  • 中国から東南アジア諸国への生産拠点移転が加速し、サプライチェーンの再編が進行している。
  • 今まで米中の狭間で態度を決めかねていた国々が、さらなる路線変更に動いていくのは必然であり、新しい時代が始まりつつある。


トランプの再選後、世界各地で急速かつ顕著な変化が見られている。まず、メキシコの移民キャラバンに大きな影響が出た。選挙結果が明らかになるとすぐに、キャラバンの人数が半減したのである。これは、多くの移民がアメリカへの入国後すぐに強制送還される可能性を懸念し、やむを得ず母国への帰国を選択したためだと考えられる。トランプ政権が正式に発足した後は、移民の流れがさらに細くなることが予想される。これにより、アメリカ国内での移民問題はますます複雑化し、社会的緊張を引き起こす要因となるだろう。

中東地域でも重要な動きが見られた。カタールは、これまでハマスに近い立場を取り、ハマス政治指導部を国内に居住させ、その事務所の設置を認めていた。しかし、トランプの当選を受けて、アメリカ側の要請に応じ、自国に拠点を置くハマス政治指導部の国外追放に同意する動きに出た。さらに、ハマスとイスラエルの双方が停戦に向けて真剣に交渉する意思がないことを理由に、停戦交渉も中断した。このような変化は、中東地域の政治ダイナミクスにも大きな影響を及ぼす可能性がある。

サウジアラビアの反応も注目に値する。サウジアラビアのニュースサイト「アラブニュース」は、「サウジアラビアがアラブ諸国をリードし、トランプ氏を祝福」との見出しの記事を掲載した。これは、トランプ政権の復活を高く評価していることを示している。バイデン政権時代のサウジアラビアの冷淡な態度と比較すると、この変化は顕著であり、サウジアラビアが再びアメリカとの関係強化を図る姿勢を示している。

エネルギー政策においても大きな転換が起きている。EUの行政機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、トランプとの電話会談後、ロシア産LNGをより安価なアメリカ産LNGに切り替える意向を示した。これは、ロシア産エネルギーの排除を目指す動きの加速を意味している。トランプは再びパリ協定から離脱し、アメリカを世界一のエネルギー生産国にする姿勢を鮮明にしており、この流れは欧州にも波及している。

経済・産業面では、中国からの生産拠点移転が急速に進んでいる。これは中国資本の企業も例外ではない。タイ、マレーシア、ベトナムなどの東南アジア諸国が新たな投資先として注目されており、これらの国々は中国からの投資を米国向け輸出の機会として捉えている。この動きは、世界的なサプライチェーンの大規模な再編につながる可能性があり、新興市場へのシフトが進むことで経済構造にも変化が生じるだろう。

インドではトランプ支持が強く、多くの有識者がトランプ氏の方が「はるかに、はるかに良い」と評価している。この背景には、バイデン政権の弱腰外交への不満やインド自身の民主主義に対する批判的な態度がある。特にバイデン政権によるインドへの対応には、不満や疑念が広がっており、その結果としてインドとアメリカとの関係にも影響が出てくる可能性がある。

トランプ政権の特徴として、他国の政治体制に干渉せずに付き合いつつ、必要時には頼りになる存在であることが挙げられる。第一次政権時代から政治体制にとらわれず各国と関係を築く姿勢を示してきた。同時に、強い力を見せることでしか平和を保ちえない現実を踏まえた行動を取ってきた。このような外交スタンスは、多くの国々から信頼される要因となっている。

今後の展望としては、世界的なサプライチェーンの再編がさらに進み、権威主義国家の経済的孤立化が進行すると予想される。また、これまで米中の狭間で態度を決めかねていた国々がさらなる路線変更に動く可能性も高い。このような変化は、新たな国際秩序の形成につながる可能性があり、その影響は長期的にも続くことだろう。

トランプ再選後わずかな期間でこれほど多くの変化が見られることは、世界が新しい時代へと突入していることを示唆している。権威主義国家が世界経済から切り離されていく流れや、新興市場へのシフトなど、多岐にわたる変革は今後も続くと考えられる。各国政府や企業は、この新たな国際情勢に適応するため、新しい戦略や政策を模索する必要性に迫られている。今後もこのような動向には注目し続けるべきであり、その展開によって世界経済や地政学的状況にも大きな影響を与えることになるだろう。

新しい時代が始まりつつある。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】トランプ政権下での日本の対応:安倍首相の成功と石破首相辞任後の課題

まとめ
  • 共和党がホワイトハウスと上下両院を掌握し、トランプ政権にとって予算・法案成立が加速する見込み。
  • トランプ政権の高関税政策が日本の対中サプライチェーンと対米輸出に深刻な影響を及ぼす可能性。
  • トランプ政権の防衛費負担要求や台湾問題への対応が、日本の防衛体制に大きな不安要素を生む。
  • 安倍元首相は対中・対米政策で協調を維持し、日本の利益を守る手腕を示した。現在の日本は、こうした安倍政権の知恵を学ぶべきである。
  • 石破政権は早期退陣し、自民党は新たな総裁のもとで、日本は変化する国際環境に適応しつつ、自国の利益を守り地域の安定に貢献する役割を果たしていく必要がある。


「トリプルレッド」の到来だ。米国大統領選挙と同時に行われた議会選挙において、共和党が上下両院とホワイトハウスを制した。下院では218議席以上、上院では52議席を確保し、トランプ次期政権に追い風が吹く。この結果、予算や法案の成立が加速することが期待される。しかし、これは単なる好機ではなく、諸刃の剣でもある。

トランプ氏の公約実現が容易になる一方で、議会の監視機能は弱まる懸念がある。共和党がトリプルレッドを形成するのは2016年以来であり、この状況は新たな時代の幕開けを告げている。日本も、この激流に身を投じねばならない。

特に対中政策の転換は急務だ。トランプ氏は中国に対して60%超の高関税を課す方針を示している。この政策が実現すれば、日本企業の多くが中国に持つ生産拠点や、日中間のサプライチェーンに大きな影響が出る可能性がある。特に、自動車産業などは風前の灯火となりかねない。また、トランプ氏は日本を含む世界各国に10%のユニバーサル・ベースライン関税を賦課することを示唆しており、これが実現すれば、日本の対米輸出にも深刻な影響を及ぼすことが予想される。

安全保障面でも暗雲が立ち込めている。トランプ氏は同盟国に対してより大きな防衛負担を求める可能性が高い。具体的には、日本に対してGDPの2%を超える軍事費負担を要求してくることが考えられる。

さらに台湾問題についても懸念が広がっている。トランプ氏の台湾に対する姿勢は不透明であり、台湾防衛に消極的な姿勢を示せば、中国の台湾侵攻を誘発しかねない。この状況は日本の安全保障環境を著しく悪化させるリスクを孕んでいる。

そして、最悪のシナリオとしてセカンダリーサンクション(2次制裁)の脅威も存在する。トランプ氏が中国に対して厳しい経済制裁(1次制裁)を課した場合、中国と取引のある日本企業もその対象となる可能性がある。具体的には、中国企業との取引が制限されたり、中国関連の金融取引が制限されたり、特定の技術や製品の対中輸出が禁止されることが考えられる。これらのセカンダリーサンクションが実施されれば、日本企業は中国市場へのアクセスを失うリスクがあり、多くの企業が深刻な経営危機に陥る恐れがある。

最後に、トランプ氏の外交政策は予測不可能な面があり、突然の政策変更によって日本の外交・経済戦略が混乱するリスクも存在する。このような状況下で、日本は自国の利益を守りつつ、米国との同盟関係を維持するバランスの取れた外交戦略を構築する必要がある。同時に、経済面では過度の中国依存から脱却し、サプライチェーンの多様化を進めることも重要である。

ただ、日本を含む西側諸国としては、世界秩序を自らに都合が良いように作り変えようとする中国と対峙するのは当然のことであり、その点では、トランプ氏と共通の価値観を分かちあうことができる。

そうして、安倍政権を思い返すと、安倍首相は、第一次トランプ政権誕生時には上と同じような危機があったにもかかわらず、トランプ大統領と交渉し、うまく危機を回避して日本の利益を守り抜いただけではなく、米国との協力関係をさらに強化することに成功した。

トランプ大統領(左)と安倍総理

例えば、2019年の日米貿易協定の締結は、両国の経済関係を強化し、トランプ氏の対日貿易赤字への不満を緩和する効果があった。また、安倍元首相は「自由で開かれたインド太平洋」構想を提唱し、トランプ政権の対中政策と足並みを揃えることにも成功した。

現在の日本は、こうした安倍政権の知恵を学ぶべきである。

石破茂首相は就任直後、先月9日に衆院を解散する方針を示した。これは、石破氏がかつて否定的だった憲法7条に基づく解散となる。石破氏は総裁選中、解散権の行使には慎重な姿勢を示していたが、首相就任後に方針を転換した。この急激な方針転換について、石破首相は「国政の審判を経ないまま新政権ができたときに(国民の)判断を求めるのも、69条の趣旨に合致するだろう」と説明している。

しかし、この説明は石破氏がこれまで主張してきた「7条解散否定論」と矛盾しており、批判を招いている。さらには、解散総選挙の結果は、惨敗だった。この程度の負け方だと、過去の例では、自ら辞任するのが通常である。

以上の状況を踏まえると、石破政権は早期に退陣し、自民党は新たな総裁のもとで対中政策を含む外交・安全保障政策を再構築することが急務だ。新政権はトランプ新政権との関係構築や対中政策の強化、防衛力の増強など、喫緊の課題に迅速に対応しなければならない。


このような政権交代は、日本の国益を守り、変化する国際情勢に適切に対応するためには不可欠である。新たな総裁のもとで、日本は変化する国際環境に適応しつつ、自国の利益を守り地域の安定に貢献する役割を果たしていく必要がある。

日本は今、歴史的な決断を迫られている。ここで誤れば、先人たちが築き上げた国の礎を我々自身が壊すことになるだろう。守るべきものを守り抜く、その覚悟が問われているのだ。

【関連記事】

過去最高を更新し続ける米国の石油生産 何が要因なのか?―【私の論評】トランプ大統領再登場で米国エネルギー政策が激変!新たな世界秩序の幕開け 2024年11月12日



“トランプ氏圧勝“の可能性「内気なトランプ支持者」を掘り起こすと激戦州で優位に…ハリス陣営はパニック!?―【私の論評】誰に投票するのか、自らの目で、耳で、そして頭で考え抜け 2024年10月22日

2022年11月9日水曜日

自民党議員が警視庁マークの「中国人女性」に溺れて首相に紹介 夫婦関係は危機に、情報漏洩リスクも―【私の論評】岸田政権は、日本の警察拠点と指摘された施設にを徹底的に調べるべき(゚д゚)!

自民党議員が警視庁マークの「中国人女性」に溺れて首相に紹介 夫婦関係は危機に、情報漏洩リスクも

中国文化センター開所式で挨拶する松下新平自民参議院議員

中国の「海外警察」が日本にも

 英国の公共放送BBCが先ごろ〈中国、警察の出先機関を外国で設置か〉と報じたが、なんとこの「違法拠点」は日本にも設置されている。さらに、自民党の松下新平参院議員(56)は、登記されている問題の団体の常務理事である40代の中国人女性と“密接”な関係にある上、この団体の「高級顧問」という役職に就任していたというのだ。

 すでにオランダやアイルランドなどは、中国の「海外警察」に対し、違法拠点として閉鎖を命じているというが、中国の公安局が中国国内向けに公開した海外拠点のリストには東京都千代田区の住所が記されている。その住所には「一般社団法人日本福州十邑(じゅうおう)社団聯合総会」(以下、福州十邑聯合)という団体が登記されており、中国の公安局が福州十邑聯合を隠れみのに「海外警察」の活動を行っている懸念があるのだ。

警視庁がマークする人物を秘書として雇用

 今回、問題の核心にいるのが、福州十邑聯合の常務理事に就いている「呉麗香(仮名)」という40代の中国人女性。表向きは日本でナマコの貿易商を生業にしている。だが実は、松下議員と密接な関係にあるとして、警視庁にマークされてきたという。

 かつて総務副大臣をつとめ、党政調副会長や外交部会長なども歴任してきた参院4回生の松下議員は、呉氏を「外交顧問兼外交秘書」として雇い、名刺を持たせ、参院議員会館に自由に立ち入りできる「通行証」まで取得させていた。

 「警視庁公安部はかねて呉氏との関係から松下議員を監視対象にしてきました」

 とは警察庁関係者。

 「何しろ松下事務所の“外交顧問”として議員と行動を共にし、議員が外務省や経産省の役人を呼びつけて行わせるレクチャーにも同席するなどしている。行政府の機密情報や立法府の重要事項が漏洩している危険性を懸念せざるを得ません」

 「通行証」の写真に見えるごとく美貌の呉氏。松下議員は数年前から自身の夫婦関係を危うくするほど彼女に入れあげていた。2020年10月には、首相官邸で開かれたパンケーキの試食会にも呉氏を帯同しており、当時の菅義偉総理に引き合わせている。

 さらに、他ならぬ松下議員自身も福州十邑聯合の“高級顧問”に収まっていたというから、異常事態である。

「娘は再三再四、注意していた」

 また、松下議員は、呉氏の登場により自身の夫婦関係を崩壊させようとしていた。

議員の選挙区である宮崎県内に暮らす妻の母親は、こう憤る。

「3、4年前まで娘はひとり宮崎に残って地元のあいさつ回りをしていたのですが、急に松下から“もうお前は一切、仕事に出るな”と言われるようになったそうです。その頃に、呉と懇意になったんでしょう。松下から“お前がいるから大臣になれない”なんて言われたと娘からは聞いています」

 妻は3人の娘を育て上げ、地元・串間市の元市長と血縁であることから議員本人に成り代わって選挙を戦ってもきた。現在、夫婦は離婚調停中だという。

 「あとは松下が判を押してくれればいいだけなのに押してくれない。自分の体裁を守るためなんでしょう。娘は、得体の知れない中国人の呉が政治家である松下の近くにいることについて再三再四、注意していた。でも、彼は全くその言葉を聞き入れず、いつも呉の言うがまま。事務所で彼女の気に食わない人がいれば、松下がその意を受けて辞めさせるなんてこともあったそうです」(同)

一連の問題について松下議員を質すと、以下の回答が。

 「お尋ねの女性と議員には男女関係はありません。また、現在、当事務所において(参院議員会館の)通行証を交付している人物に上記女性はおりません」

 11月10日発売の「週刊新潮」では、国際的に問題となっている中国の「海外警察」問題と、日本拠点の実態について詳報する。

「週刊新潮」2022年11月17日号 掲載

新潮社

【私の論評】岸田政権は、日本の警察拠点と指摘された施設にを徹底的に調べるべき(゚д゚)!

下の写真は、宮崎県選出の松下新平議員。その左側に居るのが日本国内にある中国警察のトップである女性です。松下氏は先の選挙で当選してしまったのですが、宮崎県民には他に選択肢が無い状況でした。宮崎の自民党は早急に後継者を準備すべきです。よろしくお願いします。


「呉麗香(仮名)」とされる方の写真を以下に掲載します。

呉麗香とされる写真

話題の怪しい中国女性、中国国内向けの記事だと大々的に写真と名前を出してて驚いてしまいます。 彼女本人による記事で 女性の肩書について「日本参議院議員松下新平事務所外交顧問兼外交秘書、日中福清工商会副会長何麗紅」 と誇らしげに書いてあります。全く隠す気がなく大したもんだと思います。sohu.com/a/424705897_28

以下の写真からすると、松下議員が女性を紹介した首相とは、菅総理のようです。

前列向かって一番右が何麗紅

この件で、中国共産党の悪どさがまた1つ、明らかになったといえます。国際法や他国の主権を無視して、米国や欧州、アフリカ、南米、日本などに「海外警察サービスセンター」と呼ばれる独自の警察拠点を築いていたというのですから、驚きです。犯罪者だけでなく、反体制派の摘発が狙いであるのは確実です。

この問題は、スペインの非政府組織(NGO)「セーフガード・デフェンダーズ」が9月12日、中国の海外警察サービスセンターの活動を詳細に調査した報告書を公表して、明るみに出ました。 

オランダのメディアが10月25日、最初に報じ、その後、英BBCなども追随して、世界に波紋を広げました。オランダ外務省の報道官は「中国警察の非公式出先機関が存在するのは違法」と語り、当局が調査に乗り出しました。

中国側は「海外在住の中国人のための行政サービス・ステーション」と否定しています。 「110 overseas(海外の110番)~常軌を逸した中国の国境を超えた取り締まり」と題された報告書によりますと、中国福州市と青田市の2つの公安当局が、5大陸21カ国で計54の警察拠点を築いていたというのです。

アイルランドのダブリン、オランダのロッテルダムとアムステルダム、英国のロンドンとグラスゴー、スペインはバレンシアとマドリードに3カ所、米国、カナダ、ナイジェリアといった具合です。

なかには、日本の拠点もあります。報告書には「東京都千代田区神田和泉町〇〇」と所番地まで記され、電話番号も付記されていました。ちなみに、この番地を検索すると、中国福州市の関連団体と思われる一般社団法人がヒットしました。

ただし、この団体と警察拠点の関係は不明です。 

いったい、この警察拠点はどんな活動をしているのでしょうか。 

報告書によれば、最初は公安当局が海外で不法な活動をしたり、逃亡した詐欺犯などを摘発する活動が発端でした。やがて直接、海外に拠点を設けて、容疑者に接触し、中国に帰国するよう「説得」する活動に発展しまし。説得といっても、実態は脅迫に近いようです。 

たとえば「中国に帰らなければ、両親や親族が大変な目に遭うぞ」と脅します。応じなければ、実家に「ここは詐欺の巣窟だ」などと記した看板を立てられ、警察の捜査対象であることを付近の住人に知らせる、あるいは子供を学校に行かせない、といった手段が使われたそうです。 

親族は警察に協力する義務を負っており、協力しなければ、彼ら自身が処罰の対象になります。親族が住む家の電力や水道が遮断される場合もあります。犯罪に関連する不動産や資産は当然のように、没収されたといいます。 

その結果、中国当局によれば、2021年4月から22年7月までの間に23万人の中国人が「自発的に帰国」し、司法処分を受けたといいます。 

中国は「中国人が居住してはならない9カ国」を指定しています。トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、ミャンマー、タイ、マレーシア、ラオス、カンボジア、フィリピン、インドネシアです。

実際には、これらの国にも中国人はいるのですが、彼らは「特別な理由」で例外扱いされているようです。

問題の海外警察サービスセンターは、カンボジアを除く8カ国以外の取り締まりに従事しています。センターは福州市や青田市の警察だけでなく、中国共産党中央統一戦線工作部(United Front Work)とも連携しています。 

中央統一戦線工作部は、中国共産党と党外のざまざまな組織の連携を司る党中央委員会の直属組織です。たとえば、新型コロナの発生直後、華僑などを通じて、世界中のマスクや防護服を買い占める作戦の司令塔を担っていたのも、この組織です。 

この1点を見ても、警察拠点が単なる犯罪者の摘発や行政サービスを担う組織ではない、とわかります。汚職官僚や反体制活動家の摘発にも関与しているのです。 

統一戦線工作部はそれぞれの国の協力者を通じて、情報収集したり、捜査摘発活動の便宜を図ってもらう一方、協力者には党幹部との会合設営や表彰などの形で報奨を与えていました。

 政治犯や詐欺、横領などをして海外に逃亡した容疑者の摘発活動は「フォックス・ハント(狐狩り)作戦」と呼ばれています。

人民公安ニュースという中国メディアは2019年3月23日、次のような記事を掲載しています。 
海外サービスセンターの創設によって、青田市警察は海外に逃げた逃亡犯の確保にめざましい突破口を開いた。2018年以来、警察は海外在住の中国人に関係した6件の犯罪を摘発し、解決した。指名手配された逃亡者は逮捕され、2人の容疑者は海外センターの協力を受けて説得され、投降した。
これで明らかなように、海外センターは警察活動の一翼を担っているのです。彼らがターゲットにする狐のなかには、単なる犯罪者や汚職官僚だけでなく、政治犯もいたはずです。 

最大の問題は、こうした活動が当該国の同意や合意なしに、一方的な中国の裁量によって実行されている点です。主権侵害や当該国の法律に違反しているのは明らかです。その一端は、中国が2022年9月2日、全国人民代表大会常務委員会で可決した「反テレコム・オンライン詐欺法」にうかがえます。

同法の第3条は、次のように定めている。 
この法律は、中国領土におけるテレコム・オンライン詐欺に適用されるとともに、海外で実行された中国市民によるテレコム・オンライン詐欺にも適用される。また、中国領土の人々に対するテレコム・オンライン詐欺に関わった海外の組織、個人も責任を負う。
つまり、中国は、自国の法律を海外の組織や個人に対して適用するのです。たとえば、日本人が日本にいながら、いつなんどき、中国の法律を適用されて、罪に問われるか分からない、ということになります。法の域外適用が国際的に許されないのは、当然のことです。 

こうした中国のデタラメさには、実は前例があります。2020年に香港に導入した国家安全法だ。同法38条は「香港特別行政区の永住民の身分を備えない人が香港特別行政区外で香港特別行政区に対し、本法に規定する犯罪を実施した場合は、本法を適用する」と定めていました。

香港で施行されて國家安全法

 自分が勝手に作った法律を、外国にいる外国人にも適用する。正当な弁護を受ける権利も保証されません。あたかも、中国は「世界はオレの言うことを聞け」と言わんばかりなのです。これでは、友好協力もへったくれもない。こんなことを許すべきではありません。 

岸田文雄政権は、日本の警察拠点と指摘された施設について、そこで何が行われているのか、徹底的に調べるべきです。それとも、親中派で固めた政権に、それを要求するのは無理な話なのでしょうか。この問題への対応は、岸田政権の地金を試す試金石となるでしょう。

皆さんも、お気をつけください。美しい女性が、特段の理由もなく、あなたの周りをうろつくようなことがあれば、まずは、中国のハニートラップを疑うべきです。

軽い気持ちで接していれば、取り返しのつかないことになりかねません。

私の偏見かもしれないですが、ハニトラに簡単に引っかかる男は、若い頃にモテなかった人だと思います。 若い時に女にモテなかった人が年を取り、ある程度の資産を築くと、情けないくらい女に弱くなります。ハニトラではないですが、私自身そのような男性を何人か知っています。そういう人は本当に、びっくりするような行動をします。

 ちなみに私は若い時も今も全然モテないので、ハニトラにはめちゃくちゃ弱いと思います。ただ、それを自覚しているかしていないが、運命の分かれ道になると思います。

残念なことに、現在日本には、中国のマネートラップやハニートラップにかかった政治家、学者、官僚、マスコミ関係の人々が相当数存在するでしょう。 ただ、その事実は本人や中国が表に出さない限り明らかにならないです。そのため、松下新平議員の例は、珍しいといえるかもしれません。

しかし、その見分け方は難しくないです。異様なほど中国寄りの行動と発言を取る人のことは、疑うべきです。それからすると、松下氏を知る多くの人が、今回の暴露について、驚きもしなかったかもしれません。ただし、松下議員が、重要な情報を中国に漏らしていたとすれば、これは厳しく断罪すべきです。

日本が生き残るためには、国内の中国スパイを一掃しなければならないでしょう。もしできなければ、日本は中国側の一員と見做され、世界から厳しい目でみられることになります。米国などからは、セカンダリー・サンクションの標的になるでしょう。最悪は、中国の属国となり、50年後は国そのものが消えているかもしれません。

【関連記事】

日本をうまく利用した中国、台湾と尖閣も必ず狙ってくる 関係を見直す時期ではないか―【私の論評】ODA と超円高と中国の日本浸透を許すことで、中国を怪物に育てあげてきた日本(゚д゚)!

高市氏が〝捨て身〟の告発!岸田内閣「中国スパイ」を野放しか 「セキュリティー・クリアランス」提出に圧力、政府内の親中派と暗闘を示唆―【私の論評】危機管理能力があまりに低い岸田政権は、短期で終わらせないと、自民党はおろか、日本国、日本国民が毀損されかねない(゚д゚)!

2022年8月11日木曜日

内閣改造でなぜロシア協力相を続ける必要があるのか―【私の論評】岸田政権が派閥力学と財務省との関係性だけで動けば来年秋ころには、自民党内で「岸田バッシング」の声が沸き起こる(゚д゚)!

内閣改造でなぜロシア協力相を続ける必要があるのか

樫山幸夫 (元産經新聞論説委員長)

内閣改造でも「ロシア経済分野協力担当相」ポストが存続した

 侵略国との経済協力をまだ継続するのか。

 10日に行われた内閣改造で、「ロシア経済分野協力担当相」ポストの存続が明らかになった。日本はロシアのウクライナ侵入を受けて強い制裁を課し、共同経済活動も見合わせている。その一方で、「協力」を推進するというのだから、矛盾はなはだしいというほかはない。

 ロシアからは足元を見られ、 連携してきた主要7カ国(G7)からは疑念の目を向けられるだろう。 懸念されていた対露制裁からの日本の落伍が現実になるのだろうか。
ロシアを刺激したくなかった?

 松野博一官房長官が10日午後、新しい閣僚名簿を読み上げた。西村康稔経済産業相のくだりで、他の兼任ポストとともに、「ロシア経済分野協力担当」と明確に述べた。過去の資料でも誤って読み上げたのかとも思ったが、訂正されることはなかった。

 同日午後にアップされた時事ドットコムは、サハリン2からの日本向け天然ガス供給をめぐって、「ロシアが日本に揺さぶりをかけており、先方を刺激するのは得策ではないと判断した」と報じた。

 この方針について、同日夕に記者会見した岸田文雄首相の口から何の説明もなく、メディア側から質問もでなかった。官邸詰めの記者は不思議に感じなかったようだ。

 同日夜、就任会見した西村新経産相は、冒頭発言でこのポストに触れ「ウクライナ情勢を踏まえた日露経済分野における協力プランに参加した企業への対応」と述べたにとどまった。

経済協力見合わせなのに何を担当?

 ロシア経済分野協力担当相は2016年9月に新設された。この年5月、安倍晋三首相(当時)がプーチン大統領に、エネルギー開発、医療・など8項目の経済協力を提案、合意した経緯があり、これら事業を促進することが目的だった。

 同年12月には、安倍首相の地元、山口・長門で行われた日露首脳会談で、北方領土での風力発電、養殖漁業など5項目の共同経済活動開始でも合意した。安倍政権が、ロシアとの経済協力に前のめりになった年であり、北方領土交渉を促進するという思惑からだった。

 しかし、ロシアとの経済協力に慎重な意見が国内にあり、北方領土での共同事業にしても、日本固有の領土であるにもかかわらず、いずれの法律を適用すべきかなどで対立、進展を見ていなかった。そうした中で、ことし2月、ロシアのウクライナ侵略が始まった。

 その直後、の3月2日、岸田首相が参院予算委で「ロシアとの経済分野の協力に関する政府事業は当面見合わせることを基本とする」と表明。松野官房長官も同月11日の衆院内閣委で、「幅広い分野で関係全体を発展させるよう粘り強く平和条約交渉を進めてきたが、ウクライナ情勢を踏まえれば、これまで通りはできない。8項目を含む協力事業は当面見合わせる」と説明した。

 見合わせている事業のために担当相を存続させて何をさせようというのだろう。兼任とはいえ理解不能だ。「見合わせ」は一時的であり、時機を見て復活させようという思惑なのか。

これまでは、強い制裁を課してきたが

 今回のロシアによるウクライナ侵略を受けて日本は当初から、対露制裁、ウクライナ支援でG7各国とよく協調してきた。

 ウクライナに対して、食糧、シェルターなど2億ドルにのぼる人道支援、3億ドルの円借款に加え、防衛装備品の供与を断行。防弾チョッキ、ドローン 防衛装備品にヘルメット、双眼鏡など攻撃用武器との境界が微妙な物品も含まれた。

 ロシアに対しては、最恵国待遇除外、プーチン大統領らロシア要人の資産凍結など矢継ぎ早に行い、もっとも強い手段として、東京のロシア大使館員8人を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからぬ人物」として追放した。ロシア外交官を日本政府が一挙に8人もの多数を、しかも、制裁の一環として追放するのははじめてだった。 

 ロシアの侵略直後、日本はどの程度の制裁を打ち出せるか懸念する向きが少なくなかった。

 というのも、2014年、ロシアがクリミアを併合したときの日本の制裁は、ビザ発給緩和の停止、関係者23人へのビザ停止など軽微な内容だったからだ。しかし、日本がとった措置は、こうした懸念を払しょくするに十分だった。

 それだけに、今回の「ロシア経済分野協力担当相」の存続は、「やはり」という疑念を再び呼ぶことになるだろう。

サハリン1、2の権益維持も念頭か?

 日本政府は石油などロシア極東の資源開発事業「サハリン1」、天然ガス開発事業「サハリン2」について、従来通り堅持したい方針を示している。これに対し、プーチン大統領は制裁への報復として、サハリン1の株式取引を禁じ、サハリン2をロシアの新会社に譲渡するよう命じた。

 萩生田光一経産相(当時)は8月8日、サハリン1について、「われわれはいままでの方針を維持する」と述べ、サハリン2については、日本の商社に対して、ロシアが設立したあらたな運営会社に出資継続を求めた。

 担当相ポストの継続は、こうした方針とも関係があるのかもしれない。西村経産相は就任会見で、同様に権益維持の方針を表明したが、冒頭に「参加した企業への対応」と述べたのは、商社への働きかけを指しているとみられる。

 しかし、日本が事業を継続した場合、各国からの非難は免れないだろう。ロシアのウクライナ侵略直後、米国のエクソンモービル、英国石油大手のシェルがそれぞれ「サハリン1」、「サハリン2」からの撤退を決めている経緯からだ。

 日本国内でも侵略開始の翌日の2月25日、自民党の佐藤正久外交部会長が党内の会合で「片方で制裁と言いながら、片方で共同経済活動を続けたら、各国は日本をもう信用しない」と強い調子で中止を主張、与党内で同調が広がっていた。

再び制裁の「弱い部分」になるのか

 1989年の中国の天安門事件をめぐって各国は強い制裁を課した。日本も同調したが、日中国交正常化20年の1992年、天皇(現上皇)の訪中を契機に制裁解除の先鞭をつけた。中国とは地政学的に各国と異なる立場にある日本独自の判断だった。

 当時、中国外相だった銭其琛氏は回想録の中で、西側の制裁の輪の中でもっとも弱かったのは日本であり、そこに狙いをつけたと告白。結果的に利用された日本側は悔しさを隠せなかった。

 日本は今度は対露制裁で「もっとも弱い部分」になるのだろうか。銭其琛氏の回想をよもや忘れまい。

【私の論評】岸田政権が派閥力学と財務省との関係性だけで動けば来年秋ころには、自民党内で「岸田バッシング」の声が沸き起こる(゚д゚)!

高市早苗氏が、経済安全保障担当大臣になったこと、 第2次岸田改造内閣の閣僚応接室での席次が10日、決まり「ナンバー2」とされる岸田首相の左隣には、首相と昨年の総裁選で争った高市経済安全保障相が座ることになったことをもって、日本のロシアや中国、北朝鮮、韓国などに対する制裁等が厳しくなると考える人もいるようですが、どうもそうとはいえないようです。

第2次岸田改造内閣が発足し、初めての閣議に臨む岸田首相(中央)ら(10日夜、首相官邸で)
クリックすると拡大します


岸田総理大臣は昨日の内閣改造・党役員人事で、浜田靖一元防衛大臣を再起用する方針を固めました。

正式決定は昨日の午後のはずなのですが、午前中にすでにこれはもう公表されていました。 従来は、「本当にくるのかこないのか」ということで、閣僚候補者は電話の前で待機し、スーツを用意するかしないかと大騒ぎでした。実際、サプライズがあったり、番狂わせのようなことがありました。これは小泉政権の2001年くらいからそのような感じでした。

なにやら、今回の組閣の公表は、20年以上前の組閣のようです。しかし今回は派閥均衡により、随分前から決まっていたのでしょう。

高市早苗氏

高市早苗政調会長を経済安全保障担当大臣に、河野太郎広報本部長をデジタル大臣に充てました。また、寺田稔総理補佐官を総務大臣として初入閣させています。加藤勝信前官房長官は厚生労働大臣に、西村康稔前経済再生担当大臣は経済産業大臣として再入閣しました。 留任は松野博一官房長官、鈴木俊一財務大臣、林芳正外務大臣、斉藤鉄夫国土交通大臣、山際大志郎経済再生担当大臣です。

経済安全保障担当大臣や、デジタル大臣は、内閣府大臣というものです。少子化や経済安保、地方創生など。内閣府大臣は通常の大臣とは少し違うと考えるべきです。名称は、同じ大臣なのですが、実内閣府大臣には人事権がないのです。だから 内閣府特命担当などとも呼ばれるのです。 特命担当の大臣には人事権はなく、それを誰が持っているかと言うと、官房長官なのです。

すると役人は、「この大臣は人事を行う人ではない」という対処するのです。だから、そこに骨を埋めるつもりの人はまずいません。

人事はまったく別系統なので、高市さんと、自分の人事には直接関係ないのです。役人は、自分が出世するのかどうか、自分の人事を中心に、それを目標にする人が多いのです。  ですから、この大臣にいくら言っても人事は関係ないと思うと、それなりの扱いをするのです。

もともと総務大臣などの省庁の大臣をしていた、高市氏や河野氏のよう人が、内閣府担当大臣になるのは実質的な格下げと言って良いです。省庁大臣というのは、総務省や防衛省など、人事ができる大臣なのです。

このブログでも述べてきたように、組織において最大のコントロール手段は人事なのです。人事ができるから、組織の人間をコントロールできるのです。そういう大臣を務めていた人に内閣府大臣を担当させるということは、閣内に入れたとは言っても、手足を取ってしまったということです。

そのまま一議員としてではなく、閣内で反旗を翻すわけにはいかなくなります。 おまけに周りに手下がいません。いない状態にさせるには内閣府大臣が適当なのです。はっきり言ってしまえば、飼い殺しの状態です。この難局に高市氏や河野氏をこうした状態に追いやっておいてよいのでしょうか。 

現在日本を取り巻く環境が厳しいなかで、外交安全保障が気になるところですが。外務・防衛閣僚協議(2プラス2)などにおいて、外務大臣と防衛大臣は重要なのですが、外務大臣は生え抜きの親中派の林外務大臣でそのままです。

岸首相自身は、台湾派であり、第一次岸田内閣においては、親中派の林外務大臣と親台湾の岸防衛大臣とでバランスが取れていたとも言えるのですが、今回はそれが崩れて防衛大臣は浜田靖一氏です。

浜田靖一防衛大臣

浜田氏は、浜田幸一さんの息子さんですが、浜田幸一さんのようなイメージはまったくなく、温厚で穏やかな方です。どちらかと言うと、この方は石破茂さんに近いです。

参院選自民党の公約です、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ防衛費は北大西洋条約機構(NATO)諸国が掲げる国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に置くと明記しましたが、これに財源論の話が出てきていて、「何らかの税金で手当てしない限りはできない」ということが骨太の方針にも載せるべきという議論がありました。

また、国債にすべきという議論もありましたが、財源については秋に議論を深めるということになりました。

 国債ということになると、現在の枠組みでは、海上保安庁の船は建設国債が使えます。しかし、海上自衛隊には使えないのです。どうして使えないのか意味不明です。 耐用年数が海上保安庁の方は長いから、耐用年数があって資産としてあるからということで、海上保安庁の船は建設国債を使ってもいいというロジックのようです。

しかし、有事になった場合、海上自衛隊と海上保安庁の艦艇のどちらが先に攻撃を受ける可能性が高いかといえば、最初に攻撃を受けるのは、前線に出ている海上保安庁なのです。

尖閣諸島などで、最前線の現場に出ているのが海上保安庁の艦艇であり、背後にいるのが海上自衛隊の艦艇です。有事になったとき、海上保安庁の船が速やかにどこかへ退出できるとは思えません。

既に、来年度予算をどうするのかという概算要求の話も出ていますが、自民党国防部会によれば、防衛費の予算要求5.5兆円などと従来とほとんど変わっていないではない数字が出ています。 

それでは防衛費をGDP比2%まで増やすことはできないでしょう。防衛費2%の議論においては、財務省が怪しげな手を使ってきているのですが、これは北大西洋条約機構(NATO)基準というもので、入れるときに海上保安庁の予算を一緒に加えて計算するのです。

こういうときに海上保安庁に関しては、適当に数字をかさ上げして入れたりするのです。本来海上保安庁の予算と、防衛省の予算は別の扱いでしたが、財務省はこのような操作を平気でやってのけるのです。

財務省からはこれから、そのような紛らわしい数字が多数出てくることが予想されますので、惑わされないようにすべきです。

ただ、今回のような閣僚人事だと、防衛省の方からもそういうものが出てきそうで、本当に困ったものです。今回防衛大臣人が変わったことで事務次官も変わりました。 

事務次官については防衛省側は、今年(2022年)は安保3文書(「国家安全保障戦略(国家安保戦略)」「防衛計画の大綱(防衛大綱)」「中期防衛力整備計画(中期防)」<国家安全保障会議(NSC)・閣議決定文書)の改訂があるから、「それまでは同じ人でやりたいのです」と言っていたのを、内閣人事局が変えたとされています。 

海上保安庁も菅政権までは、3代続けて制服組が長官だったのですが。 今回は国交省の事務キャリアである背広組です。

先の今回の組閣の公表は、20年以上前の組閣のようだと述べましたが、それだけではなくまるですべてが一昔に戻ったようです。

先の、話のなかで海保の予算が優遇されているかというと、まったくそんなことはなく、「海上保安庁は国交省のなかだから、国交省の予算でやってくださいね」ということになりそうです。そうすると旧建設、旧運輸の予算の取り合いのなかで、「そこまでは予算を削れませんよ」というようなことで、海保に十分な予算が割かれないということにもなりかねません。

 財務省は、国内総生産(GDP)を計算するときに上乗せしたり、様々な操作をするでしょう。都合よく数字を変えるのが財務省のテクニックなのです。 

財務省においては、ダブルスタンダード、トリプルスタンダードが平気でまかり通っています。 それをマスコミの人がわからずに騙され、それをそのままオウム返しのように報道します。

財務省は「防衛費は、5.5兆円ですが、海保の分を入れると実は6兆円に近いです」とか、「GDPの数字上からすれば、防衛費2%に向けて順調にいっています」などというようなトリックを用いることになるでしょう。

米国の定評あるビューリサーチセンターの調査では、9割近くの日本国民が中国の印象について好ましくない答えており、岸田政権があくまで親中路線を貫くというのなら、多くの有権者が離反することになるでしょう。

それに、米国は超党派で中国に対峙する体制になっていますから、米国も良い顔はしないでしよう。あまりに、岸田政権が親中派的な行動をすれば、日本の個人や組織にセカンダリー・サンクション(二次制裁)を課すことになるかもしれません。そうなれば、せっかく安倍元総理が築いた、世界における日本の存在感を毀損することになります。

さらに、昨日も述べたように、今後現状のまま、まともな経済対策をせず、しかも来年4月の黒田総裁の辞任にともない日銀総裁に、いわゆる反リフレ派の人間を据え、日銀が再度金融引締路線に戻れば、秋には失業率が本格的にあがりはじめますし、経済も本格的に悪くなります。そうなれば、内閣指示率はかなり低下するでしょう。

この内閣の陣容をみていると、あらためて昨日この記事に書いた結論である「マクロ経済の原則を理解せず、派閥の力学と財務省との関係性だけで動けば岸田政権は2年目を迎えることなく、崩壊することになる」ことになりそうです。来年の秋ころには、自民党内に「岸田バッシング」の声が沸き起こりそうてす。

【関連記事】

給与引き上げは「夢のまた夢」...最低賃金31円増が「上げすぎ」である理由―【私の論評】アベノミクスを踏襲せず、派閥の力学だけで動けば岸田政権は2年目を迎えることなく、崩壊する(゚д゚)!

安倍派「跡目争い」をめぐる「集団指導体制」のトラブル爆弾!「キーマンは菅前総理」の舞台裏―【私の論評】今後の政局で、菅前総理がキーマンとなる可能性がでてきた(゚д゚)!

安倍氏たたえる決議採択 米上院で全会一致―【私の論評】バイデン政権も米国議会も日本が安倍路線を継承することを強く望んでいる(゚д゚)!

防衛費増額と財務省の思惑 増税阻止した安倍氏の戦略 問われるトップの政治判断―【私の論評】原発稼働のまやかしをする岸田総理は全く「覚醒」しておらず、適切な政治判断は望み薄か(゚д゚)!

「キシダに投資」呼びかけも…くすぶる金融所得課税強化 経済成長導く政策も力不足―【私の論評】日本では批判されない岸田首相が海外リベラルメディアには、なぜ厳しく批判されるのか(゚д゚)!

2017年4月11日火曜日

米トランプ政権が中国企業“制裁強化” 北の核兵器開発への関与、「単独行動」で資産凍結なども―【私の論評】これは、その後続く一連の中国制裁の序盤に過ぎない(゚д゚)!

米トランプ政権が中国企業“制裁強化” 北の核兵器開発への関与、「単独行動」で資産凍結なども

シリア攻撃の後、演壇に立つトランプ米大統領=6日、米フロリダ州パームビーチ
 米政府が日本政府に対し、北朝鮮の核兵器開発に関与する中国企業への制裁強化を検討していることを伝えていたことが10日、分かった。複数の日米外交筋が明らかにした。トランプ米政権は、北朝鮮に影響力がある中国に圧力を強めるよう求めており、中国が具体的な行動に出なければ「単独行動」として米国内の中国企業資産凍結などを行う意志を示したという。

 日米両首脳は2月に安倍晋三首相が訪米して以降、3回にわたり電話会談を実施。トランプ氏は対北朝鮮政策の見直しについても説明しており、中国企業を対象とした独自制裁の事前通告も、対北圧力を強める上で日米間の連携を確認する狙いがあるとみられる。

 日米外交筋によると、米側は対中国企業制裁について、北朝鮮と取引する第三国の企業などを制裁対象とする「セカンダリー・サンクション(二次的制裁)」の一環として説明。具体的な企業名は伝えなかったが、すでに実施している資産凍結などの対象企業を拡大する形で検討している。対象となるのは、核兵器開発関連物資の輸出元や、金融取引の相手企業などとなる見通し。

 トランプ氏は6、7両日に米南部フロリダ州パームビーチで中国の習近平国家主席と会談した際、北朝鮮の核開発阻止への取り組みを強化し、国連安全保障理事会決議の完全な履行を確認した。だが、2日付の英紙とのインタビューでは、中国が役割を果たさない場合は単独での対処行動に出る考えを表明している。

 米政府は昨年2月、北朝鮮の核・ミサイル開発や拡散などに関わった第三国を含む個人や団体に制裁を科す米独自の制裁強化法を制定。同年9月には米財務省が中国・遼寧省の貿易会社と個人4人を制裁対象に加え、米司法省は初めて経済制裁違反などで同社などを刑事訴追した。

 中国企業は北朝鮮の貿易総額の9割を占めているとされる。国連安保理・北朝鮮制裁委員会の専門家パネルは、北朝鮮の銀行が中国の大連、丹東、瀋陽で営業を継続していたケースなどを指摘している。

【私の論評】これは、その後続く一連の中国制裁の序盤に過ぎない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の一番最後の部分が、非常に重要です。

中国企業は北朝鮮の貿易総額の9割を占めている。これらの企業は輸出入にかかわっている企業であり、当然のことながら、米国とも取引をしている可能性も高いわけです。であれば、これらの企業の資産凍結をすれば、北朝鮮への制裁ということにもなり、さらには北朝鮮への制裁という大義名分で中国に対しても制裁をはじめるということで、中国に対しても制裁になります。

さらに、中国に対しては、北朝鮮に限らず、南シナ海やその他のことでも、米国の言い分を聞かなければさらなる中国に対する制裁も辞さないという、トランプ氏の硬い決意をみせつけることになります。

これは中国にとってはかなり、効き目があるものと思います。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【スクープ最前線】トランプ氏「中国敵対」決断 台湾に急接近、習近平氏は大恥かかされ…―【私の論評】トランプ新大統領が中国を屈服させるのはこんなに簡単(゚д゚)!
台湾の蔡英文総統との電話会談で中国を牽制したトランプ次期米大統領
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
現在の米国は、軍事的にはオバマ政権時代に軍事予算を大幅に減らしたので、従来よりはその力は低下しています。これをトランプ氏は補おうとはしていますが、さりとてすぐにそれが成就するわけではありません。人員を増やすにしても、訓練をしなくてはなりません。軍艦や航空機を増加させるにしても、今すぐにつくってそれを現場に投入するとうわけにもいかず、実際に軍備を増強するまでには時間がかかります。

しかし、アメリカには他にも大きな強みが2つあります。それは、金融と食料です。この記事より、これに関する部分を以下に引用します。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。 
当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。
さらに、現在の中国の食料自給率が85%以下という状況もあります。
世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

これに関しては、一昔前にある中国の高官が穀物の需要が増えたり、減ったりする中国の状況を「中国人の胃はゴムボールのようである」と語っていたことがあります。要するに、穀物需要がかなり減ったり、増えたりしても、中国は何とかなることを強調したかったのでしょう。

現実には、そんな馬鹿な話があるはずもなく、貧困層は穀物が手に入らず飢え死にしていたというのが実情でしょう。しかし、それは今から数十年も前のことで、今ではそのようなことはあり得ないでしょう。現状では、中国の貧困層でも何とか食欲を満たす穀物は手に入れられる状態になっていることでしょう。
実際最近では中国が突如、近年世界の穀物輸入国上位に躍り出てきました。2013年~14年期、中国の穀物輸入量は2,200万トンという膨大な量になりました。2006年の時点では、ま中国では穀物が余り、1,000万トンが輸出されていたというのに、何がこの激変をもたらしたのでしょうか?

2006年以来、中国の穀物消費量は年間1,700万トンの勢いで増大し続けている年間1,700万トンというと、大局的に見れば、オーストラリアの小麦年間収穫量2,400万トンに匹敵します。 
人口増加は鈍化しているにもかかわらず、穀物の消費量がこれほど増加しているのは、主に、膨大な数の中国人の食生活レベルが向上し、より多くの穀物が飼料として必要な肉や牛乳、卵を消費しているからです。

2013年、世界全体で推定1億700万トンの豚肉が消費されました。そのうちの半分を消費したのが中国でした。人口14億人の中国は現在、米国全体で消費される豚肉の6倍を消費しています。 
とはいえ、中国で近年、豚肉消費量が急増しているものの、中国人一人当たりの食肉全体の消費量は年間合計54キロ程度で、米国の約107キロの半分にすぎません。しかしながら、中国人も世界中の多くの人々と同じように、米国人のようなライフスタイルに憧れています。

中国人が米国人と同量の肉を消費するには、食肉の供給量を年間約8,000万トンから1億6,000万トンへとほぼ倍増させる必要があります。1キロの豚肉を作るにはその3倍から4倍の穀物が必要なので、豚肉をさらに8,000万トン供給するとなると、少なくとも2億4,000万トンの飼料用穀物が必要になります。 
それだけの穀物がどこから来るのでしょうか。中国では、帯水層が枯渇するにつれて、農業用の灌漑用水が失われつつあります。たとえば、中国の小麦生産量の半分とトウモロコシ生産量の1/3を産出する華北平原では、地下水の水位が急激に低下しており、年間約3メートル低下する地域もあるほどです。 
その一方で水は農業以外の目的に利用されるようになり、農耕地は減少して住宅用地や工業用地に姿を変えています。穀物生産高はすでに世界有数レベルに達しており、中国が国内生産高をこれ以上増やす潜在能力は限られています。
2013年に中国のコングロマリットが世界最大の養豚・豚肉加工企業、米国のスミスフィールド・フーズ社を買収したのは、まさに豚肉を確保する手段の一つでした。 
また、中国政府がトウモロコシと引き換えに30億ドル(約3,090億円)の融資契約をウクライナ政府と結んだのも、ウクライナ企業と土地利用の交渉を行ったのも、その一環です。こうした中国の動きは、私たち人類すべてに影響を与える食糧不足がもたらした新たな地政学を実証したものです。 
このようなときに、米国に金融制裁を実施されたら、食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。
そもそも、中国の人民元の信用は、中国がドルをかなり保有しているということで、保たれてきたものです。しかし、中国からは大量のドルが国外逃避 していましたし、これからもさらに逃避をすることになります。そうなると、元の信用は落ちます。

そのような中で、トランプ大統領により米国内の中国企業や中国企業の出先機関などに対して、金融制裁を課せられると、中国はとんでもない状況に陥ります。

それと、この記事では掲載しなかったのですが、何と中国の最大の農産物の輸入先は、米国であるという現実もあります。それは、以下のグラフをご覧いただければ、ご理解いただけるものと思います。

中国の食料品輸入先のシェア

米国は中国最大の農産物輸入先  中国の農産物(食料品)輸入額は1992年の 41.3億ドルから2001年の97.6億ドルへと倍 近く拡大しました。拡大した輸入食料品のうち では、大豆、植物油、トウモロコシ(94~95 年)など土地集約的なものが多いです。

こうした 食料品は米国が比較優位を 持つこともあり、中国の対 米輸入依存は高まってき ました。中国の対米食料品の輸 入額は97年の15.1億ド ルか ら2001年の22.9億ド ルへ、 全食料品輸入額に占める割 合は同20.2%から23.4%へ とトップシェアを占めています。

中国がまともに北朝鮮に対する制裁をしなければ、早急に北朝鮮と交易などをしている中国企業に対して資産凍結などの制裁措置を課すことでしょう。

それでも、中国がまともに動かなければ、次の段階では北朝鮮に対して軍事行動を起こすでしょう。具体的には、核施設の破壊ならびに金正恩斬首作戦です。

その後あるいは同時に、中国が南シナ海を中国戦略原潜の聖域にするという試みをやめなければ、中国企業に対して金融制裁を課すことになります。

制裁を課しても中国が南シナ海での活動をやめなければ、今度は米国は、中国に対する食料輸出をやめることになるでしょう。これに対してはすぐに実施すれば、トランプ大統領支持の保守派も多い米国の農家からの反発もまねく恐れもあるので、輸出代替地を探してそちらへの輸出を増やすか、あるいは政府が買い上げて、発展途上国への食料援助にまわすということも考えられます。この過程で、他国も中国に食料品を輸出することをとりやめるように協力を要請するかもしれません。

金融と、食料品で徹底的に制裁を課せられた、中国はかなり疲弊することになります。この時点で、習近平体制は完全に崩れるでしょう。ひよっとすると、それだけでは済まなくなるかもしれません。場合によっては、中国の現体制そのものが瓦解するかもしれません。

習近平体制は崩壊する?
それにしても、米軍によるシリア攻撃も、中国に対する牽制となったと思いますが、トランプ氏には、その後もこれだけ、打てる手があります。

これに対して、中国も決して手をこまねいて米国のなすがままにさせまいとは思うでしょうが、中国が米国に対してできることはかなり限られています。まずは、中国内の米国企業などに対して金融制裁を課することになるでしょう。

しかし、それは米国の中国に対する金融制裁と比較すれば、比較にならないほど、微々たるものでしょう。確かに、それで制裁を受ける米国企業にとっては、大変なことでしょうが、さりとてそれが、米国の経済においてどれほどの部分を占めるかといえば、微々たるものです。

さらに、中国は当然、米国に対して輸出入規制もするかもしれません。そうなれば、米国も多少は痛手を被るかもしれません。しかし、もともと米国のGDPに占める輸入も輸出も微々たるものです。そもそも、米国のGDPに占める輸出の割合は7%程度であり、その中に占める中国の割合はさらに低いです。

中国からの輸入がストップしたとしても、米国で困るようなことは一切ありません。自国で製造するか、他国から輸入すればそれですみます。

要するに、米国が中国に対して金融制裁や、輸出入規制をすれば、中国にとっては大打撃ですが、中国が米国に対してそれと同じ措置をとったにしても、米国にとっては全く打撃はないとはいえないものの、微々たるものです。

それでも、中国が南シナ海での活動をとりやめなければ、最終的に軍事的な手段を講じるかもしれません。しかし、その頃には、中国はかなり疲弊していて、米国と事を構えるななどできないかもしれません。それでも、事を構えるということになれば、米国は徹底的にこれを粉砕することになります。

要するに、中国には全く最初から勝ち目はないわけです。今回の米中首脳会談中での、米軍によるシリア攻撃は、その後に続くトランプ大統領の制裁の幕開けです。

トランプ大統領は、当然このような行動をとることでしょう。しかし、本来はこれはオバマ政権のときにでも実行すべきだったのです。そうすれば、北朝鮮や中国が今日のように身の程知らずに増長することはなかったはずです。

【関連記事】




特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...