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2025年3月5日水曜日

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道―【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道

まとめ
  • トランプ米政権とウクライナが鉱物資源(レアアース)の共同開発合意を計画し、トランプ大統領が3月5日の施政方針演説で発表意向を示したものの、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名に至っていない。
  • 会談での激しい対立によりウクライナ側がホワイトハウスから退去させられ、合意は未署名のまま流動的だが、ゼレンスキー氏は協議を続ける意向を示し、トランプ氏との言い合いを「残念」と表現した。

トランプ、ゼレンスキーの会談は決裂

 トランプ米政権とウクライナが鉱物資源に関する合意に署名する計画が報じられた。トランプ大統領は3月5日の施政方針演説でこの合意を発表する意向を示したが、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名は実現していない。

 会談では激しい言い合いとなり、ウクライナ側がホワイトハウスから退去させられた。合意はまだ署名されておらず、状況は流動的。ゼレンスキー氏は協議継続の意向を示しつつ、トランプ氏との対立を「残念」と述べた。

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【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

まとめ
  • 戦争は適切なタイミングで終えるべきだという鉄則があらゆる戦争に当てはまる。戦略的バランスを重視する米戦略家ルトワックは、ウクライナ戦争をロシアの誤算と膠着状態とみなし、住民投票による妥協的終戦を提案した。
  • 日露戦争は適切なタイミングで終わった好例だ。日本は成果を上げつつ国力の限界で1905年に終戦を選び、歴史家半藤一利が「絶妙な判断」と評価する。
  • 戦争が長引くと、ゼレンスキーの権力維持や西側の戦争継続派(EUリベラル派、米民主党、ネオコン)の利権が強まる。ウクライナ戦争では支持率65%を維持するゼレンスキーだが、終戦後、パナマ文書疑惑や経済難で地位が危うくなるのは確実。
  • 第一次世界大戦やベトナム戦争は長期化で利権と私的動機が顕著になり、適切なタイミングを逃した。軍需産業の儲けが戦争を延ばしたと解釈できる。
  • ウクライナ戦争はルトワックの提案を逃し、2025年3月時点で利権(支援金1830億ドルやロッキード株価上昇)が肥大化。トランプの終戦主張は戦争継続派と対立し、マスコミが追随する中、終戦の決断が求められている。
戦争などというものは、どの時代でもどの場所でも、「適切なタイミングでやめるべき」と私はは思う。どんな戦争にも当てはまる、シンプルで揺るぎない鉄則だ。特に戦争が長引いた場合はそうだ。

米国の戦略家ルトワック氏

アメリカの戦略家エドワード・ルトワックは、ウクライナ戦争を冷徹に見つめ、ロシアのプーチンが「ウクライナを一気に叩ける」と見誤った結果、双方が限界にぶち当たって膠着状態に陥ったと言う。

2023年7月のUnHerd記事「Why no one can end the Ukraine war」では、「ウクライナがモスクワを落とせるわけないし、ロシアだってキエフを奪えやしない」とバッサリ切り捨てている。彼は現実を直視し、住民投票でドネツクとルガンスクの帰属を決めて、ロシアに他の占領地から手を引かせる案をぶち上げた。

2022年4月の記事「How the Ukraine war must end」で、核戦争の火種を消しつつ、勝ち負けにこだわらない戦略的バランスを説く。この視点は、戦争の目的と損失を天秤にかけ、ズルズル長引かせて消耗する愚を避けるべきだと示す。まさに「適切なタイミング」の証明だ。

歴史を振り返れば、日露戦争(1904~1905年)がその典型だ。日本は旅順を落とし、日本海海戦でロシアを叩きのめし、朝鮮半島と南満州の利権を握った。だが、戦費は国家予算の2倍に膨れ上がり、16万もの命が消えた。そこで1905年、ポーツマス条約でスパッと戦争を終えた。

歴史家の半藤一利は「勝ちすぎず負けすぎず、絶妙なところで引いた」と言い切り、国力のピークで終わらせた判断が日本を救ったと断言する。ルトワックの目で見ても、ロシアを完膚なきまで潰すような無茶をせず、現実的な成果で手を打った好例だ。

日露戦争で用いられた日本陸軍の28センチ榴弾砲

ところが、戦争が長引くと話は変わってくる。ウクライナ戦争は2022年から2025年3月まで続き、死傷者が公式で5万人超、非公式なら数十万人とも言われる中、ゼレンスキーの支持率は戦争前の20%台から今や65%をキープしている(キーウ国際社会学研究所)。

だが、戦争が終われば、汚職の闇が噴き出し、経済はどうしようもないほど落ち込んでいる。2016年のパナマ文書や2021年のパンドラ文書で暴露されたゼレンスキーのオフショア口座疑惑が再燃するのは確実だ。ゼレンスキーは大統領になる前、テレビ会社「クヴァルタル95」の稼ぎを英領バージン諸島などで隠し、4000万ドル以上を動かしていたとされる。戦争が終われば、この汚点が国民の怒りを呼び、彼の地位はガタガタになるだろう。それが戦争を続ける理由かどうかは定かではないが、可能性は大きい。

他にも、戦争が長引くと私利私欲や利権が顔を出す。第一次世界大戦(1914~1918年)は、当初の目的が霞み、消耗戦に突入。軍需産業や指導者の権力維持が裏で糸を引いた。ドイツは1918年に停戦を選んだが、それまでのグダグダで経済はボロボロ、ヴェルサイユ条約でさらに締め上げられ、それが後の第二次世界大戦の引き金の一つにもなったとされる。

ルトワックなら「タイミングを逃した」と言うだろうが、戦争継続派の利権が遅らせたとも考えられる。アメリカの軍需生産は1914年の1億ドルから1918年には20億ドル超に跳ね上がり(米国商務省データ)、戦争が一部の連中の飯の種だったのは明らかだ。

ベトナム戦争(1955~1975年)もそうだ。アメリカは共産主義を潰そうと20年戦って、死者5万8000人、戦費3兆ドルをドブに捨て、南ベトナムが崩れて終わりだ。歴史家のスタンリー・カーノウは「勝てないと分かった時点でやめるべきだった」と喝破するが、軍産複合体、ロッキードやボーイングの儲けが戦争を引っ張ったとしか思えない。

ウクライナ戦争に戻れば、ルトワックの「住民投票で終わらせる」が正しいタイミングだったはずだ。だが、2025年3月までダラダラ続く今、ゼレンスキーは権力を守るために、西側の「戦争継続派」――EUのリベラル派、米民主党、ネオコン――は軍需産業の儲けや地政学的野心のために、戦争をやめさせない。

フォンデアライエン次期EU委員長はマクロン仏大統領

支援金1830億ドル(米国)や1450億ドル(EU)が軍需や復興企業に流れ、ブラックロックが暗躍する状況は、長期化が利権を大きくしている証だ。ロッキードの株価だって、2022年の350ドルから500ドル超に跳ね上がってる。

「戦争は適切なタイミングでやめるべき」は、ルトワックの現実主義から見れば正しい。日露戦争のように、成果と損失を見極めて終わらせるのが賢い道だ。だが、長引けばゼレンスキーの私的動機や利権が絡み、タイミングを逃す。

今のウクライナがまさにそれだ。ルトワックが言うように、ロシアもウクライナも適切な瞬間を逃したのかもしれない。もうグズグズしてる場合じゃない。トランプ大統領が「終わらせろ」と叫ぶのも当然だ。だが、ゼレンスキーは権力を握り続けたいし、西側の戦争継続派とは真っ向からぶつかる。マスコミがトランプを叩くのも、そいつらの尻馬に乗っているだけだ。こうしている間にも、多くの人々が、亡くなり、重症を負っている。結局、戦争を終わらせるのは誰かが見極めるしかない。そこに真実がある。

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 ドナルド・トランプを無能と言い捨てる「識者」たちは現実を見失っている…ロシア・ウクライナ戦争を終わらせるトランプ大統領の交渉戦略

まとめ
  • トランプの戦争終結への取り組み: 就任1カ月でロシア・ウクライナ戦争の終結を目指し、米露会談を進め、欧州を動揺させる一方、日本の「識者」から猛反発と侮蔑を受ける。
  • 識者の態度とその危険性: 「識者」がトランプを低能・異常と嘲笑し、停戦調停に苛立つが、これは現実分析の放棄であり、選挙で信任された実力者を侮る危険な姿勢。
  • 交渉者としての第三者性: トランプはロシアに好感され、ウクライナに圧力をかけ、アメリカを支援者から調停者にシフトさせ、戦争終結を目指す論理的な戦略を展開。
  • ロシアとウクライナへの対応: ロシアにはNATO不加盟を提示して交渉に引き込み、ウクライナには支援停止や資源権益要求で現実を突きつけ、停戦を「利益」と認識させる。
  • 冷徹だが一貫した姿勢: トランプの手法は冷徹だが目標と手段に一貫性があり、侮蔑は現実乖離を招き、誤った分析がしっぺ返しとなる危険性を孕む。

トランプ大統領がアメリカ大統領に就任して1カ月が経過し、その間に多くの出来事が起こった。特に外交面で注目されているのは、選挙戦中から公約していたロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた取り組みである。トランプはこれに本気で取り組んでおり、就任後、米露外相会談が実現し、首脳会談も予定されている。これまでロシアを孤立させることに注力してきた欧州諸国にとっては梯子を外された形だ。

一方、日本の「識者」層からはトランプに対し猛烈な反発と侮蔑が directed されている。彼らは「ウクライナは勝たなければならない」と主張してきたが、トランプが停戦調停を進めようとすることに苛立ちを覚えているようだ。トランプの知的水準が低く、性格が異常であるとして、その行動や発言を嘲笑うことが常識的態度であるかのように振る舞っている。

しかし、これは危険な現象である。気に入らない状況を「誰かが無能で異常だから」と片付けてしまうのは、現実の分析を放棄するに等しい。トランプはアメリカの選挙民から二度も信任を得た人物であり、第一期政権時と比べて知識、経験、人脈も豊富だ。客観的には類まれな実力者であり、安易に侮るべきではない。

トランプは戦争終結に向け、交渉者としての「第三者性」を獲得しようとしている。ロシアには好感される発言を繰り返し、ウクライナのNATO加盟を認めない立場を示して信頼を得ようとしている。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領に対しては、バイデン政権が戦争を招いたと批判し、ゼレンスキーを「選挙のない独裁者」と揶揄するなど厳しい態度を取る。さらにウクライナ領内のレアアース資源権益をアメリカに譲るよう圧力をかけ、支援停止もちらつかせて現実を突きつけている。これは、アメリカが一方的なウクライナ支援者から中立的な調停者に立場を移すための戦略だ。

「識者」の間では「トランプがプーチンに騙された」という物語が広まりつつあるが、トランプの行動は交渉の観点からは破綻していない。ロシアにはウクライナのNATO不加盟を交渉材料として提示し、戦況で優位なロシアを調停のテーブルに引き寄せようとしている。ウクライナには支援打ち切りや選挙実施の圧力をかけ、停戦が「利益」であると認識させようとしている。

ゼレンスキーが抵抗を続ける場合、「選挙のための停戦」が提案される可能性もあり、ロシアもそれに賛同するかもしれない。ウクライナ国民の疲弊や世論分裂が進めば、ゼレンスキーの強権政治にも限界が来るだろう。

トランプの手法は冷徹だが、目標と手段に一貫性がある。彼を無能や異常と侮蔑するのは現実から乖離しており、分析を誤ればしっぺ返しを食らう危険がある。

篠田 英朗(東京外国語大学教授・国際関係論、平和構築)

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【私の論評】トランプの「力による平和」とドラッカーの教え:「良き意図」から実務へ

まとめ
  • ピーター・ドラッカーの言葉「良き意図と実務は違う」は、行動と結果が重要であることを示している。意図だけでは、それがいかに素晴らしいものであっても、無意味だ。
  • トランプ大統領のロシア・ウクライナ戦争終結への取り組みは、単なる意図にとどまらず、実行を伴うものである。
  • トランプはアメリカを中立の調停者として位置づけ、ロシアとウクライナの交渉を進めている。
  • 彼の目指す「力による平和」は、侵略を許さない新たな秩序を築くことにある。
  • トランプの実務が成功するかどうかは、実際の成果にかかっているが、現実の壁は依然として存在するものの、もう後戻りはない。

ドラッカー氏

ピーター・ドラッカーの「良き意図と実務は違う」という言葉は耳に残る。立派な目標を掲げるだけでは何も変わらない。行動に移し、結果を出して初めて意味が生まれるのだ。この考えをトランプ大統領のロシア・ウクライナ戦争終結への取り組みに当てはめると、彼の動きが単なるお題目を超えた力を持っていることが見えてくる。トランプは「戦争を終わらせる」と宣言するだけでなく、その先に「力による平和」という強固な秩序を築こうとしている。世界が再び力の時代に突入する今、これはただの夢物語ではない。

トランプが選挙で叫んだ「戦争を終結させる」は、ドラッカーの言う「良き意図」だ。平和を求めるこの公約は誰もが拍手喝采を送る。だが、ドラッカーは冷徹だ。「意図だけでは何も変わらない」と言い切る。たとえば、明日から禁煙すると決めたところで、タバコを手に持てば意味がない。吸わないと決めて、実際に捨ててみせる。それが実務だ。トランプも同じだ。言葉だけではなく、実行が伴わなければ戦争は終わらない。

就任後1カ月でトランプは動き出した。「一日で戦争を止める」と豪語し、その言葉を裏付ける行動を起こしている。2025年2月18日、ルビオ国務長官がラブロフ外相と会談。米露首脳会談の準備も進む。これはロシアを孤立させる従来の路線を捨て、交渉の土台を作る一手だ。トランプはアメリカを中立の調停者に据え、ロシアにはウクライナのNATO加盟を認めないと約束。一方、ウクライナには支援停止やレアアース権益を要求し、両者を交渉のテーブルに引きずり出す。これがドラッカーの「現実と向き合う」姿勢だ。机上の空論ではない。現実を動かす実務だ。

トランプの視野は戦争を止めるだけに留まらない。その先にあるのは「力による平和」。中国だろうが誰だろうが、侵略を許さない鉄の秩序だ。ソ連崩壊後の穏やかな時代は終わり、世界は再び力で語り合う時代に戻った。トランプはそれを見越している。ウクライナ戦争の和平条件にこだわるより、今すぐ終わらせて、次の脅威に備える。これが彼の計算だ。EUや日本のリーダーも、いずれこの現実に目を覚ますだろう。

レーガン大統領は冷戦時代に「力による平和」を語っていた

日本の自称「識者」はトランプを笑う。「無能だ」「異常だ」と決めつける。だが、彼らはドラッカーの教えを無視している。意図の価値は実務で証明されるのだ。トランプが米露関係を立て直し、ウクライナに圧力をかける姿を見れば、彼の意図が空虚でないのは明らかだ。「識者」の批判は現実を見ないおごりだ。ドラッカーが警告した「分析の放棄」そのものだ。トランプの「力による平和」は日本にも覚悟を求める。日本も目を覚ませ。

トランプの実務が成功するかどうかは、ドラッカーの言う「測定可能な成果」にかかっている。測定可能でなければ、成果を無意味というのが、ドラッカーのもっともな持論だ。和平が実現すれば勝利だ。だが、今はまだ道半ば。ロシアは戦況がみせかけかもしれないが有利だから停戦に消極的みえるし、ゼレンスキーは支援を期待して抵抗する。

これが現実の壁だ。それでもトランプは動く。ロシアに利益をちらつかせ、ウクライナに厳しい選択を迫る。冷徹で論理的なこのやり方は、ドラッカーの語る実行力だ。その先に「力による平和」が待つ。戦争を終わらせ、侵略を抑え込む強さだ。

ドラッカーの「良き意図と実務は違う」をトランプに当てはめれば、彼の取り組みは本物だ。戦争終結という意図は、米露関係の改善や交渉の駆け引きで形になりつつある。さらに「力による平和」で世界の崩壊を防ぐ。これがトランプの狙いだ。意図だけでは何も動かない。実務が現実を切り開く。

石破首相は長々と自ら思う「良き意図」を語るが・・・・・・

トランプをバカにする連中は、この基本を見落としている。彼の実務は彼がそれを認識しているか否かは別にしてドラッカー流の哲学に沿った力強さだ。ただし、成功はまだ不確実だ。さらなる努力と現実への対応が鍵だ。しかし、もう後戻りすることはない。そして、その先に訪れる力の時代に、日本も含めた西側は備えなければならない。目を背けるな。厳しい現実がそこにある。石破首相のように「良き意図」を語っているだけでは無意味だ。

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ロシアの昨年GDP、4・1%増…人手不足で賃金上昇し個人消費が好調―【私の論評】ロシア経済の成長は本物か?軍事支出が生む歪みとその限界 2025年2月9日

支援の見返りに「レアアースを」、トランプ氏がウクライナに求める…「彼らは喜んで供給するだろう」―【私の論評】ウクライナ、資源大国から経済巨人への道を歩めるか 2025年2月5日

2025年2月9日日曜日

ロシアの昨年GDP、4・1%増…人手不足で賃金上昇し個人消費が好調―【私の論評】ロシア経済の成長は本物か?軍事支出が生む歪みとその限界

ロシアの昨年GDP、4・1%増…人手不足で賃金上昇し個人消費が好調

まとめ
  • 024年のGDPは前年比4.1%増で、個人消費は5.2%、政府支出は4.5%の増加を示し、2年連続で4%超の成長を記録した。
  • 一方で、物価上昇率が9.5%に達する激しいインフレの中、プーチン大統領は均衡の取れた成長とインフレ抑制を今年の課題とした。

プーチン大統領

ロシア統計局によると、2024年のGDPは前年比4.1%増加し、2023年も同率増加しているため、10~11年以来、2年連続で4%超の成長率を記録した。

個人消費は労働力不足に伴う賃金上昇を背景に5.2%増、政府支出は4.5%増となった。

一方、同年12月の物価上昇率は前年同月比9.5%と激しいインフレが続いており、プーチン大統領は「均衡のとれた成長軌道の達成とインフレの抑制」を今年の課題と位置づけた。

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【私の論評】ロシア経済の成長は本物か?軍事支出が生む歪みとその限界

まとめ
  • ロシア経済の成長は軍事支出に依存:2024年のGDPは前年比4.1%増だが、成長の多くは軍需産業によるもので、民間経済の健全な発展とは言えない。
  • インフレと高金利の影響:消費者物価指数(CPI)は約9%上昇し、小売業の成長も価格上昇によるもの。ロシア中央銀行は政策金利を21%に引き上げたが、目標の4%を大きく超えている。
  • 軍事経済の弊害:軍事支出が増える一方、民生部門は投資や運転資金の確保が困難になり、人材も軍需産業に集中し、経済のバランスが崩れている。
  • 歴史の教訓:第二次世界大戦中と同様、戦争中のGDP成長は数字上のものであり、戦争経済の拡大に過ぎない。民間経済の基盤が蝕まれるリスクがある。
  • 持続可能な成長の必要性:軍事主導の成長は限界があり、民間経済の発展こそが真の成長。国民の生活向上を伴わない経済成長は、いずれ行き詰まる。

AI生成画像 韓国とロシアの国旗の柄をデザインした水着を着用した女性

ロシア経済は、近年波乱万丈の展開を見せている。2023年、同国は約2兆216億ドルのGDPを達成し、世界経済におけるシェアは1.92%に迫った。ウクライナ侵攻前、ロシアの経済規模は韓国に僅かに劣っていた。たとえば、2019年の名目GDPはロシアが約1.7兆ドル、韓国が約1.8兆ドルであったが、その後ロシアは若干上回るに至ったが、最新統計によれば現状でも両国の数字上の差はごく僅かである。

2024年第3四半期(7~9月期)には、ロシアは前年同期比3.1%の成長を記録した。しかし、第1四半期が5.4%、第2四半期が4.1%であったことと比較すれば、成長率は明らかに鈍化している。この成長は、小売業や製造業の堅調さによるものだが、その裏側には決して見逃せぬ現実が潜んでいる。

まず、製造業の堅調さについてである。戦争、特に総力戦の状況下では、軍需物資の大量生産がGDPに計上されるのは必然である。歴史を振り返れば、第二次世界大戦中の先進国は、民間経済の健全な成長とは裏腹に、軍事生産によってGDPが大幅に伸びた。ピーター・ドラッカーがかつて「後の経済学者が戦争中の各国のGDPだけを見れば、単なる好景気だと思うかもしれない」と語った逸話は、現代ロシアの厳しい現実を鋭く物語っている。

一方、小売業は高いインフレの影響を色濃く受けている。2024年第3四半期の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で約9%に達し、名目上の小売売上高は6.0%増加した。しかし、この数字は実際の購買量の拡大を示すものではなく、単に価格が跳ね上がった結果である。ロシア中央銀行はインフレを抑制するために政策金利を21%に引き上げたが、目標とする4%をはるかに上回る状況が続いている。

さらに、国際通貨基金(IMF)は2024年の実質GDP成長率を3.8%、2025年を1.4%と予測し、2024年の見通しを0.2ポイント上方修正した。一方、ロシア政府は2024年のGDP成長率を3.9%と見積もっているが、軍事支出の拡大、激しいインフレ圧力、そして深刻な労働力不足など、複数の課題が経済に重くのしかかっている。

ここで肝心なのは、国家が財政赤字を厭わず軍事支出を拡大している現状である。軍事費の膨張は、数字上の経済成長を押し上げるが、これは戦争経済の必然的な帰結であり、決して称賛に値するものではない。軍需部門やその下請け企業は潤っているが、民生部門は事業拡大のための投資はもちろん、当面の運転資金の確保すら困難な状況に陥っている。さらに、深刻な人材不足が生じ、優秀な人材が軍需分野に集中する結果、民間のイノベーションや経済活動は大きく阻害されている。

第二次世界大戦中の各国のGDPの推移

歴史は、同様の悲劇を過去にも示している。戦時下、各国は軍事支出を優先するあまり、民間経済の基盤が蝕まれ、ひずみが拡大した。ドラッカーが示したように、戦争中のGDP数値だけを取り上げれば、単なる戦争経済の拡大に過ぎないのだ。

結論として、ロシアのGDP成長や小売業の堅調さは、軍事支出による一時的な数字上の拡大に過ぎず、実際の民間経済の健全な発展を反映していない。国家が財政赤字を恐れず軍事費を拡大することは、必然的に高金利、深刻な人材不足、さらには民生部門の資金繰りの悪化といった副作用を招く。

こうしたひずみが深刻化すれば、軍事主導の経済成長はやがて頭打ちとなり、真に持続可能な成長は望めなくなる。経済成長の数字に惑わされるな。真の成長とは、民生部門が豊かになり、国民一人ひとりの生活が充実することである。

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2025年1月30日木曜日

トランプ米政権、職員200万人に退職勧告 在宅勤務禁止などに従わない場合―【私の論評】統治の本質を問う:トランプ政権の大胆な行政改革

トランプ米政権、職員200万人に退職勧告 在宅勤務禁止などに従わない場合

まとめ
  • トランプ米政権は連邦政府職員に在宅勤務を禁止し、従わない場合は退職を勧奨する方針を通知した。対象は約200万人で、退職者には9月末までの給与が支払われる。
  • 政権高官は5~10%の退職者が出ることで約1千億ドルの歳出削減が期待されている。この方針は政府の効率化を目指すものである。
  • 人事管理局は週5日の出勤を求め、職員に忠誠心と信頼性を強調し、2月6日までに退職の意向を返信するよう求めている。職位の存続は保証できないとされている。

トランプ大統領

 トランプ米政権は28日、連邦政府職員に対し、在宅勤務を禁止し、これに従わない場合は退職を勧奨する方針を通知した。対象となる職員は約200万人で、退職に応じた職員には9月末までの給与が支払われる予定である。政権高官によれば、退職者が5~10%出ることで、約1千億ドル(約15兆5千億円)の歳出削減につながると見込んでいる。

 この方針は、トランプ大統領が進める連邦政府改革の一環であり、「政府効率化省」の設置や新型コロナウイルス禍で進んだ在宅勤務の原則禁止を盛り込んだ大統領令に基づいている。政権は官僚機構に対する支配を強化することを狙っているが、大幅な人員削減が政府機能の不全を招く恐れもある。

 人事管理局はメールで職員に対し、週5日の出勤を求め、「忠誠心があり、信頼に足る人材で構成されるべき」と強調している。また、2月6日までに退職するかどうかの返信を求めており、政府機関の大半で職場の統廃合を通じて人員削減が進められることも示唆している。職位や所属機関の存続については、確実に保証できないとも付言されている。

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【私の論評】統治の本質を問う:トランプ政権の大胆な行政改革

まとめ
  • トランプ大統領が設立したDOGE(政府効率化省)は、連邦政府の無駄を削減し行政改革を推進する革命的な取り組みだ。
  • ドラッカーの理論によれば、政府の本質的役割は「統治」であり、実行とは明確に区別されるべきだ。
  • 真の改革とは、政府が効率化されるだけでなく、本来の「統治」の役割に立ち返ることだ。
  • ドラッカーの提唱する「再民間化」概念は、政府の力を弱めるのではなく、その能力と力を回復させる方法だ。
  • この改革の成否は、アメリカの未来だけでなく、21世紀の世界秩序をも左右する可能性がある。

アメリカが新たな時代の幕開けを迎えようとしている。トランプ大統領の就任演説で発表された政府効率化省(DOGE)の設立だ。これは単なる行政改革ではない。アメリカの根幹を揺るがす大改革の始まりだ。上の記事にある連邦政府職員に在宅勤務を禁止し、従わない場合は退職を勧奨する方針は、DOGEの助言を受け入れたものとみられる。

DOGEは、イーロン・マスクとビベック・ラマスワミという二人の実業家が共同で率いる。彼らの目標は明確だ。連邦政府の無駄を徹底的に削ぎ落とし、行政を根本から変えることだ。マスク氏は、ブロックチェーン技術の活用を検討している。政府の支出を透明化し、データを守り、建物管理まで効率化する。まさに革命的な発想だ。

DOGEは、ホワイトハウスのアイゼンハワー行政府ビル内にオフィスを構え、各連邦機関に少なくとも4人から成るチームを配置する。その姿勢は、まさに政府全体を変革する気概に満ちている。

だが、課題も山積みだ。DOGEの法的位置づけは不透明だ。複数の団体が訴訟を起こしている。公的権限もほとんどない。それでも、トランプ大統領は「マンハッタン計画」になぞらえ、その重要性を強調する。DOGEの活動は、米国の独立250周年となる2026年7月4日までに完了する予定だ。

この改革の背景には、共和党の「小さな政府」志向がある。さらに、トランプ氏の「ディープステート撲滅」という野心的な目標がある。マスク氏とラマスワミ氏も、以前から政府の規制権限に批判的で、連邦政府の大幅な縮小を主張してきた。

小さな政府そのものがゴールではない

しかし、ここで立ち止まって考えてみよう。そもそも政府とは何か。経営の神様ドラッカーは、政府の役割の本質を「統治」だと喝破した。社会に方向性を示し、エネルギーを結集させる。それが政府の役割だと。

ドラッカーは警告する。統治と実行を混同すれば、政府は麻痺する。意思決定機関に実行を委ねても、貧弱な結果しか生まれない。その逆も然りだ。企業は統治と実行を分離することで成功した。政府も同じだ。政府は統治に専念し、実行は他の組織に任せるべきだと。

ドラッカーは、政府の役割を次のように定義している。「政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである」。これこそが、真の「統治」の姿だ。

さらに、ドラッカーは「再民間化」(現代では民営化)という概念を提唱した。これは、政府の力を弱めるのではなく、むしろその能力と力を回復させる方法だ。実行は現場ごとの目的の下にそれぞれの現場に任せ、政府は決定と方向付けに専念する。これにより、政府は本来の役割に立ち返ることができる。

この視点は、今の改革にも重要だ。効率化や撲滅に走るあまり、政府の本来の役割を見失ってはいけない。DOGEが活動し、トランプ大統領がその助言を受け入れるならば、政府が効率化され、ディープステートが撲滅されるかもしれない。しかし、それだけでは不十分だ。政府を小さくすることだけに焦点を絞れば、改革はうまくいかない。

真の改革とは、政府が本来の役割である「統治」に立ち返ることだ。社会のために意味ある決定を行い、エネルギーを結集し、問題を浮かび上がらせ、選択肢を提示する。それこそが、政府の本質的な使命なのだ。

ドラッカー氏

ドラッカーの言葉を借りれば、「この300年間、政治理論と社会理論は分離されてきた。しかしここで、この半世紀に組織について学んだことを、政府と社会に適用することになれば、この二つの理論が再び合体する」。つまり、非政府組織(NGO)が成果を上げるための機関となり、政府が社会の諸目的を決定するための機関となる。そして、政府は多様な組織の指揮者となるのだ。この方向にトランプ大統領の改革が進んでほしい!

アメリカは今、歴史的な岐路に立っている。この改革が成功するか否か、世界中が固唾を呑んで見守っている。トランプ大統領の決断が、アメリカの、そして世界の未来を左右する。政府の効率化と本質的な役割の両立。それが実現できれば、アメリカは真の意味で「再び偉大に」なるだろう。

我々は今、歴史の大きな転換点に立ち会っている。この改革の行方が、21世紀の世界秩序を決定づけるかもしれない。G7の他の国々でも、似たような潮流がすでにあるが、現状でもっとも進み、可能性があるのはアメリカだといえる。トランプ大統領の手腕が、今ほど試されているときはない。政府の本質を見失わず、真の統治を実現できるか。その答えが、アメリカの、そして世界の未来を形作るのだ。

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「大統領令」100本署名〝移民やEV〟大転換 トランプ氏、第47代大統領に就任 中国の息の根を止める?融和姿勢目立つ日本は大丈夫か

まとめ
  • ドナルド・トランプ氏が第47代大統領に就任し、迅速な施策実行のために100本の大統領令に署名した。
  • 就任演説では「米国の完全な復活」と「常識の革命」を宣言し、国境での国家非常事態宣言や不法移民対策を強調する。
  • 経済政策においては、米国民を豊かにするために関税を課し、記録的なインフレの終息を約束する。
  • 中国との関係においては、貿易赤字是正や中国製品の排除を進める考えを示す。
  • 日本の石破政権は、トランプ政権と協力関係を強化する意向を示しつつ、中国との関係において難しい選択を迫られる可能性がある。
大統領令にサインするトンランプ大統領

 ドナルド・トランプ氏は20日(日本時間21日未明)に米ワシントンで第47代大統領に就任し、就任演説で「米国の完全な復活」と「常識の革命」を宣言した。就任初日から彼は、前任のジョー・バイデン大統領の政策を覆すことを目的とした多数の大統領令に矢継ぎ早に署名した。その数は100本にも上り、特にバイデン政権下で策定された大統領令の撤回を目指している。

 トランプ氏は、演説の中で不法移民の流入を阻止するために国境地帯で「国家非常事態」を宣言し、南部国境に米軍を派遣する意向を明らかにした。具体的には、国境関連の大統領令を10本署名し、軍や国境警備隊を派遣して「壁」の建設を推進する方針である。また、移民に関する犯罪組織を国際テロ組織に指定する考えも示した。

 経済面でも、トランプ氏は「米国民を豊かにするために関税を課す」と宣言し、記録的なインフレを終わらせることを約束した。エネルギー分野では「国家非常事態宣言」を行い、化石燃料の増産を図るとともに、地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」からの再離脱を表明した。電気自動車(EV)普及策の見直しも行う意向である。

 トランプ氏が大統領令を多用する背景には、環境、気候変動対策、関税、移民問題などを法律を変更せずに大統領レベルでの解釈を通じて取り組む狙いがある。上智大学の前嶋和弘教授は、トランプ氏が大統領令を頻繁に発出することで分断した米国を率いる姿勢を示そうとしていると分析している。

 さらに、トランプ氏は中国との関係についても強い姿勢を示しており、貿易赤字の是正に取り組む考えを示している。彼は関税を課すことで長引く貿易赤字の問題に対処し、中国やカナダ、メキシコを特に名指しして是正を迫る狙いがあると見られている。早稲田大学の渡瀬裕哉氏は、トランプ政権が中国製品の排除を進める中で、米国のハイブリッド車などにとっては競争優位を得る機会が生まれる可能性がある。

 日本の石破政権はトランプ政権との協力を強調し、「自由で開かれたインド太平洋」という共通の目標を追求する意向を示しているが、トランプ氏との対面会談はまだ実現していない。石破首相は、中国に対しても戦略的互恵関係の推進を確認しているが、トランプ政権の対中政策が今後の日本に与える影響については不透明な部分も多く、困難な選択を迫られる可能性があるとされている。

 全体として、トランプ政権の政策変更は、米国のみならず、国際的な関係や経済にも大きな影響を及ぼすことが予想され、特に日本はその中で重要な役割を果たすことが求められるだろう。 

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【私の論評】戦略なき親中姿勢により、米・中から信頼を失いつつある石破政権

まとめ
  • トランプ大統領の大統領令多用の背景には、任期制限(最長8年)と高齢(78歳)により、迅速な政策実行が必要不可欠であり、大統領令は最も効果的な手段となっている。
  • 「米国第一主義」という明確なグランドデザインを実現するため、大統領令を戦略的に活用し、自身のビジョンを迅速に推進している。
  • 安倍政権が構築したインド太平洋戦略は、トランプ、バイデン政権を通じて継承され、日米同盟の重要な基盤となっている。
  • 現在の石破政権は、明確な戦略なき親中姿勢により、米国からも中国からも信頼を失いつつある。
日米関係は未だ強固だが・・・・・・

トランプ氏は日本を重要な同盟国と認識しており、日米関係を損なう動きには容赦なく対応する可能性が高い。

トランプ氏の大統領令乱発には、深い理由がある。その背景を紐解くと、米国の政治システムと彼の個人的な状況が浮かび上がってくる。

まず、任期制限と年齢が大きな要因だ。米国大統領の任期は最長8年。これは1951年に制定された第22修正憲法によるものだ。フランクリン・D・ルーズベルト大統領の4期にわたる長期政権を受けて設けられた制限だ。78歳のトランプ氏にとって、残された任期の4年という期間は決して長くない。通常の立法プロセスは時間がかかりすぎる。そこで大統領令が、即効性のある政策実行の手段として浮上するのだ。

さらに、トランプ氏には「米国第一主義」という明確なビジョンがある。これは単なるスローガンではない。米国の将来を描くグランドデザインだ。日本のマスコミが報道するような矮小化されたものでもない。大統領令の多用は、このビジョンを迅速に実現するための手段なのだ。

星条旗とトランプ大統領 Ai生成画像

トランプ氏の大統領令は、後継者や支持者へのメッセージでもある。彼の描く米国の理想形を示し、その政策を法律化する使命を後継者に託す。短期間で重要な政策や改革を実現し、支持者に成果やビジョンを示すことができるのだ。

日本の立ち位置も、この文脈で重要な意味を持つ。安倍政権が推進したインド太平洋戦略は、トランプ政権、バイデン政権と引き継がれてきた。日本は米国と地域諸国をつなぐ重要な役割を果たしてきたのだ。

安倍晋三氏のインド太平洋戦略は、地域の安全保障と経済発展を促進するためのグランドデザインだった。自由で開かれた秩序の確立、法の支配や人権の尊重を重視し、アメリカとの同盟関係を深め、地域のパートナーシップを強化した。インフラ整備や投資支援にも力を入れ、経済の相互依存を促進した。

この戦略は、トランプ政権に受け継がれ、その理念が強化された。特に中国の影響力拡大に対抗するため、インド太平洋地域での安全保障の重要性が認識され、米国の同盟国との協力が推進された。日本との防衛協力が深まり、自由で開かれたインド太平洋の維持が強調されたのだ。

バイデン政権でも、このインド太平洋戦略は継承された。地域の安定と繁栄を確保するために、同盟関係の強化や多国間協力が重視されている。ASEAN諸国やオーストラリア、インドとの連携を深め、自由貿易や法の支配を基盤にした秩序の維持を目指している。

岸田政権も、この枠組みを継承した。海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」の台湾海峡通過は、その証左だ。これは石破政権への置き土産であり、インド太平洋戦略を後戻りできないようにする布石だった。

しかし、現在の石破政権は方向性を見失っている。親中的姿勢を示しつつも、明確な戦略がない。閣僚レベルでは親中的だが、日米合同軍事演習への参加は続けている、一方中国軍代表団の来日を許可するなど、一貫性に欠ける行動が目立つ。

石破政権には、インド太平洋戦略に匹敵するグランドデザインがない。アジア版NATOの提唱も思いつきレベルだ。中国とのパートナーシップ強化も具体性に欠ける。親中姿勢も、安倍派への対抗心の裏返しくらいのものでしかない。

結局のところ、米国からも中国からも舐められ、近い将来崩壊する運命だろう。トランプはこれを見透かしているが、日本を重要な同盟国と認識している。日本の軍事力や経済力は、中国と対峙する上で欠くことのできない存在なのだ。

談笑するトランプ大統領と、安倍首相 AI生成画像

トランプ氏は、日米同盟を損なう動きには容赦なく対応するだろう。グリーンランド買収提案のような大胆な行動も辞さない。残された時間が少ないため、遠慮会釈のない行動をとる可能性が高い。バイデン流の裏工作ではなく、誰の目にも見える顕な動きをするかもしれない。

日本は、インド太平洋地域における重要な同盟国としての役割を再認識し、明確な戦略を持って対応する必要がある。そうしなければ、米中両国から軽視され、国際的影響力を失う危険性がある。

トランプ氏の大統領令多用は、限られた時間で自身のビジョンを実現するための戦略的手段なのだ。それは単なる政治手法ではなく、米国の将来と国際秩序を左右する重要な動きなのである。日本は、この動きを正確に読み取り、自国の立ち位置を慎重に定める必要がある。そうすることで初めて、激動する国際情勢の中で、日本の国益を守り、世界の平和と安定に貢献できるのだ。

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2025年1月21日火曜日

トランプ氏「黄金時代」誓う、不法移民対策など優先 米大統領就任―【私の論評】トランプ氏の就任演説を徹底解説!英語学習者向け語彙・表現のポイントも紹介

トランプ氏「黄金時代」誓う、不法移民対策など優先 米大統領就任

まとめ
  • ドナルド・トランプ氏が米国の第47代大統領に就任し、不法移民取り締まりを優先課題とし、「米国の黄金時代が今始まる」と宣言した。
  • 演説で彼は自らの復帰を「歴史的な政治的復活」とし、2025年1月20日を「解放の日」と位置付け、前政権の政策を批判した。
  • トランプ氏は78歳で史上最年長の大統領として就任し、暗殺未遂を振り返りながら「神によって救われた」と述べた。


米国の第47代大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。米東部時間20日正午(日本時間21日未明)に連邦議会議事堂で行われた就任式で、トランプ氏は不法移民取り締まりを優先課題として挙げ、「米国の黄金時代が今始まる」と宣言した。彼は78歳で、史上最年長の大統領として就任した。

約30分に及んだ演説では、「2025年1月20日は米国民にとって解放の日になる」と述べ、昨年の暗殺未遂を振り返りながら、「米国を再び偉大にするため、私は神によって救われた」と語った。トランプ氏は、2020年の大統領選を巡る起訴や有罪判決を経て4年ぶりにホワイトハウスに復帰した。「このような歴史的な政治的復活は不可能だと多くの人は考えていた」と強調し、「今、米国では何事も不可能ではないことの証としてここに立っている。不可能とされることこそ、われわれが最も得意とすることだ」と述べた。

さらに、彼は自らを和平の実現者として印象付けようとし、他の国が犯罪者を米国に送り込んでいるという選挙活動中の主張を繰り返した。また、自身に対する訴追への不満も表明した。前大統領のバイデン氏も就任式に出席する中、移民対応や外交に至るまで前政権の政策を痛烈に批判した。

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【私の論評】トランプ氏の就任演説を徹底解説!英語学習者向け語彙・表現のポイントも紹介

宣誓をするトランプ大統領

全体として、トランプ大統領の就任演説は、これまでの彼の政治的立場や発言と一致しており、大きなサプライズはなかった。しかし、その内容は極めて具体的かつ大胆なものであり、アメリカ国内外に大きな影響を与えるだろう。アメリカ第一主義を前面に押し出し、国内経済の活性化と国際舞台でのアメリカの影響力拡大を目指す姿勢が鮮明に表れた演説であったと言えるだろう。

以下に、トランプ氏の就任演説の全文、翻訳、英語学習者向けの語彙、表現などの要点を掲載します。是非参考にしてください。

元文

Vice President Vance, Speaker Johnson, Senator Thune, Chief Justice Roberts, justices of the United States Supreme Court, President Clinton, President Bush, President Obama, President Biden, Vice President Harris and my fellow citizens:

The golden age of America begins right now. From this day forward, our country will flourish and be respected again all over the world. We will be the envy of every nation. And we will not allow ourselves to be taken advantage of any longer.

During every single day of the Trump administration, I will, very simply, put America first. Our sovereignty will be reclaimed. Our safety will be restored. The scales of justice will be rebalanced. The vicious, violent and unfair weaponization of the Justice Department and our government will end. And our top priority will be to create a nation that is proud and prosperous and free.

America will soon be greater, stronger, and far more exceptional than ever before. I return to the presidency confident and optimistic that we are at the start of a thrilling new era of national success. A tide of change is sweeping the country. Sunlight is pouring over the entire world, and America has the chance to seize this opportunity like never before.

But first, we must be honest about the challenges we face. While they are plentiful, they will be annihilated by this great momentum that the world is now witnessing and the United States of America. As we gather today, our government confronts a crisis of trust. For many years, the radical and corrupt establishment has extracted power and wealth from our citizens. While the pillars of our society lay broken and seemingly in complete disrepair, we now have a government that cannot manage even a simple crisis at home while at the same time stumbling into a continuing catalog of catastrophic events abroad.

It fails to protect our magnificent, law-abiding American citizens but provides sanctuary and protection for dangerous criminals, many from prisons and mental institutions that have illegally entered our country from all over the world. We have a government that has given unlimited funding to the defense of foreign borders but refuses to defend American borders, or more importantly, its own people.

Our country can no longer deliver basic services in times of emergency, as recently shown by the wonderful people of North Carolina, who've been treated so badly. And other states who are still suffering from a hurricane that took place many months ago. Or more recently, Los Angeles, where we are watching fires still tragically burn from weeks ago without even a token of defense. They're raging through the houses and communities, even affecting some of the wealthiest and most powerful individuals in our country, some of whom are sitting here right now. They don't have a home any longer. That's interesting.

But we can't let this happen. Everyone is unable to do anything about it. That's going to change. We have a public health system that does not deliver in times of disaster, yet more money is spent on it than any country anywhere in the world. And we have an education system that teaches our children to be ashamed of themselves, in many cases to hate our country despite the love that we try so desperately to provide to them. All of this will change starting today and will change very quickly.

Our recent election is a mandate to completely and totally reverse a horrible betrayal, and all of these many betrayals that have taken place, and to give the people back their faith, their wealth, their democracy and indeed their freedom. From this moment on, America's decline is over.

Our liberties and our nation's glorious destiny will no longer be denied and we will immediately restore the integrity, competency and loyalty of America's government. Over the past eight years, I have been tested and challenged more than any president in our 250-year history, and I've learned a lot along the way. The journey to reclaim our Republic has not been an easy one, that I can tell you. Those who wish to stop our cause have tried to take my freedom and indeed to take my life. Just a few months ago, in a beautiful Pennsylvania field, an assassin's bullet ripped through my ear. But I felt then, and believe even more so now, that my life was saved for a reason. I was saved by God to make America great again.

That is why each day under our administration of American patriots, we will be working to meet every crisis with dignity and power and strength. We will move with purpose and speed to bring back hope, prosperity, safety and peace for citizens of every race, religion, color and creed. For American citizens, Jan. 20, 2025, is Liberation Day.

It is my hope that our recent presidential election will be remembered as the greatest and most consequential election in the history of our country. As our victory showed, the entire nation is rapidly unifying behind our agenda with dramatic increases in support from virtually every element of our society. Young and old, men and women, African Americans, Hispanic Americans, Asian Americans, urban, suburban and rural. And, very importantly, we had a powerful win in all seven swing states and the popular vote. We won by millions of people.

To the Black and Hispanic communities, I want to thank you for the tremendous outpouring of love and trust that you have shown me with your vote. We set records, and I will not forget it. I've heard your voices in the campaign, and I look forward to working with you in the years to come.

Today is Martin Luther King Day and his honor — this will be a great honor — but in his honor, we will strive together to make his dream a reality. We will make his dream come true.

National unity is now returning to America and confidence and pride is soaring like never before. In everything we do my administration will be inspired by a strong pursuit of excellence and unrelenting success. We will not forget our country. We will not forget our Constitution. And we will not forget our God.

Today, I will sign a series of historic executive orders. With these actions, we will begin the complete restoration of America and the revolution of common sense. It's all about common sense. First, I will declare a national emergency at our southern border. All illegal entry will immediately be halted. And we will begin the process of returning millions and millions of criminal aliens back to the places from which they came. We will reinstate my remain in Mexico policy. I will end the practice of catch and release. And I will send troops to the southern border to repel the disastrous invasion of our country. Under the orders I sign today we will also be designating the cartels as foreign terrorist organizations. And by invoking the Alien Enemies Act of 1798, I will direct our government to use the full and immense power of federal and state law enforcement to eliminate the presence of all foreign gangs and criminal networks bringing devastating crime to U.S. soil, including our cities and inner cities.

As commander in chief, I have no higher responsibility than to defend our country from threats and invasions. And that is exactly what I am going to do. We will do it at a level that nobody has ever seen before. Next, I will direct all members of my cabinet to marshal the vast powers at their disposal to defeat what was record inflation and rapidly bring down costs and prices. The inflation crisis was caused by massive overspending and escalating energy prices. And that is why today I will also declare a national energy emergency. We will drill, baby, drill.

America will be a manufacturing nation once again, and we have something that no other manufacturing nation will ever have: the largest amount of oil and gas of any country on Earth. And we are going to use it. We will bring prices down, fill our strategic reserves up again, right to the top, and export American energy all over the world. We will be a rich nation again. And it is that liquid gold under our feet that will help to do it.

With my actions today, we will end the Green New Deal and we will revoke the electric vehicle mandate, saving our auto industry and keeping my sacred pledge to our great American autoworkers. In other words, you'll be able to buy the car of your choice. We will build automobiles in America again at a rate that nobody could have dreamt possible just a few years ago. And thank you to the auto workers of our nation for your inspiring vote of confidence. We did tremendously with their vote.

I will immediately begin the overhaul of our trade system to protect American workers and families. Instead of taxing our citizens to enrich other countries, we will tariff and tax foreign countries to enrich our citizens. For this purpose, we are establishing the External Revenue Service to collect all tariffs, duties and revenues. It will be massive amounts of money pouring into our treasury coming from foreign sources.

The American Dream will soon be back and thriving like never before. To restore confidence and effectiveness to our federal government, my administration will establish the brand new Department of Government Efficiency.

After years and years of illegal and unconstitutional federal efforts to restrict free expression, I will also sign an executive order to immediately stop all government censorship and bring back free speech to America. Never again will the immense power of the state be weaponized to persecute political opponents. Something I know something about. We will not allow that to happen. It will not happen again. Under my leadership, we will restore fair, equal and impartial justice under the Constitution and the rule of law. And we are going to bring law and order back to our cities.

This week, I will also end the government policy of trying to socially engineer race and gender into every aspect of public and private life. We will forge a society that is colorblind and merit based. As of today, it will henceforth be the official policy of the United States government that there are only two genders, male and female. This week I will reinstate any service members who were unjustly expelled from the military for objecting to the Covid vaccine mandate with full back pay. And I will sign an order to stop our warriors from being subjected to radical political theories and social experiments while on duty. It's going to end immediately. Our armed forces will be free to focus on their sole mission—defeating America's enemies. Like in 2017, we will again build the strongest military the world has ever seen.

We will measure our success not only by the battles we win but also by the wars that we end. And, perhaps most importantly, the wars we never get into. My proudest legacy will be that of a peacemaker and unifier. That's what I want to be. A peacemaker and a unifier. I'm pleased to say that, as of yesterday, one day before I assumed office, the hostages in the Middle East are coming back home to their families.

America will reclaim its rightful place as the greatest, most powerful, most respected nation on earth, inspiring the awe and admiration of the entire world. A short time from now, we are going to be changing the name of the Gulf of Mexico to the Gulf of America. And we will restore the name of the great President William McKinley to Mount McKinley, where it should be and where it belongs. President McKinley made our country very rich through tariffs and through talent.

He was a natural businessman and gave Teddy Roosevelt the money for many of the great things he did, including the Panama Canal, which has foolishly been given to the country of Panama after the United States — the United States, I mean, think of this, spent more money than ever spent on a project before and lost 38,000 lives in the building of the Panama Canal. We have been treated very badly from this foolish gift that should have never been made. And Panama's promise to us has been broken. The purpose of our deal and the spirit of our treaty has been totally violated. American ships are being severely overcharged and not treated fairly in any way, shape or form, and that includes the United States Navy. And above all, China is operating the Panama Canal. And we didn't give it to China, we gave it to Panama, and we're taking it back.

Above all, my message to Americans today is that it is time for us to once again act with courage, vigor and the vitality of history's greatest civilization. So as we liberate our nation, we will lead it to new heights of victory and success. We will not be deterred. Together, we will end the chronic disease epidemic and keep our children safe, healthy and disease free. The United States will once again consider itself a growing nation, one that increases our wealth, expands our territory, builds our cities, raises our expectations and carries our flag into new and beautiful horizons. And we will pursue our manifest destiny into the stars, launching American astronauts to plant the Stars and Stripes on the planet Mars.

And it's the lifeblood of a great nation. And, right now, our nation is more ambitious than any other. There's no nation like our nation. Americans are explorers, builders, innovators, entrepreneurs and pioneers. The spirit of the frontier is written into our hearts. The call of the next great adventure resounds from within our souls. Our American ancestors turned a small group of colonies on the edge of a vast continent into a mighty republic of the most extraordinary citizens on Earth. No one comes close. Americans pushed thousands of miles through a rugged land of untamed wilderness. They crossed deserts, scaled mountains, braved untold dangers, won the Wild West, ended slavery, rescued millions from tyranny, lifted millions from poverty, harnessed electricity, split the atom, launched mankind into the heavens and put the universe of human knowledge into the palm of the human hand. If we work together, there is nothing we cannot do and no dream we cannot achieve.

Many people thought it was impossible for me to stage such a historic political comeback. But as you see today, here I am. The American people have spoken. I stand before you now as proof that you should never believe that something is impossible to do. In America, the impossible is what we do best. From New York to Los Angeles, from Philadelphia to Phoenix, from Chicago to Miami, from Houston to right here in Washington, D.C., our country was forged and built by the generations of patriots who gave everything they had for our rights and for our freedom. They were farmers and soldiers, cowboys and factory workers, steel workers and coal miners, police officers and pioneers who pushed onward, marched forward and let no obstacle defeat their spirit or their pride. Together they laid down the railroads, raised up the skyscrapers, built great highways, won two world wars, defeated fascism and communism, and triumphed over every single challenge that they faced.

After all we have been through together, we stand on the verge of the four greatest years in American history. With your help, we will restore an American promise and we will rebuild the nation that we love. And we love it so much. We are one people, one family and one glorious nation under God. So to every parent who dreams for their child and every child to dreams for their future: I am with you, I will fight for you and I will win for you. And we're going to win like never before.

In recent years, our nation has suffered greatly. But we are going to bring it back and make it great again. Greater than ever before. We will be a nation like no other. Full of compassion, courage and exceptionalism. Our power will stop all wars and bring a new spirit of unity to a world that has been angry, violent, and totally unpredictable.

America will be respected again and admired again, including by people of religion, faith and goodwill. We will be prosperous. We will be proud. We will be strong and we will win like never before. We will not be conquered. We will not be intimidated. We will not be broken. And we will not fail.

From this day on, the United States of America will be a free, sovereign and independent nation. We will stand bravely. We will live proudly. We will dream boldly, and nothing will stand in our way. Because we are Americans. The future is ours. And our golden age has just begun.

Thank you. God bless America. Thank you all. Thank you.


AP通信のフォトグラファー、エバン・ブッチ氏の「奇跡の一枚」。トランプ前大統領は7月13日の選挙集会で銃撃された直後、拳を上げて強さをアピールした


翻訳文

副大統領バンス、スピーカー・ジョンソン、セネター・スーン、ロバーツ最高裁長官、最高裁判所の裁判官、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領、オバマ元大統領、バイデン元大統領、ハリス副大統領、そして市民の皆さん:

アメリカの黄金時代は今始まる。これから私たちの国は繁栄し、世界中で再び尊敬される。私たちはすべての国に羨ましがられる存在になる。もはや、他者に利用されることは許さない。

トランプ政権の間、私は常にアメリカを第一に考える。我々の主権を取り戻し、安全を回復し、正義のバランスを再調整する。司法省や政府の不当な武器化を終わらせ、誇り高く繁栄し自由な国を築くことが最優先だ。

アメリカは今よりも大きく、強く、例外的になる。私は国家の成功の新しい時代の始まりを信じている。変化の潮流が国を揺るがしている。だが、まずは直面している課題について正直でなければならない。信頼の危機が政府を襲っている。長年にわたり、腐敗した体制が市民から権力と富を奪ってきた。

我々の国は、緊急時に基本的なサービスを提供できなくなっている。たとえば、ノースカロライナの人々はひどい扱いを受けている。また、ロサンゼルスでは火災が続いている。これらの問題を放置するわけにはいかない。公共の健康システムは機能せず、教育システムは子供たちに国を嫌わせている。これらは今日から変わる。

最近の選挙は、ひどい裏切りを完全に覆すための権限であり、市民に信頼、富、民主主義、自由を取り戻させる。これからアメリカの衰退は終わる。

我々の自由と国の栄光ある運命は再び否定されず、政府の誠実さ、能力、忠誠心をすぐに取り戻す。過去8年間、私は多くの試練に直面したが、それを通じて多くを学んだ。そして、私の人生はアメリカを再び偉大にするために救われた。

私たちは、すべての危機に対して力強く、威厳を持って対応する。我々は、すべての人々の希望、繁栄、安全、平和を取り戻すために行動する。2025年1月20日は解放の日だ。

今後の選挙が国にとって最も重要な選挙として記憶されることを期待している。支持は急速に広がっており、すべての社会層から支持を得ている。黒人やヒスパニックのコミュニティからの愛と信頼に感謝する。

今日、私たちはマーティン・ルーサー・キングの日を祝う。彼の夢を実現するために一緒に努力する。国家の団結が戻り、自信と誇りが高まっている。私の政権は優れた成果を追求し、国を忘れず、憲法を守り、神を忘れない。

今日、私は歴史的な行政命令に署名する。南部国境で国家緊急事態を宣言し、すべての不法入国を即座に停止する。犯罪者を母国に送り返すプロセスを始める。カートルを外国のテロ組織として指定し、連邦と州の法執行機関の力を使って外国のギャングと犯罪ネットワークを排除する。

私は最高司令官として国を守る責任がある。インフレを抑えるために、閣僚にあらゆる力を使わせる。アメリカは再び製造業国となり、他国にない豊富な石油とガスを活用する。グリーンニューディールを終わらせ、自動車産業を守る。

貿易システムを見直し、アメリカ市民を豊かにするために外国に課税する。アメリカンドリームは再び復活する。政府の効率性を高める新しい省を設立する。

政府の検閲を停止し、自由な言論を復活させる。憲法と法の下で公平な正義を回復し、法と秩序を都市に戻す。人種や性別を社会に持ち込む政策を終わらせ、二つの性別、男性と女性のみを公式に認める。

我々は、アメリカを最強の軍事力に再建する。成功は戦争を終わらせることによって測る。我々は最高の国としての地位を取り戻し、世界の尊敬を集める。アメリカは再び偉大な国になる。 


米東部ペンシルベニア州にあるファストフード大手マクドナルドの店舗で、フライドポテトを提供するトランプ前大統領=2024年10月20日


英語学習者に向けて

トランプ氏の演説には、TOEIC学習者にとって重要な単語や表現が多く含まれています。以下にいくつかのポイントを挙げて解説します。

1. Key Vocabulary (重要単語)

  • Mandate (権限) これは「権限」や「委任」という意味で、選挙や政治的な文脈でよく使われます。TOEICでは、ビジネスや政治関連の文書で見かけることがあるため、しっかり理解しておくと良いでしょう。

  • Sovereignty (主権) 国家の独立性や権利を指す言葉です。国際関係や政治の文脈でよく登場します。

  • Prosperity (繁栄) 経済的な成功や豊かさを表す言葉です。ビジネスの文脈で使用されることが多いので、覚えておくと役立ちます。

  • Integrity (誠実さ) 誠実であることや一貫性を意味します。職場やビジネスでの信頼性に関わる重要な概念です。

2. Important Expressions (重要表現)

  • "America First" (アメリカ第一) これはアメリカの利益を最優先するという政策の標語です。TOEICでのビジネス戦略や方針を説明する際に使える表現です。

  • "We will not allow ourselves to be taken advantage of" (利用されることは許さない) これは自己防衛や強い意志を示す表現です。ビジネスシーンでの交渉や契約の際に、自分の立場を明確にする際に使えます。

  • "Reclaim our Republic" (共和国を取り戻す) 政治的な文脈での「取り戻す」という表現は、再建や復興を意味します。ビジネスの文脈でも、失ったものを取り戻す際に使える表現です。

3. Contextual Understanding (文脈の理解)

  • Crisis of trust (信頼の危機) これは政府や組織が市民や顧客の信頼を失っている状況を指します。TOEICでは、顧客サービスやビジネス倫理に関連する問題で登場することがあります。

  • "Unity and pride" (団結と誇り) 組織やチームの団結を強調する表現です。TOEICではチームワークやリーダーシップに関する問題で役立つフレーズです。

4. Listening and Comprehension Skills (リスニングと理解力)

  • トランプ氏の演説では感情や強い意志を表現するために、イントネーションや強調されている部分があります。冒頭に掲載した、動画を参考にして、これらを聴き取りましょう。TOEICのリスニングセクションでは、話者の意図を理解するために、こうした感情のニュアンスを捉えることが求められます。

これらの単語や表現を理解し、使えるようにすることで、TOEICのスコア向上に役立ちます。また、政治やビジネスの文脈での会話や文章理解がスムーズになるでしょう。


保守派に向けて


トランプ氏の就任演説には、保守派がよく用いる英語表現やフレーズが多く含まれています。以下にいくつかの重要な表現を挙げ、それに関連する用い方や例文を示します。

1. "America First" (アメリカ第一)

  • 用い方: 自国の利益を優先する姿勢を示すフレーズです。保守派の政策や意見を表現する際に頻繁に使用されます。

  • 例文: "In our trade negotiations, we must always remember the principle of America First to protect our workers and industries." (私たちの貿易交渉では、常にアメリカ第一の原則を忘れず、労働者と産業を守る必要があります。)

2. "Restore Law and Order" (法と秩序を回復する)

  • 用い方: 社会の安全や治安を重視し、犯罪を抑制する方針を強調する際に使われます。

  • 例文: "We need to take strong action to restore law and order in our cities to ensure the safety of all citizens." (私たちは、すべての市民の安全を確保するために、都市で法と秩序を回復するために強力な行動を取る必要があります。)

3. "Protect our Borders" (国境を守る)

  • 用い方: 移民政策や国防に関連する文脈で、自国の国境を守ることの重要性を訴える際に使用されます。

  • 例文: "It is essential that we implement strict measures to protect our borders and prevent illegal immigration." (我々の国境を守り、不法移民を防ぐために厳格な措置を講じることが不可欠です。)

4. "Defend our Values" (我々の価値を守る)

  • 用い方: 自国の文化や伝統的な価値観を守ることの重要性を訴える際に使われます。

  • 例文: "As a nation, we must unite to defend our values and ensure that future generations inherit a free and prosperous society." (国として、我々の価値を守り、将来の世代が自由で繁栄した社会を受け継ぐことを確保するために団結しなければなりません。)

5. "Economic Prosperity" (経済的繁栄)

  • 用い方: 経済の成長や繁栄を強調する際に用いられ、特に仕事の創出や産業の復興に関連します。

  • 例文: "Our policies will focus on fostering economic prosperity for all Americans through job creation and support for small businesses." (我々の政策は、雇用創出と中小企業支援を通じて、すべてのアメリカ人の経済的繁栄を促進することに焦点を当てます。)

6. "Patriotism" (愛国心)

  • 用い方: 国家への誇りや愛国心を強調する際に使われ、特に保守派の演説でよく見られます。

  • 例文: "We must instill a sense of patriotism in our youth, teaching them the importance of serving and protecting our country." (私たちは若者に愛国心を植え付け、国を守り、奉仕することの重要性を教える必要があります。)

これらの表現は、保守派の政治的立場や価値観を伝えるための重要な手段です。演説や文章でこれらのフレーズを効果的に使用することで、メッセージを強調し、聴衆に影響を与えることができます。



トランプ氏のシンプルで力強い話し方は、ビジネスにおいても非常に参考になります。理解しやすさ、力強さ、自信、感情の訴えを意識することで、コミュニケーションの効果を高め、より良い関係を築くことができるでしょう。これらの要素を取り入れることで、ビジネスシーンでの成功を促進することが可能です。

日本の保守派にとって、他国の保守派とのコミュニケーションに英語は不可欠です。トランプ氏の演説は、共通の価値観を共有するための参考になります。彼のシンプルで力強い表現は、国際的な場での効果的なコミュニケーションに役立ちます。また、感情に訴える要素を取り入れることで、聴衆とのつながりを強化することができます。さらに、トランプ氏が示した明確な立場は、国際問題に対する一貫した姿勢を持つ重要性を教えてくれます。これらの要素を学ぶことで、日本の保守派は他国との連携を強化し、国際社会での影響力を高めることができるでしょう。

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