2025年9月8日月曜日

自民党は顔を替えても救われない――高市早苗で「電力安定・減税・抑止力」を同時に立て直せ

前回の総裁選で立候補を表明した時の高市早苗氏

まとめ

  • 石破茂は連敗と党内圧力で9月7日に辞任表明に至った。前夜の官邸での菅義偉・小泉進次郎の面会は、石破に「自発的退陣」を促した可能性が高い出来事である。
  • 自民党には派閥が“担ぎやすい顔”を前に出す「操り人形」体質が根づいている。顔を替えるだけでは何も変わらない。敗因の核心は、世論の温度を外し続ける鈍感力そのものである。
  • 参院選で有権者の主争点は、外国人政策・経済(物価と賃上げ)・安全保障であった。それにもかかわらず、党内の一部は「裏金」防戦に偏り、論点の主導権を手放した。
  • SNSの一次情報(候補本人や陣営の投稿)には、保守系比例候補の敗北報告や支持層離反の自己分析が相次いで記録されている。マスコミ論調ではなく当事者の言葉が、争点の読み違いを裏づけている。
  • 次の総裁選の分岐は明快である。小泉進次郎を“新しい顔”として担ぐだけなら、石破政権の再演になる。保守票を高市早苗に一本化し、上記三争点に即した具体策を掲げるなら、反転の余地は残る。

🔳鈍感力が招いた「石破政権」終幕
 

石破茂は9月7日、辞任を表明した。理由は「米国との関税交渉が一区切りついた」というものだが、実態は選挙敗北の連鎖と党内の突き上げである。公式会見と大手通信の一斉報道が、その事実関係を裏づける。(首相官邸ホームページ, Reuters, The Japan Times)

その前夜、官邸では異例の面会があった。菅義偉が約30分で退席し、小泉進次郎は約2時間残って石破と協議――この具体的な時間経過まで報じられている。面会の狙いは「自主的辞任」の説得であり、翌日の表明につながったとみるのが自然だ。小泉が前に出て、菅が“背中を押す”。いかにも自民党らしい「段取り」である。(Nippon)

ここで強調すべきは、鈍感力の温存が同じ悲劇を繰り返すという単純な理屈だ。石破は「辞め時」を読み違え、世論の変化に鈍かった。その末路を、党内の多くがいまさら悟った。しかし、悟った“つもり”のままでは何も変わらない。鈍感さを脱しない限り、誰が総裁でも同じ道を辿るだけである。(CSIS)

🔳「操り人形」の伝統と小泉進次郎の危うさ
 
 自民党には古来、派閥領袖や実力者が「担げる器」を探し、前に押し立てる癖がある。派閥政治の重みは令和の今日も減っていない。総裁選は形式上“開かれた選挙”でも、最終局面ではキングメーカーの読みと手が結果を左右する。(East Asia Forum, Cambridge University Press & Assessment)

今回、幹部の一部が小泉進次郎を次なる「操りやすい旗頭」と見て動くのは必然だろう。実際、辞任当日に有力候補として小泉の名が並ぶ。だが、鈍感力を引きずったまま小泉を押し立てれば、石破と同じ運命になるだけだ。顔ぶれを替え、ポスターを貼り替えても、鈍感な政権運営は支持を失う。これは政局観ではなく、近年の結果が示す経験則である。(Reuters)

「保守票の結集」が勝敗を決めた例は枚挙に暇がない。2012年、総裁選は一度は石破が先行しながら、決選投票で安倍晋三が逆転した。派閥横断の乗り換えと保守票の収斂が一気に流れを変えた事実は、党公式史や同時代分析に記録されている。今回も、保守側が分裂すれば負け、結集すれば勝つ――法則は変わらない。(自民党, Brookings)
 
🔳争点の取り違え――「外国人・経済・安保」対「裏金」

世耕氏は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で離党勧告を受け、2024年衆院選で和歌山2区から無所属で立候補して当選

参院選の実際の関心は、外国人・経済(物価)・安保だった。SNS上の話題量でも「外国人政策」が突出し、政策シンクタンクの論考でもエネルギー安全保障や物価・財政が主要争点として整理されている。現実の選挙分析でも、反移民色を強めた小党の伸長が指摘された。(毎日新聞, 東京財団, Reuters)

それでも自民党内の鈍感な一部は、「最大の争点は裏金だ」と思い込み、相手の土俵に乗った。結果は厳しい。保守系の看板議員にまで落選が相次いだ。たとえば、佐藤正久、和田政宗、山東昭子、赤池誠章――いずれも本人や陣営がX上で敗北や苦戦を明かし、支持層の離反を直視せざるを得なかった。杉田水脈も主要紙が落選確実と報じた。現場の空気は、SNSに最も率直に残っている。(X (formerly Twitter), 朝日新聞)

一方世耕氏は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で離党勧告を受け、2024年衆院選で二階王国と言われた、和歌山2区から無所属で立候補して当選した。これは、自民党の鈍感力を鋭く抉る結果となった。

では有権者は何を見ていたか。物価高が続くなか、経済運営と対米関税対応が暮らしを直撃し、外国人政策の運用と安全保障に不安が広がった。ここを正面から語らず、スキャンダルの応酬に終始した側が負けた――それが今回の選挙の実像である。(MUFG_BANK, Reuters)

結論は単純だ。鈍感力こそ、自民党を滅ぼす毒である。石破の辞任は、その毒が政権を倒すことを証明した。菅と小泉の面談が“引導”を渡した可能性は高いが、真に必要なのは「担ぐ顔」を変えることではない。保守票をばらまく分裂をやめ、外国人問題・経済・安保という国民の切実な争点に、具体策で応えることだ。小泉を操り人形に仕立てても、鈍感さを捨てなければ沈むだけである。いま必要なのは、耳の痛い現実を直視する感覚――その回復である。(Nippon, CSIS)

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