2025年9月17日水曜日

アジア株高騰──バブル誤認と消費税増税で潰された黄金期を越え、AI・ロボット化で日本は真の黄金期を切り拓く

 

まとめ

  • アジア株は日経平均4万4千円台、韓国・台湾市場も最高値を更新し、AI成長・ロボット化・石破辞任・台湾有事リスク低下が追い風となっている。
  • 日本は過去、バブル期の誤った金融引き締めとアベノミクス期の二度の消費税増税で黄金期を逃した。
  • コロナ禍では国債100兆円規模の補正予算で雇用を守り、国債財政の有効性と安全性が証明された。
  • AI革命とロボット装置化は労働力不足を補うが、膨大な電力と低消費電力半導体の開発が不可欠であり、日本はすでにその開発に取り組んでいる。
  • 再エネ依存を捨て、火力・SMR・核融合を柱とする現実的なエネルギー政策と正しい金融財政運営を行えば、日本は真の黄金時代を切り拓ける。
アジア株式市場が沸騰している。東京市場も例外ではなく、日経平均株価はついに4万5千円台に乗せた。韓国や台湾の市場も史上最高値を更新し、アジア全体が株高の波に飲み込まれている。背景には米国の利下げ観測、AI産業の急成長、ロボット化の進展、そして日本国内の政局の変化がある。石破首相の辞任は「政治リスクの後退」と受け止められ、外国人投資家の買いを呼び込んだ。さらに台湾市場の高値は「台湾有事は差し迫っていない」というシグナルとなり、安心感を与えている。

しかし、浮かれてはならない。我々は過去に何度も黄金期を逃してきた。その最大の原因は、金融と財政の誤った政策判断である。
 
🔳過去に逃した黄金期と政策の失敗


1980年代末、日本は世界に冠たる経済大国の地位を確立しつつあった。だが、日銀は株価や地価の高騰を「過熱」と誤認し、強烈な金融引き締めに走った。結果、不動産市場は崩壊し、企業は資金繰りに苦しみ、さらに政府も緊縮財政に転じ、日本経済は長い停滞に陥った。いわゆる「失われた30年」の出発点である。

次に訪れたのがアベノミクスだ。2012年以降、異次元緩和と財政出動で株価は急騰し、企業収益も改善した。黄金期に入るかと見えたが、ここでも誤算が起きた。2014年、消費税率を5%から8%へ、2019年には8%から10%へ引き上げたことである。これで消費は冷え込み、景気は腰折れした。安倍首相は本心では増税に反対だったが、財務省、御用学者、野党、メディアの圧力に屈せざるを得なかった。これこそがアベノミクスの命取りであった。

だが皮肉にも、この誤りを証明したのがコロナ禍だった。安倍・菅政権は合計で約100兆円規模の補正予算を組み、すべて国債で賄って対策にあたった。結果、日本の失業率は主要先進国の中で最低水準を維持し、景気は深刻な落ち込みを免れた。しかも、大量の国債発行で財政が破綻することもなかった。国債による財政出動で景気を下支えできることが、この経験で証明されたのである。
 
🔳AI革命・ロボット装置化と台湾シグナル

AIが感触・音まで学習 熟練作業のロボット化進む

今、世界はAI革命のただ中にある。AIは単なる利益を生むだけではない。少子化による生産人口の減少を補う力を持つのだ。ロボット産業と結びつけば、その効果はさらに大きい。物流、介護、農業、製造業の現場で、人手不足を補う動きはすでに始まっている。2024年には日本の自動車産業だけで1万3千台以上の産業用ロボットが導入され、前年比で11%増加した。これは「労働の装置化」が現実に進んでいる証左である。

ただし、AIとロボットは膨大な電力を消費する。そしてAIを動かす心臓部である半導体も、大量の電力を必要とする。だからこそ、低消費電力半導体の開発は必須であり、日本企業はすでに次世代の省電力チップ開発に取り組んでいる。これは、AI時代における競争力の根幹となるだろう。

台湾市場の高騰も重要な意味を持つ。半導体大手TSMCを中心に、AI需要の爆発で株価は最高値を更新した。台湾のインフレ率は1.6%程度にとどまり、成長率は4%超と見込まれる。中央銀行も過度な利上げを避け、投資家に安心感を与えている。もし台湾有事が差し迫っていると本気で考えられているならば、市場がこれほど強気に振る舞うはずはない。市場の動きは「直近での有事リスクは低い」というシグナルを発しているのである。

そして日本では、石破辞任が追い風となった。迷走する政権が退場し、政治が安定へ向かうとの期待が広がった結果、株価は一段と上昇した。
 
🔳政策次第で黄金期か黄昏か

ここから先は政策次第だ。
日銀が資産価格の高騰を過熱と誤認して引き締めに走れば、過去の二の舞になる。金融政策は慎重さが必要である。

エネルギー政策も同様だ。AIとロボットが牽引する産業構造は、従来以上に電力を必要とする。だからこそ、再生可能エネルギーへの偏重は捨て去らねばならない。安定的で力強い電力供給こそが、AI時代の基盤である。火力の再評価、SMR(小型モジュール炉)、そして核融合開発に本気で取り組むことが求められる。電力を軽視すれば、AI革命もロボット装置化も絵に描いた餅に終わるだろう。

過去、日本は二度黄金期を逃した。バブル期には金融政策の誤り、アベノミクス期には消費税増税の失敗だ。同じ過ちを繰り返せば、いくら株価が騰がっても、それは幻に終わる。だが逆に、金融と財政の正しい選択、そして電力供給の現実的確保を行えば、日本は装置化とAI革命を追い風に、真の黄金時代を切り拓くことができる。

低電力半導体の製造を目指す、ラピダス千年工場の建築現場

アジア株高騰は、AI革命とロボット装置化、台湾市場の安定、石破辞任という政局変化が重なった結果だ。これは偶然ではなく、歴史が与えた再挑戦の機会である。

日本はこれまで政策の誤りで黄金期を逃してきた。しかし今度こそ、金融と財政の正しい選択を行い、低消費電力半導体を実用化し、再エネ偏重を捨て去り、火力・原子力・核融合を組み合わせた現実的エネルギー政策を築くならば、世界に冠たる黄金時代が到来するだろう。

読者皆さん、あなたはこの株高を「未来の繁栄の入口」と見るか、「過去と同じ失敗の前触れ」と見るか。答えは我々の選択にかかっている。そうして、我々の今の選択が、現在の子どもたちの未来を大きく左右することになる。

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