2016年9月3日土曜日

利上げ巡り気迷い 米雇用統計、割れた市場反応―【私の論評】金融政策と雇用が相関関係にあるという観念がないのは、世界で日本と韓国だけ(゚д゚)!

利上げ巡り気迷い 米雇用統計、割れた市場反応

日経新聞

米連邦準備理事会(FRB)による9月利上げの是非を巡り、最大の注目材料とされていた8月の米雇用統計。事前予想を下回った結果に、市場の反応は割れた。「9月」の観測はやや後退する一方で「年内」への意識が強まったことが背景にありそうだが、市場の見方は固まっていない。20~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで、市場関係者の悩ましい日々が続きそうだ。

9月利上げの観測はやや後退する一方、「年内」への意識が強まったが、
市場の見方は固まっていない(ニューヨーク証券取引所)
2日午前8時半。雇用者数の増加が15万1000人と市場予想(18万人程度)を割り込んだ8月の米雇用統計の結果を見て、各市場の反応は割れた。緩和長期化と踏んだ株式相場は上昇した半面、債券市場と外国為替市場では利上げを意識する形で米長期金利が上昇(債券価格が下落)し、円安・ドル高が進んだ。

直後の反応はわかりやすいものだった。ダウ工業株30種平均の寄り付き前、同先物に上昇圧力がかかり、一時、発表前に比べ約60ドル高い水準となった。長期金利は急速に低下。外為市場では円買い・ドル売りが先行し、一時一ドル=102円台後半をつけた。どれも「9月利上げは遠のいた」との判断からだった。

問題はその後。ダウ平均は高く始まり、上昇幅は一時120ドルを超えるなど株高が持続。これに対し、長期金利には上昇圧力がかかり、米10年物国債利回りは1.5%台前半から1.6%台まで急速に上昇。これをみて円相場は一気に下げに転じ、一時104円台前半と約1カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。

利上げ観測を巡る株式市場と債券・外為市場の「ねじれ」。強引に理屈をつけるとすれば、雇用統計が市場予想を下回ったことで「9月利上げの決め手にはならなかった」一方、雇用の改善自体は続いていることがはっきりしたため「年内の利上げは一段と無視できない線になった」という市場の微妙な受け止めを映したといえる。つまり前者が強く出たのが株式市場、後者が債券・外為市場と解釈すれば、一応の整合性はとれる。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが米金利先物市場での織り込み度合いから計算した「利上げの確率」をみると、9月利上げの確率は21%程度とわずかに前日から低下。逆に、年内の利上げは約54%とわずかに上昇した。

FRBのイエレン議長やフィッシャー副議長が8月下旬にワイオミング州で開いたジャクソンホール会議で利上げに前向きな発言をして以降、とくに株式市場では目先の「9月の有無」が焦点となり、上値が重くなっていた。9月利上げの可能性が低くなったとの受け止めは株高要因となる。

債券市場はやや複雑だ。同じ米国債でも、2年債利回りは発表後の上昇の勢いは鈍く、発表前後でほぼ同じ水準にとどまった。9月の利上げ観測の後退を強く反映した形だ。より長い期間の取引となる10年債利回りは、発表前よりも高い水準まで上昇。年内利上げを覚悟する見方が強く反映したとみることもできる。

10年債については、債券需給面の動きが強く出たとの声も多い。社債の大量発行を控え、米国市場の連休前(5日=月曜日=はレーバーデーで祝日)に持ち高を整理しようという動きがあったという。日米金利差拡大の観測を背景にした円安・ドル高の流れは、米長期債の一時的な需給要因にひきずられたという側面も無視はできない。

いずれにせよ、すっきりしない市場反応は、利上げを巡る気迷いの証左でもある。米ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏は9月利上げの確率を40%から55%に引き上げた。FRBの利上げに向けた積極姿勢を踏まえてのことだ。来週以降のFRB高官らの発言内容によっては、9月の利上げを巡り市場が大きく揺れる可能性もある。

【私の論評】金融政策と雇用が相関関係にあるという観念がないのは、世界で日本と韓国だけ(゚д゚)!

ブログ冒頭のような日経新聞等の記事を読むと、私はいつも驚嘆します。なぜなら、日経新聞でも、雇用と金融とは密接な関係があることをうかがわせる内容が掲載されているからです。

これは、米国のニュースをそのまま引用しているのかもしれませんが、上の記事には「雇用者数の増加が15万1000人と市場予想(18万人程度)を割り込んだ8月の米雇用統計の結果を見て、各市場の反応は割れた。緩和長期化と踏んだ株式相場は上昇した半面、債券市場と外国為替市場では利上げを意識する形で米長期金利が上昇(債券価格が下落)し、円安・ドル高が進んだ」とあります。

5月、デンバーで開催された就職フェア
米国では、日銀が現在行っているような金融緩和策は一巡して景気は回復し、雇用状況も良くなっています。しかし、いつまでも緩和気味にしておくと、今度はインフレなどが問題になるので、時期を見計らって、利上げをしようとしているのです。

そうして、利上げの指標として、労働統計を指標としているのです。労働統計で、雇用がある程度以上の水準(今回は雇用増が18万人程度)であれば、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会:日本の日銀にあたる)は、利上げをしても良いと判断して利上げをする予定なのです。

しかし、今回は雇用増が予想を下回ったのですが、雇用は増え続けているので判断の難しいところです。利上げはないかもしれないと予想する市場関係者もあれば、やはり利上げは近いと予想する市場関係者もいるわけです。

上記のように、米国では金融政策は雇用に密接に関わりがあることが、一般社会常識になっています。そうして、これは米国に限らず、世界中のほとんどの国々で常識とされています。

しかし、日本では、まだこれが一般社会常識にはなっていないようです。そもそも、日銀が発表する資料などでは、物価目標などは掲げられていますが、雇用の目標はありません。

雇用と金融政策の相関関係はフィリップス曲線を見れば一目瞭然
そうして、日銀に限らず、日本では大手新聞のほとんどは、雇用と金融政策とを関連付けて報道するところはまずありません。日本では、日銀や新聞だけでなく、大方の政治家や始末に悪いことに、経済学者の多くや、民間経済アナリスも、雇用と金融政策を関連付けて語る人がいません。

しかし、米国では金融政策と雇用が密接に関わりがあるのに、日本だけは関係がないということは絶対にあり得ません。これは理論上もそうですし、日本の実体経済をみてもそれを理解できます。

特に、昨年のはじめころまでは、日銀の金融緩和策によって、日本の雇用状況は著しく改善され続け、まさに典型的であり、それこそ経済学の教科書に掲載しても良いような状況でした。

実際、昨年は、三大都市圏の平均時給が2006年の調査開始以来最高になったと、リクルートジョブズから発表がありました。

これは、2015年6月の「アルバイト・パート」募集の求人情報を抽出し、募集時平均時給を集計したものです。それによれば、6月の平均時給は967円で、前年同月比10円増(+1・0%)となっていました。職種別では「専門職系」で37円増(+3・4%)となったのをはじめ、すべての職種で前年同月比プラスとなっていました。

首都圏の平均時給は1003円で、同10円増(+1・0%)。東海の平均時給は908円で同10円増(+1・1%)。関西の平均時給は934円で同12円増(+1・3%)でした。三大都市圏とも似たような状況で、アルバイト・パート時給の上昇が見られていいました。

このブロクでは、金融政策が雇用政策であることを強調してきました。金融政策はすべての業種に薄く効果があるため、業者ごとでは認識できない場合もあります。しかし、雇用をすべての業種で足し合わせて見れば、その効果は歴然です。

金融緩和すると、第一段階として、少しタイムラグ(時間のずれ)があって、まず就業者数が増加する。初期段階では、それまで職のなかった人が非正規やアルバイト・パートという形で雇用増加に貢献することになります。

新たに就業者に加わった非正規やアルバイト・パートの賃金は、既に雇用されている人より低いため、それまでの就業者を合わせた全体の平均賃金を押し下げることになります。

この点だけをとらえ、就業者数が増えたことを無視して「賃金が下がっている」とあげつらい、金融緩和を否定する人もいるのですが、経済の波及メカニズムをまったく理解していないだけで、反論にもなっていません。

第二段階として、就業者数が増えてくると、失業率が下がり出し、もうこれ以上就業者数が増えないような完全雇用の状態に近くなります。

そこで賃金が伸び始めます。特に、アルバイト・パートの時給や残業代などが上がります。そうなると、下がっていた賃金も反転し上がり出します。雇用形態も徐々に非正規やアルバイト・パートの割合が減り、正規雇用が多くなってきます。

昨年、アルバイト・パートの時給が上昇してきたということは、いよいよ金融政策の効果が第二段階に入ってきたことを意味しました。

民主党政権と安倍晋三政権の雇用政策の差が歴然と出ました。民主党は白川(方明総裁)日銀の路線だったのですが、安倍政権は黒田(東彦総裁)日銀でやってきました。そうして、これほど雇用政策と金融政策の密接な関係をはっきり示したケースはめったにありません。教科書に載せてもいい具体例でした。

しかし、今年は平成14年度からの8%増税の悪影響と、本来日銀はさらなる追加金融緩和をすれば良いにもかかわらず、結局追加金融緩和を行わなかったため、未だ実質賃金が上昇はするようにはなっていますが、弱含みです。これでは、また下がる可能性もあります。これをもって、アベノミクスは限界に達したとする人々もいますが、これは大きな間違いです。

これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!


この記事は、今年6月16日のものです。この記事のタイトルはあまり良くないです。このタイトルは、「日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定」とあります。これは、今までの金融緩和策を維持するというだけで、追加金融緩和は見送ったということです。

そのため、市場が失望して、失望売りにつながり、急速な円高株安になりました。

そうして、この記事では、黒田総裁がなぜ追加金融緩和を実行しなかったかについて、失業率の見方の誤りによるものであると掲載しました。

その部分を以下に掲載します。
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。
過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。


過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。
であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。
日銀黒田総裁

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。 
2014年10月の日銀の追加緩和は、安倍晋三政権による消費税率10%への再増税を後押しするためだったといわれており、このときの黒田相殺は、中央銀行総裁というよりは、元財務省出身者の立場が良く現れていたと思います。

しかしながら、マイナス金利の導入は、中央銀行総裁としての面目躍如というところで、見事に中央銀行総裁の立場を示したものといえました。 
しかし、安倍政権は再び再増税を延期し、今回もまた増税を見送ったというか、以前のこのブロクにも述べたように、これはほんど凍結に近いものです。財務省の落胆はかなり、大きかったでしょう。この心情を理解した黒田総裁は、今回も金融緩和する気になれなかったのでしょう。まさに、今回は、中銀行総裁というよりは、旧財務省出身者の立場が貫かれているようです。

しかし、本来は金融緩和を行うべきでした。そうして今回行うべきは、「マイナス金利」の拡大ではなく、量的緩和による国債買い入れ額の拡大とすべきでした。
結局、日銀黒田総裁は、3%が日本の構造的失業率であると見て、追加金融緩和を行わなかったのですが、本当はやはり2.7%であり、追加金緩和を行えば、失業率が2.7%にまで下がり、そうして実質賃金が強含みで上がることなったと思います。

現状は、上記の金融緩和の二段階の二段階目のあたりで足踏み状態をしているということです。この二段階目が終了すると、完全失業に近い状況になり、今度は実質賃金が上昇することになります。このまま、追加金融緩和をしなければ、実質賃金があまり上昇しないですし、物価目標も達成できないことになります。

しかし、多くの新聞、政治家、識者など金融緩和と雇用と結びつけて考える習慣が全くないので、このような分析ができませんし、最初からするつもりもありません。

そうして、アベノミクスは限界などととして、意味不明な理由をあげてそれを根拠としています。

先に述べたように、米国では金融政策と雇用は不可分に結びついているという一般常識が社会に根付いており、FRB (準備制度委員会)には雇用に対する責任があるとされ、金融政策の一手法である利上げをするにしても、社会からの批判を避けるため、雇用統計を参照しながら、雇用状況が悪化しないように、慎重に利上げをしよとしているのです。

利上げの時期を見誤り、利上げのタイミング遅くなれば、インフレを招いてしまうことになります。利上げのタイミングが早ければ、雇用状況が悪くなってしまいます。このようなことを避けるために、FRBはより慎重のそのタイミングを見計らっているのです。

しかし、日本では上で述べたように、雇用と金融政策が不可分に結びついているという認識はあまりないので、日銀も実質賃金があまり上がらなくても批判されることは全くありません。

本来ならば、日銀がもっとはやく追加金融緩和を実施していれば、実質賃金もさらに目立って上がりはじめ、さらには物価目標も達成できたかもしれません。

そうして、もし8%増税など最初から実施せず、緩和を続けていれば、今度はいずれはインフレを招いてしまうことになるので、金融緩和をやめ、FRBと同じように利上げを検討する時期が来たかもしれません。

日本では金融政策と雇用との相関関係など知ら
なくても一般常識の試験にパスすることができる
とにかく、この日本では、マスコミ、多くの経済学者、官僚、政治家などが、雇用と金融政策の関係を全く理解していないので、結局のところ、過去においてはいつも金融緩和が見送られ、結局のところ、金融引き締めばかりして、20年もの間デフレが続いてしまったのです。

だからこそ、この記事の冒頭に書いたように、私は日経新聞が、アメリカの雇用統計と利上げを関連付けた記事を掲載しているのを見ると、驚嘆してしまうのです。

それにしても、金融政策と雇用が無関係などという馬鹿げた観念は、いい加減もう捨て去るべき時に来ていると思います。

とにかく、何をさておいても、日本でも雇用が一番という観念を植え付け、一般社会常識とすべきです。本来、雇用ほど重要なものはないはでず。雇用が良ければ、他は多少悪くても目をつぶるべきですし、雇用が悪ければ、他良くても不十分で、早急に雇用を改善すべきであるとの観念を定着させるべきです。

世界を見回してみると、雇用と金融政策の関係が、ほとんど認識されていない国は、韓国くらいなものです。韓国では、若者雇用が劇的に悪化して、若者間でその状況を現した言葉「ヘル朝鮮」が流行っても、マスコミは無論のこと、経済学者も政府も金融政策などは全くのスルーで構造改革論ばかりしています。これは、まるで少し前の日本のようです。

実際、韓国の大手新聞である中央日報は、デフレ礼賛記事を掲載しています。常識はずれにも程があります。その記事のリンクと最近の韓国の消費者物価指数の推移を以下に掲載します。


デフレの韓国では今年に入ってからもじりじりと物価が下がっている
日本の新聞も雇用と金融政策の関係を理解していないようですが、さすがにデフレ礼賛の記事は掲載していなかったと思います。ただし、デフレ克服のため、構造改革をすべき等のような馬鹿げた論評はしていました。

マスコミがデフレを礼賛するようでは、日本のマスコミより始末に悪く、韓国は雇用状況が最悪で、景気も低迷しているのに、金融緩和をするなど覚束ないことでしょう。この様子では、韓国はこのまま景気と雇用が悪化し続け、いずれ再び通貨危機に見舞われることになるでしょう。

日本の、通貨スワップなどの実質的な韓国経済援助策によっても、韓国経済が立ち直ることはないでしょう。

それにしても、韓国と同じように、日本でも大多数が、金融政策と雇用の相関関係をほとんど理解していないにもかかわらず、安倍総理はそうではなかったし黒田総裁も最初はそうではなかったようなのでので、雇用がかなりの水準まで回復しました。しかし、今のまま日銀が追加金融緩和をしなければ、来年あたりからまた悪くなることでしょう。

今後も安倍政権には、これを理解しない愚かな勢力に負けず、日本の雇用をさらに上向かせ、安定させていただきたいものです。韓国のようになるのだけは、願い下げです。

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2016年9月2日金曜日

「尖閣諸島を手放せ」という人が知らない現代中国の「侵略の歴史」―【私の論評】尖閣を中国に渡せば、勢いづき日本侵攻の足がかりを提供するだけ(゚д゚)!

「尖閣諸島を手放せ」という人が知らない現代中国の「侵略の歴史」

■「尖閣は要らない」と言った元参議院議員

尖閣諸島周辺や南シナ海での乱暴狼藉を見て、日本国内において中国への危機感を強める人が増えているが、一方で、不思議なほど中国への警戒心がない人もいる。8月29日に放送された『橋下×羽鳥の番組』(テレビ朝日系)では、元参議院議員の田嶋陽子氏が「尖閣諸島は一度手放して中国に渡すべき」という大胆な持論を述べた。

この発言に対して放送直後からネットでは議論が沸き起こったが、こうした意見は田島氏の専売特許ではない。

「友好の妨げになるくらいならば、あげてしまえばいい」という類のアイデアは、主に左派とされる人の口から出てくることが多い。

こうした人たちは「それで揉め事がなくなって、友好関係が保てるのならばいいじゃないか」と考えているのだろうが、果たして中国に対してそのような善意は通用するのだろうか。そのように心を許しても大丈夫なのだろうか。

それを考えるうえで重要なのは、過去の歴史を学ぶことだろう。

参考資料:[出典]防衛省のレポート「南シナ海における中国の活動」(2015年5月29日)

公文書研究の第一人者である有馬哲夫早稲田大学教授は、新刊『歴史問題の正解』の中で、「現代中国の歴史は侵略の歴史である」と題した章を設け、戦後間もない頃の中国の「侵略」の姿をわかりやすくまとめている。以下、同書から引用してみよう。

***

■中国のアジア大侵攻

歴史問題の正解(新潮新書)

意外なことに、中国のアジア各地での拡張主義的動きは、朝鮮戦争と時期が重なる。

筆者は朝鮮半島に約30万の軍隊を送った中国は、この戦争にかかりっきりだったと思い込んでいたが、実際はまったく違っていた。

中国は朝鮮戦争とほぼ同時進行で、ヴェトナム北部に大軍を送り、ミャンマー(当時はビルマ、以下同)北部・タイ・ラオス・中国南部の国境地帯で領土拡張の浸透作戦を行い、台湾に侵攻するための艦船の供与をソ連に求めていた。

しかも、前年の1949年にはすでにチベット東部を侵略していて、朝鮮戦争のさなかにも中央チベットまで侵攻し、チベット征服を完成させているのだ。

まさしく貪欲そのものだ。

こういった中国の侵略的動きの全体を眺めてみると、朝鮮戦争への中国の参戦がこれまでとは違ったものに見えてくる。つまり、この参戦は、自衛というよりは、中国が周辺諸国に対して起こしていた一連の拡張主義的動きの一部だったと見ることができるということだ。

事実この戦争のあと、中国はソ連に代わって北朝鮮の宗主国となる。

その後、中国はさらにヴェトナム、ラオス、ミャンマー、タイ、インドへとターゲットを変えつつ、侵略的動きを継続させていく。近年の西沙諸島や南沙諸島の島々の強奪、そして尖閣諸島への攻勢は、この延長線上にあるのだ。

まず、中国の拡張主義的動きがどのような背景から起こったのかを知る必要がある。以下の本国(アメリカ)の国務省―アメリカ極東軍司令部(東京)間の1950年1月24日の電報はこれを明らかにしてくれる。

「(前略)中国の勢力圏のなかにおいては、ソ連はチベットを含む戦争において(中国に)特別な権利を認めることになっている。熱烈な親ソ派は、共産主義拡大のためには国境線など忘れるべきだとする。共産主義のために中国が提供すべきとされる兵力は500万に引き上げられた。30万人の中国人労働者がすでに満州からシベリアに送られており、さらに70万人が6ヶ月のうちに華北から送られることになっている。中国のあらゆる施設と炭鉱にソ連の技術者が受け入れられることになっている。ソ連式の集団的・機械的農業を夢見る熱烈な親ソ派は、農民がいなくなった耕作地と残された人々の飢餓を平然と眺めている。(後略)」

■自国民を「シベリア送り」に!

ここでは中国とソ連の間の密約が明らかにされている。つまり、中国は共産圏拡大のために500万人までの兵力を提供することを約束し、満州と華北から100万人の労働者をシベリアに送ることにしている。それと引き換えに、中国の鉱山や施設にソ連の技術者を送ってもらい、領土を拡張することをソ連に認めてもらっている。

満州と華北の人民といえば、軍閥同士の覇権争い、日中戦争、ソ連軍の侵攻、国共内戦によって多大の被害を被った人々だ。新生中国は、よりによって、もっとも戦禍に苦しんだ同胞をシベリア送りにし、その代わりとして、ソ連の技術者を派遣してもらい、隣国を侵略する権利をソ連から得たのだ。

しかも、特に熱烈な親ソ派は、大動員の結果として広大な耕作放棄地が生じても、あとに残された人々が飢餓に苦しんでも、平然としているという。ソ連式の集団的・機械的農業が導入できるというので、このような事態を歓迎しているようだ。朝鮮戦争に駆り出されたのもこの地域の住民だったのではないだろうか。「中華人民共和国」といいながら、中国共産党幹部は人民の生活と生命をないがしろにしている。

***

「歴史に学べ」といった主張は、左派、右派双方から唱えられているが、冷静に事実を見れば、大日本帝国の「侵略」によって平和が侵され、甚大な被害を受けたはずの中国が、その戦争からほんの数年で、アジア各地を侵略していただけではなく、100万人もの自国民をシベリア送りにしていたということになる。

「尖閣諸島なんか手放せ」という人たちは、この中国と現在の中国はまったく別の性質を持つ国家だと思っているのかもしれない。しかし、その根拠はどこにあるのだろうか。

【私の論評】尖閣を中国に渡せば、勢いづき日本侵攻の足がかりを提供するだけ(゚д゚)!

上記の歴史的事実、私はほとんどを知っていました。ただし、100万人もの自国民をシベリア送りにしていたという事実は知りませんでした。これは、自国民とはいつつ、主に満州、華北の漢民族ではない異民族である満州族を送ったもののようです。

満州民族(マンジュみんぞく)とは、満州族は、満洲(中国東北部、沿海州など)に発祥したツングース系民族。古くは女真族といいました。17世紀に現在の中国およびモンゴル国の全土を支配する清を興しました。同系のツングース民族にオロチョン、ウィルタ、ナナイ、エヴェンキ、シベがあります。

2010年の中国の国勢調査では1,038万人とされ、中国に暮らす55の少数民族では、チワン族・回族に次ぐ人口です。

満州民族とはいっても、なかなかイメージしにくいでしょうが、旗袍(いわゆるチャイナドレス)は、元々は満州族の民族衣装です。

現代中国では満州族でなくてもチャイナドレスを着る
ことがあるが、これは元々は満州族の民族衣装である。
それと、歴史ものの映画などでは、中国人男性が辮髪という独特のヘアスタイルをしています。多くの人は、これが元々の漢民族のヘアスタイルだと思い込んでいるようです。しかし、それは違います。

満州族の辮髪
満州族は、17世紀に現在の中国およびモンゴル国の全土を支配する清を興しました。その過程で、満州族は1644年に北京入城後、直ちに命令を出して、漢民族にもこの辮髪とすることを強制しました。これに抵抗したものを死刑にしたので、あっという間にこの髪形は中国全土に広まったのです。

さて、上の記事ではなぜか、あまり詳しくは掲載されていませんが、満州はもとより、チベットも、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)も、内モンゴルも元々は中国の領土ではなく、現在の中華人民共和国が建国したときには、外国で、その外国を中国が侵略して自国の領土にしたものです。チベット侵攻の歴史を以下に簡単に掲載します。

1950 年チベット政府代表団は、デリーで中共大使と会談しました。中共大使は「チベットが中国の一部」と提案したのですが、チベット側はこれを拒否しました。この交渉中の10月に中国人民解放軍、が東チベットに侵入しました。

チベット国民議会は、第14世ダライ・ラマ法王への全権を満場一致で確認しました。ダライ・ラマ法王とチベット政府は中共の侵略に抗議し、国際連合に訴え、エルサルバドル動議を提出提出しました。

そうこうしているうちに、6月には 朝鮮戦争が勃発しました。 1951 5月・中共の軍事的脅迫下で、チベット政府は17条協定に調印しました。9月・中国人民解放軍が20000余の兵力でラサに進駐しました。ラサ経済は混乱・チベットの住民は苦境に陥りました。この苦境を見かねたダライ・ラマ法王はやむなく17条協定(チベットの平和解放に関する協定と称す)を批准したのです。

東トルキスタンも内モンゴルもチベットと同じように、中国が侵略して自らの領土にしています。

上の地図は、中華人民共和国が成立したばかりの頃の中国の版図を示すものです。赤色の部分がそうです。この地図をご覧になってもおわかりになるように、満州国、内蒙古国、東トルキスタン国、チベット国も元々は独自の国旗を持つ国家であり、中国にとっては外国でした。

その外国を武力でもって侵攻して、自らの版図にしたのが今の中国なのです。

そうしてその後も中国はこれらの自国の自治区にとんでもない残虐な仕打ちをしています。以下に、内モンゴルの例をあげます。

それは、1966年から中国で吹き荒れた文化大革命で、モンゴル人に対してなされたとされる事例です。主導したのは漢族。欧米の研究者は、拘束されたモンゴル人約50万人、うち殺害された者10万人。殺害された者と釈放され自宅に戻ってから亡くなった人の合計は「30万人」とされています。

内モンゴル自治区政府幹部・ジェリム盟出身のアムルリングイは、地面に押さえつけられて、真っ赤に焼いた鉄棒を肛門に入れられ、鉄釘を頭に打ち込まれました。

あるモンゴル人は、マイナス40度まで下がるモンゴル高原の冬に、膝まで水を満たした『水牢』に入れられ、その足は水とともに凍ってしまいました。

ブタやロバとの性行為を強制する、燃えている棍棒を陰部に入れるなど、中国人たちはおよそ人とは思えない残虐な行為を行っていました。

妊娠中の女性の胎内に手を入れて、その胎児を引っ張り出すという凄惨な犯罪も行われ、中国人たちは、これを『芯を抉(えぐ)り出す』と呼んでいました。 楊氏は『狂暴国家 中国の正体』で、モンゴル人にとって文化大革命はジェノサイド=民族抹消行為だったとしています。

文革当時に中国の工場に掲げられたスローガン『毛主席 万歳 万万歳』
「毛沢東と、人民の味方たる共産党の首長が断罪した『民族分裂主義者』たちを殺害することは、躊躇ない善なる『革命行為』に発展していった」としています。内モンゴル自治区のモンゴル人が「民族分裂主義者」と断罪されたとき、中国人(漢族)は「善」として虐殺をなしたというのです。尚、モンゴル問題に限らずウイグル問題もチベットのそれも、ユーラシア大陸で中国に苦しんできた民族の側から中国を見る目を教えてくれるのです。

中国はこのようなことは、一切認めません。文化大革命全体の実態も闇に沈んでいるのてです。実際、中国人の若い留学生など、国内で文化大革命のことなどほとんど教えおらず、ほとんどの若者は、日本に留学してはじめて、その事実を知ることがほとんどです。

さらに、天安門事件も、教えられておらず、ほとんどの留学生は、日本に来て初めてその事実を知ることになったと言われています。

楊氏の提言に学べるところは大きいです。日本はモンゴルをはじめユーラシア外交にもっと目を向けるべきだという提言もそうですし、あるいは集団的自衛権をめぐる日本国内の議論について述べた次のようなくだりは、本当に参考になります。

「自衛権のない国家は去勢された男のような存在です」。

能天気に日中友好を説く日本人に対しても、以下のように警鐘を鳴らしています。

「ぜひ、『日中友好論者』たちにも中国共産党支配下の内モンゴル自治区や『反テロの前線』たる新疆ウイグル自治区、焼身自殺による抗議活動が続いているチベットにも足を運んでほしいものです」

本当に、そうしていただきたいものです。それに、そこまでしなくても、過去の中国の周辺諸国への侵攻の歴史をみれば、尖閣を中国に渡すことなど絶対にできないことがわかるはずです。そんなことをすれば、尖閣諸島が中国の日本侵攻のための前進基地になるだけで。

彼らが、尖閣諸島を奪取すれば、南シナ海の環礁と同じく、軍事基地や、空港などを建設することになります。

現在の中国も過去に行った侵略を現在進行形で続けていると考えるべきです。現在でも、中国と他国間の国境紛争は絶えないです。

そうして、最近では、南シナ海や東シナ海への侵攻です。

中国の政治体制は、建国の頃と全く変わっていません。あいかわらず、共産党一党独裁です。変わったのは、人間には寿命があるので、いつまでも中共政府の幹部に永遠に留まるわけにはいかないので、人間が変わっただけで、国家体制には何も変わりありません。

尖閣諸島を手放せなどという人々は、このような中国の暗黒の歴史を知らないのでしょう。本当に愚かなことです。尖閣を手放せば、中国はこれに勢いづき物理的にも精神的にも日本侵攻のための足がかりを提供するようなものです。

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2016年9月1日木曜日

中国、底なしデフレスパイラル 経済悪化→リストラ拡大→冷める消費意欲―【私の論評】中国の本質は、中所得国と発展途上国の連合体(゚д゚)!

中国、底なしデフレスパイラル 経済悪化→リストラ拡大→冷める消費意欲

中国のGDPの統計値はほとんど出鱈目とされている。IMFも中国の
出した統計値を元にして、このグラフを作成しているものと考えられる。

 2016年4-6月期の中国の経済成長率(実質GDPの成長率)は、対前年比で6・7%増となっている。過去10年以上もの期間、中国の経済成長、つまりはGDP=需要の拡大を牽引してきたのは、投資という需要項目であった。特に、民間企業が設備投資や住宅投資に巨額の資金を注ぎ込み、経済成長に貢献してきたわけだ。

 その中国の「投資」が、驚くべき事態に陥っている。

 1-6月期の中国の投資において、民間投資はわずかに対前年同期比2・8%の増加に過ぎなかった。代わりに、国有企業が対前年同期比23・5%と、投資全体を下支えしている。

 要するに、現在の中国は民間が投資意欲を喪失し、政府の公共投資を国有企業が受注することで、何とかGDPが維持されている状況になっているのだ。

 投資ではなく、消費を見ても、やはり「政府」の影響力が強まっている。1-6月期の中国の個人消費は対前年同期比10・3%と、GDP成長に貢献した。消費の主役が何かといえば、自動車購入でであった。

 実は、中国共産党政府は景気の急激な失速を受け、自動車販売を下支えすべく、小型車やエコカー向けの減税や補助金といった政策を打ったのだ。結果的に、自動車販売が増え、消費総額が拡大したわけだが、投資同様に「政府の政策主導」になってしまっている。

 中国国務院は22日、企業の「借り入れコスト」を引き下げるための指針を発表した。例えば、中央銀行が市中銀行の流動性を拡大することで、中小企業への融資を拡大するという。

 あるいは、銀行に対し、融資債権への妥当なプライシング(金利水準の決定)を求め、非正規の手数料徴求を禁じるという。分かりやすく書くと、銀行に対し「安い資金コスト(金利など)で企業にお金を貸し付けろ」というわけだ。

 問題は、現在の中国が完全な供給能力過剰、需要不足状態に陥っているという話だ。日本の例を見れば分かるが、需要が不足している環境下では、金融政策で金利を引き下げたところで、企業は借り入れや設備投資を増やさない。なぜなら、もうからないためだ。

 中国産業界は、すでに過剰生産能力を削り取るべく、リストラクチャリングに精を出している。鉄鋼や石炭、石油などの大手国有企業は、1社あたり数万人規模で人員削減を進める計画だ。

 企業のリストラは、中国人民の消費意欲を冷ます。結果、民間企業はますます設備投資を絞り込み、デフレスパイラルへと落ちていく。中国共産党は中国経済のデフレ化を食い止めることができるのか、正念場を迎えようとしている。

 ■三橋貴明(みつはし・たかあき) 


【私の論評】中国の本質は、中所得国と発展途上国の連合体(゚д゚)!

上の記事では、全く触れていないですが、中国のGDPはほとんど出鱈目だとされています。特に、GDPは全く正しくも根拠もなく、政治的メッセージに過ぎないものです。

それについては、過去のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い ―【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?
2015年から輸入が激減、この状況だと猛烈なデフレになっているか
そもそも、GDPが出鱈目なのかいずれかのはずである・・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を以下に抜粋します。
中国の経済統計は実体経済の正しい姿と言うより、政治的なメッセージと受け止めるべきものだ。中国政府の意図は、対外的には「中国経済は良くないが心配しないでほしい」という願望、対内的には「7%成長は政治的な強い意志だ」との表明である。

GDP発表の1週間ほど前に発表された貿易統計は、外国との関係があるので、捏造しにくい。それによれば、15年の輸入は14・1%の減少である。輸入減の原因は資源価格の低下によるものと説明されているが、中国が発表した経済成長率が正しいなら、猛烈なデフレ経済になっていないとおかしい。

要するに、貿易統計が正しい場合、経済成長率が正しくないか、デフレ経済かということになってしまう。どちらにしても、中国経済は正常ではないというわけだ。
ブログ冒頭の記事で、三橋貴明氏は、中国のGDP統計が一応正しいものとして、論を進めているようですが、私自身は、中国経済はデフレでもあり、経済成長も6.7%ではなくもっと低いのだろうと考えます。一般的に一国の経済が、デフレ気味であれば、輸入は減ります。逆にインフレ気味であれば、輸入は増えます。

これは、理屈で考えればわかります。デフレであれば、そもそもモノが売れないので、輸入も減ります。逆にインフレであれば、モノが売れるので、輸入は増えます。

中国経済成長が政府発表の数字より低いのは、李克強指標をみても明らかです。

「李克強指数(Li Keqiang Index)」です。「チャイナ・モメンタム・インジケーター」とも言われるようです。これは電力消費と鉄道貨物輸送量と銀行融資を基にした指標です。本来これらは、GDPと強い相関関係があるはずであり、これによって、中国のGDPの実体を知ることができるとされているものです。

中国政府の発表するGDPが政治メッセージで過ぎないので、信用できないことから、李克強指数のほうが、GDPの実体を現していると考えられます。李克強首相が「GDPは信頼できないけどこの3つのデータは比較的信頼できる」と言ったことから「李克強指数」と呼ばれています。

ウィキリークスによれば、李克強総理は遼寧省書記をしていた2007年、駐中国米大使に「経済評価で注目する統計は、電力消費、鉄道貨物量および銀行融資の3つだけ。GDP統計は『人為的』で『参考用』にすぎない」と語ったとされています。

この李克強指数からみれば、中国の4 -6月期のGDPの数値も中国政府の政治的メッセージに過ぎず、15年あたりの数字から類推すると、おそらく3%以下、おそらく3%を切るものであることが推定できます。

それから、ブログ冒頭の記事で、三橋氏は、「金融政策で金利を引き下げたところで、企業は借り入れや設備投資を増やさない。なぜなら、もうからないためだ」としていますが、金融政策には金利引き下げの他にも方法があります。

それは、日銀が2013年から行っている、市場における有価証券や手形を中央銀行が買い取ることにより、市場に資金を放出し、金融の緩和を図る(買いオペレーション)方式や、人民元の刷り増しです。

しかし、それは中国はできません。なぜなら、中国ではすでにキャピタル・フライト(国内から海外へ資本(外貨、主にドル)が一斉に流出する資本逃避のこと)が起きているからです。

それに関しては、昨年すでに中国で2013年末から15年3月末の間に約100兆円のキャピタル・フライトが発生していたことをこのブログに掲載しました。

中国銀行(中国の中央銀行)が、大々的に買いオペをしたり、元刷り増しなどを行った場合、強烈な元安を招き、それが金融不安をまきおこし、キャピタル・フライトにさら拍車をかける可能性が大きいため、利下げ以外の金融緩和になかなか踏み切れないのです。

キャピタル・フライトが激しくなれば、中国内に大量のドルがあるということが、元の信用の裏付けになっていたものが、それがなくなり、元は紙切れのように価値のない存在になってしまいます。それを中国政府は恐れているのです。

この状況は、韓国と似ています。それについては、以前もこのブログに掲載しました。韓国もデフレ状況なのですが、日韓通貨スワップにより、外貨をある程度確保した上で、金融緩和に踏み切ることもできます。そうなれば、金融緩和によるキャピタル・フライトも激烈な状況にはならず、ソフトランディングして、デフレを克服するのは意外と簡単にできそうです。

ただし、韓国内では、政府から財界、マスコミに至るまで、経済難を乗り切るためには、金融緩和ではなく、構造改革が必要という認識のようで、なかなか金融緩和に踏み切るりそうにもありません。こんなことを繰り返しているうちに、また通貨危機に見舞われることになるかもしれません。

しかし、中国の場合はより深刻です。中国の場合は、元々米国や日本などと通貨スワップ協定を結んだこともないですし、これからも結ぶことはないでしょう。

それに、通貨スワップを結んでいたにしても、日本や米国でも、100兆以上もの資金を融通するのは容易いことではありません。

韓国の場合は、もともと経済規模が小さく、GDPは東京都とほぼ同じですから、中国などと比較すれば、相当低い金額の通貨の融通でも、何とかなります。それこそ、日本国内の地方自治体に対して支援するくらいの感覚ですみます。

しかし、中国はそんなに簡単にいきません。それに、韓国の場合は、元々GDPに占める個人消費の割合が、5割り程度ということもあり、通貨スワップでキャピタル・フライトを軽減しつつ、金融緩和をすれば、デフレを克服するのは、本来容易です。

しかし、中国の場合は、GDPに占める個人消費の割合は、35%程度であり、金融緩和をして個人消費が増えたにしても、それだけでデフレを脱却できるかどうかは未知数です。

やはり、ブログ冒頭の記事でも「政府の公共投資を国有企業が受注することで、何とかGDPが維持されている状況」という構造的な問題があります。韓国の場合なら、日本などの先進国に比べれば、個人消費がGDPに占める割合が50%ですから、これを金融緩和と積極財政によって伸ばすことも容易です。

しかし、中国の場合、個人消費を35%から60%に持っていくなどのことは、至難の業です。おそらく、抜本的な構造改革が必要になるはずです。

その構造改革の中には、当然のことながら、民主化、政治と経済の分離、法治国家化も含まれることになるでしょう。これがある程度しっかりしていなければ、中間層による積極的な社会経済活動はできません。それでは、経済成長を達成することはできません。

韓国も、中国もデフレという点では同じことですが、中国のほうがより深刻です。

このままの状況が続くと、韓国も中国も中進国の罠(中所得国の罠と同じ、国民所得10000ドルからなかなか抜け出さない状況のこと)にどっぷりとはまりそうです。韓国の場合は、経済対策に対する考え方を変えて、金融緩和に踏み切れば、何とか回避できそうですが、中国のほうはそう簡単にはいきません。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も
このままだと、いずれ中国は、図体が大きいだけの、凡庸なアジアの独裁国家で終わる可能性が高くなってきました。

しかし、これはもともとの中国の本質なのかもしれません。中国の実体は、もともとはいくつかの発展途上国の集まりで、それを中国共産党中央政府が警察力や、軍事力を使って無理やり一つにまとめて、一国としてまとめてGDPを大きく見せていただけです。一人あたりのGDPではまだ日本に遠く及びません。

中国共産党中央政府は、世界各国の機関投資家などを幻惑して、これから中国は凄まじく発展すると期待させ、今投資しないと大損をするぞとばかり煽り、外貨を集め、それを国内でインフラ投資することで、大発展したのですが、もうその化けの皮が剥がれ、中国に積極的に投資するものなどいなくなりました。

そもそも、当の中国人ですら、そのようなことは期待していません。中国の官僚や富裕層が外国に自らの金を逃避させています。習近平でさえもその例外ではありません。中国出身の海外在留者、すなわち華僑も、今では中国に投資はしません。

そんな中国には、もうキャピタル・フライトを防ぐ術はありません。いずれ中国は、凡庸なアジアの独裁国家となり、国力も衰え、いくつかの国の連合体に成り果てることでしょう。いわゆる、一つの省、もしくは複数の省が一つの国のような存在になり、それらの国々は、ある国は中所得国で、ある国は発展途上国ということになるでしょう。中国共産党政府がそれらを一つに、従来よりは緩くまとめるような連合体に成り果てるでしょう。

というより、これが元々の本質なのですが、それが白日の下に晒されることになるでしょう。従来は、中国共産党中央政府の力が強く、省を強く支配していたというだけのことです。

中国共産党中央政府が、従来のように締め付けを厳しくすれば、いずれの国も中進国以上には発展し得ないでしょう。あまり締め付けを厳しくしなければ、もしかすると、一国くらいは中進国の罠を抜け出る可能性もあるかもしれません。しかし、そうなれば、その国は連合体から抜け出ることになるでしょう。抜け出なければ、先進国にはなれません。永遠に、中所得国のままで終わります。

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2016年8月31日水曜日

【スクープ最前線】米軍、尖閣周辺に強襲揚陸艦投入で中国威嚇 習政権はG20で大恥も―【私の論評】次期大統領がクリントンなら優柔不断オバマと同じことの繰り返し(゚д゚)!

【スクープ最前線】米軍、尖閣周辺に強襲揚陸艦投入で中国威嚇 習政権はG20で大恥も

強襲揚陸艦『ボノム・リシャール』(右側) 、甲板手前に搭載して
いるのはオスプレイ10機。左は、ドック型揚陸艦『アシュランド』
   中国が焦燥感に駆られている。アジアでの軍事的覇権を強め、沖縄県・尖閣諸島の強奪もチラつかせていたが、先週の日中韓外相会談では一転、隣国との協調姿勢を演出したのだ。9月に中国・杭州で主催する、G20(20カ国・地域)首脳会議を成功させる思惑だけでなく、米軍が東シナ海などに展開させた強襲揚陸艦や攻撃型原子力潜水艦の存在も大きいようだ。ジャーナリストの加賀孝英氏が緊急リポートする。

   米国が「新たな軍事作戦」に踏み切った。これを受けて、習近平国家主席率いる中国は「米国が軍事衝突を決意した」と震え上がっている。

   中国共産党機関紙、人民日報の情報サイト「人民網」は17日、概略以下のように報じた。

  《米軍は、東シナ海の尖閣諸島(周辺海域)に、強襲揚陸艦『ボノム・リシャール』を投入した。最近、同海域に武装警備船や漁船を大挙して派遣している中国に、圧力をかけるのが狙いとみられる》

  《ボノム・リシャールは6日、母港の長崎県・米海軍佐世保基地を出航し、14日からパトロールに入った。日米両国は昨年、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を再改定し、尖閣などを防衛範囲に含めた》

   米軍がついに、わが国固有の領土・尖閣諸島を防衛するために、最強艦船を投入した。安倍晋三首相が実現させた、日米同盟強化の証だろう。

  世界最大級の強襲揚陸艦であるボノム・リシャールは、全長257メートル、全幅34メートル、排水量約4万トン。「動きまわる軍事基地」の異名で恐れられている。

  強襲輸送ヘリCH-46や、直離着陸戦闘機AV-8BハリアーII、新型輸送機オスプレイ、LCAC(エア・クッション型揚陸艇)などを搭載する。約2000人の海兵隊員を収納可能で、ヘリコプターとLCACなどを使って、兵員と戦車などを一気に揚陸させることができる。

 自衛隊関係者は「斬り込み隊長役を務める強襲揚陸艦の中で、ボノム・リシャールは最強だ。万が一の場合、尖閣にも瞬時に海兵隊を展開できる。すさまじい戦闘力で敵を制圧する。中国の空母『遼寧』などハリボテで話にならない」と語る。

 中国は今月に入って、尖閣周辺の接続水域や領海に、公船や海上民兵が乗り込んでいるという約300隻もの漁船を侵入させた。東シナ海は開戦前夜の緊張状態となり、「8月15日、尖閣上陸」情報まで流れた。

 ところが、ボノム・リシャールが14日に尖閣周辺に展開する直前(=12日ごろ)、漁船の大半が姿を消した。防衛省幹部は「強襲揚陸艦の出動を知り、逃げ出したという情報がある」という。

 米軍の軍事作戦はこれだけではない。以下、複数の米情報当局、米軍関係者から得た衝撃情報だ。

 「朝鮮日報は27日、『米軍の攻撃型原潜が、北朝鮮の潜水艦基地に近い公海まで隠密裏に潜入し、北朝鮮の潜水艦を監視・追跡作戦を展開していた』と報じた。実は米軍は、中国の潜水艦にも同様の作戦を行っていた。百戦百勝。相手にならない。中国の潜水艦は籠(かご)の中の哀れな鳥だ」

 ご承知の通り、中国は9月初旬、国家の威信をかけて、浙江省杭州で初の議長国としてG20首脳会議を開催する。失敗すれば、習氏の失脚は免れない。G20成功のため、中国は参加国に「テーマは経済問題に絞る」といい、中国が袋だたきになる南シナ海と東シナ海の問題は取り上げないように、必死で根回ししている。実態は土下座外交に近い。

 岸田文雄外相は24日、都内で中国の王毅外相と個別会談を行った。谷内正太郎国家安全保障局長は25日、北京で中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)国務委員と、李克強首相と連続会談した。いずれも中国は協調姿勢を演出したが、G20で前出の議題を回避したかったからだ。

 だが、米国は強気だ。外務省関係者がいう。

 「米国とフランスはG20で、南シナ海と東シナ海の問題を取り上げる意向だ。米仏は、南シナ海で『航行の自由』作戦を決行することでも合意している。習氏は大恥をかく。『親中政策』の見直しを進めているテリーザ・メイ首相率いる英国が、米仏に同調し始めている」

 中国は孤立している。習氏は崖っぷちに立たされている。

 言わせていただく。日本は中国と取引などしてはならない。毅然たる態度で、東シナ海や南シナ海の問題を議論すべきだ。それなくしてG20の存在意義などない。

 加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】次期大統領がクリントンなら優柔不断オバマと同じことの繰り返し(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にあるような、米軍の中国に対する牽制は、今にはじまったことではありません。実は2ヶ月以上前から、その動きは見られました。その動きについて以下に掲載します。

米海軍は、6月2日強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」(LHD6)と「エセックス」(LHD2)をすでに、それぞれ東シナ海と香港水域に派遣していしまた。うち、ワスプ級強襲揚陸艦「エセックス」は香港に停泊し休息に入いっていました。「ボノム・リシャール」とドック型揚陸艦「アシュランド」(LSD48)は東中国海を航行し、第7艦隊巡航任務を実施しました。この両艦は、両方ともワスプ級強襲揚陸艦です。

ワスプ級強襲揚陸艦(英語: Wasp-class amphibious assault ship)は、アメリカ海軍の強襲揚陸艦の艦級のことです。前任のタラワ級の拡大強化型として開発されたことから4万tを越える大型艦となり、主機関を中心に改良された最終8番艦は後継のアメリカ級のベースともなっています。

エセックス搭載の機動揚陸艇(LCM)
以下に、ワスプ級強襲揚陸艦の航空運用能力と、輸送揚陸機能を掲載します。

航空運用機能

航空機としてははAH-1W スーパーコブラ攻撃ヘリコプターUH-1N ツインヒューイ汎用ヘリコプターCH-46 シーナイトCH-53E スーパースタリオンなど大型輸送ヘリコプターを最大42機か、ヘリコプター最大30機およびAV-8B ハリアーIIV/STOL攻撃機6-8機を搭載。

なお、制海艦任務にあたる場合は、ハリアーを最大20機とMH-60R シーホーク哨戒ヘリコプター6機を組み合わせて搭載することができます。
艦載機構成例
標準的混成空中強襲制海艦
AV-8B ハリアーII6機20機
CH-46 シーナイト
MV-22 オスプレイ
12機42機
CH-53E スーパースタリオン9機
AH-1W スーパーコブラ4機
UH-1N ツインヒューイ4機
MH-60R シーホーク6機

輸送揚陸機能

本級は、1個海兵遠征部隊(MEU)を丸ごと収容することができます。艦内には1,858m²の車両甲板と2,860m²の貨物収容スペースが確保されており、標準的には下記のような構成で搭載されます。 
収容能力
海兵隊員1,894名
M1A1 エイブラムス戦車5両
AAV7LAV-25歩兵戦闘車25両
トラックなど支援車両80両
M198 155mm榴弾砲8門
船体内後部にウェルドック(長さ81m×幅15.2m)を備えており、上陸用舟艇として、LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇3隻、あるいは機動揚陸艇(LCM)12隻を収容・運用することができる。タラワ級ではドック内の形状を改良し、貨物積載用ベルトコンベアを撤去したことで、LCACの搭載数が3隻に増加したが、これは本級でも踏襲された。

なお、本級は、医療設備として病床60床(うち集中治療室14床)、手術室4室を備えている。また、医療区画に隣接した海兵隊居住区を一般病床として転用した場合、さらに200床を確保することができる。

今回、この「ボノム・リシャール」を14日から、尖閣付近の水域に派遣されていたことが、米軍によつて正式に公開されたということです。

これは、まさに中国にとっては不意打ちのようなものだったことでしょう。何しろ、6月の時点では強襲揚陸艦「エセックス」が、香港で休息しているわけですから、中国としては、自国の港で休息をとっている米国の揚陸強襲感と同型の「ボノム・リシャール」をよもや米軍が尖閣沖の水域に派遣するなど思っもみなかったことでしょう。

アメリカとしては、南シナ海では中国には「まさか」との思いで、結局のところ出し抜かれた形なので、尖閣においては大いに中国を慌てふためかせたということで、さぞ溜飲を下げたことでしょう。

それにしても、尖閣で中国漁船が、海上保安庁の船に体当たりして、その後中国公船が尖閣あたりに姿を表わようになったころの、当時の民主党政権がもっと中国に対して毅然とした態度をとって厳しい措置をとっていたり、オバマももっと厳しく、それこそあの時あたりに、尖閣は日本固有の領土と声明をだし、それだけでなく強襲揚陸艦を尖閣付近に派遣するなどのことをしておけば、尖閣問題も今日のようなことにはなっていなかったことでしょう。

しかし、今から振り返ると、鳩山よりもお粗末で、頭がお花畑で、及び腰のオバマでは、そのようなことはできなかったのでしょう。

優柔不断なオバマのせいで、米国の地位は低下した
「優柔不断」といわれるオバマ外交によって、アメリカはウクライナ危機でプーチンに対抗できず、シリアの混乱を収めることができませんでした。中国に対しても、経済効果を重視し、中国との友好関係を強調し、迎合的な姿勢を保ってきました。中国の南シナ海で建設した人工島なども黙認するような姿勢が見えました。  

政権末期になって、ようやっと重い腰をあげ、南シナ海の人工島の12カイリ内でアメリカ軍が巡視活動を始めるなど行動を起こしています。ASEAN関連の首脳会合でも、オバマ大統領は、ASEAN各国に巡視活動への支持を直接働きかけ、中国への外交圧力を強めました。

オバマ大統領も徐々ではありましたが、強硬姿勢に変わりました。しかし、中国が南シナ海に万里の長城を築いた現在では、遅きに失しました。これを元に戻すのは至難の業です。

民主党の最有力候補、そうして現在の情勢では初の女性大統領と目されているヒラリー・クリントン前国務長官は、2014年に『ハード・チョイス』(厳しい選択)という書籍を出版していました。同書で、ヒラリー氏は生い立ちと政治信条を記していますが、はっきりうかがえるのは、日本は米国にとってアジアで最も重要な戦略的友好国と考えてはいないということです。

ヒラリー・クリントンの著書
ヒラリー氏は中国が米国にとって対立的国家であることを認め、中国を牽制するため、「米国はアジアのいくつかの国々と軍事協力体制を強化しなければならない」と主張しています。また、ASEAN(東南アジア諸国連合)などアジアとの地域協定を強化して、「中国を押さえつけるために協力しあわなければならない」とも述べています。

ヒラリー氏のこうした主張は、共和党政権を中心に冷戦を戦ってきた米国の基本戦略から大きく逸脱しています。「日本が米国の安全保障政策にとって重要ではない」という考え方を明らかにした米国の大統領候補は、ヒラリー氏が初めてです。

ヒラリー氏はあれからの2年間、大統領選を展開するにあたり、あらゆる機会に、この主張を繰り広げてきました。オバマ政権は事実上、中国を友好国扱いし、中国との対立を極力、避けてきました。

2016年にヒラリー氏が大統領に当選すれば、米国の政策は大きく変わることでしょう。

ヒラリー氏の考え方は、日本の基本的な国際戦略や安全保障に大きく関わってくることでしょう。安倍晋三政権やその周辺の保守的な評論家や古手外交官らは、相も変わらず日本を最も重要な同盟国とする米国の対中国基本戦略は変わっていないと信じ込んでいるようです。このため、日米安全保障条約を主軸に、集団的自衛権に基づく防衛政策を進めています。

ところが、ヒラリー氏は著書で、「日本はもはや米国にとって昔ながらの味方ではない」と示唆しています。イェール大学のポール・ケネディ教授が『大国の興亡』を書いて以来、米国の人々は日本に対して恐れと不安を持つようになり、「信頼できる友好国ではないと思うようになった」と述べています。

ポール・ケネディ氏の著書
しかしながら、ヒラリー氏こそ、オバマ大統領とともに、この5年間の外交で、過去の政権と比べると、考えられないほどの大失敗を繰り返してきた張本人です。

ヒラリー氏は、そうした失敗について釈明を試みているのですが、結局、米国が国際的指導者としての力をなくしてしまったことを自白しているに過ぎません。そうした心情が日本に対する不信というかたちで、現れたとみるべきです。

いずれにしても、ヒラリー・クリントンは日本との関係をもはや重要な戦略的基盤とは思わなくなっています。日本は、これを考慮し、彼女が大統領になったときの安全保障を考えていく必要があります。

もし、彼女が大統領になれば、尖閣沖に強襲揚陸艦を派遣などということもしなくなる可能性が高いです。オバマよりは一見強硬に見えながら、本質的にはさほどオバマと変わらないということも十分に考えられます。

日本は、中国と対峙するために、米国をあまりあてにできなくなるかもしれません。その時に備えて、安倍総理の安全保障のダイヤモンドをより強固にしていく必要があります。特に、米国以外との国々との連携を強めていくべきです。

【関連記事】



2016年8月30日火曜日

【「帝国の慰安婦」裁判】「誤った認識で若者が日本に敵意」 被告の韓国教授―【私の論評】慰安婦問題等捨て置き、まずは金融緩和をしない限りデフレ韓国に明日はない(゚д゚)!

【「帝国の慰安婦」裁判】「誤った認識で若者が日本に敵意」 被告の韓国教授

ソウルの日本大使館前の慰安婦像。足元に追悼プレートが新たに設置された







 慰安婦問題に関する著書「帝国の慰安婦」で元慰安婦らの名誉を傷つけたとして名誉毀損罪で在宅起訴された朴裕河・世宗大教授の公判が30日、ソウル東部地裁で行われた。朴氏は出版の目的は「日本擁護ではない」とした上で「誤った認識で若者が(日本に)敵意を抱き、韓日関係が悪化するのを座視できなかった」と述べた。

 1月から続いた公判準備手続きを終え、30日から本格審理が開始。検察は冒頭陳述で、朴氏が慰安婦と日本軍の関係を「同志的」などと表現した一部記述について「虚偽事実で名誉を傷つけた」と改めて指摘した。

 弁護側は「帝国主義とは何かを考察した書す籍。資料に基づいており、名誉毀損は全くない」と主張した。

 裁判長は、問題とされた記述が実際に名誉毀損や虚偽に当たるかどうか、虚偽の場合は朴氏が虚偽と認識していたかどうかなどを争点として整理した。検察側は、存命中の元慰安婦の証人申請を検討しているとも説明した。

【私の論評】慰安婦問題等捨て置き、まずは金融緩和をしない限りデフレ韓国に明日はない(゚д゚)!

いわゆる、学術書『帝国の慰安婦』裁判に関しては、以前もこのブログでとりあげたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「帝国の慰安婦」裁判 問われる韓国司法 弁護側は“メディア経由”の曲解報道を問題視 ―【私の論評】韓国で慰安婦ファンタジーが発祥する前の1990年代前に時計の針を戻せ(゚д゚)!
学術書『帝国の慰安婦』の著者朴裕河(パク・ユハ)世宗大教授
この記事は、今年の1月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では裁判の内容や、学術書『帝国の慰安婦』の著者自身の要約を掲載しました。以下に一部引用します。
ブログ冒頭の記事の内容をはじめて読んだ方は、何が問題なのか、その背景がわからないと、何のことかわからないと思います。本日は、そのあたりを明らかにしようと思います

まずは、この著者は、慶応義塾大学を卒業後、早稲田大学院で博士課程を修了していることを掲載しておきます。そうして、この『帝国の慰安婦』は、日本で早稲田次ジャーナリズム大賞を受賞したことを掲載しておきます。

「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の授賞式が昨年、昨年12月10日10日、東京都内で行われました。その授与式では、元慰安婦の名誉を毀損(きそん)したとして韓国で在宅起訴された韓国世宗(セ・ジョン)大の朴裕河(パク・ユハ)教授の著書「帝国の慰安婦」(朝日新聞出版)が文化貢献部門で受賞していました。 
受賞のしたときに、朴氏は「多くの人に問題を知ってもらいたいと考えた。(慰安婦の)支援者とこの問題を否定する人たち(の両方)に向けて書いたものだ」と話しています。 
朴氏は、アジア太平洋地域に関する優れた出版物の著者に贈られる昨年の「アジア・太平洋賞」特別賞(主催・毎日新聞社、アジア調査会)にも選ばれています。朴氏はこの日、毎日新聞東京本社を訪れ、北村正任アジア調査会長から記念の盾を受け取りまし。同賞の授賞式は昨年11月に行われましたが、朴氏は体調不良で欠席していました。 
この『帝国の慰安婦』ですが、読まれたことのある人はあまりいないと思いますので、以下に朴裕河氏ご自身のフェイスブックに掲載されていた、要約を掲載します。非常に長い引用ですし、以下の内容がすべて正しいとも思えませんが、資料としては、一次資料ということになりますので、そのまま掲載させていただきます。この資料の後には、私の論評を付加してあります。
要約自体は、ここでは掲載しません。 この記事に掲載してある要約もしくは、著者自身のフエイスブックの要約をご覧になって下さい。以下に『帝国の慰安婦』の表紙の写真を掲載します。


この書籍、私は要約は無論のこと、書籍も実際に手にとって読んでみました。その限りでは、この書籍は内容も体裁も学術書であり、引用文献などの出展も明らかにしており、この書籍がなぜそれほどまで問題になり、裁判にまでなったのか全く理解できません。

この訴訟で韓国当局がやり玉に挙げているのは、『帝国の慰安婦』の中で朴裕河教授が「自発的な売春婦」「日本軍と同志的関係にあった」などと記述し、「日本軍が組織として強制動員したとみるのは間違いと考える」と分析した部分です。

元慰安婦らは、この内容に納得しなかったようで、一昨年6月、「慰安婦を侮辱している」などと刑事告訴していました。

検察は在宅起訴の理由について、「慰安婦制度は強制的な売春」とした米下院決議などを例示し、「元慰安婦は性奴隷同様の被害者で、日本軍に自主的に協力したわけではない」「虚偽の内容で被害者の名誉を毀損した」としています。

しかし、朴教授の著書は非常に実証的で、日韓双方から高い評価を受けている優れた学術書であり、名誉毀損とはとんでもないことです。

韓国の言論弾圧については、国連も強い警告を発しました。国連の自由権規約委員会は昨年11月5日、韓国検察当局が政府を批判する者に対し、重い懲役刑を科す名誉毀損罪を適用する例が増えているとして「懸念」を表明し、名誉毀損への懲役刑の適用廃止を勧告しました。

同委は「いかに重大な名誉毀損であろうとも、懲役刑を適用してはいけない」と断じましたた。朴大統領の耳に届くことを祈るばかりだ。

この書籍はあくまで韓国人の視点によって書かれたものであり、レトリックによって、ファンタジーとはらないギリギリのところまで日本側に慰安婦問題での譲歩を求める方向で書かれていること、当時日本が植民地支配していたのだから、日本に責任があるという方向で貫かれています。この本を書いたこと自体がなぜ、裁判にまでなるのか、私の理解の上限を超えています。

しかし、それは私自身が日本と韓国とを同列にみているから他ならないからだと思います。韓国と日本を比較すれば、日本のほうがはるかに言論の自由や学問の自由があります。

韓国は、北朝鮮や中国などから比較すれば、言論の自由や学問の自由はありますが、まだまだ日本や他の先進国レベルまでには及んでいません。それは、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が、韓国内のマスコミを引用した形で、日本国内で朴槿恵大統領の疑惑を掲載したことが、裁判になったことでもわかります。

この裁判で結局加藤達也前ソウル支局長は、無罪とはなりましたが、そもそも裁判になる事自体が異常でした。

2015年12月17日、ソウル中央地裁に
入る産経新聞の加藤達也前ソウル支局長
日本でこのような書籍を出版したとしても、様々な文献を参照した上で、あくまで学術書の体裁をとった上で著者自身の考えを表明したものであり、このような体裁ならば、日本ならばどのような内容であれ、批判されることはあるかもしれませんが、裁判になるなどということはあり得ません。

これでは、韓国ではとても、言論の自由と、学問の自由を保証しているとはいえない状況です。

言論の自由も、学問の自由も制限され、経済も低迷ということでは、若者等が将来に絶望して、韓国をぬけ出すのも無理はありません。韓国ではもう随分前から脱北者 (北朝鮮を脱出して韓国に亡命する人)よりも脱南者(韓国を脱出して、欧米などの国籍を取得して移住する人)のほうが多い状況が続いています。

最近では、脱北者が韓国に嫌気をさして、北朝鮮に戻ったり、他国に出国する人も多くでる始末です。

このような状況を打破するには、なんといっても経済の立て直しを最優先すべきです。しかし、朴槿恵にはそのやり方がわからないようです。それについては、先日も述べたばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日韓財務対話】通貨交換協定再開へ議論開始で合意 韓国側が提案 「日韓の経済協力は有益」と麻生氏―【私の論評】誰か朴槿恵にマクロ経済政策を教えてやれ、そうでないと援助が無駄になるぞ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、韓国がキャピタル・フライトを恐れて金融緩和をせずに、構造改革ばかりしようとする姿勢のまずさについて掲載しました。

日本が通貨交換で韓国を援助したにしても、これによって韓国政府が外貨をある程度確保した上で、大規模な金融緩和と積極財政を実行して内需を拡大する道を選ばないかぎり、韓国に明日はありません。そうして、日本の援助は水泡に帰します。

これから、ますます経済が低迷し、国民の不満が高まるばかりです。これでは、ますます、政府が言論の自由や学問の自由を制限せざるを得ない状況に追い込まれるだけになると思います。

一般に、慰安婦問題と経済とは全く関係ないかのように思われているふしがありますが、私は大いに関係があると思っています。

政府の経済対策が全く的を射たものではないので、格差は日本等と比較するととんでもない水準にまで高まり、最近では若者は、ヘル朝鮮と形容するほどにまでなっています。

ヘル朝鮮とは、韓国の主に20-30歳代の若者たちが韓国社会の生きづらさを「地獄 (Hell) のような朝鮮」と自嘲するために使うスラングのことです。2015年にSNSから広がり、その後メディアや文化人も頻繁に言及する流行語となりました。

流行の背景には、韓国の超競争社会による雇用不安と、縁故採用がはびこる不公正な就職状況があります。韓国では過酷な受験競争を経て大学を出てもすぐ就職できないことは珍しくなく、2014年時点で20代の就業率は57.4%でした。

高学歴層の就職競争は特に熾烈です。反面、富裕層やエリート官僚による縁故採用がなくならず、政治的なスキャンダルにもなっています。結局、カネもコネも無い「第三身分」は勤勉に努力したところで安定したキャリアデザインを描けないという不条理な現実に対する憤りが、自国を否定する「ヘル朝鮮」という言葉への若者たちの共感を生んだのです。

 ヘル朝鮮を報道するテレビ番組の画像 ハングル:헬조선、漢字:헬朝鮮、発音:ヘルチョソン
このような、状況の背景にはデフレがあります。このデフレを解消しないかぎり、若者を中心とした、不満は高まるばかりです。雇用と、金融政策は密接にからみあっているということを理解すべきです。金融緩和をして、数%インフレ率を高めれば、即座に数百万人の雇用が生まれるという経験則を学ぶべきです。

雇用の確保は、韓国銀行(韓国中央銀行)の役割であることをしっかり認識すべきです。これは、世界の常識です。なぜ、グローバル経済を自認する韓国が、こと自国内の経済というと、構造改革一辺倒で、世界で普通に行われている金融緩和政策をしないのか理解に苦しみます。

しかし、政府は経済がこのような状態になる前も、なった後でもまともな経済対策を実施することなく、ことさら慰安婦問題を煽り、日本を悪者に仕立て、国内の求心力を保ってきました。

韓国の中央銀行韓国銀行 韓国の唯一の希望は韓国銀行が金融緩和に踏み切ること。
しかし、このようなことをいつまで続けても、韓国社会に救いはありません。慰安婦問題をいくらつついてみても現在の韓国のデフレは解消しません。ますます苦しくなるばかりです。デフレと、慰安婦問題、竹島問題は全く別次元の問題です。

重ねていいます。この状況を改善するには、まずは金融緩和をしてデフレから脱却する以外に方法はありません。その後に、ミクロ的な問題を解消することにより、やっとまともな経済状態となり、まともな社会になります。金融緩和をすれば、確かにキャピタル・フライトの恐れがありますが、日韓通貨スワップがあれば、外貨をある程度確保して、キャピタル・フライトを防ぎ、金融緩和をソフトランディングさせることも可能です。

しかし、デフレを放置していては、何も進みません。これは、まるで、2013年より以前の日本の姿のようです。ただし、日本経済はデフレであったにしても、もともと韓国経済よりは基盤がしっかりしていたので、朝鮮ヘルのような状況までにはいたりませんでしたが、それでも、就職率はかなり低下しました。それは、誰よりも日本の若者が実体験で知っていることです。

韓国は、日本の過去の姿を見て、参考にすべきです。まずは、慰安婦問題などは、捨て置き果敢に金融緩和に取り組むべきなのです。恨の文化など捨て置き、まずは金融緩和を実行して、真っ先に若者の雇用を安定させることこそ、韓国が喫緊で進むべき道です。

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2016年8月29日月曜日

尖閣の北西300キロに中国が新軍事拠点 藤井厳喜氏が警告「公務員の常駐を」―【私の論評】尖閣を有人化しなければ、中国は必ず奪取しにくる(゚д゚)!

尖閣の北西300キロに中国が新軍事拠点 藤井厳喜氏が警告「公務員の常駐を」

昨年中国複数サイトに公開された「南じ列島の新軍事基地写真」
習近平国家主席率いる中国の、軍事的野望がまた発覚した。沖縄県・尖閣諸島から北西に約300キロにある島に、軍艦用の埠頭(ふとう)や、艦載機用のヘリポートを整備していたのだ。尖閣強奪の軍事拠点にする可能性が高い。日本政府は覚悟を決めて、警察官や海上保安官などの「尖閣諸島常駐」に踏み切るべきではないのか。

 中国の暴挙が止まらない。軍事拠点が構築されていたのは、浙江省温州市の南●(=鹿の下に机のつくり)(なんじ)列島最大の島・南●島だ。埠頭は長さ70~80メートルで、複数の軍艦の出入りが目撃されているという。今年春には軍用機も参加した演習が行われたとの情報もある。共同通信が19日、報じた。

 南●列島は、自衛隊や米軍の基地がある沖縄本島よりも約100キロも尖閣に近い。

 8月に入り、尖閣周辺海域には、中国公船や漁船が大量に押し寄せ、一部が領海に侵入している。漁船には100人以上の海上民兵が乗り込んでいるとの報道もある。日本政府が再三抗議しても、やめる様子はない。

 26日も、機関砲を搭載した中国海警局の公船3隻が接続水域を航行した。尖閣周辺で中国船が確認されるのは24日連続。尖閣強奪を狙っている可能性が高い。

 日本政府は今こそ「自国の領土を守る」という断固たる姿勢を示し、効果的な対策を講じる必要がある。違法行為を行った中国漁船の臨検・拿捕(だほ)に加え、尖閣への公務員常駐は即効性のある対策の1つだ。

南じ島
 実は、自民党は2013年に公表した総合政策集「J-ファイル2013」で、尖閣への公務員常駐を明記している。

 「尖閣諸島の実効支配強化と安定的な維持管理」との項目で、「わが国の領土でありながら無人島政策を続ける尖閣諸島について政策を見直し、実効支配を強化します」「島を守るための公務員の常駐や周辺漁業環境の整備や支援策を検討し、島及び海域の安定的な維持管理に努めます」と記載しているのだ。

 自衛隊を常駐させれば、緊張状態を高める可能性がある。取り急ぎ、違法操業や不法入国取り締まり目的の「警察権の行使」として、尖閣諸島に警察や海上保安庁の「監視所」を設置すべきではないのか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「政府は早急に警察官や海上保安官をはじめとする公務員を常駐させるべきだ。中国が尖閣に漁民に偽装した海上民兵を上陸させ、『救援・救出』の名目で南●列島からヘリコプターを飛ばし、一気に人員や物資を運び込む危険性もある。時間の問題ではないか。300キロはヘリで1時間の距離だ。世界から『日本は自信がないから尖閣の無人政策を取っている』とみられる」と警告を発した。

【私の論評】尖閣を有人化しなければ、中国は必ず奪取しにくる(゚д゚)!

上の記事では、中国の軍事的野望がまた発覚したなどと、突然ふって湧いたかのような報道ぶりですが、実はそうではありません。すでに、昨年の1月以前からこの動きはありました。南じ島の位置を示す地図を以下に掲載します。


新聞や、テレビなどのメデイアは、ほとんどこのことを報道していませんでしたが、週刊誌「週間実話」がこれに関しては報道していました。その記事を以下に引用します。
新軍事基地急造・レーザー兵器導入 尖閣強奪に動き出した中国の魂胆
2015年1月11日 15時0分

週刊実話 
 ついに、中国が尖閣強奪を本格化させる軍事的な動きを見せ始めた。沖縄本島より尖閣諸島に100キロも近い、中国浙江省温州市沖の南キ列島に新軍事基地を建設しだしたのだ。 
 「軍が基地を建設し始めた南キ島は、界隈にある52の島々のうち最大級の大きさを誇るが、ここに数百人の軍人が昨年秋に上陸。今では島の高所に複数の大型レーダーが設置され、軍事用の超高速通信網の敷設も始まっているという。また、ヘリポートや大型巡視船の艦載機に使用されると見られる滑走路の建設も始まっており、今年中の完成を目指していると伝えられているのです」(自衛隊関係者) 
 この南キ島には将来的に陸海空軍が駐留する予定だが、狙いは「ズバリ長年中国が目論んでいた尖閣諸島の強奪」(同)ともっぱら。そのため、日本政府も大慌てしている状態なのだ。 
 「すでに防衛省や自衛隊筋では、これが尖閣奪取に向けた方策と評判になっている。日米両国では緊急会議を開き、この軍事施設への対応を協議しているほどなのです」(防衛省関係者) 
 もっとも、尖閣奪取を狙う中国の動きはこれだけではない。昨年11月には中国政府傘下の軍事企業である『保利集団』が、「WB-1」と呼ばれるレーザー兵器を開発。これが南キ島の新軍事基地に配備される可能性も高まっているのだ。 
 「この兵器は強力な電磁波を発し、人体の水分を沸騰させる新兵器。ビームを当てられた人間は命に別状はないものの、電子レンジに入れられたような耐え難い熱さを感じ、ヤケドを負った感覚になる。中国軍は東シナ海や国内でのデモ排除に活用するとうそぶいているが、尖閣上陸作戦の折にこれを阻止する海保隊員らに用いるのに最適で、『中国軍はこの兵器を使って尖閣を実効支配する青写真を描いている』と評判なのです」(前出の自衛隊関係者) 
 ちなみに、昨年11月に広東省で開かれた航空ショーでは、最新鋭のステルス機『殱31』も公開された。抗日戦争終結70年の節目にあたる今年は、中国軍の動きが活発化すること必至といえそうだ。
この記事の中にでてくる南キ列島が、ブログ冒頭の記事の南●(=鹿の下に机のつくり)(なんじ)列島のことです。

この記事の中に出てくる「WB-1」という電磁兵器についても、以前から言われていたことです。それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
【軍事ワールド】人間を“瞬間沸騰”させる中国最新「電磁ビーム」に高まる警戒…海洋進出、デモ鎮圧、“恐怖政治”に利用か 
この記事は、2014年12月24日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 中国が人間を“瞬間沸騰”させるという最新兵器を開発した。強力な電磁波を人体に浴びせ、熱さや傷みを感じさせる「非致死性」の兵器で、海洋進出を強行する東シナ海・南シナ海や国内で頻発するデモ対策での使用を視野に入れているとされる。何だかB級SF映画に出てくる武器のようで、威力や実効性もよく分かっていないが、米国ですでに同種の兵器が開発されていることもあり、「中国では恐怖政治の道具にされるのでは」と警戒する見方も広がっている。 
 チャイナ・ポリー・グループ(中国保利集団)が開発した「WB-1」という兵器で、先月11~16日に中国で開催された珠海(ズンハイ)エアショーで公開された。 
 国際軍事専門誌を発行する英国の軍事コンサルタント会社、IHSジェーンズなどによると、WB-1は強力なミリ波のビーム(電磁波)を発し、人体の水分を沸騰させる。ビームを当てられた人は電子レンジに入れられたような状態となり、耐え難い熱さを感じるという。ビームが届く有効距離は80メートルだが、電源などを強化すれば1キロにまで伸びるという。 
 SF映画も真っ青だが、米軍もすでに同種の兵器を開発しているというから、決して“空想の産物”ではない。 
 米軍のものは、人道的な「非殺傷兵器」(ノン・リーサル・ウエポン)に分類される「アクティブ・ディナイアル・システム(ADS)」という対人兵器システムだ。米CBSニュース(電子版)では、「この兵器は銃器の形ではなく、皿形のアンテナの形をしている」「オペレーターは(ゲーム機を操作するような)ジョイスティックで狙いを定める」などと紹介。ビームを当てられると火傷(やけど)を負ったような錯覚に陥り、有効距離は少なくとも450メートルとされる。 
米軍のADS
 2007年に初めて存在が公表された。米空軍研究所によると、ビームを浴びると瞬時に熱さを感じ、その後は炎の中にいるように感じるが、ビームの範囲外に出ると何の痛みも感じず、後遺症もないという。 
 またAFP(電子版)は「けがを負わせるか、極度の不快感を与えるだけかの違いは、その周波数にある」と解説。「電子レンジのマイクロ波は深く浸透するが、ADSの95ギガヘルツの電磁波は皮膚の表面から0・4ミリ程度しか到達しない」として、「電子レンジの100倍の威力を持つADSでも、ポップコーンを作ることはできない」としている。 
米国でのADSの実験。ビームを当てられるやいなや、顔をしかめて逃げるデモ行進役の人たち
 実際に米国でボランティアが被験者として参加し、実験した際の画像も公開されているが、問題は実験時に主催者から被験者に対し「(熱が局所的に集中する)ホットスポットを引き起こす可能性がある」としてメガネやコンタクトレンズ、金属物を外すよう安全予防措置が取られた点だ。つまりこうした金属物などを身につけている場合は、無傷では済まないとみられる。
この記事を読んだ限りでは、中国の 「WB-1」は、大した代物ではないようではあります。わざわざ、このようなものを使わなくても、既存の兵器を使えば、殺傷能力はかなり強いです。

「殲滅31」もまだまたの代物で、現状ではとても実戦配備できるようなものではありません。そもそも、失敗しているようでもあります。仮に成功していたにしても、実戦配備は2019年あたりになる代物で、その戦力はまだ未知数です。

となると、この週刊実話の記事は、やはり週刊誌独特の煽り記事で、信ぴょう性はさほど高いものとは思われません。だからこそ、一見このショッキングな記事は、所詮週刊誌の記事ということで、あまり日本国内でも、注目を浴びなかったのでしょう。

中国が「WB-1」を尖閣で使う予定をしているというのなら、中国側としては、尖閣を奪取するにしても、死傷者の出る本格的な戦闘ではなく、デモ隊を鎮圧するように、死傷者を出さずに奪取しようとしているとも受け取れます。

中国としては、海軍力でも、空軍力でも日本と比較すれば、かなり劣ることを自覚しているのだと思います。これについては、このブログに何度か掲載してきたので、ここでは詳しくは、解説しません。詳細を知りたいかたは、以下のその記事のリンクを掲載しておきますので、これを参照して下さい
中国の海軍力が日本に比較して劣勢である根拠 
中国の空軍力が日本に比較して劣勢である根拠
中国の軍事力で優っているのは、まずは核兵器です。中国は核を保有しているものの、日本は保有していません。しかし、現実問題として、尖閣を奪取するくらいのことで、核兵器を使うなどということは考えられません。さらに、日本には米軍が駐屯しており、日本は米国の核の傘で守られているということもあり、中国としては、現状では尖閣奪取のたに核兵器を用いることなど考えられません。

もう一つ、中国が優っているのは、陸軍力です。これは、数の上では圧倒的です。ただし、空軍力と、海軍力が劣っている中国 は尖閣に多数の陸軍を上陸させることは不可能です。輸送しているうちに、その大部分を失うことになります。

以上のようなことを考えると、通常兵力で、尖閣を奪取しようとした場合、日本とまともに戦っていては、中国には全く勝ち目はありません。

だからこそ、通常兵器ではなく、「WB-1」などを用いることを画策しているのかもしれません。しかし、これとて暴動の時に暴徒を鎮圧するのには、良いかもしれませんが、戦車やその他の車両に搭載している兵士には効き目がないと思います。

さらに、歩兵などに照射したとして、歩兵が黙って無力化されるなどということも考えにくいです。その前に、何らかの兵器を用いて「WB-1」を破壊することでしょう。

しかし、ブログ冒頭の記事のような記事が、ZAKZAK(夕刊フジ)に掲載されることになったのですから、これは週刊誌の煽り記事などとは違うと思います。

中国海軍には探知できない日本の「そうりゅう型」潜水艦
やはり、尖閣に危機が迫っていると考えるべきでしょう。ここは、国際政治学者の藤井厳喜氏が主張するように、尖閣に自衛隊員などの公務員を常駐させるべきです。

尖閣に人がいるということになれば、もし中国が尖閣を奪取しようとした場合、日本側としては、その人を守るとい大義ができ、武力を行使して人民解放軍や、海上民兵を排除したとしても、国内的にも国際的にも、非難されることはありません。無人島だとそういうわけにはいかないと思います。

これからも、人を常駐させなければ、それこそ藤井厳喜氏が語っているように『日本は自信がないから尖閣の無人政策を取っている』とみられる」ことになります。これは、中国もそのような見方をし、軍事的には劣勢ということを承知しながらも、尖閣を奪取できると思い込ませ、その方向に走らせてしまうことになります。

やはり、藤井厳喜氏のいうように、尖閣を日本の軍事基地として、自衛隊員を常駐させ、その他海上保安庁の職員なども常駐させ、無論のこと尖閣に港や、ヘリポートなど構築して、一日もはやく本格的に中国に対峙すべきです。

これは、自国の領土守るためであり、たとえ戦闘になったとしても、先ほど述べたように、中国に負けることは考えにくいし、国際社会も容認するものと思います。ただし、愚かで外交の劣等生でもある中国は、喚き散らすかもしれません。しかし、これは放置しておけば、単なる負け犬の遠吠えになるだけです。日本政府にその覚悟があるかないかという問題があるだけです。

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2016年8月28日日曜日

【TICAD】安倍晋三首相、基調講演で「アフリカを力や威圧とは無縁の場に」 中国に対抗か? 3年で総額約3兆円投資の意向も表明―【私の論評】中国のアフリカ投資大失敗後の今がベストタイミング(゚д゚)!

【TICAD】安倍晋三首相、基調講演で「アフリカを力や威圧とは無縁の場に」 中国に対抗か? 3年で総額約3兆円投資の意向も表明

第6回アフリカ開発会議が開幕し、基調演説する安倍首相=27日、ナイロビ

日本政府が主導する第6回アフリカ開発会議(TICADVI)が27日、ケニアの首都ナイロビで開幕した。安倍晋三首相は基調演説で、アフリカへの積極的な進出を続ける中国を念頭に、「日本は、力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として(アフリカを)育てる」と強調。2018年までの3年で官民総額300億ドル(約3兆円)を投資する意向を表明した。

 首相は演説で、「(アジアとアフリカの)両大陸をつなぐ海を平和な、ルールの支配する海とするため、アフリカの皆さまと一緒に働きたい」と呼び掛けた。

 また、「若者に自信と夢を持たせるため、向こう3年で5万人に職業訓練を提供する」と強調。「質の高いインフラ」を整備するため、「日本は率先し、3年で約100億ドル(約1兆円)をアフリカに振り向ける」とした上で、民間企業の投資を合わせると投資総額は約300億ドルにのぼると説明した。

 一方、日本が提唱している国連安全保障理事会の改革に関連し「2023年までにアフリカは常任理事国を送り出しているべきだ」と表明。日本も常任理事国入りを目指していることを踏まえ、「安保理改革は日本とアフリカの共通の目標だ」と連携を呼びかけた。

 会議は28日、アフリカに対する質の高いインフラ投資やテロ対策、強靱(きょうじん)な保健システムの推進を柱とする首脳間文書「ナイロビ宣言」を採択し閉幕する。

【私の論評】中国のアフリカ投資大失敗後の今がベストタイミング(゚д゚)!

今回の、安倍総理のアフリカでの約束は、中国を意識してのものかもしれませんが、中国に対抗する必要など全くありません。確かに、中国はかなりアフリカに進出してはいるものの、中国の対アフリカ投資はことごとく失敗しています。

この中国の大失敗の後に、日本がアフリカ諸国に対して援助を実行するのは、まさにベスト・タイミンクです。

中国がアフリカに急接近したのは、慈善的な理想主義とはほとんど関係がありませんでした。それは、急成長する自国経済と、その輸出品に対する新しい消費者市場に対応するために、必要不可欠な原料、とくに石油および鉄鉱石にアクセスすることを最大の
関心事としていました。

当時は、21 世紀の終わりまでに原料の輸入を加速する必要に直面していると考えられていため、中国の政策決定者は全地球規模でのエネルギー・資源の分散供給を確保するための戦略的決定を行ったのです。

その方針は 2001 年の 9/11 危機(アメリカ同時多発テロ)によって加速しました。なぜなら、9/11 によって、不安定な中東の石油供給に 60%以上を依存する中国の政策の偏りが明らかになったからでした。これを受けて中国の政策決定者は「積極的に買いに行く」政策に舵をきったのです。

当初は、新しい原料供給先を確保するため中国の石油・資源企業が、アフリカ、中央アジアおよび南米へ赴くという戦略が重視されました。中国がアフリカのような地域にまで政治・経済的な触手を拡大しているのは、国内の経済開発が喫緊の課題であるという焦りを、色濃く反映していました。 


数年前までは、中国がアフリカに巨額投資し、いずれ経済植民地にするといわれていました。しかし、現実には中国は、アフリカで巨額損失を出し、アフリカ人からは見下され、未だ主導権を握ってはいません。

2000年代に資源価格が急騰していた頃、中国はアフリカの鉱山の採掘権などを買いあさっていました。

その規模は「あっちに1兆、こっちに2兆」というまるで豆腐屋のようなやり方で、中国はアフリカの植民化を目指しているとも言われました。

それから10年以上の年月が経って、中国のアフリカ資源投資は、資源価格暴落で大損失被っています。さらには、中国経済そのものが減速して、中国政府は6%台の経済成長をしているなどと公表していますが、それは希望的観測に過ぎず、実際にはマイナス成長をしているのではとの観測もあるくらいです。そのためもあって、現在の中国のアフリカ投資は、単純な鉱山買収から企業の進出のようなビジネスに移っています。

南アフリカ・ヨハネスブルクの中華料理店
今や、中国人はアフリカのどこででも見かけ、どの国のあらゆる町に中華料理店があります。しかし、中国人や中国企業がアフリカで生き残っていくのは厳しいようです。

アフリカに進出した最近の中国企業で目立つのが建設業です。現地の労働者を雇って道路工事やビル建設をしています。アフリカ人は性格的にコツコツ物を組み立てるのが性に合わないらしく、上手く中国企業が入り込んでいるようではあります。

しかし、杜撰な中国人と、細かい事が嫌いなアフリカ人の組み合わせによって、多くの欠陥工事が行われているという現実があります。

そのためもあってでしょうが、中国人はアフリカで良く見かけられる割りには、あまり感謝されないし敬意も払われていません。

さらに、最近では中国が「世界の工場」と言われることもあり、その本領を発揮して、雑貨や中国製品を販売するチャイナショップがとても多くなりました。小さな街にも中国人が経営する商店が必ずあり、低価格で低品質な商品の販売をしています。

コートジボアールで現地の女性に中国の薬を売る中国人女性
このような商店の経営者はさすがに現地語を話すのですが、建設現場で働く中国人は、中国語しか話せず現地で孤立しています。

中国政府は外国と巨大プロジェクト契約を結んで、中国人労働者を送り込むのですが、優秀な技術者や優秀な技術者ではなく、国内の失業者を送り込むようです。そのためでしょうが、現地の人から見ても中国人労働者はとても身なりや態度が悪く、見下されています。

アフリカには紛争地域が多く、中国が進出する国は、欧米や日本が進出しない国や地域がほとんどです。例えば軍事政権が長年支配していて、鉱山などで民衆を強制労働させているような国や地域です。

ザンビアの飯場で卓球をする中国人労働者
そんな国に対してでも中国は鉄鉱石や石油と引き換えに戦車やミサイルを売るので、独裁者等からはとても感謝されています。
そもそも、中国のアフリカ進出は自国のためであり、アフリカ諸国を考えてのことではありませんでした。そうして、最近ではあまり自国のためにもなっていません。そもそも、中国の経済が停滞しているのですから、資源の必要性も以前よりはなくなっていますし、そもそも海外投資などすぐに見返りを期待するものではありません。長期で儲けるべきものであり、短期では損をするくらいです。

エチオピアの建設現場。低賃金に反中感情が高まる。
さらに、中国が地元で工事をしても、地元にはほとんどメリットがなく、中国が儲かるだけです。そうして、自国の経済さえままならない中国、さらにもともと自国に極貧層が大勢いるような国です。そんな国がアフリカに投資したとしても地元のメリットにはならず、意味がありません。

しかし、中国のアフリカでの大失敗は、その後の日本のアフリカ諸国に対する援助を際立たせてくれることになります。日本は、中国などとは違い、国際投資や、援助に長年の経験があります。

アフリカ諸国に対して、素晴らしい援助をして、アフリカ諸国と日本との関係を良くして、さらには、中国との違いをもアフリカの人々に鮮烈にみせつけることになると思います。

私としては、ドラッカー氏がアフリカがアジア並に食料が生産できれば、世界の食糧危機はそれで防ぐことができると語っていことから、農業・義業などでアフリカもアジアなみに食料生産ができるようになれば、アフリカ諸国の人々も潤うことになるし、世界にとっても良いことなので、その方向でアフリカの援助を進められたら素晴らしいことだと思います。

安倍総理が演説の内容にもある通り、

「(アジアとアフリカの)両大陸をつなぐ海を平和な、ルールの支配する海とする」

「若者に自信と夢を持たせるため、向こう3年で5万人に職業訓練を提供する」

を是非とも実現し、アフリカの人々が自立し、自尊心を持って日々生活ができるようになってほしいです。

このようなことを実現することによって、中国の影響力をアフリカから永遠に削ぎ落とすべきです。

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【宮家邦彦のWorld Watch】見るも無残な最近の中国外交 なぜこうも裏目ばかりが続くのか ―【私の論評】中国に騙されないために、世界を騙そうとする中国の最悪のテクニックを学ぼう(゚д゚)!


ついに日本政府からゴーサイン出た! 豪州の将来軍艦プロジェクト、日本から輸出「問題ありません!」 気になる提案内容も明らかに―【私の論評】安倍政権から始まった日豪関係の深化を象徴する出来事

  ついに日本政府からゴーサイン出た! 豪州の将来軍艦プロジェクト、日本から輸出「問題ありません!」 気になる提案内容も明らかに まとめ オーストラリアの将来汎用フリゲート選定計画で、日本の提案が最終候補に選ばれ、国家安全保障会議で海外移転が認められることが確認された。 提案され...