2017年7月23日日曜日

「空母大国」に突き進む中国に待ち受ける「財政の大惨事」 米専門家指摘に反論「偉業を快く思っていない」―【私の論評】日本は既に戦闘力では米空母と同等ものを建造できる(゚д゚)!

「空母大国」に突き進む中国に待ち受ける「財政の大惨事」 米専門家指摘に反論「偉業を快く思っていない」

大連港で進水した中国初の国産空母(今年4月26日撮影)
【国際情勢分析】

 4月26日、中国初の国産空母が遼寧省大連の建造ドックから進水し、軍当局は「わが国の空母建造は重大な段階的成果を得た」(国防省報道官)と自賛した。上海では2隻目の国産空母が建造中で、原子力空母の建造も視野に入れるなど中国は「空母大国」に向け突き進んでいる。一方で巨費を投じる空母の建造が中国の財政を圧迫するとの指摘も米国の専門家から出ている。

将来、中国の空母戦力が「財政的な大惨事」を招く-。米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」は新空母の進水にあたり、米軍事専門家の分析を紹介した。

「計画が見直されない限り、中国の空母は大きな財政的難題となるだろう。空母への資源の投入は米国においても巨大な財政負担となっている」

こうした専門家の見方の背景にあるのが、中国における空母建造の進め方だ。新空母は中国初の空母「遼寧」の前身である旧ソ連の未完成空母「ワリヤーグ」を元に設計、改良したもの。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、艦載機の殲(J)15の収用数は遼寧の18~24機から8機程度増える見通しだ。一方、スキージャンプ方式の甲板によって艦載機自らの推力で発艦する方式を踏襲しており、艦載機の搭載燃料や武器重量が制限される課題は残されたままだ。

上海で建造中の空母は、まったく別タイプの設計とみられている。現在の米原子力空母に設置されている、高圧蒸気で艦載機を発進させる装置「カタパルト」(射出機)を備えていると同サイトは予測。さらに次世代の空母は、リニアモーターによる電磁式カタパルトが設置され、原子力による動力システムが導入されると分析する。

ただ日本の軍事アナリストによれば、中国は現在、蒸気カタパルトよりも高度な技術が必要な電磁式カタパルトを優先的に開発しているもようだ。通常動力型の空母に蒸気カタパルトを搭載すれば、船の動力の相当部分をカタパルトが消費してしまうためだ。

いずれにしろ、大連と上海の空母は設計思想が根本的に異なっており、それぞれを運用させた上で設計を統一するとみられている。

こうした中国のやり方に対して、米国の空母設計の専門家は同サイトにこう指摘している。「甚だしく設計が異なるタイプの艦隊を運用するのは、効果的な空母戦力を形成する方法ではない。いずれ後方支援上の悪夢であることが明らかになるだろう」

また別の米研究者は「海軍の艦船の維持には巨額のコストがかかる。それ(空母の建造)は絶え間なく拡大を続ける資源の消耗であり、手遅れになるまで中国側は気づかないだろう」と警告した。

ロシアメディアは2013年、中国初の国産空母の建造費用が約30億ドル(約3300億円)に上るとの建造関係者の話を報じている。空母打撃群としての運用・維持には、さらに数千人の空母乗組員や数十の艦載機、さらには一体運用する駆逐艦や潜水艦などが必要となり、莫大(ばくだい)な費用がかかることは間違いない。

「空母に投じられた資金は、ただの浪費ではなく投資だ」

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は、ワシントン・フリービーコンへの反論を掲載した。中国人専門家は「国産空母には8000もの革新的技術が使用されている」として、空母の建造が電子設備や動力、鋼材などの製造分野での技術向上につながったと主張した。

また別の専門家は、今後数年間で中国が空母を複数建造した場合、投資額は計1300億元(約2兆800億円)に上り、中国の経済成長を刺激すると指摘。ハイテク分野での雇用創出や、コンピューター・通信産業などの発展をもたらし、国内総生産(GDP)への直接的な貢献額は数千億元に上ると楽観的な見方を示した。

米国は現在10隻の空母を保有しており、さらに2隻を建造中だ。中国はそこまで多くの空母を建造するつもりはないとして、中国の専門家は同サイトの「財政危機説」を否定する。「そうした考え方は完全に間違っている。米国の専門家が中国をよく理解していないか、われわれの偉業を快く思っていないかだ」(中国総局 西見由章)

【私の論評】日本は既に戦闘力では米空母と同等ものを建造できる(゚д゚)!

中国初の国産空母とされる、最新鋭のものとあまり変わりがないともいわれている空母「遼寧」のボロ船ぶりについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下掲載します。
【中国空母、太平洋進出】遼寧は台湾南部を抜け南シナ海へ―【私の論評】ボロ船「遼寧」で中国の国内向けイッツ・ショータイムが始まる(゚д゚)!
中国の空母は、日米や台湾にとつても全く脅威でも何でもありません。結論から言ってしまうと、西側の空母は「実用品」ですが、中国の空母は見世物にすぎないからです。 
昔日本のある軍人が「空母の性能は艦載機で決まる」と言ったそうですが、現代でもこの言葉は当てはまります。 
高性能な艦載機を安定して運用できる空母が高性能なので、空母自体は極論すれば、飛行機の入れ物に過ぎないのです。 
アメリカの空母は地上基地と同じような性能の大型戦闘機を80機以上も搭載可能で、カタパルト(射出装置)によって数十秒ごとに離陸させることができます。平常時は航空機55機程度とヘリコプター15機程度を運用しています。
米空母「ニミッツ」
離陸の際には蒸気式カタパルト4基が1分ごとに艦載機を射出するので最大15秒で一機ずつ離陸できます。この蒸気式カタパルト4基を稼動させるのに原子力機関の電力が必要で、通常エンジンで運用するのは困難とされています。 
アメリカが空母に原子力機関を用いる一番の理由がこの電力確保ではないかとも言われています。良く言われる「地球を何周も出来る航続距離」についてはアメリカ軍自身が、あまり実用的な意味は無いと認めています。 
船の燃料だけ無限でも、航空機燃料や乗組員の食料や飲料が先に尽きてしまうからです。収容の際も数十秒間隔で着艦し、2機同時に昇降できる大型エレベーター3基で艦内に格納することができます。 
艦載機は同じ時代の地上用戦闘機と比較しても、遜色の無い性能が確保されている。現在のFA-18はF-15と同等とされていますし、今までの艦載機もずっとそうでした。今後もF-35ステルス機を海軍と空軍で運用する事が予定されています。 
アメリカの空母はまさに空母の理想形といえ、一隻の空母を50年間運用するのに1兆円以上掛けているとされます。他国の空母はアメリカよりぐっと下がり「とりあえず飛ばせる」のを目的にしている事が多いです。 
実戦で役に立ちそうなのはフランスとイギリスの空母くらいで、他は地上の基地から飛び立つ敵機と交戦するのは厳しいです。欧米先進国はハリアーや将来はF-35のような優れた艦載機を運用できるのですが、他の国は「とりあえず飛べる」程度のものしか確保できないからです。

燃料も装備を全部外さないと「遼寧」を離陸できないJ-15
では中国の空母および艦載機はどうなのでしょうか?中国の空母「遼寧」は旧ソ連空母の「ヴァリャーグ」がウクライナの造船所で未完成のまま野ざらしになっていたのを買い取りました。エンジンが無かったので中国製のエンジンを搭載し、搭載装備も間に合わせの中国製や輸入品でできています。 
特徴は速力が遅いこと、カタパルトが無いこと、スキージャンプ方式であることです。滑走路の先端にスキージャンプを取り付けるのはイギリス空母で始まり、垂直離着陸機のハリアーを少ない燃料で離陸させる事ができました。 
このように西側先進国の空母では垂直離着陸機(VTOL機)でスキージャンプを使用しています。本来ジャンプ台を使わなくても離陸できるのです。 
対してソ連やロシアの空母では、元々空母から離陸する能力が無い戦闘機を、ジャンプ台を用いて離陸させています。空母からは飛べない戦闘機を無理やり飛ばしているので、空母のミサイルや爆弾の搭載量は非常に少なく、航続距離も短いのです燃料を多く積むと兵器を減らす必要があるのです。 
ソ連とロシアの艦載機SU-33は、地上運用型のSU-27の改造機に過ぎません。中国が「遼寧」で運用しているJ-15(殲-15)もソ連のSU-27を中国が勝手にコピーして艦載機にしたもので、ロシア側はSU-33の模造品だと言っています。 
J-15はSU-33よりも電子装備などが新しいものの、基本性能はSU-33より劣っています。以前アメリカの軍事メディアが「J-15は2トンしか武器を積載できない」との解説をしていたことがありますしかも実際の運用時には翼の下に増加タンクも装備するので、1トン以下かゼロという可能性すらあります。
「遼寧」を発艦するJ-15
元になったソ連の空母とSU-33は現在もロシアが運用しているのですが「飛行しているのを何度が確認された」という程度で、あまり活動はしていないようです。 SU-33の生産奇数はたった24機で、J-15は11機に過ぎません。これでは、通常では試作機の数程度に過ぎません。 
中国の空母はロシアと同じく、保有しているのを見せびらかす以上の機能を持っていないと考えられています。 
今後新型のJ-31が実戦配備されても空母「遼寧」の戦力はあまり変わらないでしょう。中国は「遼寧」に変わるような10万トン級の大型空母を多数建造するという計画を発表しています。 
しかし、技術的、予算的な裏づけがないのに、大風呂敷を広げるのは中国の伝統芸能ですす。本当に建造したとしたら、やはり専門家の笑いの種になるのでしょう。
下の動画は、蒸気カタパルトで巨大な戦闘機を一気に加速させ、空に放つ米空母の飛行甲板で働く様子を、とある作業員の装着したGoProカメラの視点から眺められる動画です。


船の上の作業は戦闘中に電源を失ってもできるよう、基本的には人力で行われます。こうした発艦作業もオートメーション化はされていません。事故を防止するためにいろいろな人がいろいろな工夫や手順を踏んでいる様子がなかなかおもしろい動画です。

そうして注目転点は、空母「遼寧」の搭載している殲(J)15はミサイルも燃料タンクも搭載していませんが、米国の航空機はミサイルと燃料タンクも搭載していることがはっきりわかります。

米国の空母の専門家は、この有様をみて、「中国が何のためにこのような空母を運用するのか、その理由がわからない」と語ったと言われています。私にも全くわかりません。

中国初の国産空母も、スキージャンプ方式なので、実質は遼寧とあまり変わりないでしょう。ただし、電子機器や兵装が近代化された程度のものでしょう。

それと、次世代の空母は、リニアモーターによる電磁式カタパルトが設置され、原子力による動力システムが導入されると予測しているようですが、中国のリニアモーターの技術もかなり拙いものです。

2027年、東京~名古屋間に世界で初めて超電導技術を採用したリニア中央新幹線が開通します。品川駅から名古屋駅までを最速40分、さらに2045年には大阪までを67分で結ぶ計画です。

「でも、リニアモーターカーって上海にもなかった?」という人もいるかもしれないですが、上海のリニアと日本のリニアとでは技術レベルの次元に雲泥の差があります。そうして、この技術は空母で戦闘機を発艦することに転用できます。

技術的には拙い上海のリニアモーターカー
リニアモーターカーとは、車両側に取り付けた電磁石と地上側の電磁石の、磁界(N極・S極)の反発する力と引っ張る力を利用して進むものをいいます。なかでも日本のリニア中央新幹線の特徴は、超電導技術を導入している点です。

ある種の金属・合金・酸化物を一定温度以下に冷やすと、電気抵抗がゼロになる「超電導現象」が生まれます。超電導状態になったコイルに一度電流を流せば、電流は永遠に流れ続け、強力なパワーをもつ超電導磁石となります。この「超電導現象」を生み出すのが技術的に極めて難しいのです。

日本のリニアは超電導材料としてニオブチタン合金を使用し、液体ヘリウムでマイナス269度まで冷却することで超電導状態を作り出しています。

日本のリニアは“超電導”技術を使い、10センチも浮上して走行します。一方、上海のリニアはドイツが開発したトランスラピッドリニアという方式を採用していますが、これは超電導ではなく“常電導”磁気浮上と呼ばれるものです。超電導に比べて圧倒的に磁場が弱く、浮上する高さは1センチメートル程度しかありません。もしも地震などで軌道が歪めば、すぐに車両と軌道が接触する危険があります。

最高速度も日本のリニアが最高時速581キロなのに対し、上海リニアは430キロが限度です。さらに加減速の性能にも大きな差があります。

上海リニアの常電導では最高時速430キロに到達するのに13.3キロメートルの距離を要していますが、日本の超電導リニアが最高速度581キロを出すまでに必要な距離はわずか8.8キロメートル。時速500キロになら、上海リニアの半分の距離で達することができます。

上海リニアは2002年、中国・上海の浦東空港と郊外の地下鉄駅の間、約30キロの区間を8分弱で結んで話題になりましたが、実際に乗った人は、「加速に時間がかかり、最高速度に到達するとすぐに減速を始めてしまった」と話しています。

技術レベルで見れば、超電導と上海の常電導は“機械とオモチャ”ほどの違いがあることは間違いありません。

中国は、日本の大型ヘリコプター搭載護衛艦の存在をかなり恐れているようですが、それも理解できるような気がします。

海上自衛隊最大の護衛艦「かが」が3月22日、横浜市のジャパンマリンユナイテッド磯子工場で就役しました。

護衛艦「かが」
「かが」は全長248メートル(遼寧は304メートル)で艦首から艦尾までが空母のように平らな「全通甲板」を持つヘリコプター搭載護衛艦です。哨戒ヘリは5機が同時に離着艦でき、対潜水艦戦に従事して強引な海洋進出を続ける中国を牽制します。

輸送ヘリや攻撃ヘリ、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなども搭載でき、南西諸島をはじめとした離島防衛や災害派遣などでの活躍も期待されています。

この「かが」は見た目は、ほとんど空母です。そうして、甲板をある程度加工すれば、垂直離着陸機(VTOL機)でもあるF35Aを搭載すれば、実質的に空母として運用できます。

航空自衛隊のF35A
それに、日本がリニアモーターカーの技術を、空母のカタパルトに転用することは可能です、そうすると、原子力ではない通常のエネルギーで動く空母でも、原子力空母と同等の攻撃力を持った空母も建造可能です。

中国にはまだない技術を日本は、はるかに先んじて持っているわけで、日本にとってはすでにまともな空母を建造するのは可能なのです。

それにしても、中国は工作技術や、先端技術でかなり劣っていますから、「遼寧」を改装したり、国産空母を建造するのでさえ、莫大な費用がかかります。どの程度かかるのかは、わかりませんが、日本が「かが」や「ひゅうが」を建造したり、リニアモーターによる電磁式カタパルトを備えた本格的空母を建造するよりもはるかに費用がかかるのは間違いないです。

これから、中国が空母大国になりたいと望むなら、莫大な経費を必要として、末期のソ連のようになる可能性は高いです。旧ソ連は、軍事力で米国に追いつき追い越そうとしたため、かなりの軍事費をついやさなければならなくなり、それがソ連崩壊の原因の一つにもなった面は否めません。

日本も、これから空母を建造すべきだと思います。日本が空母を5隻くらいも持つようになれば、アジアの軍事バランスも相当変わると思います。それに、日米に追いつけ、追い越せと中国が空母建造に血道をあげれば、中国が弱体化します。どんどんやってほしいです。

リニアモーターカーによる電磁カタパルトを備えた本格的空母を二隻建造し、あとはヘリコプター護衛艦の甲板を改装して、F35Aを搭載するようにすれば、日本としては無理なくできる範囲だと思います。それと、当然のことながら、オスプレイも搭載すべきです。

日本のリニアモーター技術と省エネ技術をもってすれば、後続距離では米国の原子力空母には到底及ばないものの、戦闘力では同等のものを十分に建造できます。ただし、ブログ冒頭の記事にもあるように、「地球を何周も出来る航続距離」についてはアメリカ軍自身が、あまり実用的な意味は無いと認めています。

船の燃料だけ無限でも、航空機燃料や乗組員の食料や飲料が先に尽きてしまうからです。

日本は、米空母の航空燃料や乗組員の飲食料の搭載分の範囲の航続距離を有し、エネルギーを節約し、米原子力空母と同等の航空機発艦・着艦回数と同等の能力を持つ安全な空母を建造する事が可能です。

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2017年7月22日土曜日

「石破4条件」の真相はこれだ!学部新設認めない「告示」の正当性示せなかった文科省―【私の論評】財務省のような粘りのない文科省の腰砕けを露呈したのが加計問題の本質(゚д゚)!

「石破4条件」の真相はこれだ!学部新設認めない「告示」の正当性示せなかった文科省

石破茂氏
 加計学園問題では、いわゆる「石破4条件」が注目された。石破茂氏が地方創生担当相だった2015年6月30日に閣議決定されたものなのでそう呼ばれているが、石破氏は、本人の名前がついていることを嫌っているようだ。

 なにしろ加計学園問題が、安倍晋三政権への倒閣運動の様相を呈しているので、政治家がピリピリするのは仕方ない。

 「石破4条件」は、獣医学部新設に関して、(1)新たな分野のニーズがある(2)既存の大学で対応できない(3)教授陣・施設が充実している(4)獣医師の需給バランスに悪影響を与えない-という内容で、16年3月までに検討するとされている。


日本獣医師政治連盟委員長の北村直人氏
 これが作られた経緯は、18日付産経新聞「加計学園 行政は歪められたのか(上)」に詳しい。それによれば、15年9月9日、石破氏は、衆院議員会館の自室で日本獣医師政治連盟委員長の北村直人氏と、日本獣医師会会長の蔵内勇夫氏に対して、「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました」と語ったという。

 これが事実であれば、「石破4条件」は獣医師会の政界工作の成果だといえる。

 その根本を探すと、文科省が獣医学部の申請を一切認めないとする同省の方針に行きつく。これは、03年3月の「文科省告示」として書いてある。いわゆる岩盤規制である。これらの規制に基づき50年以上も獣医学部の新設がなかった。

 そこで、国家戦略特区の課題として、内閣府と文科省の間で、文科省告示の適否が議論された。交渉の結果として出てきたのが「石破4条件」だった。筆者の聞くところでは、この文言案は文科省から出されたようだ。

 しかし、文科省はここで大失敗をした。前述のように高いハードルを作るつもりで、学部新設をしたい者は条件をクリアして持ってこい、と考えた。つまり、4条件の挙証責任は文科省にはないという立場だ。実際、前川喜平・前文科事務次官ほか、文科省関係者はそう主張する。

 これは誤りだ。文科省の学部新設の認可制度は、憲法で保証されている営業の自由や職業選択の自由を制限するので、挙証責任は所管官庁の文科省にあるのだ。これは閣議決定された特区基本方針にも明記されている。

 つまり、「石破4条件」で書かれていることは、文科省が学部新設の申請を門前払いする文科省告示の正当性を16年3月までに示さなければいけないということだ。それが示せなければ、文科省告示を廃止または改正する必要が出る。

 「石破4条件」を検討するためには、農水省などの協力も必要だ。しかし農水省は早い段階から手を引いたらしい。その結果、文科省は16年3月までに説明ができなくなってしまった。これが真相だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省のような粘りのない文科省の腰砕けを露呈したのが加計問題の本質(゚д゚)!

学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐる批判が吹き荒れる6月26日、地方創生担当相の山本幸三は内閣府での会合でこう語りました。

「この話は、去年3月末までに文部科学省が挙証責任を果たせなかったので勝負はそこで終わっている。半年後の9月16日に延長戦としてワーキンググループ(WG)で議論したが、そこでも勝負ありだった」

多数のメディアや野党は、首相の安倍晋三と加計学園理事長が旧知の仲であることから「加計ありきだった」という批判を続けています。その最大の根拠は、内閣府幹部職員が文科省職員に「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと語ったとする同省の内部文書でした。

ところが、「官邸の最高レベル」という文書の日付は「平成28年9月26日」。この時点ですでに獣医学部新設の議論は決着しており、安倍の意向が働くことはありえないです。

では、日本獣医師会の強い意向を受けて、獣医学部新設を極めて困難とする「石破4条件」が27年6月30日の閣議決定「日本再興戦略」に盛り込まれたにもかかわらず、愛媛県今治市の獣医学部新設の特区申請が認められたのはなぜだったのでしょうか。

国家戦略特区WG座長でアジア成長研究所所長の八田達夫は「4条件により制限は加えられたが、達成可能だ」と踏みました。日本再興戦略で「獣医学部新設に関する検討」という文言が明記されていたからです。

国家戦略特区WG座長 八田達夫氏
文科省は、農林水産省による獣医師の需給推計を根拠に「獣医師は足りている」として学部新設や定員増を拒み続けてきました。

八田はこれを逆手に取りました。日本再興戦略を読み解いた上で「成長戦略につながる高度な研究や創薬など新たな部門に携わる獣医師の需要が明らかになれば、クリアできる」と理屈づけたのです。

しかも日本再興戦略では「28年3月末までの検討」を農水省や文科省に義務づけました。八田はこれこそ最重要ポイントと考え、WGは両省に「再検討」を求めました。

ところが、ここから文科省は猛烈なサボタージュを始めました。八田は内閣府を通じて文科省に検討状況を何度も尋ねたのですが、期限である「28年3月末」が過ぎても明確な回答はありませんでした。結局、WG会合が開催されたのは、期限の半年近く後の同年9月16日でした。

ちなみに「需要見通し」は、「複数の微分方程式体系からなる数理モデル」です。獣医師は足りているということを文科省は微分方程式を書いて証明すれば良かったのです。しかし、これは、文系事務官僚の手に負える代物ではないです。

しかし、何も自分たちでやらなくても、省外の誰か数学の得意な人に顧問にでもなってもらいその人にやってもらえば、それで良かったはずです。そうして、その結果を他の複数の人に検証してもらえばそれで良かったはずです。でも、彼らにはそれをしませんでした。

本当は誰かに頼んで、やってもらったのかもしれません。しかし、いくら数理モデルにあてはめたにしても、本当に足りなければ足りないなりの結果しかでません。外部に頼んだにしても、外部の数理研究者なども嘘をつくわけにはいきません。

そこで、文科省は諦めてしまったのでしょう。文科省はこの点においては、財務省には負けてしまうようです。財務省の場合は、このような場合でも無理をしてでも、何とか自分たちの都合の良い資料を作り上げます。

たとえば、デフレなど景気の悪い時には、マクロ経済学的には、減税、給付金、公共工事などの積極財政をせよと教えていますが、財務省はこの教えに背いて、デフレ気味味の現状でも増税をするための根拠を何とかでっちあげています。

そうして、増税の根拠をご説明資料にまとめて、政治家やマスコミなどに足繁くかよい説明をして、その根拠をまわりに信じ込ませ、とうとう8%増税を安倍政権に実行させてしまいました。しかし、この根拠はでっちあげだったことは、増税後の大失敗ですぐに暴露されました。

この手口は、詳しく分析してみると、数理モデルを駆使するような高度なものではありません。良く分析するといくつもの錯誤の上に成り立っていることは確かです。たとえば、財政と税制の一体改革なるものを打ち出し、まともな医療や社会保障を受けたいのであれば、増税に甘んじなければならないなどと、多くの人の情感に訴えるものであったり、明らかな錯誤の上に成り立つものです。

財務省の嘘を暴く高橋洋一氏の番組
その手口の中心は、政府の負債だけに注目させて、資産を無視して、国の借金1000兆円であり、政府は借金塗れであるようにみせかけるというものです。また、統合政府という、日銀と政府を含めた尺度見た統合政府の財政状況なども無視です。これなど、民間企業では連結決算ということで当たり前になっていることですが、それが明るみに出れば、政府の借金など幻想に過ぎないということが国民知れてしまうで、財務省はおくびにも出しません。

財務省は、自分たちの省益を守り抜くには、ここまでやり抜くのですが、文科省にはこうした根気や、覚悟がなかったようです。さすがに、一流官庁といわれる財務省と最低といわれる文科省の違いです。(無論これでは、財務省も国民にとって良くはないのですが、目標に向かって執着心を持って、努力するという意味では財務省のほうが優れているという意味です)

WG会合では、新たな部門での獣医師需要について農水省は「特に説明することはない」と関与を避けました。文科省は「各大学で取り組んでいる内容だ」と従来の説明を繰り返しました。

会合の議事録には、

「家畜の越境国際感染症など、これまで対応する必要がなかった部門で需要が出てきた。新たなニーズに対応するマンパワーの増強が必要ではないか」

「新しい分野も既得権を持った大学の中だけでやろうというのはあり得ない。本来は28年3月末までに検討するはずだったのに、今になって需要の有無の結論が出ていないのは遅きに失している」

という内容が掲載されています。

委員たちは矢継ぎ早に文科省を攻め立てたのですが、同省側はひたすら4条件をそらんじるばかりで挙証責任を果たしませんでした。そこである委員が詰め寄りました。

「文科省は需要の有無についてちゃんと判定を進めているのか」

文科省は「わが省だけでは決められない。政府全体で決めてほしい」と需要推計を内閣府に委ねてしまいました。事実上の「白旗」宣言でした。山本の言う「勝負あり」とはこれを指します。

国家戦略特区で提示された、新しいニーズの創薬(トランスレーショナル・スタディ、トランスレーショナル・ベテリナリーメディシン)など、動物を用いて行うライフサイエンス研究分野では、創薬イノベーションなどは厚労省、動物実験は環境省、また水際対応など危機管理対応の必要な分野では、人獣共通感染症は厚労省、食品の安全(輸入食品を含む)は厚労省、家畜感染症が農水省の管轄です。

国際的にみても、新しい獣医師へのニーズの多くは、厚労省などに関連する職域の獣医師です。「動物で完結していた獣医学が、ヒトを意識した獣医学」へと拡大していく必要があります。また、以下の図からわかるように、現状の獣医職域の偏在の矛盾が、そのまま、新しい獣医学のニーズへの対応不足として現れている関係になっています。


前川前財務次官は、財務次官のように省益に執着して、粘ることもなく、完璧に戦いに負けてしまったのですが、その負けを認めたくなかったようです。本来なら、現役のときに、財務省を見習って獣医師需要は盤石であるとの根拠をでっちあげ、それを説明資料にして、マスコミや政治家を説得すべきだったと思います。

本来ならば、現役のときに執着して、財務省のようにどこまでも突っ走ればよかったのでしょうが、それもせずに、辞任したあとにするというのですから、負け犬の遠吠えと言われてもしかたありません。

では、この直後に作成された文科省の内部文書とは一体何だったのでしょうか。誰の目から見ても文科省はあまりに無残に敗北しました。漏洩(ろうえい)した内部文書は、省内向けの敗北のエクスキューズ(言い訳)のために作られたのでしょう。「総理のご意向」ということにすれば、省内では何とか言い訳はたちます。

では「総理のご意向」とは何でしょうかか。WGの議論では一切登場しません。強いて言うならば「岩盤規制をドリルで崩せ」という国家戦略特区の大方針を指すのではないでしょうか。

28年9月16日のWG会合で獣医学部新設の道筋は開けたかに見えたが、11月9日の国家戦略特別区域諮問会議では「広域的に獣医学部のない地域に限り新設を認める」という新たな条件が加わりました。

これには理由がありました。八田は10月末に山本にこう耳打ちしました。

「獣医師会がまた厳しいことを言ってくる可能性がある。ニーズの高い地域に絞ることで反対勢力と合意しやすくしよう」

八田は「獣医学部の定員規制そのものがナンセンスだ」と考えていましたが、座長の職務を通じて獣医師会の政治力のすさまじさを思い知りました。山本も「早く岩盤規制を突破するには仕方ないな」と渋々応じたのです。

それでも獣医師会は猛反発しました。獣医師会会長で自民党福岡県連会長の蔵内勇夫は11月22日の獣医師会のメールマガジンで「必ずや将来に禍根を残すであろう無責任な決定に対し、総力を挙げて反対して行きましょう」と呼びかけました。

蔵内らは12月8日、山本に直談判し、「新設は1カ所1校」とするよう求めました。やむなく山本も受け入れました。これにより新設は加計学園1校に絞られました。

前文科事務次官の前川喜平は「『広域的』という条件により京都産業大(京都市)が排除され、加計学園に絞られた」「行政が歪(ゆが)められた」と批判しています。

京産大副学長の黒坂光氏
しかし、京産大副学長の黒坂光は今月14日の記者会見で「広域ということで対象外となったとは思っていない」と明言した。京産大とともに獣医学部誘致を目指した京都府知事の山田啓二も同日、こう語りました。

「愛媛県は10年間訴え続けたのに、こちらは1年。努力が足りなかった」

果たして安倍政権は行政を歪めたのでしょうか。むしろ歪めたのは獣医師会であり、文科省ではないでしょうか。獣医学部の問題の本質に踏み込まず、「安倍はお友達の加計を優遇したに違いない」という印象操作を繰り広げたメディアの罪もまた重いです。

そうして、メディアは、財務省の公表した資料を吟味もせず、そのまま垂れ流すようなことが習慣になっています。そのような矜持のないメディアは、加計問題もまともに報道できないのは当たり前です。

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2017年7月21日金曜日

雇用確保の実績が上げられず…連合、民進離れと政権接近のウラ―【私の論評】連合という支持基盤を失う民進党はまもなく消滅(゚д゚)!

雇用確保の実績が上げられず…連合、民進離れと政権接近のウラ

高橋洋一 日本の解き方

会談前、連合の神津里季生会長(左奥)と握手する安倍晋三首相=先月24日午後、首相官邸
 連合の神津里季生(こうづ・りきお)会長が安倍晋三首相と会談し、専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」について、働き過ぎを防ぐ対策を手厚くする修正を求めた。安倍首相は条件を受け入れたことで、高プロに強く反対してきた連合が容認に転じる方向だという。このタイミングで政権と連合が接近した背景を考えてみたい。

 高プロの対象となる人は、特定高度専門業務(金融商品の開発業務、ディーリング業務、アナリスト業務、コンサルタントの業務、研究開発業務などを厚労省省令で規定)に従事し、使用者との合意で職務が明確に定められている。


 賃金額は平均賃金額の3倍を相当程度上回る水準以上で、具体的には年収1075万円以上を想定している。これらの人には、労働時間に関する規定が適用されず、残業という概念がなくなる。

 国税庁の2015年度民間給与実態統計調査によれば、この水準に入るのは全体の4%程度である。しかも、この数字は、会社役員をも含む数字であるので、労働者に対する割合はもっと低くなるだろう。年収基準は今後引き上げられるだろうが、平均賃金額の3倍を上回るという法律で規定されている基準がある。名目的な金額は引き上げられても、実質的に一部の高額賃金サラリーマンであるのは変わらない。全体に占める割合も今とさほど変わらず、数%程度であろう。

 それにも関わらず、一部マスコミではあたかもすべての労働者に適用されるかのような報道ばかりだった。「残業代ゼロ」とのマスコミのネーミングで、正しく問題を認識できない人が多いのだ。

 ちなみに「残業代ゼロ」の代わりに、「年収1000万円以上の人については、時間外労働の所得税課税が100%になる」といえば、反対する人もいなくなるだろう。

 実を言えば、これまでの日本でも、(1)労働基準法上の管理監督者(2)企画業務型裁量労働制(3)専門業務型裁量労働制がある。

 (1)は年収700万~800万円とされ、労働基準法による労働時間の規定が適用されない。(2)と(3)は、対象者の年収制限はないが、実労働時間にかかわらずあらかじめ決めた労働時間を働いたものとみなす。

 もちろん、欧米でも労働規制の適用除外がある。欧米における適用除外対象者の労働者に対する割合は、米国で2割、フランスで1割、ドイツで2%程度といわれている。

 こうしてみると、高プロの導入は世界から見れば当たり前、むしろ適用対象が少ないくらいだ。

 さすがに連合も、理不尽に高プロに反対し続けるのは無理と判断したのだろう。安倍政権が、就業者数の増加、失業率の低下、有効求人倍率の上昇など、過去の政権の中でもトップクラスのパフォーマンスを上げているのも大きい。連合から見れば、民進党より雇用の確保の実績では安倍政権のほうが頼りになるのだ。一方、民進党は雇用確保の実績が上げられず、情けないものだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】連合という支持基盤を失う民進党はまもなく消滅(゚д゚)!

ブログ冒頭高橋洋一氏の記事では、「最後に安倍政権が、就業者数の増加、失業率の低下、有効求人倍率の上昇など、過去の政権の中でもトップクラスのパフォーマンスを上げているのも大きい。連合から見れば、民進党より雇用の確保の実績では安倍政権のほうが頼りになるのだ。一方、民進党は雇用確保の実績が上げられず、情けないものだ」としめくくっています。

確かにそうです。たとえば、世界的にみれば、安倍政権の実行してきた金融緩和策は、雇用を改善するものとして、労働組合や左派が賛成する政策です。

縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったときに、両者の関係は右下がりの曲線となるという経験則が昔から知られています。そうして、この曲線をフィリップス曲線と呼びます。

フィリップスが初めて発表した時は縦軸に賃金上昇率を取っていましたが、物価上昇率と密接な関係があるため、縦軸に物価上昇率を用いることが多いです。

これは、短期的にインフレ率が高い状況では失業率が低下し、逆に失業率が高いときはインフレ率が低下することを意味しています。(インフレーションと失業のトレードオフ関係)。つまりフィリップス曲線とは、短期において「失業率を低下させようとすればインフレーションが発生」し、「インフレーションを抑制しようとすれば失業率が高くなる」ということを表した曲線です。

以下に日本のフィリップス曲線を掲載します。無論日本でもこの関係は成り立っています。


期待インフレ率が上昇すると、名目賃金には硬直性があるため、実質賃金(=名目賃金/予想物価水準)が低下します。完全雇用が達成されていない短期においては、この労働力価格の低下を受けて雇用量が増加し、失業率が減少します。その後に実質賃金もあがるようになります。

民進党などはこのからくりを知らないので、日銀が金融緩和をして実質賃金が下がったことをもって、「緩和しても実質賃金が下がっている」などと頓珍漢な批判をしていました。事実は「金融緩和すると雇用が増えて一時実質賃金が下がるの」のは正常なことです。金融緩和の効果があったということです。

さらに単純に言えば、日本のようなある程度人口の多い国で、金融緩和策でインフレ率を数%上昇させることができれば、その他は一切しなくても、たちどころに数百万の雇用が創設されます。

無論、雇用のミスマッチなどはありえますが、とにかく雇用が生まれるのは間違いありません。フィリップス曲線は、無論日本でも成り立っています。これは、否定しようのない現実です。

期待インフレ率と失業率の間には右下がりの関係が描けるのです。そして一般に、期待インフレ率が変化すると実現するインフレ率もそれに応じて変化するため、実現したインフレ率と失業率の間においても右下がりの関係が表れることとなります。

その他にも、不完全情報モデル等様々に導かれる総供給曲線を、オークン法則と組み合わせることなどにより、フィリップス曲線を得ることが出来ます。

このように、金融政策と雇用には密接な関係があります。日本ではなぜかこのことがほとんど認識されておらず、そのことを認識しているのは、政治家では安倍総理とその側近などを含むほんの少数派です。


しかし、欧米ではこのことは良く理解されていて、雇用が悪化すると多くの人々は、まずは中央銀行の金融政策を問題視します。日本では、雇用が悪化すると、厚生労働省の問題とされますが、それは全くの見当違いです。

雇用枠そのものは、はあくまで、日銀が確保すべきものであって、その確保された雇用枠内で、雇用のミスマッチなどを解消するのが、本来の厚生労働省の役割です。厚生労働省は雇用そのものをを生み出すことはできません。

このことを全く理解していないのが、多くの政治家です。自民党の政治家らもほとんど理解していないのですが、安倍総理を含む少数は理解しており、だからこそ、金融緩和をおしすすめ、雇用が劇的に改善して今日に至っています。

金融緩和などの施策は、海外では労働者の雇用を促進するということで、労働組合や左派が推進する政策です。

民進党は安倍政権にお株を奪われた形です。民進党はこのことを理解しているのは、馬淵議員と、金子洋一元参議院議員のみです。

それにしても、雇用が悪化したときの金融緩和は、過去において何度も実施されてきて、成功してきた施策です。このように過去に確かめられてきた確実な施策を実行するという点では、何かを改革しようというときに、ウルトラCをするというのではなく、確実で堅実な手を打つということでは、安倍総理はまさに保守中の保守ということができると思います。ただし、2014年春からの消費税増税は大失敗でした。しかし、雇用を劇的な改善したということでは、大成功です。

こうした安倍政権に対して、民進党は金融緩和と雇用との間には密接な関係があるなどということは、全く知らず、安倍政権や金融緩和策に対して、不毛な批判や頓珍漢、奇妙奇天烈な論議を繰り返すばかりでした。

さて、上の記事では、連合から見れば、民進党より雇用の確保の実績では安倍政権のほうが頼りになるとしていますが、まさにそのとおりです。このままでは、連合は民進党から離れるということも十分に考えられます。

今年3月12日、民進党の定期党大会が行われ、代表の蓮舫氏は「2030年代の原発ゼロ」という目標の前倒しについて基本法案を作成する方針を表明しました。また、次期衆議院議員選挙に関して「政治人生すべて懸け、民進党で政権交代を実現したい」と語ったことが広く報じられました。

3月12日、民進党の定期党大会にて
民進党のエネルギー政策については、安倍晋三政権との差別化を図る意味でも脱原発の推進が基本路線ですが、「30年代」あるいは「30年」と定める原発ゼロ方針には、最大の支持母体である日本労働組合総連合会(連合)の反発もあり、そのゆくえが注目されていました。

「30年代」から「30年」に目標を前倒ししたい蓮舫氏に対して、傘下に全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)を抱える連合が「政権担当力に逆行する」と猛反発する構図です。2月には、連合に配慮するかたちで蓮舫氏が党大会での原発ゼロ方針の具体的な表明は断念するという報道もあったのですが、結果的にはこれが打ち出されました。

これでは、連合は蓮舫氏にまた騙されたといって良いです。蓮舫代表は、「30年に原発廃止、を撤回する」ということで一度は話をまとめた連合の顔に泥を塗ったのです。

蓮舫代表は、約束を反故にして党大会で言及しただけでなく、「法案までつくる」と明言しました。これは連合に対する完全な裏切り行為です。支持母体をないがしろにして独断で物事を進める先には、連合の民進党離れもあり得るでしょう。

すでに、民進党内でも動きが出ていました。党大会後、最大会派の旧維新グループが、蓮舫氏と原発政策で同調する江田憲司氏を中心とするグループと松野頼久氏を中心とするグループで分裂したのです。

そもそも、連合はかねて共産党を含む野党共闘に対して反発しており、最近は自民党寄りの姿勢も見せ始めています。一方、民進党は各県連や支部において連合や労組の施設を間借りしているケースがあり、仮に連合が民進党を見限れば追い出される可能性もあるでしょう。


連合は、旧民社党を支持する労働団体である全日本労働総同盟(同盟)と、旧社会党を支持する労働団体である日本労働組合総評議会(総評)の2大団体が合流するかたちで1989年に誕生しました。一方、連合に加盟していない全国労働組合総連合(全労連)は共産党系の労働組合です。

連合と全労連は対立してきた歴史がある上、旧民社党は反共産主義をうたっていました。そのため、一昨年の民共共闘の時点から連合は強く反発しており、大きなアレルギー反応を示す人が多かったのです。

蓮舫氏と連合といえば、昨年10月の新潟県知事選挙をめぐって一悶着ありました。連合新潟が与党系候補を支援し、民進党は「自主投票」とする中、蓮舫氏が突如野党系候補の応援演説に駆けつけ、連合の反発を招いていたのです。

いずれにせよ、連合と民進党の関係悪化がさらに進むことは濃厚です。今後、民進党は連合の組織票を期待するのは難しいでしょう。依然として民進党支持を打ち出すのは、全日本自治団体労働組合(自治労)や日本教職員組合(日教組)など従来の3分の1以下になる可能性もあります。

連合会長の神津里季生氏は、党大会で民進党との対立報道について「真摯に議論を重ね、それぞれにそれぞれの方々が真剣に意見を交してきたものであると理解しております」と説明、「責任ある対応を引き継がれることが、国民の期待とつながるものであると考える」「支持率が急上昇するような秘策はないと思います」と政策に釘を刺す一方、「私たちにとっては民進党しかありませんから」とも語っていました。

しかし、連合が民進党を応援し続けたにしても、今後何のメリットも期待できません。最近安倍内閣の支持率が低下しているものの、民進党の支持率も落ちており、さらにはコツ会では不毛な森友・加計問題の追求をするばかりで、まともな政策論争など期待できません。

そもそも、雇用に関する視点が狂っており、この状況も改善される見込みは全くありません。であれば、連合のような労働組合からすれば、支持をしたとしても、何のメリットもないわけですから、これ以上民進党との関係を続けていてもまったく意味がありません。

連合の神津里季生会長は、民進党にまかせていれば、今回の「高プロ」制度も、ただ反対するばかりで、良いことは一つもないと判断したのでしょう。だからこそ、自ら安倍総理と会談して、条件つきで「高プロ」を認める意思を直接伝えたのでしょう。

これから、このようなことが増え、徐々に連合は民進党から離れていくのでしょう。そうして、最大の支援基盤を失う民進党は破滅することになります。

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2017年7月20日木曜日

完全に終わる日銀の旧体制 経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるか―【私の論評】反アベノミクス的な経済政策が実施されれば『失われた20年』の再来に(゚д゚)!

完全に終わる日銀の旧体制 経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるか

佐藤健裕氏(左)と木内登英氏(右)
 19、20日の日銀金融政策決定会合で、木内登英、佐藤健裕両審議委員の最後の会合となる。

 特に木内氏は、現在の黒田東彦(はるひこ)総裁体制で反対票を投じてきたことで知られている。

 速水優総裁時代に審議委員を務めた中原伸之氏も、やはり反対意見を出していたが、それは量的緩和など、当時の日銀が採用していなかった政策を主張し、時代を先取りしていたもので、意義あるものだった。

 木内氏は、現在の日銀が実施している金融政策では副作用が大きいとして、年間80兆円程度のマネタリーベース増加額を45兆円程度へ減額すべきだと主張してきた。

 月刊資本市場2016年1月号の「『量的・質的金融緩和』再考」によれば、その前提として、「需給ギャップが2013年末頃にほぼ解消され、その後も概ね中立的な状態が維持されていること」をあげ、「金融機関の収益悪化が金融システムの不安定性に繋がりうるリスク」「金融政策の正常化の過程での金利上昇リスク」「財政ファイナンスとの認識が高まる可能性」「金利による財政規律メカニズムが損なわれるリスク」「国債購入の持続性と金利の安定性のリスク」を副作用としている。

 まず需給ギャップ(実際の国内総生産=GDP=から完全雇用状態の潜在GDPを引いたもの)の状況認識が間違っている。需給ギャップがほぼ解消されたように見えたのは、14年4月からの消費増税で需要が減少したからで、木内氏は需給ギャップを過大評価した。実際、インフレ率は14年5月に見かけ上の消費増税効果を除き1・6%となったのをピークとして、その後急速に低下した。

 なお、需給ギャップは、自然利子率(完全雇用のもとで貯蓄と投資をバランスさせる実質金利水準)や構造失業率(これ以上下げられない完全雇用水準)と密接な関係がある。需給ギャップを過大評価すると、自然利子率は過小評価、構造失業率は過大評価となる。いずれの場合でも、まだ金融緩和すべき時に引き締めるべきだと間違ってしまう。その結果、誤った金融引き締めを提言し続けたわけだ。

 佐藤氏も木内氏と似ている。日本経済の潜在成長率から考えても2%のインフレ目標は高すぎるとした。これも潜在GDPを間違って捉えたもので、木内氏の需給ギャップに関する認識の誤りと同じである。この誤った認識から、インフレ目標2%は無理だと主張していた。

 日銀は安倍晋三政権とインフレ目標2%を約束した。佐藤氏を任命した民主党政権との関係からいえば問題なしであっても、安倍政権になってからも本当に無理だと思うのなら、その時点で審議委員を辞めてもよかったのではないか。

 木内氏と佐藤氏が退任すれば、民主党政権時代に任命された人はいなくなる。その時代に任命された人はこれまで、需給ギャップの過大評価、自然利子率の過小評価、構造失業率の過大評価などで現実と違っていた。しかし、これからの日銀はこれらに染まっていない人たちになる。時代を先取りする提案はあっても、時代錯誤な提案はないはずである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】反アベノミクス的な経済政策が実施されれば『失われた20年』の再来に(゚д゚)!

確かに、木内登英、佐藤健裕両審議委員が日銀審議委員から姿を消せば、上の記事で、経済の状況認識読み違えた時代錯誤な提案なくなるかもしれません。

この両者に関しては、上の記事で高橋洋一氏が指摘するように、いつも時代錯誤というか、頓珍漢な主張を繰り返してきました。

その最たるものは、2014年10月31日に日銀が発表したハロウィーン緩和と呼ばれる、追加金融緩和です。以下にこの時の産経新聞の号外の紙面を掲載します。


これは、当然のことです。2014年4月から、あの悪しき、今では完璧に大失敗だったと誰もが認める8%増税が行われました。そうして、増税推進派が主張していたように、日本経済への影響は軽微という、予測とは裏腹に、導入当初から日本経済は低迷しました。このような状況に対応するため、日銀が追加金融緩和をするのは当然といえば当然でした。

しかし、日銀の審議会がこれを決定するにおいては、4名の反対者がいました。ちなみに、審議会の正式名称は、政策委員会であり、これは総裁、副総裁(2人)および審議委員(6人)で構成されます。これら9人のメンバー(政策委員会委員)は、いずれも国会の衆議院および参議院の同意を得て、内閣が任命します。

4名の反対派は以下の4人です。これらは、全員が民進党政権時代に審議員に任命された人々です。


この委員会において、4人が反対したのですから、委員会のメンバーは9人ですから、あと一人が反対していたら、真っ二つに割れたわけで、この追加金融緩和は危ういところで決まったということです。

もしこのハロウィーン緩和が見送られたとしたら、どうなっていたかといえば、これは当初から予想されたことですが、当然のことながら、現在のかつてないほどの雇用状況の良さは実現されおらず、かなり雇用状況が悪化しており、アベノミクスの金融緩和は完璧に頓挫していてとんでもない状況になっていたことでしょう。

増税による経済への悪影響もさらに大きなものになっており、おそらく日本は完璧に再度デフレに突入していたことでしょう。

市場はこの状況に失望し、2015年の安保法制審議のときには、安倍政権はかなり支持を落としていたことでしょう。

これに関しては、一昨日のブログにも、この追加金融緩和によって、安倍政権は2015年にあれほどのネガティブキャンペーンにあいながらも、支持率をさほど落とさなくてもすんだ可能性があるということを示唆しました。

以下に昨日の記事のリンクを掲載します。
加計問題を追及し続けるマスコミの「本当の狙い」を邪推してみた―【私の論評】安倍政権支持率低下の原因はネガティブキャンペーンだけではない(゚д゚)!
2014年10月31日の「ハロウィーン緩和」を発表する日銀黒田総裁
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では市場は安倍総理は本当に、景気を回復できるのか疑心暗鬼になっており、最近の安倍政権の支持率の低下はこれも大きな要因の一つになっていることを掲載しました。以下、その部分を中心に以下に一部を引用します。
実際に、消費増税が行われた14年以降においては、政府が実施してきた中で、消費増税の先送りや毎年の最低賃金引き上げ、そして昨年度末の補正予算ぐらいが「意欲的」な政策姿勢だったという厳しい評価もできます。2%のインフレ目標の早期実現を強く日銀に要請することはいつでもできたはずです。ある意味で、雇用の改善が安倍首相の経済政策スタンスの慢心をもたらした、ともいえます。
さらに、自民党内には、安倍首相と同じリフレ政策の支持者は、菅義偉官房長官はじめ、自民党内にはわずかしかいません。ただし、二階派は、プライマリーバランスは先送り、景気が先としています。しかし、石破氏はもとより他の派閥は全部増税派です。 
そうして、次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります。 
このリフレ政策を支持する人事を行えるのは、安倍首相しかいないのです。それが安倍政権の終わりがリフレ政策のほぼ終わりを意味するということです。 
もちろん日銀人事だけの問題ではありません。仮に日銀人事をリフレ政策寄りにできたとしても、政府が日銀と協調した財政政策のスタンスをとらないと意味はありません。デフレを完全に脱却するまでは、緊縮政策(14年の消費増税と同様のインパクト)は絶対に避ける必要があります。デフレ脱却には、金融政策と財政政策の協調、両輪が必要なのです。 
ここにきて、直近では財務省人事や産業経済省の人事などで、増税派が順調に出世したことなどから、市場関係者には安倍政権は経済を立て直しができないかもしれないという、ある種の失望感が生まれるようなっていたのだと思います。
この記事では、「次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります」と掲載しました。


日銀は来年4月にかけて、黒田東彦総裁ら5人の政策委員が相次いで任期切れを迎えます。現状の新議員がすべてまともだったにせよ、5人もの委員が入れ替わるのですから、確かに1人のリフレ政策支持者で、既存の4人とあわせて何とかリフレ派が多数派ですが、中には中立的立場の人も1人(中曽根氏)いるのでこれでも安心できません。やはり、少なくとも2名が金融緩和に肯定的な人である必要があります。
こう考えると、確かに来年の4月までは、「完全に終わる日銀の旧体制」ということはできるとは思いますが、4月以降に金融緩和に否定的な人々が日銀の審議委員の多数派になれば、これは崩れるわけです。ただし、安倍政権が崩れない限り、安倍政権は金融緩和を支持する人事を行うことになるので、これは何とかなるものと思います。

そうして、現在安倍政権がおこなわなけばならないのは、財務省とのガチンコ対決に勝利を収めることです。

安倍政権では、経産官僚が力を持ち、かつて「最強官庁」と呼ばれた財務省は冷遇されてきました。安倍首相や菅義偉官房長官は消費税増税に消極的ですが、財務省は麻生太郎副総理兼財務相とともに抵抗してきました。現在の安倍政権の支持率が低下している状況は、財務省にとっては主導権奪還の好機です。

そうして、石破氏を含めポスト安倍の面々は、いずれも財務省を筆頭とする官僚依存の傾向が強いです。2度の増税延期で財務省と闘ってきた安倍首相との違いは大きいです。

安倍政権としては今後、支持率下落を受けて「経済重視に回帰する」とみられます。ただ、経済政策は今後の政治スケジュールとも密接にかかわってきます。

秋の臨時国会では、経済政策の強化のために補正予算が打ち出されることになるでしょう。

現状では、有効求人倍率や失業率、企業業績は改善していますが、14年4月の消費税率8%への引き上げ後の消費低迷の悪影響が尾を引き、デフレの完全脱却や2%のインフレ目標実現にはほど遠い状況です。日銀の量的緩和継続とともに、財政面での手当ても必要になります。

安倍政権の『20年の憲法改正』という目標から逆算すると、憲法改正の是非を問う国民投票は、18年後半に衆院選とのダブルで実施される可能性が高いです。19年10月に予定されている消費税率10%へ増税の是非も争点となります。

最善の手は「消費税の増税に対して消費税の減税を行なうこと」です。次善の手は「増税によって税収が入ったら、そのお金をすべて国民に撒くこと」です。冗談だと思う人もいるかもしれないが、ロジックでいえば当然で、増税しなかったのと同じ効果を与えるからです。

もちろん増収分を国民に撒くといっても、財政支出一辺倒だと供給制約が発生してしまいます。公共事業に予算をつけても、事業を行なう技能をもった人や組織には限りがあるからです。さらに減税や追加の大幅金融緩和に踏み切るなど、ダメージを緩和するための第三、第四のサブシナリオを考えることもできます。

石橋と小泉進次郎氏
これからも増税をめぐり、安倍政権の周囲でさまざまな画策が生じるはずです。財務省としては、石破氏や小泉進次郎氏のように、さらに自分の思いどおりになる与党議員を探して懐柔することでしょう。地方議員には「もし増税が潰れたら予算づくりもやり直しになってしまう。あなたの地元の要望も通らない」と脅しをかけ、経団連には「消費税増税なくして法人税減税なし」ということでしょう。

しかし、そもそも、税率と支出が結び付いて予算が青天井になる現行の仕組みは異常です。法人税は個人の所得税と重複する「二重課税」ですから、もともと無駄な税金です。マイナンバーなどで個人の所得をきっちり捕捉して増収を図るのが王道のはずです。

いずれにせよ、こうした動きを誰より注意深く見ているのは安倍総理自身です。マスコミは財務省のプロパガンダやとんでもエコノミストの観測気球ばかり流さず、ロジックとファクトに基づく報道をすべきでしょう。

18年9月には自民党総裁の2度目の任期満了を迎えます。『反安倍勢力が総裁選で勝つ』『衆院選で与党が敗れる』『国民投票で過半数に届かない』のいずれかになれば、10%への消費税増税が実施されることになるでしょう。これまで2度増税が延期されている財務省側にとっては好都合なことです。

反アベノミクス的な経済政策が実施された場合も、日本経済は、再び深刻なデフレに転落し、『失われた20年』の再来となるでしょう。歴代政権でも最高レベルになっている雇用環境も次第に悪化していくようになります。失業率が上昇すれば、自殺率が上昇し、強盗などの犯罪も増えるという統計もあり、社会不安が高まるのは避けられないことになります。

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2017年7月19日水曜日

【防衛最前線(131)】九州豪雨でも災害支援、急患輸送では殉職も 知られざる自衛隊の活動―【私の論評】一日でもはやく憲法改正し、自衛隊を合憲化せよ(゚д゚)!

【防衛最前線(131)】九州豪雨でも災害支援、急患輸送では殉職も 知られざる自衛隊の活動

「誰かいませんか」と声を張り上げ、行方不明者を捜す自衛隊員たち=7日午前6時22分、福岡県東峰村
九州北部の豪雨災害を受け、災害派遣で出動した自衛隊が被災地で救援活動にあたっている。約4000人態勢(7月18日現在)で警察や消防とともに行方不明者を捜索したり、被災者への入浴、給水といった支援活動を行っている。

 平成27年1月に内閣府が行った定期世論調査では「自衛隊に良い印象を持っている」との回答が過去最高の92・2%を記録した。こうした国民の自衛隊に対する信頼感は、東日本大震災をはじめとする災害時の活躍が評価されているのは間違いないが、自衛隊の災害派遣については、あまり知られていないことも多い。

 災害派遣は、自衛隊にとって最優先の仕事ではない。自衛隊法では「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、わが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする」と規定している。「主たる任務」は外敵の侵略を防ぎ、日本を守ることであり、災害派遣は「従たる任務」という位置付けだ。

 災害対応の主役は地方自治体や警察、消防であり、自衛隊はサポート役というのが本来の姿だ。仮に日本が外敵から攻撃を受けた場合、自衛隊は外敵と戦い、排除することが最優先の任務となる。

九州北部豪雨から19日で2週間。流木を取り除き、行方不明者の
捜索をする自衛隊員たち=18日午後、福岡県朝倉市
 自衛隊の災害派遣を派遣人員ベース(延べ)でみると、東日本大震災のあった23年度は約1070万人と突出して高い。以降は24年度1万2410人▽25年度8万9049人▽26年度6万6267人▽27年度3万35人-と推移し、熊本地震のあった28年度は約85万人だった。

 一方、実施件数をみると、24年度520件▽25年度555件▽26年度521件▽27年度541件▽28年度516件-と推移している。実は件数ベースでみた場合、医療インフラの乏しい離島や遠隔地での「急患輸送」が7~8割を占めている。とりわけ島嶼地域を含む沖縄、長崎、鹿児島からの要請が多くを占める。

 急患輸送は自治体のドクターヘリも行っているが、「夜間や気象条件が悪い時ほど自衛隊に依頼が来る」(陸上自衛隊幹部)という命がけの任務だ。今年5月には北海道函館市で急患を迎えに飛行中だった陸自機が墜落して隊員4人が亡くなった。19年3月にも鹿児島県の徳之島で陸自ヘリが墜落して4人が殉職した。2年2月にも沖縄県の宮古島近海の事故で、医師を含む4人が亡くなっている。

今年5月には北海道函館市で急患を迎えに飛行中だった陸自機が墜落して隊員4人が亡くなった
 風水害や地震、急患輸送以外では、火災の「消火支援」で派遣されることもある。28年では新潟県糸魚川市中心部の大規模火災など57件。山岳遭難や航空機・船舶の事故に際しての「捜索救助」も28年度で25件あった。

 このほか災害派遣には含まれないが、不発弾処理も自衛隊にしかできない民生支援の一つといえる。終戦から70年以上を経た今でも、工事現場などで不発弾が発見され続けており、全国4カ所に置かれた専門部隊による処理件数は28年度で1379件、処理重量は42・1トンに及んだ。

不発弾を処理する自衛隊員
【私の論評】一日でもはやく憲法改正し、自衛隊を合憲化せよ(゚д゚)!

上の記事、簡単に言ってしまえば、自衛隊は日本国民にとってはもうなくてはならない存在になったということです。しかし、この自衛隊の存在そのものが、違法であるとする人々も多いです。命の危険と隣り合わせの、自然災害対応や、不発弾処理では、自衛隊に頼っておきながら、彼らをいつまでも違憲状態にしておくなどということがいつまでも許されることなのでしょうか。彼らは、もし他国から攻め込まれた場合には、最前線に立つ人々なのです。
DVD「国防女子」より
リベラル・左翼の人々は、良く「諸外国では」という口上で、外国の事例を出して日本が遅れているという論説を好んで用いているようなので、私もそれにならいます。

諸外国の憲法典等においては、独立国は軍隊を持つのが当たり前のことであるため、憲法典にわざわざ「わが国は軍隊を持つことができる」などという条文はありません。これには、厳密にいえばほんの少数の例外はあります。しかし、圧倒的多数がそうなっているので、ここでは例外は無視します。以下でも、ほんの少数の例外は無視します。

さらに、独立国が自衛戦争をするのは当たり前のことなので、「わが国は自衛戦争ができる」という条文もありません。それは、人間でいうとろの生存権と同じようなものであり、これは人間が生まれながらにして持っている権利であるので、生存権をわざわざ憲法の条文として書かないのと同じく、わざわざ憲法典には掲載しないのです。

普通の国なら、憲法典にわざわざ掲載していなくても、軍隊を持ち、自衛戦争することは自明の理であり、これ自体が問題になることもないのです。

さらに、集団的自衛権と、個別自衛権に関する区別も、諸外国にはありません。例外的に、ドイツ軍はNATO軍に属し、集団的自衛権のみは発動できますが、ドイツが単独で個別自衛権を発動することはできません。



例えば、もしポーランドが外国から攻撃された場合、ドイツはほかのNATO加盟国とともに、ポーランドを防衛するために戦う義務を負います。その代わり、ドイツが他国に攻撃された場合は他国の防衛援助を受けられます。しかし、ドイツ単独で戦争をすることはできません。

それは、ドイツが過去に単独で戦争を起こし、他国へ侵略したという歴史があるからです。ドイツが単独で戦争ができるということは、周辺諸国にとっては今でも大きな脅威なのです。だからこそ、集団的自衛権のみが許されているのです。

このような状況をみていると、日本で自衛隊(実質上の軍隊)が、違憲のままというのは、非常に異様です。

そもそも、敵が攻め込んできても、防衛戦争が違法などというのは全くおかしなことです。

直近では日本各地の領海に中国海警局の船が侵入する事態が続出しています。海上保安庁から警告を受ける船舶には機関砲とみられるものが搭載されていたケースもありました。

青森沖を航行する中国公船
北から南まで、報告例が引きも切らない状況です。第2管区海上保安本部(塩釜)によると17日、青森県沖の領海内を中国海警局の船2隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。2管本部は、この海域で中国公船の領海侵入を確認したのは初めてとしています。

この2隻は15日にも九州北部沖の長崎・対馬と福岡・沖ノ島周辺の領海に相次いで一時侵入していました。この領海で中国公船の侵入が確認されるのも初めてだといいます。

沖縄県の尖閣諸島周辺では、さらに状況は深刻です。領海外側にある接続水域で中国当局の船が確認されるのは17日現在で、実に12日連続。第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載していたといいます。

ここにきて、なぜ、中国はこうした威圧的な行動に出てきたのでしょうか。

これは米中関係の冷え込みがあり、さらに安倍晋三政権が支持率を落としているのも関係しているはずです。思い切った反撃はできないと踏んで侵入を繰り返しているとみられます。

ドナルド・トランプ米大統領は、4月の会談で中国の習近平国家主席に対し、北朝鮮をはじめとした諸問題について100日で結果を出すよう求めたのですが、ほごにされました。今月2日の両者の電話会談も不調に終わったとみられます。そんななか、中国は開き直る形で、米国と行動を共にする日本に攻勢を強めてきている可能性があります。

さらに、中国側は、「仮に海上保安庁の船が強硬な措置に出た場合、一部の左翼勢力は『安倍が戦争を始めた』と騒ぎ出すはずだ。そうなってはさらに政権運営に支障をきたすことにもなりかねない。だからなかなか思い切った対策がはずだ」というふうに、中国側から足元を見られてしまっているのでしょう。

日米ともに政権支持率が低下しており、中国当局がますます好き勝手に動き回ることになりそうです。このような状況を放置しておけば、尖閣諸島は中国に奪取され、南シナ海は中国の意図通りに、中国の戦略原潜の聖域になってしまいかねません。

福岡県朝倉市で捜索活動をする自衛隊員=9日午前8
やはり、日本も諸外国並みにまずは憲法解釈を変え、一日も早く自衛隊を合憲化し、自衛戦争をできる体制とすべきです。

そうして、これと同じことを安倍首相は考えています。そうして、憲法改正に前向きの姿勢を見せています。

昨日のブログにも掲載したように、安倍政権が憲法改正に取り組むと明言した5月3日以降、森友・加計問題などのマスコミのネガティブ・キャンペーンが酷くなっているようです。そうして、安倍総理が提唱す(1)憲法9条、(2)憲法29条の改正は、護憲派にとっては批判の筋道が立てづらいものになっています。その内容を以下に再掲します。
(1)憲法9条では、現行の1、2項はそのまま、3項で自衛隊を規定するだけだ。これは公明党が言うところの「加憲」であり、現行の自衛隊を憲法に明記するだけなので、反対しにくい。 
一部の野党などは「どのような理屈を並べようと、憲法の平和主義を踏みにじることに変わりない」と勇ましいが、この「加憲」は彼らの中にも主張していた人がいるくらいで(保守系からは評判が悪いものの)、リアリストである安倍首相の真骨頂だ。 
(2)憲法29条の改正の目的は、教育無償化である。これに対して「憲法改正など必要ない。個別法を改正すればいい」という反論が多いが、これでは積極的な反論になっていない。教育無償化を法改正で実現することは確かに可能だが、その場合、財務省の思う壺だ。というのも、法律での規定は必ず財政法の枠内になる。
そうすると、原則的に国債発行ができないため、無償化の財源確保のために増税か歳出カットが必要になる。必要財源は数兆円にのぼるので、日本経済を壊してしまう可能性が高い。
現在の状況は、一部のマスコミと野党が、憲法改正を阻もうとするために加計学園問題を利用しているのではないか、と邪推してしまいそうになるほどです。もしそうなら、あまりに不毛です。

私自身は、憲法に関しては、いがれ日本の歴史や国柄を反映したものを根底から作り直し、日本人による日本の憲法とすべきと考えています。

しかし、それを待っていたずらに現状の自衛隊の違憲状況をそのまま放置しておくべきでもないとも思っています。まともな憲法はいずれ作成すべきものとして、このような状況は一日でもはやく是正し、自衛隊を合憲化し、自衛隊員の身分を保証し、彼らが自衛戦争をできるようにすべきです。

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加戸守行前愛媛県知事(左)と前川喜平前文科省時間(右)  写真はブログ管理人挿入 以下同じ
   苦しい答弁

先週10日、加計学園問題について国会閉会中審査が行われ、前川喜平前文科事務次官らの参考人招致があった。読者のなかにも、注目してみていた人が多くいるだろう。

加計学園問題の本質は、先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)に書いたように、2003年3月の文科省告示である。

前川氏に対する質疑では、自民党参議院議員の青山繁晴議員のものがもっとも良かった。青山議員は、「石破4条件」における文科省の挙証責任、既存大学の獣医学部の定員水増し問題、そして文科官僚の天下り問題との関係について質問していた。

まず挙証責任については、前川氏は当初行った記者会見では「文科省にはない」と言っていたが、さすがにそれではまずいと思ったのか、どこにあるとも言わずにはぐらかしていた。

また、既存大学の獣医学部では、全国で総数930名の定員に対して1200名までの「水増し入学」を黙認している現状がある。これで「需要と供給が均衡している」と文科省が判断しているとすればおかしいのではないか、と青山氏は質問している。これに対しても、前川氏は「既存の体制のままでいい」と苦しい答弁だった。

文部官僚の天下りが大学新設規制に関係しているのではないか、という点についても、前川氏は「関係ない」と述べたが、これらが関係しているのは霞が関の「常識」であり、規制がなければ天下りもあり得ないということは、前川氏だって知っているだろう。

青山議員とのやりとりで、筆者には、前川氏は平然とウソをついているように見えた。

閉会中審査で質問する青山繁晴議員
特筆すべきは青山議員が、前川氏と一緒に参考人招致を受けた加戸守行前愛媛県知事(文科省OB)に対しても質問をして、両者の発言の対比ができるようにしたことだ。

青山議員はマスコミ出身だが、この対比手法こそ、一部のマスコミへの強烈な批判になっていた。というのは、一部のマスコミはこうした手法をまったくとらず一方的な意見だけを垂れ流しているのだ。それは、12日の産経新聞に詳しい(http://www.sankei.com/politics/news/170712/plt1707120010-n1.html)。

加戸前知事は「ゆがめられた行政が正された」などと文科省の過去の対応を批判したが、この発言について、朝日新聞と毎日新聞の紙面では取り上げていない。産経新聞と読売新聞が取り上げたのとは大きな差である。

テレビでも同様の傾向があった。前川氏の発言はどの局でも取り上げられたが、加戸氏のものはほとんどなかった。

もっとも今は、インターネットがある。青山議員の質疑は、参議院のサイト(http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?ssp=31131&type=recorded)にアップロードされているので、是非ご覧いただきたい。加戸氏は「マスコミが自分の意見を取り上げないので、ネットの動画を見て欲しい」という趣旨の発言もしているため、ますますマスコミは加戸氏の発言を使えないだろう。

さらには7月14日(金)、京都産業大が国家戦略特区を利用した獣医学部の新設を断念した経緯について、記者会見を行った(http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170715-OYT1T50005.html)。その理由は、「教員確保が困難だったため」としたうえで、今回の戦略特区の選定作業が不透明だったか否かについては、「不透明ではなかった」と明言している。

加計学園問題についてマスコミや野党が流布してきたストーリーは「学園の理事長が安倍首相の友人であるから、特別に優遇された」というものだった。しかし、加戸氏の国会証言と京産大の記者会見によって、このストーリーは崩れたのだ。

   謝るべきは民進党では?

これまでの本コラムでも書いてきたように、文科省と内閣府の両者が合意済みの、過去の戦略特区関係の議事録を見れば、「文科省内のメモ」にすぎない件の文書は信憑性がなく、手続きはすべて公正に行われたことが読み取れる。それが当事者間の証言によって改めて裏付けられたと言っていいだろう。

繰り返すが、文科省行政の「歪み」を示す証拠として筆者が取り上げてきた文科省告示は、大学新設申請をさせない「門前払い」のためのルールである。

結局、今年1月にやっと文科省告示の「特例」を出して、ドリルの穴をあけたが、それは、学部新設の認可ではなく、あくまで申請していいという「特例」なのだ。実際に、学部新設が認められるかどうかは、文科省において適切に審査される。「特例」では申請するだけなので、常識的にいっても「順番」が重要だ。

この点、7月14日に記者会見した山田啓二・京都府知事は「愛媛県は10年間訴え続けたのに対して、こちらは1年。努力が足りなかった」と述べた(http://www.sankei.com/west/news/170715/wst1707150016-n1.html)。これが妥当な意見だろう。

この「順番」を役所の言葉で言い換えると「申請の熟度」という。申請が前であるほど、準備がよくできているという意味の表現だ。今回のケースはまさに「申請の熟度」の問題そのものだった。この順番をひっくり返したら、それこそ権力の濫用と言われかねない。

いずれにしても、こうした当事者の意見が出てくると、これまで加計学園問題を「行政が歪められたもの」として追及していた者はつらいだろう。それは、前川氏に乗っかった一部マスコミと野党である。

民進党の蓮舫代表は「京都産業大は被害者だったのではないか」と語った(http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170715-OYT1T50099.html)。民進党の的外れな追及があったので、京産大はやらなくてもよかった記者会見をやらざるを得なくなったわけで、むしろ謝るべきは民進党ではないか。

ついでに国民にも、無駄な時間をかけてこの問題を国会で追及したことを謝るべきだ。獣医学部新設の抵抗勢力である獣医師会から政治献金をもらった議員が、この問題を追及するというのは、国民に申し開きができないだろう。

この種の疑惑では、まずカネの流れをチェックするのがセオリーであるが、追及する側の民進党議員に疑惑があるようでは話にならない(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51813)。

    あまりに不毛

筆者がこの問題に興味をもったのは、本件については、マスコミの報道のしかたがあまりに通常のものとかけ離れていたからだ。筆者がテレビに出演した際にも、「キャスターに意見を遮られる」といった珍しい体験をした。

そして本件に過剰反応しているのは、たいてい安倍政権が嫌いな人々だ。多くの場合、憲法改正を嫌っている人々でもある。

安倍政権が憲法改正に取り組むと明言した5月3日以降、こうした反発が強くなっているような気がする。もっとも、その俎上に上がっている(1)憲法9条、(2)憲法29条の改正は、彼らにとっても批判の筋道が立てづらいものになっている。

具体的にはこういうことだ。

(1)憲法9条では、現行の1、2項はそのまま、3項で自衛隊を規定するだけだ。これは公明党が言うところの「加憲」であり、現行の自衛隊を憲法に明記するだけなので、反対しにくい。

一部の野党などは「どのような理屈を並べようと、憲法の平和主義を踏みにじることに変わりない」と勇ましいが、この「加憲」は彼らの中にも主張していた人がいるくらいで(保守系からは評判が悪いものの)、リアリストである安倍首相の真骨頂だ。

(2)憲法29条の改正の目的は、教育無償化である。これに対して「憲法改正など必要ない。個別法を改正すればいい」という反論が多いが、これでは積極的な反論になっていない。教育無償化を法改正で実現することは確かに可能だが、その場合、財務省の思う壺だ。というのも、法律での規定は必ず財政法の枠内になる。

そうすると、原則的に国債発行ができないため、無償化の財源確保のために増税か歳出カットが必要になる。必要財源は数兆円にのぼるので、日本経済を壊してしまう可能性が高い。

現在の状況は、一部のマスコミと野党が、憲法改正を阻もうとするために加計学園問題を利用しているのではないか、と邪推してしまいそうになるほどだ。もしそうなら、あまりに不毛である。

【私の論評】安倍政権支持率低下の原因は、ネガティブキャンペーンだけではない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏がマスコミの報道の仕方について、問題点を指摘しています。確かに、これにはかなり問題があります。しかし、最近安倍政権の支持率が落ちたのは、マスコミのネガティブキャンペーンによるものだけであると断定する前に、過去をふりかえってみる必要があります。

2015年の集団的自衛権を含む安保法案の改正のときにも、マスコミは日々大ネガティブキャンペーンを展開しましたし、シールズのような団体が連日「アベ辞めろ」「戦争法案反対」と繰り返しました。それをテレビは毎日報道し続けました。それでも安倍政権の支持率はほとんど落ちませんでした。にもかかわらず、今回は支持率がかなり落ちています。

2015年の戦争法案反対デモ。法案成立して2年近くたちますが戦争は起こっていませんが、何か?
これには、野党による追求や、マスコミによるネガティブキャンペーン以外にも、何か理由があるものと考えられます。それは何かといえば、やはり経済だと考えられます。安倍政権が登場したばかりの頃は、機動的財政政策や異次元の金融緩和への期待度は嫌がおうでも高まりました。

これに対して、いわゆる岩石理論により、金融緩和をすればハイパーインフレになるとか、金融緩和をしても景気は良くはならないという識者もいましたが、結局はそのようなことも起こらず経済指標は軒並み改善していきました。

しかし、平成14年に消費税増税が行われてからは、状況は一変しました。個人消費が落ち込み、GDPは伸びず、デフレにまた戻りかねないような状況が続きました。その中にあつてハロウィーン緩和もあって、雇用だけは改善していきました。

2014年10月31日の「ハロウィーン緩和」を発表する日銀黒田総裁
実際に、消費増税が行われた14年以降においては、政府が実施してきた中で、消費増税の先送りや毎年の最低賃金引き上げ、そして昨年度末の補正予算ぐらいが「意欲的」な政策姿勢だったという厳しい評価もできます。2%のインフレ目標の早期実現を強く日銀に要請することはいつでもできたはずです。ある意味で、雇用の改善が安倍首相の経済政策スタンスの慢心をもたらした、ともいえます。

さらに、自民党内には、安倍首相と同じリフレ政策の支持者は、菅義偉官房長官はじめ、自民党内にはわずかしかいません。ただし、二階派は、プライマリーバランスは先送り、景気が先としています。しかし、石破氏はもとより他の派閥は全部増税派です。

そうして、次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります。

このリフレ政策を支持する人事を行えるのは、安倍首相しかいないのです。それが安倍政権の終わりがリフレ政策のほぼ終わりを意味するということです。

もちろん日銀人事だけの問題ではありません。仮に日銀人事をリフレ政策寄りにできたとしても、政府が日銀と協調した財政政策のスタンスをとらないと意味はありません。デフレを完全に脱却するまでは、緊縮政策(14年の消費増税と同様のインパクト)は絶対に避ける必要があります。デフレ脱却には、金融政策と財政政策の協調、両輪が必要なのです。

ここにきて、直近では財務省人事や産業経済省の人事などで、増税派が順調に出世したことなどから、市場関係者には安倍政権は経済を立て直しができないかもしれないという、ある種の失望感が生まれるようなっていたのだと思います。

ただし、、自民党の支持率も低下していますが、野党側も支持率を上昇させるどころか低下させています。

特に市場関係者による失望は、自民党の支持率の低下をまねいているようですが、かといって他党を支持するには至っていないようです。なぜなら、自民党政権は経済を立て直しができないかもしれないという失望感があっても、ではそれかわって経済を立て直しすることができる野党がいるかといえば、そうではないからです。

実際、自民党以外の政党は、ほとんどが増税派です。政権交代したとしても、増税を阻止することとはできません。それどころか、さらに加速することになるだけです。

こうした市場関係者の失望感と、最近のマスコミなどのネガティブキャンペーンなどにより、支持率が下がったのだと考えられます。そうでないと、最近の著しい支持率の低下は説明がつきません。マスコミによるネガティブキャンペーンにだけが原因であるとは、到底思えません。そうして、この隙に乗じて、増税派(政治家、官僚、マスコミ等)がまた暗躍をはじめています。この増税派の暗躍も各方面で影響与え、支持率を落としている可能性もあります。


さて、安倍首相はこのまま党内闘争に巻き込まれ、守勢に立たされるのでしょうか。それとも攻勢に出るのでしょうか。そのきっかけは大胆な内閣改造や、より強化された経済政策を行うことにあるでしょう。後者は18年夏頃までのインフレ目標の達成や、教育・社会保障の充実などが挙げられますが、端的には減税が考えられます。何より国民にとって目に見える成果をもたらす政策パッケージが必要です。それこそ消費減税がもっともわかりやすいです。

消費税の減税は、国民が目に見えてわかる経済対策です。これを実行することにより、安倍政権は、また2013年の振り出しに戻ることができます。そうして、雇用は当事よりも格段に良い状況からスタートできます。

2012年に政権交代の選挙が始まる前から、市場は敏感に反応し株価がすこしずつ上がり始めていました。

そこから、順調に経済を発展させることができれば、2020年あたりには、少なくともこれから経済がかなり回復することになると、有権者が信じられる状況になるかそれ以上になります。これがうまくいけば、安倍政権は長期政権となり、憲法改正も成就することでしょう。

ただし、これは序盤にすぎず、新たな憲法をつく出すことこそ、安倍総理の理想だと思います。ただし、これは安倍総理では成し遂げることはできないでしょう。次の政権への宿題になることでしょう。

また、これを有権者に訴えるためには、人事も重要です。コントロールには様々な方法がありますが、人事こそ最大のものであり、真のコントロールです。政策・法律が良くても、人事が駄目なそれを実行に移すことはできないのです。市場は、一部の財務省におもねる人たちや、マスコミに媚びへつらう人たちは除いて、そのほとんどが厳しい現実の中で鍛え上げられた実務家たちの集まりであり、それらの人々は人事を重視します。

さらなるアベノミクスの拡大には実現の余地はあります。ただ、それを行うだけの政治力が安倍首相にまだ残っているかどうか、そこが最大の注目点です。それを占うには、まず8月の組閣において明らかになることでしょう。それに続き、次の各省庁の人事で、安倍首相の本気度がうかがわれることになると思います。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、憲法改正について「リアリストである安倍首相の真骨頂だ」と高い評価をしています。経済面でも、安倍総理にリアリストの本領を発揮していただきたいものです。

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2017年7月17日月曜日

二重国籍解消の自民・小野田紀美氏が蓮舫氏を猛批判「ルーツや差別の話なんか誰もしていない」「合法か違法かの話です」―【私の論評】日本でも、国会議員や閣僚は、多重国籍を禁止すべき(゚д゚)!

二重国籍解消の自民・小野田紀美氏が蓮舫氏を猛批判 「ルーツや差別の話なんか誰もしていない」「合法か違法かの話です」
自民党の小野田紀美参院議員
 民進党の蓮舫代表の「二重国籍」問題で、蓮舫氏が公的書類公開を表明しながら戸籍謄本公開に難色を示していることを受け、自民党の小野田紀美参院議員が自身のツイッターで「国籍法に違反していないことを証明できるのは、国籍の選択日が記載されている戸籍謄本のみです。ルーツや差別の話なんか誰もしていない」などと立て続けに批判した。

 小野田氏自身も昨年10月、米国との「二重国籍」状態だったことが発覚し、その後手続きをとって今年5月に正式に解消した。自身のフェイスブック上で戸籍謄本や米国籍の喪失証明書を公開している。

 小野田氏は、蓮舫氏が13日の記者会見で公的書類を公開すると表明したことを受け、翌14日に国籍に関するツイートを相次いで投稿した。蓮舫氏を名指しせずに「国籍法14条の義務である日本国籍の選択を行ったかどうかは戸籍謄本にしか記載されません」と紹介し、戸籍謄本を公開する必要性を説いた。

 その上で小野田氏は、蓮舫氏が個人のプライバシーを理由に「戸籍を差別主義者、排外主義者に言われて公開するようなことが絶対にあってはいけない」と発言したことを念頭に「公職選挙法および国籍法に違反しているかどうか、犯罪を犯しているかどうかの話をしています。日本人かそうでないかの話ではない。合法か違法かの話です」と断じた。

 小野田氏のツイートには「なるほど! だから蓮舫さんはかたくなに戸籍謄本の公開を避けているのですね」「小野田さんが言うと説得力があるね」「テレビなどでこの件について詳しい説明をしていただけないでしょうか。都合の悪いことは報道しない自由を振りかざすマスメディア相手では困難はあるでしょうが」-など多数のコメントが寄せられている。

【私の論評】日本でも、国会議員や閣僚は最低限、多重国籍を禁止すべき(゚д゚)!

以下に小野田議員のツイートを掲載します。
民進党の蓮舫代表のいわゆる「二重国籍」問題について、金田勝年法相は昨年の10月18日の記者会見で、一般論と断りながら、「法律の定める期限後に日本国籍の選択宣言を行った場合、それまでの間、国籍法上の国籍選択義務14条に違反していた」と述べたいました。

国籍法は20歳未満の人が二重国籍になった場合、22歳までの国籍選択を定めている。蓮舫氏の国籍選択宣言は今月で、国籍法違反の状態が25年以上続いていた可能性が高まっている。

蓮舫氏は今月、都内の区役所に提出した台湾籍の離脱証明書が受理されなかったとし、「(日本国籍の)選択宣言をした」と述べていました。関係者によると、宣言は昨年10月7日付といいます。

国籍法では、二重国籍の人が日本国籍を選ぶ場合、(1)外国籍離脱を証明する書面を添えて外国国籍喪失届を出す(2)日本国籍選択の宣言をし、かつ外国籍離脱の努力をする-の2つの方法があります。

ただ、政府は台湾を正式な政府として認めていないため、台湾当局発行の国籍離脱証明書は受理していません。このため、台湾出身の二重国籍者の場合は(2)の方法を原則22歳までに求められています。

一方、蓮舫氏は昨年10月16日、訪問先の熊本県で記者団に対し「法務省から(国籍法)違反に当たらないとの考え方を文書で頂いた」と述べていました。これについて金田法相は再び一般論とした上で、「期限後に(法の定めることを)履行しても、それまでの間は違反していたことになる」と強調しました。

蓮舫氏
ただし、違法だからといって、特に罰則規定が定められているわけではないので、特に一般人や、一般人でなくても、芸能人などが蓮舫氏のように、二重国籍問題があったにしても、ほとんど何も問題はないでしょうが、やはり、政治家、それも野党第一党の党首ということであれば、非常に問題です。

これに関して、左翼系はどのように思っているのでしょうか。

以下に、朝日新聞の鮫島記者のツイートを掲載します。朝日新聞社の鮫島浩と言えば、プロメテウスの罠「手抜き除染」の捏造報道で新聞協会賞を獲ったものの、新潮に自作自演を暴露された特別報道部次長です。

鮫島浩
やはり、戸籍を公開するかもしれない蓮舫氏に対し三行半をつけているということのようです。もしあくまで、戸籍を公開しないというのなら、徹底的に擁護するつもだったのでしょう。

ちなみに、現状では公職選挙法でも二重国籍を罰する規定はありません。あくまで選挙に出るためには、日本国民であることが必要であるだけであり、重国籍であったとしても、選挙権に影響を与えるわけではないのです。

蓮舫代表の二重国籍の問題には、現実的に罰則や、公職選挙法上の問題は生じ難いことがいえます。このため、よく聞く汚職、脱税、男女トラブルの問題のようなはっきりとした違法の問題とは状況が違うとはいえるでしょう。

そのため、鮫島浩氏のような左翼は、二重国籍など違法であったにしても、罰則規定も何もないのだから、蓮舫氏には、国籍問題などには拘泥すべきでないとしているのでしょう。

一方、小野田紀美氏は、罰則規定があるなしにかかわらず「違法か、合法か」という事自体が問題であるとしているのです。

しかし、国籍をふたつ持っているということは、ふたつの国の国民であるということです。

このため、極端な例ではありますが、「日本の総理大臣が、いつか中華民国総統になりうる」という事態を生じる可能性を持っています。

こと国家の意思決定を担う政治家を、重国籍の人が担うことの意味は、よくよく話し合われるべきものといえます。

だからこそ、蓮舫代表には、この点の説明や対応が求められているのです。

諸外国では、どうなっているのでしょうか。オーストラリアの野党・緑の党に所属するスコット・ラドラム上院議員(47)は今月14日、二重国籍と知らずに過去9年間、議員活動をしていたとして、議員を辞職しました。移民国家の豪州では二重国籍は珍しくないが、議員の二重国籍は憲法で禁じられているのです。

スコット・ラドラム上院議員
ヨーロッパでは、テロ事件以来、国民意識が高揚しており、そのなかで、国家への忠誠求める風潮が、極右などでなくても高くなっています。

そこで、プーチン大統領は、最近、帰化するときに厳密な忠誠宣言をさせることを決めました。韓国などでも同様ですから、日本に帰化するときに、何の忠誠宣言も求めないのはとんでもないことで。日本に心を売らないが、日本のパスポートの方が便利だからとかいった芸能人がいたが許せないことです。

ヨーロッパでは義務兵役があったときは、二重国籍でも、どこでそれを果たしたかで忠誠対象を判断できましたが、兵役廃止で意識が希薄になったことに悩んでいます。また、女性の地位が高くなると女性の忠誠はどう確保するかも問題です。

そこで、スウェーデンに続き、フランスでもマクロン新大統領が男女共通軍事教練の義務化を公約にして当選しました。女性も軍事教練と愛国教育を受けなければならないことになりそうです。

まして、政治家では、先オーストラリアの例もありますが、韓国では、康京和外相の任命にあたり、娘の二重国籍が合法的なものにもかかわらず、問題視されました。

イラン司法当局は16日、同国の裁判所が米国と第三国の二重国籍者に、違法な情報収集活動を行ったスパイ罪で禁錮10年の判決を言い渡したと発表した。

日本でも、国会議員や閣僚は最低限、禁止すべきです。法的整備も急ぐべきだが、まず、与党が次回の国籍選挙で、二重国籍者は公認しないという姿勢を明確にして欲しいものです。

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2017年7月16日日曜日

雇用増で結果を出す長期政権…財務省の管理と日銀人事に力 株価も上昇―【私の論評】小学生にも理解できることを理解しない馬鹿が日本をまた駄目にする(゚д゚)!

雇用増で結果を出す長期政権…財務省の管理と日銀人事に力 株価も上昇

 国の経済パフォーマンスを計る際に、どんな指数や指標を選ぶかは重要である。筆者は、雇用こそ国の政策の基本だと考えているので、就業者数をあげてみたい。

 平成以降の政権の寿命をみてみると、小泉純一郎政権と第2次安倍晋三政権だけが長期政権で、その他は1、2年でつぶれた短命政権であった。

小泉純一郎氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 この2つの長期政権は、短命政権と比較して、デフレこそ悪であると規定して、日銀人事をうまく使って金融緩和をやり、雇用を良くした点に特徴がある。

 筆者はこの2つの政権の近くで、その経済運営をみてきた。小泉政権では金融政策は前面に出してはおらず、竹中平蔵・経済財政相がマクロ経済運営の中で実施していた。一方、第2次安倍政権では、アベノミクスの「3本の矢」でもわかるように金融政策が前面に出ている。筆者の知るかぎり、安倍政権は戦後史で金融政策の重要性を理解した唯一の首相が率いる政権である。

プレミアム・フライデーに座禅を組んだ安倍総理
 なぜ金融政策が重要かといえば、雇用を改善する必要条件であるからだ。ただ、マクロ経済政策において、金融政策と並ぶ財政政策も、雇用では重要な役割を果たす。

 実は、雇用が良かったのは、平成以降の政権では橋本龍太郎政権(前半)、小泉政権(後半)、そして安倍政権しかない。橋本政権は大型公共投資を実施したことで出足が良かったが、1997年4月からの消費増税でその成果がふっ飛んだ。

 一方、小泉政権は発足当初から消費増税はやらないと宣言していた。安倍政権は2014年4月からの消費増税で一度失敗したが、強力な金融緩和で持ちこたえ、2回目の失敗はしていない。

 なお、マクロ経済政策を行う上で、長期政権は、財務省の管理と日銀人事をうまくやったことにも共通点がある。財務省のコントロールについて、小泉政権では、表だって公務員改革・天下り規制を行わなかったが、郵政民営化とともに政策金融改革も行い、政策金融機関の整理統合を実施したことで事実上の天下り規制にもなった。安倍政権では、公務員改革基本法などで天下り規制をし、内閣人事局を作ることでにらみを利かせた。日銀人事に関しては小泉、安倍政権は他の政権よりうまかった。特に安倍政権では首相が先頭で主導している。

 金融緩和をすると雇用の増加につながるが、それと同時に株価も上がる。ただ、株式市場は先取りして動くので、株価は半年後の就業者数と9割近い高い相関を持っている。つまり、雇用を増やした政権は、結果として株価も高くなっている。

 この意味で、雇用を重視すべき左派政党が、株式市場が活況になると、格差問題を持ち出し、資産家とそうでない人の格差が広がると批判するのは、かなり滑稽だ。

 株価が上がるのは、経済の先行きが好調であることの予兆であり、雇用の確保につながるからだ。もちろん株式市場の将来予測は完全ではないが、過去のデータではまずまずの結果となっている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】小学生にも理解できることを理解しない馬鹿が日本をまた駄目にする(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、以下のように掲載されています。
実は、雇用が良かったのは、平成以降の政権では橋本龍太郎政権(前半)、小泉政権(後半)、そして安倍政権しかない。橋本政権は大型公共投資を実施したことで出足が良かったが、1997年4月からの消費増税でその成果がふっ飛んだ。 
 一方、小泉政権は発足当初から消費増税はやらないと宣言していた。安倍政権は2014年4月からの消費増税で一度失敗したが、強力な金融緩和で持ちこたえ、2回目の失敗はしていない。
これは、以下のグラフを見ると、はっきり理解できます。

さて、安倍一次政権は短命でしたが、その理由の一つにそ小泉政権のときには金融緩和を実施していたにもかかわらず、その末期には金融引締めに転じたというこしともありました。

日本は当時の統計資料が示すところでは、2006年、2007年と需要不足ではありませんでした。需給ギャップはゼロだったのです。2006年は、小泉(純一郎)内閣から第1次安倍(晋三)内閣に引き継ぐ年でした。

あのまま日銀が金融緩和政策をそのまま続けていれば、日本のデフレは克服できていたはずでした。ところが、何を思ったか2006年3月に、日銀はそれまで5年間行っていた量的緩和をやめて金融を引き締めました。

これによって、皆さんご存知のように、デフレ克服はできなくなりました。私はそういう意味で、日銀の責任は極めて大きいと思います。本当に大罪を犯したと思います。これは、本当に腹立たしい出来事でした。

そのことを、同じように悔しい思いで見ておられたのが、当時内閣官房長官だった安倍晋三氏だったのです。そうして、第一次安倍内閣で、総理大臣になりましたが、結局短期政権で終わることになりました。

そのため、第二次安倍政権で、総理になってすぐ日銀と政府との関係を変えたのです。

日銀と政府の間で、明示的な2%の物価目標というアコード(政策協定)を結んで、それを実行するために新しい総裁を置いたのです。新しい総裁に就任された黒田東彦さんは、経済学の高い知見を持った人です。

そうして、2013年4月4日の最初の日銀政策決定会合で、2年間でベースマネーを2倍にするという非常に分かりやすいメッセージを出しました。

ただし、2014年4月から8%の消費税増税が行われ、せっかくの金融緩和の効果がそがれてしまいました。しかし、上の記事にもあるように強力な金融緩和で持ちこたえ、2回目の失敗はしていません。その政策を今も継続しているわけです。

そうして『アベノミクス』の1本目の矢はちゃんときき、現状では雇用情勢はかつてないほど良くなっています。

ブログ冒頭の記事にもあるように、安倍政権は戦後史で金融政策の重要性を理解した唯一の首相が率いる政権です。それは、以上の事実からも十分うかがい知ることができます。

結局は、安倍政権の経済対策は消費税増税でのつまづきと、現時点ではいまだ失業率が3%台と高くさらなる追加金融緩和が必要なのに、未だ実施されていないなど、十分とは言えない面もあるのですが、それにしてもかなりの成果をあげているのは間違いないです。

そうして、民進党などの野党は、野党やまともな対案を出せないので、森友・加計学園問題などのフェイクニュースや選挙妨害などの奇手を使って政権のイメージダウンをはかり、ともかく安倍政権が終わる=アベノミクスを終わらせれば、あとはどうにかなると思っているのでしょう。

そうして、マスコミはその尻馬に乗ってフエイクニュースを大拡散したり、報道しない自由を満喫しているという状況です。


フェイクニュースの事例 握手拒否はなかった、あったのは写真撮影の拒否


残念ながら、現状では安倍政権が終了して、アベノミクスが終わった場合、その後いかなる政権がついたにしても、日銀が金融引き締めに転じ、それが故に日本は再びデフレスパイラルの底に沈み、雇用・経済ともに悪化し、それが故にかつてと同じように短命政権となります。

そもそも、残念ながら現状では安倍総理以外は、なぜデフレが良くないかその本当の意味を理解していません。デフレがなぜ良くないのか、それを理解するために何も小難しい理論など必要としません。小学生にでもわかる理屈です。

その理屈を以下に簡単に説明します。

デフレ下においては、お金を持っている人はモノを買ってはいけません。なぜならモノの価値が下がるからです。お金を持っている人は投資をしてはいけません。なぜなら投資の価値が下がるからです。お金を持っている人は何もしないでじっとしていなさい。そうするとリスクなしで、物の価値がどんどん下がっていくから、自分の資産が増えていきます。

つまり、デフレ経済の下では、消費も投資も進まないということです。経済が停滞するのは当たり前で、諸悪の根源はデフレにあると考えた安倍(晋三)総理は誠に正しいです。

であれば、デフレの原因は何なのかということですが、デフレとは、モノの値段が下がり、お金の価値が上がり続ける状態、つまり貨幣的現象です。したがって、デフレを解消するには、まず金融を緩和しなければいけないということになるのです。 

このような簡単な理屈を理解しているのは、野党側ではほんの一握りの人であり、与党側でも、公明党は皆無、自民党内でも安倍首相な菅官房長官を含めたごく一部の人だけなのです。マスコミも皆無といって良いです。

このような状況では、また日本はデフレスパイラルのどん底に沈み、せっかく良くなった雇用状況もまた悪くなるということがいつ起こっても不思議ではないのです。小学生にも理解できることを理解しない馬鹿が日本をまた駄目にするかもしれません。

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