2020年3月22日日曜日

中国「新型コロナ封じ込め」強権の行く先は北朝鮮化か、それとも…―【私の論評】『言論統制』の崩れは、中国の「すでに起こった未来」かもしれない(゚д゚)!

中国「新型コロナ封じ込め」強権の行く先は北朝鮮化か、それとも…
習近平とWHOは世界に謝罪すべきだ


テレビ・キャスターや中国人民は謝罪する必要がない

 中国中央テレビの邱孟煌キャスターがSNSに「我々は申し訳ないという気持ちを込めて柔らかい口調でマスクをしたまま世界に向けてお辞儀をし、『すみません、迷惑を掛けました』と言わなければならないのではないか」と投稿して炎上したと報道された。

 その後コメントは削除されたが、邱キャスターの気持ちはよくわかる。多くの日本人が「もし、日本発のウィルスで、しかも対応の不手際によって(人災で)世界の人々を混乱に陥れた」とすれば同じ感情を持つのではないだろうか? 

 ただ、「反省しすぎ」なのが日本人の欠点である。冷静に考えて、日本政府の対応の不手際によって、日本で発生したウィルスが拡散したとすれば、一番の被害者は日本国民である。日本国民はまず、政権や官僚・役人に対して怒るべきなのである。

 共産主義中国でも同じことが言える。キャスターも含めた人民は、共産党政権の「隠ぺい工作」によって、武漢肺炎ウィルスを中国全土のみならず全世界に広げた組織を糾弾すべきだ。

 「A級戦犯」は習近平氏と、それを支える共産党幹部、さらには人口のわずか数%である特権階級の共産党員である。

 武漢中心医院の眼科医、李文亮氏は、 12月30日に「海鮮市場で7件の重症急性呼吸器症候群(SARS)に似た肺炎が確認された」とSNSに書き込んだ。ところが、この書き込みを発見した武漢市公安当局は李氏の書き込みを見つけ出し、事実でない書き込みであり「治安管理処罰法」に違反しているとして李氏を処罰した。そして、とても悲しいことに、李医師は2月7日に武漢肺炎によって亡くなった。

 その他にも隠ぺい工作が数え切れないほど行われ、世界中に感染が拡大した。謝罪すべきは、人災でウィルスを拡散した習近平氏と、その隠ぺい工作(責任逃れ)に加担した国連機関であるWHO事務局長のテドロス・アダノム氏である。

人民解放軍は中国共産党の「親衛隊」だ

 アドルフ・ヒットラーが率いた、ファシズム政党であるナチスはプロパンガダに秀でており、ヒットラー自身も、演説の前に鏡を見て身振りや手ぶりの練習をしたりした。今で言うイメージ戦略であり、その参謀が有名なヨーゼフ・ゲッペルスだ。

 しかし、中国共産党も負けてはいない。人為的飢饉による餓死者も含め、リンチ・拷問・処刑による死者をおよそ8000万人(西側推計)出した愚策を「大躍進」「文化大革命」と呼ぶだけではなく、機関銃で武装して無防備な人民を追い立てる組織を「人民解放軍」と名付ける。

 親衛隊は、ドイツ国軍とはまったく別個にナチス(ヒットラー)に忠誠を誓う私兵組織である(突撃隊も別途組織されていた)。人民解放軍も中国共産党に忠誠を誓う組織である上に、本当の意味での国軍が存在しない。共産主義中国では、ナチスの親衛隊が、国軍も兼ねているというような恐るべき状態なのだ。

 この「人民解放軍」という奇妙な名前の集団が、今回の「武漢封じ込め」でも存在感を見せた。もちろん、感染対策の基本、特に初動は「封じ込め」を中心にすべきであり、日本政府が共産主義中国の封じ込めを行わずに、早期に中国から日本への入国を全面的に規制しなかったのは誤った対応である。

 しかし、封じ込めは「より多くの人命を救う」という大きな効果があるとともに、封じ込められた人々にとっては「災難」という面もある。

 ハリウッド映画で、感染症あるいはゾンビが広がり始めた街を、軍隊が封鎖するというシーンがよくある。架空の話ではあるが、封鎖地域から逃れようとして、撃ち殺される人々もいる。共産主義中国や北朝鮮では実際に行われているという話も伝わってくる……

 実際、事実上の戒厳令が、病気で苦しむ中国人民を封じ込め、死に至らしめている。ウイグルやチベットの状況も心配だ。習近平氏が封じ込めようとしているのはウィルスではなく、「自由な言論」、すなわち「国民の声」である。

 米人権団体フリーダムハウスの2019年末の調査では、共産主義中国は4年連続でネットの「自由度」が世界最低だった(北朝鮮などを含まない65カ国中)。

 今回の武漢肺炎による封鎖は、ウイグルやチベットの「封鎖」で「隔離」されている人々に対して、収用所などでいったいどのようなことが行われているのか、世界中の人々が想像する材料を与えてくれた。

共産党発表の相手をしているのは国連と日本だけ

WHOの武漢肺炎に対する対応は、中国に忖度しているとしか思えないが、事務局長のテドロス・アダノム氏(エチオピア元保健相)の出身国にとって、中国からの投資は極めて重要である。2019年のエチオピアへの直接投資流入額の60%は中国によるものとされる。

WHOだけではない。ユネスコの世界記憶遺産に中国が登録申請していた、真偽のほどが検証されていない「南京大虐殺文書」を記憶遺産に登録するという暴挙が行われたことも記憶に新しい。

常任理事国は別にして、加盟国が平等に扱われる国連では、国家の数が多いアフリカの国々を「媚中派」としてコントロールすることによって、共産主義中国が運営を牛耳ることが可能だ。

また、「媚中派」である韓国の潘基文氏が、2007年から2016年の10年間、事務総長を務めた影響も大きい。

もちろん、このような共産主義中国の横暴を、大部分の先進国は不快に思っている。米国が拠出金の支払いをしばしば留保するのはその象徴である。

先進国の中でも経済的に困窮しているイタリアは、G7で初めて中国と「一帯一路」構想に関する覚書を締結したが、武漢肺炎が蔓延し全土の移動制限をしなければならなくなった現在はどうであろうか?

自らの失策を認めるどころか、「封じ込めに成功しつつある」と自画自賛する習近平氏と共産主義中国を見る目はかなり厳しいはずだ。

今や国連や共産主義中国をまともに相手にする先進国は、習近平氏の国賓招待を「秋に延期」などと言い続けている日本以外に存在しないと考えたほうが良いであろう。米国は、とっくの昔に見放している。

崩壊か? 北朝鮮化か?

習近平氏は、一度ついた嘘をつき続けるしかない。なぜなら、共産主義という全体主義(独裁主義)では、指導者は完璧な存在でなければならないからだ。特に毛沢東時代への回帰を目指している習政権では必須だ。

したがって、毛沢東の大躍進や文化大革命のように、「嘘に現実を合わせる」ことが必要である。

鋭い政権批判を行うことができる、良識ある知識人が今危険にされている。「文化大革命」の時にも、政府を論理的に批判できる良識的知識人が最大の攻撃対象にされた。

「大躍進」の際には、「先進国並みの鉄鋼生産を産実現する」という政府の嘘を実現するために、全土の田畑に「製鉄所」が建設された。

しかし、実のところ農家の納屋を改造した程度のものであるから鉄鋼の生産などできるはずがない。農家の貴重な鍋などの食器類、果ては鍬や鎌まで溶かして、「鉄鋼を生産しました」と報告したのである。

生産する農地を「製鉄所」に奪われ、鍬や鎌まで失った人々が食糧生産できなくなり、飢饉を招いたのも当然だ。

このような馬鹿げた行為が行きつく先は2通り考えられる

まず、中国人民自らの力による「悪夢の習政権」の打倒である。香港や台湾の状況は追い風だ。しかし、高度に武装した「親衛隊」を支配する中国共産党がすんなり国民に権力を禅譲するはずがない。

人民解放軍は、外国から国民を守るというよりも、国民から共産党を守るための組織である。国民が共産党を打倒すことができたとしても惨劇は避けられない。

もし国民が勝利すれば、新しい国家は台湾主導の「1つの中国」になるかもしれない。1つの中国は、結局、台湾主導で実現されるであろう。

米国は、すでにならず者の共産主義中国を見限っている。米国下院は、全会一致で台北法案を可決。この法案は、台湾の国際的地位を高めることを目的とする。

1979年の正式な米中国交正常化は、鄧小平だからこそ実現した。毛沢東ではあり得なかったといえる。

雪解けそのものは1971年のキッシンジャー、1972年のニクソンの訪中で行われたが、正式な国交回復は1976年の毛沢東の死去により鄧小平が実権を握ってから3年後に行われている。

鄧小平が、中国の発展に果たした役割の大きさは、2019年1月9日の記事「客家・鄧小平の遺産を失った中国共産党の『哀しき運命』を読む」を参照いただきたい。

つまり、鄧小平の遺産をひっくり返し毛沢東化している習近平氏を、米国は「ならず者」と認定し、1971年キッシンジャー訪中以前の「台湾が 1つの中国であった時代」に時計の針を巻き戻そうとしているのである。

1971年に採択されたアルバニア決議によって民主主義中国(中華民国・台湾)は国連安保理常任理事国の座を失い、共産主義中国(中華人民共和国)が国連安保理常任理事国と見なされたのだ。

さもなければ北朝鮮になる

現在の中国が示しているのは、「『共産党による一党独裁』と、『民主主義』『自由主義』にもとづく市場経済は結局両立しえない」ということである。

国民によって共産党が打倒されなくても、先進国を中心とした海外の共産主義中国に対する態度は激変するはずだ。

また、国民の「自由な言論」を封殺しなければ政権を維持できないから、ネットだけではなく、現実の海外との交流も極度に制限する北朝鮮のような状況に向かわざるを得ない。

友人の1人が、文化大革命が終了した直後の共産主義中国を訪問したことがあるが、旅行者はホテルに監禁され、外に出るときは機関銃を水平に構えた「護衛」が必ずついた。もちろん、この「護衛」は監視役である。このような、北朝鮮のような状況に戻る可能性もかなりある(これが2つ目のシナリオ)。

あり得ないのは「共産主義中国が再び発展に向かう」というシナリオである。

【私の論評】『言論統制』の崩れは、中国の「すでに起こった未来」かもしれない(゚д゚)!

上の記事で、人民解放軍は、先進国でいうところの国民の生命・財産を守る軍隊ではなく、共産党の私兵であるというのは本当で、さらに付け加えると、各地方軍にわかれていて、各地方の共産党に属し、さらに特異なのは、各々が様々な事業を展開しているということです。

そうして、地方軍の中には、核武装している軍もいるという有様です。わかりやすく説明すると、日本でいえば、商社のような組織が、軍隊並みの武装をしているということです。

この事実だけでも、中国は他国とは全く異なる異形の存在であることが、おわかりいただけると思います。

この異形の存在、中国が将来どうなるかについての、上の大原氏のシナリオでは、中国共産党の崩壊、もしくは北朝鮮化です。どうなるのかは、なんとも言えないところがありますが、大原氏の主張するように、私もあり得ないのは「共産主義中国が再び発展に向かう」というシナリオだと思います。


中国共産党の崩壊を予感させるようなことは現在でもあります。経営学のドラッカーは、「われわれは未来についてふたつのことしか知らない。ひとつは、未来は知りえない、もうひとつは、未来は今日存在するものとも、今日予測するものとも違うということである」(『創造する経営者』)と語っています。

ありがたいことにドラッカーは、ここで終わりにせず、続けて言っています「それでも未来を知る方法は、ふたつある」と。

一つは、自分で創ることでことです。成功してきた人、成功してきた企業は、すべて自らの未来を、みずから創ってきました。ドラッカー自身、マネジメントなるものが生まれることを予測する必要はありませんでした。自分で生み出したのです。

もう一つは、すでに起こったことの帰結を見ることです。そして行動に結びつけることです。これを彼は、「すでに起こった未来」と名付けています。あらゆる出来事が、その発生と、インパクトの顕在化とのあいだにタイムラグを持っています。

出生率の動きを見れば、少子高齢化の到来は誰の目にも見えたはずです。対策もとれたはずです。ところが、高齢化社会がいかなる社会となり、いかなる政治や経済を持つことになるかを初めて論じたのはドラッカーでした。

こうして東西冷戦の終結、転換期の到来、テロの脅威も彼は予見していました。

「未来を築くためにまず初めになすべきは、明日何をなすべきかを決めることでなく、明日を創るために今日何をなすべきかを決めることである」(『創造する経営者』)

中国共産とは、明日の中国を創るために、今日何をすべきなのかを決めているようです。しかし、彼らの中には、先進国がかつて先進的な主権国家になるために実行してきた、民主化、政治と経済の分離、法治国家家を実行していくというシナリオは、持ち合わせていないようです。

これらを実行せずに、技術革新などを実行し、現在の体制を維持しつつ、経済的に発展していこうというのが、彼らのシナリオのようです。しかし、これは、茨の道です。自分たちだけが、他国と全く異なるシステムで発展し続けようということにはかなり無理があります。事実上不可能です。

明治維新の以前の日本が、幕藩体制を維持したまま、欧米と対等にわたりあい、経済的に発展しようとすると同じようなものであり、到底無理です。日本は、明治維新により、体制を一新し、当時としては世界的にみてもかなり先進的であった大日本帝国憲法を制定し、国際法も重視しました。

幕藩体制

国際法を重視しすぎたことが、後に日本災いをもたらした面もあるのですが、それはさておき、国際関係では、欧米と同一歩調を歩む道を歩んだのです。

中国がこれから発展しようとした場合、表面面だけではなく、文字通りの自由貿易ができる体制を築かなければ、不可能です。そのためには、ある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現しなければ無理です。

ちなみに、法治国家化をする前には、政治と経済の分離が必要不可欠です。そのたためには、その前に民主化が不可欠です。そうして、民主化のためには、言論の自由が不可欠です。

現在中国では、言論の自由に関わる出来事が、いくつか起こっていて、これらはドラッカー氏のいうところの、「すでに起こった未来」かもしれません。

中国政府は19日、新型コロナウイルス感染症を「原因不明の肺炎」といち早く警鐘を鳴らした湖北省武漢市の男性医師、李文亮さんを摘発し処分したのは「法執行手続きが規範に合っておらず不当だ」として、処分取り消しと関係者の責任追及を求めた。市公安当局は処分を撤回し遺族に謝罪することを決定しました。

李さんが2月7日に新型コロナウイルスによる肺炎で死亡した際、国民から当局批判の声が上がった経緯があり、習近平指導部は処分取り消しに追い込まれた形です。

病床の李医師

李医師は、まだ中国政府が新型コロナウイルスによる肺炎の発生を公式に認めていなかった去年12月30日の段階で、「市場で7人のSARS(重症急性呼吸器症候群)感染が確認された」などの情報をSNS上のグループチャットに発信しました。

同僚の医師たちに防疫措置を採るよう注意喚起するのが目的でしたた。

感謝されてしかるべき行為。しかし4日後の1月3日、李医師が受けたのは賞賛ではなく、地元警察からの呼び出しでした。

中国政府の最高の監察機関である国家監察委員会の調査チームが、李医師の死から1か月以上経った、昨日3月19日、調査結果を発表しました。調査は、実際に12月中に武漢市内の複数の病院で原因不明の肺炎患者が確認されていた事実などに触れました。

その上で、李医師の処遇について「警察が訓戒書を作ったことは不当であり、法執行の手順も規範に合っていなかった」と結論づけました。警察に対し訓戒書の取り消しと関係者の責任追及などを求めました。

この調査結果に対し、ネット上では「真相が明らかになった」「国家を信じ、調査結果を支持する。李先生安らかに」などと賛辞が寄せられています。もっとも中国では政府の判断に反対する意見がネット上に残るはずはないですが、人々の批判の矛先を逸らすには、まずまずの効果があったようです。

しかし、この調査結果は、重要な点に触れていません。李医師の発信が「社会の関心を集めた」などとしていますが、訓戒によって李医師が口をつぐんでしまった事態が招いた結果についての検証がされていないのです。

その結果とは「情報隠し」が引き起こした感染拡大です。特に、医療関係者の防疫が後手に回ったために、武漢では医療崩壊が起きました。

国営新華社通信が、李文亮医師の調査チームとの質疑を報じています。その中で、李医師の情報発信が、社会にどのような作用を与えたかとの質問に対して、調査チームは次のようにこう答えています。

「一部の敵対勢力は中国共産党と中国政府を攻撃するために、李文亮医師に体制に対抗する“英雄”“覚醒者”のラベルを貼っている。しかし、それは事実に全く合わない。李文亮医師は共産党員であり、いわゆる“反体制人物”ではない。そのような下心を持つ勢力が、扇動したり、人心を惑わせたり、社会の不満を挑発しようとしているが、目的を達せられないことは決まっている」

中国の現在の体制にとって感染症そのものよりも、対策で明らかな手落ちがあったとして民心が離れる事態の方が脅威なのでしょう。民心が完璧に離れてしまえば、習近平が現体制を維持しようしても不可能になります。

今回の調査結果の一番の狙いは、おそらくこれなのでしょう。

習氏は10日、新型コロナウイルスの感染拡大後、初めて武漢市入りし、「(感染状況に)前向きな変化があり、重要な成果が出ている」と強調し、感染が終息に向かっているとアピールしました。中国政府の発表では、湖北省でこれまでに5万8000人近くが治療を終えて退院。武漢市では今月中旬以降、1日あたりの新規感染者数が10人以下で推移しているといいます。

ただ、この「中国政府発表」が信用できないのです。

武漢市の隔離施設の医師が共同通信の取材に対し、武漢市の状況改善は欺瞞だと内部告発したのです。

この医師によると、習氏の視察以降、自身の担当患者に肺炎の所見が見られたにもかかわらず、感染症対策を担う当局の「専門団」の判断で隔離が解かれたといいます。このころから解除の判断が甘くなり「感染者の大規模な隔離解除が始まった」といいます。習氏への配慮から「対策成功アピール」のため治療中の患者数を意図的に減らしていると指摘しました。

中国政府は、武漢市で18日に新規感染者が0人になったと発表しましたが、医師は政府の集計は「信頼できない」と断言しました。

中国を代表する北京大学からも「異論」が飛び出しました。

北京大学の姚洋国家発展研究院院長は20日までに、中央集権の強権統治の下、圧力を感じた地方の当局者が「新規感染を1例も出してはならない」と萎縮していると批判する「異例の論文」を発表しました。

姚氏は「ミスを許容しない」中央の姿勢を受け、新規感染が出た際の処罰や失職を恐れて、地方当局者が経済復興に取り組めないと指摘。地方行政に自主性と実権を与えるよう訴えました。

共産党一党独裁の中国で、習政権の意向に逆らうような発信が相次ぐのは極めて稀です。

これまで中国共産党は言論を抑圧してきました。ただ、新型コロナウイルスは感染症のため、真実を発信しなければ、自らの命にもかかわる問題にもなりかねないです。

知識人の間で、当局のウソに耐えきれず、真実を発信していこうとする機運が高まり、『言論の自由』の重要性が意識され始めた大きな変化です。これが、権力闘争一環である可能性もあるとする日本の識者もいるようですが、仮にそうであったにしても、これはかつての中国にはみられなかった重大変化です。

この言論統制の崩れが、いずれ民主化に結びつくかもしれません。この民主化はやがて、政治と経済の分離、法治国家化に結びついていく可能性は否定できません。

今回の事態が、体制崩壊に直結するとは考えられないですが、共産党独裁体制の維持に不可欠な『言論統制』が崩れ始めていることから、長期的にみれば、体制崩壊の兆しが見え始めているといえるかもしれません。そうして、これは中国の「すでに起こった未来」なのかもしれません。

冒頭の記事で、大原氏は「共産党発表の相手をしているのは国連と日本だけ」としています。ところが、中国共産党が武漢肺炎が終息したような発表をした後でも、中国から入国制限を緩めるべきとの声はこ起こっていません。これは、親中派とみられる人々の間からも起こっていません。

従来なら、少なくと多少は起こっていたに違いありません。特に親中派からは起こっていたに違いありません。ツイッターなどでは、「親中派は中国の発表を真に受けて、中国からの入国制限を緩めろというかもしれない」というものは見かけましたが、実際に「緩めろ」というものはありませんでした。これは、日本の「すでに起こった未来」なのかもしれません。

【関連記事】

米中、新型肺炎の初動遅れで非難の応酬 双方の報道官もツイート―【私の論評】中国共産党の大きな勘違い!彼らは、ウイルスの遺伝情報まで操作できない(゚д゚)!

2020年3月21日土曜日

米中、新型肺炎の初動遅れで非難の応酬 双方の報道官もツイート―【私の論評】中国共産党の大きな勘違い!彼らは、ウイルスの遺伝情報まで操作できない(゚д゚)!

米中、新型肺炎の初動遅れで非難の応酬 双方の報道官もツイート

   米ホワイトハウスで定例会見を行うマイク・ポンペオ国務長官(手前右)と
   ドナルド・トランプ大統領(手前左、2020年3月20日撮影)

マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は20日、中国政府に対し、新型コロナウイルスに関してもっと情報を他国と共有するよう求めた。一方の中国政府は、ポンペオ氏は米国の初動の遅れに関してうそをついており、米政府は責任転嫁しようとしていると非難している。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領と同じく新型ウイルスを「中国ウイルス」と呼び、中国政府の怒りを買っているポンペオ氏は、ホワイトハウス(White House)で記者団に対し、新型肺炎に関して早くから把握していた中国政府には研究者への「特別な責務」があると述べ、「これは報復とは関係ない」と続けた。

 これに先立ちポンペオ氏は、FOXニュース(Fox News)のインタビューで、中国は新型コロナウイルスを特定するまで「何日も貴重な時間を無駄」にし、その間、武漢(Wuhan)から「数十万人」がイタリアなど世界各地に移動するのを容認したと主張。「中国共産党は適切な対応を怠り、その結果、無数の人命を危険にさらした」と述べていた。イタリアは死者数が中国を上回り、世界で最多となっている。

 中国外務省の耿爽(Geng Shuang)副報道局長は、北京で行った記者会見で、中国は「大きな犠牲を払って」世界の保健に貢献したと主張し、「米国には、病気の流行に対する中国の闘いに汚名を着せ、中国に責任転嫁しようとする人がいる」と述べた。

 中国の国営メディアは、トランプ氏お気に入りのSNSだが中国国内ではおおむね禁止されているツイッター(Twitter)に「#TrumpSlump(トランプ不振)」や「#Trumpandemic(トランプパンデミック)」などのハッシュタグ付きのメッセージを投稿して嘲笑。

 中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官は、中国は米国に対して1月3日にウイルスの発生を報告したにもかかわらず、米国務省が武漢在留米国人に警告したのは1月15日になってからだと指摘し、「今になって中国の対応が遅いと言うわけ?本当に?」とツイッターに投稿した。

 米国務省のモーガン・オータガス(Morgan Ortagus)報道官は引用リツイートで反論。「中国当局は1月3日までに#COVID-19ウイルスの検体の破棄を命じ、武漢の医師らの口を封じ、ネット上の世論を検閲した」と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についてハッシュタグ付きでツイートし、「この時系列の流れを世界は綿密に調べなければならない」と主張した。

【私の論評】中国共産党の大きな勘違い!彼らは、ウイルスの遺伝情報まで操作できない(゚д゚)!

新型コロナウイルスをめぐる、初動遅れに関する米中の非難合戦に関しては、明らかに中国側に非があるものと考えられます。しかし、中国がいくら強弁したとしても、中国の隠蔽は完璧に暴かれることになるでしょう。

なぜなら、ウイルスの遺伝物質から、感染経路だけでなく、世界での広がり方や封じ込めに失敗した状況が、最終的に分かる可能性が高いからです。

現在科学界では、ウイルスの感染拡大に伴う遺伝子変異を追跡することで、ほぼリアルタイムでウイルスの系統樹が作成されています。この系統樹は、感染が国から国へ飛び火する様子を特定するのに役立つといいます。

ブラジルの科学者たちは、2月下旬に国内初の新型コロナウイルスの感染例を確認した際、すぐにウイルスの遺伝子配列を解読しました。そして、すでにオンライン上で公表されていた150以上の配列(多くは中国からの情報)と照らし合わせました。

感染者はサンパウロ在住の61歳で、2月にイタリア北部のロンバルディア地方を旅行していたため、イタリアで感染した可能性が高いと思われていました。しかし、感染者のウイルスの遺伝子配列は、さらに複雑な履歴を物語っていました。それは、感染した状態で中国から来た渡航者が、ドイツでのアウトブレイクならびにその後のイタリアでの感染拡大に関連するというものでした。

ウイルスは流行と共に変異し、ゲノムの塩基がランダムに変わります。科学者たちは、そうした遺伝情報の変化を追跡することで、ウイルスの進化の様子や、最も密接に関連する事例を辿ることができるのです。最新の系統樹では、すでに多数の分岐が示されています。

新型コロナウイルスの遺伝子データは「ネクストストレイン(Nextstrain)」というWebサイトで追跡されています。ネクストストレインは、「病原体のゲノム(DNAのすべての遺伝情報)データの科学的・公衆衛生的な可能性を活用」するためのオープンソースの活動です。科学者たちがすみやかにデータを投稿しているおかげで、アウトブレイクとしては初めて、ウイルスの進化と拡散がかなり詳細に、ほぼリアルタイムで追跡されています。

ネクストストレインで示されている新型コロナウイルスの系統樹

ゲノムの探索は、封じ込め対策が失敗している場所を知るのに有効です。各国が、1つだけでなく複数の経路でウイルスに直面していることも明らかになっています。そして最終的には、遺伝子データから、大流行の最初の発生源を突き止められる可能性があります。


ブラジルでは、研究者が遺伝子データを用いて、最初の症例とその後に見つかった2番目の症例の間に密接な関連がないことがわかりました。2人の患者のウイルスから採取した遺伝子サンプルには、それぞれ別の場所で感染した可能性が高いことを示すだけの十分な違いが見られたからです。

患者の渡航歴と組み合わせた結果、ブラジルで判明した2つの症例は、それぞれ別の経路で国内にウイルスを持ち込んだことがわかったのです。
ブラジル政府は20日新型コロナウイルスの感染拡大を受け、非常事態を宣言。写真は、ボルソナロ大統領

新型コロナウイルスに対するワクチンがまだない現状では、感染者の発見や隔離といった積極的な公衆衛生対策が、ウイルスを食い止める最適な方法です。

その際、ウイルスの系統樹が役に立つのです。ウイルスの広がりを追跡し、封じ込めに成功している場所と失敗している場所を特定するのです。

この系統樹を活用すれば、どこで最初にウイルスが蔓延して、どのように感染していったかをトレースできるのです。

このトレースを恐れて中国は、情報を隠蔽あるいは捏造する可能性もあります。そうなると、中国の初動の遅れが、パンデミックの原因になったかもしれないことが、不明確になるのでしょうか。私は決してそうはならないと思います。

なぜなら、これは中国のGDP統計の統計が出鱈目であり、それを多くの経済学者らが、実証している事例があるからです。

たとえば、対中国の輸出と輸入からGDPを類推するという方式があります。中国のGDPの統計が出鱈目であったとしても、輸出、輸入の数値に関しては、中国だけではなく輸出国や輸入国のデータがあるので、それらの内容まで中国は操作できません。

そうなと、輸出、輸入の動きから、大体の中国のGDPの真の値を類推できるのです。そうして、そこから出てくる結論は、中国の公表するGDPの統計値は、出鱈目だということです。経済学者の中には、中国のGDPの値は日本以下どころかドイツ未満とする人も多いです。


このことからもわかるように、ウイルスの伝播についても、中国政府は中国国内については、隠蔽や操作もできますが、伝播した他国の数値まで隠蔽したり、操作することはできません。
そうなると、各々系統樹の頂点はどこになるのかを調査すれば、中国のどの都市かまで特定できないにしても、少なくとも中国であることか、あるいは中国のどの地域あたりかまでは、特定できることになります。実際、もうすでにかなり特定されているでしょう。
先にも述べたように、すでにオンライン上で公表されていた150以上の配列(多くは中国からの情報)があります。これについては、その後も提供され、今も提供され続けていると思います。
これらから、中国発のウイルスがどのように他国に伝播して、どのような感染をして、どのような結果になったのかをかなり詳細に分析できるはずです。
中国共産党は大きな勘違いをしています。彼らは、新型コロナウイルスの遺伝情報までも書き換えることはできないのです。この情報がある限り、中国は言い逃れはできません。
言い逃れしても、誰にも信用されません。中国人民の多くは、中国で武漢肺炎が終息しつつあるという中国政府の発表を信じていないようですが、正しい判断だと思います。
【関連記事】

米国家安全保障会議、中国が「武漢コロナウイルス」を食い止めていないと声明で非難―【私の論評】反グローバリズムで中国は衰退し、新たな秩序が形成される(゚д゚)!


ノーベル賞作家、中国が「独裁国家」でなければ事態は違った 新型コロナ―【私の論評】中国に対する怨嗟の声が世界中から沸き上がり世界は大きく変わる(゚д゚)!

2020年3月20日金曜日

【日本の解き方】米と「ケタ違い」だった日銀緩和 80兆円の量的緩和復帰すれば、財政出動の効果も発揮される―【私の論評】簡単なことがわからない日銀総裁と、日本の政治家(゚д゚)!


日銀黒田総裁

 米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、ゼロ金利復帰と7000億ドル(約75兆円)規模の量的緩和を決めた。16日に前倒しした日銀の金融政策決定会合では上場投資信託(ETF)の買い入れ額を年6兆円から12兆円に増やすと公表された。

 筆者は事前に、FRBはゼロ金利と純増で5000億ドル程度の量的緩和を予想していたので、日本の円を安定化させるためには、日銀も同様の量的緩和が必要と考えていた。

 具体的には先日の本コラムに書いたように、80兆円ベースの量的緩和への復帰を思い描いていた。そうなれば、60兆円程度のマネタリーベース(中央銀行が供給するお金)の純増分が日米でほぼ同じなので、当面の為替の安定は確保できる。

 しかし、現在のイールドカーブコントロール(長短金利操作)政策から量的緩和への復帰に日銀内で抵抗があり、ETFの買い増しで対応するという情報が漏れ伝わってきた。これは、日銀事務局によるいわゆる「地ならし」だ。こうした話が出てくるのは、経験則上ダメな政策のときだ。筆者は決定会合の前に、「ETFの買い増しでは緩和の規模について日米間で桁が違って力不足になる」とツイートした。

 日銀が会合を16日に前倒したのはいいが、内容はやはり事前情報通りにETF購入額を6兆円から12兆円へ増やすというもので、純増は6兆円だった。

 これに対し、FRBは国債などの買い増しにより75兆円の純増だった。やはり、日米間で金融緩和の桁が違ってしまった。

 これに対して、国民民主党の玉木雄一郎代表から興味深いツイートがあった。「今、求められている政策は12兆円で株を買うのではなく、12兆円を家計に流すことだ。国債発行による給付と減税を大規模にやるしかない」というものだ。

国民民主党の玉木雄一郎代表

 12兆円を家計に流すというのは正しい政策だ。しかし、大規模な金融緩和を否定して、この政策を行うのは、必ずしも効果的でない。

 というのは「マンデル=フレミング効果」があるからだ。その原理をかいつまんでいえば、国債発行をすると、国内金利が海外と比べて高くなりがちなので自国通貨が高くなるというものだ。国債発行による財政出動で内需を拡大しても、為替高で外需が減少し、財政出動の効果が減殺されるというわけだ。

 提唱者のロバート・マンデル氏のノーベル経済学賞受賞業績にもなっているくらいなので、古今東西で事例が見られる。例えば2011年3月の東日本大震災後、大規模な財政出動をした際、円高に見舞われたのはその好例だ。

 こうしたメカニズムが分かっているので、財政出動と同時に金融緩和すれば、国内金利は落ち着き、自国通貨高にならずに、財政出動の効果がそのまま発揮される。

 要するに、消費増税の失敗と「コロナ・ショック」による影響はリーマン・ショック級なので、消費税5%への減税や1人10万円の給付金を実施すれば、25兆円程度の財政出動になる。同時に80兆円ペースの量的緩和への復帰が必要だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】簡単なことがわからない日銀総裁と、日本の政治家(゚д゚)!

上の記事では、「マンデル=フレミング効果」について語られてますが、これを定量的に理解するのは結構難しいところもありますが、ざっくりと理解し、現状の財政政策や金融政策を理解する程度にするのは、難しいことではありません。

以下に簡単に説明します。これが、経済理論的に厳密に正しいかどうかは、別にして、これくらいの理解でも、現状の財政政策や金融政策を理解するには十分役立つと思います。

マンデル・フレミング効果とは1960年代初頭に発表された経済モデルです。経済学者のロバート・マンデル氏とジョン・マーカス・フレミング氏が同時期に発表したことによって、両方の名前をとって名付けられました。

世界各国で認められたモデルで、ノーベル経済学賞も受賞しています。簡単に言うと変動相場制において、財政政策の効果は非常に低くなる、というものです。

財政政策とは政府が公共投資、給付金、減税、などの政策行い、市場にお金を流す政策です。市場にお金が供給されるので、景気の改善に繋がります。

しかし、マンデル・フレミング効果を踏まえて考察すると財政政策だけでは、景気対策に限りがあるということがわかります。

政府が財政政策特に積極財を行う時、国債を発行し銀行からお金を吸い上げます。そのお金で様々な対策を行えば、景気がよくなるはずです。しかしこれには、限界があります。

お金を銀行から吸い上げることにより、市中のお金が減少しますから、円高方向に進むことになります。吸い上げたことによる円高で、海外からの投資が増えるので、益々円高が加速することになってしまいます。

それによって、輸出産業に大打撃を与えるので、景気にも後退にも繋がるのです。公共投資による景気改善と、輸出による後退で、財政政策の効果がなくなってしまうのです。以下に財政支出が弱まる仕組みの図表を掲載します。


ただし、固定相場制だと、マンデル・フレミング効果は起こりません。固定相場制の場合、為替レートが決められています。市中からお金を吸い上げても、円高方向に進むことはありえません。

為替レートが変わらないのならば、輸出にダメージを与える心配はありません。このように固定相場制の場合はマンデル・フレミング効果は働かず、財政政策のメリットが非常に大きくなるのです。

では、日本のような変動相場制の国で財政政策の効果を出すにはどうしたら良いのでしょうか。財政政策と金融緩和を同時にやることです。

財政政策による円高が、無効化の原因であれば、金融緩和で市中に回る円を増やし、相違的に円高にならないようにすればいいのです。ちなみに、為替についてざっくりと説明すると、たとえば日銀が金融緩和を実行し、FRBが実行しなければ、相対的にドルよりも円が多い状態になりますから、円安になります。

これは、物価と同じように考えれば、すぐに理解できます。ある特定の物が非常多くなれば、その物の価格は安くなります。通貨も同じです。ある国が徹底的に緩和をして、他国が緩和しなければ、ある国の通貨は相対的に他国の通貨よりも多くなり、安くなります。

「そんな、簡単なことなの?」と思われる皆さんも、いらっしゃるかもれませんが、そんなに簡単なことなのです。無論、方向性としては、全く簡単ということです。

米国の作家・詩人チャールズ・ブコウスキー(写真)の言葉。『簡単なことを難しく言うのがインテリ。
難しいことを簡単に表現するのが芸術家。』

ただ、方向性がわかっても、日本国内や世界の情勢を理解し、どの程度の緩和をすれば良いかという定量的なことを計算するのは難しいかもしれません。しかし、これもある程度金融政策を実行してみて、緩和をしすぎれば、引き締めをし、緩和が足りないならさらに緩和するという具合で実行すれば、さほど難しくありません。

そのための目安として、日本には物価目標というのがあります。物価目標を達成し、さらに物価が上がり続ければ、緩和をやめれば良いのです。物価目標が達成できなければ、緩和を継続すれば良いのです。何も難しいことはありません。

これが、日銀の実行すべきことなのです。この簡単なことがわからないのが、他ならぬ日銀の黒田総裁であり、日本の大方の政治家なのです。もしかすると、日本では金融機関の人もわかっていないかもしれません。

情けない限りです。

【関連記事】

景気大打撃は確実だが…新型コロナからの「日本復活の秘策」はこれだ―【私の論評】日本は的確な経済・金融政策を実行し、年間自殺者2万以下の現状を維持せよ(゚д゚)!


前例のない大胆政策…安倍政権は「消費減税」決断を! 財務省は必死に抵抗するだろうが…ここが政権の「正念場」だ―【私の論評】積極財政と金融緩和政策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!


日本経済「コロナ恐慌」回避への“劇薬政策”投入あるか 日銀談話の影響は限定的 識者「10兆円補正」「消費減税」提案―【私の論評】コロナ対策で安倍総理がフリーハンドで経済対策に打ち込める状況が整いつつある(゚д゚)!

日本が犯した3度目の過ち、消費増税が経済に打撃―【私の論評】財務省の動きを封じなければ、安倍晋三氏は歴史に「消費税を2度あげた総理大臣」として名前を刻まれる(゚д゚)!

2020年3月19日木曜日

米国家安全保障会議、中国が「武漢コロナウイルス」を食い止めていないと声明で非難―【私の論評】反グローバリズムで中国は衰退し、新たな秩序が形成される(゚д゚)!

米国家安全保障会議、中国が「武漢コロナウイルス」を食い止めていないと声明で非難

習近平

国家安全保障会議(NSC)は17日、中国共産党がジャーナリストを国外に追放し、中国が起源となったウイルスを止めることに集中するのではなくその起源に関する偽情報を広めていることを非難した。

「中国と香港からジャーナリストを追放するという中国共産党の決定は、中国国民と世界から同国に関する本当の情報へのアクセスを奪うことに向けてのまた新たな一歩である。米国は、中国の指導者がジャーナリストを追放することと、武漢コロナウイルスを食い止めようとする全ての国に対して偽情報を広めることから関心を向け直すことを求める」とNSCは声明で述べた。

NSCの声明は、中国がニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの米国人ジャーナリストを追放すると発表したことを受けてのものだ。

「(中国共産党は)また、ボイス・オブ・アメリカ、タイム・マガジンを含めたそれらの報道機関が、中国政府に活動の詳細情報を提供するよう要求した。発表ではさらに、現在中国本土で活動する米国人ジャーナリストは、『香港とマカオ特別行政区を含む中華人民共和国でジャーナリストとして活動することを許可されなくなる』としていた。2つの地域は半自治区であり、理屈の上では本土よりも報道の自由が大きかった」とニューヨーク・タイムズは報じた

「世界が自由な報道活動を行う能力を中国が今日締め出すと決定した事を遺憾に思う。そうした活動があれば率直にいって中国国民にとっては本当に有益になるのだが。これは残念なことだ。彼らが再考することを願う」とマイク・ポンペオ国務長官は報道陣に語った。

ニューヨーク・タイムズのディーン・バケット編集長は中国の措置を非難し、「コロナウイルス・パンデミックに関する確かな情報が、自由で開かれた形で流通することを世界が必要としている時に、ことのほか無責任である」と述べた。

ワシントン・ポストのマーティン・バロン編集長は、「我々は、米国人記者を追放するための中国によるいかなる措置も明白に非難する。中国政府の決定がとりわけ遺憾であるのは、COVID-19に対する国際的な対応に関する明確で信頼できる情報が不可欠な、前代未聞の世界的危機の只中でのものであるためだ。その情報の流れを大幅に制限するという、現在中国が行おうとしていることは、状況を悪化させるだけだ」と述べた

ウォールストリート・ジャーナルのマット・マレー編集局長はツイートでこう述べた。「中国の報道の自由に対する前代未聞の攻撃は、前例のないほどの世界的危機の時に行われているものだ。中国から同国に関して信頼できる報道を行うことは、この上なく重要なものだった。我々は世界のどこであっても、政府が自由な報道に干渉することに反対する。中国について完全に深く報じることに対する我々の深い関与は不変だ」


ウォールストリート・ジャーナルのマット・マレー編集局長

中国はコロナウイルスの起源に関する偽情報を広めることを目指した必死のプロパガンダ活動を開始している。

外交問題評議会の上級研究員でアジア研究部長のエリザベス・C・エコノミーは、ニューヨーク・タイムズに、「習近平にとっての危機は、ウイルスが世界的に広がる中で、タイムリーな対応を遅らせることにおいて中国の統治制度が果たした役割が、国際社会からますます監視と批判を浴びることだ」と語り、プロパガンダは「責任を逸らし、何が本当に起きたかについての国際社社会からの誠実な釈明要求を避けるための、習による苦肉の策」であると述べた。

【私の論評】反グローバリズムで中国は衰退し、新たな秩序が形成される(゚д゚)!

中国が恐れているのは、世界の中国を見る目が変わることです。現状では、未だ武漢コロナウイルスが蔓延しているため、各国政府も、個々の国民もこれに対応することで精一杯で、中共を非難するよりもまずは、病気を食い止めることに注力しています。

しかし、これが一旦小康状態になるか、終息すれば、多くの人々から中国共産党や習近平に対する怨嗟の声があがるでしょう。

以前のこのブログにも掲載したように、
親しい人、愛する人を失った人々、感染してひどい目にあった人たち及びこれらに惻隠の情を禁じえない人々は、この不条理を生涯忘れないでしょう。自分の過ちを認めない、上から目線の中国共産党に対しては、世界中の多くの人々がこれを認めないでしょう。米国の対中国冷戦は、世界中の多くの国民から支持されることになるでしょう。 
たとえ、自国の政府が親中的であったにしても、支持するでしょう。
このような事態に遭遇した人たちは、ウイグルやチベットの人々に対してもさらに深い理解を示すようになるでしょう。迫害されている他の中国人民の気持ちも理解できるでしょう。
そもそも、中国共産党や習近平は巧みに論点をすり替えています。そもそも、武漢コロナウイルスの発生源など主たる問題ではないからです。発生源がどこであろうと、中国共産党が、武漢コロナウィルスによる肺炎が発生しているにもかかわらず、それを中国国内や海外に対してさえも隠蔽したことが問題なのです。

この隠蔽さえなければ、国内では武漢市内、もしくはもっと極限された地域だけで、感染を食い止められたかもしれません。そこまでいかなくても、中国国内だけで感染が食い止められた可能性が大きいです。特に、世界各国の支援を受け入れ、早めに防疫体制を整えていれば、今日のような事態を招くことはなかったでしよう。

しかし、中共が隠蔽したため、多くの国々が武漢コロナウイルスの備えを固めることができないうちに、侵入を許してしまったという、事実があります。この事実は、変えようがありません。

この隠蔽の事実と、世界に武漢コロナウィルスが蔓延しつつある事実は、中共がいくら発生源で論点をすり替えようとしても変えようがありません。

先に述べたように、今後武漢コロナウイルスの世界への伝播が小康状態になったり、終息した場合には、世界は大きく変わるでしょう。

それは、過去の世界史をみてみれば、わかります。たとえば、 強大な軍事力を背景に北はスコットランドから南はシリアまでを領地に繁栄をつづけたローマ帝国の衰退の一因に「疫病」がありました。

皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121~180)のお抱え医師、ガレノスが当時蔓延した疫病について詳細な記録を残していました。この疫病は165年から167年にかけてメソポタミアからローマに到達したとされています。

皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(121~180)の像

この疫病では、多くの患者が血を吐いたされています。病人の顔が黒くなれば葬式の準備を始めたほうがいいともいわれたそうです。もちろん治る患者もいました。「黒い発疹」が出れば生き延びる可能性があったそうです。この疫病は、今では天然痘だったのではないかと見られています。総死亡者数は1000万人を超えたのではないかと推定されています。ローマでは毎日2000人が死んだともされています。

ローマ軍の軍人たちも罹患し、軍がガタガタになりました。それに乗じて一時はゲルマン人がローマにまで攻め込んできました。最終的には押し返したのですが、ローマ帝国の最強神話がぐらつくきっかけになりました。

皇帝マルクス・アウレリウスもこの病気で死んだといわれています。『ローマ帝国衰亡史』で知られるギボンは、「古代世界はマルクス・アウレリウス統治時代に降りかかった疫病によって受けた打撃から二度と回復することはなかった」と書いています。

このように、大きな疫病は、昔から流行した後に、世界を変えています。今回の武漢コロナウイルスによっても、終息後には世界は大きくかわるでしょう。

まずは、中国自体の弱化です。

武漢市の全面閉鎖に象徴される社会機能の麻痺により当然、経済は落ち込むでしょう。その結果、軍事に投入される国家資源も相対的に減ることになります。なにしろ国民多数の国内での移動や就業自体が大幅に制限されたのですから、総合的な国力が削られるのは自明です。

次に、中国をみる世界の目の変化です。

上でも述べたように、世界の多くの国は習近平政権が当初、ウイルスの拡大を隠し続けたことを非難しました。国際社会のそうした非難は当然、中国の孤立傾向を強めることになります。伝染病の流行までも隠蔽しなければならない独裁政権の異様な体質への国際的な忌避や嫌悪だともいえます。

そもそも中国はいま全世界を苦しめる武漢コロナウイルスの発生地であり、加害者です。日本も米国もそのウイルスから自国民を守るためには中国との絆を断つ動きをとらざるを得ないのです。

日本をはじめ多くの諸国が中国からの来訪者を入国制限をしました。これは、自国民保護のための自衛の防疫措置でしたた。しかし、その結果は中国との交流の縮小となり、中国は世界のなかで孤立に向けて押しやられることになりました。

三番目は、グローバリゼーションの変化です。

このウイルス拡散がグローバル化を阻み、縮小させる影響である。

グローバリゼーションとは、国家と国家の間で人、物、カネが国境を越えて、より自由に動く現象を指します。そのグローバル化は貿易の実例でも明らかなように世界全体、さらには人類全体に数えきれない利益をもたらしてきました。ところがそのグローバル化にも光と影がありました。

ウイルス感染症が中国から他の諸国へとすばやく拡大していったのも、グローバル化の産物でした。この危険なウイルスの国境を越えての拡散を防ぐためには、国境の壁を高く厳しくする措置が欠かせなくなります。国境を高くすることはグローバル化への逆行です。

米国のトランプ大統領は選挙公約にもはっきりとグローバル化への反対をうたっていました。トランプ大統領は、主権国家の重要性を強調した政治リーダーなのです。その米国で中国発生のウイルスへの対策として、中国との絆の縮小や遮断を説く声が起きるのも、自然な流れです。

このブログでも以前、トランプ政権のウイルバー・ロス商務長官は「このウイルスの拡散は雇用を北米へ戻すことを加速させる」と述べて、批判されました。

ウイルバー・ロス商務長官

仮にも中国の多数の国民を苦しめる感染症を米国の雇用を増すプラスの出来事として描写したことの不謹慎さを非難されたのです。ところが、今回のウイルス拡大がこれまで中国へ、中国へ、と流れていたアメリカ国内の生産活動の移動を元に戻す効果があることはまぎれもない事実です。

トランプ政権はウイルス拡散の以前から中国との経済関与を減らすことを政策目標にしていました。中国共産党政権の国際規範無視の膨張に反対するためでした。

ところが、このウイルス拡大はそのアメリカ主導の脱中国の動きを加速させ、中国に重点が移りかけていた全世界のサプライチェーンまでにも正面からブレーキをかけられることになったのです。まさにグローバリゼーションの大きな変化でした。

すでにコロナウイルスの感染者が多数出たイタリア、イラン、韓国などという諸国も多様な方法で中国との関与や接触を断つ方向への措置を取り始めました。グローバル化への逆行です。

ただし、このブログでも以前述べたように、中国の過剰貯蓄が世界の経済を変えてしまったところがあります。これが、グローバリゼーションの変化により是正される可能性があります。

1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えてしまいました。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰は、それまでとは異なるものです。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達することはありません。世界中で供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

この「長期需要不足」の世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくいのです。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができません。

ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからです。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのです。

中国の過剰生産は、凄まじいものがあります。先進国などでは、とうに倒産したようなゾンビ企業が、中国政府から補助金等の支援を受け製造を継続し、製品をつくりまくり、輸出をし続けたのですから、世界も供給過剰になるわけです。

しかし、今回の武漢コロナウイルスの蔓延をきっかけに、各国が中国から輸入を減らせば、世界の供給過剰はなくなるわけですから、世界経済は従来よりは良くなる可能性が高いです。

無論短期では、様々な問題が生じるでしょうが、それは決して克服ができないような問題ではありません。何しろ、中国が製造できるものは、先進国ではすべて製造できるものがほとんどだからです。ただ、自国で製造するよりも安いといういう理由で輸入してきただけです。

とはいいながら、世界は、グローバル化の恩恵を完璧に捨て去ることはできず、自由貿易のルールを守れない中国とその他の少数の例外的な国々が貿易圏をつくりその中で貿易を行い、他方では、自由貿易ができる先進国等の国々が貿易圏をつくり、その中で自由貿易を行うというように、変わっていくと思います。

ただし、自由貿易のルールが守れない、中国や他の国々など、徐々に衰退していき、いずれ消滅するのではないでしょうか。ただし、それらの国々も国民がいるわけですから、それらの国民が新たな国を設立して、自由貿易ができる国を目指すことになると思います。その時は、また世界はグローバル化の時代を迎えることになるでしょう。

【関連記事】

2020年3月18日水曜日

PCR検査「リスクゼロ信仰」の危険性…簡易検査だと「5割は誤判断」 医療現場は崩壊?イタリアや韓国の轍を踏むな ―【私の論評】ウイルスの特性を知れば、PCR検査の誤判定の率が高さを理解できる(゚д゚)!

PCR検査「リスクゼロ信仰」の危険性…簡易検査だと「5割は誤判断」 医療現場は崩壊?イタリアや韓国の轍を踏むな 
高橋洋一 日本の解き方

PCR検査用機器

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がツイッターで、新型コロナウイルスのPCR検査を100万人分無償提供したいと表明したところ、批判が殺到し、撤回したことが話題となった。

 筆者は「簡易検査だと誤判定50万人になってしまう。カネで100億円寄付した方がいいんじゃないの」とツイートした。

 孫氏に限らず、国民全員にPCR検査をすべきだとの意見が聞かれるが、そこには検査の誤判断リスクが「ゼロ」という前提がある。正式な数字はないため政府関係者もはっきり言わないし、テレビなどでも言及されないのだが、誤判断の確率はだいたい3~5割だ。簡易検査だとこれをさらに上回る。というわけで、筆者は「誤判定50万人」とツイートしたのだ。

 誤判定50万人が出ると再検査が必要になるが、再検査でも誤判定はある。1割としても、まだ5万人の誤判定になる。

 これまでのデータからすると、100万人を無作為に選んだ場合、実際に感染している人はおそらく10人程度であろう。その10人を探すために貴重な医療資源が使われて誤判定が繰り返され、結果として医療現場が崩壊する。来院者の中には本当の感染者もいるので、感染は加速する。それが現実に起きたのがイタリアや韓国だ。

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長
 全国民にPCR検査をすべきだという人の多くは、誤判断リスクが大きいという事実を知らないのかもしれない。しかし、「リスクゼロであるべきだ」という前提の人もいるようだ。そうした意見を唱えることはありえるが、実際にはリスクゼロはないので、それを前提としてはいけない。

 しかし、事実を伝えると逆ギレし、極端な行動に出る人もいる。原発について、リスクがゼロではないと言うと、「リスクが大きいのなら即時廃止すべきだ」と主張する。豊洲市場でも、「地下水が飲料に適さない(リスクはゼロでない)」というと、「リスクが大きいので豊洲市場廃止、開場延期だ」と騒ぎ立てた。

 原発は短期的なリスクはゼロではないがほぼゼロだ。長期的なリスクは対処するための保険料負担が無視できないので、新設を禁止するのは分かるが、即時廃止は合理的ではない。

 豊洲市場の地下水も飲料には適さないとしても、適切な措置をすれば地上の生活の安全には問題ないという意味で管理できないリスクではないので、開場延期までする必要はなかった。

 いずれもリスクについて、「ゼロでないのなら大きいはずだ」という雰囲気に流されず、定量的に理解していれば判断を間違うこともなかっただろう。

 新型コロナウイルスの全数検査の件でも、誤判定率が3~5割などと具体的に示しておけば、無駄な議論は避けられたはずだ。

 冒頭の孫氏の申し出は、恐らく善意だったのだろう。検査提供にお金を投じるよりも、ワクチンや特効薬の開発に寄付するほうがより社会のためになると筆者は思っていたが、孫氏は検査を撤回した後、「マスク100万枚の寄付」に切り替えたようだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ウイルスの特性を知れば、PCR検査の誤判定の率が高さを理解できる(゚д゚)!

PCR検査をできるだけ実行すべきと主張する方々は、正しく判定される率が100%かそれに近いと無意識に思われているのではないかと思います。しかし、これは間違いであり、誤判定率が3〜5割もあるのです。

なぜ、そのようなことになるかというと、ウィルスのやっかいな性質によるものです。ウイルスは細菌とは違います。

ウイルスは生物ではなく、遺伝情報が入ったカプセルに過ぎず、それ単体では増えることはありません。つまり人間が簡単に培養することはできません。



それでも、無理やりウイルスを「培養」しようというなら、何らかの細胞にそのウイルスを「感染」させて、その細胞の工場機能を使って増やしてやるしか手がないのです。

「ウイルス」には「遺伝情報」が入っているだけ、DNAやRNAと呼ばれる「核酸」に、自身のたんぱく質合成のレシピが書かれているだけの、生命のかけらに過ぎないのです。

もし何らかのウイルスに感染しているかどうか、調べようとしても、微量であれば私たち人間は、確認することができません。

しかし、これがウィルスでなくて、細菌、雑菌等の「ばい菌」の類であれば、生きているので培養地に植えつけてやれば、カビのように増えてくれるので、検査しやすくなります。

とはいいつつ小さなばい菌で、定かに目で見ることは難しいです。そこで「グラム染色」などの方法によって識別しやすいようにしたうえで、顕微鏡で観察し、同定していきます。

ところが「ウイルス」単体は、遺伝情報の書かれた物質ですから、そのままでは増えません。

精子や卵は生きていますが、それでも受精しなければ育つことはありません。ここから遺伝子だけを取り出してカプセルに入れたような形が、ウイルスの実態に近いのです。

単体では増殖することははなく、何かに寄生しないと増えることができません。

そこで「ウイルス」を増やすために「細菌に風邪をひかせる」ような「細菌を用いたウイルス培養」が行われます。

より正確には、適切に働いてくれる細菌細胞などを見つけてきて、可哀そうですが、その細菌たちにコロナウイルスなどを「接種」して感染させ、そこで増やして、私たち人間が確認できるところまで増殖させる、というような手順が必要になるのです。

ところが、そうした増殖系細菌細胞が見つかっていない、今回のような「新型コロナウイルス」のような場合には、遺伝子そのものを調べなければ、分かりません。

しかし遺伝子は物質の量としては本当に極微量なので、何らかの方法で、私たち人間が巨視的にチェックできるところまで、増やさなければ、調べることはできません。

そのために用いられているのが、最近 マスコミで報道されるようになった、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応法)というものです。

これは、遺伝子そのものを「ポリメライズ」つまりコピーして増やす酵素を使って、直接遺伝情報を読み出してやろうという革命的、画期的な方法です。

実際、発見者のキャリー・マリスは1993年度のノーベル化学賞を受賞しました。

私生活は破天荒とされるキャリー・マリス博士

ここで重要なことは、PCRは「遺伝子」を増やすということです。ウイルスそのものを増殖しているわけではありません。

ということは、適切に消毒され、周囲のボツボツカプセルが壊れた、残骸だけのコロナウイルスの「遺物」が残っているだけでも、それを「PCR」で遺伝子増殖させると、陽性反応が出てしまうことになります。

つまり、検査を受ける本人はウイルスに感染していなくても、そのDNAのかけらが採取され、増幅されてしまったら、検査結果は陽性となってしまうことがあるのです。

「偽陽性」発生の一つのメカニズムがここにあります。

コロナウイルスは「菌」ではなく「ウイルス」であること。ウイルスは単体では増殖ができず、新型コロナのような新参者は、細菌に接種・感染して増殖する方法が確立されていないこと。

そこで遺伝子を直接チェックして、確認同定するため、PCRという遺伝子チェックの方法に頼っているのが現状なのです。

しかし、この検査では、遺伝子だけを見ているので、ウイルスのカプセルが破壊されて、機能していなくても「PCR検査で陽性」と言われてしまうことがあるのです。

わかりやすい例えて言うなら、家の中のダストを分析したら、大昔に死んだおじいさん、おばあさんの毛髪が混ざっていて、そのDNAが検出されるようなものだと思ってください。

遺髪には、すでに生きていない人の遺伝情報だけはしっかり残っています。それを解読したからといって、死んだおじいさんやおばあさんが生き返ってくるわけではありません。

同じような原理的な困難が、PCR検査には伴っているのです。

コロナウイルスPCR検査の感度は、上記のように誤判断の確率はだいたい3~5割です。簡易検査だとこれをさらに上回ります。偽陰性、偽陽性もあり得ます。つまり、軽症や無症状の人に対しても広く検査を行うことは、偽陽性者の絶対数が増えることになり、感染率がいまだ低い状態下では、陽性的中率が低下します。罹患していないのに検査で陽性となる人が増えるのです。

そうすると、これらの人たちは必要ない隔離等を強いられることになります。現在では、陽性者は措置入院になることが多く、すぐに病院のベッドが埋まってしまって、重症者を受け入れられなくなります。そもそも、軽症の人は診断されても治療がありません。いずれは自宅待機になるでしょう。

限られた医療資源を活用するためには、検査前確率の高い濃厚接触のある有症状者や肺炎例に限って検査を行うほうが合理的です。このような考え方は、臨床に携わっている医師や専門医の共通した認識のようです。

【関連記事】

2020年3月17日火曜日

ノーベル賞作家、中国が「独裁国家」でなければ事態は違った 新型コロナ―【私の論評】中国に対する怨嗟の声が世界中から沸き上がり世界は大きく変わる(゚д゚)!


2010年ノーベル文学賞を受賞したマリオ・バルガス・リョサ氏

ペルーのノーベル賞受賞作家マリオ・バルガス・リョサ氏(83)が新型コロナウイルスの流行について、中国が民主国家であれば、新型コロナウイルスの流行は違う展開をたどっていただろうと言及した。(写真はマリオ・バルガス・リョサ氏)

 中国政府は16日、リョサ氏が「無責任で偏見に満ちた意見」を表明した可能性があるとして、同氏を非難する声明を発表した。

 2010年にノーベル文学賞を受賞したリョサ氏は最近スペイン紙パイスとペルー紙レプブリカに執筆した論説で「もしも中国が独裁国家ではなく自由な民主国家だったら、今世界で起きているようなことはどれも起きていなかったかもしれない、とは誰も指摘していないようだ」と記した。

 一党独裁国家で反体制派に容赦ない弾圧を加えていると人権団体などから広く批判されている中国は、このリョサ氏の言及に激怒し、在ペルー中国大使館が抗議声明を発表。

 「わが国は表現の自由を尊重しているが、そのことは恣意(しい)的な中傷や汚名を受け入れることを意味するものではない」と述べた。

 また中国大使館はリョサ氏に対し、「著名人として、無益で無責任、偏見に満ちた意見を広めないよう」求めると述べた。

 リョサ氏は同じ論説の中で、「少なくとも一人、あるいは複数の高名な医師が、十分に時間がある段階でこのウイルスを突き止めたにもかかわらず、中国政府は対応する措置を取る代わりに情報の隠蔽(いんぺい)を試み、そうした声、良識ある声を黙殺し、情報を抑え込もうとした。すべての独裁国家がそうするようにだ」とも述べている。

 リョサ氏はまた新型コロナウイルスは「中国が発生源」とも表現しているが、中国大使館はこれを「不正確」だと指摘。「世界保健機関(WHO)は現段階まで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源を特定できていない」と反論した。

 新型コロナウイルスは中国湖北省の省都・武漢の市場で発生したというのが大方の見解となっている。

【私の論評】中国に対する怨嗟の声が世界中から沸き上がり世界は大きく変わる(゚д゚)!

私は、中国は世界に謝罪スべきと思います。そうして、中国が世界に謝罪しなければならないのは、新型疫病が最初に確認された国だからではありません。中国が発生源だろうが、他のどこの国が発生源であろうと、中国が初期段階で情報隠蔽を行ったことで疫病が世界に蔓延したからです。

しかかし、中国は謝罪するつもりなど全くありません。それは、「人民網日本語版」の記事を見ても明らかです。この記事タイトルからして高飛車で、とても納得できるものではありません。

国営新華社通信は3月初め「正々堂々と言う、世界は中国に感謝すべきだ」とのタイトルの論評記事を掲載しました。「中国の巨大な犠牲や努力なくして、世界各国は感染と戦う貴重な時間を得ることはできなかった」と強調しました。

先に感染と戦った中国はその姿を見せ各国が対策を準備する時間を稼いでいた。感染が広がったのは、各国が中国の経験や教訓を重視しなかったからだ、ということになります。ネットには「中国は教科書だ」、「宿題を書き写すように」と自らを手本にすべきだとの声が見られます。宿題を書き写すとは「他人の方法を真似する」という意味で使われる表現で、「他国は中国が成功した感染対策をやるように」という意味です。

中国共産党の機関誌・人民日報(日本語版)は、“国際社会に感染拡大防止協力を促す習近平国家主席の言葉”との特集を掲載。1月以降に習氏が各国要人との会談などの際に話したとされる「感染情報を速やかに発表し、国際協力を深めなければならない」(1月20日)など多くの言葉を並べ、中国は国際社会に協力を促してきたと強調しています。

習氏を英雄化し感染源は中国ではないなどとアピールする背景には、国内の不満の高まりを抑える思惑があるのでしょう。中国政府が情報を隠蔽し、警告を鳴らす医師らの声を封じ込め、対策が遅れて感染が拡大したとの不満は国民の間でも強いです。

多くの人が犠牲になったことを国民は忘れていません。現地の様子を伝えるジャーナリストの声も封じ込める言論の自由の抑圧にも怒りが高まります。封鎖が2ヶ月近く続く武漢など湖北省では住民が怒りの声をあげる例も出てきています。

習氏は武漢訪問の際、「武漢市民は英雄だ」と持ち上げ、「自宅待機が長くなり不満の一つも言いたくなるのは理解できる」と、不自由な生活にストレスを溜める市民に配慮する姿勢さえ見せました。しかし今後、経済的な影響も出てくれば、さらに国民の不満の声に直面することになります。批判をそらすための国内外へのアピールは続くでしょう。

中国が言うように、日本や世界各国は中国の状況を見ながら“明日は我が身”とどのくらい考えていたでしょうか。中国の都市封鎖や監視による隔離などを「自分の所ではあり得ない」と考えていなかったでしょう。いまイタリアでは医療崩壊が起き、世界各地で都市機能を停止させる対策が始まっています。

これらは、すべて中国を信用したことが原因なのです。12月末から1月あたりには、ちらほらと新型ウイルスが中国で発生しているかもしれないということは言われていました。しかし、まさか中国が2ヶ月近くもこれを隠蔽するとは、大方の国々が考えていなかったのです。

ここに大きな油断がありました。中国では、2002年11月中旬に中国広州地域でSARSが発生しました。しかし、翌年2月11日で、広州地域の患者数は300人に達していました。3月に入り、中国国内および周辺の複数の国から「原因不明の急性呼吸器系疾患」が相次いでWHOに報告され、その疾患であるSARSは、その後アジアを含めた世界各地に拡散、短期間の内に患者数が激増し、大きな社会不安が引き起こされました。

WHOの集計(2002年11月~003年7月31日)によると最終的には感染者数8098例、死亡者数774例で死亡率9.6%に達しました。中国政府の隠蔽により、WHOに報告されたのは2月11日と発生から約3ヶ月も経過し、対応策が遅れたことが、急拡散の要因でした。

SARSを警戒し、感染予防のマスク姿が目立つ香港便の乗客たち=平成15年4月、関西国際空港

この時は江沢民がなんとか胡錦涛政権にバトンタッチする時(2003年3月の全人代)まで公表を延ばし、胡錦涛のせいにしようとしたために、公表を恣意的に遅らせたとみられています。これも、とんでもないことですが、中国では当たり前のことなのです。中国は諸外国なとは関係なく自分の国の都合で動く国なのです。

この時に、中国は世界中から非難されました。このときにかなり批判されたので、中国も少しは反省したのではないかとの油断が、多くの国々にあったのだと思います。

本来ならば、多くの国々が中国が正式発表しないことなど全く信用せず、最初から疑いの目で、色眼鏡でみて、すぐにでも対策を講じるべきでした。しかし、ここに伏兵がもう一人いました。それがWHOのテドロス事務局長(エチオピア人)、WHOは30日夜ようやく緊急事態宣言を出すも、中国への渡航・交易制限を否定し、むしろ中国の努力を評価した。事務局長と習近平のチャイナ・マネーで結ばれた仲が、人類の命を危機に向かわせていたのです。その罪は重いです。

WHOのテドロス事務局長と習近平

WHOのテドロス事務局長(エチオピア人)と習近平国家主席とは入魂の仲である。テドロスは2005年から2012年まではエチオピアの保健大臣をしていたのですが、2012年から2016年までは外務大臣を務め、中国の王毅外相とも非常に仲が良いです。

エチオピアは「一帯一路」の要衝の一つで、たとえば鉄道建設などにおいて中国が最大の投資国(85%)となっています。チャイナ・マネーなしではエチオピアの国家運営は成り立たないのです。そのことを熟知している中国は、それまでの香港のマーガレット・チャンWHO事務局長の後任選挙でテドロスの後押しに走り回ったのですが、2017年5月23日のWHO総会における選挙で見事に成功している。中国の狙い通りテドロスが当選し、2017年7月1日に事務局長に就任したのです。

前任のマーガレット・チャンに関しても中国が水面下で動いていたが、習近平政権になってからのチャイナ・マネーの威力は尋常ではありません。

前任のマーガレット・チャンに関しても中国が水面下で動いていたが、習近平政権になってからのチャイナ・マネーの威力は尋常ではありません。

WHOがこの有様で、中国の大きな影響下にあるため、緊急事態宣言が遅れたことも武漢ウイルスを世界に蔓延させることにつながったのです。

多くの国々の指導者達は、エチオピアと中国との関係など意識しなかってでしょう。特に大事なウイルス感染初期段階にはそうで、すぐには思い切った手が打てなかっのでしょう。

武漢ウイルスの蔓延は、中国とWHOにあるのは明らかです。死者もすでに多く出ており、これからも死者が出る可能性もあります。現在は、各国がウイルスの蔓延に対処することに注力していますが、一旦落ち着いたり、終息した場合には、世界各地で中国とWHOに対して、批判などではなく、怨嗟の声があがることでしょう。


親しい人、愛する人を失った人々、感染してひどい目にあった人たち及びこれらに惻隠の情を禁じえない人々は、この不条理を生涯忘れないでしょう。自分の過ちを認めない、上から目線の中国共産党に対しては、世界中の多くの人々がこれを認めないでしょう。米国の対中国冷戦は、世界中の多くの国民から支持されることになるでしょう。たとえ、自国の政府が親中的であったにしても、支持するでしょう。

このような事態に遭遇した人たちは、ウイグルやチベットの人々に対してもさらに深い理解を示すようになるでしょう。迫害されている他の中国人民の気持ちも理解できるでしょう。

日本では、習近平の国賓待遇での来日は延期されましたが、仮に世界でウイルス感染が終息(WHOルールに基づき、終息とは「新規感染者数ゼロが4週間続くこと」)した後に招くことになったとしても、多くの日本国民は許さないでしょう。そんなことをすれば、自民党が命脈を絶たれ再び下野するか、少なくとも自民党内の親中派は次の選挙で日の目を見ることはなくなるでしょう。

習近平は、武漢ウイルスのマイナスダメージを天皇拝謁で払拭しようとするでしょうが、そのようなことに天皇陛下をみすみす利用させてしまう政府、もしくは政府内の親中派を決して日本国民の多くは許しはしません。

こういう怨嗟の声は、今後の世界を大きく変えることでしょう。

【関連記事】




2020年3月16日月曜日

見えてきた「新型コロナ終息」のタイミング…東京五輪に間に合うか?―【私の論評】日本は速やかにかつてないほどの積極財政と金融緩和策を実行しなければ、とんでもないことになる(゚д゚)!

政府のかわりに、データから予測する

「先行き不安」いつまで続くか

先週、内外の株式市場は大波乱だった。連日パニックになっているようだ。筆者は仕事柄、日頃から欧米のニュースを見ているが、話題は新型コロナウイルス一色だ。ほとんどの国で外国からの入国制限措置が取られ、イベント、遊園地や学校の休校と、少し前の日本での大騒ぎとほとんど同じである。

一部の国は入国制限を日本より強烈にやったので、一般国民の生活に大きな影響も出た。この結果、アメリカ株式市場は大乱高下している。恐怖指数(株式市場のボラティリティ予想)は80近くに達しており、リーマンショック時に近づいている。



リーマンショック時には、サブプライムローン問題により多くの金融機関が倒産した。倒産した金融機関が、すぐに復活するはずもない。アメリカ政府の財政支援の後、消え去った金融機関もあり、長い期間をかけて再生した金融機関もあった。

そして、アメリカ政府による積極財政と大規模な金融緩和政策が実施され、ダウ平均は半年後で底値となり、2年あまりでリーマンショック時の水準を回復した。

一方日本では、政策発動が遅れたばかりか、2009年の民主党への政権交代、2011年の東日本大震災などの影響もあり、日経平均は長らく振るわなかった。株価回復には、民主党から自民党安倍政権への政権交代を経て5年を要した。

今回の新型コロナショックの本質は、先行き不安である。人の移動制限による観光業への痛手は大きく、イベント休止など、目に見える形で「需要」が消滅している。

ただ救いといえるのは、まだ企業の倒産がそこまで顕在化していないことだ。需要の消滅も当面のものと考えられるので、感染拡大が落ち着き、ワクチンなどが開発できれば、再び経済も活発化してくるだろう。

こうした意味で、当面の企業倒産リスクを防止するとともに、一時的な需要の消滅を解消するために、可処分所得を増加させるような財政政策の発動が求められる。

「消費減税」もありうる

こうした状況において3月14日、安倍首相が記者会見し、「今後も必要かつ十分な経済財政政策を間髪入れず講じる」とした。具体的に消費減税などの可能性について述べたわけではないが、少なくとも「自民党内の提言を踏まえる」とし、否定はしなかった(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0314kaiken.html)。

消費減税については、水面下でいろいろとあるようだが、麻生財務相が13日の記者会見でかなり明確に否定した(https://www.sankei.com/economy/news/200313/ecn2003130032-n1.html)。それを安倍首相がやや引き戻した感じだった。

コロナショックで経済対策を打つことは決まっているが、はたしてどのような規模になるか、そこに消費減税が含まれるかどうかは、今後の政治次第であろう。

筆者は本コラムで、消費増税→コロナショック→東京五輪(中止・延期)ショックという最悪のシナリオをかなり前から懸念していた。そしてそれを防ぐために、消費減税を含むかなり大規模な経済対策の必要性を書いてきた。

そうした主張は、新型コロナウイルスの状況や五輪の検討状況からある程度理詰めで導出してきたが、今回は、新型コロナウイルスの今後の経過を考えてみよう。

「長期化」の具体的見通しは?
新型コロナウイルスは中国だけでなく、まず韓国、ついでイラン、イタリアやフランスなどでも爆発的に広がり、日本の専門家会議も長期化の可能性を指摘している。

現在はイベントの自粛や学校の休校、中韓からの入国規制といった措置が続いているが、今後どこかのタイミングで通常の生活に戻したほうがいいのか、それとも自粛や経済活動縮小も長期化を覚悟するべきか。

政府は2月26日、「この1~2週間が感染拡大防止に極めて重要」としてイベントなどの自粛を要請した。3月10日には、さらに10日間程度この自粛要請が延長された。

各国の感染状況については、新規感染者数を毎日丹念に追って見ていくのが基本だ。

新型コロナウイルスの発生元である中国では、2月中旬ごろにピークを超えたとの見方もあるようだが、2月中でも少なくとも3回の統計方法の変更があり、情報の信頼性が乏しく定かではない。習近平主席が号令をかけてウイルスが終息するわけでもない。いい加減なデータから中国の状況を過信し、日本が入国制限を解除したら、国益を保てない。

韓国はようやく落ち着いてきたが、イラン、イタリア、フランスなどでは依然感染拡大が落ち着いておらず、予断を許さない状況だ。

日本はそこそこ頑張っている

各国の状況は、下図のとおりだ。


この図の縦軸は、対数目盛である。つまり、目盛が一つ上がると桁数が一つ上がる。各国の数字から、おおよその傾向が見えてくる。

図の中で、「欧米・イラン・韓国」と「台湾・シンガポール・日本」の傾きが、明らかに異なっているのがわかる。こうしてみると、本コラムでも書いたように、日本はクルーズ船対応ではやや手違いがあったが、それなりに健闘している。台湾・シンガポールが優クラスとすれば、その次くらいの良クラスといえるだろう。

こうした評価をすると、「日本は検査数が少なすぎるから感染者数も少なく出ているのだ」という批判が必ず出てくる。筆者も、もう少し余計に検査すれば感染者数がやや多くなることは理解できるが、医療のキャパシティという事情もある。これは、3月2日の本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70767)を読んでほしい。

筆者も感染者数のデータだけを見ているわけではない。死亡者数や検査での陽性率などのデータも見ている。それらを国際比較すれば、結論としては、検査を増やしても、日本の感染者数の桁が変わるほどの顕著な違いは出ないと思う。

こうした意味でも、縦軸を対数目盛として各国を比較することに意味がある。日本はそこそこ頑張っていると評価できるだろう。

日本はこれからどうなる?

問題は、これから日本の状況がどうなるかだ。

これは極めて難しい問題だ。14日の安倍首相の記者会見について、一部野党から「終息予測を回避している」という批判があった(https://www.sankei.com/politics/news/200314/plt2003140032-n1.html)。

こうした批判を言うのは簡単だが、実際にいつごろ終息するのかをきちんと考えるのは難しい。

筆者が政府内にいたら、足を引っ張られるので正式には言わないだろう。ただし、今は自由な立場なので、本コラムで明かしておこう。

これは、感染者数予測モデルから計算することが可能だ。WHOルールに基づき、終息とは「新規感染者数ゼロが4週間続くこと」を指すとしよう。こうして厳密に言葉を定義しないと、計算できない。一部野党の議員などは、こうした定義もおそらく知らずに暢気に批判しているのだろうから、気楽なものだ。

これまでの厚労省データから、国内の累積感染者数について、筆者は次のように予測している。これは、筆者の「ドタ勘」も含まれたものだ。


ここから、新規感染者数を予測すれば、次のようになる。


筆者は、各種の移動制限が功を奏しているものの、ピークが後ズレしているので、今月中旬頃にピークが来ると予想している。そうであれば、4月上旬には新規感染者数が落ち着き、4月下旬から5月上旬にはあまり見られなくなると予想できる。各種の自粛や規制は、今月下旬か月末までが一つのメドになるだろう。

正直、あまりフィットしていないので、手持ちのデータから予測するのは心苦しいが、それでもおおよそのことはわかると思っている。少しでも今後の見通しを立てる一助となれば幸いだ。もっとも、筆者の予測は自己責任で扱ってほしい。あくまで、現在の施策が継続するとして機械的に計算したものだ。もちろん、時期もピンポイントではなく前後に一定の幅を持って見るべきものだ。

日本で「終息」といえる時期は、どう頑張っても、5月下旬から6月上旬にならざるを得ないだろう。もちろんそのときには、世界ではまだ「終息」していないことは言うまでもない。

まだ拡大のピークを迎えていない欧米で、強烈な規制が行われている。入国制限、イベント・スポーツ大会中止、学校休止など、日本と同じ政策が実施されている。どこの国でもやることは似たようなものだ。

こうなってくると、東京五輪にも暗雲が出始めた。リーマンショック時と同じような経済対策が必要になっている。

【私の論評】日本は速やかにかつてないほどの積極財政と金融緩和策を実行しなければ、とんでもないことになる(゚д゚)!

3月14日、首相官邸で開いた記者会見で、安倍首相は武漢ウイルスの感染拡大を受け、感染拡大防止に力を注いだうえで「機動的に必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れずに講じる」と強調しました。3月末に2020年度予算が成立次第、安倍首相は正式にその策定を指示する見込みです。

まだハードデータは少ないですが、足元の景気は広範囲にわたって急速に悪化しています。景気ウオッチャー調査(2月分)現状指数は27.4で、前の月から▲14.5pt悪化(消費税率が8%に引き上げられた2014年4月以来の大きな下落幅)、3月1~9日の東海道新幹線の乗客が前年同期比▲56%減と、びっくりするような数字が出始めています。自粛が一気に広がった3月のハードデータが明らかになる4月には、かなり広範囲にわたって経済活動が急速に収縮している姿が明らかになるでしょう。



3月15日、西村経済財政・再生相はテレビ番組に出演し、武漢ウイルスの拡大が日本経済に与える影響について、「リーマン・ショック並みか、それ以上かもしれない」との認識を示した上で、「インパクトに見合うだけの、それなりの規模のものをやらなくてはいけない」と発言しています。

2008年のリーマン・ショックは、生産などが3割以上減少するなど、実体経済に甚大な影響を与えました。その際、2009年4月に麻生内閣が出した経済対策は、事業規模で56.8兆円(真水115.4兆円)に上るものでした。安倍第二次政権における最大級の経済対策は、2016年8月「未来への投資を実現する経済対策」であり、事業規模は28.1兆円(真水6.2兆円)でした。今回策定される経済対策も、これらと同程度か、それ以上の規模が視野に入ってくるでしょう。

今回の対策は、感染拡大防止・医療体制強化、危機対応(できるだけ失業、倒産を回避する策)、需要喚起策などが柱となるでしょう。

現在、報じられている需要喚起策は、現金給付・クーポン支給策、テレワーク強化、観光業や外食産業を盛り上げるキャンペーン、企業の生産ラインの国内回帰を支援する策などです。

これだけ国内の消費活動が落ち込んで来ると、新型コロナウイルスが少し落ち着き始めた際には、消費行動を強烈に後押しする策が必要になるでしょう。現金給付や所得税減税なども検討の俎上にのせられるでしょうが、それらは貯蓄に回りがちなため、より積極的に消費者の背中を押す仕組みが必要になってきます。

実効性のある経済対策が出てこない限り、投資家の慎重姿勢は変えられず、金融市場も落ち着きません。今後、需要喚起策や生活支援策として、消費税の引き下げが焦点となるでしょう。安倍首相は、自民党の一部議員が訴えている消費税の税率引き下げについて、「何をすべきかはこうした提言も踏まえ、さまざまな可能性を想定しながら、経済財政政策を間髪を入れずに講じていきたい」と述べています。

ここで、注目しなければならないのは、慢性デフレ下の消費税増税という安倍晋三政権の自滅策です。増税は家計を圧迫し、内需を萎縮させ、前述した負の連鎖をより強固にする。12年12月にアベノミクスを始動し、円安、株高に誘導したものの、14年4月、そして19年10月の2度にわたる税率引き上げで内需を殺しました。

昨年10~12月期の国内総生産(GDP)第2次速報値は前期比年率7・1%減にも及ぶ。そこに新型コロナ・ショックの追い打ちだ。安倍首相は自身のメンツにこだわらず、増税の失敗を認め、大型消費税減税を打ち出すべきなのです。

安倍総理は、大型消費税減税を打ち出すべき
さらに、金融政策に関しては、以前のこのブログでも主張したように、FRBが利下げするのですから、日銀としては、利下げはもうできないので、量的緩和を実行すべきなのです。そうしないと、円高と深刻なデフレを招くのは必定です。

日本は、かつてない規模で、積極財政と量的金融緩和策の両方を速やかに実行しなければ、とんでもないことになります。

【関連記事】


沈むハリウッド、日米コンテンツ産業逆転の理由 ―【私の論評】ポリティカル・コレクトネスに蝕まれたハリウッド映画の衰退と日本のコンテンツ産業の躍進

沈むハリウッド、日米産業逆転の理由 ■ Forbs Japan日本編集部 まとめ 日本のコンテンツ産業、特にアニメが国際的に人気を博しており、非英語番組の需要が増加中。 米国のZ世代は日本のアニメを好み、動画配信やゲームの普及がブームを加速させている。 日本のコンテンツ全体が注目...