2021年6月19日土曜日

中国による台湾の軍事的占領、近い将来起こる公算小=米軍トップ―【私の論評】「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対する米軍の「政治的メッセージ」(゚д゚)!

中国による台湾の軍事的占領、近い将来起こる公算小=米軍トップ

マーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)

米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)は17日、中国が必要とする軍事力を開発するには時間がかかるため、中国が近い将来、台湾を軍事的に占領しようとする可能性は低いと述べた。

議会で、台湾は依然として中国の核心的利益として位置付けられているが、「軍事的に行おうとする意図や動機は現時点でほとんど見られない」と指摘。「軍事的に行う理由はなく、中国側も認識している。そのため、近い将来に行われる可能性はおそらく低い」とした。

また、中国が軍事的手段によって台湾全体を掌握するために必要な軍事力を備えるには「まだ道半ば」と語った。

台湾国防部(国防省)は15日、中国の戦闘機など28機が台湾の防空識別圏に侵入したと発表していた。

【私の論評】「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対する米軍の「政治的メッセージ」(゚д゚)!

「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が3月9日、米上院軍事委員会の公聴会で行った証言です。同時期に日米の外務、防衛閣僚が集まった協議(2プラス2)の共同声明も「閣僚は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した」とうたいました。

そのためもあってか、最近台湾危機を懸念する声が急速に高まっています。ただ、このブログでは一環して、中国は台湾を奪取できない旨を主張してきました。

デービッド司令官の公聴会に先立つ昨年2020年9月1日、アメリカ国防総省(DOD)が「中華人民共和国を含めた軍事・安全保障に関する2020年版報告書」を発表しました(DOD Releases 2020 Report on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China)

報告書はミサイルと造船技術に焦点を当て、ミサイルについては、中国軍が射程500~5500キロメートルの中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていないと指摘しました。米国は元ソ連時代からロシアと締結してきた中距離核戦力(INF)廃棄条約に拘束されてきたからです。

したがって、もし米中が軍事衝突に至った場合、米軍は中国軍に勝つことができない恐れがあると報告書は書いています。中国軍が中距離ミサイルの大量発射という手法で、グアムや在日米軍基地を攻撃した場合に、米軍には抵抗手段がないというのが報告書の見方です。このままではインド太平洋地域における米軍の優位は保たれないと強い危機感を表明しました。

そのインド太平洋に関して、今年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が米上院軍事委員会の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言したのです。このブログでは、大陸中国が台湾と戦えば、台湾単独でも大陸中国は甚大被害を被ること、台湾に日米やQuadが協力した場合、中国の台湾奪取は事実上不可能と、様々な証左をあげつつ主張してきました。

米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官

ところが、報告書ならびに、デービッドソン司令官の証言は、米国は中国に負けると言っているのと同じです。なぜ、そのような主張をしたのでしょうか、それにはそれなりの理由があるものと考えられます。

今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言したデービッドソン司令官が、公聴会で「(中国が)やろうとしていることの代償は高くつくと中国に知らしめるために、オーストラリアと日本に配備予定のイージス・システムに加え、攻撃兵器に予算をつけるよう議会に求めた」ということに注目しなければならないでしょう。

これは、「中距離弾道ミサイルの日本配備」を求めているということです。

米露間にはINF廃棄条約があったため、中国軍が中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていませんでした。さらには、最近ではロシアもこの条約を破り、中距離弾道弾の配備をすすめています。

そこでトランプ元大統領はINF廃棄条約から脱退し(2019年8月2日)、米国も自由に製造することができるようにして、ポストINFを配備してくれる国を探していました。韓国の文在寅大統領は習近平に忖度して断ったのですが、オーストラリアの首相は親中派のターンブル氏から嫌中派のモリソン首相に替わったので、候補地としてはオーストラリアと日本ということになりました。

6年以内に中国が台湾を武力攻撃すると言ったのは、日本には尖閣諸島があり、すぐさま影響を受けるだろうことを示唆したものです。日本が自国を守りたければ、矢面に立つ覚悟を持てという意味で、「米軍は中国軍より弱い」と誇張して、本気で「中国軍に脅威を感じている」と日本にシグナルを発したのです。

ただし、現実には台湾にも多数の中短距離ミサイル、対空ミサイルが多数配備されているので、中国が台湾を奪取しようとした場合、台湾単独で戦ったにしても、大陸中国はかなりの損害を被ることになります。

最新型といわれる中国の戦闘機でもステルス性が低くくステルス性においては、米軍の第一世代と同程度ともみられていますので、中国が台湾に航空部隊を派遣した場合、そのほとんどが台湾に撃墜されることになります。

さらに、台湾が中距離ミサイルで中国国内の三峡ダムや重要拠点などに対して、ミサイルによる飽和攻撃を行った場合、大陸中国も甚大な被害を被ることになります。

これに、日米が加勢した場合、特に海戦においては、中国は日米に比較して、圧倒的に対潜哨戒能力と潜水艦のステルス性に劣っている、一方日米は中国より数段優れた世界一の対潜哨戒能力を持っているのと、日本は静寂性に優れた潜水艦隊を持つことと、米国は静寂性には劣るものの、強大な攻撃力を持つ原潜を多数保有していることから、海戦では圧倒的に中国が不利であり、日米は有利です。

世界一ステルス性が高いとされるB2爆撃機(手前)

さらに、航空戦においても、米国はステルス性の高い最新鋭の戦闘機を多数配備しており、中国はこれを発見することはできません。一方、中国の戦闘機はステルス性が低く、日米は容易にこれを発見でき、地対空ミサイル、空対空ミサイルで、ほとんどが撃墜されることになります。そうなると、航空戦でも、日米はかなり有利です。

中国がいくら、中短距離ミサイルを多数所有していたにしても、その他いくら優れた兵器をもつていたにしても、ステルス性の高い航空機を撃墜したり、ステルス性が高い潜水艦を撃沈することはできません。敵を発見できなければ、攻撃することはできません。

昨年は4海域で、大規模な軍事演習を行いました、しかし最近の人民解放軍は軍事演習が目立たなくなりました。台湾侵攻をちらつかせたにもかかわらず、人民解放軍の動きは止まっています。これが、本気なら軍事演習を継続するべきです。米軍は人民解放軍の実状を見抜いたようで、台湾に米軍機を入れました。これは米軍が中国を確認するための派遣だと思われます。

おそらく、人民解放軍は物資不足で動けないのでしょう。現代の陸軍2万人規模の一個師団であれば、1日で2000トンの水・食糧・その他を消費します。空軍が陸軍の一個師団を火力支援するなら、一日で弾薬も含めて4000トン消費するのです。つまり、セットで6000トン消費するのです。

作戦規模が大きくなれば、5倍や10倍の消費になるのは当たり前です。この消費に耐えるように、各国は常に生産・輸送・備蓄・補給を行います。消費と同時に備蓄も進めるので、生産ができなければ対応困難となります。

昨年中国は4海域で大規模な軍事演習を行ったが今年は鳴りを潜めた

軍事演習ですら、最近実施しないというか、物資不足で実施できないような中国の実態をみれば、中国による台湾奪取など途方も無い妄想ともいえます。そもそも、兵站を維持できなければ、台湾に上陸してもすぐに奪還されることになります。

それに、ステルス性の高い日本の潜水艦や、ステルス性の高い日米の戦闘機、攻撃力の高い米潜水艦が台湾を取り囲んでしまえば、人民解放軍の上陸部隊は、台湾に上陸する前に殲滅されてしまいます。

日米とも軍は愚かではないので、初戦で、空母打撃群や艦艇を大々的に台湾に派遣するなどことはしません。初戦は日米対中国の潜水艦隊決戦になるでしょう。これにも、中国は惨敗することになります。さらに、航空機も駆逐し、場合によっては中国国内の軍事拠点も破壊した後の詰めの段階ではじめて米軍は空母打撃群を派遣することになるでしょう。

仮に人民解放軍が台湾に上陸できたにしても、補給ができずに、上陸部隊はお手上げになってしまいます。そうなると、どう考えても、現状でも、米軍が中国負けるなどということは考えられません。

やはり、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官の「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対して「中距離弾道弾」を配備せよとの「政治的メッセージ」と考えるほうが筋が通っています。

やはり、今回の米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)の主張する、中国が必要とする軍事力を開発するには時間がかかるため、中国が近い将来、台湾を軍事的に占領しようとする可能性は低いという発言のほうを米軍の公式見解とみるべきでしょう。

ただ、中国の中短距離弾道ミサイルは、確かに台湾や日本の不安定要因になるのは明らかであるため、日本も中短距離弾道ミサイルの配備をすすめるべきでしょう。中国は台湾を奪取することはできませんが、それと中国の中距離弾道ミサイルの脅威とは別問題です。日本も対抗手段を持たなければ、中国のコスト強要戦略」等に脅かされることになります。

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2021年6月18日金曜日

「自民党の風当たり強くなる」有本香氏のコラム「以読制毒」詳報で波紋 対中非難決議見送り 本紙ツイッターには「日本人として申し訳ない気持ちだ」―【私の論評】中国共産党と似ている自民媚中"三人組"(゚д゚)!

「自民党の風当たり強くなる」有本香氏のコラム「以読制毒」詳報で波紋 対中非難決議見送り 本紙ツイッターには「日本人として申し訳ない気持ちだ」

17日発行の夕刊フジに掲載された有本香氏のコラム「以読制毒」の紙面
 中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を非難する国会決議案が通常国会で採択されなかったことについて、ジャーナリストの有本香氏が17日、夕刊フジの人気連載「以読制毒」で明かした内幕と、痛烈な批判が波紋を広げている。7月4日投開票の東京都議選や、次期衆院選を見据えて、自民党内でも早急な決議を求める声が浮上している。

 「日本人として申し訳ない気持ちだ」「民主主義はどこへ」「自信をもって投票できなくなる」

 有本氏のコラムを紹介した本紙編集局ツイッターには、このような返信が殺到している。18日午前9時現在、4700以上の「いいね」と、1900以上のリツイートを記録している。

 対中非難決議案は、全野党から承認を得ていたにもかかわらず、国会提出が見送られた。

 注目の「以読制毒」で、有本氏は「自民党関係者と支持者らは『公明党が潰した』という。しかし、ほぼすべての事情を知る筆者はそう思わない」といい、文案への「承認」サインを求めた自民党の下村博文政調会長と古屋圭司元国家公安委員長らと、同党の二階俊博幹事長と林幹雄幹事長代理による応酬を伝えている。都議選での公明党との連携を見据えて、二階氏のサインを制止したのは林氏だという。

 同席した自民党議員も17日、ネット番組で前出の経緯を認めている。

 今回の非難決議見送りには、自民党内で不満が噴出している。

林幹雄幹事長代理

 自民党中堅議員は18日朝、「英国での先進7カ国(G7)首脳会議でも、中国に『人権や基本的自由』を尊重するよう求める共同声明が採択された。日本の国会が声を上げられないのは、おかしい。党内でも『なぜだ!』と憤っている議員は多い。自民党を批判するネットの反応は無視できない。衆院選前の臨時国会で速やかに決議をするくらいのスピード感でいかないと、自民党への風当たりはもっと強くなる」と語った。

 別の自民党ベテラン議員は「戦略が間違っていた。最初から公明党と自民党二階派を巻き込み、アプローチしていればよかった。通常国会の閉幕間際に焦ったように決議案提出を目指した議連側は動いていた。全会一致で決議したいなら、決議案の文面もハードルを下げるべきだった。今回は自民党が悪い。自民党支持層が怒るのも、もっともだ」と語った。

 自公与党は今後、どうするのか。

 公明党の北側一雄副代表は17日の記者会見で、「(公明党が)決議を止めたという話は全くない。自民党がまず党内で一致しないといけないが、最終的にそこまでに至らなかったと認識している」「自民できちんと取りまとめられたら、公明としてもしっかり受けて議論していきたい」と語った。

【私の論評】中国共産党と似ている自民媚中"三人組"(゚д゚)!

先の先進7か国首脳会議(G7サミット)では、欧米各国に比べ、日本の中国に対する姿勢が際立って弱いことが浮き彫りになったばかりでした。G7中、我が国だけは中国と隣国であり、常に軍事的脅威にさらされているだけにほかの6国とは地理的な事情が大きく違うのですが、それにしてもあまりに及び腰すぎます。

G7

自民党内にも情報戦のようなものがあるようです。まずは自民執行部で唯一、対中非難決議を推し進め、公明から警戒された下村博文政調会長が逆に最終段階で「下村が決議を止めている」との酷い偽情報が流布されていました。

下村氏は党の外交部会まで使い自民をまとめる異例の戦略を採った立役者です。それでも決議は公明の反対で葬られたのです。これが中国の属国日本の姿といえるかもしれません。

公明党を除き全政党賛成の対中非難決議が公明の反対で遂に採択できず。「人権侵害の状況は深刻さを増しているのに」と反発した自民下村博文政調会長と森山裕国対委員長は「公明党の議論が進んでいない。反対ではなく慎重に議論する」とし「中国と一体化の公明に蹂躪される自民党」と言及しました。 

さらに「自民執行部の“媚中3人組”二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、森山裕国対委員長が最終段階で見せた醜悪な姿を忘れまい。彼らが自民を牛耳る限り公明の意見は“絶対”。つまり日本の政策は中国共産党の意向の反映。対中制裁で人権の闘いを国際社会が展開中しても非難すらタブーの日本。先人に恥ずかしい」と嘆いていました。

本当に情けないです。自民には、親中的な公明が採択に及び腰だったことが見送りの原因との声がある一方、公明は閉会間近まで自民から正式な交渉の呼びかけがなかったとして、「根回し不足」(幹部)を指摘しています。

「根回し不足」どころか、林幹事長代理が、これを意識して止めたというのですから、問題外です。無論、止められる二階氏にも大きな問題があります。

二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、森山裕国対委員長

この三人、中国共産党に非常に似てきたと思います。まずは、一党独裁ということで、中国は多くの人民の意向など完璧に無視します。その不満のマグマがたまって、自らに跳ね返りそうになれば、城管、警察それで事足りなければ、人民解放軍で人民を弾圧して黙らせます。

日本は、民主主義体制ですから、さすがにそこまではできませんが、それにしても長期政権が続き、国民の声を聴くということをしなくなってきたという点では似ています。この三人と、中国共産党の違いは、民主主義体制と全体主義という政治体制によるものだけかもしれません。

この三人は、昨年の米ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、日本人の86%もが、中国に対して否定的な考えを持っていることが明らかになっていることなど気にもしていないのかもしれません。この三人も、自民党や公明党も、国民に顔を向けた政治をすべきです。

今回の決議案は、野党は全部賛成していたというのですから、この三人の態度は国民をないがしろにしていると言わざるを得ません。このようなことを平気でできるということは、中国共産党の人間と親しく交わっているうちに、知らず知らずに彼らの影響を受けているのではないでしょうか。

さらに、海外よりも、自国内を優先するということでも似ています。中国ではこのブログでも以前示したように、元々外交があまり重視されず、対外関係も自国内の都合や中国共産党の都合で動く度合いがかなり強いです。そのため、中国の外交政策は、ほとんどが失敗ばかりです。いっとき中国外交を「したたかな外交」と褒めそやす向きもありましたが、私自身は、昔から中国は外交ベタというか、外交劣等生だと思います。結局この三人も、党内事情などで、中国との対応を決めるなど、中国共産党と似た動きをしています。

また、中国共産党が内部で派閥闘争にあけくれるということでも、この三人は似ていると思います。彼らも、多くの議員を籠絡して味方につけたり、場合によっては恫喝してみせたりと、党内政治に明け暮れているようです。そのためでしょうか、中国共産党は夢のようなことを言うのですが、結局何をやりたいのかさっぱりわかりません。

戦略などなく、ただその時々で派閥抗争に勝利するために行動するというのが、中国共産党の本質です。その実自分たちは、「孫氏の兵法」の継承者であると悦にいっているところがあります。古代の戦略が現代に通用すると思っているところが、共産党の最大の弱点だと思います。この三人も腹黒く様々な姦計をめぐらして、権力を手中におさめていると悦にいっているところがあると思います。この点でも、中国共産党と似たり寄ったりのようです。

これは、私の推測ですが、きっとこの三人は中国大使あたりから、「中国共産党100周年が終わるまでは、"人権弾圧を非難する国会決議案"を通さないでください」などと依頼を受けたのかもしれません。実際、ジャーナリストの篠原丈一郎氏がそのようなことを語っていました。

もしこれが事実であれは、とんでもないです。

 13日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明では、ウイグル自治区での人権侵害に懸念が示されました。それだけに、抑制的な内容の決議案ですら採択に持ち込めなかったという事実は今後、与党に重くのしかかることになるでしょう。

 採択見送りが、中国の強硬な振る舞いを警戒する保守層の疑念を招く可能性もあり秋までに行われる衆院選への影響も軽視できないです。与党の人権問題に関する公約が力を失うとの見方もあります。

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2021年6月17日木曜日

米中戦争から英中戦争へ―【私の論評】新たな日米英三国同盟が、中国を封じる(゚д゚)!


中国は昨年は4海域で大規模な演習を行ったが今年は鳴りを潜めている


■方針変更

 これまでは中国の外交・軍事で攻勢が見られていた。渤海・黄海・東シナ海・南シナ海で、人民解放軍による同時大規模な演習が行われていた。ところが、段階的に規模が小さくなり、最近では人民解放軍に軍事演習は見られない。

 それに対して、アメリカ・イギリス・フランスなどは、定期的な合同軍事演習を継続。しかも太平洋・インド洋・地中海で合同軍事演習が行われている。アメリカと中国の対立が激化すると、台湾が危険地帯となった。

中国当局、米軍機の台湾入りに沈黙 かつて「米中開戦」と威嚇
https://www.youtube.com/watch?v=3fxqZoVN4t4

 中国が台湾に侵攻する動きを見せると、アメリカは台湾支援を露骨に見せつける。中国は過去に、「アメリカ軍機が台湾に入ると米中開戦になる」と威嚇したことが有る。以前のアメリカは中国との対立を回避していたが、今ではアメリカ軍機を堂々と台湾に入れる。

 中国はアメリカ軍機が台湾に入ると開戦すると脅したが、外交・軍事で反論も報復も無い。過去の中国は攻勢でアメリカは防勢だった、だが今では、中国は防勢でアメリカが攻勢に転じている。

■人民解放軍は張子の虎

 人民解放軍の軍事演習が目立たなくなった。軍事演習の目的は、表向きは軍隊の練度向上と練度維持。何故なら、軍事演習は敵が居ないだけの実戦で、指揮命令と物資消費は実戦に近い。だから練度向上と練度維持に使われる。

 軍事演習の裏の意味は、軍事力を背景に外交をする。国際社会で多用されるので、仮想敵国が軍事演習を行えば、返答として自国も軍事演習をすることが多い。軍事力を見せ付け、相手国に譲歩させる。そして、言葉で相手国を従わせる。覇権とは言葉による指導力だから、軍事演習で相手国を脅し従わせる。

 だが最近の人民解放軍は軍事演習が目立たない。しかも台湾侵攻を見せ付けたが、人民解放軍の動きは止まってしまう。アメリカ軍は人民解放軍の実状を見抜いたようで、台湾にアメリカ軍機を入れた。これはアメリカが中国を確認するための派遣だと思われる。

 おそらく、人民解放軍は物資不足で動けないのだ。陸軍2万人規模の一個師団であれば、1日で2000トン消費する。空軍が陸軍の一個師団を火力支援するなら、一日で4000トン消費する。つまり、セットで6000トン消費する。

 作戦規模が大きくなれば、5倍や10倍の消費になるのは当たり前。この消費に耐えるように、各国は常に生産・輸送・備蓄・補給を行う。消費と同時に備蓄も進めるから、生産ができなければ対応困難。

 人民解放軍は航空機を何度も台湾に接近させた。これで台湾空軍の対応を見ると同時に、消耗させる動きを見せた。台湾空軍の指揮命令に穴が有れば、そこから人民解放軍を突入させれば良い。さらに、度重なる領空侵犯で台湾空軍が消耗すれば、台湾政府が下ると考えたのだろう。

 だが台湾の政治と軍事は耐えた。台湾への脅しが長期化すると、今度は人民解放軍に疲弊が見られた。そんな時にアメリカは、アメリカ軍機を台湾に入れている。つまりアメリカは、中国は脅しだけで、人民解放軍は張子の虎だと見抜いたのだ。

■軍事無き脅し

 中国の強気の姿勢は継続しているが、外交も攻勢から防勢に変わっている。中国主導の外交ではなく、仮想敵国の外交に合わせた防勢に変更している。アメリカが中国の政治家・企業に制裁を行うならば、中国も報復として人物・企業に制裁を行うことを採用。

中国、「反外国制裁法」を可決 専門家は「実力を過信」と効果疑問視
https://www.epochtimes.jp/p/2021/06/74421.html

 これは状況戦術であり、相手の動きに対応するだけ。戦略が無く、今できることだけに終始している。つまり中国は、主導権を握る戦略が外交から失われている。だから中国は、強気の姿勢で自国を大きく見せている。

 しかも中国は、アメリカによる策に落ちた可能性が有る。18世紀のナポレオン戦争の時代、フランスとイギリスは対立。この時にイギリスは、フランスの商船を拿捕。次にイギリスは、フランス商船の積荷を奪い船員を帰国させた。

 フランスは怒り、フランス領内で生活するイギリス人を拘束して報復。先に手を出したのはイギリスだが、国際社会はフランスを批判した。その理由は、フランスが人間の自由を奪ったから。人間から自由を奪い、拘束することは殺人の次に重いとされる。だから刑務所で自由を奪い、罪を償わせる。

 フランスは被害者であり後手。それは明らかだが、人間の自由を奪ったことで国際社会から批判を浴びた。これはイギリスがフランスに仕掛けた間接的な戦争で、フランスはイギリスの罠に嵌ったのだ。

 アメリカが中国に仕掛けた間接的な戦争に、中国は嵌った可能性が有る。中国も外国人・企業への制裁を行うことで対抗するが、自国内で実行すれば、国際社会から批判される可能性が有る。さらに外国人を拘束し自由を奪えば、国際社会からの軍事的な先制攻撃を正当化させる可能性が有る。

 何故なら無実の外国人が拘束され自由を奪われた。ならば救出作戦を実行しても正当。自国民救出の戦闘は正義だから、批判する国は無いも同然。さらに、支援するための連合軍を編成しても正当化できる。

■イギリス空母打撃群の接近

 イギリスでG7が開催されたが、過去のヤルタ会談を思わせる。G7は中国の覇権拡大と支配を拒絶。さらに東シナ海・南シナ海・太平洋の今後の安全を確認する内容。さらに中国の一帯一路構想を拒絶したから、明らかに戦後を前提とした会談。

G7、途上国へのインフラ支援で合意 中国「一帯一路」に対抗
https://www.afpbb.com/articles/-/3351405

 これがアメリカとイギリスのシナリオだと仮定すれば、アメリカはアドバイザーになり、イギリスを主役にした英中戦争への切り替えになる。この動きは既に実行されており、イギリス空母打撃群は、イギリス・オランダ・アメリカの海軍艦艇で編成されている。

 表向きはイギリス空母打撃群だが、中身は連合軍。アメリカ海軍も参加するが、主役ではなく脇役。これはイギリス空母打撃群をアドバイザーとして支援していることになる。これはイギリスには都合が良く、しかもアメリカにも都合が良い。

 何故ならイギリスは、香港人の救出を目的とした戦争を行う大義名分が有る。しかも中国は、イギリスと交わした一国二制度を破棄した。中国はイギリスとの約束を破り、しかも香港人の人権を弾圧。これらはイギリスを怒らせるには十分で、イギリスが中国と戦争すれば、正義はイギリス側になる。

 ならばアメリカは米中戦争よりも、イギリスを支援して英中戦争にする方が良い。自国の消耗を回避できると同時に、正義の戦争が手に入る。その結果として、仮想敵国である中国に勝てるなら美味しい話。

■想定される戦域

 米中戦争から英中戦争に変更した場合は、アメリカ海軍はイギリス軍の支援に回る。公には日本を母港とする空母がインド洋に派遣される。交代するかのように、イギリス空母打撃群が日本に寄港する。航空戦力は低下するが、イギリス空母打撃群を中核とした戦力が有るなら、人民解放軍と対抗可能。しかも海上自衛隊も参加すれば、十分な戦力になる。

 想定される戦域は南シナ海。それも香港・マカオを奪取することが目的だと思われる。何故なら、香港とマカオには有力な空港が存在する。しかも海岸に存在するから、攻撃と防御が容易。さらに少ない戦力で実行するなら、香港とマカオが有力になる。

 イギリス空母打撃群が香港とマカオを奪取すれば、人権弾圧を受ける香港人を解放できる。さらに空港を使うことで、人民解放軍を南北に分断することが可能。しかも内陸部の人民解放軍を空爆することも可能なので、奪取後の長期戦にも耐えられる。

 アメリカとイギリスは人権を武器に戦争を行え、しかも中国を弱体化させることができる。戦後のアジアの安定を獲得し、しかも一帯一路構想で奪われた市場を取り戻すことも可能。そのためのG7だったならば、中国はG7連合軍との戦争に怯えている。

【私の論評】新たな日米英三国同盟が、中国を封じる(゚д゚)!

軍事力には、一定の地域に展開しその地域や国家に向けて自分の国の意思をメッセージとして発信する機能もあります。これを私は政治的メッセージであるとこのブログでは語っています。特に中国海軍はその側面が強いです。中国海軍は、対潜哨戒能力が極度に低いので、実際中国海軍が日本の海上自衛隊と戦えば、そのほとんどが瞬時に海の藻屑となります。

それは、このブログで何度か述べているように、日本は対潜哨戒能力に秀でていている上に、潜水艦のステルス性も優れていて、日本の潜水艦は潜水艦は中国に発見できない一方、中国の潜水艦は日本に容易に発見されてしまうからです。

これでは、最初から勝負になりません。これは、米国や英国などの他の先進国についても同じようなことがいえます、これらの国々は対潜哨戒能力が中国より優れているので海戦では中国よりは遥かに有利なのです。

それでも中国は巨額の軍事費を投じて、海軍を拡張しているのですが、対潜哨戒能力が劣っているため、実際の海戦になれば、圧倒的に不利です。中国の護衛艦は、空母を護衛できないのです。そのため、実際に海戦になれば、大敗を喫するのは中国です。

それでも、中国が海軍の拡張に走るのはなぜかといえば、国内外に向けて「強力な政治的メッセージ」を発信するためです。海洋進出への中国の並々ならぬ決意を示すものです。ただし、その強力なメッセージがある程度届くのは、最近では中国国内と、東南アジアなどの脆弱な海軍を持つ国に限られるようになりました。

それは、G7後さらに顕著になったといえます。ただし、この「政治的メッセージ」の中には、「中国海軍は最終的に負けるが、それにしても、これと戦えばかなり面倒なことになる、それでもやる気か」というメッセージも含んでいます。

これは、いわゆる中国の「コスト強要戦略」です。これは「ある国の望ましくない行動に対して、実現させるためにコストをかけざるを得ない状況にして、その行動を自制させること」と定義されます。軍事面だけでなく、経済、政治などいろいろな要素を組み合わせたもので、コストとはカネの面だけでなく、負荷全般といっていいだろう。そして非常に重要な点は、平時に行われ、しかも長期間にわたることです。


中国海軍は元々「政治的メッセージ」


20年ぶりに空母打撃群をインド太平洋地域に派遣し、さまざまな演習を行う目的は、英国が新たな世界に関与するグローバル・ブリテンに生まれ変わることを政治的メッセージとして発信することなのですが、その目的を達成するため英国が最も重視しているのは日本との連帯であす。今回の空母派遣には日本との関係が大きく影響しているという側面もあります。

2017年8月下旬、英国のメイ首相(当時)が来日し、日本の安倍首相(当時)の間で「日英安全保障協力宣言」ともいうべき4つの合意文書を取りまとめました。

英国政府は日本が安倍政権であった2015年11月に新たな国家安全保障戦略を採用したのですが、そのなかで米国以外の国々との安全保障関係を拡大することを強調し、欧州以外の相手国として、唯一日本を「同盟国」と指定していました。その後、自衛隊と英国軍との交流がかつてとは比較にならないほど活発になったのですが、クイーン・エリザべスのアジア展開は、2017年に合意した日英安全保障共同宣言に盛り込まれているのです。

印象的だったのはメイ首相が日英首脳会談後のNHKの単独インタビューの中で「英国と日本は両国とも海洋国家です。私たちは民主主義や法の支配、人権を尊重します。私たちは自然なパートナーであり、自然な同盟国だと思います」と語ったことです。この呼びかけに対して日本側も前向きに応じたことで、日英両国の関係は「パートナー」から「同盟」の段階へと劇的に強化されたのです。

このことは日本ではあまり認識されていないのですが、日英のリーダーが互いを「同盟国」と公式に呼び合ったのは1923年に日英同盟が解消されて以来、初めてのことでした。クリーン・エリザベスの派遣は新たな日英同盟誕生の証を内外に示すものだといっても過言ではありません。



1902年に日英同盟が締結された当時の日英両国にとっての共通の脅威はロシアであり、日本は英国の支援を受けて日露戦争で勝利しました。新たな日英同盟の脅威の対象は中国ですが、100年前のように軍事同盟である必要はないかもしれません。むしろ軍事的な協力を含む安全保障のあらゆる分野で協力し合う包括なもののほうが望ましく、有事よりもむしろ平和時に機能するものでなくてはならないでしょう。

クイーン・エリザベスは、2017年に就役した英海軍史上最大級の艦艇です。第二次世界大戦後、日本を訪問する外国の大型艦船といえば米軍であり、米軍以外の大型艦船が日本の近海に立ち寄ることなど想像もできませんでした。英国の空母がはるばる日本にまでやってくることは、時代の大きなうねりを感じさせる出来事です。

クイーン・エリザベスは最大40機の戦闘機を搭載する能力を備えていますが、今回の派遣では英空軍のF-35Bステルス戦闘機18機に加え、米海兵隊第211海兵戦闘攻撃飛行隊のF-35Bステルス戦闘機10機も搭載されており、事実上の英米混成部隊となっています。日本近海で航空自衛隊のF-35Bステルス戦闘機が参加すれば、日米英の最新鋭の航空機部隊による史上最高レベルの演習になるに違いありません。

英国との間でACSA(物品役務相互提供協定)を締結している日本は、クイーン・エリザベスが率いる艦隊に不足しているとされる補給艦の役割を自衛隊が肩代わりし、早期警戒機やイージス型護衛艦を派遣することもできます。英国からすれば日本の港湾施設は空母への支援を受けることができる理想的な場所にあります。

さらに、英艦隊と日本の海自が協力することにより、「政治的メッセージ」だけではなく、強力な軍事的メッセージを発信することができます。日本には、強力な潜水艦隊があり、これにより普段から中国海軍の情報収集をしており、英艦隊はこの情報を活用できるのです。

海自は2018年12月の防衛大綱でも定められた潜水艦22隻体制を確立

実際に香港・マカオを奪取等の戦端が開かれれば、日本の潜水艦隊は、中国海軍の動きを封じることができます。中国の艦艇は自国の軍港から出ることができなくなります。中国には、静寂性の優れた日本潜水艦を探知できず、軍港外に出れば撃沈される可能性がかなり高いからです。そうして、中国の潜水艦はステルス性に劣るため、日英に探知されやすいからです。

ただし、このようなことはすぐには、考えられずやはりこれは日英による中国に対する「コスト強要戦略」としての性格が強いです。しかし、中国が傍若無人な態度を取り続ければ、最終的に香港・マカオ奪還もあり得るということで、日英が中国を強力に牽制することになります。ただし、英国がフォークランド紛争を戦い抜いた国であることも忘れるべきではありません。

このように新たな日英同盟は時宜にかなったものですが、かつてのように日英同盟が単独で機能するものではありません。新たな日英同盟とともに日本と英国がすでに有する米国との同盟を深化させることで日米英の事実上の三国同盟の誕生を目指すべきです。これにより、日本は第二次世界大戦後初めて米国一辺倒から脱し、戦略的に自立できるのではないでしょうか。

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2021年6月16日水曜日

米国内で数少ない「共通項」になった中国への反感―【私の論評】世界でも共通項となりつつある中国への反感の中で中途半端な日本(゚д゚)!

米国内で数少ない「共通項」になった中国への反感

岡崎研究所

 5月27日付のワシントン・ポスト紙に、ファリード・ザカリア同紙コラムニストが、「習の中国はオウンゴールするのを止められないように見える、中国の“平和的台頭”を語る時代はずっと前に終わっている」と題する論説を寄せ、習近平政権の外交政策を批判的に論評している。


 ザカリアの論説は的を射たよい論説である。習近平になってからの中国外交が、鄧小平時代とその後とは様変わりしているというのはその通りであろう。「平和的台頭」を標榜していた中国はもはやないということである。

 習近平のスローガンは「中国の夢」、「中華民族の復興」など、中国のナショナリズムを鼓舞するものである。こういうスローガンは中国人の心には響くであろうが、他民族には全く響かない。そういうなかで、国際協調の考え方は背後に追いやられてしまった。中国外交が、いまや自国利益を追求するあまり、攻撃的なもの(「戦狼」)になっており、国際社会がそういう中国への懸念を強めているのは自然であるように思える。

 既にザカリアが記事の中で紹介しているが、米国人で中国に対する否定的な見方をしているのは2017年の47%から2020年には73%になった。カナダでは40%から73%に、英国では37%から74%に、豪州では32%から81%に、韓国では61%から 75%に、スウェーデンでは49%から85%に、いずれも急激に増えた。コロナの影響もあるだろうが、おそらくそれだけではないだろう。香港やウイグル問題を含む人権問題、貿易や投資での嫌がらせ、海洋進出等、様々な事柄が絡み合ってのことだろう。

 習近平は相当内向きの政治家のようで、国内政治における自分の立場を盤石にすることに最も大きい関心があり、国際世論や他国の反応への関心がそれほどでもないからではないかと思われる。中国は大国であり、国外のことはほどほどの注意を払っておけばよいとの考えもありうるが、中国に対する評価が世界的に悪化していることには中国も気を付けた方がよいのだろう。「戦狼外交」とかでいい気になっていると、しっぺ返しを被る可能性がある。その予兆は、既に、ザカリアも論説で指摘しているように、世界各地(EU、豪州、インド等)で起きている。このザカリアの記事を読んでかどうかは分からないが、5月末の共産党の会議で、習近平は、世界に「愛される中国」となるよう世論戦を重視するよう指示したとの報道があった。

 ザカリアは、論説の冒頭で、米国は様々な問題で左右の分断が起きているが、それが起きていないのが、中国への脅威だと指摘している。その証拠として、最近、米国の超党派の代表団が、相次いで台湾を訪問している。4月15日、ドッド元上院議員(民主党)とアーミテイジ元国務副長官らが、バイデン大統領の要請を受けて台湾を訪問した。また、6月6日、現役の上院軍事委員会のタミー・ダックワース議員(民主党)及びダン・サリバン議員(共和党)や上院外交委員会のクリス・クーンズ議員(民主党)の超党派議員団が台湾を訪問した。3月28日には、台湾と国交のあるパラオ共和国の大統領が台湾を訪問した際、駐パラオ米国大使が同行している。日本も、この米台関係に呼応するかのように、中国が禁輸した台湾産のパイナップルを輸入したり、中国が妨害した台湾へのワクチン供給に対して日本からワクチンを提供したりした。

【私の論評】世界でも共通項となりつつある中国への反感の中で中途半端な日本(゚д゚)!

上の記事では、米国内で数少ない「共通項」になった中国への反感のことが掲載されていますが、世界も同じような動きをしています。

世界の主要民主主義国家は今週、相次いで異例の中国批判を展開しました。「対中国」での結束へと軸足を移し、世界トップの座をもくろむ習近平国家主席の戦略に明確なノーを突きつける姿勢を鮮明にしました。

主要7カ国(G7)、および北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、習氏の中核政策は軍事的な安定、人権、国際貿易、世界の公衆衛生に打撃を与えるとして、2日連続で中国批判の共同声明を発表。NATOは14日、中国が突きつける「規則に基づく国際秩序への体制上の挑戦」に対抗すると表明しました。

中国外務省の趙立堅報道官は15日の定例会見で、G7声明は米国を中心とする「小規模グループ」による見当違いの見解だと一蹴。その上で「米国は非常に病んでいる。G7は米国の脈拍を検査し、薬を処方すべきだ」と断じました。

対中批判の「ワン・ツー・パンチ」は、他国には説教させないと言い放つ習氏に対する直接的な一撃であり、これは中国に対する不安から主要国が対中関係を独自で管理しようとするのではなく、他国と足並みをそろえて対抗する方向へとシフトしつつあることを示唆しています。

 「中国の言動はリスク計算を変えた」。ジョージタウン大学のエバン・メディロス教授はこう指摘する。「極めて重大な地政学上の境界線が破られた」としています。

エバン・メディロス氏は、オバマ米政権下で2009~15年にかけて国家安全保障会議(NSC)の中国部長、アジア上級部長を歴任しました。中国語が堪能で、米中関係、米国の対アジア政策の第一人者として知られます。米中関係の重要性が増すなかで、対中政策を指揮しましが、後に退任しました。

ジョージタウン大学のエバン・メディロス教授

国際社会による対中批判は、中国が習氏を表舞台に押し上げる共産党創設100周年の祝賀行事を2週間後に控えたタイミングで起こりました。中国にとっては、外国勢力から受けた屈辱と苦難の1世紀を乗り越え、国際貿易でトップ、経済規模で世界第2位の大国へと発展を遂げたことを国内外に印象づける、またとない機会となります。

ブルッキングス研究所のライアン・ハス上級研究員は、G7やNATOによる対中批判だけで、中国における習氏の強力な地位が低下することはないと指摘します。主要国で習氏への批判が強まる中で、中国指導部にとっての問題は、国際社会における中国の位置づけにどの程度の価値を置くかだといいます。その上で、ハス氏は「(中国当局内で)われわれは正しい道筋にあるかといった問題が浮上する可能性はある」と語っています。

ライアン・ハス氏

中国は自国に向けられた批判について、米国主導による冷戦時代の思考だと主張。同国の外交官らは、東洋が台頭する一方で、西洋は衰退しているとの持論を展開しています。G7首脳会議が閉幕した数時間後、開催国である英国の中国大使館は、共同声明はゆがめられており、かつ中傷的だとして、項目ごとに逐一糾弾しました。

民主主義国家の間では、ここにきて中国に対する不満が高まっていました。イスラム系少数民族ウイグル人の拘束、香港市民の自由弾圧、強制的な貿易慣行、台湾に対する軍事的な挑発など、G7声明ではこうした懸念事項を列挙しました。また新型コロナウイルスに関する透明性の欠如に対しても懸念を示したほか、囚人の扱いやネット検閲など習氏の強権支配に対しても矛先を向けました。

中国はいずれも内政問題との立場で、中国大使館は、G7は「恣意(しい)的に中国の内政に干渉している」と反論しました。

習氏にとっては、中国に投資を提供し、雇用を創出するとともに、輸出品を購入してくれる国際社会との間で、問題は抱えたくないのが本音です。中国南部でコロナ感染が再流行したことで、国産ワクチンを含め、中国のコロナ対応に対する信頼は損なわれました。中国はまた、来年2月に開催する北京冬季五輪のボイコットを呼びかける人権保護団体の訴えを退けるためにも、国際社会との協力を望んでいます。

一方、共産党創設100年の祝賀行事は、習氏が目指す来年終盤の3期目入りへの序章ともなります。

ジョー・バイデン米大統領は自身の対中政策について、同盟国と連携して中国に責任を問わせると表明しており、G7とNATO会合は自らの構想を国際舞台の場で推進する最初の機会となりました。

共同声明の文言は、参加国の同意が必要で、これには中国と大規模な貿易を行う欧州諸国も含まれます。欧州諸国は通常、名指しでの中国批判は避ける傾向にあったのですが、中国が欧州の政治家や企業、シンクタンクに制裁を科したことで、ここ数カ月は中国への反発を強めています。

前出のハス氏は、中国がG7について「世界の一握りの国にすぎず、国際社会を代表した意見ではない」と反論する可能性があるとみています。

30カ国が加盟するNATOの文書よりも、G7声明の方が中国への強硬姿勢が目立ちました。例えば、NATOは台湾についての言及はなかったのですが、G7声明では一段落を割いて、台湾海峡と周辺海域の安定を求める文言が並びました。トロント大学のG7リサーチ・グループによると、このような共同声明で火種である台湾問題に触れたのは今回が初めてです。

中国政府系メディアは、新約聖書の有名なシーンを描いたレオナルド・ダビンチの作品「最後の晩餐(ばんさん)」をもじって、G7への痛烈な皮肉を展開。「最後のG7」と題したその画像(下写真)では、原画のキリストの場所に、白頭ワシ(米国の国鳥)に扮(ふん)したバイデン氏が位置しており(各首脳とみられる他の登場人物も動物として登場)、テーブルの上には中国の形をした赤いケーキが置かれている。この画像はネット上で広く出回りました。

最後のG7

習氏はコロナ禍で移動が制限されるまで、自ら各地に足を運び、国有銀行による融資を提供することで、中国の影響力を拡大。またドナルド・トランプ前大統領が多国間の枠組みを軽視したことで生まれた空白を突き、国連や世界貿易機関(WTO)といった国際組織における多国間外交に対する中国のコミットメントを強調してきました。ところが、調査会社チャイナ・ビタエによると、習氏は2020年初頭以降、他国首脳との対面での会談は行っていません。

中国はこれまで、巨大市場のうまみをちらつかせることで、外国からの批判をかわしてきました。ところがここにきて、中国指導部のメッセージは響かなくなりつつあります。直近ではオーストラリアとの対立に象徴されるように、中国がいかにその巨大市場へのアクセスを一転して遮断しかねないことが浮き彫りになったことが一因です。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザー、スコット・ケネディー氏は「経済的な成功では、中国が切実に求めている賛辞を得ることはできない」と話します。

ところが政策面で、中国が外国の圧力に屈する兆しは全く出ていません。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は先週、外国政府による中国制裁の取り組みに加担していると判断した政府や企業、個人に対して報復を認める法案を承認しました。

しかし、中国の素振りなどおかまいなしに、中国がまともにならない限り、G7やNATOは中国をさらに制裁で締め付けるのは間違いありません。最悪は、中国を世界市場から放逐することでしよう。

G7の世界経済に占める割合は未だに侮れません。G7をあわせると今でも、45%を超えます。中国は20%もいきません。米国一国でも大変だというのに、G7が結託して中国を制裁すれば、かなり強力なものになります。


それに、中国は近い将来米国の経済を追い抜くなどという、与太話が最近でも公表されましたが、これはこのブログにも何度か掲載してきたように全くありえません。中進国の罠にはまり、国際金融のトリレンマにはまり独立した金融政策ができず、少子高齢化が急激に進む現状の中国では、G7とまとに対峙すれば勝ち目はありません。

だからこそ、G7としては、中国共産党に何か変化がみられるまでは、中国に対峙し続けることでしょう。そうして、これに同調する国々も多いでしょう。

そうした中にあって、G7の一国である日本では自民党外交部会などは15日、中国を念頭に置いた新疆ウイグル自治区や香港などへの人権侵害に対する非難決議案を了承しました。ただ、中国との関係を重視する公明党内で調整が進んでおらず、今国会での採択は見送らました。

決議案は新疆ウイグル自治区などに加え、チベット、内モンゴル自治区、ミャンマーを例示し、「信教の自由への侵害、強制収監をはじめとする深刻な人権侵害が発生している」などと明記しました。

この決議案関しては6月10日、全野党が了承したことで、公明党幹部と自民の一部が慌てたようです。一体どこ向いて政治をやっているのでしょうか。もしかすると、中国なのでしょうか。このような声明等、迅速に通すべきです。そのようなことは当然のことで、日本は早急に日本版マグニツキー法を成立させ、人権侵害に加担した中国の個人の資産を凍結したり、入国を制限することができるようにすべきです。

昨年の米ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、日本人の86%もが、中国に対して否定的な考えを持っていることが明らかになっています。自民党や公明党も、国民に顔を向けた政治をすべきです。

そうでないと、日本は国内では国民からそうして、G7の中では対中国政策の中で浮いた存在になりかねません。それどころか、中国に誤った印象を与えかねません。

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2021年6月15日火曜日

【日本の解き方】「骨太方針2021」の読み方 去年より強い財政健全化色、補正予算の規模が正念場に―【私の論評】GDPギャップ埋める新たな補正予算を組めば、菅政権は選挙で大勝利のシナリオが描ける(゚д゚)!

【日本の解き方】「骨太方針2021」の読み方 去年より強い財政健全化色、補正予算の規模が正念場に


 9日の経済財政諮問会議で「骨太方針2021」の原案が示された。菅義偉政権の経済運営の方針や、今後の実体経済にどんな影響が出てくると考えられるだろうか。

 骨太方針の焦点は、財政再建をどこまで盛り込むかについてで、これまでの諮問会議でも、いろいろな意見があった。

 もっとも、基本は決まっている。財政政策と金融政策その他さまざまな施策を総動員して経済を回復基調に乗せていくことが優先で、そのことが何より財政健全化にもつながる。これは「経済あっての財政」、あるいは「経済再生なくして財政健全化なし」という言い方をされてきた。

 4月26日の諮問会議では、ある民間委員から、「ノーベル経済学賞を取ったポール・クルーグマン教授が『コロナとの戦争が今続いている、勝つまで安易に財政のことを考えるべきではない』という趣旨の発言をしている」との紹介があった。一方、別の民間委員からは「中長期的には財政健全化の旗を下ろすべきではないという意見があった」と西村康稔経済財政担当相は記者団に説明した。

 ただ、全体説明では、後者の財政健全化の意見だけを紹介し、クルーグマン氏の見解を1回、財政健全化が必要ということを2回説明するなど、財政健全化のニュアンスが出ている。

 ちなみに、昨年の骨太2020では「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、「経済・財政一体改革を推進する」とされた。財政健全化という言葉はこれだけだ。骨太2019までは、財政健全化という言葉は数多く使われていた。

 今年の骨太2021原案では、「『経済あっての財政』との考え方の下、デフレ脱却・経済再生に取り組むとともに、財政健全化に向けしっかりと取り組む」とされている。財政健全化という言葉も骨太2019までと同じように頻出している。しかも「骨太方針2018で掲げた財政健全化目標(25年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す)を堅持する」と、目標年度も再び明記された。

 昨年の骨太と比べると、今年の骨太2021原案の方がやはり財政健全化に踏み出している。

 自民党の今月10日の政調全体会議では、今年の骨太原案について、25年度の黒字化目標が明記されたことが議論になった。賛否両意見が出たが、対応は下村博文政調会長に一任された。

 9月に東京五輪・パラリンピックが終わった後、臨時国会が開かれ、補正予算の審議が行われるだろう。これは、直後に解散総選挙を控えたものとなるはずだ。観念的でさしたる意味のない財政再建目標に縛られて、十分な補正予算を作れないと、自民党は選挙で苦しくなる。しっかりした補正を打てるかどうか、自民党の正念場だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】GDPギャップ埋める新たな補正予算を組めば、菅政権は選挙で大勝利のシナリオが描ける(゚д゚)!

現状需要不足があるのは間違いありません。これをGDPギャップといいますが、わかりやすくいうと、製造する能力が30兆〜40兆あるのですが、現状では国内で需要がないので、その分GDPが凹んでいるという状況です。だから、政府はそれに近い有効需要策を打ち出すべきです。 この凹みをそのまま放置していると、将来的に失業が増えることになります。半年後にどのくらい失業が増えるか、正確に推計できます。 これもざっくり言えば、つくっても売れないとなればその設備も人もいらないということになり失業が増えるということです。 これを放置しておくのは好ましくないです。このような状況のときには、マクロ経済的には普通はGDPギャップをなるべく縮めるような財政政策、金融政策を実施するのが普通です。
これは、欧米では、当然のことですし、財政出動として、減税や財政出動、インフラを整備するなど、様々な方法を駆使しています。 国によって有効需要の創造のやりかたは様々ですが、財政出動によりGDPギャップの分の枠だけは財政支出するのは当然です。そうして、財政支出のために国債を発行しても、それを中央銀行が買いますから、財政負担がほとんどないというのは、日本も含めいずれの国も同じです。

このブログでも度々言及しているように、マクロ政策・フリップス曲線に従い、財政・金融政策を実行すれば良いのです。現状では、失業率下限(2.5%)、インフレ目標(2%)に達するまで、積極財政、金融緩和を継続すれば良いのです。


日銀買取国債は、将来世代に負担になるという意見の人もいますが、これは嘘です。日銀買取国債について利払費は納付金で政府に戻り元金でも日銀引受できるので元利償還負担はありません。それに現状では、国債金利はゼロに近いため、当面かなり発行してもインフレになる心配はないどころか、GDPギャップがあるので、これを放置しておけば、またデフレに戻るので、それを防止するためにもどんどん発行すべきなのです。

マスコミ等はこの制度を知らないまま発言するから、将来世代の負担になるなどの発言で恥をかくだけです。こういう嘘がまことしやかにでてくるのを見越して、このブログにも掲載したように、昨年政府日銀連合軍を作ったのです。

自民党有志による「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」昨年11月11日、衆院議員会館で設立総会を開き、安倍晋三前首相が会長に就任しました。安倍氏は「『政府・日銀連合軍』で(コロナ禍に)対応していく必要がある」と強調。引き続き強力な財政・金融政策が重要だとの認識を示すとともに、「菅政権をしっかり支え、経済危機を乗り越えたい」と表明しました。

「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」の会長に就任し、あいさつする安倍前首相

にもかかわらず「財政再建のために財政出動すべきでない」と言うのはロジックとして間違いです。有効需要の創造は必ず実行しなければ、後で失業が増えて、それに対して対策をしなければならくなります。そうなってしまえば、経済の立て直しはかなり難しいです。そのようになる以前に、有効需要を先回りして創造すべきなのです。 コロナ禍で有効需要を創造しようとすとる、「経済を回せば感染がまん延する」と危機を煽る人もいますが、現在かなりの勢いでワクチン接種が進んでいます。ワクチンを接種していれば、行動制限の必要もありません。

ワクチンは全員接種しないと、感染が防げないということではありません。他の先進国でも、一定割合以上を打つと、感染がかなり抑制されることが確認されています。日本のワクチン接種はその域に急速に近づきつつあります。

このような条件が整いつつあるのですから、9月に東京五輪・パラリンピックが終わった後、菅政権は、臨時国会が開催し、補正予算の審議をして30〜40兆円のGDPギャップを埋める規模の財政支出を決めれば良いのです。

オリンピック、パラリンピック9月にさしたる混乱もなく終わり、その頃にはワクチン接種がかなり進み、コロナ感染は「さざ波」どころか「なぎ」になり、誰の目から見ても、コロナ収束の道筋が見えるようになります。そこで適正な補正予算を組めば、その後は総選挙で、大勝利というシナリオが描けるでしょう。

本日は、予定通りに内閣不信任案が否決されましたが、この不信任案否決は結局、上で述べた日程を揺るぎないものにしただけのようです。最早この趨勢を変えることは不可能です。野党の皆様方ご苦労様でした。

菅総理は、パンケーキでお祝いできるかもしれません。そうなると、このブログでも以前述べたようにマスコミはお通夜状態になることでしょう。


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2021年6月14日月曜日

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【国家の流儀】皇位継承、伝統を踏まえた「男系継承」を 第2次安倍政権でもできなかった菅政権の決断、支持する世論を大いに盛り上げたい

立皇嗣宣明の儀

 日本は対外的には立憲君主国とみなされている。

 現行憲法第7条には、天皇の国事行為として、「八、批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること」「九、外国の大使及び公使を接受すること」が明記されている。この条文に基づいて天皇陛下は、国家元首の役割である「条約への署名や外交文書の認証とそれに伴う外国の賓客の接遇」などをなされているからだ。

 わが国の立憲君主たる天皇陛下の後継者が決定したのは、昨年11月8日であった。秋篠宮文仁親王殿下が皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)になられたことを、天皇陛下が内外に広く宣明になられる儀式が皇居で執り行われた。

 次期皇位継承者が決定したことを受けて、菅義偉政権は3月16日、安定的な皇位継承策を議論する政府の有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)を設置した。皇室典範によれば皇位継承権を持つのは男性皇族のみ。そして、秋篠宮殿下より若い男性皇族は、悠仁親王殿下しかおられないため、その対策が必要なのだ。

 3月23日に初会合を開き、6月7日に終了したヒアリングでは10項目について専門家らの意見を聞いた。

 注目すべきは、「皇統に属する男系の男子を皇族とすることについてはどのように考えるか」についても聞いていることだ。政府が公式に「皇統に属する男系男子を皇族とすること」を議題に取り上げたのは戦後初めてのことなのだ。

 小泉純一郎政権のときも「皇位の安定的継承」について議論された。そして、2005年に出された報告書では、皇位継承権を女子皇族にも認める、いわゆる女系継承しか明記されなかった。

 だが、「男系継承が皇室の伝統」であることと、民間男性が皇族に入ることになることから女系継承に対して反対が相次いだ。そして戦後、皇籍離脱を余儀なくされた11宮家の元皇族の男系男子孫を皇族になっていただく対案(=いわゆる男系継承)が出されたが、政府は正式な検討を避けてきた。

 ところが今回、菅政権は「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえ」(加藤勝信官房長官)、男系継承を正式な議題として取り上げることを決断した。これは第2次安倍晋三政権でもできなかったことだ。

 ヒアリングの結果は報告書としてまとめられ、この秋にも国会に提出される予定だ。その報告書には、「男系継承」も掲載される見通しだ。皇室の長い歴史と伝統を尊重しようと思うならば、「男系継承」を支持する世論を大いに盛り上げたいものだ。 =おわり

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、2019年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書に『インテリジェンスと保守自由主義-新型コロナに見る日本の動向』(青林堂)、『米国共産党調書-外務省アメリカ局第一課作成』(育鵬社)など多数。

【私の論評】小室親子が現代に浮かび上がらせた、女系天皇と皇統問題(゚д゚)!

安定的な皇位継承策を議論する31日の政府有識者会議に出席した専門家らの主な意見は以下の通りです。 君塚直隆氏「男系男子にのみ皇位継承資格を与えるという現行制度を改定し、女性皇族にも皇位継承資格を与えるとともに、現行の男性皇族と同様に、婚姻時もしくは適切な時期に宮家を創設し、ご自身、配偶者、お子さまを皇族とすべきである。皇位継承資格を女系に拡大することには賛成である」 曽根香奈子氏「女系天皇という言葉が間違っていると思う。もし、現在いわゆる女系天皇と定義しているものが誕生すれば、それは天皇ではなく、新たな王朝を開くこととなる。皇室の歴史が終わり、ひいては日本の歴史が終わり、新王朝の下、新たな国家を開くことになる」 橋本有生氏「女系継承は(「皇位は、世襲」と規定し「皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とした)憲法2条に違反するという学説がある。女系継承を認めるとしたら、改正が必要とされるのは下位の法である皇室典範のみであって、憲法は含まれないものと考える」 都倉武之氏「古代より父方だけの血統をつなぐというルールで継承されたことが、天皇の家族が別格扱いされる稀有(けう)な珍しさであり、歴史上も、各時代の日本の同時代の一般的な家の継承のあり方と必ずしも軌を一にしてきたとはいえず、その特殊性こそが別格扱いの根拠となっている」

このような専門家の話を聴いていても、なかなかピンとこないという人も多いのではないかと思います。

しかし、これについては、最近小室問題が表面化し、多くの人が理解しやすいくなりました。

現在に皇統問題を浮かびあがられた小室親子

女系天皇問題とは、小室圭氏が眞子さまとご結婚されれば、皇族になる可能性がでてくることを意味することであることを多くの人が理解したと思います。場合によっては、小室氏が天皇になる可能生もあり得るのです。さらに、小室氏の子供が天皇になる可能性もあるということになります。

これで、上で曽根曽根香奈子氏が語っている懸念に関して、多くの人が理解できるようになったと思います。小室氏が皇族になり、小室氏の子供が天皇になったとすれば、それはもう小室朝です。1000年以上にもわたって維持されてきた皇統とは異なる、新たな王朝になります。

古からこうした危機が懸念されてきたのです。さらに、皇統が途絶えそうになったことは過去にもあります。

皇統は126代にわたり例外なく男系で維持されてきました。女性天皇は過去に10代8人存在しましたが、いずれも男親をたどれば初代の神武天皇に行き着く男系です。なぜこのようなことが慣例になっているかといえば、女性天皇が結婚し、子供ができたとしたら、天皇の地位をめぐって災いが起こる可能性があるからです

ですから、災いの種となる可能性を残さない為にも、女性の天皇は生涯独身を貫き、結婚はしないのです。万世一系である天皇の血筋を守るためにこのような慣例ができたのです。

そうして、この慣例は日本の歴史を守ることと同じことなのです。

そうして、皇位継承が危機に瀕するたびに、時の為政者は遠縁でも男系の継承者を探し出すなどしてきました。

皇統断絶の危機は何度か訪れたのですが、解消に尽力した先人たちがいました。例えば大伴金村(おおともの・かなむら)と新井白石でした。

5世紀末から6世紀半ばの豪族だった大伴は現在の福井県から応神天皇の5世孫を招き、第26代継体天皇として即位させました。江戸時代中期の儒学者だった新井は皇統断絶に備えて閑院宮家の創設を進言しました。この宮家からは現在の皇室の方々と関係が深い第119代光格天皇が即位しており、新井の備えが功を奏しました。

男系継承に対しては「女性差別だ」との意見もありますが、皇室の祖先神と信じ仰がれるのは女神の天照大神であり、母性・女性の尊重こそ日本の伝統であり、女性差別などとは無縁です。

とはいえ、前例のない女系天皇を容認する声は少なくありませんでした。伝統を重視する人たちは、戦後に連合国軍総司令部(GHQ)の意向で皇籍を離脱した旧11宮家の男系男子孫の復帰などによる解決を求めています。

その中に適任者がいるのか疑問を示す向きもありますが、旧宮家以外にも男系を守っている方々も少なくないのです。それは戦前に皇室を離れた皇族や江戸時代に公家の養子となった皇族に由来する「皇別摂家」の家系の方々です。

この方々は、元来は藤原北家の嫡流の五摂家であったのですが、男系がなく天皇の皇子が臣籍降下して、それぞれの源氏(宮家)となった家門です。約3系統が存在します。この中には、秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁さまの同世代でも対象者は数十人はいると見られています。

皇別摂家出身の近衛文麿公爵殿下


ただ、政界でも男系継承への理解は十分に広がっていませんでした。立憲民主党は6月にまとめた論点整理で「偶然性に委ねる余地があまりに大きい」として女系天皇を容認すべきだと訴えました。旧皇族の復帰について「グロテスクだ」と嫌悪感を示す政府高官もいるほどです。

しかし原則を曲げれば正統性が揺らぎ、「本来の継承者に返せ」という運動が起きることになるでしょう。社会の混乱を抑えるためにも男系継承を守るべきです。

「国民統合の象徴」をめぐり国家が分断される事態だけは避けなければならないです。男系継承は守るべきです。1千年後を生きる子孫から「一時代の価値観にとらわれた愚かな世代が伝統を壊してしまった」と嘆かれないためにも男系継承は守るべきです。

少なくとも戦後の為政者らは、皇位継承に関し先人並みの汗を流してこなかったことは確かです。ところが今回、菅政権は「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえ」(加藤勝信官房長官)、男系継承を正式な議題として取り上げることを決断したのです。これは第2次安倍晋三政権でもできなかったことなのです。

そうして、現在小室問題があり、国民の間でも、広く女系天皇問題が認識されるようになっており、菅政権の今回のこの試みは、まさに時宜にかなっているともいえます。

小室問題では、母親の小室佳代さんが、遺族年金を搾取していた可能生が指摘されており、その可能生はかなり高いことが指摘されており、これが事実であれば、小室氏は犯罪者の家族ということになります。これは、常識的に考えても、皇族と結婚する資格はないと考えられます。

小室佳代さんが送っていたとされる遺族年金“詐取計画”メール

しかし、こうしたセンセーショナルな話題があることは残念なことですが、これを機会に女系天皇の是非や、男系天皇の意味合いまで、多くの人達に理解され、結婚問題も含めて、良い方向に向かえば幸甚に存じます。雨降って地固まるのことわざ通り、良い方向に向かっていただきたいものです。

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