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まとめ
- 第1回投票では高市氏が181票、石破氏が154票、小泉氏が136票を獲得した。
- 決選投票で石破氏が215票、高市氏が194票を獲得し、石破氏が逆転勝利して新総裁に選出された
- 1回目と2回目で議員票に大きな違いが出た要因として、高市氏への警戒感と石破氏への安心感があったとみられる
- 石破氏勝利の背景には、小泉氏支持者の票の流入や岸田派のほぼ一体化などがあったとみられる
- 石破新総裁の経済政策や外交姿勢に対して一部で懸念の声も上がっており、石破政権は前途多難
自民党総裁選では、石破茂元幹事長が激戦の末、新総裁に選ばれた。第1回投票では、高市早苗経済安保相が181票(国会議員票72、党員票109)、石破氏が154票(国会議員票46、党員票108)、小泉進次郎元環境相が136票だった。林芳正官房長官が65票、小林鷹之前経済安保相が60票、茂木敏充幹事長が47票、上川陽子外相が40票、河野太郎デジタル相が30票、加藤勝信元官房長官が22票となった。
筆者の予想は、高市氏が155票(国会議員票45、党員票110)、石破氏が155票(国会議員票35票、党員票120)で、小泉氏115票、林氏70票、小林氏80票、茂木氏50票、上川氏50票、河野氏45票、加藤氏30票だった。
党員票はほぼ当たりだが、高市氏の国会議員票は外した。麻生太郎副総裁が土壇場で高市氏に投票を呼び掛けたと報じられたが、しかし、第1回からというのは想定していなかった。
決選投票では、石破氏が215票(国会議員票189、都道府県連票26)、高市氏が194票(国会議員票173、都道府県連票21)だった。
筆者の予想は石破氏が205票(国会議員票180、都道府県連票25)、高市氏が205票(国会議員票185、都道府県連票20)だった。筆者が互角としたのは、石破氏には小泉氏、林氏らの票、高市氏には小林氏、茂木氏らの票が行くというのが基本的な流れで、河野氏、加藤氏、上川氏は分断という読みからだ。両陣営ともに刃こぼれ(相手陣営に投票)があったが、岸田文雄首相が石破氏側に回ったのが大きかった。
石破氏の勝利によって、円高株安の「石破ショック」が発生し、マーケットにも影響を与えた。石破氏は記者会見で、円安による日本経済の好転は期待できないと述べたが、石破氏は円安による「近隣窮乏化」を理解できていないし、能登でも補正予算ではなく予備費で対応すると語り、来年の参院選後には消費税15%を狙ってくる可能性もあり、経済政策には期待が持てない。
また、石破氏がアジア版NATOを主張していることや、財務省や中国が石破氏の勝利を歓迎していることから、筆者は新政権の前途が多難だ。
この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。
【私の論評】岸田政権の国際戦略転換と石破氏のアジア版NATO構想:大義を忘れた政治の危険性
まとめ- 岸田文雄首相は、安倍残滓払拭のために石破総裁誕生に奔走したが、その岸田氏は安倍元首相が確立した「自由で開かれたインド太平洋戦略」をあまり用いず、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」という新たな表現を用いたが、この変化は、安倍の影響力を払拭し、新たな国際的立場を築こうとする試みだったといえる。
- 石破氏が提唱するアジア版NATOについては、時間的制約や憲法上のハードル、アジア諸国の多様性などから懸念が示されており、実現可能性が低いとの指摘が多い。インドのジャイシャンカル外相や米国の専門家も、この構想に懐疑的な立場を取っている。
- 岸田元首相ならびに石破首相が安倍元首相の遺産を排除しようとする努力は、国内では功を奏したが、国外では限界があり、完全に払拭することは困難。特に、国際舞台での安倍残滓払拭は一筋縄ではいかない。
- 三島由紀夫の言葉に倣い、政治家は自己中心的ではなく、大義のために行動すべきである。彼の思想は、他者とのつながりや社会への奉仕の重要性を強調し、政治家たちにとっても大義を重視する姿勢が求められる。
- 岸田首相と石破氏は、安倍残滓の払拭を目指すあまり、本来の大義を見失う危険性がある。彼らは、国民や国際社会の利益を第一に考え、大義のために行動することが求められている。このようにしなければ、結果的に自らの信頼性や自由を失うことになるだろう。
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官邸を去った岸田元総理だが・・・・・・ |
総裁選結果の票読みには、すでに様々な分析が出回っていますが、上の高橋洋一氏の分析は、分析過程など詳細には示されてはいないものの、数量経済学者らしく数字に基づいたもののようで、他の分析に比較すると余分なノイズが少なく客観的であるため、掲載させていただきました。元記事の分析部分に関しては、あまり要約せず、元記事に近い内容にしています。
結論として、やはり第二回目の投票で岸田文雄首相が石破氏側に回ったのが勝敗を決したというのは間違いないです。これによって、岸田氏は、岸波総裁に岸田政権の政策を踏襲させるつもりでしょう。そうして、しばらくは石破氏は、その路線をなるべく踏襲するようにつとめるでしょう。
上の記事では、石破氏がアジア版NATOを主張していることも掲載されていますが、これに対して高橋洋一氏は否定的です。私も、これには否定的です。
ただ、国際関係などは流動的であり、NATOやQUAD、AUKUSなどの同盟は異なった思惑の国々の集合体ですから、必ず離合集散します。現在の国際的な枠組みもいつかは統合し、分裂し、さらにNATOや日米同盟もこれらに吸収されることになるかもしれないです。そうしてアジア板NATOになっていく可能性もあるでしょうし、それを否定するつもりはありません。
ただ、現時点で石破政権がすぐにアジア版NATOに舵を切ることには反対です。その理由は、主に時間的制約、人材や資源の分散、憲法上の問題、アジア諸国の多様性、抑止対象の不明瞭さ、そして歴史的・地政学的背景に基づいています。
アジア版NATOを設立するのにかかる時間が、特に台湾や日本が直面する可能性がある近未来の脅威に対して間に合わない可能性が高いです。また、日本の政府は既に防衛力を増強するために多くのリソースを投入しており、新たな軍事同盟の形成はこれらのリソースを分散させることになる可能性があるからです。
さらに、日本憲法第9条の制約を考慮すると、集団的自衛権の行使に関する憲法改正か解釈変更が必要であり、これはすぐにはできないでしょう。また、アジアの国々は政治的、経済的、文化的に多様であり、中国に対する明確な抑止力を示す意思が統一されていません。この多様性がアジア版NATOの効果的な運用を難しくします。
また、石破氏が「中国を最初から排除することを念頭に置いていない」と述べている点も、抑止の対象が曖昧であるという批判を招いています。抑止の対象が明確でない軍事同盟は実効性に欠けることになります。最後に、過去の国際協調事例から、必ずしも正式な軍事同盟が存在しなくても効果的な対策が取られることがあり、そのような枠組みと比較してアジア版NATOの必要性が高いかが問われています。
以上の理由から、アジア版NATO構想に対して慎重な姿勢を取るべきであり、このような大規模な軍事同盟の形成が現時点では適切でないと思います。現実的な時間的制約、政治的・法律的ハードル、そしてアジアの地域特有の複雑さを考慮に入れれば現時点ではそのような認識になります。
実際に、そのように考えている人もいます。たとえば、インドのジャイシャンカル外相は1日、石破茂首相が提唱する「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の構想について「我々はそのような戦略的な構造は考えていない」と否定的な見解を示しました。ワシントンで開かれたカーネギー国際平和財団のイベントで語りました。
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インドのジャマンカル首相 |
ジャイシャンカル氏は、石破氏の構想について「日本は米国と条約上の同盟関係にある。そうした歴史や戦略的文化がある場合、考え方がそうした方向性になるのだろう」と指摘。その上で「インドはどの国とも条約上の同盟国になったことはない。我々には(日本とは)異なる歴史があり、世界に対して異なるアプローチの方法がある」と述べました。インドはQUADの構成国でもあります。
昨年(2023年)10月23日、国会での所信表明演説のことだ。それまで政府が唱えてきた「自由で開かれたインド太平洋(free and open Indo-Pacific: FOIP)」に岸田文雄首相が触れることはありませんでした。
その一方で、岸田は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を繰り返しました。「インド太平洋」には言及したが、「自由で開かれた」空間ではなく、「成長センター」と表しました。重要な戦略空間であるはずのインド太平洋は後ずさりしました。
これは、なるべく安倍色を払拭したいとの動きの一環かもしれません。なにしろ、安倍首相は、インド太平洋戦略やQUADの生みの親です。
石破総理の、組閣人事、自民党役員人事をみていると、旧安倍派の入閣はなく、これは安倍残滓払拭内閣と言っても良い陣容です。これは、もちろん岸田元首相の意向も反映していることでしょう。
ただ、国内では様々な方策で、安倍残滓を払拭できるかもしれませんが、国外ではそうはいきません。国外で安倍残滓を払拭するためには、インド太平洋戦略やQUADの枠組みに変わるものを提唱したいのかもしれません。石破氏はこアジア板NATOを提唱することにより、安倍残滓払拭の総仕上げをしたかったのかもしれません。
しかし、その目論は、早々に失敗したようです。
岩屋外務大臣は、石破総理大臣が提案する「アジア版NATO」構築について、直ちに設立するのは難しいと述べ、中長期的な課題として検討するべきだとしました。彼は、インド太平洋地域の各国の多様性を考慮した上で、当面は現在の多国間安全保障協力を丁寧に積み上げるべきだと説明しました。
また、日米地位協定の改定については、石破総理の意見を尊重しつつ、日米同盟の強化に向けた取り組みを検討すると述べました。さらに、韓国や中国との関係改善についても、対話を通じて関係を深化させる意向を示しました。
岸田元首相には、バイデン政権が強い影響を与えているようですが、アジア版NATO構想に対する米国の見解は、特に専門家やシンクタンクの意見を反映すると、主に懐疑的または現実性に欠けると評価されています。
例えば、米ランド研究所のジェフリー・ホーナン上級研究員は、アジア版NATOを「非現実的」と表現しています。これは、アジア地域の政治的、地政学的状況が欧州と異なり、NATOのような多国間軍事同盟を形成する共通の脅威認識や政治的意志が十分に存在しないという認識に基づいています。民主党系の政治家やシンクタンクはこれに言及する人いません。
さらに、X上での議論からも、アジア版NATO構想は実現可能性が低い、または地域の現実に即していないという意見が見られます。これらの意見は、中国や北朝鮮といった具体的な脅威に対抗するための共同戦線を形成することの困難さ、そしてアジア各国の多様な国益と戦略的視点が一致しない点を指摘しています。
したがって、米国から見たアジア版NATO構想の評価は、現実的な軍事戦略としてよりも、むしろアジア地域の安全保障環境の複雑さを理解するための議論の一環として捉えられていることが多いです。
このような状況なので、アジア版NATO構想は、単なる石破氏のひとりよがりの構想となりそうです。
さすがに、国際舞台で安倍残滓を払拭するのは無理があるようです。以上、安倍残滓払拭に血道をあげているような岸田氏は、石破氏について論じてきましたが、多くの人はそんな大人気ないことはしないだろうと思っているかもしれません。しかし、現実はそのようです。現在の自民党の体たらくをみている、上にあげた推測は必ずしも的外れとはいえないようです。
安倍残滓を払拭するために、新たな総裁を選んだり、国際舞台に働きかけようとする背景には、結局は国民などは二の次で、「自分が」という思いが強いのでしょう。それは岸田、石破両名とも「総理大臣」になりたい、あるいは権力を得たいという思いは強いものの、では総理大臣になって日本のために何をしたいかという意図がよく見えないことからもうかがえます。
本来なら、政治家は、安倍氏のことなど関係なく、天下国家のことを考えるべきです。しかし、このようなことを繰り返してきた末に待つのは悲惨な末路ということになりそうです。
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三島由紀夫 |
三島由紀夫は、かつて「人は自分のためだけに生きていけるだけ強くはない」と語っていました。これは、人間は完全に自己中心的には生きられず、他者とのつながりや社会への奉仕、自己を超える対象、これを大義といいますが、この大義への行為によって初めて真の強さと自由を得られるという彼の哲学を表しています。
この考えは、彼の作品や人生を通じて、人間の存在が他者や共同体と切り離せないものであり、自己犠牲や献身がその本質的な強さを示すと主張しています。三島の生涯と死は、この思想がどれだけ深く彼自身の行動に反映されていたかを物語っています。
暗殺されてしまった安倍元首相は、自らの政権の支持率が下がることを認識しながらも、インド太平洋戦略やQUADを提唱しただけではなく、その実現の基ともなる、安全保障関連法規の改正や解釈の変更を実現しました。これは、強力な反対勢力があることを承知しながら、国民の財産や生命を守るという使命を実現するために必要な措置でした。安倍元総理は、こうした大義に準ずる人でした。
私は、言いたいです。「岸田さん、石破さん、"安倍残滓払拭"などという姑息な行動原理で動かず、大義のために動け」と。両名とも政治家とは大義のために動くべきということを思い出してほしいです。そうしなければ、いずれ弱体化し自由を失うことになるでしょう。
私には、総裁選に勝利した石破氏、それを確実なものにした岸田氏よりも、今回総裁選に負けた高市氏のほうが、よほど強く生き生きしているようにみえます。
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