2015年5月27日水曜日

【スクープ最前線】南シナ海で暴挙続けば米中開戦の恐れ 死に物狂いで“安倍潰し”に走る中国 ―【私の論評】今まさに日米が緊密に連携し中国の野望を打ち砕くことが、アジアの安定と繁栄を築くために、喫緊の課題である(゚д゚)!


2015.05.27

埋め立てが続くファイアリー・クロス礁 写真はブログ管理人挿入

米国と中国の覇権争いが顕在化してきた。習近平国家主席率いる中国が南シナ海での軍事的拡張に猛進するなか、オバマ大統領率いる米国がやっと攻勢に転じたのだ。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は25日付社説で「(米国が工事停止を求めれば)南シナ海での中米戦争は不可避だ」と恫喝した。「中華思想」による覇権樹立を狙う中国の策謀と、「自由」「民主主義」「人権」「法の支配」という価値観を共有する日米同盟の深化・強化とは。「米中新冷戦」の最前線に、ジャーナリストの加賀孝英氏が迫った。

監視飛行を続ける米海軍P-8A哨戒機の内部

 「公平で平和的な紛争解決と航行の自由のために、米国はたじろぐことなく立ち上がる」「米国が(中国の)領有権の主張に特権を与えることはない」

バイデン米副大統領は22日、メリーランド州アナポリスの海軍士官学校卒業式での演説で、中国が南シナ海で人工島を次々と建設していることなどを列挙し、こう語った。明らかに中国の暴挙への宣戦布告だ。

ニュースサイト「フォーカス・アジア・コム」も23日、米中央情報局(CIA)のマイケル・モレル前副長官がCNNの取材に「こうした無謀な行動を中国が続けるならば、中国は米国と将来、間違いなく開戦に至る」と発言したという、シンガポールの華字紙の記事を大きく紹介した。

ご承知の通り、中国は現在、南シナ海のほぼ全域を囲む9つの線からなる「九段線」(赤い舌)を引き、国際法を無視して南シナ海の大部分を「自国の領海だ」と主張。領有権を争うフィリピンやマレーシア、ベトナムなどの周辺国を力で恫喝し、岩礁を埋め立てて軍事拠点を建設している。


米国はこれまで後手後手だったが、やっと本気で「中国の軍事的拡張阻止」に乗り出したかたちだ。米国防総省のウォーレン報道部長も21日、中国が人工島の「領海」と主張する12カイリ(約22キロ)内に、米軍の航空機や艦船を進入させると明言した。

当然のことだ。中国の南シナ海での暴挙は、日本固有の領土、沖縄県・尖閣諸島の強奪を狙って、中国艦船が卑劣にも周辺海域に連日侵入していることと、まったく同じ延長線上にある。日本としても、法と自由と平和を守る国際社会の一員として、シーレーンである南シナ海の自由航行を守るためにも、中国の暴走を断じて許すことはできない。

旧知の外務省関係者がいう。

「米国の姿勢が一変した。中国に対して強硬政策に転じた。中国を放置すれば『国際社会の主導権を失う』という危機感があるのだろう。バイデン氏の発言は、CNNが20日、南シナ海で警戒飛行している米海軍対潜哨戒機P8Aに同乗取材した際、中国側から8回も退去警告を受け、『You go!(出て行け)』などと罵倒された映像が公開されたことも影響している。世界の秩序を守ってきた、米国民の誇りが傷付けられた」

実は、米中関係はすでに水面下では大変なことになっている。米国は激怒している。以下、複数の米情報当局関係者から得た情報だ。

「コロンビア検察当局が今年3月、不審なキューバ行きの中国船を拿捕(だほ)した。積み荷の中に、火薬100トン、信管260万個、ミサイル99発、砲弾3000発以上が隠されていた。オバマ大統領は昨年末、キューバとの国交正常化に向けた交渉開始を決断した。その国交正常化を潰す『中国側の工作活動』との疑いがある」

「米司法省は19日、中国人6人を産業スパイとして起訴した。米連邦大陪審が昨年5月、中国軍のサイバー部隊『61398部隊』所属の5人を起訴、顔写真付きで指名手配して以来のことだ。実は、米国も関係したイスラエルの最新防空システム、弾道弾迎撃ミサイル、無人機の機密技術データも盗まれたとみられている。中国と米国はサイバー世界ですでに戦争状態だ」

そして、驚くなかれ、日本にも危機が迫っている。情報はこう続く。

「米大手セキュリティー会社が先月末、『61398部隊』以上の攻撃力を持つ、中国軍のサイバー部隊『61486部隊』の存在を報告した。彼らは米国だけでなく、日本も狙っている。機密情報の入手のみならず、あらゆる機能のシステムダウンを狙う最強部隊だ」

日本政府は、「昨年だけで、256億件のサイバー攻撃を受けた」という事実を確認している。だが、ある自民党幹部は「61486部隊」の情報を聞いて絶句した。

「日本にはまだ、(防御も含めた)本当のサイバー部隊が整っていない。万が一、2020年東京五輪のような国際的行事の時にシステムダウンさせられたらお手上げだ」

安倍首相が狙われている。中国は死に物狂いだ。その背景には、安倍首相の4月訪米が大成功し、日米同盟が深化・強化され、現実に動き始めたことがある。中国が世界の政治、文化の中心であり、漢民族は他民族に優越している、そんな「中華思想」に基づいて世界覇権を狙う中国にとって、これに立ちはだかる日米同盟は邪魔なのだ。

■加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】今まさに日米が緊密に連携し中国の野望を打ち砕くことが、アジアの安定と繁栄を築くために、喫緊の課題である(゚д゚)!

上の記事で、指摘されていませんが、中国の軍事力は今のところまだまだの水準であり、米国には全く及ばず、それどころか、海軍・空軍力に関しては日本の自衛隊にも及ばない状況です。

もし、中国海軍と日本の海上自衛隊が戦えば、中国海軍はなすすべもなく崩壊します。これについては、このブログの過去の記事にも何度か掲載しました。特に現代の戦争で重要な、対戦哨戒能力に関しては、日本はトップクラスであり、中国の到底及ぶところではありません。

また、潜水艦に関しては、中国のそれは日本の自衛隊の敵ではありません。技術水準があまりにも低いため、たとえると、中国の潜水艦はドラ缶をガンガン叩きながら、自らの位置を敵に周知させながら、海中を進んでいるため、対戦哨戒能力に優れた、日本の自衛隊からすれば、その位置の補足は朝飯前ということで、中国の潜水艦は日本の敵ではありません。

それに比較すると、日本の潜水艦は、ハイテクを駆使して、スクリュー音が低く、中国の対戦哨戒能力では全く補足できません。だから、日本の潜水艦は、中国の監視の目など自由にかいくぐり、中国側に知られることなく、一方的に中国の艦船を撃沈することができます。

日本の潜水艦

たとえていえば、日本の自衛隊の潜水艦乗組員はゲーム感覚で自ら危険を感じることもなく、自由に行動して、中国の艦船を次から次へと撃沈できます。

さらに、中国の艦船は空母や、イージス艦もどきも含めて、非常に技術水準が低いので、日本のイージス艦の敵ではありません。

技術水準があまりに低いため、中国の艦船・潜水艦は日米と比較するとボロ船に過ぎません。この技術水準低さは、中国海軍をボロ船集団にするだけではなく、ボロ船をつくるにしても、それなりにカネはかかるので、経済を圧迫します。

中国のボロ船の代表格 空母「遼寧」

さらに、中国では長期にわたる、一人っ子政策により、無論人民解放軍の構成員のほとんど全部が一人っ子であり、脆弱です。さらに、昨日も述べたように、人民解放軍は、人民のための軍隊ではく、各地区の共産党の配下の私兵にすぎないどころか、その実体は日本でいうところの、利益を追記する商社であり、幹部も汚職まみれの悪辣な官僚であり、その士気は、到底日米に及ぶところではありません。

このように、中国が南シナ海で暴虐の限りをつくしていても、周辺諸国とはまともに対峙できても、日米にはまともに対峙することすらできません。

日本の自衛隊にも勝てない人民解放軍が、米国と対等に渡り合おうにも、最初から勝負が決まっています。実際に、戦闘になれば、なすすべもなく、中国人民解放軍は、米軍にあっという間に蹂躙されてしまうことでしょう。日米同盟と戦わば、あっという間に殲滅されます。というより、まさに人民解放軍兵士らの自殺行為といわざるをえません。

今まで、日本は尖閣列島で、中国が頻繁に領海・領空侵犯を繰り返しても、それに対して厳しい手は打ってきませんでした。というより、打てなかったという部分もあります。それが、軍事的に脆弱な中国をつけあがらせたのです。

彼らの腹の中は、尖閣で様々な示威行動を繰り返せば、日本国内に面倒だしうるさいから、尖閣くらい中国にくれてやれという世論がまきおこり、尖閣を戦わずして手に入れたいということです。

しかし、日本がこのようなことをしてしまえば、尖閣の次は、沖縄、沖縄の次は日本の西半分、しまいには、日本全部ということになりかねません。だから、日本は尖閣では、一切譲歩しないという姿勢を貫かなければなりません。

そうして、中国が一番恐れているのは、安部総理が軍事力を行使して、尖閣付近から中国の脅威を取り除くことです。

それは、米国に対しても、同じです。南シナ海で暴虐の限りを尽くせば、アメリカ国内に中国は面倒だし、うるさいからアメリカとは全く関係のない南シナ海くらいくれてやれという世論が盛り上がり、この一帯を戦わずして手に入れるということです。

しかし、そんなことをすれば、最初は南シナ海だけかもしれませんが、中国はどんどん覇権を拡張し、習近平がオバマと会談したときに、申しでたように、太平洋のハワイより西の部分を傘下におさめてしまうということにもなりかねません。

オバマ・習近平会談
そんなことは、到底アメリカは許容できるはずもありません。このブログにも何度か掲載してきたように、オバマは及び腰で、今まで中国のなすがままにさせてきましたが、オバマはともかく、アメリカ議会はこんなことではとんでもないということになるということで、今後は中国に対して厳しく対峙していくことになると思います。

このような南シナ海での中国の冒険など、日本国内では頻繁に報道されているにもかかわらず、国会では寝ぼけたような議論がされています。

特に、本日の維新の党の松野氏の安部総理に対する質問は、酷いものです。

党首討論で質問する松野氏
松野氏は質問の冒頭で、父・頼三氏が吉田茂元首相の秘書官だったエピソードを紹介。吉田氏の言葉として「(終戦直後は)貧乏な状態だから仕方ないが、松野君の時代に必ず自分の国は自分の手で守れる国をつくりなさい」と頼三氏に聞いたことを挙げ、「戦後70年、ある意味自分の国を自分の手で守ることを少し置き去りにしてきている」と述べました。

安倍晋三首相に理解を示すかとみられた松野氏でしたが、その後は「今なぜ法整備の必要があるのか」「何か危機が迫っているのか。なぜ急ぐのか」と首相を追及し、冒頭の発言と矛盾するような質問を連発しました。記者団には「全くかみ合わなかった」として安全保障関連法案への反対を示唆し、「完全野党」を鮮明にした形となりました。

松野氏が最初に語ったように、まさに日本は「戦後70年、ある意味自分の国を自分の手で守ることを少し置き去りにしてきた」のであり、さらに最近のオバマ大統領の及び腰が、現状の中国の南シナ海での横暴を巻いたのです。

現在の尖閣や南シナ海の現状をみれば、日米のすべきことははっきりしています。日米が連携して中国の野望を挫くことです。それには、集団的自衛権の行使は必須です。

先に述べたように、中国の軍事力は脆弱です。しかし、一つ忘れてはならないことがあります。中国は核兵器保有国であり、今でも中国の核弾頭は日本を狙っています。


中国の軍備増強が進む中、すでに核弾頭200個以上が保有されているとの見方が強いです。
今後10年で600個に増える見通しで、中国は英国、フランスなどと同水準の核保有国になり、米露の2大核大国に迫る可能性もあります。

日本の海上自衛隊イージス鑑は、米国での軍事演習で、一つのICBMに搭載された複数の核弾頭を全部を撃ち落とすという離れ業をやってのけました。それも、一回に及ばず複数回生功しています。だから、日本が、中国の核兵器に対してなすすべはあるのですが、それにしても、一発でも日本国内に落ちて爆発すれば、大惨事となります。

そんなときに、集団的自衛権を行使できれば、米国はすぐに対応できます。そうなっていることで、中国もなかなか日本に向かって核弾頭を打ち込むことはできないでしょう。さらに、米国の艦船などが攻撃を受けた場合、それが日本とつて甚大な被害を被りそうな場合は、中国に対して一定の措置をとることができます。

このようなことは、中国の野望を砕く上で、日米が連携する際に必要最低限のことだと思います。

このようなことを知って、松野氏はあのような矛盾した質問を安部総理に投げかけているのだと思います。本当におおいに失望しました。

集団的自衛権に関しては、当然のことながら、安部総理は有事のリスク管理を念頭に置いているわけですが、野党は松野氏をはじめとして、有事のことを話しているように見えて、結局のところ、平時における手続き論の延長線上でものを語っています。

中国が尖閣や、南シナ海で、暴虐の限りを尽くしている現在、そうして米国や、南シナ海の近隣諸国がこれに対峙しようとしてる現在、日本の野党はまるでこの出来事がなきかのごとくの間抜けた議論を繰り返しています。

日本の野党は、今まさに、日米が緊密に連携して、中国の野望を打ち砕くことが、アジアの安定と繁栄を築くために、喫緊の課題であることがみえていないでしょうか。

そんなことでは、いずれ、多くの国民の信頼を失ってしまうことに、彼らは気づいていないのではないでしょうか。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年5月26日火曜日

人民解放軍に激震 習政権が軍部のカネの流れを徹底調査 聖域を破壊 ―【私の論評】習の戦いは、中国の金融が空洞化し体制崩壊の危機状況にあることを露呈した(゚д゚)!

2015.05.26

今度は人民解放軍にメス。習氏のもくろみは吉と出るか。写真はブログ管理人挿入。以下同じ。
腐敗官僚の撲滅を進める中国・習近平国家主席が人民解放軍への攻勢を強めている。取り締まりを主導する党中央規律検査委員会が、胡錦濤政権時の制服組トップ、郭伯雄・前中央軍事委員会副主席の身柄を拘束するなど、軍幹部を次々と粛清。会計検査を断行し、これまでタブー視されてきた軍部内のカネの流れまでも暴こうとしている。「赤い帝国」で繰り広げられる“聖域破壊”の衝撃を富坂聰氏がリポートする。

軍幹部の収賄額が桁違いであることは中国では常識だ。その実態を報じた「財経網」(4月1日)の記事のタイトルは、《谷俊山の収賄事件で収賄額は200億元(約3860億円) 軍の資産一つ売って1億元のリベート》という驚くべきものだった。

日本では習近平国家主席がライバルを追い落とす目的ばかりが注目される反腐敗キャンペーンだが、ターゲットの規模はすでに権力闘争だけでは説明できないほど広範だ。

中国社会科学院が3月18日に公表した「法治青書(15年版)」をもとに「人民網」が分析した記事によると、14年の中国では1日平均500人の官僚が双規(規律検査委員会による規律違反の取り調べ)を受けていた計算になるという。

現在までに省級・大臣級の“大トラ”幹部が80人以上、同じクラスの軍幹部が30人以上も規律違反を問われて処分されている。

反腐敗キャンペーンが打ち出された直後、「トラもハエもたたく」とのスローガンが唱えられたが、昨年7月からはこれに「キツネ(主に海外に逃亡した官僚と政商)」が加わり、いまは「デブネズミ(公金で飲み食いして太った官僚)」を官僚組織から追い出すことを目的にしている。

トラ、ハエ、キツネ、ネズミとターゲットを広げてくるなかでは、国家のダイエットと名付けられた無駄遣いへの攻撃から、親族を幽霊職員にしている問題に対して大々的にメスを入れ、大量に首を切ってみせた。

中国の国民は周永康、徐才厚、令計画の3氏といった共産党の大物の落馬の裏でこうした社会の変化を目の当たりにしている。この劇場型の手法が習政権の人気を支えている。

検査の対象は上官から下士官まであらゆる階級に及ぶ。経費をすべて洗い出し、不正なカネの流れがなかったかを調べる。この調査によって、軍部の腐敗の詳細が白日の下にさらされることになるだろう。検査結果が出るころには大量の処分者が出るはずで、人民解放軍に激震が走るのは間違いない。

まさに聖域破壊の連鎖だが、国民はより大きな刺激を求めてくる。その欲求に習氏がどこまで応えられるのか。今後の一つの焦点だろう。

■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】習の戦いは、中国の金融が空洞化し体制崩壊の危機状況にあることを露呈した(゚д゚)!

上の記事で、人民解放軍にまで反腐敗キャンペーンが及んでいるということは、人民解放軍の特殊性を理解していないと、十分理解できないかもしれません。普通の国の軍隊であれば、反腐敗キャンペーンとは言っても、幹部の一部を逮捕すればそれですむと思います。

しかし、人民解放軍は違います。人民解放軍は、軍隊ではありません。これは、正確には各地の共産党組織の配下の私兵です。そもそも、人民を守るための、軍隊ではありません。私兵というだけでもありません。

実は、軍備をしていながら、日本でいうところの商社のような存在なのです。軍備をしながも、様々な事業を展開しているという普通の国では考えられないような特異な組織なのです。そうして、こういう特異な組織の中には、核兵器で武装しているものもあるという、とんでもない組織です。ですから、普通の軍隊でなら考えられないような様々な利権が存在します。だから、人民解放軍の幹部にも大金持ちが存在します。

だから、習近平が反腐敗キャンペーンをするなら、ある意味、人民解放軍はいずれ必ず実施しなければならないものだったと思います。

人民解放軍の招待は武装する商社

しかし、こうしたキャンペーンを実行する中国の習近平国家主席が反腐敗対策を宣言する一方で、当の習主席のファミリーが海外のタックスヘイブン(租税回避地)に蓄財している一端が、昨年のはじめに国際調査報道協会(ICIJ)のジェームズ・ボール記者と英紙ガーディアンの報道で明らかになっています。

ICIJのボール記者らはタックスヘイブンとして有名なカリブ海の英領バージン諸島の2社から200ギガバイト以上のデータを入手、約2年にわたって分析し、裏付け取材を進めてきたといいます。

英領バージン諸島

第一報で名前が挙げられているのは習、温、李3氏のほか胡錦濤前国家主席、トウ小平、中国人民解放軍創設者の1人、葉剣英、同大将の粟裕、戴相竜・元中国人民銀行総裁、「八大元老」の1人に数えられた王震、彭真・元全国人民代表大会常務委員会委員長のファミリー計13人でした。

国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース、スイス銀行大手クレディ・スイス、UBSなど欧米の銀行や会計事務所がバージン諸島での会社設立を仲介していたといいます。

中国と香港の2万1千人以上が海外会社のオーナーや株主になっており、2000年以降、1兆~4兆ドル(約104兆~約417兆円)の隠し資産が中国から流出したとボール記者は指摘しています。

中国では高度経済成長とともに貧富の差も拡大。100人の富豪が3000億ドルの資産を独占する一方で、推定3億人が毎日2ドル未満の生活を強いられています。ボール記者らが入手したデータでも、16人の資産を合わせた金額は450億ドルにのぼっていたといいます。

たった2社のデータでこの数字です。しかも、タックスヘイブンはバージン諸島だけではありません。タックスヘイブンを使う目的は租税回避、不正蓄財、国内資産の海外移転などが考えられます。中国共産党、中国人民解放軍幹部ファミリーによる海外蓄財は一体どれぐらいの規模に及ぶのか、想像もつかないほどです。

日本国内のサイトなどから、習近平ファミリービジネスについて、以下にまとめます。

習近平の父である、習仲勲は新中国建国の元勲であり、これらの長老指導者グループとして知られるのが80年代から90年代にかけて権力を振るった「8大元老」です。習仲勲氏のほか、改革・開放路線を推進した鄧小平氏、副首相を務めた陳雲、全国人民代表大会(全人代)委員長だった彭真、国家主席の李先念、副首相だった薄一波らで、彼らの子弟のなかには習近平のように党や政府の最高幹部になったり、有力企業のトップなど中国各界で活躍している名士、有力者が多数います。

1997年10月、84歳を迎えた習仲勲の家族写真。前列左から、斉心、
習仲勲、習冬英。後列左から、習近平、習安安、習正寧、斉橋橋、習遠平。
習近平の弟の習遠平は一時、北京の不動産会社『羽白(ユイバイ)』の社長を務め、土地開発やマンション建設に熱心でした。この会社の名前の『羽』と『白』は習という字を分解して、企業名として付けたものです。

また、習遠平氏はその後、香港に拠点を移し、欧米諸国を中心に、さまざまなコネクションを使ってビジネスを展開すると同時に外資を誘致しています。彼は現在、北京に本部を置く国際環境団体の会長に就任していますが、それは多分に名誉職的な肩書きであり、兄から得た内部情報をもとに事業を展開しています。

また、習近平の姉の習橋橋も夫の家貴氏と共同で不動産会社などを幅広く経営し、首都の北京や経済特区の深センの土地開発を手掛けています。不動産バブルに沸く大都市の一等地を優先的に開発できるのは、父の習仲勲や、やはり最高幹部の習近平氏の強い影響力があるからです。

次女の安安夫妻はカナダに居住しカナダ国籍も取得していながら、中国の携帯電話事業に出資し巨利を得ているといます。

金融・経済情報専門通信社「ブルームバーグ」や香港メディアなどの情報を総合すると、習近平ファミリーの総資産は少なくとも日本円で565億円を下りません。

最も活発なビジネス活動を展開しているのが習近平ファミリーの斉橋橋と家貴夫妻です。夫妻は2人で11社の企業のオーナーであり、そのほか、少なくとも25社の重役として経営に携わっています。夫は、投資会社の会長を務め、この資産が18億3000万元(約311億円)。さらに、同社の関連会社の資産が5億3930万元(約91億円)に上ります。彼はこれらの企業を通して、江西省にあるレアアースを生産・販売している江西レアアースの株式の18%を所有しており、それだけで4億5000万元(約77億円)に上ります。

夫妻は北京で不動産会社の北京中民信房地産開発を経営しており、橋橋が会長に納まっています。同社のホームページによると、同社は2001年8月9日創設で、資本金5000万元(約8億500万円)。同社が開発した北京の一等地に建つマンションのうち、面積が189平方㍍で、3ベッドルームの物件は1500万元(約2億5500万円)で売りに出されています

さらに、夫妻の一人娘夫婦が北京の電機会社の株式1億2840万元(約22億円)を所有しているほか、夫妻とその娘夫婦は香港に、3150万ドルの豪邸のほか、6件の不動産物件計2410万ドルを所有していることが分かっています。このほか、他の名義で中国有数の不動産会社、大連万達商業地産の株式を3000万元分保有。これらの資産をすべて合わせると、中国人民元分では約29億9770万元(約510億円)、米ドル分は5560万ドル(約55億円)で、合計565億円に達っします。

また、習近平氏の2番目の姉である安安の夫の呉龍氏は「広州新郵通設備」の社長を務めており、中国最大の携帯電話事業を展開する中国電信集団(チャイナテレコム)と密接な関係を持ち最近、数億元の事業を受注したと伝えられています。

習近平の姉が巨額の資産を持っていることを伝える日本の新聞
習氏は党中堅幹部の教育機関である中央党校で、「配偶者や子女、親戚、友人、部下が権力を濫用して私利を図ることがないよう管理しなければならない」などと述べてと特権を利用してのビジネスに強く注意を促しているが、習近平ファミリーの実態は、彼の言動とはまったく相反しているといえます。

文書で読むと長ったらしくなるので、以下に習近平のファミリービジネスを図にまとめておきます。以下は、2012年現在のものです。


さてこれだけ、不正蓄財を匂わせる情況証拠があります。習近平を含む大幹部の娘や息子らは、幼馴染みの遊び相手だったこともあって結束が固いです。また、不動産開発や政府の機密情報などに通じており、太子党仲間で情報交換をしては、自身のビジネスに生かしています。とくに、習近平ファミリーはその傾向が強いです。

中国の幹部連中は、習近平の不正蓄財のことは、誰もが知っている事実です。どのように蓄財したかも詳細を知っているはずです。

にもかかわらず、習近平が反腐敗キャンペーンを執拗に実施するのは、それだけ中国は今までにないほどの、危機に見舞われているということです。

どんな危機かといえば、かつてのように海外に中国から流出した巨額の金を含めて、海外から流入する資金が枯渇しているからです。この状況では、過去に中国が発展したモデルである、海外から流入した資金を元手に、インフラ整備をして発展するという方式が成り立たなくなるからです。

習近平は、中国から海外に大量に不正マネーが流出することを防ぎ、何とか過去の発展モデルを維持しようとしているのです。

習近平国家主席のこの振る舞いは、反腐敗キャンペーンにより失脚した者や、その親族などにとっては、結局習近平自らの蓄財を守るため。利権を巡る命がけの闘争に身を置いている、としか見えないことでしょう。

自らも、不正蓄財をしながら、他者を不正撲滅キャンペーンで失脚させるなど、失脚されだ側のファミリーからすれば、恨み骨髄です。不正撲滅をするなら、まずは身内からやれといいたいことでしょう。



中国では、建国以来毎年2万件もの暴動が発生していたとされています。それが、2010年からは10万件になったとされています。中国の一般人民の憤怒のマグマは頂点に達しているということです。

それでも、今までは幹部や、富裕層は少なくとも、巨万の富を蓄えさせてくれたということで、中国の現体制を支持してきたと思います。しかし、習近平の反腐敗キャンペーンにより、幹部や富裕層も現体制を支持しなくなることが考えられます。

そうなると、様々な不満分子が乱立し、現体制を変えるか、潰そうという動きが本格化する可能性が高いです。そうなれば、現体制は崩壊します。その日は意外と近いと思います。

習のこの戦いは、中国の金融が空洞化し現体制の崩壊も含む危機状況にあることを露呈したとみるべきです。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年5月25日月曜日

安倍首相はポツダム宣言を読んでいた!? 理解不能だったのは党首討論での集団的自衛権めぐる共産党の主張だ―【私の論評】野党は奇妙奇天烈な言論でドヤ顔をするのではなく、まともな議論をせよ(゚д゚)!

安倍首相はポツダム宣言を読んでいた!? 理解不能だったのは党首討論での集団的自衛権めぐる共産党の主張だ

党首討論で安部総理に質問をなげかける志位委員長

久々に国会で党首討論があった。ガチンコの国会討論なので、筆者は楽しみなのだが、最近、党首討論が少なく、寂しい。20日に行われた党首討論は昨年6月以来だった。

その中で、志位和夫共産党委員長との討論はちょっと見応えがあった。といっても、他のものがさえなかったので、相対的に面白かったという意味だ。

安倍首相は「ポツダム宣言」を読んでいた!?

志位委員長は、「戦後の日本は1945年8月にポツダム宣言を受諾して始まった。ポツダム宣言は日本の戦争について間違った戦争だという認識を示している。この認識を認めないのか」と質した。

これに対して、安倍首相は「ポツダム宣言を受諾し、敗戦となった。その部分をつまびらかに読んでいないので直ちに論評することは差し控えたい。いずれにせよ、まさに先の大戦の痛切な反省によって、今日の歩みがある」と答えた。

このやりとりについて、一部では、安倍首相はポツダム宣言を知らなかったと揶揄する向きもあるが、それは誤りだろう。調べてみればわかるが、国会外ではよく発言している。

しかも、つまびらかでないというのは「その部分」といっており、これを報じた新聞では「その部分」を省いており、適切な報道ではない。

このやりとりは、事前にこまかな質問通告をしないで党首討論が行われることを理解していないと、真相にはたどり着けない。

志位委員長の通告では、ポツダム宣言と書かれていなかったのではないか。その上で、志位委員長は、知らないと知らないことだけで総理として失格、かといって志位委員長の答えに乗ると、政治的に失格という、絶妙なポツダム宣言を持ち出したのだろう。

おそらく、志位委員長は、党首討論のやり方をしっていたので、細かな事前通告をせずに、「引っかけ質問」を作ったのだろう。これはなかなか策士である。

「引っかけ質問」にかからなかった安倍首相

もしポツダム宣言第6条「日本国民を欺いて世界征服に乗り出す過ちを犯させた勢力を永久に除去する」を認めるかどうかの質問であることが事前にわかっていれば、「その部分」について、安倍首相は「つまびらかに読んでいない」という必要もなかったはずだ。

筆者であれば、天皇の終戦の詔勅中の「他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス」を引用して、「ポツダム宣言を全体としては受諾したが、日本の意図は侵略ではなかったと、連合国の理解とは必ずしも同じでなかった」、という答弁を書いたかも知れない。

実際、安倍首相も「私もつまびらかに承知をしているわけではございませんが、ポツダム宣言の中にあった連合国側の理解、たとえば日本が世界征服をたくらんでいたということ、と(志位委員長は)ご紹介になられました」と答弁している。安倍首相は、質問通告になかったと思われるポツダム宣言について、かなり正確に理解していると思う。

その結果、安倍首相は、志位委員長の「引っかけ質問」にもかからなかったといえる。

ここまでの志位委員長の「引っかけ質問」は、筆者としても楽しめたが、その次にでてくる「日本を海外で戦争する国に作り変える」という主張はまったく理解不可能だ。
事実上集団的自衛権を行使していると日本は見られている

今国家で争点になっている安保法制は、集団的自衛権の限定行使を可能にすることを主な内容としている。集団的自衛権の限定行使以外にも、グレーゾーン事態への対応、周辺事態法等の改正、国際平和支援法の新規立法などもある。

本コラムでは、これまで安全保障について書いてきた(2014年5月19日「「飼い主を守る猫」でも行使する「集団的自衛権」に反対するマスコミの国際感覚の欠如」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39296 2014年4月28日「韓国やフィリピンの憲法にも戦争放棄の規定がある!各国憲法との比較から「集団的自衛権」を考える」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39129 )。

それらをおさらいすると、自衛権を「個別的」、「集団的」と分け「個別的」はいいが、「集団的」はダメというロジックは国際社会ではないこと、海外において自衛権が、どこの国でも刑法にある「正当防衛」とのアナロジーで語られていて、言葉としてはともに同じ言葉(self-defense)ということ。さらに、日本の第9条のような規定を持っている憲法は、世界では珍しくなく、そうした国では集団的自衛権の行使は当然の前提であることだ。

海外から見れば、日本が集団的自衛権の行使は事実上すでに行っているとみられても仕方ない。実際、米軍に日本国内の基地を提供していること自体が、同盟関係で、集団的自衛権の行使はしないというこれまでの議論は日本の国内向けであり、国際的にはまったく無意味だ。

日米安保条約を知っている外国人だったら、それが日本だけでなく、極東の安全に既に寄与していることを指摘して、日本も同盟国として一定の軍事貢献もしているといってくる。極東のところは、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」(安保条約6条)にある。
共産党の言い方は間違い

日本に米軍が存在しているのは、国民はみんな知っているが、実は国連軍もいる。米軍の横田基地に、国連軍後方司令部(United Nations Command-Rear)があり、日本は、オーストラリア、カナダ、フランス、ニュージーランド、フィリピン、タイ、トルコ、アメリカ、イギリスの8ヵ国と国連軍地位協定(日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定)を締結している。米軍の横田基地には、日本とアメリカの国旗とともに、国連旗がたっている。

在日米軍基地のうちキャンプ座間、横田空軍基地、横須賀海軍基地、佐世保海軍基地、嘉手納空軍基地、ホワイト・ビーチ地区、普天間海兵隊基地が国連軍施設に指定されている。

国連軍司令部のほうは韓国にある。こうした国連軍の体制は、1953年7月に朝鮮戦争が休戦となり、休戦協定が発効した翌54年2月以来である。朝鮮戦争は今でも休戦状態であり、終戦ではない。

これだけ、国連にビルトインされている日本が、国連憲章で認め、日米安全保障条約でも明記されている集団的自衛権の権利だけで、行使しないという論法が、国際社会で通用するはずない。

今国会で提出されている安保法制は、そうした国際社会の理解への国内法制のキャッチアップの過程でしかない。これをもって、戦争のための法案というのは、あまりに現状を知らなすぎる議論だ。今の自衛隊の戦力では、海外に部隊を派遣し作戦を行う戦力投射(power projection)能力はなく、侵略戦争を絶対にできない。

これだけで、「日本を海外で戦争する国に作り変える」という共産党の言い方は間違いである。
侵略された例は南ベトナムしかない

集団的自衛権について、日本のマスコミは、戦争に巻き込まれるという考え方がある。筆者が留学で学んだ国際関係論では、集団的自衛権のほうが、防衛コストが安上がりになり、戦争にまきこまれないということだ。

コストの点から言えば、現在米軍の日本への防衛をすべて日本だけでの自主防衛で受ければ膨大なコストになることは明らかだ。いろいろな試算があるが、20兆円以上も必要という。
マスコミの論調は、第二次世界大戦後に起きた紛争や軍事介入の多くは、集団的自衛権行使を口実に使われることが多いというものだ。
そうした介入のケースではなく、侵略されたケースでみれば、アメリカとすでに同盟条約を結んでいた国が第三国から侵略された例は、南ベトナムしかない。しかも、侵略は北ベトナムであり、これが第三国とはいいがたい。集団的自衛権は抑止力があるので、自ら仕掛けていかないのであれば、戦争に巻き込まれる可能性が低いのが、国際常識だ。

むしろ歴史を振り返ると、集団的自衛権は多数国の判断で行使することが多いが、個別的自衛権は一国のみで判断して行使するので、より危険であるとされている。このため、戦後、西ドイツは個別的自衛権が認められずに、NATOの下での集団的自衛権しか認められなかった歴史がある。

先のベトナムの例は、いろいろと示唆に富む。

なぜ中国は南沙諸島を埋め立てられたのか

中国が南シナ海で進める埋め立て問題で米中が対立している。南沙諸島は、南シナ海南部に位置する島、岩礁・砂州からなる地域だ。島といっても、きわめて小さく、一般に人が居住できる環境ではない。しかし、この場所は海洋資源のほか、軍事的な要衝にもなっているので、中国、台湾、ベトナム、フィリッピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張している。

中国は、この地域に後発で入ってきた。今、問題になっているのは、南沙諸島のファイアリー・クロス礁である。ここは、1988年に中国がベトナムから武力奪取した。今や3000メートル級の滑走路や水深の深い港を建設中であり、既に南沙諸島で最大級の面積となっている。

また、南沙諸島のミスチーフ礁は1995年から中国が占拠しているが、これは、1992年からアメリカ軍がフィリッピンから撤退していたのを見計らって奪取し、建築物を構築して実効支配に及んだものだ。中国は、自国の漁師の保護を建前としている。

いずれも、アメリカとの安全保障がない、または事実上機能していない状況から、中国の進出を許している。国際社会はパワーのぶつかり合いであり、どこかが引くとかならず争いが生じるが、その典型である。

ファイアリー・クロス礁における中国の埋立スピードは急ピッチで凄い。昨年8月には、ほとんど何もなかった岩礁であるが、今年3月には長さ3000メートル、幅200~300メートルの人口島がほぼ完成している。
なぜ、ファイアリー・クロス礁なのかといえば、ベトナムから奪ったところで、今は、アメリカとベトナムの間には安全保障条約はない。だから、アメリカは手を出せないと踏んだのだろう。
集団的自衛権は、防衛コストが低い

この建設費は1兆4000億円といわれている。単純な比較はできないが、ほぼ同じ規模の関空第一期工事の建設費は1兆5000億円だった。関空の場合、沖合5キロで水深が深くきわめて高コストで海外からはクレージーと言われたが、岩礁の埋立という比較的コストがかからないにもかかわらず、異常に高いコストをかけて、中国はファイアリー・クロス礁の埋立をすすめている。

そこで、中国がここに軍事拠点を作るのではないかという懸念を国際社会でもたれている。

ただし、アメリカも黙っていない。「岩礁に砂をいくら積み上げても、領有権は築けない」というのが、アメリカ政府の見解である。

20日、海軍の哨戒機P8AにCNN記者を同乗させ、ファイアリー・クロス礁の映像を放映させた。その中で、中国当局との交信模様。例えば中国側からの「You go(出て行け)」という発信も伝えた。

今のところ、アメリカは、中国に対して領有権を認めず、公海上の航行は自由というスタンスを強調している。今は中国が領有権を主張するところには入らないが、そのうち進入するだろう。もしアメリカとベトナムとの間で安全保障条約があれば、もっと早くに強い態度であっただろう。

アメリカはフィリッピンとの間で、日米安保条約と類似した米比相互防衛条約を締結している。同条約は、フィリピンのみならず太平洋地域をもカバーしている。太平洋地域には南シナ海も含まれるので、アメリカの今後の活動は、米比相互防衛条約での集団的自衛権行使を背景とするものとなろう。

こうして、歴史や近隣の事例をみれば、集団的自衛権は、防衛コストが低く、戦争に巻き込まれる可能性が低く、さらに戦争を仕掛けにくい体制であることがわかる。

(高橋洋一)
【私の論評】野党は奇妙奇天烈な言論でドヤ顔をするのではなく、まともな議論をせよ(゚д゚)!

上の記事、かなり重要だと思いますので、そのまま全部引用させていただきました。

以下に、上の記事にも掲載されている、国会の党首討論における志位委員の質問と、安部総理の答弁の動画を掲載します。



上の高橋洋一氏の記事、今回の共産党志位委員長の国会での質問に関する、安部総理の対応を余すところ無く伝えています。まさに、安部総理は「ポツダム宣言」の内容を熟知しており、熟知した上で、あのような答弁をしたことが良く理解できます。

しかし、志位委員長は、党首討論について以下のようなTweetをしています。
このTweetを見ている限り、志位委員長は、安部総理が「ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない」ので質問に答えられないと理解しているようです。あるいは、そのように印象操作をしています。これは、全くの勘違いか間違いです。そうではなくて、「間違った戦争」という部分に関して、「つまびらかに読んでいない」と答えているのです。

ちなみに、「間違った戦争」だったのかという問いに関する模範解答は「すべての戦争は間違っている」となると思います。それに、ポツダム前言には、「間違った戦争」とか「正しい戦争」などという文言は一切ありません。

それに当時はまだまだ情報があまりなかったのですが、戦後70年を経て様々な情報が手に入るようになった現在、あの戦争を「正しい戦争」か「間違った戦争」かと問われれば、賛否両論があるものと思います。

私としては、あの戦争は、正しいとまではいいませんが、西欧列強のアジアにおける植民地支配からの開放という意味で、「止む終えない戦争」であったと思いますし、本当は日米は全く戦う必然性などなかったと思っています。

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事でもお分かりになるように、今回の党首討論で矛盾点をさらけ出したのは安倍首相ではなく、共産党の志位委員長のほうであったと言わざるを得ません。

志位委員長は過去には、明らかにポツダム宣言に矛盾する主張を述べていました。

日本共産党は北方領土の問題に関して、以下のようなスタンスであることを党の機関紙やホームページ上で明らかにしています。
ロシア側は、日本が連合国への降伏文書に署名した9月2日を「第2次大戦終結の日」(事実上の対日戦勝記念日)に制定し、千島は「第2次世界大戦の結果、ロシア連邦の領土になった」とし、その変更は許さないとの姿勢を示してきた。これらの一連の行動は、日本の歴史的領土である千島列島と歯舞、色丹の不当な領有を将来にわたって固定化しようとするものであって、絶対に容認できない。
これは、志位委員長の署名があるため、党の公式見解といって良いものと思います。しかし、この意見は『ポツダム宣言』の内容と大きく乖離する点があります。

共産党の主張は「日本の歴史的領土である北方領土はすべて日本のものである」というものだ。ところが、ポツダム宣言内で領土に触れられている項目は共産党の主張と明らかに矛盾する内容となっています。
八 、 カイロ宣言ノ條項ハ履行セラルベク又日本國ノ主權ハ本州、北海道、九州及四國竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ
日本の主権が及ぶエリアは本州/北海道/九州および四国と我々(=連合国)が決める島々に限定されるべきと記載されています。

つまり、北方領土が歴史的に日本の領土であろうがなかろうが、連合国が日本の国境沿いに位置する島々の帰属権を決定すると宣言しています。「ポツダム宣言という歴史的文書を読んでいなくて首相が務まるのか」と志位委員長は気勢をあげていますが、ポツダム宣言を「正義」として扱うのであれば、共産党は明らかに「悪」となることを理解した上で議論していたのか非常に疑問です。

現実には戦後70年を経た今日、当時の戦勝国の定めたポツダム宣言などはもはや重要な意味を持つものではありません。

1945年8月14日、日本のポツダム宣言受諾を発表するトルーマン
ポツダム宣言には、「日本国国民を欺瞞して世界征服の暴挙に出る過ちを犯させた者の権力と勢力は永久に除去する」という文言があるが、これそのもががもはや有名無実となっています。

そもそも、当時の戦勝国などとはいっても、ソ連は崩壊していますし、フランスははっきりいえば、戦勝国ではなく、ドイツに負けた敗戦国です。現代の中華人民共和国は日本と戦争すらしていません。日本と戦争をしたことのないアジアの国が戦勝国などというのは、笑止千万です。アメリカは、オバマ大統領がレイムダック化していて、とてもじゃないですが、「戦後体制」の守護者と呼べるような状況ではありません。他の、戦勝国も、当時から比較すれば、軍事力も経済力もかなり落ちています。

70年という時間は、あまりに長いです。過去に戦争に勝った国が、いつまでも勝ったということをたてに利権を貪ることなど許されるものではありません。負けた国がいつまでも、敵国として遇されることも全くの間違いです。

重要なことはポツダム宣言後のサンフランシスコ講和条約であり、そちらをベースに建設的な議論を行うことだと思います。70年以上も昔のことを引っ張りだすことが現在何の役に立つというのでしょうか。

『戦争法案』などという下らないレッテルを貼り、国会でくだらないクイズのような質問をしている暇があるのであれば日本よりも多額の軍事予算を費やす、それも毎年増やし続ける中国からの脅威に対してどのように具体的に対応するかを議論すべきです。

しかし、日本の野党などこのことに全く無頓着です。特に、安全保障法制をめぐる野党の質問は酷いものばかりです。これは、危機管理に関わることであるにもかかわらず、延々と平時の手続き論ばかりしているという有り様です。

東日本大震災における民主党の危機管理は最悪でした。しかし、彼らは未だ何も反省してないようです。そうして、共産党の志位委員長は、ポツダム宣言などというカビの生えたような、古い話を持ち出し、国会で全く実りのない主張をして、ドヤ顔で悦に入っている始末です。

こんなことでは、これから野党はますます存在感が薄くなっていくのではないかと思います。私は、議会制民死主義においては、健全な野党は絶対に必要だと思います。野党の皆様がたには、本当に実りのあるまともな議論をしていただけるようにしてほしいものだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年5月24日日曜日

【世界の議論】中国企業「爆社員旅行」フランスを“占拠”…6400人、ブランド品買い漁り経済効果「40億円超」―【私の論評】爆社員旅行は、中国でジュリアナ東京シンドロームが発生したという証なのか!?

【世界の議論】中国企業「爆社員旅行」フランスを“占拠”…6400人、ブランド品買い漁り経済効果「40億円超」

史上最大規模の社員旅行に参加したティエンズの従業員たち6400人

  史上最大規模の社員旅行に参加したティエンズの従業員たち6400人は8日、ニースの遊歩道に集結して人文字を作成。ギネス世界記録を更新するパフォーマンスもみせ、フランス人らを驚嘆させた(AP)

日本では今年も春節(旧正月)や清明節(お盆)の休暇での中国人による「爆買い」が話題になったが、フランスではここ数日、中国の一企業による爆買いならぬ「爆社員旅行」がメディアの注目を集めた。一行6400人は、パリと地中海沿岸のコート・ダジュールにある観光・保養都市ニースで2日ずつ滞在。2都市での出費は、宿泊費も含めて40億円超とみられており、不況のフランスにとっては何とも気前のいい話だった。(SANKEI EXPRESS

・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・

フランスは、年間約8500万人の外国人が訪れる世界一の観光大国。観光関連の国内総生産(GDP)は1500億ユーロ(約20兆1000億円)に及び、全GDPのほぼ7%を占めている。従来、中国人観光客はそんなに多くなかったが、近年の経済力伸長を反映してここ数年は急増。昨年は中国人観光客が200万人を超えたとみられている。フランスでも日本同様、中国人の爆買いは有名だが、売れ筋は異なる。日本では(1)洗浄機能付き便座(2)炊飯器(3)セラミック包丁(4)保温機能付きステンレス水筒…などが人気だが、日本訪問者よりも所得水準が高いフランス訪問者たちは、もっぱら高級ブランド品や化粧品を買いあさっているという。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】爆社員旅行は、中国でジュリアナ東京シンドロームが発生したという証なのか!?

ブログ冒頭の記事の中国爆社員旅行については、テレビなどでも連日のように報道されたので、ご存知の方がほとんどだと思います。しかし、テレビなどでは、こうした出来事の裏側まではほとんど報道しません。このブログでは、裏側を掲載してみようと思います。

まずは、中国人の爆買いに関する情報を掲載します。


上の動画では、中国人による爆買いは、賄賂であることが示されています。その他の、目的は転売です。

上の動画の結論は、中国人相手のビジネスモデルはある日突然破綻するという結論でしたが、まさにその通りです。このブログでも、何度か掲載したように、中国の経済はかなり停滞してるし、この停滞への対処が、AIIBなどによるインフラ投資など、過去の中国の発展モデルを繰り返すのみであり、抜本的な対策はないので、中国経済はこれから長い間停滞し続けることが予想されます。おそらく、日本における失われた20年よりもっと酷い状況になると思います。

そんな中での、中国人による爆買いや、中国企業による爆社員旅行を見ていると、私は過去の日本のジュリアナ東京の状況を思い出しています。

ジュリアナ東京は、良くバブルの象徴のように言われまずか、それは違います。実はジュリアナ東京でできたのは、バブル破綻以降です。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のURLを掲載します。
「中国は虚偽報道が多すぎる」、中国記者協会幹部が苦言―SP華字紙―【私の論評】中国虚偽報道は建国以来のものであり、最近はじまったことではない!!
中国幻想にとりつかれている人たちは、日本のバブル崩壊を真摯に振り返ってほしいです。現実に日本で、バブル崩壊が始まったのは、1990年です。
ジュリアナ東京2008
あのバブルの申し子といわれる、ジュリアナ東京は、バブル景気崩壊直後の1991年5月15日に総合商社・日商岩井(当時)とイギリスのレジャー企業・ウェンブリーの共同出資により設立されました。正式名称は「JULIANA'S TOKYO British discotheque in 芝浦」。芝浦1丁目の「第三東運ビル」の1階と2階の吹き抜けを使用し、総面積は1200m²で、最大3,000人以上を収容できる規模でした。上の写真は、2008年に一日限りの復活ということで催されたときの、イベンとの模様です。
この施設ができたときのことは、はっきり覚えています。当時、バブルの崩壊を数字的には把握していた私はは、かなりの違和感を覚えたものでしたが、世の中そんなものです。このあたりでは、その後失われた20年が待っていることなど予期できた人はほとんどいなかったでしょう。一時景気が悪くなっても、半年、1年で元に戻るくらいの感覚でいた人が多かったと思います。

日本では、こうした感覚の問題でしたが、中国では違うかもしれません。まさに、官製による好景気バーチャルワールドが展開されていて、本当はすでに数年前に、バブルが崩壊しているにも関わらず、ひたらすら、政府によってその事実が糊塗されているだけかもしれません。

このブログにも掲載したように、中国の公表するGDPなどの統計数値はかなり疑問です。それに、大量の大学生が就職できないでいる現実をみてください。中国では、少なくとも、GDP成長が8%を切ると、新規に生まれる労働者の雇用を吸収できなくなるといわれています。であれば、数年前から、大量の学生が就職できないということは、8%を切っていたと考えるのが当たり前だと思います。 
中国幻想に酔って、中国に投資、中国で事業などはり切っている会社や、人、ジュリアナ東京のお立ち台で踊っている女の子のようなものかもしれません。さて、いつまで、踊り続けていられることやら?
日本では、バブルが崩壊した後も、多くの人々はその実感がなく、バブル絶頂期の気質をそのまま受け継いだような、ジュリアナ東京が創立され、しばらくの間営業を続けていました。多くの人は、バブルが崩壊しても、このような狂乱状態を続けていたのです。

これは、昨年から中国の経済がはっきりと停滞したにもかかわらず、今年も中国人の爆買いが続けられ、それどころ今になって爆社員旅行が挙行されているという状況と良く似ていると思います。以下に当時のジュリアナ東京の狂乱ぶりを示す動画を掲載します。


この動画をみていると、爆社員旅行ではしゃいだり、日本で爆買いする中国人たちの姿とダブってみえてしまいます。

日本では、1990年にバブルが崩壊してから、本格的デフレに突入したのは1997年になってからです。実に、バブル崩壊から7年間たって、それも金融引き締めや、増税などをしてデフレに突入するという状況でした。おそらく、バブルが崩壊しても、これらを実施するのがもっと遅いとか、実施しなければ、多くの人々はバブルが崩壊したという実感はなかなか持てなかったのではないでしょうか。

経済の大きな変動に関しては、それに直接関与している人などはすぐに実感するのでしょうが、そうではない人たちには、なかなか実感できないものなのだと思います。

日本の最近の状況でいえば、増税はしたものの、金融緩和を継続している現在、統計数値などみていれば、明らかに景気が良くなっているにもかかわらず、まだまだそれを実感できない人が多いようです。

このように、経済の大きな変動があっても、多くの人がそれを実感できない状況を私は、ジュリアナ東京シンドロームと命名したいと思います。

ジュリアナ東京シンドロームを患った女の子たち?
多くの中国人や、日本の中国幻想に酔っている人たちは、まさにジュリアナ東京シンドロームを患っているのだと思います。

しかし、ジュリアナ東京シンドローム患者も、いずれ厳しい現実に気がつく日が必ずやってきます。

そうして、中国のシンドロームのほうが、日本のシンドロームよりさらにひどい状況になることが予想されます。日本の場合長期デフレになったのは、バブルが崩壊した後に、金融引き締めや、緊縮財政をやりすぎたことが原因でした。

本来、すぐにデフレから脱却できたにもかかわらず、そうしなかったため、確かに一般国民は塗炭の苦しみを味わうこととなりましたが、日本の富は、国内に投資先がないこともあり、海外に投資されることとなり、そのせいで対外純金融資産(要するに日本が外国に貸し付けている金)が世界で最も多い260兆円にものぼるようなとんでもない事態を招いてしまいましたが、それでも国の富は温存されました。

アベノミクスの腰を折った8%増税 だが金融緩和の効果は間違いなく浸透しつつある
しかし、中国は違います。すでに中国からは海外に不正にかなりの金が流れています。そもそも、中国経済は借金で発展してきたものです。その借金を国内のインフラ投資にまわすことによって、中国は急速に発展することができました。

しかし、今や先に示したように、多くの金が不正に海外に流れ、長年多額の借金は残り、中国の金融は空洞化していまます。

この状況は、特に中国人の高級官僚や、富裕層などは良く理解しています。だから、ますます中国の富は国外に流れることになります。

タイの6泊7日の社員旅行の様子(こちらは1万2700人が参加:健康製品会社)
私は、今回爆社員旅行をした「ティエンズ」社の李CEOは、単にジュリアナ東京シンドロームに罹患して今回のようなことをしたのではないと思います。

李CEOは、「従業員の慰安というだけでなく、経済的にも見返りがある旅行」ということを語っています。この「経済的見返り」とは、本当は海外での会社の知名度を飛躍的にあげるということだと思います。

もう、中国経済には見込みがないのははっきりしています。「ティエンズ」社としては、中国市場はもうあてにならないということで、世界を相手の事業展開を意図しているのだと思います。そのためには、世界的に会社の知名度を高めなければなりません。

それを実施するには、従来のマーケティング手法を用いていては、なかなかうまくはいかないと判断したのだと思います。そこで、今回の爆社員旅行です。これで、一気に知名度が高められたのは間違いないです。

しかし、知名度が高まったことと、製品が世界的に売れるということはまた別次元です。中国製品というと、特に食品など安全性の観点から、非常にイメージが悪いです。そのイメージの悪さを払拭できれば、世界での事業展開もうまくいくかもしれません。

しかし、これに失敗すれば、悲惨なことになります。そうして、私は失敗する確率のほうがはるかに高いと思います。なぜなら、たとえば、私は、蜂蜜が好きなので、良く購入するのですが、スーパーなどで売っている蜂蜜は、低価格ではあるものの中国製が多いので、スーパーでは購入せず、最近では近くにあるタリーズコーヒーのアルゼンチン産のものを購入するようにしています。

タリーズのハチミチ
中国製品の安全性が低いことは、日本やアメリカでも周知されていますし、ヨーロツパなどでもかなり知れ渡っていると思います。となると、世界展開にはかなり無理があります。

もし、海外展開がうまくいかなければ、李CEOも方針を変えると思います。何をするかといえば、無論従業員の大量リストラです。

この時になって、はじめて「ティエンズ」社の従業員たちもジュリアナ東京シンドロームから目覚めることになるかもしれません。

中国の爆社員旅行は、中国でジュリアナ東京シンドロームが発生したという証になるものと思います。

私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年5月23日土曜日

アメリカとの対立も辞さない習近平 「米中冷戦時代」の到来か―【私の論評】今度はアジアに残った冷戦構造が鮮明になり、やがて崩壊する(゚д゚)!

2015年05月22日(Fri)  石 平 (中国問題・日中問題評論家)

中国の野望はどうなるのか? 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
先月末から今月中旬までの日米中露の4カ国による一連の外交上の動きは、アジア太平洋地域における「新しい冷戦時代」の幕開けを予感させるものとなった。

まず注目すべきなのは、先月26日からの安倍晋三首相の米国訪問である。この訪問において、自衛隊と米軍との軍事連携の全面強化を意味するガイドラインの歴史的再改定が実現され、日米主導のアジア太平洋経済圏構築を目指すTPPの早期締結の合意がなされた。政治・経済・軍事の多方面における日米一体化はこれで一段と進むこととなろう。

オバマ大統領の安倍首相に対する歓待も、日米の親密ぶりを強く印象付けた。そして5月1日掲載の拙稿で指摘しているように、アメリカとの歴史的和解と未来志向を強く訴えた安倍首相の米国議会演説は、アメリカの議員たちの心を強く打った。この一連の外交日程を通じて、まさに安倍演説の訴えた通り、両国関係は未来に向けた「希望の同盟関係」の佳境に入った。

もちろんその際、日米同盟の強化に尽力した両国首脳の視線の先にあるのは、太平洋の向こうの中国という国である。

「アメリカとの対立も辞さない」
という中国のメッセージ

米中冷戦勃発か?

2012年11月の発足以来、習政権は鄧小平時代以来の「韬光養晦戦略」(能在る鷹は爪隠す)を放棄して、アジアにおける中国の覇権樹立を目指して本格的に動き出した。13年11月の防空識別圏設定はその第一歩であったが、それ以来、南シナ海の島々での埋め立てや軍事基地の建設を着々と進めるなど、中国はアジアの平和と秩序を根底から脅かすような冒険的行動を次から次へと起こしてきた。

その一方、習主席はアメリカに対して、「太平洋は広いから米中両国を十分に収容できる」という趣旨のセリフを盛んに繰り返している。上述の「アジア新安全観」と照らし合わせてみると、中国の戦略的考えは明々白々である。要するに、太平洋を東側と西側にわけてその東側をアメリカの勢力範囲として容認する一方、太平洋の西側、すなわちアジア地域の南シナ海や東シナ海からアメリカの軍事力を閉め出し、中国の支配地域にする考えだ。

つまり、「太平洋における両国の覇権の棲み分けによって中国はアメリカと共存共栄できる用意がある」というのが、習主席がアメリカに持ちかけた「太平洋は広いから」という言葉の真意であるが、逆に、もしアメリカがアジア地域における中国の覇権を容認してくれなければ、中国はアメリカとの対立も辞さない、というのがこのセリフに隠されているもう一つのメッセージである。習近平は明確に、アジア太平洋地域における覇権を中国に明け渡すよう迫ったわけである。

アジア太平洋地域におけるアメリカのヘゲモニーは、世界大国としてのアメリカの国際的地位の最後の砦であり、死守しなければならない最後の一線である。近代以降の歴史において、まさにそれを守るがために、太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争という3つの対外戦争を戦い、夥しい若者たちの血が流れた。そうやって確保してきたアジア覇権を、今さら中国に易々と明け渡すわけにはいかない。


実際、オバマ政権になってからアメリカが「アジアへの回帰」を唱え始めたのも、2020年までに米海軍と空軍力の60%をアジア地域に配備する計画を立てたのも、まさに中国に対抗してこの地域におけるアメリカのヘゲモニーを守るためである。

経済面でもアジア支配の確立を目指す

さらに、習政権は経済面での「アメリカ追い出し作戦」に取りかかっている。2015年の春から、アメリカにとって重要な国であるイギリスを含めた57カ国を巻き込んでアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立の構想を一気に展開し始めた。これは明らかに、日米主導のアジア経済秩序を打ち壊して中国によるアジアの経済支配を確立するための戦略であるが、アメリカの経済的ヘゲモニーにまで触手を伸ばすことによって、習政権は米国との対立をいっそう深めたと言える。

ここまで追い詰められ、流石にオバマ政権は反転攻勢に出た。そうしなければ、アジア太平洋地域におけるアメリカのヘゲモニーは完全に崩壊してしまうからだ

そして、4月下旬の日米首脳会談を受け、日本が先頭に立って中国のAIIB構想に対する対抗の措置を次から次へと打ち出した。

日本は、迷うことはない


その数日後、米軍は南シナ海での中国の軍事的拡張に対し、海軍の航空機と艦船を使っての具体的な対抗措置を検討し始めたことが判明した。アメリカはようやく本気になってきたようである。このままでは、南シナ海での米中軍事対立は目の前の現実となる公算である。

こうした中で、ケリー米国務長官は今月16日から訪中し、南シナ海での盲動を中止するよう中国指導部に強く求めた。それに対し、中国の王毅外相は「中国の決意は強固で揺らぎないものだ」ときっぱりと拒否した。中国はもはやアメリカとの対立を隠そうともしない。

そして21日、米国防総省のウォーレン報道部長は記者会見の中で、中国が岩礁埋め立てを進める南シナ海で航行の自由を確保するため、中国が人工島の「領海」と主張する12カイリ(約22キロ)内に米軍の航空機や艦船を進入させるのが「次の段階」となると明言した。

今月20日、アメリカのCNNテレビが、南シナ海で人工島の建設を進める中国に対して偵察飛行を行うアメリカ軍機に中国海軍が8回も警告を発したという生々しい映像を放映したが、それはまさに、来るべき「米中冷戦」を象徴するような場面であると言えよう。

ベルリンの壁の崩壊をもってかつての冷戦時代が終焉してから26年、世界は再び、新しい冷戦時代に入ろうとしている。以前の冷戦構造の一方の主役はすでに消滅した旧ソ連であったが、今やそれに取って代わって、中国がその主役を買って出たのだ。

米中の対立構造がより鮮明になれば、日本にとってはむしろ分かりやすい状況である。戦後の日本はまさに冷戦構造の中で長い平和と繁栄を享受してきた歴史からすれば、「新しい冷戦」の始まりは別に悪いことでもない。その中で日本は、政治・経済・軍事などの多方面において、同じ価値観を持つ同盟国のアメリカと徹頭徹尾に連携して、アジア太平洋地域の既成秩序を守り抜けばそれで良い。ここまできたら、迷うことはもはや何もないのである。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】今度はアジアに残った冷戦構造が鮮明になり、やがて崩壊する(゚д゚)!

石平氏は、戦後の冷戦体制は、ソ連が崩壊した後には消滅したという考えたのようです。しかし、私はそうは思ってはいませんでした。確かに、ソ連が崩壊した後、東欧諸国は民主化や、非共産化をすすめ、冷戦体制は消滅し今日に至っています。

最近は、ウクライナ問題などか持ち上がり、冷戦体制に戻ると指摘する評論家もいましたが、それは実現しないことでしょう。なぜなら、今やロシアは小国に過ぎないからです。今のロシアは、最盛期のソ連と比較すると比べ物にならないほど国力が衰退してしまいました。ただし、旧ソ連から引き継いだ核兵器が脅威であることは今も変わりはありません。

今や、GDPは日本の1\5程度で、人口も日本より2000万人ほど多い、1億4000万に過ぎません。軍事力も、旧ソ連の核兵器を受け継いでいるという強み以外は何もありません。軍事的には、アメリカなどの足元にも及ばない脆弱なものになってしまいました。おそらく、今のロシアはまともに戦争をしたらEUにも勝つことはできないでしょう。

だから、冷戦体制は消滅したというのは、ある面では正しいです。ただし、アジアに限っては冷戦構造は崩れませんでした。それについては、このブログでも以前紹介したことがあるので、そのURLを以下に紹介します。
中国が北朝鮮を「我が国の省」として扱う可能性を示唆―米紙―【私の論評】そう簡単に事は済むのか?!
銃殺刑に処せられた張成沢(チャン・ソンテク)氏

この記事は2011年11月のものであり、まだ張成沢(チャン・ソンテク)氏が銃殺刑に処せられる前のものです。

この記事では、当時の北朝鮮の将来がどうなるかを掲載するとともに、冷戦構造がアジアでは、継続されていることを掲載しました。

私の当時の北朝鮮の将来のみたては、しばらく実質集団指導体制が続き、その後本格的な権力抗争が発生するというものでした。

張成沢氏が、2013年12月12日に処刑され、最近では今年4月30日、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長(国防相)が処刑されたということで、私の見立てはあたっていたと思います。

4月末に突然、処刑された玄永哲氏
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事より、アジアにおいては冷戦構造が終了していなかったという部分のみを以下にコピペさせていただきます。

わたしは、しばらく実質集団指導体制が続き、その後本格的な権力抗争が発生すると思います。おそらく、今から5年後くらいから、権力抗争が激しくなると思います。なぜ、そんなことがいえるかといえば、今のところ、どれも傑出した存在がないからです。 
いずれにせよ、東欧では終わった冷戦構造が、アジアではそのまま継続しています。なぜ、残ったかといえば、当事者であるはずの日本が、これに対して何もしてこなかったことにも要因があったと思います。 
もうそろそろ、日本も、こうした世界の流れに翻弄されだけではなく、自ら進むべき道を選べるようにすべき時期に来ているのではないでしょうか?そうでなけば、拉致問題はいつまでたっても解消できないでしょうし、これからも、世界の流れに翻弄されるだけの存在となることでしよう。 
世界特にアジアの国々は、過去のこの地域における日本の貢献を忘れてはならないと思います。日本が日露戦争に勝利したからこそ、朝鮮半島はロシアの傘下に収まることもありませんでした。その後も日本が中国にとどまったことにより、ロシアの浸食はありませんでした。 
もし、日本が、極東の一小国であり続けていたなら、朝鮮半島ならび、中国の満州いや、もっと広い中国の版図の一部もロシア領になっていた可能性があります。 
いやそれどころか、今頃日本などは存在せず、当時のソ連の傘下に収まっており、私たちは、公用語としてロシア語を日々語っていたかもしれません。いや、最悪は、関東以北がロシア領、以南が日本というように、今の朝鮮半島のように二分されていたかもしれません。そんなことになっていれば、今頃、このような、冷戦構造がなかったか、あるいはもっと酷い状況になっていたかもしれません。
ソ連の消滅によって、東欧諸国では確かに冷戦構造は消滅したのですが、アジアは何も変わりませんでした。中国と北朝鮮の体制は本質的に何も変わりませんでした。そうして、それは、日本がアジアにおいて何もしてこなかったことにも原因があります。

何もしなかったというより、何もできなかったということが正しいかもしれません。世界の動きに合わせて、日本が何もできなかったがために、そうして、特にオバマが大統領になってからは、中国に対して厳しい対処をとらなかったため、中国の野望を許してしまい、今日のブログ冒頭の記事のような事態を招いてしまったという事になると思います。

東欧では、確かに冷戦構造は終焉したのですが、アジアは何も変わらず温存されてしまったにもかかわらず、これに対して過去の政権は何もしてきませんでした。

まともに取り組もうとしたのは、安部総理のみです。

しかし、日本の野党などこのことに全く無頓着です。特に、安全保障法制をめぐる野党の質問は酷いものばかりです。これは、危機管理に関わることであるにもかかわらず、延々と平時の手続き論ばかりしているという有り様です。

東日本大震災における民主党の危機管理は最悪でした。しかし、彼らは未だ何も反省してないようです。現在、南シナ海で何が起こってるのかまるで、見えてないようです。他の野党も似たり寄ったりです。年をとって、白内障にでもなってしまったのでしょうか。

実際に、何をはじめるのか、到底理解できない中国の海洋進出に周辺国は困惑しています。しかし、放置すればいずれ日本もとんでもない事態に巻き込まれるでしょう。中国の海軍を押さえ込むために、何をすべきか?

そのリスクとリターンを議論すべき国会で、クイズばかりやってる馬鹿野党。あまりにレベル低過ぎて全く話にも何にもなりません。野党は、どうやって中国海軍の海洋進出を抑えこもうとしているのでしょうか。

まさか、憲法9条を尊重して、「話し合い」による解決を目指しているというのでしょうか。であれば、野党議員団で特別攻撃隊を結成し、今すぐ南シナ海に赴いて、南シナ海での中国の盲動の現場に立って、「話し合い」攻撃を仕掛ければ良いのではないでしょうか。

もしそんなことをすれば、張成沢氏のように機関砲で銃撃されて、全員玉砕することになると思いますが、それで日本の世論もかたまり、アジアの冷戦構造終焉のための、具体的な行動にすみやかに打って出ることができるようになるかもしれません。今の野党が、安全保障で役立つことができるとすれば、これくらいしかないかもしれません。まあ、そんなことは絶対にしないでしょうが・・・・・・・。

いずれにしても、日米同盟がより強固で緊密なものになり、アメリカにも安部総理のような大統領が出てくれば、アジアの冷戦構造も東欧のように瓦解することは間違いないものと思います。冷戦構造が瓦解したあかつきには、無論ソ連が崩壊したように、中国の現体制も崩れることになると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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