沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、中国側が打診してきた「領有権」問題の棚上げ論は中国の常(じょう)套(とう)手段である。中国はこれまでも複数の国と領有権を争う南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で同様の手法を用い、実効支配を強めた“実績”がある。主権に対する菅政権の覚悟が問われる事態となっている。
棚上げ論は中国のかつての最高実力者、●(=登におおざと)小平氏が提唱していた。1978年に来日した際、尖閣諸島の「領有権」について「この問題は後の世代の知恵に任せて解決しよう」と表明。「存在しない」はずの領土問題を強引に国際問題化させ、経済的な利益の分配をちらつかせながら、やがて軍事支配を強める手法だ。
これを実践したのが南沙諸島だ。中国は1988年のベトナムとの交戦を経て諸島の一部の実効支配を強めると、1995年には当時の銭其●外相が、●(=登におおざと)氏の路線を踏まえて問題の「棚上げ」化を推進。2005年にベトナム、フィリピンとの海底資源の共同探査で合意し巧妙に主権奪取へと動いた。今や中国は南シナ海を自国の領海と位置付けている。
軍事力を背景にした中国の海洋権益への意欲は強まるばかりで、18日に閉幕した中国共産党第17期中央委員会第5回総会で採択されたコミュニケでも、「国防・軍の近代化を強化し、情報化時代の局地戦に打ち勝つ能力を核心とし、多様化した軍事的任務を完遂する能力向上」を目指す方針を盛り込んだ。
菅直人首相は、「日中関係は戦略的互恵関係の原点に戻りつつある」と述べ、関係回復に自信を示す。だが、交渉が中断している東シナ海のガス田共同開発でも、「東シナ海の実効支配を強めるのが中国の本当の狙い」(外務省幹部)とされている。
「当面の問題を棚上げしておけば、いずれ日本は妥協する」と見越したような中国の思惑に乗せられて関係改善を急ぐのか、それとも断固として主権にこだわるのか。日本外交の岐路が訪れようとしている。(酒井充)(産経ニュースより)
【私の論評】悪魔の誘いにのる菅内閣は日本にとって僥倖かも?
尖閣問題については、自民党の安倍元首相と、同党「影の内閣」外務担当を務める小野寺五典・元外務副大臣が18日朝(日本時間18日夜)、フロノイ米国防次官と国防総省で会談したときにも話題となっています。
次官は小野寺氏の質問に答え、尖閣諸島が中国に軍事的に占領された場合でも、「(対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約5条の規定により、日本をサポートする」と述べたといわれています。
同党関係者はこの質問の意図について「中国が尖閣諸島を占領した段階で米側が日米安保条約5条にある『日本国の施政の下にある領域』と見なさなくなる」との見解があることから、米側の立場を確認する狙いだったと解説しています。
一方、会談に同席したグレグソン国防次官補は中国の空母建造の動きについて「脅威の始まりとなる」と懸念を表明したといわれています。
このような事実や、上の動画などより、日本の背後にはアメリカがいるということで、中国もあまり強くは出られなくなると思います。アメリカとしても以前フィリピンから軍隊を撤退させて間もなく南沙諸島を中国が領土にしてしまったという失敗があるので、今度はそう簡単には中国の意のままにさせることはないでしょう。
地図を見てもおわかりのように、中国艦隊が外洋に出ようとしたとき、日本の尖閣諸島や沖縄諸島の島々と、領海は丁度障壁のように横たわっています。これらの障壁が崩れて、中国艦隊が自由に外洋に出られるようになれば、アメリカにとっも大きな脅威となります。アメリカがこの壁をやすやすと崩すということはないでしょう。
もし、この壁が敗れれば、アメリカにとって、北朝鮮、アフガン、イラクにならぶやっかいな問題がまた一つ増えることは確実だからです。壁が破れていなければ、中国の問題は中国固有の領土内での問題であり、アメリカにとっては、直接対応するような問題ではありませんでした。しかし、この壁が破られれば、この方面にも膨大な軍事力をさかなければならなくなるからです。
中国側がこの問題を棚上げにするという悪魔の誘いに、いずれ菅内閣は必ずのると思います。野党が反対しようが、国民が反対しようが、積極的にはのらないでしょうが、結局、消極的に実質的に認めるということになるでしょう。私は、無論これには大反対ですが、今の菅内閣をみていれば、そうなる確率のほうがかなり高いと思います。
しかし、そうなれば、アメリカからも弱腰を非難されるでしょうし。日本国内の世論も呆れ果てて、どうしようもなくなるわけです。これに関しては、普天間どころではなくなると思います。
そうなれば、菅内閣はもうもたなくなります。普天間で失敗した鳩山さんと同じく、おそらく、首相は交代という事になります。尖閣は、菅さんにとっての普天間ということになることでしょう。そうして、これを境に民主党の基盤は、ますます揺らぎます。そうして、次の選挙では政権交代ということになるでしょう。そうして、新しい政府が、「尖閣列島に関する領土問題は存在せず」と首相談話を発表すれば、良いのです。というより、それを政権公約にかがげて実行するような政党や、政党連合が政権交代をすれば良いのです。
こうしたことが、行われるようになれば、日本にとっては僥倖となるかもしれません。まずは、国民の中に理想主義による政治、ポピュリズムによる政治などは無意味であるとの政治に対する成熟した考え方が醸成されるという面があると思います。これに関しては、他の先進国ではもう終わったことなのですが、残念ながら、日本だけが取り残されていたと思います。
私としては、この成熟化が進み、さらに一歩進めて、安全保障や、政治システム改革にむすびつけることができれば、日本にとって僥倖になると思います。私としては、無論、悪魔の誘いにはのるべきではないと考えているのですが、菅さんが誘いに乗る確率が高いので、もしのったとしたら、このような考え方もできるということで、シミレーショしてみました。
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