2015年8月22日土曜日

英雄像が伝える日本とインドネシアの絆 「日本は侵略をしていない」 石井孝明氏―【私の論評】これからも伝えていこう!歴史に埋もれた"インドネシアと日本との関係史"(゚д゚)!


防衛省構内で行われたスディルマン将軍の像への献花式

東京・市ケ谷の防衛省構内に、インドネシア独立戦争の英雄で、初代軍司令官であるスディルマン将軍(1916~50)の像が設置されている。同国の独立記念日である17日、日本人有志によって献花式が行われ、ユスロン・イザ・マヘンドラ駐日インドネシア大使らも出席した。ジャーナリストの石井孝明氏が、両国をつなぐ絆についてリポートした。

 ◇

「みなさんが、わが国の英雄を称えていただいたことは、本当にうれしい。両国には深い絆があります」。ユスロン大使は、流暢(りゅうちょう)な日本語でこうあいさつした。同大使は、筑波大学に留学し、国際政治経済学の博士号を習得した経歴を持つ。

インドネシアは、350年にわたってオランダの圧政を受けていた。日本軍が1942年に侵攻してオランダ軍を追い出し、日本が敗戦した2日後の45年8月17日、独立を宣言した。スカルノ初代大統領は独立宣言文に「170805」と日付を入れた。「05」とは、戦前の日本で使用していた皇紀2605年の意味だ。スカルノ氏らは、独立を支援してくれた日本を評価していたのだ。

ところが、オランダ軍が再び植民地にしようと戻ってきた。

これに立ち向かったのが、日本軍政下で結成された郷土防衛義勇軍で、スディルマン将軍はリーダーとして4年にも及んだ独立戦争を戦った。そして、何と2000人以上もの元日本将兵が現地に残り、「インドネシアの独立のために」と戦い、約1000人が尊い命を捧げた。残念ながら、こうした事実は、日本ではあまり知られていない。

スディルマン将軍は、オランダが49年12月にインドネシア独立を認めたのを見届け、翌年1月、34歳の若さで結核で亡くなった。同将軍の像は2011年1月、インドネシア国防省から日本に贈呈された。

今回の献花式の実行委員長である国際政治学者の藤井厳喜氏は、日本が大東亜戦争で「民族解放の理念」を掲げたことを強調し、「インドネシアが主導し、民族自決を訴え、欧米列強の植民地支配からの独立を宣言した55年のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)と理念がつながる」とあいさつした。

同会議の60周年式典は今年4月にインドネシアで行われ、安倍晋三首相も出席し、「平和と繁栄を目指す諸国の先頭に立ちたい」と演説した。

献花式の呼びかけ人である評論家の加瀬英明氏は「この場所の意味を考えてほしい」と語りかけた。防衛省のある市ケ谷台は、戦時中には参謀本部と陸軍省があり、戦後は「日本がアジアを侵略した」と断罪した東京裁判が行われた。

加瀬氏は「アジア諸国と日本の関係、特にインドネシアとの関係は決して侵略ではなかった。両国の絆を確認し、歴史の正確な事実を示すことは、東京裁判の欺瞞(ぎまん)を示す意味がある」と続けた。

独立への貢献と戦後の経済協力から、インドネシアには親日的な人々が大半だ。「日本は悪い」と決めつけるメディアや有識者の偏見もあり、両国の絆は戦後70年にわたって黙殺されてきた。市ケ谷台に立つスディルマン将軍の像は、日本が戦った戦争の知られざる真実を伝えている。

【私の論評】これからも伝えていこう!歴史に埋もれた"インドネシアと日本との関係史"(゚д゚)!

上の記事で述べたような歴史的事実は、私は小学生の時から知っていました。なぜかといえば、祖父や父親やその他親戚の人たちからそのような話を聞き及んでいたからです。そうして、その中には実際に大東亜戦争に参加した方々も大勢いたからです。

親戚で、大東亜戦争に参加した経験のある人たちは、私のような親戚の子供に聞かれると戦争のときの体験などいろいろ語っていました。その中の一つの話が、インドネシアの独立の話です。

日本では、今では大東亜戦争はすべてが日本が悪くて、とんでもない侵略戦争をしていたという自虐的歴史観が流布されていますが、実際に話ではそのようなことではなかったことが良く理解できました。

このような話は、我が国の将来の人たちが自虐的歴史館に染まってしまわないように、伝えていく必要があると思います。だからこそ、本日は上の記事を掲載させていただきました。

インドネシア独立に関する記事は、このブログでも以前上の記事とはまた別の角度から、掲載したことがあります。

その記事の、リンクを以下に掲載します。
文書は最低西暦を併記、統計からは元号一掃を(東洋経済)−【私の論評】元号を廃して、インドネシアの独立宣言にも刻まれた皇紀をもちいるべきである!!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、東洋経済に日本の統計からは、日本の元号を廃止せよという意見が掲載されていたため、それに反対をする私の論評を掲載したものです。その仮定で、インドネシアの独立や、独立宣言に日本の皇紀の年号が用いられていることなどを掲載しました。

以下にインドネシア独立と元号に関係する部分のみを引用させていただきます。

"
皇紀とは、神武天皇即位紀元(じんむてんのうそくいきげん)を基とするものです。これは、初代天皇である神武天皇が即位したとされる年を元年(紀元)とする、日本の紀年法です。この皇紀は、日本では、ほとんど知られていませんが、インドネシアの独立宣言文にも用いられている年号です。(下はインドネシア独立宣言を読むスカルノ氏)


略称は皇紀(こうき)といいます。外にも、皇暦(こうれき)、神武暦(じんむれき)、神武紀元(じんむきげん)、日紀(にっき)などともいいます。年数の英字表記では、「Koki」や「Jimmu Era」などといい、皇紀2660年を「Koki 2660」「Jimmu Era 2660」などと表記します。紀元節(現在の建国記念の日)廃止までは、単に「紀元」と言った場合には、神武天皇即位紀元(皇紀)を指していました。西暦2012年は、神武天皇即位紀元皇紀2672年です。西暦に660年を足せば、皇紀に、皇紀から660年差し引けば、西暦になるというで、これも元号と違って本当に理解しやすいです。国内で統一してしまえば、統計的にも、問題がなく、非常に良いと多いと思います。

このようなことをいえば、神武天皇が即位されたという確かな記録はないという人もいますが、そんなことをいいだぜは、現在の研究では、そもそも、キリスト生誕から、2012年目であるという西暦も、根拠が薄弱になります。イエス・キリストの生誕は、紀元前4年頃 から 紀元後28年の間とされており、諸説墳分であり、正確なところは、誰もわかりません。日本国の歴史は、始めがよくわからないほど古いものであるという考えで、日本の年号を皇紀にするという考えは、それで良いものと思います。

それに、何か今では、西暦を使うのが当たり前のようになってしまっていますが、そもそも、もともとは、キリスト教と縁もゆかりもないもない日本で、西暦を強要するのは、もともとおかしな話です。元号は、中国、西暦は欧米発祥ということから、独自の日本文明を持つ日本においては、皇紀で表記するというのが、最もふさわしい行き方であると思います。

さて、インドネシアの独立宣言になぜ、皇紀が用いられたのか、今では、知らない人も多いと思いますので、以下に、それを記載します。

インドネシアのムルデカ(独立)広場中央に聳える高さ137mの独立記念塔(モナス)(写真下)。この地下1階に、インドネシアの「三種の神器」(独立宣言書・独立時に掲揚された国旗・国章)が奉納されています。「第一の神器」は、スカルノ(初代大統領;左写真の向かって右側)とハッタ(初代副大統領;左写真の向かって左側)がサインした独立宣言書(下写真)なのですが、ここに記された日付は「05年8月17日」。インドネシアが独立を宣言したのは西暦1945年。なのに、日付に記された年は「05」年。実は、この「05」年は、当時、「昭和」と共に日本で使われていた「皇紀」(神武天皇の即位した紀元前660年を元年とする)で、「2605」年が略されたものなのです。さて皆さん、なぜ、スカルノ等はインドネシア独立宣言書に日本独自の紀年法である「皇紀」で年月日を記載したのでしょうか? そこには、インドネシアの独立に深く関わった「日本」の存在があったのです。


まず最初に、日本とインドネシアの「出会い」から書きましょう。よく「大東亜戦争」と言うと、日本が米英(及び連合国)に対して宣戦布告した事になっていますが、こと、オランダに関しては、逆にオランダから日本に宣戦布告してきたのです。当時、オランダもアジアに植民地を持っていました。「オランダ領東インド」(通称、「蘭印」)-インドネシアの前身です。日本の初戦における電撃的な勝利に危機感を感じたオランダは、「大東亜共栄圏」構想-アジア解放を「錦の御旗」に掲げて蘭印へ進軍して来るであろう日本軍の機先を制する目的で、先手を打って日本に宣戦布告してきたのです。

これに対して、日本軍は昭和17(1942)年3月1日、今村均(ひとし)中将(下写真)率いる「帝国陸軍ジャワ派遣軍第16軍」(通称「治(おさむ)部隊」)、2個師団総勢55,000人を擁して、ジャワに敵前上陸し、インドネシアへの第一歩を踏んだのです。さて、ジャワに上陸した「治部隊」ですが、ジャワに伝わる一つの伝説「ジョヨボヨの予言」(北方から小柄な黄色人種がやって来て、自分達を解放してくれる。しかし、ジャゴンの花が咲く頃には帰ってゆく・・・)が奏効して、親日一色に染まったジャワ島民の支持もあり、「治部隊」の2倍の兵力を擁していたオランダ軍(蘭印連合軍)を、上陸後、僅か9日にして降伏させたのです。


さて、ジャワを占領した日本軍はこの地で一体何をしたのでしょうか? 第一になされた事は「民心の安定」でした。それは、今村司令官の発した「布告第1号」に見る事が出来ます。

日本人 とインドネシア人は同祖同族である
日本軍はインドネシアとの共存共栄を目的とする
同一家族・同胞主義に則って、軍政を実施する

当時、植民地の住民にとって「共存共栄」等と言う言葉はとても信じられないものでした。なぜなら、欧米列強にとっての植民地とは、「支配者」と「被支配者」の関係でしかなかったからです。ところが日本軍は開口一番、「共存共栄」を唱えたのですから、住民が驚いたのも無理はありません。しかし、今村司令官の布告は終戦まで、決して破られる事はなかったのです。更に、ジャワ軍政府の施政も住民の支持を得ました。例えば、

農業改良指導
小学校の建設と、児童教育の奨励
新聞「インドネシア・ラヤ」の発刊
英・蘭語の廃止と、公用語としてのインドネシア語採用
5人以上の集会の自由
多方面でのインドネシア人登用
インドネシア民族運動の容認
インドネシア人の政治参与を容認
軍政府の下に「中央参議院」を設置
各州・特別市に「参議会」を設置
ジャワ島全域に、住民による青年団・警防団を組織
「インドネシア祖国義勇軍」(PETA)の前身を創設

等ですが、これらは住民にとって、どう見ても、独立への「ステップ」としか映りませんでした。そして結果的に、ジャワ軍政時代にインドネシア独立の「段取り」は全て整えられたのです。

インドネシアの若者に教練をす日本兵
一方、インドネシア人にとって「救世主」と映った今村司令官ですが、大本営との意見対立(ジャワ軍政の施政方針は多分に今村司令官の独断であった)で、在任僅か10ヶ月でジャワ軍司令官を解任、終戦の際に戦犯としてバタビアのチビナン監獄に収監されました。そして、今村将軍(終戦時、陸軍大将)も「死刑」の危機にあったのです(部下の何人かは既に処刑されていた)。この時、映画さながらの「ドラマ」があったのです。

なんと、インドネシア独立の父・スカルノ等独立運動指導者が、死刑寸前に今村将軍を「奪還」しようとしたのです。結果的に、今村将軍は死刑執行寸前に釈放され、この奪還作戦は幻に終わったのですが、さて皆さん、ここまで書いた所で、今回のテーマに戻ろうと思います。そうです。なぜ、インドネシアの独立宣言書に「皇紀」が採用されたのか?

それは、大本営の命令に反して、独断でジャワ軍政を進めた今村将軍と、独立戦争の際、独立義勇軍(インドネシア国軍の前身)に身を投じた2,000人もの旧日本兵(彼らの多くは復員せず独立戦争に参加。独立後もインドネシアに残った)に対してはらわれた最大の「敬意」ではなかったでしょうか。

スハルト前大統領は在職時に、インドネシアの体制を「家族主義」と称しました。勿論、これには、スハルト体制下、一族及び子飼いの側近が政治・軍事・経済の枢要を占めた事実を正当化する意味もあったでしょう。しかし、その根底にあったものは、ジャワ軍政当初、今村司令官が布告第1号で唱えた「同一家族・同胞主義」ではなかったでしょうか? オランダによる植民地支配から解放し、独立建国に至るレールを敷いた今村司令官によるジャワ軍政。それは、今日に至るまで、インドネシアの根底に深く根を下ろしているのだと思います。

他国の独立宣言にも刻まれた皇紀。この皇紀を用いることは、この国の自主独立の精神を尊重することにもなると思いますし、国民が、日本という国の伝統と歴史に注目し、次への大きなステップに結びつくのではないかと思います。
"
このような"インドネシアと日本との関係史"、歴史に埋もれて語られることはほとんどなくなりました。

私自身は、このことについては、実際にインドネシアやシンガポールに大東亜戦争中に行かれた方から、話を聴き、その後もいくつかの書籍にあたって、知っていました。

このような歴史的事実は、特に実際に直接関わった人から話を聴いた人は、これを知らない若い世代の人々に伝承していくべきものと思います。

その思いから、このブログにもこのような話を掲載しています。

このブログを読まれた方も、この話を知らない人たちにどんどん拡散していただきたいです。

よろしくお願いします。

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2015年8月21日金曜日

安倍政権「消費増税再見送り」で来年7月衆参ダブル選へ!―【私の論評】来年の衆参同時解散総選挙というシナリオの確率はかなり高い!これに気づかない政治家・マスコミは、完璧に蚊帳の外(゚д゚)!

安倍政権「消費増税再見送り」で来年7月衆参ダブル選へ!



首相が「いの一番」に会う相手

内閣府が8月17日に発表した2015年4~6月期の国内総生産(GDP)速報で、実質GDPの前期比伸び率が年率1.6%減となった。景気は踊り場にさしかかっている。この先をみても、中国経済の減速など不安材料がある。安倍晋三政権はどう対応するのか。

自民党の谷垣禎一幹事長は「先を見通して経済対策を打ち出していくことが必要」と述べた。首相のブレーンである本田悦朗内閣官房参与もウォールストリートジャーナル日本版のインタビューで「3兆円を上回る規模」の景気対策が必要と指摘している。

安倍首相は8月15日夜、本田参与を交えて会食し、翌16日にはゴルフも一緒にしている。別荘同士が近いためでもあるが、首相が一仕事を終えて休みをとるときは「いの一番」に本田参与と一緒というのが、最近のパターンだ。

本田参与の意見は相当程度、首相の経済政策運営に反映されるとみて間違いないだろう。ただ、景気対策が3兆円超規模で適当かどうか。

内閣府が試算している需給ギャップは、4.5%のプラス成長だった1~3月期でもマイナス1.6%(約8兆円の需要不足)だった。今回のマイナス成長を踏まえれば、10兆円規模の大型対策になっても不思議ではない。

いずれにせよ、秋に政権が景気対策を打ち出すのは確実とみる。それは目先の理由だけからではない。来年2016年春から夏にかけて、消費税10%への引き上げ問題が控えているからだ。

安倍首相は昨年暮れの再増税見送り、衆院解散総選挙の際、17年4月に10%への引き上げを約束した。ただし、それはあくまで「決意表明」にとどまる。本当に引き上げるなら、食料品など軽減税率の扱いを定めた増税関連法案を可決成立する必要がある。

軽減税率の導入と10%引き上げはセットだ。軽減税率を導入せずに10%に引き上げるのは、自民党のみならず公明党が絶対に容認しない。

逆に再び先送りする場合でも、増税自体はすでに予定されているから、再び増税先送り法案を可決成立させなければならない。つまり増税を予定通り実施するにせよ先送りするにせよ、あらためて法律措置が必要であり、逆に言えば法定されない限り、10%引き上げは正式決定ではないのである。

はたして、いまの環境で再増税できるだろうか。そこを考える前に、まず予想される今後の日程を確認しておこう。それには昨年秋の展開が参考になる。

「ポチ取材」では分からない真実

私が最初に増税先送りで衆院解散という見通しを示したのは、14年10月22日放送のニッポン放送「ザ・ボイス~そこまで言うか」だった(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/40887)。結果として、私の見通しは解散日が予想より2日遅れただけで、12月14日の投開票日を含めてドンピシャリだった。

私がなぜ先送りと解散を当てられたかといえば、菅義偉官房長官が10月22日午前の会見で「14年7~9月期のGDP速報値をみて判断する」と言ったからだ。菅長官はそれまで「GDP改定値をみて判断する」という言い方だった。

速報値と改定値では、当時の政策運営で天と地ほどの違いがある。速報値が出るのは11月17日。一方、改定値は12月8日だった。前者は臨時国会の開会中だが、後者は国会が閉じているのだ。国会開会中に増税判断をするとなれば、残りの会期は増税するにせよしないにせよ、増税問題一色が焦点になって他の法案審議どころではなくなる。

「法案審議を犠牲にしても増税の扱いを決める」というのは、言い換えれば「臨時国会を捨てる」という話だ。つまり「もう解散してしまうから、残りの会期は関係ない」。解散するなら、選挙でマイナス材料になる増税で解散はありえない。当時の景気状況も考えれば「先送りで解散」というのが、私の読みだった。

増税をめぐる判断が11月中か国会が閉じた後の12月になるかは、それほど決定的な違いがあったのだ。この重要性に気付いた記者は残念ながら、私だけだった。

東京新聞をはじめ多くのマスコミは解散が決まった後になっても「解散に大義があるのか」などとピンぼけ報道を続けた。永田町と霞が関、マスコミに深く根を張った増税派をなぎ倒すためには、解散以外に手はなかったが、そういう分析もない。

なぜマスコミが見通しと分析を間違うかといえば、政治家や官僚に取り入ろうとする「ポチ取材」ばかりしているからだ。この問題は当時のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/41078)を参照していただきたい。

さて、以上の展開を参考に今後の見通しを考えよう。当初15年10月の増税予定を17年4月に先送りしたのだから、今回は時間軸をぴったり1年半ずらせばいい。今回、増税判断の決め手になるのは来年16年1~3月期のGDPである。速報値が出るのは16年5月、改定値が出るのは同6月だ。

今回も増税は先送りする!

前回と今回で違う事情は、16年7月に参院選が決まっている点である。参院選で増税の判断を問うとなると、6月の改定値を待っていると投開票日まで1ヵ月しかない。私が前回、先送りと解散を報じたのは14年10月だった。つまり、総選挙投開票日2ヵ月前の10月段階で安倍政権は方針を決めていたのだ。

私がコラムで報じたからといって「本当に政権が10月段階で先送りと解散を決めていたかどうか分からないじゃないか」と思われる読者もいるかもしれない。私はこういう重要問題はきちんと事後確認して書いている。だれに!? そこは私を信じていただくしかない。

投開票日2ヵ月前に判断していた前例を今回に当てはめれば、参院選投開票日2ヵ月前の16年5月、すなわち1~3月期のGDP速報値をみて判断することになるだろう。ただし、それはあくまで政権の判断であり、それを世間にどんなタイミングで発表するかは、まったく別の問題である。

以上で日程を整理した。そこで肝心の10%引き上げをするかどうかを考える。結論から言えば、私は現段階では今回も先送りとみる。なぜかといえば、冒頭に書いたように景気の現状が思わしくないからだ。

安倍政権は景気を刺激するために秋に景気対策の補正予算を組むだろう。それは増税を目指す財務省にとっても避けられない。景気対策もしないで景気がこのまま悪化したら、とてもじゃないが、来年春に増税決定などできないからだ。

だが、景気対策で景気が劇的に上向くのは期待薄ではないか。せいぜい一段の悪化を食い止める程度だ。景気を下支えできたとしても、それで「さあ増税」とはいかない。8%に引き上げた14年4月増税の悪影響が1年以上経ったいまに至っても残っているのだ。

このうえ10%に引き上げたら、どれほど消費を冷え込ませることか。安倍政権の最重要課題はデフレ脱却である。だが、日銀が掲げた消費者物価上昇率2%の目標は当初目指した15年中に達成できず、16年半ばに達成時期を先送りしている。

まさに政権が増税判断をするタイミングである。そんな重要な時に政権が日銀の努力に水を差すような増税を決めるだろうか。10%引き上げを決めたら、日銀は一時的に目標を達成できたとしても、たちまち元の木阿弥になってしまうのは確実だろう。日銀の本音は増税ノーだ。

そもそも補正予算で景気対策を決めるなら、その効果も見極められないうちに増税するのは財政政策として根本的に矛盾している。右手で火鉢をあおぎながら、左手で水をかけるようなものだ。こういう政策展開の常識はポチ記者やピンぼけマスコミには分からないが、安倍政権はしっかり理解している。
来年7月、ダブル選へ

10%引き上げを先送りするなら、安倍政権は来年7月のタイミングで衆参ダブル選に持ち込むのではないか。安倍政権の内閣支持率は終戦70年談話の発表後、持ち直しているが(たとえば産経・FNN合同世論調査で3.8%増の43.1%)、政権選択選挙でない参院選は、強すぎる与党を嫌う国民のバランス感覚が働きやすい。

増税先送りは与党に追い風をもたらす。それならダブル選で政権選択選挙に持ち込み、勢いに乗って参院選も有利に戦う。そんな政治判断は合理的である。

私は2016年ダブル選予想を7月12日放送のテレビ番組『そこまで言って委員会NP』で初めて話した。コラムは同17日発売『週刊ポスト』の「長谷川幸洋の反主流派宣言」(http://www.news-postseven.com/archives/20150717_336635.html)が初出である。そちらもご参考に。いずれマスコミも安保関連法案の熱狂が覚めれば、報じ始めるだろう。

長谷川 幸洋

【私の論評】来年の衆参同時解散総選挙というシナリオの確率はかなり高い!これに気づかない政治家・マスコミは、完璧に蚊帳の外(゚д゚)!


上の長谷川幸洋氏の主張、十分にありそうというか、もうすでにそうなるであろうと見たほうが良いと思います。

確かに、昨年12月の解散総選挙を的中させた長谷川氏は凄いとは思いますが、増税見送りのための解散総選挙が実際に行われてしまった現在においては、夏の衆参同時選挙は十分考えられる筋立てです。

このブログでは、昨日も今年の経済白書が昨年、一昨年とはうって変わって、まともになったことを掲載しました。そうして、今年の経済白書においては、14年度の実質GDPは駆け込み需要の反動減で1.2%程度押し下げられたほか、税率引き上げに伴う物価上昇を受けた消費の減少も、0.5%程度の押し下げ要因になったと分析しています。

昨年、一昨年とはうって変わってまともになった今年の『経済白書』

デフレ脱却については、興味深い記述もある。今後についてはGDPギャップ(需要と供給の差)のマイナス(需要不足)幅を縮小することが重要だという指摘です。このGDPギャップがマイナスになった要因は、消費増税です。これを縮小させるためには、減税を行うのが望ましい。消費増税の影響で一向にさえない景気を上向きにするためには、減税を行うのが望ましいと、分析しています。

この白書からも、影響が軽微と予測した政府の経済見通しは、1.4%成長でしたが、結果としてマイナス0.9%だったので、2.3%の予測ミスとなったことは明白です。

政府の中で甘い見通しの間違いにいち早く気がついたのが、安倍首相でした。そのため安倍首相は今年10月に予定されていた消費増税を延期するために昨年末、衆議院の解散・総選挙に打って出ました。その勝利で辛うじて再増税は延期されました。1度目の消費増税は失敗したのですが、2度目の間違いは犯さなかったのです。というより、1度目は、財務省など官僚はもとより、マスコミ、政治家も野党はもとより自民党内もすべて増税の意見が大勢を占めはからずも、押し切られた形で増税したと考えらます。

これによって、安倍総理は財務省(大蔵)に真っ向から立ち向かって勝利した初めての首相となりました。これによって、日本の政治は一歩前進したと思います。総理大臣は解散によって民意を問うことにより、財務省の企てを阻止することができることを、世に向かって示したのです。実際、10%増税などしてしまえば、とんでもない破滅的な結果を招くことになったと思います。

さて話を元にもどして、今年の経済状況はどうかといえぱ、ブログ冒頭の記事にもある通り、内閣府が8月17日に発表した2015年4~6月期の国内総生産(GDP)速報で、実質GDPの前期比伸び率が年率1.6%減となっています。景気は踊り場にさしかかっているとみるべきです。それだけ、昨年4月からの消費税増税は大きな悪影響を及ぼしているのです。


内訳をみると、内需の寄与度が-0.1%、外需の寄与度が-0.3%となっており、外需(輸出)の不振が足を引っ張っぱりました(輸出は前期比-4.4%、輸入は-2.6%で、ともに前期比減であったが、輸出の減少幅が輸入の減少幅を上回ったため、「純」輸出を意味する外需はマイナスの寄与となりました)。

ただし、GDP統計発表前に日銀がすでに発表していた月次の実質輸出入統計をみると、2015年4-6月期は、輸出が季調済前期比-3.6%、実質輸入が同-1.8%となっており、外需の不振は十分に予想可能なものでした。

そのため、発表されたヘッドラインの数字(実質GDP成長率)は、事前のエコノミストコンセンサスからそれほど大きく乖離せず、その日の株式市場や為替市場には特に大きな影響を与えていません。

しかし、外需以上に深刻だと思われるのは、消費支出です。


2015年4-6月期の実質消費支出(民間最終消費支出)は季調済前期比-0.8%の大幅減となりました。実質消費支出は、消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年4-6月期に前期比-5.0%の大幅減を記録した後、2014年7-9月期から2015年1-3月期まで3四半期連続で前期比+0.3%の緩やかな増加となっていました。今回(2015年4-6月期)の大幅減で、消費税率引き上げ後の緩やかな消費回復をほぼ相殺してしまいました。

連続でデータが入手可能な1994年1-3月期以降の実質消費支出の動きをみると、1994年1-3月期から2008年1-3月期までは、景気循環とは無関係に、ほぼ年率1%(正確に計算すると0.97%)のペースで安定的に成長してきました(この間の実質消費支出はトレンドだけでその動きの約96%が説明できます)。

ちなみに、1996年半ばから1997年初めにかけてトレンドを大きく上回って増加していますが、これは消費税率引き上げ(1997年4月)前の駆け込み需要の増加によるものです。その後、2008年のリーマンショックを機に、消費水準は大きく落ち込んだのですが、徐々に回復に転じ、2013年にはほぼ、元のトレンド上に回帰しました。

そして、直近の落ち込みの理由は、2014年4月の消費税率引き上げでによるものです。大多数のエコノミストは、1997年時の状況から、消費税率引き上げの影響は一時的であり、すぐにトレンドに回帰すると考えていました。しかし、2014年4月の消費税率引き上げ後の実質消費は、トレンドに回帰するどころか、元のトレンドからますます下に乖離しつつあります。

このような状況で、もし10%を増税すればどのようなことになるのか、容易に類推ができます。十中八九破滅的な結果をもたらします。

経済学者の田中秀臣氏は、本日以下のようなTweetしていました。
Tweet中の片岡さんとは、片岡剛士氏のことだと思います。片岡氏や、田中秀臣氏など、8%増税がかなり悪い影響をもたらすことを、8%増税の随分前から警告していました。

今回も、上の統計数値をみたり、彼らのようなまともなエコノミストらの意見を参考にすれば、とんでもないことになるのはわかりきっています。

もし、今後消費傾向がもとにもどらないうちに、10%増税などしてしまえば、安倍総理であれ、安倍総理以外の誰の政権であれ、経済は失速し、その責を負わなければならなくなることになります。そんな冒険は誰もしないです。

こういった、背景を考えれば、来年7月の衆参同時解散、総選挙は十分にありえる話というより、実際にそうなる確率がかなり高いとみておくべきです。

これに気づかない、政治家やマスコミなどがいたとしたら、もう彼らは完璧に蚊帳の外ともいうべき存在になりは立てたということです。それも、他者から蚊帳の外に置かれているのではなく、自ら自分を蚊帳の外においているような状態です。



もし、彼らが来年6月あたりなって、また「大義なき解散」などといいだしたら、もう目もあてられません。そうだとすれば、彼らには経済をそうして政治を語る資格はないということになります。しかし、本日の国会での安保法制に関する野党の質問などみていると、本当にそうなりかねないので怖いです。特に本日は、上の動画のように、またまた本当にくだらない揚げ足取りで、無駄な時間を費やしています。最低限、このような無様な真似だけはやめていただきたいです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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日本経済はなぜ浮上しないのか アベノミクス第2ステージへの論点
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2015年8月20日木曜日

消費増税によるGDP成長率マイナスが判明 政府予測「影響は軽微」外れ、甚大な悪影響―【私の論評】過去の『発狂白書』から比較すると、今年はまともになった『経済白書』(゚д゚)!

消費増税によるGDP成長率マイナスが判明 政府予測「影響は軽微」外れ、甚大な悪影響
内閣府のHPより

エコノミスト・経済学者の力量を測るためには、経済予測をさせることだ。もちろん将来のことはわからないので、百発百中はありえない。しかし、1年先くらいの予測を6~7割程度当てることができなければ、エコノミストの存在価値が問われる。

2012年に民主党から自民党に政権交代して、経済政策ががらりと変わった。特にここ数年の大きな経済政策の変更点としては、13年4月からの金融緩和と14年4月からの消費増税がある。それらの変更により経済がどのように変わるかについて、多くのエコノミストが予測していたが、その結果について今月14日に発表された15年度経済財政白書に良く整理されている。

まず金融政策であるが、多くの識者は「デフレを脱却できない」としていた。ところが経済財政白書では、「消費者物価や国内総生産(GDP)デフレーター、単位労働コストが上昇するなど、デフレ脱却に向けた動きは着実に進んでいる」と評価している。

金融政策について安倍晋三政権は、黒田東彦氏を日本銀行総裁、岩田規久男氏を副総裁に据えて異次元緩和を引き出したので、政府の見通しとしては間違っていなかった。間違っていたのは多くのエコノミストのほうであった。

デフレ脱却をできないと予測していたエコノミストは、「異次元緩和によってハイパーインフレ、国債暴落になる」とも主張していたが、まったくの大外れとなった。次に、消費増税である。これも多くのエコノミストは政府の見解と同様に「影響は軽微である」と予測していたが、大きく外れた。

経済財政白書では、14年度の実質GDPは駆け込み需要の反動減で1.2%程度押し下げられたほか、税率引き上げに伴う物価上昇を受けた消費の減少も、0.5%程度の押し下げ要因になったと分析している。影響が軽微と予測した政府の経済見通しは、1.4%成長だったが、結果としてマイナス0.9%だったので、2.3%の予測ミスとなった。政府やその提灯持ちだった多くのエコノミストは予測を外した。

政府の中で甘い見通しの間違いにいち早く気がついたのが、安倍首相である。そのため安倍首相は今年10月に予定されていた消費増税を延期するために昨年末、衆議院の解散・総選挙に打って出た。その勝利で辛うじて再増税は延期された。1度目の消費増税は失敗したが、2度目の間違いは犯さなかった。

減税の必要性

今回の経済財政白書の分析は、概ね評価できる。過去の政策に関して失敗の本質でも書かれていると、もっと良かったであろう。

デフレ脱却については、興味深い記述もある。今後についてはGDPギャップ(需要と供給の差)のマイナス(需要不足)幅を縮小することが重要だという指摘である。このGDPギャップがマイナスになった要因は、消費増税である。これを縮小させるためには、増税の逆、つまり減税を行うのが望ましい。消費増税の影響で一向にさえない景気を上向きにするためには、減税を行うのが望ましいと、経済財政白書はいっているようだ。

金融緩和や消費増税に関する経済予測を間違ったエコノミストたちの名前は、インターネット等で簡単に検索できる。そうした人たちには、今年の経済財政白書をしっかり勉強してもらいたい。

(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

【私の論評】過去の『発狂白書』から比較すると、今年はまともになった『経済白書』(゚д゚)!

この年次経済財政報告通称『経済白書』に関しては、昨年、一作年とも内容は、はっきりいって瑕疵(かし)があると言っても良い酷い内容でした。私は、まだ今年の白書は、読んではいませんが、上記の高橋洋一氏の記事からすると、今年はまともになったようです。

昨年、一作年の白書の瑕疵の内容を指摘したいと思います。まずは、昨年に関しては、白書そのものは以下のリンクからご覧になって下さい。

平成26年度  年次経済財政報告 (平成26年7月25日)

この年次報告では、冒頭に甘利明・経済財政相による「平成26年度年次経済財政報告公表に当たって」がある。この部分は、甘利大臣がサインするので、事務方が用意するものの、ここだけは大臣自身が必ず読んでいる。はじめの部分を以下に引用します。ここが経済白書のポイントであることは間違いありません。
日本経済が、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」の効果もあって着実に上向く中、2014年4月に消費税率が8%へと引き上げられました。 
景気は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動によりこのところ弱い動きもみられますが、緩やかな回復基調が続いています。今後については、駆け込み需要の反動の影響が次第に薄れ、各種政策の効果が発現する中で、緩やかに回復していくことが期待されます。 
ただし、海外景気の下振れなどのリスクを注視していく必要があります。日本経済は、デフレ脱却へ向けて着実に進んでおり、今後は適度の物価上昇が安定的に実現する正常な姿に戻っていくことを期待しています。
簡単に要約すれば、消費税の影響は大丈夫で、リスクは海外要因だと言っています。しかし、当時の経済統計をみれば、様々な数字が悪化しており、どうみても景気の落ち込みなど、海外要因が主たる原因ではなく、増税であることは明々白々でした。

冒頭の書き出しがこの有様ですから、内容も至って酷いもので、はっきり瑕疵のある報告書と言って良いと思います。私など、この「はしがき」を見た途端にげんなりして読む気が失せてしまったものです。

次に、平成25年度の白書に関しては、以下のリンクからご覧になって下さい。

平成25年度  年次経済財政報告 (平成25年7月23日)

この白書も酷いもので、これに関しては、このブログでも過去に批判しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【メディアの嘘を見抜け】酷すぎ、今年の経済白書はバカか工作員の未来日記なのか―【私の論評】マスコミがその巣窟になつている現在、せめて役所それも内閣府だけは馬鹿とスパイはお断りにしていただきたい!
この記事では、経済評論家上念司氏の動画も掲載して、経済白書の出鱈目ぶりを徹底的に批判しました。その動画を以下に掲載します。



さて、この記事では、この動画の内容を引用したのですが、以下にその引用部分を掲載します。
詳細は、上の動画をご覧いただくものとして、本年の経済白書の馬鹿もしくはスパイさ加減を知っていただくため、上の動画で使われていたフリップを掲載します。 
さて、まず一枚目のフリップは、経済財政白書が出版された旨を伝える新聞記事です。タイトルは「市場は脱デフレ予想」というものです。 
さて、その経済財政白書の中身で非常に問題点があることを示すのが下のフリップです。白書には欧州などで増税した国々であまり悪影響はでていないと掲載してあり、その論拠として下のグラフが掲載されています。しかし、このグラブ増税前と、増税直後のものは掲載されていますが、増税後(少なくとも1年後)のグラフは掲載されていません。これでは、増税の悪影響などわかりません。
そこで実際には、どうだったかのかを検証するグラフが以下のフリップです。アメリカと、イギリス、スペイン、イタリア、ポルトガルの最近のものが掲載されています。アメリカは、最近緊縮気味の財政ですが、増税はしていません。これに対して、イギリス、スペイン、イタリア、ポルトガルのEU諸国は全部増税しています。下のグラフは見づらいですが、右のほうで一番上位にあるのは、アメリカです。ご存知のように、アメリカは日本の3.5倍の規模で金融緩和をして、増税はしていません。
これに対して、イギリスは日本の4.5倍の規模で金融緩和をしていますが、増税後は明らかにアメリカと比較して経済が成長するどころか、鈍化しています。他のEU諸国は、イギリスほどではないのですが、EUが金融緩和をしましたので、これらの国々もイギリスを除いて通貨統合をしていますから、金融緩和を実施しています。イギリスもこれらの国も、増税後は経済成長率が落ちたということです。

さて、英国ではどういうことになっているかを示したのが、以下のフリップです。何と、増税した後では、付加価値税も、所得税も、法人税も下がっています。これは、完全な失敗であったことがはっきりしています。イギリスの付加価値税の増税は、財政赤字を減らすことを目論見に導入したものですが、以下のように税収が減ったため、財政赤字を減らす目処も立っていません。

さて、引用は以上までです。EUでの各国の増税はことごとく失敗しています。EUの事例などしっかりと認識していれば、日本も増税すればとんでもないことになることは、理解できたはずてす。実際、私もそう思っていました。

特にイギリスの事例などかなり参考になったと思います。それについては、私もこのブログで何度か掲載したことがあります。その記事の代表的なもののリンクを以下に掲載します。
【五輪閉会式】景気後退、将来への懸念は消えず 政争の予感も―【私の論評】イギリスの今日の姿は、明日の日本の姿である!!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事にも掲載した上のグラフをご覧いただければ、イギリスでは2011年1月、財政再建を目論んで、増税をしましたが、その結果若者の失業率が増えたため、その後大規模な金融緩和に踏み切りましたが、それでも雇用は改善されなかったことが一目瞭然で理解できます。この当時のイギリスでは、若者雇用が改善されなかったばかりか、結局税収も減り、財政赤字もかえって増えています。

こういう事実を知ってか知らずか、『経済白書』では上の記事でみれば、理解できるようにこれら事実を十分知りつつ、日本の場合は例外で、増税してもその影響は軽微というようにかなり無理な結論を導いていました。

それにしても、この内閣府の『経済白書』は、まるで財務省の後押しをして増税まっしぐらです。EUの状況を完璧に無視して、増税ありきの世論を誘導し、翌年の白書では、増税が大失敗であったことはあまりにもはっきりしすぎているのに、景気の悪化を海外情勢のせいにしています。

これでは、なんというか、まともな経済財政報告ではなく、瑕疵を指摘されても仕方ないと思います。まさに頭がどこか狂った『発狂白書』と言われても仕方ないと思います。

それにしても、今年の白書は、ブログ冒頭の高橋洋一氏の指摘するように、発狂状態は収まったようで、まともになっているようです。実物は、まだ内閣府のサイトでも公開されていないですが、近いうちに公表されると思います。

上の記事で高橋洋一氏は、「金融緩和や消費増税に関する経済予測を間違ったエコノミストたちの名前は、インターネット等で簡単に検索できる。そうした人たちには、今年の経済財政白書をしっかり勉強してもらいたい」と結論づけています。

これは、痛烈な皮肉です。なぜなら、日本ではいわゆる経済学のメインストリームといわれている人たちが予測をことごとく外しています。そうして、高橋洋一氏は、過去にこの人々のリストをあげています。それに関連する記事のリンクを以下に掲載します。
「2%インフレ目標未達」の批判は誤解で的外れ―【私の論評】復興を税で賄おうとか、8%増税の失敗を認めたくない輩の多いこの国で、いつまともな経済論議ができるようになるのか?間違いを認める潔さのない人々のリストはこれだ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では高橋洋一氏が以下のようにTweetしていることを掲載しました。


高橋洋一氏が掲載しているリストのリンク等を以下に提示しておきます。

伊藤隆敏研究室「震災復興にむけて」
共同提言者・賛同者(2011年6月15日10:00現在)(敬称略)

日本では、経済学のメインストリームである人多数の人たちが、復興税にはじまり、金融緩和や消費増税に関する経済予測を間違っているわけです。

高橋洋一氏は、この人たちこそ、今年の「経済白書」を読んで勉強すべきであると語っているのです。

それにしても、この構図ごく最近どこかでみたばかりです。そうです。憲法解釈の改変による集団的自衛権の行使を含む安保法案をはっきりと違憲と主張した憲法学者どもです。人には様々な意見があるのは当然ですからね憲法学者が「違憲」といういうのも、悪いことではないです。しかし、はっきり「違憲」と語るのは、間違いです。

最低でも、「違憲の疑いがある」くらいの言葉遣いならまだ理解できます。さらに、「京都学派など合憲とするものもあるが、私の立場では、○○の理由で合憲だと考える」というような内容であれば、ベストであったと思います。日本の多くの憲法学者は言葉遣いもまともにできないかと忸怩たる思いがします。

日本では、憲法学者も経済学者もまともではないということが、はっきりしたと思います。このような学者に教えられている学生諸君を気の毒に思います。

私自身は、大学は理系でしたし、教養のときには、日本国憲法を履修しませんでした。経済学も履修しませんでした。無論まともな先生もいたので、どうしても取得しなければならない文系の科目は、自分で判断してまともな先生の講義を選択しました。今から思うと、大正解でした。

それにしても、今年の『経済白書』まともになって本当に良かったと思います。とにかく、今年の『経済白書』の内容のような経済に対する認識が、日本の経済のメインストリームになっていただきものとだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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増税派に堕ちた自民党大物議員がアベノミクスを潰す!?―【私の論評】財政再建も安保法制も何でも、周りの空気に流されるな!地頭で考え抜け(゚д゚)!






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2015年8月19日水曜日

「恥知らず」ネット大荒れ “毛沢東主役”中国の歪曲映画に非難と嘲笑―【私の論評】自国の歴史修正が人民の反感を買う!日本に対するそれも必ず暴露され、いずれ中国は大炎上する(゚д゚)!

「恥知らず」ネット大荒れ “毛沢東主役”中国の歪曲映画に非難と嘲笑

アンディー・ウォーホールの作品 毛沢東 1974年
クリックすると拡大します
中国で70周年の抗日戦争勝利記念日の9月3日に公開が予定されている映画「カイロ宣言」をめぐり、中国のインターネット上で「恥知らずな歴史の歪(わい)曲(きょく)だ」との非難や嘲笑が噴出している。1943年に連合国が戦後の対日方針を話し合うためにエジプトの首都で開いた会談が題材だが、会談に出席していなかった建国指導者、毛沢東主席(1893~1976年)が“主役”であったかのようなポスターと予告編映像が公開されたためだ。中国共産党系の新聞も映画の宣伝方法を厳しく批判。あわてた制作者側は、別のポスターを準備するなど大わらわだ。(SANKEI EXPRESS)

「他の歴史も事実でない」

「会談には毛沢東を出席させておけばいい。どうせ私たちの他の歴史も事実ではないのだから」「人々の注意をひくための汚い宣伝だ」

中国版ツイッターの「微博(ウェイボ)」にはあきれ、自嘲し、怒るネット市民の書き込みが相次いだ。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)や英紙ガーディアン、フランス通信(AFP)など欧米メディアも騒動を大きく伝えた。報道によると、この映画は、中国政府による抗日戦争勝利70周年記念行事の一環として、中国人民解放軍系の映画会社が制作した。

ところが、この作品のポスターと予告編映像が大問題になった。ポスターには、中国の人気俳優、唐(タン)国(グオ)強(チャン)さん(63)演じる毛沢東主席の写真を掲載。予告編映像にも、「世界の共産主義者が果たすべき使命は、闘争を通じてファシズムに反旗を翻すことだ」と熱弁する場面が登場し、カイロ会談で毛沢東主席が重要な役割を果たしたかのように印象づけている。

1943年11月に開かれたカイロ会談には、米国のフランクリン・ルーズベルト大統領(1882~1945年)、英国のウィンストン・チャーチル首相(1874~1965年)、そして中国国民政府の蒋介石主席(1887~1975年)が出席。日本が中国から得た領土の返還といった戦後の対日方針を定めた「カイロ宣言」を発表。その内容は、連合国のポツダム宣言へと引き継がれた。中国共産党を率いていた毛沢東主席はこの会議には出席していない。

このため、中国のネットユーザーからは「(髪がない)蒋介石にいつから髪の毛が生えたんだ」などと、歴史の歪曲にとどまらず、出席者を差し替える“捏(ねつ)造(ぞう)”との指摘が相次いだ。

これを受け、映画会社の広報担当者はWSJに対し「会談だけでなく、会談を軸に据えた国際的視点で制作した」と説明。「毛沢東主席の写真を使うことで映画を大げさに売り込もうといった特別の意図はなかった」と釈明した。

機関紙も「不適切」切り捨て

しかし、中国共産党の機関紙の人民日報の国際版である環球時報は、今回の騒動について「蒋介石主席を排除し、会談に出席していない毛沢東主席を主役にしたポスターは、歴史にも毛沢東主席自身にも敬意を払っていない」とする、文化評論家の意見を掲載。論評でも、「不適切」と切り捨てた。

あわてた映画会社は、蒋介石主席ら主要登場人物に焦点を当てたポスターがもうすぐ登場すると表明するなど、事態の収拾に躍起だ。

英リーズ大学の歴史研究家、アダム・キャスカート氏はガーディアン紙にこう皮肉った。

「中国共産党が自国の長い歴史の節目に、自分たち(の活躍ぶり)を挿入しようとしたのでは」

【私の論評】自国の歴史修正が人民の反感を買う!日本に対するそれも必ず暴露され、いずれ中国は大炎上する(゚д゚)!

中国の歴史修正は前々から酷いものであることを聴いていましたが、上の記事でも本当に酷いものであることが、如実に示されたと思います。本当に、幼稚すぎる歴史修正です。

それにしても、中国ではこの映画の監督なども含めて、歴史をあまりにも簡単に考えすぎている人が多いようです。

カイロ会談出席メンバー 左より蒋介石、ルーズベルト、チャーチル

その証拠として、非常に驚いた話があります。ジャーナリストの櫻井よしこさんが、いわゆる日本軍による南京の虐殺に関して、「最初は数万と言いつつ、後に10万人、その後は20万人、さらに30万人、今では40万人という人もいますが、どうしてこんなに虐殺者の数が人によって異なるのですか?」という質問、中国の名門校の精華大学の教授にしたところ、以下のような答えが返ってきたので、驚いたそうです。

「南京の虐殺者数は、中国人民の感情に比例する」

ジャーナリストの櫻井よしこさん クリックすると拡大します

これは、とてもまともな人間の発言とも思えませんが、これが一応インテリと目される、精華大学の教授の発言ということです。

ということは、習近平やなどの中国共産党の幹部や、他の官僚や、一般人民などの歴史発言など押してしるべきです。そうです。中国では、感情によって、数が変わったり、歴史が変わるのです。

彼らにとっては、自分の都合や感情によって、過去の歴史を勝手に変更することはいとも容易いようです。これが、ある程度まともな国の、まともな人間なら、自国の歴史はもとより、他国の歴史についても、少なくとも史実といわれていることについては、勝手に変更はしないし、そもそも出来ないです。

しかし、このような歴史修正を気軽に続けてきたせいでしょうか、中国人の中には、歴修正の緩みとでも形容しないと説明のつかない事象が発生しています。

上の記事も、その典型例だと思います。中国における、毛沢東の評価について、知らない世代も増えているようですが、さしずめ、この映画の監督や制作にかかわった人間は、それを知らないようです。

中国は、本当は「毛沢東」を建国の父として、英雄としてまつりあげ、国家統合の象徴にしたいと考えていた時期があります。

しかし、それはできない相談でした。なぜなら、中国においては、毛沢東のために犠牲になって殺された人の数があまりにも多く、平均的な中国人であれば、親戚縁者や知人の誰かが、毛沢東の犠牲になっていたという歴史的事実があり、とてもそのような人物を英雄に祀り上げることなどできなかつたという経緯があります。

確かに毛沢東による犠牲は半端ではないです。以下に実数を掲載させていただきます。

毛沢東は、1957年2月27日、「49年から54年までの間に80万人を処刑した」と自ら述べています。(ザ・ワールド・アルマナック 1975年版)。周恩来は、同年6月、全国人民代表大会報告で、1949年以来「反革命」の罪で逮捕された者のうち、16%にあたる83万人を処刑したと報告しています。また、42%が労働改造所(労改、強制収容所)に送られ、32%が監視下に置かれたと述べています。毛沢東は、その後もさまざまな権力闘争や失政をつづけましたが、丁抒らの研究によると、大躍進政策文化大革命によって、2,000万人の中国人民が死に追いやられたとされています。

共産主義黒書』では、ジャン・ルイ・マルゴランが、ほぼ信頼できる数値として、内戦期を除いた犠牲者の数を、以下のように統括的に提示しています。

■体制によって暴力的に死にいたらしめられた人
       700万~1,000万人(うち数十万人はチベット人)

■「反革命派」として強制収容所に収容され、そこで死亡した人
      2,000万人ないし4,300万人

これほどの大量虐殺を直接・間接に指揮した毛沢東は国家の英雄や、統合の象徴としては祀り上げることができないことがよくお判りになることでしょう。

鄧小平

鄧小平元主席は、こうした現状では毛沢東など、英雄にすることはできないため、何とか中国統合の象徴をつくりあげようとしたそうです。

しかし、中国の過去の人物というと、これまた虐殺者が多いことから、それもなかなかうまくいかず、あるとき中国の宦官であり、ヨーロッパの大航海時代に先駆けて、大航海をした鄭和を英雄にしょうとも考えたのですが、鄭和はムスリム系であるということもあり断念したそうです。

鄭和の蔵

鄭和も中国統合の象徴とはできなかった中国、中国には今でも、統合の象徴としての英雄は存在しません。これは、他国の歴史と比較すると、信じられないことです。他国では、国につくしたということで、建国の父や、その他英雄が大勢いるのが普通です。

日本にも大勢いますが、日本の場合は、随分はやい時期から、天皇陛下がおられ、かなり昔から現代にいたるまで、日本国統合の象徴となっています。それに、多くの英雄が存在します。

中国の歴史を振り返ってみると、その時代時代で、大帝国ができて、それが衰退して、消えて、また新しい大帝国ができあがり、ということを何度も繰り返しています。そうして、中国には皇帝が存在しましたが、それはあくまで各々の大帝国を支配した皇帝であり、中国の過去の大帝国から、今にいたる共産中国に至るまで、まったく何のつながりもありません。それぞれ、分断されています。

日本の天皇陛下などとは、全く異なります。日本では、昔から今に至るまで、天皇陛下が日本統合の象徴であらせられます。過去の日本と今の日本は、為政者はその時々で異なるものの、文化や伝統なども継承され、連綿とつながっています。このような日本では、その時々の為政者が自分の都合の良いように、歴史を変えるなどということはできませんでした。

しかし、中国は違います。互いに全く関連のない、その時々の為政者が自分に都合の良い歴史をつくってきたという歴史があります。こんなところからも、中国では過去の自国の歴史を自分たちに都合の良いように、変えてみたりするのには、何の抵抗もないのでしょう。そうして、他国の歴史も自分たちにとって都合の良いように変更することもなんとも思わないでしょう。

しかし、そのようなことを安易に続けてきたため、過去の経緯もまともに調べず、毛沢東を英雄に祀り上げられると思う愚か者がでてきて、実際やってみたところ、とんでもないしっぺ返しをくらったというのが、ブログ冒頭の記事の真相だと思います。

それにしても、お粗末です。自国の歴史の修正などもこのように実施して、失敗するわけですから、南京虐殺などその他の歴史も自分たちに都合良く修正しているのは明らかです。いずれ、ブログ冒頭の記事のように、日本や他国・多民族に対する歴史修正も必ず暴露され大炎上することになります。その日は近いです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年8月18日火曜日

専門家も驚いた台湾“厚遇”の背景 日米台による中国包囲網への布石か ―【私の論評】台湾を巡る世界の動きを察知できないマスコミや政治家どもは完璧に世界情勢から蚊帳の外(゚д゚)!


衆院第1議員会館で講演した台湾の李登輝元総統=7月22日

安倍晋三政権や周辺で、台湾への“厚遇”といえるエピソードが続いている。安倍首相が14日に発表した「戦後70年談話」では、「台湾」を「中国」より先に登場させたうえ、先月末には、李登輝元総統が初めて日本の国会内で講演したのだ。安倍首相と李氏が極秘会談に臨んだとの観測もある。こうした背景に、一体何があるのか。

「インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み…」

安倍首相の談話の中に登場したこのフレーズが、外交専門家らの注目を集めている。

国際政治学者の藤井厳喜氏は「談話で『台湾』と『中国』が並立していることに驚いた。安倍政権が(中国の一部ではない)台湾の政治的実態を認めたということだ。中国にとっては強烈な1発になったはずだ」と語る。

伏線はあった。李氏の来日は当初、今年秋ごろに予定されていた。ところが、日本側の「異例の厚遇」(藤井氏)で、先月末に前倒しになったとされる。

李氏は7月22日、衆院第1議員会館で行われた講演で、国会議員有志らを前に、安倍政権が整備を進める安全保障法制を「日本が主体的に安全保障に意識を持つことが、アジア全体の平和につながっていく」と高く評価し、日台の連携を印象づけた。講演に先立ち、安倍首相の側近である下村博文文科相が超党派議員の発起人代表としてあいさつした。

産経新聞の報道によると、李氏は7月23日に安倍首相と都内で会談し、対中関係などについて協議したともいう。

日台関係の進展を図る有識者の団体「日本李登輝友の会」の柚原正敬事務局長は「安倍政権に、中国への牽制という狙いがあるのは間違いない。安倍首相は、第2次政権発足以降、台湾を『同じ価値観を共有する国々』に含めた言及を増やしている。台湾と緊密に連携し、海洋進出を強める中国への包囲網を構築しようとしているのだろう」と分析する。

安倍政権のこうした方向性は、米国の姿勢とも連動しているようだ。

前出の藤井氏は「米国は最近、台湾への扱いを明らかに変えてきている」と指摘し、続ける。

「5月末から6月にかけて訪米した台湾・民主進歩党の総統選候補者、蔡英文主席は、閣僚級と会談するなどの厚遇を受けた。米国は、南シナ海問題などをめぐって緊張が高まる中国を牽制するため、『台湾カード』を切り始めている。安倍首相は、米国と平仄(ひょうそく)を合わせた動きをしている」

日米台の連携強化によって、中国は東アジアで孤立を深めることになるのか。

【私の論評】台湾を巡る世界の動きを察知できないマスコミや政治家どもは完璧に世界情勢から蚊帳の外(゚д゚)!

この安倍総理の動きは当然のことだと思います。安倍総理はもともと、アジアの安全保障のダイヤモンド構想を打ち出していました。

これにつしいては、このブログでも何度か掲載したことがあります。その代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、日本ではなぜかメデイアが「アジアの民主主義セキュリティダイヤモンド」については、ほとんど報道しませんので、以下に安倍総理大臣が、2012年の暮れに外国のメデイアに寄稿した、その構想の内容そのものを以下に掲載します。

以下に日本分のものを全文掲載させていただきます。
アジアの民主主義セキュリティダイアモンド 
 2007年の夏、日本の首相としてインド国会のセントラルホールで演説した際、私は「二つの海の交わり」 ─1655年にムガル帝国の皇子ダーラー・シコーが著わした本の題名から引用したフレーズ─ について話し、居並ぶ議員の賛同と拍手喝采を得た。あれから5年を経て、私は自分の発言が正しかったことをますます強く確信するようになった。 
 太平洋における平和、安定、航海の自由は、インド洋における平和、安定、航海の自由と切り離すことは出来ない。発展の影響は両者をかつてなく結びつけた。アジアにおける最も古い海洋民主国家たる日本は、両地域の共通利益を維持する上でより大きな役割を果たすべきである。 
 にもかかわらず、ますます、南シナ海は「北京の湖」となっていくかのように見える。アナリストたちが、オホーツク海がソ連の内海となったと同じく南シナ海も中国の内海となるだろうと言うように。南シナ海は、核弾頭搭載ミサイルを発射可能な中国海軍の原潜が基地とするに十分な深さがあり、間もなく中国海軍の新型空母がよく見かけられるようになるだろう。中国の隣国を恐れさせるに十分である。 
 これこそ中国政府が東シナ海の尖閣諸島周辺で毎日繰り返す演習に、日本が屈してはならない理由である。軽武装の法執行艦ばかりか、中国海軍の艦艇も日本の領海および接続水域に進入してきた。だが、このような“穏やかな”接触に騙されるものはいない。これらの船のプレゼンスを日常的に示すことで、中国は尖閣周辺の海に対する領有権を既成事実化しようとしているのだ。 
 もし日本が屈すれば、南シナ海はさらに要塞化されるであろう。日本や韓国のような貿易国家にとって必要不可欠な航行の自由は深刻な妨害を受けるであろう。両シナ海は国際海域であるにもかかわらず日米両国の海軍力がこの地域に入ることは難しくなる。 
 このような事態が生じることを懸念し、太平洋とインド洋をまたぐ航行の自由の守護者として、日印両政府が共により大きな責任を負う必要を、私はインドで述べたのであった。私は中国の海軍力と領域拡大が2007年と同様のペースで進むであろうと予測したが、それは間違いであったことも告白しなければならない。 
 東シナ海および南シナ海で継続中の紛争は、国家の戦略的地平を拡大することを以て日本外交の戦略的優先課題としなければならないことを意味する。日本は成熟した海洋民主国家であり、その親密なパートナーもこの事実を反映すべきである。私が描く戦略は、オーストラリア、インド、日本、米国ハワイによって、インド洋地域から西太平洋に広がる海洋権益を保護するダイアモンドを形成することにある。 

 対抗勢力の民主党は、私が2007年に敷いた方針を継続した点で評価に値する。つまり、彼らはオーストラリアやインドとの絆を強化する種を蒔いたのであった。 
 (世界貿易量の40%が通過する)マラッカ海峡の西端にアンダマン・ニコバル諸島を擁し、東アジアでも多くの人口を抱えるインドはより重点を置くに値する。日本はインドとの定期的な二国間軍事対話に従事しており、アメリカを含めた公式な三者協議にも着手した。製造業に必要不可欠なレアアースの供給を中国が外交的な武器として使うことを選んで以後、インド政府は日本との間にレアアース供給の合意を結ぶ上で精通した手腕を示した。 
 私はアジアのセキュリティを強化するため、イギリスやフランスにもまた舞台にカムバックするよう招待したい。海洋民主国家たる日本の世界における役割は、英仏の新たなプレゼンスとともにあることが賢明である。英国は今でもマレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドとの五カ国防衛取極めに価値を見いだしている。私は日本をこのグループに参加させ、毎年そのメンバーと会談し、小規模な軍事演習にも加わらせたい。タヒチのフランス太平洋海軍は極めて少ない予算で動いているが、いずれ重要性を大いに増してくるであろう。 
 とはいえ、日本にとって米国との同盟再構築以上に重要なことはない。米国のアジア太平洋地域における戦略的再編期にあっても、日本が米国を必要とするのと同じぐらいに、米国もまた日本を必要としているのである。2011年に発生した日本の地震、津波、原子力災害後、ただちに行なわれた米軍の類例を見ないほど巨大な平時の人道支援作戦は、60年かけて成長した日米同盟が本物であることの力強い証拠である 
 私は、個人的には、日本と最大の隣国たる中国の関係が多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認めている。しかし、日中関係を向上させるなら、日本はまず太平洋の反対側に停泊しなければならない。というのは、要するに、日本外交は民主主義、法の支配、人権尊重に根ざしていなければならないからである。これらの普遍的な価値は戦後の日本外交を導いてきた。2013年も、その後も、アジア太平洋地域における将来の繁栄もまた、それらの価値の上にあるべきだと私は確信している。
安倍総理は、このような構想を表明していて、これを具体化するために、総理に就任直後から、積極的に海外にでかけ、この構想に沿った形で、各国首脳に様々な働きかけを行い、かなりの成果を収めています。

この構想は文字通り、中国の脅威に対して対抗していこうとするものです。安倍総理が着々と中国への対抗措置を推進してきた間、米国は及び腰のオバマ大統領が煮え切らない態度を取り続けていたため、中国に対して断固とした措置をとることができませんでした。

そのせいもあって、日本の尖閣は、中国の公船が領海を侵犯し、中国の航空機が、領空を侵犯するようになり、それが日常になってしまいました。南シナ海では、中国は環礁を埋め立て、飛行場を設営するなどの暴挙を行い、東シナ海の日中中間線の自国側海域で、海洋プラットホームを急速に増設し、軍事転用が懸念されています。

このような中国の暴挙は、及び腰オバマが自ら招いたようなものです。しかし、安倍総理は就任以来継続して、中国包囲網の構築に努力してきました。その成果は、着実に実りつつあります。確かに、尖閣問題は解決はしていませんが、それでも着実ににアジアの中国を取り囲む国々と折衝し、橋頭堡を築いています。

こうした、安倍総理が台湾を厚遇するのは、当たり前のことです。

1972年2月21日に当時のアメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソンが世界中が注目する中で中華人民共和国を初めて訪問し、毛沢東主席や周恩来総理と会談して、米中関係をそれまでの対立から和解へと劇的に展開して第二次世界大戦後の冷戦時代の転機ともなりました。

これより前に、前年7月15日に、それまで極秘ですすめてきた米中交渉を明らかにして、自身が中華人民共和国を訪問することを突然発表して世界を驚かせたことでニクソンショックと呼ばれています。これ以降アメリカは中国と国交を結んだわけです。

しかし、米国は台湾と国交を断絶することなく、二つの中国を認めることになりました。しかし、その後年数を経るにつれて、中国が台頭し、大陸中国は台湾を自らの版図に組み入れようとの画策をしていました。

そうして、世界もそのように傾き、中国は一つであるべきという雰囲気が形成されていきました。

しかし、台湾はそのような風潮にも負けず、今でも独立国としての気概を崩していません。今の台湾の総統馬英九は大陸中国寄りですが、台湾の多くの人々がそれに反対しています。

李登輝元総統は、大陸中国には見向きもせず、台湾が中国の領土になることに公然と反対していますし、親日派でもあります。それに、まだまだ台湾国内でも多大な影響力があります。

このような李登輝元総統を安倍総理が厚遇するのは当然といえば、当然です。

及び腰オバマのせいで、アジアでは中国の台頭を許してしまったところがありますが、現在オバマはすでに死に体です。次の大統領は誰がなったとしても、少なくともオバマよりは中国に対して、厳しい措置をとると思います。

オバマ大統領

それに、アメリカの国会議員のなかには中国は軍事・経済などで将来アメリカの覇権を脅かす存在として認識している封じ込め派と、中国の輸出攻勢によって被害を受けている中小企業などの支持を受けた議員(中国の人権問題を重視する人権派も含まれる)が中心となった圧力派が存在します。またアメリカ議会のなかには一定の親台湾派が存在しており、中華民国総統のアメリカ訪問を実現しようとする動きもあります。

さすがに、アメリカも中国に対しては、警戒を強めているでしょうし、今や誰がみても、中国はとんでもない状態にあるのは確かで、今の中国の体制がいつまでも続くと考えるのは間違いです。

上の記事では、「5月末から6月にかけて訪米した台湾・民主進歩党の総統選候補者、蔡英文主席は、閣僚級と会談するなどの厚遇を受けた。米国は、南シナ海問題などをめぐって緊張が高まる中国を牽制するため、『台湾カード』を切り始めている。安倍首相は、米国と平仄(ひょうそく)を合わせた動きをしている」などとしていますが、私はそうではないと思います。

平仄を合わせているのは、こと中国対策に関しては、米国のほうです。オバマが中国に対して、及び腰で煮え切らない態度をとっているときに、安倍総理は安全保障のダイヤモンドの構想にそって、中国への対抗策を他国と練ってきました。それに追随しているというのが、今のアメリカです。日本の安倍総理がいなかったら、とんでもないことになっていたかもしれません。

そうして、中国対抗策の一つの大きな節目が、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使も含む、安保法案の成立です。

この成立には、各国が大賛成しています。

まずは、米政府は、安全保障関連法案の成立に強く期待しています。オバマ政権は、戦略の重要な柱のひとつに日本を据えています。だからこそ、安保法案の成立には賛成しています。さらに、ローズ米国務次官補は15日、「日本を強く支援したい」と述べています。

米国の反応も含めて、特に太平洋に接する国々の反応はどんなものだったのか、以下にわかりやすい図を掲載させていただきます。


このように、太平洋に接する国で、日本の集団的自衛権の行使容認に対して、ほとんどの国が賛成です。反対するのは、中国と韓国くらいなものです。ロシアは意見を表明していましせん。

もし、集団的自衛権を含む安保法案が、本当に「戦争法案」というのなら、これだけの国々が賛成するわけもありません。これは、安倍総理が安全保障のダイヤモンド構想実現のため、各国を周り、その意義の説明と、各国の理解を得たからに他なりません。

結局のところ、外国がこれだけ、賛成しているのに、日本国内で「戦争法案」などして、反対するのは、結果として、中国を支援しているようなものです。

日本のマスコミは、安全保障のダイヤモンドについてほとんど報道しませんし、今日に至るまで、安倍総理がこの構想に沿って様々な努力を重ねてきたことについても、ほとんど報道しません。李登輝元総統の来日と、国会での演説もほとんど報道しませんでした。

挙句の果てに、「違憲」「戦争法案」などという報道を垂れ流すという有様です。野党も野党です。中国をめぐってこれだけ、世界が変わっているにもかかわらず、60年安保、70年安保、PKO法案のときとかわらず、ただただ反対するだけで、中国の差し迫った脅威に対する、対抗策を代案としてあげようともしません。

本当に愚かです。こういう馬鹿者どもは、結局のところ中国スパイそのものか、同列であり、いずれ国民からの信頼を本格的に失ってしまうことになります。

台湾を巡る世界の動きを察知できず、ひたすら中国に媚びるような報道を続けるマスコミ、中国を支援する行動を取り続ける政治家どもも、完璧に世界情勢からは、蚊帳の外です。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

【付記】8月25日

ジャーナリストの西村幸祐氏に、この記事を以下のようにリツイートしていただきました。


なお、このTweetにある西村氏の『 21世紀の脱亜論』の説明を以下に掲載させていただきます。

21世紀の「脱亜論」 中国・韓国との訣別(祥伝社新書)
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福澤諭吉が「脱亜論」を書いた当時、まさに日本は時代の分水嶺で、もがき苦しんでいた。その「脱亜論」の一三〇年後の意味はどこにあるのか。

実は、福澤の「脱亜論」はアジア蔑視ではなく、特別な東アジアとは別の道を歩もうという「別亜論」に過ぎなかった。つまり、現在ではますますその意味が重要になっていることを、本書は詳(つまび)らかにするであろう。

閉じた特別なアジアから、開けた普通のアジアと連携し、世界と繋がることが「21世紀の脱亜論」なのである。  

日本は特定アジアと文明圏が異なっていること。日本人は特定アジアの人々と人種的にも異なっていること。そして、日本は古代から特定アジアから離れていた時代に、平和で安定した時代を築いていた事実。そんな事実を解き明かすことが、日本の今後の進路の取り方にヒントを与える第一歩になるのである。

まさに、本書はそのヒントを満載しています。そうして、これを読んでいただければ、西村氏が指摘したように、安倍総理の素晴らしい外交のやり方を理解することができます。


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