2016年8月13日土曜日

「国の借金」巡るホラー話 財務分析すれば怖くない―【私の論評】鳥越より悪質な都市伝説が現実になる新手の辛坊らの発言には気をつけろ(゚д゚)!

「国の借金」巡るホラー話 財務分析すれば怖くない

国の借金1000兆円は、真夏のホラー映画のような作り話にすぎない!
国債や借入金、政府短期証券をあわせた「国の借金」の残高が2016年6月末時点で1053兆4676億円になった。内訳は国債が918兆4764億円となり、3月から7兆6667億円増えた。一時的な資金不足を穴埋めする政府短期証券は1兆4697億円減の82兆2792億円。借入金は2兆955億円減の52兆7120億円だった。今年7月1日時点の総務省の人口推計で単純計算すると、国民1人当たり約830万円の借金を抱えていることになる。

以上は、財務省の発表である。ウソではないが、情報の一部でしかない。これに対して、これを「国の借金」というのはミスリーディングであるという反論もある。要するに、国民の借金であるかのようにいうが、正確には政府の借金であって、国民とは関係ないというものだ。

 バランスシートを見ると

ただし、この意見はちょっと甘い。確かに政府の借金であるが、政府が破綻すれば、国民への行政サービスが行われなくなり、その損失は結局国民に降ってくる。大きな大企業が倒産したら、その関連先は大きな被害を受けるが、日本政府は日本の中で最大の企業といってもよく、日本政府に無関係な国民はほとんどいない。

ではどう考えたらいいだろうか。一番心配なのは、日本政府の破綻であるので、そのバランスシートを見てみよう。借金だけをいっても、それに見合う資産があれば破綻しない。これは破綻論の基礎である。なぜか政府の話になると、バランスシートも読めない素人ほど、財務省のいうことを鵜呑みにして、破綻だという。これはかなり滑稽な話である。

政府のバランスシートは、きちんと財務省のホームページに載っている。政府子会社を含めた連結ベースの政府バランスシートもある。それらを初めて政府内で作ったのは筆者であり、今から20年以上前のことである。しかし、それらは直ぐには公表されずに、正式に公表されたのは2006年からだ。しかも、連結ベースのバランスシートでは、政府子会社となるべき日銀が抜けている。中央銀行である日銀を含めて政府の財務状況を考えるのは、経済学では当たり前のことで、「統合政府」といわれている。

政府のバランスシートでみて、資産を差し引いたネットの負債残高は500兆円程度である。さらに、統合政府で考えればネット負債残高は150兆円程度である。これらの対GDP比率を見れば、先進国の中でも悪いほうでない。

 財務省のいいなりで、識者のデタラメ意見を振りまくマスコミ記事

こういうと、まだ債務超過であるという批判もある。しかし、政府の場合、強制的に税金を徴収できる徴税権がある。どんなに少なく見積もっても毎年30兆円以上の税金徴収ができるのだから、その資産価値は数百兆円以上だろう。というわけで、政府バランスシートでみても、統合政府バランスシートで見ても債務超過ではない。

これが政府や統合政府のまともな財務分析である。もしこうした財務分析をできないのであれば、財務省という名前は返上し、増税省とでも名乗ったほうがいいだろう。

バランスシートも読めずに、財務省のいいなりで財政破綻論を振りまく識者は、財務分析ができないのだからお里が知れている。財務省のいいなりで、識者のデタラメ意見を振りまくマスコミの記事は読むべきでない。

財政破綻になるなら、なぜ国債金利がマイナスになるのだろうか。財政破綻論者は、これまでホラー話ばかりしてきたが、いくら夏の夜のホラーとはいえ、度が過ぎている。

++ 高橋洋一

【私の論評】鳥越より悪質な都市伝説が現実になる新手の辛坊らの発言には気をつけろ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が用いている政府の貸借対照表を以下に掲載します。



このバランスシートでみて、資産を差し引いたネットの負債残高は確かに、500兆円程度です。以下に政府の公表している、連結貸借対照表を掲載します。

この統合政府のバランスシートでみるとネット負債残高は439兆円程度です。しかし、この連結決算には、日本政府の下部組織である日銀が含まれていないため、これを連結しないと、正しい数値は出ないということです。資料を確認すると、確かに政府の連結のバランスシートには日銀が含まれていないことが確認できます。

残念ながら、日銀のバランスシートは公表されていませんが、営業毎旬報告は報告されています。そこから、近似的に日銀のバランスシートを作成することはできます。





日本銀行のバランスシートは単純にいえば、資産に国債、負債は日銀当座預金と日銀券です。日銀当座預金は日銀券と代替可能なので、日本銀行の負債は日銀券のみとみても、間違いではありません。

となると、アバウトには、日本銀行のバランスシート(平成27年末)は、資産の国債266兆円、負債の日銀券266兆円とみてもいいです。これを国のバランスシートに合算すれば、負債の中の公債・政府短期証券が266兆円減少し、その代わりに日銀券266兆円が入るわけです。

ここで、日銀券266兆円は、形式的には負債ですが、利息負担もないし、返済義務もありません。いってみれば、この分は負債とみなさない考え方もありえます。その考え方にたてば、債務超過額は439兆円から173兆円になります。このあたりについて、公会計で定説はないとは思いますが、日銀保有国債分については、国にとって償還も利払いも必要ないので、債務超過額が減ったといってもいいです。

私の計算では、平成27年3月31日の日銀が含まれていないバランスシートに、平成27
年3月31日の日銀の営業毎旬報告から推測したバランスシートを加えたもので、その結果は173兆円です。

これだと、日本のGDPを500兆円ということで計算すれば、政府の借金はGDP比では34%に過ぎません。これと同じような計算方式では、米国は80%、英国は60%であったと記憶しています。

ブログ冒頭の、高橋洋一氏の計算では、150兆円ということですが、大体似たようなものです。高橋洋一氏は別の方式でもっと正確に計算しているのかもしれません。しかし、考え方としては同じです。

いずれにせよ、政府の借金が1000兆円などということは、全くありえないことです。もしそうなら、国債金利がマイナスということなるはずもありえません。この程度の負債なら、10%増税はおろか、8%増税も全く必要なかったことになります。まさに、"国の借金」巡るホラー話"です。

エコノミストなどのいわゆる識者に関しては、財務省に追従して、財務省の走狗に成り果てているだけなのでしょう。もしそうでないとしたら、ただの馬鹿です。

マスコミに関しては、昨日このブログで、鳥越氏を批判したときに、あげたように、マスコミ業界では、記者になってから勉強するという仕組みが全くないのでしょう。昨日のブログのリンクを以下に掲載します。
「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】―【私の論評】日本の似非リベラルの駄目さ加減が白日の元に晒された(゚д゚)!
鳥越俊太郎氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
このような怪物がなぜ出現したかといえば、彼が長い間「マスコミ」という無責任な社会に属してきたことにも多いに関係があるでしょう。
毎日新聞新潟支局時代の鳥越俊太郎氏
鳥越氏がいわゆるジャーナリストになった時分はもとより、私が大学生だった頃、マスコミは就職偏差値上位の勝ち組のような扱いだったと思います。だから、マスコミに就職した当初の鳥越氏もそれなりに知性的であったのかもしれません。しかし、マスコミという無責任な社会には、就職してからまともな仕事を遂行していくうえで勉強する仕組みがまるでないようです。

経済の報道に関しても、いわゆるマスコミは、日銀や財務省に言われたことを世の中にたれ流す伝令係に過ぎないといことが、最近では白日のもとに晒されています。経済に限らず、安全保障でも、歴史や社会問題や産業に関しても、現状のマスコミは、そこに属する人々のほんどが、伝令係で一生を終わるようです。鳥越氏もその典型です。本当に惨めです。
ごく一部を除いた、現在のマスコミのほとんどは、財務省や日銀の発表したものをそのまま報道して、上記で述べたようなことなど全く検証しません。それでは、何のためのマスコミなのか全く意味がありません。

特に最近は、ネット言論というライバルが出てきたので最近のマスコミは右も左も大変なようです。既存のマスコミは長期停滞に見事にはまったようです。

鳥越氏は、戦後のマスコミ業界の中で、おいしい思いを満喫できて、単なる伝令係であってもなんとか逃げ切れた世代の代表なのでしょう。

その世代のマスコミの特徴は、現場主義と言いながらの不勉強です。

元毎日新聞記者でもある佐々木俊尚氏は25日の以下のようにツイートしています。
このような勉強をしない記者はやがて役所の忠犬「ポチ」になって、結局役所の伝令係として働くようになったのでしょう。鳥越氏をみると、このようなマスコミの体質をよく体現していると思います。

鳥越氏の女子大生への強姦未遂は、なぜか週刊誌では「淫行」としていますが、この未遂事件は、実は東京の私大関係者の中では、都市伝説として伝わっていて、私大関係者なら知らない者はないくらいだったそうです。

このような都市伝説なら楽しいが、鳥越氏や財務省起源の都市伝説は全くいただけない
都市伝説というと、私は「国の借金1000兆円」とするのは、完璧に都市伝説のようなものであると思います。いわゆる識者と目されているような人々でも、この都市伝説なみのホラー話を真に受けている人も大勢いますし、都市伝説と知りながら、財務省のキャンペーンに積極的に強力に後押しをする人間もいます。

先日は、「そこまで言って委員会NP」を視聴していると、「国の借金1000兆円」という話題がでていて、この話題に関して、出席者のうち私が見た限りでは、まともなことを言っていたのは少数であり、これ以外の人は頓珍漢なことを語っていました。


長谷川幸洋氏は、どのような計算をしたのかわかりませんが、政府の借金は、ネットでみると50兆円程度、多く見積もっても100兆円と話しています。ただし、日銀の連結ベースの話をもしているのですが、連結ベースで他国はどの程度になっているのかまでは言及しませんでした。そこまで、話をすればもっと説得力を増すことができたと思います。あるいは、金融資産のみで話をするとか、対外金融純資産の話をするなどすれば、さらに説得力があったと思います。

司会の辛坊氏は、長谷川氏を批判して、ギリシャだって、パルテノン神殿があるが、あれは売れないなどという話をして、長谷川氏に反論していました。そのため、残念ながら、説得力に欠けました。

さらに、竹田恒泰は、1000兆円玉を作って、日銀に引き取らせるなどという話をして、茶化して語っていたので、これも説得力はありませんでした。

この番組のこの話題に関しては、当日のテーマ4「マネーモンスター」ということで、以下のリンクから観ることができます。

http://www.ytv.co.jp/mydo/iinkai/20160807_05/

やはり、この番組の出演者の多くはあまり経済に関してまともな認識は持っていないと思います。そもそも、現状の日本はデフレから完璧に脱していないし、最近ではデフレに逆戻りの傾向すらあるという認識が全くないようです。2%の物価目標が達成できないのは、アベノミクスが限界なのではなく、日銀の金融緩和が未だ不十分で、追加緩和が必要だし、政府も積極財政をすべきだという認識がないようです。奇妙奇天烈、摩訶不思議な理論がまかり通っています。

この番組に出ている人たちは、一般の人たちよりは、経済に詳しいのではと期待していましたが、その期待は見事に裏切られました。

とんでもない辛坊氏の発言は誰のため?
特に、辛坊氏の発言には、期待が裏切られたどころか、あからさまな悪意が感じられました。特に私は「国の借金というマネーモンスター(1000兆円)抱えながら安倍総理が28兆1千憶円の経済政策を閣議決定したことを批判する発言には驚愕しました。あまりにも悪意にあふれているし、突拍子の無い恣意的な発言でした。

さて、この番組での、辛坊氏の問題発言に関して、以下にまとめておきます。
①(税金で)50兆円しか金が入らないのだったら、50兆円でできる(政治を)やれ。 
②物価を安定的に2%ずつ上げると言う事は、毎年2%ずつお金の価値が下がると言う事。結局、国民の金融資産から、毎年2%ずつ増税をせずに国に吸い上げられる。
①については、政府の経済政策による乗数効果を一切無視しています。財政規律だけを重視し、歳入以上の歳出は行うべきでは無いとの主張です。安倍総理は未来永劫、財政出動を永遠に続けるとは一言も言っていません。財政出動によってデフレを脱却し、その後はGDPに対して無理のない財政運営を行えばよいだけです。

②については、全く理解ができません。なぜ、物価が2%上がると国が増税せずに国民の金融資産を吸い上げることになるのでしょうか。

物価の上昇は人件費の上昇であり、材料原価の上昇であり、労働力に対する付加価値の上昇ですので、これを「政府が国民の金融資産を吸い上げる」などとするのは、全くとんでもない理屈です。そもそも、日本がデフレから完璧脱却していないし、そのために物価2%目標があるのだという事実を全く無視しています。

また、その他の長谷川 幸洋氏の「国の借金"1000兆円"は嘘」という主張や、筆坂 秀世氏の「"政府" の借金貸し手は"国民" 」という極めてまともな主張の下りで辛坊氏は話しを遮り、「間違ってはいない」といいつつ別の話へのすり替えで、結果的に全否定しています。

この番組では、左翼(ひだりつばさ)君というキャラクターを登場させ、そのキャラクターに左翼の主張を語らせるということも行っているので、公平性を期するために、辛坊氏がこのような発言をしたのかもしれませんが、それにしても、やり過ぎで明らかに悪意を感じます。 

他の、出演者の主張にもかなりツッコミどころは多々ありましたが、前述したゲストの発言を遮り、全否定する辛坊氏の番組内の影響力はひときわ大きく、非常に悪質です。

かつて、ヨット遭難して自衛隊の飛行艇で救助されたときの謝罪会見での辛坊氏
さて、辛坊氏のこれらの奇行によって一体誰が徳をするのでしょうか。金融緩和や、積極財政によるアベノミクスが間違っていて、日本の財政を救うとしたら経済成長ではなく財政規律の厳守、現状のコストカット、身を切る改革しかないというこの主張は誰のためのものなのでしょうか。

これは、結局のところ、財務省を利する発言以外の何物でもないと思います。辛坊氏の発言は、多くのマスコミのように財務省や日銀の発表したものをそのまま報道するというのではなく、そこから一歩さらに突き抜けて、財務省の都合の良いように事実を捻じ曲げているようにしか思えません。だからこそ、悪意を感じるのです。

鳥越氏のような伝令係も酷いものですが、それでも、辛坊氏などよりはましかもしれません。

いずれにせよ、経済に関しては、財務省や日銀の伝令係のような報道や解説しかしないマスコミや識者のほかに、このような悪質な報道をしたり解説するニュータイプが出現して、多くの人々を幻惑することもあるということを忘れてはならないです。

このような言説を多くの国民が真に受けていたら、10%増税はおろか、20%増税、50%増税にもなりかねません。そうなれば、国民は塗炭の苦しみを味わうことになり、ひところ二万人台になっていた年間自殺者数が、また三万人台にもどるどころかさらに増え、都市伝説のような「ホラー話」が現実になってしまいます。

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2016年8月12日金曜日

「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】―【私の論評】日本の似非リベラルの駄目さ加減が白日の元に晒された(゚д゚)!

「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】

鳥越俊太郎氏
7月31日に投開票された東京都知事選で、野党統一候補として出馬したジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)は惨敗した。準備が足りていないことを自身も認めていながら、告示2日前に突然立候補したのはなぜか。週刊誌で報じられた女性問題で口を閉ざし、「ニコニコ生放送」などの候補者討論会に出演しなかった理由は何か。鳥越氏は8月10日、ハフポスト日本版の取材に応じ、都知事選の舞台裏を明かした。

――選挙戦の結果はどう受け止めていますか。

どう、と言われても、まあこういう結果だったな、としか受け止めていないですね。本当にとっさの決断だったので計算は全くしていないんですよね。

――改めて立候補に至る経緯を教えてください。

都知事選があるよ、となった時に、ある日突然、(元経産官僚の)古賀茂明さんから電話をもらったんですよ。「鳥越さん、都知事選出ないの?」って聞いてきたんですよ。唐突に聞かれたので「そういう気は全くありませんよ」と断わったんです。それから10日ぐらいたって、参院選の開票日(7月10日)になった。

翌日、ネットなども見ていろいろ考えた。「このままでいいのかな」と。安倍政権が、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法制と強行採決で突っ走ってきた。「このまま日本が行くと、日本が大変なことになってしまうなあ」という僕なりの危機感があった。

もし自分が出なかったら、ひょっとしたら後で後悔するかもしれない。自分の人生の残り時間の中で後悔したくないという気持ちが1つあった。そこで古賀さんの声に呼応し、参院選の結果が背中を押した。古賀さんの声、参院選の結果、去年ぐらいから安倍政権を見てきたことの3つが要因。どんどん右傾化していく日本に、ちょっとでも歯止めをかけなきゃいけないなと、決断したのが(7月11日)夕方の4時半か5時ぐらいだった。

古賀茂明氏と鳥越俊太郎氏

――急な出馬ということはわかりました。最初の出馬会見で「何もわからない」と言っていました。「ジャーナリストだから勉強すれば大丈夫」みたいなことも…

それは、まあね。そういう風に言わざるを得ないじゃないですか。何も知らないまま行くわけじゃないよ。僕はテレビ番組のアンカーをやっていた時も、何日か取材して、全部自分の頭の中に入れて、それを自分の言葉で番組の中でしゃべるわけだから。新聞記者の時だってそうなんです。だから、僕はジャーナリストという言葉はあまり好きじゃないから使いませんけど、報道の現場の仕事をしていれば、何カ月もかけて物事に精通するとかではなく、本当に急ごしらえでガーッと詰め込まなければいけない仕事をしてきているわけ。50年間。だから、それについてはそんなには心配なかったよ。もちろん、すぐには分からないけれど。

――日本の危機を訴えるため、ペンの力じゃなくて、選挙に出て訴えようと思ったのはどうしてですか。

ペンの力って今、ダメじゃん。全然ダメじゃん。力ないじゃん。だって安倍政権の跋扈を許しているのはペンとテレビでしょ。メディアが肝心のところを国民にちゃんと訴えないから、こうなるんでしょ。僕はペンの力なんか全然信用していません。だから、選挙の中で訴えるという一つの手がある。そう思っている。

――国政への思いは伝わってくるけれど、都政や都民の暮らしまで精通していないという部分は、敗因になったと感じますか。

そういうこともあったんだろうとは思います。「この人は、国政のことしか言わない。都政のことはあまり知らないな」と思った有権者も、いたかもしれない。証拠はないです。

――野党共闘と言いつつ、調査では、民進党の支持者も小池百合子さんに投票した人がいた。まとまりきれなかったということは、どうとらえていますか。

それは、僕はわからないですね。僕の責任というか、僕だからまとめきれなかったということもあるでしょうし、僕と、全く関係のない問題もあるでしょうし。

――週刊誌報道の影響は?

大きかったでしょうね。女性票と浮動票が小池さんに流れたということは。検証のしようがないですが、可能性はある。それは認めます。

――あの報道への対応についても批判がありました。

あれしかないですよ。「やってない」ということを証明することは、できないんですよ。「悪魔の証明」と言われていて、痴漢冤罪の例もそうですけれども、痴漢してないということをどうやって証明するかというと、できない。

週刊誌2誌に書かれたといっても、情報源は一緒ですよね。はっきり言って、それがそのまま、なんの裏付けも証拠もなく、「この人がこう言っている」というだけで載っちゃうのね。

でもこっちは、それに打ち勝つ方法が何もない。そういうジレンマというか、本当にもどかしい思いがありましたけれども、説明してどうなるものではない。あとはきっちり、裁判でけりをつけるしかないと覚悟を決めました。その結果、選挙戦にどういう影響があるか、周りは色々考えてくださっていましたけれど、僕はそれで行くしかないと思っていたんです。

――鳥越さんは、(報道に携わっているため)仕事として人のスキャンダルを聞く立場でもあります。証明が難しいなりに、記者の質問には答える選択肢はなかったのですか。

難しいですね。特にああいう混乱状態ですから。どんどんどんどん、1つ答えればまた次、となって、結果的に「要するに疑わしい」という印象しか残らない。直感的にわかりましたよ。僕ら冤罪も含めて、取材してきたからその経験で。記者会見はしても同じことだから「(疑わしいと思うのなら)勝手に思え」と思って全部切った。説明責任というのは美しい言葉だけど、実際にはこれほど難しいことはないんですよ。何の意味もないですよ。

――(鳥越さんに譲る形で告示前日に立候補を撤回した)元日弁連会長の宇都宮健児氏は、週刊誌報道について鳥越さんが説明しなかったことを理由に、応援演説に立たなかったそうですが

それはね、最後の最後にきたの。明日選挙終わる、みたいな時。最初はそんな話はなく政策の話をしただけだった。

おそらくこれは僕の推測ですよ、わかりませんけれど、宇都宮さんは、最終的にはそれを、口実に使ったんですよ。要するに、宇都宮さんはこれまで共産党が自分を支持していた。にもかかわらず、今度は共産党が(宇都宮さんの擁立から)手を引いたわけじゃないですか。共産党に対する「裏切られた」というのが、ものすごく強かったんですよ。宇都宮さんは。

だから宇都宮陣営は、僕ではなくておそらく、共産党(に対する思いがあった)。宇都宮さんを支持している共産党が今回手のひらを返した。これがすごく宇都宮さんにとっては一番、頭にきたというのは変だけれども、一番、あえて言えば、憎しみの対象はそれだったんだろうな。それに近い言葉は、チラチラ聞きましたから。

――「新報道2001」(フジテレビ系)や、ニコニコ生放送の候補者討論会に出なかったのはなぜですか。

テレビは、出られなかったのはあるけど、時間が許す範囲で基本的に出ていますよ。できるだけ、ぶら下がりも全部対応していた。そんなに言われるほど出ていないとは思っていない。ネットは出ていないね。ニコ生とかは「出なきゃいけないメディア」と考えるかどうか。それは判断の分かれるところ。僕はニコ生は基本的にメディアとして認めていない、悪いけど。あんな文字がどんどん画面に出てくるようなところに出たくないですよ。あんなのおかしいじゃないですか。

都知事選中の鳥越氏
――ニコ生の討論会に出なかったのも、不信感があったんですか。

もちろん(不信感はある)。それ(出ないこと)は僕が決めたんじゃないけれど、全く関与していないから。選挙ってそんなもんなんだよ。候補者が何でも知っていて、何でも決めていると思うだろう? そうじゃないんだよ。候補者って要するに、街宣のときにしゃべるコマだから。でも操られていたとは思わない。与えられた仕事を、それぞれがみんな、その場その場でやっていて、候補者はそのうちの1つなんだよ。もちろん重要な柱なんだけれど。

――他の候補者から「逃げた」と批判材料にされました。
それは僕ではなくて、選対の判断だから。「次これに出てください」という指示があって、それに従って出ていただけ。断ったことは一度もないですよ。

――ということは、テレビ東京の池上彰さんの開票特番に出なかったこともご存知なかった?
知りませんよ。僕のところに提案はない。池上さんの話って何? 選対の部分でカットしているから、なぜか僕は全く知らない。

――全体を通して、他候補者へのネガティブキャンペーンばかり取りざたされて政策論争が深まらない印象がありました。

政策論争なんてしてないですよ。テレビにも出ましたが、そこで相手に聞ける質問なんて、1問が限界。あとはMC(司会者)が聞くんだよ。アメリカの大統領の予備選なんかだと、候補者だけで論争を1時間ぐらいやったりするけれど。

――例えばそれが、ニコニコ生放送などのネットの場であれば実現できる可能性があった。

俺は知らなかったの。ニコニコから話が来ていたなんて。だからそれについては何も言えませんね。

――テレビや討論会の出演について、選対でどなたが広報戦略をお決めになっていたのですか。

僕は何も知らない。スケジュールまでは管理してないんで。おそらく民進党の選挙のプロがいて、その人が街宣の場所を考えていたんだと思いますよ。「ハイ、鳥越さんこれが明日のスケジュール」って渡されるだけ。「どこへ行きたい」とか、そんなのはないの。「どこ行ってください」だから「明日は伊豆大島ですよ」「えっ、大島?」っていうようにね。初めての選挙だから、「選挙ってこういうものだ」って思ってたけど、話の中身だけは言われるがままではいけないから、自分で変えたけれど。民進党と共産党が中心になってそれなりに、うまく回していた。選挙カーも、今日は民進党、明日は共産党。個人演説会とか、結構走り回ったよ。おそらく、僕の受けてた感じなんだけれど、僕の体調を考えて決めていたんではないですかね。だから最初は街頭演説も1日2回でしたよ。夕方にはもう帰って飯食ってるってこともありましたからね。「これでいいのかな、選挙」って思ったこともありましたよ(笑)。それが最後は5回とかになったけれど。

――選挙後にご自身のサイトから都知事選の記述を消されていますね?
それは知らない。僕は全くノータッチだから。なくなったの?知らない。見たこともないし。あなたたち(ハフポスト日本版)には悪いんだけれど、ネットにそんなに信頼を置いていない。しょせん裏社会だと思っている。メールは見ますけれど、いろんなネットは見ません。

――体力面でも自信があると話されていました。4年後打診があれば、出ますか?

4年後?ああ、そりゃ、どうかなあ、考えたこともないけど、4年後は80でしょ?ちょっと熟慮するだろうな。

鳥越氏は、衰退が続く日本の「リベラル勢力」の現状についても語った。(後半は以下のリンクからご覧になることができます)

http://m.huffpost.com/jp/entry/11424086

【私の論評】日本の似非リベラルの駄目さ加減が白日の元に晒された(゚д゚)!

鳥越氏は都知事選後初めてのブログ冒頭のインタビューで、「ペンの力は今だめだから選挙に出た」と語っています。しかしこ彼は、選挙でも完璧な惨敗を喫していたではありませんか。本当は、「ペンがだめになった」訳でも何でもありません。駄目なのは自分自身と彼の代表する日本の似非リベラルです。鳥越氏は、今になっても全く反省もなく、それがわかっていません。

ペンの力は今駄目?
自業自得としか言いようがないのですが、こんなことではもう鳥越氏を知事選はおろか、テレビや公演などでも使おうとする人がいなくなることでしょう。これは、日本の社会にとって良いことです。知名度だけのテレビ芸人への社会の目線は冷たい事を、該当する方々は肝に銘じるべきでしょう。

彼には、日本の似非リベラルは正しくて、似非リベラル以外は間違いであるとの思い込みがあり、それが信念の次元にまで高まっているようです。この意味で、彼はまさしく、日本の暑苦しい似非リベラルの体現者であり具現者です。

このインタビュー後半は、読む価値はまったくありません。前半だけで、鳥越氏の本質がわかる内容になっています。そうして、その本質とは、いわゆる女性問題と全く別にしてはっきり言えることです。

人生のほとんどを、ジャーナリストとして過ごしてきた、鳥越氏であるにもかかわらず、今になって「ペンの力は駄目」というのは、あまりに情けなさすぎです。何というか痛々しさすら感じました。

この切ない、嘆息ともとれる発言は、戦後長きにわたって、日本の言語空間を支配してきたかに見えた似非リベラルの終焉を象徴しているかのごとくです。

結局、鳥越氏に代表される似非リベラルの人々は、リベラルという名の反知性主義に過ぎなかったことがはっきりとしました。

反知性主義というと、一般には「データやエビデンスよりも肉体感覚や素朴な感情を基準に物事を判断することや人」を指す言葉と思われているようですが、この言葉には、実際にはもっと多義的な観点を含みます。

また、その言葉のイメージから、単なる衆愚批判における文脈上の用語と取られることも多いのですが、必ずしも消極的なことだけを意味する言葉ではありません。

言葉自体は1950年代のアメリカで登場したとされていますが、その後リチャード・ホーフスタッター氏が、『アメリカの反知性主義』という著書で、その積極的な意味を展開しています。

リチャード・ホーフスタッター

この著書で、ホーフスタッターは「反知性主義」の健全な民主主義における必要な要素としての一面も論じています。彼は、知的権威、エリート側の問題を考えるために反知性主義に立脚した視点もむしろ重要であるとさえ指摘しています。

ホーフスタッカー氏は、ニューイングランドの成立からのアメリカ史を引用して反知性主義の成り立ちを考察し、言葉が登場した50年代より前から反知性主義は存在し、むしろアメリカ社会・政治体制において重要なものであること論じました。これによってホーフスタッターは2度目のピューリッツァー賞を受賞しています。

「反知性主義」その語感より、しばしば誤解されているようですが、反知性主義に対置するのは知性そのものというよりは、知的権威やエリートとされる層のことです。データやエビデンスよりも肉体感覚やプリミティブな感情を基準に物事を判断するといった面も間違いではありませんが、古くは聖書理解において高度な神学的知識を必要と考える知的権威や、時代が下がれば政治においてはエリートによる寡頭政治(貴族政治)を志向する層への反感が反知性主義の原点であり、ただ単純に知性そのものを敵視する思想信条ではありません。

むしろ、エリート層が軽視する大衆の「知性」を積極的に肯定するといった立場をとり、それは単純に近代合理主義批判の肯定や、科学的思考を軽視するという意味でもありません。神意や真理を理解するのに高度な知識は必要ではない、政治において学術理論や理想論が先行して現実を無視した政策に対する批判という観点も含むのです。

このように反知性主義が必ずしも消極的な言葉ではないように、知的権威や知識人、エリートという言葉も反知性主義の文脈上では必ずしも肯定的な意味ではありません。ホーフスタッターは知識人の立場として反知性主義者に攻撃される側として論説するのですが、『アメリカの反知性主義』の序章において知識人を迫害される憐憫な対象として擁護する気はないと明言しており、その終章も反知性主義ではなく知識人の在り方を考察するものになっています。

ただし、反知性主義という言葉を定義付けたとされるホーフスタッターでさえ、それが曖昧な語義の用語であることを認めており、単純に論敵を非難するバズワードとして使用される場合も多いです。

アメリカの反知性主義

しかし、こと鳥越氏に関しては、特に「ペンの力は今だめだから選挙に出た」という言葉や、選挙に出た経緯や、選挙中の発言や行動からは、反知性主義の消極的な意味合いのみが浮かび上がってくるだけです。彼の発言から浮かび上がってくるのは、「データやエビデンスよりも肉体感覚や素朴な感情を基準に物事を判断する人」という人物像が浮かび上がってくるだけです。そうして、以下では「反知性主義」という言葉をこの消極的な意味でのみ用います。

都知事選に、東京知事になることよりも、安倍政権を批判するために効果的だと考えて出馬するなど、これでは有権者を完璧に愚弄しています。国政と都政は違います、東京都知事を辞任した舛添氏は朴槿恵と会談したりして、都市間外交と称して、国による外交紛いのことを実行して、批判を浴びました。

しかし、舛添氏の都市間外交など、鳥越氏の「安倍政権を批判するための都知事選への出馬」から見れば、些細な勘違いに過ぎません。鳥越氏はこの点完璧に勘違いをして、結果として多数の都民を愚弄しました。そうして、その誤りに今でも気づかないということで、彼は本当に「反知性主義」の権化というに相応しい怪物に成り果てました。

このような怪物がなぜ出現したかといえば、彼が長い間「マスコミ」という無責任な社会に属してきたことにも多いに関係があるでしょう。

毎日新聞新潟支局時代の鳥越俊太郎氏
鳥越氏がいわゆるジャーナリストになった時分はもとより、私が大学生だった頃、マスコミは就職偏差値上位の勝ち組のような扱いだったと思います。だから、マスコミに就職した当初の鳥越氏もそれなりに知性的であったのかもしれません。しかし、マスコミという無責任な社会には、就職してからまともな仕事を遂行していくうえで勉強する仕組みがまるでないようです。

経済の報道に関しても、いわゆるマスコミは、日銀や財務省に言われたことを世の中にたれ流す伝令係に過ぎないといことが、最近では白日のもとに晒されています。経済に限らず、安全保障でも、歴史や社会問題や産業に関しても、現状のマスコミは、そこに属する人々のほんどが、伝令係で一生を終わるようです。鳥越氏もその典型です。本当に惨めです。

しかし、鳥越氏は、大いなる貢献もしています。鳥越氏のこのインタビューの内容や、都知事選中の発言や行動によって、野党共闘は大打撃を受け、日本の似非リベラルらのダメさ加減を多くの人々に再認識させ、さらにはマスメディアがいかにどうしようもない反知性的なジャーナリストしか育てられないかを白日の下に晒し、都知事選には、見事なほどの大差でボロ負けして、都民への実害を最小限に止めました。

本当に素晴らしい貢献をしてくれました。その意味では、鳥越氏を高く評価したいです。本当に、鳥越氏が都知事選に出馬しなかったら、このようなことはなかったと思います。

鳥越氏は、実は小池百合子氏の強力な助っ人で、最大のファショニスタだったようです。これからも、日本の似非リベラルはこのようなファショニスタを輩出し続け、日本の明るい未来に大いなる貢献をしてほしいものです。

それから、似非リベラルだけではなく、石原親子も、今回は素晴らしいファショニスタぶりを発揮しました。これからも、素晴らしいファショニスタでいてほしいです。

鳥越氏を応援する民進党岡田代表
そうして、忘れてならないのは、あの大物ファショニスタ岡田氏です。次の代表戦にも出馬し、日本の似非リベラルを叩き潰すファショニスタを続けて欲しかっです。

ファショニスタ 万歳!万歳!万歳! 日本の、似非リベラルの崩壊も近いです。

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2016年8月11日木曜日

【緊迫・南シナ海】ベトナムが中国・人工島射程にスプラトリー諸島でロケット弾を配備 インドからミサイル購入も―【私の論評】日本の備えはベトナムよりはるかに強固、戦えば中国海軍は崩壊(゚д゚)!


ベトナムがイスラエルから調達した最新鋭のEXTRAロケット弾。10mの範囲でHitさせる高性能
ベトナムが南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に移動式のロケット弾発射装置をひそかに設置したことが10日、分かった。ロイター通信が複数の欧米の当局者の話として伝えた。ロケット弾は中国が軍事拠点化を進めている同諸島の人工島を射程に収めるとされ、中国の反発で緊張が高まる恐れがある。

 ロケット弾発射装置は、ベトナムがイスラエルから調達した最新鋭のEXTRAロケット弾発射システム(最大射程150キロ)とみられ、数カ月前にベトナム本土から同国が実効支配する岩礁など5カ所の拠点に船で移送された。数日中に稼働を開始できるという。

 ロケット弾は重さ150キロの高性能爆薬やクラスター爆弾を搭載でき、発射装置の機動性も高いため、敵の上陸作戦にも効果的に対処できる。現在の配備地点からは、中国が滑走路などを建設したミスチーフ(美済)礁、スービ(渚碧)礁、ファイアリークロス(永暑)礁が射程に入る。

 ベトナム外務省はロイターに情報は「不正確」としたが、専門家らは、南シナ海での主権主張を仲裁裁判所に否定された中国が強硬手段に出る事態を警戒し、ベトナムが防衛体制の強化に動いたと分析している。

 一方、インドからの報道では、モディ首相は9月に訪越し、南シナ海問題などを協議する見通し。インドは中国を牽制する思惑から、ベトナムに最新式の巡航ミサイルや対潜魚雷を供与する方向で協議を進めると予想されている。

【私の論評】日本の備えはベトナムよりはるかに強固、戦えば中国海軍は崩壊(゚д゚)!

日本では、未だ尖閣諸島そのものには人員も配置していないし、兵器も設置していません。

しかし、日本も手をこまねいているわけではありません。日本もすでに、海上自衛隊の護衛艦や、P3Cなどの対潜哨戒機や、それを護衛するための航空機、潜水艦など配置していると考えられます。実際に武力衝突ということになれば、ベトナム軍の比ではないほどに強力な備えはしています。

日本のP3C対潜哨戒機 日本の対潜哨戒能力は世界一の水準
ベトナム軍は、派遣しようにも、強力な軍艦も、潜水艦も対潜哨戒機も所有していないため、陸上に強力なロケット弾を配置したのでしょう。それにしても、かつては中越国境紛争で中国を撃退したベトナムです。海上でも意地を見せてほしいです。そのためには、日本は、協力を惜しむべきではないです。

ただし、日本の場合は、軍事秘密ということもあり、さらには中国を無用に刺激したくないということで、明らかにされていないことがいろいろあるようです。

特に、中国側を無用に刺激したくないという意識があることは、未だに尖閣水域に中国漁船が200隻以上も集結している写真が公表されていないことからもうかがい知ることができます。

これは、報道陣も同じことです。これなど、撮影するつもりがあれば、ドローンを飛ばして撮影すれば、さほど困難もなくできるはずです。これなら撃墜されたとしても、犠牲者は出ませんし、撃墜される直前の画像などかなり迫力のある画像が撮影できるはずです。

陸上自衛隊のヘリコプター型のドローン「UAV」

これをしないのは、中国側の報道規制を恐れてのことでしょう。もしそのような報道をすれば、中国側から取材を拒否されることを懸念してのことであると思われます。

軍事秘密ということでは、潜水艦の配置などは、全くスルーでしょう。これは、最新型潜水艦を所有している国では共通のことです。しかし、日本の最新鋭「そうりゅう型」潜水艦などのは尖閣水域のいずれかに複数潜伏しているのは間違いないです。

手前「はるしお」型、後方「そうりゅう」型潜水艦
日本の最新鋭の潜水艦は、工作技術が優れており、ほとんど無音に近いくらいに音を発することがないので、中国は全く探知できません。しかし、中国の潜水艦は、工作技術が低レベルなので、水中をドラム缶を「ドンドン」と叩いて進むような音を出すのと、東シナ海の海の推進は浅いので、日本側はすぐに探知できます。

日本の潜水艦は、逐一中国側の艦艇や、潜水艦の位置を知りながら航行できるのに対して、中国側は、日本の潜水艦の動きを知ることはできません。中国の漁船などはまさか、潜水艦に撃沈されることはないと思っているでしょうが、中国海警や、海監などの艦船や軍艦などは、本当はおっかなびっくりでこの水域に入っているはずです。

さて、こうした海上自衛隊の尖閣付近での動きなど、軍事機密にされている部分もありますが、中には報道されているものもあります。

たとえば、以下の報道がされています。
【防衛最前線(75)】尖閣接続水域で中国フリゲート艦と対峙した海自護衛艦「せとぎり」 対中任務の要として存在感高め…
海上護衛艦「せとぎり」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部のみ引用します。
 6月9日午前0時50分ごろ、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」の警戒監視網が、1隻の不審な船影を捉えた。中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦。尖閣諸島の久場島北東の接続水域に侵入しており、そのまま進めば領海に入る可能性もあった。 
 せとぎりは海自のP3C哨戒機とも連携しながら監視を続行。同時に、中国軍艦に無線で退去を呼びかけた。しかし、返ってくるのは「ここは中国固有の領海だ」という趣旨の国際法を無視した一方的な主張のみ。日本政府は中国の軍艦が尖閣諸島の領海に入れば、海自に海上警備行動を発令する方針を固めている。それだけに緊張が走る場面だった。

 中国のフリゲート艦と対峙(たいじ)した海自の「せとぎり」は、「あさぎり」型護衛艦の6番艦だ。全長137メートル、幅14・6メートル、基準排水量は3550トン、乗員約220人。平成2年に就役した。艦名は「瀬戸に立つ霧」に由来する。
 搭載する武器は高性能20ミリ機関砲、76ミリ速射砲、短SAM装置一式、アスロック装置一式、3連装短魚雷発射管など。哨戒ヘリ1機も搭載する。
上の記事で気になるのは、「中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦」です。フリゲート艦とは、フリゲート艦の定義は各国によってまちまちですが、駆逐艦や巡洋艦よりは、小型で軽装であることは共通です。日本でいえば、海上保安庁の巡視船の武力を強化したものくらいに捉えれば、良いくらいのものです。
これが、諸外国でいえば駆逐艦なみの護衛艦「せとぎり」と対峙したということです。フリゲート艦では、とても歯が立ちません。さらに、海中には日本の最新鋭潜水艦が潜伏している可能性が高いことも、中国側は承知していることでしょう。

だからこそ、接続水域を航行する以外のことはせずに、離脱したのでしょう。「せとぎり」側の警告を無視すれば、簡単に撃沈されてしまいます。中国側の、フリゲート艦の艦長や乗組員からすれば、命がけの冒険だったことでしょう。

日本では、中国が軍艦を派遣したという報道されていますが、その実は軽装のフリゲート艦です。中国が本気で日本と対峙しようとするなら、フリゲート艦ではなく、駆逐艦クラスを数隻派遣すべきだと思います。

しかし、そのようなことはしません。つい最近では、漁船が300隻、公船が十数隻尖閣付近の水域に入りました。しかし、これもなぜか本日姿を消しました。

これは、私の推測ですが、やはり、中国にとっては、日本の海上自衛隊は手強いのだと思います。日本の海上自衛隊が本気で中国海軍と対峙すれば、中国の空母や、駆逐艦などは、ことごとく海の藻屑と消えることははっきりしています。

航空戦力も便りになりません。中国は合計で1450機程度の戦闘機と攻撃機を保有しています。航空自衛隊は350機未満であり圧倒的な大差があります。

テレビや新聞はこの数字を根拠に「中国空軍は日本より圧倒的に強大で、今やアメリカより強い」などとしています。

だが中国空軍の内訳を見ると朝鮮戦争後のミグ21(ソ連)を国産化したJ-7戦闘機が700機を占めています。

中国空軍の大部分を占めるJ-7戦闘機

ベトナム戦争で北ベトナム軍が使用していたソ連機です。いくら何でもこれは論外で、戦力に含める事はできません。

次に多いのがミグ21を改良したJ-8Ⅱの300機で、双発エンジンにしたり、電子機器を大型化したりしています。しかし、所詮ミグ21であり、これも戦力外通告しましょう。

これで残り450機になり航空自衛隊に近づいてきました。さらに戦力外を引いていきます。

J-10という中国の国産戦闘機が現在も生産されていて、200機以上を保有している。

設計はイスラエルのラビという試作機が元になっていて、中国とイスラエルの軍事交流が盛んだった頃の遺物です。

電子機器や装備もイスラエルの協力を受け、当時の西側に近い機能を持たせてあります。ミグ21より遥かに優れているのですが、外観・機能ともに北欧やフランスの軽戦闘機に類似しています。

初飛行は1998年で、当時の中国の航空技術を考慮すると、どう考えても「それなり」の性能でしかありません。西側のF15やF16に通用するとは考えられず、これも戦力外とします。

Su-27は設計が旧ソ連製で西側のF15やF16に対抗して開発した最後の戦闘機です。Su-27の中国版がJ-11で170機を保有しています。

さらにSu-27の攻撃機型のSu-30系をロシアから76機輸入しています。つまり中国の現有航空「戦力」は全部で246機となります。

J-11
航空自衛隊の350機よりかなり少なくなりました。これに日本と中国の稼働率を掛けてみます。

保有していても稼動しないのは飛べないので、存在しないのと同じです。航空自衛隊の稼働率90%、従って実数は315機です。中国空軍の稼働率推定20%、従って実数は50機です。

日本と中国が尖閣諸島で戦う時には、日本の315機が中国の50機の戦闘機と戦う事になるのです。これも、中国が本格的に尖閣に攻めて来ない理由なのです。

しかしながら、日本は中国機のスクランブルできりきり舞いさせられているということも報道されています。あれは、いつどこに来るか前もってわからないことと、中国は戦力外といいながらも多数の戦闘機を持っているからです。

先日は、北朝鮮の弾道ミサイルが予告なしで発射され、秋田沖のEEZ(排他的経済水域)に落下し、日本は前もって察知できなかったという出来事もありました。日本の安全保障のために、中国空軍の不穏な動きや、北朝鮮の弾道ミサイルへの迅速な対応ができるように、日本の航空自衛隊の質的転換が迫られていると思います。

これに対応するには、一日24時間、軍事偵察ドローンを日本の上空を飛ばせることで対応できます。技術的には、日本なら十分可能です。

中国としては、日本と本気で対峙して、本当に戦争になれば、中国海軍が崩壊してしまうことを懸念しているのだと思います。今失ってしまえば、またもう一度ゼロから構築しなおさなければならなくなります。

航空支援もあまり期待できない中国の海軍は、まだまだであり、日米英露などの海軍には勝てないことは、重々承知しているのだと思います。日本との本格的な対峙は、避けて、海軍力を温存して、いずれ捲土重来を期すると考えているのだと思います。

しかし、国内に対して、東シナ海での示威行動をアピールするため、民兵を積載した中国漁船と公船などを大量にこの海域に派遣して見せたのでしょう。これが、現在の中国がとり得る最大の示威行動なのでしょう。

しかし、日本が少しでも、弱みを見せれば、中国は再び尖閣奪取を成し遂げようと虎視眈々と機会を狙っています。さらに、中国は日々軍備を近代化していることも忘れるべきではありません。

日本としては、さらに尖閣の備えをより強固にすべきです。

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2016年8月10日水曜日

小池百合子新都知事の右腕 除名覚悟の「若狭勝」氏が都議会のウソを暴く―【私の論評】東京都の問題はこれからだ!まだ何も始まっていない(゚д゚)!

小池百合子新都知事の右腕 除名覚悟の「若狭勝」氏が都議会のウソを暴く


都知事選で小池百合子氏の応援にかけつけた若狭勝氏
■元東京地検特捜部検事

都知事選で圧勝した小池百合子氏の選挙戦の最中、彼女の後ろに立つ姿がよくテレビに映っていたのが、自民党の若狭勝衆議院議員。今回は、党から「小池を応援したら除名」といった通達があったにもかかわらず、除名覚悟で小池氏の応援に回ったことから、当選の陰の立役者の一人とも言われている。都知事選の後、彼は「できれば自民党に籍をおいていたい」とフジテレビの情報番組「とくダネ!」で心情を吐露しているが、どういう処分が下されるかはまだ不透明なところだ。

その若狭氏、かつて東京地検特捜部検事だったのは有名な話。数多くの取り調べにかかわってきた彼は、3年前、『嘘の見抜き方』という本を出版している。同書は「人が嘘をつく4つの理由」「嘘を見抜くための心得」「嘘つきのつかうセリフ」等々、過去の知見を活かした独自の「ウソ」に関する考察、見抜き方が盛り込まれた1冊。

今回はその中から「人が嘘をつく4つの理由」についての解説を紹介してみよう(以下、引用は同書より)。

和服姿の小池百合子氏

■嘘をつく理由は4パターン

検事経験を通じて、たくさんの嘘に接してきた若狭氏は、嘘には「自覚的につく嘘」と「無自覚につく嘘」があるという。

そのうち前者はさらに4つのパターンにわかれる。

(1)自分を守ろうとする「防御の嘘」

(2)自分を大きく見せようとする「背伸びの嘘」

(3)他人を陥れるための「欺瞞の嘘」

(4)他人を守るための「擁護の嘘」

(1)は動物の持つ「防御本能」に近いものだ。

「ただし人間が恐れているもの、逃れたいものは他の動物よりはるかに複雑です。処罰されたくない、仕事を失いたくない、信用や地位を落としたくない、お金を失いたくない、家族を失いたくない、怒られたくない……。

自己防衛として、真実を覆い隠し、隠蔽し、ごまかすのはある意味必然なのです」

わかりやすい例としては、若い女性と浮気をしたという嫌疑がかけられた男性が、身におぼえがあったとしても、つい、

「やっていない!」

「事実無根だ!」

「誰かが俺を陥れようとしている!」

などと言ってしまうのは、まさにこの「防御の嘘」と言えるだろう。

■意外すぎる殺害動機

(2)は「虚栄の嘘」と言い換えてもいいだろう。

「キレイに見せたい、能力を示したい、注目されたい、社会的地位を得たい……。そんな『自分を少しでもよく見せたい』という見栄からついてしまう嘘のことです。

この手の嘘は社会にはびこっています。

この嘘と向き合う上で重要なのは『プライド』と『恥』です。この『背伸び』の嘘は、プライドと恥が動機となって生み出されることが多い。プライドが高い人はプライドを守るために嘘をつき、恥を怖れる人はそれが明るみにでないように嘘をつきます」

若狭氏自身が経験した例としては、こんなものがあったという。ラブホテルで男性が交際相手を殺した事件。被疑者は殺害事実こそ認めるものの、動機がなかなか分からなかった。

「真実は意外なものでした。実は彼は先天性梅毒で、他人に感染させてしまうことを恐れ、人との接触を極力避ける生活を続けていました。

そんな彼にも中年になってようやく交際相手ができました。それでも相手に病気のことは打ち明けられず、性行為では感染させてしまうと考え、一緒にお風呂に入るといった感染の可能性のない行為を続けていました。

ところがあるとき、お風呂の中で、彼女がふと『うつる』という言葉を発したというのです。

必死で病気を隠し、人一倍その言葉になっていた彼は、その瞬間全てバレたと思ったそうです。この関係はもう終わりだ、病気も世間にバレてしまう――頭に血が上った彼は、病気を隠し通し、自らのプライドを維持し続けるため、彼女のことを思わず殺してしまったのです」

■利権追及チーム

(3)他人を陥れるための「欺瞞の嘘」は、詐欺などが典型なのでわかりやすいだろう。若狭氏の指摘で興味深いのは、犯罪者の悪質性という点に注目した場合、実は殺人犯や暴行犯よりも詐欺犯のほうが「心が壊れている」こともあるという。

「殺人犯や暴行犯は意外と取り調べにも素直に応じ、真実を話し、反省を見せる傾向にありますが、詐欺犯の供述というのは徹頭徹尾嘘だらけ。

こちらが何を言っても動じず、罪悪感を感じている人が少ないのです」

(4)他人を守るための「擁護の嘘」は、政界、経済界絡みの事件ではお馴染みだ。

秘書やヒラ社員がボスを守るという構図は常にある。舛添前都知事にそういう人が出てこなかったことが不思議なくらいである。

若狭氏は、嘘を見抜くにあたっては、それがどのパターンの嘘なのかを見極める必要がある、と述べている。ただし、綺麗に4つにわかれるのではなく、動機が混在していることも少なくないのだそうだ。同書ではそれらの嘘を見抜く実践的なテクニックも披露されている。

小池都知事は就任会見で、今後、都政の「利権追及チーム」に若狭氏の起用を検討している、と述べている。国会議員が都の調査チームに参加するとなると、かなり異例のケースとも言えるが、それだけ彼の手腕を評価しているということかもしれない。

都議会や五輪組織員会には様々な「闇」が囁かれている。何らかの利権が隠されているとすれば、そこには誰か嘘をつく人間がいるはずだ。

嘘を見抜くエキスパートの腕に期待する都民も多いのではないか。

【私の論評】東京都の問題はこれからだ!まだ何も始まっていない(゚д゚)!

都議会の利権については、様々にいわれているところです。

大前研一氏
 (舛添氏よりも)むしろ“脛に傷を持つ”のは都道府県議会や市区町村議会の議員たちだろう。 
 実際、私が1995年に東京都知事選挙に出馬した際は、都議たちがいかに利権にまみれているかという情報が、都庁職員からファクスで続々と届いた。 
 たとえば、東京都の施設に設置されている自動販売機は1台1台すべて、都議ごとに利権が決まっていて、そのリストを送ってきた。あるいは、都立現代美術館が新設された時は、そこに展示する絵画や彫刻などの作品ごとに、それを納入する画商と口利きする都議のリストが送られてきた。業者への“口利き利権”を、与野党を問わず都議たちがあらゆる分野で分け合っている実態がそこにはあった。 
 また、野党議員の中には、住民反対運動を利権にしている者もいる。つまり、自分の選挙区でビルやマンションなどの建築計画が立ち上がると周辺住民の反対運動を組織し、住民の“代弁者”となって施主や建設会社と交渉する。そして騒音対策費などの名目で補償金のようなものを獲得したら、それを住民と折半するという仕組みである。 
 これらを全部ひっくるめると、地方議員がいかに利権まみれかがよくわかる。多くの議員は、叩けば山ほど埃が出てくるはずだ。この話は20年以上前のことだが、もし都議たちが今は違うと言うならば、都議全員の“総当たり制バトルロイヤル”で、お互いの利権の有無を追及し合えばよい。 
 産経新聞(5月18日付)によると、都議の年収は1700万円超で、議会に出席すれば1日1万~1万2000円の“日当”も支給される。この報酬と月60万円の政務活動費などを合わせた127人の都議の“人件費”に、それを支える議会局職員約150人分の給与などを加えると、都議会維持費用の総額は56億円に上るという。 
 なのに、今年3月の都議会では舛添都知事が提出した全議案を原案通り可決した。原案可決率100%という異常事態が、少なくとも3年以上続いている。要するに、都議たちは全く仕事をしていないのである。舛添氏の絵画や中国服の購買を追及する立場にないことは明らかだ。 
 都議会の「原案可決率100%」でわかるように、そもそも地方自治体は事実上、首長と役人が運営している。海外では、地方議員は無給のボランティアで、夕方、仕事が終わってから集まって議会を開いているところも多い。 
 一方、高給をもらいながら、それに見合うような仕事をしていない日本の地方議会は文字通り“無用の長物”であり、税金の無駄以外の何物でもない。では、優秀な都の職員たちは、なぜ都議たちの横暴や利権漁りを知りながら容認しているのか? 
 これが地方議会の本質ではないかと思われるが、都の職員は自分たちの仕事や提案する予算、議案にいちゃもんをつけさせない抑止力を維持したいからである。「原案可決率100%」で、その見返りが十二分にあったことが示されている。 
 しかし、彼ら公僕は決してそれでよいとは思っていない。だからこそ私が都知事選に出馬すると一斉に「この議員たちの悪行を一掃してくれ!」と、驚くほど細かな「利権一覧」を送ってきたのである。 
 舛添問題は聞き飽きたと言う人は多いと思うが、その背景にあるおぞましいまでの地方自治体と議会の実態を根本から作り直す契機にしてもらいたい。うんざりして「次の知事」を知名度だけで選んでいる場合ではないのだ。
なお、この発言は都知事選以前のものです。

都議の利権のほか、裏金を危惧する発言をする人もいます。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
舛添都知事“説明なき辞職”を元愛人が批判―【私の論評】倫理的追求に終始していては何も変わらない!形を変えてまた起こり続ける舛添問題(゚д゚)!
韓国の朴槿恵大統領と会談した舛添知事
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこのブログにも掲載した、佐藤優氏の裏金に関する見解を掲載します。佐藤優氏は、「これはあくまで自分の憶測です」と述べた上で、見解を表明しています。

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詳細は、この動画をご覧いただくものとして、佐藤優氏は、自分の憶測だとしながらも、都庁にはいわゆる裏金(プール金)があるのではないかと主張しています。

確かに、これがあれば、様々な謎が解けます。そうして、佐藤氏は、かつて東京都は、尖閣買い取りのため、副知事だった猪瀬が15億円を簿外で集めたことがあることを指摘していました。

さらに、佐藤氏は東京都には会計検査院の手が入らないことなどを語っており、裏金は大いにありそうそなことです。かつて全国各地の警察には、そのようなお金がプールされていました。当然のことながら、警察組織は監査が入ります。監査が入っても、あのようなことがあったのですから、会計検査院がノータッチということになると、東京都はかなり裏金をプールしやすい組織ということがいえます。

佐藤優氏
しかし、舛添さんのことばかりに目がいって、都自体の問題に何ら手をつけられないことをあげていました。

東京都庁は、このような裏金のある伏魔殿のような状況になっているのかもしれないと指摘しています。以下動画からまとめた内容を以下に掲載します。

舛添氏は一体、どんな悪を犯したか。彼にすれば、先の石原知事や、猪瀬知事とは異なり、平日は、毎日出勤するという生真面目さが裏目に出たということが考えられます。

しかし、舛添氏は、この伏魔殿に集う鬼ども集会に出て、この裏金についても説明を受け、「ちょっとそれ、旨そうだから俺にも食わせろ」と言ってしまったようです。

東京都庁という伏魔殿?
それが転落の始まりになったということです。ここで確認しておきたいのは、次の二つです。
一つは、舛添氏を誰がチクったか。 
二つは、彼が手を突っ込んだお櫃にあっただろう裏金は、今どうなっているのか、
ということです。

これが明らかにされない限り、舛添騒動は結局何も終わったとはいえないということです。結局、舛添氏の倫理問題だけがクローズアツプされ、その倫理観の弱い舛添氏がなぜあのような豪華な海外出張にでかけられ、都知事に許容される限度を超えたお金はどこからきているのか、全く追求されません。

都議会で彼を追求していた議員たちは、実は、自分たちも伏魔殿の鬼、汚い人間であるのが明るにでてはいけないので、中途半端に舛添氏の倫理問題ばかりをほじくり返していたのかもしれません。

ワシントンを訪問した舛添知事
舛添氏もそのような伏魔殿の鬼どもの悪さは知りながらも、それを表沙汰にしたとしても、結局自分がそれを利用したという事実があり、それが明るみにでると、倫理問題だけではなく、その裏金問題を知りながら許容したばかりではなく、自らからその恩恵にあずかったことが明るみでることを恐れて、それについては口をつぐんたのかもしれません。

そうして、結局のところ、舛添氏が語っていたように、公明党tが裏切り慰留も何も全くしなかつたことや、さらに佐藤氏が動画で語っているように東京地検の動きなどが重なり、舛添知事が自らか辞任するということで、決着がついたのかもしれません。

2年以上も、毎日平日出勤ということで、様々な帳簿なども全部みようと思えば見えるということであれば、以前の知事が気づかなかった、裏金の存在にも気づいたということは十分考えられます。

しかし、この佐藤氏の読みが正しかったとすれば、マスコミや都議会が大騒ぎしても、結局何も変わらないということです。

もし、真実はここまでひどくないとしても、問題の本質が解明されないまま、舛添知事の辞任ということであれば、何も変わらず、また何年かして、舛添知事のように倫理的に問題のある人間が都知事になった場合同じようなことが繰り返されることになってしまいます。

結局のところ、何も変わらず、変えもせず、臭いものに蓋をしておしまいです。このようなことがあまりに多すぎます。

"

裏金があるとすれば、当然のことながら、都議会議員だけではなく、都職員も大いに関わりがあるものと思います。

この他、猪瀬元東京都知事による暴露もあります。それに関しては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「都議会のドン」への“抗議の死” 自殺都議の妻が夕刊フジに激白―【私の論評】次の東京知事は伏魔殿東京都を打ち砕く人にすべき(゚д゚)!
猪瀬元東京都知事
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部だけ引用します。
  猪瀬直樹元東京都知事がインターネット上で炸裂(さくれつ)させた「暴露」が、都知事選を激震させている。5年前に自民党都議が自ら命を絶った理由を、「都議会のドン」と呼ばれるA氏への“抗議の死”だったと明かしたのだ。このA氏、今回の都知事選で、「(親族を含めて)非推薦候補を応援すれば除名対象」という、まるで北朝鮮のような通達文書を出した1人だという。元都議の未亡人が夕刊フジに激白した。
以上のようなことから、都庁は伏魔殿のような所であるのは間違いないようです。

さて、かなり舛添元知事の問題になつた大名行列のような出張ですが、このようなことがあった挙句結局リオの視察に最終的に行った、自民・公明・民進・旧維新の議員たちには、ある共通点があります。

その共通点とはなんでしょうか。そう、舛添知事の高額海外出張経費などを徹底追求する、百条委員会の設置に最後まで反対した会派です。

なんのことはない、彼らも同じ穴のムジナだったというわけです。世論の流れに迎合して知事をぶっ叩いている裏側で、自分たちはちゃっかり海外視察の準備を進めていたということです。

舛添知事の行いは決して許されるものではありませんでしたが、都議会も本当に腐敗が極まっているような場所のようです。

普段国会議員などと比較すると、注目がほとんど集まらないことから、「国会以上に保守的な伏魔殿」と呼ばれる東京都議会です。そうして、東京都議の全部とはいいませんが、上でも指摘されているように、原案可決率100%で仕事をほとんどせず、能力も低く、利権あさりにはあざとい議員が大勢いるようです。

ある都議会で「ミは、ミは、ミは」と何度も繰り返す議員がいたので、不思議に思って原文を読んでみると、「実(じつ)は」だったという笑い話もあるくらいです。

このくらいの能力でも勤まってしまう、都議会議員なのです。彼らの多くは、都民などそっちのけで、利権の追求にばかり血道を費やしているのです。

そうして、このようなことは、全国の他の自治体にも多かれ少なかれあることです。これは、大阪でも橋下氏によって明らかにされたことがありました。

ただ、東京都は規模も大きく、政府から交付を受けなくても、都政を実行できるだけ、財力があるということや、今回の舛添知事問題や、都知事選挙で目立ってしまったというだけのことです。

ブログ冒頭の記事にあるように、若狭勝氏や小池百合子氏などこの問題の解決のためには、格好の人物であると思います。しかし、東京都の問題はこれからです。舛添氏が辞任し、新都知事が就任したからといって、終わったわけではありません。まだ何も始まっていないのです。

東京から地方自治体の腐敗が明るみに出され、そうして、それが是正され、その後にその波が全国の自治体にまで広がることを期待します。

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