2008年4月22日火曜日

現代中国のデモ隊を彷彿させるヒトラーと突撃隊(SA)−彼らは歴史上の泡沫に過ぎない

万歳ヒットラー・ユーゲント
作詞:北原白秋
作曲:高階哲夫



上は、日本でつくられたナチス・ドイツを賛美する歌の動画。なんと、あの有名な北原白秋が作詞している。戦争ということになれば、一般の市民はもとより、すべての職業の人々も動員されることを示す格好の事例だ。現在中国国内や、外国で行われている、中国人のデモの中には、自分の意思とは関係なく動員されている人も多数いると思う。その中にも、北原白秋のような人もいるかもしれない。

最近、中国国内はもとより海外でも、聖火リレーを妨害する行為に対するデモ行為が頻発している。フランスなどでは、フランス国旗にナチスの鉤十字を書き込み、それを燃やすなどの過激な行為も見られる。中国国内では、カルフールなどに対する不買運動などが各地で広がっている。
彼らの姿を見ているとまるで、1930年代のヒトラーが政権をとる直前の突撃隊(SA)のようだと思われる。



1930年代のドイツは、第一次大戦の「敗戦国」として、劣悪な状況に置かれていた。戦勝国から科された法外な賠償金。ワイマール平和憲法への幻滅。金融恐慌。一握りの勝ち組(たとえばユダヤ系資本家)と多数の負け組。どこにも未来が見えない混迷。何が正しいのかわからない…。
考えることが面倒くさいと、多くの民衆は考えること自体をやめてしまいました。強いものにくっついて、弱者と少数者をブッ叩けばいい。威勢のいいのが一番だ。考え悩むなんて阿呆だ。暴力ほど愉しいことはない。何にも「自分」を誇れないから、自分の属する国と民族を讃美しよう。「我々」は絶対に正しい。反省なんか必要ない。悪いのはつねに「ヤツら」だ。みんなで「ヤツら」をブチのめせ…。

こうして多くの連中が、「民族の誇り」を求めて、エルンスト・レームらの鼓舞する「突撃隊」に同調した。SAとナチとは一体とみられがちだが違う。意外なことかも知れないが、この当時ナチス党のヒトラーたちは、あくまで合法的に活動していた。「社会の不公正を正せ」とか「よい教育を」とか主張していた。ヒトラーが悪魔的な貌を現すのは、政権を取った後の話。初期の彼らはまともな改革を叫んでいた。そうして、本当に改革をした。これは忘れてならないことだ。

突撃隊は、このナチスをボランティア的に支援した団体である。彼らは、ナチスに反対する者、非「愛国的」と見なされた者、その他なんでも「うるさい」連中を攻撃した。ユダヤ人を襲撃し、言論に圧力をかけた。彼らは下品で無知だったので、ヒトラーは、彼らと距離を置いていた。いちいち暴力を指図したりしなかったが、もちろん止めもしなかった。突撃隊の勝手な暴走に任せたのである。

ドイツ社会は、だんだんと、突撃隊の暴力によって沈黙せられていった。逆らうことには勇気がいったし、報復が待っていた。たとえば手塚治虫『アドルフに告ぐ』の中で、ユダヤ人の家に投石してガラスを割ったりしてるのは、おおむね突撃隊かそのシンパである。

突撃隊に「邪魔者」を排除させつつ、ヒトラーたち政党ナチスは、法と選挙の枠組みの中で活動した。ついに1933年、ナチス党は政権掌握に成功する。これは突撃隊の「貢献」抜きにしてはありえないものだった。彼らの無知と暴力が、社会の良識を黙らせてしまったのだ。

さて政権を取ったナチス党は、全てを統制下に置こうとする。ヒトラーは「親衛隊/SS」を組織した。これは党に直属するホンモノの軍隊である。機械のように規律で動く。もはや暴走ばかりする愚連隊は、党にとっても無用となった。

ヒトラーは、1934年6月30日、親衛隊SSを使っていきなり突撃隊SAを騙し討った。これを「長いナイフの夜」という。ナチスに夢を託していた突撃隊にとって、これは全く夢にも思わないことであった。隊の指導者レームは、ヒトラー自身によって逮捕され、「我が総統よ!」と叫んで、射殺された。数百人が一斉に殺戮された。正確に何人が殺されたか、もう永遠にわからない。おそらく、数千人は殺害されたものと推測されている。突撃隊の「愛国者」らは、彼ら自身がつくり出した政権によって抹殺されてしまったのだ。走狗の末路、かくの如しである。

現在中国国内や、海外でデモ活動をしている連中の中で、それらの核になるような団体が存在するものと思われる。彼らも、いずれSAのような末路をたどると 思います。私は、このブログの中で「中国分裂の筋書」を10回にわたり連載したが、中国分裂の筋書きはますます真実味を帯びてきたと思っている。

『中国分裂の筋書』に関しては、下の反転文字列をクリックしていただければ、当該記事に飛びます。

■中国ゼリー層-明日の中国を牽引する原動力となるか?

■チャイナ・アート・バブルにも冷めた見方のできる中国ゼリー世代?

■中国分裂の筋書き−(その10)パクスマリーナが拓く世界の平和と大繁栄

■中国分裂の筋書き−(その9)日本の対応は?

■中国分裂の筋書き−(その8)迫られる中国の選択

■中国分裂の筋書き−(その7)忘れてはいけない中国の不良債権

■中国分裂の筋書き−(その6)現代中国の混乱ぶりを現す動画の数々

■中国分裂の筋書き−(その5)他の人達はどう思っているのか?

■中国分裂の筋書き−(その4)毛沢東を統合の象徴にすることができない中国中央政府の苦悩

■中国分裂の筋書き−(その3)中国バブルの真実

■中国分裂の筋書−(その2)革命でもなければ現代中国は変わらない

■中国分裂の筋書−(その1)繰り返される歴史

■中国"義歯"から鉛「安全に問題」

■中国産原料を使ったヘパリン製剤で自主回収へ・・・・米国では死者21名

■世界一人当たりのGDP(国内総生産)と、一人当たり資産−これでも中国は経済大国か?

■南京虐殺記念館に対する日本政府の申し入れに関して考えた、中国のお家事情


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