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2020年2月1日土曜日

新型肺炎は、中国共産党支配の「終わりの始まり」かもしれない―【私の論評】全体主義国家が強大になっても、様々な異変でそのほころびを露呈し結局滅ぶ(゚д゚)!

チェルノブイリとソ連崩壊に似ている

「武漢封鎖」と「チェルノブイリ」の類似性

感染が拡大している新型肺炎は、中国の政治指導体制に重大な影響を与えるのではないか。チェルノブイリ原発事故が旧ソ連崩壊のきっかけを作ったように、新型肺炎は中国共産党支配の「終わりの始まり」になる可能性もある。

中国当局は武漢における初動の情報隠蔽を内外で批判されたために、連日、記者会見を開いて、感染者と死者の数を公表している。それでも、まだ実態には程遠いはずだ。病院に来た患者を収容しきれず、自宅に追い返しているのだから、正しい数字を把握できるわけがない。

感染者数について、当初は米欧の研究チームが公表したように「最大で35万人以上になる」という推計もあった。ただし、1月27日時点での改訂版推計では、具体的な数字が削除された(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.01.23.20018549v2.full.pdf+html)。状況が流動的で、信頼できる推計値を出せないのかもしれない。

いずれにせよ、感染者数も死者数も増加の一途を辿っており、いつピークを打つのか、現時点では見通せない。日本でも、武漢からの帰国者の中に感染者がいた。数人の感染者で大騒ぎなのだから、武漢では事態の沈静化どころではないはずだ。

武漢市内に突貫工事で建設されている病院

マスクに防護服姿の当局者たちが武漢駅を封鎖した光景を見て、私は、1986年4月26日にソ連で起きたチェルノブイリ原発事故を思い出した。防護服だけでなく、当局による情報隠蔽と慌てぶりがそっくりだったからだ。

事故がもたらした「共産党崩壊」

チェルノブイリ事故も発生直後、現場の当局者によって事実が隠蔽された。世界が事故を知ったのは、事故発生から2日後である。スウェーデンの原発で働いていた作業員のアラームが鳴り響き、靴から高い放射線量が検出されたのがきっかけだった。

付着していた放射性物質を調べたところ、汚染の発生源は自分たちの原発ではないと分かり、方角からソ連の原発を疑った。スウェーデン政府が問い合わせて、初めてソ連が事故発生を認めたのである。当時の様子を、ソ連共産党書記長だったゴルバチョフ氏は回想録で、次のように記している。
事故の第一報がモスクワに入ったのは、26日早朝だった。……直ちに政府委員会を事故現場に派遣することが決定された。……27日に委員会からの情報が入り始めた。……28日にルイシコフが委員会の活動に関する最初の成果を政治局に報告した。……意図的に隠したという告発に対して、私は断固否認する。単に我々は当時、まだそれを知らなかっただけだ。 
事故の直後に政治局会議で行ったアカデミー会員の……発言が今でも忘れられない。……「恐ろしいことは何も怒っていない。こんなことは工業用原子炉にはよくあることです。ウォトカを1、2杯飲み、ザクースカ(注・ロシアの前菜)をつまんで一眠りすれば、それで終わりですよ」(『ゴルバチョフ回想録』上巻、1996年、新潮社、以下同じ)
ゴルバチョフ氏は「自分たちは知らなかった」と言い訳をしているが、一方で、自分たちも「アカデミー会員に騙されていた」と認めている。つまり、ソ連が世界に事故を隠した事実は変わらない。そのうえで、次のように関係者を断罪し、事故を総括している。
極度に否定的な形をとって現れたのが、所轄官庁の縄張り主義と科学の独占主義にしめつけられた原子力部門の閉鎖性と秘密性だった。……私は1986年7月3日の政治局会議で言った。「……全システムを支配していたのは、ごますり、へつらい、セクト主義と異分子への圧迫、見せびらかし、指導者を取り巻く個人的、派閥的関係の精神です」 
事故は、我が国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことをまざまざと見せつける恐ろしい証明であった。……それは途方もない重さで我々が始めた改革にはねかえり、文字通り国を軌道からはじき出してしまったのである。
ゴルバチョフ氏は事故の教訓を深刻に受け止めて、グラスノスチと呼ばれた情報公開を武器にして、急進的なペレストロイカ(改革)に乗り出した。それは部分的に成功したが、最終的に共産党体制の崩壊とソ連という国家の解体をもたらす結果になった。

あまりにお粗末な中国の役人たち

ゴルバチョフ氏が指摘した「役所の閉鎖性や秘密主義、官僚のごますり、へつらい」など は、いまの中国共産党にそのまま当てはまる。

読売新聞によれば、武漢市の病院は「許可を得ずに、公共の場で感染状況を語ったり、メディアの取材を受けてはならない」と医師たちに指示していた(https://www.yomiuri.co.jp/world/20200125-OYT1T50233/)。武漢市長は1月26日に開いた会見で、情報提供の遅れを認めたうえで「上層部の許可を得なければ、情報を公表できなかった」と釈明している。

このときの会見で、湖北省の省長がマスクを着用していなかったり、武漢市長がマスクの裏表を逆にしていたり、マスクの生産量を億単位と万単位で間違えたりした。はては、会見後につぶやいた「オレの回答は良かったでしょ」という言葉が動画に流れて、中国のネットで「無能の証明」などと大荒れになった。

お粗末な対応を見る限り、中国の当局者たちは、ソ連と同じように、上司のご機嫌伺いを最優先にしただけでなく、そもそも行政能力が話にならないほど低レベルなのがうかがえる。共産主義の独裁体制が何十年も続くと、どの国もこうなる、という証明だろう。

新型肺炎は原発事故より厄介な面もある。原発近くで放射能を浴びれば、健康に障害が出るのは確実だが、新型肺炎は自分が感染しているのかどうか判然とせず、感染していたとしても、必ず死に至るとは限らない。それだけ人々の不安は一層、高まるのだ。

ソ連崩壊は「5年後」だったが…

被害拡大の様相も異なる。放射能汚染は風に乗って、時間とともに拡大したが、新型肺炎のウイルスは人間が媒体になって、中国と世界の各地に散らばっていった。武漢市長は街が封鎖される前に500万人が街を出た、と明らかにした。

そうであれば、今後、上海や北京など大都市が「第2、第3の武漢」になる可能性が高い。潜伏期間を考えると、今週から来週にかけてがヤマ場ではないか。上海や北京が汚染されれば、混乱は武漢の比ではないだろう。今度こそ、中央政府による徹底的な情報隠蔽が始まる可能性もある。いや、もう始まっているかもしれない。

新型肺炎で中国経済が打撃を受けるのは明白だが、それは政治体制への打撃にもなる。感染対応のお粗末さに加えて、失業と倒産が増え、政府に対する人々の怒りが増幅する。米国と合意したばかりの「2年間で2000億ドル」の輸入拡大策もどうなるか。内需が劇的に落ち込めば、輸入拡大どころではない。

反政府勢力によるバイオテロが起きる可能性もある。テロリストから見れば、新型肺炎の蔓延は、ウイルスを使ったバイオテロを実行する絶好の機会になる。ウイルスをばらまいても、意図的なテロか自然の感染拡大か、政府には直ちに見分けがつかないからだ。

チェルノブイリ原発事故がソ連の崩壊を招いたのは、究極的には、人々がソ連共産党を信頼しなくなったからだった。ゴルバチョフ氏が書いたように、事故は「国を軌道からはじき出してしまった」のである。新型肺炎も、中国共産党に対する信頼を傷つけているに違いない。

ソ連が国ごと崩壊したのは、原発事故から5年後だった。中国は、どうなるのだろうか。

【私の論評】全体主義国家が強大になっても、様々な異変でそのほころびを露呈し結局滅ぶ(゚д゚)!

さて、上の長谷川幸洋氏の記事では、チェルノブイリ原発事故が起きてから、5年後にソ連が崩壊したことを例として、中国も新型肺炎の蔓延が起きたことで、かつてのソ連と同じように崩壊する可能性を示唆しています。

チェルノブイリ原発事故

この説には信憑性があります。中国、ソ連そうして、かつてのナチスドイツのような全体主義の国家は長い間にはほころびが見えるようになります。そのほころびが崩壊前に目立つようになるということだと思います。

ナチス・ドイツの場合も、崩壊する前に、ヒンデンブルク号の悲劇という大惨事がありました。この大惨事があったのは、1937年でした。1945年にナチス・ドイツは崩壊しています。この大惨事が発生してから、8年後のことです。ナチス・ドイツはその後ヨーロッパ各地に侵攻していきましたが、その過程で様々なほころびを見せました。

炎上するヒンデンブルク号

このほかにも、全体主義国が経済的に発展して、世界的にも認知され、オリンピックを開催した10年後あたりに崩壊しているという事実もあります。

ベルリン・オリンピックが開催されたのは、1936年でした。ドイツ第3帝国(ナチス・ドイツ)が崩壊したのは、1945年5月です。モスクワ・オリンピックが開催されたのは、1980年、ソビエト連邦崩壊は1991年です。全体主義国家であるソ連もナチスドイツも、オリンピックを開催すると約10年後に崩壊しているわけです。

現代の全体主義国家中国では北京オリンピックが開催されたのは、2008年でした。その10年後の2018年には、中国は崩壊しませんでしたが、先日もこのブログに掲載したように、米国の対中政策が2018年を転機に、対決一色になりました。

2018年米国では中国に対する批判等は一巡し、中国に対抗するのは、米国の意思であるとの確認がされたのです。2019年以降は、実際に逐次中国に対する対抗策を長期にわたって実行し続ける段階に移行し、現在に至っています。

米国は、中国共産党が中国の体制を変えるか、変えるることができないというのなら、他国に大きな影響力を与えることができなくなるまで、中国経済を弱体化するまで、対中冷戦をやめることはありません。

2018年に中国の運命は決まったと言っても良いかもしれません。世界で唯一の超大国である、米国が中国をかつてのソ連のような敵国としたのですから、この時点で中国の運命は定まったのです。

もし、米国にオバマ政権が誕生して、中国に対して優柔不断な態度をとっていなければ、中国は2018年に崩壊したかもしれません、

結局、全体主義国が、オリンピックを開催できるまで、強大になり、他国が無視できない存在になったとしても、全体主義であるがゆえに様々なほころびが発生して、それがヒンデンブルク号の事件や、チェルノブイリ番発事故で可視化され、やがて崩壊するということなのでしょう。

北京オリンピック開会式での中国選手団

まさに、現在の中国で発生した新型ウィルスの蔓延も、現在の中国の全体主義であるがゆえのほころびを象徴するものなのでしょう。

そのほころびは無論ウィルスの蔓延だけではなく、中国社会・経済、その他あらゆる方面に蔓延しているのでしょう。

そうしたほころびを中国共産党は、軍事力や、国内の警察な城管などの暴力装置を用いた民衆の弾圧や、豊富だった資金力を用い、国内はもとより海外にも様々な工作をして、言葉通りの弥縫策を効果的に実施してきたのでしょう。

この弥縫策が、あまりに強力かつ巧であったため、多くの人たちが、「中国崩壊」を主張してきたにもかかわらず、中国はいままで崩壊しなかったのでしょう。

中国は建国以来毎年平均2万件の暴動が起こっていたとされますが、2008年あたりからは、10万件ともいわれるようになりました。このあたりから、中国は暴動の件数など公表しなくなりました。

日本の人口は、中国の1/10くらいですから、中国の10万件は、日本でいえば1万件です。これは、一日では約27件です。日本でもし、これくらいの暴動があったとしたら、すでに内乱状態と言っても良いです。

これを中国は、城管、公安警察(日本の警察にあたる)、武装警察、人民解放軍などを鎮圧してきたのです。このような実績があるからこそ、中国は香港デモなど軽く鎮圧できるものと考えていたようですが、その考えは甘かったとしか言いようがありません。

現代の中国はまさに典型なのですが、全体主義国家が様々な方法をとって、軍事力や経済力を強大にしたとしても、結局ナチス・ドイツやソ連と同じように、ヒンデンブルク号事件や、チェルノブイリ事故などのような様々な異変で、そのほころびを露呈して結局滅ぶのです。中国もその例外とはならないでしょう。

現在でも全体主義的な方針の国々のリーダーは、このことを真摯に受け止めるべきです。全体主義は、シンガポールなどのように小さな規模でやっているうちは長持ちするでしょうが、ナチス・ドイツやソ連のように大規模になると、崩壊するのです。

崩壊しないで発展しようとするなら、民主化、政治と経済の分離、法治国家は避けて通れないということです。これらを実施することにより、多数の中間層が、社会・経済的に自由に活動させる基盤を築いた上で、国を富ませ、経済力をつけ、その上で軍事力も強化するという道しかないということです。

これを無視する全体主義国家は、一時強大になったとしても、崩壊するのです。中共にも、全体主義をやめるか滅ぶかの二択しかないのです。

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2017年7月10日月曜日

翁長氏打撃 那覇市議選で知事派後退、過半数割れ 県内3市長選全敗に続きお膝元でも―【私の論評】翁長知事の終わりの始まり。宜野湾市長選が分水嶺に(゚д゚)!

翁長氏打撃 那覇市議選で知事派後退、過半数割れ 県内3市長選全敗に続きお膝元でも

翁長雄志沖縄県知事
 任期満了に伴う那覇市議選(定数40)が9日投開票され、10日未明にかけて開票の結果、翁長雄志沖縄県知事を支持する勢力が改選前(欠員5、総数35)の20人から18人に後退し、過半数を割った。

 那覇市長を務めた翁長氏のお膝元に当たり、翁長氏は今年実施された県内3市長選に続く敗北となった。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止に向けて打撃となりそうだ。

 翁長氏は、来年1月に見込まれる名護市長選と来年秋の知事選を見据え態勢の立て直しを迫られる。

 翁長氏の不支持派は9人、支持・不支持を明確にしていない中立派は13人で、多数は支持派が保った。67人が立候補した。

 翁長氏は、今年実施された宮古島、浦添、うるまの県内3市長選で新人を支援して自民党が推す現職・前職に挑み、全敗を喫していた。

 那覇市の城間幹子市長は、知事に転身した翁長氏の後継で、名護市の稲嶺進市長とともに翁長氏を支えている。

【私の論評】翁長知事の終わりの始まり。宜野湾市長選が分水嶺に(゚д゚)!

那覇市長城間幹子氏
9日投開票の那覇市議会議員選挙で市政与党が過半数に届かなかったことを受け、城間幹子市長は10日、市役所で報道陣の取材に応じ「非常に厳しい結果だった」と答えました。

城間市政や翁長雄志県政を支える新風会など「オール沖縄」勢力が議席を減らしたことについて「敗因を分析し、今後の対応を考える必要がある」と話しました。来年の知事選や那覇市長選、辺野古新基地建設の反対運動に与える影響については明言を避けました。

中立系の候補者が議席を伸ばしたことは「意外だった」とし、課題解決に向けて「市議会の中でいろいろな議論をしながら、市民の暮らしの向上に努めたい」と、与野党・中立の協力を強調しました。

今後の市政運営については「真摯(しんし)に市の課題に対応し、支援の声が広がると信じたい」と緊張感をにじませた。



中立系の候補者が議席を伸ばしたということは、やはり都議選の結果を思い起こさせます。昨日は都議選の結果の辛坊氏の分析を掲載しました。その内容を以下に簡潔にまとめて掲載します。

都議選で、都民ファーストが大勝利したのは、維新が大坂で勝った時と同じで、都市部の有権者は受け皿ができれば流されやすいという事実を示したといえます。今回の都議選においては森友・加計学園問題や閣僚の問題発言や、議員の不祥事が響いたと分析する人もいますが、これはとんど関係ないでしょう。

そもそも、都民ファーストという受け皿の前に、内田茂氏を表に出して自民が勝てるはずもなかったのです。小池知事は維新の戦い方をコピーして大勝利したのです。

この分析からすると、那覇市議選には、都民ファーストのような大きな受け皿はなかっし、大都市でもないのですが、それにしも中立系の候補者が議席数を伸ばしたということは、ある意味これに近いところがあるものと推察できます。那覇市議選でも、「オール沖縄」を表看板にして戦ったということが大きな敗因の一つなのかもしれません。

それともう一つの大きな敗因は、昨年の宜野湾市長選の敗北から情勢が大きく変化したものと考えられます。

宜野湾市長選に出馬を表明する元沖縄県幹部の志村恵一郎氏。
右は翁長雄志知事=2015年10月23日、沖縄県宜野湾市
宜野湾市には、辺野古移設問題の原点である海兵隊の普天間飛行場があります。人口はおよそ10万人。その市長選で、志村恵一郎候補は、自民・公明が推す佐喜真淳候補に、得票率で10ポイント以上、票数で6千票近い差をつけられました。事前の「接戦」予測を大きく裏切る惨敗でした。
翁長知事と「オール沖縄」陣営が、宜野湾市民にここまで拒否された理由は決して複雑なものではありません。それは「戦うべきではない選挙で、戦えない候補を持ち出し、戦えない戦略で戦った」からに過ぎません。

翁長知事サイドが宜野湾市長選で候補者を立てようとした動機は、辺野古予定地での着工手続きをめぐって裁判で戦っている安倍政権に、反辺野古の結束の強さを見せつけることでした。

来るべき6月の県議選、夏の参院選(あるいは同日選)に向けて、選挙の年といわれる2016年を勝ち抜くキックオフにしたかったのです。沖縄県、辺野古の地元・名護市、普天間飛行場のある宜野湾市。この基地問題のトライアングルを固め、日本政府の訴訟攻勢への反証にしたい思惑があり、勝利の後は、翁長知事、名護市長、宜野湾市長の三者で訪米するというプランも立てていたとされています。

世論の流れを読むことに長けていた翁長知事は、もともと自身の選挙も他人を応援する選挙もともに強く、「無敗の翁長」の伝説もあるほどでした。加えて、自身の知事選を含めて、反辺野古を掲げた2014年の選挙では連戦連勝。自分が乗り出せば勝てる、という計算があったはずです。

しかし、宜野湾市は、普通に考えれば楽に勝てる場所ではありませんでした。長年の革新市政の下、市内の経済開発は大きく停滞。4年前の選挙で革新候補を破った現職の佐喜真氏は就任から積極的に経済開発にも取り組み、宜野湾市は明るさを取り戻しつつありました。市民の間には当然革新市政への拒否感が残っており、共産党も加わるオール沖縄はその点でも不利でした。

加えて、擁立した候補の志村氏は、父親が元県議会議長という血筋はありますが、政治家の経験は浅く、「あいさつでも原稿をつかえながら読み上げる姿にがっかりした」と宜野湾の人々は口々に語っていました。要は、タマが今ひとつだったのです。一方、佐喜真陣営はこまめに若者や女性の活動や集会に顔を出し、実際はディズニー系のホテルに過ぎない「ディズニーリゾート誘致」をできるだけ大きく宣伝して人々の経済的関心を引きつけていきました。

オール沖縄は保守から革新まで異なる背景の人々が集まったグループなので、勢いがあるときはいいのですが、守りに入ると弱いです。その欠点が出た選挙でした。

「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の結成大会で手を
つなぐ参加者=2015年12月14日夜、沖縄県宜野湾市
宜野湾という地の利、候補者の人の利でともに不利であるところに加えて、この選挙でオール沖縄陣営は、普天間基地の移設に賛成しながら、辺野古移設に反対する「矛盾」への回答を明確に説明しきれなかった感がありました。この矛盾はどう考えても、合理的に説明して、有権者を納得させることは難しいものでした。

政治は有権者を説得するゲームです。利益誘導やしがらみが地方選挙では目立つと言われていますが、有権者は見るべき点はちゃんと見ているものです。「理屈」が通らない話をされても、判断能力のある市民にごまかしは効かなかったのです。

沖縄県全体の選挙であれば、あるいは、何とかなったのかも知れません。しかし、普天間基地を抱える宜野湾の人々は、代替基地を辺野古に造れない場合、普天間返還そのものが雲散霧消しかねないリスクがあるという冷たい現実を十分に意識していました。その点を明確にせず、普天間移設と辺野古拒否の両方をセットで宜野湾の人々に納得させるなどは、本当はかなり難しいことだったのです。

この宜野湾市長選挙は沖縄政治の分水嶺になった可能性もあります。その後今年に入ってからの選挙は、上にも掲載したように、これで、宮古島、浦添、うるまの県内3市長選で敗北、那覇市議選でも敗北です。明らかに流れは変わったようです。まさに、翁長知事の終わりの始まりだと考えられます。

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2013年7月22日月曜日

山本太郎の当選は「終わりの始まり」か?―【私の論評】山本太郎は、確かに「終わりの始まり」だが、脱原発を目指すにしてもしなくても金融緩和は必須、増税は大敵!!この事実を見誤った政党が凋落した!


山本太郎

7月21日に投開票された第23回参議院選挙は、最も「参院選らしからぬ」選挙だったのではないか。

参議院を「良識の府」と呼んだのが誰なのかは定かではないらしい。しかし、言わんとしたかったことはよく分かる。参議院議員の任期は6年と長い。衆議院と違って解散もない。それゆえ政局に左右されず国政の場に留まれる。そんな参議院だからこそ党利党略から距離を取り、ポピュリズムに流されることなく、より長期的、巨視的な立場で国政に関われる。公共的な政策論争は参議院でこそ可能であると言えるかもしれない。

しかし今回の参院選はそうした参議院らしさからあまりにも掛け離れていた。主に争点になったのは経済政策であったが、アベノミクスと呼ばれる現与党政権の経済政策について、自民党がその成果を誇り、野党はそれに対する不信感を述べるだけに終始した印象がある。つまり長期的、巨視的な立場からの政策論争は不在であった。参議院選だからこそ今後の原発政策や憲法改正のように、この国の未来に関わる問題が争点になるべきだったのだが、それは叶わなかった。

そう書くと、確かに大勢はそうだったが、例外もあっただろうという意見も出るかもしれない。確かに東京選挙区では脱原発を訴えた山本太郎候補が議席を獲得し、話題となった。しかし山本は本当に「例外的」だったのだろうか。筆者は選挙戦が始まった初期の時点でこう書いた。「アベノミクスの景気対策の是非こそ争点になるが、原発なしに生き残ることができなかった地方の「貧しさ」の来歴を戦後日本の「豊かさ」と対照させて省みる動きは今のところ見られていない」(『原発が参院選の争点にならない理由』)。地方格差の問題が折り重なって事態を複雑化させているのが日本の原発問題のひとつの特徴だが、一貫して脱原発を主張して選挙を戦った山本太郎にこの種の複雑性に向き合い、解決しようとする姿勢は見られなかった。

山本にとって脱原発とは被曝リスクをゼロにするために必要なものと位置づけられている。その立場は同じように311の原発事故後にわかに被曝リスクゼロを強く願うようになった都市圏の脱原発指向と共振・共鳴し、投票行動を促した。低線量被曝による晩発性障害の発生が完全に否定できないと聞いて、できるだけ被曝を避けたいと願う心情を持つに至るプロセスは十分に理解できる。だが、そうした心情をそのまま現実の投票行動に結びつけられるのは、原発立地から遠く離れた都市圏の特権であることもまた事実だろう。過疎化に苛まれる原発立地地元では電源三法交付金や原発関係の雇用なしには立ち行かない構図が既に固定的になっており、被曝リスクどころか原発事故のリスクまでをも、それらが現実の被害に転じないことを祈りつつ、引き受けることなしに生き残る道が用意されない。

前回の衆院選に続いて今回も福島を含め、数多くの原発立地地元で自民が圧勝した。殆ど争点にならなかったが、自民党が再稼働を進め、311以前の原発状況に時計の針を戻そうとしていることを立地地元住民が知らずに投票したわけではない。自民を勝たせるしか選択肢がなかった立地地元の現実を踏まえ、彼らにそうではない選択が可能となる状況を提供することを目指さなければ、山本の脱原発論は被爆の不安に駆られて情緒的に盛り上がった都市部の脱原発運動の中でしか通用しない独りよがりのものに留まる。そして今回の彼の当選は全国的な脱原発への第一歩になるどころか、むしろその独善性が明らかになって都市部の脱原発運動自体が自壊してゆく「終わりの始まり」となろう。

繰り返しになるが、もし本当に脱原発を望むのであれば、原発なしに生き残ることができなかった地方の「貧しさ」の来歴を省み、その抜本的な解決を図る姿勢が必要だ。そのためには長期的、巨視的な視点に立った論議や丁寧な政治的調整の作業が求められ、それはまさに良識の府としての参議院で繰り広げられるのがふさわしいものだ。もしも今後の日本の未来に希望があるとすれば、山本太郎を含めて最も参議院らしからぬ選挙で国政入りした議員たちが、参議院本来の役割を取り戻すべく活動できるかにかかっているのかもしれない。

【私の論評】山本太郎は、確かに「終わりの始まり」だが、脱原発を目指すにしてもしなくても金融緩和は必須、増税は大敵!!この事実を見誤った政党が凋落した!

上の記事、山本太郎に対する見方としては、妥当だと思います。しかし、アベノミクスに対する見方は少し皮相であると感じました。

私は、脱原発を目指すにしても、原発をある程度使用し続けるにしても、アベノミクス、その中でも現在実施している金融緩和は必須だと思います。また、アベノミクス第二の矢である積極財政も必須だと思います。デフレから脱却できない状況下における緊縮財政の一環でもある、増税には大反対です。

そもそもデフレを退治しなければ、何もできない(゚д゚)!

上の記事を書いておられる方、まずは金融緩和、財政出動をして日本の経済を上向かせない限り、ほとんど何らの夢もみられないし、遠大な計画もたてられないし、長期的、巨視的視点にも全くたてないことを見過ごされていると思います。

私は、ここ最近、デフレを前提としてものごとを考えることの間違いを事あるごとにこのブログに掲載してきました。

それらの記事のいくつかを以下に掲載します。
日の丸家電、大復活! ソニー、パナ、シャープ軒並み増益―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは家電メーカーの大敵であることを!!
大企業100社の内部留保99兆円に! “異次元の給与増額”は可能か―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは、雇用・給与の最大の敵であることを!! 
かつての世代が持っていた向上心と自信を失った日本の若者=中国―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは若者の向上心と自信の大敵であることらを!! 
従来の説はほとんどウソだった。日本でベンチャー企業が発達しない本当の理由。―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは、ベンチャーの最大の敵であることを!! 
若者の雇用を奪うのは一体誰なのか?−【私の論評】根本原因は、デフレであってこれを解消しなければ何も解決されない!! 
若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?! 
大企業100社の内部留保99兆円に! “異次元の給与増額”は可能か―【私の論評】ちょっと待ってくれ!!20年もデフレが続いたことを忘れていないかい?デフレは、雇用・給与の最大の敵であることを!! 
厚労相「年金に大変な運用益」 アベノミクス効果―【私の論評】デフレを前提としてものごとを考えることはもうやめにしませんか?!!もうルールが変わっていますよ!!インフレルールで動かなければ、おいてきぼり喰いますよ!!
以上、このブログの過去の記事から、選んで7つほどデフレの影響について掲載されているものを再掲しました。企業業績から、雇用、賃金、ベンチャー企業の発展、年金問題、若者の向上心まで、デフレは私たちの生活にかなりの悪影響を及ぼしてきました。

そうして極めつけは、下の記事のように、日本経済が誰も否定しようもない、デフレに98年に入ってから、それまで自殺者が二万人台だったのに、三万人台に増えました。そうして、昨年15年ぶりに自殺者が二万人台に戻っています。これは、昨年度はあまり顕著ではなかったものの経済が上向いたことに関連性があります。

これに関しては、現岩田日銀副総裁も指摘されていたことです。これについては、以前もこのブログに何回か掲載したことがあります。その一つを以下に掲載します。
<年金>12年度の運用益11兆円超 株高・円安効果で―【私の論評】自殺者が減って、膨大な年金運用益が出ても、アベノミクスを否定する愚かな人々(゚д゚)!

多くの日本人は、デフレにあまりに長い間さらされてきたため、これが異常であるという認識に欠けていたと思います。多くの人々は、自殺までには追い込まれなかったものの、本当はデフレによる不都合が身の回りにもたくさんあるのに、その原因がデフレであることに気が付かなかったという側面は否めないと思います。

典型的なのは、若者雇用です。多くの人は、金融政策と雇用との間に有意な相関関係があることに気づかず、若者雇用に関して、日銀の金融引き締めが大きく関与しているという、日本以外の国では当たり前の事実に気づかず、見当違いの論議を繰り返してきました。

私は、地方の疲弊など、小泉構造改革などのせいにされることもありましたが、その側面を全く否定はしないもののその主原因は、デフレだったと思います。

上の記事で、「原発なしに生き残ることができなかった地方の「貧しさ」の来歴を省み、その抜本的な解決を図る姿勢が必要だ。そのためには長期的、巨視的な視点に立った論議や丁寧な政治的調整の作業が求められ、それはまさに良識の府としての参議院で繰り広げられるのがふさわしいものだ」と言われていますが、地方の「貧しさ」の主原因のうち、地方によって、いろいろ事情があるものの、まずは、デフレにあったということは、否定しようもない事実だと思います。

そうして、現在行なわれている金融緩和は、このデフレを終息させるための、対策でありこの対策がなければ、いくら、長期的・巨視的な視点にたって論議や丁寧な政治的調整の作業をしたとしても、結局何も変えられない、変わらないということに終始すると思います。実際、過去はそうだったわけです。

まずは、何をするにしても、金融緩和をして、経済を上向かせなけれは、何もできず、何もかえられず、結局八方塞がりのもくだ叩きに終わるだけと思います。

無論、デフレを解消したからといって、なにもかも薔薇色になるというわけではありません。しかし、デフレを解消した上で、様々な問題にとりくめば、解決の糸口はつかむことができますが、そうでなければ、糸口も何もないまま八方塞になるだけです。

デフレを解消しないうちに、山本太郎を含めて最も参議院らしからぬ選挙で国政入りした議員たちが、参議院本来の役割を取り戻すべく活動したとしても何も変わらないと思います。

山本太郎は、確かに「終わりの始まり」すぎないのですが、脱原発を目指すにしてもしなくてもあるいは、将来的に目指すにしても、それ以前に金融緩和は必須、増税は大敵だと思います。今回の選挙確かに、争点があまり明確ではなく、盛り上がりに欠けましたが、アベノミクスに75%の有権者が賛成ということで、意外と多くの有権者の方々が、この事実を見抜いてるのだと思います。そうして、この事実を見誤った政党が凋落したのだと思います。

しかし、自民党も安閑とはしておられないです。もし、来年の春に増税したとすれば、金融緩和による景気回復効果は、雲散霧消します。そうして、デフレスパイラルの深みに再度はまることになります。そうなると、上に掲載したように、デフレで様々な不都合が一気に再度噴出します。その結果、次の選挙では、安倍政権というより自民党政権そのものが成立しなくなると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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