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2012年7月24日火曜日

【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”―【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!

【日本の解き方】あまりにヒドい政府の“日本再生戦略”:



政府は「日本再生戦略」の原案を公表した。それは2020年までに環境や医療、観光など11の戦略分野で38の重点施策を掲げ、630万人の雇用を創るという政府の目玉の成長戦略だ。7月末までの閣議決定を目指しているという。

11分野を具体的にいえば、グリーン成長戦略、ライフ成長戦略、科学技術イノベーション・情報通信戦略、中小企業戦略、金融戦略、食農再生戦略、観光立国戦略、アジア太平洋経済戦略、生活・雇用戦略、人材育成戦略、国土・地域活力戦略。これはほぼ全省庁の守備範囲だ。


これだけ広範囲になると、「戦略」という名前がすたってしまう。戦略とは選択と集中が伴うものだが、政府のものは総花的で戦略の名に値しない。まるで、各省庁が予算獲得のために「一丁目一番地」(各省庁の優先政策事項)を束ねたものに見える。

・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・

個別では一見もっともらしいことが、全体を見ると奇妙なことは雇用創出にもある。

人口減少の日本では雇用者数があまり増えない。となると、630万人の新規雇用を創出すると、別の産業で雇用者の減少になるだろう。630万人の雇用が創出されるということは、600万人くらいの雇用喪失が別の産業でありうるということになる。それはどのような産業なのか。政府原案では示されていない。そんな産業はわかるはずがない。

成長する産業としない産業が政府でわかるなら旧共産圏の計画経済は失敗しないはずだ。もし本当に政府が分かるなら苦労はない。

ちなみに、グリーン成長戦略は、50兆円市場で新規雇用140万人。労働分配率が6割として、新規雇用者の平均年収は2100万円になる。どうして「日本再生戦略」を書いた官僚が役所をやめて、そこに就職しないのだろうか。書いた本人はそのいい加減さを知っているからだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今の政府や政治家は、自分の頭の上のハエを追えない人が、他人の世話を焼いているようなもの、自分がやるべきことに専念せよ!!

上の記事で、高橋洋一氏は、「成長する産業としない産業が政府でわかるなら旧共産圏の計画経済は失敗しないはずだ。もし本当に政府が分かるなら苦労はない」と語っていますが、まったくその通りと思います。

成長する産業は、政府はおろか、優秀な民間企業でさえ、見抜けないことがあります。たとえば、あの世界を携帯電話で、席巻したNOKIAです。


ノキアが、実はスマホをアップルに先駆けて、開発していたことをWSJが伝えています。詳細は、WSJをご覧いただくものとして、以下にその記事の一部を掲載します。


スマホ戦略を誤ったノキア 膨らむ開発費、ユーザー動向つかめず
ノキアの開発チームは、アップルがスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」を発売する7年以上前に、ボタンが1つだけ付いたカラータッチスクリーン搭載の携帯電話を披露していた。端末を使ってレストランを探したり、レーシングゲームをしたり、口紅を注文するデモが行われた。1990年代後半にノキアがひそかに開発していたもう1つの魅力的な製品がタブレット端末だ。無線接続可能で、タッチスクリーンが搭載されていた。それら機能は全て大ヒットしているアップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」に今日搭載されているものだ。
「なんてこった」。ヌーボー氏は古いスライドを次々クリックしながら声を上げ、「われわれは完璧に仕上げていたのに」と語った。
ノキアの元デザイン責任者、フランク・ヌーボー氏は、アイフォーンを予期させるような試作品をノキアは既に開発していたと話す
いずれの製品も消費者の目に触れることはなかった。これらはノキアの企業文化の犠牲となった機器だ。研究にばかり多額の費用をつぎ込み、開発した画期的な製品を市場に投入するチャンスを無駄にしてきたのだ。
ノキアは1990年代にワイヤレス革命を主導し、世界をスマートフォン時代へといざなうことを目指した。そのスマートフォン時代が到来した今、ノキアは株価が落ち込み、数千人の従業員が職を失う事態に陥るなか、競争力ある製品の発売に向けて必死に取り組んでいる。
民間企業ですら、このような失敗をすることがあるわけですから、政府が成長する産業を見極めることなどほとんど不可能です。特に自由主義経済下では、そのようなことは誰もわからないというのが事実です。いろいろなタイプの企業が種々様々な工夫をして、その結果いずれかの事業がその時々の市場に適合うして、それが産業として伸びて行くというのが普通です。


スマホは、アップルがiPhoneで、現在の原型をつくりあげ、それを市場に投入しました。これが、たまたま、市場に適合していたため、それが、大ヒットして、今日につながっています。そうして、今では、iPhoneだけではなく、Android携帯なども様々の種類のものが、開発され、一大産業となっています。しかし、その影て、ノキアに限らず、ブルーベーリーその他、失敗しているところたくさんあります。それに、私としては、これら携帯電話に限らず、いまでは完璧に姿を消したPDSだって、電話機能さえつければ、現在のスマホと変わりないものがいくつもありました。


スマホの例でもわかるように、どの産業でも、いくつもの会社が、いくつもの新しい次世代のものを開発しており、そのうちの本の数社、場合によっては、1社だけが、次世代の産業を担って、大きく発展していのです。今日確かにアップルは大成功を収めましたが、何かがどこかで違っていれば、アップルがノキアのような目にあっていたかもしれないのです。


そんな自由主義経済下の競争において、政府が発展する産業を見抜けるわけはありません。政府はもともと、そのようなことをする機関ではありません。城山三郎氏の小説「官僚たちの夏」では、あたかも、通産省が日本の産業を主導してきたような扱いですが、あれは、幻想にすぎません。現実には、通産省主導で行ったことは、何一つ成功していません。大成功したのは、先送り戦術だけです。


それに、本来自由主義経済下の政府の役割は、こんなことをすることではありません。政府の役割は、新産業などが生まれやすいように、経済活動が活発になるように、法律を整えるだとか、規制を撤廃するとか、逆に規制を強化するとか、さらに、公共工事をするとか、安全保証などをして、いわゆるインフラ(基盤)を整えることです。このインフラづくりが政府の本命の仕事です。このインフラ上で活動して、成果をあげるのが、民間企業営利企業、非営利企業、その他の組織ということです。間違っても、政府が、インフラの上にのっかって、様々な事業を展開するようなことがあってはなりません。

女性ソ連兵
それを大規模に行ってきたのが、旧ソ連邦をはじめとする社会主義国であり、部分的に行ってきたのが、自由主義陣営による高福祉国家でした。旧ソ連邦をはじめとする、社会主義国家は、今日では全滅しました。また、ソ連邦に脅威を感じて高福祉国家をめざした国々は、その本家本元のイギリスでも財政負担があまりにも大きくなりすぎたので、取りやめました。一部まだ続けている国もありますが、それは、スウェーデンなどの人口数百万の比較的規模の小さい国々だけです。

旧ソ連邦の雰囲気を出した携帯電話ショップ
旧ソ連邦に関しては、その破綻は、すでに1950年代にアメリカの経済学者が予測していました。統計資料などからみて、その頃のソビエトの経済はいたって簡単で、いわゆる、投入物=生産物という具合で、付加価値がほとんどなく、戦後のソビエトの繁栄は、結局戦後に敗戦国からの資源などを大量に投入し、大量の生産物を得ていたというだけであって、このようなことは長くつづくはずがないと予測したのです。まさに、その通りになりました。

旧ソ連邦の版図

社会主義など魅力的に見え
るが過去のものに過ぎない
社会主義国の時代のソ連といういうと、私が覚えているのは、アイロンです。当時アイロンは、ソ連の独占国営企業がつくって市場に投入していて、ソ連国内では、輸入ものでないかぎり、ほぼすべて同じものが使われていました。しかも、確か、崩壊する直前のものでも、30年前につくられたそのままです。

計画経済なので、顧客ニーズやウォンツなどとは全く関係なく、政府による来年はいくつ必要になるであろうという予測のもと、それに従って生産して、市場に投入していただけだったのです。競争も何もないため、結局30年にわたって、モデルチェンジも行われなかったのだと思います。

政府がインフラづくりだけでなく、実際に産業活動をしても、できるのは、このようなことだけです。ソ連邦の計画経済ほどは規模は大きくありませんが、政府が、重点施策を実行して、投資をするのも、結局は社会主義国政策と同じようなものであり、結局失敗します。

自由主義経済下の日本政府は、日本再生のための、インフラ整備をすべきです。このインフラ整備の中には、当然のことながら、デフレ対策も含まれるべきです。これなしに、日本再生など考えられません。デフレ対策のためには、まずは、景気を良くしなければなりません。そのために、真っ先に政府がやるべきは、大規模な、財政出動と、金融緩和です。このなこともせずに、やみくもに増税しようとしたり、「日本再生戦略」をぶちあげるなど、とんでもありません。

何やら今の政府や政治家、自分の頭の上のハエも追えない人がやる必要もない他人の世話を焼いているようなものです。そんなことをしないで、本来自分たちがやるべき仕事に専念しろと言いたいです。そうして、何が自分たちの本当の仕事なのか、よくわかっていないのが、腐れ官僚たちなのだと思います。そう思うのは私だけでしょうか?

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2012年3月19日月曜日

GoogleブランドのAndroidタブレット、価格は$149~$199でTegra 3は非搭載?−【私の論評】Googleの収益源のトップは、いまでも広告!!では何のためにやるかといえば・・・・・・・?

GoogleブランドのAndroidタブレット、価格は$149~$199でTegra 3は非搭載?:




噂のGoogleブランドのAndroidタブレットに関する新たな情報が米国のブログ Android and Meで噂として伝えられています。


先週のDigiTimesの報道では、GoogleはASUSと提携してTegra 3を搭載した7インチタブレットを$199~$249の価格で今年5月頃に発売すると伝えられていましたが、Android and Meの情報元(米国に拠点を置くサプライチェ... 続きを読む

■著者データ

juggly.cn国内・海外のAndroid(アンドロイド)スマートフォン・タブレットに関するニュースや情報、AndroidアプリのレビューやWEBサービスの活用、Android端末の紹介などをお届けする個人運営ブログウェブサイト: http://juggly.cn/TwitterID: juggly

【私の論評】Googleの収益源のトップは、いまでも広告!!では何のためにやるかといえば・・・・・・・?

上記の記事、結局結論は、以下のようなものです。

価格は$149~$199。Tegra 3は搭載せず。

Android and Meは、価格は$149で、QualcommのデュアルコアSoCを搭載、今年5月8日~10日に米国で開催されるCTIA Wirelessイベントで発表されるということです。

AmazonのKindle Fireは、さきほどAmazon.comで調べてみたところ、$199ドルでしたから、これは、しっかりKindle Fire(下写真)を意識して、それ以下の価格で販売する予定であるということです。

詳細は、いずれ発表があるものと思いますが、私なりに現時点で、Googlがなぜこのような端末を売り出すのか、分析してみます。


このブログにも何回か掲載してきたように、iPadや、Kindle Fireは、eコマースを強力に推し進めるAppleや、Amazonが、自らのプラットフォームを差別化するために、導入するものです。せっかく自からが、プラットフォームを築いても、従来は、顧客が自宅のパソコンに設定されているブラウザを用いて、ディスプレイから垣間見るいくつもあるサービスのうちの、一つという位置づけになるところを、独自のデバイスであるところの、タブレット端末を導入することにより、差別化したということです。


Googleが、新たな独自のタブレットを出す意味合いについては、差別化の意味ももちろんありますが、その比重はあまり大きくはないと思います。



なぜなら、Appleや、Amazonと比較的すれば、Google自体は、あまりeコマースを強力に推進しているわけではありません。他社とは、ビジネスモデルが全く異なります。Googleの収益源の9割は今でも、広告です。ユーザーが検索エンジンを検索したり、他のサービスを利用したりしているときに、広告を掲載し、その広告をユーザーがクリックした場合、収益に結びつきます。


このクリック数が増えれば増えるほど、Googleの収益が増えるわけです。クリックされる確率は、大体決まっています。であれば、トラック数が増えれば、Googleの収益増えるわけで、とにかく、Googleにとっては、トラック数を少しでも増やすことが、至上命題なわけです。


だから、皆さんご存知のGoogleのサービスは、すべてこの至上命題を実現するために提供されています。だからこそ、あれだけ、無料で検索エンジンからwebmailから、ありとあるゆるサービスを提供できるという側面があります。


だから、上の記事のGoogleによる、新たなタブレットも、こうした命題をより良く実現するためと捉えるべきです。これを使うことにより、より一層、Googleへのアクセスのトラフィック数を増やすのです。おそらくこの端末では、Googleのサービスにアクセスするのに、最適化されていると思います。これを使用する人が増えれば、その分Googleへのアクセスへのトラフィックが増えるわけです。



また、価格が低いということも、Googleへのアクセスへのトラフィック数を増やすことにつながります。現在世界では、先進国や、新興国では、ほとんどの人が、インターネットを使える環境にあると思います。しかし、かなり多くのいわゆる、BOPといわれる人々は、インターネットができる環境どころか、端末をそのものも購入できないひとがほとんどです。


ちなみに、BOPとは、bottom of the pyramid(ピラミッドの底)の略。開発途上地域にいる低所得者層を意味します。所得別人口構成をグラフ化した時に、下から低所得者層(BOP層)、中間層、富裕層を積み上げたような三角形が出来上がるため、ピラミッドという表現を用います。ただしbottom(底)という表現が差別的であるという観点から、最近ではbase of the pyramid(ピラミッドの基盤)と表現することが多くなっています。


近年、ビジネスの世界でこのBOP市場に注目する動きが加速しています。貧困層を巨大な消費市場として捉え、そこでビジネスを展開することにより、社会的課題の解決も図ろうとする考え方です。具体的には、企業が開発援助機関やNGO(非政府組織)などと連携。現地のニーズに合わせた商品を、現地住民をビジネスに巻き込みながら販売していきます。欧米ではBOPビジネスが活発化しており、日本でも経済産業省が研究会を立ち上げるなどの動きが出ています。ちなみに、このBOPといわれる人々は世界で40億人存在すると言われています。

最近では、BOPの人々には、携帯電話も普及しつつはありますが、この人たちの使用する携帯電話は、かなり低機能なものが多く、通話が主たる機能であり、現在全世界で利用されている、Googleのサービスなどの多くは、利用できません。


以前は、100ドルパソコンなどというプロジェクトもありましたし、Googleもこれに関わっていたようですが、今では、その話題はあまり聴きません。Googleは、上記の$149という価格で、BOP層にも食い込もうとしているのではないかと思います。考えてみてください、もし、このBOPの人々の1/10の人でもインターネットを通じてGoogleを利用するようになったとすれば、Googleへのアクセスのトラフィック数は爆発的に増えると思います。


私は、Google Chrome OS搭載パソコンがそのような役割を果たすのではないかと、期待していましたが、どうも、そうではないようです。このOS搭載の、パソコンは日本ではほとんど販売されていませんが、アメリカのAmazon.comではいくつか見ることができます。しかし、これは従来ほどは、高くはありませんが、安くもありません。どちらかというと、最近ウルトラブックといわれているものに近いものばかりです。(写真下)


今の先進諸国や、新興国では、すでに、インターネットは、かなり普及していますから、いまから爆発的に増えるということはありません。しかし、BOPならば、違います。当然Googleは、こうしたことも視野に入れていると思います。それに、これが実現すれば、BOPの人々にとっても良いことです。いままで、ほとんど有益な情報に接することができなかった人々が情報に自由にアクセスできるようになれば、その福音は計り知ることができないと思います。


それにこれだけ低価格だと、先進国や、新興国でも、今まで、自分自身の端末を持てなかった人々、たとえば、子供や低所得層でも、持てるようになります。これも、期待できます。先進国でさえ、現在も存在するいわゆる、デジタルデバイドが解消されるようになるときっかけとなるかもしれません。



これによって、多くの人々が、BOPから抜け出すことができれば、幸いです。


それと、あまりにも当然なので、上には掲載しませんでしたが、Google側としては、この端末を販売することによって、よりユーザーからのデータを得やすくするという目論みもあると思います。


Androidの規格を自らつくりだし、それを提供したとしても、やはり、自ら端末を開発せず、他社の端末からのアクセス情報のみに頼っていては、ユーザーの真の姿を把握するのが、困難な場合もあります。他社性のものであれば、いくらOSは同じとはいいながら、他社の様々な意図も含んだ端末となります。それでは、得られる情報にも限りがあります。だからこそ、自らの規格ですべてを知りぬいた自社製端末により、ユーザーの情報を役立てるという意味もあると考えます。そうして、これらで得られたデータなどから、さらに、Androidの改善、改革はもとより、先にもあげたように、さらに、トラフイック数を増すための参考にしようとしていると思います。


さて、この新たな端末、まだ、詳細も発表されておらず、これからどのように使われているか、楽しみです。カメラがついているのかどうかも判りません。これからも、追跡して、何か新しい動きがあれば、また、ブログに掲載します。


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「Google Chrome OS」プロジェクトが公開、製品登場は2010年後半-このOSで動くマシンがメインのマシンとなったときはじめて真のネット社会が訪れる!?


『Google タブレット』というキーワードを含んだこのブログの過去の記事はこちらから!!

 

2012年2月23日木曜日

GAPの新しいオンラインメディア「Styld.by」はファッション誌の未来となるか?−【私の論評】Googleの失敗から学べ!!O2Oとの結びつきがなければ、埋もれるだけ?



GAP1

タブレットが普及し、紙のメディアはなくなるだろう。とりわけ雑誌は完全にデジタルに置き換わるだろう。そんなことが言われ始めてからだいぶ経ちましたが、「これこそが未来の雑誌の形だ!」という決定的な方向性が示されていないのもまた事実です。

今回、アメリカの大手衣料ブランドGAPが新しくオープンしたオンラインメディア「Styld.by」には、未来のファッション誌の要素がいくつか組み込まれています。そこで今回は「Styld.by」が未来型ファッション誌である3つの理由をお伝えします。


GAP2


その1:周到に準備されたソーシャルメディア連携


この「style.by」は、掲載されるファッションにShare+というボタンがついていて、そこにカーソルを合わせるとその写真を自分がログインしているソーシャルメディアに投稿できる仕組みになっています。ブックマークレットが雑誌に組み込まれている、と言った感じでしょうか。とにかくユーザーが簡単にシェアできるようになっています。

ユーザーに「綺麗な写真を共有したい!」という欲求があることは、Pinterestの成功を見ても明らかです。しかしそれ以前に、いかにシェアの敷居を下げるか? ということもサイト制作者、運営者側にとっては重要です。美しい写真を見る→シェアしたいと思う→シェアするというユーザーの一連の流れをスムーズに引き出すちょっとした仕掛けが、『styld.by』には組み込まれています。


その2:ファッションブロガーとの自由なコラボレーション


このサイトのモデル達は、「FABSUGAR」や「LOOKBOOK.nu」のようなファッションサイトで人気のファッションブロガーが務めています。ブロガーというユーザーが身近に感じられる人を起用することで親近感も生まれやすくなります。

更に、モデルが着用するファッションは全てがGAPという訳ではなく、キーポイントにGAP製品を使っているということです。ユーザーからすれば、全てを同じブランドで毎回揃えるという事はあまりないですからね。ユーザー視点に立った工夫だと思います。


その3:周到に準備されたEC連携


勿論、GAP製品を買ってもらう工夫も忘れていません。掲載された写真の隅には、しっかりとモデル着用の商品情報が載っています。また、その部分をクリックすればGAPのECページにジャンプするように出来ています。EC連携は企業側から見た場合、ウェブマガジンの肝になる部分でしょう。特にファッション誌では主張しすぎず、隠れすぎずの間をとることが鍵となってきますが、「styld.by」は上手く表現していると思います。


以上3点でした。今後、ますます雑誌のデジタル化は進むでしょう。その中でいかにデジタルに最適化していくか? これは出版社に大規模な改革が求められているのと同時に、GAPのような一般の企業にとってユーザーと直接触れ合う機会を増やすチャンスの到来だとも言えそうです。

【私の論評】Googleの失敗から学べ!!O2Oとの結びつきがなければ、埋もれるだけ?


このブログでは以前Googleがファッションサイトを傘下に収めたことを掲載したことがあります。これについては、当該ブログをご覧いただくものとして、その当時書いた内容の要点を以下に掲載しておきます。

インターネット検索大手の米グーグルは17日、ファッション推奨サイト「Boutiques.com(ブティックス・ドット・コム)」を開設した。専門家のテイスト、視覚認識、それに機械学習技術を利用して、ユーザーに商品を勧めるサイトだ。ユーザーが衣料品やアクセサリーのショッピングの際、最初に立ち寄るサイトになることを目指す。
・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・
グーグルは、検索エンジンの分野においても、人間の感性が絡むファッションの分野に関しては、なかなか難しい分野であり、他の検索に関してはほぼ完成の域に達しているのですが、こうした分野は、最後のフロンティア(最前線)なのだと思います。
だからこそ、この分野でも、サイトを立ち上げて研究しているのだと思います。Googleは、単にファッションサイトを立ち上げて、そこで収益をあげるなどという単純なことは考えてはいないと思います。この分野で得られた知見をもとにして、さらに検索エンジンを改良して、ファッションも扱えるようにするとか、さらに新たなサービスを提供するなどして、さらに、多くの人々を自分たちのプラットフォームに参加できるように努力しているのだと思います。

さて、この"Boutiques.com"いろいろと、先進的な機能も含んでいましたが、結局今は、閉鎖されています。アクセスしてみると、他のサイトにリダイレクトされます。これは、Boutiques.comが結局は、うまくはいかなかったということだと思います。無論、上の記事でも述べたように、Googleは、単にファッショサイトを立ち上げて、そこで収益をあげることなど考えらてはいなかったのでしょうが、それにしても、このサイトを通じてGoogleの検索エンジンのトラフィックをあげ、Googleの収益モデルである、広告による収益など、目論見通りにあげるようなことはできなかったのだと思います。その見込みがあれば、たとえ試験的であっても、今でも運営していたと思います。それだけ、ファッション・サイトはかなり難しいことなのだと思います。


他にもGoogleが閉鎖したサイトがあります。これについても、以前掲載したことがありますが、それはGoogle Mapによる不動産検索です。これに関しては、鳴り物入りで開始され、誰もが成功するに違いないと踏んでいました。しかし、実際には、2010年に開始して、2011年にはサービスを停止してしまいました。私もまさかこんなにはやくサービスを停止するとは思ってもみませんでした。

Google側としては、試験的に運用してみたところが、このようなサービスを提供したとしても、自分たちのビジネスモデルには寄与するところがほとんどないと判断したのだと思います。要するに、これをGoogle Mapで大々的に実施してみたところで、Googleの検索エンジンへのアクセスのトラフィックが増大し、さらに、広告収入にまでは結びつくことはないと判断したと考えられます。これに関して、当時私は、私なりにGoogleが失敗した理由を分析しました。詳細は、そのブログをご覧いただくものとして、要点だけ以下に掲載しておきます。

なかなか、うまいたとえが見つからないのですが、グーグルの失敗は、本来は、あまり提供すべきではない情報を提供したということではないかと思います。本来、グーグルの果たす役割は、あまくで、ディレクトリーなど情報検索のための入り口なのですが、入り口以上の情報を提供して失敗したということです。たとえば、糖尿病の人が治療のための方法を探そうとしたときに、病院、医師、健康法の入り口を提供するべきものを、グーグル自身が、糖尿病そのもののいろいろな型や、その型にそった健康法や薬の内容まで、提供してしまったようなものです。

上では、不動産とユーザーとの関係を医師と、患者の関係にたとえましたが、まさに不動産に関してはそのようなところがあると思います。医師といっても、今では、様々なタイプがいます。外科、内科、小児科の専門もありますし、内科だって、消化器専門とか、循環器が専門などとわかれています。不動産業も、無論そうです。全国一律で情報を提供するなどは不可能で、地域の不動産業はあくまで、地域の専門家です。さらに、不動産業といっても、その中でも専門性もあります。

このように専門性を問われる分野では、いままで、Googleが提供してきた全国一律的な検索エンジンでは限界があります。

グーグルが情報を提供するにしても、こうした情報であれば、まずは、ユーザーの病歴などをあらかじ、知って、その人に相応しい治療法も知った上で情報を提供すべきでしょうが、そこまでは、できません。だから、医師から聴いたりできる情報からすれば、はるかに劣るものしか提供できないわけです。それでは、意味がありません。

不動産についても、医師のように高度で専門的な知識までは必要はないですが、やはり、実際に、ユーザーの声をきき、そこから、取捨選択して、いろいろアドバイスが必要です。検索サービスでは、ここまでは提供できないので、結局Googleも失敗したのだと思います。それだけではなく、個々の物件が全部表示されてしまうので、最初からゲンナリという感じです。無論、検索機能があるのでそれを用いれば良いということになるのでしょうが、それでも、なかなかうまくはいかないです。

ファッションサイトがうまくいかなかった理由もこれと似たようなところもあると思います。ファッションについても、似たようなところがあり、やはり、実際にユーザーの声をきき、そこから、取捨選択して、特定の個人に対していろいろアドバイスが必要です。検索サービスではここまでは提供できないので、結局Googleのファッションサイトも失敗したのだと思います。さらに、個々人の趣味趣向など完全に無視して、個々のアイテムがかなり多く表示されてしまうので、最初からゲンナリというところもあるのかもしれません。無論、検索機能があるのでそれを用いれば良いということになるのでしょうが、それでもなかなかうまくはいかないです。

上記の記事によれば、GAPのサイトは、ソーシャルメディアの連携と、ファッションブロガーとの自由なコラボレーションと、周到に準備されたEC連携があり、ファッションサイトの欠点を補っているようにはみえます。


しかし、はっきりいわせていただければ、この程度だと、Googleのファッションサイトも似たようなことはやっていたし、いくら上記の三点で差別化したつもりでも、すぐに模倣されてしまうと思います。この差別化に関しては、以前のブログにも掲載したことがあります。Appleは、他のeコマースと自らが実施するそれとを差別化するために、iPadを開発しました。それどころか、Appleは、かなりの部分をiPadや、iPhoneでしか利用できないようにして、顧客の囲い込みをしています。

こうした、iPadの本質を理解したAmazonは、Kindle Fireを開発しています。Amazonは、これだけではなく、差別化をするために、物理的な実店舗を本拠地のシアトルに構え、Apple Storeのような役割を担わさせようとしています。これらの実店舗は、さらに差別化を発揮することはいうまでもありません。一番わかりやすいのは、AppleがiPadなどの新製品を発売したときの、 Apple Storeでのお祭り騒ぎです。これらは、バーチャルの世界だけのGoogleにはなかなかできないことです。

そんなことから、上記のGAPのサイトは、差別化という点からみると、徹底的に欠けている部分があって、おそらく、このままだと、Googleのファッションサイトのように、失敗する確率がかなり高いです。しかし、見方を変えれば、この徹底的欠けている部分を補えば、GAPが最大限に強みを発揮できる可能性が高いです。


その徹底的に欠けている部分とは、チェーン組織である、GAPが多数持っている店舗そのものです。上記の記事では、残念ながらGAPのリアルの店舗とのコラボレーションなど掲載されていません。私は、以前このブログでこれからは、物理的店舗を多数所有するチェーン組織が、eコマースを実施し、これらをバラバラに運営するのではなく、O2Oによって、うまく統合したところが、頭角を表すであろうことを掲載しました。O2Oそのものなどの詳細は、当該ブログのURLを以下の【関連記事】に掲載しておきますので、そちらをご覧になってください。



私の言いたいことは、まさに、このことです。GAPはせっかく、物理的な店舗を多数持っているわけですから、これを利用しない手はありません。ファッションサイトと、実店舗をうまくコラボレーションすれば、これほど力強く差別優位性を発揮できるような手法はありません。Googleなどは、やりたくてもできないことです。Appleは、Apple Storeを持っていますが、GAPよりは、店の規模も小さく、さらに、数の上でも少ないです。Amazonは、まだ、実店舗の実験を始めたにすぎない段階で、実質的に存在しないのと同じです。

GAPは、アメリカ全土に店を持っているわけですから、これを最大限に活用し、たとえば、スマホで注文んしたら、近くの店に在庫があるかどうか確認でき、在庫があれば、購入して店で受け取れるとか、在庫がなくても、自宅に宅配便で届くとか、それに、何を買おうか迷った場合は、GAPに行けば相談できるとか、さらには、GAPでみたコーディネートが気にいったが、サイズや、色の異なるものを買いたいときには、スマホからすぐに注文できるようにするとか・・・・・。さらに、スマホで見て、近くのGAPでそれを購入すれば、特典がつくとか・・・・・・。とにかく、eコマースと、物理的店舗を何らかの手法で、統合すれば、これほど強い差別化手段は他にありません。


このようなことを顧客の間で何回か繰り返せば、特定の顧客の好みなどの情報が集まり、店でも、フアッションサイトでも、本当に個々人の好みやセンスにあわせて、服、靴、バッグ、その他小物まで含めて様々なお勧めができるほか、ファッション以外の様々な商品も販売できる可能性が高まるわけです。GAPの店にないものはeコマースを介して販売することもできるわけです。(下はGAP銀座店内の写真)


このようにすれば、ファッションサイトもGAPにとっても、顧客にとっても、かなり役立つものになると思います。しかし、上記のような三つの差別化内容だけでは、結局他のeコマースとは差別化できず、顧客にとってみれば、自宅のパソコンのブラウザから垣間見る、いくつもあるアッションサイトの一つという位置づけになり、Googleが失敗したように、うまくはいかないと思います。

しかし、私がこのような指摘をしなくても、GAP側は、もうそのことは十分知っていて、上記のファッションサイトは、そのための下準備にすぎないのかもしれません。いずれ、O2Oも活用するため、それを目指してまずは、ファッションサイトを立ち上げたのかもしれません。いずれにしても、このサイト、今後どのように変貌して行くのか、これからも追跡して、何か動きがあれは、このブログに掲載していきます。


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