北京オリンピックの開催を控えた中国の経済成長、バブルについては様々なメディアでその光と影が取り上げられています。そして、バブルと言えば、中国の現代アート。今、世界中から注目を集め数年前には信じられないような値段で取引されています。90年代には数百ドルで売れれば良かった中国人アーティストたちの作品が、いまは天文学的な金額で売れていて、その値段の高騰ぶりは、日本の現代アートを代表する村上隆さんをも軽く抜き去ったこともあるほどです。
張 暁剛 ZHAN XIAO GANG (1958-)
数年前までは食べることにも困っていた中国人アーティストたちが、家や別荘なら2、3軒、高級外車なら2、3台は当たり前、ベンツは「成金」の匂いがするので、買うならアウディ、というセレブ生活を謳歌するようになっているのです。しかし、急激に上がった価格は下がるのも早い、と指摘する専門家もいます。
そして、こんなバブル景気に危機感を抱くアーティストや美術関係者もいるわけで、その中心とも言えるのが、“ゼリー世代”、と呼ばれる人々。1970年代に日本から中国に入ってきたゼリーを子供の頃に食べて育った世代です。
一見、バブルに浮かれているかのように思える中国のアート界。しかし、一方ではもうその先を見据えて動き始めた人々がいます。それが、ゼリー世代です。
中国で一般に評される「ゼリー世代」(=「80後」)世代について整理しておきます。
1. 改革開放後に生まれ、経済発展の恩恵をそのまま享受しながら成長した。
2. 一人っ子世代で、自己愛や自己主張が強いが、ひ弱で忍耐力がなくプレッシャーに弱い。
3. 高学歴で、ネット情報収集力が高い。金銭感覚が開放的。蓄財より消費を優先する新人類。
彼らは、90年代以降の高度経済成長期に成長したため、昔や田舎の中国人みたいな食べるための苦労など想像がつきません。おまけに1979年以降、都市部を中心に徹底された一人っ子政策の申し子だから、甘やかされて育ちました。2000年以降の本格的な消費社会への突入で、物質的な豊かさを疑うことなく生きてきた、おそらく中国で初めての世代といえます。
2008年現在、この世代にあたる18~27歳の人口は約2億人(ただし、格差の大きいこの国ではそのすべてが「80後」的な境遇にあるわけではありません。実際は都市部のそれも一部の若者に限られます)。ただし、この一部の世代の行動や考え方が、広く支持を受けるということは、十分考えられます。イギリスには、ジェントルマンという、イギリス人の理念ともなっている階層があるが、彼らの階層も全人口からすれば、数パーセントに過ぎません。この数パーセントが、イギリスの理念ともなっています。「市場経済」「グローバル化」「インターネット」の世界で、“消費世代”として暮らす彼らの人生観は、これまでの中国人とはまったく違うといいます。彼らは新しい中国を担うエリート予備軍とみなされています。かれらは、今のエリート層とは全く違った思考様式と行動様式を持っていると考えれます。
これらの世代はおそらく、2018年頃に中国が崩壊したあと、しばらく動乱があった後に民主中国の中核的地位につく人達です。私たちは、この世代をもっと研究し、次世代の指導層のものの考え方や行動様式を研究する必要があります。
今回は、ここまでとして、ここしばらく、このブログでの中国関係の記事は、「ゼリー世代」に注目していきます。
以下にこのブログに掲載した中国関連の記事を提示します。反転文字をクリックすれば、当該記事に飛ぶことができます。
■中国ゼリー層-明日の中国を牽引する原動力となるか?
■チャイナ・アート・バブルにも冷めた見方のできる中国ゼリー世代?
■中国分裂の筋書き−(その10)パクスマリーナが拓く世界の平和と大繁栄
■中国分裂の筋書き−(その9)日本の対応は?
■中国分裂の筋書き−(その8)迫られる中国の選択
■中国分裂の筋書き−(その7)忘れてはいけない中国の不良債権
■中国分裂の筋書き−(その6)現代中国の混乱ぶりを現す動画の数々
■中国分裂の筋書き−(その5)他の人達はどう思っているのか?
■中国分裂の筋書き−(その4)毛沢東を統合の象徴にすることができない中国中央政府の苦悩
■中国分裂の筋書き−(その3)中国バブルの真実
■中国分裂の筋書−(その2)革命でもなければ現代中国は変わらない
■中国分裂の筋書−(その1)繰り返される歴史
■中国"義歯"から鉛「安全に問題」
■中国産原料を使ったヘパリン製剤で自主回収へ・・・・米国では死者21名
■世界一人当たりのGDP(国内総生産)と、一人当たり資産−これでも中国は経済大国か?
■南京虐殺記念館に対する日本政府の申し入れに関して考えた、中国のお家事情
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