2017年7月4日火曜日

都議選惨敗、安倍首相に残された道は「消費減税」しかない―【私の論評】子どもや孫の世代が途端の苦しみに塗れるようなことにしたくないなら?


田中秀臣(上武大ビジネス情報学部教授)

 東京都議選は都民ファーストの会の圧勝と、自民党の歴史的大敗北に終わった。公明党、共産党は選挙前の議席数から増やし、民進党も選挙前の議席が少ないとはいえ健闘した。自民党への逆風が猛烈だったぶん、批判の受け皿として都民ファーストが大きく勝った。

候補者の名前が並ぶボードを背に開票を待つ自民党の
下村博文都連会長=7月2日、東京・永田町の党本部
政治的には、都民ファーストの大勝よりも、自民党の惨敗の方が重要だと思う。国政への影響が避けられないからだ。いくつかその影響を考えることができる。あくまで予測の域をでないのだが、いまの政治状況を前提にすれば、年内の衆議院解散は無理だろう。2018年12月の任期満了に近くなるかもしれない。もっとも、1980年代から現在まで3年を超えての解散が多いので、それほど不思議ではない。ひょっとしたらこれはすでに織り込み済みかもしれない。ここまでの大敗北はさすがに自民党も予測はしていなかったろうが。

 国政に与える影響で興味の焦点は、安倍晋三政権の持続可能性についてである。あくまで都議選でしかないことが注意すべきところだが、今後いままで以上にマスコミの安倍批判が加速することは間違いない。都議選の有権者が東京都民だけにもかかわらず、それを世論と等値して、国民から不信任を食らったと煽(あお)るかもしれない。

 もちろん煽らなくても、今回の都議選大敗により、世論調査で内閣支持率がさらに低下し、自民党の支持率も急減する可能性はある。ただその場合、国政には都議選で受け皿となった都民ファーストがないし、また野党も受け皿にはなれない。つまり支持率の低下はほぼ無党派層の増加に吸収される可能性が大きい。この現象がみられるとすれば、都議選の大敗北は、安倍政権への世論の逆風が全国的に吹いたままだということを意味するだろう。

 この潜在的な逆風が、安倍政権をレームダック(死に体)化するだろうか。ここでのレームダック化は、安倍首相が現状のアベノミクスなど基本政策を実施することが難しくなる状況、あるいは転換を迫られる状況としたい。当面はその可能性は低いと思われる。

 ただし、党内の政治闘争は以前よりも格段に顕在化するだろう。そのキーワードは、やはり消費税を含めた「増税主義」である。2017年度の政府の基本的な経済政策の見立てを描いた「骨太の方針」には、19年10月に予定されている消費増税の記述が姿を消した。また20年度のプライマリーバランス黒字化の目標もトーンが下がったとの識者たちの評価もある。

 おそらくそのような「評価」をうけてのことだろう。石破茂前地方創生担当相は、消費税を必ず上げることが国債の価値を安定化させていること、またプライマリーバランスの20年度の黒字化目標を捨てることも「変えたら終わりだ」とマスコミのインタビューに答えている。今回の都議選大敗に際しても、石破氏は即時に事実上の政権批判を展開していて、党内野党たる意欲は十分のようである。

日本記者クラブの改憲で「こども保険」の構想について説明する小泉進次郎議員=6月1日
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
また財務省OBの野田毅前党税制調査会長を代表発起人とし、財政再建という名の「増税主義者の牙城」といえる勉強会もすでに発足している。またその他にも反リフレ政策と増税主義を支持する有力政治家は多く、小泉進次郎氏、石原伸晃経済再生相ら数えればきりがないくらいである。また金融緩和政策への理解はまったく不透明だが(たぶんなさそうだが)、消費増税に反対し、公共事業推進を唱える自民党内の勉強会も発足している。

 これらの動きが今後ますます勢いを増すのではないだろうか。もっとも安倍政権への世論の批判は、筆者からみれば実体がないのだが、森友学園や加計学園問題、続出した議員不祥事などいくつかに対してである。そもそもアベノミクスに対して世論が否定的な評価を与えたわけではない。それでも自民党も野党も含めて、アベノミクスに代わる経済政策はほぼすべて増税主義か、反リフレ政策(金融緩和政策の否定)か、その両方である。

 もちろん世論が、アベノミクスの成果を評価しても、それを脇において安倍政権にノーをつきつける可能性はある。アベノミクスの中核は、リフレ政策(大胆な金融緩和政策)である。現在の政治状況では、いまも書いたが安倍政権が終わればリフレ政策もほぼ終焉(しゅうえん)を迎える。日本銀行の政策は、政策決定会合での多数決によって決まる仕組みだ。日銀にはリフレ政策を熱心に支持する政策委員たちがいるにはいるが過半数ではない。政府のスタンスが劇的に変化すると、それに応じていままでの前言を撤回して真逆の政策スタンスを採用する可能性はある。

 そもそも、安倍首相と同じリフレ政策の支持者は、菅義偉官房長官はじめ、自民党内にはわずかしかいない。次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずだが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯するだろう。このリフレ政策を支持する人事を行えるのは、安倍首相しかいないのである。それが安倍政権の終わりがリフレ政策のほぼ終わりを意味するということだ。

 もちろん日銀人事だけの問題ではない。仮に日銀人事をリフレ政策寄りにできたとしても、政府が日銀と協調した財政政策のスタンスをとらないと意味はない。デフレを完全に脱却するまでは、緊縮政策(14年の消費増税と同様のインパクト)は絶対に避ける必要がある。デフレ脱却には、金融政策と財政政策の協調、両輪が必要なのだ。

 さて、安倍首相もこのまま党内闘争に巻き込まれ、守勢に立たされるのだろうか。それとも攻勢に出るのだろうか。そのきっかけは大胆な内閣改造や、より強化された経済政策を行うことにあるだろう。後者は18年夏頃までのインフレ目標の達成や、教育・社会保障の充実などが挙げられるが、端的には減税が考えられる。何より国民にとって目に見える成果をもたらす政策パッケージが必要だ。それこそ筆者がたびたび指摘しているように消費減税がもっともわかりやすい。

 実際に、消費増税が行われた14年以降、政府が実施してきた中で、消費増税の先送りや毎年の最低賃金引き上げ、そして昨年度末の補正予算ぐらいが「意欲的」な政策姿勢だったという厳しい評価もできる。2%のインフレ目標の早期実現を強く日銀に要請することはいつでもできたはずだ。ある意味で、雇用の改善が安倍首相の経済政策スタンスの慢心をもたらしている、ともいえる。

 いまも書いたように、さらなるアベノミクスの拡大には実現の余地はある。ただ、それを行うだけの政治力が安倍首相にまだ残っているだろうか。そこが最大の注目点だろう。

【私の論評】子どもや孫の世代が途端の苦しみに塗れるようなことにしたくないなら?

昨日のこのブログの記事では、都議選敗退で国政に影響はなく、首相憲法改正まっしぐらに突き進み、長期政権になるであろうことを掲載しました。これは、かなり楽観的なシナリオです。

しかし、一方で、ブロク冒頭の田中秀臣氏の記事のように、悲観的な側面もあるわけです。この悲観的な側面が現実となれば、安倍政権は悲願である憲法改正を何とか成就させ、その後は政権が崩壊、金融緩和から金融引締めに転じ、雇用状況の改善も元通りになり、増税延期も中止され、それこそこのブログに一昨日掲載したように、マスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代がくるという最悪のシナリオも考えられます。

こうなると、日本は数十年後には先進国から、発展途上国におちるということも十分考えられます。近代以降、先進国から発展途上国になった国はアルゼンチン一国のみです。その逆に発展途上国から先進国になった国は日本だけです。例外は一つもありません。中国や韓国も先進国にはなりきれていません。日本もアルゼンチンのようになる可能性も十分あります。

日本人にもあの哀愁の帯びたアルゼンチンタンゴを踊る日がやってくるのか?
昨日のブログは以下のように締めくくっています。
もし民進党が大きな力を持てば、当然のことながら、自民党内にもこれに脅威を感じて、安倍おろしなどの風も吹きかねませんが、この状況だと、少なくとも自民党内の安倍政権反対派がさほど大きな力を持つということは考えにくいです。 
さらに、昨日にも述べたように、小池百合子氏は、積極財政にはあまり関心がないので、やはり小池氏を中心とする勢力も国政にはあまり大きな影響を及ぼすには至らないこととが予想できます。 
そうなると、安倍政権が初心にもどり、さらなる量的金融緩和を実施したり、大規模な積極財政に踏み切れば、経済が安定し、国民の支持も増え、憲法改正はかなりやりやすくなると考えられるとともに、安倍政権が長期政権になる可能性も開けてくることになります。
確かに、安倍政権が初心にもどり、さらなる量的緩和を実施したり、大規模な積極財政に踏み切れば、経済は安定するのは必定です。そうなれば、憲法改正はかなりやりやすくなり、安倍政権が長期政権になる可能性も開けてきます。

しかし、積極財政とはいっても、過去のように追加補正予算数兆というのでは、国民も納得しないでしょう。少なくとも10兆円以上の補正予算とし、さらに8%増税で失敗したのは明らかですから、田中秀臣氏が主張するように、これを5%に戻すことができれば、無党派層の多くも安倍政権を支持することになり、民進党をはじめとする野党が支持率をあげることができない現状では、安倍政権は安泰です。

さて、5%減税については、このブログでも何度か掲載したことがあります。その最新のもののリンクを以下に掲載します。
なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!
この記事の元記事である、安達誠司が述べるところによれば、日本の実質GDP成長率が韓国以下のままなのは、詳細はこの記事をごらいただくものとして、一言でいえば、以下の背景によるものです。

多くの国民が、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったからです。そして、この流れは現在も継続中ということです。

上の消費性向の低下の推移のグラフをみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であることがわかり、この推論を裏付けているようにみえます。

そうして、【私の論評】において、私は、この多くの国民のマインドを変えるには、消費税の5%への減税が必要であることを主張しました。

私としてとしては、都議会選挙は別にして、経済の現状を考えた場合、多くの国民のマインドを変えるためには、このくらいドラスティックなことをする必要があるように思えたのです。

しかし、都議選において歴史的な大敗を喫した現在では、なおのこと5%減税をすべきと言う結論になります。

一方金融緩和の現状についても、以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
「ポスト安倍」も問題だらけだ! 財務省や日銀の言い分信じて財政や雇用理論を間違える人―【私の論評】今のままでは再びデフレスパイラルの無間地獄にまっしぐら(゚д゚)!
過去の日本の失業率をみると(97以降はデフレ下にあため参考にはならない)、構造的失業率は
2%台半ばくらいであると推定できる。実際過去には失業率が3%が超えると問題であるとされた

詳細は、この記事をご覧いただくものとしして、現在の金融政策の状況を一言で述べると以下のような状況です。
「賃上げが進まない理由は単に構造失業率を、日銀が本当は2%台半ばであるものを3%台半ばであると間違っただけ」、日銀からさらに量的金融緩和をすれば、失業率は2%半ばにまでさらに下がるはずなのに、日銀は量的金融緩和をしないので、失業率が高含みのまま推移しているので、人手不足でも賃金があまりあがらないという状況が続いているのです。
誰にでもわかるように、賃金を上げるためには、現在のようにマイナス金利による質的金融緩和だけではなく、さらなる量的緩和が必要なのです。物価目標2%を未だに達成できないのも、さらなる量的緩和を実行しないからであるのは、明らかです。

以上のことから、都議選で大敗したしないは別にして、やはり現在の安倍政権の喫緊の課題は、消費税を5%に戻すこと、2%物価目標を達成するためにも、さらなる量的金融緩和を行うことです。

そうして、これを実行するだけの、政治力が安倍首相にまだ残っているかどうかという話になりますが、安倍総理一人に頑張っていただく以外に方法ないのでしょうか。

私は、あると思います。

日本では昔から集票力のある圧力団体が自分たちの利益のためにロビー活動しています。選挙のときにも自前で用意した組織内議員を送り込んでいます。つまり圧力団体の発言は政治家や政党も無視できない影響力を持っています。これは強固な組織や票をもっている圧力団体だからこそできることなのです。

また以前にデモも活発に行われましたが、これはたとえば「参加している人と一緒に行動する連帯感」「人前で行動を起こすことの開放感」「目立つことをしていることの高揚感」などといったデモに参加している人たちの内面を大きく変える事柄であっても、対外的なこと(政治や社会など)を変える力にはなりませんでした。

私は「必ず選挙に行って投票しなければならない」とか、「困っている人はみんなロビイングすべき」といったことはまったく言うつもりはありません。

しかし、「選挙で投票する」、「選挙に立候補する」ことを圧力団体が行えば、当然のことながら「圧力団体」が望む方向へと政治は動いていきます。

もちろん「選挙に立候補する」ことはハードルが高いかもしれません。では、「ロビイング」のほうはどうでしょうか?

「ロビイング」のことについては知らない人たちがたくさんいます。これでは「ロビイング」を既にやっている人たちが望む方向へと政治は動いてしまいます。

「参加する/参加しない」を選択するのは個々人の自由ですが、「知っている/知らない」で損得をしてしまうことは不公平だと思います。私はこれから「ロビイング」のことをたくさんの人たちに知ってもらい、そのうえで「ロビイングする/ロビイングしない」を選択できる社会に変えていきたいと考えています。

そして『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)はロビイングが誰でもできるものだと主張する、いわばロビイングのマニュアル書です。私は、この書籍を参考にして、ロビイングやってみたいと思っています。皆さんも、是非参考にしてみて下さい。

とにかく、たとえ憲法改正ができたにしても、日本が再びデフレ・スパイラルのどん底に沈み、マスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代が来て、私達の子どもや孫の世代が塗炭の苦しみに塗れることだけは避けたいものです。

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2017年7月3日月曜日

小池都知事の急所と安倍政権の「これからの秘策」を明らか にしよう―【私の論評】都議選敗退で国政に影響なし、首相憲法改正まっしぐら(゚д゚)!

小池都知事の急所と安倍政権の「これからの秘策」を明らか
にしよう

原点回帰」がキーワードだ



  妙手連発

2日に行われた東京都議選は、小池新党である都民ファーストの会の圧勝だった。

都民ファーストは、選挙前勢力の5からほぼ10倍の49議席をとった。都民ファーストと選挙協力を行った公明党は選挙前23と同じ23、自民党は選挙前57から大幅減の23、民進党は選挙前18から激減しての5、共産党は選挙前17とほぼ同じ19だった。

都民ファーストの大躍進は、自民と民進を食った形だ。

東京都議選は、1人区(小選挙区)と2~8人区(大選挙区)の並立制で行われている。1人選挙区は千代田区など7区、大選挙区はそのほか35区だ。これは、普通ならそれほど大きく変動の起こらない選挙制度であるが、1人選挙区7つのうち、都民ファーストは6人、大選挙区でも43人が当選した。

都民ファーストの勝因は、何にも増して小池都知事の魅力である。これは、大阪維新の会が橋下氏の人気で持っているのと同じである。政策と言うより、行政を変えていこうという姿勢や、この人なら何かをやってくれるという期待からの指示であることは言うまでもない。

地方行政の選挙の場合、たとえば公約をみると細かく生活に密着している話は多いが、テーマが多種多様にわたっているので、ワンイシューにまとめにくく、なかなか政策議論になりにくい。

東京の場合、2020年の東京五輪を控えているので、五輪の顔として小池都知事は絶対的な存在になる。であれば、議会も小池都知事をサポートするような体制が望ましいと、多くの都民が考えたのだろう。

豊洲移転問題は確かに争点であったが、これについても小池都知事は絶妙なハンドリングを行った。筆者は、本コラムで書いていたように、サンクコスト論と豊洲・築地の科学的なリスク評価のみで考えても、豊洲に移転するのが合理的な帰着であると主張してきた。

ところが、小池都知事の老獪なところは、この単純明快な答えをすぐには出さずに、政治的なタイミングをはかって、都議選の直前に打ち出したことだ。これは「一周遅れ」との批判を招いたが、そのとき同時に、「築地を再開発する」ともいっている。豊洲と築地の両方にいい顔をしただけと見ることもできるが、これが効果的だったということだ。

政策論としては、「築地再開発」は筋悪である。食のテーマパークを作るという主張についても、無理して施設を作ることは可能だが、問題はその後どのように黒字経営できるかの見通しを示せてはいない。思いつきレベルの話で、どこまで収支計算ができるかわからないし、実際、詳しい収支計算はやっていないようだ。

選挙前の話なので、方向性だけを示しておいて、その後、「やっぱりやめます」と取り消すことも可能なしろものである。しかし、選挙向けと考えれば、実に計算された「政治的な妙手」である。

なにより、小池都知事はメディアの動向を読むのがうまい。国政レベルで、森友・加計学園問題が「もりそば・かけそば」と揶揄され、本コラムで書いたようにいずれも「総理の関与」も「総理の意向」もないにもかかわらず、イメージだけは確実に悪くなるような報道がなされた。

それだけではたいしたことはなかったはずだが、都議選終盤において、豊田真由子議員の信じられない暴言、稲田朋美防衛相の失言は、あまりにわかりやすく、これが決定的に都議選へ悪影響を及ぼしたといわざるをえない。これらの暴言・失言は、小池都知事の豊洲移転の失敗を覆い隠すとともに、自民党の自滅を誘った。小池氏はとにかく運がいい。

さて、この都議選が国政へなにか影響を及ぼすのだろうか。

   結局、国政には影響なし…?

無論、自民党はこれだけの大敗をしたのだから、影響がないはずない。有権者は、国政選挙が当分ない安倍政権への「お灸」をすえたのだろう。

一方で、この影響が国政に直接響くとは言えないだろう。そもそも都議選は地方選挙であり、国政選挙でない(当たり前のことで恐縮だが)。民進党、共産党が大躍進でもしない限りは、国政での自公連立は揺らがないだろう。というのは、都民ファーストが勝ったのは、公明党の勝利という見方もできるからだ。

かなり乱暴な言い方であるが、自公連立政権としては、都民ファーストが勝っても自民が勝ってもどちらでも良かったともいえる。

都民ファーストが勝利したが、2020年の東京五輪を控えて、小池都知事が国政で自公政権と対立するとは思えず、むしろ協力関係を築くことになるだろう。都民ファーストの勝利は、自民党都議の議席を減らすと同時に、民進党にとっては「虎の子の民進党都議」を小池都知事にとられただけ、になる可能性が高いのだ。

東京都における都民ファーストの躍進は、大阪における維新の台頭と表面的には似ているとも言える。大阪では維新の会は自民党と競合しているが、大阪万博やカジノ誘致のために、国政では安倍政権と協力関係にある。小池都知事が率いる都民ファーストは、2020年東京五輪があるので、同じように安倍政権と協力関係にならざるを得ないだろう。

実際、小池都知事の発言をよく読むと、安倍政権の批判はしていない。安倍首相も、小池都知事を名指しで批判していない。このあたりは、今後の協力関係を想定しているかのようだ。

それでは、国政は今後どうなるのだろうか。安倍首相は、2020年に憲法改正を施行するというスケジュールで進めており、当然のことながら、これを中心として、今後の政治スケジュールが進んでいくだろう。

「2020年憲法改正施行」から逆算すると、憲法改正の国民投票は遅くとも2019年夏までに行われることになる。国民投票だけで憲法改正の賛否を問うことも可能であるが、政治的な常識からは、2019年夏の参院選か、2018年12月に任期終了する衆議院と同じタイミングで国民投票にぶつけるのだろう。

初めての憲法改正であるので、周知期間を長くとるために、2018年中のおそらく後半に衆議院解散をして、国民投票と総選挙との「ダブル選挙」を行うことがメインシナリオではないかと筆者は考えている。そのとき、2019年10月から予定されている10%への消費増税の是非も争点になるはずだ。安倍政権は、憲法改正、消費増税凍結で、国民投票と総選挙のダブルを仕掛けてくると筆者はにらんでいる。

国民投票の手続きには、国会の発議が必要だ。衆院議員100人以上、参院議員50人以上の賛成により、憲法改正案の原案が発議され、衆参両院の憲法審査会で審査したうえで、両院の本会議に送られる。ここで両院議員のそれぞれ3分の2以上が賛成し、可決されると、国会での憲法改正の発議となる。国民投票は発議の日から起算して60日以後180日以内に行われるが、ここも初めてのことなので、最大の180日を採ることにになるだろう。

であれば、憲法改正の発議は、2018年6月までに行われることとなる。つまり、来年の通常国会中に発議するというわけだ。

   政局を起こしたいならば…

こういう今後のスケジュールをみれば、先日、安倍首相が「秋の臨時国会で自民党の憲法改正案を示したい」と発言したのはうなずける。秋の臨時国会までに、各党の憲法改正案を示して、来年の通常国会での発議を目指しているのだ。

さて、秋の臨時国会までに必要なのが内閣改造だ。今年の通常国会では、閣僚の失言などが目立ったので、秋の臨時国会に備えて、内閣の体制強化が求められている。もっとも、内閣改造すると、どうしても「適齢期」などを考慮して処遇せざるを得ない人物も出てくるので、必ずしもいいことばかりでない。

内閣改造の後、第二次安倍政権の原点回帰ともいうべき経済政策の強化のために、秋の臨時国会で補正予算が打ち出されるだろう。通常国会では、森友学園・加計学園と、国政ではどうでもいいような話題に対してマスコミ・野党の激しい思い込みが炸裂し、政策論争が行われなかった。

秋の臨時国会では、実りある政策論争をするために、補正予算を出すだろう。と同時に、来年後半の国民投票・衆院選のダブル選に向けた環境整備も行われるだろう。

もっとも、政局的には、都議選での自民党惨敗によって、自民党内での安倍政権への逆風が吹くことのほうが、民進党、共産党等の野党の動きよりも不気味だろう。それが見えてくるのは、秋の臨時国会までに行われる内閣改造のタイミングである。

ここで、反安倍の動きが出るかどうか、ここが正念場である。強い逆風が吹くようであれば、2018年後半での、国民投票と衆院選のダブル選のメインシナリオも変化する可能性も出てくる。

しかし、ここでひとつ釘を刺しておきたいのは、政権に対して逆風を吹かせるにしても、それに政策論が伴うかどうかが重要、ということだ。政策論としては、安倍政権下の雇用環境は歴代政権の中でも最高のパフォーマンスであり、これでは政局を起こそうにも、大義名分が生じない。

政局を仕掛けるなら、アベノミクス(特に金融緩和)の成果を上回る雇用を生み出し、それを提示しなければ、国民から見ればいい迷惑であることも付け加えておこう。

【私の論評】都議選敗退で国政に影響なし、首相憲法改正まっしぐら(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事にもあるように、今後の安倍政権の動きとしては、やはり憲法改正が最大のものとなることでしょう。以下に、2020年に改正憲法を施行する場合そうていされるいくかつのスケジュールを掲載しておきます。


安倍政権としては、その時々で政局をみながら、いずれかのスゲシュールで20年の改正憲法の施行をやり遂げることでしょう。

そうして、いずれのスケジュールを採用するにしても、憲法改正のためには、政権を安定させる必要があります。なるべく支持率が高い時に、国民投票にぶつけたいと考えるのは間違いないです。

そのためには、国民投票が行われる時期には、経済がかなり上向いているか、あるいは上向きつつあることが多くの国民に実感できるようになっている必要があります。

そのため、2019年10月から予定されている10%への消費増税は、延期もしくは景気が上向くまで無期限延期にすることが考えられます。いずれにせよ、これに関してはいずれかの国政選挙での公約にすることでしょう。

このあたりは、大規模な政局に発展する可能性があります。昨日のこのブログでも述べたように、骨太の方針から「増税」という言葉がいっさい消えました。

この動きに、消費増税を「省是」としている財務省は神経を尖らせています。表立っては動けないのですが、いろいろと手を回しているようです。その一例が、このブログでもとりあげた自民党内の「反アベノミクス」勉強会の発足支援です。

安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)が15日、2回目の会合を国会内担当で開き、石破茂前地方創生相ら議員約30人が出席しました。講師の早川英男元日銀理事は「デフレ脱却による高成長は幻想だ」とアベノミクスを批判し、石破氏は記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べました。

講師の早川氏は、「金融緩和するとハイパーインフレになる」と言っていたエコノミスです。今のところそのようなことは起こっていません。

一方安倍政権は、ノーベル賞学者であるスティグリッツ氏やシムズ氏の意見を参考にし、必要なのは財政健全化よりもむしろ財政出動である、としています。彼らは、政府の財政状況を見るとき、実質の「子会社」といえる日銀を含めた「統合政府」のバランスシートで見るべきで、そうすれば特に財政上の問題はないことがわかると主張しています。

ここのところ、政権と「反安倍」の政治闘争が過熱してきています。「骨太方針」で消費増税の文言が消えたのは、本格的な政治闘争が幕を切った合図であると考えられます。

この政治闘争に当然のことながら、野党、マスコミ、自民党の反対派も参戦します。いかに、安倍政権側が多勢に無勢であるか理解できます。しかし、自民党内の反対派の活動も意外と小さなものになるのではないかと思います。

何しろ、都議選では大敗したものの、国政では内閣支持率が低下したとはいうものの、まだまだ安倍自民党は強いです。最近は下がったとはいえ、過去の内閣支持率の推移をみると、特に政権末期にはどの内閣もかなり支持率を落としています。安倍第二次政権が成立以来、三年以上の月日がたっていますが、これを考えるとまだまだ驚異的に高いです。


今回の都議選では、民進党も大敗を喫しました。そうして、高橋洋一氏は今回の都議選の結果は、自民党にとっては国政にはあまり影響はないだろうとしたものの、民進党では国政レベルでも大きな影響が出てくるのは必至だと思います。

民進党は4月に党内きっての実力者である細野豪志氏が代表代行を辞任。さらに都連幹事長の長島昭久氏も党を離れました。都議選を仕切る立場の人間が直前に党を離れるようでは、勝ち目などあるわけがありません。その後も次々と離党者が相次ぐさまは、まさに沈む船からネズミが逃げるような状況です。

都議会では、『東京改革議員団』という会派名に改称し、“民進”という名前を消しましたが、民進党といえば蓮舫氏。知名度が抜群なのは政治家にとって大きな武器ですが、彼女の二重国籍問題がまだ尾をひいています。

蓮舫代表の地元・東京での敗北は結果責任をまぬがれないとの見方がありましたが、自民党への逆風が強まり、民進党は選挙前よりわずかに党勢を回復しました。党内の非主流派が「蓮舫降ろし」に動く気配はなく、蓮舫氏は代表を続投する方針です。

民進党の野田佳彦幹事長は3日の記者会見で、東京都議選で現有議席を下回った情勢に対する蓮舫代表の責任に関し「『選挙の顔』がそんなに他にいるのかどうか。(蓮舫氏は)責任を果たし続けて結果を次に渡すという確固たる決意を持っている」と述べ、引責辞任の必要はないとの認識を明らかにしました。


当初は『議席ゼロ』の予測もありましたが、それは免れたため、代表を降ろす口実はなくなったということのようです。知名度が高い彼女を切れば、民進党は本気だとアピールできたと思いますが、このまま蓮舫代表が続投ということですから、民進党が国政レベルで勢いを増すということは当面あり得なくなりました。

もし民進党が大きな力を持てば、当然のことながら、自民党内にもこれに脅威を感じて、安倍おろしなどの風も吹きかねませんが、この状況だと、少なくとも自民党内の安倍政権反対派がさほど大きな力を持つということは考えにくいです。

さらに、昨日にも述べたように、小池百合子氏は、積極財政にはあまり関心がないので、やはり小池氏を中心とする勢力も国政にはあまり大きな影響を及ぼすには至らないこととが予想できます。

そうなると、安倍政権が初心にもどり、さらなる量的金融緩和を実施したり、大規模な積極財政に踏み切れば、経済が安定し、国民の支持も増え、憲法改正はかなりやりやすくなると考えられるとともに、安倍政権が長期政権になる可能性も開けてくることになります。

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2017年7月2日日曜日

「左がかった人たち、安倍政権をたたきつぶそうと必死」阿比留編集委員が講演、わが国の将来は―【私の論評】これからマスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代がくるかもしれない(゚д゚)!

「左がかった人たち、安倍政権をたたきつぶそうと必死」阿比留編集委員が講演、わが国の将来は

講演する阿比留瑠比・産経新聞政治部編集委員=6月15日、松江市
 産経新聞のコラム「極言御免」を手がける阿比留瑠比・政治部編集委員兼論説委員が、松江市で「安倍政権と日本の将来」と題して講演した。経営者らの会合に講師として招かれた阿比留編集委員は、国会運営や憲法改正などさまざまなトピックスを挙げ、取材現場で耳にした安部晋三首相の「肉声」を交えながら、メディアの問題点を指摘するとともに、わが国の行く末について見通しを示した。

 主な講演内容は次の通り。

   メディアのバカ騒ぎ

 多くの新聞が「共謀罪」と印象操作した「テロ等準備罪」の法律が成立した。世界中で同種の法律を持たない国がいくつあるか。日本が何か特別なことをやろうとしたわけではなく、世界標準に加わろうとしているだけ。それも“ザル法”で、だ。

 少し前には、特定秘密保護法をめぐるバカ騒ぎがあった。多くのメディアは、「暗黒社会が訪れる」「戦前回帰だ」「映画が作れなくなる」「小説が書けなくなる」と騒いだ。

 その次には、集団的自衛権を限定的に容認する安全保障関連法が成立。このときも、新聞やテレビは「徴兵制が復活する」「米国が世界の裏側で起こす戦争に日本が参加させられる」などと、さんざんあおった。さて、そんなことが1つでもあったか。「いい加減にしろ」と言いたい。

 左がかった人たちは、戦後の既得権益者としてぬるま湯にどっぷりつかっていたいのに、このまま憲法が変えられるとそれが許されなくなるから、安倍政権をたたきつぶそうと、必死になっているのだ。

   反対派の主張とは「いつも逆」

 安倍政権は特定秘密保護法を作ったとき、内閣支持率を10ポイント程度下げた。支持率は、内閣にとって相当に大きな政治的資産だが、それを10ポイントも下げてまで不人気法案を通したのは、世間で言われるように「戦争がしたい」という理由であるわけがない。必要だったからに決まっている。

 今や世界はテロの時代。そんな中で、特定秘密保護法があることで、世界の国々と情報のやり取りが簡単にでき、それまで入ってこなかった機密情報が日本政府に寄せられるようになった。

 安全保障関連法も、そうだ。反対していた人たちが「世界の裏側で戦争を起こす」と言っていた米国は、「世界の警察官ではない」と宣言。すると、ISのような勢力が力を伸ばし、中国は東シナ海や南シナ海で海洋進出を既成事実化していく。

 力の空白が生まれたら、それを埋めるためにどこかが出てくるというのは、世界史・政治学の常識。日本にとって喫緊の課題は尖閣諸島で、ここを中国が軍事占領したら、日本はどうするか。米国は、たかが日本の無人島のために血を流したり莫大(ばくだい)なカネを使ったりしてくれるか。

 そこで、日本政府は集団的自衛権の行使を一部ながら容認し、日本が巻き込まれる恐れのある戦争に、米国も巻き込んでちゃんと守ってもらおう、と安全保障関連法を作った。反対派の主張とは、まったく逆なのだ。

   金正恩氏も計算外?

 今国会では何が取り上げられていたかというと、前半は「森友問題」で後半は「加計問題」。北朝鮮が何発ミサイルを飛ばしても、そればかりだった。金正恩氏は日本をびびらせようと思っているのに、まったく無反応。彼も計算外だったのではないか。

 今年5月3日、安倍首相は、憲法改正の具体的な目標と中身を提示した。「9条に自衛隊の存在を明記する」というのは、多くの人たちが9条に思い入れと思い込みを持ち、条文を消すのは抵抗がある中、現実的であり名案だと思う。

 自衛隊に対し、国民の9割が親しみを持つ一方、憲法学者の7割が「憲法違反だ」と述べるという矛盾を解消するのは、非常に大事なことだ。

 憲法改正に対し、左系メディアは「国民の機運が盛り上がっていない」と言う。彼らは「立憲主義」という言葉が好きなはずなのに、憲法が自衛隊を違憲のような状態に置いているのを平気で見逃している。

   安倍首相再登板の理由

 かつて「もはや戦後ではない」と言われてから半世紀、中曽根内閣が「戦後政治の総決算」と言ってから30年以上がたつのに、私たちはまだ「戦後」という言葉にしばられている。中国や韓国は繰り返し、「戦後の枠組みを守れ」と言う。

 戦後の枠組みとは、第二次大戦における戦勝国と敗戦国の枠組みのこと。彼らや日本の左翼の人たちは、日本を永久に敗戦国のままにしておきたいのだ。

 戦争の反省や過去の歴史に学ぶ姿勢は大切だが、70年以上前のことで、ずっと責められ続けなければならないのは、おかしい。

 戦後70年談話で、白人による植民地が世界に広がった事実を盛り込みつつ、米国も中韓も文句がつけられないよう工夫して高い評価を得た。

 安倍首相は「歴史問題は難しい。匍匐(ほふく)前進で行かなければならない」と言っていた。まどろっこしく、はっきり分かりやすい成果は少ないが、それでも大きく進んでいる。一度辞めた総理の座を再び目指したのはなぜか。歴史問題にしても憲法改正も拉致問題も、彼のほかにやる人間がいないからだ。

   憲法を日本人の手に

 私たちは戦後、憲法をまったく触っていない。「戦後」を終わらせるには、憲法を一条でも一項でも書き換えることが必要だ。

 「憲法は日本人が70年にわたり育んできた」という人がいるが、これは嘘。「育む」とは、手塩にかけて愛情を注ぎ、手取り足取り育てることだ。

 私たちは、憲法を神棚の上に置いて遠くから眺めるだけで、ほこりを払おうともしてこなかった。日本人の手で少しでも変えることによって、憲法は日本人の手に取り戻され、戦後の終わる一歩が踏み出せる。

 それをやろうとしている安倍政権には、匍匐前進でもいいから進めてほしいと心から願っている。

【私の論評】これからマスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代がくるかもしれない(゚д゚)!

阿比留氏の「左がかった人たち、安倍政権をたたきつぶそうと必死」というのは、本当です。本日も都議選でその典型的なマスコミのやり口がツイッターで流されていました。

そのツイートを以下に掲載します。

写真の部分、ツイートでは小さいので、以下に拡大したものを掲載しておきます。





本当にこの事例は理解しやすいです。森友学園でも、加計問題でも、このような調子です。先日は、「そこまで言って委員会NP」に竹中平蔵氏がでて、森友でも加計問題でも、総理や菅官房長官らが、総理の意向などとは全く関係ないことを、わかりやすく説明しているにもかかわらず、マスコミはそれを報道しないという趣旨のことを語っておられました。

この構造、上のツイートと全く同じです。この点では、阿比留氏の講演内容は素晴らしいものとは思います。

それにしても、反安倍派は、必死です。そもそも、都議選は国政選挙ではありません。国政選挙でなぜ「反安倍」なのかも良く理解できません。この選挙は国政にはほとんど影響はないでしょう。

仮に影響があったにしても、以前もこのブログに掲載したとおり、都民ファーストの会が大勝利したとしても、それは公明党の勝利でもあります。であれば、国政にはほとんど影響はないとみるべきでしょう。そんなことは、最初からわかりきっているのですが、都議選にまで「安倍やめろ」シュプレヒコールをぶちあげ、それをマスコミが偏向報道してまで強調するというのですから、彼れらにとっては安倍総理はよほど、脅威に感じているのでしょう。

朝日新聞や、毎日新聞など反安倍系のシナリオの続きは、ここで安倍政権が求心力を失い、それを煽りまくり、7月に前倒しされた内閣改造が「冴えない」「新鮮味がない」と連続印象操作で畳かけるのが次の戦法になると思われます。

そうして、これほど壊滅的とは思っていなかったにせよ、自民党内では都議選敗北は織り込み済なので、自民党の議員の関心は大規模になりそうな内閣改造・党役員人事でのポスト奪取にもとから移動していると思います。壊滅的な敗北なので入れ替えポストが増えそうと内心喜んでいる人も多いかもしれません。
それにしても、都民ファーストはかなり強いです。自民は歴史的大敗です。ここまでは反安倍系のマスコミがずっと想定し、事実上の策動していたシナリオ通りです。しかし、問題は民進党と共産党がどこまで減らすかです。このふたつの政党が思いのほか自民党を崩してしまうことが反安倍系のマスコミの狙いでしょう。

しかし、これだけ都民ファーストが強いということになると、たぶん日本風リベラル・左派系の反安倍系の人たちで、まともな政治勘をもっている少数の人々は、この都民ファーストの大躍進にむしろ脅威を抱いているかもしれません。なんといっても小池氏の政治信条というか本音はかなり右なのは過去の発言をみれば明瞭です。これで、改憲にはずみがつくかもしれません。

しかし、知事のチェック機能がもともとないとはいえ、今後名実ともになくなるわけで、小池知事の責任はマックスになります。つまり失敗の言い逃れは一切できなくなります。それは財政状況で単純に今後明瞭になることでしょう。

ところで、ブログ冒頭の記事で、阿比留瑠比氏の全くするりと抜けている観点が、やはり安倍総理の経済対策です。いわゆる金融緩和と積極財政によるデフレからの完全脱却です。

安倍政権で変わったのは、何といっても日銀の金融緩和策です。残念ながら、積極財政は、できなかったどころか、8%増税により、全く反対の方向に動いてしまいました。ただし、10%増税はいまのところ延期された状態にあります。

ちなみに、都民ファーストの強さは、安倍政権が強かったことと同じで、都民の関心は、雇用(景気)・福祉・教育に重点があり、それについての小池氏への期待が色あせてないと考えられます。対して小池知事に反対する側は、豊洲や東京オリンピックなど都民の関心の低いもので批判を展開していて、批判効果は限定的だったと考えられます。

それだけ、国民も都民も雇用(景気)・福祉・教育に重点おいているのです。これを都自民党は忘れていたというか、ほとんど眼中になかったように思います。

そうして、先日このブログにも掲載したように、骨太の方針から「増税」という言葉がいっさい消えました。

この動きに、消費増税を「省是」としている財務省は神経を尖らせています。表立っては動けないのですが、いろいろと手を回しているようです。その一例が、このブログでもとりあげた自民党内の「反アベノミクス」勉強会の発足支援です。

安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)が15日、2回目の会合を国会内担当で開き、石破茂前地方創生相ら議員約30人が出席しました。講師の早川英男元日銀理事は「デフレ脱却による高成長は幻想だ」とアベノミクスを批判し、石破氏は記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べました。

講師の早川氏は、「金融緩和するとハイパーインフレになる」と言っていたエコノミスです。今のところそのようなことは起こっていません。

一方安倍政権は、ノーベル賞学者であるスティグリッツ氏やシムズ氏の意見を参考にし、必要なのは財政健全化よりもむしろ財政出動である、としています。彼らは、政府の財政状況を見るとき、実質の「子会社」といえる日銀を含めた「統合政府」のバランスシートで見るべきで、そうすれば特に財政上の問題はないことがわかると主張しています。

ここのところ、政権と「反安倍」の政治闘争が過熱してきています。「骨太方針」で消費増税の文言が消えたのは、本格的な政治闘争が幕を切った合図であると考えられます。

この政治闘争に当然のことながら、野党、マスコミ、自民党の反対派も参戦します。いかに、安倍政権側が多勢に無勢であるか理解できます。

戦前から、政権批判で政治的実力者を叩き落とすのは、本人の「スキャンダル」のねつ造、煽りでした。最近では、政治家が平均的に隙きがなくなったのか、首相のケースでわかるように、「お友達」「夫人」などのキーワードでありもしないことをねつ造して批判する新手法が登場しました。この手法の威力はかなりあることも今回証明されました。

いずれにせよ、ネットvs新聞・テレビでは前者はまだまだ圧倒的に不利です。戦前には、今で言うフェイクニュースを乱造する大マスコミに、当時の小新聞などが抗したのですが、結局大勢を変えることはできませんでした。今回の都議選も同じ展開でした。

ひよっとすると、安倍政権は、多勢に無勢の状況を変えることができず、マスコミや野党、自民党内の敵により、先の新手法により完敗して、これからマスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代がくるのかもしれません。そのようなことだけは、避けたいものです。

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2017年7月1日土曜日

文在寅大統領への「ホメ殺し」 人生のルーツを持ち出し反米、親北、親中にブレーキ―【私の論評】文在寅大統領が失脚したとき韓国は北朝鮮に飲み込まれる(゚д゚)!

文在寅大統領への「ホメ殺し」 人生のルーツを持ち出し反米、親北、親中にブレーキ 

韓国の文在寅大統領=6月28日、ワシントン
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)・新大統領が米国を訪問中だ。彼はワシントンに到着した日、まず米海兵隊博物館にある朝鮮戦争(1950~53年)を記念する米韓友好のモニュメントを訪れた。これが戦争で最激戦地の一つだった「長津湖(チャンジンホ)戦闘」を記念するものというところが興味深い。

「長津湖」は北朝鮮東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)のケマ高原にある地名。北朝鮮支援で攻め込んできた中国の大軍に米軍(国連軍)が包囲され、大打撃を受けたことで知られる。

朝鮮戦争は北朝鮮軍の奇襲侵攻でソウルが陥落した後、米軍(国連軍)の支援で盛り返し、ソウルを奪還した米韓軍は北上して平壌を占領。さらに北上したため中国軍が北方から大軍で介入し、米韓軍を南に押し戻したという経緯がある。

長津湖戦闘記念碑を訪問した文在寅大統領が28日(現地時間)、米バージニア州海兵隊博物館で
スティーブン・オルムステッド元米海兵隊中将(右側)と一緒に、長津湖戦闘記念碑を見学している
 したがって朝鮮戦争は途中から“米中戦争”の様相となった。なかでも「長津湖戦闘」は米軍が中国の大軍に押しまくられ、東海岸の咸鏡南道・興南港から大量の避難民とともに南への撤退を余儀なくされた「興南撤収作戦」につながる苦闘の象徴として知られる。

この時の「興南撤収」で北朝鮮から逃れ釜山港にたどり着いた北朝鮮の住民に文在寅氏の両親もいた。文氏はその後、釜山近郊で生まれたが、歴史的な意味では彼はいわば「長津湖戦闘」の“申し子”なのだ。

1950年12月9日から24日まで続いた興南撤収
 その彼が訪米の第一歩に「長津湖戦闘記念碑」訪問を選んだことを韓国メディアはこう書いている。

「あの時、米軍が大きな犠牲を払って中国軍の南下を阻止したおかげで、文大統領の父母をはじめ20万人の興南撤収が可能になったのだ。(記念碑訪問は)韓米血盟にからむ文大統領の家族史を通じ、同盟外交の第一歩を踏み出す象徴的な歩みである」(6月29日付、東亜日報社説から)

左派系の革新政権である文在寅政権の外交姿勢については内外で懸念する声がある。文氏が自ら秘書室長など参謀を務めた師匠の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(2003~08年)が「米国を怒らせることがあってもいいではないか」などと公言し、いわば「米・中等距離外交」で米国離れを目指した“前科”があるからだ。

盧武鉉大統領(右)秘書室長職を務めていた文在寅(左)
 今回、文大統領の訪米直前には政権の外交参謀が北朝鮮の主張に歩調を合わせるように「米韓軍事演習縮小論」を公言。政権内部に「自主外交派」を布陣し、対北政策における米韓協調路線を手直しするような動きが見え隠れしている。

このため不安が強い保守派を中心に国民は大統領の初訪米を固唾をのんで見守っているのだが、そのスタートが「長津湖戦闘記念碑」訪問だったから保守派はとりあえずホッとしている。

先の新聞社説はそうした国民心理の反映といっていい。あえて解説すれば「文在寅さん、あなたのルーツは反北、反中、親米だったのではないですか。それを忘れては困りますよ」というもので、彼の人生のルーツを持ち出し反米、親北、親中に傾かないようブレーキをかけているのだ。一種の“ホメ殺し”である。

ついでにもう一つホメると、文在寅氏はすでに息子を米国に娘は日本に留学させるなど家庭は十分に国際的で現実的なのだ。自らのルーツと韓国が置かれた現実的な国際環境からすれば反米、反日など出てこないはずだが。

【私の論評】文在寅大統領が失脚したとき韓国は北朝鮮に飲み込まれる(゚д゚)!

現在韓国は、結局北朝鮮に飲み込まれてしまうと説と、そうはならないだろうという説とが真っ二つに別れているようです。

北朝鮮に本当に飲み込まれるかどうかは、別にして、飲み込まれるとしたらこのようなシナリオになるだろうということについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【痛快!テキサス親父】韓国はまさに「赤化危機」 完全な日韓合意違反、国際的信用は失墜した―【私の論評】韓国の赤化で、半島全体が支那の傀儡になる?
金正恩
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、韓国が北朝鮮にのみこまれるシナリオの部分を以下に引用します。
赤化した韓国は、THAADの導入を拒否するか、導入した後に撤去することになるかもしれません。そうして支那は、それを促すため、北朝鮮と韓国に平和条約を結ぶよう勧告するでしょう。そうして、支那は韓国に平和条約を結すべばTHADDの導入は必要ないことを強調することでしょう。

THAAD導入で支那から制裁を受け、経済面に苦しい韓国は、THAADを導入を断念すれば、韓国制裁を解くといわれれば、赤化した韓国は拒否できないことでしょう。軍事境界線に配備した長距離砲の撤去など、非核化した北朝鮮が韓国の要求をのめば、平和条約が締結される可能性はかなり高くなると思います。

平和条約締結後の韓国には、在韓米軍が存在する意義がなくなくなります。韓国は、米軍の撤退を要求するかもしれません。それに呼応して、在韓米軍は大幅に削減され、いずれ撤退することになるかもしれません。
次のステップは「南北連邦国家形成」ということになるでしょう。支那の意を受けた北朝鮮の工作員が「今こそ悲願の統一だ」と民族感情を刺激し、すでに赤化している韓国の人々は「一国・二政府・二体制での統一」という建前に熱狂することでしょう。そうして「南北朝鮮民主連邦」が実現することになります。

そして、最終段階が「北朝鮮体制での完全統一」です。支那傀儡の北朝鮮は「一国二体制は非効率だ。一方の体制に統一しよう」と国民投票を韓国側に呼び掛けることでしょう。人口が2倍いる韓国は「北朝鮮をのみ込める」と踏んで、これに応じることでしょう。

しかし、北朝鮮は約2000万人の有権者全員が北の体制を支持します。一方、韓国側の約4000万人の有権者はそうはいきません。仮に、投票率80%とすると投票者は約3200万人。うち、600万人以上が北の体制を支持すれば、北朝鮮側の勝利となります。
大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の人口の推移
「財閥を潰して社会格差を無くせるなら」「地獄の生活苦から抜け出せるなら」など、韓国には国全体をガラガラポンしたい衝動に駆られる住民が大勢存在します。
国民投票で選ばれるのは、恐らく北朝鮮側の体制でしょう。そうなれば、韓国は北朝鮮にのみ込まれて「支那の属国」と化し、人々からすべての人権が剥奪されることになります。その時韓国は、真実の「HELL(地獄)のKOREA(韓国)」となるのです。 
このようなシナリオは十分に成り立つものと思います。しかし、現在のところ韓国が北朝鮮に飲み込まれる可能性は五分五分だと思います。

私自身は、五分五分に近いものの、北朝鮮に飲み込まれない可能性のほうが高いと思っています。

ブログ冒頭の記事にもあるように、文在寅大統領は、訪米初日にボスニア州の米海兵隊国立博物館にある長津湖戦闘記念碑を訪問しています。

長津湖戦闘記念碑を訪問した際当時参戦した海兵に興南撤退の
写真を見ながら説明を受けている文在寅大統領(手前左)
そうして、以下のように述べています。

「長津湖(チャンジンホ)の勇士たちがなかったら、興南(フンナム)撤収作戦の成功がなかったら、私の人生は始まっていなかったはずであり、今日の私もいないはずです」

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日(現地時間)、米国訪問初の日程としてワシントンの米海兵隊博物館にある長津湖戦闘記念碑に献花しました。長津湖の戦いは1950年の冬、蓋馬高原(ケマゴウォン)にある長津湖一帯で、中国軍7個師団に包囲された米海兵1師団が悪戦苦闘の末、中国軍の南進を遅らせた戦闘で、連合軍の興南撤収に決定的な貢献をしたと評価されています。

文大統領は、ロバート・ワーク米国防総省副長官やロバート・ネラー海兵隊司令官のほか、興南撤収作戦に関わった関係者と家族らが参加した中で開かれた献花式で、「長津湖の勇士たちの驚くべき闘魂のおかげで、10万人以上の避難民を救出した興南撤収作戦も成功することができた。その時、メレディス・ビクトリー号に乗り込んだ避難民の中には私の両親もいた」とし、長津湖戦闘と興南撤収作戦にまつわる家族史を紹介しました。

文大統領は、「皆さんの犠牲や献身に対する感謝の気持ちはどんな言葉でも言い表せない。緊迫した瞬間に、多くの避難民たちを北朝鮮から脱出させてくれた米軍の人類愛に深い感動を覚える」として、心から感謝の意を伝えました。

文大統領はさらに、「大韓民国は皆さんと両親の犠牲や献身を記憶している。韓米同盟はそうして戦争の砲火の中で血で結ばれ、両国国民一人ひとりの人生と強くつながっており、『さらに偉大で強い同盟』に発展するだろう」と強調した。ネラー司令官は記念演説で「文大統領の家族は我が海兵、特に、海兵1師団と個人的な縁を持っている。その縁を大切に思ってくれたことに感謝する」と話した。

記念演説直後、近くに山査子を一本植えた文大統領は「韓米同盟はこれからさらに生い茂った木のように成長し、統一された朝鮮半島という大きくて充実した実を結ぶだろう」と話しました。同日の行事は米海兵隊のフェイスブックを通じて生中継されました。中継映像には文大統領の到着と献花、文大統領とネラー司令官の記念演説シーンなどがそのまま流れました。動画は1日で22万人が視聴しました。

文在寅氏は当然のことながら、両親からこの話を受け継いだのでしょう。その際に、当時の北朝鮮の酷さや中国のやり口についても受け継いだと思います。その大統領がやすやすと、北朝鮮に飲み込まれるようなことはしないと考えられます。

興南撤収に関しては、韓国民であれば誰でも知っていることであるし、米人でも知っている人は多いです。これは、2015年度の韓国映画『国際市場であいましょう(Ode to my father)』にも描かれています。

『国際市場で逢いましょう』(こくさいいちばであいましょう、原題:국제시장)は、2014年の韓国映画。家族を守るために、朝鮮戦争やベトナム戦争といった激動の時代を生き抜いた男の生涯を描いた映画。第52回大鐘賞では作品賞を始め10部門を受賞しました。観客動員数は1300万人を突破し、韓国映画の歴代観客動員数2位につけています。


58秒くらいのところに、江南撤退のシーがあります。

「興南撤退」は、朝鮮戦争当時、中共軍の攻勢で戦況が不利になると、咸鏡道(ハムギョンド)北東部戦線で作戦中だった米軍が、興南港で「メロディス・ビクトリー号」に約1万4千人の避難民を乗せて撤退した作戦です。「メロディス・ビクトリー号」は1950年12月23日に興南を経ち、24日に釜山(プサン)を経て25日に巨済島(コジェド)に着いて避難民を降りました。これは「クリスマスの奇跡」とも呼ばれています。この1万4千人の避難民の中に在文寅氏の両親も含まれていたのです。

映画「国際市場であいましょう」から。咸鏡南道興南港で「メロディスビクトリー号」に
積んでいた武器を捨て、代わりに約1万4千人の避難民を乗せて撤退した「興南撤退」のシーン
2015年に、この映画が米国で放映されたときの模様については、以下の記事をご覧になって下さい。
韓米の老兵を泣かせた「国際市場」、「今でもその日を忘れられない」 
文在寅氏は、このような家族史を持ち、息子を米国に娘は日本に留学させるなど家庭は十分に国際的で現実的な感覚を持っているはずです。

文在寅氏は1953年、韓国南部の慶尚南道・巨済島で2男3女の長男として生まれました。両親は北朝鮮の咸鏡南道出身。朝鮮戦争で避難を余儀なくされた一家は巨済へ逃れ、その後、釜山へ転居します。避難民の集まる貧民街で練炭配達などをして生計を立てました。生活は貧しく苦しい日々でしたが、それによって自立心が育てられたと振り返っています。

成績は良く、中学・高校と名門校に進学しましたが、裕福な学友との違いに直面し、友達ができませんでした。図書館に籠って、本ばかり読んでいたといいます。

高校に入ると社会への反抗心が芽生え、酒やタバコにも手を出し、4回停学処分を受けました。このため「文在寅(ムン・ジェイン)」という名前をもじって「問題児(ムンジェア)」のあだ名がつけられました。

慶熙大学時代には学生運動に積極的に参加。3年生だった1975年、朴正煕政権反対デモを主導して逮捕・収監され、大学を除籍されました。

釈放された文氏は強制徴兵され、特殊部隊に配属されます。パラシュート降下訓練、夜間行軍、水中浸透、暴動鎮圧など、多様な訓練を経験しました。過酷な訓練によって同僚が命を落とす場面にも遭遇したといいます。文氏自身、「パラシュート降下訓練で空中を飛ぶのが気分爽快だった」と話しています。

特殊部隊に所属していたときの文在寅氏
北朝鮮に融和的と指摘される文氏ですが、北朝鮮有事の際には「前線で戦う」と明言。特殊部隊での経験を誇りにしています。

妻との出会いは大学でした。学園祭のパートナーとして過ごし、「好感をもった」。しかし、その後はデートをしたことがなかったといいます。

そんな彼女が突然、拘置所まで文氏の面会に来たのです。文氏は驚きました。彼女が持参したのは、文氏の出身校が高校野球で優勝したというスポーツ新聞の記事。文氏の野球好きを覚えていたのです。

「刑務所で母校の高校野球優勝の記事を読むなんて」

文氏はおかしくなりましたが、そんな彼女をかわいい、と思ったといいます。

軍隊、司法修習所、刑務所と、文氏の行く先々に彼女が面会に訪れる。2人は長い「面会の歴史」を経て、出会いから7年後、結婚したのです。

除隊後は猛勉強の末に司法試験に合格。2次試験の合格通知は再び収監された刑務所の中で受け取りました。判事を志望しましたが、学生運動の経歴があるため叶わず、釜山で弁護士生活を始めます。

この時、のちに大統領になる盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏と運命的な出会いを果たします。共に労働運動の弁護に取り組み、盧氏が大統領に当選した後は、政権発足から終了までを共にしました。激務のため歯が10本抜けたとのエピソードがあるほどです。

盧武鉉氏の死後は政界とは一線を画していましたが、政権交代の声に押されて復帰。国会議員当選を経て、2012年の大統領選に出馬し、朴槿恵氏に僅差で敗れました。

「大統領に就任したらアメリカより先に北朝鮮に行く」
「核の完全廃棄と朝鮮半島の非核化を議論できるなら、金正恩と首脳会談する」
選挙戦の初期にはこう述べていた文氏。

その後は「早いうちにアメリカを訪問して米韓同盟を再確認する」「金正恩が最も恐れる大統領になる」と方針転換しました。

文在寅氏は、本心では北朝鮮に韓国を飲み込ませようなどという考えは毛頭ないものの、大統領選に勝利するため、親北派と反日を利用したのだと思います。

というより、これは朝鮮の歴史をみているとよくわかるのですが、とにかく外国を自分の国の内乱などに利用すという、朝鮮のお家芸の発露なのではないかと思います。

しかし、ミイラ取りがミイラになるという格言もあります。大統領になるために、親北派を利用したものの、北の考えに感化されしまうということもありえます。あるいは、自らは本当は親北派ではないものの、親北派を味方につけないと政権を維持できない状況に追い込まれ、結局行動は親北派のようになるということも考えらます。

あるいは、大統領選で親北派を利用したことがアダとなり、親北派から反発をくらい、朴槿恵のように短期で政権の座を追われるということも十分に考えられます。

文在寅政権が長続きすれば、北の工作員の扇動になどにより、親北に振れた韓国民の感情も徐々に落ち着き、まともになる可能性も大きいと思います。何しろ、北や中国の脅威は歴史は長く韓国民の記憶に刻まれているはずです。

いずれにせよ、いまのところは結論はいえませんが、私としては文在寅大統領が短期で失脚したときが、北に飲み込まれる危機がやってくるのではないかと思います。そうして、その確率は高いです。なぜなら、このブログにも以前から述べているように、文在寅氏の経済対策は全く意味がなく、韓国経済はこれからさらに苦しくなるだけだからです。苦しいどころが、今のままでは大多数が塗炭の苦しみに追いやられることになるはずです。

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2017年6月30日金曜日

日銀の原田泰審議委員はヒトラーを賞賛してはいない。ロイターの記事は誤解を招く―【私の論評】経済史を理解しないと馬鹿になる(゚д゚)!

日銀の原田泰審議委員はヒトラーを賞賛してはいない。ロイターの記事は誤解を招く

田中秀臣


上武大学教授田中秀臣氏

非常に驚く記事を読んだ。ニューズウィーク日本版ウェブに6月28日に掲載された、ロイターの伊藤純夫(編集 田巻一彦)による"日銀の原田審議委員「ヒトラーが正しい財政・金融政策をして悲劇起きた」" と題された記事だ。

 深刻な誤解を世界の読者に与えた

この題名しか読まない人は、あたかも原田泰審議委員が、ヒトラーの政策を「正しい」ものとして肯定したかのような印象をうけとったのではないか。実際にこの記事へのコメントには、少数ながらそのような反応がある。さらに深刻なのはこの記事の海外版の見出しであり、Bank of Japan policymaker Yutaka Harada praises Hitler's economic policiesとある。つまり「原田泰日銀政策委員がヒトラーの経済政策を賞賛した」というものとして掲示されている。これは深刻な誤解を世界の読者に与えたであろう。

もし原田審議委員のヒトラーに対する評価を肯定的なものと解釈するならば、それは解釈する側の無理解か、または悪意による歪曲か、そのいずれかでしかない。原田審議委員は従前から、ヒトラーの悪行の数々を痛烈に批判し、ヒトラー政権のような存在が二度とこの世に現れないために、いままでもいくつかの著作・書籍を書いてきた。それらは公知のものであり、ロイターの記者らも簡単に入手でき、原田審議委員の発言の趣旨を確認できたはずだ。それをしないのであれば、私見では深刻な問題であろう。また少なくともヒトラー政権を肯定的にみなしていると誤解を与えないような記事内容、また見出しの工夫が必要だったろう。

 原田審議委員の趣旨は

以下では、原田泰審議委員のヒトラー政権の評価、そしてヒトラーの経済政策の問題性を、彼の著作『反資本主義の亡霊』(日経プレミアムシリーズ)を参照に解説したい。なるべく原田審議委員の趣旨を伝えたいので、文章も彼のものをできるだけ拝借したことを、著者と読者の方々にお断りしたい。

原田泰審議委員 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
「第一次世界大戦後の混乱の中で、ドイツは物価水準が一兆倍にもなるハイパーインフレ―ションに襲われた。その混乱の中でナチスが権力を握り、ヨーロッパを戦乱に陥れ、ユダヤ人の大虐殺を行った。世界を征服しようというナチスの勢いを見て、日本の軍部は日独同盟を結び、アジア征服に乗り出した。その結果が、大惨事である。だから、インフレを起こしてはいけないと議論されることが多い」(同書。187頁)。

このハイパーインフレ(高いインフレ)がドイツ社会を破壊し、それがナチスの台頭を招いたというのは誤解であると、原田審議委員は説いている。ハイパーインフレや高いインフレではなく、デフレの蔓延こそがナチスの台頭を招き、後の大惨事につながったというのが原田審議委員の主張だ。

ドイツのハイパー・インフレ時に紙くずになった札束をゴミ箱に捨てる人たち
そもそもドイツでハイパーインフレが起きたのは1910年代の末であり、ナチスが政権を奪取したのは1934年であり、ハイパーインフレから15年も時間が経過している。1920年代はワイマール共和国の時代であり、なんとか平和が維持されていた、それが崩れたのは1930年代の大恐慌というデフレと失業の時代ゆえであった、というのが原田審議委員の着眼点だ。インフレではなく、デフレこそナチス台頭の経済的原因であったということだ。

「ヒトラーは、インフレの中では(ミュンヘン一揆の失敗など)権力が握れず、デフレになって初めて権力を得たのである。この単純な事実から、インフレもデフレも悪いが、デフレの方がより悪いと結論を下すのが当然と思うのだが、なぜ逆の結論になって、その結論を多くの人が信じているのだろうか」(カッコ内は田中の補遺、同書188頁)。

1930年代のドイツでは、デフレの進行と30%を超える極度に高い失業率が出現した。ナチスはこの経済的混乱を利用して、「人々の敵愾心をあおり、政権を奪ったのである」(同書、189頁)。

「政権を奪った後に何をしたか。金融緩和政策でデフレから脱却し、景気を回復させ、アウトバーンという高速道路を建設し、フォルクスワーゲン(国民車)を造るという産業政策も行った。(略)すべては大成功だった。国民はこの大成功を見て、ナチスの対外政策、ヨーロッパ征服も正しいのではないかと思ってしまった。日本の軍部もそう思ったのである」(同書、189頁)。

 ナチスの経済政策の「大成功」をほめたたえているのではない

だが、これはナチスの経済政策の「大成功」をほめたたえているのではない。経済政策は「大成功」したが、それによってもたらされたのは、ナチス政権による「人種差別や世界征服」などの「大惨事」であった。ナチスの経済政策の「大成功」という皮相な評価にドイツ国民や日本の軍部が目を奪われないで済んだ可能性の方に、原田審議委員は注目すべきだと説いているのだ。ここを間違えてはいけない。ロイターの記事のように間違えてはいけないのだ。

「そもそも、ヒトラーの前の政権が、金融を緩和し、デフレから脱却すればよかっただけの話である。そうすれば、失業率は低下し、人々は理性を取り戻し、人種差別や世界征服を呼号するナチスに投票などしなかっただろう。ヒトラーは政権に就くことができず、第二次世界大戦は起こらなかった」(同書、189-190頁)。

この一文を読めば、原田審議委員の趣旨は明瞭であろう。彼ほど世界の人々の自由を愛しその可能性を推し進めようというエコノミストは、ほとんど私のまわりにいなかった。その発言の一部だけを切り取り、自由と人権とそして人々の生命を奪ったヒトラーの政策、そして経済政策を「賞賛」することほど、原田の趣旨に遠いものはない。

【私の論評】経済史を理解しないと馬鹿になる(゚д゚)!

ナチスを台頭させたのは、ハイパーインフレであると思い込んでいる人は結構多いようです。しかし、これは真実ではありません。ナチスを台頭させたのは、デフレです。

この歴史的事実を把握している人は、原田審議員の主張を間違えて受け取ることはなかったでしょう。

原田氏は、誤解を招いたことに関しては、謝罪をしています。以下にそれに関する記事のリンクを掲載します。
ヒトラーの政策を正当化する意図ない=原田日銀委員が謝罪


日銀の原田泰審議委員は30日、都内で29日に行った講演で、ナチス・ドイツ総統だったヒトラーが「正しい財政・金融政策をしてしまったことで、かえって世界が悪くなった」などと発言したことについて、誤解を招く表現があったことを心よりお詫び申し上げたいと謝罪した。ロイターに対してコメントした。 
原田委員は一連の発言について「早期に適切な政策運営を行うことの重要性を述べたものであり、ヒトラーの政策を正当化する意図は全くない」と述べ、「実際、発言の中において、ヒトラーの政策が悲劇をもたらしたことは明確に指摘している」とした。 
ただ、「一部に誤解を招くような表現があったことについては、心よりお詫び申し上げたい」と謝罪した。 
原田委員の発言について日銀では「日本銀行としても、審議委員の発言に誤解を招くような表現があったことについては遺憾に思っており、こうしたことがないよう、今後とも注意してまいりたい」とコメントした。 
原田委員は29日の講演で、1929年の世界大恐慌後の欧米の財政・金融政策に言及し、「ケインズは財政・金融両面の政策が必要と言った。1930年代からそう述べていたが、景気刺激策が実際、取られたのは遅かった」と述べた。 
さらに欧米各国を比較すると、英国は相対的に早めに財政・金融措置を講じたが、ドイツ、米国は遅く、フランスは最も遅くなったと分析。 
そのうえで「ヒトラーが正しい財政・金融政策をやらなければ、一時的に政権を取ったかもしれないが、国民はヒトラーの言うことをそれ以上、聞かなかっただろう。彼が正しい財政・金融政策をしてしまったことによって、なおさら悲劇が起きた。ヒトラーより前の人が、正しい政策を取るべきだった」と語った。 
合わせてナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺と第2次世界大戦によって、数千万人の人々が死んだとも述べた。
この謝罪の内容からみて、ブログ冒頭の田中秀臣氏の論評は筋の通ったものであることがわかります。

さて、ドイツのハイパーインフレに関してさらに付け加えさせていただきます。

1922年から1923年に起きたドイツのハイパーインフレ Hyper Inflation は、西側諸国の教科書では「政府の通貨システム支配の失敗による典型的な人災」として紹介されています。

銀行家が通貨発行権を支配するということは「責任を課せられ」、「安全を保障する」ことです。しかしその実、銀行家と彼らが支配する中央銀行は、ドイツにハイパーインフレを起こした黒幕でした。

ドイツ帝国銀行 Reichsbank(1876~1948年)は、1876年に創設された民間所有のドイツの中央銀行ではありましたが、ドイツ皇帝 Deutscher Kaiser と時の政府の意向を大きく受けていました。帝国銀行の総裁と理事は全て政府の要職が担当し、皇帝が直接に任命する終身制でした。中央銀行の収益は民間株主と政府に配当されましたが、株主は中央銀行の政策決定権を有していませんでした。

これはイングランド銀行 Bank of England(1694年~)や、フランス銀行 Banque de France(1800年~)、アメリカ連邦準備銀行と明らかに異なり、ドイツ特有の中央銀行制度であり、通貨発行権は最高統治者のドイツ皇帝にしっかりと握られていました。ドイツ帝国銀行創設後のマルク Deutsche Mark は非常に安定し、ドイツの経済成長を大いに促進し、金融制度の立ち遅れた国家が先進国を追い越す成功事例となりました。

ドイツ敗戦後の1918年から1922年の間も、マルクの購買力は依然として堅調であり、インフレは英米仏などの戦勝国と比べてもあまり差はありませんでした。焦土と化した敗戦国でありながら、ドイツ帝国銀行の通貨政策がこれだけのレベル Level〔※水準〕で維持され、効果を上げたことは称賛されるべきことでした。

敗戦後、戦勝国はドイツの中央銀行に対するドイツ政府の支配権を完全に剥奪しました。1922年5月26日、ドイツ帝国銀行の「独立性」を確保する法律が制定され、中央銀行はドイツ政府の支配から抜け出し、政府の通貨政策支配権も完全に廃止されました。ドイツの通貨発行権は、ウォーバーグ Warburg Family などの国際銀行家を含む個人銀行家に移譲されたのです。

そうして、ドイツのハイパーインフレの直接のきっかけは、第一次大戦後のヴェルサイユ講話条約により、戦勝国がドイツに支払い不可能な天文学的な数字の賠償金を課したことによります。ドイツ政府はそこで賠償金の資金を調達するため、当時のドイツ帝国銀行に国債を引き受けさせた結果、ドイツ帝国銀行は、大量の紙幣を新規発行したため通貨価値が急激に下がりハイパーインフレが起こったのです。

ウィリアム・オルペン画『1919年6月28日、ベルサイユ宮殿、鏡の間での講和条約の調印』
そうして、それを可能にしたのが、当時のドイツ帝国銀行の独立性です。先にも掲載したように、ドイツ帝国銀行は、ドイツ政府の支配から抜け出し、政府の通貨政策支配権も完全に廃止されました。これは、ドイツ帝国の金融政策を政府はなく、ドイツ帝国銀行が決めることができるということです。

これが、ハイパーインフレを招いた根本にあります。ドイツ帝国銀行としては、天文学的な国債を引き受けるためには、ドイツ帝国の金融政策などおかまいなしで、大量のマルクを刷り増すしか方法がなかったのでしょう。

このドイツのハイパーインフレの惨禍の反省にたち、現在世界各国の中央銀行は、国の金融政策を自ら決定することはなくなりました。国の金融政策の目標はあくまで、政府が定め、中央銀行は、その目標に従い、専門家的立場からその目標を達成するための手段を自由に選べるというのが、今日世界中の中央銀行の独立性のスタンダードとなっています。

しかし、現在そうではない国があります。そうです。それは、日本です。日本もかつては、日本国の金融政策の目標を政府が定めることができたのですが、1997年に日銀法が改悪され、日本国の金融政策は日銀が定めることになったのです。

これでは、あたかも日銀が、1922年当時のドイツ帝国銀行のようになってしまったようです。そうして、これはドイツの惨禍とは全く異なる形で、惨禍をもたらしました。そうです。何が何でも金融引締めということで、デフレをもたらし、その結果として超円高となり日本経済が長い間デフレ・スパイラルの泥沼にしずみこんでしまいました。

しかし、2013年より金融緩和を標榜する安倍政権が登場し、日銀の総裁も白川総裁から、黒田総裁に変わり、金融緩和を実施するようになりました。その後、量的緩和が十分ではない部分もありますが、緩和策が実行され続け、雇用状況は劇的に改善されました。

しかし、日銀法は改悪されたままであり、日本国の金融政策の目標は日銀の審議会で定められています。そうして、現状ではこの新議員の多数派、金融緩和派で占められているので、不十分とはいながら、緩和政策が続けられています。

しかし、日本国の金融政策は日銀の審議会で決定されるわけですから、今後緩和に反対する審議員が多数派になれば、日本政府の意図とは関係なしに、引き締めに転じてしまうということも十分にあり得るのです。

こんな馬鹿なことがつづけられているのが、日本国の金融なのです。しかし、上記のようにドイツ帝国銀行の「独立性」がハイパーインフレの原因の一つであったことが多くの人々に認知されれば、現行の日銀法は改正して、再度日本の金融政策の目標は政府が定めるようにすべきであるという認識が広まると思います。

それと、経済史的な観点からもう一つ付け加えると、世界金融恐慌の原因は、1990年代の研究でデフレであったことがわかっています。

そうして、この世界恐慌から一番最初に抜け出したのは、実はドイツではないのです。それは、日本です。当時の高橋是清大蔵大臣が、今日でいうところの、リフレ政策すなわち、金融緩和策、積極財政を実行していち早く脱却しています。

これについては、このブログでも以前何度か掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ポール・クルーグマンの新著『さっさと不況を終わらせろ』−【私の論評】まったくその通り!!

 

詳細は、この記事をご覧下さい。この記事には、「宝永の改鋳」という江戸時代の、金融緩和策と、高橋是清の政策についても掲載しています。

いずれにせよ、このような経済史を知れば、どういうタイミングで、金融緩和や積極財政を実施すれば良いのか理解できるはずです。

しかし、経済史を知らなければ、原田泰審議委員の講演はヒトラーを賞賛したものと思い込んだり、デフレであるにもかかわらず、金融引締めをしたり、増税などの緊縮財政を正しいと思い込んでしまうような、頓珍漢なことをしても何もおかしいとは思わないということにもなりかねません。

現在のメディア関係者や、政治家などこのような知見を欠いている人が多いです。このようなひとたちが、8%増税を強力に推進したり、景気や雇用が悪い時に、金融引締めを推進するという馬鹿なことをしてしまうのです。

心ある人、特に若い人は、是非経済史を振り返っていただきたいです。そうすることにより、日本国の経済に関して、正しい認識を持てるようになります。

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2017年6月29日木曜日

都議選の結果で国政への影響は… 民進は「虎の子」の都議を小池氏に奪われるだけかも―【私の論評】積極財政に無関心の小池知事は国政に影響を与えられない(゚д゚)!


都議選の応援をする小池知事

 7月2日に投開票される東京都議選では、何が争点となっているのだろうか。

 民進党や共産党では、トップである代表や委員長が加計学園問題や改憲など、国政問題を掲げている。一方、自民党の幹部や公明党の代表は、豊洲市場への移転問題など都政を訴えている。都議選なのに国政問題を訴えるのは場違いに思えるが、テレビに露出するだけでいいという考え方なのだろうか。

 事前の世論調査をみると、選挙戦では、都民ファーストの会と自民が熾烈な議席獲得競争を続けており、民進、共産は厳しい戦いのようだ。

 国政では、安倍晋三政権が支持率をやや失っており、地方の都議選とはいえ、本来なら民進や共産に有利に働いてもおかしくない。しかし、その批判票は今のところ都民ファーストが受け皿になっている。

 一方で、豊洲移転をめぐる迷走で、都民ファーストへ流れた批判票も一部は自民党に回帰している可能性もある。両党の競争の結果として、民進、共産が切り崩される展開となっているもようだ。それが、冒頭のように民進、共産が国政の課題を訴える背景になっている。

 都議選の現場では都民ファーストと自民は競っている。都民ファーストを率いる小池百合子知事が最近表明した「豊洲移転・築地再開発」の評判は良くない。豊洲と築地の両方にいい顔をしただけと見る人は多い。

 筆者としても、本コラムで書いたように、豊洲への移転は、サンクコスト(埋没費用)論と、豊洲・築地の科学的なリスク評価のみで合理的な帰着である。しかし、「食のテーマパーク」としての築地再開発についてはさっぱりわからない。

 無理してテーマパークのような施設を作ることは可能だが、問題はその後どのように黒字経営できるかだ。思いつきレベルでどこまで収支計算ができるか分からないし、そもそも都庁が口を出さずに、民間に売却して再開発してもらった方が政策の「打率」もいいだろう。そうした不合理性が都民に浸透すれば、都民ファーストの戦いも苦しくなる。

 逆に、今の小池ブームの勢いが続けば、自民が苦戦するだろう。しかし、これが国政に影響するとは必ずしも言えないのではないか。民進、共産が大躍進しない限りは、国政での自公連立は揺るがないからだ。というのは、都民ファーストが勝てば公明の勝利、自民が勝てば自民の勝利なので、かなり乱暴な言い方ではあるが、国政における自公政権としては、どっちが勝ってもいいともいえる。

 都民ファーストが勝利しても、2020年の東京五輪を控えて、小池都知事が国政で自公政権と対立するとは思えず、むしろ協力関係になるだろう。民進にとっては「虎の子」の都議を小池知事に奪われるだけになる恐れもあるのだ。

 いずれにしても民進や共産が期待する国政の混乱にはなりそうもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】積極財政に無関心の小池知事は国政に影響を与えられない(゚д゚)!

高橋洋一氏の読みは正しいと思います。都民ファーストの会が大勝利したとしても、国政にはあまり影響はないでしょう。

国政に関して、なぜ安倍政権が一強になるかといえば、それは経済対策に関して、野党や自民党内の他の幹部クラスと比較して、まともであるということがいえます。

特に金融政策は未だ不十分とはいいながら、安倍政権が政権の座についてからは、緩和に転じたため、現状では若者雇用を筆頭にかなり雇用環境が良くなっています。

一方、マスコミ全部と与野党の政治家が8%増税に大賛成し、しかもこの増税は日本経済に与える影響は軽微としたため、やむなく増税に踏み切ったところ、軽微であるどころか、甚大な悪影響を与え、個人消費が伸び悩みGDPの伸びはいまいちというところで、今のままではまた何かがあればデフレに戻りかねない状況です。

実際に、8%増税の悪影響で、税収も減っています。2016年度の国の一般会計税収が55兆5千億円前後にとどまり、15年度の56兆2854億円を下回ったことが28日分かりました。前年度割れはリーマン・ショックの影響で税収が急減した09年度以来7年ぶりです。


政府は16年度税収に関し、当初予算の段階では15年度を上回り57兆6040億円に達すると見込んだが、昨年末の補正予算で1兆7440億円下方修正し、55兆8600億円に減少すると見積もり直しました。

この税収減少については、マスコミは8%増税の悪影響であることを報道しませんが、これは以前にもこのブログにも掲載したように、増税による個人消費の減退は明らかで、これが税収の減少につながつていることは明らかです。

日経新聞は、昨秋までの円高で企業収益が伸び悩み、法人税収が低迷したことが響いたなどとしていますが、これよりも個人消費の落ち込みが大きかったことは明らかです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!
 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では8%増税の悪影響について掲載しました。

この記事から、一部分を以下に引用します。
日本国民は、長期化するデフレの中で、ながらく消費支出を抑えてきたが、2012年終盤以降、現在の安倍政権発足と「アベノミクス」によるデフレ脱却の機運の高まりの中で、消費性向は急上昇した。 
2014年4月の消費税率引き上げ直後も、その余勢(もしくは、長年のデフレによる「倹約疲れ」も影響してか)からか、消費性向はすぐには低下しなかったが、2014年の夏場以降、急速に低下し始めた。 
この間、景気回復のモメンタムは失われたが、雇用環境の改善は続いたため、全体としての賃金(統計的には雇用者報酬)の増加は続いた。だが、賃金の回復局面にもかかわらず、消費性向の低下(及び、貯蓄率の上昇)はむしろ、加速度的に進行した。
そして、消費性向の低下の推移をみると、特に加速度的に低下が進行したのは2016年半ば以降であった。 
思い起こすと、ちょうど2016年6月に、安倍首相は、2017年4月に予定していた消費税率再引き上げの先送りを発表した。この決定自体は、当時の経済状況を考えると「英断」であったことは間違いない。ただ、問題は、次の消費税率再引き上げを2019年10月に単に「先送り」しただけであったという点だと考える。 
多くの国民は、「2017年からの消費税率引き上げはなくなったが、いずれかの時点(この場合、2019年10月)で消費税率の引き上げは実現し、場合によっては、それだけでは終わらず、将来的にはさらなる増税も実施されるに違いない」ことを想定して、「節約志向」を変えなかったと推測される。そして、この流れは現在も継続中ということなのだろう。
さて、長々と日本経済の現状について掲載してきましたが、結局何が言いたかったかといえば、確かに8%増税には失敗しましたが、金融緩和のほうはそれなりに効果がでてきて、雇用状況はかなり良くなっているということです。これが、安倍政権一強の最大の要因です。

さて、実はこの事実には、都民ファーストの会が将来国政において大躍進できる機会がったかもしれません。

そうです。東京都が日本全国に先駆けて、積極財政に踏み出せば、東京都のGDPは全国に先駆けて上昇し、金融緩和+積極財政で、経済が上向き東京都はデフレから完全に脱却して、物価も上昇、実質賃金もはっきりと上昇傾向になり、この業績をもって小池知事が国政に積極財政を標榜して再び参画すれば、都民ファーストの会は国政レベルで相当躍進したかもしれません。

さらに、積極財政を標榜し、無論さらなる量的緩和も実施することを標榜し、国政に打ってでれば、国政でキャスティング・ボードを握り、それこそ近い将来に初の女性総理大臣登場ということにもなったかもしれません。

しかし、小池知事はこのせっかくのチャンスを棒に振ったかもしれません。なぜなら、小池知事はどうも積極財施などはなから念頭にないようなのです。

たとえば、今年の2月28日、東京都議会定例会の本会議が開かれ、各会派による代表質問が行われたときに、最初に質問に立った最大会派自民党の高木啓幹事長(51)は、いきなり「個人都民税の10%削減を提案したい」と切り出したのですが、小池氏はこれを一蹴してしまったからです。

高木氏は小池百合子知事(64)が昨年、知事給与を半減させ、議会も議員報酬を2割削減することを可決したことを指摘した上で、「来年度予算案で720億円の歳出削減しているので、成果を直接都民に還元することは、都民福祉の向上に結びつく」と理由を説明。減税規模は約880億円に上るとの見通しを示ししました。

この減税提案は他会派から「知らなかった」との声が上がる完全な“隠し球”。これに対して答弁に立った小池氏は、この提案を一蹴したのです。
 「高額所得者ほど減税額大きくなる。税の公平性の観点から問題がある。都市と地方の税収格差が問題視される中で都富裕論から財政調整の動きに拍車をかけることになりかねない。慎重に戦略的な対応をすべきだ」
代表質問を終え小池知事の前を通って自席に戻る自民高木啓議員
加えて2017年度予算案で無駄なコストを削って捻出したとする720億円は、「待機児童など必要な政策に思い切って投じ、都民に還元している」とすでに使い道が決まっているとかわされました。

質問終了後、記者団に対して高木氏は「議会は自らの待遇を引き下げた。その成果が自己満足で終わってはいけない」としたうえで、「財源の問題も含め唐突なことではなく、背景があってこの問題提起した。確実にできる目標」と強調しました。

この高木議員の「個人都民税の10%削減を提案」に関しては、ひょっとすると本人は積極財政などという考えはなかったかもしれません。単に、節約できたから、それを都民に還元すべきという程度の主張なのかもしれません。

しかし、本人が意図しようとしまいと、積極財政の提案であることにはかわりありません。もし、小池氏が国政レベルでの積極財政を推進すべきであるとの考えを持っていれば、ここまではっきりと否定することはなかったと思います。

積極財政といえば、国政でなくとも、都政でもできることはあるのです。高木議員の提案はその一つにすぎません。

実は東京都には、他にもデフレ的経済と闘う手段があります。これは、経済学者の田中秀臣氏が提案していたのですが、東京都で地域通貨(アービング・フィッシャー流の日付け貨幣というもの)を発行するという方法もあります。

この地域通貨と、現在行われてる地域通貨と決定的に違うのは、これを取得したものは一定期限に利用しないと事実上のペナルティ(追加の増税)を受けることにあります。最寄りの地方自治体の窓口に行き、この「日付け貨幣」を受け取った者(希望者に限定する)は、一定の期間に消費してしまわないと、むしろ追加の税負担を要求されるのです。

そのためこの追加の税負担を避ける目的で、「日付け貨幣」を得たものは積極的に消費する、という政策の枠組みです。これに類した政策の枠組みは多数あります。要はやる気の問題なのです。

東京都の経済が活性化すれば、都の財政状況も改善し、必要な社会保障などの財源として貢献することでしょう。だが、いまの東京都の現状では、むしろ低所得者層の状況を悪化させている消費増税の負担で、社会保障を充実しようという倒錯した形になってしまっている。そしてそれは東京都だけではなく、日本全体の縮図でもあるのです。

だからこそ、東京都が何らかの手段で、積極財政に転じて、東京都が他に先んじて、全国に先駆けてデフレから完全脱却し経済を良くすれば、都民フアーストの会は国政でも勢いを増し、その結果として、小池百合子氏が国政でキャスティング・ボードを握るということもあり得たかもしれないのです。

そうして、もしそうなれば、豊洲への移転問題など、さして問題にされなくなったかもしれません。そうして、もし小池氏がこの道をすすむというなら、私としては大歓迎です。であれば、私は都民ファーストの会を応援し、日本初の女性首相の誕生を待望したかもしれません。

さて、小池百合子氏が積極財政にあまり関心がないことを示す客観的事実はこれだけではありません。

これは、2008年 にまだ自民党に属していた、小池百合子氏が、総裁選に出馬したときの公約をみると良くわかります。

当時の公約について書かれている記事を見つけました。そのリンクを以下に掲載します。
自民党総裁選:小池百合子氏の公約
9月10日、小池百合子元防衛相は自民党総裁選公約で日本が
生かしきれていない潜在力を十分発揮できるよう
戦略的に取り組むことが必要との認識を示した

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この公約から経済政策のみを以下に拾ってみます。

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 4.「経済力」

(1)財政政策は「財政に家計の常識を入れる」ことを基本にする。

  ・「借金依存の贅沢はしません」=赤字国債増発による景気対策は打たない。

  ・「資金繰り計画を変えません」=2011年度までの財政再建目標は堅持する。

  ・「ヘソクリを今こそつかいます」=構造改革の果実や特別会計の余剰金等を使う。

(2)当面の景気対策について

  ・必要な財源は特別会計の剰余金(いわゆる霞ヶ関埋蔵金)として、財政出動の部分は「経済力」「環境力」「女性力」を強化するという観点から再検討する。

(3)今後の経済財政運営は以下のように考える。

  ・マクロ経済政策運営としては、変動相場制のもとでの財政出動には効果がないとの認識に基づき、金融政策を中心として、必要に応じて減税政策を行い、個別業界へのばらまき財政支出は行わないことを基本とする。

  ・日本がもっている「もったいない力」を生かしきれば2.5─3%以上の経済成長をする実力を持っている。

  ・名目成長率4%を巡航速度とする先進国で一般的な経済の姿を実現する。その結果10年以内に、国民一人当たりGDPを18位から5位に引き上げる。

  ・2011年度の基礎的財政収支黒字化目標は堅持し、増税の前に、無駄の削減、公務員給与の更なる削減、政府資産売却などを徹底的に行う。

(4)借金依存体質に「リバウンド」させてはいけない。

(5)税制改革については以下のように考える。

  ・現在の石油関連税制を総合的に見直して、CO2排出量に応じた一般財源としての「炭素税」に切り替える。

  ・国税は、国税の原則である「応能税、人税、累進的課税」に基づくもので構成すべき。消費税は道州制導入の際に、地方の基幹的税として州政府に税源移譲すべき。

  ・相続税は、高齢者介護の社会化が進んでいること、高齢者の資産格差が拡大しており、この格差を次世代が継承することは望ましくないとの社会的公正の観点から、広く薄い資産課税を適正に行うものとして、福祉財源に充当する。

  ・経済活性化の観点からは、法人税減税の引き下げ、ファンドマネージャー課税の撤廃等の税制の国際標準化を行うべき。法人税率については、地域振興のための法人税減税特区を実現する。

  ・中小企業向けの欠損金繰り戻し還付制度を確立する。黒字から赤字転落した中小企業の納付済み法人税を3年前までさかのぼって還付し、中小企業税制の国際標準化により競争力を高める。

(6)海外の豊かさを日本に取り込む。

  ・羽田空港を24時間化するとともに全国主要都市の国際空港機能を強化して、日本をアジアのヒト・モノ・カネの中心とする。

  ・2013年の農林水産物輸出額1兆円の政府目標を順守する。

  ・国民の豊かさの定義を拡充するため、GDPからGNI(GDP+海外からの純所得)を重視すべき。

  ・英語教育を徹底する。とりわけ公教育における小学校英語教育を拡充する。

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なにやら、頓珍漢な内容です。特に、"財政政策は「財政に家計の常識を入れる」ことを基本にする"というのは、どういうことなのでしょうか。家計のように、とにかく借金を減らすというプライマリーバランス至上主義であるとしかうけとりようがありません。

マクロ経済政策運営としては、"変動相場制のもとでの財政出動には効果がないとの認識に基づき、金融政策を中心として、必要に応じて減税政策を行い"としてはいるのですが、ではこれと財政政策とはどう折り合いをつけようというのか、理解できません。

しかし、財政政策を筆頭にあげているので、やはり、財政政策を優位におき、マクロ経済政策による景気変動対応型の金融緩和、積極財政はあくまでも従という取扱のようです。

やはり、安倍総理が後にあげた、三本の矢である、金融政策、財政政策、成長戦略(成長戦略はとってつけたようなもので不要だったと私は思うが)とは随分異なるものです。

やはり、小池知事の頭の中は、積極財政は従という扱いであるとしか思えません。

これでは、その他大勢の国会議員と大同小異で、安倍政権に対して優位性を保ったり、キャスティングボードを握ることは不可能です。2008年から時もたっているので、小池百合子氏も考えかを変えたかもしれないと思う人もいるかもしれませんが、この時点で財政優先の考えを持っている議員でその後考えを変えた人は与党にも野党にも存在しません。小池知事だけが、例外であるとは考えにくいです。

そうなると、豊洲移転への不手際や、築地市場の失敗も目に見えるてくるでしょうし、都民ファーストの会が国政で大きな影響を与える機会も訪れることはないでしょう。今回の都議会選挙では勝利するかもしれませんが、その後は線香花火のような状況になり、少数政党として、いずれ消えていくか、他の党に吸収されて終わりということになると思います。

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