2018年3月14日水曜日

【日本の選択】日本の民主主義はここまで堕落してしまったのかと呆然… 野党に日本のかじ取りを任せることも不可能―【私の論評】稚拙な全能感で腐敗・堕落した財務省は解体するしかない(゚д゚)!

【日本の選択】日本の民主主義はここまで堕落してしまったのかと呆然… 野党に日本のかじ取りを任せることも不可能

「最強官庁」は腐敗・堕落した

 青天の霹靂(へきれき)というべき事態だ。朝日新聞の報道が契機となって、森友学園に関する公文書が財務省の指示によって書き換えられていたことが分かった。私は当初、このような事態は考えられないと思っていたので、誤解に基づく報道ではないかと想像していた。

 官僚が公的文書を偽造するなどということは、民主主義の根幹に関わる問題であり、日本の民主主義がそこまで腐敗しているとは想像できなかった。

 実際に書き換える前後の文書を眺めると、財務省による姑息(こそく)で悪質な文書改竄(かいざん)であることは明らかだ。安倍晋三首相をはじめとする政治家の名前、そして、「安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した」との記述も削除されている。わが国の民主主義は、ここまで堕落してしまったのかと、呆然(ぼうぜん)としてしまった。

 政治を成り立たせるのは、為政者と国民の信頼関係だ。

 『論語』に「信なくば立たず」との言葉があることは有名だが、これは信用が大切だといった程度の言葉ではない。孔子の悲壮な覚悟が伝わってくる言葉だ。

 弟子の子貢(しこう)が孔子に「政治の本質」を問うた。その際、孔子は「兵」(安全保障)、そして、「食」(経済)と同時に、民衆からの「信」を挙げた。子貢が、その中で1つを捨てるとしたら、と問うと、孔子は「兵」を捨てるべきと答えた。さらに進んで、もう1つ捨ててしまうとしたら何かを問うと、孔子は「食」を捨て去るべきと答える。

 孔子が安全保障、経済を軽んじていたわけではない。それらが重要であることは熟知していた。憲法9条が存在するから日本は平和だなどという、空疎な平和主義者であったわけではない。「兵」よりも「食」よりも「信」が肝要と説いたのは、政治の本質が国民からの「信」にあることを訴えたかったからであろう。

 今回の財務省の姑息な文書の書き換えによって、政治に対する国民からの信が失われてしまった。しかも、絶望すべきなのは、このような事態に至ってもなお、野党に政権を担えるとは到底思えないことだ。通常、これほど国民からの信用を失う事態に至れば、野党への期待が高まるはずだ。

 だが、いまだに「平和安全法制を違憲だ」と叫び続ける立憲民主党、「自衛隊は違憲だ」と獅子吼する(=雄弁に語ること)日本共産党、何をしたいのかが、さっぱりわからない希望の党。これらの政党に日本のかじ取りを任せることは不可能だ。

 日本に重要なのは、自民党に代わり得る「健全で現実的なリベラル政党」だ。現実的な安全保障政策を取り、国民が信用できるリベラル政党が何よりも必要だ。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『人種差別から読み解く大東亜戦争』(彩図社)、『「リベラル」という病』(同)など。

【私の論評】稚拙な全能感で腐敗・堕落した財務省は解体するしかない(゚д゚)!

私自身は、このブログで随分前から何度か指摘してきたように財務省の腐敗・堕落については別に驚きもしません。ただし、今回の書き換え事件に関しては、あまりにもやり方が幼稚であり、その稚拙さ加減に驚いてしまいました。

いずれ書き換え露見することがあまりにも目に見えたようなやり方で、なぜこのような書き換えをしてしまったのか、本当に理解に苦しみます。そうして、このような書き換えが、起きてしまった背景を分析すべきだと思います。

現在のマスコミ報道や、政治家の発言等を参照しても、具体的な書き換えの事実や、様々な憶測だけであって、なぜこのような事件が起きてしまったのか、その根本原因に迫るものはありません。ただし、これから徐々に明らかにされていくと思います。

このブログでは、根本原因について迫ってみたいと思います。

現在、与野党の政治家や、マスコミ、学者などが様々なことを語っていますが、私は今回の事件は彼らにも責任があると思っています。いや、むしろ間接的かもしれませんが彼らが、財務省を暴走させてしまったとさえ考えています。

財務省が社会福祉と税の一体改革、消費税増税、復興税等の必要性を主張する際に出鱈目理論を用いたにもかわらず、政治家、マスコミ、財界、主流のエコノミストまで敢えてこれに異論を唱えてこなかったため、財務省に全能感を抱かせたことが今回の事件の背景にあると思います。要するになめられのです。

財務省は省益を追求するために、出鱈目理論で機会さえあれば、増税しようとしてきたのは明々白々です。にもかかわらず、これに対して真っ向からその間違いを指摘してきたのは、ごく一部の人々のみです。

財務省がどんなに奇妙奇天烈、世界水準からすれば明らかに間違いであることを語っても、これに唯々諾々と従い、異を唱えてこなかったどころか、増税すべきと気炎をあげてきたのが、日本の政治家であり、マスコミであり、多くの学者たちや、エコノミストたちです。

NHKも財務省におもねり、国の財政状況の厳しさを訴えているが、これに全く根拠はない

消費税の社会保障目的税化(財源化)に関しては、まず、事実として、目的税化といっても程度問題であるということがいえます。消費税の社会保障支出へのひも付きは、ゴムでできていると考えれば良いです。ただし、財務省は目的税化を強調していました。

また、財務省による、増税に協力しないと社会保障を削る、また軽減税率には「財源」が必要だ、軽減税率なら社会保障を切る-といった恫喝(どうかつ)もしばしば行われました。これでだまされる識者も多数存在しました。

消費税の社会保障目的税化は政策論からみれば、明らかな間違いです。しかし、1990年代までは大蔵省の主張でもあり、99年の「自自公(自民、自由、公明)」連立時に、財務省が当時の小沢一郎自由党党首に話を持ちかけて、消費税を社会保障に使うと予算総則に書いたのです。

ただ、2000年度の税制改正に関する答申(政府税制調査会)の中で、「諸外国においても消費税等を目的税としている例は見当たらない」との記述があります。実際、諸外国では諸費税を目的税になどしていません。

社会保障の観点から見ると、その財源は社会保険方式なので保険料が基本です。税方式は少なく、しかも社会保険料方式から税方式に移行した国などありません。
また、復興税なるものは日本が東日本大震災を契機に導入した以外には、古今東西に例を見ません。なぜ復興を税によって賄うことをしないかといえば、被災の直後に復興税を徴収すれば、被災を受けた世代にのみ復興のための負担が集中することになるからです。

通常は、大災害などがあった場合に、その復興をするためには、償還まで数十年以上である建設国債などを用いるのが、世界の常識です。なぜなら、数十年かけて償還ということになれば、復興の負担が将来の世代も背負うことになり、被災直後の世代のみが多大な負担を背負うことはなくなるからです。復興を税で賄うという考え方は、最低最悪の考え方であり、

これに対して、財務省は、建設国債は将来の世代につけを回すことになるなどという、奇妙奇天烈な論理で、結局復興税を導入してしまいました。しかし、これは、とにかく増税しよう、そうして復興税の次は消費税増税を目指すという意思の現れでした。

しかし、先に述べたように、これらに多くの政治家、マスコミ、識者は反対するどころか、賛同しました。以下に、復興税に賛成した日本の経済学者らのリストを掲載します。

以下http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htmより引用。


 共同提言者・賛同者(2011年6月15日10:00現在)(敬称略)

伊藤 隆敏 (東京大学)
伊藤 元重 (東京大学)
浦田 秀次郎 (早稲田大学)
大竹 文雄 (大阪大学) 
齊藤 誠 (一橋大学)
塩路 悦朗 (一橋大学) コメント
土居 丈朗 (慶応義塾大学)
樋口 美雄 (慶応義塾大学)
深尾 光洋 (慶応義塾大学)
八代 尚宏 (国際基督教大学)
吉川 洋 (東京大学)

(★印のついた方は「第3提言の賛成は留保」)
青木 浩介 (東京大学)
青木 玲子 (一橋大学)★ コメント
赤林 英夫 (慶應義塾大学)
安藤 光代 (慶應義塾大学)
井伊 雅子 (一橋大学)
飯塚 敏晃 (東京大学)
池尾 和人 (慶應義塾大学)
生藤 昌子 (大阪大学) コメント
石川 城太 (一橋大学)
市村 英彦 (東京大学)★ コメント
伊藤 恵子 (専修大学)
岩井 克人 (国際基督教大学)
祝迫 得夫 (一橋大学)
岩壷 健太郎 (神戸大学)
宇南山 卓 (神戸大学)
大来 洋一 (政策研究大学院大学) コメント
大野 泉 (政策研究大学院大学) コメント
大橋 和彦 (一橋大学) コメント
大橋 弘 (東京大学) コメント
岡崎 哲二 (東京大学) コメント
小川 英治 (一橋大学)
小川 一夫 (大阪大学)
小川 直宏 (日本大学)
翁 邦雄 (京都大学)★ コメント
翁 百合 (日本総合研究所)
奥平 寛子 (岡山大学)
奥野 正寛 (流通経済大学)
小塩 隆士 (一橋大学)
小幡 績 (慶應義塾大学)
嘉治 佐保子 (慶應義塾大学) コメント
勝 悦子 (明治大学) コメント
金本 良嗣 (政策研究大学院大学)
川口 大司 (一橋大学) コメント
川﨑 健太郎 (東洋大学) コメント
川西 諭 (上智大学) コメント
北村 行伸 (一橋大学)
木村 福成 (慶應義塾大学)
清田 耕造 (横浜国立大学)
清滝 信宏 (プリンストン大学)
國枝 繁樹 (一橋大学)
久原 正治 (九州大学)
グレーヴァ 香子 (慶應義塾大学) コメント
黒崎 卓 (一橋大学)
黒田 祥子 (早稲田大学)
玄田 有史 (東京大学)
鯉渕 賢 (中央大学)
小林 慶一郎 (一橋大学) コメント
小峰 隆夫 (法政大学)
近藤 春生 (西南学院大学)
西條 辰義 (大阪大学) コメント
櫻川 幸恵 (跡見学園女子大学)
櫻川 昌哉 (慶應義塾大学) コメント
佐々木 百合 (明治学院大学) コメント
佐藤 清隆 (横浜国立大学)
佐藤 泰裕 (大阪大学)
澤田 康幸 (東京大学)
清水 順子 (専修大学) コメント
新海 尚子 (名古屋大学) コメント
鈴村 興太郎 (早稲田大学 / ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ) コメント
清家 篤 (慶應義塾大学)
瀬古 美喜 (慶應義塾大学)
高木 信二 (大阪大学)
高山 憲之 (一橋大学)
武田 史子 (東京大学)
田近 栄治 (一橋大学) コメント
田渕 隆俊 (東京大学)
田村 晶子 (法政大学)
田谷 禎三 (立教大学)
中条 潮 (慶應義塾大学) コメント
筒井 義郎 (大阪大学)
常木 淳 (大阪大学)
釣 雅雄 (岡山大学)
中田 大悟 (経済産業研究所)
中村 洋 (慶應義塾大学) コメント
長倉 大輔 (慶應義塾大学)
畠田 敬 神戸大学
林 文夫 (一橋大学)
原田 喜美枝 (中央大学)
深川 由起子 (早稲田大学) コメント
福田 慎一 (東京大学)★
藤井 眞理子 (東京大学)
藤田 昌久 (経済産業研究所)
星 岳雄 (UCSD)
細田 衛士 (慶應義塾大学)
細野 薫 (学習院大学) コメント
堀 宣昭 (九州大学)
本多 佑三 (関西大学) コメント
本間 正義 (東京大学)
前原 康宏 (一橋大学)
松井 彰彦 (東京大学)★
三浦 功 (九州大学)
三重野 文晴 (神戸大学)
三野 和雄 (京都大学)
森棟 公夫 (椙山女学園)★ コメント
柳川 範之 (東京大学)
藪 友良 (慶應義塾大学)
山上 秀文 (近畿大学) コメント
家森 信善 (名古屋大学)
吉野 直行 (慶應義塾大学)
若杉 隆平 (京都大学)
和田 賢治 (慶應義塾大学)
渡辺 智之 (一橋大学)

以 上

これは、日本の大学の主流派の経済学者といわれる人々です。震災について、やはり復興増税に賛成した経済学者だけは、心情的にも学問的にも許せないです。まさに曲学阿世の徒とは、こういった諸氏を指すために存在する言葉だと思います。

それにしても、このようなことが続けば、財務省が慢心して、自分たちは頭が良く、自分たち以外は頭が悪く、何を言っても自分の思い通りになると勘違いするようになるのも無理はありません。

「われら富士山、他は並びの山」――。東大法学部卒のエリートが集う霞が関で、財務省は大蔵省時代から他省庁を見下ろしながら「最強官庁」を自任してきました。


ただし、たかだか東大法学部を卒業して、国家公務員上級試験に受かり財務省に入ったからといつてエリートといえるのでしょうか。確かに、モノを短期間に暗記したりする能力に勝ているからといってエリートといえるのでしょうか。本来のエリートとは、「本人の命よりその責任が重い人間」のことをそういうのであって、日本のエリートの定義は明らかに間違っています。

彼らからすれば、日本の将来は政治家でも、国民でもなく、頭の良い自分たちがつくるのであり、何をやっても自分たちが正しいというような、中二病的な全能感に浸るようになったのも無理はないと思います。私は、この全能感が、財務省を腐敗・堕落させたのだと思います。

どんなことをやっても、自分たちは他者や他の組織を、結局自由に操れるという全能感が、彼らを公文書書き換えなどという稚拙な犯罪に走らせたのです。


ここ最近、財務省の高級官僚に限らず、「価値のあるボク」「価値のあるアタシ」といった肥大した自己イメージを、いつまでたっても抱えている男女がそこらじゅうに溢れているようです。つまり、全能感を捨てきれない大人達が増えているわけですが、彼らが全能感を維持するメカニズムについては、あまり取り沙汰されていないようです。

しかし従来ならあり得なかった、財務官僚などの全能感を維持したい・いつまでも子どもの王様のままでいたい人にありがちな、二つの処世術を確認してみます。

自分の優秀さや自分のバリューを確認しやすい場所で、それを反復的に確かめる、という方法です。財務官僚なら、東大卒業、国家公務員上級合格、財務省入省ということで、まずは全能感に満たされます。さらに、そこから出世階段をなるべく速くかけあがることで、さらに全能感に満たされます。次官にでもなれば、それこそ神様にでもなったような全能感に満たされるのでしょう。

これは、財務官僚の例ですが、一般の人なら異性をひっかけて自分の価値を確認する人もいれば、ネットゲームやtwitterで優秀さや有能さを確かめたがるタイプの人もいるようです。この際どこでもいいから、とにかく自分が優秀でいられそうなフィールドをみつけ、自分が価値があるという証拠を確認し続けられる限り、全能感を維持できます。その点で、財務官僚は自他共に認める全能感かもしれません。
 
ポイントとなるのは、「全能感が傷つく可能性の高いところには手を出さない」ということです。
 
自分の値打ちを確かめ損ねてしまったら「全能ではない自分自身」「たいして価値のないかもしれない自分自身」に気付いてしまうかもしれませんから、そういう事態は避けなければなりません。実際、安定確実に優越性が示せるフィールド、反復的に自己評価を確認しやすいフィールドが、無意識のうちに選ばれるようです。
 
ただし、強すぎる全能感とある種の才能とが結合した結果、ほとんど全分野で「全能な自分自身」を確認できる(というよりは確認せずにはいられない)人も稀にいて、このような人がスーパーマン、スーパーガールのような外観を呈することは、ありえます。

スーパーガール

自分が手を出す分野のすべてで「全能な自分自身」を確認するというのは、大変な才能と努力を必要とする処世術ですが、年が若くて生命力に溢れているうちは、そのような処世術が成立することもあるかもしれません。

歳をとってどうなるかは知りませんが。財務官僚の場合は、退官してさらに、天下り先に行き、信じがたいほどの高給に恵まれ、老後のハッピーライフを送ることができれば、さらに全能感を維持できるのかもしれません。

さらに、「何もしない」「何も本気でやらない」人ほど、全能感は温存される、ということもあります。
 
本気で勉強しない、本気で恋愛しない、何にも真面目に打ち込まない……こういう処世術は今日珍しくありませんが、現実世界で本当に全能・有能になるには向いていません。しかし気分としての全能感を保持するには向いています。
 
なぜなら、全能感は「挑戦して、自分がオールマイティではないという事実に直面する」「それほどには価値のあるボクではないという事実を突きつけられる」まではいつまでも維持されやすいからです。
 
たいていの人は、思春期のトライアンドエラーや人間関係のなかで、自分が思うほどオールマイティではないという事実に直面し、その直面によってゆきすぎた全能感がなだらかになっていくものなのでしょう。

しかし、自分が傷つくかもしれない状況や自分にあまり価値が無いとわかってしまいそうな挑戦を避け続ける人の場合は、いつまでたっても全能感は失われません。「挑戦すれば価値のあるボクがへし折られるかもしれない」……じゃあ挑戦さえしなければ、いつまでも価値のあるボクが維持できる、というわけです。
 
もし、自分の全能感が失われそうな試験・競争に直面した時にも、全能感を維持するのはそう難しくありません。「俺は本気じゃない」とか「ネタですから」と言い訳しながらの挑戦なら、全力を出してないから失敗した(=全力で挑戦していれば成功していたに違いない)と自己弁解できますから、全能感は保たれます。
 
こんなことばかりしていれば、受かる試験も受からないし競争に勝つ確率も下がってしまいそうですが、全能感を手放したくない人達は、トライアルをクリアする確率を1%でも高めるよりも、自分自身の全能感がひび割れるリスクを1%でも低くすることのほうに夢中になりがちです。

そしてこの処世術に慣れすぎてしまった人は、いざ本気で挑戦しようと思った時には、もはや本気で挑戦できません。いったん“逃げ癖”“言い訳癖”が身についてしまうと、もう、そうせずにはいられなくなるのです。

心の持ちようには無限に近い逃げ道がありますから、第三者が逃げ道をカットすることも難しく、ズルズルといつまでも、真剣なトライアルを回避し続けることになります。そして全能感の維持と引替えに、いつまでたっても技能や経験に恵まれることもなく、生ぬるい日常を過ごし続けます。

どちらのタイプも、全能感を維持するために歪な処世術を発達させているという点ではそう違いませんし、全能感を砕かれる不安を遠ざけるために必死になっているという点でも似たもの同士です。

ただし、受験勉強ばかりで過ごした人は、成績は良くなるものの、目立った失敗はしないすむことになります。思春期のトライアンドエラーや人間関係などで、全能感が破壊されることもなく、維持されるのかもしれません。
  
どんなに有能な人でも、老いて能力が衰えれば、全能感を確認しきれなくなくなる日がやってきます。また、なにもせずに全能感の挫折を回避しつづけてきた人も、いつかは「実は何もできないまま歳だけとった自分」に直面する日がやってくるでしょう。

そのとき、「等身大の自分自身」と「全能な自分自身のイメージ」のギャップにひどく苦しめられる運命が待っています。全能感を失った打撃が背景となって、ついにメンタルヘルスをこじらせて精神科/心療内科を受診する人もけっして珍しくありません。
 
全能感に必死にしがみつくような処世術は、全能感が保たれているうちは威勢良く自惚れていられるかもしれません。しかし、いつか全能感が失われた際にはとても脆く、ギャップや葛藤に悩まされる可能性が高そうです。

とことん全能感にしがみついてきた人は、10代の頃の全能感を40〜50代になっても維持し続けているかもしれず、それが破綻したときの心理的打撃を小さくおさめるのは容易ではないでしょう。
 
そんな生き方をするよりは、適度な失敗や挫折を経験したりして、過度に全能感にしがみつかない人生のほうが、平坦ではあっても危なげないと、私は思います。もちろん、その場その場では辛い経験や充たされない経験もあるでしょう。けれども「常に充たされて当然」「辛い経験は避けるのが当然」という処世術をカチコチに築き上げるより、よほど柔軟な生き方が出来そうですし、挫折や失敗にへし折られるリスクも小さくなりそうです。

そもそも、個々の人間には強みと弱みがあります。だからこそ、組織があるのです。組織の中では、個々の人間は、強みを発揮して、弱みは他の人にやってもらうなどして、中和します。それが組織の役割です。20歳をすぎれば、ほとんどの人は強みを伸ばすことはできても、弱みを是正することなどなかなかできません。


それに、現代ではすべての事柄が、専門化してしまい、何でもできる人というのはいません。現代では、何でもできる人とは「何も出来ない人」ということです。そもそも、この社会では本来全能感など成り立ち得ないのです。

そうして、まともな企業であれば、それを前提に個々人が強みを極限まで伸ばし、そのことにより成果をあげ、出生の階段を登ることになります。

全能感に浸っている人はこのことが理解できないのかもしれません。全能感を維持できるような組織は、そもそもこの根本を理解しておらず、いずれ腐敗・堕落するのです。民間企業であれば、腐敗・堕落すれば、いずれ潰れるしかありませんが、財務省のような組織、そのようなこともなく温存されてしまうのです。

官僚に関しては、「大過なしに過ごす」という言葉に象徴されるように、財務省なら、省益のことだけ考えて、強み、弱みなど関係なく、省益に沿った考え方、行動をとり国民経済など二の次で出世の階段をあがり、あわよくば財務次官になるか、なれなくても、高い地位まで上り詰めて、天下り先に行きほとんど仕事らしい仕事もしないで高給をとるということで、幼稚な全能感が維持しやすいのかもしれません。

それにさらに、自分たちの考えなど、本来であれば、間違いを指摘すべき経済学者などもこれを指摘せず、ほとんどの政治家やマスコミもそれを否定することなく、財務省のいいなりで、財務官僚の全能感を助長してきたのです。

佐川氏も、このような全能感に浸り、公文書の書き換えなどという稚拙な犯罪に手を染めてしまったのでしょう。彼からすれば、書き換えをしようが、何をしようが、全能の自分は無敵であり、何でも自分の思い通りになると考え、あの国会での胡散臭い答弁を何の疑問もなくしてしまったのでしょう。

そうして、佐川氏は自らの全能感は、否定せざるをえなくなり、辞職したのでしょうが、財務省には全能感に浸ったおろかな官僚がまだ大勢いるはずです。この全能感という財務省のDNAは破壊しなければ、同じようなことがまた何度でも起こることでしょう。

やはり、財務省は完全解体して、そのDNAを引き継がれることがないようにしなければならないです。

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2018年3月13日火曜日

日米露中まで頭痛のタネ 世界に広がる「韓国疲れ」―【私の論評】南北統一で、主体思想に染まった経済的にはロシアより大きな、核武装した軍事独裁政権ができあがる(゚д゚)!

日米露中まで頭痛のタネ 世界に広がる「韓国疲れ」

文大統領は御満悦だが・・・・

平昌五輪を“利用”して北朝鮮との対話を始めた韓国。五輪後に訪朝した特使団は10年ぶりとなる南北首脳会談まで取り付け、あれよあれよという間に南北が大接近。一方で金正恩朝鮮労働党書記長はトランプ大統領に会談を申し入れ、5月までに実現する見込みとなった。見守るしかない世界の国々は“この先”の難儀を察して頭を痛めている--。

韓国の特使派遣は、朝鮮半島の平和実現に向けた大きな前進--というのが世界の表向きの評価である。4月末の南北首脳会談の開催に加え、北朝鮮が非核化に向けた米朝協議の用意があると表明したことを受け、米国のトランプ大統領も、「前向きだ」と評価した。

だが、韓国の“単独行動”に、各国は内心ヒヤヒヤしている。

「文在寅大統領の判断は、国連決議も含めて、世界各国が取り組んできた北朝鮮への圧力路線を壊すもの。各国はリップサービスのコメントを出していますが、本音では“韓国のおかげでこれまで続けてきた制裁や圧力がすべて無駄になった”と嘆いている」

こう指摘するのは、元在韓国特命全権大使で外交経済評論家の武藤正敏氏だ。

「今回、特使が伝えた合意内容は非常に曖昧で、『北朝鮮に対する軍事的脅威が解消されて体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がない』というのは、米国が求める非核化とは程遠い。米国の情報関係者は揃って南北対話に懐疑的だし、日本はもちろん、欧州やアジア各国も同様です。韓国はあまりにも北朝鮮側に妥協、譲歩しすぎている」

慰安婦問題でさんざん「ゴールポスト」を動かされてきた日本にとっては、またも韓国の行動に翻弄される事態だ。2014年1月には米スタンフォード大学アジア太平洋研究センターのダニエル・スナイダー研究副主幹が、日本の政治指導者が「韓国疲労症」にかかっていると指摘したこともある。

だが、日本だけでなく、「コリア・ファティーグ(韓国疲れ)」は米国でも流行語になった。きっかけは執拗な“反日”だ。最初にこの言葉が、使われたのは6年ほど前のこと。

2012年4月、米国歴史教科書の「日本海」表記を「東海」に修正させようと、ホワイトハウスの公式サイトに「東海」支持の韓国人と見られる書き込みが殺到。サーバーが一時パンクする騒ぎになった。2015年4月には安倍首相の米国議会でのスピーチ阻止のため、在米韓国人が「訪米反対声明」を発表し妨害工作を展開。米国政府を激怒させた。

◆トランプは「弱腰」と指摘

今回の特使派遣についても、米外交専門メディア『ザ・ディプロマット』はこう書いている。

〈五輪後の金正恩の友好ムード演出は、文在寅の気前の良さと統一への情熱を食い物にして、食糧援助と制裁解除を獲得するための試みだ。ソウルと国際社会は、太陽政策を再試行しても、国民を無視し国防費を優先させる北朝鮮を変えることができないことを自覚するべきだ〉(3月6日配信)

産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が言う。

「米国は北朝鮮が韓国のすり寄りを利用して、核開発のための時間を稼ぎ、自分たちに都合のいい形での米朝対話を画策する可能性を懸念しています。トランプ大統領の文大統領に対する不信感は根強い。象徴的なのが、文大統領を『appeasement』と批判した昨年9月のツイート。これは直訳すると『宥和』で、相手に不必要な妥協や譲歩をしてすり寄る姿勢を批判する時などに使われ、“弱腰”という強い意味が込められている。同盟国のトップに使うのは極めて異例です」

◆中国も「面白くない」

文大統領は政権発足以来、歴史問題で足並みを揃えようと中国に接近してきたが、その中国からも嫌われているという。中国に詳しいジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰氏が言う。

「朝鮮半島が平和へと向かうことに中国は賛成していますが、中国自らが主導して、北朝鮮が核とミサイル開発をやめる一方、米韓も大規模な合同軍事演習を当面中止する『ダブル・フリーズ』で非核化への交渉再開の条件を作り出そうとしていた。昨年7月にはロシアも合意して、それに乗る形になった。

中国は北朝鮮に特使を派遣していたが、今回の件で、韓国に主導権を持っていかれてしまった形です」

ちなみに中国の特使は金正恩氏に会えなかったというから、メンツを重んじる中国が怒らないはずがない。加えて、その中国に乗ったロシアも、韓国にハシゴをはずされた形だ。元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏が言う。

金正恩も御満悦・・・・?

「南北首脳会談が、そのまま非核化に繋がるとは考えにくい。それどころか会談の中で“米国の干渉排除”や“経済制裁の中断”が議題にのぼり、その時に決裂を恐れる文大統領が強く否定できない展開もあり得る。

金正恩氏の狙いは日米韓の分断です。いずれ韓国はこの宥和策から降りなければいけない。そうなった時、米国や日本が対応することになる」

18年前に訪朝した金大中大統領(当時)はノーベル平和賞まで受賞したが、核放棄に繋がらず、逆に北朝鮮に開発の猶予を与える結果になった。だが、韓国の『中央日報』はこう書く。

「平昌でまいたタネを平和の巨木に育てることは、文大統領にとって重い歴史的荷物であると同時にノーベル平和賞までいける千載一遇の機会だ」

振り回される世界が疲れるのも無理はない。

※週刊ポスト2018年3月23・30日号

【私の論評】南北統一で、主体思想に染まった経済的にはロシアより大きな、核武装した軍事独裁政権ができあがる(゚д゚)!

韓国と北朝鮮の歩み寄りは、いずれ南北統一につながる可能性が高いです、そうして統一朝鮮が朝鮮半島に出来上がることには、日米中ロの四つの国にとっては脅威です。

これは、以前もこのブログで指摘してきたことです。統一朝鮮が出来上がった場合どのようなことになるかといえば、北朝鮮と韓国が一緒になるということですから、半島全体が核武装をした(あるいはいつでも核武装できる)一つの国になることを意味します。さらに、韓国の進んだ工業力と北の核が結びつけば、朝鮮に核大国が出来上がる可能性も否定できません。

さらに、韓国のGDPは東京都なみであり、日本人からみればたいしたものではないと感じられるかもしれませんが、ロシアと同等以上であり、これが北朝鮮と結びつけば、ロシアより完璧に大きな経済になります。

これは、核武装をしたロシアよりも経済の大きい国家の誕生を意味します。この統一朝鮮が、独裁軍事国家になり、さらなる軍拡をする可能性は、かなり大きいです。そうなれば、将来的には核武装したロシアなみの独裁軍事国家が半島にできあがる可能性も否定できません。

そのような国が半島にできあがることは、日米中ロにとっては望ましいことではありません。

そうして、統一朝鮮が、北に近いような政治風土の国になった場合、「韓国疲れ」どころではなく「北朝鮮疲れ」のような状況どころか、大きな脅威が世界各国を悩ませることになるでしょう。

なぜそうなるかといえば、北朝鮮は主体(チェチュ)思想なるものがあるからです。

この思想は、中ソ対立のはざまで、自国の自主性維持に腐心する金日成が、「我々式の社会主義(ウリ式社会主義)」に言及する中で登場し、金正日によって体系的に叙述された。

この過程で、モスクワ国立大学哲学博士である黄長燁が哲学的緻密化に貢献したといわれる。後に金日成により性格づけられ、1972年の憲法で「マルクス・レーニン主義を我が国の現実に創造的に適用した朝鮮労働党の主体思想」と記載されました。朝鮮人民が国家開発の主人であり、国家には強力な軍事的姿勢と国家的資源が必要、とするものです。

「主体(チュチェ)」は、哲学およびマルクス主義の用語「主体」を朝鮮語に変換したもので、また「主体」とは、北朝鮮では「自主独立」や「自立精神」を意味する場合も多いです。主体思想は「常に朝鮮の事を最初に置く」との意味でも使われています。金日成は、主体思想は「人間が全ての事の主人であり、全てを決める」という信念を基礎としている、としました。

簡単にいうと、 人間は自己の運命の主人であり、大衆を革命・建設の主人公としながら、民族の自主性を維持するために人民は絶対的権威を持つ指導者に服従しなければならないと唱える思想です。

チュチェ思想は、人間に譬えるなら「首領」は「頭」であり、「党」は「胴体」であり、「人民大衆」は「手足」であると北では説明しています。胴体と手足は頭が考えた通りに動く必要があります。また頭がなければ生命が失われてしまいます。故に首領の権威は絶対的で、あらゆる人民大衆は無条件に首領に従わなければならない。云々、云々・・・。

書きながら頭が痛くなってきそうな内容ですが、これがどうやって導かれるのか、私には全く理解することができません。ちなみに「主体思想」は序論として「哲学的原理」なるものを掲げており
*人間は世界と自分の運命の主人で、これを開拓する力をもつ 
*人間は自主性、創造性、意識性をもつ社会的存在である 
*人間の自主性、創造性、意識性の高まりが社会により強く影響する方向に社会は発展する
と、これだけ取り出せば、悪くなさそうにも見えるお題目が並ぶのですが、このあと「故に」として「必ず首領の指導を受けねばならない」と来るのです。いったい何が「故に」なのか理解不能です。

相手が「首領」であれなんであれ、「絶対的な服従」というのは人間の自主性、創造性、意識性の否定以外の何ものでもなく、世界と自分の運命の「主人」たることを放棄させることとしか、論理的には読みようがないものです。

「主体思想」の「主体性」とは首領様への絶対服従が原点であり到達点になっている。理屈では通りません。

この思想に染まっている人間に対しては、理屈などの通りません。宗教の一種と考えると、話がすっきり通るかもしれません。指導者を政治的に見るとピンと来ないことが「生き神様」と考えれば「個人崇拝」の構造が別の様相を見せるようになります。主体思想でのそもそもの首領とは金日成国家主席個人を指したわけで、この「生き神様」を祭り上げる、一種の擬似宗教として、これを見ることができるかもしれません。

この主体思想に染まったのが、北朝鮮であり、北と南が統一された、統一朝鮮にもこの主体思想が受け継がれ、生き神様である「金王朝」の出身者を首領とするような国家になったとすれば、これはまともな理屈も何も通じないような、経済的には先進国なみの、核武装した軍事独裁政権ができあがるかもしれません。

文在寅はこのチェチュ思想の恐ろしさを認識しているとはとても思えません。仮に文在寅が、南北統一を推進するということになれば、文はどうあがいても、チェチュ思想による狡猾さには太刀打ちできないでしょう。

統一すれば、元韓国の大統領や政権の幹部など、すぐに暗殺されるか幽閉されるでしょう。チェチュ思想に染まった連中にとっては、このくらいのことは朝飯前の所業でしょう。

そうして、核武装した軍事独裁政権が主体思想という宗教を信奉することになれば、それはとんでもないことになります。

主体思想については、以前のこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
朝鮮大学校元幹部逮捕 「スパイ天国・日本」狙い撃ち 北朝鮮の指示役、韓国大統領選でも暗躍―【私の論評】日本人は、事件の裏にある主体思想の精神破壊力に目覚めよ(゚д゚)!
この記事は、2016年2月3日のものです。以下に主体思想の破滅的な破壊力について解説した部分を引用します。

"
この主体思想の破滅的な破壊力については、2005年4月のNHKスペシャル、「ドキュメント北朝鮮・第1集 個人崇拝への道」という三夜連続のドキュメンタリーで報道されていました。これは、当時のNHKとしては、かなりまともな報道でした。

この番組の後ろのほうで、元旧ソ連共産党中央委員会委員のワディム・トカチェンコ(ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮研究センター長)がしみじみ語った言葉こそ、今日本人が最も重要なキーワードとして胸に刻まなければならない言葉です。トカチェンコは苦々しい顔をしてこう回想しました。
「北朝鮮はソビエトにとって常に頭痛の種でした。彼らは主体思想を教え込まれ、目的達成のためならどんな手段を用いてもかまわないと考えています。国家のためならば何をしても許されるのです。 
私は時折思いますます。このような人々と全く関わり合いをもたないほうがいいと。不用意に関わるとこちらが病気になり、傷つくことになるのです。」

この動画、以前はYouTubeにも掲載されていたのですが、現在は削除されています。ただし、ニコニコ動画のほうには未だ掲載されています。ご覧になっていない方は、是非視聴していただければ、北朝鮮の本質に迫ることができると思います。

元旧ソ連共産党中央委員会委員のワディム・トカチェンコをして、ここまで言わせた、恐るべきチュチェ思想です。あまりこのような、思想に慣れていない日本人など、この思想に触れてしまえば、あっという間に北朝鮮側に籠絡されると思います。

このチュチェ思想は、北朝鮮では、主体思想塔(チュチェササンタプ、しゅたいしそうとう、韓国語: 주체사상탑)として目に見える形に体現されています。この塔は、朝鮮民主主義人民共和国の平壌市中区域にあります。高さ170メートル。金日成の70歳の誕生日を記念して建てられ、1982年に完成しました。

主体思想塔

こんな思想に基づいて動く国ですから、拉致問題も平気で起こすし、人民が食うや食わずでも、核開発は行うし、他の国のことなどおかまいなしに、全く自分のペースで動くのです。あの中国ですら、主体思想にはかなり悩まされているのではないかと思います。
"

南北統一によって、このような思想に染まった、軍事独裁政権が半島に出来上がる可能性があるのです。そうして、統一朝鮮は、習近平の独裁体制となった中国よりもさらに厄介な存在になるでしょう。朝鮮族の多い、中国の東北地方(満州)に領土的野心を抱くようになるかもしれません。日本の竹島は永遠に日本に戻らなくなるかもしれません。それどころか、中国と同じように尖閣付近で問題を起こすかもしれません。

金正恩ももちろんこの思想に染まっていることでしょうから、トランプ氏と会談したにしても、その場では何か、トランプ氏の意向に沿ったような話をしたとしても、都合が悪くなれば、すぐに裏切ることに関しては何の躊躇もしないことでしょう。

ただし、トランプ氏は高齢であり、長い間自由主義経済の中で商売をしてきて、その時々で失敗したり、成功したりした経験もあるでしょうし、金正恩に匹敵するような狡猾な人物と取引してきた経験もあるでしょう。さらに、年齢も70歳台ですから、若い世代よりは簡単に主体思想に巻き込まれるということないとは思います。

しかし、金正恩などとまともに話ができるなどと考えていては、「韓国疲れ」どころか、深刻な「主体思想疲れ」に見舞われることでしょう。

私自身は、従来のように段階を踏んだり、戦略的忍耐などをしていると、「主体思想」に破れて、南北統一朝鮮が成立してしまうと思います。

その前に、当面は南北統一の動きを見せた場合や、核開発を始めた場合は、米国はためらうことなく即座に軍事的行動をとることを金正恩に納得させ時間稼ぎをして、主体思想なる宗教を破壊することが最善の策だと思います。さらに、実際に北が不穏な動きを見せれれば、すぐに軍事行動に打ってでるべきです。これに関しては、日米中ロで合意することはさして難しいことではないと思います。あるいは、すでに条件付きで合意に達している可能性もあります。

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2018年3月12日月曜日

森友文書問題で「財務省解体」「財務大臣辞任」はやむなしか―【私の論評】Z解体の好機、ただしZが他省庁の植民化を排除するような方式で完璧に解体せよ(゚д゚)!


そして財務大臣の辞任も…




髙橋 洋一

なぜ金曜日午後に発表されたのか

例年、筆者は確定申告をしている。筆者はかつて税務署長を務めた経験があるので、この時期の税務署関係者の忙しさはわかっている(2月19日付け本コラムhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/54514参照)が、今年ばかりは怒りをもって確定申告した。

今週は確定申告の最終週であるので、税務署では1年のうち最も忙しい時期だ。そのタイミングで、佐川宣寿国税庁長官が辞任した。確定申告のこの時期に辞めた国税庁長官は初めてである。

国税庁長官のポストは、(国内系ポストでは)財務省内において事務次官の次のナンバー2である。主税局長や理財局長などの主計局の次のランクの局長がこのポストに就任することからもわかるだろう。

財務省ナンバー2の佐川氏が辞任したのは、どう考えてもただ事ではない。辞任の理由の一つとして、一連の森友問題に関する決裁文書が国会に提出された時の理財局長であったこともあげられていた。

辞任の第一報は、9日(金)の午後に流れた。その直前のやはり9日(金)の午後には、森友問題に対応していた近畿財務局職員が自殺したという報道があった。

金曜日の午後に報道発表を行う、というのは、役所にとっては大きな意味があることだ。たとえば金融機関の破綻処理が行われる場合などは、「金月処理」と呼ばれる処理が典型的となる。つまり、社会的に影響が大きい発表は、まず金曜日に行って、土日を挟んで、月曜から諸手続をする、というものだ。

(近畿財務局職員が亡くなったのは7日水曜日であり、今回の案件について書かれた遺書もあるといわれている。なんとも痛ましいことであり、ご冥福をお祈りしたい。)

この段階では、打開策として、決裁文書の原本を大阪地検から返してもらって、国会に提出するしか他にとるべき手段は財務省には残されていなかった。

筆者は本件について、先週5日(月)の本コラム<朝日新聞「森友新疑惑」事実なら財務省解体、誤りなら朝日解体危機か>(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54700)でも書いた。

ハッキリ言えば、このときの論考はいろいろな可能性について過不足なく場合分けして考えただけである。筆者は数学畑の出身で、確率計算は得意だ。確率計算は、過不足のない場合分けからスタートするのがセオリーだ。ただし、それぞれの場合分けはできても、どのくらいそれが起こるかという「確率」はわからなかった。

マスコミの報道では、しばしば「前提」や「条件」を書かないで結論だけを書く。筆者には、そのように結論だけを書く書き方にはかなり違和感がある。この点をマスコミの人に聞くと、「一般読者が結論だけを求めるから、そうなってしまう」というが、そもそも記事を執筆する記者の思考自体も「条件→結論」というロジカルシンキングができていないことが多い。

先週の筆者のコラムと、その後状況が変化した後に筆者が執筆・発言したことについて、ロジカルシンキングができない人からは「結論を変えている」と批判を受けたが、書いたものをもう一度読み返してもられば、一貫して「条件→結論」しか書いていないので、そうした批判は間違いであることがわかるだろう。

いずれにしても、各場合の確率がわからない状況は、9日(金)の午前中まで同じだった。例えば、別の媒体に筆者が書いた<決裁文書「書き換え」あり得るか 元財務官僚の筆者の見解>(https://www.j-cast.com/2018/03/08323108.html)では、朝日新聞には「書き換え」の証拠となる「ブツ」(決裁文書の画像など)を出すべきだ、財務省側には大阪地検に文書の「原本」を返してもらってそれを国会と国民に提示せよ、と言っている。それが、この問題を解決するためのベストな方策だったからだ。

ところが、9日(金)の午後に、近畿財務局職員の自殺が報じられ、さらに佐川氏辞任について各社が報道。その後、財務省は決裁文書の書き換えを認め、12日月曜日に国会に報告するという各社の報道があった。ここまでくると、今回の問題の火付け役となった朝日新聞の3月2日の「文書書き換え」に関する報道は、概ね事実であろう。

ところで、財務省が国会になにか重大なことを報告する際には、事前に「要路」を押さえるのが慣習となっている。つまり、政府や自民党幹部のところに赴いて、事前に説明をするわけだ。この説明を受けた政治家は、それを親しいマスコミ記者などに漏らす(というか、マスコミ記者がそれを待っている)。そして、そのことを確認したのちすぐに報道する。

というわけなので、今回も12日の月曜日を待たずして、財務省がなにを国会で報告するかがおおよそわかるのだ。

12日、財務省は自公両党、参院予算、衆院財務金融両委員会の理事懇談会でもろもろの説明を行うのだろう。そのとき、財務省や近畿財務局での処分者も出てくるかもしれない。

財務省はどうなるのか

財務省の側でできるのは、形式的な職員の処分までだ。だが、佐川氏、近畿財務局長、近畿財務担当者らは、一般市民から様々な疑惑で刑事告発され、かつそれが受理されている状態だ。今回の一件が「訂正」だったのか「改ざん」だったのかはまだ分からないが、もし公文書偽造などの刑法に抵触するような場合には、大阪地検によって彼らが起訴される可能性もある。身柄確保(自殺防止)で逮捕ということもありえる。

問題なのは、財務省本省から近畿財務局に対して書き換えの指示があったかどうかだ。それがあれば、指示した人にとどまらず、それこそ「組織的な関与」となって、財務省解体までにつながる重大事件になるだろう(8日の夕刊フジ http://www.zakzak.co.jp/soc/news/180309/soc1803090003-n1.html?ownedref=articleindex_not%20set_newsList 参照)。

この、指示があったかどうかについては、マスコミの間でも見解がばらけている(23日午後11時現在)。毎日新聞では、「財務省書き換え、佐川氏が指示 12日国会報告」(https://mainichi.jp/articles/20180311/k00/00m/010/141000c)と、指示があったことを明示しているが、産経新聞は「文書書き換え 「改竄ではなく訂正」 自民幹部「問題なし」冷静」(http://www.sankei.com/economy/news/180311/ecn1803110006-n1.html)と違ったニュアンスの報道をしている。

これは、明日以降判明するだろう。ここでは「毎日新聞の報道が正しいとすれば」という前提で、指示があった場合財務省はどうなるか、どうすべきかを考えたい。

4つの提案

こうした場合、一つの参考になるのが「前例」である。もちろん、国民の怒りのレベル次第では前例が参考にならない場合もあるわけだが、前例を知っておいて損はない。

財務省の場合、なんといっても20年前(1998年)の大蔵省スキャンダル事件が「前例」となるだろう。筆者はその当時、大蔵省内で管理職になったばかりだったので、よく覚えている。地検職員が大蔵省に入ってきたのだが、意外にも、というべきか、大蔵省の職員は地検が来ることを当日になって初めて知る。

地検職員が省庁などに入るときには各テレビ局が来て、その姿を放映するのがお決まりだが、大蔵省の職員は、テレビ局の車が来ているのを見て、初めて「今日は強制調査だ」と知るわけだ。当時は大蔵省4階にある金融部局に東京地検の強制調査が入ったが、それに伴い4階への通路の防火扉が閉じられ、4階への出入りが禁止された。

その事件で逮捕されたのは、大蔵省5名、日銀1名。自殺者は3名にのぼった。これらの人はみな筆者の知り合いだったので、本当に切なかった。大蔵省内での処分も多数に上った。その後の省内出世をみると、この時の処分はあまり関係がないようだったが(ただし、大蔵大臣、日銀総裁、大蔵事務次官らは辞任した)。

この事件が大蔵省に与えた影響は大きい。金融行政への信頼を失わせたということで、銀行局、証券局が大蔵省から分離され、これらは後に金融庁になった。そして、それまでは「法律」ではなかった公務員倫理を立法化し、1999年には公務員倫理法ができた。社会の仕組みが変わったわけだ。

さて、もし毎日新聞がいうように財務省による「書き換え」の指示があったのならば、やはり社会の仕組みが変わるほどの変化が起きるだろう。筆者は「財務大臣の辞任」「消費増税の凍結」「財務省の解体」「公文書管理法の改正」が必要だと思う。それを順次説明しよう。

まず、財務大臣の辞任についてだが、さすがに財務大臣は佐川氏をかばい過ぎた。このままいくと、佐川氏の起訴は免れないだろう(ひょっとしたら逮捕もありうる)。佐川氏は辞任しているとはいえ、財務省幹部の逮捕となれば、1948年の昭電疑獄における福田赳夫大蔵省主計局長の逮捕以来だ(裁判では無罪)。

1998年の大蔵省スキャンダルでは、課長補佐のキャリア官僚が逮捕され、執行猶予付きの有罪になったが、佐川氏は局長、国税庁長官とトップクラスの官僚であるので、財務省の信頼失墜という点では、かなり大きいといわざるを得ない。そうなれば財務大臣も責任を取らざるを得ないだろう。

続いて「消費増税凍結」だが、財務省が組織ぐるみで決裁文書の書き換えという「禁じ手」をやってしまったのであれば、もう財務省は役所としての信頼を完全に失うだろう。

筆者はこれまで何度も指摘してきたが、もともと財務省は、日本の財政事情について国民に誠実な説明をしてこなかった。本コラムでも、財政再建の必要性について財務省は過剰な説明をしてきたと再三書いてきた。財務省が主張してきた財政再建の必要性にも疑義があると考えるべきなので、「財政再建」を前提とした消費増税については、凍結が必要と筆者は考える。

すでに信用を失っているのだから

三つ目に、現職の国税庁長官が仮に逮捕、起訴されるということになれば「いまのように、財務省の下部機関として国税庁を置いておくのはいかがなものか」という議論になってもいいだろう。

国税庁は、国家行政組織法第3条に基づく機関として財務省に置かれている。ただし、この組織のトップは歴代財務省キャリアであり、(前述のとおり)財務省の国内ナンバー2のポストになっている。国税庁でも国税のエキスパートを独自に採用しているが、トップはおろか、国税庁の主要部長にすらなれないのが現実だ。

どうして税務執行に詳しいといいがたい財務省キャリアが国税庁のトップや主要部長になるのかといえば、国税庁が財務省の「植民地」と化しているからだ。

民主党は政権を奪取した09年の衆院選で、政権公約として「歳入庁の創設」を掲げていた。筆者はこれに期待していた。歳入庁とは、税と社会保険の徴収を一体化させるための組織であり、世界のほとんどの国が歳入庁のような組織を有している。

民主党政権はいつの間にか歳入庁を公約から下ろしてしまったのだが、今回の事件を契機に、自公政権が財務省から国税庁を分離して歳入庁を作れば、災い転じて…となるだろう。

最後に、公文書管理法の改正についてだが、まず、いまの公文書管理法は、本コラム(2017年11月27日付け「森友問題で「的外れな追及」続けるマスコミには書けない、本当の結論」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53622)でも書いたように、かなりザル法である。

特に横断的な文書管理がまったくできていない。たとえば今回の件を機に、過去の文書の改ざんができないように、ブロックチェーンを使った省庁横断的な電子公文書管理の仕組みをつくる、などを考えるべきだ。

これについては興味深い国会審議もあった。3月9日の参議院予算委員会において、浅田均参院議員(維新)から「ブロックチェーンを公文書管理に取り入れるべき」との質問があった。これにはさすがの麻生財務大臣も前向きに答えざるを得なかった。

いずれにしても、12日月曜日以降の国会で財務省がどんな説明をするのか、だ。とにかく情報公開と事実解明を優先して、国民にスッキリとわかるようにしてもらいたい。が、すでに信用を失っている財務省の報告を国会は鵜呑みにせず、大阪地検にあるとされる決裁文書の原本現物を国民に明らかにしてもらうなどの追及を行うべきだろう。

原本現物があれば、のちに提出されたものが改ざんされたものかそうでないかは、1日もあれば判定可能である。捜査に支障をきたすからというなら、国会の非公開の理事会でそれを判定して、翌日大阪地検に返せばいいだけの話である。

12日から「大きな転換点」を迎えるのか。それぞれの行動に要注目である。

【私の論評】Z解体の好機、ただしZが他省庁の植民化を排除するような方式で完璧に解体せよ(゚д゚)!

佐川宣寿氏に関しては、かなり胡散臭い人物であることはこのブログに過去に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ「森友」問題で露呈した 「官僚の裁量で文書管理」の罠―【私の論評】最初からバレバレの財務省キャリア官僚の嘘八百はこれだけではない(゚д゚)!
この記事は昨年の4月13日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、佐川氏の国会での答弁をとりあげました。

財務省の佐川宣寿・理財局長(当時)
財務省の佐川宣寿・理財局長は、4月3日の衆院決算行政監視委員会で、「パソコン上のデータもですね、短期間で自動的に消去されて復元できないようなシステムになってございますので、そういう意味では、パソコン上にも残っていないということでございます」と答弁した。
IT関係の方なら、この佐川氏の発言には、かなりの胡散臭さを感じたと思います。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では以下のような要旨を述べました。
現在のパソコンだと、かなり容量が大きくデスクトップ型ならテラバイト級の記憶装置を持つものも珍しくはないため、パソコン上のデータを自動的に消去して、復元できないようにする必要性など全くないこと。  
仮に消去したとしても、データはかなりの確率で復元できるはずであること。文書でもメールでも、たとえ消去したとしても、ほとんどの場合復元できること。
以上の観点から、同感が手見ても佐川氏の発言は異常としか思えませんでした。本日の財務省の発表をみているとやはりこの考えは正しかったと考えざるを得ません。

そうして、疑問なのは、なぜ政府、野党、マスコミがこれを徹底的に追求しなかったのかということです。特に野党や、マスコミは徹底的に追求すべきでした。もし徹底していたら、本日の財務省による本日の報告は、もっと早い時期に行われていたかもしれません。

ただし、野党やマスコミにとっては、森友問題は倒閣あるいは、安倍政権になるべく悪いイメージを植え付けることが主目的ですから、ここで財務省や佐川氏を追求しても、本題からそれるし、さらに新聞などは、10%増税の際には、財務省から軽減税率を適用してもらいたいなどの意向があり、あまり財務省をつつかなかったのかもしれません。

政府も、もっと厳しく追求すべきでした。そうすれば、少なくとも佐川氏を国税庁長官にする人事などなかったかもしれません。ただし、あたかも政治勢力であるかのように振る舞う財務省といたずらに揉め事を起こしたくないとか、派閥間の力学などで、佐川氏を追求するのはやめたのかもしれません。


いずれにせよ、野党・マスコミ、政府も佐川氏や財務省を追求しなかったのは、明らかに手違いだったと思います。

政府、野党、マスコミが徹底的に財務省と佐川氏をあの頃に徹底的に叩きまくっていれば、財務省解体はもっと早い時期に議論されていたかもしれません。政府にしても、内閣人事局という部署が発足していますから、佐川氏など他省庁に片道切符で左遷するなどのことも出来たかもしれません。

ブログ冒頭の記事では、高橋氏は「財務省本省から近畿財務局に対して書き換えの指示があったかどうかだ。それがあれば、指示した人にとどまらず、それこそ「組織的な関与」となって、財務省解体までにつながる重大事件になる」としています。

私は、これには本当に大賛成です。たとえ「組織的な関与」がなかったにしても、財務省には解体されても致し方ない事由があります。それについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
財務省の補正予算編成が日本のためにならない理由―【私の論評】日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てた財務省はこの世から消せ(゚д゚)!

この記事では、財務省が日本経済復活を阻むボトルネックに成り果てていることを掲載しました。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
日本経済の最大のボトルネック(制約条件)は、ご存じの通り「クニノシャッキンガー」という嘘です。私ははこの「クニノシャッキンガー」という嘘、プロパガンダ・レトリックこそが、日本経済の復活の最大のボトル・ネックであると確信しています。 
酷い人になると、国の借金どころか、「日本の借金は1000兆円!」と、あたかも「日本国」が外国から多額の借金をしており、財政破綻が迫っているかのごときレトリックを使います。このような主張をする人々は、世界最大の対外純資産国、すなわち「世界一のお金持ち国家」であることを知っているのでしょうか。 
テレビ等で「国の借金」「日本の借金」という用語を安易に使う人がいますが、これは明らかな間違いです。本当は「政府の負債」です。そもそも、先に述べたように、日本は外国からお金を借りているわけではなく、世界で一番お金を外国に貸している国だからです。 
政府の負債、と聞くと、皆さんは「政府の借り入れ」と認識します。それで正しいわけですが、「日本の借金!」「国の借金!」などという用語を使われると、皆さんはあたかも「自分たちの借金」であるかのごとく感じてしまい、財務省の緊縮財政プロパガンダに洗脳されてしまうわけです。
そうして、なぜ財務省がこのようなことをするかといえば、予算の配賦権を利用して、他省庁に睨みをきかせ、さらに政府関連機関や外郭団体などに金を貸し付けたりして、財務省の高級官僚の天下り先を開拓し、さらに高級官僚が退官した後の天下り先での超豪華なハッピーライフを満喫するためです。大雑把にいえば、これが目的です。

財務省は、そのためには、増税で国民が塗炭の苦しみを味わうことになってもお構いなしです。高級官僚さえ良ければ、それで良いのです。

民主党政権のときには、様々な政策立案などの実務を官僚から奪いとって政治主導を実現しようとしましたが、欠局事業仕分けなど財務省に仕切られ、野田政権に至っては、財務省の助けがないと政権運営もおぼつかないなどの醜態を晒しました。

このようなことを考えると、私自身は、今回の書き換えに「組織的な関与」があろうが、なかろうが何としてでも必ず財務省を解体すべきと思います。

そうして、財務省解体ということになれば、一つ気をつけなければならないことがあります。

ブログ冒頭の記事にもあるように、国税庁が財務省の「植民地」と化しているように、財務省は、単純に分割すると10年くらいかけて他省庁の植民地を拡大する手段につかうので、それを防ぐために、まずは公的金融部門の廃止、次に財務省官僚が目下においている官庁の下部組織に財務省を分割の上で編入するなどの方式にすべきです。

要するに、従来の財務省組は、他官庁の下部組織に分割されて編入されるため、どうあがいても、所属官庁の次官にはなれそうもないくらいの地位に落とすのです。

これにより、少なくともすべての官庁の高級官僚は財務官僚のDNAとは無縁となります。このようにして、はじめて財務省を解体することができます。

今回は、財務省解体ということにでもなれば一時的に政権側にかなり不利ですが、その後は10%増税の凍結はかなりやりやすくなりますし、それに最近は緊縮気味だった財政を、積極財政にもっていくこともやりやすくなります。

いや、それどころか、最早誰の目から見ても明らかに大失敗だった8%の消費増税をやめて、5%に減税するなどということもかなりやりやすくなるはでず。ボトルネックだった財務省がこの世から消えれば、まともな起動的財政政策が実施しやすくなります。

これを実施しつつ、さらなる量的緩和を実施すれば、短期間で日本経済は上向くことになります。そうなると、国民からの支持率もかなり上がることになります。政府はなんとしても財務省解体に挑むべきです。

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2018年3月11日日曜日

【中国全人代】国家主席の任期撤廃、改憲案を可決 中国政治体制の分岐点―【私の論評】共産党よりも下の位置づけの中国憲法の実体を知らなければ現状を見誤る(゚д゚)!

【中国全人代】国家主席の任期撤廃、改憲案を可決 中国政治体制の分岐点

全人代で憲法改正案が採択され、拍手する
習近平国家主席=11日、北京の人民大会堂

 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は11日、国家主席の任期を2期10年までに制限した規定を撤廃する憲法改正案を可決した。賛成2958票に対して反対は2票、棄権3票で賛成票が99%を上回った。習近平国家主席が兼務する中国共産党総書記と中央軍事委員会主席に明文化された任期制限はなく、最高指導者としての習氏の3期目続投が制度上可能となった。

 党内や国内世論の一部では、習氏の長期政権化が集団指導体制の崩壊や個人独裁、指導者終身制につながるとの懸念も高まっている。だが、習指導部が反腐敗闘争で政敵の打倒を進めた結果、強引ともいえる権力集中を表立って阻止できる党内勢力は存在しないのが現状だ。中国の政治体制は大きな分岐点を迎える。

 1982年に制定された現行憲法の改正は14年ぶり5回目で、今回は習氏と党の権威強化が主眼だ。今世紀中頃までに、「社会主義現代化強国」を実現することをうたう「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が、毛沢東思想やトウ小平理論などと並ぶ「中国各民族人民」の指導思想として位置づけられた。中国で現役指導者の理念が憲法に明記されるのは毛沢東以来。

 また、総則第1条の「社会主義制度は中華人民共和国の根本的な制度だ」との文言に続いて「中国共産党の指導は中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴だ」と追加し、共産党統治の正統性が強調された。

 このほか反腐敗闘争の制度化に向け、党員以外の公務員らも摘発対象とする国家機関「監察委員会」の設立を憲法に明記。行政機関の干渉を受けない独立した監察権の行使が認められ、国務院(政府)や最高人民法院(最高裁)、最高人民検察院(最高検)などと同格の機関として位置づけられた。


【用語解説】中華人民共和国憲法

 1954年9月に開かれた初の全国人民代表大会で制定され、その後3度の大幅改正が行われた。現行憲法は82年に制定されたもので「82憲法」とも呼ばれ、序文と「総則」「公民の基本的権利と義務」「国家機構」「国旗、国歌、国章、首都」の4章で構成される。2004年までに計4回の小規模改正を行い、今回の改正では「国家機構」の章に「監察委員会」の新節が加わり全143条となる。総則の第1条では中国について「労働者階級が指導」する「人民民主主義独裁の社会主義国家」だと規定している。

【私の論評】共産党よりも下の位置づけの中国憲法の実体を知らなければ現状を見誤る(゚д゚)!

憲法改正案に賛成2958票に対して反対は2票、棄権3票とされていますが、この意味するところは何なのでしょうか。これには、2つの見方があると思います。

まずは、習近平が権力を完璧に掌握できていないという見方です。もし、完璧に掌握できていたとすれば、反対や危険票は出ないはずです。

もう一つの見方は、習近平が憲法改正の投票がまともであることを印象づけるため、わざと反対2、棄権3が出るように仕組んだという見方です。

私自身は、この2つの見方以外にないと思います。そうして、いずれの場合であっても、習近平は未だ全権力を掌握していないとみるべきです。

なぜなら、最初の見方では、そもそも反対票がでているということは、習近平が権力を掌握できていないということです。

二番目の見方の場合では、憲法改正の投票がまとめであることを印象づける必要性があるということです。それは誰に対してかといえば、まずは共産党内部において、まともな投票が行われたことをアピールするという側面と、中国人民に対して、習近平はまともな手段を用いて、国家主席の任期撤廃をしたということを印象づけるためです。

いずれの場合でも、やはり習近平が全権力を掌握していない可能性が十分にあります。

英経済誌 エコノミストの表紙に掲載された皇帝になった習近平

それと、上の記事では、中華人民共和国憲法の位置づけが説明されておらず、この記事を読んだ多くの人は、中国の憲法も、日本や他の憲法も同じようなものであって、 国家の統治権・統治作用に関する根本原則を定める基礎法であり、他の法律や命令で変更することのできない国の最高法規であると無条件で思い込んでしまうかもしれません。

しかし、これは完璧な間違いです。なぜなら、中国には憲法の上に君臨する存在があるからです。言わずと知れた、中国共産党です。中国の憲法前文には"中国共産党の指導"という文言があります。該当部分を以下に引用します。
中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に、マルクス・レーニン主義、毛澤東思想、鄧小平理論及び"三つの代表"の重要思想に導かれて、人民民主独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革開放を堅持し、社会主義の各種制度を絶えず完備し、社会主義市場経済を発展させ、社会主義的民主主義を発展させ、社会主義的法制度を健全化し、自力更正及び刻苦奮闘につとめて、着実に工業、農業、国防及び科学技術の現代化を実現し、物質文明、政治文明および精神文明の調和のとれた発展を推進して、我が国を富強、民主的、かつ、文明的な社会主義国家として建設する。


"中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に"ですから、中国の憲法や人権は、ハナから"制限付き憲法・人権"にしかすぎないわけです。

習近平が憲法を変えたということで、習近平がとうとう中国皇帝になり、なにもかも思い通りにできると考える人がいるかもしれません。しかし、これは、表面上はそうかもしれませんが、実体は違う可能性が十分にあります。

そもそも、憲法の上の存在が共産党であり、習近平が現状では共産党の最高権力者なのですから、憲法に違えたことを習近平はいつでもできるし、憲法改正も他国と比較すれば、容易にできるということです。

そもそも、中国では憲法の上に共産党があるということで、元々民主的でもないし、政治と経済の分離ができていないので、すべての中国経済は常時中国政府のコントロール下にあり、実際政府が経済のすべての点に関して、規制したり管理することができる体制にあります。これは、共産主義ではなく国家資本主義と呼ぶべき体制です。さらに、法治国家化もされていないのです。

最近まで、憲法改正がなかったのは、中国にあるいくつかの政治派閥の力がある程度均衡していたからに過ぎず、中国の憲法が他国憲法のように有効に機能していたというわけではありません。

これは、派閥のヘッドが他の派閥のさらに上に出ることができなかったか、出ようとしなかったからに過ぎないのです。それは、出れば他派閥に潰されるからです。

習近平はここ数十年ではじめて、他の派閥のさらに上に出て、全権力を掌握しようとしているわけです。

しかし、そのようなことがおいそれと成功しそうもないのは、はっきりしています。まずは、江沢民、胡錦濤の元前総書記には鄧小平に指名されたとの統治の正当性がありました。しかし習近平以後の党指導者にはそれがありません。

さらに、毛沢東に関しては、大虐殺をしたという悪い側面もありますが、建国の最大功労者であったことには異論はないと思います。鄧小平は、天安門事件では、軍隊の出撃を命令し大虐殺をしたという悪い側面もありますが、毛沢東の死後、文化大革命によって荒廃した中国に四つの経済特区を指定することで改革開放を実施し、その結果、著しい経済成長が起こり、現在の中国を基礎を築きました。

建国の父である毛沢東(左)と現代中国経済の基礎を築いた鄧小平(右)

しかし、習近平にはそのような成果は何もありません。一帯一路を実行しようとしていますが、これは今のところ構想に過ぎず、さらにこの構想はこのブログでも何度か掲載させていただたように、とても成功の見込みはありません。ということは、習近平には毛沢東や鄧小平なみの成果をあげることは不可能であるということです。

さらに、習近平が、如何に腐敗と戦っても、腐敗は古来中国の伝統であり、撲滅することは不可能です。それどころか、習近平自身がファミリー・ビジネスなどで、腐敗しています。腐敗しているものが、腐敗撲滅するなど、撲滅される側にとっては理不尽以外の何ものでもありません。日本を含めた先進国の感覚では、中国の幹部で全く腐敗していないものなどいません。それを考えると、この先の10年以上も習近平独裁政権が続いていることは想像しにくいです。

いずれかの時点で、習近平体制が崩れ、その後中国共産党独裁体制も崩れるであろうと、見なすのがまともだと思います。

私は、今回の習近平の独裁体制は、現在の中国政治体制の崩壊の序曲であると見なすべきだと思います。これは、中国憲法が共産党よりも下という位置づけを理解しないと、到底理解できないと思います。

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2018年3月10日土曜日

森友文書の書き換え認める 財務省、12日に国会報告―【私の論評】この問題で「内閣総辞職」と言うは「悪いアベをのさばらしておく野党が悪いから、野党幹部は全員辞職すべき」と言うに等しい(゚д゚)!

森友文書の書き換え認める 財務省、12日に国会報告

学校法人「森友学園」が小学校建設を目指していた大阪府豊中市の国有地
 財務省は10日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書に書き換えがあったと認める方針を固めた。当初の記述を削除した例が複数判明したとの調査結果をまとめ、12日に国会に報告する。関与した近畿財務局の担当職員や本省幹部らの懲戒処分を検討する。野党は「政権の隠蔽体質」への批判を強める構えで、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の政治責任を問う声が与党で高まる可能性もある。

 決裁文書の国会提出時に担当局長だった佐川宣寿国税庁長官が9日付で辞任するなど混乱が拡大。財務省自らが書き換えの事実を認めることで政権への打撃は大きく、森友問題は重大局面を迎えた。

【私の論評】この問題で「内閣総辞職」と言うは「悪いアベをのさばらしておく野党が悪いから、野党幹部は全員辞職すべき」と言うに等しい(゚д゚)!

財務省による書き換え疑惑に関しては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
朝日新聞「森友新疑惑」事実なら財務省解体、誤りなら朝日が解体危機か―【私の論評】いずれにしても安倍政権と国民にとっては良いことになる(゚д゚)!
書き換え問題について報じたのは、3月2日の朝日新聞 写真はブログ管理人挿入
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、NHKの日曜討論で、野党の一部から「(書き換えが)事実であれば安倍内閣は総辞職すべき」との意見も出たということを受けて、以下のような結論を掲載しました。
相変わらず、無茶苦茶な論理です。極端なことをいうと、犯罪者が一人出たら、その責任は警視庁にあるから、警視庁にあるから、警視総監をはじめ、警視庁全体が辞任せよと言っているのと何も変わりありません。 
そこまでいかなくても、企業組織で、財務部の部員が何か間違いをしでかしたら、取締役会で、取締役がその問題をとりあげ、社長と財務部担当の役員と財務部長は無条件で辞めよと言っているようなものです。 
無論、これらの人々が、大きな不正に直接関わっているというのなら話は別になるのでしょうが、無条件で辞めろなどと、取締役あたりが、発言すれば、それこそその取締役が解任されるかもしれません。 
それに、本当に安倍内閣が辞職したとすれば、また選挙ということになります。そうなると野党はボロ負けすることになります。最初は、一見野党が有利なようにみえても、選挙期間中に事実が有権者に理解されるようになり、それこそ、希望の党があっと言う間に勢いを失ったような状態になることでしょう。 
野党は、昨年の「もりとも」問題追求から一歩も進歩していないようです。 
それにしても、ブログ冒頭の記事の高橋氏が主張するように、財務省解体か朝日新聞の解体かということになれば、どちらに転んでも、安倍政権は無論のこと、国民にとっても良いことになります。
財務省が解体になれば、10%増税は確実に見送られることになると思います。これによって、市場が好感し、株価もあがり、個人消費も伸びることが期待できます。 
朝日新聞が、解体ということになれば、朝日新聞が、朝鮮人女性を「強制連行」し、「従軍慰安婦」にしたとの吉田清治の虚偽証言報道を2014年まで30年以上にわたって放置、訂正することがなかったことなどに象徴される、朝日のフェイク暴動に煽られるような人が減ることになります。 
本当は、両方とも(ついでにNHKも)解体されるのが、一番なのですが、諺に「二兎を追う者は一兎をも得ず」というのがある通りで、今回はどちらか一方が解体されることを期待したいものです。 
これから、どうなっていくのか、まずは6日が楽しみです。
そうして、6日の財務省の答弁では何も明らかにはならなかったわけですが、今回、財務省が学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書に書き換えがあったと認める方針を固めたそうですから、財務省解体の危機もでてきたということです。

ただし、安倍内閣は総辞職すべきであるなどという意見は筋違いです。なぜそのようなことがいえるかといえば、そもそも大本の不手際は近畿財務局によるものだからです。これについては、いわゆる「森友問題」が表面化した当時からこのブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
【共産党研究】民進党と明暗分けた森友問題、支持率わずか1・7%差に 選挙に結びつかない疑惑、スキャンダル追及―【私の論評】頭の悪い新聞と民進党はなぜ無間地獄に陥った?
学校法人「森友学園」の小学校建設用地。校舎を残して売却を検討中だ=大阪府豊中市
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にいわゆる森友問題の本質の部分を掲載します。
森友問題の本質を整理すると、「①森友の前の豊中市への売却時にゴミ問題発覚した、②それを言わずに近畿財務局が森友と交渉、③その結果近畿財務局の値引き」というところです。 
以下は、憶測ですが、②の時点で、ゴミが埋められていることを知った篭池氏は烈火のごとく怒って近畿財務局と交渉したことでしょう。これは完璧に近畿財務局の事務ミスであり、その後篭池氏に対しては頭の上がらない状態になったはずです。これで、篭池氏の一見不可解な行動は、大方説明がつきます。 
ところが、朝日新聞は③近畿財務局の値引きと④昭恵夫人の関与というストーリーを報道するのみで、①と②はマスコミなら知っているはずなのに朝日新聞は報道しません。朝日はなぜ書かないのでしょうか。このことからも朝日新聞は、フェイクニュース機関です。 
これは、調べれば誰でも理解できることであるはずです。このような情報を知っていれば、そもそも森友問題は昭恵夫人や政治家が関与したということもなく、単なる近畿財務局の事務ミスであり、これを追求しても他には何も出てこないことなどすぐに理解できたことでしょう。 
上記①②③は明らかなため、大方のメディアはある時点から、森友学園の報道はやめました。それ変わって、現在は緊迫する北朝鮮状況の報道などが目立ちます。 
これは当然といえば、当然です。民進党と共産党などの野党は、この問題の火付け役となりましたが、国会で問題にするくらいなら、上記に掲載した①、②、③くらいは予め良く調べてからにすべきだったでしょう。 
そのため、全く決め手になるような内容は結局何も出てこず、まるで都市伝説のような展開になってしまいました。
私としては、ゴミについて近畿財務局のいずれかの職員が、錯誤したか勘違いしてゴミが埋まっていることをいわずに篭池氏と交渉したのでしょう。これが森友問題の本質であると考えられます。

これが、本質であるか否かはあくまで憶測に過ぎないですが、前後関係を見ていればそれ以外には考えられません。このあたりのことは、大阪地検特捜部の今後の捜査で明らかになるはずです。

近畿財務局

この本質部分は、ある程度明白だったにもかかわらず、マスコミは近畿財務局の値引きと、昭恵夫人の関与というストーリーを報道するのみで、最近になってようやっと朝日新聞が近畿財務局に迫ったということです。それにしても、あまり良い迫り方ではないです。本来であれば、もっとはやくに近畿財務局に切り込むべきだったでしょう。

しかし、マスコミや野党は、それでは最初から近畿財務局の問題となってしまい、倒閣運動に結びつけたり、与党に対する悪いイメージをつけるという彼らの本質からみれば外れてしまうということで、近畿財務局への切り込みは意図的にか行ってこなかっのでしょう。

ここで公文書の「書き換え」そのものが、近畿財務局内の問題であれば、近畿財務局の局長や幹部が処分されることになるでしょう。財務省もある程度の監督責任くらいは問われるかもしれませんが、厳しい処分は考えられません。

もし、公文書の「書き換え」そのものに財務省本省の人間が関わって入れば、これは財務省自体も幹部の処分が行われることになるでしょう。しかし、これもどの程度になるかは、今後の大阪地検などの捜査や政府等の調査次第であると考えられます。

財務省の決裁文書「書き換え」疑惑の“前例”といえる違法行為が、民主党政権の2010年に発覚していました。厚労省東北厚生局の職員が、情報公開法に基づき開示した文書を改竄(かいざん)し、減給の懲戒処分を受けたのです。当時、菅直人内閣の長妻昭厚労相は記者会見で謝罪しましたが、辞任はしませんでした。

改竄されたのは、東北厚生局が、福島県内の柔道整復師の養成専門学校に対して行った実地調査結果に関する文書。

07年に開示請求を受けて公開する際、職員は文書から《未承認のカリキュラムで行っていたため、学則上での授業時間の不足が生じることになる》などと指摘した部分を削除し、一部の行政文書を別の文書に差し替えたとされています。

10年に再び、同じ文書の開示請求があり、請求者が07年の文書にない記述に気付いたといいます。

厚労大臣だった頃の長妻昭氏
東北厚生局の調査では、この職員以外の関与は認められませんでした。発覚時、独立行政法人に移っていた職員は「再三、照会や苦情を受けてノイローゼ気味だった。余計な情報を出さない方がいいと思った」などと説明し、減給1カ月(10分の1)の処分を受けました。

長妻氏は10年6月、処分時の会見で「民主主義の根幹である情報公開制度であってはならないことが起き、おわびする。厳重に再発防止に努める」と述べました。引責辞任はしませんでした。

今回の「書き換え」に関しては、実体がどの程度のものだったのか、関与したのはどの範囲だったのかまで明らかにして、処分を決めることになるでしょう。それにしても、たとえ財務省が関与していていとしても、財務省が厳しい処分を受けることはあっても、内閣総辞職ということはあり得ないです。

もし、そんなことが許されたとすれば、官僚はいつでも公文書改竄で内閣総辞職させることができることになり、それこそ、立憲主義や民主主義に反することになります。

これから、野党の一部は「内閣総辞職」と喚くことになると思いますが、それはあくまで低劣なパフォーマンスにすぎないということを理解すべきです。

そもそも、野党の論理にまともに従えば、立場を変えれば「悪いアベをのさばらしておく野党が悪いから、野党党首や幹部は全員辞職すべき」というような不可思議な論理も成り立ってしまうことになります。

野党は、森友問題に関係のある内閣委員会・外務委員会を審議拒否するのはまだわかりますが、それ以外のものも審議拒否するのは、まともな議論より倒閣を選んだ証拠です。 南北首脳会談が決定直後であり、米朝首脳会談もきまりそうなこの時期に北朝鮮に対する議論を放棄するのはあり得ないです。 仕事する気がないなら議員を辞めるべきです。 野党のせいで1日3億円の国会がまだ無駄になります

率直に言えば、朝鮮半島情勢が動いている中、国会ではもっと有益な議論に時間を使ってほしいものです。

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2018年3月9日金曜日

統一コリアムード高まれば金正恩大統領が誕生する可能性も―【私の論評】半島に新たな秩序を作り出すか、南北統一を許してしまうか、世界は選択を迫られている(゚д゚)!


文在寅大統領が差し出した手は何をもたらすか(写真右が金与正氏)

南北朝鮮の接近が急加速している。韓国の文在寅大統領は平壌での首脳会談に乗り気で、事態は想像を超えて急展開する可能性がある。先に見えるのは、核保有国・統一コリアの姿だ。拓殖大学特任教授の武貞秀士氏が警告する。

 * * *

 「我々はひとつだ!」

 平昌五輪中、私は韓国を訪れて情報収集につとめた。テレビでは連日、専門家の討論番組を放送していた。そして、耳に残ったのがこのフレーズだった。

 韓国政府は、北朝鮮代表団や管弦楽団、美女応援団を熱烈に歓迎した。日米両政府は核・ミサイル問題の解決の遅れを心配したが、文在寅政権は「五輪はスポーツ大会」とかわした。

 韓国社会の反応は意外と冷めていた。美女応援団が「同胞への呼びかけ」に徹したのには違和感もあったようだ。

 そんな世論と裏腹に文在寅大統領は、米国のペンス副大統領が欠席した歓迎レセプションで「女子アイスホッケーチームの選手の心には休戦ラインはない」と挨拶をした。休戦ラインを守っているのは在韓米軍と韓国軍なのだが……。

 金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正氏らを招いた昼食会では、金大中、盧武鉉政権時代に北朝鮮を訪れた幹部を同席させ、対話への意欲を示した。すでに南北は今年1月、南北閣僚級協議で軍事協議を再開することに合意している。

 五輪期間中、「心を合わせて難関を突破しよう」「南北関係を当事者同士で解決すべきだ」と訴えた文大統領は、五輪を機に北朝鮮との対話を進めるつもりだろう。金委員長の右腕である与正氏が親書を手渡した席で南北交流の具体的な方策を話し合ったにちがいない。

 これから先、何が起こるのだろうか。米・トランプ大統領は南北対話のあいだは、軍事行動をしないと約束している。北朝鮮は、米国が軍事行動を選びにくい状況を創出するため、南北のスポーツ・文化交流計画を韓国に提案するだろう。

 開催を延期している米韓軍事演習が試金石となる。北朝鮮は、「軍事演習をしたら南北対話は進まない」と文大統領に揺さぶりをかける。そのとき、朝鮮半島問題の主人公は韓国と北朝鮮だと考える文在寅政権は、米韓軍事演習の規模縮小を米国に訴えるにちがいない。

 ここで日本が一連の動きに反対すると逆効果になる。平昌五輪開幕式前日の日韓首脳会談で米韓軍事演習を実施すべきと述べた安倍首相に対して文大統領は「内政の問題だ」と不快感を示した。日本が南北交流を警戒し、米韓同盟強化を助言すれば、北朝鮮ブームが起きていない韓国社会だが、日本への反発から親北に傾斜してしまう。

 北朝鮮は今年9月9日の建国70周年を「民族の慶事」の大イベントであると宣伝しており、この時期までに首脳会談を実現したいはずだ。金大中と金正日の両氏が初めて南北首脳会談を開いた2000年6月の記念日に合わせて、今年6月開催を目指している。

 文大統領は米朝対話再開が必要だと答えた。首脳会談が実現すれば、南北の関係改善は加速する。すでに文大統領は北朝鮮に800万ドルの人道支援を行うと決めている。現在停止中の南北経済交流事業が再開され、開城工業団地の操業や金剛山観光再開を検討している。朝鮮半島縦断鉄道からシベリア鉄道に乗り入れる列車ダイヤの運行を具体化する話も浮上することだろう。すべて北朝鮮の外貨獲得源である。

 南北交流が進んで、「分断された民族を統一する」というムードが高まると、1980年の労働党大会で金日成主席が提案したように、まずは南北同数の代議員で民族連邦会議を作り、大統領を選出するシナリオが浮上するだろう。この時、韓国側の代議員に一人でも従北勢力がいれば、多数決で金正恩大統領が誕生する可能性もゼロではない。

 「なだらかな南北統一」の最大の脅威は、統一コリアが核保有国となることだ。北朝鮮が核・ミサイルを開発するのは、多くの識者が指摘するような体制維持のためではなく、米軍介入を阻止して統一するためだ。だから彼らは統一まで核を放棄しないし、統一後も日米両国からの防衛を根拠に核は捨てないだろう。

 ●武貞秀士(たけさだ・ひでし)/1949年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、防衛省防衛研究所に教官として36年間勤務。その間、米スタンフォード大学、ジョージワシントン大学客員研究員、韓国中央大学客員教授等を歴任。2011年、防衛省を退職後、韓国延世大学教授等を経て現職。著書に『東アジア動乱』(角川oneテーマ21)、『なぜ韓国外交は日本に敗れたのか』(PHP新書)などがある。

【私の論評】半島に新たな秩序を作り出すか、南北統一を許してしまうか、世界は選択を迫られている(゚д゚)!

実は韓国は、数年前からすでに北朝鮮に乗っ取られていたとみるべきです。北のスパイが約12万人、韓国内に入り込んでいるとされています。

核とミサイルとスパイしか武器を持っていないような国が全力を傾注して、スパイを浸透されたとされてますから、これは十分あり得る数字です。

1998年から2008年まで行われた"圧力より融和で南北統一を目指す政策"である「太陽政策」の間に、北朝鮮は韓国の政治の世界は官邸にむけて、軍部は情報部にむけて、次々に北朝鮮のスパイを浸透させていったとされます。軍自体は良識派の集まりなので、浸透は無理とみて情報部に浸透をはかったとされています。

韓国の政治家のうち、最も始末に負えないのは文在寅をはじめといする「親北・反日」の人々で、大きな勢力を占めています。韓国では「反日」が大前提で、「反日」など争点にすらなりません。

そんな韓国での本当の争点はこのまま北に乗っ取られるのが良いのか、支那に媚びて助けてもらったほうが良いのかということであり、これが最大の争点です。

昨年失脚した朴槿恵大統領は「親中・反日」でしたから、実は当初の大統領選挙の候補者の内、一番まともな政治家でした。

朴槿恵は、韓国は、支那の一の子分になったほうが、北より下になるよりは良いというわけで、彼女はこの10年で、最も良識的な大統領だったといえるかもしれません。

少し前までの、韓国は中国・北朝鮮代理戦争の真っ只中でしたが、朴槿恵が失脚して、文在寅が大統領になった時点で、韓国内では北が圧倒的に優位にたちました。

文在寅大統領は、北朝鮮が韓国を核攻撃するとは考えていません。「北の核はアメリカからの防衛のための核であり、攻撃のための核ではない、平和のための核だ」(盧武鉉元大統領の発言)というのが、盧武鉉の最側近だった文在寅をはじめとする韓国左派系勢力が信じるところです。ですから北朝鮮が「国家核戦力の完成」を表明した段階で南北融和姿勢へ転換するのは、文在寅には当初から「想定内」のことだったのです。

北朝鮮の路線転換とそれを受け入れた韓国が、ともにその先に描いているのが、統一朝鮮実現へ向けた「南北連合国家」(2政府連邦制国家)の形成です。「北朝鮮の国家核戦力の完成」が南北統一への道を開き、しかもそこでは北の独裁体制と核が温存されたままという、まことに理不尽な歴史が始まろうとしているのです。

金正恩が文在寅の訪朝を要請したことで、南北首脳会談が現実味を帯びてきました。実現するとしたら、南北間でどのような話し合いがもたれるのでしょうか。文在寅は果たして、北朝鮮に核放棄を迫るでしょうか。

これまでに南北首脳会談は2回行われています。1回目は2000年6月15日(金大中と金正日)。この会談では、北核問題に触れることなく、「南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした」「南と北は国の統一のため、南側の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした」と、南北統一問題に終始しました。

金大中と金正日の首脳会談を特集した
TIMEのdigitalの表紙

ところが、この2年前の1998年5月30日、北朝鮮は自国製のプルトニウムを用いた代理核実験をパキスタンに挙行させたとされ、8月31日には初の準ICBM(テポドン1号)を、日本上空を通過する形で太平洋に向け発射しています。

2回目の首脳会談は2007年10月4日(盧武鉉と金正日)。そこでも北の核問題には触れず、「南と北はわが民族同士の精神によって、統一問題を自主的に解決し、民族の尊厳と利益を重視して、あらゆるものをこれに志向させていくことにした」と、やはり統一問題に終始しています。

この会談の前年の2006年7月5日には、北朝鮮は初のICBM(テポドン2)、ノドンとスカッドC(火星6)6発を日本海に向けて発射し、10月6日には初の核実験を強行。国連安全保障理事会は即刻、全会一致で北朝鮮制裁を決議しました。

この2例のように、今後の南北首脳会談でも、核問題は抜きで「統一問題の自主的な解決」が話し合われることになるでしょう。これまでアメリカは「北核問題と南北和平問題は別問題」としてきましたから、「核問題抜きの南北首脳会談」に強固な反対をすることはないと思われます。

盧武鉉政権下の三つの「親北政策」

文在寅が心酔する盧武鉉元大統領が最大の政治テーマとしたのは、金大中の対北融和政策である「太陽政策」を引き継いでいっそう推し進め、南北統一へ向けて南北連合国家を形成していくことでした。

そこで盧武鉉がとった政策の一つは、過去の「韓国独裁政権」が侵した人権侵害を断罪することです。しかしその一方で、北の核開発や多数の人権侵害については、批判も抗議もまったく行うことがありませんでした。

盧泰愚

二つ目は、韓国史の「北朝鮮式書き替え」でした。北朝鮮史を肯定的に評価する「親北史観」が台頭していったのです。2003年から多数の高校で採用されていった「韓国近現代史」教科書では、戦後韓国の歴史を「米政府および独裁政府」対「韓国民衆」という構図で否定的に記述し、北朝鮮体制を「民族自尊を守りながら絶え間ない変化を追求する合理的体制」と、肯定的な観点で記述しています。

韓国の中学校の国史教科書

三つ目の政策が「国内親日派」の断罪です。北朝鮮では「日本統治時代に親日行為(日本統治への協力)をした者」は、悪逆な犯罪者・売国奴として粛清されました。これを評価する盧武鉉は、これまでの韓国は「国内親日派」を温存してきたと批判し、北朝鮮と同じく「日本統治時代に親日行為をした者」を断罪すべきだとしたのです。

そのために特別法を制定して「親日反民族行為者」(故人を含む)のリストを作成・公表し、彼らを公式の「売国奴」としました。また、多数の「親日反民族行為者とその子孫」の財産が、国家の手によって没収されています。

教科書も憲法も「北朝鮮化」を狙う文在寅

こうした盧武鉉政権の「対北融和・南北連合国家形成」の政治方針を文在寅政権は継承し、「韓国の北朝鮮化」を推し進める政策をいま、次々に打ち出しています。

例えば、2020年から中学・高校で使用される歴史教科書について、「北朝鮮による6・25(朝鮮戦争)南侵」「北朝鮮の世襲体制」「北朝鮮の人権」などの用語をすべて用いないとする執筆基準試案を提示しています。これは盧武鉉政権すら行わなかったことです。


さらに、文在寅政権を支える与党「共に民主党」は、大韓民国憲法にある「自由民主的基本秩序」の文言から「自由」を削除する憲法改正案を議員総会に提出しました。野党の大反対にあっていくらか引っ込めてはいますが、これまでの韓国では「自由民主的基本秩序」とは、北朝鮮のような「一党独裁体制」の否定を意味するとしてきたのです。

この憲法改正案では、自由市場経済に反して国家的な経済統制を強化する条項など、国家社会主義的な思想が露骨に示されています。文在寅政権は、南北連合国家の形成へ向けて、韓国をできるかぎり北朝鮮に近い体制へ変えようとしているのです。

日米中ロは朝鮮半島の統一を望んでいない

このような状況が続けばいずれ「南北連合国家」が形成されてしまうことになります。しかし、これを支持する周辺国が存在するでしょうか。

中国は、半島に北朝鮮優位で、南北が統一されて大きな朝鮮ができることに脅威を感じるでしょう。韓国の朴槿恵は「親中」でしたが、文は「親北」で、金正恩はあからさまな「反中」ではないにしても、「反中」的です。

そのような南北統一朝鮮ができれば、北の核に、南の経済力、工業力と、様々な外国との結びつきが最大限に活用され、アジアにかなり大きな独裁軍事国家ができあがることになります。そのような国と国境を接することは、中国には許容できないでしょう。

ロシアも同じようなものでしょう。元々、北朝鮮はソ連がつくった国です。それが、ロシアと同等以上のGDPである、韓国と統一されれば、隣国が核を持ちしかも、その経済力がロシアより上ということになります。

南北統一朝鮮は、当然のことながら、軍拡に走るでしょう。そうなると、いずれロシアと同等かそれ以上の軍事国家が半島に生まれる可能性もあるのです。

現在のロシアは、中国には経済力ではかなわない存在になってしまいました。かろうじて、軍事力に関しては、ソ連から継承した、軍事技術やノウハウがあるので、圧倒的に優位ですが、それでも台頭する中国は脅威です。

ロシアは、世界で一番長く中国と国境を接している国です。中国の脅威に加えて、核武装した経済力が自分よりも上の、しかも国境を接した新たな大国南北統一朝鮮が誕生することをロシアは望まないでしょう。

その他の国々も、シリアのような国は別にして、北優位ですすめられる南北統一朝鮮は脅威でしょう。

いずれにしても、この問題は放置しておけば、悪化するだけです。以前このブログにも掲載したように、いずれ半島から北朝鮮も、韓国もなくなり全く新たな秩序が形成されるか、南北統一を許してしまうのか、いずれか一方しかないということだけは確かです。

新たな秩序を作り出すというのであれば、国連軍という形をとるかどうかは別にして、日米中ロはもとより、世界の多く国々が、半島に軍隊を送り込み、少なくとも50年くらいは進駐させて、今後世界を脅かすことがなくなる新たな秩序を作り出すまで、分割統治するくらいの覚悟が必要です。

なお、この時に過去の米国による日本統治のようなやり方は許されません。あくまで、国際法にのっとった形で、実行すべきです。北の人民や、韓国の国民の主権を尊重した形で、民主的なやり方をすべきです。ただし、すぐに世界にとって望ましい体制などできあがるわけもありません。どのようなやり方が良いのか、十分考慮した上で、段階的に数十年かけて実行していくべきです。

一歩間違えて、中途半端にすれば、朝鮮半島が中東のように新たな混乱と緊張と脅威を生み出すだけになります。これは、米国だけではいかんともし難いです。やはり、日本も大きな力を発揮すべきですし、他国の力も大いに活用しなければ、できることではありません。

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2018年3月8日木曜日

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方―【私の論評】日本経済にはまだまだ、まだ!量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方

1月の完全失業率が2・4%と24年9カ月ぶりの低水準となった。この失業率が意味するものは何か。賃金の本格上昇には、低い失業率がどの程度続く必要があるのか。

 本コラムで、NAIRU(インフレを加速しない失業率)がマクロ経済政策、とりわけ金融政策において重要だと指摘してきた。一般的に、インフレ率と失業率は逆相関であり、NAIRUを達成する最小のインフレ率をインフレ目標に設定するからだ。ここから導かれる金融政策は、失業率がNAIRUに達するほど低くない場合、インフレ率もインフレ目標に達しないので金融緩和、失業率がNAIRUに達すると、その後はインフレ率がインフレ目標よりも高くなれば金融引き締めというのが基本動作である。


 そして、筆者の推計として、NAIRUを「2%台半ば」としてきた。国会の公聴会でも説明したが、経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、「2%台半ば」を2・5%ということもある。これは、2・7%かもしれないし2・3%かもしれない。2・5%程度というと数字が一人歩きするので、普通は「2%台半ば」といっている。

 今回、2・4%という数字が実際に出たわけなので、NAIRUに達したかといわれるが、筆者の答えはまだ否である。

 なにしろ、前月の昨年12月は2・7%だったので、0・3%もの大幅な下落となった。一方、1月の有効求人倍率は1・59倍と前月と同水準である。

失業率は、失業者を労働人口で除した数字である。失業者は働く意思があるが失業している人をいうので、1月には大雪があり、職探しを中断して、結果として失業者が減った可能性もある。

 過去のデータを見ても、失業率はあまり上下しない数字である。過去1953年1月から、前月との差をみると、平均0・00064、標準偏差0・11である。ほぼ変動しないのが当たり前だ。これではイメージしにくいかもしれないので、今回のような0・3%下落を探すと、780回のうち今回を含めてわずか7回である。しかも、最大の下落幅だったのだ。


 統計的に見ると、今回の下落はほとんど起こりえないことが起こったわけで、統計的に異常値であるといってもいい。NAIRUになっているかどうかは、あと数カ月間の動向を見なければ判断できない。

 もちろん、失業率が一時でもあれ下落したのは悪いことではない。しかし、これで、金融政策の出口と早計したら、間違った政策になってしまう。

 というわけで、今回の数字だからNAIRUになったとはいえないが、仮にNAIRUになったら、その半年から1年以内に本格的な賃金上昇が来るはずである。なぜなら、人手不足なので、企業は賃金を払わないと人の確保ができなくなり、企業活動に支障が出てしまうからだ。今がNAIRUとは決していえないが、それが目前に迫っていると筆者は思っている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本経済にはまだまだ量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では触れられていませんが、失業率が一時2.4%になったからといって、インフレ目標2%が達成されない限りは、金融緩和政策をやめるわけにはいきません。

失業率に関しては、このたとえが適切かどうかはわかりませんが、失業率を健康の問題などにたとえると、血圧のようなもので、何かの原因で血圧があがって病院に入院したとして、血圧が下がったからといって、すぐに退院ということにはならないでしょう。


やはり、しばらく様子を見るはずです。血圧が安定して、下がっているかをみるのと同時に、血圧が上がった原因が取り除かれたかどうかを検査することになると思います。その結果、大丈夫だということになれば、退院ということになるでしょう。

ただし、その後もしばらく通院して、様子をみて、その後特に変化がなければ、通院もなしということになると思います。

失業率も同じことです。一時、失業率が下がったことをもって、金融緩和をする必要はなしということにはなりません。

さらに、失業率が上がった原因である、デフレ状況が取り除かれ、緩やかなインフレになっているかも調べる必要があります。

インフレ目標は2%ですが、この2%が恒常的にクリアされている状態にもっていく必要があります。

日銀の現在の政策は、市場に供給するお金の量(マネタリーベース)を年間80兆円ペースで増やすとしていますが、これを年100兆円ペースに増やせば、かなりの確率でデフレから完全脱却できます。

ただ、日銀は市場から買う国債の量を年80兆円から年約50兆円程度まで減らしてきています。国債の購入量を拡大するのが難しくなっているのであれば、政府がそれを埋めるだけの財政拡張をして、合計で100兆円にするべきです。財政拡張自体に景気拡大の効果もあるので、実際に増額するマネタリーベースの量はあと10兆円程度でも良いかもしれません。

具体的には、建設国債など新規の国債を増発し、それを日銀が買い上げる方法をとるべきです。その際、日銀のイールドカーブ・コントロール政策は効果的です。政府が財政出動すると景気が刺激されます。金利が上がりそうになれば、イールドカーブ・コントロール政策で長期金利の水準が一定の値に保たれるように日銀が国債を買うので、金利の上昇は止められることになります。日銀が国債を買うことで、量的金融緩和の効果もあります。


日銀が大規模な「量的・質的金融緩和」を導入した2013年4月以降、「予想インフレ率は着実に上昇していましたが、消費税率引き上げと原油価格の下落を契機に弱まってしまいました。

このため、2019年度の消費税引き上げについては消費低迷を通じて予想インフレ率が弱含み、物価が下がることになるでしょう。海外経済のリスクも19年度までに顕在化する可能性があります。その場合、日本経済は相応に下振れることになります。

要するに、今の日本では失業率が2.4%になったからといって、おいそれとすぐに金融引締めや、緊縮財政をするような状況にはとてもないということです。

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