2020年5月29日金曜日

尖閣周辺で中国船が挑発行為、海上民兵による上陸作戦なら海自は手出しできず―【私の論評】国賓来日をキャンセルし、尖閣の守備を固め習近平の野望を打ち砕け(゚д゚)!

尖閣周辺で中国船が挑発行為、海上民兵による上陸作戦なら海自は手出しできず
デイリー新潮


尖閣諸島で最大の島、魚釣島「国土画像情報(カラー空中写真) 国土交通省」

ヘリコプターによる上陸作戦

 中国海警局所属の公船「海警」2隻が5月上旬に尖閣諸島の魚釣島領海に侵入し、付近の海域で操業中の日本漁船に接近した。以降、尖閣諸島周辺で日本領海へ接近・侵入する中国公船は、40日以上にわたって目撃された。 【写真】1日に何十人もの米兵と……【歴史の闇に葬られた「日本人慰安婦」たち】  そもそも、尖閣諸島を中国はどのように占領するつもりなのか? 以下に(問題点は多々あるにせよ、)考えられるシナリオを挙げることにする。

 尖閣諸島のどの島も周囲が岩場で囲まれているため、砂浜への上陸を想定しているエア・クッション艇(ホバークラフト)を用いての上陸は困難だろう。同様に陸自が保有するAAV7のような水陸両用強襲輸送車による上陸も難しい。このため、後述する漁船などの小型船の次に現実的な上陸手段は、ヘリコプターということになる。 

 尖閣諸島が海保、海自の艦船で包囲されていたとしても、「防衛出動」下令前であれば撃墜される危険がないため、最も現実的と思われるのは、ヘリコプターを用いたヘリボーンとなるだろう(ヘリボーンとは、ヘリコプターを用いて敵地などへ部隊を派兵する戦術)。

  ヘリボーンによる占拠の目的は、ヘリコプターで特殊部隊などの先遣隊を派遣し、後続部隊の大規模な上陸作戦を支援するための海岸堡の構築である。しかし、実際には後続部隊もヘリボーンということになるため、大規模な兵員の輸送は難しい。

  ヘリコプターにより、まとまった兵員が輸送され、自衛隊の上陸を阻止するための海岸堡を構築できたとしても、大量の武器、弾薬等の補給を自衛隊の上陸作戦が実行される前に終えておく必要がある。その術を考えるとなると、あまり現実的ではない。

  そもそも前提として、こうした作戦を実行するためには、尖閣諸島周辺の制海権と制空権を確保しておく必要がある。実行する揚陸艦および機動部隊が、海自艦艇や空自戦闘機による対艦ミサイルによる攻撃を受けることになるためだ。

  ただし、中国海軍艦艇にも対空・対艦ミサイルが搭載されているため、日本にしてみても、機動部隊を構成する艦艇全てを壊滅状態にすることは難しい。また、海自や空自にも損害が発生する。

  中国軍が制海権と制空権を確保するためには、海・空自衛隊を大きく上回る戦力を尖閣諸島周辺に投入する必要がある。中国軍が制空権を確保するためには、F-15戦闘機(201機)、F-2戦闘機(92機)のうち本土防空の任にあたる戦闘機を除いた、大半の戦闘機を戦闘不能にしなければならない。

  中国軍は空自のF-15に相当する第4世代の戦闘機であるのSu-27を75機、Su-30を73機、J-11を200機、J-10を270機保有している。このため、質だけでなく量でも中国が圧倒的に有利なように思える。

  だが、大量の戦闘機を一度に飛ばすことはできない。中国本土のレーダー基地では航空機が捕捉できない遠洋において作戦を行うためには、数機(後述するように、東シナ海以外でも戦闘が行われるため)の早期警戒管制機(AWACS)による支援が必要となる。作戦の内容によっては空中給油機も必要となるだろう。中国はこれを可能とするAWACS(KJ-2000)を5機程度保有している。

  中国軍は空対空戦闘および艦対空戦闘により空自の戦闘機を撃墜してゆくわけだが、空自の戦闘機だけが一方的に撃墜されるわけではない。中国の戦闘機も撃墜されることになる。海自のイージス艦により撃墜される戦闘機も多いだろう。

ゲリラ攻撃

「中国軍」としてではなく、漁民を装った海上民兵による上陸作戦が行われる可能性もある。これが最も現実的なシナリオかもしれない。
  民兵とは、退役軍人などで構成される準軍事組織で、正規軍の支援が任務。中国の海上民兵は約30万人とされ、常万全国防相は2016年7月末に浙江省海上民兵部隊を視察、「海の人民戦争の威力を発揮せよ」と訓示した。中国の建国初期に創設された海上民兵は、世界最大の漁船団で編制されている。近年は海上民兵の重要性が増し、建築資材の運搬から情報収集まで幅広い任務を果たすようになってきた。最精鋭部隊は、必要があれば機雷や対空ミサイルを使い、「海上人民戦争」と呼ばれるゲリラ攻撃を外国船に仕掛けるよう訓練されている。 

 漁船1隻に海上民兵20~30人が乗船していると仮定する。200隻だと4000~6000人となる。海保の巡視船のみでこれに対応することが困難なのは、2014年に小笠原諸島周辺に集結した、200隻以上の赤サンゴ密漁中国漁船への対応を見ても明らかである。この時、海保は10人の中国人船長を逮捕したものの、あとの漁船は摘発することなく、領海から追い出すことしかできなかった。

グレーゾーンを突いた作戦

 あくまで「漁民」である以上、この作戦には軍事組織である中国海軍は直接的には参加しない。よって「有事」ではなく、「平時」における事態(日本政府の言うところのグレーゾーン事態)であるため、海自は手出しができないのだ。 

 このため、尖閣諸島に上陸した漁民を装った海上民兵を排除するには、日本の警察官と海上保安官を大量に派遣することになる。では、どのように海上民兵を排除するのか、その方法が問題となるだろう。  仮に武装した海上民兵が攻撃をしかけてきて、海保の対応能力を上回る事態とみなされた場合は、自衛隊は「海上警備行動」として武器を使用することが認められている。ただし、相手方と同等の武器しか使用できない(例えば、素手の相手に拳銃は使用できない)「警察比例の原則」が適用されるため、自衛隊が武力行使できない状態で尖閣諸島が占拠される可能性があるのだ。

  しかし、海上民兵にも弱点がある。長期間にわたり占拠するには、食糧や水の補給が必要となる。特殊部隊なみに訓練された海上民兵なら、蛇などを捕獲して食いつなぐことができるが、それにも限界があろう。長期にわたり「兵糧攻め」を行えば、海上民兵も投降せざるを得なくなるだろう。

もし占領されたら
 仮に、中国軍が尖閣諸島の占領に成功した場合、自衛隊は奪還作戦を実施することになる。しかし、防衛省が島嶼奪還作戦の目玉として導入したLCAC(エア・クッション艇)とAAV7(水陸両用強襲輸送車)は、尖閣諸島のような岩場で囲まれた島嶼への作戦には使用できない。この点は、中国軍が尖閣諸島へ上陸する際の問題点と全く同じである。

  ゴムボート等の小型船、あるいはヘリコプターを用いての上陸となるわけだが、海岸近くの海中には機雷が敷設され、海岸は地雷原となっている可能性がある。また、ヘリコプターによる降下を試みた場合、携帯式の地対空ミサイルで攻撃される可能性がある。機関銃や対戦車ロケット等による攻撃に晒され、組織的に上陸すら出来ないまま撤収することになる可能性も高い。

  このように、占領することよりも、奪還することのほうが大きな困難を伴う。  となれば、少人数の特殊部隊を夜間に上陸させ、ゲリラ戦を展開して中国軍を掃討するしかない。

日本海や西太平洋も戦場になる

 中国が尖閣諸島を狙うとなれば、戦闘海域および空域は、尖閣周辺だけでなく東シナ海全体、西太平洋、日本海にも広がることになる。東シナ海だけでなく、日本海や西太平洋(日本沿岸)も「戦場」とすることで、尖閣諸島周辺へ自衛隊の戦力が集中することを避けることになるからだ。また、米軍の戦力を分散するためにも、西太平洋と南シナ海での活動を活発化させるだろう。

  今回は尖閣諸島について述べたが、南西諸島などの離島を占領する場合も、同じように他の海域や空域で同時に戦闘が展開されることになり、自衛隊は戦力を集中させることが難しくなる。 

 例えば、中国東北部に配備されている空軍機が北朝鮮上空を通過して日本海へ進出してきた場合、空自の戦力の何割かは、日本海での作戦に投入されることになり、九州や沖縄へ投入することが出来なくなる。

  このように、中国が尖閣諸島をはじめとする日本の島嶼を占領するためには、広範囲かつ大掛かりな作戦を実施する必要がある。西太平洋や日本海へ艦艇や航空機を進出させ、訓練や情報収集を行う近年の中国軍の動きからは、こうした事態を想定していることが分かる。

  尖閣諸島周辺における中国公船の動向は、中国の軍事戦略の一端を示しているのだ。

宮田敦司/北朝鮮・中国問題研究家 週刊新潮WEB取材班編集 2020年5月29日 掲載

新潮社

【私の論評】国賓来日をキャンセルし、尖閣の守備を固め習近平の野望を打ち砕け(゚д゚)!

最近は、国内ではコロナ禍が話題となり、世界的には香港や台湾が大きな話題になっていますが、我が国固有の領土である、尖閣諸島への中国艦艇の侵入については、ますます深刻になっているにもかかわらず、あまり話題にもなりません。

沖縄県・尖閣諸島周辺で今月初め、中国海警局の公船が領海侵犯して、日本漁船を追い回すという異常事態が起きた。日本領海で他国が警察権を行使するなど、絶対に許してはならない。元海上保安官の一色正春氏は、中国公船による主権侵害や日本漁船が危険な目に遭った映像を、日本政府は国際社会に公開すべきだと訴えています。

一色正春氏

尖閣諸島については、多くの日本国民が、過去に何度も中国艦艇の侵入などがあったため、それになれてしまったようで、上記の危機的状況にあっても、あまり問題にする人はいなくなりました。マスコミも同じで、侵入の事実は報道するものの、それだけです。

確かに、現在の日本国民の最大関心事はコロナであり、現状ではコロナ禍による経済の落ち込みから、V字回復できるかが、最大関心事であることは当然といえば、当然です。

しかし、尖閣問題に関しては、本当に危険な状況になりつつあるのは、間違いないようです。

習近平は、2018年に憲法を改正(改悪?)してまで、終生主席の道を拓いたのですが、過去の主席と比較すると実績らしい実績がありません。習近平としては、自分の派閥は無論ですが、反対派閥の人間も認める大実績をつくりあげたいと考えています。

しかも、本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一等の大事業が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

習近平は、武漢肺炎の終息を世界で一番先に実施したことを、無理やり大偉業の一つにしました。しかし、これは元々武漢でのウイルス感染の事実がありながら、それを隠蔽したことが、中国全土への感染、ならびにパンデミックにつながったことは厳然たる事実です。

習近平としては、これを中国内ではあらゆる手段を用いて無理やり終息させたのですが、それは、多くの人民も知るところとなり、これだけでは、習近平の大きな手柄にはなりえません。

しかし、台湾統一自体は、米国の関与もあってかなり難しいものになりました。そうなると、尖閣諸島は台湾よりは与し易いです。であれは、今年中に習近平が何らかの手段で尖閣奪取に走る可能性は否定できません。

尖閣諸島を完璧に実効支配し、そこに南シナ海のように、中国の軍事基地を設置して、日本の沖縄侵攻や台湾侵攻への拠点とすれば、これは習近平の手柄となり、中国内での武漢ウイルスと合わせて、全党ならびに全人民を納得させるだけの効果となる歴史的偉業にできる可能性が大です。

これにさらに、日本が習近平の国賓としての入国を認め、天皇陛下と謁見できれば、完璧に習近平は終身主席としての地位を固めることができます。中国では、日本の天皇陛下に謁見したということは、かなりの権威付けになります。習近平は無論、これを狙っているでしょう。

マスクをした習近平

そのためか、日本を刺激しないようにする配慮もしています。実際、中国政府は国営メディアなどに対し、安倍首相への批判を控えるよう指示していたことがFNNの取材でわかりました。

中国外務省は、26日の会見で、25日に安倍首相が新型コロナウイルスが「中国から世界に広がったのは事実だ」と述べたことに反発していました。

しかし、この会見の数時間後、中国共産党系の「環球時報」は、「安倍首相は同盟国であるアメリカに配慮しつつ、中国を刺激することを避けた」などとする社説を掲載していました。

関係者によると、これは、中国政府が習近平国家主席の意向をふまえて、国営メディアなどに批判を控えるよう非公式に指示を出していたもので、米国と対立を深める中、日本との関係を悪化させたくないとの判断があったとみられます。

中国というか中共は、習近平に限らず、自国内部の都合で動きます、外交など二の次です。だから、外務大臣の地位も、日本などの先進国から比較すると相対的に低いです。

尖閣や、香港や台湾等に対する対応や、武漢肺炎ですら、自国内の都合で動くので、日米などの先進国からみると、対応が遅れたり、とてつもない火事場泥棒的なことでも平気で実施します。

普通の国の人間の感覚であれば、習近平が日本を国賓待遇で訪問して、天皇陛下に謁見したいというのなら、しばらくの間は尖閣への侵入をやめるなどのことをするのが当たり前ですが、中共は違います。

そもそも、米中冷戦だって、米国の知的財産を剽窃し、南シナ海を自分勝手に埋め立てて軍事基地化したり、武漢ウイルスも隠蔽した挙げ句に、全世界にパンデミックをもたらしました。

このような中国共産党は、まったく信用に値しません。日本としては、習近平を国賓として迎えるなどのバカ真似はやめるのは当然であり、尖閣諸島についても、忖度の土地も中国に奪取させるべきではありません。

尖閣防衛に関しては、米国のルトワック氏が数年前に日本に対して分析・提言しており、これは、現在でも十分に有効だと思います。それに関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国不法漁船を爆破 インドネシアが拿捕して海上で 「弱腰」から「見せしめ」に対応―【私の論評】ルトワックが示す尖閣有事の迅速対応の重要性(゚д゚)!
エドワード・ルトワック氏
この記事より、ルトワック氏が提唱する尖閣防衛の要諦を引用します。
どうなるか分からない不安定さを持つ中国に対応するために、無理に大局をみるより現実的な個々の事象に対応するべく準備せよというものです。 
日本側が、独自かつ迅速な対応を予め用意しおくように進言しています。しかも、各機関相互間の調整を重視するよりも、各機関が独自のマニュアル通りに自律的に行えるようにしておくべきとしています。 
たちば、海上保安庁は即座に中国側の上陸者を退去させ警戒活動にあたり、外務省は諸外国に働き掛けて、中国の原油タンカーやコンテナ船などの税関手続きを遅らせるという具合です。とにかく、「対応の迅速さを優先させる」ことを強調しています。
各機関が、このようなマニュアルを用意しておき、即座に動くことが肝要であることをルトワックは主張しているのだと思います。各機関が綿密に共同して行動していては、迅速さに欠けて、あれよあれよという間に、南シナ海で中国が実施したように、いずれ軍事基地化され、既成事実をつくられてしまってからは、これを取り消すことは至難の業になるからでしょう。
とにかく、ルトワック氏は、政府としては、政府の各機関が協調して動くようなことはせず、各機関が迅速に動くべきとしています。

政府としては、憲法解釈を変えるか、変えられないなら、「尖閣防衛臨時措置法」などを制定し、防衛省や他の官庁など、いざ中国が尖閣奪取に踏み切った途端に、互いに連絡をとりあい意思決定をするなどのことをしなくても、各部署が予め決めてあったとおり、独自に動き迅速に事を収めるのです。

これは、なぜなのでしょうか。ぐずぐずしていたら、「手遅れ」になるからです。ここで肝に銘じておくべきなのは、
「ああ、危機が発生してしまった。まずアメリカや国連に相談しよう」
などと言っていたら、島はもう戻ってこないということだ。ウクライナがそのようにしてクリミア半島を失ったことは記憶に新しい。(『中国4.0』p152)
安倍総理は、「人民解放軍が尖閣に上陸した」と報告を受けたとします。「どうしよう…」と悩んだ総理は、いつもの癖で、アメリカに相談することにしました。そして、「国連安保理で話し合ってもらおう」と決めました。そうこうしているうちに3日過ぎてしまいました。尖閣周辺は中国の軍艦で埋め尽くされ、誰も手出しできません。

米軍は、「ソーリー、トゥーレイトゥ」といって、動きません。国連は、常任理事国中国が拒否権を使うので、制裁もできません。かくして日本は、尖閣を失いました。習近平の人気は頂点に達し、「次は日本が不法占拠している沖縄を取り戻す!」と宣言するなどという悪夢のようなことにもなりかねません。こんなことにならないよう、政府はしっかり準備しておくべきです。

安倍政権は、現在はコロナ制圧に大成功し、コロナ対策の第二次補正予算では、真水の対策を大幅に増やしました。コロナで大失敗し、本当はかなりの犠牲者を出し、経済がガタガタの中国とは根本的に違います。

ここで、気を緩めることなく、追撃戦に入り、習近平の国賓待遇での日本訪問を中止し、実践的な尖閣防衛計画を立案し、中国が尖閣奪取に走った場合は、緒戦でこれを叩き、習近平の野望を打ち砕くべきです。

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2020年5月28日木曜日

コロナで分かった中国より優れたパートナー台湾―【私の論評】国際金融センターは不安定な香港から台湾に移せ(゚д゚)! 

コロナで分かった中国より優れたパートナー台湾

岡崎研究所

 国際社会は、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックへの対処ぶりを見て、中国共産党独裁体制の隠蔽、脅迫の体質を改めて認識させられた。それとは対照的に、台湾に根付いた民主主義下での透明性と説明責任のある統治は、中国と異なる台湾の存在を明確に印象付ける結果をもたらした。


 中国大陸との間で貿易、投資、旅行者、留学生交換など多くの面で近い関係にある台湾において感染者数、死者数が極めて低いレベルに抑制されていることは、台湾での対応が見事なまでに的確かつ効率的であったことを示している。

 台湾当局の対処ぶりについては、いくつかの特徴のなかでも、きわめて初期の段階において中国との人的交流を遮断したことが特筆されよう。中国から台湾への入国者を全面的に禁止し、同時に、中国滞在の個々の台湾人の帰国を制限し、台湾指定の飛行機を派遣し、受け入れた。また人的隔離政策を徹底させ違反者には罰金を科した。陳時中保健大臣は頻繁に記者会見し、きわめて懇切丁寧に感染状況などを市民に説明した。これら台湾における対処ぶりは、武漢において初期段階での隠蔽工作などに警鐘を鳴らした中国人医師たちを摘発した中国共産党政権とは全く異なったアプローチであったといえる。

 台湾はWHOに対し、すでに昨年12月31日の段階で、武漢において感染者が出ているという情報を通報し、関連情報の共有を希望するとの連絡をおこなったが、WHOはこれを無視し、「習近平体制下の中国はよく感染拡大を防ぐため尽力している」と述べた。

 中国は、感染の世界的拡大は中国から始まったにもかかわらず、ウィルス抑制の成果を誇示している。とりわけ初期の情報開示に問題があったことは歴然としているにもかかわらず、自らを被害者であるとの姿勢を貫き、反省の色を一切見せないばかりか、情報戦を行う構えを見せ、「マスク外交」を展開しつつある。中国に新型コロナウイルスの発生源についての透明性などを求める国に対しては、経済的不利益を示唆するなど恫喝的言辞を投げかけたりもしている。

 新型コロナ、SARSなどの対処に当たって、優れた知識と経験を有する台湾がWHOのメンバーになる資格を有することは今更強調する必要もないだろう。日本としては、従来一貫して、台湾のWHO加盟を支持しているが、具体的にこれを進めるための支援が期待されている。今回のパンデミックの拡大のなかで、WHOがいかに偏向しているかが明白になった。WHOの組織の在り方を見直すことに絡めて、台湾のメンバー加入の問題を見直すことが喫緊の課題となってきたといえよう。5月18日から開かれたテレビ会議方式でのWHO総会にも、各国からの台湾のオブザーバー参加の要請にもかかわらず、結局、台湾は招待されなかった。なお、馬英九・国民党政権時代には、WHOはあらかじめ中国の了承を得た上であろうが、WHO総会へのオブザーバーとして台湾の参加を認めたことがあるが、蔡英文・民進党政権になってこの方式もとりやめた。当時のWHO事務局長は、香港出身のマーガレット・チャンである。

 さらに、WHO加盟に加え、自由・民主主義体制下にある台湾を環太平洋経済連携協定(TPP)の一員として参加させるということは、日本をはじめTPPメンバー国が直面する次なる課題であろう。台湾がアジア・太平洋において占める地政学上の位置、台湾経済のもつ重要性、そしてなりよりも自由で民主的な政治体制からみて、台湾はTPPの一員になるにふさわしい条件をすべて整えている。日本とTPPのこれまでの関与ぶりから見て、日本としては台湾の加盟を支持するうえで主導的役割を果たすことが期待される。

 ワシントンポスト紙コラムニストのロウギンは、5月7日付けの論説‘The pandemic shows why Taiwan is a far better partner than the People’s Republic’において、「今回のパンデミックは中国が全く信用できないパートナーであることを強く示した。われわれは、代わりとなる『中国モデル』(つまり、台湾)があることを認める時期だ」と指摘している。このロウギンの指摘は、決して言い過ぎではない。

【私の論評】国際金融センターは不安定な香港から台湾に移せ(゚д゚)! 

米国では、中共(武漢)肺炎拡散の責任を問う裁判での賠償金の支払いを担保する方法として、中国が保有する米国債の凍結が議論されています。

幸か不幸か、日本国債の保有者の大部分が日本国内の機関投資家等ですが、日本の土地を中国勢が買いあさっていることは周知の事実です。特に、北海道は静岡県を超える程度の土地が中国資本によって買い漁られているという始末です。


共産主義中国では、土地は国有ですから日本人は中国の土地を所有できないです。50年などの長期で借りているだけなのです。これは、中国国民も同じです。中国人は、中国では土地を購入できないのですが、日本では購入できるのです。

これはあまりに不平等です。日本人が中国の不動産を保有できるようになるまでは「対等条件」を主張すべきです。日本において「土地が国有の中国などの国の外国人」が購入した場合は、50年後にその土地を国有化できるようにすべきです。

もし、これに中国人民の不満があれば中国人民は中国共産党に外国人の土地の私有化という「平等な条件」を認めさせるべきです。

実際、大陸中国で混乱が発生した場合は、建物などを含む日本企業資産の没収が行われる可能性が高いですから、日本もこれに対抗措置ができるように法整備を行うべきです。

日中間の歴史問題に対して欧米では関心が薄く、その間隙をぬって、中国人による日本人大虐殺=「通州事件」を無視して、ほとんど証拠がないいわゆる「南京大虐殺」などを騒ぎ立てるプロパガンダが行われました。あろうことか、これに米国も加担しました。

    南京大虐殺だとされた写真の元写真 拡散中の写真は上部文章を故意にカットさ
    れました。-『土匪之為メ虐殺サレタル鮮人ノ幼兒』とあり万宝山事件周辺の
    満州人と朝鮮人の抗争被害者と思われます。
しかし、今回の武漢肺炎によって、共産党発表の欺瞞が世界中の人々に明らかになりました。事情が分からずに、中国共産党の言い分をうのみにして日本を非難していた人々も目を覚ましたはずです。
特に米国は、「コロナウイルス米国発」の中国のプロパガンダや、火事場泥棒が消防士のように振る舞う、中国のマスク外交などには、嫌気がさしたようです。米国も、中国の執拗なプロパガンダの嫌らしさに気づいたようです。

世界中の人々が、中国共産党の実像を理解した今こそ、日本は中国に対して「断交」も含めた「厳しい態度」で臨むべきです。今回は、第二次世界大戦後とはうってかわって、世界中の先進国が日本の後押しをしてくれるはずです。

ナチス・ドイツと手を組んだ戦前の過ちを繰り返しすべきではありません。日本は、第2次世界大戦で組む相手を間違えて、戦後75年間も苦しみました。

現在の中国共産党は、少なくとも米国ではナチス・ドイツ同様「人類の敵」として扱われています。また、武漢肺炎で苦しんだ国々でも反発が高まっています。

そうして共産主義中国は「1つの中国」を強調しますが、中国が1つしかないのであれば、ポツダム宣言に参加したことなどの歴史的正当性から、「中華民国=台湾=民主主義中国」がそれに該当します。

今米国が目指しているのは、明確に中華民国(台湾)が1つの中国であった「米中国交正常化」の前の世界です。1つの中国である中華民国(台湾)と国交を結べば、中華民国を暴力で追い出して成立した共産主義中国とは断交することになります。

また、日本にとって本当に大事なのは、台湾と華僑である。共産主義中国の奇跡の成長の原動力は実は彼らなのです。共産党幹部を中心とした中国大陸の人々は、その果実を奪っただけなのです。

そもそも、台湾や華僑の人々は主に共産主義者による「暴力革命」の魔の手から逃亡してきた人々の集団です。どちらをとるべきかは明らかです。

日本はそれほど遠くない将来に「決断」を迫られるはずです。

東西冷戦は、資本主義と共産主義の対立とされましたが、今始まったばかりの第2次冷戦は「民主主義」対「反民主主義」の対決といえます。

最終的には米国・英国を中心とした「ファイブアイズ」(重要軍事情報を共有するUKUSA協定を締結している米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの5か国)が勝利するはずですから、日本も安倍首相が上手にまとめたTPP11を土台にこれらの国々と親密な関係を保つべきです。

逆に、巨大な「反民主主義国家」である共産主義中国とは早急に断交すべきです。中共武漢肺炎対策で、中国からの入国が規制されている今が最大のチャンスかもしれないです。

このような中、台湾総統蔡英文氏は27日午後に台北市内で記者団の取材に答えました。「自由と民主を追求する香港人の決意を支持する」「台湾での居住や労働などで必要な支援を行う」と表明した。蔡氏は行政院(内閣)に具体的な施策の策定を指示したと明かしました。

香港人が台湾で一般の居留許可を得るには「台湾で600万台湾ドル(約2200万円)以上の投資を行う」などの条件をクリアする必要があります。こうした条件を再考し、受け入れをしやすくする可能性があります。

香港では2019年6月から政府への抗議活動が激化し、台湾など海外への移住希望者が増えました。台湾では19年に、香港人への居留許可の件数が前年比41%増の5858件となりました。20年1~4月は2383件と前年同期の2.5倍となりました。

「香港国家安全法」の制定方針が示されたことで、台湾では中国への警戒感が一段と強まっています。蔡総統が主席を務める対中強硬路線の与党・民主進歩党(民進党)は香港民主派と交流があり、中国側は両者の連帯に神経をとがらせています。

もし国際金融都市で自由都市である香港が消滅するのであれば、台湾が香港を吸収する形で香港の役割を肩代わりできるようにすべきです。

台北国際金融センター「台北101」 クリックすると拡大します

米国や英国、日本、EU、オーストラリアあたりが本気で協力すれば、台湾を正式メンバーとして組み入れた国際社会の枠組みを再構築することもできます。

そうすれば、中国は香港という金融の拠点を失い、世界は台湾という新たな金融の拠点を得ることになります。それは、これからのアジアや世界の発展に寄与することになるでしょう。

大陸中国がいつまでも、共産党一党独裁の今の形で継続するとは考えられません。いずれは体制を改めるか、中国が分裂し、分裂した国々のいくつかは、民主的な道を歩もうとするかもしれません。

その時こそ、台湾が国際金融センターとして本領を発揮すれば良いのです。本来であれば、香港が国際金融センターとして機能するはずでしたが、大陸中国はそれを放棄しようとしています。台湾が国際金融センターになることは、十分に可能であると考えます。民主化する新民主中国にも多いに寄与することになるでしょう。

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2020年5月27日水曜日

2カ月半遅れの中国全人代 経済ガタガタ、外交は…トランプ氏「中国は無能」 コロナ第2波なら共産党のメンツ丸つぶれ? ―【私の論評】日本をはじめ先進国が中国に対しては、厳しい対処をするのが当然(゚д゚)!

2カ月半遅れの中国全人代 経済ガタガタ、外交は…トランプ氏「中国は無能」 コロナ第2波なら共産党のメンツ丸つぶれ? 

高橋洋一 日本の解き方

中国全人代の開幕式にマスクを着けずに臨む習近平国家主席(下)=22日、北京の人民大会堂

中国の全国人民代表大会(全人代)は22日、新型コロナウイルスの感染拡大により、2カ月半遅れで北京で始まった。

 中国経済はガタガタだ。1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6・8%減と発表された。それだけに、全人代は低迷からの脱却をアピールする絶好のチャンスといえる。

 これまで全人代ではその年の経済成長目標を数字で掲げてきた。今回は数字を提示できるかどうかがポイントだったが、明記できなかった。中国の統計数字は信用できないが、全人代の数字は中国政府の目標なので、政治的な意味は十分にある。

 中国経済は厳しい。1~3月期の数字は公表され、4月から経済活動は戻りつつあるとしている。中国経済は外需依存が高いにもかかわらず、世界経済は相変わらず低迷したままだ。しかも、対外部門の統計はごまかしにくい。ここで目標数字を公表すると、かえってやぶ蛇になりかねなかった。

 国内経済対策では、新型コロナウイルス対策のための特別国債1兆人民元(約15兆円)発行など、20年の財政赤字率を前年より0・8ポイント高い3・6%以上に設定した。これは、典型的なマクロ経済対策である。

 対外関係では、特に米国との対立が激化する中で、経済で強調する材料がない。ただし、国防予算は前年比6・6%増で、コロナ騒動の中でも過去最高額だ。また、国内引き締めの意味を込め、香港の反政府活動を摘発するための治安法制「国家安全法」が審議される予定だ。

 ただ、香港をめぐっては、昨年11月に米国で「香港人権・民主主義法」が成立した経緯もあり、予断を許さない。その後、新型コロナウイルスを巡り米中対立は激化した。

 トランプ米大統領は20日、「この『世界規模の大量殺人』をもたらしたのはほかでもない、『中国の無能さ』だ」とツイートした。

 今や、米中は貿易戦争どころか「準戦争」状態のようだ。新型コロナウイルスについて、初期段階で情報を隠蔽した中国に対し、米国を含む世界で損害賠償請求が続出しているくらいなので、トランプ大統領も少なくとも11月の大統領選までは強気の姿勢を崩せない。

 そうした中で、一国二制度を完全に骨抜きにする「国家安全法」が全人代で取り上げられることは、米中対立の火に油を注ぐことになるだろう。

 それにしても、2カ月半遅れたとはいえ、中国は全人代の開催を急ぎすぎている感が否めない。会期を例年の半分の1週間に短縮し、全人代代表や報道陣のPCR検査など感染対策は万全だと強調しているが、中国全土から3000人近い代表が北京に集まる。それらのスタッフを含めれば、数万人が地方から北京に来るわけで、それが感染第2波の引き金となればシャレにならず、中国共産党のメンツ丸つぶれだ。

 それでも開催したということは、コロナ封じ込めに自信があるのか、それとも、仮にそのような事態が起きても報道されないということなのだろうか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本をはじめ先進国が中国に対しては、厳しい対処をするのが当然(゚д゚)!

中国の隠蔽体質からいって、中国全土から3000人近い代表が北京の全人代に集まり、それらのスタッフを含めれば、数万人が地方から北京に来るわけで、それが感染第2波の引き金となるでしょうが、中国はこれを隠蔽することでしょう。油断すると、第二派、第三派の感染拡大が中国を起点として世界中に広がるかもしれません。

そもそも、中国では、中国ウイルスもしくは、武漢ウイルス感染者数や死者の統計を何度も変更しています、最終的にはコロナに感染したとしても、症状が出ない場合は、感染者に含めないということまでしています。

これから、中国では武漢ウイルスの感染者も死者も出ないでしょう。ただし、現実には出るでしょうから、それらは強制隔離して、隔離された人たちが死亡しても、武漢ウイルス以外で亡くなったと、して虚偽の死亡診断書が作成されることでしょう。

中国の保健当局、国家衛生健康委員会は23日、新型コロナウイルスの感染者について、「きのうは新たな感染者は確認されなかった」と発表しました。


中国の保健当局が中国本土で新たな感染者が確認されなかったと発表したのは、中国政府が対策を本格化させた、ことし1月20日以降、初めてです。

一方で、保健当局は感染しながらも症状がないことを理由に、統計に加えていない「無症状」の感染者について、22日に新たに28人確認されたと発表しています。

実際中国の習近平指導部は28日閉幕の全国人民代表大会(全人代=国会)で、新型コロナウイルス感染症対策の評価を巡り共産党や軍の内部で意見の不一致が生じないよう思想統一を図ったようです。これは、はやい話が、今後武漢ウイルスの感染者が出たとしても、出なかったことにして隠蔽することを暗に徹底したものとみられます。

出席者は競うように習国家主席に忠誠を誓い、1週間にわたる会議は事実上、感染症対応への批判を封じ込めるための場となりました。

「全軍が思想と行動を共産党中央の政策決定と一致させなければならない」。習氏は26日、全人代の軍関連の会議に出席。新型コロナ対策で党の指導に従うよう命じました。新華社電が伝えました。

22日開幕の全人代は新型コロナが最大の議題で、習氏の指導力を礼賛する声が相次いだとされています。

国内では、このような徹底もできるでしょうか、国外はそうはいきません。トランプ大統領をはじめ、中国への批判はすさまじく、とどまるところを知りません。

そんな中で、中国外務省が異常な反発をしてきました。安倍晋三首相が25日の記者会見で、「新型コロナウイルスが中国から世界に広がった」と語ったところ、激しく噛みついてきたのです。

中国は、世界全体で34万人以上の死者を出している「死のウイルス」について、発生国として、初動対応の失敗が指摘されていることなどに、問題意識を感じていないのでしょうか。これでは、日本国民は、習近平国家主席の「国賓」来日を歓迎できません。

「ウイルス起源の問題を政治化し、(中国に)汚名を着せることに断固として反対する!」

中国外務省の趙立堅報道官は26日の記者会見で、安倍首相の発言にこう反発しました。ウイルスの起源については「厳粛な科学の問題だ」と言い放ちました。

趙氏といえば今年3月、自身のツイッターで「米軍が武漢に感染症を持ち込んだのかもしれない」と投稿し、ドナルド・トランプ米政権の猛反発を受けた、いわくつきの人物です。ただ、中国外務省高官の正式発信だけに放置できるものではありません。

そもそも、安倍首相は中国に汚名を着せていません。

25日の記者会見で安倍首相は、対中姿勢も明確にした

米ウォールストリート・ジャーナルの記者に、「今、米国と中国がウイルスなどをめぐり激しく対立している。日本はどっち側につくでしょうか?」と突然聞かれ、冒頭の前置きをしたうえで、次のように続けました。

「日本の外交・安全保障の基本的立場としては、米国は日本にとって唯一の同盟国である。基本的価値を共有している。日本は米国と協力しながら、さまざまな国際的な課題に取り組んでいきたい」

「中国も、世界において経済的にも重要な国であり、プレーヤーだ。国際社会は『日本と中国がそれぞれ、地域や世界の平和や安定、繁栄に責任ある対応を取っていくこと』が期待されている」

外交的に極めてバランスのいい発言といえます。

新型コロナウイルスの世界的大流行をめぐっては、米国や英国、ドイツ、フランス、オーストラリアなどで、中国政府の責任を追及し、損害賠償を求める動きが高まっています。

日本は現時点で、こうした動きと一線を画していますが、中国外務省の異常な反発は看過できるものではありません。

この方にはお越しいただかなくてもよろしいのでは・・・・・

中国が、世界保健機関(WHO)をスポークスマンのように手なずけ、当初からウイルスについて正しい発信をせず、世界全体に被害を広めたことは事実です。米国では与野党を超えて『中国発』との認識を持っています。

安倍首相が記者会見で、同様の認識を発信したことは日米連携のためにも重要です。日本の経済界には『習主席の機嫌を損ないたくない』という思惑があるようです。

国会議員からも中国を強く批判する声はあまり聞こえてきません。しかし、人権問題や尖閣諸島での身勝手な行動を考えれば、国民がもっと強い姿勢を示さなければならないです。習主席の『国賓』来日を歓迎すべきではないのです。

ここで、日本としては、習近平の意向で国内では、どうにもでもなることから、海外でもそれが通用すると思わせてはならないのです。

中国は、元々対外関係など重視せず、自国の内部の都合だけで動く習性がありました。かつての世界は、中国市場の大きさに目を奪われ、中国が経済的に発展して豊かになれば、いずれ先進国等と同じ様になり、まともになるだろうと、それを許容してきました。

しかし、それが中国を勘違いさせてきたようです。中国は比較的豊かになっても、先進国のようになることはありませんでした。それどころか、最近の中国は世界秩序を中国にとって都合の良いように作り変えることを公言しました。これは、このブログでも何度か述べたことです。

今の中国にそのようなことをされれば、世界は闇に覆われることになります。だからこそ、日本をはじめ先進国が中国に対しては、厳しい対処をするのが当然なのです。今後、中国が世界で自分勝手、わがまま勝手をすれば、世界中から厳しい仕打ちを受けることを身をもって体験させるべきなのです。



2020年5月26日火曜日

香港は米中通貨戦争の主戦場 習政権、強権支配は経済自爆への引き金 ―【私の論評】国際金融市場をカジノにたとえると、中国は1プレイヤーに過ぎないが、米国は胴元(゚д゚)!

ビジネスアイコラム
香港は米中通貨戦争の主戦場 習政権、強権支配は経済自爆への引き金 



   米中対立はコロナを挟んで冷戦を通り越して熱戦に転じかねない。1月に米中貿易第1段階合意で米中貿易戦争が休止となったのもつかの間、新型コロナウイルス発生時の情報を隠蔽(いんぺい)した中国の習近平政権に対するトランプ米政権の怒りが爆発している。対する北京の方は激しく反発すると同時に、香港に対して国家安全法制定を強要して、「一国二制度」を骨抜きにする挙に出ている。ワシントンはこれに対し、対中制裁を辞さない構えだ。

 こうした一連の米中激突の表層は政治劇だが、根底は米中通貨戦争である。トランプ政権は2018年に米中貿易戦争を仕掛けて以来、中国にハイテクと並んでドルを渡さない決意を日々刻々強めている。ドル依存こそは北京の最大の弱みであり、習政権はだからこそドル流入の玄関である香港を強権支配しようとする。それが「香港国家安全法」の真の意味である。

 だが、トランプ政権には切り札がある。ワシントンが昨秋制定した「香港人権民主法」である。トランプ氏は同法によりいつでも習氏の喉元に刃を突き付けられる。

 同法は、香港が中国政府から十分に独立した立場にあり、優遇措置適用に値するかを国務長官が毎年評価するよう義務付けている。米国は、香港で人権侵害を行った個人に対する制裁や渡航制限を課すことができる、というのが一般的に報じられている概要だ。

 同法の条文に目をこらすと、メガトン級破壊兵器の起爆装置が仕込まれていることに気付く。起爆装置とは「1992年香港政策法」修正条項である。香港政策法とは97年7月の英国による香港返還に合わせて92年に成立した米国法で、香港の高度な自治の維持を条件に、香港に対する貿易や金融の特別優遇措置を対中国政策とは切り離して適用することになっている。

 優遇措置は通常の国・地域向けの場合、貿易、投資、人的交流が柱になり、香港も例外ではないのだが、ただ一つ、香港特有の項目がある。それは「香港ドルと米ドルの自由な交換を認める」となっていることだ。香港人権民主法に関連付けた「92年香港政策法」の修正条項によって、米政府は香港の自治、人権・民主主義の状況によっては「通貨交換を含む米国と香港間の公的取り決め」も見直し対象にできるようになった。

米ドルに対するカレンシーボード制を採用している香港ドル

 香港の通貨金融制度は「カレンシーボード」で、香港金融管理局が香港ドルの対米ドル・レートを固定し、英国系の香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行と中国国有商業銀行の中国銀行の3行が手持ちの米ドル資産に見合う香港ドルを発行する。つまり、香港ドルを米ドルに自由に交換できることが前提となっている。

 中国本土への海外からの対中直接投資や本土からの対外直接投資の6割以上は香港経由である。香港ドルが米ドルとのリンクを失えば、香港は国際金融センターではなくなる。香港に拠点を置く日米欧の企業、銀行にとっても打撃になるが、同時にそれは習政権にとっては、中国経済自爆の引き金になりかねない。

 習政権が香港国家安全法を強行するかどうかは米中通貨戦争ばかりでなく、自国経済、さらに習近平体制の命運に関わるだろう。(産経新聞特別記者 田村秀男)

【私の論評】国際金融市場をカジノにたとえると、中国は1プレイヤーに過ぎないが、米国は胴元(゚д゚)!

中国は単純な理屈を理解していないようです。国際金融市場をカジノにたとえると、米国はカジノのハウス側であり、中国は単なるプレイヤーに過ぎないです。いくら金を持っていたとしても、ハウスのルールは変えられません。ハウス側である米国は、中国を出禁にできます。

カジノでいえば、中国は壱プレイヤーにすぎないのだが、米国は胴元である

無論ハウス側も、自分だけが儲かるようなことをしていれば、お客は集まりまりません。お客にとって、信頼できる、まともな規則や規制や管理手法でカジノを運営しなければならくなります。

現在の国際金融市場には、多くの国々が参加しているわけですから、カジノでいえば、たくさんの客が集まる優良カジノということができると思います。

だから、米国が中国に注文をつけるのも、米国のみの利益を代表しているのではなく、世界中の多くの国々を代表して言っているわけです。無論、イランや北朝鮮などの国々はその中には入らないでしょうが、多くのまともな国々の考えは代表しています。そこを中国は勘違いしていると思います。

かといって、中国が今更新たなカジノ(国際金融市場を作ろうとしても)を作ろうとしても、そのようなノウハウもないし信用もないわけです。もし、中国が独自の国際金融市場をつくったとしても、加入するのは中国、北朝鮮、イラン、その他アフリカや経済的には無価値な国々しかないでしょう。

ただし、中国の国際金融市場に入った国々でさえ、米国の国際金融市場も利用するでしょう。使い勝手の悪い、カジノからお客が抜け出すように、いずれ他の国も抜け出し、中国だけが残るかもしれません。

米国側は、場合によっては、香港ドルを紙くずにする可能性も出てきて、そうなれば、中国は破滅への一歩を踏み出すことになるわけです。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は24日、NBCテレビに出演し、香港の統制強化を定めた「国家安全法」が成立すれば、中国に制裁を科す可能性を示唆しました。

オブライエン米大統領補佐官

その上で「香港がアジアの金融センターとしてとどまると考えるのは難しい」と警告したました。

先程のカジノのたとえでいえば、香港はカジノで特別なお客として、自由に香港ドルをドルというチップに交換できたのですが、その特別待遇を剥奪されることもあり得る事態となったのです。

香港問題が米中対立の新たな火種に浮上しています。オブライエン氏は、昨年11月に成立した「香港人権・民主主義法」に基づく制裁を示唆した格好です。

同法は「一国二制度」に基づく香港の「高度な自治」が機能しているかどうか検証する年次報告書の提出を国務省に義務付けています。米国が香港に認めてきた関税などの優遇措置の是非を判断するほか、人権侵害に関わった中国当局者への制裁も可能にしました。

ドルと香港ドルが換金できなくなれば、人民元の価値もかなり落ちます。人民元は香港ドルに換金しないと他国から、輸入ができなくなります。

それでも中国は、香港に対して国家安全法制定を強要して、米国の怒りを買い、国際金融市場から放逐されたいのでしょうか。そうなれば、このブログでも何度か主張しているように、中国は石器時代に戻りかねないです。

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2020年5月25日月曜日

【JAPAN Forward 日本を発信】希望の光を世界に―【私の論評】マスク外交は、中国ではなく日本が強力に展開すべき(゚д゚)!


日本のコロナ対策は驚くべき成功だ、と伝えるJFの画面

Japanese Approach to COVID-19 is An Amazing Success-There, I Said It

 (やっと言ったぞ!日本のコロナ対策は驚くべき成功だ)


 中国・武漢に端を発した新型コロナウイルスとの戦いは、日本各地で次々と緊急事態宣言が解除されたことで、希望の光が少し見えてきた。

 英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」(JF)には先週、そんな希望を感じさせる記事がいくつか掲載されたので紹介したい。

 たとえば、上の英文(日本語訳)は5月20日に掲載された記事の見出しだ。記事は、千葉県浦安市で高齢者の介護事業所を経営するスウェーデン人、グスタフ・ストランデル氏が寄稿した。母国スウェーデンと比較し、いかに日本のコロナ対策が成功を収めているかを、自らの実体験をもとに記している。

 「『日本の成功』についてニュース記事を探していますが、どこにも見かけないので投稿させていただきます。当記事の執筆時点で、この恐ろしいパンデミックへの日本人の取り組みは、驚くべき成功を収めています」

 そう始まる寄稿でグスタフさんは、コロナによる日本の死亡者数が他国と比較して少なく、死亡率は「奇跡的に低い数字と思われるが実は奇跡などではない」と断言した。世界最低水準に抑えられた日本の死亡率は「世界トップクラスの医療ヘルスケア専門家による科学的なアドバイスに基づいた日本の政策と対応にある」と語った。

 しかし、日本では「テレビやソーシャル・メディアを見ると、惨事に向かっていると思いこんでしまいます。しかし、これは真実ではない」と強調した。

 そのうえで、介護施設で面会者に制限を課さないなど、日本とは異なる対応をしたスウェーデンでは、死亡率が日本の63倍にもかかわらず、「政府やメディア、市民が賢明な関係を保っている」と指摘。「日本はこれまでの成果を誇りに思うべきなのです。(中略)日本のコロナへの合理的かつ責任あるアプローチに関しても、しかるべき時が来たら、それが驚くべき成功であることを皆で認めましょう」と力説した。

マスクをする人々
 海外の高齢者介護についても明るいグスタフさんの言葉は、説得力がある。引き続き、日本の対応を現場から発信していただこうと思っている。

 このほかにも、言論プラットフォーム、アゴラ研究所所長の池田信夫氏が「なぜ、日本のコロナ死亡率は低いのか」(21日掲載)を配信した。英国出身の投資家、ピーター・タスカ氏は「日本のパンデミックの逆説」(同)で、1世紀前の「スペイン風邪」への対応にさかのぼり、政府の厳しい制限がなくとも死亡率が海外より低い日本の“不思議”の秘密に迫った。

 ジャーナリストの櫻井よしこさんは、19日掲載の「感染爆発を回避した日本人の力」で、安倍首相が国民にお願いするだけの緊急事態宣言に至ったエピソードを紹介。首相が「日本人には必ずできるから、頼もう」と西村康稔新型コロナ担当相に話し、宣言を発出した経緯を明らかにした。

 櫻井さんは「命令権の発動なしにここまで達成したのは、日本でなければできない立派なことだ」とし、さらなる国難に備えて緊急事態条項を含む憲法改正の必要性を訴えた。

 JFではこれらの記事を日本語でもさらに詳しく読むことができる。JFは、コロナの闇が覆う世界に希望の光を少しでも届けていきたい。(JAPAN Forward編集部)=次回掲載は6月22日の予定


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【私の論評】マスク外交は、中国ではなく日本が強力に展開すべき(゚д゚)!

日本のコロナ対策は、1億人以上の人口を擁する国としては、トツプであり、これだけ感染者、とりわけ死者が少なかったことに、日本人は誇りを持つべきです。

これに関しては、感染が広まって少ししてからの時点でも、すでにその予兆は感じられました。たとえば、以下の記事でもすでに予兆はありました。
景気大打撃は確実だが…新型コロナからの「日本復活の秘策」はこれだ―【私の論評】日本は的確な経済・金融政策を実行し、年間自殺者2万以下の現状を維持せよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より10万人あたりの感染者数のグラフを掲載します。



 このような図でみると日本の感染者数は少なく、この時点で高橋洋一氏は「日本は感染国とも呼べない」と語っています。にもかかわらず、マスコミは感染者数の実数比較等で、日本はかなり危険であるかのように煽りまくりました。このあたりでは、米国はまだ感染がほとんどなく、数週間後に感染者数が指数関数的に増えていきました。

その時点では、ニューヨーク在住の日本人らが、日本に対して今の東京は2週間前ほどのニューヨークのようだ、その頃にはニューヨークでもこれだけの感染者が出るとは誰ももおよよばなかったという話をテレビで何度も流し、日本人に恐怖を煽っていました。

しかし、現実にはそうはなりませんでた。また、台湾の対策はかなりうまくいったのは事実ですが、マスコミはこの台湾の事例を日本のコロナ対策と対比して、日本がお粗末すぎると煽るために、活用しました。

このブログでも掲載したように、中国政府が昨年8月1日に中国大陸から台湾への個人旅行を停止しました。確かに台湾の対策は素晴らしかったのですが、こがあったため、今年の1月24からの春節の時期にも、中国人は台湾を訪れていないでしょう。

もし、中国が中国人の台湾訪問を禁じていなかったとすれば、武漢などからも大勢が台湾を訪ね、台湾でも中国ウイルス禍はもつと深刻になっていた可能性があります。とはいいながら、台湾はその後の対策も良かったので、あれだけ感染者も、死者も少なかったのです。

ただし、台湾の対策に比較して、日本の対策が格段に劣ったかのようなマスコミ報道は間違いです。
クルーズ船ダイヤモンド・ブリンセスの対応でも、日本はかなりうまく実施し、特に英国政府からはかなり感謝されたにもかかわらず、マスコミはグリンゾーンとレッドゾーンがどうのとさんざんこき下ろしました。

ダイアモンド・プリンセス号の中で防疫作業にあたり自衛隊員

この感染対策では、自衛隊も大活躍したのですが、マスコミはこれもほとんど無視しました。そうして、自衛隊員が数多くのコロナ対策で活動し、未だに誰一人感染した人がいないことも報道しませんでした。

PCR検査に関しては、各マスコミは日本はやらなすぎなどとわめきたて、隠れ感染者はおろか、隠れ死者が大勢いるなどとわめきたてました。これも嘘であることは、はっきりしました。

さらに、この記事でも掲載しましたが、日本のCTの普及率は世界一であることも、日本がコロナ対策で大成功したことを後押ししたこともこのブログに掲載しました。

これについては、なぜか医療関係者ですら、これについてはっきり述べませんが、私は明らかだと思います。

CTで肺の内部を検査すれば、その原因がコロナウイルスであるかどうかは、判定はできないものの、深刻な肺炎であるか、否かはすぐに判定できます。深刻な肺炎であれば、すぐに病院に入院させ、必要な措置をとることができます。

その原因がコロナウイルスであるかどうかは、後で判定しても良いことです。とにかく、肺炎の症状があるかないか、あったとして、どの程度のものかすぐにわかります。

一方PCR検査は、コロナ感染てあるか否かは7割り程度の精度で確定はできるものの、判定までには時間がかかります。

CTも、PCRもいくら検査をしたからといって、それだけで病気が治るわけではありません。病気を治すのは人工呼吸器や薬等による治療です。それと患者本人の免疫力です。残念ながら、いまところ、ワクチンもないし、コロナ感染症向けとして認められた薬もないのです。

日本では、肺炎であることは詳細に判定できるので、現場ではこれを活用するのは当然のことです。これによって、患者を早期に振り分けできることは日本の強みです。

マスコミとにかくこのような日本の強みは無視して、日本は駄目だ、遅れているなどと、マスコミが連日連夜徹底的に視聴者に刷り込みました。

その結果日本では、多くの人が、日本政府や日本国民のコロナ対策について、大成功したという認識をしている人は少ないです。

日本の人口は1億4千万です。1億を超えている国といえば、中国(約14億人)、インド(約13億人)、米国(3億人)、ロシア(1億4千万人)、その他インドネシア、ブラジル、パキスタン、バングラデシュ、ナイジェリアです。

この中で、ナイジェリアは、公式の感染者数や死者数は、比較的少ないですが、医療体制が遅れているため、死因不明の死者が増えており、コロナの可能性もあるとのことです。

この中で、一番コロナ対策で成功したのは日本です。これは、大いに誇るべきことです。そうして、誇っているだけではなく、なぜ成功したのか、その理由を明らかにして、その成功事例を他国にも導入していくようにすべきです。

ミャンマーのヤンゴン国際空港に到着した中国の医療チーム=8日

中国はマスク外交等で、多くの国を苛立たせたり、反感を買っています。それは、当然といえば、当然です。当初の対応のまずさが、これだけのパンデミックを引き起こしたのですから、それを反省することなく、他国にマスク外交をすれば、反感を買われるのは当然です。

このようなマスク外交、いずれの国が実行すべきでしょうか、それは明らかだと思います。それは、日本です。コロナ感染封じ込めに大成功した日本がマスク外交をすれば、反感を買うことはないでしょう。

まずは、最初に日本が中国に対してマスク外交をして、感染症に対する、情報開示や情報共有のあり方、防疫体制、公衆衛生のあり方などを伝授すべきと思います。コロナのようなウイルス感染は、医療だけでは封じ込めることはできません。様々なノウハウが必要です。

大国意識で自意識過剰な現在の中国がこれをすぐに受け入れることはないでしょうが、それを謙虚に受け入れるとき、中国の体制は替わり、世界は大繁栄の時を迎えることになるでしょう。

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2020年5月24日日曜日

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     日本は強制力のない自粛要請でも感染拡大を
     抑え込んだ=9日、東京・原宿の竹下通り

 日本の新型コロナウイルス対策は、都市封鎖など強制力のある措置を取らなかったが、欧米などに比べて感染者数や死者数を抑え込んでいる。その理由を日本の歴史や日本人の衛生観念にあるとみるのは、国際投資アナリストの大原浩氏だ。緊急寄稿で大原氏は、コロナ後に世界経済が大きく変貌するなかでも、日本はV字回復を果たし、黄金時代を迎える可能性があると予測する。


 何があっても安倍晋三首相のせいにする「アベノセイダーズ」は、「モリ・カケ(森友学園、加計学園)」「サクラ(桜を見る会)」に続いて、ウイルスまで政権転覆画策の道具にしている。

 偏向メディアも「政府の対応が悪い」の一点張りだが、日本のウイルス対策は結果を見る限り、誇るべきものだ。PCR検査数が少ないから感染者数や死者が少なく報告されるという論調があるが、至近距離で粘膜を採取することで感染を逆に広げる恐れがある検査をやたらに増やすことは危険だ。「抗体検査」も正確性などの点からそれほど意味があるとは思えない。

 「超過死亡」という指標は、簡略化すれば「平年に比べてどれほど死者が増えたか」という数字だ。東京で2月に一時的に増えたが、全国的には目立った増加が見られない。検査の数がどうであろうと、はっきり確認できるほど死者は増えていないということである。

 日本が成功した要因はいろいろ考えられるが、日本人の衛生観念の高さは重要なものの一つだ。神社で参拝する前に手水(ちょうず)で手を洗う習慣は、古代に感染症が広まったときに始まったとされるし、火葬が早い時期に普及したのも死体からの感染を防ぐためであったと考えられる。

 靴を脱いで入る日本の家屋は土足で歩き回る欧米の家よりもはるかに清潔で、握手やハグと違って約1・5メートルの距離を維持できるお辞儀も優れた社会習慣だ。

 中古品市場が普及する前の日本人の「新品志向」も理由があったといえる。逆に言えば、これから急速に復活する「新品志向」で、シェアビジネスや中古品市場は大きな打撃を受けると思われる。

 また、エネルギー効率の面から機密性が低い日本家屋は非難されてきたが、風通しが良いのは、夏の暑さ対策だけではなく、ウイルス対策の面もあったと思われる。

 日本には、少なくとも聖徳太子の時代から約1400年の歴史を持つ「世界最古の国」として「社会的ノウハウ」の蓄積がある。まだ油断すべきではないし、第2波の可能性も高いが、ここまでの「成功の要因」は一般の日本国民の水準にあるといえる。強制的措置を伴わなかったにも関わらずこれだけの成果を残すことができたのは驚異的だ。

 経済面でも日本に追い風が吹いている。約260年間鎖国をしていた江戸時代に高度な文化・社会が生まれ、開国後、世界を驚嘆させるスピードで欧米諸国に追いついたのも、江戸時代の豊かな蓄積があったからである。

 新型コロナウイルス蔓延(まんえん)で強まる自給自足型経済に日本は向いている。学校では「貿易立国」と教えられてきた日本だが、貿易依存度は、近隣諸国に比べてかなり低い。

 不思議なことに、日本は冷戦時代に繁栄した。戦後の大不況で崩壊しかけた日本経済を救った1950年の朝鮮戦争は、東西冷戦の始まりでもあった。冷戦体制は89年のベルリンの壁崩壊で綻(ほころ)び、91年のソ連崩壊で決定づけられた。日本のバブルは90年頃崩壊し、グローバリズム進展の中で経済が低迷してきた。

 偶然の一致かもしれないが、感染症対策として国境を越えた人間の移動がこれからかなりの間制限されることなどを考えると、「自給自足」に強い日本経済の黄金時代がやってくると考えるのは合理的だ。ただし、日本のアキレス腱(けん)である食糧とエネルギーについては真剣に考えるべきで、それらの大生産国である米国との緊密な関係は極めて重要である。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。


 ■日本の低死亡率「新仮説」に注目

 日本の新型コロナウイルス対策は「PCR検査が少ない」「自粛措置が甘い」などの批判もあったが、欧米などに比べて死者数や死亡率がケタ違いに少ない。この謎について、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、吉備国際大学(岡山県)の高橋淳教授らの研究グループは「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」という仮説を発表して注目。5月9日発行の夕刊フジ紙面に大きな反響があった。

 同研究では、感染力や毒性の異なる3つの型のウイルス(S型とK型、G型)の拡散時期が重症化に影響したといい、日本は入国制限が遅れたことが結果的に奏功したとしている。

【私の論評】今後も続く人手不足が、日本を根底から変える。普通の人が普通に努力すれば応分に報いられる時代がやってくる(゚д゚)!

日本では、令和時代に入ってから黄金時代を迎えるだろうという、意見の経済学者も存在していました。私自身は、経済学者ではないですが、そう思っていました。以下では、日本国内ではどうなるかに力点をおいて説明します。

平成時代は、幕開けこそバブルが頂点にさしかかった「日本経済の絶頂期」でしたが、バブルが崩壊してからは、まともな(日本の主流派ではない)エコノミストらが確実に、そうして正確に予想した通り、長期低迷が続き、マクロ経済面ではまことに暗い時代でした。

諸問題の根源は、失業でした。当初はバブルの崩壊や、それに伴う不良債権問題が失業の主因とされていましたが、それが一段落しても失業問題が続いたのは、本源的な理由が別にあったからです。

それは、このブログで何度か掲載したように、バブル絶頂期には、確かに土地や株などはあがっていましたが、一般物価などはあがっておらず、インフレではなかったにも関わらず、日銀が金融緩和をしてしまったことです。更に追い打ちをかけるように、財務省が緊縮財政政策を取り続けたことです。

これによって日本はデフレに陥ったのですが、それでも日銀や、財務省は姿勢を変えず、金融引締と緊縮財政を続けました。平成時代は一部の例外を覗いて全期間がそのような状態でした。


そのため、日本は極度のデフレと円高に見舞われることになったのです。為替相場というと、酷く難しく考える人もいますが、短期的には予測は確かに難しいですが、長期的には、当外国の金融政策により正確に予測できます。

要するに、他国が金融緩和をしているのに、当該国が緩和しなければ、当外国の通貨は希少となり高くなります。平成時代の日本はまさにこの状況でした。

日銀の引き締め傾向のため、人々が勤勉に働いて物(財およびサービス、以下同様)を大量に作り、人々が倹約して物を少ししか買わなかったために、物が大量に売れ残りました。そこで企業は生産量を減らし、雇用を減らしました。それによって、大量の失業者が生まれたのです。

人々がバブル時代と同じように働いて物を作り、バブル時代よりはるかに質素な暮らしをすれば、大量の失業が生まれるのも、仕方なかったといえます。

失業は、失業した人を不幸のどん底に落とし入れます。経済面での苦境のみならず、「自分は世の中で必要とされていないのではないか」といった気持ちにさせることもあるようです。しかし、それだけではありません。

失業者が大勢いると、企業は雇いたい時にいくらでも安い時給で非正規労働者が雇えます。そうなると、労働者を正社員として囲い込む必要がないので、正社員の採用を減らして非正規労働者を大勢雇うようにな。

そうなると、正社員になりたくてもなれず、非正規労働者として生計を立てざるを得ない人が出てきます。当然、時給は低いし雇用は不安定になります。ワーキングプアと呼ばれる人々です。彼らも、失業問題の派生的な被害者です。

増加傾向にあったワーキング・プア
失業者が大勢いる経済では、ブラック企業が繁栄します。厳しい労働条件で労働者を酷使しても、「失業するよりマシだから」という理由で社員が集まり、かつ辞めないからです。
失業者が大勢いる経済では、労働生産性が改善しません。例えば飲食店は、安い非正規労働者に皿を洗わせることができるため、労働生産性を向上させる自動食器洗い機を購入しなくなります。

また、労働生産性の低い企業が安い賃金で労働者を雇えるため、「安い賃金しか払えない労働生産性の低い企業から、高い賃金の払える労働生産性の高い企業に労働者が移動することで、国全体の労働生産性が改善する」ことも起こりにくくなります。

日本経済はコロナ以前から、労働力不足の時代を迎えたが、アベノミクスの成果である金融緩和によるものです。確かに物価目標は達成はしていないものの、雇用はかつてないほどに改善し、労働力不足になりました。ただし、安倍政権になってからも、2度にわたって増税をしたため、GDPは伸びず、今年になってからはむしろマイナスです。コロナ以前でも、過去の好況時とは比較にならないほど緩やかな景気回復でした。

それでも労働力不足なのは、日銀が、従来の異次元の包括的金融緩和政策から、イールドカーブコントロールに転じて、緩和姿勢を緩めたのですが、それにしても緩和を継続したためです。ただし、そのために未だに物価目標を達成できていません。

コロナ禍後には、この流れは続くでしょう。コロナ禍後は、日銀はさらなる緩和に踏み切ることはあっても、引き締めに踏み切ることはないでしょう。さらに仮に明日から出生率が劇的に上がっても、あと18年は労働市場への新規参入が増えることはありません。子どもが生まれてから、働けるようになるには現在では、少なくとも18年はかかるのです。

つまり、日本経済は当分の間、労働力不足が続く可能性が高いです。あと10年もすれば、「好況時は猛烈な労働力不足、不況時は小幅な労働力不足」といった時代になるでしょう。さらには、失業者が大勢いる経済では、財政赤字が膨らみやすいです。それは景気が悪いので税収が増えず、一方で失業対策の公共投資等も必要になるからですが、それだけではありません。仮に増税しようとすると「増税で景気が悪化して失業者がさらに増えたら困る」という反対論が巻き起こるからです。

そのため、さすがに国民生活は無視してでも、省益のため増税しようという動きは封殺されるどころか、コロナ禍の現状では、減税の声も大きくなっているからです。

今後、労働力不足の時代が来ると、失業に悩む人がいなくなります。これは素晴らしいことです。さらには、今まで仕事探しを諦めていたため失業者の統計に入っていなかった人々までも、仕事にありつけるようになります。つまり、1日4時間程度しか働けない高齢者や子育て中の主婦などでです。実際、現状でもそうなりつつあります。仕事の意欲と能力がある人が全員仕事にありつける経済は、実に素晴らしいです。

ワーキングプアの生活も、マシになっていくでしょう。非正規労働者の待遇は、労働力需給を素直に反映するからです。労働力不足になれば、時給を上げないと労働力が確保できないし、現在の労働者も引き抜かれてしまうので、雇い主は非正規労働者を確保するために時給を上げざるを得なくなるのです。

一方で、正社員の給料はそれほど上がらないかもしれません。若手の給料は、採用難から上がっていく可能性もありますが、中高年社員の給料が上がることはあまり期待できないかもしれません。

特に雇用自体が身分保障のような大企業では、正社員は、中高年になってから辞めると損なので、彼らは給料を上げなくても辞めません。したがって、雇い主としては彼らの給料を上げるインセンティブを持たないからです。

そうなると、やがて同一労働同一賃金に近づいていくことになります。最も恵まれない人々が仕事にありつき、ワーキングプアの待遇が改善し、中高年正社員の給料が上がらないと、格差は縮小してゆくことになります。

ただし、当然のこと本当能力のある人は、昇進の階段を素早く上り、給料もあがることになります。その機会は、従来よりもかなり増えることになります。本当に能力のある人とそうではない人との間に差がつくのは当然です。本当に能力のある人とは、人手あまりのときに重用された調整型ではなく、人手あまりのときにはあまり必要のなかった、本当にマネジメント能力や、イノベーション能力のある人です。それでも、飽き足らない人は新規開業するでしょう。そのようなチャンスも多くなります。

人手あまりのときに、起業が重視した要素はコミニケーション能力=調整能力

ブラック企業もホワイト化せざるを得なです。社員が「辞めても転職が容易だ」と思えば、次々と辞めていくから、ホワイト化しないと社員がいなくなってしまうからです。パワハラ上司やセクハラ上司もいなくなるでしょう。理不尽なことをすれば、社員はすぐに辞めて他の会社に移ることになるからです。

日本経済の効率化も進むはずです。労働力不足に悩む企業は、省力化投資に注力するため、省力化が劇的に進むでしょう。これまで省力化投資のインセンティブが乏しかった分だけ、日本企業は省力化投資で効率化する余地が大きいからです。コロナ禍はこれに更に拍車をかけることになるからです。

日本経済の労働生産性が上がる理由は他にもあります。失業対策としての公共投資は不要になるし、生産性が低くて高い賃金の払えない企業から労働者が抜け、生産性が高くて高い賃金の払える企業に労働者が移るからです。

さて、上の記事で、「コロナ禍後には、学校では「貿易立国」と教えられてきた日本だが、貿易依存度は、近隣諸国に比べてかなり低い」としていますが、実際どのくらいかといえば、日本は十数%です。中国や、韓国は数十パーセントです。ちなみに、米国は8%前後です。日米の貿易がGDP占める割合は、世界順位でいうと最下位に近いです。

日米などは、もともと内需の大きい国なのです。しかし、学校で習った「日本=貿易立国」が頭から抜けきらない高齢者などは、「いや確かに、自動車などを輸出している輸出企業は、日本全体からみれば、少数かもしれないが、それが他産業に及ぼす影響は計り知れないので、日本は貿易なしではやっていけない。それに、昔はもっと輸出の比率は高かったはずだ」等というかもしれません。

しかし、20以上以上前というと、日本では、輸出がGDPに占める割合は、現在の米国に近い8%くらいなものでした。

輸出産業は裾野が広いというのは、事実そうなのかもしれませんが、同じ手法をつかって統計をとって、日本は輸出がGDPに占める割合が低いのですから、米国と同じように内需で伸びてきた国ということができます。ただし、平成期間中はほとんどがデフレだったので、国内では物を作っても売れないので、輸出が増え8%台から10%台にまで増えたということです。

しかし、コロナ後は、またこの数値が8%くらいまで低くなるかもしれません。なぜなら、コロナ禍で、マスク等がなくなってしまったようなことがないように、多くの産業が国内回帰するか、日本が信頼できる国に生産拠点を移すことが考えられるからです。

そうなると、内需が増えて、人手不足はまだ続きそうです。そうなると、企業にとっては日本国内での競争の激しい時代になるのは明らかですが、それにしても、コロナ禍で不安定な世界情勢を考えれば、カントリーリスクや、為替リクスを回避するためには、日本国内で競争せざるをえず、人手不足はますます深刻になり、多くの国民にとっては黄金時代に迎えることになるのは、確かなようです。

ただ、日銀が金融引締に、財務省がコロナ禍終息後に増税するなどのことが考えられますが、すでに、平成年間の大失敗の理由は明らかになりつつあるととにも、日銀、財務省のような省庁や政治家の事務所においても、人手不足になるのは、目に見えており、これに合理的な対応をしつつ、他方で非合理な金融政策、財政政策をするなどのことは考えにくいです。



今までは、企業も官庁も、政治家も、人手が余っていたので、それこそ、経営者や高級官僚が、従業員や国民のことなど真摯にそうして、親身に考える必要もなく、替わりの人間などすぐに得ることができたので、小人閑居して不善を成すを地で行くような自堕落な働きかたをしてこれました。皆さんも、「なんであんな馬鹿な人間が、高級官僚や、大企業の経営者になれたのだろう」と不思議に思ったこともあったかもしれません。

人手あまりの時代には、マネジメント能力やイノベーション能力がなくても、調整型の極端なことをいえば、今話題の人のように、夜中まで麻雀ができる人間が、重宝されたのです。下手にまともに管理をしたり、イノベーションをする人は疎まれることも多かったのです。

馬鹿な人間は、国民が困っていようと、大きな危機が迫っていても、呑気でおられたのですが、今後そのような人間は、あらゆる方面で、淘汰されることになります。人手不足がそれを許さなくなるからです。

これから、官庁の仕事だって、大きな部分が民間に委託されて、官僚はそれを管理するだけということにもなるかもしれないのです。人手不足の時代は、今まで考えられなかったことが、起こるのです。しかし、このような変化は以前も述べたように、コロナ禍によって引き起こされるのではなく、起こるべくして起こるのであり、コロナはそれを顕にしたに過ぎません。

日本では、まずはコロナ後は世の中が根底から変わる未曾有のレジームチェンジが起こるというより、既存の知識で考えて不合理なこと、まともな世の中では不都合なことが急速に変革されていくことになるでしょう。

民間企業では、アウトソーシングがさらに進むことになるでしょう。ぼんやりしていると、入社時と同じ仕事をしているにもかかわらず、会社は別会社になってしまっているということが起こり得るのです。

本当に賢い人だけが、入社時より高い管理能力や革新能力を身につけ成長して、入社時と同じ会社の残ることができるかもしれません。それに飽き足りない人は、先にも述べたように起業することになるでしょう。そうして、終戦直後のように、日本で次世代を担うような革新的な起業が輩出することになるでしょう。

普通の人が困らず生活できて、努力すれば応分に認められ、リーダーを目指す人や、現状リーダーである人には、カリスマ性や、セールスマンシップや調整力ではなく、真の意味でのリーダーシップが求められるようになるのです。

常に人手不足にさらされるこれからの時代には、合理性を無視した極端な緊縮財政や極端な金融引締は回避されるのではないかと思います。であれば、日本は黄金時代を迎えるのは、間違いないと思います。

ただ、日銀や財務省は、国民による厳しい監視を続け、昨年の増税などの非合理な動きをしたときには、厳しく糾弾していく必要性は、ここしばらくはありそうです。

2020年5月23日土曜日

米、中国に激怒!コロナ禍に香港で“火事場泥棒” 国防予算も異常な高水準で軍事大国へ突き進み ―【私の論評】実績をつけたい習近平は、これからも火事場泥棒的なことも平気で繰り返す(゚д゚)!

米、中国に激怒!コロナ禍に香港で“火事場泥棒” 国防予算も異常な高水準で軍事大国へ突き進み 
第2の天安門に!?香港デモ

開幕した中国の全人代で、習国家主席は拍手で迎えられた

 中国の習近平政権が、「火事場泥棒」的体質をあらわにした。新型コロナウイルスの感染拡大で世界各国が混乱するなか、22日に北京で開幕した全国人民代表大会(全人代=国会)で、香港に直接「国家安全法」を導入する方針を示したのだ。香港立法会(議会)を無視した暴挙であり、「一国二制度」を事実上終了させる。香港市民だけでなく、ドナルド・トランプ米政権も激怒している。さらに、覇権拡大のため、国防予算も異常な高水準を維持した。

 「(中国の今後の出方次第で)強く問題視するだろう」

 トランプ大統領は21日、ホワイトハウスで記者団に、こう語った。マイク・ポンペオ国務長官も22日の声明で「(国家安全法の香港導入は)破滅的な提案」と非難し、中国に再考を求めた。英国とオーストラリア、カナダの外相も同日、共同声明を発表し「深い懸念」を表明した。

 中国が香港に導入するという「国家安全法」では、国家分裂や政権転覆行為、組織的なテロ活動、外国勢力による介入が禁止される見通しだ。制定されれば、1989年の天安門事件の犠牲者を追悼する集会なども恒久的に禁止される可能性がある。王晨副委員長が22日の全人代で提案。最終日(28日)に採決される見通しという。

 香港の民主派は「(言論や集会の自由が認められた)『一国二制度』は、正式に『一国一制度』になってしまう」と激しく反発し、インターネット上でも抗議デモが呼びかけられている。22日の香港株式市場は混乱の拡大を懸念し、前日終値比で大幅下落した。

 自国で発生した新型コロナウイルスの影響で、2カ月半延期されていた全人代。「2020年の国内総生産(GDP)の成長率目標」や「台湾問題」「感染第2波」などが注目されていたが、習政権は「香港問題」で強権を発動してきた。

 さらに、習政権は「軍事大国」に突き進んでいる。

 中国の2020年国防予算は1兆2680億500万元(約19兆1000億円)で、前年実績比6・6%増と高水準を維持した。日本の20年度当初予算の防衛費5兆3133億円の約3・6倍にあたる。中国の国防予算の実態は、公表額の2倍以上との見方もある。

 習政権は、南シナ海や台湾問題をめぐって、世界最強の米軍との対立が今後激化するとみている。民主主義国家が、新型コロナ禍で軍事・防衛費が抑制される流れになるなか、共産党独裁国家は異様な軍備増強路線を止める気はなさそうだ。

【私の論評】実績をつけたい習近平は、これからも火事場泥棒的なことも平気で繰り返す(゚д゚)!

習近平は、今回に限らず、米国等を苛立たせる火事場泥棒的な行動を何度もくりかえしてきました。そうして、特に最近そが目立つようになってきました。それはなぜなのでしょうか。中国は元々、対外関係などよりも、自国の都合で動く国であり、最近の一連の火事場泥棒的な行動も、そのほとんどが中国国内の都合によるものです。

コロナ禍で忘れ去られた感がありますが、本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もし、習近平が、過去の主席らに匹敵するような、大きなことをやってのければ、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となるからです。

      2000年台「全面的な小康社会の実現」に向けて、実現程度は年々スピードアップ
      していると言われた。写真は2007年、将校社会のポスターの前を歩く女性

コロナ禍に関しては、これはマイナスになると考えるのが普通ですが、習近平はこれを無理やりに終息させ、それも他国に先駆けて終息させ、巧みに自分の手柄としました。しかし、これだけでは、全党や人民に納得させるだけの歴史的偉業とはなりません。

習近平としては、コロナ終息に加えて、何か一つでも良いので、両方で歴史的偉業になる、何かを付け加えたいのです。それが、台湾統一や、香港問題の解消なのかもしれません。とにかく、時宜を得た歴史的偉業を達成するための何かを追い求めるあまり、米国などからすれは、火事場泥棒のようなことを平気でやってしまうようです。

実際のところ、習近平は過去の主席と比較すれば、何も実績があったとはいえません。特に、権力闘争の相手方にみせつけられるようなものはありません。

習近平の唯一ともいえる有利な点は、中国の政治において最も重要なファクターは「客家人ネットワーク」だと言わており、習一族もこの客家に属しているということです。「アジアのユダヤ人」とも言われる彼等は、中国、シンガポール、台湾、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、米国などの中枢に強固な繋がりを持つ華僑ネットワークを形成しています。

客家は、孫文、鄧小平、宋美齢、江沢民、習近平、李登輝、蔡英文、李光耀など、アジアを中心として多くのキーパーソンを排出しています。

ところが、習近平は、2018年3月11日、全国人民代表大会において中国憲法の改正案が採択された結果、国家主席や副主席の任期が連続して2期を超えてはならないとしてきた従来の規定が削除され、終身主席の道を拓きました。

習近平が2012年11月15日に党総書記に就任(翌年3月14日に第7代国家主席に就任)した時点で、現在の空前の権力集中を予測した者はほとんどいませんでした。

習近平政権を特徴づけるのが、党幹部に対する強烈な反腐敗運動です。政権第1期の5年間で200万人以上の党幹部がなんらかの処分を受け、なかには前政権での政法部門のトップだった周永康、軍制服組のトップだった郭伯雄や徐才厚、次世代の総理候補と目されていた孫政才など、高官までもが失脚の憂き目に遭いました。

周永康のような党常務委員経験者については、従来は党内規律違反による摘発や刑事訴追がおこなわれない不文律が存在していたとされますが、そのタブーをあえて踏み越えた習近平政権の特殊性は際立ちます。

法定に姿を見せた周永康氏、わずかの期間で白髪頭となり、中国内で話題となった

中国では江沢民・胡錦濤時代に腐敗が進行し、庶民の怨嗟の的となっていました。反腐敗運動は国民的な支持を得やすい政策なので、党内の引き締めという意味の他に、一種のポピュリズムの側面も持つと見られます。

腐敗幹部たちが地位を失った後、習近平派の幹部がそのポストを襲う形で出世する例も多く、反腐敗運動は習近平による自派の官僚団へのポストのばら撒き政策としての側面もあります。

なお、習近平派の官僚たちの多くは習近平の過去の地方勤務時代の部下や、習近平及び父の習仲勲と過去に縁があった人物で占められています。こうした官僚は、習近平がかつて浙江省の書記を務めていた時代に地元紙に連載していたコラム「之江新語」から名前を取って「之江新軍(しこうしんぐん)」と呼ばれています。

他に個人崇拝の復活も特徴的です。中国では文化大革命時代の極端な毛沢東崇拝への反省から、1970年代末からは鄧小平のもとで個人崇拝の忌避や集団指導体制が打ち出されてきたのですが、習近平はそのタブーを破った形となっています。

プロパガンダポスターなどに、習近平(および妻の彭麗媛)の肖像や名前がしばしば大きく取り上げられ、また習近平個人を礼賛する楽曲も登場しています。はなはだしくは、習近平の顔が大きくプリントされた置物用の景徳鎮の皿なども、党員の研修先に指定されやすい革命聖地の売店などではよく売られています。

  前任者の江沢民・胡錦濤時代はあまり見られなかった、習近平個人を前面に出した
  プロパガンダが目立つようになった。地方都市や、一部の革命聖地では、しばしば
  「習近平グッズ」が売られるようになってもいる。

こうした現象は前任の胡錦濤時代まではほぼ見られなかったものです。習近平の書籍や語録が大量に出版されていることも興味深いです。

2018年の改憲では、ついに憲法の中に「習近平新時代中国特色社会主義思想」なる、習近平個人の名前を冠したイデオロギーが国家の指導思想として明記されるに至りました。

中国の憲法のなかで、過去に個人名を冠したイデオロギーが含められた例は毛沢東(毛沢東思想)と鄧小平(鄧小平理論)だけであり、習近平はこうした過去のストロングマンに並ぶ場所に押し上げられた形となりました。

しかし、習近平には毛沢東は建国の父として、鄧小平は改革・開放で経済を伸ばしたという実績がありますが、習近平にはそのような実績はありません。

その実績のない習近平が、コロナ禍に関しては、無理やり終息させたため、人民には根強い不信感が残っています。共産党内部でも、実績のない習近平は当然権力闘争の相手方からは、不興を買っています。

だからこそ、香港で弱みを見せられない習近平は、米国などから火事場泥棒のようにみられることを承知でも、香港に直接「国家安全法」を導入する方針を示したのです。

実績をつけたい習近平は、これからも、国外からみれば火事場泥棒的なことも平気で繰り返すことになるとみられます。

台湾や、日本の尖閣諸島などは、格好の標的です。日台はもとより、米国などもこのことをわきまえ、中国の今後の動きに対応していくべきです。まずは、習近平を失脚するようにもっていくべきです。

そのようのなか、習近平の国賓待遇での訪日など、あり得ないことです。習近平としては、日本の天皇謁見を自らの権威付けとして期待しているだけのことです。日本は、絶対にそのようなことをさせるべきではありません。

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