2020年7月27日月曜日

後戻りできない欧米vs中国 西側諸国は中国を「敵」認定も…日本は“媚中派”国会議員が暗躍 国際投資アナリスト・大原浩氏が緊急寄稿— 【私の論評】日本でも早急に国会で恒常的に、中共の悪行を暴くシステムを構築すべき!(◎_◎;)

後戻りできない欧米vs中国 西側諸国は中国を「敵」認定も…日本は“媚中派”国会議員が暗躍 国際投資アナリスト・大原浩氏が緊急寄稿

習主席(前列中央)らは開放路線を捨てたのか

 国際社会の批判を無視して、「香港国家安全維持法」を強行した中国の習近平政権。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、米英など西側諸国が中国を「敵認定」し、対立は後戻りできないと指摘する。4~6月期国内総生産(GDP)はプラス成長に戻ったが、「改革開放」以来の経済繁栄も終焉(しゅうえん)を迎えるしかないとみる。


 香港政府が、立法会(議会)選挙を9月6日に実施すると発表した。

 昨年11月の区議会議員選挙で、民主派が452議席の85%にあたる385議席を獲得(選挙前は約3割)して圧勝したことに、習政権が「立法会選挙で負ければ『俺たちに明日はない』」と危機感を深めたことは容易に想像できる。

 そのため、国際的な猛批判を覚悟の上で、香港国家安全維持法を6月30日に施行した。この法律の内容は驚くべきもので、例えば私が書いた本記事の内容が中国共産党に批判的だと判断されれば、日本国籍を持ち日本に在住する私を逮捕・投獄し刑罰を与えるというものである。もちろん、SNSをはじめとする中国共産党の監視網は周知の事実だから、読者がZoom(ズーム)、TikTok(ティックトック)、フェイスブックなどで「天安門」という言葉に触れるだけで投獄・監禁される恐れすらあるのだ。

 もちろん、日本国内にいる限り、共産主義中国は「手出しをできないはず」だが、それも心もとない。まず、中国公船が尖閣沖に執拗(しつよう)に侵入しているのに、日本政府はまともに対応していない。それどころか、媚中派の国会議員が「習主席の国賓招待」を何とかつなぎとめようと暗躍している。

 過去の北朝鮮による拉致問題も、「北朝鮮による拉致はなかった」などと平然と述べた特定野党の議員や偏向メディアの存在を忘れることはできない。再び娘の顔を見ることができずに旅立った横田滋氏をはじめとする被害者家族の心中は察するに余りある。

 北朝鮮の拉致問題でさえお寒い状況なのだから、それ以上の力を持つ共産主義中国への対応は目も当てられない。不当な理由で中国大陸において拘束・監禁されている日本人の救出などほとんど行われていないと言ってよい。だから、私あるいは読者にとって「香港国家安全維持法」は、差し迫った脅威といえる。
 立法会選挙の立候補の届け出は7月31日までであるから、今後中国共産党による民主派への弾圧は激しさを増すであろう。また、1997年に再譲渡・返還を行った英国や西側社会は「50年間の一国二制度維持」が解除条件のつもりであったから、約束違反が明

確になった今、「香港返還」を求める声がますます高まる。

そもそも、西側が香港の再譲渡・返還を容認したのは、鄧小平氏の改革開放が成功しはじめた時期に「50年間、一国二制度を維持し最終的に民主化を実現できる」と判断したからだ。「香港返還」と「改革開放」は切っても切れない関係にあり、「改革開放」は、中国大陸の「一国二制度」と呼んでもよい。共産主義独裁という枠組みの中で「自由主義市場」という別の制度が機能したからこそ、近年の経済的な躍進があった。

 しかし、改革開放と密接に結び付いた「香港の一国二制度」を1939年のナチス・ドイツのポーランド侵攻のように踏みつぶした習氏は、明らかにカエサルの「賽(さい)は投げられた」という言葉で有名なルビコン川を渡った。

 同時に、西側諸国も「香港で維持できない『一国二制度』が中国大陸で実現できるはずはない」として「敵認定」したのだ。

 どちらも、もう後戻りはあり得ない。どれだけ習氏の運が良くても中国大陸の経済的繁栄はいずれ終わり、最貧国の一つだった毛沢東時代に逆戻りするしかない。感染症対策などで李克強首相の人気が高まっているが、彼が鄧小平氏のようになる可能性は少ない。

 いまだに多くの日本企業が中国との取引を行っているが、社員の生命と安全を犠牲にすべきではない。日本政府は尖閣侵入などへの対処を厳しくすべきで、「約束を守らない」中国共産党政権との断交も検討すべきだ。

【私の論評】日本でも早急に国会で恒常的に、中共の悪行を暴くシステムを構築すべき!(◎_◎;)
私は、冒頭の記事の大原浩氏の主張に全面的に賛成です。現在の日本人は、これくらいの認識を持つべきでしょう。もうすでに、世界は変わったのです。

中共が6月30日に施行した、香港国家安全維持法の適用範囲は、全世界どころか、全宇宙にまで及びます。これは、冗談でもなんでもありません。たとえば、誰かがSNSなどに書いた内容が中国共産党に批判的だと判断されれば、いかなる国の誰であろうと、中共が逮捕・投獄し刑罰を与えるというものです。

これは、本当に宇宙でも適用されるのです。中国を批判した、たとえば宇宙飛行士が、宇宙ステーションに滞在していたとして、そこに中共が警察官を派遣できれば、その中で逮捕できるのです。

無論、宇宙ステーションの管理統括者がそれを拒否すれば、現実にはできないでしょうが、法律上はではそれができるのです。全く異常な法律です。私は、このような法律を作った時点で、中国は世界のアウトローになったと言っても過言ではないと思います。

国際宇宙ステーション(ISS)
中国の異常さは、これだけに及びません。中国は過去に「国防動員法」という法律を制定して、施行しています。

この法律の中身を簡単に言うと、中国国内で戦争や武力衝突が発生した際に、金融機関や立海空の交通輸送手段、港湾施設、報道やインターネット、医療機関、郵便、建設、貿易、食糧などの民間資源をすべて政府の管理下に置くことができる、というものです。

さらに戦争中だけでなく、平時であっても中国人民を動員できるのです。いや、動員できるのは中国人民に限りません。中国の領土内にある外国系企業も動員の対象です。

つまり、この法律が適用された場合、例えば兵器に転用できる部品を生産するようPRCが外国企業に要請し、その要請に応じない場合、外国企業は罰金などの処罰を受ける可能性があるということです。

さらに恐ろしいのは、これは外国にいる中国人にも適用できるのです。日本に数十万人はいる中国人留学生や技能研修性も、PRCから戦争のための動員命令が来たら、それに従うしかないのです。武器さえあれば、兵士に早変わりです。
そんなことできるはずがないという人、そういう人は本当に甘いです。あなたが中国人だったとして、ある日中共から指令が来て、それにあくまでも従わなかったらどうなると思いますが。中共はあなたの家族を拉致して、従わなければ、家族を殺すと脅されたらどうしますか。
これには、たいていの人が従うでしょう。現在日本に在住する中国籍の人は、全員がこのようになる可能性があります。
もう中国人個人の善意などは、信じられません。「中国人の中にも良い人はいる」など呑気なことは言っておられません。あなたの近くに住む、中国人ある日突然、中国のスパイや、中国の民兵に早変わりする可能性があるということです。これは、現実にあり得ることであり、「ヘイト」などではありません。
「国防動員法」そのものに関しては、多くのサイトで詳細に説明されていますので、ここでは詳細は、説明しません。そのようなサイトを参照して下さい。

このような異常な法律を中国は施行したのです。私自身は、この法律を施行した時点で、中国は終わったと思いました。遅かれ早かれ、今日のように米国を初め多くの国々が、中国と対抗し、中共を崩壊させることになるだろうと思いました。
今日の中国は、「国防動員法」の頃から、何も改善されることもなく、最近では「香港国家安全維持法」を施行しました。
もう中共を信用することなどできないことは、はっきりしたと思います。
しかし、日本では、上の記事にもあるように、「親中派」が未だ、暗躍している状況です。米国で日本の「親中派」と同じような発言をすれば、政治生命が断たれてしまうでしょう。
それどころか、怒った有権者が、そのような政治家などに投票せず、政治家にもなれないでしょう。役人もそのような発言をすれば、日の目を見ることはできなくなるでしょう。しかし、この変化は米国でもここ数年以内で起こったことです。まだ、10年も経っていません。
わずか、4年くらい前までは、ある米国在住の日本人の国際政治学者が、米国では中国エンゲイジメント派(中国関与派)が主流であり、特に米国でもほんの少数のエスタブリッシュメント(支配層)が、巨大な富を背景に、大統領すら操っており、そのエスタブリシュメントが、親中派なので、これから先、米中関係が大きく変わることはないだろうと、ドヤ顔で語っていました。
私自身は、そのようなことはないだろうと、いわゆるエスタブリッシュメントと言われるような人々でも、中京をそのまま放置しておけば、自分たち自身にも害を及ぼすことにいずれ気づくだろとうと思っていました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。
しかし、これはトランプ大統領が登場以来、ガラリと変わって、今日に至っています。だから、日本でもこれからガラリと変わっていく可能性は十分にあります。
しかし、これは、そうゆっくりもしていられないところがあります。本日以下のような記事が、産経新聞に掲載されました。
米有力研究所が安倍首相側近を「対中融和派」と名指し 古森義久
 報告書は「日本における中国の影響力」と題され、CSISが国務省の「グローバル関与センター」の支援を得て作成され、公表された。中国の統一戦線工作部などの諸機関が日本に対し、どのように影響力を行使し、どのような結果を得ているかについての広範な調査に基づいている。 
 約50ページの報告書は、CSIS研究員やコロンビア大学教授を歴任した国際政治学者のデビン・スチュワート氏が主体となり、日米中3カ国などの専門家約40人との面接調査や広範な資料を基に、約2年をかけて作成したという。 
 報告書は「中国の日本でのシャープ(鋭い)パワー・汚職」という項目で中国がかかわる日本では珍しい汚職の事例として統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件で、収賄罪で起訴された衆院議員の秋元司被告の中国側との関係などについて詳述していた。秋元被告が自民党の二階派所属だったことも強調し、次のように述べていた。 
 「自民党の二階俊博幹事長の名から二階派と呼ばれる自民党のこのパワフルな派閥は親中派である。同派閥は『二階・今井派』と呼ばれることもある」
 「今井とは首相補佐官で経済産業省出身の今井尚哉氏のことで、同氏は安倍首相が中国や中国のインフラ・プロジェクト(巨大経済圏構想「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行=AIIB)に対する姿勢をより融和的にするように説得してきた」 
 この記述は今井氏が安倍首相の対中政策に関して二階氏と同等の影響力を有しているという認識であり、今井氏の安倍首相への説得についても「すでに説得した」という意味の完了形を使っていた。 
 米国の政策研究機関が他国政府の対外政策に関するこの種の調査報告で、政治指導者や閣僚ではなく本来は裏方の補佐官の名を特定してその影響力を指摘することは珍しく、米側はそれだけ今井氏の役割に強い関心を持っているといえる。 
 米側がこうして日本の中国への政策や認識に強い関心を示すのは、トランプ政権が対中対決を強める中で日本に共同の対中姿勢を求めていることにも起因する。この報告書の作成を支援した国務省「グローバル関与センター」は、中国の対外的な影響力工作や政治宣伝への対応を任務としている。(ワシントン駐在客員特派員 古森義久)
このような状況が続けば、二階氏なども米国の制裁の対象になりかねません。それどころが、日本がいつまでも二階派などに牛耳られて、中国に利するようなことばかりしていれば、日本の政治家ばかりでなく、日本の企業や、銀行など、いやそれどころか、日本そのものが制裁を受ける可能性もあります。

現在の世界情勢を見ていれば、米中の争いに、中国が勝利する可能性は全くないし、米中が適当なところが手打ちをするということもありえないです。

次の選挙で、トランプ氏が大統領になれなかったとしても、これは変わりません。現在は、トランプ政権がどうのこうのというよりは、米国議会そのものが、超党派で、中国に大して厳しい態度で臨んでいます。まかり間違って、親中派が大統領になったとしても、議会とは赤ら様に対立はできないので、これからも米国の中国に対する態度は変わりません。

そうなると、米国の制裁は、共産党が崩壊するか、崩壊しなければ、中国経済がかなり弱体化して、中共が他国に対して大きな影響力を及ぼすことができなくなるまで、続きます。

中国の将来は、この二つしかありません。そうなると、親中派とは言いながら、中共に親和的な日本の親中派も、中共とともに、滅ぶしかなくなります。
早くそのことに気づいてもらいたいものです。それとも、日本の親中派は、身も心も中共に完璧に骨抜きにされているのでしょうか。

そうだとすれば、これも許しがたいことです。先ほど述べたように、米国もわずか数年ぶり前までは、パンダハガー(親中派)が幅をきかせていました。しかし、超党派の議員が、米国議会内で、中共の悪を暴く委員会を設置し、中国の米国への浸透の実態や、香港や、ウイグルに対する迫害の実態をこれでもか、これでもかという具合に暴いて行きました。

それが、今日の米国の対中国の厳しい態度に結びついていきました。もう米国では、中共を擁護する人はいません。もし擁護すれば、袋叩きにあうだけでしょう。

日本でも、国会でそのようなシステムを作り出し、中共の悪行を暴いていくようにすべきです。そうすれば、日本の親中派は、孤立する以外になくなります。

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2020年7月26日日曜日

未来学者フリードマン氏が看破する中国の致命的弱点— 【私の論評】中共は米国に総力戦を挑むことはないが、国内で統治の正当性を強調するため、世界各地で局地戦を起こす可能性大!(◎_◎;)

未来学者フリードマン氏が看破する中国の致命的弱点

米中間に「トゥキディデスの罠」が当てはまらない理由

中国、北京の道路

(平井 和也:翻訳者、海外ニュースライター)

 近年、米中対立が激しさを増している中で、国際政治の専門家の間で米中間の「トゥキディデスの罠」という考え方が浮上している。トゥキディデスの罠とは、新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、2国間で生じる危険な緊張の結果、戦争が不可避となる状態を指す言葉だ。ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が古代ギリシャの歴史家トゥキディデスにちなんで提唱した概念として注目されている。

 アリソン教授は、東京新聞のインタビュー記事(2019年12月2日)の中で「トゥキディデスの罠に米中が陥り、全面戦争に発展する可能性は高まっているのか」という問いかけに対して、「もしトゥキディデスが今の米中関係、特に中国の国益を追求する姿を見ていたら、新興国(中国)と覇権国(米国)は、衝突する方向に明らかに加速している、と言うだろう」と答えている。

 この米中のトゥキディデスの罠について、米ジオポリティカル・フューチャーズ(GPF)の創設者であり、世界的なインテリジェンス企業ストラトフォーを創設したことでも知られている未来学者・地政学アナリストのジョージ・フリードマン氏が、7月14日にGPFのサイトに一読の価値がある論考を発表した。

 フリードマン氏はこの論考で、「中国の台頭」にまつわる言説には誤解があると指摘し、米中間に「トゥキディデスの罠」は当てはまらないと述べる。中国には経済面、軍事面で「弱点」があり、依然として米国には対抗できないというのだ。以下では、フリードマン氏の論考の概要を紹介したい。

「台頭する中国」は誤認

 記事の冒頭でフリードマン氏は、アテネとスパルタの間で戦われたペロポネソス戦争から数千年後に、評論家たちは「この戦争が、権威主義的な政府は民主的な政府を打ち破るだろうということを示した」と論じたとし、この考え方は第2次世界大戦の初期段階に広く唱えられ、冷戦の間も繰り返し唱えられたと述べている。

 ただしフリードマン氏は、「実際には、民主主義国と圧政的な体制についてトゥキディデスが言ったことは、敗北主義者が引き合いに出す単純なスローガンよりもはるかに洗練されて、複雑なものなのだ」と指摘する。

 トゥキディデスの罠が持ち出される言説には、しばしばいくつかの間違っている点があるという。フリードマン氏は次のように述べている。

 「間違っているのは、中国が台頭する大国だという考え方だ。中国は毛沢東の死後から急激に盛り上がったという意味で台頭という言葉を使っているのだとしたら、それは正しい。しかし、中国が米国に挑戦することができるくらいまで台頭したと言われているのは、誤認に基づいた言説だ。米国が過剰反応するかもしれないという議論は、この間違った認識に基づいている。米国は中国に強い圧力をかけるという戦術を選んでいるが、そのリスクは低い」

中国の輸出依存体質

 フリードマン氏によると、中国に関して最も重要な点は、中国の国内市場が、工場で作られた製品を資金的に消費できないことである。

 「中国は確かに成長したが、その成長ゆえに海外の顧客に囚われの身となってしまったのだ。中国の国内総生産(GDP)の20%は輸出によって生み出されており、輸出の5%を買っているのは、中国にとって最大の顧客である米国だ。長期的に見て中国経済を約20%減少させる可能性があるのは、このどうしようもない脆弱性だ。新型コロナウイルスが今後も多くの国を傷つけ続けるだろうが、中国にとっては、国際的な貿易が崩壊すれば、国内消費の減少が海外市場の損失の上に現われることになる」

 「中国は米国からの非軍事的な脅威にさらされている。米国はそのGDPの1%のわずか半分を中国からの輸出に依存しているにすぎない。米国は中国製品の購入を減らすだけで、中国にダメージを与えることができる。中国が台頭する大国だとしても、その台頭は非軍事的な非常に滑りやすい傾斜の上に成り立っている」
 加えてフリードマン氏は、米国にはさらに軍事的な破壊的なオプションがあるとしている。

 「中国は、大きく依存している世界市場に、東海岸の港からアクセスしなければならない。そのため、南シナ海は中国にとって特別な利益を握る境界だ。

 中国は海洋にアクセスするために少なくとも1カ所の出口から通商航路をコントロールしなければならない。しかし、米国はこれらの通商航路をコントロールする必要はなく、中国に航路を与えなければいいだけの話だ。この違いには極めて大きな意味がある。中国はアクセスを確保するために、米国を深くまで後退させる必要があるが、米国は、巡航ミサイルを発射するか、または地雷を設置するための適所にいるだけでいいのだ」

中国が太刀打ちできない洗練された同盟システム

 さらにフリードマン氏は、米国の同盟システムの有効性について述べている。

 「米国海軍は、アリューシャン列島から日本、朝鮮、台湾、フィリピン、インドネシア、オーストラリアに至るまでの太平洋をコントロール下に置いており、中国が太刀打ちできないような洗練された同盟システムを持っている。

 同盟国を持たないということは、紛争時に他の国を巻き込む戦略的なオプションを持たないということだ。中国は周辺の1カ国と同盟関係を結ぶだけで、戦略的な問題は解決するかもしれない。同盟国を獲得できないことは、中国の力と信用を地域的に評価する上での指標となる。中国の戦略的な問題には、中国の国益に対して敵対的なベトナムやインドといった国と国境を接しているという面もある」

 「仮想的には、中国はロシアと同盟関係を構築できるかもしれない。だが問題は、ロシアが西方とコーカサス地方に注力しなければならないという点にある。ロシアには中国に貸せるような陸軍はなく、太平洋の作戦で決定的な意味を持つような海軍も持っていない。ロシアによる西方からの、そして中国による東方からの同時攻撃は、一見すると興味深いものに思えるが、米国と同盟国を分断するには至らず、中国に対する圧力を排除でき
ない」

輸出依存のままで戦争を始めるのは無理な話

 次にフリードマン氏は、中国の輸出依存体質について再度強調する。つまりグローバルな貿易システムに組み込まれた中国の脆弱性について、である。

 「中国が台頭する大国であることは確かだが、前述のとおり、中国は毛沢東時代から台頭している。中国は相当程度の軍隊を持っているが、その軍事力は輸出依存という脆弱性が排除されない限り、縛られたままだ。このような状況では、戦争を始めるなどというのは無理な話だ。中国はたぶん世界のどこの国よりも、グローバルな貿易システムを破綻させるようなリスクを冒すことができない国だ」

 「米国は西太平洋での戦争には興味がない。西太平洋の現状は満足のいく状況であり、紛争を起こしても、何も得るものはない。ただ、米国は太平洋をあきらめてはおらず、これまでにも太平洋を維持するために、第2次世界大戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争を戦ってきた。米国は中国大陸を侵略したり征服したりすることはできないし、巨大な中国陸軍に対して軍を差し向けることもできない。その意味で、中国は安全だ。中国が恐れているのは、世界市場からの孤立という海洋にある」
トゥキディデスの罠は米中には当てはまらない

 軍事力そのものに関しても、米国は今なお中国に対して圧倒的に優勢だという。フリードマン氏は以下のように述べる。

 「戦争に勝つためには、経験豊富な人員と、勇敢でモチベーションの高い軍隊、へまをしない工場が必要だ。工学技術は戦争の一部だが、その本質ではない。もちろん、テクノロジーは重要だが、それは実戦経験を積んだ人々の手の中にあって初めて決定的な意味を持つ。

 しかし、中国はそれを欠いている。ハードウェアとテクノロジーを持っているとは言っても、中国は1895年以来、海戦を戦っていない。中国は陸上での戦闘経験と比べて、海戦の伝統がない。それに対して、米国は、航空機で陸上の標的に対抗したり、対潜水艦調査を実施したり、実戦環境で艦隊用の防空システムを運用したりしてきた豊富な経験がある」

 「私が誤認した識者の意見に反対するのは、この点においてである。彼らは、米国が追いついていないテクノロジー面での優勢に着目して、中国は台頭していると考えている。たぶんその通りだと思うが、米国は依然として経済的な優勢、地理的な優勢、同盟関係における政治的な優勢、海と空、宇宙における経験の優勢を誇っている。テクノロジーは、これらの点における不足を相殺するだけだ」

 以上のような考察からフリードマン氏は、「トゥキディデスの罠という概念は米中には当てはまらない、と私は考えている。中国はいかなる側面においても、米国を追い詰めてはいない」と結論づける。米国は実戦経験など様々な分野において依然として圧倒的な優勢を誇っているため、トゥキディデスの罠の理論は米中には通用しない、というわけである。
【私の論評】中共は米国に総力戦を挑むことはないが、国内で統治の正当性を強調するため、世界各地で局地戦を起こす可能性大!(◎_◎;)
私は、フリードマン氏の主張には全面的に賛成です。なぜかについては、もうすでにこのブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
米、対中制裁リストに11社追加。ヒューストン中国領事館閉鎖命令— 【私の論評】米中はトゥギディディスの罠に嵌って総力戦をすることはないが、局地戦あり得る!(◎_◎;)

習近平とオバマ


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではそもそも中国は超大国ではないし、超大国になる見込みもないことから、米中はトゥキディディスの罠に嵌って、総力戦をすることはないが、米軍が南シナ海の中国軍基地を爆撃するなどの、局地戦はあり得ることを掲載しました。

上の記事で、フリードマン氏は指摘はしていませんでしたが、いわずもがなの、米ドルは基軸通貨でありながら、人民元はそうではないということも、中国にとって徹底的に不利です。

何しろ、元々人民元は、中国が多数の米ドルや米国債を所有していることにより、保証されているわけです。

そもそも、米国が中国による米ドルの使用禁止を実施したり、中国米国債の無効化をしてしまえば、人民元は紙切れになる可能性もあります。

そうして、それ以前に、国際貿易のほとんどが、ドル決済されているため、中国は貿易ができなくなります。

このような状況では、中国が米国に対して戦争を挑むようなことは到底考えられません。

トゥキディデスの罠とは、新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、2国間で生じる危険な緊張の結果、戦争が不可避となる状態を指す言葉ですが、中国が米国にとってかわろうことなど到底できません。

にも関わらず、中国はなぜ、戦浪外交を展開するのでしょうか。それには、二つの可能性があります。一つは、先にリンクを掲載した当ブログ記事の記事にもあるとおり。中国もしくは習近平の妄想によるものです。

この記事では、以下のように掲載しました。いかに一部を引用します。
2015年の米中首脳会談で、バラク・オバマ米大統領と中国の習近平国家主席はトゥキディデスの罠についてじっくり話し会いました。オバマは、中国の台頭が構造的ストレスを生み出してきたが、「両国は意見の不一致を管理できる」と強調しました。また両者の間で「大国が戦略的判断ミスを繰り返せば、みずからこの罠にはまることになる、と確認した」と習は明らかにしています。
以下に、これに関連する部分をさらに引用します。
私自身は、2015年の米中首脳会談で、バラク・オバマ米大統領と中国の習近平国家主席はトゥキディデスの罠についてじっくり話し会ったことが、習近平に勘違いをさせたのではないかと思います。
オバマ大統領、本来ならば、中国は超大国米国には、到底及ばないことを習近平にはっきりと言うべきだったと思います。軍事力でも、技術力でも、金融の面でも、遠く及ばないことを自覚させるべきでした。米国にたてつけば、石器時代に戻してやるくらいの脅しをかけるくらいでも良かったと思います。
妄想ではあっても、中国がその妄想を実現すべく邁進しているわけですから、当然米国は、これに対峙せざるを得ないのです。
パラク・オバマは、習近平の妄想を最終的に、後押ししただけで、それ以前からこのような論調は、ありました。

最近、私は英語の読解力を上昇させようとして、”速読速聴・英単語 Advanced 1100 ver.4”という教材を読んでいます。本日で61回目の読み込みに入ったのですが、この教材の中に、”China’s biggest exports growing nicely”(The Sydney Morning Herald, June 21. 2012)という記事が掲載されていました。

オーストラリアは今でこそ、中国に対して厳しい態度をとっていますが、2012年あたりだと、政権そのものが親中的でした。 この記事の中に、以下のような記載がありました。(日本語訳の方を掲載します)
彼ら(ブログ管理人注:中国のこと)は、2017年に世界最大の経済国として米国を追い越す過程にあるに違いないのだから、消費をあおるプロセスの中で投資と建築はそのコアメンバーとともに重要な要素なのである。 
現在、オーストラリアが中国に依存しているほど、中国はヨーロッパ経済に依存してはいない。したがって、準備銀行取締役会の議事録における我々の最大の貿易相手国に関する残りの段落がとりわけ重要なのである。
現在では、中国に対して厳しい態度をとっている、米英豪加、あたりでもこのような見方をしている人は大勢いました。

2012年というと、このブログでは、すでに中国経済の脆弱性や、他の様々な問題について論じていました。それどころか、中国の崩壊に関することも論じていました。

しかし、当時は、米国でもパンダハガー(親中派)が主流でした。米国在住のある日本の国際政治学者 は、米国では中国に対するエンゲージメント(関与)派が米国エスタブリッシュメント(支配層)の主流を占めているので、米国の親中国的姿勢はこれからも続くとしていました。

結局、多くの国々が通商により、あらゆる面で伸びゆく中国と取引をして金儲けのビジネスをしようとしていたので、つい数年前までは、中国に対して親和的的でした。それが、中国を増長させて、特に習近平を増長させて。超大国幻想を助長した面は否めません。この超大国幻想が、現在の中国の戦浪外交を後押ししている可能性が大です。

もう一つの見方としては、習近平は、建国の父毛沢東や、経済改革をして今日の中国の経済の基礎を作った鄧小平などと比較すると、誇るべき実績がなく、自らの統治の正当性を強く主張できないという状況にあることです。

中国には、選挙はありませんが、それでも全人代で幹部に指名されたり、幹部になった後に自分の思い通りに国を動かすには、強力に統治の正当性を主張する必要があります。特に、共産党幹部や長老たちを納得させなければなりません。そうでなければ、権力闘争が凄まじくなります。

この側面から見ると、習近平には誰をも納得させる実績が全くと言って良いほどありません。だからこそ、党内でも諸外国に対しても、弱みを見せられないのです。だからこそ、外国に対して戦狼外交を展開しているのです。

この二つの見方のいずれが正しいのか、あるいは、両方とも正しいのかもしれません。しかし、今のところははっきりとはしません。いずれ、わかる時期が来ると思います。

しかし、厄介なのは、いずれの場合であったにしても、中国は米国と総力戦に入ることはありませんが、三戦などを駆使しつつ、南シナ海や東シナ海、台湾、あるいはインドやロシアとの国境で、あるいは全く思いがけないところで、局地戦を起こす可能性が高いということです。下表に、中国による日本に対する「三戦」で想定されるものを掲載します。


これらのいずれかの戦争を起こし、プーチンがクリミア併合を成し遂げたように、勝利を収めれば、プーチンがそうだったように、習近平は国内で統治の正当性高めることになるからです。中国の場合は、中国共産党の統治の正当性も大いに高めることになるからです。

中国に対峙する我々自由主義陣営の国々は、米中が総力戦に入ることはないと見て良いですが、局地戦ありうるとの認識のものと、対抗策を講じるべきです。そうして、局地戦が起こった場合には、必ずこれを勝利に導くべきです。

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2020年7月25日土曜日

中国品質の時代が終焉し、日本品質の時代がやってくるシンプルな理由—【私の論評】あらゆる分野で、日本人が「霊を重んじる文化」を見直せば、コロナ以降の世界で日本は黄金期を迎える!(◎_◎;)

中国品質の時代が終焉し、日本品質の時代がやってくるシンプルな理由


パンデミックで価値観の転換


 アフターパンデミックの世界について色々な予測・議論が行われている。  ビジネス面では、7月8日の記事「じつは日本でいま『管理職』の仕事が消え始めている…!  その残酷な現実」、7月4日の記事「『コロナ後』の世界で、じつは『日本の製造業』が大復活しそうなワケ…!」などで述べた変化が起こる可能性がある。 【写真】大人気「ユニクロのマスク」を超える「凄いマスク」があった…! 

 また、精神面では6月26日の記事「コロナで人生の終末を意識するようになった人に贈る『完全燃焼の心得』」、6月10日の記事「コロナ、暴動に満ちた今こそ『苦しいときの神頼み』の効用を見直そう」などの流れが主流になっていくと思われる。

  そして、その2つの「物質(経済・ビジネス)」と「精神」が合体した形として我々の目にはっきり見えるようになると思われるのが、「中国品質から日本品質へ」の大きな流れである。  例えば、Tシャツやデジカメで不良・欠陥があれば腹立たしいことだが、購入した人の命には別条がない。  それに対して、最近話題になった中国製のマスクや人工呼吸器のずさんな品質……このような生命や安全に直結する商品での「中国品質」は致命的だ。いくら安くてもそのような商品は購入できない。相当な値段を払ってでも「日本品質」の商品を求めるであろう。

  もちろん、この流れは日本だけで起こっているのではない。マスクや医療器具が不足して困難な状況に陥った欧米諸国が、それでも「中国品質」のあまりのひどさに、次々と「返品」を行ったことからも明らかだ。

安さよりも安心・安全

 また、自動車などの商品も欠陥が致命的(事故による死亡)になりえる商品である。「安かろう悪かろう」の安売り戦略でいくら中韓を始めとする国々が攻勢をかけても、結局日本製には太刀打ちできす、6月16日の記事「やはり独り勝ち、世界の自動車メーカーはトヨタにひれ伏すのか?」で述べたような状況になるのは、自動車という製品に「日本品質」が強く求められるからである。

  そして、今回のパンデミックは、その他の多くの商品にも「安心・安全」が必要であるということを思い起こさせた。

  また、安心・安全は「製造における日本品質」だけではなく「物流などのサービスにおける日本品質」においても大事だ。トイレットペーパー騒動のように、生産能力がきちんとあるのに、中間流通が滞って手元に届かないこともある。

  さらには、4月17日の「マスク不足の真犯人は誰だ!  中国共産党政権の火事場泥棒を許すな」の記事のように、日本国内での自給自足も「安心・安全」の重要な要素であることを痛感させた。有事になればどの国も自国優先が当たり前で、マスク(医療機器)や食糧などの必需品の調達を自国内でできるようにすることはとても大事だ。

取引相手も「日本品質」へ

 今回のパンデミックにおける中国共産党の「マスク外交」のような「他人の足元を見る卑劣な行為」を見ると、「調子のいい時の友達などあてにできない。自分がどん底に落ちたときに寄り添ってくれる人が真の友人だ。」という言葉を思わず思い起こしてしまう。

  「中国品質」から「日本品質」への流れは、「製品」だけではなく、「取引相手」の選定などあらゆる分野で起こる。

  少し前のことになるが、マスク不足騒動が深刻化した頃、アマゾンのサイトで「お届け日」がかなり先日付の「洗えるマスク」を注文した。手元にまだ在庫はあったが、今後のマスク供給に不安があり、価格も当時としては「まとも」であったからだ。

  ところが、配達予定日になっても品物が届かない。サイトを見ると、「配達日を確認できない状態です」という表示になっている。普通ならここで注文キャンセルだが、当時の状況なので、一応そのままにしておくと、何の前触れもなく商品が届いた。しかも、サイトの表示では「日本企業」だと思っていたのだが、中国大陸からの直送便である。

  思わず荷物を受け取った手をごしごしと石鹸で洗った。そして恐る恐る中身を見ると、マスクが、ビニールで丁寧に個包装されている。しかも、「お客様へ」と描かれたきれいな絵が書かれたカードも同封されている。

  少し安心したのだが、個包装を開けて中身を確認すると、なんと6個のうち3個が穴が空いたりした(ひどいのは1枚のマスクの半分しか入っていなかった……)不良品で使いものにならなかった。欧米で中国の医療製品の返品が相次いだ理由も良くわかる。

  アマゾン経由であったので、「配達が確認されなければ代金が入金されない」仕組みであったであろうから一応商品は届いたが、そうでなければ商品が届いたかどうかさえ疑わしい。

  それに対して日本のドラックストアでは、いくら品不足になっても(一部で抱き合わせ販売があったと報道されたが)、不当な価格で売りつけるなどということは行われなかった。 

 中国大陸の日本風に見せかけた企業は、混乱時に売りつけてがっぽり儲ければ、また同じ相手と商売しようなどとは思わない。しかし、日本のドラッグ・ストアがマスクを高値で売りつけたら、買わされた顧客は、混乱が収まった時に、そのドラッグ・ストアには2度と行かないであろう。

  「中国品質」と「日本品質」の差が生まれるのは、「目先の利益だけに執着」するのか、それとも「長期的信頼関係の中で少しずつ利益を得ていく」のかという違いによるところが大きいと思う。

日本品質」は見てくれよりも中身

 日本人はディベート・プレゼンが下手であるとよく非難されるが、「口がうまくて中身のない人間」と「口下手だが中身の濃い人間」とどちらが有能なのだろうか?

  「欧米品質」は「中国品質」と「日本品質」の間にあることは間違いがないと思うが、どのあたりかは微妙だ。

  新型肺炎の影響で少々状況は変わったが、EUは域内であれば「一見さん」との取引を奨励する考えである。米国は、元々移民の国で、文字通り「どこのだれかわからない一見さん」と取引をするのが当たり前の文化だ。

  だから、「信頼できる特別な相手先との継続的取引」よりも「たくさんの一見さんとの短期的取引」が中心となるのも当然だ。

  そのような社会では、相手(取引先)の本当の中身を時間をかけて知ることは難しいから、「見た目」が重要視されるのも仕方がない。

  特に著しい「一見社会」である米国で、人目を引くディベートやプレゼンの技術が発達し、彼らがそれに長けているのも不思議ではない。

  確かに中身を知ることができなければ、包装紙や箱で判断するしかない。あるいは大きさで推測するしかないだろう。花さか爺さんの話は日本人ならだれでも知っていると思うが、「大きいつづら」を選んだ悪いお爺さんがどうなったかを考えるべきではないだろうか? 

  もちろん、見た目=イメージがビジネスの上で重要なことは否定しない。しかし我々の持つ時間や資源は限られている。「中身を磨く」ことと「見た目を飾ること」のどちらに配分すべきなのか?

 多くの日本人・日本企業は前者を重要視しているから、後者までなかなか手が回らないのは致し方ないと言える。

  「中国品質」では、見た目で他人を引き付けることに重点が置かれるが、「日本品質」は中身を充実させ、長期的な信頼を得ることを大事にする。

  例えば、日本の中古車が海外市場で絶大な人気があるのは、おおよそ10万キロの耐用年数を過ぎても、きちんとメンテナンスすれば30万キロ以上楽勝で走るからである。 

 そのような高品質の自動車を製造しても、自動車メーカーに目先の利益があるわけではない。むしろ故障しないでいつまでも走ったら、買い替え需要がなくなるので不利だ。実際、以前は、日本の家電製品は品質が高すぎてなかなか壊れないので(中国資本が入ってきたりして状況が変わっている様だが……)、わざと壊れるようなプログラムが仕組まれているという都市伝説があったほどだ……  しかし、6月16日公開の「やはり独り勝ち、世界の自動車メーカーはトヨタにひれ伏すのか?」で述べたように、自動車産業でトヨタを始めとする日本勢が圧倒的なのは「日本品質」によって世界中の人々の信頼を勝ち得たからである。

  目先では「中国品質」が有利なように思えても、長期的に見れば「日本品質」のほうが圧倒的に強いのだ。

日本型経営、日本型社会も再び世界中の脚光を浴びる

 「日本品質」と密接につながる「日本型経営」は1400年の歴史がベースだ。  

 一時期日本型経営が世界的ブームになって、米国を始めとする多くの国々が日本に学ぼうとした。しかし、日本のような1400年にわたる歴史の中での「相互の信頼関係」がない国が、表面的なことだけをまねしようとしても機能せず、「うまくいかないから……」ということで、忘れ去られてしまった。 

 それどころか、1990年頃のバブル崩壊の後、日本でも業績が悪いことが「日本型経営」のせいにされてしまい、外来の血も涙もないリストラなどの悪弊がもてはやされるようになってしまった。

  実は、日本の長期にわたる低迷は「日本品質」と密接に結び付いた「日本型経営」をないがしろにした結果なのである。

  残念ながら、バブル後の世知辛い時代を経て、日本人同士の信頼関係が弱まってしまったが、それでも海外の国々に比べれば、1400年の歴史を経たお互いの絆は強い。

  つまり、「日本品質」は日本の伝統と文化に根ざした「日本型経営」によって生み出され、他国には簡単にまねできない武器なのである。

  ビジネスにおいて、得意分野にフォーカスすることの重要性は、ピーター・ドラッカーやウォーレン・バフェットも強調するところである。

大原 浩(国際投資アナリスト)

【私の論評】あらゆる分野で、日本人が「霊を重んじる文化」を見直せば、コロナ以降の世界で日本は黄金期を迎える!(◎_◎;)

私も冒頭の記事を書いた、大原氏と同じような経験をしました。マスク不足、アルコール洗浄液など騒動が深刻化した頃、アマゾンのサイトで「お届け日」がかなり先日付の「アルコール洗浄剤」「洗えるマスク」を注文しました。

その後、届くはずの日になっても届かなかったのですが、そのままにしていました。その後もコロナ禍はどんどん深刻になっていたので、フェイスシールドを購入しようと、これもアマゾンで注文しました。

その「洗えるマスク」と「アルコール洗浄剤」が、ほとんど忘れた頃に届きました。開けてみると、マスクの方はまともそうですが、アルコール洗浄剤に関しては、想像したよりも遥かに安っぽいプラスチック製の小さなボトルに入った物が4本でした。

説明書の文字があまりに小さいのと、英語・中国語・ハングルの表記はあるものの、日本語表記はなかったので、説明書はほとんど読みませんでした。一本一本が異なる香りになっているようでした。

その当時、韓国製のアルコール洗浄剤で、ほとんどアルコールが入っていなくて、ウイルス感染症対策にはならないものも販売されているとの報道がなされていたので、何やら不安感を感じて、結局このアルコール洗浄材は使いませんでした。

マスクの方も、品薄ではあったのですが、何とかして節約して使えば、使えたので、もしも本当に無くなつた時に使おうと思い、未だパッケージの封も切らないでそのままになっています。ただし、パッケージの大部分は、透明なので、外から見た限りでは、まともそうです。

そうして、ある日、これもほとんど忘れた頃に、フェイスシールドが届いたのですが、これは完璧に欠陥品とも呼べるものでした。なんと、シールドの素材が、透明ではなく、曇った素材でできいたのです。曇ったとは言っても、磨りガラスのように完璧に曇って、何も見えないというものではないですが、それにしても結構な曇りでした。

本来は、外出用に購入したのですが、曇りがあれば、危険な目に遭うことも予想さるとともに、このフェースシールドをした場合、曇りにより、パソコンなどに表示される、文字や写真が見辛いこともあり、これも結局使わず、押し入れに入れたままになっています。

以下写真は、このフェイスシールドの写真です。パソコンのディスプレイの前に配置して撮影しました。

クリックすると拡大します
アマゾンの見本の写真では、透明だったので、これは本当に裏切られた思いがしました。ある日、テレビを見ていると、確か釧路だったと思いますが、ある店で魚介類をドライプスルーで販売を始めたという報道の中で、販売員の一人が、私が購入したのと同じと思しきフェイスシールドをしていました。他の人は、マスクだけでした。

おそらく、このファースシールドをした販売員の人は、私と同じく、アマゾンで購入したのでしょう。曇りは気になったでしょうが、店舗から車まで、魚介類を運ぶくらいには、使えるだろうし、それでコロナ感染が防げればと、判断して、仕方なし使っていたのでしょう。

このようなことがあったので、家族からも「何で、中国製なんか買うの。もうやめらた」と言われました。「アマゾンで購入したので、中国製とは知らなかった」など苦しい言い訳をしました。

現在この販売履歴をアマゾンで見ようとすると、「故障中(CS11)」のメッセージが出できます。この販売業者は、既に販売やめているのでしょう。それに、購入者から多くのクレームが入ったのかもしれません。私自身は、返品も面倒そうなので、そのままにしてあります。価格は5個入りで1449円でした。

最近このようなことが続いたので、やはり私自身も中国製品の品質にはかなり疑念を抱くようになりました。安いとは言ってもこれでは、用を為しません。

その後、感染症・花粉予防のメガネ(私は目は悪くないので度は、入っていない)を購入したのですが、その時は、近所のスーパーに入っている、メガネ屋さんで、日本製であることを確認してから購入しました。

以上のような経験をしたので、冒頭の記事で、大原氏が主張していたことは良く理解できます。

その上で、日本の産業は、パンデミックを経て、自らの強みを再確認して、それに集中するのは良いことだと思います。特に、医療や人の命に直接関わるようなものであれば、日本の独壇場になる可能性が大です。

 さらに、大原氏は、”ビジネスにおいて、得意分野にフォーカスすることの重要性は、ピーター・ドラッカーやウォーレン・バフェットも強調するところである”と結論を述べています。これも本当にそうだと思います。

ドラッカー氏
ドラッカーは成長のための戦略について以下のように語っています。
ほとんどの会社が成長を望む。だがそれらの中で、成長のための方策を講じているものはわずかしかない。成長のための戦略をもつものはさらに少ない。(『実践する経営者』)
まず行なうべきは、何を捨てるのか決めることであり、どこで成長したいかを決めることではないというのです。

成長戦略の基本は、機会に備えて資源を自由にしておくことだと、ドラッカーは言います。そのためには、見返りが急速に減少しつつある製品、サービス、市場、技術から、資源を引き揚げなければならないのです。

したがって、2~3年ごとに「この製品を生産していなかったとして、あるいはこのサービスを行なっていなかったとして、今われわれが知っていることを知っているとして、それを始めるか」を問う必要があるとしています。

成長は、機会を利用することからもたらされます。特に貴重な資源である有能な人材が、昨日の仕事の若干の延命、陳腐化したものの防戦、失敗したもののアリバイづくりに投入されていたのでは、機会を利用することは不可能だというのです。

IBM、ゼロックス、GEなど優れた企業の成長戦略は、今日最も成功している製品は明日には最も早く陳腐化する、との前提からスタートしているのです。
成長のための戦略は、機会あるところに的を絞らなければならない。自らの強みが、異常なほどに大きな成果を生む分野に集中しなければならない。(『実践する経営者』)
コロナ後の世界では、まずは人の生命を大事にする製品・商品にこそ大きな機会があることは言うまでもありません。今までもそうではあったのですが、コロナ後の世界では、それがさらに強調されることになるでしょう。

そうして、考えていくと、この世の中全てのもの、何もかもが人の生命に関係しています。食べ物、飲み物も、品質が悪ければ、人の生命にとって危険なものになります。車などの交通手段だって、通信手段も、人の命を左右することもあり得ます。

全ての製造物は、人の生命に無関係ではありません。大原氏は 「日本品質」は中身を充実させ、長期的な信頼を得ることを大事にするとしていますが、その中身には当然のことながら、人の生命を大事にするという観念が含まれています。しかし、コロナ後の世界では、特にそれが、大事にされることになるでしょう。

そうすると、産業の全分野で、「人の生命を大事にする」という重要な部分があります。それに特化して、掘り下げていけば、日本品質は産業の全ての分野で世界中から支持されることになります。

いや、政治の世界でも、学問の世界も、宇宙開発から、海洋開発から、ありとあらゆる、この地球に存在するもの、宇宙に存在するもの全てに関して、「人の生命を大事にする」という観点から見直されることになるでしょう。

そうして日本の伝統と文化には、それが最初から組み込まれています。「人の生命を大事にする」だけではなく、それどころか万物には霊が宿るという考えや、霊を重んじるという、日本独自の「霊性の文化」です。

考えてみると、このような考え方が失われたからこそ、今日人類は、文明が進み、特に先進国では疫病とは無縁にやったように思われていたにも関わらず、コロナウイルスによる惨禍に見舞われたのかもしません。しかも、それがこのような考え方からは、最も程遠い中国共産党の隠蔽により、世界に広まったことは、象徴的です。

他国にも、霊を重んじる文化が、宗教が勃興する以前にはあったのですが、それはほとんど消えてしまいました。日本は、それを近代国家になった以降も維持し、現在見られる日本人の精神構造や生活習慣や文化にまで昇華してしまいました。

多くの日本人は、それがあまりにも当たり前過ぎるので、ほとんど意識しませんが、日本人の精神には、それが世代を超えてかなり深くにまで精神の奥深くまで刻み込まれています。これは、八百万の神とか、お正月の初詣とか、験(げん)かつぎをするなどの様々な形で残っています。

こうしたことより日本人は、自然の力を畏れたり、古の人々の想いや、この世の中には、自分よりはるかに大きなものや、価値や情念などが厳然として存在していることを潜在意識の中に埋め込まれます。

しかし、これに普段は気づかなくても、いざというときには出てきたりします。これを全く意識しない鈍感な人や組織は、どんなに成功しているように見えても、最終的には道を誤ると思います。中共はその典型かもしれません。

毎年80万人以上が初詣に訪れる北海道神宮

産業界に限らず、あらゆる分野で、この精神を見直し、無意識ではなく、意図して意識して生かすことに全日本人が注力すれば、日本は国内だけではなく、世界の中で黄金時代を迎える可能性も大です。

コロナ禍以前では、日本の「霊性の文化」も様々な雑音が入って、他国からは理解しにくいもだったかもしれませんが、コロナ禍後には理解されやすいかもしれません。宗教によって、全く消え去ったと思われる他国の文化や言語にも霊性に関する事柄が残っていたりします。日本でも知られているのは、ハロウィーンです。これは、キリスト教とは全く関係ありません。

私は、「人の命を大事にする」という考え方は、敷衍していけば、「霊性」やそれを重んじるということにつながっていくと思います。

私は、日本を起点として、世界で「霊」を重んじる方向に向かっていけば、人類は疫病などの災厄から救われることになると信じます。

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2020年7月24日金曜日

【コロナ後の世界】「裸の王様」習主席の最終手段は戦争!? 国際的に四面楚歌も“強硬路線”展開の矛盾 — 【私の論評】中国は総力戦はしないが、6つの不可避な戦争のいずれかに挑戦する可能性は十分ある!(◎_◎;)

【コロナ後の世界】「裸の王様」習主席の最終手段は戦争!? 国際的に四面楚歌も“強硬路線”展開の矛盾 

沖縄県尖閣諸島
 三流の指導者は、行き詰まると戦争に打って出る特徴がある。

 周囲にイエスマンと茶坊主しかいない中国の習近平執行部。その失敗を冷ややかに待つのが李克強首相や、汪洋副首相ら共産主義青年団だ。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は当初、反共の連合だった。いつしか全加盟国が中国のサプライチェーンに巻き込まれ、中国批判は希釈化した。南シナ海の領海問題ではベトナム、フィリピンが強硬だが、カンボジアなど「北京の代理人」かと思われる振る舞いである。

 東シナ海、南シナ海に戦雲が湧き、派手に展開する中国の軍事演習と米軍の対応を目撃すれば、ドナルド・トランプ米大統領のいう「台湾防衛」の本気度が試されることになる。沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵犯、接近は頻度が増した。

 しかし、中国国内事情を勘案すれば、「裸の王様」はすっかり飽きられており、「習近平よ、さようなら」というムードなのだ。

 第1は、全国人民代表大会(全人代)で、国内総生産(GDP)成長率の目標値が明示されず、第1四半期はマイナス6・8%と報告された。果たして、その程度で済むのか? 雇用が特に懸念され、李首相は「9億の労働者人口があり、雇用を守り、雇用機会を創造する」と記者会見した。

 第2は、景気刺激策を遂行するための無謀な財政措置である。

 金利の低め誘導、中小企業への融資拡大など主に企業支援政策である。新しく債務となる財政支出は合計5・5兆元(約84兆2600億円)。これは中国GDPの4・1%に相当する。

第3に、李首相の基調演説から、台湾「平和的統一」の文言が消えたことだ。

 台湾総統に再選された蔡英文氏は、就任式で「(中国の唱える)一国二制度には反対」と明確なメッセージを出した。

 尖閣諸島周辺や台湾海峡に、中国海軍の艦船が出没し、領空接近は日常の風景となった。日本の「2020年防衛白書」は明確に、中国の軍事的脅威を記載するようになった。

 中国の富裕層は、全人代で打ち出された「香港の治安維持強化」という方向に賛同を示しつつも、ホンネでは不安視し、資産をもっと安全な場所へ移管している。

 マイナスになることは分かっていても、中国は強硬路線を捨てられない。国際的に四面楚歌(そか)でも、対外活動を強硬路線で展開しなければ習政権は国内で孤立するという矛盾を抱えているからだ。

 そして、すべての矛盾をそらす最後の手段が戦争である。

 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『戦後支配の正体 1945-2020』(ビジネス社)、『「コロナ以後」中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する』(徳間書店)など多数。

【私の論評】中国は総力戦はしないが、6つの不可避な戦争のいずれかに挑戦する可能性は十分ある!(◎_◎;)

中国ウォッチャーとして有名な、上の宮崎正弘氏の記事では、矛盾を逸らす最後の手段としての戦争があり得ることを主張しています。

戦争というと、まず頭に浮かぶのは、台湾を武力統一することです。それに、尖閣諸島の奪取もあり得ます。これらは、日本人ならすぐに思い浮かぶことです。他には、どのような戦争があり得るのでしょうか。

昨日このブログでは、トゥキディディスの罠に嵌って、米中両国が総力戦に入ることはないであろうことと、その根拠も述べました。その上で、総力戦はないものの局地戦はあり得ることを主張しました。その事例として、米軍による南シナ海の中国軍基地への攻撃を挙げました。

本日は、その続きとして、中国による局地戦としては、どのようなものが考えられるのかを掲載します。

これに対するヒントとなるような内容が、2013年11月26日豪州戦略政策研究所(ASPI)のブログ・サイトThe Strategistに掲載されていました。豪州国立大学(ANU)のウェイド客員研究員が、中国がメディアを通して、反米感情を煽ったり、領土拡張を訴えたりしている現状を紹介して、警告を発しました。

当時ウェイド客員研究員は、中国の新書『中国は恐れない――国家安全保障への新脅威と戦略対応』を分析し、人民解放軍の戦略の一部として、軍人か否かを問わず国内の精神的引き締めを行なうと共に、中国の動を規制する外国勢力を牽制するものであると分析し、その他にも、人民解放軍が係ったと思われる映画と通信社の記事にも、同様の分析が成り立つことを主張しました。

中国の映画『静かなる競争』は、2013年10月に中国及び世界のネットに上がるや否や論争を呼びました。そして、その月の末までには、何の告知もなく、映画は中国のサイトからは削除されました。ただ、YouTubeでは見ることができましたが、今は削除されています。

映画は、米国が、5つの方法によって中国政府を転覆させようとしている様子を描いています。その方法とは、(1)政治的に中国を弱体化させる、(2)文化的浸透を図る、(3)思想戦をしかける、(4)諜報部隊を訓練する、及び(5)中国国内の反体制派を強化すること、です。全体としては、米国が中国を支配下に置こうとしているということを伝えたいようです。映画を見た中国国内の軍人や民間人は、侮辱された感情と怒りを持つだろう内容です。

映画の製作に人民解放軍は密接にかかわりました。具体的には、国防大学、中国社会科学院、及び、国家安全部の管轄にある現代国際関係研究院が、2013年初めに映画の製作に関与しました。これは、確かに、米国のアジア回帰に対応したものですが、より深い根本原因もあるでしょう。これだけ権威ある中国の諸機関が映画製作に携わったということは、そこで示された極端な感情が人民解放軍のタカ派に限られたものではないことを表しています。

2013年7月には、更に問題となる領土回復主義の記事が、中国新聞網のサイトに掲載されました。この記事は、「今後50年間に中国が戦わなければならない6つの戦争」という題名で、人民解放軍の一部に見られる超国粋主義の態度を示しています。しかし、このような記事が中国国営通信社に掲載されるという事実から、これが指導部で認められた考えであることが想像出来ます。

6つの「不可避な」戦争は、時系列で示されています。(1)台湾統一戦争(2020-2025年)、(2)南シナ海の様々な諸島の領土回復戦争(2025-2030年)、(3)チベット南部の領土回復戦争(2035-2040年)、(4)釣魚島及び琉球諸島回復戦争(2040-2045年)、(5)外蒙古統一戦争(2045-2050年)、(6)ロシアに奪取された領土の回復戦争(2055-2060年)です。

台湾に関しては、中国は、武力行使の手段を放棄したことはなく、具体的時期が示されたこともそれまではありません。偶然でしょうが、丁度この頃、台湾軍が、中国は2020年までに台湾を併合する軍事的能力を有するだろう、と発表したばかりでした。

南シナ海に関しては、現在のいざこざが戦争に発展することは想像に難くないです。3つ目の中国によるインドのArunachal Pradesh州への領有権の主張は、何十年も中印関係の棘でしたが、中国がヒマラヤのチベット文化圏のどこまでを勢力圏として主張しているかは、今だ明らかにされていません。今年の6月15日夜、ヒマラヤ高地のギャルワン渓谷で中印が衝突。報道では両国で数十人の死者が出たもようです。

尖閣諸島に対する中国の領有権の主張は、最近よく報道されるので、その状況が戦争に発展するのにさほどの想像は必要としないでしょう。今年は、現在までにすでに100日以上も中国の海警局の艦艇が、尖閣付近に出没しています。

また、モンゴルが清王朝から継承した土地に関しても、中国は領有権を主張しています。ロシアの極東地域についても同様で、多くの中国人は、そこはロシアが不当に占拠したものだと思っています。

上記の戦争は、現在の中国の政策で裏付けされたものでもなければ、極端な超国粋主義者の見解にすぎないかもしれないです。しかし、戦争によって領土を回復しなければならないという主張は、長い間中国で言われてきたことです。

中国(中華民国)政府公認の1938年「中国の屈辱」地図は、上記記事が主張する領土と驚くほど一致しています。この地図の中国が「失った」領土には、ロシア極東、琉球諸島、台湾及び南シナ海のみならず、韓国、ヴェトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、マレー半島とシンガポール、ネパール、パキスタンの一部及び中央アジアの殆どが含まれています。

「中国の屈辱」地図
中国の主張する領土が、今日の中国の国境を超えて70年以上前に遡ることや、中国の超国粋主義者の言い分を読むにつけ、我々は、これらの地域に住む人々が、恐怖を感じたり危険に晒されたりすることがないようにしなければならないだろう、と論じています。

中国の戦略は、中長期的です。上記の論説で紹介された記事のように、50年間で6つも戦争をしかけては中国ももたないと思いますが、中国人民解放軍は、ハードな軍事戦争のみならず、「三戦」(心理戦、情報戦、法律戦)と呼ばれるソフトな戦争もしかけます。更に、今日では、経済や文化も重要な手段となり、人海戦術も活用しています。

5カ年計画、10カ年計画は、中国共産党の一政権の期間であり、中国にとっての中期、長期は、50年、100年の戦略計画となります。

欧米や日本等の民主主義国は、単年度予算かつ政権も4年位の任期で(最近まで日本の政権は1年位でした)、中長期は、5~10年の計画となります。

ただ、 50年、100年の戦略計画は、たとえそれが国家による計画といえども、あまりに長期です。そもそも、そのようなスパンでは、計画当初の中共幹部のほとんどが、亡くなっているか、引退しているはずです。それに、最初の想定から、世界情勢や技術水準などあらゆる想定が異なるものなり、ほとんど無意味な計画になるでしょう。
現実的には、やはり5年〜10年の計画でしょう。このブログでは、中国海軍のロードマップを紹介したことがあります。それによれば、中国海軍は既に尖閣列島を含む第一列島線を傘下に収め、今年は第二列島線を我がものに収めることになっています。ご存知のように、尖閣諸島すら奪取できない今日、これはもうほとんど絵に描いた餅にすぎません。
私は、習近平自身もこれらの計画が計画通りに進むなどとは思っていないと思います。そんなことより、我々が危惧すべきは、プーチンによるクリミア統合のようなことが、習近平によってなされる可能性です。
2018年ロシアの大統領選挙のとき、プーチンの支持率かなり高いものでした。その4年前、ウクライナ南部のクリミアを併合したことに対する欧米からの経済制裁。そして主力の輸出品である原油の価格低迷。ロシアは当時も、厳しい経済状況を抜け出せずにいました。

国民の可処分所得は4年連続で落ち込み、最低生活費よりも低い所得で生活している人は、この4年間で400万人以上増加しました。国民の生活実感はなかなか改善されないのが現実でした。

それにもかかわらず、当時、プーチン大統領の支持率は80%台で推移。モスクワでは2017年12月、プーチン大統領を題材にした絵画や彫刻などを集めた美術展覧会「スーパープーチン」も開かれるなど、人気にかげりは見られませんでした。2018年の大統領選挙でプーチンは、通算4期目の当選を果たしました。

2017年12月開催された美術展覧会「スーパープーチン」

それは、やはり戦争を起こし、それに勝利したことが大きいでしょう。戦争は、多くの国民に愛国心を燃え上がらせる一つの手段でもあります。この戦争がなければ、あるいはこの戦争に負けていれば、プーチンは今頃引退していたかもしれません。

私は、このようなことを習近平も考えるの可能性は十分あると思います。このブログでも何度か紹介されていただいたように、中国は自国の都合で動く国であり、そもそも外交などあまり重視していません。

本来戦争は、外交手段を尽くしても解決できない他国との争いを解決するための手段の一つに過ぎないのですが、習近平は対外活動を強硬路線の最強の手段として、戦争を選ぶ可能性は十分あります。そうして、その目的は、習近平自身の統治の正統性を強化することにあります。

そもそも、習近平は、建国の父毛沢東や、経済改革を実現した鄧小平などのような大きな実績はありません。だから、統治の正統性は、どうしても弱いところがあります。

中国では、ロシアのように選挙がありませんが、だからこそ、誰の目にも明らに統治の正当性を主張し、特に共産党の中で自己の正当性を主張する必要があります。

上に掲載した六つの戦争のうち、いずれかの戦争を行い、勝利すれば、習近平の統治の正統性は飛躍的に高まり、当面大きな権力闘争などしなくてもすむようになります。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点でいずれかの戦争を行い、それに勝利すれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となります。

ですから、今年中にもいずれかで局地戦争が起こる可能性は、十分にあります。習近平としても、大きな冒険はしたくないので、米国と直接対決せざるを得なくなるような戦争はしないと思います。

中国とソ連は1929年と1969年に国境紛争をしており、1969年の時は核戦争一歩手前まで行った
台湾統一戦争、南シナ海の領土回復戦争、尖閣諸島奪取などは、米国が直接絡みます。もしこれらが、攻撃されれば、米国はすぐに反撃に出る可能性があります。ロシアに奪取された領土の回復戦争もやりたくはないでしょう。

中露は互いに友情は感じていないかもしれませんが、それにしても、国連などでは、中国に賛成する数少ない国の一つでもあります。それに過去には、中ソ国境紛争という苦い経験もあります。

そうなると、チベット南部のインドからの領土回復戦争あたりが手頃でやりやすいかもしれません。

これは、インドにとっては脅威ですが、中国に対抗する勢力にとっては、一つのチャンスかもしれません。これを完膚なきまでに、打ち負かせば、習近平の統治の正統性は地に落ちることになり、失脚する可能性もあります。

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2020年7月23日木曜日

米、対中制裁リストに11社追加。ヒューストン中国領事館閉鎖命令— 【私の論評】米中はトゥギディディスの罠に嵌って総力戦をすることはないが、局地戦あり得る!(◎_◎;)

米、対中制裁リストに11社追加。ヒューストン中国領事館閉鎖命令 宮崎正弘氏のメルマガ(7月23日1:43配信)

     中国総領事館の敷地内で、文書などが焼却される様子も見られ、
     現地の消防隊も出動するなど総領事館の周囲は騒然とした
米国商務省のブラックリスト(ELリスト)に中国の11社を追加
かつらの「和田浩林」から中国科学院傘下の「北京基因組研究所」まで
****************************************

 7月20日、米国商務省は「ウイグル少数民族の弾圧に使用された」監視カメラ製造あるいは、弾圧されて強制収容所内で作られた製品を製造販売した容疑で、11の中国企業をブラックリストに加えた。筆頭は「和田浩林髪飾品」。ウィグル強制収容所でウィグル族に作業させた製品としてボストン税関で13トンのカツラが押収された。

 またエスケル集団の「エスケル繊維」はYシャツやマスクの製造で知られ、グループ全体で5・7万人の従業員がいる。エスケルはラルフ・ローレン、ヒューゴ・ボスなどのアパレル、ポロシャツなどのOEM生産で急成長してきた。

 さきにあげられていたのはファーウェイ、ハイクビジョン、センスタイム、ダーファー、メグビーなどだが、ウィグル弾圧の監視カメラなどが中心だった。

新しいリストに新たに加わったのは、このほかに「KTK集団(今創集団)」、同社は鉄道、線路設備一連の製品、また「湯園技術」(音訳。アルミ製品)、そして「南昌Oフィルム」は、アップル、アマゾン、マイクロソフトへも部品を供給している企業だ。
 
 驚きは中国科学院傘下の「北京基因組研究所」(国家生物信息中心)までがリスト入りしていることで、理由をマルコルビオ上院議員は「この研究所は中国共産党直属である」とした。

 同日、トランプ政権はテキサス州ヒューストンのある中国領事館の閉鎖を命じた。外交的に前代未聞の措置、まるで戦争前夜の様相を呈してきた。

【私の論評】米中はトゥギディディスの罠に嵌って総力戦をすることはないが、局地戦あり得る!(◎_◎;)

中国は眠らせておけ。目を覚ましたら、世界を震撼させるから・・・・・。

ナポレオンがそう警告したのは、200年前のことです。そして今、中国は目覚め、世界を揺るがし始めているようです。

新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、新旧二国間に危険な緊張が生じます。現代の米中の間にも、同じような緊張が存在するようです。それぞれが困難かつ痛みを伴う行動を起こさなければ、両国の衝突、すなわち戦争は避けられないかもしれません
猛烈な勢いで成長を遂げてきた中国は、米国の圧倒的優位に挑戦状を突きつけています。このままでは米中両国は、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが指摘した致命的な罠に陥る恐れがある。2500年前のペロポネソス戦争を記録したトゥキディデスは、「アテネの台頭と、それによってスパルタが抱いた不安が、戦争を不可避にした」と書いています。
過去500年の歴史では、新興国が覇権国の地位を脅かした事例が多数あります。よく知られるのは、100年前に工業化して力をつけたドイツが、当時の国際秩序の頂点にいたイギリスの地位を脅かした事例でしょう。
その対立は、第一次世界大戦という最悪の結果を招きました。このように戦争に行き着いた事例は多く、戦争を回避したのはわずかです。このように、戦争が不可避な状態まで従来の覇権国家と、新興の国家がぶつかり合う現象を米国の政治学者グレアム・アリソンは、「トゥキディデスの罠」と命名しました。

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第二次世界大戦後、米国主導でルールに基づく国際秩序が構築された結果、70年にわたり大国間で戦争のない時代が続きました。現代人のほとんどは、戦争がない状態が普通だと思っています。
ところが、歴史家に言わせれば、これは史上まれにみる「長い平和」の時代です。そして今、中国はその国際秩序を覆し、現代人が当たり前のものとして享受してきた平和を、当たり前でないものにしようとしています。
2015年の米中首脳会談で、バラク・オバマ米大統領と中国の習近平国家主席はトゥキディデスの罠についてじっくり話し会いました。オバマは、中国の台頭が構造的ストレスを生み出してきたが、「両国は意見の不一致を管理できる」と強調しました。また両者の間で「大国が戦略的判断ミスを繰り返せば、みずからこの罠にはまることになる、と確認した」と習は明らかにしています。

習近平とオバマ
そのとおりだと私も、思いたいです。米中戦争は今ならまだぎりぎり回避できるかもしれません。
トゥキディデスも、アテネとスパルタの戦争も不可避ではなかった、と言うでしょう。「トゥキディデスの罠」は、運命論でも悲観論でもありません。メディアや政治家のレトリックにまどわされず、米中間に巨大な構造的ストレスが存在することを認め、平和的な

関係構築に努めなければならない、という警鐘だと思います。

迫りくる米中両国の衝突は、戦争に発展するのか。トランプと習、あるいはその後継者たちは、アテネとスパルタ、あるいはイギリスとドイツの指導者と同じ悲劇的な道をたどるのでしょうか。それとも100年前の英国と米国、あるいは冷戦時代の米国とソ連のように、戦争を回避する方法を見つけるのでしょうか。もちろん、その答えは誰にも分からないです。しかし、トゥキディデスが明らかにした構造的ストレスが、現状でもかなり大きくなっているのは間違いないです。
ブログ冒頭の、宮崎正弘氏のメルマガを読むと、現在はまさに戦争前夜のような状況です。ただし、私自身は、現在の米中の関係が、「トゥキディディスの罠」にはまり込むような関係にはなっていないと思います。
というのは、米国は明らかに世界唯一の超大国になっていますが、中国はそうでないという現実があります。
中国が経済的に台頭したとは言っても、GDPでさえ米国には追いついていませんし、一人あたりのGDPでは米国には遥かに及びません。軍事力も軍事費は伸ばしてきたとは言いつつも、軍事費でも、軍事技術、ノウハウでもこれも米国には遥かに及もつきません。
技術などのイノベーション力も、中国は米国に遥かに及びません。中国の技術のかなりの部分が、米国などをはじめとする国々のそれを剽窃したものです。だから、一見効率が良いように見えても、大規模なイノペーションはできません。
中国の5G技術も元々は他国から剽窃したものをベースにして開発したものであり、この方面のイノベーションも現時点の少し先を行くことはできますが、6G、7G、それ以降など遥かに先端に行くことはできません。できるとすれば、リバースエンジニアリングによって他国の技術を分析するか、剽窃によるしかないのです。
さらに金融の面でも、世界金融市場をカジノに例えると、米国は胴元であり、中国は一介のプレイヤーに過ぎません。中国は、大金を回せるかもしれませんが、そもそも人民元の信用はドルに裏付けされたものです。
それに今でも人民元は、国際取引ではほとんど用いられておらず、そのほとんどはドルで決済されています。米国はいくらでもドルを刷ることができますが、中国にはそれはできません。一方、中国は米国からドルの供給を断たれることにでもなれば、その日からほとんど貿易ができなくなります。
この状況では、いくら中国が国単位としては、経済的、軍事的に力をつけてきたとはいえ、超大国とは言えず、現在でも米国には足元にも及ばないというのが現実です。現在の世界では、米国のみが唯一の超大国です。旧ソ連も、崩壊するずっと前に、超大国の地位を失っていました。
2015年の調査では、中国が超大国になると
考えている人の割合は、日本が最低だった
米国を頂点とする自由主義陣営の国々は、中国が経済大国になれば、自由主義陣営のように体制に変わるだろうと思っていたのですが、その期待はことごとく裏切られました。
そうして。最近では米国は、中国は米国に成り代わって、世界に新たな秩序を作ろうという疑念を抱くに至りました。
中国はその米国の態度に対して、正面から答えることがなかったのですが、2018年中国の習近平国家主席が、グローバルな統治体制を主導して、中国中心の新たな国際秩を構築していくことを宣言しました。
習近平氏のこの宣言は、中国共産党機関紙の人民日報(6月24日付)で報道されました。同報道によると、習近平氏は6月22日、23日の両日、北京で開かれた外交政策に関する重要会議「中央外事工作会議」で演説して、この構想を発表したといいます。

この会議の目的は、中国の新たな対外戦略や外交政策の目標を打ち出すことにあり、これまで2006年と2014年の2回しか開かれていません。
この会議での対外戦略の総括は、その初めての回答となりました。つまり、米国による「中国は年来の国際秩序に挑戦し、米国側とは異なる価値観に基づく、新たな国際秩序を築こうとしている」という米国の疑念に対し、まさにその通りだと応じたのです。
旧ソ連のように、超大国にもなれていない中国が、超大国米国に対してあからさまに、新たな世界の秩序づくりを宣言されたわけですから、これを捨て置くわけにはいきません。
だからこそ、この直後より米国の対中国対策はかなり厳しいものになり、今日に至っているのです。
私に言わせば、世界の新秩序を作り出すなどの考えは、単なる中国というか、習近平の妄想にすぎないと思います。私自身は、2015年の米中首脳会談で、バラク・オバマ米大統領と中国の習近平国家主席はトゥキディデスの罠についてじっくり話し会ったことが、習近平に勘違いをさせたのではないかと思います。

オバマ大統領、本来ならば、中国は超大国米国には、到底及ばないことを習近平にはっきりと言うべきだったと思います。軍事力でも、技術力でも、金融の面でも、遠く及ばないことを自覚させるべきでした。米国にたてつけば、石器時代に戻してやるくらいの脅しをかけるくらいでも良かったと思います。
妄想ではあっても、中国がその妄想を実現すべく邁進しているわけですから、当然米国は、これに対峙せざるを得ないのです。

習近平やその取り巻きは、中国国内では、とにかく金は無尽蔵にあり、金で人民のほっぺたを叩き付けたり、それでもだめなら、城管や、警察、人民解放軍で鎮圧すれば、いかなる人民も自分たちの言うことを聞くので、外国でもそれができると、勘違いしているのかもしれません。

彼らは、中国内では、人民元など好きなだけ刷れるし、ドルも潤沢なので、自分たちは何でもできるという極度の自己肯定感に浸っているのではないかと思います。しかし、実際に米国と対峙してみると、経済でも軍事でも、技術面でも彼我の差があまりに大きいことに気づくことになるでしょう。
トゥギディディスの罠に話を戻すと、先にも述べた通り100年前に工業化して力をつけたドイツが、当時の国際秩序の頂点にいたイギリスの地位を脅かした事例がありますが、当時のイギリスとドイツの関係は、軍事力、技術力、経済力とも現在の米国と中国との関係よりも、かなり伯仲したものでした。
だから、米中がトゥギディディスの罠に嵌る可能性は低いと思います。米中が総力戦に入る遥か手前で、米国の対中冷戦で中国の方がお手上げなるでしょう。
ただし、場合にはよっては局地的な戦争になることは大いにあると思います。たとえば、南シナ海の中国軍基地をなきものにするということは大いに考えれます。

中国が発生源と思われる新型コロナウイルスの蔓延などによって、米国人の対中感情は、1979年の米中国交正常化以降、最悪と言えるほど悪化しています。そうした国内世論を受けて、共和党のトランプ陣営と民主党のジョン・バイデン陣営は、どちらが対中強硬派かという争いをしているからです。
米国の戦略家ルトワック氏からいわせると、南シナ海の中国の軍事基地など象徴的な意味しかなく、米国が本気になれば、5分で吹き飛ばせると言います。
南シナ海は、中国本土から1000kmも離れているため、中国との全面戦争にもなりにくいでしょう。それでも米国内では、「悪の中国の基地をぶち壊した」とアピールすれば、トランプ氏は、支持率を上げるでしょう。東南アジアの国もこれを、歓迎するかもしれません。

そもそも中国の南シナ海の実効支配は、国際司法裁判で根拠がないと裁定されています。米軍がこれを爆撃したとしても、それなりの手続きを踏んで実行すれば、国際法上は問題はありません。

1999年5月7日に、米軍のB-2がベオグラード市内に出撃、誤って駐中華人民共和国大使館JDAM爆弾で攻撃し、29人の死傷者を出しました。後に緊急会議が開催され、NATOや米合衆国連邦政府は、中華人民共和国に対し誤爆を謝罪しましたが、当時中華人民共和国は、セルビア側を支援していたため、故意に攻撃したのではないかという観測も報道されました

この際には、無論中国は、米国を非難しましたが、目立った報復ありませんでした。中国人はこの出来事に激怒し、北京市にあるマクドナルドを襲撃、10店舗を破壊するデモ活動をしました。なお、この爆撃の目標を指示した米中央情報局中佐のウィリアム・J・ベネット氏が2009年に殺害されたという事件が起こりました。

ただ米軍がそこまでやると、トランプ大統領にはとっては、かえって選挙に悪影響となるかもしれず、そこまではせず、例えば潜水艦と艦艇を用いて。南シナ海の中国軍基地の周辺を封鎖して、兵糧攻めにするなどのことは、十分に考えられます。場合によっては、機雷による封鎖ということも考えられます。

ただし、米国と中国の国力の差異などからみて。両国がトゥキディディスの罠に嵌って、総力戦に入るということはないでしょう。そのはるか以前に中国はお手上げになります。
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2020年7月22日水曜日

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日米豪、合同軍事演習で中国威圧! 尖閣侵入「100日連続」…識者「日本は実効支配の強化へ公務員常駐を」

   西太平洋上で日米豪の共同訓練に臨む海自護衛艦「てるづき」(右から2番目)
   や米空母「ロナルド・レーガン」(中央)など
    中国の暴挙が止まらない。沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で22日、中国海警局の武装公船などが確認された。これで、「100日連続」となった。世界全体で「死者60万人超」という新型コロナウイルスを世界的大流行(パンデミック)を引き起こしながら、軍事的覇権拡大を進める中国を牽制(けんせい)するため、海上自衛隊と米海軍、オーストラリア海軍は、西太平洋と南シナ海で共同訓練を実施した。

 海上保安庁第11管区海上保安本部(那覇)は22日朝、尖閣周辺の接続水域で中国公船4隻を確認した。うち1隻は機関砲のようなものを搭載しているという。海保の巡視船が領海に近づかないよう警告した。

 これで中国公船が確認されるのは、2012年9月の国有化以降、最長日数で「100日連続」となった。

 中国が侵入させているのは、日本の海保に相当する海警局の船舶だが、6月の人民武装警察法改正で、中国海軍と海警局が合同訓練や共同作戦を行うことが可能になった。外務省は17日、「軍の一部になっている」と、自民党の会合で報告した。

 こうしたなか、海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は21日の記者会見で、西太平洋と南シナ海で、日米豪3カ国の共同訓練を19日から23日まで実施していると発表した。

 海自の護衛艦「てるづき」や、米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」、オーストラリア海軍の強襲揚陸艦「キャンベラ」などが参加。敵の潜水艦、水上艦艇、航空機への対処を想定した戦術訓練を行っている。一帯の海域では、中国が覇権拡大をもくろんでおり、日米豪で対峙する構えだ。

 日本は今後、尖閣の「実効支配の強化」をどうすべきか。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「コロナ禍のなか、中国による海洋進出は目に余る状況だ。日米豪の共同訓練は、中国へのプレッシャーだろうが、尖閣周辺での『100日連続』の航行という実績をつくらせてしまえば、十分とはいえない。このまま、中国公船が居座るのは最悪の事態だ。自民党がかつて掲げた『尖閣諸島への公務員常駐』を検討すべきだ」と語っている。

【私の論評】日本は尖閣を守備できるし、奪取されても十分取り返せる能力がある!(◎_◎;)



最近の尖閣諸島周辺領海への中国艦艇侵入に関するポイントを二つ挙げます。

(1)中国海警局の船が日本の領海に勝手に入ってくることは問題ないのか。
(2)日本の領海内で中国海警局船が日本の漁船を追跡することは問題ないのか。

まず(1)については、少なくとも「領海に入ってきてそのまま通り過ぎるだけ」であれば国際法上、何の問題もありません。

海洋に関するさまざまな権利義務などについて定めた「UNCLOS」(国連海洋法条約)に規定されているように、船舶には一定の要件のもとに他国の領海を通航できる「無害通航権」が認められています。UNCLOSでは、無害通航を「それが通航にあたるか(第18条)」と、「それが沿岸国(この場合は日本)にとって無害であるか(第19条)」というふたつの要件に分け、両者に合致するものが無害通航となります。

このとき「通航」は、継続的かつ迅速に行わなければならず、他国の領海内で停船したり錨を降ろしたりすれば、それがやむを得ない場合を除き通航とは見なされません(第18条2項)。そして、たとえ通航にあたるとしても、それが沿岸国の平和、秩序又は安全を害するような場合(第19条1項)、具体的には軍事演習や情報収集の実施、航空機の発着艦や漁獲といった活動を実施した場合には、それは無害な通航とは見なされません(第19条2項)。

それでは最近、中国海警局の船が日本の領海に頻繁に侵入していることは、前述の要件に照らしてどう判断されるのでしょうか。
まず、報道によれば海警局の船は数時間にわたって日本領海内にとどまっていることも往々にしてあります。これは、UNCLOSの第18条2項にいう「継続的かつ迅速」な通航という規定に抵触する、いわゆる「徘徊」や「巡航」と解釈することもでき、そうであればこの時点で海警局の船は、そもそも通航を行っていないことになります。

また、そもそも海警局の船が尖閣諸島沖の日本領海内に侵入してくる目的が、日本の尖閣諸島における実効支配に挑戦するためということを考えると、これはUNCLOSの第19条1項における「沿岸国の平和、秩序又は安全」を害する行為にあたり、たとえそれが通航にあたるとしても無害性を有さず、やはり無害通航にはあたらない可能性が極めて高いです。

こうした中国海警局の行動に対して、尖閣諸島の警備に従事している海上保安庁はどのように対応できるのでしょうか。

先ほど確認したUNCLOSの25条には「沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる」と規定されています。これは沿岸国の保護権というもので、海警局の船が無害通航を行っているとは考えられない場合には、海上保安庁はこの保護権の行使を認められ、かつ相手の行動と釣り合いがとれる範囲内で、海上保安庁法第18条2項などによる措置をとることになります。

たとえば、海警局の船に対して日本の領海外への退去を要請したり、あるいは針路を変更するための接近をしたり、さらに日本漁船を保護するために海警局の船と漁船とのあいだに割り込んだりといった措置をとることができます。また、もし海警局の船が海上保安庁の船に対して放水や進路妨害を行ってきた場合には、海上保安庁側も同様の措置を実施することが可能です。

他方で、武器を使用して追い出すべきだという主張も時折、見られますが、そのような強硬な措置をとることは中国側の活動と比較した場合の均衡性を欠いてしまうほか、かえって事態のエスカレーションを招き、問題をさらに複雑なものとしてしまうため、適法かつ妥当な方法とはいえません。

現在、中国は尖閣諸島における日本の実効支配を弱めるために海警局の船を活動させています。こうした中国の考えをくじくためにも、海上保安庁が行っているような継続的かつ実効的な活動が必要不可欠であるということがいえます。
ただし、明らかに中国軍や民兵が尖閣諸島に上陸しようとし、日本がそれを察知した場合は、そうではありません。無論攻撃はできます。これは、国際法上何の問題にもなりません。
これについては、週刊新潮が、以下のように記事を書いています。
尖閣周辺で中国船が挑発行為、海上民兵による上陸作戦なら海自は手出しできず
この記事から一部を引用します。
  仮に、中国軍が尖閣諸島の占領に成功した場合、自衛隊は奪還作戦を実施することになる。しかし、防衛省が島嶼奪還作戦の目玉として導入したLCAC(エア・クッション艇)とAAV7(水陸両用強襲輸送車)は、尖閣諸島のような岩場で囲まれた島嶼への作戦には使用できない。この点は、中国軍が尖閣諸島へ上陸する際の問題点と全く同じである。 
 ゴムボート等の小型船、あるいはヘリコプターを用いての上陸となるわけだが、海岸近くの海中には機雷が敷設され、海岸は地雷原となっている可能性がある。また、ヘリコプターによる降下を試みた場合、携帯式の地対空ミサイルで攻撃される可能性がある。機関銃や対戦車ロケット等による攻撃に晒され、組織的に上陸すら出来ないまま撤収することになる可能性も高い。 
 このように、占領することよりも、奪還することのほうが大きな困難を伴う。 
 となれば、少人数の特殊部隊を夜間に上陸させ、ゲリラ戦を展開して中国軍を掃討するしかない。
この記事を読んでいると、まるで大東亜戦争の頃から一歩も進んでいないような内容なので、がっかりします。

日本は、大東亜戦争中には、世界で一番優れた潜水艦を持っていましたが、潜水艦をうまく使いこなせていませんでした。ご存知のようにドイツはUボートを第一世界大戦中も第二次世界大戦中も有効に使い、実際かなり成果を上げてました。

米国もかなり有効に潜水艦を使い、大東亜戦争中には、東京湾の中に侵入し、様々な情報を得ていたといわれてます。

対する日本は、あまりうまく活用されていなかったというのが実情でした。

尖閣では、日本はこの過ちを反省して、潜水艦を有効に使うべきでしょう。まずは、常時から尖閣付近を潜航して、情報を集め、危機的な状況になれば、尖閣付近に複数隻の潜水艦を配置し、軽快にあたらせ。

中国が、航空機や船舶によって、軍隊や民兵を運んで、尖閣に近づいた時に撃沈すれば良いのです。このブログにも以前から掲載させて頂いているように、日本の潜水艦は、中国の対潜哨戒能力では、発見できません。

最新鋭の「そうりゅう型」潜水艦は、兵装としては、艦首上部に6門のHU-606 533mm魚雷発射管を装備している。89式魚雷及び、UGM-84 ハープーン 対艦ミサイルを搭載しています。また8番艦(SS-508)以降には新たに潜水艦魚雷防御システム(Torpedo Counter Measures :TCM)が装備されています。

昨年進水した「そうりゅう型潜水艦」12番鑑「とうりゅう」

中国側が艦艇で軍隊や民兵を送り込んでくれば、潜水艦で撃沈して仕舞えば、尖閣上陸は不可能です。仮に、上陸したとして、やはり潜水艦を複数配置して、補給路を絶てば、尖閣の中国軍や民兵は戦闘能力を失います。全員餓死です。

中国がヘリコプターなのどの航空機により軍隊や民兵を送り込んできた場合には、空自や海自のイージス艦でこれを撃墜すれば良いです。これも、もし上陸されてしまった場合、やはり潜水艦を複数配置し、補給路を断てば良いのです。

さらに、日本の掃海能力は世界一ですから、中国が尖閣諸島付近に、機雷を設置したとしても、すぐに解除できます。その後、日本が尖閣付近に機雷を撒けば、中国の乏しい掃海能力では、これを除去できず、事実上尖閣諸島を封鎖し、中国軍や民兵を、飢死させることができます。これが、機雷によりやりやすくなります。これは、無論日本が掃海したいと思えば、すぐにできます。

中国は、このようなことを想定しているため、本当はずっと前に、中国海軍のロードマップにある通り、尖閣諸島を含む第一列島線を確保したかったのでしょうが、結局いまだにできていません。ロードマップでは本当は、今年中に第二列島線まで確保することになっているのですが、それは絵に描いた餅にすぎません。
日本としては、中国側が上陸の気配を見せれば、このような対応して、中国がここまではしないというか、できない場合の対処としては現在海上保安庁が実施してる方式の他に、尖閣諸島への公務員常駐などを実施すべきです。
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