6月15日、立憲民主党など野党4党は衆議院に内閣不信任決議案を提出したが、与党は同日、衆院本会議でこれを否決した。ここ最近、「不信任決議案が出れば解散」と、首相の専権事項とされる解散権に踏み込んできた自民党の二階俊博幹事長には与党内で冷たい反応が少なくない。その他の不適切発言も含めて菅義偉首相自身がナーバスになっており、解散後には在職記録を更新し続ける幹事長職を追われるだろうという見方が強まっている。
【写真6枚】この記事の写真を見る
二階氏は15日の定例会見で内閣不信任決議案について、「最終的に総理から粛々と否決したいというご判断がなされた。その意思を尊重し与党として結束して断固否決の対応をしてまいりたい」とし、衆院解散に関しては「最後は総理が決めることだが、解散はもうこの時期ですから常識的にはないでしょうね」と続けた。
これまでの発言を駆け足で振り返っておこう。
その1日前の14日には、菅首相との会談後、「解散を進言する、こういうことです。私が解散する訳ではない。解散を総理に進言、申し上げるということです」
7日の記者会見では、「覚悟を持って不信任案を出される場合はどうぞ。直ちに解散します」
1日の記者会見で、「いつでも解散に打って出て、国民の皆さんの本当の真意をおうかがいしながら、政治に真剣に取り組んでいきたいと考えているので、ただちに解散の決意はある」
この際には緊急事態宣言中の選挙についても問われ、「周囲の意見をよく聞いた上で判断したい」と答えている。解散を判断する首相気取りの発言にも聞こえる。
五輪中止発言の余波
少しさかのぼって、4月4日放送のBSテレ東の番組では、「(野党が内閣不信任決議案を)出してきたらすぐやる。(今国会の)会期末であろうが、どこであろうが国民に信を問おうじゃないか」
そして3月29日の記者会見で、「自民党幹事長としてはそうした(内閣不信任案が提出された)場合に直ちに解散で立ち向かうべきだという風に(菅義偉首相に)進言をしたい」「解散覚悟のうえでそれぞれの党は意見を述べるべきだ」「不信任案を出してくる限りは与党は解散に打って出る覚悟を持っている」
政治部デスクに聞くと、
「尋ねる方も答えが分かったうえで質問していますよね。そして幹事長は毎回、期待を裏切らず答えてくれる(笑)。見出しを取りやすいし、幹事長としても存在感を示せるという思惑があるからこういうやりとりになるんでしょう。ただ、解散権は首相の専権事項ですから、幹事長は答える立場にはないというのが永田町の常識です。二階さんといえども、党内では“やり過ぎ”“言い過ぎ”という声が上がっていました」
これだけ解散だと言い続けてきたのに、単に不信任案否決ということになれば、幹事長に向けられる視線がさらに厳しいものとなりそうだが、
「その通りですね。ブラフ、脅しが利かなかったということですから求心力に影響することは間違い無いでしょう」
二階幹事長からは、4月15日のCS番組の収録で、東京五輪について、こんな発言も飛び出していた。
「ぜひ成功させたいと思うが、そのために解決すべきテーマがたくさんある」「これ以上とても無理だということだったらこれはもうスパッとやめなきゃいけない」「(中止の選択肢について)それは当然だ」
二階派は実質的に武田派に
再び先のデスクによると、
「解散に関する言及もさることながら、五輪中止発言には菅さんも憮然としていたようです。菅政権樹立のきっかけを作った自負がある二階さんとしてはある程度、踏み込んだ発言をしても問題ない、誰にも文句は言わせないという思いがあるようですが、菅さんがそれを面白く思うはずがありません」
ここにきて、解散後を見据えた主導権争いが目に見えて活発になってきている。口火を切ったのは、麻生太郎財務相だった。
「4月に行われた自派閥の政治資金パーティーで、“菅義偉首相を先頭に衆院選を戦っていかなければならない。われわれは中心的な役割を担っていきたい”と述べ、解散後に言及しています。それに呼応するように安倍前首相も、“当然、菅首相が継続して首相の職を続けるべきだ”とBS番組で述べ、9月に任期満了を迎える自民党総裁での続投が望ましいと表明しました。麻生さんは去年の総裁選で二階さんが『菅総裁』の流れを作って、そのまま幹事長職を続けていることに不満で、一方の安倍さんもそろそろ派閥のボスに就く流れで、となると幹事長ポストは手に入れたい。居座り続ける二階さんが邪魔なのは間違いありません」
菅首相としては、この2人の首相経験者からの支持表明は渡りに船だ。別のデスクに聞くと、
「菅さんは党内基盤が脆弱ですから、安定的な政権運営には派閥ボスとの良好な関係作りが欠かせません。二階さんは歴代最長だった田中角栄を超えて通算在職日数を更新し続けていて、菅さんとしても“そろそろ後身に身を譲って頂いて‥…”という思いがあるようです。解散後の議席次第ではありますが、菅さんがその後も政権運営を続けるとして、二階さんを留任させる可能性はあまりないと言われています」
来る総選挙では、山口3区で、二階派ナンバー2の河村建夫元官房長官と参院からの鞍替えを目指す林芳正元文科相が激突する可能性が高く、「林さんが圧勝する」(同)と見られる。
「そうなれば、さらに二階さんの求心力に影響することは避けられません。加えて総選挙後は、二階派は実質的に武田良太総務相に引き継がれ、武田派になっていくようですから、二階さんが要職に就き、表立って発言を続けるのも秋頃までということになりそうです」
自民党の二階幹事長は、自転車事故で大けがをして政界を引退した谷垣・前幹事長の後任として、6年前の平成28年8月に就任し、その後続投を続けています。
これにより、二階氏が政治の師と仰ぎ、幹事長を2度務めた田中角栄・元総理大臣の1497日を抜いて、歴代最長となったのです。
二階氏は、去年8月に連続の在任期間が歴代最長となったのに続き、通算でも最長となりました。
二階氏は、自民党の総裁任期の延長を主導するなどして、安倍総理大臣の政権運営を支えたほか、今回の総裁選挙では、安倍総理大臣の辞任表明の翌日に菅官房長官と会談し、いち早く、みずからが率いる二階派をあげて支持の方針を打ち出しました。
菅氏は、自民党総裁選前の昨年9月7日の記者会見で、二階氏について、「政策を実行していくためには、政府・与党が緊密に連携することが不可欠だ。幹事長が党内をしっかりと、取りまとめていただけるので、非常に頼りになる存在だ」と述べていました。
菅氏は、自民党総裁選に勝ち、自民党総裁となり、その後の役員人事で、二階氏が決まりました。
菅総理 |
また、中止を判断する場合は戦争状態や内乱など、IOCが「参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠」がある場合とされています。
加えて、中止となった場合に生じる金銭的な賠償責任も日本側に不利な内容です。
IOCが中止判断を下した場合、東京都・JOC・東京大会の組織委員会は「いかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求および権利を放棄」し、中止した場合に生じた「第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする」と記されています。
東京オリンピック・パラリンピック大会の開催都市契約の署名。ジャック・ ロゲIOC会長、猪瀬直樹都知事(当時)、竹田恒和JOC会長(いずれも当時) らのサインがある。 |
第9条には「IOCに対する請求の補償と権利放棄」の項目があります。大会中止を含むトラブルが生じた場合、IOCやスポンサー、米NBCなどのメディアといった第三者への損害賠償を含む補償を日本側が支払う可能性があります。IOCの最大の収入源である放映権をめぐっては、2032年までの五輪・パラリンピックの夏・冬6大会の放映権料を米NBCが76億5000万ドルで購入しています。