2021年6月22日火曜日

二階幹事長の赤っ恥 不信任案否決で解散ブラフは不発に 秋には幹事長もお役御免か―【私の論評】これ以上二階氏が幹事長を勤めることは、自民党にとっても良くないし、二階氏にとっても晩節を汚すだけ(゚д゚)!

二階幹事長の赤っ恥 不信任案否決で解散ブラフは不発に 秋には幹事長もお役御免か



我が世の春を謳歌してきた二階氏だが・・・・・・

菅首相もナーバスに

 6月15日、立憲民主党など野党4党は衆議院に内閣不信任決議案を提出したが、与党は同日、衆院本会議でこれを否決した。ここ最近、「不信任決議案が出れば解散」と、首相の専権事項とされる解散権に踏み込んできた自民党の二階俊博幹事長には与党内で冷たい反応が少なくない。その他の不適切発言も含めて菅義偉首相自身がナーバスになっており、解散後には在職記録を更新し続ける幹事長職を追われるだろうという見方が強まっている。

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 二階氏は15日の定例会見で内閣不信任決議案について、「最終的に総理から粛々と否決したいというご判断がなされた。その意思を尊重し与党として結束して断固否決の対応をしてまいりたい」とし、衆院解散に関しては「最後は総理が決めることだが、解散はもうこの時期ですから常識的にはないでしょうね」と続けた。

 これまでの発言を駆け足で振り返っておこう。

 その1日前の14日には、菅首相との会談後、「解散を進言する、こういうことです。私が解散する訳ではない。解散を総理に進言、申し上げるということです」

 7日の記者会見では、「覚悟を持って不信任案を出される場合はどうぞ。直ちに解散します」

 1日の記者会見で、「いつでも解散に打って出て、国民の皆さんの本当の真意をおうかがいしながら、政治に真剣に取り組んでいきたいと考えているので、ただちに解散の決意はある」

 この際には緊急事態宣言中の選挙についても問われ、「周囲の意見をよく聞いた上で判断したい」と答えている。解散を判断する首相気取りの発言にも聞こえる。

五輪中止発言の余波

 少しさかのぼって、4月4日放送のBSテレ東の番組では、「(野党が内閣不信任決議案を)出してきたらすぐやる。(今国会の)会期末であろうが、どこであろうが国民に信を問おうじゃないか」

 そして3月29日の記者会見で、「自民党幹事長としてはそうした(内閣不信任案が提出された)場合に直ちに解散で立ち向かうべきだという風に(菅義偉首相に)進言をしたい」「解散覚悟のうえでそれぞれの党は意見を述べるべきだ」「不信任案を出してくる限りは与党は解散に打って出る覚悟を持っている」

 政治部デスクに聞くと、

「尋ねる方も答えが分かったうえで質問していますよね。そして幹事長は毎回、期待を裏切らず答えてくれる(笑)。見出しを取りやすいし、幹事長としても存在感を示せるという思惑があるからこういうやりとりになるんでしょう。ただ、解散権は首相の専権事項ですから、幹事長は答える立場にはないというのが永田町の常識です。二階さんといえども、党内では“やり過ぎ”“言い過ぎ”という声が上がっていました」

 これだけ解散だと言い続けてきたのに、単に不信任案否決ということになれば、幹事長に向けられる視線がさらに厳しいものとなりそうだが、

「その通りですね。ブラフ、脅しが利かなかったということですから求心力に影響することは間違い無いでしょう」

 二階幹事長からは、4月15日のCS番組の収録で、東京五輪について、こんな発言も飛び出していた。

「ぜひ成功させたいと思うが、そのために解決すべきテーマがたくさんある」「これ以上とても無理だということだったらこれはもうスパッとやめなきゃいけない」「(中止の選択肢について)それは当然だ」

二階派は実質的に武田派に

 再び先のデスクによると、

「解散に関する言及もさることながら、五輪中止発言には菅さんも憮然としていたようです。菅政権樹立のきっかけを作った自負がある二階さんとしてはある程度、踏み込んだ発言をしても問題ない、誰にも文句は言わせないという思いがあるようですが、菅さんがそれを面白く思うはずがありません」

 ここにきて、解散後を見据えた主導権争いが目に見えて活発になってきている。口火を切ったのは、麻生太郎財務相だった。

 「4月に行われた自派閥の政治資金パーティーで、“菅義偉首相を先頭に衆院選を戦っていかなければならない。われわれは中心的な役割を担っていきたい”と述べ、解散後に言及しています。それに呼応するように安倍前首相も、“当然、菅首相が継続して首相の職を続けるべきだ”とBS番組で述べ、9月に任期満了を迎える自民党総裁での続投が望ましいと表明しました。麻生さんは去年の総裁選で二階さんが『菅総裁』の流れを作って、そのまま幹事長職を続けていることに不満で、一方の安倍さんもそろそろ派閥のボスに就く流れで、となると幹事長ポストは手に入れたい。居座り続ける二階さんが邪魔なのは間違いありません」

 菅首相としては、この2人の首相経験者からの支持表明は渡りに船だ。別のデスクに聞くと、

 「菅さんは党内基盤が脆弱ですから、安定的な政権運営には派閥ボスとの良好な関係作りが欠かせません。二階さんは歴代最長だった田中角栄を超えて通算在職日数を更新し続けていて、菅さんとしても“そろそろ後身に身を譲って頂いて‥…”という思いがあるようです。解散後の議席次第ではありますが、菅さんがその後も政権運営を続けるとして、二階さんを留任させる可能性はあまりないと言われています」

 来る総選挙では、山口3区で、二階派ナンバー2の河村建夫元官房長官と参院からの鞍替えを目指す林芳正元文科相が激突する可能性が高く、「林さんが圧勝する」(同)と見られる。

「そうなれば、さらに二階さんの求心力に影響することは避けられません。加えて総選挙後は、二階派は実質的に武田良太総務相に引き継がれ、武田派になっていくようですから、二階さんが要職に就き、表立って発言を続けるのも秋頃までということになりそうです」

【私の論評】これ以上二階氏が幹事長を勤めることは、自民党にとっても良くないし、二階氏にとっても晩節を汚すだけ(゚д゚)!

週刊誌に掲載される政局関連のほとんどは、出鱈目なものが多いです。ただし、週刊誌の特性から、新聞やテレビでは取り上げることができないものも取り上げられることもあり、それが他のメディアに先駆けて真実を表している場合もあります。

読者としては、様々な情報、特にすでに発表された様々な事実などから、週刊誌の報道を読み取るべきです。鵜呑みにだけはすべきではありません。

それにしても、二階氏が昨日も掲載したように、投開票日が10月10日になりそうな秋の衆院選後の組閣で幹事長職を追われそうなことは、いかにもありそうなことです。

二階幹事長の年齢は82歳です、ちなみに麻生財務大臣兼副総理は80歳です。あまり年齢の差もないようにみえますが、この年代で2つの差は大きいですし、さらには個人差も相当あります。

二階幹事長の在任期間は、昨年9月8日時点で1498日となり、田中角栄・元総理大臣を抜いて歴代最長となりました。

自民党の二階幹事長は、自転車事故で大けがをして政界を引退した谷垣・前幹事長の後任として、6年前の平成28年8月に就任し、その後続投を続けています。

これにより、二階氏が政治の師と仰ぎ、幹事長を2度務めた田中角栄・元総理大臣の1497日を抜いて、歴代最長となったのです。

二階氏は、去年8月に連続の在任期間が歴代最長となったのに続き、通算でも最長となりました。

二階氏は、自民党の総裁任期の延長を主導するなどして、安倍総理大臣の政権運営を支えたほか、今回の総裁選挙では、安倍総理大臣の辞任表明の翌日に菅官房長官と会談し、いち早く、みずからが率いる二階派をあげて支持の方針を打ち出しました。

菅氏は、自民党総裁選前の昨年9月7日の記者会見で、二階氏について、「政策を実行していくためには、政府・与党が緊密に連携することが不可欠だ。幹事長が党内をしっかりと、取りまとめていただけるので、非常に頼りになる存在だ」と述べていました。

菅氏は、自民党総裁選に勝ち、自民党総裁となり、その後の役員人事で、二階氏が決まりました。

菅総理

このような二階氏ですが、幹事長としてはすでに焼きが回っているのではないかと思われるようなことが散見されます。

まず、直近ではなんといっても、二階氏を含む自民媚中三人組による対中非難決議の見送りでしょう。これは、他の野党も全部が賛成に回っていたものの、実質二階氏が見送りを決めています。

これは、昨年の米ピューリサーチセンターの調査により、86%もの日本人が中国を否定的に見ているという調査結果からもあきらかなように、国民の中国不審は明らかであり、二階氏のこの行動は、国民に対する裏切りであるともいえます。

そうして、多くの自民党議員も、中国を否定的に見ているのは確実であり、にもかかわらず、二階氏の対中非難決議の見送りを独断で決めたことに、自民党内からも大きな不満が出るのは当然のことです。それよりも何よりも現状の世界情勢をみれば、対中非難決議案を見送ることなどできないのは自明のことです。二階氏は、世界情勢、特に中国情勢を客観的に見ることはできないようです。

さらに、解散についての言及も完璧にまずいというか、あまりにお粗末です。先日もこのブログにも掲載したように、内閣支持率とコロナ感染率には明確な負の相関があります(下グラフ参照)。


相関係数が▲0.85なのですから、これは確実に負の相関関係にあるとみて間違いありません。現在ワクチンの接種率も上がっており、徐々に内閣支持率もあがりつつある状態にあります。ただ、まだ低い状態にあるのは間違いないです。

これが、9月にもなれば、かなり新規感染者数は減り、内閣支持率が上がることが見込めます。このときに、オリパラがさしたる混乱もなく終わっていれば、ますます追い風となっていることでしょう。それを現時点で、選挙となれば、支持率がかなり低いので、与党が負ける可能性も高いです。

それに、今月行われた党首討論で、菅総理は枝野立憲民主党代表に言質をとられず、解散総選挙を言い出すことはありませんでした。これをもって、党首討論は、菅総理の大勝利だったといえます。言質を取れなかった枝野氏は敗北です。これをみても、菅総理は直近で解散総選挙をするつもりが全くないことがわかります。

しかしその後の内閣不信任案においては、二階氏は不信任案が出されれば、解散などということを平然と語っています。これでは、票読みもできないといわれても致し方ありません。

さらに、五輪中止に言及するということもあり得ないことです。そもそも、開催の決定権はIOCにあります。それは、東京都とIOCが結ぶ「開催都市契約」でも明らかです。

開催都市契約の条文によれば、開会中止の権限は東京都や日本政府ではなくIOCのみが持つことになる。こうした内容から、開催都市契約を「不平等条約」と揶揄する声もあるくらいです。

また、中止を判断する場合は戦争状態や内乱など、IOCが「参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠」がある場合とされています。

加えて、中止となった場合に生じる金銭的な賠償責任も日本側に不利な内容です。

IOCが中止判断を下した場合、東京都・JOC・東京大会の組織委員会は「いかなる形態の補償、損害賠償またはその他の賠償またはいかなる種類の救済に対する請求および権利を放棄」し、中止した場合に生じた「第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする」と記されています。

    東京オリンピック・パラリンピック大会の開催都市契約の署名。ジャック・
    ロゲIOC会長、猪瀬直樹都知事(当時)、竹田恒和JOC会長(いずれも当時)
    らのサインがある



第9条には「IOCに対する請求の補償と権利放棄」の項目があります。大会中止を含むトラブルが生じた場合、IOCやスポンサー、米NBCなどのメディアといった第三者への損害賠償を含む補償を日本側が支払う可能性があります。IOCの最大の収入源である放映権をめぐっては、2032年までの五輪・パラリンピックの夏・冬6大会の放映権料を米NBCが76億5000万ドルで購入しています。

軽々しく、五輪中止に言及する二階氏は、もう焼きが回ったと言わざるを得ません。いくら、党内調整に長けているとはいっても、現下で媚中をやめない頑迷固陋さや、票読みができない、重要な条約の意味も理解できないようでは、誤った党内調整しかできません。最低でもこれくらいできないと、幹事長など勤まりません。

以上のようなことからも、冒頭の新潮デイリーの「二階さんが要職に就き、表立って発言を続けるのも秋頃まで」という記事の結論は大いにありそうですし、自民党はそうすべきです。

これ以上二階氏が幹事長を勤めることは、自民党にとっても良くないし、二階氏にとっては晩節を汚すだけになります。

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2021年6月21日月曜日

台湾・ベトナムから始まる日本版ワクチン外交の勝算―【私の論評】年内に一部野党・マスコミは自滅!選挙とワクチン外交で大勝利を収める菅内閣(゚д゚)!

台湾・ベトナムから始まる日本版ワクチン外交の勝算

セバスチャン・ストランジオ

台湾向けのコロナワクチンの輸送機への積み込作業(成田空港、6月4日)

<ワクチン不足にあえぐASEAN諸国への援助を決めた日本政府がCOVAXなどの国際機関の枠組みを経由しなかったのは、手続きに時間がかかるから──だけではない>

ベトナムの首都ハノイに6月16日夜、約100万回分のアストラゼネカ社製新型コロナワクチンが到着した。ワクチン不足に悩むベトナムに対する日本政府の贈り物だ。茂木敏充外相はその前日の会見で、他のASEAN諸国にも7月からワクチンの無償提供を開始すると発表した。

「(ASEAN諸国の)感染状況やワクチン不足、日本との関係等々を総合的に勘案して」決定したと、茂木は記者団に語った。また、今回の無償提供はWHO(世界保健機関)のCOVAXなどの国際機関の枠組みを経由せず、直接の2国間援助という形で行われると述べ、その理由として国際機関を通すと「承認取得等の手続きに若干時間がかかる」ためだと説明した。

ベトナムは2020年に新型コロナの封じ込めに成功して国際的に高く評価されたが、今年4月以降感染が拡大している。6月19日の時点で感染者数1万2508人、死者は62人。ベトナム保健当局はインドとイギリスでそれぞれ確認された変異株(デルタ株、アルファ株)の特徴が組み合わさったハイブリッド株を検出したと報告している。

日本からベトナムへのワクチン提供は6月初め、感染が急拡大した台湾に送ったアストラゼネカ製ワクチン124万回分に続くもの。茂木はインドネシア、タイ、フィリピン、マレーシアにも7月から同様の無償提供を検討していると述べた(ワクチンの量などの詳細は明かさなかった)。

日本はアストラゼネカ製ワクチンを1億2000万回分確保しており、そのうち9000万回分は国内で生産されることになっている。ただし、日本の厚生労働省は副反応への懸念から、国内での接種を保留している。

今回の日本の無償提供を、中国の「ワクチン外交」と切り離して考えることは難しい。中国政府はパンデミック(世界的大流行)の発生当初から、新型コロナの抑え込みとパンデミックからの経済回復を目指すASEAN諸国の重要なパートナーとして自国を売り込んできた。

中国はASEANの全ての国に、大量の自国製ワクチンを有償または無償で提供している。現在、ASEAN諸国で国民の半数以上にワクチンが接種できる見込みなのはシンガポールだけだ。もともと中国への警戒心が強いベトナムも、感染拡大を受けて中国医薬集団(シノファーム)製ワクチンを承認した。

日本がCOVAXの枠組みを通さないワクチン提供を選択した本当の理由は、おそらく戦略的な利点が最も大きい国や地域にワクチンを送りたいからだろう。WHOに加盟していない台湾にワクチンを提供できる点はさらに重要だ。

ASEAN諸国への日本のワクチン提供が実現すれば、長年日本企業が製造拠点を置いてきたこの地域で重要な外交的パートナーシップを強化するのに役立つだろう。多くのASEAN諸国は中国の勢力拡大と海洋進出に対する懸念を日本と共有している。

日本は近年、ハノイからミンダナオ島までのASEAN域内各地で高速道路、橋梁、地下鉄、かんがい網、送電線などの建設を手掛け、中国が「一帯一路」構想の下で進める融資付きインフラ開発に代わる有力な選択肢を提供できることを証明してきた。

国内でのワクチン接種が十分に進めば、日本には新型コロナ対策についてASEAN諸国でも同様のことができるだけの資金力と緊密な関係がある。

From thediplomat.com

【私の論評】年内に一部野党・マスコミは自滅!選挙とワクチン外交で大勝利を収める菅内閣(゚д゚)!

政府は、6月4日、まず台湾に124万回分を提供しました。さらにベトナムにも、提供しました。


日本政府がベトナムに無償供与した新型コロナウイルスのワクチン約100万回分が6月16日夜、ハノイのノイバイ空港に到着しました。日本で製造された英国アストラゼネカのワクチンで、グエン・タイン・ロン保健相によると、17日朝にホーチミン市に輸送され、南部地域での接種に活用されるといいます。

ベトナム政府は2021年内に人口の75%ほどが2回の接種を完了できるよう、1億5,000万回分のワクチン調達を目指しており、ワクチン基金を立ち上げるなど奔走しています(2021年6月11日記事参照)

累計接種回数は16日までに約177万回で、人口に対する接種割合は1%台とみられ、2回の接種を完了した人は約7万人、人口の0.1%以下にとどまっています。医療従事者をはじめ、軍・公安関係者、教員、高齢者などを対象に優先的に接種されており(2021年2月25日記事参照)、5月以降は感染地域を中心に工業団地の労働者への接種も進んでいます。

ベトナムは感染の抑え込みに成果を上げてきたが、2021年4月末に発生した第4波により、北部のバクザン省やバクニン省、南部ホーチミン市を中心に感染が拡大している(2021年5月25日記事参照)。ベトナムの累計感染者数は6月17日午前時点で約1万1,700人ですが、そのうち第4波による感染者が7割以上を占めます。

日本からのワクチン供与について、ファム・ミン・チン首相は6月15日、山田滝雄駐ベトナム大使と会談した。山田大使は、今回のワクチン供与は日本とベトナムの深い友情の証しと強調しました。

また、在ベトナム日系企業36社がワクチン基金に392億ドン(約1億9,600万円、1ドン=約0.005円)を寄付しており、今後も寄付額は増えるとの見解を示しました。チン首相は、日本の支援に対し、ベトナム政府と国民を代表して謝意を表明した。また、今後の日本との連携について、ワクチン生産技術の移転支援のほか、ベトナム産果物の日本への輸出促進、日本在留ベトナム人への支援など、さらなる協力を求めました。

タイのアヌティン保健相は21日、日本政府が英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンをタイに寄付すると発表しました。

24日に合意文書に調印し、7月前後にワクチンが到着する予定といいます。数量は明らかにしていません。

タイは今月、大規模なワクチン接種を開始。国王の所有する企業が国内で製造するアストラゼネカのワクチンに大きく依存していますが、一部で遅れが生じており、台湾、マレーシア、フィリピンにも影響が出ています。

タイでは、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンも利用されており、一部は中国から寄付を受けています。

人口約6600万人のうち、ワクチン接種を完了したのは210万人です。

日本の自衛隊のワクチン接種東京会場では、予約がなかなか埋まらなくなっています。多くの人が不思議だというが、これはワクチンが確実余ってくることを示しているようです。余って予約が埋まらなれば、若者に打てば良いし、場合によっては接種券がなくても本人確認書類だけで打っても良いでしょう。

自衛隊のワクチン接種東京会場

日本には、ワクチン嫌いの人も多数いて、「コロナワクチンに関する意識調査」(リーディングテック)によれば、62.8%の人は接種を希望しているのですが、37.3%の人は希望しないとなっています。

海外でも、人口の6割に達したイスラエルは新規の接種数が激減しています。米英もそうです。未成年は接種しないので全人口に対する比率は6割でも成人人口に対する比率は8割にものぼります。

日本はファイザー7200万人分、モデルナ2500万人分、アストラゼネカ6,000万人分、95%の有効率があるファイザーとモデルナで9700万人分を確保しています。日本の18歳以上人口は1億756万人、8割の人がするとすれば8600万人分のワクチンがあればよい計算です。5%を無駄にしても9,215万人(9,700×0.95)に打てます。

ごくわずかですが血栓のできる可能性があり、有効率が7割と言われているアストラゼネカのワクチンはもう余ることが分かっています。アストラゼネカのワクチンは、イギリスや大陸欧州諸国、韓国など71か国で接種していますから、さほどの問題はないでしょう。ちなみに、ファイザー社製は72か国で接種しています。

このような状況のなか政府は、6月4日、まず台湾に124万回分を提供しました。この日は天安門事件があった日です。これは、明らか日本政府が意図して意識して提供したのでしょう。これは、台湾人も理解しているでしょうし、中国人も理解しているでしょう。

これは、明らかに日本政府の「政治的メッセージ」です。それとなく、中国のワクチン外交に対抗する意思をしめしたものです。日本今後さらにマレーシアにも供与するとのことです。年末にかけて、日本のワクチン外交は着々と進められることになります。

そうしてこれはまた、中国のワクチン外交も今年までだ、ということを意味しています。おそらく多くの人は、中国のワクチンよりアストラゼネカのワクチンを打ちたいと考えるでしょう。アストラゼネカのワクチンは日本で製造しています。

ライセンス料さえ払えばいくらでも製造することができるでしょう。ファイザーもモデルナも、高く売れる先進国に売った後は、安くても途上国にたくさん売りたいはずです。日本のこうした動きを歓迎することでしょう。

中国がワクチンを海外に配布できることが、共産主義体制の勝利を示すものだという中国の自己宣伝を信じる人が日本にもいることは残念ですが、仮に勝利であるとしても、それは短期的なものにすぎません。1年で自由主義体制下の製薬企業が大量生産でます。

中進国以上の国々は自分で購入して、貧しい国は日本を含む先進国が援助すればよいのです。ファイザーとモデルナの95%の有効率という、感染症学者にも思いもよらないほどの高い効果を持つメッセンジャーRNAワクチンを発明し大量供給できることこそ、短期的に旗色が悪くなることはあっても、長期的には(といってもせいぜい1年以下の遅れに過ぎないのですが)、人々の自由な試みを賞讃する自由主義体制が勝利することの実例になることでしょう。

その中でも、日本はアジアの中で大きな役割を果たすことになります。以下に、現在の日本のコロナの状況などを確認するために、高橋洋一氏が作成したグラフ(本人のTwitterに掲載)を以下に掲載します。



新規感染者数と内閣支持率の関係は、相関係数がマイナ▲0.85ということで、負の相関が高いです。これは、当然といえば、当然です、感染症が蔓延しているときには、国民は政府に対して効果のある感染症対策を求めるからです。

100万人あたりの、新規感染者数は元々他国に比較すると桁違いに低いですが、今後ワクチンの接種がすすめば、もともと「さざ波」だったものが,9月あたりには「なぎ」になるのは確実でしょう。

ワクチン接種回数は、予測より大幅に進み、もうすでにイギリスを除く他国と遜色がないくらいまでになっています。これだと、五輪・パラもさしたる混乱もなく、他の世界大会などと同様に終了することでしょう。

これを成功させれば、世界中の人々の間に長く記憶に残る祭典になります。まさに、私達日本人が、人類がパンデミックに打ち勝てることを示す新たな世界史の1ページを綴ることになるのです。日本の威信は嫌が追うでも高まることになります。

このままの勢いだと、9月あたりには、誰の目からみても、コロナが収拾する日は近いとわかる程度にまで、感染者数が少なくなります。そうして、内閣支持率もかなり上がります。

これを見計らい菅総理は昨日も示したように、9月28日公示、10月10日投開票のスケジュールで、補正予算の可決、衆院解散を行うでしょう。

そうして、おそらく余程のことがない限り、菅政権はこれに勝利することでしょう。

この時点で、マスコミ・一部野党は、お通夜状態になるでしょう。

大好物のパンケーキを満面の笑顔で食する菅総理

そうして、さらに年末にかけて経済が回復するとともに、内閣支持率はさらに上がるでしょう。さらに、年末にかけて、日本のワクチン外交は続き、多くの国々から感謝されることになるでしょう。

菅内閣は、外交はあまり良くないようなことが言われていましたが、これは完全に払拭され、菅外交も、安倍外交と同様に高く評価されることになるでしょう。

年内に倒閣命の一部野党・マスコミは自滅することになるかもしれません。コロナ収束にともない、テレビ視聴率、新聞購読率はさらに激減するでしょう。一部野党は、倒閣のための決め手になる材料に乏しくなります。中国対応や改憲等に関しては、自民党も攻めどころが満載なのですが、なぜか野党をここを突きません。

ただ、国民はそのようなことにはほとんど関心を持たないでしょう。コロナでできなかったことに挑戦し始め、過去にはさほど有り難みもあまり感じなかったような些細なことにまで、幸福を感じるようになるでしょう。当たり前と思っていたことが、当たり前でないことに気づくようになるでしょう。いつもネガティブなマスコミ報道や、野党の倒閣運動は見向きもされなくなるかもしれません。それが、さらに内閣支持率を上げることになるかもしれません。

ただ、好事魔多しという言葉にもあるように、菅政権も浮かれてばかりいては、何が起こるのかわかったものてはありません。選挙後には、党内の問題を改善したり、中国対応や憲法問題に真摯に取り組み、勝って兜の緒を締めるべきです。

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2021年6月20日日曜日

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「3A」VS二階幹事長 自民党「抗争の歴史」に新たな1ページを刻むのか

中山知子の取材備忘録

自民党二階俊博幹事長(右)の議連設立総会であいさつする安倍晋三前首相

「3A」といえば、米メジャーリーグ傘下の組織。この言葉が最近、スポーツ紙ではなく一般紙や報道番組でひんぱんに登場する。安倍政権時代から盟友の安倍晋三前首相、麻生太郎財務相、甘利明税調会長3人の名前の頭文字だ。3人は最近、自民党で次々に立ち上がる議員連盟の中心メンバーで、活動を活発化させる安倍氏が複数で最高顧問などに就任している。安倍政権時代から党の人事とカネを握り、まもなく5年になる二階俊博幹事長のポストに狙いを定めた「人事抗争」「主導権争い」ではとの見方がある。3Aは現在の日本で、緊張感あふれる話題のキーワードだ。

そんな3Aのメンバーと二階氏が交錯する会合が、15日に自民党本部で行われた。二階氏が会長を務める「自由で開かれたインド太平洋」推進議連で、安倍氏の最高顧問就任も発表された。約130人の議員のほか、大勢のメディアで8階の会議室は満杯に。安倍、二階両氏は第2次安倍政権後半、二階氏の幹事長続投をめぐる攻防が報じられた間柄だが、また当時の雰囲気が再燃しつつある。

安倍氏は冒頭「マスコミの皆さんもたくさんおられる」と会場を見回しながら「いろんな顧問を引き受けているが、この会こそ引き受けたいと思った」と、横に座る二階氏を見ながら思わせぶりに語った。「政治家はあきらめない、しつこくということが大切」と話すと、拍手が起きた。その前にあいさつした二階氏のぼそぼそとした口調とは対照的に、冗舌だった。

会の始まりは午後5時、8階の会議室。30分後、1階下にある7階のやや小さめの会議室で、3Aの1人、甘利氏が会長を務め、安倍氏が最高顧問を務める「半導体戦略推進議連」の勉強会が開会。当初、二階氏の議連と開始時間が同じで「二階氏と3Aが全面対決か」と騒動になり、甘利氏側が時間をずらした。会が始まってしばらくすると、二階氏の懐刀、林幹雄幹事長代理が8階から移動。甘利氏は「これが、この議連の趣旨です」と“融和”を強調したが、額面通りに受け取った人はどれほどいただろう。義理は果たしたとばかりに、林氏はその後、また8階に戻った。

自民党の歴史には、大小含めてさまざまな権力闘争があった。「角福戦争」「四十日抗争」など、今も語り継がれる熾烈(しれつ)な戦いも少なくない。近年の安倍1強時代は安倍氏にものをいえる人がおらず、深刻な党内のもめごとはほとんどなかった。ただ今回は、前首相や前首相の盟友コンビ、こわもて現職幹事長が当事者。まぎれもない権力闘争にみえる。

二階議連では、3A、二階氏双方に軸足を置く格好となっている安倍氏が1人、元気だった。首相を辞め自由に発言する機会が増える中、「周囲が安倍氏の活動を支援するため」ともいわれるほどの議員連盟乱立で、最高顧問などの立場で前面に登場する。二階議連翌日の16日は「国民皆歯科検診」実現を目指す新たな議連が立ち上がり、ここにも参加。17日は二階氏が発起人の自治会や町内会を支援する議連でも、最高顧問として参加している。

首相時代と違ってよほどのテーマでよほどの失言でもしない限り、明確な責任は生じないかもしれない。一方で「3A」の1人として物事を動かす可能性がある立場=キャスティングボーダーになっているように見える。前首相ながら、生々しい権力抗争のさなかにいるのだ。

対立や分裂を繰り返す野党とは異なり、数の力の意味を知る自民党は最終的にはまとまるのが文化だ。ただ3Aと二階氏の動きは、自民党総裁選や衆院解散・総選挙が行われる今年秋に向けて、新しい政局的な流れを生むかもしれない。永田町に長年勤めるベテランは、最近の動きをこう評した。「抗争こそ、自民党ですからね」

【私の論評】マスコミ・野党も9月にはお通夜状態、10月10日の選挙に向け与党は一丸となって戦い勝利し党内バトルはその後に(゚д゚)!

上の記事にもある"「3A」VS二階幹事長"の抗争は、いかにもありそうなシナリオです。しかし、それ以前に自民党がしておくべきことがあります。それは、無論次の衆院選挙での勝利です。この抗争は、この勝利が前提です。敗北すれば、抗争どころではなくなります。

自民党の議員は、この抗争の前にまずは選挙で勝たなければならないです。そのため、選挙でも数の力の意味を知る自民党は最終的にまとまるでしょう。

そうして、永田町においてはすでに選挙のシナリオはまとまっているとみるべきです。五輪パラ直後に臨時国会を開催し、補正予算を上げてから、解散。10月10日投開票はもうすでに、永田町の常識になっているようです。10月3日は補正をあげられないし、仏滅だからあり得ないです。仏滅投開票は戦後26回のうち2回しかないのです。これは選ばないのが常識ともいえます。


立憲民主党が不信任決議案を提出しましたが、これは誰もが予想したように、否認されました。「不信任決議案が提出されたら解散する」とを二階幹事長が語っていましたが、そういうハプニングは結局起きませんでした。

おそらく10月の可能性が高いからこそ、枝野氏もタイミング的にあの時期に言わないと不信任決議案を言うタイミングがなくなると考えていたのでしょう。そもそも10月の選挙が濃厚になって来たからこそ、安心して不信任案を出せたともいえます。

 10月10日投票日というのは、スケジュール的に与党にとってはかなり良いのです。パラリンピックが終わるのが9月5日です。その後すぐに臨時国会を召集して、補正予算を通すことになるでしょう。ちなみに、補正予算は1週間~10日くらいかかるのです。それを見ると、9月28日告示、10月10日投開票というスケジュールが見えてきます。

9月28日は大安で、10月10日は先勝です。おそらくこれ以外に考えられません。 このスケジュールの唯一の難点は9月30日に自民党総裁の任期が切れてしまうので、手続きをどうするだけです。

しかし、この手続は1週間~10日くらいですから、暫定的に総裁の任期を延ばせば良いだけです。そうすると、この日程しかないとおのずからスケジュールが決まってきます。

枝野氏も今言わないと言うチャンスがないし、いま言ったら安心して否決されるというパターンでした。 9日には党首討論がありましたが、枝野氏は菅総理の解散総選挙の言質をとることができませんでした。

党首討論

その後菅総理はG7サミットに参加。そこから帰って来ると、もう国会開催中の14・15・16日の3日間にしか内閣不信任案を提出できませんでした。だから15 日に不信任案を提出して、否決してそれでおしまいになりました。 

それで少なくとも枝野氏を含めてすべての人の面子が立ちました。 二階さんも、解散発言について再度問われたとしても「当然、解散総選挙は総理の権限ですから」と言うわけですからといえば面子が立ちます。

問題は、投票日に新型コロナウイルスの感染状況がどうなっているかですが、ワクチン接種をすると、当然のことながら感染率は下がります。実際問題、東京の6月8日ですら、感染者数は369人です。100万人あたり27人という数字ですから、そもそもかなり低いのです。

現在でも予想通り下がっています。ワクチンを打っても、次の波が来ると言う専門家がいるのですが、波がかき消されてしまうというレベルなのです。下げ止まりという人もいますが、元々かなり低いので、いっとき下げ止まりしているように見えるだけです。そのため、このまま徐々下がって行きます。ワクチン接種の効果が効いて、10月くらいになると、接種率は4割ほどになります。そうすると集団免疫に近くなります。

そうなると誰の目に見ても、専門家になど頼らなくても、明らかに近いうちにコロナが収束する時期が見えてきます。

新型コロナウイルス感染症対策分科会が、感染数理モデル等を政府で使ってもらうためには、まずは予測をある程度当てないと信用されません。そのため、初めはパラメータを広く取り一定幅で説明し予測を当てて、次第にパラメータを狭めて予測の精度を高めるなどして、信頼を得る必要があったのですが、結局分科会はそれが出来ませんでした。

感染症対策で政治で求められているのはとにかく先が、正確無比でなくても良いので、ある程度予測出来ることです。新型コロナは当初は未知の現象なので、先が読めない中、政府が専門家に頼るのは先を読むためです。そのため、予測を外したり、結果を後講釈するだけの自称専門家は必要ないのです。

新型コロナウイルス感染症対策分科会御身会長

分科会は、エビデンスなしで、いろいろなことを言い過ぎたので、結局は政府からは、専門家扱いされなかったのでしょう。

現状では分科会が大きな影響を与えているようにもみえますが、それはマスコミがそのような扱いをするのでそう見えるだけです。本来助言者の役割を担う分科会が大きな影響力などありませんし、あったとすれば、そちらのほうが大問題です。コロナ対策の最終責任を負うのは、選挙によって選ばれた議員が構成する政府であり、分科会は元々責任などとれません。

五輪・パラも結局さしたる混乱もなく終了し、8月〜9月頃には、分科会が何を言おうと、コロナ収束が近いことは誰の目にもあきらかになり、分科会の見解など、選挙や政局等には何の影響もなくなります。マスコミ、野党も政府をつつける材料が何もなくなり、お通夜状態になるでしょう。本当は対中非難決議見送りなどを批判材料とすれば、かなりの盛り上がりをみせるでしようが、彼らは中国共産党が怖くてそれもできません。

そうして、対立や分裂を繰り返す野党とは異なり、数の力の意味を知る自民党は、一丸となって選挙に勝ち抜き、公明党もこの動きに呼応し選挙戦を戦うことになります。"「3A」VS二階幹事長"の抗争などはその後になります。選挙が終わるまでは、対中非難決議見送りの元凶となった二階氏等の媚中三人組への党内での批判も選挙に大きな支障が出ない限り選挙後になるでしょう。自民党総裁選びの大バトルも無論選挙後になります。

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2021年6月19日土曜日

中国による台湾の軍事的占領、近い将来起こる公算小=米軍トップ―【私の論評】「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対する米軍の「政治的メッセージ」(゚д゚)!

中国による台湾の軍事的占領、近い将来起こる公算小=米軍トップ

マーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)

米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)は17日、中国が必要とする軍事力を開発するには時間がかかるため、中国が近い将来、台湾を軍事的に占領しようとする可能性は低いと述べた。

議会で、台湾は依然として中国の核心的利益として位置付けられているが、「軍事的に行おうとする意図や動機は現時点でほとんど見られない」と指摘。「軍事的に行う理由はなく、中国側も認識している。そのため、近い将来に行われる可能性はおそらく低い」とした。

また、中国が軍事的手段によって台湾全体を掌握するために必要な軍事力を備えるには「まだ道半ば」と語った。

台湾国防部(国防省)は15日、中国の戦闘機など28機が台湾の防空識別圏に侵入したと発表していた。

【私の論評】「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対する米軍の「政治的メッセージ」(゚д゚)!

「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が3月9日、米上院軍事委員会の公聴会で行った証言です。同時期に日米の外務、防衛閣僚が集まった協議(2プラス2)の共同声明も「閣僚は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した」とうたいました。

そのためもあってか、最近台湾危機を懸念する声が急速に高まっています。ただ、このブログでは一環して、中国は台湾を奪取できない旨を主張してきました。

デービッド司令官の公聴会に先立つ昨年2020年9月1日、アメリカ国防総省(DOD)が「中華人民共和国を含めた軍事・安全保障に関する2020年版報告書」を発表しました(DOD Releases 2020 Report on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China)

報告書はミサイルと造船技術に焦点を当て、ミサイルについては、中国軍が射程500~5500キロメートルの中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていないと指摘しました。米国は元ソ連時代からロシアと締結してきた中距離核戦力(INF)廃棄条約に拘束されてきたからです。

したがって、もし米中が軍事衝突に至った場合、米軍は中国軍に勝つことができない恐れがあると報告書は書いています。中国軍が中距離ミサイルの大量発射という手法で、グアムや在日米軍基地を攻撃した場合に、米軍には抵抗手段がないというのが報告書の見方です。このままではインド太平洋地域における米軍の優位は保たれないと強い危機感を表明しました。

そのインド太平洋に関して、今年3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が米上院軍事委員会の公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言したのです。このブログでは、大陸中国が台湾と戦えば、台湾単独でも大陸中国は甚大被害を被ること、台湾に日米やQuadが協力した場合、中国の台湾奪取は事実上不可能と、様々な証左をあげつつ主張してきました。

米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官

ところが、報告書ならびに、デービッドソン司令官の証言は、米国は中国に負けると言っているのと同じです。なぜ、そのような主張をしたのでしょうか、それにはそれなりの理由があるものと考えられます。

今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言したデービッドソン司令官が、公聴会で「(中国が)やろうとしていることの代償は高くつくと中国に知らしめるために、オーストラリアと日本に配備予定のイージス・システムに加え、攻撃兵器に予算をつけるよう議会に求めた」ということに注目しなければならないでしょう。

これは、「中距離弾道ミサイルの日本配備」を求めているということです。

米露間にはINF廃棄条約があったため、中国軍が中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていませんでした。さらには、最近ではロシアもこの条約を破り、中距離弾道弾の配備をすすめています。

そこでトランプ元大統領はINF廃棄条約から脱退し(2019年8月2日)、米国も自由に製造することができるようにして、ポストINFを配備してくれる国を探していました。韓国の文在寅大統領は習近平に忖度して断ったのですが、オーストラリアの首相は親中派のターンブル氏から嫌中派のモリソン首相に替わったので、候補地としてはオーストラリアと日本ということになりました。

6年以内に中国が台湾を武力攻撃すると言ったのは、日本には尖閣諸島があり、すぐさま影響を受けるだろうことを示唆したものです。日本が自国を守りたければ、矢面に立つ覚悟を持てという意味で、「米軍は中国軍より弱い」と誇張して、本気で「中国軍に脅威を感じている」と日本にシグナルを発したのです。

ただし、現実には台湾にも多数の中短距離ミサイル、対空ミサイルが多数配備されているので、中国が台湾を奪取しようとした場合、台湾単独で戦ったにしても、大陸中国はかなりの損害を被ることになります。

最新型といわれる中国の戦闘機でもステルス性が低くくステルス性においては、米軍の第一世代と同程度ともみられていますので、中国が台湾に航空部隊を派遣した場合、そのほとんどが台湾に撃墜されることになります。

さらに、台湾が中距離ミサイルで中国国内の三峡ダムや重要拠点などに対して、ミサイルによる飽和攻撃を行った場合、大陸中国も甚大な被害を被ることになります。

これに、日米が加勢した場合、特に海戦においては、中国は日米に比較して、圧倒的に対潜哨戒能力と潜水艦のステルス性に劣っている、一方日米は中国より数段優れた世界一の対潜哨戒能力を持っているのと、日本は静寂性に優れた潜水艦隊を持つことと、米国は静寂性には劣るものの、強大な攻撃力を持つ原潜を多数保有していることから、海戦では圧倒的に中国が不利であり、日米は有利です。

世界一ステルス性が高いとされるB2爆撃機(手前)

さらに、航空戦においても、米国はステルス性の高い最新鋭の戦闘機を多数配備しており、中国はこれを発見することはできません。一方、中国の戦闘機はステルス性が低く、日米は容易にこれを発見でき、地対空ミサイル、空対空ミサイルで、ほとんどが撃墜されることになります。そうなると、航空戦でも、日米はかなり有利です。

中国がいくら、中短距離ミサイルを多数所有していたにしても、その他いくら優れた兵器をもつていたにしても、ステルス性の高い航空機を撃墜したり、ステルス性が高い潜水艦を撃沈することはできません。敵を発見できなければ、攻撃することはできません。

昨年は4海域で、大規模な軍事演習を行いました、しかし最近の人民解放軍は軍事演習が目立たなくなりました。台湾侵攻をちらつかせたにもかかわらず、人民解放軍の動きは止まっています。これが、本気なら軍事演習を継続するべきです。米軍は人民解放軍の実状を見抜いたようで、台湾に米軍機を入れました。これは米軍が中国を確認するための派遣だと思われます。

おそらく、人民解放軍は物資不足で動けないのでしょう。現代の陸軍2万人規模の一個師団であれば、1日で2000トンの水・食糧・その他を消費します。空軍が陸軍の一個師団を火力支援するなら、一日で弾薬も含めて4000トン消費するのです。つまり、セットで6000トン消費するのです。

作戦規模が大きくなれば、5倍や10倍の消費になるのは当たり前です。この消費に耐えるように、各国は常に生産・輸送・備蓄・補給を行います。消費と同時に備蓄も進めるので、生産ができなければ対応困難となります。

昨年中国は4海域で大規模な軍事演習を行ったが今年は鳴りを潜めた

軍事演習ですら、最近実施しないというか、物資不足で実施できないような中国の実態をみれば、中国による台湾奪取など途方も無い妄想ともいえます。そもそも、兵站を維持できなければ、台湾に上陸してもすぐに奪還されることになります。

それに、ステルス性の高い日本の潜水艦や、ステルス性の高い日米の戦闘機、攻撃力の高い米潜水艦が台湾を取り囲んでしまえば、人民解放軍の上陸部隊は、台湾に上陸する前に殲滅されてしまいます。

日米とも軍は愚かではないので、初戦で、空母打撃群や艦艇を大々的に台湾に派遣するなどことはしません。初戦は日米対中国の潜水艦隊決戦になるでしょう。これにも、中国は惨敗することになります。さらに、航空機も駆逐し、場合によっては中国国内の軍事拠点も破壊した後の詰めの段階ではじめて米軍は空母打撃群を派遣することになるでしょう。

仮に人民解放軍が台湾に上陸できたにしても、補給ができずに、上陸部隊はお手上げになってしまいます。そうなると、どう考えても、現状でも、米軍が中国負けるなどということは考えられません。

やはり、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官の「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対して「中距離弾道弾」を配備せよとの「政治的メッセージ」と考えるほうが筋が通っています。

やはり、今回の米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)の主張する、中国が必要とする軍事力を開発するには時間がかかるため、中国が近い将来、台湾を軍事的に占領しようとする可能性は低いという発言のほうを米軍の公式見解とみるべきでしょう。

ただ、中国の中短距離弾道ミサイルは、確かに台湾や日本の不安定要因になるのは明らかであるため、日本も中短距離弾道ミサイルの配備をすすめるべきでしょう。中国は台湾を奪取することはできませんが、それと中国の中距離弾道ミサイルの脅威とは別問題です。日本も対抗手段を持たなければ、中国のコスト強要戦略」等に脅かされることになります。

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2021年6月18日金曜日

「自民党の風当たり強くなる」有本香氏のコラム「以読制毒」詳報で波紋 対中非難決議見送り 本紙ツイッターには「日本人として申し訳ない気持ちだ」―【私の論評】中国共産党と似ている自民媚中"三人組"(゚д゚)!

「自民党の風当たり強くなる」有本香氏のコラム「以読制毒」詳報で波紋 対中非難決議見送り 本紙ツイッターには「日本人として申し訳ない気持ちだ」

17日発行の夕刊フジに掲載された有本香氏のコラム「以読制毒」の紙面
 中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を非難する国会決議案が通常国会で採択されなかったことについて、ジャーナリストの有本香氏が17日、夕刊フジの人気連載「以読制毒」で明かした内幕と、痛烈な批判が波紋を広げている。7月4日投開票の東京都議選や、次期衆院選を見据えて、自民党内でも早急な決議を求める声が浮上している。

 「日本人として申し訳ない気持ちだ」「民主主義はどこへ」「自信をもって投票できなくなる」

 有本氏のコラムを紹介した本紙編集局ツイッターには、このような返信が殺到している。18日午前9時現在、4700以上の「いいね」と、1900以上のリツイートを記録している。

 対中非難決議案は、全野党から承認を得ていたにもかかわらず、国会提出が見送られた。

 注目の「以読制毒」で、有本氏は「自民党関係者と支持者らは『公明党が潰した』という。しかし、ほぼすべての事情を知る筆者はそう思わない」といい、文案への「承認」サインを求めた自民党の下村博文政調会長と古屋圭司元国家公安委員長らと、同党の二階俊博幹事長と林幹雄幹事長代理による応酬を伝えている。都議選での公明党との連携を見据えて、二階氏のサインを制止したのは林氏だという。

 同席した自民党議員も17日、ネット番組で前出の経緯を認めている。

 今回の非難決議見送りには、自民党内で不満が噴出している。

林幹雄幹事長代理

 自民党中堅議員は18日朝、「英国での先進7カ国(G7)首脳会議でも、中国に『人権や基本的自由』を尊重するよう求める共同声明が採択された。日本の国会が声を上げられないのは、おかしい。党内でも『なぜだ!』と憤っている議員は多い。自民党を批判するネットの反応は無視できない。衆院選前の臨時国会で速やかに決議をするくらいのスピード感でいかないと、自民党への風当たりはもっと強くなる」と語った。

 別の自民党ベテラン議員は「戦略が間違っていた。最初から公明党と自民党二階派を巻き込み、アプローチしていればよかった。通常国会の閉幕間際に焦ったように決議案提出を目指した議連側は動いていた。全会一致で決議したいなら、決議案の文面もハードルを下げるべきだった。今回は自民党が悪い。自民党支持層が怒るのも、もっともだ」と語った。

 自公与党は今後、どうするのか。

 公明党の北側一雄副代表は17日の記者会見で、「(公明党が)決議を止めたという話は全くない。自民党がまず党内で一致しないといけないが、最終的にそこまでに至らなかったと認識している」「自民できちんと取りまとめられたら、公明としてもしっかり受けて議論していきたい」と語った。

【私の論評】中国共産党と似ている自民媚中"三人組"(゚д゚)!

先の先進7か国首脳会議(G7サミット)では、欧米各国に比べ、日本の中国に対する姿勢が際立って弱いことが浮き彫りになったばかりでした。G7中、我が国だけは中国と隣国であり、常に軍事的脅威にさらされているだけにほかの6国とは地理的な事情が大きく違うのですが、それにしてもあまりに及び腰すぎます。

G7

自民党内にも情報戦のようなものがあるようです。まずは自民執行部で唯一、対中非難決議を推し進め、公明から警戒された下村博文政調会長が逆に最終段階で「下村が決議を止めている」との酷い偽情報が流布されていました。

下村氏は党の外交部会まで使い自民をまとめる異例の戦略を採った立役者です。それでも決議は公明の反対で葬られたのです。これが中国の属国日本の姿といえるかもしれません。

公明党を除き全政党賛成の対中非難決議が公明の反対で遂に採択できず。「人権侵害の状況は深刻さを増しているのに」と反発した自民下村博文政調会長と森山裕国対委員長は「公明党の議論が進んでいない。反対ではなく慎重に議論する」とし「中国と一体化の公明に蹂躪される自民党」と言及しました。 

さらに「自民執行部の“媚中3人組”二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、森山裕国対委員長が最終段階で見せた醜悪な姿を忘れまい。彼らが自民を牛耳る限り公明の意見は“絶対”。つまり日本の政策は中国共産党の意向の反映。対中制裁で人権の闘いを国際社会が展開中しても非難すらタブーの日本。先人に恥ずかしい」と嘆いていました。

本当に情けないです。自民には、親中的な公明が採択に及び腰だったことが見送りの原因との声がある一方、公明は閉会間近まで自民から正式な交渉の呼びかけがなかったとして、「根回し不足」(幹部)を指摘しています。

「根回し不足」どころか、林幹事長代理が、これを意識して止めたというのですから、問題外です。無論、止められる二階氏にも大きな問題があります。

二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、森山裕国対委員長

この三人、中国共産党に非常に似てきたと思います。まずは、一党独裁ということで、中国は多くの人民の意向など完璧に無視します。その不満のマグマがたまって、自らに跳ね返りそうになれば、城管、警察それで事足りなければ、人民解放軍で人民を弾圧して黙らせます。

日本は、民主主義体制ですから、さすがにそこまではできませんが、それにしても長期政権が続き、国民の声を聴くということをしなくなってきたという点では似ています。この三人と、中国共産党の違いは、民主主義体制と全体主義という政治体制によるものだけかもしれません。

この三人は、昨年の米ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、日本人の86%もが、中国に対して否定的な考えを持っていることが明らかになっていることなど気にもしていないのかもしれません。この三人も、自民党や公明党も、国民に顔を向けた政治をすべきです。

今回の決議案は、野党は全部賛成していたというのですから、この三人の態度は国民をないがしろにしていると言わざるを得ません。このようなことを平気でできるということは、中国共産党の人間と親しく交わっているうちに、知らず知らずに彼らの影響を受けているのではないでしょうか。

さらに、海外よりも、自国内を優先するということでも似ています。中国ではこのブログでも以前示したように、元々外交があまり重視されず、対外関係も自国内の都合や中国共産党の都合で動く度合いがかなり強いです。そのため、中国の外交政策は、ほとんどが失敗ばかりです。いっとき中国外交を「したたかな外交」と褒めそやす向きもありましたが、私自身は、昔から中国は外交ベタというか、外交劣等生だと思います。結局この三人も、党内事情などで、中国との対応を決めるなど、中国共産党と似た動きをしています。

また、中国共産党が内部で派閥闘争にあけくれるということでも、この三人は似ていると思います。彼らも、多くの議員を籠絡して味方につけたり、場合によっては恫喝してみせたりと、党内政治に明け暮れているようです。そのためでしょうか、中国共産党は夢のようなことを言うのですが、結局何をやりたいのかさっぱりわかりません。

戦略などなく、ただその時々で派閥抗争に勝利するために行動するというのが、中国共産党の本質です。その実自分たちは、「孫氏の兵法」の継承者であると悦にいっているところがあります。古代の戦略が現代に通用すると思っているところが、共産党の最大の弱点だと思います。この三人も腹黒く様々な姦計をめぐらして、権力を手中におさめていると悦にいっているところがあると思います。この点でも、中国共産党と似たり寄ったりのようです。

これは、私の推測ですが、きっとこの三人は中国大使あたりから、「中国共産党100周年が終わるまでは、"人権弾圧を非難する国会決議案"を通さないでください」などと依頼を受けたのかもしれません。実際、ジャーナリストの篠原丈一郎氏がそのようなことを語っていました。

もしこれが事実であれは、とんでもないです。

 13日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明では、ウイグル自治区での人権侵害に懸念が示されました。それだけに、抑制的な内容の決議案ですら採択に持ち込めなかったという事実は今後、与党に重くのしかかることになるでしょう。

 採択見送りが、中国の強硬な振る舞いを警戒する保守層の疑念を招く可能性もあり秋までに行われる衆院選への影響も軽視できないです。与党の人権問題に関する公約が力を失うとの見方もあります。

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2021年6月17日木曜日

米中戦争から英中戦争へ―【私の論評】新たな日米英三国同盟が、中国を封じる(゚д゚)!


中国は昨年は4海域で大規模な演習を行ったが今年は鳴りを潜めている


■方針変更

 これまでは中国の外交・軍事で攻勢が見られていた。渤海・黄海・東シナ海・南シナ海で、人民解放軍による同時大規模な演習が行われていた。ところが、段階的に規模が小さくなり、最近では人民解放軍に軍事演習は見られない。

 それに対して、アメリカ・イギリス・フランスなどは、定期的な合同軍事演習を継続。しかも太平洋・インド洋・地中海で合同軍事演習が行われている。アメリカと中国の対立が激化すると、台湾が危険地帯となった。

中国当局、米軍機の台湾入りに沈黙 かつて「米中開戦」と威嚇
https://www.youtube.com/watch?v=3fxqZoVN4t4

 中国が台湾に侵攻する動きを見せると、アメリカは台湾支援を露骨に見せつける。中国は過去に、「アメリカ軍機が台湾に入ると米中開戦になる」と威嚇したことが有る。以前のアメリカは中国との対立を回避していたが、今ではアメリカ軍機を堂々と台湾に入れる。

 中国はアメリカ軍機が台湾に入ると開戦すると脅したが、外交・軍事で反論も報復も無い。過去の中国は攻勢でアメリカは防勢だった、だが今では、中国は防勢でアメリカが攻勢に転じている。

■人民解放軍は張子の虎

 人民解放軍の軍事演習が目立たなくなった。軍事演習の目的は、表向きは軍隊の練度向上と練度維持。何故なら、軍事演習は敵が居ないだけの実戦で、指揮命令と物資消費は実戦に近い。だから練度向上と練度維持に使われる。

 軍事演習の裏の意味は、軍事力を背景に外交をする。国際社会で多用されるので、仮想敵国が軍事演習を行えば、返答として自国も軍事演習をすることが多い。軍事力を見せ付け、相手国に譲歩させる。そして、言葉で相手国を従わせる。覇権とは言葉による指導力だから、軍事演習で相手国を脅し従わせる。

 だが最近の人民解放軍は軍事演習が目立たない。しかも台湾侵攻を見せ付けたが、人民解放軍の動きは止まってしまう。アメリカ軍は人民解放軍の実状を見抜いたようで、台湾にアメリカ軍機を入れた。これはアメリカが中国を確認するための派遣だと思われる。

 おそらく、人民解放軍は物資不足で動けないのだ。陸軍2万人規模の一個師団であれば、1日で2000トン消費する。空軍が陸軍の一個師団を火力支援するなら、一日で4000トン消費する。つまり、セットで6000トン消費する。

 作戦規模が大きくなれば、5倍や10倍の消費になるのは当たり前。この消費に耐えるように、各国は常に生産・輸送・備蓄・補給を行う。消費と同時に備蓄も進めるから、生産ができなければ対応困難。

 人民解放軍は航空機を何度も台湾に接近させた。これで台湾空軍の対応を見ると同時に、消耗させる動きを見せた。台湾空軍の指揮命令に穴が有れば、そこから人民解放軍を突入させれば良い。さらに、度重なる領空侵犯で台湾空軍が消耗すれば、台湾政府が下ると考えたのだろう。

 だが台湾の政治と軍事は耐えた。台湾への脅しが長期化すると、今度は人民解放軍に疲弊が見られた。そんな時にアメリカは、アメリカ軍機を台湾に入れている。つまりアメリカは、中国は脅しだけで、人民解放軍は張子の虎だと見抜いたのだ。

■軍事無き脅し

 中国の強気の姿勢は継続しているが、外交も攻勢から防勢に変わっている。中国主導の外交ではなく、仮想敵国の外交に合わせた防勢に変更している。アメリカが中国の政治家・企業に制裁を行うならば、中国も報復として人物・企業に制裁を行うことを採用。

中国、「反外国制裁法」を可決 専門家は「実力を過信」と効果疑問視
https://www.epochtimes.jp/p/2021/06/74421.html

 これは状況戦術であり、相手の動きに対応するだけ。戦略が無く、今できることだけに終始している。つまり中国は、主導権を握る戦略が外交から失われている。だから中国は、強気の姿勢で自国を大きく見せている。

 しかも中国は、アメリカによる策に落ちた可能性が有る。18世紀のナポレオン戦争の時代、フランスとイギリスは対立。この時にイギリスは、フランスの商船を拿捕。次にイギリスは、フランス商船の積荷を奪い船員を帰国させた。

 フランスは怒り、フランス領内で生活するイギリス人を拘束して報復。先に手を出したのはイギリスだが、国際社会はフランスを批判した。その理由は、フランスが人間の自由を奪ったから。人間から自由を奪い、拘束することは殺人の次に重いとされる。だから刑務所で自由を奪い、罪を償わせる。

 フランスは被害者であり後手。それは明らかだが、人間の自由を奪ったことで国際社会から批判を浴びた。これはイギリスがフランスに仕掛けた間接的な戦争で、フランスはイギリスの罠に嵌ったのだ。

 アメリカが中国に仕掛けた間接的な戦争に、中国は嵌った可能性が有る。中国も外国人・企業への制裁を行うことで対抗するが、自国内で実行すれば、国際社会から批判される可能性が有る。さらに外国人を拘束し自由を奪えば、国際社会からの軍事的な先制攻撃を正当化させる可能性が有る。

 何故なら無実の外国人が拘束され自由を奪われた。ならば救出作戦を実行しても正当。自国民救出の戦闘は正義だから、批判する国は無いも同然。さらに、支援するための連合軍を編成しても正当化できる。

■イギリス空母打撃群の接近

 イギリスでG7が開催されたが、過去のヤルタ会談を思わせる。G7は中国の覇権拡大と支配を拒絶。さらに東シナ海・南シナ海・太平洋の今後の安全を確認する内容。さらに中国の一帯一路構想を拒絶したから、明らかに戦後を前提とした会談。

G7、途上国へのインフラ支援で合意 中国「一帯一路」に対抗
https://www.afpbb.com/articles/-/3351405

 これがアメリカとイギリスのシナリオだと仮定すれば、アメリカはアドバイザーになり、イギリスを主役にした英中戦争への切り替えになる。この動きは既に実行されており、イギリス空母打撃群は、イギリス・オランダ・アメリカの海軍艦艇で編成されている。

 表向きはイギリス空母打撃群だが、中身は連合軍。アメリカ海軍も参加するが、主役ではなく脇役。これはイギリス空母打撃群をアドバイザーとして支援していることになる。これはイギリスには都合が良く、しかもアメリカにも都合が良い。

 何故ならイギリスは、香港人の救出を目的とした戦争を行う大義名分が有る。しかも中国は、イギリスと交わした一国二制度を破棄した。中国はイギリスとの約束を破り、しかも香港人の人権を弾圧。これらはイギリスを怒らせるには十分で、イギリスが中国と戦争すれば、正義はイギリス側になる。

 ならばアメリカは米中戦争よりも、イギリスを支援して英中戦争にする方が良い。自国の消耗を回避できると同時に、正義の戦争が手に入る。その結果として、仮想敵国である中国に勝てるなら美味しい話。

■想定される戦域

 米中戦争から英中戦争に変更した場合は、アメリカ海軍はイギリス軍の支援に回る。公には日本を母港とする空母がインド洋に派遣される。交代するかのように、イギリス空母打撃群が日本に寄港する。航空戦力は低下するが、イギリス空母打撃群を中核とした戦力が有るなら、人民解放軍と対抗可能。しかも海上自衛隊も参加すれば、十分な戦力になる。

 想定される戦域は南シナ海。それも香港・マカオを奪取することが目的だと思われる。何故なら、香港とマカオには有力な空港が存在する。しかも海岸に存在するから、攻撃と防御が容易。さらに少ない戦力で実行するなら、香港とマカオが有力になる。

 イギリス空母打撃群が香港とマカオを奪取すれば、人権弾圧を受ける香港人を解放できる。さらに空港を使うことで、人民解放軍を南北に分断することが可能。しかも内陸部の人民解放軍を空爆することも可能なので、奪取後の長期戦にも耐えられる。

 アメリカとイギリスは人権を武器に戦争を行え、しかも中国を弱体化させることができる。戦後のアジアの安定を獲得し、しかも一帯一路構想で奪われた市場を取り戻すことも可能。そのためのG7だったならば、中国はG7連合軍との戦争に怯えている。

【私の論評】新たな日米英三国同盟が、中国を封じる(゚д゚)!

軍事力には、一定の地域に展開しその地域や国家に向けて自分の国の意思をメッセージとして発信する機能もあります。これを私は政治的メッセージであるとこのブログでは語っています。特に中国海軍はその側面が強いです。中国海軍は、対潜哨戒能力が極度に低いので、実際中国海軍が日本の海上自衛隊と戦えば、そのほとんどが瞬時に海の藻屑となります。

それは、このブログで何度か述べているように、日本は対潜哨戒能力に秀でていている上に、潜水艦のステルス性も優れていて、日本の潜水艦は潜水艦は中国に発見できない一方、中国の潜水艦は日本に容易に発見されてしまうからです。

これでは、最初から勝負になりません。これは、米国や英国などの他の先進国についても同じようなことがいえます、これらの国々は対潜哨戒能力が中国より優れているので海戦では中国よりは遥かに有利なのです。

それでも中国は巨額の軍事費を投じて、海軍を拡張しているのですが、対潜哨戒能力が劣っているため、実際の海戦になれば、圧倒的に不利です。中国の護衛艦は、空母を護衛できないのです。そのため、実際に海戦になれば、大敗を喫するのは中国です。

それでも、中国が海軍の拡張に走るのはなぜかといえば、国内外に向けて「強力な政治的メッセージ」を発信するためです。海洋進出への中国の並々ならぬ決意を示すものです。ただし、その強力なメッセージがある程度届くのは、最近では中国国内と、東南アジアなどの脆弱な海軍を持つ国に限られるようになりました。

それは、G7後さらに顕著になったといえます。ただし、この「政治的メッセージ」の中には、「中国海軍は最終的に負けるが、それにしても、これと戦えばかなり面倒なことになる、それでもやる気か」というメッセージも含んでいます。

これは、いわゆる中国の「コスト強要戦略」です。これは「ある国の望ましくない行動に対して、実現させるためにコストをかけざるを得ない状況にして、その行動を自制させること」と定義されます。軍事面だけでなく、経済、政治などいろいろな要素を組み合わせたもので、コストとはカネの面だけでなく、負荷全般といっていいだろう。そして非常に重要な点は、平時に行われ、しかも長期間にわたることです。


中国海軍は元々「政治的メッセージ」


20年ぶりに空母打撃群をインド太平洋地域に派遣し、さまざまな演習を行う目的は、英国が新たな世界に関与するグローバル・ブリテンに生まれ変わることを政治的メッセージとして発信することなのですが、その目的を達成するため英国が最も重視しているのは日本との連帯であす。今回の空母派遣には日本との関係が大きく影響しているという側面もあります。

2017年8月下旬、英国のメイ首相(当時)が来日し、日本の安倍首相(当時)の間で「日英安全保障協力宣言」ともいうべき4つの合意文書を取りまとめました。

英国政府は日本が安倍政権であった2015年11月に新たな国家安全保障戦略を採用したのですが、そのなかで米国以外の国々との安全保障関係を拡大することを強調し、欧州以外の相手国として、唯一日本を「同盟国」と指定していました。その後、自衛隊と英国軍との交流がかつてとは比較にならないほど活発になったのですが、クイーン・エリザべスのアジア展開は、2017年に合意した日英安全保障共同宣言に盛り込まれているのです。

印象的だったのはメイ首相が日英首脳会談後のNHKの単独インタビューの中で「英国と日本は両国とも海洋国家です。私たちは民主主義や法の支配、人権を尊重します。私たちは自然なパートナーであり、自然な同盟国だと思います」と語ったことです。この呼びかけに対して日本側も前向きに応じたことで、日英両国の関係は「パートナー」から「同盟」の段階へと劇的に強化されたのです。

このことは日本ではあまり認識されていないのですが、日英のリーダーが互いを「同盟国」と公式に呼び合ったのは1923年に日英同盟が解消されて以来、初めてのことでした。クリーン・エリザベスの派遣は新たな日英同盟誕生の証を内外に示すものだといっても過言ではありません。



1902年に日英同盟が締結された当時の日英両国にとっての共通の脅威はロシアであり、日本は英国の支援を受けて日露戦争で勝利しました。新たな日英同盟の脅威の対象は中国ですが、100年前のように軍事同盟である必要はないかもしれません。むしろ軍事的な協力を含む安全保障のあらゆる分野で協力し合う包括なもののほうが望ましく、有事よりもむしろ平和時に機能するものでなくてはならないでしょう。

クイーン・エリザベスは、2017年に就役した英海軍史上最大級の艦艇です。第二次世界大戦後、日本を訪問する外国の大型艦船といえば米軍であり、米軍以外の大型艦船が日本の近海に立ち寄ることなど想像もできませんでした。英国の空母がはるばる日本にまでやってくることは、時代の大きなうねりを感じさせる出来事です。

クイーン・エリザベスは最大40機の戦闘機を搭載する能力を備えていますが、今回の派遣では英空軍のF-35Bステルス戦闘機18機に加え、米海兵隊第211海兵戦闘攻撃飛行隊のF-35Bステルス戦闘機10機も搭載されており、事実上の英米混成部隊となっています。日本近海で航空自衛隊のF-35Bステルス戦闘機が参加すれば、日米英の最新鋭の航空機部隊による史上最高レベルの演習になるに違いありません。

英国との間でACSA(物品役務相互提供協定)を締結している日本は、クイーン・エリザベスが率いる艦隊に不足しているとされる補給艦の役割を自衛隊が肩代わりし、早期警戒機やイージス型護衛艦を派遣することもできます。英国からすれば日本の港湾施設は空母への支援を受けることができる理想的な場所にあります。

さらに、英艦隊と日本の海自が協力することにより、「政治的メッセージ」だけではなく、強力な軍事的メッセージを発信することができます。日本には、強力な潜水艦隊があり、これにより普段から中国海軍の情報収集をしており、英艦隊はこの情報を活用できるのです。

海自は2018年12月の防衛大綱でも定められた潜水艦22隻体制を確立

実際に香港・マカオを奪取等の戦端が開かれれば、日本の潜水艦隊は、中国海軍の動きを封じることができます。中国の艦艇は自国の軍港から出ることができなくなります。中国には、静寂性の優れた日本潜水艦を探知できず、軍港外に出れば撃沈される可能性がかなり高いからです。そうして、中国の潜水艦はステルス性に劣るため、日英に探知されやすいからです。

ただし、このようなことはすぐには、考えられずやはりこれは日英による中国に対する「コスト強要戦略」としての性格が強いです。しかし、中国が傍若無人な態度を取り続ければ、最終的に香港・マカオ奪還もあり得るということで、日英が中国を強力に牽制することになります。ただし、英国がフォークランド紛争を戦い抜いた国であることも忘れるべきではありません。

このように新たな日英同盟は時宜にかなったものですが、かつてのように日英同盟が単独で機能するものではありません。新たな日英同盟とともに日本と英国がすでに有する米国との同盟を深化させることで日米英の事実上の三国同盟の誕生を目指すべきです。これにより、日本は第二次世界大戦後初めて米国一辺倒から脱し、戦略的に自立できるのではないでしょうか。

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2021年6月16日水曜日

米国内で数少ない「共通項」になった中国への反感―【私の論評】世界でも共通項となりつつある中国への反感の中で中途半端な日本(゚д゚)!

米国内で数少ない「共通項」になった中国への反感

岡崎研究所

 5月27日付のワシントン・ポスト紙に、ファリード・ザカリア同紙コラムニストが、「習の中国はオウンゴールするのを止められないように見える、中国の“平和的台頭”を語る時代はずっと前に終わっている」と題する論説を寄せ、習近平政権の外交政策を批判的に論評している。


 ザカリアの論説は的を射たよい論説である。習近平になってからの中国外交が、鄧小平時代とその後とは様変わりしているというのはその通りであろう。「平和的台頭」を標榜していた中国はもはやないということである。

 習近平のスローガンは「中国の夢」、「中華民族の復興」など、中国のナショナリズムを鼓舞するものである。こういうスローガンは中国人の心には響くであろうが、他民族には全く響かない。そういうなかで、国際協調の考え方は背後に追いやられてしまった。中国外交が、いまや自国利益を追求するあまり、攻撃的なもの(「戦狼」)になっており、国際社会がそういう中国への懸念を強めているのは自然であるように思える。

 既にザカリアが記事の中で紹介しているが、米国人で中国に対する否定的な見方をしているのは2017年の47%から2020年には73%になった。カナダでは40%から73%に、英国では37%から74%に、豪州では32%から81%に、韓国では61%から 75%に、スウェーデンでは49%から85%に、いずれも急激に増えた。コロナの影響もあるだろうが、おそらくそれだけではないだろう。香港やウイグル問題を含む人権問題、貿易や投資での嫌がらせ、海洋進出等、様々な事柄が絡み合ってのことだろう。

 習近平は相当内向きの政治家のようで、国内政治における自分の立場を盤石にすることに最も大きい関心があり、国際世論や他国の反応への関心がそれほどでもないからではないかと思われる。中国は大国であり、国外のことはほどほどの注意を払っておけばよいとの考えもありうるが、中国に対する評価が世界的に悪化していることには中国も気を付けた方がよいのだろう。「戦狼外交」とかでいい気になっていると、しっぺ返しを被る可能性がある。その予兆は、既に、ザカリアも論説で指摘しているように、世界各地(EU、豪州、インド等)で起きている。このザカリアの記事を読んでかどうかは分からないが、5月末の共産党の会議で、習近平は、世界に「愛される中国」となるよう世論戦を重視するよう指示したとの報道があった。

 ザカリアは、論説の冒頭で、米国は様々な問題で左右の分断が起きているが、それが起きていないのが、中国への脅威だと指摘している。その証拠として、最近、米国の超党派の代表団が、相次いで台湾を訪問している。4月15日、ドッド元上院議員(民主党)とアーミテイジ元国務副長官らが、バイデン大統領の要請を受けて台湾を訪問した。また、6月6日、現役の上院軍事委員会のタミー・ダックワース議員(民主党)及びダン・サリバン議員(共和党)や上院外交委員会のクリス・クーンズ議員(民主党)の超党派議員団が台湾を訪問した。3月28日には、台湾と国交のあるパラオ共和国の大統領が台湾を訪問した際、駐パラオ米国大使が同行している。日本も、この米台関係に呼応するかのように、中国が禁輸した台湾産のパイナップルを輸入したり、中国が妨害した台湾へのワクチン供給に対して日本からワクチンを提供したりした。

【私の論評】世界でも共通項となりつつある中国への反感の中で中途半端な日本(゚д゚)!

上の記事では、米国内で数少ない「共通項」になった中国への反感のことが掲載されていますが、世界も同じような動きをしています。

世界の主要民主主義国家は今週、相次いで異例の中国批判を展開しました。「対中国」での結束へと軸足を移し、世界トップの座をもくろむ習近平国家主席の戦略に明確なノーを突きつける姿勢を鮮明にしました。

主要7カ国(G7)、および北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、習氏の中核政策は軍事的な安定、人権、国際貿易、世界の公衆衛生に打撃を与えるとして、2日連続で中国批判の共同声明を発表。NATOは14日、中国が突きつける「規則に基づく国際秩序への体制上の挑戦」に対抗すると表明しました。

中国外務省の趙立堅報道官は15日の定例会見で、G7声明は米国を中心とする「小規模グループ」による見当違いの見解だと一蹴。その上で「米国は非常に病んでいる。G7は米国の脈拍を検査し、薬を処方すべきだ」と断じました。

対中批判の「ワン・ツー・パンチ」は、他国には説教させないと言い放つ習氏に対する直接的な一撃であり、これは中国に対する不安から主要国が対中関係を独自で管理しようとするのではなく、他国と足並みをそろえて対抗する方向へとシフトしつつあることを示唆しています。

 「中国の言動はリスク計算を変えた」。ジョージタウン大学のエバン・メディロス教授はこう指摘する。「極めて重大な地政学上の境界線が破られた」としています。

エバン・メディロス氏は、オバマ米政権下で2009~15年にかけて国家安全保障会議(NSC)の中国部長、アジア上級部長を歴任しました。中国語が堪能で、米中関係、米国の対アジア政策の第一人者として知られます。米中関係の重要性が増すなかで、対中政策を指揮しましが、後に退任しました。

ジョージタウン大学のエバン・メディロス教授

国際社会による対中批判は、中国が習氏を表舞台に押し上げる共産党創設100周年の祝賀行事を2週間後に控えたタイミングで起こりました。中国にとっては、外国勢力から受けた屈辱と苦難の1世紀を乗り越え、国際貿易でトップ、経済規模で世界第2位の大国へと発展を遂げたことを国内外に印象づける、またとない機会となります。

ブルッキングス研究所のライアン・ハス上級研究員は、G7やNATOによる対中批判だけで、中国における習氏の強力な地位が低下することはないと指摘します。主要国で習氏への批判が強まる中で、中国指導部にとっての問題は、国際社会における中国の位置づけにどの程度の価値を置くかだといいます。その上で、ハス氏は「(中国当局内で)われわれは正しい道筋にあるかといった問題が浮上する可能性はある」と語っています。

ライアン・ハス氏

中国は自国に向けられた批判について、米国主導による冷戦時代の思考だと主張。同国の外交官らは、東洋が台頭する一方で、西洋は衰退しているとの持論を展開しています。G7首脳会議が閉幕した数時間後、開催国である英国の中国大使館は、共同声明はゆがめられており、かつ中傷的だとして、項目ごとに逐一糾弾しました。

民主主義国家の間では、ここにきて中国に対する不満が高まっていました。イスラム系少数民族ウイグル人の拘束、香港市民の自由弾圧、強制的な貿易慣行、台湾に対する軍事的な挑発など、G7声明ではこうした懸念事項を列挙しました。また新型コロナウイルスに関する透明性の欠如に対しても懸念を示したほか、囚人の扱いやネット検閲など習氏の強権支配に対しても矛先を向けました。

中国はいずれも内政問題との立場で、中国大使館は、G7は「恣意(しい)的に中国の内政に干渉している」と反論しました。

習氏にとっては、中国に投資を提供し、雇用を創出するとともに、輸出品を購入してくれる国際社会との間で、問題は抱えたくないのが本音です。中国南部でコロナ感染が再流行したことで、国産ワクチンを含め、中国のコロナ対応に対する信頼は損なわれました。中国はまた、来年2月に開催する北京冬季五輪のボイコットを呼びかける人権保護団体の訴えを退けるためにも、国際社会との協力を望んでいます。

一方、共産党創設100年の祝賀行事は、習氏が目指す来年終盤の3期目入りへの序章ともなります。

ジョー・バイデン米大統領は自身の対中政策について、同盟国と連携して中国に責任を問わせると表明しており、G7とNATO会合は自らの構想を国際舞台の場で推進する最初の機会となりました。

共同声明の文言は、参加国の同意が必要で、これには中国と大規模な貿易を行う欧州諸国も含まれます。欧州諸国は通常、名指しでの中国批判は避ける傾向にあったのですが、中国が欧州の政治家や企業、シンクタンクに制裁を科したことで、ここ数カ月は中国への反発を強めています。

前出のハス氏は、中国がG7について「世界の一握りの国にすぎず、国際社会を代表した意見ではない」と反論する可能性があるとみています。

30カ国が加盟するNATOの文書よりも、G7声明の方が中国への強硬姿勢が目立ちました。例えば、NATOは台湾についての言及はなかったのですが、G7声明では一段落を割いて、台湾海峡と周辺海域の安定を求める文言が並びました。トロント大学のG7リサーチ・グループによると、このような共同声明で火種である台湾問題に触れたのは今回が初めてです。

中国政府系メディアは、新約聖書の有名なシーンを描いたレオナルド・ダビンチの作品「最後の晩餐(ばんさん)」をもじって、G7への痛烈な皮肉を展開。「最後のG7」と題したその画像(下写真)では、原画のキリストの場所に、白頭ワシ(米国の国鳥)に扮(ふん)したバイデン氏が位置しており(各首脳とみられる他の登場人物も動物として登場)、テーブルの上には中国の形をした赤いケーキが置かれている。この画像はネット上で広く出回りました。

最後のG7

習氏はコロナ禍で移動が制限されるまで、自ら各地に足を運び、国有銀行による融資を提供することで、中国の影響力を拡大。またドナルド・トランプ前大統領が多国間の枠組みを軽視したことで生まれた空白を突き、国連や世界貿易機関(WTO)といった国際組織における多国間外交に対する中国のコミットメントを強調してきました。ところが、調査会社チャイナ・ビタエによると、習氏は2020年初頭以降、他国首脳との対面での会談は行っていません。

中国はこれまで、巨大市場のうまみをちらつかせることで、外国からの批判をかわしてきました。ところがここにきて、中国指導部のメッセージは響かなくなりつつあります。直近ではオーストラリアとの対立に象徴されるように、中国がいかにその巨大市場へのアクセスを一転して遮断しかねないことが浮き彫りになったことが一因です。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザー、スコット・ケネディー氏は「経済的な成功では、中国が切実に求めている賛辞を得ることはできない」と話します。

ところが政策面で、中国が外国の圧力に屈する兆しは全く出ていません。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は先週、外国政府による中国制裁の取り組みに加担していると判断した政府や企業、個人に対して報復を認める法案を承認しました。

しかし、中国の素振りなどおかまいなしに、中国がまともにならない限り、G7やNATOは中国をさらに制裁で締め付けるのは間違いありません。最悪は、中国を世界市場から放逐することでしよう。

G7の世界経済に占める割合は未だに侮れません。G7をあわせると今でも、45%を超えます。中国は20%もいきません。米国一国でも大変だというのに、G7が結託して中国を制裁すれば、かなり強力なものになります。


それに、中国は近い将来米国の経済を追い抜くなどという、与太話が最近でも公表されましたが、これはこのブログにも何度か掲載してきたように全くありえません。中進国の罠にはまり、国際金融のトリレンマにはまり独立した金融政策ができず、少子高齢化が急激に進む現状の中国では、G7とまとに対峙すれば勝ち目はありません。

だからこそ、G7としては、中国共産党に何か変化がみられるまでは、中国に対峙し続けることでしょう。そうして、これに同調する国々も多いでしょう。

そうした中にあって、G7の一国である日本では自民党外交部会などは15日、中国を念頭に置いた新疆ウイグル自治区や香港などへの人権侵害に対する非難決議案を了承しました。ただ、中国との関係を重視する公明党内で調整が進んでおらず、今国会での採択は見送らました。

決議案は新疆ウイグル自治区などに加え、チベット、内モンゴル自治区、ミャンマーを例示し、「信教の自由への侵害、強制収監をはじめとする深刻な人権侵害が発生している」などと明記しました。

この決議案関しては6月10日、全野党が了承したことで、公明党幹部と自民の一部が慌てたようです。一体どこ向いて政治をやっているのでしょうか。もしかすると、中国なのでしょうか。このような声明等、迅速に通すべきです。そのようなことは当然のことで、日本は早急に日本版マグニツキー法を成立させ、人権侵害に加担した中国の個人の資産を凍結したり、入国を制限することができるようにすべきです。

昨年の米ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、日本人の86%もが、中国に対して否定的な考えを持っていることが明らかになっています。自民党や公明党も、国民に顔を向けた政治をすべきです。

そうでないと、日本は国内では国民からそうして、G7の中では対中国政策の中で浮いた存在になりかねません。それどころか、中国に誤った印象を与えかねません。

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