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2024年4月11日木曜日

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及―【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及

まとめ
  • 日米同盟がかつてない強さに高まり、両国が大胆な措置を講じてきたことを確認
  • 防衛・安全保障協力の深化に向け、日本の防衛力強化や日米指揮統制体制の向上などを歓迎
  • 先端技術分野での共同開発・生産、経済安全保障の強化などによる日米の技術的優位性の確保
  • インド太平洋地域の自由で開かれた秩序の維持に向けた地域協力の推進
  • 気候変動対策での両国の連携強化とクリーンエネルギー分野でのリーダーシップ発揮


  日米首脳共同声明は、過去3年間にわたり、両国が勇気ある措置を講じることにより、日米同盟が前例のない高みに到達したことを確認している。この歴史的な展開を踏まえ、両首脳は新たな日米グローバル・パートナーシップの構築に合意した。

  そのための具体的な取組として、まず防衛・安全保障協力の強化が掲げられている。日米両国は、同盟がインド太平洋地域の平和、安全および繁栄の礎であり続けることを確認し、日本の防衛力強化や指揮統制体制の強化など、同盟の新たな時代に対応した取組を支持した。さらに、日米の指揮統制体制の向上や情報協力の深化、ミサイル防衛の強化など、地域の安全保障上の課題に直接対処するための具体的な施策も明記。

 加えて、宇宙開発、イノベーション、経済安全保障、気候変動対策など、幅広い分野で日米が連携して取り組むための新たな戦略的イニシアチブを発表した。特に、次世代技術の共同開発や、経済安全保障の強化に向けた政策協調の強化などが重要な柱となっている。

 一方で、北朝鮮の核・ミサイル問題、ロシアのウクライナ侵略など、地域や世界の安全保障上の重要課題に対しても、関係国と協調して対処していくことを表明。

 さらに、日米両国民の絆を一層深化させるため、人的交流の強化やグラスルーツレベルの地方自治体間連携など、多様な取組についても言及されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

まとめ
  • 日米首脳会談の共同声明は、日米同盟の新たな時代を示す戦略的パートナーシップの構築を目指すものであり、防衛、経済、技術、外交など広範な分野に焦点を当てている。
  • 共同声明の注目すべき点は、日本の防衛力の抜本的強化、先端技術分野での日米協力の深化、経済安全保障の強化の3つに集中している。
  • 日本の防衛力の強化は、専守防衛の原則からの転換を意味し、抑止力と対処力の強化につながる。
  • 先端技術分野での協力は、経済安全保障上も重要であり、両国の競争力を高める。
  • 日米関係の強化には、安倍首相のリーダーシップや外交努力が大きく寄与しており、岸田首相もこの路線とともに、日本国内の政策に関しても安倍イズムを継承すべきである。

この共同声明は、21世紀の課題に取り組む日米同盟の新たな時代を切り拓くべく、防衛、経済、技術、外交など、広範な分野における具体的な戦略的パートナーシップの構築を示すものとなっています。

共同声明の中で特に注目すべき点は以下の3つです。

1. 日本の防衛力の抜本的強化
共同声明では、2027年度までに日本の防衛費をGDP比2%まで増額し、反撃能力の保有や統合作戦司令部の新設など、日本の防衛力を大幅に強化することが盛り込まれています。これは注目すべき点です。
なぜなら、これまで日本は専守防衛を旨としてきましたが、今回の防衛力強化は抑止力の大幅な強化につながるものです。地域の安全保障環境が厳しさを増す中で、日米同盟の抑止力と対処力を引き上げる上で、日本の防衛力強化は不可欠な取り組みだと位置づけられているからです。

このような日本の防衛力増強は、同盟国である米国にとっても大きな意義を持ちます。日本の防衛力が強化されることで、米国の同盟国としての負担が軽減され、より効果的な抑止力の発揮が期待できるためです。

2. 先端技術分野での日米協力の深化
共同声明では、AI、量子、半導体、バイオテクノロジーなどの重要・新興技術分野で、日米が協力して研究開発や産業基盤の強化に取り組むことが明記されています。
これは注目に値する点です。先端技術分野でのリーダーシップを確立することは、経済安全保障上も極めて重要です。両国が互いの強みを活かしながら、これら次世代技術の開発や保護に協力することで、技術的な優位性を確保し、経済的な競争力を高めていくことができるためです。

また、こうした技術協力は、日米同盟の絆をより強固なものにする効果も期待できます。先端技術を共に推進していくことで、経済的な利益共同体としての側面が一層強化されるからです。

3. 経済安全保障の強化
共同声明では、日米両国が非市場的な政策や慣行への対処、信頼性のあるサプライチェーンの構築など、経済的側面からの安全保障強化に取り組むことが明記されています。
これは重要な点です。地政学的な競争が激化し、経済的な安全保障の確保が喫緊の課題となる中で、日米が緊密に協調してこの分野に取り組むことは、両国の経済的利益を守る上で不可欠だからです。

特に、先端技術分野での覇権を握ることは、経済安全保障上も極めて重要です。日米が連携して、こうした分野での優位性を確保していく狙いがうかがえます。
 
以上3点は、共同声明の中でも特に注目すべき点だと考えられます。日米同盟を21世紀の安全保障環境に合わせて強化していく上で、これらの取り組みが大きな意味を持つためです。


日米が安全保障面での一体化を模索することは、もはや多数の米国民にとって当然のことです。今回の合意に対する大きな騒ぎは起きていません。日本との同盟強化に反対する声はほとんどなく、ドナルド・トランプ前大統領や共和党支持者を含めても、日米同盟の強化に異議を唱える声はありません。

日本という国が米国にとってより身近な存在になっています。大谷翔平選手やテレビドラマ、アニメなどを通じて、日本文化が米国に浸透しており、日本人に対する親近感が高まっています。これは、中国に対する米国民の嫌悪感とは対照的であり、日本は米国人にとって好意的な国として位置付けられています。

ギャラップ世論調査では、日本が米国人にとって最も好きな国の一つに選ばれています。この好意的な姿勢は、日米関係の強化にも繋がっていると言えます。

しかし、一方で岸田首相に対する米国メディアの関心は薄いです。岸田首相の政治的地位は不安定であり、政権内部や有力派閥のスキャンダルに揺れ動いています。そのため、米国メディアは岸田首相を「影の薄い総理大臣」と見ており取り上げることが少ないです。これは安倍首相とは対照的です。

しかし、日米関係の強化に向けては、両国のまともな官僚や議員らが着実に動いているようです。両国の政治的不安定さにもかかわらず、日米関係の堅固さを確保するために、彼らは日々努力しているようです。そのため、今回の日米首脳会談も、両国の関係強化の一環として注目されています。

官僚レベルにおける日米関係強化に向けた取り組みには以下のようなものがあります。

防衛・外交面では、外務省北米局と米国務省が定期的な政治対話を行っており、北朝鮮問題に関する制裁政策の調整や台湾問題に関する協議などが実施されているほか、自衛隊と米軍の共同訓練を強化することで軍事面での協力関係を深めています。

経済・貿易面では、経済産業省と米通商代表部がIT分野など特定分野の共同研究を進める一方で、農林水産省と米農務省もTIFAにおける農産品の市場開放交渉を行っています。

文化交流面では、文部科学省と米教育省が大学間交流事業の拡大に努めるとともに、外務省と米国務省が語学研修制度を活用した若手研修生の派遣数を増やしています。

テクノロジー面では、総務省と米通信委員会が5G技術の標準化で、経済産業省も半導体技術分野で共同研究を進めることで協力体制を強化しています。

さらに、環境・エネルギー面では再生可能エネルギー分野、科学技術面では宇宙開発分野での国際協力も進められています。

上に述べた具体例は、ごく一部にすぎません。 

なぜ日米関係がこのようになっているかといえば、やはり安倍首相の尽力があったおかげです。

これなくしては、現在の日米同盟の強固な地位と日米協力体制がこの水準に達することは極めて困難であったと思います。

特に、トランプ政権下で米国第一主義が強まる中、安倍首相はトランプ大統領個人との信頼関係を築き、日米同盟の重要性を直接説得しました。加えて、日米同盟を東アジアにおける安定と繁栄の礎と位置づける戦略もトランプ政権のアジア観と合致するものでした。


この結果、トランプ政権下では一時東アジアからの関与が低下した傾向に歯止めが掛かり、日米同盟を軸とする米国の東アジアに対する関与が強化されることになりました。同時に、安倍首相の尽力により日米同盟の重要性が再確認されました。

安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能でした。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと考えます。

そのことを岸田首相は再認識すべきです。岸田文雄首相は昨年2月26日の自民党大会で、2012年の政権交代後からの自公政権10年間について話しをしました。安倍元首相の強力なリーダーシップの下、経済状況は改善し雇用と企業収益が拡大したこと、デフレから脱却できたことなどを指摘しました。外交・安全保障面では「自由で開かれたインド太平洋」の推進、日米同盟の深化、平和安全法制の整備などの実績を挙げました。

10年間を振り返り、民主党政権下で失われた日本の誇りと自信、活力を取り戻すため、皆で力を合わせ国を前進させたとアピールしました。今こそ安倍元首相と菅前首相が築いた10年間の成果の上に、次の10年を創造する時だと強調しました。防衛力を抜本的に強化し、積極的な外交を展開することで、戦後最も複雑な状況の中でも国民を守り抜く考えを表明しました。

岸田首相は、今回の日米首脳会談は、安倍首相が敷いた既定路線に乗った形で、成功を収めたことを理解すべきです。

そうして、米国との関係については、米国政府という相手があることであり、安倍首相が構築した日米関係の方向性を崩すことは最早できません。さらに、日米関係を基軸とした外交・安全保障に関しても、これを崩すことはできません。


問題は、国内であり、もっと有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできず、ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

そのことを強く認識して、経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。外交だけではなく、国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきです。

これをないがしろにすれば、岸田政権が崩壊するだけではなく、自民党が崩れ、それだけならまだしも、安倍首相が語っていたような、悪夢の民主党政権のよう暗黒史を自民党政権が自ら招くことになりかねません。そうなれば、いずれ自民党は再び下野することになるでしょうが、それまでの間に悪夢の自民党政権が日本国内を毀損すことになりかねません。さらには、次の政権は安倍イズムとは、逆の政権運営をするかもしれません。

これだけは、絶対に避けるべきです。岸田政権は今後、安倍イズムを定着させるべく、邁進すべきです。

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2024年4月1日月曜日

<独自>日米首脳「安保5条尖閣に適用」を再確認へ 共同声明、中国を牽制―【私の論評】地政学的リスクへの対応と安全保障強化:尖閣安保適用と岸田首相の国内対応

<独自>日米首脳「安保5条尖閣に適用」を再確認へ 共同声明、中国を牽制

まとめ
  • 日米首脳会談の共同声明に「日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用される」と明記し、米国の対日本防衛義務を再確認する
  • 中国の軍事的影響力拡大とその威圧的行動を牽制し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する
  • 北朝鮮による拉致問題の「即時解決」を目指すことを盛り込む
  • 人工知能や半導体など先端技術分野での日米協力を強化する
  • 有事における米軍と自衛隊の一体的運用体制の構築を図り、フィリピンとの3カ国での安全保障面での連携も強化する

バイデン大統領と岸田首相

 4月10日に米ワシントンで行われる日米首脳会談では、共同声明に「日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用される」と明記する。日米は、その最終調整に入っている。これは、中国海警局船舶による尖閣諸島周辺での領海侵入が続く中、米国が核を含む米軍の能力で日本を防衛する姿勢を打ち出す狙いがある。バイデン大統領は武力や威圧による現状変更に反対する考えを示し、東・南シナ海での中国の威圧的行動への懸念を表明する方針だ。さらに共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調し、武力行使による台湾統一を排除しない習近平政権に自制を促す。

 また、北朝鮮による拉致問題について「即時解決」を目指すことが盛り込まれる見通しだ。人工知能や半導体など先端技術分野での協力強化についても言及される方向にある。首脳会談では、有事における米軍と自衛隊の一体的運用を可能にする「統合司令部」設置に向けた連携体制の強化も協議する。米軍の指揮系統の見直しを含め、両軍の運用の一体性を高める。

 さらに11日には、フィリピンのマルコス大統領を交えた3カ国首脳会談を開催し、自衛隊と米比両軍の連携強化について議論する予定である。今回は9年ぶりに日本の首相が国賓待遇で招かれる重要な会談となる。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】地政学的リスクへの対応と安全保障強化:尖閣安保適用と岸田首相の国内対応

まとめ
  • 中国公船による尖閣諸島周辺での領海侵入が繰り返される中、中国の一方的な現状変更を牽制し、インド太平洋におけるルール基盤の秩序を維持するため、日米が共同で尖閣に安全保障条約を適用することを明確化すべき。
  • 地理的に台湾に近接する尖閣諸島は、中国が台湾への武力行使で統一を図った場合の戦略的要衝となり得る。そのため、日米は尖閣への安保適用を、台湾有事における同盟国防衛の布石ともしている可能性がある。
  • プーチンがウクライナ侵攻を決意した背景には、バイデン大統領の「米軍をウクライナに派遣しない」発言があり、明確な関与表明がなかったことが一因との指摘がある。この教訓から、米国は尖閣問題への明確な関与を示し、中国の現状変更を未然に抑止しようとしている。
  • 「力による平和」しか理解しない指導者に対しては、経済制裁や軍事行動の選択肢を示し続ける必要がある。
  • 国内で中露の「力による平和」に同調する動きがあれば、安全保障上の重大な脅威となる。そのため、警戒を強め、メディアを通じた国民への広報、関係者への警告・制裁、公安当局による取り締まりの検討、反対勢力への支援打ち切り、資金供与監視体制の整備など、毅然とした対処が求められる。
尖閣諸島

日米が尖閣諸島に日米安全保障条約第5条を適用されることを明確にすることの背景には、複数の地政学的な意図が考えられます。

1. 中国の現状変更の抑止
中国公船による尖閣諸島周辺での領海侵入が繰り返されており、中国が実効支配を試みているとの懸念が高まっています。日米が共同で尖閣に安保条約を適用することで、中国の一方的な現状変更を牽制し、インド太平洋地域におけるルール基盤の秩序を維持しようとしています。
2. 台湾有事への備え
尖閣諸島は台湾に地理的に近接しており、戦略的要衝となりうる重要性を持ちます。中国が台湾に武力行使して統一を試みた場合、日米は尖閣から台湾を守る布石としても、安保適用を位置づけている可能性があります。中国が有事の際に尖閣を攻撃すれば、自動的に日米同盟の武力行使が正当化されるためです。
3. ウクライナ情勢の教訓
プーチン政権はウクライナ侵攻前、バイデン大統領が「米軍をウクライナに派遣しない」と表明したことから、一定の侵攻リスクを冒せると判断した可能性があります。つまり米国の明確な関与表明がなかったことが、ある程度のプーチンの駄目押しになったとの指摘があります。
この教訓を踏まえ、米国は中国の一方的現状変更を未然に抑止するため、尖閣問題への明確な関与を明示する狙いがあります。共同声明への明記は、中国が武力で尖閣を侵略すれば自動的に日米同盟の武力行使が正当化されることを意味しています。
さらに、尖閣への安保適用は、将来の台湾有事における日米の関与の布石にもなり得ます。中国が台湾に武力行使すれば尖閣の防衛が問題となり、そこから日米同盟の軍事介入へとつながるリスクがあるためです。

つまり、米国はウクライナ情勢の教訓から、中国の現状変更を未然に抑止するためのメッセージ発信と、台湾有事への将来の関与の布石として、尖閣への安保適用を位置づけていると考えられます。主眼は中国への抑止力ですが、状況次第では実際の軍事行動に発展する可能性も織り込んでいる可能性があります。

プーチンや習近平のような指導者は、基本的に「力」こそが平和維持の最終的な担保だと考えている可能性が高いです。そのため、米国の「弱さ」を示す譲歩的な姿勢は、かえって自国の行動を正当化し、さらなる現状変更を許容するシグナルと受け取られかねません。

力による平和 AI生成画像

一方で、米国国がしっかりとした「力の姿勢」を示し続ける場合、プーチンや習氏らは冷静に自国の能力の限界を認識し、リスクのある軍事的選択は避ける合理的判断に至る公算が高まります。なぜなら、「力」しか理解できないこうした指導者にとって、相手の明確な「力の投射能力」こそが、自国の行動を抑制する最大の要因になるからです。

具体的には、バイデン政権が以下のような「力の姿勢」を示し続けることが重要になります。
  • 経済制裁などの「報復措置」の選択肢を常に維持示す
  • 同盟国との連携を強化し、集団的抑止力を高める
  • 必要に応じて軍事行動の選択肢も排除しない姿勢を崩さない
  • 中露の一方的現状変更の試みに対する「レッドライン」を明確に設定する
このように、絶えず「力の投射能力」を示し続けることで、プーチンや習氏らに対する「抑止力」を高められます。そうすれば、結果として彼らが軍事的モラトリアムを選び、現状維持の路線をとる可能性が高まると考えられます。

つまり、「力による平和」を理解する指導者に対しては、バイデン政権自らが「力の外交」に徹し、臆さずに自国の軍事的選択肢を維持示すことが何より重要なのです。そうした「力の姿勢」こそが、結果として「平和的解決」に寄与する最善の方策となり得るのです。

岸田首相も、プーチンや習近平のような「力による平和」を重んじる指導者に対して、以下の「力の姿勢」を貫くべきです。

1. 自衛隊の防衛能力の強化を着実に進める
尖閣諸島や津軽海峡における中国公船の挑発的行動に対し、自衛隊の監視・警戒活動を一層強化し、自らの領土・領海を力強く守る姿勢を示し続けることが重要です。
2. 米国をはじめとする同盟国との連携を一層緊密化
日米同盟の絆を一層強固にすると同時に、NATO諸国、QUAD枠組み国家等との安全保障面での連携を深め、集団的抑止力を高めていくべきです。
3. 中国の一方的な現状変更に対する「レッドライン」を明確化
尖閣問題や台湾有事といった重大事態における対応方針を予め明確化し、必要に応じて自衛隊の派遣も辞さない決意を内外に示す必要があります。
4. 経済安全保障の観点から対中牽制力を高める
半導体や希少資源等において対中依存度を下げ、経済制裁の選択肢を温存する。先端技術の流出防止等の懸命な対応も重要です。
5. 国民の危機意識を高め、防衛増強への理解を醸成
日本国民の安全保障意識を高め、防衛費増額等の抑止力強化に向けた施策への支持を広げていくことが不可欠です。
このように、日本も「力による平和」への備えとして、断固たる「力の姿勢」を貫き、中国による一方的現状変更を未然に抑止することが何より重要となります。そうした姿勢を内外に示し続けることこそが、結果的に地域の平和維持につながるということを、岸田首相は肝に銘じるべきでしょう。

また、国内でロシアや中国の「力による平和」に同調する動きがある場合、岸田首相は毅然とした対応をすべきです。
  • 具体的には、そうした動きを警戒し、情報収集と監視を強化する。
  • メディアを通じて国民に対し、その動きの問題点を明確に説明し、正しい認識を促す。
  • 関係者に対し、警告や制裁措置をとる用意があることを示す。
  • 必要に応じて、反社会勢力への対応と同様、公安当局による取り締まりの検討も視野に入れる。
  • 中露寄りの動きに与さない企業や団体への支援を強化する。
  • 議員資産公開など、中露からの不適切な資金供与を監視するしくみを整備する。
中露による「力の平和」に同調する日本国内の動きは、日本の安全保障上の重大な脅威となりかねません。このため、岸田首相はそうした動きに対し毅然とした姿勢で対処し、必要に応じて法的措置も辞さない強い決意を内外に示す必要があります。これは日本の主権と国益を守る上で避けて通れない課題です。

プーチンと習近平

岸田首相が、ウクライナ戦争開始直前のバイデン大統領のような中途半端な姿勢に終始すれば、政権の継続は極めて困難になるでしょう。なぜなら、中国や北朝鮮の脅威が現実味を帯びる中で、首相自らが強い姿勢を示さず、防衛力の増強に消極的であれば、国民の安全保障への不安は高まり、政権に対する支持が揺らぐからです。

さらに、野党から「国益を守れない」と徹底した批判を浴びるでしょう。加えて、自民党内の保守層からも反発が起こり得ます。そして何より、このような姿勢が続けば、日米同盟関係への疑念を招き、ひいては世論から「国益を守れない政権」とのバッシングを受けかねません。

結果として、国内外から批判が高まり、支持基盤が次第に失われていく恐れがあるのです。だからこそ、岸田首相は断固たる「力の姿勢」を貫き通す必要があると言えます。

自民党内には、仮に政権への支持率が下がった場合でも、次の選挙では勝利できるという楽観論がある節があります。その根拠として挙げられているのが、野党に「力の姿勢」が徹底的に欠けていることです。

野党は伝統的に非武装中立路線を標榜し、防衛力増強への取り組みに消極的でした。その結果、有事の際の具体的な対応策を示すことができず、国民の安全保障への不安を払しょくできていません。無論、野党の中に保守派も存在し、政党単位でも日本保守党などの例外もあるのですが、これらは残念ながら現状ではまだ大きな勢力にはなっていません。

一方の自民党は、一貫して同盟国との連携や防衛力増強を掲げてきました。中国や北朝鮮の脅威に対して、野党に比べ、より力強い姿勢と対応策を示してきた経緯があります。

このため、国民の間には「野党には国を守る決意と能力がない」との根強い認識が存在します。多くの有権者が、いざというときに国を守れるのは今のところ自民党しかないと考えがちなのです。

つまり、自民党内の一部には、野党の「力の姿勢」の希薄さゆえに、自身の支持率が下がっても、最終的には国民の支持を得て勝利できるとの期待があるわけです。

ただし、安全保障をめぐる有権者の意識は確実に変化しています。今や国民は「力の姿勢」を政権に強く求めるようになっています。この現実を踏まえれば、野党の力不足を過度に期待するのは賢明とは言えません。自民党自身が、そうして岸田首相自身が、確固たる「力の姿勢」を貫き、国民の期待に応える必要があります。

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2024年3月31日日曜日

<独自>NATO首脳会議に岸田首相を招待 米政府調整、出席なら3年連続―【私の論評】岸田首相をNATO首脳会議に招待するバイデン政権の狙い:ウクライナ支援を含めた岸田政権の継続の可能性

<独自>NATO首脳会議に首相を招待 米政府調整、出席なら3年連続

まとめ
  • 米政府がNATO首脳会議(7月)に岸田首相を招待する方向で調整中
  • 日米首脳会談(4月10日)ではロシアのウクライナ侵略を協議予定
  • NATO首脳会議では欧州・インド太平洋の連携強化を図る
  • ウクライナ支援で貢献する日本の参加を通じ、地域間の結束を促したい考え
  • 日本は中国・北朝鮮など安保上の課題で欧州との連携を強化する機会
バイデン大統領と岸田首相

 4月10日の日米首脳会談を前に、米政府がNATO(北大西洋条約機構)の7月の首脳会議に岸田文雄首相を招待する方向で日本政府と調整している。日米首脳会談では、ロシアのウクライナ侵略問題を協議する予定。NATO首脳会議では、ロシアと中国の抑止を目的に、欧州とインド太平洋地域の連携強化を図る狙いがある。

 バイデン大統領は国賓待遇で岸田首相を迎え、ウクライナ支援や対露制裁の継続で一致するとみられる。バイデン氏はウクライナ支援継続と新たな侵略抑止の観点から、NATO加盟国とインド太平洋地域の連携を重視している。

 NATO発足75周年の重要な首脳会議に、ウクライナ問題で貢献する日本を招き、地域間の結束と協力を促したい考えだ。日本側は政治日程を精査し、参加の可否を最終判断する。日本にとっては、中国や北朝鮮など安全保障上の課題で欧州との連携を強化する機会となる。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】岸田首相をNATO首脳会議に招待するバイデン政権の狙い:ウクライナ支援を含めた岸田政権の継続の可能性

まとめ
  • 米政府は、ウクライナ支援でNATO結束を図り、中国への対抗上欧州・インド太平洋連携を強化する狙いから、岸田首相をNATO首脳会議に招待する方向にある。
  • バイデン政権は9月の総裁選後も岸田体制が継続すると確信しており、その政権の安定性を重視している。
  • 仮に岸田政権が崩壊し、リベラル色の強い、財務省にさらに近い新政権となれば、日米同盟関係や経済の安定性に悪影響が及ぶリスクがある。
  • ウクライナ支援は、ウクライナの潜在力(人的資源、産業基盤、農業)とEU結びつきから、将来的な有望市場となり得る。
  • 日本がウクライナ復興支援で主導的役割を果たせば、経済的安全保障の実現とグローバル・プレゼンスの向上につながる重要な機会となる。
上の記事にもあるように、米政府は7月のNATO首脳会議に岸田首相を招待する方向で調整しています。これには2つの狙いがあります。

1つ目は、ウクライナ支援に積極的な岸田首相の参加を通じて、支援疲れの兆しが見られるNATO加盟国の結束を固める狙いがあります。

2つ目は、中国の脅威をにらみ、インド太平洋地域と欧州諸国の連携を強化することです。

NATO発足75周年の節目の会議で、バイデン政権はウクライナ支援の重要性を欧米に改めて訴え、加盟国の団結を促したい考えのようです。

また、中国の台湾統一の動きへの抑止力を高めるため、欧州諸国のインド太平洋地域へのコミットを後押ししたい狙いもあるようです。

ウクライナ支援で貢献する日本の存在は、欧州・インド太平洋の連携強化において重要な役割を果たすと期待されています。

美しいウクライナの都市リビィウの町並み

バイデン政権が7月のNATO首脳会議に岸田首相を招待する方向で調整していることは、以下の理由から、バイデン政権が岸田政権の継続を見込んでいることを示唆していると言えます。

1. 首脳会議への招待は、その国の最高指導者に対してなされるものです。米政権が岸田首相個人を招待する意味合いは小さく、日本の元首相としての立場で招待していると考えられます。

2. 7月の時点で岸田首相が退任済みだと見込んでいれば、次期首相を招待する方が自然です。岸田氏個人ではなく、日本の首相職そのものに招待状を送っていると考えるべきでしょう。

3. NATO首脳会議は加盟国の重要会議です。日本の内政が不安定で近々に政権交代が予想される状況であれば、米国は慎重に対応するはずです。

4. 招待は米政権の対日重視姿勢の表れでもあります。この姿勢を損なうリスクを冒すなら、岸田政権の継続を前提にせざるを得ません。

したがって、バイデン政権がNATO会議に岸田首相を招待していることは、7月時点におよび、それ以降も岸田政権が続くと見込んでいる、あるいは少なくとも望んでいることを示していると解釈できるでしょう。

バイデン政権が7月のNATO首脳会議に岸田首相を招待するという重要な決断をするに当たっては、単なる「期待」だけではなく、より確かな見通しを持っている公算が高いでしょう。

NATO首脳会議は加盟国を代表する首脳が一堂に会する極めて重要な会議です。日本の首相を招待する際には、単に望ましい状況を期待するだけでなく、実際に岸田体制が継続する確度が高いと判断していると考えるべきでしょう。

つまり、バイデン政権は、9月の自民党総裁選挙後も岸田首相が続投し、日米同盟の中核を担う存在として機能し続けると踏んでいる可能性が非常に高いと言えます。そうでなければ、このタイミングでの招待は避けられたはずです。

米国の対日重視姿勢を考えれば、日本の政局の安定性と信頼できる同盟国関係の持続性を重視しているはずです。したがって、バイデン政権は総裁選後の岸田体制継続を単なる期待以上に確信を持って見込んでいると判断するのが妥当だと思われます。

私は、岸田首相は個人的には好きなタイプではないのですが、それにしても今年の秋で岸田政権が崩壊した場合、次の総裁が誰になるのか、その総裁は岸田首相よりもリベラル色や親中度合い、財務省寄りの度合いが高いかあるいは同程度なのであれば、岸田政権が継続したほうが、良いと思っています。無論、番狂わせがあり、高市氏が総裁になる可能性がでてくれば、それが一番良いとは思います。

しかし岸田政権が崩壊し、新たな政権に移行した場合、その政権が岸田政権よりも、よりリベラルであり、より親中的であり、より財務省寄りであれば、以前の民主党政権時代のような混乱が再び起こるリスクがあると指摘できます。

民主党政権時代(2009-2012年)は、以下のような深刻な問題が生じました。
  •  首相が頻繁に交代し、政権運営が大変不安定になった 
  •  習近平体制の中国への対応が非常に慎重・柔和となり過ぎた
  •   TPP交渉や原発政策で揺れ動いた結果、決定力を欠いた 
  •  財政規律を重視するあまり、消費税の大増税を強行する決定を三党合意(自公民)で行い経済運営の失敗を決定づけた 
  • 日米同盟関係が疑心暗鬼となり、信頼関係が大きく損なわれた
このように、政権の指導力不足や政策の振れ幅が大きすぎたことで、日本の国内外での信頼性が大きく低下しました。

仮に岸田政権が崩壊し、新たな政権が自民党政権であったにしても、再び同様の混乱に陥る恐れがあります。多くの人は、安倍政権が長かったので、これをスタンダードと見るむきもおおいようですが、これは間違いです。安倍政権は自民党政権の中、特にここ20年の中では、特異な存在だったのです。

特に対中強硬姿勢の転換や財政規律のさらなる強化などがあれば、日米同盟はもとより、経済安定性にも悪影響を及ぼしかねません。

このため、バイデン政権は岸田政権の継続を望んでいると考えられます。政権の安定性と政策の継続性を重視する観点から、岸田体制の維持を確信しているものと推測できるでしょう。

安倍首相は「悪夢のような民主党政権」と発言

もしトランプ政権になったにしても、現状日本では、自民党の結党の精神では保守政党を目指したにもかかわらず保守勢力は弱まった状態であり、リベラル的性格や親中的性格がさらに強くなるよりは、岸田政権の継続を望むかもしれません。

私としては、岸田政権がもう一期くらい続いたほうが、保守派などが次の展開をはかるにしても、政治的混乱を避け、ソフトランディングができるのではないかと期待しています。また、マスコミやリベラル左派官僚や財務官僚らに新たな成功体験を提供して、増長させることを防ぐという意味でも、悪いことではないと思います。

そうして、ウクライナへの支援について、マイナスの面ばかりが強調されがちですが、長期的な展望から捉えると、大きな可能性が見えてきます。

1. 人的資源の潜在力
ウクライナは人口約4,400万人と大きな人口を擁し、識字率も99%と教育水準が高い。戦後の復興後には、この優れた人的資源を最大限活用できるはずです。日本では、人口4,400万人はたいして多くはないとみられがちですが、ヨーロッパの近隣諸国と比較すれば、決して少ないとはいえないです。

ロシアの人口は、一億四千万人ですが、その中で少数民族を除いたロシア人は、約1億1,600万人。

モスクワ首都圏は、モスクワ市と周辺のモスクワ州、カルーガ州、トゥーラ州、リャザン州、ウラジーミル州、イヴァノヴォ州、スモレンスク州、ブリャンスク州を含む地域です。2023年1月1日時点のモスクワ首都圏の人口は、約2,700万人です。

モスクワ大都市圏は、モスクワ首都圏さらに周辺の都市を含む地域です。2023年1月1日時点のモスクワ大都市圏の人口は、約3,500万人です。 

以上のようなことを考えると、ウクライナの人口は少ないとはいえません。 

2. 産業基盤の存在  
ウクライナには航空機産業や自動車産業など、一定の製造業の基盤があります。適切な投資と改革で、これらの分野が復興・発展する余地があります。最初から基盤づくりをしなければならないような他の発展途上国とは違います。
3. 農業の有望性
ウクライナは「ヨーロッパの穀倉地帯」とも呼ばれ、穀物の生産大国です。農業分野の復興により、食料安全保障面でも貢献が期待できます。
4. EUとの結びつき  
ウクライナはEUと連合協定を結んでおり、経済面でEUに統合される流れにあります。EUマーケットへのアクセスは大きなメリットとなるでしょう。
5. 支援国の協調
日本に加え、米国、EU、国際機関などがウクライナ支援に熱心です。協調的な支援を続ければ、復興は加速する可能性があります。
一人当たりGDPが韓国並み(約3万ドル)に到達すれば、ウクライナの経済規模は現在のロシア(約1.8兆ドル)と匹敵することになります。教育・産業基盤があり、国際支援も受けられれば、中長期で大きく発展する可能性は決して低くありません。日本が様々な支援で主導的役割を果たせば、他国の模範ともなり得るでしょう。

ウクライナの産業基盤:2024年3月31日時点 
産業概要現状課題
農業ヨーロッパ最大の穀物生産国の一つ。小麦、トウモロコシ、ひまわり油などが主要産品。侵攻により農地やインフラが破壊され、生産量が大幅に減少。農地の復旧、インフラの再建、輸出市場の確保
重工業鉄鋼、造船、航空宇宙産業などが主要産業。侵攻により多くの工場が破壊され、生産が停止。工場設備の復旧、新たな市場の開拓
軽工業繊維、食品加工、家具製造などが主要産業。侵攻により国内市場が縮小し、生産が減少。国内市場の回復、輸出市場の拡大
サービス業IT、金融、観光などが主要産業。侵攻により経済活動が停滞し、多くの企業が撤退。経済活動の再開、安全な環境の整備

参考情報:


日本のウクライナ支援は、専守防衛の立場から直接的な軍事支援は難しく、むしろ資金支援、人道支援、インフラ復旧支援、民間投資促進、人材育成支援など、経済的・人道的な復興支援が中心となると見られます。日本はこうした分野での強みを生かし、ウクライナの復興プロセス全般を下支えすることになるでしょう。

ウクライナの復興支援は、中国経済が減速するなかで、日本が新たな有望市場を確保し、サプライチェーンの分散化を図る絶好の機会となります。日本が主導的役割を果たせば、ウクライナの内需や農業・鉱業分野への参入を通じて経済的メリットを得られるだけでなく、ロシアへの牽制や欧州地域におけるプレゼンス向上、発展途上国支援でのリーダー地位の確立にもつながるでしょう。

中国に過度に依存しない経済安全保障の実現、ロシアに国境を接し対峙する経済大国の出現への支援などグローバル・プレゼンスの向上という点で、ウクライナ復興支援は日本の大きなチャンスと言えます。

ただ、復興の果実を米国、EUなどにもぎ取られないように注意はすべきでしょう。最悪、従来から、ウクライナから軍事技術の提供や、宇宙技術の提供受け、ウクライナと関係の深い中国にもぎ取られるようなことは断じてすべきではありません。

岸田政権はリベラル色が強く、安倍政権のような保守とはいえません。しかし、この歴史的な転機においては、リベラル保守の枠を超えた広い視野が求められます。

ウクライナ復興支援を契機に、日本が新たなグローバル・リーダーシップを発揮すべきときがきたのです。中国の影響力が肥大化するなか、自由と民主主義の旗手となり、ウクライナが新興国の模範的存在となることで、日本の新時代への羅針盤ともなり得るでしょう。岸田政権には、こうしたことを実現するための揺りかごとなっていただきたいのです。岸田首相はこれを目指すべきです。



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2024年3月22日金曜日

もしトランプ政権になれば その2 NATO離脱ではない―【私の論評】トランプ氏のNATO離脱示唆はメディアの印象操作?アメリカ第一政策研究所の真の見解

もしトランプ政権になれば その2 NATO離脱ではない

古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

まとめ
  • 民主党側は「トランプ大統領はNATOから離脱する」と警告する。
  • しかし、トランプ氏はNATOからの離脱ではなく、強化の実効策をとっていた。
  • トランプ氏の基本姿勢、「力による平和」と「抑止」は二期目も変わらないであろう。

 トランプ政権時、一部メディアがトランプ大統領がNATO離脱を示唆していると報じた。しかし、それは事実と異なる誇張であった。トランプ氏は確かに、防衛費負担が不十分な加盟国に対し、有事の際は防衛しない可能性を示唆した発言をしていた。しかし、それは単なる交渉の材料であり、真意はNATO全体の強化にあった。

 実際、トランプ政権はNATO堅持を国家安全保障戦略に明記し、NATO加盟国バルト3国に対する対ロシア抑止力強化にも取り組んだ。さらに、防衛費増額に応じないドイツからは一部米軍をポーランドに移駐させるなど、同盟国に公平な負担を求める措置を講じた。しかし、これらはNATO離脱を志向するものではなく、むしろ同盟の強化を目指す動きだった。

 一方で、トランプ政権は中国の脅威、特に軍事拡張への対決姿勢を鮮明にした。歴代政権の対中関与政策の失敗を宣言し、大規模な国防費増額で中国の軍事攻勢を抑えようとした。ロシアや北朝鮮に対しても強硬な姿勢を貫いた。対中戦争への備えとして「想定される対中戦争への準備と勝利できる能力の保持」を掲げ、「力による平和」「抑止」を基本姿勢とした。この軍事重視の姿勢は、バイデン政権の思考とは根本的に異なるものだった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】トランプ氏のNATO離脱示唆はメディアの印象操作?アメリカ第一政策研究所の真の見解

まとめ
  • 一部メディアがトランプ氏の発言を切り取って「NATO離脱」との印象操作を行った。
  • トランプ氏は実際に「NATO強化に向けた交渉の道具」としての発言をしただけであった。
  • アメリカ第一政策研究所(AFPI)は、トランプ政権の政策理念を継承する保守系シンクタンク。
  • AFPIは「アメリカ第一主義」の立場から、同盟よりも米国益を優先する発言をする一方で、NATOの集団防衛の重要性を否定したことはない。
  • トランプ氏が再選されても極端な政策の実施は避けられる可能性が高い。

NATO旗

マスコミはトランプ氏が大統領を退いた後でも、NATO離脱を示唆していると報道しています。

具体的には以下のようなメディアの報道があげられます。
  • 2022年1月にニューヨーク・タイムズは「トランプ氏は大統領に返り咲いた場合、NATOから離脱する可能性がある」と報じた。
  • 2022年1月、NPR(全米公共放送)は「トランプ氏は欧州諸国が防衛費を増やさなければ、米国はNATOから撤退する可能性がある」と伝えた。
  • これらの報道では、トランプ氏が実際に発言した「防衛費を払わない国はロシアの攻撃を米国が守らないかもしれない」という条件付きの発言を、文脈を無視して「NATO離脱」と誇張した形になっている。
  • トランプ氏自身は後にFOXテレビで「私の発言はNATO強化に向けた交渉の道具にすぎない」と釈明している。
このように、一部メディアはトランプ発言の一部を切り取り、「NATO離脱」との印象操作を行ったと考えられます。

最近の日本のメディアでも、トランプ氏の「NATO離脱」をほのめかす報道がなされています。
  • NHKでは、「トランプ前大統領発言 試されるNATOの結束」という解説記事で、トランプ氏が任期中にNATOの加盟国に対して十分な軍事費を負担しない場合の防衛義務の不履行に言及したことを報じている。(2024年2月13日 )
  • 日本経済新聞では、トランプ氏が再選された場合にNATO離脱を示唆したという内容の記事が掲載されている。(2024年3月11日)
このような印象操作には惑わされないようにすべきです。そうして、このような切り取り等の印象操作に惑わされないようにするには、確かな情報源にあたることをおすすめします。

その一つとして、アメリカ第一政策研究所の発信する情報があります。

アメリカ第一政策研究所(America First Policy Institute)は、2021年に設立された保守系のシンクタンクです。元トランプ政権の高官らが中心となって設立され、トランプ前大統領の「アメリカ第一」の政策理念を継承・推進することを目的としています。

設立当初、AFPI設立に関わった有力者には以下のような人物がいます。

国務大臣時代のポンペオ氏
  • ポンペオ、前国務長官-トランプ政権の国務長官であり、創設者の一人に挙げられる。
  • ドナルド・トランプ・ジュニア - ドナルド・トランプ元大統領の息子。
  • ブルック・ロリンズ - トランプ大統領の元国内政策審議会ディレクター。
  • ラリー・クドロー(Larry Kudlow) - トランプ政権下で国家経済会議の元ディレクター。
  • リック・ペリー - トランプ政権下の元米エネルギー長官。
  • ラス・ヴォート - トランプ政権下の前管理予算局長。
  • ロバート・ライトハイザー - トランプ政権下の元米通商代表。
主な活動は以下のようなものです。
  • トランプ政権時代の政策を分析し、今後の共和党政権に向けた政策提言を行う
  • 移民制限、対中強硬姿勢、保護貿易主義などトランプ路線の政策を支持
  • 中間層への経済支援策や経済ナショナリズムの推進を唱える
  • ワークショップ開催やメディア露出を通じて、保守層への影響力行使を図る
共和党内でトランプ支持層の影響力が根強いことから、同研究所の発言力は大きいと見られています。

アメリカ第一政策研究所(AFPI)は、NATOに対して複雑な見解を持っているようです。彼らのイデオロギーの中核はアメリカの利益を優先することにあり、それが国際的な同盟関係に対する懐疑につながることもあるようです。しかし、NATOの価値を否定するような主張はしていません。

以下は、その姿勢に関する要点です。

アメリカ第一主義:  AFPIは「アメリカ第一主義」の外交政策を推進し、同盟関係よりもアメリカの国益を優先します。そのため、NATOのコミットメントが米国の利益に合致しているかどうかを疑問視する可能性があります。ただ、アメリカ政府が国益を重視するのは当然であり、民主党政権などの政策は、特に移民問題、外交等で必ずしもそうはなっていないことを批判する立場を明確にしているといえます。

同盟強化の支持:「 アメリカ第一」という立場から、AFPIはNATOを支持しています。特に、最近のロシアのウクライナ侵攻を受けて、AFPIに所属する退役中将はフィンランドとスウェーデンのNATO加盟への支持を表明し、強固な同盟関係の重要性を強調しました。

全体として、NATOに対するAFPIのスタンスは進化しているようです。一般的には同盟の費用対効果に疑問を呈するかもしれないですが、ウクライナ戦争のような最近の出来事によって、集団防衛におけるNATOの重要性をさらに認める方向にあるようです。

要するに、柔軟な立場を示しているようです。トランプ氏には、譲れない立場や理想等があるでしょうが、それにしてもそれを実現するために、国際情勢を読み間違えたり、政策の順番を間違えれば、とんでもないことになりかねません。

その危険性については、トランプ氏自身が恐れていることでしょう。だからこそ、AFPIを設立し、様々な政策提言などをさせるようにしているのです。

よってトランプ氏が大統領に再選されたにしても、極端な政策が実施される可能性は少ないでしょう。しかし、そもそもトランプ氏が大統領在任中に極端な政策を実行したでしょうか。

岸田首相とバイデン大統領

たとえば、トランプ氏の移民政策はかなり批判されましたが、大局的に見れば、バイデン政権の移民政策はトランプ政権とさほど変わっていないと言えます。

両政権とも、基本的には不法移民の流入を抑制し、国境管理を厳格化する方針は同じです。法の執行や送還措置においても、大きな方針転換はみられません。

ただ、バイデン政権の動きには共和党から"緩め過ぎ"と批判されていて、実際その弊害もありますが、移民問題における両政権の政策の違いは、細部や具体的な手段の違いにとどまり、全体としては不法移民抑制と国境強化という大本の方針で大きく変わっていないと言えます。

理想や理念を語ることと、実際の政治とはまた別ものです。トランプ政権になれば、とんでもないことになるという見方は間違いだと思います。実際に政権運営をした結果で評価すべきです。

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2024年3月18日月曜日

【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省―【私の論評】日本は、北のミサイルだけてなく、中国の核とミサイルに備えよ

 【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省


 防衛省は、北朝鮮が再び弾道ミサイルの可能性があるものを発射し、既に落下したとみられると発表しました。

 政府関係者によると、落下したのは日本のEEZ=排他的経済水域の外側とみられるということです。

 岸田総理は参議院予算委員会で、「地域および国際社会の平和と安全を脅かすものであり断じて容認することはできない。今回の弾道ミサイル発射も関連する安保理決議違反であり、強く非難する。北朝鮮に対して既に厳重に抗議を行っている」と述べました。

 また、海上保安庁は「船舶は今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と呼びかけています。

【私の論評】日本は、北のミサイルだけでなく、中国の核とミサイルに備えよ

まとめ
  • 北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の朝鮮半島進出を抑える「緩衝地帯」の役割を果たしてきたという見方がある
  • 北朝鮮が核・ミサイルを持たなければ、朝鮮半島に対する中国の影響力や支配が強まっていた可能性が高い
  • 北朝鮮のミサイル発射には、日本だけでなく中国やロシアに対する牽制の意図もあると考えられる
  • 中国も積極的に核実験やミサイル発射を行っているが、日本ではあまり報道されていない
  • 日本は中国の軍事力増強にもっと注目し、対応を検討する必要がある
北朝鮮の核・ミサイル開発は、確かに地域の不安定要因となっています。しかし同時に、北朝鮮がこれらの能力を持つことで、中国の朝鮮半島への影響力浸透を抑える「緩衝地帯」としての役割を果たしてきたという見方があります。

これについては、このブログでも過去に何回か掲載したことがあります。私は、これが好ましいとか、好ましくない、これを国際社会が認める、認めない等は別にして、厳然たる事実だと思います。北朝鮮のミサイルは、日本や米国だけでなく、北京など中国の主要都市を狙うことができるのです。

北朝鮮は伝統的に中国に対する「懐疑心」を持っており、中国の朝鮮半島支配を警戒してきました。核・ミサイルの保有により、万が一の有事の際に中国の軍事介入を牽制できると考えられています。

このようなことを最初に言い出したのは誰なのか今となっては定かではありませんが、似たようなことを主張をしている人います。

代表的な人物の一人としては、ジョン・ボルトン元米国国家安全保障担当大統領補佐官(2018-2019年)が挙げられます。

ジョン・ボルトン氏

ボルトンは、著書「The Room Where It Happened」(2020年)の中で、次のように述べています。

「北朝鮮の核兵器は、朝鮮半島における中国の影響力拡大を実質的に抑制してきた。北朝鮮は中国の属国になることを恐れており、核兵器は朝鮮半島に対する中国の軍事介入を困難にする。」

また、ロバート・ギャリー元駐韓米国大使(2011-2014年)も同様の見解を示しています。 「北朝鮮は中国が朝鮮半島に介入することを嫌がっており、核兵器はその抑止力になっている。」

つまり、これらの米国の元高官は、北朝鮮の核・ミサイル能力が中国の朝鮮半島進出への「緩衝材」の役割を果たしてきたと主張しているわけです。

ただし、この見方には批判も多く、必ずしも専門家の間で常識とはされていない点に留意が必要です。

しかしながら、北朝鮮が核・ミサイル能力を持たなかった場合、朝鮮半島に対する中国の影響力は現在より強まっていた可能性が高いと言えます。

具体的には、以下のようなシナリオが想定されます。

1. 中国の完全な支配下に入る可能性
北朝鮮体制が崩壊し、中国が直接的な軍事介入や支配を行う。結果的に朝鮮半島が中国の一省あるいは自治区的な存在になっていた可能性がある。
2. 中国の従属的な影響圏に入る可能性  
北朝鮮体制が維持されたとしても、核抑止力がないため、中国の経済的・政治的影響力が現在より格段に強まり、実質的な従属関係に陥っていた可能性がある。
北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の一方的な軍事行動のリスクを高め、介入を思珵める「牽制力」となってきた側面は否定できません。

この抑止力がなければ、朝鮮半島に対する中国の覇権的な支配が現実のものになっていた公算は大きかったと考えられます。

ただし、この問題は複雑で、単純化は危険です。米国・韓国・日本等の反応次第では事態は違ったかもしれません。しかし、少なくとも核のない北朝鮮では、中国の影響力が現在より遥かに強まっていた可能性は十分にあり得たと言えます。

私は、北朝鮮のミサイル発射は、すべてが日本に向けてのように報道されるのには違和感を感じます。

北朝鮮が黄海や東シナ海方面にミサイルを発射することには、以下のような狙いがあると考えられます。

1. 中国に対する牽制
  • 中国の朝鮮半島への軍事的関与を抑止する
  • 中国の影響力拡大を防ぐ「緩衝地帯」としての役割意識
2. ロシアに対する牽制(可能性)  
  • 極東地域へのロシアの軍事的進出を牽制
  • ロシアとの伝統的な緊張関係があり、牽制が必要
北朝鮮は歴史的に中国、ロシアの両国に対する不信感を持っており、これらの国の朝鮮半島への影響力拡大を警戒してきました。核・ミサイル能力は、そうした外部介入を抑止する手段と位置付けられています。

実際、過去の発射実験でも、中国やロシア近海に向けてミサイルが発射された例があります。
  • 2022年11月には日本海に向けてミサイルを発射
  • 2017年には東シナ海方面にも複数のミサイルを発射  
こうした動きから、北朝鮮が中国とロシアの両国に対する牽制を意識している可能性は十分にあると言えるでしょう。

ただし、牽制対象がロシアかは定かではなく、単に実験場所の都合という見方もあります。明確な根拠は乏しい側面があることは認めざるを得ません。しかし、北朝鮮による発射では、中国と並んでロシアも牽制対象と見なされている可能性はあると考えられます。

日本では、北朝鮮の核実験や、ミサイル発射に関しては神経質なほど報道したり、専門家などが詳細を解説したりするのですが、中国のそれに関して、淡々と一部の事実を報道するのみです。中国も核実験やミサイルの発射などに熱心に取り組んでいます。それを一覧表のまとめたものを以下に掲載します。

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の核実験の一覧です。
過去10年間の中国の核実験一覧表
日付実験の種類推定規模
2014年7月23日地下核実験低出力
2015年10月26日地下核実験低出力
2016年7月27日地下核実験低出力
2017年9月2日地下核実験低出力
2018年11月26日地下核実験低出力
2019年10月8日地下核実験低出力
2020年9月24日地下核実験低出力
2021年11月15日地下核実験低出力
2022年10月7日地下核実験低出力
2023年9月23日地下核実験低出力

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の実験とは異なる場合があります。
  • 中国は、核実験に関する情報を公式に発表していないため、実験の種類、推定規模などの情報は推定に基づいています。 

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の弾道ミサイル等の発射実績の一覧です。  

過去10年間の中国の弾道ミサイル等の発射実績

日付ミサイルの種類発射場所推定飛距離備考
2014年7月23日DF-15酒泉衛星発射センター600 km中距離弾道ミサイル
2015年10月26日DF-21D酒泉衛星発射センター1,750 km中距離弾道ミサイル
2016年7月27日JL-2渤海7,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2017年9月2日DF-31A酒泉衛星発射センター11,000 kmICBM
2018年11月26日DF-41太原衛星発射センター12,000 kmICBM
2019年10月8日DF-26酒泉衛星発射センター4,000 km中距離弾道ミサイル
2020年9月24日DF-17酒泉衛星発射センター2,000 km中距離弾道ミサイル
2021年11月15日DF-5B太原衛星発射センター8,000 kmICBM
2022年10月7日JL-3南シナ海10,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2023年9月23日DF-100酒泉衛星発射センター6,000 km中距離弾道ミサイル

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の発射とは異なる場合があります。
  • 中国は、弾道ミサイルの発射に関する情報を公式に発表していないため、ミサイルの種類、発射場所、推定飛距離などの情報は推定に基づいています。
  • 情報源は、https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/09/16a.html(防衛省)です。

これらの表から、中国は核実験も、弾道ミサイル発射等も頻繁に行われていることがわかります。

昨日のこのブログの記事のタイトルは、以下のようなものでした。

最新鋭潜水艦「じんげい」就役! 海上自衛隊最新鋭潜水艦の実力とは?―【私の論評】新型潜水艦「たいげい」型で専守防衛力の飛躍的向上 - 浮き甲板で静粛性向上、リチウムイオン電池で一ヶ月潜航可能か

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を引用します。

日本は、高度な技術力で対潜水艦戦力(ASW)を高めてきました。これは海に囲まれた日本の戦略としては、合理的であり、コストパフォーマンスもかなり高いものです。これによって、専守防衛力はかなり高まり、日本は独立を維持することが容易になりました。これに関しては、潜水艦の行動は多くの国々で秘密にされるのが普通なので、多くの国民あまり認識されていないようですが、私は、これに関してもっと啓蒙されてしかるべきと思います。
「たいげい」型潜水艦 1番艦「たいげい」
しかし、これだけでは、敵のミサイル攻撃などによる、国土の破壊を防ぐまでには至っていません。次の段階ではこれを防ぐことが大きな課題です。日本としては、潜水艦の攻撃能力をさらに高めることがこれに至る近道であると考えます。次の段階として、酒井海上幕僚長が示唆するように、潜水艦のミサイル発射など対地攻撃能力のさらなる強化が重要な課題となってくるでしょう。

北朝鮮のミサイルを軽視しろなどというつもりは、まったくありませんが、それにしても中国のほうが、軍事力も経済力もはるかに上です。

北の脅威が、北のミサイルが発射されるたびに、日本では神経質に報道されますが、中国のそれについてほとんど報道されません。

これは、異常です。日本人は、もっと中国の核やミサイルについて認識を深め、政府はそれに対する備えをすべきです。

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2024年3月16日土曜日

ゴジラの米アカデミー賞受賞、政府の政策ではなく民間競争の結果だ モノづくりからソフトへ 世界での商業的成功が大前提に―【私の論評】戦後日本の平和と国防意識を描く映画「ゴジラ-1.0」の成功の意味

 高橋洋一「日本の解き方」

ゴジラの米アカデミー賞受賞、政府の政策ではなく民間競争の結果だ モノづくりからソフトへ 世界での商業的成功が大前提に

まとめ
  • 「ゴジラ-1.0」は視覚効果が優れており、日本映画がアカデミー視覚効果賞を受賞したのは快挙だった。
  • 「ゴジラ-1.0」と「オッペンハイマー」は共に核兵器をテーマにし、戦中・戦後の日本を舞台にしている。
  • 宮崎駿の「君たちはどう生きるか」も戦中を描いた作品であり、これら3作品から反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論ができる。
  • 筆者は「ゴジラ-1.0」の視覚効果を高く評価しており、日本のソフト産業の成功は民間企業の競争による結果である。
  • 今後もこの傾向を温かく見守り、日本のソフト産業の成功者を称賛すべきである。

米アカデミー賞で日本映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」が視覚効果賞を受賞した。ハリウッドの大作に比べ、低予算で少ない人数でつくられたことが米国でも話題になった。受賞時にゴジラのテーマ曲が流れ、視覚効果賞はこれまでアジア作品初の快挙だった。

同じくアカデミー賞で最多7部門を獲得した「オッペンハイマー」は、原爆開発の中心的役割を果たした科学者の伝記映画である。「ゴジラ-1.0」と「オッペンハイマー」が共に核兵器をテーマにし、戦中・戦後の日本を舞台にしており反戦を訴える映画評論ができる。さらに宮崎駿の長編アニメ「君たちはどう生きるか」の受賞も加わり、反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論が書ける。

炎に包まれたビーチで、オッペンハイマーの肩にバービーが乗る画像 日本から批判が殺到した

ノミネート作品の中で「ゴジラ-1.0」の視覚効果が最も面白かった。公開後に何度も鑑賞を重ね、戦闘シーンの迫力に圧倒された。

アカデミー賞は米国で上映された作品が対象だが、「ゴジラ-1.0」は他国でも好評を博した。映画やアニメなどのソフトビジネスでは商業的な成功が何より重要であり、鳥山明の「ドラゴンボール」のような世界的な人気作品の存在から、日本のソフト産業が世界に広がっていることがわかる。

このようなソフト産業の成功は政府の支援によるものではなく、民間企業の競争が生みだした結果である。筆者は今後もこの傾向を温かく見守り、成功者を称賛すべきだ。

【私の論評】戦後日本の平和と国防意識を描く映画「ゴジラ-1.0」の成功の意味

まとめ

  • 映画「ゴジラ-1.0」は、核戦争の恐怖や自国の防衛能力の重要性をメタファー的に描き出し、日本の戦後平和主義と国防意識の矛盾を示している。
  • この作品は、戦後体制の脆弱さや完全武装解除のリスクを指摘し、国家の自己防衛能力の必要性を強調している。
  • 日本の自衛力の重要性を訴える一方で、科学技術の力も評価しており、バランスの取れた国防戦略の必要である。
  • 高橋洋一氏は、ソフトウェア産業の成長に関して政府の介入よりも民間の競争が重要であると指摘し、政府はインフラ整備などのサポートを行うべきだと主張している。
  • クリエイティブな産業では政府の主導よりも民間の自由な活動と競争が重要であり、政府は後押し役に徹すべきだ。

高橋洋一氏は、この映画に関して「反戦をテーマにしたステレオタイプの映画評論」が書けるとしています。ステレオタイプになるかどうかわかりませんが、以下に私なりの、映画評論を書いてみます。
私は、この「ゴジラ-1.0」は、戦後日本の平和主義と非武装中立主義への重大な警鐘を鳴らす、極めて時宜を得た作品だと受け止めました。ゴジラが核実験の影響で生まれた怪獣であるというメタファーは、日本の非核三原則の危うさを物語っています。唯一の戦争被爆国としての経験から、核兵器の脅威を誠実に描き出している点は高く評価できます。

しかし同時に、この作品が冷厳に示しているのは、国家が国民を守れなくなった戦後体制の虚ろさであり、その現実から脱却すべきだという主張なのです。震電や軽巡洋艦がゴジラの前に次々と敗北を喫するシーンは、戦後の完全武装解除により、日本が自らを守る力を失った無力さを象徴的に表しています。
震電
そのようななか、いくら平和を唱えても何の意味もありません。国は国民の命と尊厳を守る存在でなくてはならないのです。それができなくなれば、国家としての存在理由そのものを失うことになるでしょう。

このように本作は、日本が自らを守れない現状からの決別を強く訴えかけているのです。最終的に科学者たちがゴジラを封じ込めることに成功するシーンは、確かに科学技術の力で立ち直った日本のたゆまぬ努力の姿を映し出していますが、同時に軍事力の完全な不在を白日の下に晒しています。国防の手段を持たぬまま、いくら科学技術が発達しても、究極的には自らを守れないのが現状なのです。

主権国家として最小限の自衛の覚悟は必要不可欠です。国家は、科学技術の発展に加え、一定の武力によって自らを守る決意がなくてはなりません。そうでなければ、いざ有事になったとき、国民の命は守れなくなるのです。

つまり、ゴジラ-1.0はまさに戦後の理想主義に対する反省から、国家主権と国防意識の重要性を説く保守的価値観への回帰を提起するものなのです。過去の軍国主義の過ちを決して繰り返さぬよう戒めつつ、主権国家として自立し、必要最小限の国防力の再構築を促しているのが、この作品の核心的なメッセージなのです。

国民を守ることなくして、国は存在できません。この基本に反する戦後体制からの脱却を力強く説いている点で、私はこの作品の趣旨に全面的に賛同するものです。我々は、決して二度と戦争をしてはならず平和を希求しなければなりませんが、同時に国家が自らを守れなくなった現状に危機感を持つべきです。そうした危機意識なくしては、国民の命と領土と主権を守ることはできないのです。この作品の投げかける重大な問題提起を、国民一人一人が深く自覚する必要があります。

以上が、私の映画時評です。 

高橋洋一氏は、上の記事の結論部分で以下のように締めくくっています。

かつて「モノづくりからソフトへの移行」と言われていたが、そのとおりになっている。

もっとも、これらは政府の支援によるものではなく、民間で競争した結果だ。今のまま、温かく見守り、成功者を称賛すればいい。 

これに関しても、説明させていただきます。

「モノづくりからソフトへの移行」という言葉は、1960年代後半から70年代にかけて提唱された日本の産業政策の転換を示す言葉です。

具体的には、1969年に通産省(当時)が発表した「産業構造研究会報告」が最初に「モノづくり産業からソフト産業への移行」を提起しました。同報告は、高度経済成長期に発展した鉄鋼、自動車などの「モノづくり」重厚長大産業からの転換を求め、知識集約型産業であるソフトウェア、情報サービス、エンターテインメント産業の育成を提言しました。

背景には、日本の工業化が一巡したこと、モノづくり産業での国際競争が激しくなったことなどがありました。また、当時の円高不況を打開するには、付加価値の高い産業への転換が必要と考えられていました。

モノづくりからソフトへ AI生成画像

この「モノづくりからソフトへ」という産業政策の方向転換は、その後の日本の産業発展に大きな影響を与えました。電機、自動車などのモノづくり産業に加え、IT、コンテンツ、ゲームなどのソフト産業の発展につながったと言えるでしょう。

つまり、高橋氏が言及した「モノづくりからソフトへの移行」は、1960年代後半から政府主導で提唱された産業政策の大転換を指しており、今日の日本のソフト産業発展の端緒となった重要な考え方だったのです。

高橋氏は「これらは政府の支援によるものではなく、民間で競争した結果だ」と述べていることから、現在のソフト産業の成功は、政府が主導したものではなく、民間企業の自由な競争の結果生まれたものだと指摘しているのです。

そして「今のまま、温かく見守り、成功者を称賛すればいい」と続けていることから、政府が今後もソフト産業の育成に過度に介入するのではなく、インフラ整備など環境づくりに徹し、あとは民間企業の自由な活動を温かく見守り、成功例を積極的に評価していけばよいという姿勢を示していると解釈できます。

つまり、政府はソフト産業の発展のためのインフラや制度面での下支えは行うが、実際の事業活動や競争の舞台は民間企業に任せ、官が過度に関与するべきではないという考え方を示しているのでしょう。

ソフト産業のようなクリエイティブな分野では、政府の主導では限界があり、民間企業の自由な発想と競争が重要であり、政府は後押しする立場に徹するべきなのです。

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