2016年6月19日日曜日

沖縄県民大会 革新にのみこまれた翁長氏 ついに「海兵隊撤退」言及―【私の論評】オール沖縄は、すでに骨抜き状態(゚д゚)!


沖縄で米軍属が逮捕された女性暴行殺害事件に抗議し、被害女性を追悼する「県民大会」で、
「怒りは限界を超えた」と書かれた紙を掲げる参加者たち=19日午後、那覇市の奥武山公園
那覇市で開かれた県民大会のメーン会場となった奥武山公園の陸上競技場は那覇空港からモノレールで約10分で着く。開会の30分前、最寄り駅の改札は会場に向かう人たちで長蛇の列ができていた。

平成7年に米兵少女暴行事件に抗議し、主催者発表で約8万5千人(県警発表は約5万8千人)を集めた県民大会の会場は宜野湾海浜公園だった。空港から車で30分以上かかる。

今回の大会に出席を見送った市長の一人は「県外からの動員を期待して会場を決めたはずだ」と指摘する。

声を張り上げて演説する翁長雄志・沖縄県知事=19日
午後3時10分、沖縄県那覇市の奥武山陸上競技場

■参加のハードル

「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾」

大会名にはこんなスローガンが掲げられ、採択した決議には「海兵隊の撤退」が盛り込まれた。これは翁長雄志知事が参加する上で高いハードルだった。翁長氏の公約は米軍普天間飛行場(宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)の名護市辺野古移設阻止で、革新勢力が訴える海兵隊の撤退までは求めていないからだ。

翁長氏は苦肉の策で、辺野古移設阻止や、自民党が主張する基地の整理・縮小も「海兵隊撤退という言葉の中に含まれる」との方便を持ち出し、大会参加に踏み切った。政府高官は「海兵隊の撤退要求は日米安保体制を否定するもので、(翁長氏が)保守政治家として日米安保に理解を示すというのであれば明確に一線を画すべきだ」と批判する。

ただ、オール沖縄会議の支援を受ける翁長氏にとって大会に不参加という選択肢もなかった。今月5日の県議選で議席を増やし、発言力を高める革新政党に決議内容を固められた末に大会に引きずり出され、海兵隊撤退要求にも言及せざるを得ず、保守政治家を自称する根拠はさらに乏しくなったといえる。

会場に集まった人たち=19日午後1時半、沖縄県那覇市の奥武山陸上競技場
 ■砂上の楼閣は
翁長氏を支持する勢力のうち唯一の保守系議員の集まりである那覇市議会会派「新風会」の2人は県議選で共倒れし、会派も分裂。翁長氏は日米安保や米軍基地を指して「砂上の楼閣」という言葉を好んで使うが、「(翁長氏は)革新にのみこまれ、保革融合のオール沖縄こそ砂上の楼閣」(県幹部)と指摘される。

革新政党の主張が前面に掲げられた大会に自民、公明両党が参加できるはずもなく、翁長氏が望んだ超党派での開催も実現しなかった。超党派開催だった7年の大会が普天間飛行場の返還合意へと日米両政府を突き動かしたのに対し、今回の「政治集会」の訴求力は格段に弱い。

【私の論評】オール沖縄は、すでに骨抜き状態(゚д゚)!

この県民大会は共産、社民両党や労働組合などでつくる「オール沖縄会議」が主催し、参加者は5万人を目指し、市町村長にも参加を求めていました。決議文には海兵隊撤退のほか、普天間飛行場の県内移設断念の要求も盛り込みました。

自民党沖縄県連は14日、米軍属女性暴行殺人事件に抗議する19日の県民大会について、党派を超えた実行委員会が組織されていないことや、米軍普天間飛行場の県内移設断念などを盛り込む見込みの大会決議内容が一方的だなどとして「今の状況では参加することができない」との見解を発表していました。

会見で県連の照屋守之副会長は、大会を主催するオール沖縄会議から正式な協力依頼がないとして「開催や大会決議を決める前の段階で、超党派の取り組みを模索すべきだった」と批判。「県民大会を選挙の最中に行うことにも一つの疑問を感じる」などと超党派での取り組みを求めました。

これに先立つ14日午前、島尻安伊子沖縄担当相は閣議後会見で県民大会について「自民党県連としては出席しない」と述べ、参加しない考えを明らかにしていました。

島尻安伊子沖縄・北方領土担当相

公明党沖縄県本部は、11日に現状では参加できないとの意向を主催者側に伝えていました。
おおさか維新の会沖縄県総支部は17日に記者会見し、 政党間の協議も行われないまま超党派でない集会の開催が決定したとした上で、

「自民党や公明党の参加もなく本物の県民大会にしようとした努力がみられなかった」

として集会への不参加を表明していました。

県民大会と位置づけるには首長の参加も不可欠ですが、翁長知事は参加したものの、県内11市長のうち9市長は参加しませんでした。市長の一人は「偏った主張の決議文に賛同しろという姿勢は納得できず、何をもって県民大会と強弁しているのか」と批判し、参院選後に経済界も含めた実行委員会形式で県民大会を開く構えだそうです。

19日には、会場となる陸上競技場と同じ公園内にある沖縄セルラースタジアム那覇では全国高校野球選手権沖縄大会の試合が行われる予定でしたが、県高校野球連盟は県民大会開催を受け、選手や応援の生徒の安全に万全を期す必要があると判断し、別の球場に変更しました。同スタジアムはプロ野球公式戦にも使われ、球児の聖地とされるだけに、県民大会が試合の機会を奪ったことへの批判も強いです。

ほかにも公園内では高校生の柔道大会や中学生の軟式野球大会が予定されており、影響が懸念されていました。

この会議「オール沖縄会議」が主催といいながら、保守系の政党は参加せず、沖縄の12ある市のうち、9つもの市の市長が参加しなかったということです。
オール沖縄は、既に骨抜き状態と言っても良いです。
この兆候はすでにみられていました。それについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「オール沖縄」崩壊の兆し 那覇市議会議長の不信任案可決 唯一の保守系に亀裂―【私の論評】中国の傍若無人と弱体化とともに下火になる沖縄左翼運動(゚д゚)!
沖縄県那覇市議会
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を転載します。
沖縄県那覇市議会の金城徹議長に対する不信任決議案が17日、自民、公明両党などの賛成多数で可決された。金城氏は翁長(おなが)雄志(たけし)知事の側近で、翁長氏を支える勢力のうち、県内の市町村議会で唯一となる保守系議員会派「新風会」に所属していた。 
翁長氏は自身の支持勢力について保革融合の「オール沖縄」と喧伝してきたが、唯一の保守系議員会派に亀裂が入り、県政界では「オール沖縄崩壊の兆し」との声が上がっている。 
6月5日の県議選には新風会系として市議2人が出馬したが、ともに落選。しこりが残ったとされ、知念氏は6日に新風会を離脱して無所属となった。金城氏も議長のため現在は無所属。
さらに、翁長知事は、最近の度重なる尖閣諸島などの接続水域に中国海軍の艦船が侵入してきたことについても、未だに何の声明も出していません。

それに、沖縄県民集会と銘打っておきながら、この集会では中国海軍の侵入に関しては何の声明も発表していません。それをすれば、沖縄の基地の正当化につながることを懸念しているのかもしれませんが、沖縄県にはこれに脅威を感じている県民も多数存在しているはずです。まったく無視とはいかがものでしょうか。

今後、翁長知事や「オール沖縄」が何の声明も懸念も表明しないということであれば、これではとても全沖縄を代表しているとはいえません。

この状況が改善されなければ、沖縄県の保守も中国に脅威を抱く県民も、「オール沖縄」の呼びかけには応じないです。

「オール沖縄」はもともと沖縄県民全員を代表するものではないという声がありましたが、今回の出来事で、それがさらに明確になりました。

今回のことで「オール沖縄」は骨抜きになりました。そうして、今後「オール沖縄」は完璧に有名無実となることでしょう。

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2016年6月18日土曜日

英EU離脱なら「リーマン超え」衝撃波 超円高90円台 株価大暴落も 残留派女性議員射殺…―【私の論評】衝撃波はイギリスではなく日銀によってもたらされる(゚д゚)!


英国の欧州連合離脱をめぐる国民投票が迫る中、ロンドンのテムズ川で
船から残留を訴える活動家たち  写真はブログ管理人挿入 以下同じ
欧州連合(EU)からの離脱か残留かを問う英国民投票を23日に控え、残留支持の女性国会議員が殺害されるなど事態は混迷を極めている。日本時間24日には大勢が判明する見通しだが、世論調査通りに離脱派が勝利した場合、世界経済はリーマン・ショックを超えるリスクに直面する。日本でも、日経平均株価1万2000円台の株価暴落や1ドル=90円台の超円高、輸出企業の業績悪化など深刻な危機に見舞われかねない。

国民投票が英国を二分するなか、英中部リーズ近郊で16日午後、残留を訴える労働党の女性下院議員、ジョー・コックス氏(41)が銃で撃たれ死亡、警察は52歳の男を逮捕した。男はコックス氏を執拗に刺し、頭部を撃っており、強い殺意があった可能性がある。

男は犯行時「ブリテン・ファースト」と叫んだとの証言があり、離脱派の極右団体の名前に似ていると指摘されたが確認されていない。捜査当局は国民投票との関連も含めて調べを進める。

離脱、残留の両派は16日の集会などの運動を中止。17日も運動中止を継続すると報じられた。

労働党の女性下院議員、ジョー・コックス氏

英国の著名人も賛否が分かれている。「(離脱は)短期的に見れば損害だが、長期的に見れば有益だろう」と発言したのはロックバンド、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー(72)。ザ・フーのロジャー・ダルトリー(72)や俳優のマイケル・ケイン(83)も離脱を支持。実業界では掃除機など家電メーカー創業者のジェームズ・ダイソン氏(69)が離脱派だ。

一方、映画「ハリー・ポッター」シリーズで知られる女優、エマ・トンプソン(57)や俳優のベネディクト・カンバーバッチ(39)は残留支持を表明。英ケンブリッジ大のスティーブン・ホーキング博士(74)も残留を支持する。

ボリス・ジョンソン前ロンドン市長らが率いる離脱派は、ポーランドなどEU域内からの移民が雇用を奪っているとの不満やテロへの危機感を背景に支持を伸ばした。

大企業など経済界は残留派が多数で、デーヴィッド・キャメロン首相はEU離脱の経済損失を強調して危機感をあおるが、かえって反発を招いた面もある。

18歳から20代前半は残留支持が離脱を大きく上回り、高齢層では離脱支持が強まる傾向にある。

世論調査会社「ユーガブ」の調査では、離脱支持が46%で残留は39%。他社の調査でも離脱が1~5ポイント上回った。

一方、ブックメーカー(賭け業者)の「ベットフェア」のオッズでみると、残留の確率が約64%、離脱が約36%と逆の結果になっている。

離脱派が勝利した場合の経済への影響について、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の片岡剛士氏は「EUからの離脱が決まると英国の通貨ポンドが売られる。英国はサービス業の国なので輸出へのメリットは限定的で、日本など諸外国からの投資が集まらず、金融業がうまくいかなくなるデメリットの方が大きい。景気の悪化も避けられないだろう」とみる。

EU離脱が決まれば、ロンドンの金融街「シティー」からパリやフランクフルトに金融の中心地が移る可能性も指摘されている。欧州発の世界株安や、ポンドやユーロ暴落への懸念も強く、片岡氏は、日本への影響について「円高と株安が固定化すると実体経済にもマイナスのインパクトがある」と語る。

みずほ総合研究所の試算では、EU離脱決定後の1カ月程度で対ドルで2~6円の円高が進み、日経平均は1000~3000円下落する可能性があるとした。

短期的にはさらに円高と株安が進む恐れがあり、1ドル=90円台半ば、日経平均1万2000円台となってもおかしくない状況だ。

離脱派が勝利した場合、実際のEU離脱までには2年程度かかるとみられるが、中長期的な影響も見逃せない。

「英国単体でマイナス成長になっても、世界経済全体への影響は限定的だ。ただ、EUから離脱する前例ができることは域内のほかの国にも大きな意味を持つ。債務問題を抱えるギリシャのほか、英国と同様に緊縮財政で苦しんでいるスペインやポルトガル、イタリアなどからも離脱の動きが強まる可能性もある」と片岡氏。英国民はどんな決断を下すのか。

【私の論評】衝撃波はイギリスではなく日銀によってもたらされる(゚д゚)!

このブログでは、イギリスのEU離脱については、ほとんど掲載したことがないので、以下にその背景を掲載します。

そもそもイギリスは、経済的なメリットのあるEUをどうして自ら抜けようとしているのでしょうか。

離脱派の最も端的な主張としては、表向きには「国としての主導権を回復する」と標榜していますが、実際には「これ以上移民・難民を受け入れられない」ということです。

何年も前から議論されているように、ヨーロッパではほとんどの国において、シリアやイラク、北アフリカからの難民受け入れ問題が生じています。

その中でも特に、難民にとって社会保障が手厚いイギリスは人気国です。正式な手続きを踏んで難民として受け入れられれば、福祉手当という金銭が与えられたり、無料で医療施設を利用できたり、確実に住居が与えられます。

EU加盟国には難民受け入れを拒否できない、という法律があります。移民についても、特別な理由がない限り拒否できません。

だから、イギリスが移民・難民受け入れを拒否、あるいは制限するには、EUを離脱しなければならないのです。
離脱派の主張をまとめたチャートを掲載します。
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以下に残留派の主張をまとめたチャートを掲載します。
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以下に実際にイギリスがEUを脱退するどうなるのか、特に日本はどうなるのかについて掲載します。
f:id:goodbyebluemonday23:20160608185408p:plain
現在、イギリスに進出している日本企業の数は931社です。これはEUではドイツに次ぐ2位の企業数です。

さらに、日本の対イギリス直接投資の額は1兆7000億円です。これは、アメリカに次ぐ世界2位の金額です。

さらに、前述したポンド安、ユーロ安になると、今度は日本の輸出産業にも大きな影響が出てきます。

ヨーロッパからすれば、ポンド安、ユーロ安になると、日本の製品はこれまでより買いにくくなります(例えば、今まで100ユーロで買えていたものが120ユーロになってしまう)。そうすると、日本の対ヨーロッパ輸出が落ち込み、日本経済全体の景気悪化にもつながってくるわけです。

ただし、私自身としては、日本の対イギリス直接投資の額が1兆7000億円ということくらいでは、さほど大きな影響はないのではないかと考えています。このような金額を私達が見ると天文学的であり、何を基準にして良いのかわからなくなってしまいます。

しかし比較の対象として、日本政府と企業、個人投資家が海外に保有する資産から負債を差し引いた金額、「対外金融純資産」が参考になるのにではないかと思います。これが、昨年度末時点で339兆2千630億円で、25年連続で世界一位でした。

これは為替の影響や外国人の投資増加で前年より6.6%減少したものの、金額としては史上二番目でした。

対外金融資産が前年比0.7%増の948兆7千290億円、対外負債も5.3%増の609兆4千660億円。対外資産は7年連続、対外負債は6年連続で増加しました。


これを考えると、確かに直接投資をしていた会社にとっては、痛手かもしれませんが、かといって国全体ではさほどのようでもないように思われます。海外純資産そのものが大きいからといって、それが国が金持ちということに直結するわけでもありませんが、それにしても、イギリスのEU離脱によって日本が受ける影響は、ないことはないにしても、では甚大なものになるかといえば、そうとも思えません。

ただし、リーマンショツクのとき何が起こったかを思い起こしてみる必要があります。

さて、リーマン・ショックといえば、2007年のサブプライムローンサブプライム住宅ローン危機)問題に端を発した米国バブル崩壊を動機に(サブプライムローンという債権をあたかも資本と思い込ませた借金の転売による多重債務)、多分野の資産価格の暴落が起こっていました。

リーマン・ブラザーズも例外ではなく多大な損失を抱えており、2008年9月15日(月)に、リーマン・ブラザーズは連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請するに至りました。この申請により、同社が発行している社債や投信を保有している企業への影響、取引先への波及と連鎖などの恐れ、及びそれに対する議会政府の対策の遅れからアメリカ経済に対する不安が広がり、世界的な金融危機へと連鎖しました。

日経平均株価も大暴落を起こし、9月12日(金)の終値は12214円でしたが、10月28日には一時は6000円台(6994.90円)まで下落し、1982年10月以来26年ぶりの安値を記録しました。

さて、本題はここからです。リーマン・ショックで経済が悪化した各国は、すぐに中央銀行が金融緩和を行いました。しかし、日本の中央銀行である、日銀は、そうではありませんでした。

これについては、以前にもこのブログに掲載したことがあるので、その記事のリンクを以下に掲載します。
景気減速に中国政府は焦りと弱音 日中関係改善へ共産党幹部の姿勢に変化―【私の論評】日銀がまともになった今中国がどうなっても、日本には影響は少ない!そんなことより、日本は一刻もはやくデフレからの脱却を急げ(゚д゚)!
景気刺激策は取らないと強調する李克強首相

この記事は昨年8月31日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、リーマン・ショックに関する記述のみ以下にコピペさせていただきます。
しかし、多くの人は大きな見逃しをしています。本当は、当時の経済財政担当相がリーマンショックを「蜂がさした程度」と表現したことは正しかったかもしれません。ただ一つ、ある一つの条件さえ満たしていれば・・・・・・・・・・。 
その条件とは、日本銀行による金融政策です。リーマン・ショック後直接影響を大きく受けた国などの中央銀行は、景気を素早く回復させるため大金融緩和を行いました。しかし、日本銀行は、日本国内がデフレ・円高傾向にありしかも他国が大金融緩和を行ったにも関わらず、頑なに金融引締め政策を行いました。 
本来はリーマン・ショックなど日本にとっては「蜂の一刺し」に過ぎなかったものを日銀が金融緩和政策をしなかったために、さらなる超円高、さらなるデフレの深刻化を真似いてしまい、結果として戦後の日本で最大級の経済危機になりました。
日銀はリーマン・ショック後も金融緩和をしなかった
リーマン・ショックはアメリカやEUにとって、サブプライムローンなどのつけを支払うという形で直接的に経済に悪影響を及ぼしました。しかし、日本の場合はサブプライムローンに関しては、ほんど関係がなかったにもかかわらず、他国中央銀行が大金融緩和をしたにもかかわらず、日本銀行が何もしなかったため、超円高・デフレの深刻化を招いてしまったというわけです。だから、日本においては、リーマンショックなどという呼び方は正しくありません。「日銀ショック」とでも呼ぶべきだったでしょう。
このように、リーマン・ショックの日本における悪影響はあまりなかったものと思います。日本では、当時サブプライムローンを扱う証券会社などあまりなく、本来は悪影響はあまりなかったはずでした。しかし、そんなことよりも、他国が大規模な金融緩和を行う中、日銀が何もしなかったことが、その後の日本経済に甚大な悪影響を及ぼしてしまったのです。

先日もこのブログに掲載しましたが、日銀はまた追加金融緩和を見送りしました。

本来であれば、追加金融緩和をすべき時なのですが、見送ってしまったため、市場が失望して、円高・株安傾向になりました。

今後も、追加金融緩和を行わないようなことがあれば、しばらくすれば、また実体経済に悪影響を与えるおそれがあります。

そうして、イギリスがEUから離脱して、ポンド安、ユーロ安になっても、日銀が金融緩和をしないとか、さらにイギリスやEUが不況脱出のために金融緩和をしたり、米国が利上げをさらに先延ばしてしても、日銀だけは追加金融緩和をしないなどということがあれば、それこそ、震源地はEU、イギリスなのに、またまた日本だけが、リーマン・ショック時のように一人負けになるおそれが十分あります。

イギリスのEU離脱が確実なものになった場合、離脱そのものは、イギリスの国民が決めることであって、我が国はどうすることもできません。

しかし、日銀の金融政策は本来何とでもできるはずです。しかし、今の日銀法では、我が国の金融政策の目標は、日銀の政策決定会合で決められます。政府が決めるのではないのです。これは、日銀の独立性として、日銀法で定められています。

しかし、世界標準では、国の金融政策の目標は政府が定めて、中央銀行が専門家的な立場から、その手段を自由に選ぶことができるというのが、中央銀行の独立性であるといわれています。

今回イギリスのEU離脱が決まって、上記で述べたような懸念が生じても、日銀が追加金融緩和を行わなかったとしたら、それこそ「リーマン超え」の衝撃波が日本を襲い、超円高で為替は90円台、株価大暴落で1万2000円台になることもあり得ます。

そのような事態を避けるために、日銀には追加金融緩和を一日でもはやく行っていただきたいです。

そうして、このようなときに、政府が自由に金融緩和ができるように、政府が日本国の金融政策の目標を定められるように日銀法を改正すべきです。

そうして、無論財政政策もまともにすべきです。「リーマン超え」の衝撃派が日本を襲っているときに、増税などの緊縮財政をするなどというバカ真似は絶対にさせるべきではありません。そのようなときには、積極財政で増税延期どころか、減税をすべきです。

「リーマン超え」の衝撃波が日本を襲いそうになったときの、回避方法は、日銀が金融緩和、政府も積極財政をすることです。

今回だけは、リーマン・ショックの時のような過ちを繰り返すべきではありません。

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2016年6月17日金曜日

「オール沖縄」崩壊の兆し 那覇市議会議長の不信任案可決 唯一の保守系に亀裂―【私の論評】中国の傍若無人と弱体化とともに下火になる沖縄左翼運動(゚д゚)!


沖縄県那覇市議会
沖縄県那覇市議会の金城徹議長に対する不信任決議案が17日、自民、公明両党などの賛成多数で可決された。金城氏は翁長(おなが)雄志(たけし)知事の側近で、翁長氏を支える勢力のうち、県内の市町村議会で唯一となる保守系議員会派「新風会」に所属していた。

不信任決議案は、「公平・公正な議会運営と議会改革が期待できない」として提出された。新風会会長を務めていた知念博議員も賛成に回った。

那覇市議会議員名簿より

翁長氏は自身の支持勢力について保革融合の「オール沖縄」と喧伝してきたが、唯一の保守系議員会派に亀裂が入り、県政界では「オール沖縄崩壊の兆し」との声が上がっている。

6月5日の県議選には新風会系として市議2人が出馬したが、ともに落選。しこりが残ったとされ、知念氏は6日に新風会を離脱して無所属となった。金城氏も議長のため現在は無所属。

【私の論評】中国の傍若無人と弱体化とともに下火になる沖縄左翼運動(゚д゚)!

さて、以下ではまずオール沖縄についてまとめておきます。

「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の結成大会で手を
つなぐ参加者=2015年12月14日夜、沖縄県宜野湾市
オール沖縄(オールおきなわ)は、沖縄県のアメリカ軍普天間基地の辺野古移設反対派による政治的統一戦線・選挙運動です。また、その選挙運動を支える組織として結成された「普天間基地移設を目的とするオール沖縄会議」の略称です。

2014年沖縄県知事選挙において、辺野古移設反対派の翁長雄志を支援する枠組みとして誕生しました。

それまで沖縄では革新勢力による革新統一は頻繁に行われていたましたが、2014年の県知事選では戦後初めて革新勢力に加え辺野古移設反対派の保守勢力(翁長は元自民党である)も参加した統一戦線が結成されました。この統一戦線には、「辺野古移設に反対する圧倒的な県民世論の元で保守と革新の壁を乗り越え、沖縄が一致団結する」という意味をこめてオール沖縄の名称がつけられました。結成以後は、沖縄県内のあらゆる選挙において選挙協力・候補者調整・統一候補擁立を行っています。

沖縄県翁長知事
社会民主党・日本共産党・生活の党と山本太郎となかまたち・沖縄社会大衆党・民進党沖縄県連・那覇市議会新風会・沖縄県議会県民ネットなどの政党・会派が参加しています。

また沖縄県知事・那覇市長・名護市長といった首長も参加し、2016年5月現在は沖縄県議会および那覇市議会において過半数を確保しました。

ただし辺野古移設反対派でも、翁長県政に是々非々の立場を取る公明党沖縄県本部およびおきなわ維新の会(政党そうぞう)は参加していません。

保守、革新・リベラルの枠を超え、沖縄県民がこぞって辺野古移設に反対―というのが「オール沖縄」の建前です。地元メディアが意図的に定着させ、2014年の知事選、衆院選で辺野古移設に反対する候補が圧勝する原動力となった言葉です。

沖縄の海岸
しかし両選挙を地域別に見ると、たとえば八重山の場合、辺野古移設容認の候補の得票が多かったのです。要するに辺野古移設問題に対しては県内でも温度差があり、十把一からげに「オール沖縄」という言葉が使われるのには、県民として違和感がある人も多いようです。

そうして、上の記事では、この「オール沖縄」の崩壊の兆しを掲載しています。さて、このオール沖縄の崩壊の兆しは他にもありました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【編集日誌】中国軍艦侵入にもだんまり…翁長沖縄県知事、発言なしですか―【私の論評】何か語れば保守派に利用されることを極度に恐れている翁長知事(゚д゚)!
尖閣諸島
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「オール沖縄」崩壊の兆しの部分を以下に引用します。
中国海軍の艦艇が尖閣諸島周辺の接続水域に初めて侵入したことに、沖縄県石垣市の中山義隆市長は「非常に強い危機感を持っている」と述べました。尖閣を行政区域に抱える市政トップとして当然の反応でしょう。対照的に何もコメントしなかったのが翁長雄志知事でした。

翁長氏は昨年5月の外国特派員協会での会見で「私も尖閣は日本固有の領土だと思っている」と明言しました。ならば即座にメッセージを発してもよかったはずです。共産党の志位和夫委員長も「軍艦侵入は軍事的緊張を高めるだけ」と批判したのですから。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を訴える翁長氏として、中国の脅威を強調すると米軍基地の重要性を認めざるを得ないと懸念したのでしょうか。それとも翁長氏には危機感がないのでしょうか。
・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・ 
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を訴える翁長知事としては、尖閣問題を強調すると中国の脅威や米軍基地の重要性を認めざるを得なくなり、移設反対の論拠が弱まりかねないです。このため、知事や反基地派は尖閣問題を無視するか、「尖閣有事でも、米軍が出動することはない」「普天間飛行場の米海兵隊は抑止力にならない」などと反論していました。

しかし、尖閣に日米安保が適用されることはオバマ米大統領が明言しています。米軍が抑止力であることを否定する主張は日米安保の否定にもつながり、保守派の共感を得にくいです(注:太文字はブログ管理人によるものです)。現在、翁長知事を含めた辺野古移設反対派にとって「尖閣」は極力触れたくないキーワードになっています。

さらに、翁長知事は、自らの発言が安倍総理に利用されることを懸念している可能性もあります。 
青山繁晴さんが翁長知事が、安倍総理の術中にはまったと暴露しています。伊勢志摩サミットの直前に安倍総理に会った翁長知事がオバマ大統領に面談したことなどを利用して、オバマ大統領との交渉を有利にもっていったことを暴露しています。 
これについては、以下の動画をご覧になってください。

翁長知事は、こういうこともあったので、中国海軍の艦艇が接続水域に入ったことに関しては何か発言すれば、また保守派等にその発言を利用されてしまうかもしれないと懸念している可能性が大きいです。
政府は16日、中国海軍の情報収集艦が沖縄県・北大東島の接続水域を一時航行したことについて「看過できない」(政府筋)と反発が強めています。9日の沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域航行から始まり、15日の鹿児島県・口永良部島の領海侵入に続く行動です。政府内には「われわれの懸念などを顧みない行為で、度が過ぎている」との声が上がっていました。

短期間に三度も、中国海軍の艦艇は接続水域を航行しましたが、今のところ翁長知事はこれらについて何のコメントもしていません。さすがに、これは異常です。

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を訴える翁長氏として、中国の脅威を強調すると米軍基地の重要性を認めざるを得ないと懸念して発言をしないというなら、本当に無責任です。もし、これでも危機感がないというのなら、とても沖縄県知事などつとまりません。いずれにしても、翁長知事にとっても、「オール沖縄」にとっても、これは逆風です。

そうして、沖縄県那覇市議会の金城徹議長に対する不信任決議案が本日、自民、公明両党などの賛成多数で可決されたのです。

中国海軍の軍艦は、これからも接続水域に頻繁に出没することが考えられます。それにだんまりを通していては、さらに逆風が強くなります。しかし、中国の軍艦の侵入について、危機感を表明すれば、これも逆風になります。

いずれにしても、逆風からは逃れられないことになります。そうなると確かに「オール沖縄」崩壊の兆しになることが十分に考えられます。



そうして、これは後からみると大きなターニングポイントになっているかもしれません。

沖縄左翼には、地元企業や共産党や中国が資金を提供していることは、今日ではすでに多くの筋から明らかになっています。

しかし、これらが、いくら沖縄県民などに金を費やしたとしても、その対価を得られないようであれば、そんなことは無駄なので止めます。

成田闘争など、今さらいくら反対運動してみたところで、何の効果も期待できません。だからこそ、誰も支援をしないので、左翼もこれに対していまさらそのようなことはしないのです。

沖縄も同じです。翁長知事がいくら基地移転反対といいはったにしても、偏った沖縄二紙などいくら操作誘導しても、何も変わらなければ、左翼や中国もいずれ手を引きます。日本中から暇な老人をいくら動員しても、何も変わらなければ、いずれ資金提供をする組織も国もなくなります。

沖縄県民も、我が国の国民も馬鹿でも愚かでもありません。馬鹿で愚かなのは、翁長知事などのごく一部に過ぎません。そのことに多くの人が気づけば、いずれオール沖縄は有名無実となり、さらに沖縄の左翼運動もかなり下火になることでしょう。

成田闘争1971年7月 今ではこれが存在したことすら知らない人も多い
沖縄と日本を破壊する愚かな人々に、さよならする時期が近づきつつあります。時期的に早いか遅いかの話だけです。20年もたてば、成田闘争のように跡形もなく完璧に消えています。歴史は繰り返します。そうして、その頃中国は崩壊しているか、存在していたとしても、中進国のわなにはまり、図体が大きいだけの凡庸はアジアの一独裁国になっています。

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2016年6月16日木曜日

日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!

日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定



日銀は、16日まで開いた金融政策決定会合で、国内の景気は基調としては緩やかな回復を続けているとしてマイナス金利政策を含めた今の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。

日銀は16日までの2日間、金融政策決定会合を開き、国内外の景気や物価の現状と先行きについて議論しました。

その結果、消費は「一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移している」としました。

企業の生産は「地震による影響もあって横ばい圏内の動きを続けている」とし、住宅投資は「再び持ち直している」としました。

これらを踏まえて日銀は、国内の景気について「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」という判断を示しました。

そのうえで、目標とする2%の物価上昇率の達成に向け、マイナス金利政策を含めた今の大規模な金融緩和策を維持することを賛成多数で決めました。

金融市場では、今月23日にイギリスで行われる国民投票に向けて、EU=ヨーロッパ連合からの離脱派が勢いを増しているとの見方から円高や株安が進むなど不安定な値動きが続いています。

しかし、今回の決定で日銀としては、マイナス金利政策が経済に及ぼす効果や、イギリスの国民投票の結果を見極めたいと判断したものとみられます。

【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!

結論からいうと、日銀は追加金融緩和を行うべきでした。以前このブログにも掲載したように、いくら金融緩和しても下げられない失業率を「構造的失業率」といい、実際の失業率が構造的失業率まで下がらないと、物価や実質賃金は本格的に上昇せず、インフレ目標の達成もおぼつかないことになります。

構造的失業率などについて以下に簡単に解説しておきます。

総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。 
  • 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業 
  • 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業 
  • 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。

過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。

過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。

であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。

日銀黒田総裁
2014年10月の日銀の追加緩和は、安倍晋三政権による消費税率10%への再増税を後押しするためだったといわれており、このときの黒田相殺は、中央銀行総裁というよりは、元財務省出身者の立場が良く現れていたと思います。

しかしながら、マイナス金利の導入は、中央銀行総裁としての面目躍如というところで、見事に中央銀行総裁の立場を示したものといえました。

しかし、安倍政権は再び再増税を延期し、今回もまた増税を見送ったというか、以前のこのブロクにも述べたように、これはほんど凍結に近いものです。財務省の落胆はかなり、大きかったでしょう。この心情を理解した黒田総裁は、今回も金融緩和する気になれなかったのでしょう。まさに、今回は、中銀行総裁というよりは、旧財務省出身者の立場が貫かれているようです。

しかし、本来は金融緩和を行うべきでした。そうして今回行うべきは、「マイナス金利」の拡大ではなく、量的緩和による国債買い入れ額の拡大とすべきでした。

現在政府の景気対策として、財投債(国債の一種)発行によるインフラ整備が20兆円規模で検討されており、補正予算が秋の臨時国会で決定される予定です。その後で、量的緩和の拡大を日銀が行うと、「ヘリコプターマネー」との批判を受けたかもしれません。


しかし、インフレ率が低い現状では、全く取るに足らない批判ですが、日銀としては無駄な説明をしたくないという認識あったのかもしれません。であれば、政府が国債を発行する前に量的緩和しておけば、日銀にとっては良い選択だったと思います。

しかし、今回も量的緩和をしなかったということで、補正予算が決まった後で、量的緩和ということになると、「ヘリコプターマネー」との批判をかなり受けやすくなるといことで、緩和をしにくい状況になると思います。

それにしても、このままでは、いずれ金融緩和の効果も薄れてくるのは必定です。結局、消費税にこだわる財務省とその片棒をかづく政治家やマスコミによって日本はせっかくのデフレ脱却のチャンスを逃すことにもなりかねません。

どこかで、日銀黒田総裁は、初心を思いおこし、中央銀行総裁としての矜持を貫いていただきたいものです。

街頭演説をする安倍総理
それにしても、今回の参議院選挙は追加金融緩和の見送りでかなり厳しくなりました。今回は、ある程度国民からお灸を据えられそうな雲行きです。野党も株安や円高を責めてくることになるでしょう。野党は、「アベノミクス失敗」の連呼でずいぶんと戦いやすくなったかもしれません。

とはいっても、現在金融緩和をするしないで、すぐに7月の参院選の頃にその影響が現れるということではありません。株価や、為替は別にして、実体経済に対する金融緩和の効き目にはタイムラグがあります。1〜2年程度を経てからはじめてその効果がでてきます。

それに野党は、金融政策と雇用や経済が密接に結びついていることなど全く理解していません。だから、彼らの主張する「アベノミクス失敗」は全く頓珍漢で単なる個人攻撃に過ぎないものです。彼らの批判は一部の人にしか受け入れられません。そもそも、現状の雇用状況のかなりの改善があるのですから、「アベノミクス失敗」と連呼してもそれは一部の人にしか影響を与えません。

だからすぐにどうこうのということはないです。しかし、長期的にみれば必ずその影響は現れてきます。近いうちに追加金融緩和をしないと、あいかわらず実質賃金が上昇しないという事態に見舞われることになります。それに、せっかくかなり改善した雇用環境が悪化するかもしれません。

これまで、安倍総理を一番支えてきたのが、他ならぬ金融緩和であることを理解しないと安倍総理は退陣せざをえなくなるかもしれません。そうなれば、一番財務省が喜ぶことになります。

そうして、日本経済はまたデフレスパイラルのどん底に沈み込むことになります。

そんなことは、断じて避けなければなりません。日銀は、「ヘリコプターマネー」と批判されたとしても、近いうちに必ず追加金融緩和を行うべきです。

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2016年6月15日水曜日

孤立浮き彫りの中国 ASEAN懐柔に失敗 あの外相が1人で会見の異常事態―【私の論評】海洋戦略を改めない限り、これから中国は大失態を演じ続けることになる(゚д゚)!

孤立浮き彫りの中国 ASEAN懐柔に失敗 あの外相が1人で会見の異常事態

中国の王毅外相
中国は外交でも国際社会から孤立を強めている。中国雲南省玉渓で開かれた中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相による特別会合で、ベトナムなど一部加盟国と中国が対立する南シナ海の領有権問題をめぐる議論が決裂、共同記者会見も開かれず、中国の王毅外相が1人で会見するという異常事態となった。

フィリピンが提訴した常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判断が近く示される見通しとなる中、中国は孤立回避に向けてラオスなどの友好国の取り込みを図り、対立国との一致点を模索したが、ASEAN側は中国との調整を放棄、南シナ海の人工島造成や施設建設について「信頼を損ねる動き」と非難、不信感をあらわにした。

王毅外相は単独で開いた記者会見で「中国とフィリピンの間の意見の相違はASEANとの問題ではなく、協力関係に影響はない」と強調。ASEANの対中交渉の窓口国であるシンガポールの外相が会見に参加しなかったことについては「フライトやスケジュールの問題」と説明せざるを得なかった。

4月には中国の劉振民外務次官がASEAN各国に対し、仲裁の結論に同調することは「危険な動きだ」と発言。これが「恫喝(どうかつ)」(シンガポール外務省高官)と受け止められ、反発が広がった可能性があり、中国外交は失敗に終わった。

【私の論評】海洋戦略を改めない限り、これから中国は大失態を演じ続けることになる(゚д゚)!

この記事、完璧に中国の外交が失敗だったことを示しています。このところ、中国の外交は失敗続きで何も良いことはありません。そうして、失敗続きの連続で、王毅外相のいらつきは極度に達しているようで、最近の行動は常軌を逸しているといっても過言ではありません。

その状況を物語るいくつかのエピソードを以下に掲載します。

今月はじめ中国の王毅外相が、中国の人権状況について質問したカナダ人記者に激怒し、話題になっていました。

今月1日、訪問先のカナダで、ディオン外相と共同記者会見した王氏は、カナダ人記者が、人権問題や南シナ海での軍事的覇権に懸念があるなか、「なぜ両国関係を強化するのか」とディオン氏に質問したところ、いきなり激高したのです。

「あなたの質問は、中国に対する偏見に満ちており、傲慢だ!」

さらに、王氏は「まったく容認できない。中国の人権状況について最もよく分かっているのは中国人だ!」と続けました。

カナダ放送協会(CBC)が世界に配信した映像をみると、王氏は両手を大きく動かして怒りをあらわにし、鬼のような形相で記者をにらみつけている。その時の動画を以下に掲載します。


王氏は、4月末に訪中した岸田文雄外相にも悪態をつくなど、常軌を逸した“暴走”が目立っていました。専門家は、習近平国家主席率いる中国の強硬外交が失敗続きで、「あちこちで八つ当たりしている」と指摘しています。

王氏の暴走はこれだけではありません。日本の岸田外相が4月末に訪中して日中外相会談を行った際、王氏は「中日関係が谷底に落ちた原因は、日本側が自分で分かっているだろう」「あなたが誠心誠意を持ってきたのなら、われわれは歓迎する」といい、日本側をあぜんとさせました。以下にそのときの動画を掲載します。


この非礼極まる態度に関しては、中国のインターネット上でも「外交儀礼は(粗末な)田舎の接待にも劣る」「低級だ」などの批判が相次いだそうです。

オバマ米大統領が5月27日、被爆地・広島を訪問して感動的なスピーチをした際にも、王氏は「南京も忘れてはならない。被害者は同情に値するが、加害者は責任逃れはできない」といい、日本たたきに必死でした。

知日派で知られる王氏なのですが、暴走の背景には何があるのでしょうか。

中国情勢に精通する評論家の石平氏は「王氏は、習氏の手先となって強硬外交を展開したが、ことごとく失敗し、逆に中国の孤立化を招いた。王氏自身が追い込まれており、あちこちで八つ当たりしているとみていい。このままでは更迭される可能性もあるのではないか」と語りました。

しかし、これは別に王毅外相による外交の失敗というわけではなく、最近の中国の行動そのものに問題があることは確かです。

そもそも、自らの領土でも何でもない南シナ海の環礁を埋め立て、環境破壊し、それに及ばず軍事基地化したのは中国です。このようなことをする国の外務大臣が、いくらまともに外交をしようとしてもできないのが当たり前です。

それに、今月の6月9日には、中国海軍の艦船が尖閣列島の接続水域に入りました。産経新聞は、当日号外(下の写真)でこの出来事を報じました。

本日の産経新聞の号外 写真はブログ管理人挿入 

そうしては本日は、 防衛相が、中国海軍の艦艇が鹿児島県の口永良部島周辺の領海に入ったと発表しました。中国艦はすでに領海を出ています。防衛省によると、中国軍艦による領海侵入は2004年の沖縄県先島諸島周辺での原子力潜水艦による侵入以来2例目です。外務省は15日、在日中国大使館に対し、中国軍の活動全般について懸念を伝えました。
口永良部島西方の領海に侵入したとされるドンディアオ型情報収集鑑
防衛省によると、15日午前3時30分ごろ、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦1隻が、口永良部島西方の領海を南東に進むのを海上自衛隊のP3C哨戒機が確認。午前5時ごろ、鹿児島県の屋久島南方から領海を出ました。

防衛省によると、中国海軍の情報収集艦は、沖縄周辺海域で実施中の海上自衛隊と米国、インド両海軍の共同訓練「マラバール」に伴い、日本領海を航行していたインド艦船2隻の後方を航行していたそうです。


中国側の直接的な狙いは以前にもこのブログで述べたように、『マラバール』への対抗措置だと考えられます。米海軍と日本の海上自衛隊を牽制(けんせい)する狙いが透けてみえます。東シナ海情勢は“第2フェーズ”に入りました。中国軍は、尖閣諸島への上陸という“第3フェーズ”も視野に入れて、今後、領海侵入を常態化させていくでしょう。自衛隊と中国軍の軍事衝突の可能性も格段に高まりました。海上警備行動の発令を迅速に出せる態勢を整えておくべきです。

そのためには、このブログでも以前掲載したように、南シナ海における米軍の「航行の自由作戦」のように、海自が尖閣を含む東シナ海の海を定期的にパトロールすべきです。今後領海を侵犯したときは、警告しても受け入れない場合は撃沈すべきでしょう。

公開された「マラバール」米空母「ジョン・ステニス」に着艦
する F/A-18ホーネット=15日、沖縄から東約290キロの洋上
さらに、インドに関しても以下のようなニュースがあります。

インドと中国が領有権を争い、インドの実効支配下にある印北東部アルナチャルプラデシュ州に今月9日、中国人民解放軍が侵入していたことが分かりました。印国防省当局者が15日、産経新聞に明らかにしました。中国は、インドが日米両国と安全保障で連携を強めていることに反発し、軍事的圧力をかけた可能性があります。

中国兵約250人は、州西部の東カメン地区に侵入し、約3時間滞在しました。中国兵は3月にも、中印とパキスタンが領有権を主張するカシミール地方でインドの実効支配地域に侵入し、インド軍とにらみ合いになっていました。アルナチャルプラデシュ州への侵入は、最近約3年間、ほとんど確認されていませんでした。

アルナチャルプラデシュ州 地図の赤い斜線の部分
中国側からすると、日米印の共同訓練「マラバール」への牽制のつもりなのでしょうが、そもそもなぜ「マラバール」を実施することになったかといえば、中国が随分まえから、南シナ海に進出して、最近では環礁を埋め立て軍事基地化し領有権を主張たり、尖閣諸島付近に海警の船を出没させ、最近では軍艦まで派遣するということで、本来日中には領土問題など存在しないのに、尖閣諸島は中国のものだと主張してみたりで、さんざん周辺諸国に対する脅威を煽ってきたからです。

これは、外交の失敗などではなく、中国の海洋戦略に問題があるのです。この状態が続けば、近いうちに王毅外相は外交で何も成果をあげられなくなることになります。

これは、たとえ王毅外相を更迭したにしても、他の外務大臣でも同じことで、海洋戦略を改めない限り、これから中国は外交で大失敗をし、大失態を演じ続けることになります。

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