このレポートでは、80後世代についてひとくくりで論評していますが、わたしはこうした見方は間違いであるだけではなく、混乱を招くものだと思います。引用の下のほうに、どうして間違いであり、混乱を招いてしまうのか掲載してあります。是非ご覧になってください。
ただし、中国の若者がこうした救援活動を自らの発意で行っていることは注目に値しますし、日本ではほとんど報道されていないので、その意味ではこの記事は優れたものだと思います。書き方として「80後」世代の特徴などとともに語らずに中国には「こういう若者たちもいる」というような書き方であれば、ベストだったと思います。
【四川大地震・現地特報】「80後」世代ボランティアの援助活動に同行
四川大地震の救援物資が横流しされた事件が複数報道されている。今回の災害では「救援資金・物資の流れの透明化」を求める国内世論とメディアからのプレッシャーはこれまでになく高まっているようだ。そんな中、政府や団体に頼らず自ら被災地に行き、できることをやるという新しいスタイルの援助活動が「80後」世代と呼ばれる若者たちを中心に展開されている。
四川大地震の救援物資が横流しされた事件が複数報道されている。今回の災害では「救援資 金・物資の流れの透明化」を求める国内世論とメディアからのプレッシャーはこれまでになく高まっているようだ。そんな中、政府や団体に頼らず自ら被災地に 行き、できることをやるという新しいスタイルの援助活動が「80後」世代と呼ばれる若者たちを中心に展開されている。
「成都商報」の報道によると5月22日、四川省成都市公安局はテントなどの震災救援物資を不法に販売していた12人を逮捕 した。また5月22日には深刻な被災地の1つ・四川省徳陽市羅江県で救援物資の横流しが目撃され、住民数千人の怒りに火がつき、騒動が巻き起こったと香港 の「明報」が報じた。23日、徳陽市政府は救援物資を横流ししていた職員1人の身柄を拘束し、1人を免職したと発表した。
今回の災害では中国国内の世論とメディアからの「震災救援資金・物資の流れの透明化」を求めるプレッシャーが高く、救援にあたる政府と関連団体は、これまでにない厳しい監視の下に置かれている。だが体系的な監視体制が整備されるまで、民衆の疑念と不信は止みそうもない。
こうした中「地方政府や企業、団体の手を経ず、自ら被災地に行って、支援が最も必要とされる人たちに救援物資を手渡しする」という新しいスタイルの援助活動が「80後」世代と呼ばれる若者たちを中心に展開されている。
彼らの活動を実際に見てみようと、あるボランティアグループの活動に同行させてもらった。
このグループは仕事やインターネットなどで知り合ったテレビ、広告、デザイン、不動産などの業界の8人が資金を出し合って、自分たちで援助物資を調達 し、援助先を探し、輸送と統計記録などをすべて自力で行っている。「有銭出銭・有力出力・有車出車(お金のある人はお金を、力のある人は力を、車のある人 は車を)」をモットーにしているそうだ。
ワゴン車に満載の救援物資。ラベルには「立ち上がれ!われわれは永遠にそばにいます」と書かれている。
メンバーたちは「横流しされては寄付したお金がもったいない。自分のできる範囲で、本当に必要な人に確実に届けたい」と語る。
一番若い李さんがニヤリと照れ隠しの笑顔を見せながら、筆者に頼んできた。
「曾さん、現地に着いたら、重いものは手伝わなくてもいいですから、あれを女性のみなさんに配っていただけませんか?」
彼の指先の指す方向を追ってみると、生理用ナプキンの箱が2つ。男性がこんなものまで用意するとは思わなかった、その気遣いの細かさに感心するばかり。
8時に出発。まず都江堰市向ガ(山に我)郷紅火村に向かった。人口1108人の村で、地震により半分弱の家が倒壊し、27人が亡くなっている。
前日の23日にもメンバーたちは向ガ郷を訪ねており、すでに被害状況は調査している。実はその時にも筆者は同行しているのだが、この際、自治体の首長で ある郷長にも面会したが、彼らはその説明だけに頼らず、自分たちで現地を回り、山地にあって援助が届きにくい紅火村を援助先に決めた。さらに村民たちから 直接話を聞き、食料、防災用テント、防水シートと鍋などが一番不足しているということを把握したのだ。
9時半、紅火村に到着。村民が避難しているテント村に車を止め、村民たちの手伝いで救援物資を降ろし始めた。立ちあった女性村長に物資の確認をしてもらい、記録表に署名してもらった。
「孫に先に死なれて生きる気がしない」
「(物資を)何回ももらった人もいるけど、押しの弱いわたしたちはずっともらえていない」
婦女たちの涙の訴えにメンバーたちの表情がどんどん重くなってくる。
差し迫った最大の問題は、やはり救援物資不足のようだ。政府からの救援物資も続々届いているようだが、やはり足りない。被災者の不満とフラストレーションが増していく。
11時半、テント村を出て、車で山のもっと深いところへと入っていった。畑を離れたくなくて、倒壊した家の隣でテント暮らしをしている家族のところに直 接物資を運ぶためだ。路上で荷物を背負って歩いている人民解放軍の兵士に出会った。彼らは車が通れないところに住む人たちに物資を届けに行くという。
13時ごろ、紅火村を出て、次の援助先・都江堰市大観鎮紅梅村に向かう。
13時半、ランチタイム。道端でパンやビスケットをかじり、しばしの歓談を楽しむ。
14時半ごろ、都江堰市大観鎮の市街地に入り、食料の販売店で米と菜種の油を調達する。
オーナーに買うのは救援物資であることをアピールし、値引きを持ちかけてみた。
「おじさん、救援物資ですから、もっと安くしてくれよ」
「わかってます、わかってます。儲けるつもりぜんぜんない!」
「ほんとう?逆に値上げしてない?“発国難財”(天災や人の不幸につけこんで金を稼ぐこと)はいけないよ」
「値上げなんてとんでもない!向こうの×××さんがこのあいだ5元値上げしたら、5千元の罰金を払わされた」
交渉の結果、値引きしてもらい、米360kg、菜種の油45kgを購入した。
15時半、都江堰市大観鎮紅梅村を目指し青城山を登る。車が通らない山の奥まで着くと、車を降りて、米の袋を肩に担ぎ、油のボトルを手に握り、この村での一つ目の援助先・何昌述さんの家まで歩いていった(その時の様子は、映像2をご覧ください)。
米の袋を肩に担ぎ、油のボトルを手に握り、山の奥に住む何昌述さんの家まで歩いていく。
米の袋を肩に担ぎ、油のボトルを手に握り、山の奥に住む何昌述さんの家まで歩いていく。
18時、紅梅村を後にして成都への帰路につく。
20時ごろ成都に到着、高速道路の出口にて解散。
このボランティアグループの中心メンバーである3人は中国で「80後」と呼ばれる若者たちだ。中国で1980年代に生まれた現在19歳~28歳までの若 い人たちは「80後」世代と呼ばれており、その総数は日本の総人口のほぼ倍の2億人あまり。一人っ子政策の下で生まれ、中国経済の急速な成長とともに育っ てきた世代だ。
「一人っ子」として、親に寵愛されて育った結果、自己中心的で過剰な自己主張をする傾向がある一方、自立心に欠け、プレッシャーに弱く、忍耐力に欠ける、と言われることが多いこの世代だが、今回の地震災害に対する反応からすると、再評価が必要なのかも知れない。
「80後」世代のもう一つの特徴は、インターネット環境の大きな進歩の中で育った「ネット世代」でもあるということだ。携帯電話やインターネットを使って情報を集め、内外とコミュニケーションをとり、進んで自己表現をする。
中国のインターネット人口の約70%は、30歳以下の若い人だと言われている。彼らはBBSやブログといった新メディアの主力となり、また従来メディア でも第一線記者の立場にいる世代であるため、世論の風向きをリードし「草の根」の市民社会に大きな影響を与える力を持っている。
今回の地震の救援活動で、彼らは自分たちの特徴と利点を存分に生かしていると感じる。
この記事に出てくる若者はどの層に属するか?
こうした救援活動を自発的にする青年たちは「有銭出銭・有力出力・有車出車(お金のある人はお金を、力のある人は力を、車のある人 は車を)」をモットーにしています。
まず、こうした活動をする人達の特徴としてあげられるのは、ある程度以上の経済的余裕がある人達だということです。自分が生きるのに精一杯であれば、このようなことは出来ないと思います。それと、自分でものを考えて自分で行動できる人達ということもあげられると思います。
この特徴は、20~30年前までの中国人にはなかなか見られなかったと思います。一昔前であれば、災害の救援活動は人民解放軍や警察など公的機関がやるべきものという考えだったと思います。無論、自分たちが被災した場合互いに近所で支えあうとか、余裕があれば助けるということはあったでしょうが、わざわざ遠方にまで言って救援活動に汗を流すというような考え方はなかったと思います。
さて、上のレポートには、80後世代という言葉を使ってこの世代の特徴を述べています。今回の地震災害に対する反応からすると、再評価が必要なのかもしれないとしています。しかし、私は再評価するだけでは意味がないと思います。意味がないどころか、方向性を見誤ってしまう恐れすらあります。
このレポートにでてくるような「経済的にある程度余裕があり、さらに自分でものを考えて自分で行動できる人」は、実は80後世代の全体にはあてはまりません。どちらかというと少数派に属するのだと思います。
私は、以前もこのブログで「80後」世代(人口は二億人)を三つに分類しています。それを以下に簡単に掲載します。
■メインターゲット-ゼリー層(推定人口2000万人以下)
まずは、少なくとも日本の一般世帯収入の数分の一以上の世帯収入がある家の出身である こと。高学歴であること、北京大学などやそれに順ずる大学の大学生、大学院生で、卒業生であること。海外の有名大学院の院生や卒業者を含みます。卒業生の 場合では、官僚になっているか、有名企業などに就職しているか、家業をついでいます。ほとんどの人が携帯電話を持っていて、しかもほとんどの人が「手写筆(ペンタッチ式)携帯」を持っています。
■サブ・ターゲット-イチゴ層(推定人口5000万人前後)
さ て、この層は、メイン・ターゲットには近いですが、いわゆる有名大学出身ではないですが、大学に行っているかその卒業生です。いわゆる、知識層ではありませ ん。長野オリンピックなどで騒いでいた連中はこの層です。経済的には比較的恵まれていて、ゼリー層より少し下のレベルです。知的能力は低いですが、さりと て、韓国に留学するほどの頭の悪さではありません。ほぼすべての人が携帯電話を持っているが、「手写筆携帯」を持っている人は少ないです。また、経済的に余裕があり、持てるならもってはみたいと思っています。
■ボリューム・ターゲット-80後世代多数層(推定人口1億3000万人前後)
経 済的にも、 知的にも一昔前の中国人とあまり変わりない層です。日々の生活を送っていくだけでも、精一杯という状況です。ただし、インターネットを使ったり、若いことから、通常の中国人からみれば、変わって見えますが。思考 も行動様式も以前の中国人とほとんど変わりません。彼らが変わって見えるとすれば、彼らの特性ではなく世の中の変化です。学歴は大卒はほとんどいません。学歴があったとしても、国内の三流以下、あるいは韓国などに留学しています。
携帯電話を持っているはいるがすべての人が持っているとは限らない、「手写筆携帯」など持っている人はいない。持とうとも思っていません。
おそらく、このレポートに出てくるような人の中には、上記のボリュームターゲット「80後世代多数層」の人はほとんどいなでしよう。私が、思うにやはり、ゼリー層およびイチゴ層の一部の人達だと思います。人口でいえば、最大で7000万の人がこのような活動に参入する可能性が高いです。2億人のうちの7000万人ですから、少数派です。
このレポートの記者は、80後世代を再評価しなければならないと言っていますが、おそらくゼリー層に関しては、もともと経済的にもめぐまれ、自分の考えで行動できるのであり、再評価の必要はないと思います。
再評価するとすれば、このレポートではもともと、若者を分類する発想はないので、はっきりしませんが、おそらくイチゴ層の一部にもこういう人達もいたということかもしれません。しかし、こうなるとイチゴ層(5000万人)のうちの一部ですから、そうなると80後世代を再評価することにはならないと思います。
結局、何を評価しようと80後世代とひとくくりに、くくってしまっては、正しい評価はできなくなるということです。さらに、付け加えると、多くのブログなどで、「中国人」とくくってしまっていますが、13億もいる民をひとつにくくって論評するにはあまりにも無理がありすぎると思います。日本国内でも、大衆などと言っていられたのは20年前くらいまででおしまいであり、それからは団塊の世代などとひとくくりにしていては、物事を本質が見えてこないばかりか、混乱を招くと思います。
以下にこのブログに掲載した中国関連の記事を提示します。反転文字をクリックすれば、当該記事に飛ぶことができます。私の説明不足から、以上の論考、以下の記事を読んでいないと理解できない部分もあるかもしれません。まだ、読んでいない方は是非ご覧になってください。
■不可解な中国の報道二題-やらせ義捐金とノーベル平和賞
■中国携帯電話事情-80後世代分類のツールともなるか?
■中国四川省大地震―核施設、ダムは大丈夫か?
■現代史は語る―大地震から始まった中国崩壊の道筋
■中国「イチゴ族」-中国の未来は彼らのもの
■胡錦濤主席の来日-その真の目的は?
■China Fashion week 開催さる-中国ゼリー層にも押し寄せる情報洪水
■ゼリー世代のミーイズム-体制から身を守る知恵か?
■中国ゼリー層-明日の中国を牽引する原動力となるか?
■チャイナ・アート・バブルにも冷めた見方のできる中国ゼリー世代?
■中国分裂の筋書き-(その10)パクスマリーナが拓く世界の平和と大繁栄
■中国分裂の筋書き-(その9)日本の対応は?
■中国分裂の筋書き-(その8)迫られる中国の選択
■中国分裂の筋書き-(その7)忘れてはいけない中国の不良債権
■中国分裂の筋書き-(その6)現代中国の混乱ぶりを現す動画の数々
■中国分裂の筋書き-(その5)他の人達はどう思っているのか?
■中国分裂の筋書き-(その4)毛沢東を統合の象徴にすることができない中国中央政府の苦悩
■中国分裂の筋書き-(その3)中国バブルの真実
■中国分裂の筋書-(その2)革命でもなければ現代中国は変わらない
■中国分裂の筋書-(その1)繰り返される歴史
■中国"義歯"から鉛「安全に問題」
■中国産原料を使ったヘパリン製剤で自主回収へ・・・・米国では死者21名
■世界一人当たりのGDP(国内総生産)と、一人当たり資産−これでも中国は経済大国か?
■南京虐殺記念館に対する日本政府の申し入れに関して考えた、中国のお家事情
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2 件のコメント:
いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
学歴の書き方 様 コメント有難うございます。
また、お気軽におたちよりいただき、コメントを残していっていただければ、幸いです。
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