2011年9月26日月曜日

中国経済の再均衡、阻害重なる=ニューヨーク・タイムズ―【私の論評】中国を等身大に見れない日本人?!

中国経済の再均衡、阻害重なる=ニューヨーク・タイムズ

成長しているかに見える中国の経済
【大紀元日本9月26日】北京にせよ、成都にせよ、中国の地方政府の官僚たちは中国の経済成長に関して、心の中でははっきりした認識がある。インフラ建設や輸出工業への依存から脱却し、内需拡大による消費型経済成長への転換が大変困難である。ニューヨーク・タイムズは先月、中国の経済構造の再均衡を実現させるに当たって、多重の阻害に直面すると報道している。

米副大統領バイデンが先月訪中した際、四川省で中国の習近平副主席と会談した。中国当局はこの会談を利用し、メディアを通して世界に向かって次のように発信した。中国はこれからも持続的経済発展を実現し、同時不況に陥った世界経済を牽引する。

しかし、専門家の間では、これを実現させるには、中国経済の構造を徹底的に「再均衡」させなければならないとの認識が示されている。

成都を例にして言えば、オフィスビルや住宅建設の工事現場が至るところに溢れている。他の内陸都市も同様な現象を持っているのが一般的である。

ニューヨーク・タイムズの報道によると、目下、中国の経済成長モデルがもたらした過度な資源浪費、貧富の差とインフレ(統計局の資料によると、8月のCPI上昇率は6.2%)は、当局からすれば、皆社会的不安定要素である。そのため、中共の第12次5カ年計画の中、この焦眉の急を突破し、家計部門による購買力の向上を期待する内容を盛り込んだが、その実効性は疑わしいものである。

欧亜集団(Eurasia Group)の中国アナリスト、方艾文(Evan A. Feigenbaum)氏が最新の報告の中で次のように述べている。「中共の指導者たちは自分たちの国の経済の総体変革を約束したが、中国の政治経済の基本的な部分における改革は多くの国内外の関心のある人の期待を裏切るものとなろう。今後10年、中国経済の苦境は人の想像を絶するものとなる」

また、北京大学の経済専門家・姚楊氏によると、国内経済においては、企業と地方政府は潤沢な資金を保有しており、民間消費を刺激し国民の不満を抑えるために福利厚生を増加せねばならない。このことについて、中共の指導者たちははっきり知っているはずだ。

しかし、この種の変革を実施するにあたって、相当な阻害が待ち受けている。たとえば、私営企業の生存空間を犠牲にして、国有企業の発展を強化させており、その結果市場原理の運行が損なわれている。大型国有企業の政治への影響力は大きく、同時に、国有銀行も政府がバックアップする投資案件への融資を好んでいる。これらの投資案件の多くは資本集約的なインフラ関連や不動産関連のものである。

一方、地方政府は上記のような資本集約型投資を支持するインセンティブが極めて大きい。これらの投資を増やすことにより、地方のGDPが目を見張る数字になるからだ。地方政府官僚の腐敗との関連も一因となる。大型の投資案件こそ多額の賄賂を受け取れるからだ。

リーマンショックの後、中国政府は5860億ドルの大型景気刺激対策を採った。しかし、政府が今夏に公布した統計からの予測では、地方政府の負債総額は2.4兆ドルから3.1兆ドルにまで膨らんでおり、昨年の全国のGDPの半分にも及ぶ数値である。これだけの債務返済のための利息負担は年間1500億ドルにも達する。巨額の負債残高と利息支払いの負担から、銀行の不良債権の増加に直接影響を与え、インフレや貯蓄の減少などの悪循環に陥る危険性が大きい。

中共の指導者は現状認識をしたうえでのさらなる改革への意欲はあるものの、有効な手段を実行できない理由は明白である。莫大な富を積んだ利益集団と強大化した国有企業は自分たちの既得権益を損なうような改革を許さないからだ。こう考えれば、中国経済の再均衡を阻害しているのは、中共の体制的阻害にほかならないのである。

【私の論評】中国を等身大に見れない日本人?!
私は、国の富をはかるにおいて、単純にGDPだけで見るのは、間違いだと思います。GDPを見るにしても、まずは、一人あたりのGDPも指標になるとは、思います。そのような目でみれば、中国の一人あたりのGDPは、日本の1/10以下です。新興国なら、ともかく、ある程度成熟化した国の場合は、インフラがいきとどきは、GDPが少なくなる傾向にあるので、個人あたりの、資産も見るべきと思っています。

では、資産ではどうなのか、掲載してみます。2010年6月末時点の個人資産(金融資産と不動産など非金融資産から負債を引いた額)は、中国が16兆5千億ドル(約1400兆円)で、米国の54兆6千億ドル、日本の21兆ドルに続き世界3位だった。00年時点と比べると3.5倍に膨らんだ。インドも3.5兆ドルと11位に入りました。

しかし、ここで、良く考えてみてください、アメリカの人口は、日本の3倍くらいですから、そうなる、個人あたりてば、日本のほうが、アメリカより資産を持っていることになります。これは、最近の傾向で、これは、歴史始まって以来のことではないかと思いす。しかし、それをマスコミは報道しません。

実際、アメリカでは、リーマン・ショックあたりで、株価が低落したため、アメリカ人の個人資産は、目減りしていました。日本では、あまり目減りしなかったため、このあたりで、実は日本とアメリカの個人資産ははじめて、横並びになりました。そうして、現在では、アメリカを追い越しているというわけです。

では、中国は、といえば、どうなのかといえば、日本の10倍程度の人口ですから、中国の個人資産総額16兆5千億ドルを1/10にわってみましょう。1.65兆円ということです。これと、日本の21兆ドルと比較するとどいうことになるかといえば、日本は、個人あたりの資産では、日本は、中国の12.7倍ほどということになります。

確か、日本人の個人資産は、赤ん坊か、老人まで、あわせて、個人あたりでは、800万円台でしたから、中国は、80万円未満ということになります。こうして、比較すると、個人あたりの、GDPも、資産個人あたりでは、この程度にすぎないということが良くわかります。

うえの記事では、中国の最近の状況を述べています。中国の景気対策は、ここ20年ほど、景気が悪くなると、金融緩和をして大幅な財政出動をする、財政出動して、景気が上向きすぎて、インフレ気味になると、金融引き締めと、緊縮財政をするという、マクロ経済で教えているまっとうなことを繰り返してきました。そのたびに、中国の経済は上向いてきました。この間、日本はといえば、この逆をやってきたので、実体経済がすっかり停滞してしまいました。

しかし、経済は、循環するものです。良い時期が、永遠に続くこはなく、悪い時期も永遠に続くということはありません。また、経済学用語でいうところの、経済の復元力という言葉があります。経済の復元力とは、日本のように長い間不景気が続いてきた国でも、いずれ回復するし、アメリカや中国のように、長い間、不況対策などによって、景気を回復し続けてきた場合には、いつまでも、景気が良い状態はなく、いずれ、不況陥るというものです。

アメリカも、中国も、ここしばらくは、景気が少しでも落ち込めば、必ず、景気対策を素早くうち、景気が本格的に落ち込むことを避けてきました。だから、両国とも、いわゆる、経済の復元力はなくなっており、これからしばらくは、どう頑張っても、不景気に陥るのだと思います。

実際、オバマ氏大統領も、最近も、いろいろ景気対策をうっていますが、あいかわらず、消費も、雇用も回復しません。そんなことから、来年の大統領選挙を危ぶむ声もあります。中国に関しては、アメリカのように、経済をはっきり公表しませんから、日本のマスコミなど、あまりよくわかっていないようですが、上のニューヨーク・タイムズの記事は、最近の中国経済の復元力のなさを査証しているのだと思います。

日本人は、中国というと、等身大に見ることができずに、過大に見る人が多いですが、いまこそ等身大に見ていくことは、より一層重要になってくると思います。

【関連記事】

 「ゲーセン」いまや常連はお年寄り シニアサービス充実―【私の論評】少し見方を変えれば、高齢者にとって良いサービスはいくらでも提供できるし、それが、次世代産業の切り札にもなり得る?!!

オバマ再選陣営のサイト、逆効果か-政権に対する揶揄が満載―【私の論評】日本でも、政治のワイドショー化が繰り返される?

中国鉄道事故、プログラムソフトに欠陥―【私の論評】中国高速鉄道事故は、ドイツ第三帝国のヒンデンブルク号事故、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故のように国家崩壊の端緒となるか?
65歳以上の人口7%の「高齢化社会」、10年前から倍増、31地区のうち26地区に―中国―【私の論評】超高齢化大国中国に明日はない!!

米国人の中国経済への理解に4つの誤り―米誌―【私の論評】日本人も勘違い!!震災直前に日本に多数来ていた中国の富裕層は、あなたよりも、年収が少なかったかもしれない?

中国経済間もなく「成長停止」か=OECDが警告―成長停止は何を意味するか?


0 件のコメント:

沈むハリウッド、日米コンテンツ産業逆転の理由 ―【私の論評】ポリティカル・コレクトネスに蝕まれたハリウッド映画の衰退と日本のコンテンツ産業の躍進

沈むハリウッド、日米産業逆転の理由 ■ Forbs Japan日本編集部 まとめ 日本のコンテンツ産業、特にアニメが国際的に人気を博しており、非英語番組の需要が増加中。 米国のZ世代は日本のアニメを好み、動画配信やゲームの普及がブームを加速させている。 日本のコンテンツ全体が注目...