2011年9月9日金曜日

なぜ今、円高なの?―【私の論評】もっとまともな報道をしなければ、いずれ新聞・テレビから購読者・視聴者は離れる?

なぜ今、円高なの?

■アメリカのデフォルト回避と円高の関係性

本稿の執筆時点では、アメリカのデフォルト危機がひとまず回避されて、安堵(あんど)感が漂っているところだ。同時に、円高が大きく進行して日本の輸出産業にとって大問題となりつつある。

さて、この問題については、ついにドル崩壊だとか、これだから財政規律は重要だとか、きいたふうな口をきく人がたくさん出た。でも、経済だろうとなんだろうと、絶対に当てはまる法則がある。

「Action speaks louder than words」。

あれこれ口先だけの評論家よりも、実際にそれに直接の利害を持っている人の行動を見よう。米国債の返済が滞って一番困るのは、米国債を持っている人々だ。デフォルトの危機があると思ったら、みんな売り逃げようとするから安値になる、つまり利回りがリスク分上がるはずだ。

そして今回、アメリカ国債利回りがどうなったかというと、ほとんど変わらなかった。だれも本当にデフォルトするとは思っていなかったわけだ。

なぜかといえば話は簡単。今回の危機は単に、アメリカが財政規律のためと称して借り入れの上限なんていう変なものを作り、そして共和党がオバマ政権への嫌がらせとして、この上限の引き上げに対して散々ごねただけの、極めて人工的なものだったからだ。

これが問題になりはじめた7月初頭時点で、イギリスの『エコノミスト』誌はこの件について共和党を批判する記事を載せていた。国の信用を掛け金にしてくだらないチキンゲームをするなといって。

そして共和党だって、本当にアメリカが債務不履行を起こしたら財政規律どころでないことは知っている。本当に突っ張って、本当にアメリカ国債がデフォルトしたら、そんな事態を引き起こした共和党が大バッシングにあうから、どっかで手打ちせざるを得ないのはみんな知っている。

ただ正直、ここまでごねまくるとは思わなかった。それが結果的に、国そのものに対する通俗的な信頼を揺るがせたことで、共和党はかえって株を下げた。

と書いているうちに、アメリカ国債が格下げになって、またもやニュースや通俗評論家は大騒ぎ。でもこれまた国債の利回りは全然上がっていない(債券は、ヤバイと思われたら利回りが上がる)。市場で実際に投資をしている人々はアメリカ国債がやばくなったとは、まったく思っていないわけだ。

でも、それをどう評価するにしても、実際の利害を持つ人々がまったく動じていない、という点は留意していいんじゃないだろうか。

さてそれについて日本で大騒ぎしてみせる人々は、単に無知なのか、あるいは魂胆を持っている。日本の場合、それは日本の財政赤字がヤバイと言って、話を増税に持って行きたいという魂胆であることが多い。

さて円高のほうも、ドルの動きやユーロ圏の状況など、いろいろ要因はある。でも為替は基本的には、それぞれの通貨の相対的な量で決まってくる。円高を阻止したければ、日銀がもっとお金を刷ると明言し、国内の通貨量を増やせばすむ。ちなみにそうすれば、震災復興にも役立つ。

円と同じく通貨が高くなってしまったスイスは、ちゃんと金融緩和を発表して、きちんと通貨を引き下げた。が、日銀は輸出業界が悲鳴を上げてもひたすら「注視する」というだけで何もしない。デフレで景気が低迷しても何もだ。

いまの日銀はいったい何のために存在しているのか、というのは多くの人が抱いている疑問だ。そうすると、なぜ自分たちが何もしないか、というのだけはえらく雄弁に弁解する。そしてそのお先棒をかつぐ学者も多い。しかし、日銀の中には、「金融を緩和したら負けで、金融を引き締めると勝ち」、という価値観がある、という話も。

インフレが問題だった時代には、それは適切な態度だっただろう。でも状況が変わった今もそうした昔のやり方を変えられずにいるとすれば、本当に日銀が何を目的として政策運営をすべきかについては、きちんと見直して外から枠をはめたほうがいいのかもしれない。そうでないと、デフレも円高も絶対なくなりそうにない。

山形 浩生(やまがた・ひろお)

1964年、東京生まれ。東京大学卒業後、マサチューセッツ工科大学修士課程修了。某大手シンクタンクに勤めるかたわら共著、『暴走する「地球温暖化」論ー洗脳・煽動・歪曲の数々』(文藝春秋)、『要するに』(河出文庫)など著作訳書多数。
【ネタりかより】

【私の論評】もっとまともな報道をしなければ、いずれ新聞・テレビから購読者・視聴者は離れる?
上の、山形氏の行っていることは、ほぼ妥当だと思います。残念ながら、私自身は、この方のことは、本日上の記事を読むまでは、存じ上げませんでした。ネットで少し調べたので、顔写真と略歴だけ下に掲載しておきます。

山形 浩生氏
略歴
小学校1年生の秋から約1年半、父親の海外勤務でアメリカに居住。麻布中学校・高等学校卒業後、東京大学理科Ⅰ類入学。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻を経て、野村総合研究所研究員となる。1993年からマサチューセッツ工科大学に留学し、マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程を修了。1998年、プロジェクト杉田玄白を創設。

野村総合研究所で開発コンサルタントとして勤務する傍ら評論活動を行っている。また先鋭的なSFや、前衛文学、経済書や環境問題に関する本の翻訳を多数手がけている。

上の山形氏の次の文章のうち、以下のものは、

『日本で大騒ぎしてみせる人々は、単に無知なのか、あるいは魂胆を持っている。日本の場合、それは日本の財政赤字がヤバイと言って、話を増税に持って行きたいという魂胆であることが多い』に関しては、まさにその通りで、このブログではも何回となく掲載してきたことです。


「米国債はデフォルト危機」と大騒ぎする日本の新聞は「財政破綻」「増税」は好きだが、自分たちだけ「軽減税率」求める浅ましさ ―【私の論評】消費税率アップが、新聞業界と財務省の共通の利益だが、アメリカの利益にはならない!!


この記事では、まずは、以下のようなことを掲載しました。
しばしば日本国政府の債務残高がGDPの2倍あるとかいうが、日本国政府のバランスシートの資産もGDPの1.3倍もある。債務も世界一なら資産も世界一なのだ。何よりソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は1%にも満たずギリシャの20%に比べると雲泥の差だ。だから日本国政府が財政破綻という話は国際金融市場では出ていない。
実際、国際金融市場で日本国政府が財政破綻という話は、でていません。いっとき、ゴールドマン・サックスなどは、日本のソブリンリスクの喧伝を行っていましたが、それによって、 それこそ、上の記事で、山本氏が語っているように「あれこれ口先だけの評論家よりも、実際にそれに直接の利害を持っている人の行動」は全く変化することもなく、さすがに、今では影を潜めました。彼らにとっては、日本のソブリンリスクを演出してみたところで、誰も、のってこなかったので、金儲けにもつながることもなく、やめたというところだと思います。全く、金融馬鹿や、賭博師は、困ったものです。

そうして、新聞と、消費税の関係に関しては、以下のようなことを掲載しました。財務省は、増税をすることは、省益に利することであり、新聞が、日本の財政破綻をゆえなく、報道をすることは都合が良く、両者の利益は、合致しているという内容です。
新聞は消費税アップによっても新聞代の引き上げを避けられる。一方財務省にも利権が発生する。というのは、消費税率がアップすると、必ず軽減税率やゼロ税率の話が出てくる。新聞業界もそのひとつだ。社会的使命を主張しながら、消費税の軽減税率を財務省に働きかけている。これはもちろん新聞では報道されないが事実だ。どの業界に軽減税率を適用するかどうかは財務省の胸先三寸である。 
財務省の事務次官であった丹呉泰健氏が読売新聞に天下りしたことは昨年11月22日の本コラムで述べている。消費税率引き上 げと新聞業界の軽減税率・ゼロ税率の願望とは無縁とはいえない。  
新聞業界と財務省は既に蜜月関係にあると見ていいだろう。だから、新聞が行う世論調査で、増税が必要かというものはあてにならないことを留意する必要がある。そんなものは質問の仕方によってかなり変わるからだ。

昨日も、ある経済学者のコメンテーターがWBSに出演していて、日本の財政破綻に関して、Facebookによる視聴者からの質問されてて、非常に歯切れの悪い解答をしていました。この人など、経済学者なのですから、上のようなことは、知っているというよ、知っていなかったら、単なる馬鹿です。

しかし、政府におもねっているのか、あるいは、テレビ局におもねっているのか、わかりませんが、財政破綻の危機に関して、はっきりとは否定せず、うやむやな答えに終始していました。

しかし、伊藤元重氏も、はっきり言えない事情があるのかもしれません。あの番組に限らず、日本のテレビは、討論番組のようなものでも、デイレクターの誘導によって、最終結論が出されるようになっているくらいですから、自由な発言ができないのかもしれません。

しかし、そうであれば、出演しなければ、良いと思います。実際、大前研一氏は、こうしたテレビの体質を嫌って、最近では、普通のテレビにはほとんど出演していません。最近では、もっぱら、インターネットを用いた独自の媒体の中で活躍されています。

新聞は、財政破綻危機を煽ることで、財務省による、消費税増税後の軽減などの措置を期待しているようですが、テレビもそのようなことがあるのでしょぅか?いずれにしても、何かメリットがあるからこのようなことをするのだと思います。

いずれにしても、このブログにも、テレビや新聞の劣化については、たびたび指摘してきましたが、先のWBSも相当レベルが落ちてきたように思います。わずか、10年ほどまえまでは、野村総合研究所のリチャード・クー氏や、あの植草さんが出演していて、いまから、比較すると本当にまともでした。

特に、リチャード・クー氏は、この番組でも、早々と、「バランス・シート不況」について、述べていて、なかなか、当時不況の理由が何を見ても、理解できなかったのに、リチャード・クー氏のこの話をきいて、納得がいき、さすが、「日本通」と思わず、唸ってしまったものです。今のWBSにはそのようなことは全くありません。もう、あまり見ることもありません。この番組では、昔、自分の会社が紹介されたこともあり、長い間ファンだったのですが、今では、本当に面白くもなんともない、番組になってしまったと思います。

この番組など、今のままでは、どんどと視聴者が減少していくと思います。そういわれてみれば、大前研一氏も、最近では、ほとんど、出演しませんね。それでも、1年少し前には、確か、「ビジネス・プラットフォーム」に関して話をしたのが最後ではなかったかと思います。

いずれにせよ、テレビでも、新聞でも、上記の山形氏のような人にもっと、もっと、話をさせたり、書かせたりすべきと思います。このままで、今のメディアはユーザーからの信頼を失い、没落してくのみとなると思います。


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