2011年9月29日木曜日

Kindle Fire搭載のブラウザ「Amazon Silk」は、クラウドとデバイスで分散処理を行う革新的なブラウザ―【私の論評】このままだと、日本の企業は、クラウドの覇権争いから脱落する!!

Kindle Fire搭載のブラウザ「Amazon Silk」は、クラウドとデバイスで分散処理を行う革新的なブラウザ

Kindle Fire

日本時間で昨晩、Amazonが発表したデバイス「Kindle Fire」には、クラウドとデバイスのあいだで分散処理を行う全く新しいWebブラウザ「Amazon Silk」が搭載されています。

Amazon Silkはローカルのデバイス上で動作するWebブラウザの背後に、クラウドであるAmazon EC2で動作するサービスがつねに存在し、両者が連動して高速なWebブラウジングを実現すると説明されています。Amazonはこれを「Split Browser Architecture」と呼んでいます。

これまでWebブラウザの高速化、高機能化の競争は、PCやモバイルデバイスなどで動作するソフトウェアの進化を意味していました。しかしAmazon Silkの登場で、この進化がクラウドを巻き込むものに広がりました。

グーグルやマイクロソフト、モジラ、オペラなどのWebブラウザベンダの戦いに、Amazonはとんでもない方向から飛び込んできたのです。

Amazonが公開している解説動画から、その仕組みをみていきましょう。

以下がAmazon Silkの仕組みを解説した動画です。


この動画、英語なので、以下に翻訳を掲載します。

デバイスとクラウドが連係して高速化を実現

Dynamic Split Browsingでは、デバイス側だけでなくクラウド側でも状況によってどちらの機能の能力をどれだけ利用するかが最適化される 。

Webページを表示するには、名前解決やTCPハンドシェイク、コンテンツの取得など、細かいやりとりを何度もサーバと行い、そのためにユーザーは待たされている。

これらの処理をクラウドの能力で行うことで、わずか5ミリセカンドで終えてデバイス上にWebページを表示できる。この違いは典型的なWebサイトで実感できるだろう。

Amazon EC2上に無制限なキャッシュを用意し、イメージ、CSS、JavaScriptなどを置くことで高速化をはかれる。

同時にコンテンツの最適化を行う。例えば3MBの画像をAmazon EC2で50KBに最適化してからデバイスに送る。

機械学習により、利用者のパターンを学習する。ニューヨークタイムスのトップページを開いたら、次はどのカテゴリをクリックするのか予測してロードしておく。

Silkの名前の由来は、よりよいブラウザを実現するためにデバイスのKindle FireとクラウドのAmazon EC2を強く結びつける、という意味からとったもの。
マイクロソフトやグーグルは追随してくるか?

コンテンツ最適化やサーバ側でのキャッシュなど、モバイルデバイスのWebブラウジングを支援する技術はこれまでありましたが、それらすべてを組み合わせ、さらに機械学習まで投入して徹底した作り込みを実現し、それをデバイスと統合したサービスとして展開できるのは、豊富なリソースを安価に提供するAmazon EC2を展開するAmazonならではです。

アップルがiPhone/iPadで成功した背景に音楽やアプリケーションのマーケットの仕組みが存在したように、Amazonはタブレットで成功するためにデバイスとクラウドとの連係を深く考え抜いたことが見て取れるようです(果たして今の日本のデバイスメーカーにできるでしょうか)。

Amazon Silkが多くの利用者から支持されることになれば、グーグルやマイクロソフトなど、クラウドを保有するWebブラウザベンダも黙ってはいないでしょう。Webブラウザの進化は、Amazon Silkの登場で新たなステージに入ったのかもしれません。

【私の論評】このままだと、日本の企業は、クラウドの覇権争いから脱落する!!
このタブレット、以前にも紹介しましたが、とうとう昨日発売されました。価格も、日本円で、80円でドル換算すれば、16,000円程度ということで、大幅に2万円台を割っています。実際に、日本向に、日本語機能も、搭載したものを発売ということになれば、もっと高くなるかもしれませんが、2万円を切ることはほぼ間違いないと思います。

価格面でも、素晴らしいのですが、"Amazon Silk"も凄いです。Amzonといえば、あのkindleが有名ですが、kindleを発売したときには、それなりに、はじめての本格的電子書籍リーダーということで、かなり話題になりました。なせに、発売しはじめたのは、2007年で、まだ、iPadすら出まわっていない時期でしたから、かなりの話題になりました。

2007年Amazo Kindleの発売を告げるTimeの表紙


残念ながら、日本語の書籍が販売されていないので、日本では、ほとんど話題にはなりませんでしたが、私自身は、最近のiPadや、Androidタブレットの先鞭をつけたにのは、Appleではなく、電子書籍リーダーという限定された形式ではあるものの、Amazonだと思います。AppleものKindleをかなり意識して、徹底的に研究したと思います。私自身も、すでに、何冊か、kindleの電子書籍を購入して、読んでみました。あのドラッカーの「マネジメント」の原本に関しては、1000円台で購入できたことは、このブログにも過去に掲載しました。

Amazonは、日本では、本などをはじめとした、物販の業者であるという認識が強いですが、実は、結構前から、クラウドも運用しており、中身は、IT企業といった方が良いくらいの企業です。

その、アマゾンが、タブレットを出すのですから、満を持しての取り組みだったのでしょうし、まさに、ユーザーの期待を裏切らない素晴らしい試みだと思います。

このブログでは、Amzonは、顧客とのリレーションシップを徹底的に追求する企業であることを掲載してきました。今回のfireの発売も、無論この延長線上にあると思います。

Kindleを発売したばかりころには、まだ、Amazonでは、書籍などの物販がほとんどでしたが、その後、音楽のMP3フアイルの販売をしましたし、その後、パソコン用のアプリを販売しましたし、最近では、Andrid用のアプリも販売しはじめました。こうなると、ユーザーとしては、電子書籍だけではなく、音楽でも、アプリでも、そうしてついでにwebの閲覧や、動画なども見たいと考えるのが当たり前で、そうしたユーザーの期待に、Amazonは、Amazon Fireで応えたということだと思います。

ちなみに、Amazon Kindleは、すでに日本語対応ができています。まだは、販売はしていませんが、Amazon側では、いずれそうするつもりで、準備をしているのだと思います。もし、そうなったら、日本の出版界とか、デバイスのメーカーなども太刀打ちできないかもしれません。

私は、このブログで、タブレット端末などは、コンテンツ等を配信したり、広告を配信するための道具にすぎず、いずれ、無料に配られる時代も来るかもしれないことを掲載したことがあります。AmazonのFireの価格がこのように廉価であることから、これもあながち、全くありえないことではないことが、査証されたと思います。

さて、日本勢は、Amzonなどから比較するとかなり出遅れています。日本の出版会や、デバイスメーカーなど、巨大なクラウドを持ち、物販などで、すでに、かなり大きなビジネス・プラットフォームを持つ、Amazonには、いまの状態では勝てないと思います。これに関しては、以前にもこのブログで警告しました。その内容を以下にコピペしておきます。
Apple、Amazon、Googleのようにビジネスプラットフォームを築き、広告でも収益をあげられるところが、タブレットをかなり廉価で販売するか、それこそ、将来は無料で配布するようになるかもしれません。そうなれば、ハードだけ販売しているような、ところは、太刀打ちできなくなります。 
こういった、背景から、あと1~2年もすれば、かなり廉価なハードが出まわると思います。そうして、既存のパソコンなど駆逐してしまうと思います。そうして、このブログにも掲載したように、人々の間で新たなライフスタイルが確立されると思います。 
Amazonなどのプラットフォームを形成した企業が、この市場にたくさん入ってくれば、今年、時価総額で、世界一となったAppleの一人勝ちも終わってしまうかもしれません。しかし、そうなれば、ハードの無料化は多いにありそうです。いずれにしても、そうなれば、タブレットは、ありふれたものになり、携帯電話のように、当たり前の存在になってしまうことでしょう。持ち歩くかどうかは、別にして、大抵の人が、タブレットを持っている時代は多いにありそうです。
最近テレビなどで、「スマートフォン大戦争」が喧伝されています。しかし、これは、実は「クラウド大戦争」にほかなりません。これは、単なるデバイス製造の競争ではありません。ありとあらゆる、コンテンツを含む、極めて広範囲にわたるクラウドシステムの大覇権争いなのです。

このような状況の中で、日本のエレクトロニクスメーカーは、デバイスの製造にとどまっています。しかも、サムスンの後塵を拝している有様です。以前、このブログでも、ガラパゴスの撤退を掲載しましたが、今の日本のメーカー、今のままでは、シャープのガラパゴスの後塵をはいることになると思います。

これは、一昔まえの、PCの場合と同じことの繰り返しのようです。デバイスの製造にとどまるかぎり、際限のない値下げ競争に巻き込まれ、利益を挙げることはできません。スマートフォンやタブレット端末についても同じことが起こるのは必定です。日本のメーカーがこうした状態にある理由はいくつか考えられますが、そのうち大きなものは、日本ではスマートフォンはあまり使われていないことだと思います。

これは、われわれの日常的観察とも一致します。先日ある新聞で、「これまでの携帯電話のほうが便利」という読者の声が目につきました。そう考えてしまうのも無理はありません。スマートフォンで、Gメールなどのウェブメールやウェブカレンダー、そうして、エバーノートなどのクラウドのすトーレージを使うようになった人には生活が一変するほどの変化をもたらしますが、そうでないと「ただの箱」になりかねないのです。

「スマートフォンって、何のための機械?」というのは、日本ではごく当たり前の質問です。PCはインターネットがなくても役に立ちます。実際、私たちは、20年間近くインターネットなしでPCを使ってきました。しかしスマートフォンやタブレットは、インターネットが生活の中に入り込んでいないと、役に立ちません。メールを使っていても会社のメールシステムだけというのでは、スマートフォンの出番はありません。

メールを一日60通も打つ、高校生には、そもそも、スマートフォンなど必要ないのかもしれません。一方、FaceBookや、最近のGoogle+、twitterなどをスマートフォンでつかなれた人には、既存のメールシステムなど、古臭い一昔の前のシステム゜に見えます。なぜなら、これには、共有の機能がないからです。クラウドを使うと、共有は簡単にできます。カレンダーでも、文書でも、写真でも、なんでもかんでも、不特定多数の人、あるいは、特定の人々と簡単にできます。それも、かなり柔軟にできます。

これは、企業内でも革新的な変化をもたらすものです。企業内だけではなく、企業外との顧客との関係を構築に関して、革命的な変化をもたらすものです。しかし、大方の企業では、未だに、クライアント側のメールシステムが幅をきかせていて、ドキュメントのやりとりを未だにこれで行っている所が多いです。このようなところで、クラウドに対する認識や、その意味を悟ることは無理だと思います。

このような企業では、Amazonのような柔軟な発想はできないと思います。このままだと、日本の企業は、クラウドの覇権争いから脱落すると思います。

だからなんなのさなどと、言われる方もいるかもしれませんが、この便利さは、写真でたとえると、非常に解りやすいです。たとえば、一昔まえだと、何かイベントがあって、写真を撮影して、関係者に配布するのは、かなり面倒でした。あの面倒さ、知っている人もいまでは少なくなったと思いますが、今でもいると思います。それが、デジタルカメラとなって、一新されました。まずは、現像しなくても良いというのが画期的です。

フアイル形式で、パソコンに保存できるようになりました。しかし、クラウド以前だと、メールに添付して送ることになります。しかし、クラウドの場合は、写真を撮影して、すぐにクラウドに保存します。そのクラウドのアドレスを教えれば、それでおしまいです。また、これをFaceBookなどに掲載すれば、それだけで、欲しい人は、ダウンロードするだけですみます。これが、写真だけでなく、すべての分野でできるということです。それこそ、ありとあらゆる共有が可能です。普通の人が思い浮かばない、素晴らしい共有など、まだまだあるかもしれません。

しかし、これに関しては、一回使ってみて、その便利さを納得した人は、その価値を容易に認めると思います。そういう人は、クラウドを使うことを前提とする、スマホや、タブレット端末にすぐに馴染むことができますが、そうではない人は、なかなか馴染めないでしょう。実際、既存のパソコンや、携帯電話のようにスマホや、タブレットを使うというのなら、そんなものはいりません。従来の携帯電話、パソコンがあれば、十分です。これからの、日本企業この共有に関して、どの分野で、どのように行うのか、良く考えてみる必要があります。

Amazonでは、すでに、kindleで、電子書籍を他の人に特定期間、貸すという機能までついています。これは、今の日本の企業にはなかなか思い浮かばない発想だと思います。


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